説明

燃料電池モジュール

【課題】壁部同士を連結する溶接箇所を少なくすると共に、製造が容易な簡素な構成の燃料電池モジュールを提供する。
【解決手段】第2のケース60を構成する、第2ケース側壁部21,22、第2ケース側壁部21,22の各上端部に連結される第2ケース上壁部23、及び第2ケース側壁部21,22の各下端部に連結される第2ケース底壁部24のうち、第2ケース側壁部21,22及び第2ケース上壁部23を、板材の折り曲げ加工により、折り曲げ部を境界としてそれぞれの壁部を一体に形成する。また、第3のケース50を構成する、第3ケース側壁部26,27、第3ケース側壁部26,27の各上端部に連結される第3ケース上壁部28、及び第3ケース側壁部26,27の各下端部に連結される第3ケース底壁部29のうち、第3ケース側壁部26,27及び第3ケース底壁部29を、板材の折り曲げ加工により、折り曲げ部を境界としてそれぞれの壁部を一体に形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の燃料電池モジュールとして、特許文献1に示す燃料電池用筐体に、改質器とセルスタックとを収納して構成したものが知られている。この燃料電池用筐体は、改質器及びセルスタックを収納する収納室と、収納室の外側に形成された排ガス流路と、排ガス流路の外側に形成された酸化剤流路と、上方の酸化剤流路から収納室へ向かって下方へ延びる酸化剤供給部材とを備えている。排ガス流路は、収納室の側方においてセルスタック上端部の燃焼部から発生する排ガスを下方へ通過させる部分と、収納室の下方において排ガスを集めて系外へ排出する部分と、を有している。酸化剤流路は、排ガス流路の下方において酸化剤が導入される部分と、排ガス流路の下方から導入された酸化剤を収納室の上方へ通過させる部分と、を有している。また、酸化剤供給部材は、水平方向においてセルの積層方向と直交する方向に並べられたセルスタックの間の隙間に入り込むように配置され、当該隙間から各セルスタックに対して酸化剤を供給するように、先端部に貫通孔を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−044990号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の燃料電池モジュールの筐体は、水平方向に広がる内部空間を有する金属製の箱体を2つ重ねた構成となっており、下側の箱体の内部空間が、酸化剤流路における酸化剤が導入される部分となり、上側の箱体の内部空間が、排ガス流路における排ガスを系外に排出する部分となっている。また、この筐体は、重ねられた2つの箱体に、上下方向に延びる複数枚の金属板を溶接し、これらの金属板を、排ガス流路及び酸化剤流路の壁面として用いている。このような構造では、筐体内に形成される流路毎に、箱体に対して金属板を溶接する必要があり、溶接箇所が多く、溶接箇所の数の多さに比例して歪が発生する可能性が高くなるという問題があった。また、金属板を箱体に溶接する構成であるため、金属板の垂直方向・水平方向等の設置位置の管理に手間が掛かるという問題もあった。また、溶接箇所の検査を行う際にも、検査箇所が多くなり、手間やコストが掛かるという問題もあった。また、2つの箱体を重ねて排ガス流路及び酸化剤流路の下側の部分を形成する構成であるため、排ガス流路及び酸化剤流路の下側部分において、両流路の区画は、下側に配置された箱体の上壁部と、上側に配置された箱体の底壁部とによって行われている。すなわち、排ガス流路と酸化剤流路とは、1枚の板材を両流路間に配置するだけで区画することができるものの、従来の構成では、両流路を区画するという機能的に重複した部位(下側に配置された箱体の上壁部、及び上側に配置された箱体の底壁部)が存在しており、効率的な構成であるとは言い難いという問題もあった。
【0005】
そこで本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、壁部同士を連結する溶接箇所を少なくすると共に、製造が容易な簡素な構成の燃料電池モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る燃料電池モジュールは、水素含有燃料を用いて改質ガスを発生させる改質器と、改質ガス及び酸化剤を用いて発電を行うセルスタックと、改質器及びセルスタックを収納すると共に、セルスタックからのオフガスを燃焼させて、セルスタックの上方に位置する改質器を加熱するための内部空間を有する筐体と、を備え、筐体は、内部空間を形成する第1のケースと、第1のケースを覆うと共に、第1のケースとの間でオフガスの燃焼による排ガスを通過させる排ガス流路を形成する第2のケースと、第2のケースを覆うと共に、第2のケースとの間で酸化剤を通過させる酸化剤流路を形成する第3のケースと、を備え、第2のケースは、互いに対向する第2ケース側壁部、板材の折り曲げにより第2ケース側壁部と一体に形成された第2ケース上壁部、及び第2ケース側壁部に固定された第2ケース底壁部を含んで構成され、第3のケースは、互いに対向する第3ケース側壁部、第3ケース側壁部に固定された第3ケース上壁部、及び板材の折り曲げにより第3ケース側壁部と一体に形成された第3ケース底壁部を含んで構成されることを特徴とする。
【0007】
この燃料電池モジュールによれば、第2のケースを構成する、第2ケース側壁部、第2ケース上壁部、及び第2ケース底壁部のうち、第2ケース側壁部及び第2ケース上壁部は、板材の折り曲げ加工により一体に形成される。また、第3のケースを構成する、第3ケース側壁部、第3ケース上壁部、及び第3ケース底壁部のうち、第3ケース側壁部及び第3ケース底壁部は、板材の折り曲げ加工により一体に形成される。このように、板材の折り曲げ加工によって各壁部を形成することにより、壁部同士を溶接等によって連結する必要がない。また、折り曲げ加工によって壁部を形成することにより、壁部の連結箇所(板材の折り曲げ箇所)における気密性を好適に保つことができる。また、溶接によって壁部を連結する箇所が少なくなるので、溶接箇所の検査を行う際にも、検査箇所が少なく、手間やコストを低減することができる。
【0008】
また、折り曲げ加工を行う場合には、第2ケース側壁部と第2ケース上壁部とで形成される部材、及び第3ケース側壁部と第3ケース底壁部とで形成される部材の寸法管理が容易となる。従って、これらの部材を用いて形成される排ガス流路及び酸化剤流路を、高い精度で形成することができる。また、折り曲げ加工によって形成された壁部の連結箇所は、溶接によって各壁部を連結した箇所に比べて、例えば、ヒートサイクルによる熱衝撃等、熱に強いものとなっている。従って、本願発明に係る燃料電池モジュールの筐体は折り曲げ加工によって形成された壁部を有していることにより、熱に強い筐体とすることができる。また、セルスタックからのオフガスを燃焼させることにより、第1のケースの上部は、他の部位と比較して高温になる。すなわち、第1のケースの上部は、オフガスを燃焼させた場合と燃焼させない場合とで温度変化が大きい。本発明では、この温度変化が大きい第1のケースの上部の外側に、折り曲げ加工によって形成された、第2ケース側壁部と第2ケース上壁部との連結部分が位置することとなる。折り曲げ加工によって形成された第2ケース側壁部と第2ケース上壁部の連結部分はヒートサイクルの熱衝撃等に強いため、温度変化が大きい箇所であったとしても、第2ケース側壁部と第2ケース上壁部との連結部分の耐久性を高めることができる。以上によって、壁部同士を連結する溶接箇所を少なくすると共に、製造が容易な簡素な構成とすることができる。また、簡素な構成となることにより、材料費を削減することができる。
【0009】
また、本発明に係る燃料電池モジュールにおいて、第2ケース底壁部の第2ケース側壁部への固定、及び、第3ケース上壁部の第3ケース側壁部への固定のうち、少なくともいずれかの固定は溶接によって行われることが好ましい。この場合には、溶接によって壁部同士を容易に連結することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、壁部同士を連結する溶接箇所を少なくすると共に、製造が容易な簡素な構成とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態に係る燃料電池モジュールの概略構成図である。
【図2】図1に示すII―II線に沿った概略断面図である。
【図3】図2に示すIII―III線に沿った断面図である。
【図4】従来の燃料電池モジュールの概略構成図である。
【図5】従来の燃料電池モジュールの組み立て工程を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0013】
図1,図2及び図3に示されるように、燃料電池モジュール1は、水素含有燃料を用いて改質ガスRGを発生させる改質器2と、改質ガスRG及び酸化剤OXを用いて発電を行うセルスタック3と、水を気化させることによって改質器2へ供給される水蒸気を生成する水気化部4と、改質器2、セルスタック3、及び水気化部4を収納する筐体6と、を備える。図1〜図3では図示されていないが、燃料電池モジュール1の下方には、ポンプ等の補機や制御機器等を収納する筐体が設けられる。なお、図1及び図2では、ガスの流れを概念的に示しているため、各壁部の板厚は省略されている。図3では、各壁部を強調して示すために、改質器2やセルスタック3等は省略されている。また、図3において、各壁部の断面が線で示されているが、各壁部は、実際には所定の板厚を有している。
【0014】
水素含有燃料として、例えば、炭化水素系燃料が用いられる。炭化水素系燃料として、分子中に炭素と水素とを含む化合物(酸素等、他の元素を含んでいてもよい)若しくはそれらの混合物が用いられる。炭化水素系燃料として、例えば、炭化水素類、アルコール類、エーテル類、バイオ燃料が挙げられ、これらの炭化水素系燃料は従来の石油・石炭等の化石燃料由来のもの、合成ガス等の合成系燃料由来のもの、バイオマス由来のものを適宜用いることができる。具体的には、炭化水素類として、メタン、エタン、プロパン、ブタン、天然ガス、LPG(液化石油ガス)、都市ガス、タウンガス、ガソリン、ナフサ、灯油、軽油が挙げられる。アルコール類として、メタノール、エタノールが挙げられる。エーテル類として、ジメチルエーテルが挙げられる。バイオ燃料として、バイオガス、バイオエタノール、バイオディーゼル、バイオジェットが挙げられる。
【0015】
酸化剤として、例えば、空気、純酸素ガス(通常の除去手法で除去が困難な不純物を含んでもよい)、酸素富化空気が用いられる。
【0016】
改質器2は、供給される水素含有燃料を用いて改質ガスRGを発生させる。改質器2は、改質触媒を用いた改質反応により、水素含有燃料を改質して改質ガスRGを発生させる。改質器2での改質方式は、特に限定されず、例えば、水蒸気改質、部分酸化改質、自己熱改質、その他の改質方式を採用できる。改質器2は、後述する燃焼熱によって加熱され得るようにセルスタック3の上側に配置されている。すなわち、セルスタック3の燃料極側に導入された改質ガスRGのオフガス(未反応改質ガス)は、空気極等の酸化剤極側に導入された空気等の酸化剤のうちの未反応酸素(未反応酸化剤ガス)と共に燃焼させられ、改質器2は、この燃焼熱によって加熱される。改質器2は、改質ガスRGをセルスタック3の燃料極へ供給する。
【0017】
セルスタック3は、SOFC(Solid Oxide Fuel Cells)と称される複数のセルの積層体を有している。各セルは、固体酸化物である電解質が燃料極と酸化剤極との間に配置されることで構成されている。電解質は、例えばイットリア安定化ジルコニア(YSZ)等からなり、高温下で酸化物イオンを伝導する。燃料極は、例えばニッケルとYSZとの混合物からなり、酸化物イオンと改質ガスRG中の水素とを反応させて、電子及び水を発生させる。酸化剤極は、例えばランタンストロンチウムマンガナイトからなり、酸化剤OX中の酸素と電子とを反応させて、酸化物イオンを発生させる。本実施形態では、セルスタック3は、台座7の上面において、各セルの積層方向と直交する方向に向かい合うように二列に配置される。ただし、セルスタック3は一列に配置されてもよい。
【0018】
台座7と改質器2とは、パイプ8で接続されている。改質器2から供給された改質ガスRGは、台座7を介してセルスタック3の各セルに供給される。セルスタック3で反応しなかった改質ガスRG及び酸化剤OXは、セルスタック3の上部の燃焼部9で燃焼する。燃焼部9でのオフガスの燃焼により、改質器2が加熱されると共に排ガスEGが発生する。
【0019】
水気化部4は、供給される水を加熱し気化させることによって、改質器2に供給される水蒸気を生成する。水気化部4で生成された水蒸気は、例えば、第1ケース底壁部18を貫通して水気化部4と改質器2とを接続する配管(不図示)を用いて、改質器2へ供給される。水気化部4における水の加熱は、例えば、改質器2の熱、燃焼部9の熱、あるいは排ガスEGの熱を回収する等、燃料電池モジュール1内で発生した熱を用いてもよい。本実施形態では、水気化部4は、底部の排ガス流路に配置され、排ガスEGの熱を回収する構成となっている。
【0020】
筐体6は、改質器2、セルスタック3、及び水気化部4を収納するための内部空間を有する、直方体状の金属製の箱体である。筐体6は、セルスタック3を収納する収納室11と、収納室11よりも外側に形成され、セルスタック3からのオフガスの燃焼による排ガスEGを通過させる排ガス流路12と、酸化剤OXを通過させる酸化剤流路13と、収納室11や排ガス流路12や酸化剤流路13を形成する各壁部と、を備える。なお、以下の説明においては、セルスタック3の各セルの積層方向に沿った方向を筐体6の「長さ方向D1」とし、水平方向において各セルの積層方向と直交する方向を筐体6の「幅方向D2」とし、鉛直方向を筐体6の「上下方向D3」として以下の説明を行う。本実施形態では、収納室11、排ガス流路12、酸化剤流路13、及びこれらを形成する各壁部は、長さ方向D1から見て左右対称な構造となっている。
【0021】
収納室11は、幅方向D2に互いに対向する第1ケース側壁部16,17、第1ケース側壁部16,17の各下端部に連結される第1ケース底壁部18、及び、長さ方向D1に互いに対向する端壁部33,34の内側に形成される。収納室11では、台座7が第1ケース底壁部18に配置される。なお、第1ケース底壁部18と台座7との間に断熱材が配置されていてもよい。燃焼部9で発生した排ガスEGを通過させるため、収納室11の上端部は開口している。
【0022】
排ガス流路12は、幅方向D2において第1ケース側壁部16,17の外側にそれぞれ配置される第2ケース側壁部21,22と、第1ケース側壁部16,17の上端部よりも上側に配置される第2ケース上壁部23と、第1ケース底壁部18よりも下側に配置される第2ケース底壁部24と、長さ方向D1に互いに対向する端壁部33,34と、によって形成される。
【0023】
第2ケース上壁部23は第2ケース側壁部21,22の上端部に連結され、第2ケース底壁部24は第2ケース側壁部21,22の下端部に連結される。第2ケース側壁部21,22は、第1ケース側壁部16,17から離間して対向するように配置される。第2ケース上壁部23は、収納室11の上端部から離間して対向するように配置される。第2ケース底壁部24は、第1ケース底壁部18から離間して対向するように配置される。
【0024】
排ガス流路12は、収納室11の上側の開口部と第2ケース上壁部23との間に形成される排ガス流路12A,12Bと、第2ケース側壁部21,22と第1ケース側壁部16,17との間に形成される排ガス流路12C,12Dと、第2ケース底壁部24と第1ケース底壁部18との間に形成される排ガス流路12E,12Fと、を有する。排ガス流路12A,12Bは、燃焼部9からの排ガスEGを排ガス流路12C,12Dへ導く。排ガス流路12C,12Dは、排ガスEGを下方へ通過させ、当該排ガスEGの熱を外側の酸化剤流路13C,13Dを流れる酸化剤OXに供給する。排ガス流路12E,12Fは、排ガスEGを排気管32へ向かって水平方向に通過させ、当該排ガスEGの熱を水気化部4に供給する。
【0025】
酸化剤流路13は、幅方向D2において第2ケース側壁部21,22の外側にそれぞれ配置される第3ケース側壁部26,27と、第2ケース上壁部23よりも上側に配置される第3ケース上壁部28と、第2ケース底壁部24よりも下側に配置される第3ケース底壁部29と、長さ方向D1に互いに対向する端壁部33,34と、によって形成される。
【0026】
第3ケース上壁部28は第3ケース側壁部26,27の上端部に連結され、第3ケース底壁部29は第3ケース側壁部26,27の下端部に連結される。第3ケース側壁部26,27は、第2ケース側壁部21,22から離間して対向するように配置される。第3ケース上壁部28は、第2ケース上壁部23から離間して対向するように配置される。第3ケース底壁部29は、第2ケース底壁部24から離間して対向するように配置される。
【0027】
第2ケース上壁部23には中央部に長さ方向D1へ延びるスリット39が形成されており、当該スリット39には、酸化剤供給部材36が挿入される。酸化剤供給部材36は、セルスタック3に酸化剤OXを供給する。酸化剤供給部材36は、一対のセルスタック3の間の隙間に入り込むように延びており、内部に酸化剤流路13Kを有すると共に、先端部に貫通孔37,38を有している。
【0028】
酸化剤流路13は、第3ケース上壁部28と第2ケース上壁部23との間に形成される酸化剤流路13A,13Bと、第3ケース側壁部26,27と第2ケース側壁部21,22との間に形成される酸化剤流路13C,13Dと、第3ケース底壁部29と第2ケース底壁部24との間に形成される酸化剤流路13G,13Hと、を有する。酸化剤流路13G,13Hは、給気管31からの酸化剤OXを水平方向に広がるように通過させ、酸化剤流路13C,13Dへ導く。酸化剤流路13C,13Dは、酸化剤OXを上方へ通過させ、当該酸化剤OXを内側の排ガス流路12C,12Dを流れる排ガスEGの熱によって加熱する。酸化剤流路13A,13Bは、酸化剤OXを幅方向D2における外側から内側へ向かって通過させ、酸化剤供給部材36の酸化剤流路13Kへ流して貫通孔37,38へ導く。
【0029】
第3ケース底壁部29には、図示されない酸化剤供給部から酸化剤流路13に酸化剤を流入させるための給気管31が設けられている。また、第2ケース底壁部24には、排ガス流路12からの排ガスを排気する排気管32が設けられている。
【0030】
側壁部16,17,21,22,26,27、上壁部23,28、及び底壁部18,24,29は、長さ方向D1における筐体6の端部6a,6bにまで延びている。筐体6の長さ方向D1の両端部には、それぞれ端壁部33,34が設けられている。第3ケース側壁部26,27、第3ケース上壁部28、第3ケース底壁部29、及び端壁部33,34は、燃料電池モジュール1の外殻を構成し、互いの接続部におけるシール性が確保されており、筐体6内の気密性が確保されている。
【0031】
次に、改質ガスRG、酸化剤OX、及び排ガスEGの流れについて説明する。
【0032】
外部から供給される水素含有燃料及び水気化部4からの水蒸気を用いて改質器2で発生した改質ガスRGは、パイプ8を通過して台座7に流れ込み、台座7からセルスタック3の各セルに供給される。改質ガスRGは、セルスタック3を下方から上方へ向かって流れ、一部はオフガスとして燃焼部9での燃焼に用いられる。酸化剤OXは、外部から給気管31を介して供給され、酸化剤流路13G,13Hにて水平方向に広がり、内側を流れる排ガスEGで加熱されながら酸化剤流路13C,13Dを上方へ向かって通過する。酸化剤OXは、酸化剤流路13A,13Bを通過し、酸化剤供給部材36の酸化剤流路13Kを流れて、貫通孔37,38を通過してセルスタック3へ供給され、一部は燃焼部9での燃焼に用いられる。燃焼部9で発生した排ガスEGは、排ガス流路12A,12Bで排ガス流路12C,12Dに導かれ、外側を流れる酸化剤OXに熱を供給しながら排ガス流路12C,12Dを下方へ向かって通過する。排ガスEGは、底部まで達すると排ガス流路12E,12Fへ流れ込み、水気化部4に熱を供給しながら排ガス流路12E,12Fを通過する。排ガス流路12E,12Fを通過した排ガスEGは、排気管32から排気される。
【0033】
図1〜図3に示すように、本実施形態に係る燃料電池モジュール1は、筐体6のうち、最外部に係る壁部を構成する部材を第3のケース50とし、セルスタック3を収納することで高熱となる部分を第2のケース60及び第1のケース70としている。
【0034】
第3のケース50は、第3ケース側壁部26,27、第3ケース上壁部28、第3ケース底壁部29、及び端壁部33,34によって構成されている。第3のケース50は、長さ方向D1における一方の端部50bが端壁部34で封止されると共に、他方の端部50aが端壁部33で封止される。これによって、第3のケース50の内部の気密性が確保される。
【0035】
なお、第3ケース側壁部26,27及び第3ケース底壁部29は、一枚の板材の折り曲げ加工により、折り曲げ部を境界としてそれぞれの壁部が一体に形成されている。すなわち、第3のケース50において、第3ケース側壁部26と第3ケース底壁部29との連結により形成された角部(折り曲げ部)M51、及び第3ケース側壁部27と第3ケース底壁部29との連結により形成された角部(折り曲げ部)M52は、それぞれ折り曲げによって形成されている。また、第3ケース側壁部26,27の上端と、第3ケース上壁部28との固定は、溶接あるいはボルト止め等によって行われる。また、第3ケース側壁部26,27、第3ケース上壁部28、及び第3ケース底壁部29における、長さ方向D1の両端部は、それぞれ端壁部33,34に、溶接により固定されている。
【0036】
第2のケース60は、第2ケース側壁部21,22、第2ケース上壁部23、第2ケース底壁部24、及び端壁部33,34によって構成されている。第2のケース60は、長さ方向D1における一方の端部60bが端壁部34で封止されると共に、他方の端部60aが端壁部33で封止される。
【0037】
なお、第2ケース側壁部21,22及び第2ケース上壁部23は、一枚の板材の折り曲げ加工により、折り曲げ部を境界としてそれぞれの壁部が一体に形成されている。すなわち、第2のケース60において、第2ケース側壁部21と第2ケース上壁部23との連結により形成された角部(折り曲げ部)M61、及び第2ケース側壁部22と第2ケース上壁部23との連結により形成された角部(折り曲げ部)M62は、それぞれ折り曲げによって形成されている。また、第2ケース側壁部21,22の下端と、第2ケース底壁部24との固定は、溶接あるいはボルト止め等によって行われる。また、第2ケース側壁部21,22、第2ケース上壁部23、及び第2ケース底壁部24における、長さ方向D1の両端部は、それぞれ端壁部33,34に、溶接により固定されている。
【0038】
第1のケース70は、第1ケース側壁部16,17、第1ケース底壁部18、及び端壁部33,34によって構成されている。第1のケース70は、上方に開口している。また、長さ方向D1における第1のケース70の一方の端部70bは、端壁部34で封止されると共に、第1のケース70の他方の端部70aは端壁部33で封止される。
【0039】
なお、第1ケース側壁部16,17及び第1ケース底壁部18は、一枚の板材の折り曲げ加工により、折り曲げ部を境界としてそれぞれの壁部が一体に形成されている。すなわち、第1のケース70において、第1ケース側壁部16と第1ケース底壁部18との連結により形成された角部M71、及び第1ケース側壁部17と第1ケース底壁部18との連結により形成された角部M72は、それぞれ折り曲げによって形成されている。また、第1ケース側壁部16,17、及び第1ケース底壁部18における、長さ方向D1の両端部は、それぞれ端壁部33,34に、溶接により固定されている。
【0040】
なお、第1のケース70、第2のケース60、及び第3のケース50として、例えば、NCA1やSUS310Sといった高温耐酸化性材料を用いることができる。
【0041】
次に、本実施形態に係る燃料電池モジュール1の作用・効果について説明する。
【0042】
まず、比較のために従来の燃料電池モジュール100の構成を図4及び図5を参照して説明する。燃料電池モジュール100の筐体106は、ベース110に対して、各流路を形成する各壁部を溶接によって順次固定することで構成される。ベース110は、第1の箱体111と第2の箱体112とを積み重ねることによって構成されている。第1の箱体111は、上壁部18Aと、底壁部24Aと、第2ケース側壁部21,22の下端部分21a,22aと、によって構成されている。また、第2の箱体112は、上壁部24Bと、底壁部29と、第3ケース側壁部26,27の下端部分26a,27aと、によって構成されている。また、酸化剤と排ガスを通すための貫通孔も所定の位置に有している。このようなベース110の上面に、側壁部16,17,21,22,26,27、上壁部23を組み付けて溶接して一体化する。最外部の上面、及び長さ方向D1の両端面には開口部が形成され、当該三箇所の開口部を蓋体として機能する第3ケース上壁部28、端壁部33,34で封止する。
【0043】
従来の燃料電池モジュール100のような構造では、各壁部同士の連結は、全て溶接によって行われており、筐体の製造が困難であるといった問題があった。
【0044】
本実施形態に係る燃料電池モジュール1では、第2のケース60を構成する、第2ケース側壁部21,22、第2ケース側壁部21,22の各上端部に連結される第2ケース上壁部23、及び第2ケース側壁部21,22の各下端部に連結される第2ケース底壁部24のうち、第2ケース側壁部21,22及び第2ケース上壁部23は、板材の折り曲げ加工により、折り曲げ部を境界としてそれぞれの壁部が一体に形成される。また、第3のケース50を構成する、第3ケース側壁部26,27、第3ケース側壁部26,27の各上端部に連結される第3ケース上壁部28、及び第3ケース側壁部26,27の各下端部に連結される第3ケース底壁部29のうち、第3ケース側壁部26,27及び第3ケース底壁部29は、板材の折り曲げ加工により、折り曲げ部を境界としてそれぞれの壁部が一体に形成される。このように、板材の折り曲げ加工によって各壁部を形成することにより、壁部同士を溶接等によって連結する必要がない。また、折り曲げ加工によって壁部を形成することにより、壁部の連結箇所(角部M51,M52,M61,M62)における気密性を好適に保つことができる。また、溶接によって壁部を連結する箇所が少なくなるので、溶接箇所の検査を行う際にも、検査箇所が少なく、手間やコストを低減することができる。
【0045】
また、折り曲げ加工を行う場合には、第2ケース側壁部21,22と第2ケース上壁部23とで形成される部材、及び第3ケース側壁部26,27と第3ケース底壁部29とで形成される部材の寸法管理が容易となる。従って、これらの部材を用いて形成される排ガス流路12及び酸化剤流路13を、高い精度で形成することができる。また、折り曲げ加工によって形成された壁部の連結箇所(角部M51,M52,M61,M62)は、溶接によって各壁部を連結した箇所に比べて、例えば、ヒートサイクルによる熱衝撃等、熱に強いものとなっている。従って、燃料電池モジュール1の筐体6は折り曲げ加工によって形成された壁部を有していることにより、熱に強い筐体とすることができる。また、セルスタック3からのオフガスを燃焼させることにより、第1のケース70によって形成される収納室11の上部は、他の部位と比較して高温になる。すなわち、収納室11の上部は、オフガスを燃焼させた場合と燃焼させない場合とで温度変化が大きい。本実施形態では、この温度変化が大きい収納室11の上部の外側に、折り曲げ加工によって形成された、第2ケース側壁部21,22と第2ケース上壁部23との連結部分が位置することとなる。折り曲げ加工によって形成された第2ケース側壁部21,22と第2ケース上壁部23との連結部分(角部M61,M62)はヒートサイクルの熱衝撃等に強いため、温度変化が大きい箇所であったとしても、第2ケース側壁部21,22と第2ケース上壁部23との連結部分の耐久性を高めることができる。以上によって、壁部同士を連結する溶接箇所を少なくすると共に、製造が容易な簡素な構成とすることができる。また、簡素な構成となることにより、材料費を削減することができる。
【0046】
また、第2ケース底壁部24の第2ケース側壁部21,22への固定、及び、第3ケース上壁部28の第3ケース側壁部26,27への固定を溶接によって行うことにより、壁部同士を容易に連結することができる。
【0047】
本発明は上述の実施形態に限定されるものではない。
【0048】
例えば、角部M51,M52,M61,M62が折り曲げ加工によって形成されていれば、セルスタック3に酸化剤を導く酸化剤流路13Kなどの構成は、適宜変更してもよい。
【符号の説明】
【0049】
1…燃料電池モジュール、2…改質器、3…セルスタック、4…水気化部、6…筐体、11…収納室、12…排ガス流路、13…酸化剤流路、16,17…第1ケース側壁部、18…第1ケース底壁部、21,22…第2ケース側壁部、23…第2ケース上壁部、24…第2ケース底壁部、26,27…第3ケース側壁部、28…第3ケース上壁部、29…第3ケース底壁部、50…第3のケース、60…第2のケース、70…第1のケース、M51,M52,M61,M62…角部(折り曲げ部)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素含有燃料を用いて改質ガスを発生させる改質器と、
前記改質ガス及び酸化剤を用いて発電を行うセルスタックと、
前記改質器及び前記セルスタックを収納すると共に、前記セルスタックからのオフガスを燃焼させて、前記セルスタックの上方に位置する前記改質器を加熱するための内部空間を有する筐体と、を備え、
前記筐体は、
前記内部空間を形成する第1のケースと、
前記第1のケースを覆うと共に、前記第1のケースとの間で前記オフガスの燃焼による排ガスを通過させる排ガス流路を形成する第2のケースと、
前記第2のケースを覆うと共に、前記第2のケースとの間で前記酸化剤を通過させる酸化剤流路を形成する第3のケースと、を備え、
前記第2のケースは、互いに対向する第2ケース側壁部、板材の折り曲げにより前記第2ケース側壁部と一体に形成された第2ケース上壁部、及び前記第2ケース側壁部に固定された第2ケース底壁部を含んで構成され、
前記第3のケースは、互いに対向する第3ケース側壁部、前記第3ケース側壁部に固定された第3ケース上壁部、及び板材の折り曲げにより前記第3ケース側壁部と一体に形成された第3ケース底壁部を含んで構成されることを特徴とする燃料電池モジュール。
【請求項2】
前記第2ケース底壁部の前記第2ケース側壁部への固定、及び、前記第3ケース上壁部の前記第3ケース側壁部への固定のうち、少なくともいずれかの固定は溶接によって行われることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−226870(P2012−226870A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−91163(P2011−91163)
【出願日】平成23年4月15日(2011.4.15)
【出願人】(000004444)JX日鉱日石エネルギー株式会社 (1,898)
【出願人】(000109026)ダイニチ工業株式会社 (108)
【Fターム(参考)】