説明

燃料電池セル

【課題】発電体10とその一側に配置されたセパレータ20が、ガスケット30を介して一体化された燃料電池セル1において、ガスケット30を一体成形することに起因する発電体10及びセパレータ20の強度低下や劣化、及び発電効率の低下を防止する。
【解決手段】電解質膜の両面に電極層を設けた膜−電極複合体11の厚さ方向両側にガス拡散層12,13を積層一体化した発電体10と、この発電体10の一側に配置されるセパレータ20と、発電体10の縁部に沿って配置されると共にセパレータ20に接着剤34を介して接着されるゴム状弾性材料からなるガスケット30とを備え、このガスケット30に、発電体10をセパレータ20に係止する係止部33を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膜−電極複合体及びその厚さ方向両側に積層された多孔質の第一ガス拡散層からなる発電体と、これに積層されるセパレータとを、ガスケットを介して一体化した燃料電池セルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
図8は、従来の燃料電池セルを積層した燃料電池の一部を示す断面図、図9は、図8の燃料電池を構成する従来の燃料電池セルの一部を示す断面図である。
【0003】
図8に示されるように、燃料電池は、多数の燃料電池セル100を積層して締結したスタック構造を有する。各燃料電池セル100としては、図9に示されるように、電解質膜(イオン交換膜)の両面に一対の電極層を設けた膜−電極複合体(MEA:Membrane Electrode Assembly)111の厚さ方向両側に、多孔質体からなるガス拡散層(GDL:Gas Diffusion Layer)112,113を積層一体化した発電体110と、その一側に配置され、カーボンあるいは導電性金属からなるセパレータ120を積層したものが知られている。
【0004】
この種の燃料電池は、各燃料電池セル100において、酸化ガス(空気)が、発電体110におけるガス拡散層112,113のうちの一方を介して膜−電極複合体111のカソード側に供給され、燃料ガス(水素)が、ガス拡散層112,113のうちの他方を介して膜−電極複合体111のアノード側に供給され、水の電気分解の逆反応、すなわち水素と酸素から水を生成する反応によって電力を発生するものである。また、各燃料電池セル100の起電力は低いものであるが、多数の燃料電池セル100を積層して電気的に直列に接続することにより、必要な起電力が得られるようになっている。
【0005】
発電体110の端縁部や開口縁部には、燃料ガスや酸化ガス、その反応によって生成した水や余剰ガスなどが外部へ漏れたり混合したりしないように、ゴム状弾性材料(ゴム系材料あるいはゴム状弾性を有する合成樹脂系材料)からなるガスケット130が配置されている。
【0006】
ガスケット130は、その成形に際してゴム系又は樹脂系の低粘度又は液状の成形材料の一部を発電体110におけるガス拡散層112,113の縁部(周縁部及び開口縁部)に含浸させると共に、予め接着剤を塗布したセパレータ120に接触させた状態で、前記成形材料を硬化させることによって、ガス拡散層112,113に形成された含浸領域112a,113aを介して発電体110に一体的に接合され、かつセパレータ120にも接着一体化されたものとなっている。そしてこのガスケット130は、図9に示されるように山形の主シールリップ130aを有し、この主シールリップ130aが、図8に示される積層状態では積層荷重によってつぶされ、隣接する燃料電池セル100のセパレータ120に密接されることによって、所要の密封機能を奏する。
【0007】
なお、ガスケットをガス拡散層及びセパレータに成形材料の含浸領域を介して一体化する技術としては、下記の特許文献に開示されたものが知られている。
【0008】
ところが、上述のように構成された燃料電池セル100は、発電体110及びセパレータ120が、ガスケット130を介して一体化された構造となるため、部品数が少なくなると共に、積層ずれなどが発生しにくいものとすることができるが、その反面、発電体110及びセパレータ120を金型内に配置してガスケット130を一体成形する際に、これら発電体110及びセパレータ120が型締めによる機械的ダメージや、金型の加熱による熱的ダメージを受けることが懸念される。特に、膜−電極複合体111における電解質膜の熱的ダメージを防止することは重要であり、このため成形条件が制約される問題があった。
【0009】
また、金属多孔質体などからなるガス拡散層112,113の縁部に、成形材料の一部を含浸させながらガスケット130を成形する際には、成形材料の充填圧力や粘度等を一定にしても、ガス拡散層112,113の気孔率(空隙率)にはバラつきがあるため、成形材料の含浸領域112a,113aの大きさを適切にコントロールすることが困難である。その結果、含浸領域112a,113aが狭すぎる場合はガスケット130と発電体110との接合強度の低下やガスの浸透漏れに対するシール性の低下を来たし、逆に含浸領域112a,113aが広すぎる場合は、その分、発電体110における発電領域110a(図9参照)が狭くなって、発電効率の低下を来たす問題があった。
【0010】
このため、金型の内面に突起を形成して、型締めの際にガス拡散層112,113の一部を前記突起で圧縮することによって成形材料の含浸を制限する方法や、予めガス拡散層112,113に、成形材料の含浸を制限するための目止め処理を行う方法が考えられるが、前者の方法ではガス拡散層112,113が圧縮によってダメージを受けるおそれがあり、後者の方法ではガス拡散層112,113に目止め処理を行う工程が必要になる。
【0011】
さらに、水素と酸素の反応による発電過程で生成される水の排出性を良好にするためには、セパレータ120の表面には適度な濡れ性が求められるが、ガスケット130を一体成形した場合、加硫の際に発生するガスがセパレータ120の表面の濡れ性に悪影響を与えるおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2002−160257号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、以上のような点に鑑みてなされたものであって、その技術的課題は、膜−電極複合体及びガス拡散層からなる発電体とその一側に配置されたセパレータが、ガスケットを介して一体化された燃料電池セルにおいて、前記発電体及びセパレータの強度低下や熱による劣化、及び発電効率の低下を防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上述した技術的課題を有効に解決するための手段として、本発明に係る燃料電池セルは、電解質膜の両面に電極層を設けた膜−電極複合体の厚さ方向両側にガス拡散層を積層一体化した発電体と、この発電体の一側に配置されるセパレータと、前記発電体の縁部に沿って配置されると共に前記セパレータに接着剤を介して接着されるゴム状弾性材料からなるガスケットとを備え、このガスケットに、前記発電体を前記セパレータに係止する係止部を形成したものである。
【0015】
なお、ここでいう「発電体の縁部」とは、発電体の外周縁部や開口縁部を総称するものであり、「ゴム状弾性材料」とは、ゴム系材料あるいはゴム状弾性を有する合成樹脂系材料をいう。
【0016】
また、上記構成において一層好ましくは、係止部が、発電体の他側のガス拡散層から露出させた膜−電極複合体に適当な面圧で密接されるシール面と、当該燃料電池セルの積層状態において前記発電体の他側に位置するセパレータに適当な面圧で密接されるシール面を有するものである。
【発明の効果】
【0017】
請求項1の発明に係る燃料電池セルによれば、ガスケットを発電体のガス拡散層に含浸成形により一体成形することなく発電体とセパレータとガスケットを一体に有する構造とすることができる。このため、膜−電極複合体及びガス拡散層からなる発電体とその一側に配置されたセパレータが、ガスケットの一体成形の際の型締めによる強度低下や、熱による悪影響を受けるおそれがなく、セパレータの濡れ性の悪化を来たすおそれがなく、ガスケット成形材料の含浸による発電効率の低下を来たすこともない。
【0018】
また、請求項2の発明に係る燃料電池セルによれば、燃料電池セルの積層状態において、ガスケットの係止部が発電体の膜−電極複合体とセパレータの間に密接された状態で、ガスケットが発電体の縁部を覆った構造となるため、ガス拡散層から反応ガスが膜−電極複合体の縁部を回り込んでクロスリークするのを有効に遮断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る第一の形態の燃料電池セルを積層した燃料電池を示す部分断面図である。
【図2】本発明に係る第一の形態の燃料電池セルを示す組み立て前の状態の部分断面図である。
【図3】本発明に係る第一の形態の燃料電池セルを示す組み立て状態の部分断面図である。
【図4】本発明に係る第二の形態の燃料電池セルを示す組み立て前の状態の部分断面図である。
【図5】本発明に係る第二の形態の燃料電池セルを示す組み立て状態の部分断面図である。
【図6】本発明に係る第三の形態の燃料電池セルを示す組み立て前の状態の部分断面図である。
【図7】本発明に係る第三の形態の燃料電池セルを示す組み立て状態の部分断面図である。
【図8】従来の燃料電池セルを積層した燃料電池を示す部分断面図である。
【図9】従来の燃料電池セルを示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る燃料電池セルについて、図面を参照しながら詳細に説明する。まず図1は、第一の形態の燃料電池セルを積層した燃料電池を示す部分断面図、図2は、第一の形態の燃料電池セルを示す組み立て前の状態の部分断面図、図3は、第一の形態の燃料電池セルを示す組み立て状態の部分断面図である。
【0021】
図1に示される燃料電池は、多数の燃料電池セル1を積層して締結したスタック構造を有する。各燃料電池セル1は、図2に示されるように、電解質膜(イオン交換膜)の両面に一対の電極層(アノード及びカソード)を設けた膜−電極複合体(MEA:Membrane Electrode Assembly)11の厚さ方向両側に、金属多孔質体等からなるガス拡散層(GDL:Gas Diffusion Layer)12,13を積層一体化した発電体10と、その一側に配置され、カーボンあるいは導電性金属からなるセパレータ20と、発電体10の縁部に沿って配置されると共に前記セパレータ20に接着剤34を介して接着されるゴム系材料あるいはゴム状弾性を有する合成樹脂系材料からなるガスケット30とを備える。
【0022】
セパレータ20には、反応ガスすなわち燃料ガス及び酸化ガスを発電体10における膜−電極複合体11のアノード側及びカソード側に供給し、あるいは燃料ガスと酸化ガスの電気化学的反応による生成水を排出し、あるいは冷却水を供給・排出させるためのマニホールド孔が開設されている。そして発電体10におけるガス拡散層12,13は、セパレータ20の供給側マニホールド孔と排出側マニホールド孔の間で、燃料ガス及び酸化ガスを流通させるガス流路をなすものである。
【0023】
発電体10はセパレータ20よりも面積が小さく、すなわちこの発電体10の外周縁部あるいはマニホールド孔の周囲に位置する縁部は、セパレータ20の縁部(外周縁部あるいはマニホールド孔の開口縁部)20aより一定幅w1だけ後退している。
【0024】
発電体10における膜−電極複合体11及びその一側のガス拡散層12は互いに同一面積であって、その縁部11a,12aが互いに揃っているのに対し、他側のガス拡散層13は、前記膜−電極複合体11及びガス拡散層12よりも面積がやや小さく、他側のガス拡散層13の外周縁部あるいはマニホールド孔の周囲に位置する縁部13aは、膜−電極複合体11及びガス拡散層12の縁部11a,12aより一定幅w2だけ後退している。このため、発電体10の縁部は段差状をなしていて、膜−電極複合体11の縁部11aは、他側のガス拡散層13の縁部13aから張り出して露出している。
【0025】
ガスケット30は、不図示の金型によって発電体10及びセパレータ20とは別部材として成形されたものであって、発電体10の縁部に沿って延在されると共にセパレータ20に接着により一体化されている。このガスケット30をなすゴム系材料あるいはゴム状弾性を有する合成樹脂系材料としては、成分の溶出性が少なく、燃料電池内部の使用環境で所要の耐性を有するものであればとくに制限はないが、例えばFKM(フッ素ゴム)、VMQ(シリコーンゴム)、EPDM(エチレンプロピレンゴム)などが好適に採用可能である。
【0026】
そしてこのガスケット30は、セパレータ20における縁部20aに沿った部分の片面に接着剤34を介して一体的に接着される基部31と、この基部31における接着面と反対側に断面山形に隆起形成された主シールリップ32と、前記基部31における発電体10側の側面上部から延びる係止部33とを有する。ガスケット30の基部31の上面には、主シールリップ32の両側に沿って延びる谷部31a,31bが形成されている。
【0027】
ガスケット30の基部31は、セパレータ20の縁部20aと、それより幅w1だけ後退した発電体10の膜−電極複合体11及びその一側のガス拡散層12の縁部11a,12aとによる段差部に収まる大きさとなっており、その高さh1は、発電体10の厚さtとほぼ等しく、主シールリップ32の高さh2は、発電体10の厚さtより適宜大きく、係止部33は、発電体10における膜−電極複合体11の縁部11aと、それより幅w2だけ後退した他側のガス拡散層13の縁部13aとによる段差部に収まる大きさとなっている。
【0028】
また、係止部33には、図1に示される燃料電池セル1の積層状態において発電体10の膜−電極複合体11の縁部11aに適当なつぶし代で密接されるビード状のシール面33aと、隣接する燃料電池セル1のセパレータ20に密接される平坦なシール面33bが形成されている。
【0029】
以上の構成を備える第一の形態によれば、ガスケット30は、発電体10及びセパレータ20とは別部材として成形される。このため、先に説明したような含浸成形と異なり、使用すべきゴム系又は樹脂系の成形材料の粘度などの制約がなくなり、材料選定の自由度を高めることができ、成形材料の加硫の際に発生するガスがセパレータ20の表面やガス拡散層12,13の濡れ性に悪影響を与えるおそれもない。しかも、発電体10における膜−電極複合体11の耐熱性を考慮する必要がないため、加硫時の成形温度を高温(例えば150℃以上)に設定して短時間で成形することが可能になり、生産性の向上を図ることができる。
【0030】
また、先に説明したような含浸成形のように、予めガス拡散層12,13に成形材料の予備含浸による目止め処理を行う必要がないので、工程の増大を来たさず、しかもガス拡散層12,13が目止め部の加硫のための余計な熱履歴を受けることもなく、ガス拡散層12,13が金型の型締めによる機械的ダメージを受けることもない。
【0031】
燃料電池セル1の組み立てに際しては、まず図2に示される組み立て前の状態から、発電体10をセパレータ20上に位置決めして載せる。次に、ガスケット30の基部31における主シールリップ32と反対側の面に破線で示される接着剤34を塗布し、この基部31を発電体10の縁部から張り出したセパレータ20の縁部20aの上面20bに接着する。このとき、ガスケット30をセパレータ20に接着するのに必要な荷重は、ガスケット30をセパレータ20に一体成形するための型締め圧力に比較すると十分に小さなもので良いため、セパレータ20の変形を来たすことはない。また、接着剤34の材料としては特に制約はないが、例えばゴム糊系やエポキシ系などの接着剤が好適に採用可能である。
【0032】
そして上述のように、ガスケット30の基部31をセパレータ20に接着することによって、前記基部31から延在された係止部33のビード状のシール面33aが発電体10の膜−電極複合体11の縁部11aに当接するので、この発電体10は、膜−電極複合体11の縁部11a及びその一側のガス拡散層12の縁部12aが、セパレータ20と係止部33の間に挟持された状態となって係止され、図3に示されるように発電体10とセパレータ20がガスケット30を介して一体化された燃料電池セル1が得られる。
【0033】
このように組み立てられた燃料電池セル1は、図1に示されるように、厚さ方向に多数積層すると共に電気的に直列に接続することによって、燃料電池スタックとして組み立てられる。
【0034】
そしてこの燃料電池スタックは、各燃料電池セル1において、酸化ガス(空気)が、発電体10におけるガス拡散層12,13のうち一方を介して膜−電極複合体11のカソード側に供給され、燃料ガス(水素)が、発電体10におけるガス拡散層12,13のうち他方を介して膜−電極複合体11のアノード側に供給され、水の電気分解の逆反応、すなわち水素と酸素から水を生成する電気化学的反応によって電力を発生するものであり、この電力が、集電板であるセパレータ20を介して取り出されるようになっている。
【0035】
ここで、各燃料電池セル1のガスケット30は、隣接する他の燃料電池セル1におけるセパレータ20の縁部20aに、主シールリップ32が適当につぶれた状態で密接されることによって、不図示のマニホールド孔やガス拡散層12,13による流路内を流れる酸化ガスや燃料ガスなどが漏洩するのを防止する密封機能を奏するものである。そして、主シールリップ32の圧縮による応力は、両側の谷部31a,31bによってある程度吸収されるので、主シールリップ32のヘタリによる経時的な密封性の低下を抑制することができる。
【0036】
また図1に示される燃料電池セル1の積層状態では、各ガスケット30における係止部33は、発電体10の膜−電極複合体11の露出縁部11aと、隣接する燃料電池セル1のセパレータ20の間にシール面33a,33bにおいて密接状態に介在し、この係止部33と、基部31によって、発電体10の縁部、すなわち膜−電極複合体11及びガス拡散層12,13の縁部11a,12a,13aを遮蔽しているため、一側のガス拡散層12の縁部12a及び他側のガス拡散層13の縁部13aから、酸化ガスと燃料ガスが膜−電極複合体11の縁部11aを回り込むようにして互いにクロスリークするのを有効に防止することができる。
【0037】
さらに、この燃料電池セル1によれば、発電体10のガス拡散層12,13に、従来のような成形材料の含浸領域が存在しないため、図3に示されるように、ガスケット30の係止部33のビード状シール面33aで囲まれた領域全体を発電領域10aとすることができる。したがって、広い発電領域10aを確保して発電効率を向上することができる。
【0038】
次に図4は、本発明に係る第二の形態の燃料電池セルを示す組み立て前の状態の部分断面図、図5は、同じく第二の形態の燃料電池セルを示す組み立て状態の部分断面図である。
【0039】
この第二の形態の燃料電池セル1において、先に説明した第一の形態と異なるところは、ガスケット30の係止部33のうち、発電体10の膜−電極複合体11と反対側を向いたシール面33bを、発電体10の上面(他側のガス拡散層13の上面)より高く隆起したかまぼこ型の凸面状に形成したことにある。その他の部分は、基本的に第一の形態と同様に構成されている。
【0040】
この形態による燃料電池セル1も、基本的には第一の形態と同様の効果を奏するものである。そして図1のように積層した状態において、ガスケット30の係止部33は、ビード状のシール面33aが発電体10の膜−電極複合体11の縁部11aに適当なつぶし代で密接されると共に、その反対側の凸面状のシール面33bが、隣接する燃料電池セル1のセパレータ20に適当なつぶし代で密接される。このため、ビード状のシール面33aにヘタリを生じても、凸面状のシール面33bの圧縮反力によって、係止部33はビード状のシール面33a側の面33c全体が膜−電極複合体11の縁部11aに密接されることになり、良好な密封性が維持される。
【0041】
次に図6は、本発明に係る第三の形態の燃料電池セルを示す組み立て前の状態の部分断面図、図7は、同じく第三の形態の燃料電池セルを示す組み立て状態の部分断面図である。
【0042】
この第三の形態の燃料電池セル1において、先に説明した第一の形態と異なるところは、ガスケット30の係止部33のうち、発電体10の膜−電極複合体11に密接されるシール面33aをフラットに形成し、これと反対側のシール面33bを、発電体10の上面(他側のガス拡散層13の上面)より高く隆起したかまぼこ型の凸面状に形成したことにある。その他の部分は、基本的に第一の形態と同様に構成されている。
【0043】
この形態による燃料電池セル1も、基本的には第一の形態と同様の効果を奏するものである。そして、図1のように積層した状態において、ガスケット30の係止部33は、平坦なシール面33aが発電体10の膜−電極複合体11の縁部11aに適当な面圧で密接されると共に、その反対側の凸面状のシール面33bが、隣接する燃料電池セル1のセパレータ20に適当なつぶし代で密接される。このため、発電体10の膜−電極複合体11の縁部11aとこれに対向するセパレータ20との間の隙間が、ガスケット30の係止部33で埋められた状態になるので、良好な密封性が維持される。
【符号の説明】
【0044】
1 燃料電池セル
10 発電体
11 膜−電極複合体
11a,12a,13a,20a 縁部
12,13 ガス拡散層
20 セパレータ
30 ガスケット
31 基部
31a,31b 谷部
32 主シールリップ
33 係止部
33a,33b シール面
34 接着剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解質膜の両面に電極層を設けた膜−電極複合体の厚さ方向両側にガス拡散層を積層一体化した発電体と、この発電体の一側に配置されるセパレータと、前記発電体の縁部に沿って配置されると共に前記セパレータに接着剤を介して接着されるゴム状弾性材料からなるガスケットとを備え、このガスケットに、前記発電体を前記セパレータに係止する係止部を形成したことを特徴とする燃料電池セル。
【請求項2】
係止部が、発電体の他側のガス拡散層から露出させた膜−電極複合体に適当な面圧で密接されるシール面と、当該燃料電池セルの積層状態において前記発電体の他側に位置するセパレータに適当な面圧で密接されるシール面を有することを特徴とする請求項1に記載の燃料電池セル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−177009(P2010−177009A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−17682(P2009−17682)
【出願日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【出願人】(000004385)NOK株式会社 (1,527)
【Fターム(参考)】