説明

燃料電池モジュール

【課題】燃料電池モジュールの燃料電池スタックにおいて、特に、両端部に位置する単セルの作動温度の低下を抑制することにより、両端部のセル電圧の低下をより確実に抑制し、固体酸化物形燃料電池の電力を向上することが可能な燃料電池モジュールを提供する
【解決手段】缶体5の内部に、複数の発電セル14とセパレータ17を交互に積層し、積層方向の両端部33、34にフランジ23、24を配して構成した燃料電池スタック6を配置してなる燃料電池モジュールにおいて、燃料電池スタック6のフランジ23、24の外端面32と缶体5との間に、外端面32と板面とが対向するように、輻射率の低い複数枚の反射板35、36、37が互いの板面間に間隔をおいて単セル18の積層方向に対向配置されていることを特徴とする

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、缶体内に、発電セルとセパレータからなる単セルを複数積層した燃料電池スタックを配置してなる燃料電池モジュールに関し、特に、上記積層方向の両端部に位置する単セルの温度低下に起因するセル電圧の低下を防止することが可能な燃料電池モジュールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、燃料の有する化学エネルギーを直接電気エネルギーに変換する固体酸化物形燃料電池が高効率でクリーンな発電装置として注目されている。
【0003】
図4〜7に示すように、この固体酸化物形燃料電池における燃料電池モジュール1は、箱形の内缶体2と、この内缶体2を、断熱材3を介して覆う外缶体4とで構成された缶体5の内部に、燃料電池スタック6を配置したものである。
【0004】
この燃料電池スタック6は、固体電解質層11の両面に燃料極層(アノード)12と空気極層(カソード)13を配置してなる発電セル14の外側に、各々燃料極集電体15と空気極集電体16を配置し、これらの集電体15,16の外側にセパレータ17を配置した単セル18を縦方向に複数積層したものである。
【0005】
そして、この燃料電池スタック6は、内缶体2の底部7に支柱8により固定された架台9に、スペーサ部10を介して支持された状態で配置されている。
【0006】
ここで、固体電解質層11は、酸化物イオンの移動媒体であると同時に、燃料ガスと空気を直接接触させないための隔壁としても機能するので、ガス不透過性の緻密な構造となっている。この固体電解質層11は、酸化物イオン伝導性が高く、空気極層13側の酸化性雰囲気から燃料極層12側の還元性雰囲気までの条件下において化学的に安定で、熱衝撃に強い材料から構成する必要があり、かかる要件を満たす材料として、イットリアを添加した安定化ジルコニア(YSZ)で構成されている。
【0007】
また、電極である燃料極層12と空気極層13は、いずれも電子伝導性の高い材料から構成する必要がある。このため、この燃料極層12の材料は、Ni、Coなどの金属、或いはNi−YSZ、Co−YSZなどのサーメット等で構成され、また、空気極層13の材料は、700℃前後の高温の酸化性雰囲気中で化学的に安定でなければならないため、金属は不適当であり、電子伝導性を持つLaMnO3もしくはLaCoO3、または、これらのLaの一部をSr、Ca等に置換した固溶体(LSM、LSC,SSC等)で構成されている。
【0008】
さらに、燃料極集電体15は、ニッケル基合金等のスポンジ状の多孔質焼結金属板で構成され、空気極集電体16は、銀基合金等の同じくスポンジ状の多孔質焼結金属板で構成されている。スポンジ状多孔質焼結金属板は、集電機能、ガス透過機能、均一ガス拡散機能、クッション機能、熱膨脹差吸収機能等を兼ね備えるので、多機能の集電体材料として適している。
【0009】
一方、セパレータ17は、ステンレス等の金属材料により構成されている。その際、700℃以上の低温、中温作動において、殆ど電気抵抗が増加せず、良好な伝導性を維持する銀めっきを成膜したセパレータ17を使用することが好ましい。
【0010】
また、セパレータ17は、発電セル14間が電気接続されると共に、この発電セル14に対してガスを供給する機能を有するもので、燃料ガスをセパレータ17外周面から導入して燃料ガス通路19を介してセパレータ17の燃料極層12に対向する面から吐出させる燃料ガス吐出孔20と、酸化剤ガスをセパレータ17外周面から導入して酸化剤ガス通路21を介してセパレータ17の空気極層13に対向する面から吐出させる酸化剤ガス吐出孔22とをそれぞれ有している。
【0011】
そして、発電セル14とセパレータ17からなる単セル18を複数積層し、積層方向の最上部33側にフランジ23、最下部34側にフランジ24を配して、タイロッド25を介してボルト26で締め付けることにより燃料電池スタック6が構成されている。
【0012】
また、上記積層方向の最上部33側のフランジ23には、その中心部に円状の孔27が穿設されており、この孔27に錘28が載置され、この錘28の荷重により、燃料電池スタック6の構成要素が積層方向に圧接されている。
【0013】
他方、内缶体2には、燃料電池スタック6の他、外部から供給される上記燃料ガスおよび酸化剤ガスを予熱するための複数の熱交換機29が燃料電池スタック6の上部近傍や周辺近傍に配設されており、内缶体2の天板部30には、缶体5内の排ガスを排出するための排気口31が設けられている。
【0014】
以上の構成からなる燃料電池モジュール1は、燃料電池スタックにおいて、反応用ガスとして燃料極層12側に燃料ガスが供給され、空気極層13側に酸化剤ガスが供給されることにより発電反応が生じる。
【0015】
そして、発電セル14内において、空気極層13側に供給された酸素は、空気極集電16体内の気孔を通って空気極層13との界面近傍に到達し、この部分で空気極層13から電子を受け取って酸化物イオン(O2-)にイオン化される。この酸化物イオンは、燃料極層12に向かって固体電解質層11内を拡散移動し、燃料極層12との界面近傍に到達した酸化物イオンはこの部分で燃料ガスと反応して反応生成物(H2O、CO2等)を生じ、燃料極層12に電子を放出する。
【0016】
ここで、燃料電池スタック6において、それぞれの単18セルの電極反応で生じた電子が、電流により燃料電池スタック18の両端部の最下部34から最上部33へと移動する。そして、この電子を、最上部33の空気極層13側のセパレータ17と最下部34の燃料極層14側のセパレータ17とを端子として、外部負荷にて取り出すことにより、上記燃料電池モジュール1は所定の電圧レベルの電力を得ることができる。
【0017】
ところで、単セル18を複数積層して構成される燃料電池スタック6は、積層方向の温度分布が中央部44付近で高く、両端部33、34付近で極端に低下することが知られている。これは、中央部44においては、単セル18同士が隣接しているために、発電セル14の発電反応で生じたジュール熱が放出し難いことに起因しており、両端部33、34においては、フランジ23,24の外端面32が大気に直接ふれているために、発電セル14の発電反応で生じたジュール熱が、大気に放射された際、反応ガスなどの流れによる対流熱伝達により燃料電池スタック6外に放出されてしまうことに起因している。
【0018】
このように、単セル18の温度が低下すると、発電セル14の電気抵抗が上昇し、電気伝導性が低下するために、燃料極層12の活性化過電圧が上昇する。そして、燃料極層12の活性化過電圧が上昇すると、燃料極層12において水素が水素イオンと成る際に活性化エネルギーが必要となり、この活性化エネルギーの損失により、単セル18のセル電圧が低下する。特に、近年における固体酸化物形燃料電池は、出力密度を増やした高出力発電のものが多く、高出力発電の場合、温度低下による単セル18のセル電圧の低下が大きくなる傾向にあった。
【0019】
即ち、中央部44の単セル18の作動温度が高く、高い電力を得ることができても、電子を最上部33の空気極層13側のセパレータ17と最下部34の燃料極層14側のセパレータ17とを端子から取り出す際に、上記電子が、作動温度の低下によりセル電圧が低下した両端部33、34の単セル18を通るために、燃料電池モジュール1のトータルの電力が低下し、発電効率が低下してしまうという問題点があった。
【0020】
ここで、上述の問題を解決すべく、特許文献1に示すように、燃料電池スタック6の積層方向の両端部33、34の単セル18に、余分に燃料ガスを供給することにより、燃料極層12においての水素と酸素イオンとの酸化反応が活発となり、燃料極層12の活性化過電圧が低下して、セル電圧の低下を防ぐことが可能なものが提案されている。
【0021】
また、特許文献2に示すように、燃料電池スタック6のセパレータ17の側面の輻射率を変えることにより、各セパレータ17の側面からのジュール熱の放熱量を制御して、両端部33、34の単セル18の温度を高め、動作温度が低下することにより生ずる発電セル14の電気抵抗の上昇を防止し、燃料極層12の活性化過電圧の上昇を防止するために、セル電圧の低下を防止することが可能なものが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0022】
【特許文献1】特開2008−218279号公報
【特許文献2】特開2006−196325号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
しかしながら、特許文献1のように、上記燃料電池スタックの積層方向の両端部に、余分に燃料ガスを供給すると、燃料が余分に消費されコストが掛かるという問題点があった。また、特許文献2のように、放熱量を制御しても、十分な高い温度を維持することが困難であり、セル電圧の低下を十分に防ぐことができないという問題点があった。
【0024】
本発明は、上記従来技術の問題点を解決すべくなされたもので、燃料電池モジュールの燃料電池スタックにおいて、特に、両端部に位置する単セルの作動温度の低下を抑制することにより、両端部のセル電圧の低下をより確実に抑制し、固体酸化物形燃料電池の発電効率を向上することが可能な燃料電池モジュールを提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0025】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、缶体の内部に、複数の発電セルとセパレータを交互に積層し、積層方向の両端部にフランジを配して構成した燃料電池スタックを配置してなる燃料電池モジュールにおいて、上記燃料電池スタックのフランジの外端面と上記缶体との間に、上記外端面と板面とが対向するように、輻射率の低い複数枚の反射板が互いの板面間に間隔をおいて上記積層方向に対向配置されていることを特徴とするものである。
【0026】
また、請求項2に記載の発明は、上記反射板が銀または銀を被覆したステンレスにより構成されていることを特徴とするものである。
【0027】
さらに、請求項3に記載の本発明は、上記反射板が上記フランジの外形寸法より大きく形成されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0028】
請求項1〜3に記載の発明によれば、燃料電池スタックのフランジの外端面と缶体との間に、上記外端面と板面とが対向するように、複数枚の反射板を互いの板面間に間隔をおいて対向配置しているために、反射板が、上記燃料電池スタックの中で最も熱を放射し易いフランジの外端面からの放射熱、即ち発電セルの発電反応により生じた熱を反射して、上記フランジの外端面に熱を放射する。そして、この放射熱を上記フランジの外端面が吸収することにより、両端部の作動温度の低下を抑制することが可能となる。この結果、上記両端部の単セルの温度低下による、発電セルの電気抵抗の上昇を抑制し、上記両端部のセル電圧の低下を抑制することが可能となり、固定酸化物形燃料電池の発電効率が向上する。
【0029】
ところで、輻射エネルギー(放射熱)が金属に到達した際、この輻射エネルギーは、金属に反射される、金属に吸収される、金属に透過される等の性質があり、これらの割合を示すものとして、反射率、吸収率および透過率がある。この際、金属に到達した輻射エネルギーを1とすると、反射率+吸収率+透過率=1となり、どの金属であっても放射熱を100%の割合で反射することはなく、放射熱を吸収、透過する。このため、1枚の反射板を設置するのみだと、透過した放射熱が大気に放射され、透過した分の放射熱を損失してしまう傾向があった。
【0030】
ここで、本発明によれば、各々反射板が互いの板面間に間隔をおいて単セルの積層方向に対向配置しているために、フランジ側の反射板が放射熱を透過しても、透過した放射熱を次の反射板が反射し。次いで、反射した放射熱をフランジ側の反射板が透過する。次いで、この透過した放射熱をフランジの外端面が吸収する。そして、これらの動作が複数の反射板により複数回繰り返されることにより、より確実にフランジの外端面に放射熱を供給することが可能となり、フランジの外端面の温度低下をより確実に抑制することできる。
【0031】
また、請求項2に記載の発明によれば、上記反射板を銀または銀を被覆したステンレスにより構成しているために、鉄やニッケルやSUS(研磨面)等の他の光沢のある金属に比べて、銀は、作動温度の650℃〜800℃における輻射率が0.03程度と非常に低いことから、フランジの外端面からの放射熱を90%と高い割合で反射して、フランジの外端面側に放射することが可能となる。従って、他の光沢のある金属より、燃料電池スタックの両端部の作動温度の低下を抑制することが可能となる。
【0032】
さらに、請求項3に記載の本発明によれば、上記反射板を上記フランジの外形寸法より大きく形成しているために、フランジの外端面からの放射熱をより確実に広範囲で受けて、フランジの外端面全体に反射することが可能となる。従って、燃料電池スタックの作動温度の低下をより確実に抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明に係る燃料電池モジュールの一実施形態における燃料電池スタックを示す斜視図である。
【図2】図1の反射板を示す平面図である。
【図3】図1の反射板を示す側面図である。
【図4】従来に係る燃料電池モジュールの全体を示す縦断面図である。
【図5】図4の燃料電池スタックを示す正面図である。
【図6】図4の燃料電池スタックを示す平面図である。
【図7】図4の単セルを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1〜3は、本発明に係る燃料電池モジュールの一実施形態における1組の燃料電池スタック6および燃料電池スタック6に取り付ける反射板(図中符号35、36、37で示す反射板)を示すものである。なお、燃料電池スタック6自体の構成および缶体5等の構成については、図4〜7に示したものと同一であるために、同一符号を付してその説明を簡略化する。
【0035】
まず、本発明の燃料電池モジュールは、燃料電池スタック6が、図7に示したものと同様に、固体電解質層11の両面に燃料極層12および空気極層13を配した発電セル14と、燃料極層12の外側の燃料極集電体15と、空気極層13の外側の空気極集電体16と、各集電体15、16の外側のセパレータ17とを順番に縦方向に多数積層し、両端部の最上部33側にフランジ23、最下部34側にフランジ24を配置し、タイロッド25を介してボルト26で締め付けることにより構成されている。
【0036】
また、この最上部33側のフランジ23の中央部分には、下方に積層されている発電セル14、燃料極集電体15および空気極集電体16に所定の加重を付与するための錘28が載置されている。
【0037】
そして、この燃料電池スタック6は、内缶体2の底部7に支柱8により固定された架台9に、スペーサ部10を介して支持された状態で配置されている。
【0038】
一方、燃料電池スタック6の両端部33、34のフランジ23、24の外端面32と缶体5との間には、第1の反射板35と第2の反射板36と第3の反射板37が間隔をおいて配置されている。
【0039】
ここで、反射板35、36、37は、略正方形であるとともに薄肉のSUS板に銀めっきを施して形成されている。なお、SUS板にめっきをする金属として、アルミニウムのように銀より輻射率の低い金属も存在するが、融点が660℃のアルミニウムは、固体酸化物形燃料電池の作動温度である650℃〜800℃の高温雰囲気下において、溶解してしまうために使用することができない。このため、光沢の金属の中でも、輻射率が良く、且つ650℃〜800℃という高温雰囲気下で輻射率の低い銀を用いることが最適である。
【0040】
また、各々反射板35、36、37の中心部と外周部との間に、反射板用ボルト41を挿入するボルト孔38が、中心部を軸にした仮想円39上に等間隔に複数(図では3個)形成されている。
【0041】
そして、第1の反射板35のボルト孔38上に、反射板35、36、37の板面間に間隔を設けるべく所定の高さに形成された円筒状のパイプ40が、反射板35のボルト孔38とパイプ40の内孔とが連通するように配置されている。
【0042】
また、第1の反射板35のボルト孔38上に配置したパイプ40の上に、第2の反射板36が、第2の反射板36のボルト孔38とパイプ40とが連通するように配置されている。
【0043】
さらに、第2の反射板36のボルト孔38上に、パイプ40が、反射板36のボルト孔38とパイプ40の内孔とが連通するように配置されている。
【0044】
また、第2の反射板36のボルト孔38上に配置したパイプ40の上に、第3の反射板37が、第3の反射板37のボルト孔38とパイプ40とが連通するように配置されている。
【0045】
そして、反射板用ボルト41を、缶体5方向に向けて第1の反射板35のボルト孔38から通し、パイプ40の内側を介して第3の反射板37のボルト孔38に貫通させ、ナット42で締め付けることにより、各々反射板35、36、37が板面間に間隔をおいて対向配置されている。なお、反射板35と36と37との間隔が離れていると、それぞれ反応板35、36、37から放射された熱が反応ガスの流れによる対流熱伝達により、燃料電池スタック6外に放出してしまうために、反射板35と反射板36と反射板37との板面の距離を狭く構成することが好ましい。
【0046】
そして、最上部33側に配置する反射板35、36、37において、第1の反射板35のフランジ23側の板面の外周部には、アーム部43が等間隔に4個設けられており、該アーム部43を介して最上部33側のフランジ23の外端面32に設置されている。また、最下部34側に配置する反射板35、36、37において、第3の反射板37の架台9側の板面の外周部には、アーム部43が等間隔に4個設けられており、フランジ24と架台9との間に挿入し、該アーム部43を介して架台9に設置されている。なお、フランジ23、24の外端面32と反射板35の距離が離れていると、フランジ23、24から放射された熱が反応ガスの流れによる対流熱伝達により燃料電池スタック6外に放出してしまうために、反射板35の板面とフランジ23、24の外端面32の距離を短く構成することが好ましい。
【0047】
以上の構成からなる燃料電池モジュールにおいては、燃料電池スタック6の空気極集電体16の外側に配したセパレータ17に形成された酸化剤ガス通路21に酸素を空気極集電体16の周辺部まで充分に行き渡せるように供給する。
【0048】
この酸化剤ガス通路21から供給された酸素は、空気極集電体16に吐出して、この空気極集電体16に供給された酸素は、銀基合金の多孔質焼結金属板からなる空気極集電体17の気孔を通って空気極層16との界面近傍に到達する。そして、界面近傍に到達した酸素が、空気極層16との界面上で電子を受け取り、酸素イオンへ解離する際の反応が促進されて発電が行なわれる。
【0049】
この発電反応の際、発電セル14内の内部抵抗によりジュール熱が発生し、両端部33、34において、このジュール熱がフランジ23、24の外端面32から燃料電池スタック6の外部に、放射熱として放出される。
【0050】
すると、フランジ23、24の外端面32と缶体5との間に配置した銀めっきを施したステンレス板からなる第1の反射板35が、該放射熱を90%と高い割合で反射して、フランジ23、24の外端部32側に放射し、第1の反射板35に反射された放射熱をフランジ23、24の外端面32が吸収する。これにより、両端部の作動温度の低下を抑制することが可能となり、両端部33、34の単セル18の温度低下による発電セル14の電気抵抗の上昇を抑制し、両端部33、34のセル電圧の低下を抑制することが可能となる。結果、固体酸化物形燃料電池の発電効率が向上する。
【0051】
他方、フランジ23、24の外端面32から放出された放射熱の残りの10%が、第1の反射板35に吸収、透過される。
【0052】
そして、第1の反射板35から透過した放射熱を、第2の反射板36が反射し、次いで、この放射熱を第1の反射板が透過する。そして、この透過した放射熱をフランジ23、24の外端面32が吸収する。このように、これらの動作が第3の反射板を含めて繰り返されることにより、より確実にフランジ23、24の外端面32に放射熱を供給することができ、フランジ23、24の外端面32の温度の低下を確実に抑制することが可能となる。
【0053】
特に、反射板35、36、37を、銀めっきを施したステンレス板により構成しているために、銀めっきが、フランジ23、24の外端面32側からの放射熱を90%の高い割合で反射し、フランジ23、24の外端面32へと放射することが可能であり、他の光沢のある金属により、燃料電池スタック6の両端部33、34の作動温度の低下をより確実に抑制することが可能である。
【0054】
加えて、反射板35、36、37をフランジ23、24の外形寸法より大きく形成しているために、フランジ23、24の外端面32からの放射熱をより確実に広範囲に受けて、フランジ23、24の外端面32全体に反射することが可能となる。従って、燃料電池スタック6の作動温度の低下をより確実に抑制することが可能となる。
【0055】
なお。本実施形態では、燃料電池モジュールにおいて、単セル18を縦方向に複数積層した燃料電池スタック6を用いて説明したが、単セル18を横方向に複数積層した燃料電池スタック6においても、反射板を燃料電池スタック6の両端部のフランジの外端面と缶体との間に配置することにより対応可能である。
【0056】
そして、特許文献1、特許文献2および同効果を持つ発明のように、燃料電池スタック6の両端部33、34の作動温度上昇さを充分に上昇させることができないものであっても、反射板35、36、37を配置することにより、両端部33、34の作動温度がより一層上昇するため、併用して燃料電池モジュールを構成することが好ましい。
【実施例】
【0057】
まず、ランタンガレート系の固体電解質11の一方の面に、数10μmのNi−YSZからなる燃料極層12を、他方の面に数10μmのLSMからなる空気極層13を焼結して発電セル14を構成し、この発電セル14の燃料極層12側の外側に多孔質のNiからなる燃料極集電体15を配置し、空気極層13側の外側に多孔質のAgからなる空気極集電体16を配置し、各集電体15、16の外側にフェライト系ステンレスからなるセパレータ17を配置して構成した単セル18を複数積層して、該積層方向の両端部33、34にフランジ23、24を配して、タイロッド25を介してボルト26で締め付けることにより燃料電池スタック6を形成した。そして、箱形の内缶体2と、この内缶体2を、断熱材3を介して覆う外缶体4とで構成された缶体5の内部に、該燃料電池スタック6を配置して燃料電池モジュールを構成した。
【0058】
そして、フランジ23、24の外端面32と缶体5との間に、外端面32と板面とが対向するように、SUS板に銀めっきを施して構成した3枚の第1の反射板35と第2の反射板36と第3の反射板37とを順に互いの板面間に間隔をおいて単セル18の積層方向に対向配置した
【0059】
ここで、反射板35、36、37は、縦横180mm、厚さ0.5mmのSUS板に銀めっきを施して形成した。この際、反射板35、36、37は、中心部を軸にした半径70mmの仮想円39上に等間隔に3個のφ5.5mmのボルト孔38を形成した。
【0060】
また、第1の反射板35のボルト孔38に外径φ7.0mm、内径5.0mm、高さ8mmの円筒状のパイプ40を配置し、さらにその上に第2の反射板36を配置し、第2の反射板36のボルト孔38にパイプ40を配置し、さらにその上に第3の反射板37を配置して、M5×30Lの反射板用ボルト41を缶体5方向に向けて第1の反射板25のボルト孔38に通し、パイプ40の内孔を介して第3の反射板37のボルト孔38に貫通させ、ナット42で締め付けることにより、反射板35、36、37の板面間が8mmの間隔をおいて単セル18の積層方向に対向配置となるようにした。
【0061】
そして、上記実施形態の燃料電池モジュールを用いて、燃料電池スタック6の最下部34の温度を測定した。
【0062】
この際、上記実施例の燃料電池モジュールを比較するために、反射板35、36、37を設置していない燃料電池モジュール1を用いて、燃料電池スタック6の最下部34の温度を測定した。
【0063】
下記の表は、上記燃料電池モジュールのセパレータ17の積層数、運転条件、運転条件における燃料電池スタック6の最下部34および最下部34から4枚目のセパレータ17の温度を示している。
【0064】
【表1】

【0065】
上記の表1から、燃料電池スタック6の最下部34から4枚目のセパレータ17の温度を抽出すると、反射板35、36、37を設置している場合と設置していない場合、共に764℃および766℃と作動温度が変わらないことが確認できる。
【0066】
そして、燃料電池スタック6に反射板35、36、37を設置していない場合の最下部34の作動温度を抽出すると、708℃とセパレータの4枚目の温度と比べて60℃近く温度が低下していることが確認できる。これは、フランジ24の外端面32が、発電セル14の発電反応によるジュール熱を、放射熱として大気に放射してしまうことに起因している。
【0067】
一方、燃料電池スタック6に反射板35、36、37を設置している場合の最下部34の作動温度を抽出すると、723℃とセパレータ17の4枚目の温度と比べて40℃近く温度が低下しているものの、燃料電池スタック6に反射板35、36、37を設置していない場合に比べ、15℃温度が上昇していることが確認できる。これは、フランジ24の外端面32からの放射熱を反射板35、36、37が反射することにより、フランジ24の外端部32がその放射熱を吸収し、フランジ24の外端部32の作動温度の低下を抑制していることに起因している。
【0068】
なお、表1では、最下部34の温度のみを表記しているが、最下部34の結果からも、最上部33も同様に作動温度の低下を抑制することが可能である。
【0069】
以上の実施例から、燃料電池モジュールの缶体5と燃料電池スタック6のフランジ23、24の外端面32との間に反射板35、36、37を設置することにより、燃料電池スタック6の両端部33、34の作動温度の低下を抑制することが可能であることを実証できた。
【符号の説明】
【0070】
1 燃料電池モジュール
5 缶体
6 燃料電池スタック
14 発電セル
17 セパレータ
23 フランジ(最上部のフランジ)
24 フランジ(最下部のフランジ)
32 外端面
33 最上部(両端部)
34 最下部(両端部)
35 第1の反射板(反射板)
36 第2の反射板(反射板)
37 第3の反射板(反射板)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
缶体の内部に、複数の発電セルとセパレータを交互に積層し、積層方向の両端部にフランジを配して構成した燃料電池スタックを配置してなる燃料電池モジュールにおいて、
上記燃料電池スタックの上記フランジの外端面と上記缶体との間に、上記外端面と板面とが対向するように、輻射率の低い複数枚の反射板が互いの板面間に間隔をおいて上記積層方向に対向配置されていることを特徴とする燃料電池モジュール。
【請求項2】
上記反射板は、銀または銀を被覆したステンレスにより構成されていることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池モジュール。
【請求項3】
上記反射板は、上記フランジの外形寸法より大きく形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の燃料電池モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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