説明

燃料電池セルスタックの温度管理

【課題】 簡単な構成で複数のセルの発熱量を個別に調整し、セルスタック構造体の温度分布を均一化する。
【解決手段】 セルスタック構造体1に、反応ガスGをセル2に供給するガス通路11と、温度調節媒体をセル2に供給する媒体通路とを設ける。ガス通路11のガス分配口14を反応ガスGの上流側に位置するセル2ほど小さくなるように形成し、ガス供給量を上流側で少なくし、下流側で多くする。これにより、発電時の発熱量がガス上流側のセル2で増加し、ガス下流側のセル2で減少する。同様に、媒体通路の媒体分配口を反応ガスGの上流側に位置するセル2ほど小さくなるように形成し、温度調節媒体が奪い取る熱量をガス上流側で減少させ、ガス下流側で増加させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セルスタック構造体の温度を管理する機能を備えた燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池のセルは、燃料ガスと酸化剤ガスとの電気化学反応に伴って電気と水と熱を発生する。セルが発生した熱は反応ガスや温度調節媒体によって上流側のセルから下流側のセルへ伝播するため、セルスタック構造体の温度分布にばらつきが発生し、燃料電池の発電効率を低下させる要因となる。そこで、従来、セルスタック構造体の温度管理を行う技術が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、セルスタック構造体の入口と出口における冷却水(温度調節媒体)の温度をセンサーで検出し、温度検出値に基づいてセルスタック構造体に流す冷却水の供給量を電気的に制御する方法が記載されている。特許文献2には、冷却水量の制御に加え、ヒータによってセルの温度を制御する方法が記載されている。
【特許文献1】特開2006−164605号公報
【特許文献2】特開2000−123854号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の燃料電池によると、温度調節媒体の供給量を電気的に制御しているため、電気制御システムが複雑化するという問題点があった。また、セルスタック構造体の温度は、伝熱により反応ガス通路の上流側に位置するセルほど低くなり、下流側に位置するセルほど高くなる傾向にあるため、セルスタック全体の媒体供給量を制御しても、個々のセルの発熱量を調整することはできず、セルスタック構造体の温度分布にばらつきが残るという問題点もあった。
【0005】
本発明の目的は、簡単な構成でセルの発熱量を個別に調整し、セルスタック構造体の温度分布を均一化できる燃料電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の燃料電池は、複数のセルを積層したセルスタック構造体に、反応ガスを各セルに供給するガス通路と、温度調節媒体を各セルに供給する媒体通路とを設けた構成を基本とし、次のような手段(1)、(2)、(3)を採用したことを特徴とする。
【0007】
(1)ガス通路が反応ガスを複数のセルに別々に分配するガス分配口を備え、各ガス分配口が反応ガスの上流側に位置するセルほど小さくなるように形成されていることを特徴とする燃料電池。
【0008】
上記燃料電池によれば、反応ガスの供給量がガス上流側のセルで相対的に少なくなり、ガス下流側のセルで相対的に多くなる。このため、発電時の発熱量が、ガス上流側のセルで増加し、ガス下流側のセルで減少し、セルスタック構造体各部の温度が均一な分布となるように制御される。
【0009】
(2)媒体通路が温度調節媒体を複数のセルに別々に分配する媒体分配口を備え、各媒体分配口が反応ガスの上流側に位置するセルほど小さくなるように形成されていることを特徴とする燃料電池。
【0010】
上記燃料電池によれば、温度調節媒体の供給量がガス上流側のセルで相対的に少なくなり、ガス下流側のセルで相対的に多くなる。このため、発電時に温度調節媒体が奪い取る熱量が、ガス上流側のセルで減少し、ガス下流側のセルで増加し、セルスタック構造体各部の温度が均一な分布となるように制御される。
【0011】
(3)ガス通路が反応ガスを複数のセルに別々に分配するガス分配口を備え、各ガス分配口が反応ガスの上流側に位置するセルほど小さくなるように形成され、媒体通路が温度調節媒体を複数のセルに別々に分配する媒体分配口を備え、各媒体分配口が反応ガスの上流側に位置するセルほど小さくなるように形成されていることを特徴とする燃料電池。
【0012】
上記燃料電池によれば、反応ガスと温度調節媒体の供給量が共に、ガス上流側のセルで相対的に少なくなり、ガス下流側のセルで相対的に多くなる。このため、セルスタック構造体の温度分布が効率よく均一化される。
【発明の効果】
【0013】
したがって、本発明の燃料電池は、ガス分配口または媒体供給口の大きさを変えるだけの簡単な構成で複数のセルの発熱量を個別に調整でき、セルスタック構造体の温度分布を均一化して、発電効率を高めることができるという優れた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は複数のセル2を積層したセルスタック構造体1を示す。図2は各セル2に反応ガスGを供給するガス通路11の構成を示す。図3は各セル2に温度調節媒体Wを供給する媒体通路21の構成を示す。
【実施例1】
【0015】
図1に示すように、燃料電池のセルスタック構造体1は、複数のセル2とセパレータ3とを積層し、両端の締付板4,5で締め付けて構成されている。一方の締付板4には、燃料ガスと酸化剤ガスからなる反応ガスGの導入管6と、生成水からなる温度調節媒体Wの排出管7とが設けられている。他方の締付板5には、温度調節媒体Wの導入管8と、反応ガスGの排出管9とが設けられている。
【0016】
図2に示すように、セルスタック構造体1の内部には、反応ガスGを各セル2に供給するガス通路11が形成されている。ガス通路11は、スタック構造体1を横断する横断路12と、横断路12から分岐しセル2に沿って広がる分岐路13とから構成されている。横断路12と分岐路13との接続部には、反応ガスGを各セル2に分配するガス分配口14が設けられている。
【0017】
各ガス分配口14の断面積は、反応ガスGの上流側(導入管6側)に位置するセル2ほど小さく、反応ガスGの下流側(排出管9側)に位置するセル2ほど大きくなるように設定されている。そして、比較的低温となるガス導入側のセル2に相対的に少量の反応ガスGを分配し、比較的高温となるガス排出側のセル2に相対的に多量の反応ガスGを分配するようになっている。
【0018】
このため、各セル2の発電能力は、ガス導入側のセル2ほど低くなり、ガス排出側のセル2ほど高くなる。発電時には各セル2に同じ値の電流が流れるから、ガス導入側のセル2ほど発熱量が多くなり、ガス排出側のセル2ほど発熱量が少なくなる。したがって、ガス分配口14の断面積を変えるだけの簡単な構成でセル2の発熱量を個別に調整し、セルスタック構造体1における温度分布のばらつきを抑えることができる。
【実施例2】
【0019】
図3に示すように、セルスタック構造体1の内部には、温度調節媒体Wを各セル2に供給する媒体通路21が形成されている。媒体通路21は、セルスタック構造体1を横断する横断路22と、横断路22から分岐しセル2に沿って広がる分岐路23とから構成されている。横断路22と分岐路23との接続部には、温度調節媒体Wを各セル2に分配する媒体分配口24が設けられている。
【0020】
各媒体分配口24の断面積は、反応ガスGの上流側(導入管6側)に位置するセル2ほど小さく、反応ガスGの下流側(排出管9側)に位置するセル2ほど大きくなるように設定されている。そして、比較的低温となるガス導入側のセル2に相対的に少量の温度調節媒体Wを分配し、比較的高温となるガス排出側のセル2に相対的に多量の温度調節媒体Wを分配するようになっている。
【0021】
このため、発電時に温度調節媒体Wが奪い取る熱量は、ガス導入側のセル2ほど少なくなり、ガス排出側のセル2ほど多くなり、セルスタック構造体1が全体として均一な温度分布となる。したがって、媒体分配口24の断面積を変えるだけの簡単な構成により、セル2の発熱量を個別に調整し、セルスタック構造体1における温度分布のばらつきを抑えることができる。
【0022】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、例えば、一つのセルスタック構造体1において、実施例1のガス通路11と実施例2の媒体通路21とを併用することで、温度分布をさらに効率よく均一化するなど、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、各部の形状や構成を適宜に変更して実施することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施形態を示すセルスタック構造体の斜視図である。
【図2】反応ガスの通路を示すセルスタック構造体の透視図である。
【図3】温度調節媒体の通路を示すセルスタック構造体の透視図である。
【符号の説明】
【0024】
1 セルスタック構造体
2 セル
11 ガス通路
14 ガス分配口
21 媒体通路
24 媒体分配口
G 反応ガス
W 温度調節媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のセルを積層したセルスタック構造体に、反応ガスを各セルに供給するガス通路と、温度調節媒体を各セルに供給する媒体通路とを設けた燃料電池において、
前記ガス通路が反応ガスを複数のセルに別々に分配するガス分配口を備え、各ガス分配口が反応ガスの上流側に位置するセルほど小さくなるように形成されていることを特徴とする燃料電池。
【請求項2】
複数のセルを積層したセルスタック構造体に、反応ガスを各セルに供給するガス通路と、温度調節媒体を各セルに供給する媒体通路とを設けた燃料電池において、
前記媒体通路が温度調節媒体を複数のセルに別々に分配する媒体分配口を備え、各媒体分配口が反応ガスの上流側に位置するセルほど小さくなるように形成されていることを特徴とする燃料電池。
【請求項3】
複数のセルを積層したセルスタック構造体に、反応ガスを各セルに供給するガス通路と、温度調節媒体を各セルに供給する媒体通路とを設けた燃料電池において、
前記ガス通路が反応ガスを複数のセルに別々に分配するガス分配口を備え、各ガス分配口が反応ガスの上流側に位置するセルほど小さくなるように形成され、前記媒体通路が温度調節媒体を複数のセルに別々に分配する媒体分配口を備え、各媒体分配口が反応ガスの上流側に位置するセルほど小さくなるように形成されていることを特徴とする燃料電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−238626(P2009−238626A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−84113(P2008−84113)
【出願日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【出願人】(000124591)河村電器産業株式会社 (857)
【Fターム(参考)】