説明

燃料電池セル

【課題】燃料電池セルの製造時に、膜電極ガス拡散層接合体とエキスパンドメタルとの間の隙間に液状シール材が浸入することを防止する。
【解決手段】燃料電池セル100は、膜電極ガス拡散層接合体10と、エキスパンドメタル20と、流動性を有する液状シール材が押し広げられることによって形成されたシール材30と、膜電極ガス拡散層接合体10とエキスパンドメタル20との間の隙間を覆う被覆部材22と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池セルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
燃料電池セルは、例えば、膜電極接合体の表面にガス拡散層を接合してなる膜電極ガス拡散層接合体をセパレータで挟持することによって構成される。膜電極接合体は、電解質膜の両面に電極層を形成してなる。このような燃料電池セルでは、膜電極ガス拡散層接合体とセパレータとの間に、エキスパンドメタルが配置される場合がある(例えば、下記特許文献1参照)。エキスパンドメタルは、金属板に千鳥配列の切れ目を入れて押し伸ばしながら網目を形成することによって製造され、多数の孔を有している。このエキスパンドメタルは、膜電極ガス拡散層接合体とセパレータとの間に、発電に供する反応ガスを流すためのガス流路を形成する。
【0003】
このような燃料電池セルでは、エキスパンドメタルによって形成されるガス流路を流れる流体をシールするために、エキスパンドメタルの周囲に、シール材が備えられる。そして、このシール材は、例えば、エキスパンドメタルの周囲において、液状ゴム等の硬化前に流動性を有する液状シール材が押し広げられることによって形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−48970号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述した燃料電池セルでは、エキスパンドメタルの構造上、膜電極ガス拡散層接合体とエキスパンドメタルとの間には、隙間が生じる。このため、燃料電池セルの製造時に、エキスパンドメタルの周囲において、液状シール材が押し広げられるときに、膜電極ガス拡散層接合体とエキスパンドメタルとの間の隙間に液状シール材が浸入する場合があった。この場合、隙間に浸入して形成されたシール材によって、ガス流路の一部におけるガスの流れが妨げられて所望のガス流路が形成されなくなったり、エキスパンドメタルよりも可撓性が高い膜電極ガス拡散層接合体が撓み変形したりするという不具合を招く。
【0006】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであり、燃料電池セルの製造時に、膜電極ガス拡散層接合体とエキスパンドメタルとの間の隙間に液状シール材が浸入することを防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0008】
[適用例1]
燃料電池セルであって、
電解質膜の両面に電極層を形成してなる膜電極接合体と、該膜電極接合体の表面に接合されたガス拡散層と、を有する膜電極ガス拡散層接合体と、
前記膜電極ガス拡散層接合体の一方の面に積層され、該一方の面に沿って発電に供する反応ガスを流すためのガス流路を形成するエキスパンドメタルと、
前記エキスパンドメタルの周囲に形成されたシール材であって、流動性を有する液状シール材が押し広げられることによって形成されたシール材と、
前記膜電極ガス拡散層接合体と前記エキスパンドメタルとの間の隙間を覆う被覆部材と、
を備える燃料電池セル。
【0009】
適用例1の燃料電池セルでは、上記被覆部材を備えるので、燃料電池セルの製造時に、エキスパンドメタルの周囲において、液状シール材が押し広げられたときに、この液状シール材が膜電極ガス拡散層接合体とエキスパンドメタルとの間の隙間に浸入することを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1実施例としての燃料電池セル100の概略構成を示す説明図である。
【図2】比較例の燃料電池セル100Rの概略構成を示す説明図である。
【図3】本発明の第2実施例としての燃料電池セル100Aの概略構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、実施例に基づき説明する。
A.第1実施例:
図1は、本発明の第1実施例としての燃料電池セル100の概略構成を示す説明図である。図1では、燃料電池セル100の要部断面図を示した。図示するように、燃料電池セル100は、膜電極ガス拡散層接合体10と、エキスパンドメタル20と、シール材30と、アノード側セパレータ40aと、カソード側セパレータ40cと、を備えている。
【0012】
膜電極ガス拡散層接合体10は、電解質膜の両面に電極層を形成してなる膜電極接合体12と、膜電極接合体12の表面に接合されたアノード側ガス拡散層14aおよびカソード側ガス拡散層14cと、を備えている。電解質膜は、プロトン伝導性を有する固体高分子膜によって構成されている。電極層(アノード、および、カソード)は、いわゆる触媒インクあるいは触媒ペーストを電解質膜の両面に塗布することによって形成されている。アノード側ガス拡散層14a、および、カソード側ガス拡散層14cは、例えば、カーボンペーパやカーボンクロス等の導電性およびガス拡散性を有する基材によって構成されている。
【0013】
アノード側セパレータ40aは、膜電極ガス拡散層接合体10におけるアノード側ガス拡散層14aの表面に積層される。このアノード側セパレータ40aには、金属板をプレス加工することによって、凹凸形状が形成されている。アノード側セパレータ40aは、アノード側ガス拡散層14aの表面に沿って燃料ガスとしての水素を流すためのガス流路を形成する。
【0014】
カソード側セパレータ40cは、膜電極ガス拡散層接合体10におけるカソード側ガス拡散層14cとの間にエキスパンドメタル20を挟んで積層される。カソード側セパレータ40cは、フラットな形状を有している。
【0015】
エキスパンドメタル20は、図示は省略しているが、金属板に千鳥配列の切れ目を入れて押し伸ばしながら網目を形成することによって製造されており、多数の孔を有している。このエキスパンドメタル20は、膜電極ガス拡散層接合体10におけるカソード側ガス拡散層14cとカソード側セパレータ40cとの間に配置され、酸化剤ガスとしての空気が流れるガス流路を形成する。なお、本実施例では、エキスパンドメタル20は、周縁部に、膜電極ガス拡散層接合体10とエキスパンドメタル20との間の隙間を覆う被覆部材22を備えている。被覆部材22は、エキスパンドメタル20の側周面全体を覆う側壁部22aと、カソード側ガス拡散層14cと面接触する接触部22bと、を有している。この被覆部材22については、後述する。
【0016】
シール材30は、膜電極ガス拡散層接合体10、および、エキスパンドメタル20の周囲に形成され、エキスパンドメタル20によって形成されるガス流路を流れる流体をシールする。このシール材30は、燃料電池セル100に製造時に、エキスパンドメタル20の周囲において、液状ゴム等の硬化前に流動性を有する液状シール材が押し広げられることによって形成される。
【0017】
本実施例の燃料電池セル100の効果を、比較例の燃料電池セル100Rと比較して説明する。
【0018】
図2は、比較例の燃料電池セル100Rの概略構成を示す説明図である。図2では、図1と同様に、燃料電池セル100Rの要部断面図を示した。図示するように、比較例の燃料電池セル100Rは、第1実施例の燃料電池セル100と同様に、膜電極ガス拡散層接合体10と、エキスパンドメタル20と、シール材30と、アノード側セパレータ40aと、カソード側セパレータ40cと、を備えている。ただし、比較例の燃料電池セル100Rでは、第1実施例の燃料電池セル100とは異なり、エキスパンドメタル20が被覆部材22を備えていない。
【0019】
燃料電池セル100Rでは、エキスパンドメタル20の構造上、膜電極ガス拡散層接合体10とエキスパンドメタル20との間には、隙間が生じる。このため、燃料電池セル100Rの製造時に、エキスパンドメタル20の周囲において、シール材30を形成する液状シール材が押し広げられるときに、膜電極ガス拡散層接合体10とエキスパンドメタル20との間の隙間に液状シール材が浸入する場合がある。この場合、図2に示したように、隙間に浸入して形成されたシール材30iによって、ガス流路の一部におけるガスの流れが妨げられて所望のガス流路が形成されなくなったり、エキスパンドメタル20よりも可撓性が高い膜電極ガス拡散層接合体10が撓み変形したりするという不具合を招く。
【0020】
これに対し、第1実施例の燃料電池セル100では、エキスパンドメタル20が被覆部材22を備えるので、燃料電池セル100の製造時に、エキスパンドメタル20の周囲において、シール材30を形成する液状シール材が押し広げられたときに、この液状シール材が膜電極ガス拡散層接合体10とエキスパンドメタル20との間の隙間に浸入することを防止することができる。
【0021】
B.第2実施例:
図2は、本発明の第2実施例としての燃料電池セル100Aの概略構成を示す説明図である。図2では、燃料電池セル100Aの要部断面図を示した。図示するように、第2実施例の燃料電池セル100Aは、第1実施例の燃料電池セル100と同様に、膜電極ガス拡散層接合体10と、エキスパンドメタル20と、シール材30と、アノード側セパレータ40aと、カソード側セパレータ40Acと、を備えている。ただし、第2実施例の燃料電池セル100Aでは、第1実施例の燃料電池セル100とは異なり、エキスパンドメタル20が被覆部材22を備えていない。その代わりに、カソード側セパレータ40Acが、エキスパンドメタル20の側周面全体を覆うとともに、カソード側ガス拡散層14cと面接触して、膜電極ガス拡散層接合体10とエキスパンドメタル20との間の隙間を覆う凸部42を備えている。この凸部42は、[課題を解決するための手段]における被覆部材に相当する。
【0022】
以上説明した第2実施例の燃料電池セル100Aでは、カソード側セパレータ40cが被覆部材としての凸部42を備えるので、燃料電池セル100Aの製造時に、エキスパンドメタル20の周囲において、シール材30を形成する液状シール材が押し広げられたときに、この液状シール材が膜電極ガス拡散層接合体10とエキスパンドメタル20との間の隙間に浸入することを防止することができる。
【0023】
以上、本発明のいくつかの実施の形態について説明したが、本発明はこのような実施の形態になんら限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内において種々なる態様での実施が可能である。
【符号の説明】
【0024】
100,100A,100R…燃料電池セル
10…膜電極ガス拡散層接合体
12…膜電極接合体
14a…アノード側ガス拡散層
14c…カソード側ガス拡散層
20…エキスパンドメタル
22…被覆部材
22a…側壁部
22b…接触部
30,30i…シール材
40a…アノード側セパレータ
40c…カソード側セパレータ
40Ac…カソード側セパレータ
42…凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池セルであって、
電解質膜の両面に電極層を形成してなる膜電極接合体と、該膜電極接合体の表面に接合されたガス拡散層と、を有する膜電極ガス拡散層接合体と、
前記膜電極ガス拡散層接合体の一方の面に積層され、該一方の面に沿って発電に供する反応ガスを流すためのガス流路を形成するエキスパンドメタルと、
前記エキスパンドメタルの周囲に形成されたシール材であって、流動性を有する液状シール材が押し広げられることによって形成されたシール材と、
前記膜電極ガス拡散層接合体と前記エキスパンドメタルとの間の隙間を被覆するように設けられた被覆部材と、
を備える燃料電池セル。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate