説明

燃料電池ベースの駆動システムの段階的な遮断

本発明は、少なくとも1つの燃料電池積層体(2)と、電気機械(3)と、周辺装置コンポーネント(4)と、電気的な搭載電源網とを有する、殊に車両用の燃料電池ベースの駆動システム(1)に関する。本発明は、駆動システム内で識別された誤動作を評価/分類するために構成されている制御ユニット(6)が設けられていることを特徴とする。さらに本発明は、その種の駆動システムの作動方法にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念に記載されている燃料電池ベースの駆動システムならびに請求項10の上位概念に記載されている駆動システムの作動方法に関する。
【0002】
背景技術
燃料電池技術に基づき駆動システムを作動させ、殊に車両も駆動させることが公知である。これらの燃料電池とは通常の場合、積層化されて相互に接続されており、駆動システムの相応のコンポーネントへの給電のために十分に高い電圧を形成する複数の個々の燃料電池である。燃料電池積層体を有するその種の燃料電池ラインユニットを作動させるために、内部で実行される、部分的に非常に複雑で技術的なプロセスを制御するための相応の「燃料電池周辺装置」が必要とされる。
【0003】
殊に、相応の燃料電池駆動部を備えた可動型の駆動システムにおいては、例えば2つの異なる電圧レベルが該当する搭載電源網において形成されている。この異なる電圧レベルは、低電圧コンポーネントへの給電網領域としての12V〜14Vと、燃料電池積層体側における数百Vまでの電源網領域である。有利には、2つの搭載電源網電圧領域が相応のコンポーネントを介してエネルギ技術的にも信号技術的にも相互に接続されている。
【0004】
さらに駆動システム全体の効率を改善するために、例えばエンジンブレーキ運転時またはそれと共に駆動する自動車の制動運転時に運動している駆動システム内に存在するエネルギの電気的な蓄積部へのフィードバックも行うことができる。
【0005】
この種の燃料電池ベースの駆動システムの欠陥の無い作動を保証するために、ハードウェア側での安全対策もソフトウェア側での安全対策も公知である。
【0006】
本発明の課題および利点
本発明が基礎とする課題は、冒頭に述べた形式の駆動システムを改善することである。この課題は、請求項1および請求項10の上位概念に記載の構成を基礎として、それらの請求項の特徴部分に記載されている構成により解決される。従属請求項には好適で有利な実施形態が記載されている。
【0007】
したがって本発明は、少なくとも1つの燃料電池積層体、電気機械(原動機および/または発電機)、周辺装置コンポーネントおよび電気的な搭載電源網を有する、殊に車両用の燃料電池ベースの駆動システムに関する。本発明によれば、この燃料電池駆動システムは、駆動システム内で識別された誤動作を評価/分類するために構成されている制御ユニットが設けられていることを特徴とする。
【0008】
有利にはその種の制御ユニットによって、駆動システムのシステムコンポーネントのエラー重み付けされた段階的な遮断が実現される。したがって、従来から既知であるような、1つまたは複数のシステムコンポーネント、場合によっては重要でもあるシステムコンポーネントの故障に基づき、駆動システム全体の即座の遮断はもはや必ずしも必要とされない。駆動システムのこの種の構造によって、エラーに応じて全体の駆動システムの一部だけを遮断することができるか、制御ユニットによって相応に講じられる対抗措置によって、必要に応じて他のシステムコンポーネントと組み合わせて、少なくとも一時的に代替させることができる。
【0009】
このために関しては例えば、駆動システムの緊急動作モードも考えられ、場合によっては、発生したエラーの重大性に応じて少なくとも依然として安全な状態において正常にシステムを停止できるようにするために、その都度のエラーに依存して優先順位に応じて評価が行われる。もしくは、エラーがそれほど重大でない場合には、動作通りに予定されている該当する動作時間の終了まで必要に応じて動作が維持される。すなわち、システムの安全性が完全である場合には、駆動システムの最小限のアベイラビリティを保証することができる。
【0010】
燃料電池ベースの駆動システムに関する種々の降位レベルの例として、制御ユニットはエラーが既知である場合および/または信号発生器が故障した場合に代替的な理論的な値を求めるために構成されていることが考えられる。例えば、特定の値を必要に応じてマトリクス状に構成されたメモリスペースから、エラー時に介入が行われる可能性のある特定の動作状態に関する代替値として事前に取得することができる。これにより、エラーケースに応じて直接的にまたは、例えば相応の結合によって、駆動システムをさらに作動させるための代替値を駆動システムの緊急動作モードのために提供することができる。
【0011】
駆動システムのその都度の動作状態および/または動作モードに関する信号値および/または所属のパラメータとして、例えば電圧値、電流値、温度値、油圧、湿度などを相互に組み合わせて記憶することができる。これに関してはさらに相応の平均値、最低限および/または最大限許容される値または駆動システムの動作にとって有利な他の値も記憶することができ、これらの値にエラーケースに応じて相応にアクセスすることができる。
【0012】
殊に有利には、制御ユニットが、エラーのあるものとして識別された信号値および/または正常には使用することができない信号値を求めるためのパラメータモデルを形成するために構成されている。すなわち制御ユニットは、信号値および/またはエネルギ線路に完全な欠陥がある場合に漸く駆動システムを安定させるために制御を行い影響を及ぼすのではなく、殊に有利な実施形態においては、例えば所定の時間間隔をおいて繰り返し規則的に、または不規則的に、しかしながらまた永続的に、少なくとも特定の信号値および/またはエネルギの流れが目下の動作状態および/または動作モードに関してエラーの無いものと見なされる領域内にあるか否かについてそれらの信号値および/またはエネルギの流れを検査し、否定の場合には相応の対抗措置を講じるように構成されている。
【0013】
制御ユニットによって求められた理論的な信号値は、障害の無い動作時にセンサから供給される値の代替信号値であるが、制御ユニットの部分ユニット自体から供給された値の代替値でもよい、または必要に応じて外部の別の制御ユニットから供給される値の代替値などでもよい。
【0014】
エネルギ供給において問題が識別された場合には、制御ユニットが駆動システムのコンポーネントへのエネルギ供給を、エラーがあるものとして識別されたエネルギ源からエラーの無いものとして、またはよりエラーが少ないものとして識別されたエネルギ源へと部分的または完全に切り替えることができる。しかしながら、識別されたエラーに応じて可能であれば、相応の適切な別のエネルギ源を接続することによって、エラーのあるものとして識別されたエネルギ源をサポートすることも十分可能である。
【0015】
エラー識別として例えば、負荷の目下の負荷状態に対して過度に少ない電流の流れ、しかしながらまた過度に多い電流の流れを識別することができるか、該当する動作コンポーネントにおける問題を推測することができる過度に高い電圧または過度に低い電圧も識別することができる。
【0016】
燃料電池システムにおいてこれは例えば、燃料電池、酸化手段および/または冷却手段のような駆動手段による正常でない給電の他に、経年劣化または摩耗に起因する許容できない動作状態が考えられる。ここでは例として動作電圧の低下を説明する。
【0017】
バッテリ側のエネルギの流れ、または蓄電池側のエネルギの流れにおいて、例えば摩耗または蓄積能力の低下によって同様にエラーが発生する可能性があり、これらのエラーは十分に忍び寄ってから発生する可能性があるが、相応の問合せルーチンによって制御ユニットを介して確認される。
【0018】
駆動システムのスタータバッテリに関して、蓄積容量が相応に少ないことにより駆動システムの再始動をもはや確実に保証できないことが確認される場合、殊に有利な実施形態においては、少なくともエネルギ線路に関して、殊に、駆動システムの再始動のためにスタータユニット、例えばスタータモータが対応付けられているエネルギ線路に関して能動的に動作を維持するように制御ユニットを構成することができる。
【0019】
すなわち、制御ユニットは一方のエネルギ源および/または所属の制御素子および/または周辺装置においてエラーが識別された際に他方のエネルギ源の能動的な動作を維持するために適切に構成されている場合には、駆動システムの安全な動作状態を維持するための相応の保護措置を制御ユニットによって既に駆動システムの動作中に講じることができる。
【0020】
さらに有利には、識別されたエラーに応じて重み付けされた警告を出力するために制御ユニットを設けることができるので、駆動システムのユーザは発生したエラーの重大性に関する情報を通知することができる。さらにユーザには、見積もられた残存動作時間に関する情報も必要に応じて通知することができ、1つまたは複数の考えられる動作モードについての提案も必要に応じて付加的に提示することができる。例えば以下のことが考えられる:システムアベイラビリティの制限無し、後のサービス時にエラーは除去される;部分的に制限されたシステムアベイラビリティ、見込みでは自動車は目的地に到達可能であるが、エラーを即座に除去する必要有り;比較的大幅に制限されたシステムアベイラビリティ、目的地への到達はもはや保証されない、エラーは必ず除去されなければならない;または重大なシステムエラー、緊急運転モード!システムは即座に遮断される。
【0021】
したがって大部分の動作ケースに関しては、駆動システム、殊にそれと共に駆動される自動車を少なくとも制限的にさらに作動させることができ、最も好適なケースにおいては、それどころか走行は全く制限されない。問題が比較的重い場合には、少なくともサービスステーションまたは修理ステーションへの到達可能性をさらに提供することができるが、例えば上述したやり方で、依然として使用可能なシステムコンポーネントへの切り替え、および/または、依然として使用可能なシステムコンポーネントを一緒に接続することによって、少なくとも能動的な交通事象から離れることができる。
【0022】
さらに本発明は、少なくとも1つの積層体、電気機械、周辺装置コンポーネントおよび電気的な搭載電源網を有する、燃料電池ベースの駆動システムの作動方法にも関する。この方法は、駆動システム内で識別された誤動作の評価/分類が制御ユニットによって実施されることを特徴とする。評価/分類は有利には上述のやり方で行われる。
【0023】
添付の図面および以下の図面に関する説明に基づき本発明を詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】燃料電池ベースの駆動システムを示す。
【0025】
詳細には、この燃料電池ベースの駆動システム1は燃料電池積層体2、電気機械3(原動機および/または発電機)、周辺装置コンポーネント4および電気的な搭載電源網5を有する。さらには、個々のシステムコンポーネントを制御するために制御ユニット6が設けられており、この制御ユニット6は駆動システムにおいて識別された誤動作を評価/カテゴリ分類するために構成されている。その種の制御ユニットによって、駆動システムの個々のシステムコンポーネントまたは複数のシステムコンポーネントのエラー重み付けされた段階的な遮断が実現される。
【0026】
有利な実施形態においては、制御ユニット6は複数の部分制御ユニットを有することもできる。例えば、燃料電池制御ユニット7、電子エネルギ制御ユニット8、バッテリ制御ユニット9、また必要に応じて、個々のシステムコンポーネントおよび/またはシステムコンポーネント群のためのさらに別の部分制御ユニットを設けることができる。
【0027】
殊に有利には、制御ユニット6は種々の信号の流れおよび/またはエネルギの流れを、殊に相応の信号発生器および/または信号処理ユニットのサポートによって、妥当性について検査することができる。1つまたは複数の検査された値が通常の場合に期待される値から偏差する場合、またはそのような値が存在しない場合には、制御ユニットは例えば代替的に理論的な信号値を求めることができるか、代替的または補完的に、エラーがあると識別されたエネルギ源とは異なるエネルギ源2,14,16,21からのエネルギの流れを準備ないし指示することができる。最も好適なエラーケースにおいては、例えば発生したエラーが駆動システムの目下の作動状況に直接的な影響を及ぼさない場合には、駆動システムのユーザはエラーを全く認識しない。そのようなケースにおいては、例えば相応のデータメモリ10内にただ1つのエントリのみを設けることができ、この場合、エラーを次回のサービスの際に読み出すことによって、または相応の修復措置によって除去することができる。
【0028】
燃料電池ベースの駆動システム1の本発明による段階的な遮断の次のレベルにおいては、例えば付加的に、識別されたエラーに関する警告指示を有利には可動型の駆動システムのユーザに信号ユニット11を介して出力することができる。
【0029】
後続のレベルにおいては、例えば依然として存続しているシステムアベイラビリティに関する指示も出力することができ、有利には、検出されて制御ユニット6によって評価されたエラーの重みに依存して出力することができるので、過度に重大でないエラーの場合には少なくとも、意図する目的地へと依然として到達することができる。これに対しエラーが重大な場合においては、場合によっては修理工場への到達は実現可能であり、また例えば、システムをサポートするコンポーネントが故障した場合には、少なくともさらに、駆動システムにより駆動される自動車を確実かつ危険無く交通から離脱させることが可能である。
【0030】
種々のパラメータを格納するため、殊にパラメータモデルを形成するためにメモリユニット12が設けられており、このメモリユニット12に制御ユニット6および/または別の部分制御ユニットのうちの1つが必要に応じてアクセスし、必要に応じてこのメモリユニット12に別のデータを記憶することができる。殊にこのために、制御ユニットが駆動システムのコンポーネントへのエネルギ供給を必要に応じて、エラーがあるものとして識別されたエネルギ源からエラーの無いものとして識別されたエネルギ源、またはエラーは軽度であるものとして識別されたエネルギ源へと部分的または完全に切り替えるために必要とされるデータも記憶することができる。
【0031】
例えば、能動的にエネルギ源の作動をさらに維持させるために制御ユニットがアクセスするプログラムルーチンを記憶することも考えられる。この例として、制御ユニットが、駆動システムの確実な再始動をもはや保証することができないほど大きい問題が、スタータバッテリまたは所属の周辺装置ユニットにおいて発見された場合が考えられる。この場合、信号ユニット11を介する相応の警告指示でもって情報が通知されることにより、修理工場を探すこと、または他の適切な措置を調べることを駆動システムのユーザに要求することができ、この際には必要に応じて、残存の稼働時間に関する付加的な指示を行うことも考えられる。
【0032】
ここでは例示的に、搭載電源網を介して相応に相互に接続することができ、且つ制御ユニットによって制御される、さらに別のシステムコンポーネントを以下において説明する。搭載電源網において並存する2つの電圧レベル(低電圧領域のための12V〜14Vの電圧レベルと、燃料電池積層体側の数百Vまでの電圧領域の電圧レベル)を接続するためにDC/DC変換器13を設けることができ、このDC/DC変換器13は殊に有利には双方向のエネルギの流れをサポートすることができる。これによって、例えば必要に応じて、燃料電池積層体の作動時に一方ではスタータバッテリを再充電することができ、他方では必要に応じて別の負荷15にエネルギを供給することができる。同様に搭載電源網5内に設けられているトラクション蓄積部(Traktionsspeicher)16によるスタータバッテリ14の場合によっては必要とされる支援もこれによって実現できる。トラクション蓄積部16は、燃料電池システムによって少なくとも一時的にカバーすることができない相応のピーク要求時に付加的なエネルギを一時的に蓄積ないし供給するために設けられている。
【0033】
可動型のシステムを駆動させるための電気機械を接続するために、必要に応じて搭載電源網内に設けられている別の電圧領域と、燃料電池側の高電圧領域との間の変換のためにコンバータ17が設けられており、このコンバータ17はやはり殊に有利には同様に双方向のエネルギの流れをサポートする。これによって、エンジンブレーキ運転時ないし制動運転時に駆動部として使用される電気モータはジェネレータの機能で、パワートレイン21から再び電気的なエネルギを電源網に再び供給することができるので、このエネルギをトラクション蓄積部16に一時的に蓄積することができる。トラクション蓄積部16に対応付けられている周辺装置コンポーネント4を介して、制御ユニット6はその都度の信号の流れおよびエネルギの流れを妥当性について検査することができる、および/または、必要に応じて対抗措置を講じることができる。これに関する例示的なコンポーネントとして電流計、電圧計およびスイッチングコンタクトが挙げられる。スイッチングコンタクトによって、例えば必要時にトラクション蓄積部16をその他の搭載電源網から分離することができる。
【0034】
可動型の駆動システムの実施形態に応じて、この駆動システムはさらにDC/AC変換器18を有することができ、例えば外部負荷のための交流電圧タップ19、例えば220V端子または110V端子を設けることができる。
【0035】
しかしながらまた、燃料電池積層体領域における電圧領域およびトラクション蓄積部のコンタクトにおける電圧領域の異なる電圧領域を適合させるために、トラクション蓄積部16と搭載電源網5との間に別のDC/DC変換器20を設けることもできる。
【0036】
燃料電池積層体2の周辺装置コンポーネント4はトラクション蓄積部16の周辺装置コンポーネント4と同様に、燃料電池積層体の作動のために通常必要とされる別のコンポーネントの他に、電流計、電圧計、また搭載電源網5との接続を確立ないし遮断するためのスイッチングコンタクトを有することができる。
【0037】
以下では、確認されたエラーないしエラー通知に対する制御ユニット6の種々の応答可能性を、駆動システムのシステムコンポーネントのエラー重み付けされた段階的な遮断を例にして説明する。
【0038】
燃料電池積層体2を有する燃料電池システムの作動には必ずしも必要とされないコンポーネント、例えば周囲圧力センサ、導電率センサ、ファンヒーターまたは電気的なエアコンプレッサの故障によって、エラーがむしろ取るに足らないものとして分類された場合には、段階的なエラー応答の第1のレベルにおいて単にメモリ10にエントリを行うことだけが考えられる。その種のエラーの影響は例えば電気的な負荷の出力損失の形態で現れる可能性があるが、可動型の駆動システムのユーザは必ずしもその出力損失を感知するとは限らない。
【0039】
考えられる別のエラーは例えば、220Vないし110Vの出力電圧がもはや供給されないことに基づき、高圧電圧網内の快適性に関する外部の負荷にもはや規則的な給電が行われないことである。これに関しては、例えば電力電子装置または外部の電圧タップに接続されている負荷自体における欠陥が原因として考えられる。このケースにおいても、後のサービス期間中にエラーを指示する診断エントリがあれば十分である。
【0040】
若干重大なエラーは例えば、電気的なエネルギ制御ユニット8のコンポーネント、例えばセンサ、電力電子装置(コンバータ)が故障した場合、電気機械(原動機/発電機)が流限界領域または温度限界領域内にあるが、さらに出力が低減される可能性がある場合、または、燃料電池積層体2またはトラクション蓄積部16の電流センサまたは電圧センサが故障した場合である。この影響は、例えば相応の措置が講じられなければ、電気的な駆動部の出力損失、コンポーネントの熱的な破壊などとして表われる。しかしながらこれらの影響を制御ユニットによる能動的な対抗措置でもって、例えば低減された駆動部出力に低減することができ、この場合であっても、信号ユニット11を介してシステム内のエラーを示唆することによって駆動部システムのための完全の走行ダイナミクスは維持される。これに関して考えられる介入措置は、相応に記憶されているパラメータを必要に応じて使用して、例えば相応のモデル形成によって理論的な値を求めることである。
【0041】
燃料電池制御ユニット7のコンポーネントの故障に対しても同様の結果をもたらすことができる。つまり、同様にモデル形成によって、駆動システムの少なくとも制限的な別の走行モードが少なくとも一時的に実現される。考えられるエラーは例えば、ここでもまた電子装置の領域におけるセンサの故障、温度領域、圧力領域、湿度領域におけるセンサの故障、質量流量センサなどの欠陥である。送風機にエラーがあることも考えられ、これによって場合によっては燃料電池積層体の不十分な加湿が行われる可能性があるか、燃料供給および/または空気供給が低減される可能性があるか、温度領域における問題を生じさせる虞のある動作によらない冷却媒体供給が行われる可能性があるか、冷却媒体の損失も生じる可能性がある。タンク充填状態のエラーもエラーの原因になりうるが、これは例えば評価によって代替的に求めることができる。
【0042】
この場合、相応の対抗措置が講じられなければ、例えば電流源はもはや十分なエネルギを供給することができず、全ての電気的な負荷の制御不能な電力損失、また駆動部の制御不能な電力損失も遅くとも数分後に起こりかねない。駆動システム全体が完全に故障するまでの個々のコンポーネントまたは複数のコンポーネントの熱的な破壊も考えられる。
【0043】
しかしながらこれに対して能動的な対抗措置が講じられる場合には、駆動出力が低減された状態で、駆動システムは可動型の機器をさらに駆動させることができるが、ここでもまた信号ユニット11を介してドライバには相応の警告が発せられる。
【0044】
駆動システムのシステムコンポーネントのエラー重み付けされた別の段階的な遮断は電気的なエネルギ制御ユニットの全てのエラーに関し、これらのエラーは確かに電気的な走行モードに直接的な影響を及ぼさないが、これに関連する蓄電池(スタータバッテリ)における損傷に基づき低電圧搭載電源網(12V電源網)はさらに制限される。
【0045】
その種の故障は駆動システムが作動している間は通常生じない。何故ならば、例えば燃料電池システムならびにエネルギ伝達のために間に接続されている相応の別のコンポーネントを介するエネルギ供給を保証することができるからである。しかしながらこれによって駆動システムの遮断後には、スタータバッテリにおける欠陥に基づき駆動システムをもはや再始動できないことを考慮しなければならない。これを回避するために、制御ユニットによって能動的に実施される対抗措置でもって、ユーザに対する欠陥に関する指示の他に、信号ユニット11を用いて、システムに関するその他の遮断プロセスを阻止することができるか、停止することができるので、システムが誤って停止されることはない。それにもかかわらずシステムの停止を実現できるようにするためには、例えば修理ケースに関して、確認を必要とする問合せルーチンを開始することができる。ここでは問合せとして「システムは本当に停止されるべきか?"はい"または"いいえ"」が考えられる。
【0046】
低電圧搭載電源網供給部の場合によっては忍び寄っている別の原因として、例えば、通常は12Vバッテリとして設計されているスタータ蓄電池ないしスタータバッテリを種々の理由によりもはや充電することができないことが考えられる。エラーの例として14DC/DC変換器が故障した場合が挙げられる。相応の対抗措置が講じられなければバッテリは放電され、このバッテリによって給電される負荷は制御不能になり、その結果場合によっては、駆動システムによって駆動される車両に関する危険な動作状況が生じる虞がある。しかしながら、制御ユニットによって能動的に講じられる対抗措置によって、第1のステップにおいてユーザには欠陥を示唆することができる。安全な運転モードにおいて必要に応じて評価されるべき残りの動作時間を示すことによって、ドライバには相応の応答時間をシステムが停止するまで提供することができ、このことは例えば、即座の路肩までの走行によって、または次の駐車可能場所までのさらなる走行によって、または必要に応じてサービスステーションまたは修理ステーションに到達するまでのさらなる走行によって実現される。これをサポートするために、駆動には必ずしも必要とされない特定の負荷の遮断が提案されるか、能動的に制御ユニット自体によって遮断を行うことも考えられる。
【0047】
電気エネルギ制御システムにおける別のエラーの原因として、トラクション蓄積部16における欠陥またはこのトラクション蓄積部16に対応付けられている周辺装置コンポーネント4における欠陥が挙げられる。考えられるエラーとして、例えば、電力消費および/または電力出力が生じないことに基づくトラクション蓄電池16自体の欠陥、蓄電池端子と搭載電源網の接触領域における問題(例えばリレーまたは接触子が適切に閉じられない)、ヒューズの欠陥、高電圧DC/DC変換器の欠陥、またはバッテリ制御ユニットにおける損傷がいわゆるバッテリ管理システムに生じていることが挙げられる。相応の対抗措置が講じられなければ、駆動システムのためのダイナミクスの損失が認識され、場合によってはシステムの再始動も行われない。エラーの評価ないし分類に基づいた制御ユニットによる考えられる介入措置として、有利には考えられる出力問合せの制限と組み合わせて、やはり先ずシステムのユーザに対してシグナリングを行い、残存エネルギを可能な限り効率的に利用させることができる。
【0048】
別のエラーの原因として、燃料電池システムのコンポーネントの故障が考えられる。これに関しても、種々に重み付けされたエラーを分類ないし評価することができる。第1のグループには例えば、燃料電池積層体を依然として制限的に動作させることができるエラーを分類することができる。次のレベルは、燃料電池積層体は確かにもはや動作することはできないが、少なくとも燃料電池システムをある程度制御して停止させることは可能であるかについて評価することができる。
【0049】
2つのカテゴリに関して危険の原因を、燃料電池システム全体の燃料電池コンポーネントにおける燃料の漏れによる発火の危険が考えられるかについて定義することができる。周辺の空気において確認された過度に高い燃料濃度、または妥当性の無い燃料質量流バランスまたは、殊に燃料電池のアノード側における、目標圧力と実際圧力の偏差も、示すべき燃焼の危険または他の示すべき危険の原因となりうる。別のエラーの原因として例えば、燃料電池監視センサにおける欠陥、例えば信号バスの形態の信号線における欠陥、冷却液ポンプにおける欠陥、異常なUI特性またはタンクにおけるセンサ、例えば圧力センサの故障が考えられる。
【0050】
相応の対抗措置が講じられなければ、燃料電池積層体の形態の電流源の制御不能な電力損失が生じることになる。駆動システムの全ての電気的な負荷は短時間で停止され、場合によっては一時的なエラーのある応答の後に停止される。しかしながら、制御ユニットによって能動的に講じられる対抗措置によって、システム全体の確実な停止を保証することができ、しかもその都度のエラーカテゴリないしエラー評価に依存して上記の考察に応じて確実な停止を保証することができる。
【0051】
システムコンポーネントのエラー重み付けされた遮断における次のレベルは、燃料電池システムの完全な停止である。この原因として、例えば燃料の激しい漏れ、または搭載電源網の高電圧領域における燃料電池積層体への線路の破損が考えられる。能動的な対抗措置が講じられなければ制御不能な電力損失が生じ、それに伴い搭載電源網に接続されている負荷の制御不能な停止が生じる。しかしながらここでもまた、システムを安全な状態で停止させるためにさらにエネルギを供給できるようにするために、駆動出力を能動的に低減させつつ、制御ユニットの能動的な介入措置によって少なくともユーザに対して警告を発することができる。
【0052】
考えられるエラーの別の原因として、駆動部における欠陥、搭載電源網の高電圧領域における欠陥が考えられる。この場合においても、制御不能な動作に対する制御ユニットの能動的な介入措置によって、有利には少なくとも駆動システム全体の確実な停止を保証することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの燃料電池積層体(2)と、電気機械(3)と、周辺装置コンポーネント(4)と、電気的な搭載電源網とを有する、殊に車両用の燃料電池ベースの駆動システム(1)において、
前記駆動システム内で識別された誤動作を評価/分類するために構成されている制御ユニット(6)が設けられていることを特徴とする、駆動システム。
【請求項2】
前記制御ユニットは、駆動システムのシステムコンポーネントをエラー重み付けして段階的に遮断するよう構成されている、請求項1記載の駆動システム。
【請求項3】
前記制御ユニットは、エラーが既知である場合および/または信号発生器が故障した場合に、代替的な理論的な値を求めるために構成されている、請求項1または2記載の駆動システム。
【請求項4】
前記制御ユニットは、エラーのあるものとして識別された信号値および/または正常には使用することができない信号値を求めるためのパラメータモデルを形成するために構成されている、請求項1から3までのいずれか1項記載の駆動システム。
【請求項5】
前記制御ユニットによって求められた論理的な信号値は、センサ、または前記制御ユニット自体の部分ユニット、または必要に応じた外部の別の制御ユニットの障害の無い動作時に供給される値の代替信号値である、請求項1から4までのいずれか1項記載の駆動システム。
【請求項6】
前記制御ユニットは、駆動システムのコンポーネントへのエネルギ供給を、エラーがあるものとして識別されたエネルギ源からエラーの無いものとして識別されたエネルギ源、またはエラーは軽度であるものとして識別されたエネルギ源へと部分的または完全に切り替えるために構成されている、請求項1から5までのいずれか1項記載の駆動システム。
【請求項7】
前記制御ユニットは、一方のエネルギ源および/または所属の制御素子および/または周辺装置においてエラーが識別された際に他方のエネルギ源の能動的な動作を維持するために構成されている、請求項1から6までのいずれか1項記載の駆動システム。
【請求項8】
前記制御ユニットは識別されたエラーに応じて重み付けされた警告を出力する、請求項1から7までのいずれか1項記載の駆動システム。
【請求項9】
警告には残存駆動時間についての指示が含まれている、請求項1から8までのいずれか1項記載の駆動システム。
【請求項10】
少なくとも1つの燃料電池積層体と、電気機械と、周辺装置コンポーネントと、電気的な搭載電源網とを有する、殊に車両用の燃料電池ベースの駆動システムの作動方法にもおいて、
前記駆動システム内で識別された誤動作の評価/分類を制御ユニットによって実施することを特徴とする、燃料電池ベースの駆動システムの作動方法。

【図1】
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【公表番号】特表2010−528438(P2010−528438A)
【公表日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−509768(P2010−509768)
【出願日】平成20年4月29日(2008.4.29)
【国際出願番号】PCT/EP2008/055268
【国際公開番号】WO2008/145471
【国際公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【出願人】(390023711)ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング (2,908)
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany
【Fターム(参考)】