説明

燃料電池モジュール

【課題】起動時間の短縮を図りつつ、安定した発電性能を発揮することができる燃料電池モジュールを提供する。
【解決手段】水蒸気を生成する上部気化器5bと、水蒸気及び水素含有燃料を用いて改質ガスを発生させる改質器2と、改質ガスを用いて発電を行うセルスタック3と、上部気化器5b、改質器2及びセルスタック3を内部に収納するとともに、セルスタック3の排ガスを外部へ流通させる排ガス流路を内部に形成する筐体7と、を備え、改質器2は、セルスタック3よりも下流側の排ガス流路内であってセルスタック3よりも上方に配置され、上部気化器5bは、セルスタック3よりも下流側の排ガス流路内であって改質器2及びセルスタック3と離間した状態で改質器2と同一の高さ又は改質器2よりも上方に配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、燃料電池モジュールとしては、例えば特許文献1に記載されたものが知られている。特許文献1記載の燃料電池モジュールは、水素含有燃料を用いて改質ガスを生成するための気化部及び改質部を有する改質器、及び改質ガスを用いて発電を行うセルスタックが筐体内部に収容され、モジュール化されて構成されている。気化部(改質器)は、セルスタック上方に配置され、筐体外部より原燃料ガス及び水を供給するための供給管がそれぞれ接続されている。筐体内部には、セルスタックの排ガスを筐体外部へ流す排ガス流路が形成されている。排ガス流路内には、排ガス流路を流れる排ガスと供給管を流れる原燃料ガス又は水とで熱交換を行うための熱交換部が配置されている。
【0003】
また、気化器をセルスタックの側方に配置させた燃料電池モジュールが知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−80260号公報
【特許文献2】WO2009/028169号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献2記載の燃料電池モジュールにあっては、燃料電池モジュールの起動時において、排ガスが排ガス流路を流通する際に排ガス流路を画成する壁面と熱交換し、排ガスの熱量が壁面に奪われるため、排ガスの持つ熱量が低下する。このため、排ガスと気化器とが十分な熱交換を行うことができない場合がある。したがって、燃料電池モジュールの起動時間が長くなるおそれがある。
【0006】
上記課題を解決するために、特許文献1記載の燃料電池モジュールのように、気化器と改質器とを一体的に構成してセルスタックの上方に配置することによってセルスタックからの排ガスをなるべく早期に気化器に到達させることが考えられる。しかしながら気化器は動作することによって周囲より低温化するため、特許文献1記載の燃料電池モジュールの構成を採用した場合、燃料電池モジュールの定常運転時において気化器が改質部又はセルスタックを冷却し発電性能を低下させるおそれがある。
【0007】
そこで、本発明はこのような課題を解決するためになされたものであって、起動時間の短縮を図りつつ、安定した発電性能を発揮することができる燃料電池モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち本発明に係る燃料電池モジュールは、水蒸気を生成する第1気化器と、前記水蒸気及び水素含有燃料を用いて改質ガスを発生させる改質器と、前記改質ガスを用いて発電を行うセルスタックと、前記第1気化器、前記改質器及び前記セルスタックを内部に収納するとともに、前記セルスタックの排ガスを外部へ流通させる排ガス流路を内部に形成する筐体と、を備え、前記改質器は、前記セルスタックよりも下流側の前記排ガス流路内であって前記セルスタックよりも上方に配置され、前記第1気化器は、前記セルスタックよりも下流側の前記排ガス流路内であって前記改質器及び前記セルスタックと離間した状態で前記改質器と同一の高さ又は前記改質器よりも上方に配置されることを特徴として構成される。
【0009】
本発明に係る燃料電池モジュールでは、筐体内部に第1気化器、改質器及びセルスタックが収容され、改質器は、セルスタックよりも下流側の排ガス流路内であってセルスタックよりも上方に配置され、第1気化器は、セルスタックよりも下流側の排ガス流路内であって改質器及びセルスタックと離間した状態で改質器と同一の高さ又は改質器よりも上方に配置される。このように構成することで、セルスタックの排ガスが筐体等と熱交換する前に第1気化器へ到達するため、第1気化器に十分な熱を与えることができる。このため、起動時間の短縮を図ることが可能となる。さらに、第1気化器が改質器及びセルスタックと離間した状態で配置されているため、第1気化器において水気化がなされた際に、輻射冷却によって改質器及びセルスタックが冷却されることを緩和することができる。このため、定常運転時において安定した発電性能を発揮することができる。
【0010】
ここで、前記第1気化器と前記改質器との間には断熱部材が配置されてもよい。このように構成することで、第1気化器が排ガスの対流熱伝達のみで加熱されるとともに、気化器と改質器及びセルスタックとが直線上に隣接しないため、輻射冷却によって改質器及びセルスタックが冷却されることを一層緩和することができる。
【0011】
さらに、前記セルスタック、前記改質器及び前記第1気化器よりも下流側の前記排ガス流路内であって、前記セルスタックの下方に配置され、前記第1気化器に水又は水蒸気を供給する第2気化器を備えてもよい。このように構成することで、第2気化器で加熱された水又は水蒸気を第1気化器へ供給することができるので、第1気化器での気化を効率良く行うことができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、起動時間の短縮を図りつつ、安定した発電性能を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第1実施形態に係る燃料電池モジュールを示す概略ブロック図である。
【図2】第1実施形態に係る燃料電池モジュールの内部を説明する断面図である。
【図3】第2実施形態に係る燃料電池モジュールの内部を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明において同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0015】
(第1実施形態)
図1は、本発明の一実施形態に係る燃料電池モジュールを示す概略ブロック図である。図1に示すように、本実施形態の燃料電池モジュール1は、改質器2、セルスタック3、燃焼部4、下部気化器(第2気化器)5a、上部気化器(第1気化器)5b、及び筐体7を備えている。筐体7は、例えば直方体状を呈する金属製の箱体が採用され、その内部に改質器2、セルスタック3、燃焼部4、下部気化器5a及び上部気化器5bを収容する。
【0016】
燃料電池モジュール1は、水素含有燃料及び酸化剤を用いて、セルスタック3にて発電を行う。セルスタック3は、SOFC(Solid Oxide Fuel Cells)と称される複数のセルの積層体を有している。各セルは、固体酸化物である電解質が燃料極と酸化剤極との間に配置されることで構成されている。電解質は、例えばイットリア安定化ジルコニア(YSZ)等からなり、高温下で酸化物イオンを伝導する。燃料極は、例えばニッケルとYSZとの混合物からなり、酸化物イオンと改質ガス中の水素とを反応させて、電子及び水を発生させる。酸化剤極は、例えばランタンストロンチウムマンガナイトからなり、酸化剤中の酸素と電子とを反応させて、酸化物イオンを発生させる。
【0017】
水素含有燃料として、例えば、炭化水素系燃料が用いられる。炭化水素系燃料として、分子中に炭素と水素とを含む化合物(酸素等、他の元素を含んでいてもよい)若しくはそれらの混合物が用いられる。炭化水素系燃料として、例えば、炭化水素類、アルコール類、エーテル類又はバイオ燃料が挙げられ、これらの炭化水素系燃料は従来の石油・石炭等の化石燃料由来のもの、合成ガス等の合成系燃料由来のもの、又はバイオマス由来のものを適宜用いることができる。具体的には、炭化水素類として、メタン、エタン、プロパン、ブタン、天然ガス、LPG(液化石油ガス)、都市ガス、タウンガス、ガソリン、ナフサ、灯油又は軽油が挙げられる。
【0018】
なお、アルコール類として、メタノール又はエタノールが挙げられる。エーテル類として、ジメチルエーテルが挙げられる。バイオ燃料として、バイオガス、バイオエタノール、バイオディーゼル又はバイオジェットが挙げられる。酸化剤として、例えば、空気、純酸素ガス(通常の除去手法で除去が困難な不純物を含んでもよい)又は酸素富化空気が用いられる。
【0019】
改質器2は、燃料ブロワ10に接続されており、燃料ブロワ10により水素含有燃料が供給されるとともに、上部気化器5bに接続されており、気化された水が供給される。改質器2は、供給される水素含有燃料及び水を用いて改質ガスを発生させる。改質器2は、改質触媒を用いた改質反応により、水素含有燃料を改質して改質ガスを発生させる。改質器2での改質方式は、特に限定されず、例えば、水蒸気改質、部分酸化改質、自己熱改質、その他の改質方式を採用できる。改質器2は、後述する燃焼熱によって加熱され得るようにセルスタック3の上側に配置されている。改質器2は、改質ガスをセルスタック3の燃料極へ供給する。
【0020】
セルスタック3は、改質器2からの改質ガス、及び図示しない空気ブロワ等により供給された酸化剤を用いて発電を行う。このセルスタック3は、発電に用いられなかった改質ガス及び酸化剤をオフガスとして、燃焼部4へ供給する。
【0021】
燃焼部4は、セルスタック3から供給されるオフガスを燃焼させ、改質器2を加熱する。この燃焼部4は、セルスタック3の上部に位置している。燃焼部4の燃焼で発生した排ガスは、排ガス配管4aを介して筐体7外へ排気される。排ガス配管4aには、燃焼触媒4bが設けられており、排気される排ガスが当該燃焼触媒4bにより燃焼処理される。また、排ガス配管4aには熱交換部90が接続されており、排ガスの熱が図示しない貯湯水等と熱交換することにより回収される構成とされている。
【0022】
下部気化器5a及び上部気化器5bは、供給される水を加熱し気化させ、改質器2に供給される水蒸気を生成する。下部気化器5aは、水ポンプ8に接続されており、水ポンプ8により水が供給される。下部気化器5aは、水又は水蒸気を上部気化器5bへ供給する。上部気化器5bは、生成した水蒸気を改質器2へ供給する。この下部気化器5a及び上部気化器5bにおける水の加熱は、排ガスの熱を回収することで行われる。
【0023】
ここで、下部気化器5a及び上部気化器5bの配置を詳細に説明する。図2は、図1に示す燃料電池モジュール1の内部流路及び構成要素の配置を説明する断面図である。図2に示すように、筐体7は、改質器2及びセルスタック3を収納するための内部空間を有する。筐体7は、セルスタック3及び改質器2を収納する収納室11と、収納室11よりも外側に形成され、セルスタック3からのオフガスの燃焼による排ガスEGを通過させる排ガス流路12、及び酸化剤OXを通過させる酸化剤流路13と、収納室11、排ガス流路12及び酸化剤流路13を画成する各壁部と、を備える。なお、以下の説明においては、セルスタック3の各セルの積層方向に沿った方向(図面垂直方向)を筐体7の「長さ方向D1」とし、水平方向において各セルの積層方向と直交する方向を筐体7の「幅方向D2」とし、鉛直方向を筐体7の「上下方向D3」として以下の説明を行う。本実施形態では、収納室11、排ガス流路12、酸化剤流路13、及びこれらを形成する各壁部は、長さ方向D1から見て左右対称な構造となっている。
【0024】
収納室11は、幅方向D2に互いに対向する第1側壁部16,17、及び第1側壁部16,17の各下端部に連結される第1底壁部18によって画成される。収納室11では、セルスタック3を支持する台座41が第1底壁部18に配置される。なお、第1底壁部18と台座41との間に断熱材が配置されていてもよい。燃焼部4で発生した排ガスEGを通過させるため、収納室11の上端部は開口している。すなわち、収納室11の少なくとも燃焼部4より上方側の空間は、排ガスEGが流通するため、実質的には「排ガス流路」である。
【0025】
改質器2は、収納室11の一部である「排ガス流路」においてセルスタック3よりも下流側であって、セルスタックの上方側に配置されている。上部気化器5bは、セルスタック3及び改質器2と離間して収納室11の上端部付近に配置されている。すなわち、上部気化器5bは、収納室11の一部である「排ガス流路」においてセルスタック3及び改質器2よりも下流側であって、改質器2よりも上方側に配置されている。改質器2と上部気化器5bとの間には、改質器2と上部気化器5bとの熱のやり取りを遮断する断熱部材9が配置されている。
【0026】
排ガス流路12は、収納室11を画成する壁部と、幅方向D2において第1側壁部16,17の外側にそれぞれ配置される第2側壁部21,22と、第1側壁部16,17の上端部よりも上側に配置される第1上壁部23と、第1底壁部18よりも下側に配置される第2底壁部24と、によって画成される。
【0027】
第1上壁部23は第2側壁部21,22の上端部に連結され、第2底壁部24は第2側壁部21,22の下端部に連結される。第2側壁部21,22は、第1側壁部16,17から離間して対向するように配置される。第1上壁部23は、収納室11の上端部から離間した位置に、収納室11の上端部と対向するように配置される。第2底壁部24は、第1底壁部18から離間して対向するように配置される。
【0028】
排ガス流路12は、収納室11の上側の開口部と第1上壁部23との間に形成される排ガス流路12A,12Bと、第2側壁部21,22と第1側壁部16,17との間に形成される排ガス流路12C,12Dと、第2底壁部24と第1底壁部18との間に形成される排ガス流路12E,12Fと、を有する。排ガス流路12A,12Bは、燃焼部4からの排ガスEGを排ガス流路12C,12Dへ導く。排ガス流路12C,12Dは、排ガスEGを下方へ通過させ、当該排ガスEGの熱を外側の酸化剤流路13C,13Dを流れる酸化剤OXに供給する。排ガス流路12E,12Fは、排ガスEGを排ガス配管4aへ向かって水平方向に通過させる。
【0029】
下部気化器5aは、排ガス流路12E,12Fに配置されている。すなわち、下部気化器5aは、改質器2及び上部気化器5bよりも下流側であって、セルスタック3の下方側に配置されている。
【0030】
酸化剤流路13は、排ガス流路12を画成する壁部と、幅方向D2において第2側壁部21,22の外側にそれぞれ配置される第3側壁部26,27と、第1上壁部23よりも上側に配置される第2上壁部28と、第2底壁部24よりも下側に配置される第3底壁部29と、によって画成される。
【0031】
第2上壁部28は第3側壁部26,27の上端部に連結され、第3底壁部29は第3側壁部26,27の下端部に連結される。第3側壁部26,27は、第2側壁部21,22から離間して対向するように配置される。第2上壁部28は、第1上壁部23から離間して対向するように配置される。第3底壁部29は、第2底壁部24から離間して対向するように配置される。
【0032】
第1上壁部23には、その中央部に酸化剤供給部材36が設けられている。酸化剤供給部材36は、第1上壁部23から下方向に延在し、セルスタック3に酸化剤OXを供給する。酸化剤供給部材36は、一対のセルスタック3の間の隙間に入り込むように延びており、内部に酸化剤流路13Kを画成するとともに、先端部に貫通孔37,38を有している。
【0033】
酸化剤流路13は、第2上壁部28と第1上壁部23との間に形成される酸化剤流路13A,13Bと、第3側壁部26,27と第2側壁部21,22との間に形成される酸化剤流路13C,13Dと、第3底壁部29と第2底壁部24との間に形成される酸化剤流路13G,13Hと、を有する。酸化剤流路13G,13Hは、給気管4cからの酸化剤OXを水平方向に広がるように通過させ、酸化剤流路13C,13Dへ導く。酸化剤流路13C,13Dは、酸化剤OXを上方へ通過させ、当該酸化剤OXを内側の排ガス流路12C,12Dを流れる排ガスEGの熱によって加熱する。酸化剤流路13A,13Bは、酸化剤OXを幅方向D2における外側から内側へ向かって通過させ、酸化剤供給部材36の酸化剤流路13Kへ流して貫通孔37,38へ導く。
【0034】
第3底壁部29には、図示されない酸化剤供給部から酸化剤流路13に酸化剤を流入させるための給気管4cが設けられている。また、第2底壁部24には、排ガス流路12からの排ガスを排気する排ガス配管4aが設けられている。
【0035】
次に、改質ガス、酸化剤OX、及び排ガスEGの流れについて説明する。
【0036】
外部から供給される水素含有燃料、並びに下部気化器5a及び上部気化器5bからの水蒸気を用いて改質器2で発生した改質ガスは、改質器2と台座41とを接続する図示しないパイプを通過して台座41に流れ込み、台座41からセルスタック3の各セルに供給される。改質ガスは、セルスタック3を下方から上方へ向かって流れ、一部はオフガスとして燃焼部4での燃焼に用いられる。酸化剤OXは、外部から給気管4cを介して供給され、酸化剤流路13G,13Hにて水平方向に広がり、内側を流れる排ガスEGで加熱されながら酸化剤流路13C,13Dを上方へ向かって通過する。酸化剤OXは、酸化剤流路13A,13Bを通過し、酸化剤供給部材36の酸化剤流路13Kを流れて、貫通孔37,38を通過してセルスタック3へ供給され、一部は燃焼部4での燃焼に用いられる。燃焼部4で発生した排ガスEGは、収納室11を上方に向けて流通し、改質器2を加熱した後、上部気化器5bに到達して上部気化器5bを加熱する。その後、排ガス流路12A,12Bで排ガス流路12C,12Dに導かれ、外側を流れる酸化剤OXに熱を供給しながら排ガス流路12C,12Dを下方へ向かって通過する。排ガスEGは、底部まで達すると排ガス流路12E,12Fへ流れ込み、下部気化器5aに熱を供給しながら排ガス流路12E,12Fを通過する。排ガス流路12E,12Fを通過した排ガスEGは、排ガス配管4aから排気される。
【0037】
以上、第1実施形態に係る燃料電池モジュール1では、筐体7内部に上部気化器5b、改質器2及びセルスタック3が収容され、改質器2は、収納室11におけるセルスタック3よりも下流側の排ガス流路内であってセルスタック3よりも上方に配置され、上部気化器5bは、収納室11におけるセルスタック3よりも下流側の排ガス流路内であって改質器2及びセルスタック3と離間した状態で改質器2よりも上方に配置される。このように構成することで、セルスタック3の排ガスが筐体7等と熱交換する前に上部気化器5bへ到達するため、上部気化器5bに十分な熱を与えることができる。このため、起動時間の短縮を図ることが可能となる。さらに、上部気化器5bが改質器2及びセルスタック3と離間した状態で配置されているため、上部気化器5bにおいて水気化がなされた際に、輻射冷却によって改質器及びセルスタックが冷却されることを緩和することができる。このため、定常運転時において安定した発電性能を発揮することができる。
【0038】
また、第1実施形態に係る燃料電池モジュール1によれば、上部気化器5bと改質器2との間には断熱部材9が配置されているため、上部気化器5bが排ガスの対流熱伝達のみで加熱されるとともに、上部気化器5bと改質器2及びセルスタック3とが直線上に隣接しないため、輻射冷却によって改質器2及びセルスタック3が冷却されることを一層緩和することができる。
【0039】
さらに、第1実施形態に係る燃料電池モジュール1によれば、セルスタック3、改質器2及び上部気化器5bよりも下流側の排ガス流路12内であって、セルスタック3の下方に配置され、上部気化器5bに水又は水蒸気を供給する下部気化器5aを備えているため、下部気化器5aで加熱された水又は水蒸気を上部気化器5bへ供給することができる。よって、上部気化器5bでの気化を効率良く行うことができる。
【0040】
(第2実施形態)
第2実施形態に係る燃料電池モジュールは、第1実施形態に係る燃料電池モジュール1とほぼ同様に構成されるものであり、酸化剤供給流路13の経路のみが相違する。以下では説明理解の容易性を考慮して、第1実施形態に係る燃料電池モジュール1との相違点を中心に説明し、重複する説明は省略する。
【0041】
図3は、本実施形態に係る燃料電池モジュールの内部流路及び構成要素の配置を説明する断面図である。図3に示すように、第2上壁部28には、酸化剤流路13に酸化剤を流入させるための給気管4cが設けられている。また、第1側壁部16,17には挿通口16a、17aが形成されている。酸化剤流路13C,13Dには、挿通口16a、17aから収納室11へ連通する酸化剤流路13L,13Mが形成されている。上部気化器5bは、セルスタック3及び改質器2と離間して収納室11の上端部付近に配置されている。上部気化器5bは、収納室11の一部である「排ガス流路」においてセルスタック3及び改質器2よりも下流側であって、改質器2よりも上方側に配置されている。改質器2と上部気化器5bとの間には、改質器2と上部気化器5bとの熱のやり取りを遮断する断熱部材9が配置されている。その他の構成は第1実施形態と同様である。
【0042】
次に、酸化剤OX及び排ガスEGの流れについて説明する。
【0043】
酸化剤OXは、外部から給気管4cを介して供給され、酸化剤流路13A,13Bにて水平方向に広がり、内側を流れる排ガスEGで加熱されながら酸化剤流路13C,13Dを下方へ向かって通過する。酸化剤OXは、酸化剤流路13L,13Mから挿通口16a,17aを通過してセルスタック3へ供給され、一部は燃焼部4での燃焼に用いられる。燃焼部4で発生した排ガスEGは、収納室11を上方に向けて流通し、改質器2を加熱した後、上部気化器5bに到達して上部気化器5bを加熱する。その後、排ガス流路12A,12Bで排ガス流路12C,12Dに導かれ、外側を流れる酸化剤OXに熱を供給しながら排ガス流路12C,12Dを下方へ向かって通過する。排ガスEGは、底部まで達すると排ガス流路12E,12Fへ流れ込み、下部気化器5aに熱を供給しながら排ガス流路12E,12Fを通過する。排ガス流路12E,12Fを通過した排ガスEGは、排ガス配管4aから排気される。
【0044】
以上、第2実施形態に係る燃料電池モジュールでは、筐体7内部に上部気化器5b、改質器2及びセルスタック3が収容され、改質器2は、収納室11におけるセルスタック3よりも下流側の排ガス流路内であってセルスタック3よりも上方に配置され、上部気化器5bは、収納室11におけるセルスタック3よりも下流側の排ガス流路内であって改質器2及びセルスタック3と離間した状態で改質器2よりも上方に配置される。このように構成することで、セルスタック3の排ガスが筐体7等と熱交換する前に上部気化器5bへ到達するため、上部気化器5bに十分な熱を与えることができる。このため、起動時間の短縮を図ることが可能となる。さらに、上部気化器5bが改質器2及びセルスタック3と離間した状態で配置されているため、上部気化器5bにおいて水気化がなされた際に、輻射冷却によって改質器及びセルスタックが冷却されることを緩和することができる。このため、定常運転時において安定した発電性能を発揮することができる。
【0045】
また、第2実施形態に係る燃料電池モジュールによれば、上部気化器5bと改質器2との間には断熱部材9が配置されているため、上部気化器5bが排ガスの対流熱伝達のみで加熱されるとともに、上部気化器5bと改質器2及びセルスタック3とが直線上に隣接しないため、輻射冷却によって改質器2及びセルスタック3が冷却されることを一層緩和することができる。
【0046】
さらに、第2実施形態に係る燃料電池モジュールによれば、セルスタック3、改質器2及び上部気化器5bよりも下流側の排ガス流路12内であって、セルスタック3の下方に配置され、上部気化器5bに水又は水蒸気を供給する下部気化器5aを備えているため、下部気化器5aで加熱された水又は水蒸気を上部気化器5bへ供給することができる。よって、上部気化器5bでの気化を効率良く行うことができる。
【0047】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲で変形し、又は他のものに適用したものであってもよい。
【0048】
例えば、上記実施形態では、上部気化器5bは、収納室11の一部である「排ガス流路」においてセルスタック3及び改質器2よりも下流側であって、改質器2よりも上方側に配置されている例を説明したが、上部気化器5bは、改質器2と離間した状態で改質器2と同一の高さの位置に配置されていてもよい。
【0049】
また、上記実施形態では、下部気化器5aを備える場合を説明したが、必要に応じて下部気化器5aを備えずに構成してもよい。
【0050】
また、上記実施形態では、断熱部材9を備える場合を説明したが、必要に応じて断熱部材9を備えずに構成してもよい。
【0051】
さらに、上記実施形態では、燃料ブロア10が改質器2に接続される例を説明したが、燃料ブロア10が下部気化器5aに接続されていてもよい。
【符号の説明】
【0052】
1…燃料電池モジュール、2…改質器、3…セルスタック、5a…下部気化器(第2気化器)、5b…上部気化器(第1気化器)、7…筐体、9…断熱部材、11…収納室(一部は排ガス流路)、12…排ガス流路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水蒸気を生成する第1気化器と、
前記水蒸気及び水素含有燃料を用いて改質ガスを発生させる改質器と、
前記改質ガスを用いて発電を行うセルスタックと、
前記第1気化器、前記改質器及び前記セルスタックを内部に収納するとともに、前記セルスタックの排ガスを外部へ流通させる排ガス流路を内部に形成する筐体と、
を備え、
前記改質器は、前記セルスタックよりも下流側の前記排ガス流路内であって前記セルスタックよりも上方に配置され、
前記第1気化器は、前記セルスタックよりも下流側の前記排ガス流路内であって前記改質器及び前記セルスタックと離間した状態で前記改質器と同一の高さ又は前記改質器よりも上方に配置されること、
を特徴とする燃料電池モジュール。
【請求項2】
前記第1気化器と前記改質器との間には断熱部材が配置される請求項1に記載の燃料電池モジュール。
【請求項3】
前記セルスタック、前記改質器及び前記第1気化器よりも下流側の前記排ガス流路内であって、前記セルスタックの下方に配置され、前記第1気化器に水又は水蒸気を供給する第2気化器を備える請求項1又は2に記載の燃料電池モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−221659(P2012−221659A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−84582(P2011−84582)
【出願日】平成23年4月6日(2011.4.6)
【出願人】(000004444)JX日鉱日石エネルギー株式会社 (1,898)
【Fターム(参考)】