説明

燃料電池セル及び燃料電池セルスタック

【課題】簡単な構成でシール部材の熱劣化を抑制することができる燃料電池セルを提供する。
【解決手段】単電池1は、高分子電解質膜2b、アノード触媒層3a、カソード触媒層3c、アノード側ガス拡散層5a、カソード側ガス拡散層5cを有する膜電極接合体2と、この膜電極接合体2を挟持し、前記ガス拡散層5a、5cに接触する主面それぞれに反応ガスの流路溝が形成されたアノード側セパレータ4a、カソード側セパレータ4cと、これらの他の主面側に形成された、冷却流体が流通する冷却流体流路11a、11cと、冷却流体流路11a、11cを囲むように配置され、冷却流体の外部への漏れを防止するアノード側冷却流体ガスケット7a、カソード側冷却流体ガスケット7cを備え、高分子電解質膜2bの厚み方向から見て、冷却流体流路11a、11cが形成された領域の外周がアノード触媒層3a、カソード触媒層3cの外周より外側に位置している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、民生用コジェネレーションや移動体用、モバイル用のエネルギー源として有用な燃料電池、特に高分子電解質形燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高効率でクリーンなエネルギー源の開発が求められており、それに対する一つの候補として燃料電池が注目を浴びている。燃料電池は、使用する電解質の種類によって主に4種類の方式に分類される。その方式の中でも特に高分子電解質形燃料電池(PEFC)は、実用化が最も進んでいる方式である。
【0003】
高分子電解質形燃料電池(PEFC)は、水素等の燃料ガスと空気等の酸化剤ガスとをガス拡散電極であるアノード及びカソードにおいてそれぞれ電気化学的に反応させ、電気と熱とを同時に発生させる電池である。このような燃料電池の一般的な基本構成である単電池として、例えば、特許文献1に開示された燃料電池単セルが挙げられる。
【0004】
特許文献1に開示された燃料電池単セルは、主として膜電極接合体(MEA:Membrane Electrode Assembly)と、この膜電極接合体を挟持する一対の板状のセパレータ、即ちアノード側にある第1のセパレータ及びカソード側にある第2のセパレータを備える。
【0005】
膜電極接合体は、アノード電極と、カソード電極と、これらの間に配置された陽イオン(水素イオン)を選択的に輸送する高分子電解質膜とを備えてなる構成である。
【0006】
また、第1のセパレータには、膜電極接合体と接する面に燃料ガスを流通させるための燃料ガス流路溝が形成され、この膜電極接合体の外周部分に対応する面に燃料ガスシール溝が形成されている。一方、第2のセパレータには、膜電極接合体と接する面に酸化ガスを流通させるための酸化剤ガス流路溝が形成され、その面とは反対側となる面には冷却水流路溝が形成されている。そして、第2のセパレータは、膜電極接合体の外周部分に対応する面に、酸化剤ガスシール溝および冷却水シール溝が設けられている。
【0007】
そして、この燃料ガスシール溝、酸化剤ガスシール溝、および冷却水シール溝それぞれにシール部材が設けられている。そして、これらのシール部材によって、燃料ガス、酸化剤ガス、および冷却水それぞれの流体が漏れでないように構成されている。
【0008】
また、上述したような高分子電解質形燃料電池としては、さらに特許文献2、3に開示された燃料電池なども開発されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2005−228500号公報
【特許文献2】特許第4071032号公報
【特許文献3】特許第4197935号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上述のような従来技術では、燃料電池セルにおいて流体の流出を防止するために設けられたシール部材が熱劣化するという問題がある。
【0011】
より具体的には、上述の従来技術は、燃料ガス、酸化剤ガス、および冷却水の流出を防止するためのシール部材として例えばガスケット等を利用している。ガスケットは、Oリング、ゴム状シート、あるいは弾性樹脂と剛性樹脂との複合シート等から形成されており、高温に曝されると熱劣化する。
【0012】
ここで、膜電極接合体を挟持する各セパレータは、電気伝導性が高いという性質を有するとともに、熱伝導性が高いという性質も有している。このため、膜電極接合体の触媒層における発電時に生じる発熱反応の熱は、セパレータにおいて膜電極接合体の外周部分に対応する領域に設けられているシール部材にまで伝わる。それゆえ、結果としてシール部材が高温な発熱反応の熱に晒され、熱劣化してしまうという問題が生じる。
【0013】
本発明は、以上の問題を鑑みてなされたものであり、簡単な構成でシール部材の熱劣化を抑制することが可能な燃料電池セル、および燃料電池セルスタックを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る燃料電池セルは、上記した課題を解決するために、電解質膜と該電解質膜を挟む一対の触媒層と前記電解質膜及び該一対の触媒層を挟む一対のガス拡散層とを有する膜電極接合体と、該膜電極接合体を挟持し、且つ前記一対のガス拡散層に接触する各主面にそれぞれに対応する反応ガスの流路溝が形成された一対の板状のセパレータと、前記一対のセパレータのうちの少なくとも1つの他の主面側に形成された、冷却流体が流通する冷却流体流路と、前記電解質膜の厚み方向から見て、前記冷却流体流路を囲むように配置された、前記冷却流体の外部への漏れを防止するための環状の第1シール部材を備え、前記電解質膜の厚み方向から見て、前記冷却流体流路が形成された領域の外縁が前記触媒層の外縁より外側に位置している。
【0015】
ここで、膜電極接合体は、供給された反応ガス(燃料ガス、酸化剤ガス)を利用して電気化学反応により電気を外部に取り出すためのものである。また、この電気化学反応は発熱反応であるため、発電時にはこの膜電極接合体の触媒層で発熱し、第1シール部材等を熱劣化させる熱源となるものである。
【0016】
上記した構成によると、前記第1シール部材を備えるため、冷却流体流路を流れる冷却流体が外部に漏れることを防ぐことができる。また、この第1シール部材は、電解質膜の厚み方向から見て、冷却流体流路を囲むように配置され、かつこの冷却流体流路が形成された領域の外縁が前記触媒層の外縁より外側に位置している。このため、第1シール部材と熱源となる触媒層との間には冷却流体流路が配置された構成となる。したがって、触媒層において生じた熱は、第1シール部材に伝わるまでにこの冷却流体流路により冷却することができる。これにより、第1シール部材が触媒層において生じた高温の熱に晒されることを防ぐことができ、第一シール部材での熱劣化を抑制することができる。
【0017】
さらにまた、本発明に係る燃料電池セルは、第1シール部材を電解質膜の厚み方向から見て、冷却流体流路が形成された領域の外縁が触媒層の外縁より外側に位置するように配置することで熱源となる触媒層から距離をとる構成である。そして、触媒層と第1シール部材との間に冷却流体流路が配置されるようにした構成である。このように、第1シール部材の熱劣化を防ぐために、特に新たな部材を設けたり、燃料電池セルの構造を複雑な構造に変更したりする必要がない。
【0018】
よって、本発明に係る燃料電池セルは、簡単な構成でシール部材の熱劣化を抑制することができるという効果を奏する。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る燃料電池セルは以上に説明したように構成され、簡単な構成でシール部材の熱劣化を抑制することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態に係る燃料電池の概略構成の一例を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る単電池の概略構成の一例を示す断面図である。
【図3】図2に示す単電池を積層した状態の一例を示す断面図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る単電池の概略構成の一例を示す断面図である。
【図5】変形例1に係る単電池の概略構成の一例を示す断面図である。
【図6】変形例2に係る単電池の概略構成の一例を示す断面図である。
【図7】変形例2の別の形態に係る単電池の概略構成の一例を示す断面図である。
【図8】変形例2の別の形態に係る単電池の概略構成の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。なお、以下では全ての図を通じて同一又は対応する構成部材には同一の参照符号を付して、その説明については省略する。
【0022】
本実施の形態に係る燃料電池は、水素等の燃料ガスと空気等の酸化剤ガスとをガス拡散電極であるアノード(アノード電極)及びカソード(カソード電極)においてそれぞれ電気化学的に反応させ、電気と熱とを同時に発生させる高分子電解質形燃料電池(PEFC)である。
【0023】
このような燃料電池は、燃料電池セルスタックを備えている。図1は、本発明の実施形態に係る燃料電池の概略構成の一例を示す斜視図である。燃料電池セルスタック100は、板形状を有する燃料電池単セル(以下、単電池)1がその厚み方向に積層されてなるセル積層体101と、セル積層体101の両端に配置された第1及び第2の端板21A,21Bとを備えている。この第1及び第2の端板21A,21Bには不図示の集電端子がそれぞれ配設されている。なお、板形状の単電池1は、図1に示すように、厚み方向に広がる面に対して垂直となる方向に立設しており、積層される厚み方向とは、図1では水平方向となる。
【0024】
セル積層体101の一方の側部(第1側部)の上部には、該セル積層体101を積層方向(厚み方向)に貫通する酸化剤ガス供給マニホールド22が形成されている。酸化剤ガス供給マニホールド22の一端は第1の端板21Aに形成された貫通孔に連通し、この貫通孔に酸化剤ガス供給配管41が接続されている。酸化剤ガス供給マニホールド22の他端は第2の端板21Bによって閉鎖されている。また、セル積層体101の他方の側部(第2側部)の下部には、該セル積層体101を積層方向(厚み方向)に貫通する酸化剤ガス排出マニホールド25が形成されている。酸化剤ガス供給マニホールド22の一端は第1の端板21Aによって閉鎖されている。酸化剤ガス排出マニホールド25の他端は第2の端板21Bに形成された貫通孔に連通し、この貫通孔に酸化剤ガス排出配管42が接続されている。
【0025】
セル積層体101の第2側部の上部には、該セル積層体101を積層方向(厚み方向)に貫通する燃料ガス供給マニホールド23が形成されている。燃料ガス供給マニホールド23の一端は第1の端板21Aに形成された貫通孔と連通し、この貫通孔に燃料ガス供給配管43が接続されている。燃料ガス供給マニホールド23の他端は第2の端板21Bによって閉鎖されている。また、セル積層体101の第1側部の下部には、該セル積層体101を積層方向(厚み方向)に貫通する燃料ガス排出マニホールド24が形成されている。燃料ガス排出マニホールド24の一端は第1の端板21Aによって閉鎖されている。燃料ガス供給マニホールド23の他端は第2の端板21Bに形成された貫通孔に連通し、この貫通孔に燃料ガス排出配管44が接続されている。
【0026】
酸化剤ガス供給マニホールド22の上部の内側には、セル積層体101を積層方向(厚み方向)に貫通する冷却水供給マニホールド26が形成されている。冷却水供給マニホールド26の一端は第1の端板21Aに形成された貫通孔に連通し、この貫通孔に冷却水供給配管30が接続されている。冷却水供給マニホールド26の他端は第2の端板21Bによって閉鎖されている。また、酸化剤ガス排出マニホールド25の下部の内側には、セル積層体101を積層方向(厚み方向)に貫通する冷却水排出マニホールド27が形成されている。冷却水排出マニホールド27の一端は第1の端板21Aによって閉鎖されている。冷却水排出マニホールド27の他端は第2の端板21Bに形成された貫通孔に連通し、この貫通孔に冷却水排出配管31が接続されている。
【0027】
上記した構成を有する本実施の形態に係る燃料電池セルスタック100は、単電池1の構造に特徴を有する。そこで、以下において、単電池1の構成について説明する。
【0028】
(単電池の構成)
まず、本実施の形態に係る単電池1の構成について図2、3を参照して説明する。図2は本実施の形態に係る単電池1の概略構成の一例を示す断面図である。図2は、図1に示す燃料電池セルスタック100においてII−II平面に沿って切り出した単電池1の断面図を示す。また、図3は、図2に示す単電池1を積層した状態の一例を示す断面図である。
【0029】
単電池1は、主として膜電極接合体(MEA)2と、膜電極接合体2を挟持する一対の導電性を有する板状のセパレータ(アノード側セパレータ4a及びカソード側セパレータ4c)を備えてなる構成である。
【0030】
単電池1では、図2に示す断面形状において、膜電極接合体2よりもアノード側セパレータ4a及びカソード側セパレータ4cの方が長く突出している。つまり、単電池1の積層方向(膜電極接合体2の高分子電解質膜2bの厚み方向)から見て、アノード側セパレータ4a内、及びカソード側セパレータ4c内に膜電極接合体2が収まるように配置されている。断面形状において突出する部分、つまり、アノード側セパレータ4a及びカソード側セパレータ4cにおいて膜電極接合体2と対応する範囲よりはみ出た部分を、アノード側セパレータ4a及びカソード側セパレータ4cの外縁部と称する。
【0031】
また、図2に示すように、膜電極接合体2は、アノード2aとカソード2cとの間に陽イオン(水素イオン)を選択的に輸送する高分子電解質膜2bが配置された構成を有している。図2に示す断面形状において、膜電極接合体2では、アノード2aとカソード2cよりも高分子電解質膜2bの方が長く、これらより突出している。つまり、単電池1の積層方向から見て、高分子電解質膜2bの範囲内にアノード2a及びカソード2cが収まるように配置されている。断面形状において突出する部分、つまり、高分子電解質膜2bにおいてアノード2a及びカソード2cの範囲よりはみ出る部分を、高分子電解質膜2bの外周部と称する。
【0032】
高分子電解質膜2bとしては、例えば、米国DuPont社製のパーフルオロカーボンスルホン酸からなるNafion(登録商標)112膜)を用いることができる。
【0033】
アノード2aは、触媒層3aとガス拡散層5aとから構成され、両者が密着した状態で配置されている。つまり、触媒層3aは、高分子電解質膜2b側に配置され、当該触媒層3aとアノード側セパレータ4aとの間にガス拡散層5aが配置される。
【0034】
一方、カソード2cは、触媒層3aとガス拡散層5aとから構成され、両者が密着した状態で配置されている。つまり、触媒層3cは、高分子電解質膜2b側に配置され、当該触媒層3cとカソード側セパレータ4cとの間にガス拡散層5cが配置される。
【0035】
触媒層3a、3cは、電極触媒(例えば白金系金属)を担持した導電性炭素粒子(例えばカーボンブラック)を主成分とする層である。
【0036】
ガス拡散層5a、5cは、ガス通気性と導電性を兼ね備えた層である。このガス拡散層5a、5cは、例えば、カーボンペーパー、カーボンフェルト等のカーボンからなる導電性多孔質基材で構成することができる。さらには、ガス拡散層5a、5cは、この導電性多孔質基材の上に、導電性炭素粒子(例えばカーボンブラック)とフッ素樹脂等の撥水性樹脂とを含む導電性撥水層(図示せず)を形成した構成としてもよい。
【0037】
膜電極接合体2の両側に配置されるアノード側セパレータ4a及びカソード側セパレータ4cは、導電性を有し、膜電極接合体2を機械的に固定(挟持)する。また、図3に示すように、隣接する膜電極接合体2同士を互いに電気的に直列に接続して、複数の単電池1を積層し、燃料電池セルスタック100を構成する。なお、アノード側セパレータ4a及びカソード側セパレータ4cは、公知の材料を用いて形成することができる。例えば、アノード側セパレータ4a及びカソード側セパレータ4cを、厚み3mmの樹脂含浸黒鉛板から作製することができる。
【0038】
また、アノード側セパレータ4a及びカソード側セパレータ4cそれぞれには、溝状のガス流路10a、10cが形成されている。ガス流路10aは、アノード2aに燃料ガス(反応ガス)を、ガス流路10cはカソード2cに酸化剤ガス(反応ガス)を供給する流路である。さらにまた、ガス流路10a、10cは、電極反応により生成した生成物や未反応の燃料ガス等を含む排出ガス(反応ガス)を膜電極接合体2の外部に運び去る流路でもある。なお、ガス流路10aは、アノード側セパレータ4aのアノード2aと接する側の面に、ガス流路10cはカソード側セパレータ4cのカソード2cと接する側の面にそれぞれ形成される。
【0039】
また、アノード側セパレータ4a及びカソード側セパレータ4cにおいて、ガス流路10が形成されている主面とは反対側の主面に、溝状の冷却流体流路11a、11cがそれぞれ形成されている。この冷却流体流路11a、11cは単電池1の温度、すなわち、発熱する膜電極接合体2の温度をほぼ一定に調節するための冷却流体(冷却水)を流すための流路である。なお、ガス流路10及び冷却流体流路11の幅や間隔(リブの幅)などは適宜選択される。また、ガス流路10及び冷却流体流路11は、一般に複数本並ぶように形成されるが、その本数、形態(サーペンタイン状、直線状、網目状等)なども適宜選択される。
【0040】
また、単電池1では、反応ガスのガス漏れを防止するために、図2に示すように、一対のアノード側セパレータ4aとカソード側セパレータ4cと間において、高分子電解質膜2bの外周部の周囲に、アノード側ガスケット(第2シール部材)6a及びカソード側ガスケット(第2シール部材)6cが配置される。
【0041】
より具体的には、上述したように、本実施の形態に係る単電池1では、高分子電解質膜2bの方がアノード2a、カソード2cそれぞれよりも面積が大きく、これらアノード2a、カソード2cは高分子電解質膜2bの範囲内に収まって配置されている。そして、アノード2aの端部と高分子電解質膜2bの外周部とアノード側セパレータ4aとの間隙にアノード側ガスケット6aが配置される。同様に、カソード2cの端部と高分子電解質膜2bの外周部とカソード側セパレータ4cとの間隙にカソード側ガスケット6cが配置される。
【0042】
これにより、アノード側セパレータ4aと、高分子電解質膜2bと、アノード側ガスケット6aとにより、アノード2aがシールされる。また、カソード側セパレータ4cと、高分子電解質膜2bと、カソード側ガスケット6cとにより、カソード2cがシールされる。そして単電池1では、これら2つのシール構造によって、アノード2a及びカソード2cに供給される反応ガスのガス漏れの防止が図られている。
【0043】
なお、これらのアノード側ガスケット6a及びカソード側ガスケット6cは、例えば断面形状が略矩形もしくは略楕円形の環状体に形成されている。これらアノード側ガスケット6a及びカソード側ガスケット6cは、例えばOリング、ゴム状シート、弾性樹脂と剛性樹脂との複合体等で構成される。
【0044】
また、本実施の形態に係る単電池1では、上述したように、膜電極接合体2(特には触媒層3a、3c)は、アノード側セパレータ4aまたはカソード側セパレータ4cよりも面積が小さい。そして、膜電極接合体2(特には触媒層3a、3c)は、アノード側セパレータ4aまたはカソード側セパレータ4cの範囲内に収まる大きさとなっている。
【0045】
また、図2に示すように、アノード側セパレータ4aおよびカソード側セパレータ4cの外周部でかつ、冷却流体流路11a、11cが形成されている側の面には、溝が形成されている。そして、この溝に冷却流体が外部に漏れないようにするためのガスケットである冷却水ガスケット(第1シール部材)7a、7cが配置される。冷却水ガスケット7a、7cもアノード側ガスケット6a及びカソード側ガスケット6cと同様に、たとえばOリング、ゴム状シート、弾性樹脂と剛性樹脂との複合体等で構成される。
【0046】
ところで、本実施の形態に係る単電池1では、特に、冷却水ガスケット7a、7cが配置される位置と、冷却流体流路11a、11cが設けられる位置と、アノード2aおよびカソード2cが配置される範囲との位置関係に特徴がある。そこで、これらの位置関係が明確となるように図2では、Aにより、アノード2aおよびカソード2cの端部位置を示している。また、Bによりアノード側ガスケット6aおよびカソード側ガスケット6cが配置される位置を示している。また、Cにより冷却水ガスケット7a、7cが配置されている位置を示している。
【0047】
ここで、単電池1では、A−A間、すなわち、アノード2aの触媒層3aおよびカソード2cの触媒層3cが配置されている範囲(領域)で発電反応が行なわれ、この範囲で発熱する。そして、熱は、熱伝導性の高いアノード側セパレータ4aおよびカソード側セパレータ4cを通じて冷却水ガスケット7a、7cに伝わる。
【0048】
しかしながら、本実施の形態に係る単電池1では、図2に示すように冷却水ガスケット7a、7cは、アノード側セパレータ4a、カソード側セパレータ4cそれぞれの外縁部に配置されている。このため、触媒層3a、3cそれぞれと冷却水ガスケット7a、7cそれぞれとは所定間隔だけ隔てられることとなる。
【0049】
また、触媒層3a、3cそれぞれと冷却水ガスケット7a、7cそれぞれとの間には図2に示すように、冷却流体流路11a、11cが配置されている。つまり、アノード側セパレータ4a、カソード側セパレータ4cの外縁部に設けられたれ冷却水ガスケット7a、7cと触媒層3a、3cとは、冷却流体流路11a、11cを間に挟んで所定距離だけ離れた位置関係となる。
【0050】
このため、アノード側セパレータ4a、カソード側セパレータ4cを通じて冷却水ガスケット7a、7cに伝わる熱は、冷却水ガスケット7a、7cに達するまでに冷却流体流路11a、11cを流れる冷却流体により冷やされる。それゆえ、発熱反応の熱による冷却水ガスケット7a、7cの過剰な温度上昇を防ぎ、熱劣化を抑制することができる。そのため、本実施の形態に係る単電池1は、冷却流体が外部に流出しない、耐久性の高い単電池を実現する。
【0051】
なお、燃料電池セルスタック100は、特に図示していないが断熱材で覆われているため、冷却水ガスケット7a、7cを触媒層3a、3cからできるだけ離れた位置に配置したとしても発熱反応による熱が高温のまま伝わってしまう可能性がある。そこで、本実施の形態に係る単電池1は、発熱反応による熱が冷却水ガスケット7a、7cに高温のまま伝わらないように、冷却流体流路11a、11cを流れる冷却流体によって冷却できる構成としている。
【0052】
さらにまた、本実施の形態に係る単電池1では、図2のBに示すように、積層方向から見て、アノード側ガスケット6aおよびカソード側ガスケット6cが、冷却流体流路11a、11cと重なる位置となる。
【0053】
なお、単電池1では、前記膜電極接合体2全体を一様に冷却できるように、アノード側セパレータ4aおよびカソード側セパレータ4cにおいて一方向に延伸した冷却流体流路11a、11cが、所定間隔で配置されるように構成されている。
【0054】
ところで、アノード側ガスケット6a及びカソード側ガスケット6cも、熱源となる触媒層3a、3cに接していることから、熱劣化する可能性が高い。そこで、アノード側ガスケット6aおよびカソード側ガスケット6cそれぞれについて単電池1の積層方向からみて重なる位置に、冷却流体流路11a、11cが形成されている。
【0055】
これにより、触媒層3a、3cの反応熱により、アノード側ガスケット6aおよびカソード側ガスケット6cが温度上昇することを防止することができる。よって、本実施の形態に係る単電池1では、発熱反応によるアノード側ガスケット6aおよびカソード側ガスケット6cの熱劣化をさらに抑制でき、耐久性の高い単電池を提供することができる。
【0056】
以上のように、単電池1は、高分子電解質膜2bの厚み方向から見て、アノード触媒層3a領域の外周(外縁)よりも冷却流体流路11aが形成される領域の外周(外縁)の方が外側に位置し、前者の領域面積よりも後者の領域面積の方が大きくなる構成である。同様にカソード触媒層3cの外周(外縁)よりも冷却流体流路11cが形成される領域の外周(外縁)の方が外側に位置し、前者の領域面積よりも後者の領域面積の方が大きくなる構成である。さらに、アノード側ガスケット6aおよびカソード側ガスケット6cと積層方向から見て重なる位置に冷却流体流路11a、11cが形成された構成であった。
【0057】
しかしながら、単電池1は、この構成に限定されるものではない。例えば、冷却水ガスケット7a、7cの熱劣化を主として防止することだけを目的とする場合は、高分子電解質膜2bの厚み方向から見て、アノード触媒層3aおよびカソード触媒層3cの領域の外周よりも冷却流体流路11a、11cが形成される領域の外周の方が外側に位置していればよい。つまり、アノード側セパレータ4a及びカソード側セパレータ4cの外縁部において冷却水ガスケット7a、7cと、触媒層3a、3cとの間に冷却流体流路11a、11cが配置されていればよい。
【0058】
ただし、本実施の形態に係る単電池1のように、冷却流体流路11a、11cが、さらにアノード側ガスケット6a、カソード側ガスケット6cそれぞれと積層方向から見て重なる位置に配置された構成の方が、これらのガスケットの温度上昇も抑制できるため好適である。
【0059】
なお、本実施の形態に係る単電池1では、図2に示すように、冷却流体流路11a、11cをアノード側セパレータ4a、およびカソード側セパレータ4cにおいて所定間隔(リブの幅)で配していたがこれに限定されるものではない。
【0060】
例えば、図4に示すように、アノード側セパレータ4a、カソード側セパレータ4cそれぞれにおいて各冷却流体流路11a、11c間は、α−αの一定間隔で冷却流体流路11a、11cが形成される。しかしながら、アノード側ガスケット6aと冷却流体流路11aとの間、またはカソード側ガスケット6cと冷却流体流路11cとの間は、β−βの間隔となり両者が近接した位置関係となるように形成してもよい。なお、図4は、本実施の形態に係る単電池1の概略構成の一例を示す断面図である。
【0061】
このように、アノード側ガスケット6aと冷却流体流路11aとの間、またはカソード側ガスケット6cと冷却流体流路11cとの間を近接させた構成とすることで、以下のように冷却水ガスケット7a、7cの過剰な温度上昇を抑制することができる。すなわち、上述したように触媒層3a、3cから冷却水ガスケット7a、7cに伝わる熱は、冷却流体流路11a、11cを流れる冷却流体により冷やされる。また、冷却水ガスケット7a、7c自身の温度上昇も冷却流体流路11a、11cを流れる冷却流体により冷やされる。このため、冷却水ガスケット7a、7cの過剰な温度上昇が起こらず、熱劣化を効果的に抑制できる。なお、β−β間の距離は0.5mm〜1.5mmであることが好適である。
【0062】
また、本実施の形態に係る単電池1では、冷却流体流路11a、11cをアノード側セパレータ4aおよびカソード側セパレータ4cの両方に設ける構成であったが、どちらか一方のセパレータにのみ設けられる構成であってもよい。
【0063】
以上のように、本実施の形態に係る単電池1では、熱源であるアノード2aの触媒層3aおよびカソード2cの触媒層3cの端部よりも外側に突出したアノード側セパレータ4a、カソード側セパレータ4cの外縁部に冷却水ガスケット7a、7cが配置されている。そして、この冷却水ガスケット7a、7cとアノード2aの触媒層3a、カソード2cの触媒層3cの間に冷却流体流路11a、11cが設けられた構成である。
【0064】
このため、熱源である触媒層3a、3cからの熱を、冷却水ガスケット7a、7cに伝わるまでの間に、この冷却流体流路11a、11cを流れる冷却流体によって冷却することができる。
【0065】
したがって、冷却水ガスケット7a、7cの過剰な温度上昇を防ぎ、冷却水ガスケット7aの熱劣化を抑制することができる。さらに、冷却流体流と11a、11cとアノード側ガスケット6a、カソード側ガスケット6cとを単電池1の積層方向において重なる位置に配置することで、これらのガスケットを冷却することができる。よって、アノード側ガスケット6a、カソード側ガスケット6cの過剰な温度上昇を防ぎ、熱劣化を抑制することができる。
【0066】
さらに、以下において本実施形態の変形例を説明する。
【0067】
(変形例1)
本実施の形態に係る単電池1の構成において、高分子電解質膜2bの外周部を囲う環状の枠体8が設けられている構成としてもよい。そして、アノード側ガスケット9aを枠体8とアノード側セパレータ4aとの接合面に形成し、カソード側ガスケット9cを枠体8とカソード側セパレータ4cとの接合面に形成する構成としてもよい。
【0068】
すなわち、図5に示すように、変形例1に係る単電池1は、枠体8により膜電極接合体2の外周を覆うように構成されている。図5は、変形例1に係る単電池1の概略構成の一例を示す断面図である。そして、さらに枠体8とアノード側セパレータ4aおよびカソード側セパレータ4cとの接合部分を通じて反応ガスが漏れるのを防ぐために、アノード側ガスケット9a、カソード側ガスケット9cが配置されている。
【0069】
このため、膜電極接合体2から反応ガス(燃料ガス、酸化剤ガス等)が漏れ出ることを防ぐことができる。
【0070】
また、このような構成において、熱源であるアノード2aの触媒層3aとカソード2cの触媒層3cとに枠体8が接しており、アノード側ガスケット9a、カソード側ガスケット9cそれぞれも熱に晒されることとなる。
【0071】
そこで、このような構成の場合、単電池1の積層方向(高分子電解質膜2bの厚み方向)からみてアノード側ガスケット9aと冷却流体流路11aとが重なるように配置される。また、単電池1の積層方向からみてカソード側ガスケット9cと冷却流体流路11cとが重なるように配置される。このような構成とすることで、枠体8に設けられたアノード側ガスケット9a、カソード側ガスケット9cそれぞれの過剰な温度上昇を防ぎ、熱劣化を抑制することができる。
【0072】
(変形例2)
また、本実施の形態に係る単電池1の構成において、アノード側セパレータ4a、カソード側セパレータ4cそれぞれを2枚のセパレータにより形成した構成としてもよい。
【0073】
すなわち、変形例2に係る単電池1では、図6に示すように、アノード側セパレータ4aは、ガス流路10aが形成された第1アノード側セパレータ12aと冷却流体流路11aが形成された第2アノード側セパレータ12bとから構成される点で図2に示す単電池1と異なる。
【0074】
同様にカソード側セパレータ4cは、ガス流路10cが形成された第1カソード側セパレータ13aと冷却流体流路11cが形成された第2カソード側セパレータ13bとから構成される点で図2に示す単電池1と異なる。
【0075】
なお、図6は、変形例2に係る単電池1の概略構成の一例を示す断面図である。
【0076】
上記した構成において、第1アノード側セパレータ12aと第1カソード側セパレータ13aとによって膜電極接合体2を挟持する。そして、第1アノード側セパレータ12aにおける膜電極接合体2と接しない側の面に第2アノード側セパレータ12bが積層される。同様に、第1カソード側セパレータ13aにおける膜電極接合体2と接しない側の面に第2カソード側セパレータ13bが積層される。
【0077】
また、第2アノード側セパレータ12bにおける第1アノード側セパレータ12aと接する側の面には、冷却流体流路11aとアノード側の冷却水ガスケット7aを嵌めこむための溝とが形成される。同様に、第2カソード側セパレータ13bにおける第1カソード側セパレータ13aと接する側の面には、冷却流体流路11cとカソード側の冷却水ガスケット7cを嵌めこむための溝とが形成される。
【0078】
冷却水ガスケット7aおよび冷却水ガスケット7cを嵌めこむための溝は、図2に示す単電池1と同様に、アノード側セパレータ4aおよびカソード側セパレータ4cそれぞれの外縁部に形成される。より具体的には、図6に示すように、第2アノード側セパレータ12bおよび第2カソード側セパレータ13bにおける、膜電極接合体2と対応する領域外となる部分(外縁部)に設けられる。
【0079】
また、第2アノード側セパレータ12bおよび第2カソード側セパレータ13bそれぞれの外縁部において、冷却水ガスケット7aと膜電極接合体2との間、カソード側冷却流体ガスケット7cと膜電極接合体2との間には、冷却流体流路11a、11cが形成される。そして、この冷却流体流路11a、11cは、積層方向から見てアノード側ガスケット6a、カソード側ガスケット6cと重なる位置となるように配置される。
【0080】
以上のように構成することで、アノード側セパレータ4a、カソード側セパレータ4cをそれぞれ2枚のセパレータにより構成した場合であっても、図2に示す単電池1と同様に冷却水ガスケット7a、冷却水ガスケット7cの熱劣化を抑制できる。
【0081】
また、上記した構成することで、アノード側セパレータ4a、カソード側セパレータ4cをそれぞれ2枚のセパレータにより構成した場合であっても図2に示す単電池1のように以下のような構成とすることもできる。
【0082】
すなわち、図7に示すように第2アノード側セパレータ12b、第2カソード側セパレータ13bそれぞれにおいて、冷却流体流路11aと冷却水ガスケット7a、冷却流体流路11cと冷却水ガスケット7cとの間の距離を近接させた構成としてもよい。
【0083】
また、図8に示すように、図5の変形例1に係る単電池1と同様に、枠体8を備え、枠体8とアノード側セパレータ4a、カソード側セパレータ4cとの接合部にアノード側ガスケット9a、カソード側ガスケット9cを設ける構成としてもよい。そして、冷却流体流路11a、11cが、積層方向から見てアノード側ガスケット9a、カソード側ガスケット9cと重なる位置となるように配置される構成としてもよい。
【0084】
上記説明から、当業者にとっては、本発明の多くの改良や他の実施形態が明らかである。従って、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本発明を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本発明の精神を逸脱することなく、その構造及び/又は機能の詳細を実質的に変更できる。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明の高分子電解質形燃料電池は、自動車などの移動体、分散型(オンサイト型)発電システム(家庭用コジェネレーションシステム)などの主電源又は補助電源として好適に利用されることが期待される。
【符号の説明】
【0086】
1 単電池
2 膜電極接合体
2a アノード
2b 高分子電解質膜
2c カソード
3a アノード触媒層
3c カソード触媒層
4a アノード側セパレータ
4c カソード側セパレータ
5a アノード側ガス拡散層
5c カソード側ガス拡散層
6a アノード側ガスケット
6c カソード側ガスケット
7a アノード側冷却流体ガスケット
7c カソード側冷却流体ガスケット
8 枠体
9a アノード側ガスケット
9c カソード側ガスケット
10a ガス流路
10c ガス流路
11a 冷却流体流路
11c 冷却流体流路
12a 第1アノード側セパレータ
12b 第2アノード側セパレータ
13a 第1カソード側セパレータ
13b 第2カソード側セパレータ
100 燃料電池セルスタック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解質膜と該電解質膜を挟む一対の触媒層と前記電解質膜及び該一対の触媒層を挟む一対のガス拡散層とを有する膜電極接合体と、
該膜電極接合体を挟持し、且つ前記一対のガス拡散層に接触する各主面にそれぞれに対応する反応ガスの流路溝が形成された一対の板状のセパレータと、
前記一対のセパレータのうちの少なくとも1つの他の主面側に形成された、冷却流体が流通する冷却流体流路と、
前記電解質膜の厚み方向から見て、前記冷却流体流路を囲むように配置された、前記冷却流体の外部への漏れを防止するための環状の第1シール部材と、を備え、
前記電解質膜の厚み方向から見て、前記冷却流体流路が形成された領域の外縁が前記触媒層の外縁より外側に位置している燃料電池セル。
【請求項2】
前記冷却流体流路が形成された領域の面積は、前記触媒層の面積よりも大きい請求項1に記載の燃料電池セル。
【請求項3】
前記一対のセパレータのうちの少なくとも1つのセパレータにおける他の主面側において複数の前記冷却流体流路が互いに並んで形成されており、
隣接する前記冷却流体流路間の間隔よりも前記冷却流体流路と前記第1シール部材との間の間隔の方が小さい請求項1または2に記載の燃料電池セル。
【請求項4】
前記電解質膜の厚み方向から見て、前記一対の触媒層を囲むように配置された、前記反応ガスの外部への漏れを防止するための環状の第2シール部材を備え、
前記電解質膜の厚み方向からみて、前記第2シール部材と重なる位置に前記冷却流体流路が形成されている請求項1から3のいずれか1項に記載の燃料電池セル。
【請求項5】
前記一対のセパレータによって挟まれ、前記膜電極接合体の外周を囲む環状の枠体をさらに備え、
前記第2シール部材が、前記セパレータと前記枠体との接合面に配置されている請求項4に記載の燃料電池セル。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の複数の燃料電池セルが前記電解質膜の厚み方向に積層されている燃料電池セルスタック。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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