説明

燃料電池制御システム

【課題】中央処理方式に伴う諸問題を回避した、信頼性の高い自律分散制御型の燃料電池制御システムを提供する。
【解決手段】本発明の燃料電池制御システムは、水素を用いて発電する複数の燃料電池5aと、各燃料電池5aに連結され、前記各燃料電池5aを自律制御する複数の第1の自律分散制御部4aと、電力を融通するための配電系2と、配電系2に関する配電系情報及び各燃料電池5aに関する燃料電池情報を含むデータを保持する制御データフィールド1と、を備え、各第1の自律分散制御部4aは、制御データフィールド1に保持されているデータに含まれる配電系情報を参照し、配電系2が電力を受け入れ可能な状態であることを確認したとき、当該第1の自律分散制御部4aに連結されている燃料電池5aを発電させ、該燃料電池5aの発電により生じた電力を配電系2に供給することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、パーソナルコンピュータ、携帯電話等のコードレス機器の普及に伴い、その電源である電池は、ますます小型化、高容量化が要望されている。現在、エネルギー密度が高く、小型軽量化を図り得る二次電池としてリチウムイオン二次電池が実用化されており、ポータブル電源としての需要が増大している。しかし、このリチウムイオン二次電池は出力容量に限界があり、使用されるコードレス機器の種類によっては十分な連続使用時間を保証する程度までには至っていない。
【0003】
このような状況の中で、上記要望に応え得る電池の一例として、固体高分子電解質型燃料電池(PEFC:Polymer Electrolyte Fuel Cell)が検討されている。電解質に固体高分子電解質、正極活物質に空気中の酸素、負極活物質に燃料を用いる固体高分子電解質型燃料電池は、リチウムイオン二次電池よりも高エネルギー密度化が期待できる電池として注目されている。
【0004】
燃料電池は、酸素及び燃料の供給さえ行えば連続的に使用することが可能で、このような燃料電池に用いる燃料としては水素、メタノール等が提案され、種々開発が行われているが、高出力が期待できる点で、水素を燃料とする燃料電池が注目されている。
【0005】
燃料電池の燃料源となる水素を製造する技術としては、100℃以下の低温で化学反応により水素を発生させて燃料として用いる方法が提案されている。この方法は、例えば、アルミニウム、マグネシウム、ケイ素、亜鉛等と水とを反応させて水素を発生させる金属を水素源とするものである(特許文献1〜6)。
【0006】
アルミニウムとアルカリまたは酸とを反応させる特許文献1〜3に記載の方法によれば、化学的に簡便に水素が発生するが、アルミニウムに見合う当量のアルカリまたは酸を添加する必要があり、水素源以外の材料の比率が高くなることによるエネルギー密度の減少の問題が生じる。また、反応生成物である酸化物または水酸化物が上記金属の表面に皮膜を形成して、内部の金属と水とが接触できなくなり、酸化反応が上記金属の表面のみで停止するという問題が生じやすい。このため、特許文献3では、アルミニウムの割合を85重量%以下とした水素発生材料が提案されている。しかしながら、特許文献3の技術では、酸化カルシウムをアルミニウムとの総量において15重量%以上添加しなければ水素を発生させることができないばかりか、反応時間とともに水素発生速度が大きく変動し、水素発生反応の効率や安定性の点で大きな問題を生ずることとなる。
【0007】
一方、機械的に表面皮膜を取り除くことにより上記問題を回避しようとする特許文献4では、表面皮膜を取り除くための機械的設備が必要になる等、装置が大型化するという問題を生じる。また、特許文献5では、上記水酸化物の皮膜を形成しにくくするための触媒としてアルミナを添加して、50℃という低温で水素を発生させている。しかし、アルミニウムだけでは水素が発生せず、一定量の触媒を添加する必要があるため、アルミニウムの含有量が低下するという問題がある。
【0008】
これらの問題を解決する技術として、特許文献6では、アルミニウム、マグネシウムおよびそれらの合金よりなる群から選択される少なくとも1種の金属材料を含む水素発生材料を用いることで、低温で簡便に水素を発生させることができる水素製造装置および燃料電池が開示されている。
【0009】
ところで、近年、複数の機器等を制御する技術として、自律分散制御が注目されてきている。自律分散制御を行う複数の機器等から構成される自律分散システムは、例えば、複数の情報機器(コンピュータ、データ処理装置、制御装置、端末装置、中継装置等)がネットワークに分散して接続され、かつ各情報機器が自律的かつ互いに対等に動作するように構成されるシステムである。自律分散システムは、構成機器の保守や拡張あるいは更新を統括管理する必要がないという点で優れている。
【0010】
例えば、特許文献7に記載の発明は、そのような自律分散システムであって、複数のデータフィールド系と、これらのデータフィールド系を結ぶ通信ネットワークと、データフィールド系に接続された複数のノードと、ノードに接続された自律分散型情報機器等による複数の構築対象と、データフィールド系のいずれかに接続されたノードに設けられた構築ツールと、構築ツールから構築ツールの設けられていない他のノードに接続された構築対象へのプログラム等の構築情報の設定をデータフィールド系を介して機能コード通信により行う構築手段とを備えた自律分散システムである。自律分散システムにより、複数の構成要素を分散させ、効率的な制御と柔軟な変更が可能となり、注目されている。
【0011】
こうした自律分散システムの一つとして、特許文献8には、自律分散制御型蓄電システムが開示されている。特許文献8の自律分散制御型蓄電システムでは、所定領域に分散させた蓄電装置群から複数の負荷へ給電する蓄熱システムにおいて、それぞれ外部の個別電源から主入力部を介して蓄電装置に蓄えた電力を主出力部より外部負荷へ供給する複数の蓄電ユニットから成り、更に各蓄電ユニットの蓄電装置は、該ユニットと直結した少なくとも一つの蓄電ユニットの蓄電装置を経由して全ての蓄電ユニットの蓄電装置と接続しており、又各蓄電ユニットは、その蓄電装置と上記直結蓄電ユニットの蓄電装置とのうち供給可能な蓄電量が多い方から少ない方へ送電するように制御した副入出力部を有する。特許文献8の個別電源に関しては、商用交流電源以外に、自然エネルギーを利用した発電手段(太陽電池等の光電池、風力発電・熱電変換・圧電変換等)、更には人工エネルギーを2次利用した発電手段(建物からの廃熱を利用した熱電変換や照明光を利用した光発電)、燃料電池・マイクロガスタービン等の分散型発電装置、鉛蓄電池・リチウムイオン電池外部大容量バッテリーを用いることができると開示されている。
【0012】
また、非特許文献1には、電気および水素を住宅の間で融通したり、燃料電池スタック等の機器を強要したエネルギーネットワークが提案されている。非特許文献1のFig.1には、複数の家庭に燃料電池スタックが設置され、燃料電池スタックの発電により生じた電気を融通でき、かつ水素をパイプを経由して融通できるような構成が示されている。さらに、非特許文献1のFig.6には、スーパーバイジングを行うサーバーによって複数のクライアント側の機器を制御し、各クライアント側の機器が燃料電池および直流電子負荷装置の制御を行うシステムが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】米国特許第6506360号公報
【特許文献2】特許第2566248号公報
【特許文献3】特開2004−231466号公報
【特許文献4】特開2001−31401号公報
【特許文献5】特表2004−505879号公報
【特許文献6】特開2006−306700号公報
【特許文献7】特開平11−232219号公報
【特許文献8】特開2006−174540号公報
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】H. Aki, S. Yamamoto, Y. Ishikawa, J. Kondoh, T. Maeda, I. Ishii, "Operational Strategies of Networked Fuel Cells in Residential Homes", IEEE Transactions on Power Systems, Vol. 21, pp. 1405-1414 (2006).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、特許文献6には、燃料電池や水素発生装置が複数存在する場合に、高信頼性を保ち、かつ柔軟な運用が可能なシステムを構築するための技術について記載されていない。
【0016】
特許文献7及び特許文献8には、燃料電池を分散型発電装置の一例として用いることは記載されているものの、燃料電池で燃料として用いられる水素をシステムの中で融通する技術については全く記載されていない。また、水素供給を必要とする燃料電池の発電により生じた電力をシステムの中で融通するための技術についても何ら記載されていない。
【0017】
非特許文献1に記載の技術は、スーパーバイジングを行うサーバーで複数のクライアント側の機器を制御する方式であり、サーバーが最終的な中央処理を行う形態となっており、中央処理方式に伴う諸問題が存在する。すなわち、サーバーに不具合が発生した場合に、システム全体に影響が及ぶという問題や、システムの構成要素を更新しにくい、あるいは柔軟なシステム構築が難しい等の問題がある。
【0018】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、複数の燃料電池が分散された燃料電池制御システムにおいて各燃料電池を自律制御することにより、中央処理方式に伴う諸問題を回避した、信頼性の高い自律分散制御型の燃料電池制御システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の第1の燃料電池制御システムは、水素を用いて発電する複数の燃料電池と、上記各燃料電池に連結され、上記各燃料電池を自律制御する複数の第1の自律分散制御部と、電力を融通するための配電系と、上記配電系に関する配電系情報及び上記各燃料電池に関する燃料電池情報を含むデータを保持する制御データフィールドと、を備え、上記各第1の自律分散制御部は、上記制御データフィールドに保持されている上記データに含まれる上記配電系情報を参照し、上記配電系が電力を受け入れ可能な状態であることを確認したとき、当該第1の自律分散制御部に連結されている燃料電池を発電させ、該燃料電池の発電により生じた電力を上記配電系に供給することを特徴とする。
【0020】
本発明の第2の燃料電池制御システムは、水素を用いて発電する燃料電池と、水素を発生する水素発生部とを含む複数の水素発生部搭載燃料電池と、上記各水素発生部搭載燃料電池に連結され、上記各水素発生部搭載燃料電池内の上記燃料電池及び水素発生部を自律制御する複数の自律分散制御部と、電力を融通するための配電系と、水素を融通するための水素融通系と、上記配電系に関する配電系情報、上記水素融通系に関する水素融通系情報、上記燃料電池に関する燃料電池情報、上記水素発生部に関する水素発生部情報を含むデータを保持する制御データフィールドと、を備え、上記各自律分散制御部は、上記制御データフィールドに保持されている上記データに含まれる上記配電系情報を参照し、上記配電系が電力を受け入れ可能な状態であることを確認したとき、当該自律分散制御部に連結されている水素発生部で水素を発生させて当該自律分散制御部に連結されている燃料電池に供給し、上記水素を用いて該燃料電池を発電させ、該燃料電池の発電により生じた電力を上記配電系に供給することを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、複数の燃料電池が分散された燃料電池制御システムにおいて各燃料電池を自律制御することにより、中央処理方式に伴う諸問題を回避した、信頼性の高い自律分散制御型の燃料電池制御システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の燃料電池制御システムの一例を示す概略構成図である。
【図2】制御データフィールドのデータ構成の一例を説明するための図である。
【図3】燃料電池に連結されている自律分散制御部による自律分散制御を説明するためのフローチャート図である。
【図4】水素発生部に連結されている自律分散制御部による自律分散制御を説明するためのフローチャート図である。
【図5】本発明の燃料電池制御システムの他の例を示す概略構成図である。
【図6】本発明の燃料電池制御システムの他の例を示す概略構成図である。
【図7】図5に示す燃料電池制御システムにおける、自律分散制御を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の第1の燃料電池制御システムは、水素を用いて発電する複数の燃料電池と、上記各燃料電池に連結され、上記各燃料電池を自律制御する複数の第1の自律分散制御部と、電力を融通するための配電系と、上記配電系に関する配電系情報及び上記各燃料電池に関する燃料電池情報を含むデータを保持する制御データフィールドと、を備え、上記各第1の自律分散制御部は、上記制御データフィールドに保持されている上記データに含まれる上記配電系情報を参照し、上記配電系が電力を受け入れ可能な状態であることを確認したとき、当該第1の自律分散制御部に連結されている燃料電池を発電させ、該燃料電池の発電により生じた電力を上記配電系に供給することを特徴とする。これにより、複数の燃料電池を自律制御できるため、中央処理方式に伴う諸問題を回避した、信頼性の高い自律分散制御型の燃料電池制御システムを実現できる。
【0024】
上記第1の燃料電池制御システムにおいて、水素を発生する水素発生部と、上記水素発生部に連結され、上記水素発生部を自律制御する第2の自律分散制御部と、水素を融通するための水素融通系と、をさらに備え、上記制御データフィールドに保持されている上記データは、上記水素融通系に関する水素融通系情報及び上記水素発生部に関する水素発生部情報を含み、上記第2の自律分散制御部は、上記制御データフィールドに保持されている上記データに含まれる上記水素融通系情報を参照し、上記水素融通系が水素を受け入れ可能な状態であることを確認したとき、上記水素発生部で水素を発生させて上記水素融通系に供給する。これにより、燃料電池とは別に分散されている水素発生部を自律制御できるため、より信頼性の高い自律分散制御型の燃料電池制御システムを実現できる。また、上記水素発生部及び上記第2の自律分散制御部を複数備えた場合には、複数の水素発生部を自律制御できるため、さらに信頼性の高い自律分散制御型の燃料電池制御システムを実現できる。
【0025】
上記第1の燃料電池制御システムにおいて、水素を用いて発電する燃料電池と、水素を発生する水素発生部とを有する水素発生部搭載燃料電池と、上記水素発生部搭載燃料電池に連結され、上記水素発生部搭載燃料電池内の上記燃料電池及び水素発生部を自律制御する第3の自律分散制御部と、水素を融通するための水素融通系と、をさらに備え、上記制御データフィールドに保持されている上記データは、上記水素融通系に関する水素融通系情報及び上記各水素発生部に関する水素発生部情報を含み、上記第3の自律分散制御部は、上記制御データフィールドに保持されている上記データに含まれる上記配電系情報を参照し、上記配電系が電力を受け入れ可能な状態であることを確認したとき、当該第3の自律分散制御部に連結されている水素発生部で水素を発生させて当該第3の自律分散制御部に連結されている燃料電池に供給し、上記水素を用いて該燃料電池を発電させ、該燃料電池の発電により生じた電力を上記配電系に供給する。これにより、水素発生部搭載型の燃料電池を自律制御できるため、より信頼性の高い自律分散制御型の燃料電池制御システムを提供できる。
【0026】
本発明の第2の燃料電池制御システムは、水素を用いて発電する燃料電池と、水素を発生する水素発生部とを有する複数の水素発生部搭載燃料電池と、上記各水素発生部搭載燃料電池に連結され、上記各水素発生部搭載燃料電池内の上記燃料電池及び上記水素発生部を自律制御する複数の自律分散制御部と、電力を融通するための配電系と、水素を融通するための水素融通系と、上記配電系に関する配電系情報、上記水素融通系に関する水素融通系情報、上記燃料電池に関する燃料電池情報、上記水素発生部に関する水素発生部情報を含むデータを保持する制御データフィールドと、を備え、上記各自律分散制御部は、上記制御データフィールドに保持されている上記データに含まれる上記配電系情報を参照し、上記配電系が電力を受け入れ可能な状態であることを確認したとき、当該自律分散制御部に連結されている水素発生部で水素を発生させて当該自律分散制御部に連結されている燃料電池に供給し、上記水素を用いて該燃料電池を発電させ、該燃料電池の発電により生じた電力を上記配電系に供給することを特徴とする。これにより、水素発生部搭載型の燃料電池を自律制御できるため、中央処理方式に伴う諸問題を回避した、信頼性の高い自律分散制御型の燃料電池制御システムを提供できる。
【0027】
ここで、本明細書において、「配電系」とは、燃料電池の発電により生じた電力を伝送するための伝送路を意味しており、電力を必要とする負荷に対して伝送する等、柔軟に電力を融通することが可能である。また、「水素融通系」とは、水素発生部で発生された水素を送るための配管系を意味しており、柔軟に水素を融通することができる。
【0028】
上記水素発生部は、例えば水素発生材料を水と反応させる方法、燃料ガスを改質する方法、水素吸蔵合金を用いる方法等を用いて水素を発生させることができる。
【0029】
水素発生材料を水と反応させる方法を用いた場合、水素発生材料が、アルミニウム、マグネシウム及びそれらの合金よりなる群から選択される少なくとも1 種の金属材料を含有し、水との反応により水素を発生する水素発生材料であり、上記金属材料が、60μm以下の粒径の粒子を80質量%以上含有していることが好ましい。また、水素発生材料が、常温で水と反応して発熱する発熱材料を更に含有することが、さらに好ましい。
【0030】
以下、本発明の燃料電池制御システムについて、図面を参照しながら具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0031】
(実施形態1)
まず、本発明の燃料電池制御システムの一例を、実施形態1として説明する。本実施形態では、燃料電池と、水素発生部が別々に分散されている。図1は、本実施形態の燃料電池制御システムの概略構成を示す図である。
【0032】
本実施形態の燃料電池制御システムは、図1に示すように、水素を燃料源として用いて発電を行う燃料電池5aと、水素を発生する水素発生部6aと、燃料電池5aに連結され、燃料電池5aを自律制御する自律分散制御部4aと、水素発生部6aに連結され、水素発生部6aを自律制御する自律分散制御部4bとを備えている。また、この燃料電池制御システムは、各種情報が保持されている制御データフィールド1と、電力を融通するための配電系2と、水素を融通するための水素融通系3とを有する。
【0033】
燃料電池5aとしては、例えば、PEFCを用いることができる。なお、本発明の燃料電池は、PEFCに限定されるものではなく、負極に水素が供給され、正極に酸素あるいは空気が供給されることで発電可能な燃料電池であればよい。
【0034】
水素発生部6aは、例えば、水素発生材料と水とを反応させて水素を発生させる。なお、水素発生方法はこれに限定されるものではなく、燃料ガスを改質する方法、水素吸蔵合金を用いる方法、高圧容器に格納された水素を利用する方法等、多様な手段を用いることができる。
【0035】
配電系2には、図示しない部分に、電流検出部及び電圧検出部が接続されており、配電系2の許容範囲の電流及び電圧が流れていることを監視する。さらに、配電系2に二次電池のような蓄電部を連結して、その蓄電部に余剰の電力を蓄積可能な形態としてもよい。
【0036】
制御データフィールド1は、本発明の燃料電池制御システムに分散されている自律分散制御部の間で共有可能な制御データを保持している。制御データフィールド1は、デジタル情報の送信、受信が可能なものであればよいため、制御データフィールド1としては、有線ネットワークであっても、無線ネットワークであってもよい。また、半導体やハードディスク等の記録媒体にメモリー空間を設け、そのメモリー空間に対して読み出し及び書き込みを行う形態であってもよい。
【0037】
ここで、制御データフィールド1のデータ構成の一例を、図2に示す。図2に示す制御データフィールド1には、配電系情報101、水素融通系情報102、燃料電池情報103、104、水素発生部情報105が含まれている。
【0038】
このうち、配電系情報101には、対配電系電力供給許可情報、対配電系電力要求情報、配電系稼動状態情報、配電系属性情報、接続負荷情報が含まれる。
【0039】
ここで、対配電系電力供給許可情報とは、燃料電池からの電力供給を配電系が許容できる状態であるか否かを判別するための情報である。例えば、配電系に既に電力が大量に供給されていて、配電系にこれ以上の電力が供給されると、配電系の許容電力量を超えてしまう場合、対配電系電力供給許可情報には、電力供給不許可状態を示す情報が格納される。また、配電系に電子機器や充電機器等の負荷が全く連結されておらず、配電系に供給された電力を消費する負荷がない場合も、対配電系電力供給許可情報には、電力供給不許可状態を示す情報が格納される。一方、配電系に保持されている電力量が少なく、配電系の許容電力量まで余裕があり、かつ電子機器や充電機器等の負荷が連結されている場合、対配電系電力供給許可情報には、電力供給許可状態を示す情報が格納される。
【0040】
対配電系電力要求情報とは、配電系に連結した電子機器や充電機器等の負荷が、配電系から電力を供給してもらうことを要求するための情報である。例えば、携帯電話用充電器などの電子機器を配電系に連結した場合、対配電系電力要求情報には、電力要求を示す情報が格納される。
【0041】
配電系稼動状態情報とは、配電系が稼動状態であるか非稼動状態であるかを判別するための情報である。例えば、保守などのために配線系を稼動停止する場合、配電系稼動状態情報には、配電系が非稼動状態であることを示す情報が格納される。
【0042】
配電系属性情報とは、配電系の属性に関する情報であり、配電系の許容電力量、最大許容電圧、最大許容電流、バージョン情報、配電系の保守に関する情報を含む。
【0043】
接続負荷情報とは、接続される負荷に関する情報であり、配電系に接続されている負荷によって配電系が流した電流および電圧に関する情報を含む。
【0044】
水素融通系情報102には、対水素融通系水素供給許可情報、対水素融通系水素要求情報、水素融通系稼動状態情報、水素融通系属性情報が含まれる。
【0045】
ここで、対水素融通系水素供給許可情報とは、水素発生部からの水素供給を水素融通系が許容できる状態であるか否かを判別するための情報である。例えば、水素融通系に既に水素が大量に供給されていて、水素融通系にこれ以上に水素が供給されると、水素融通系の許容水素量を超えてしまう場合、対水素融通系水素供給許可情報には、水素供給不許可状態に示す情報が格納される。また、水素融通系に燃料電池が一つも連結されておらず、水素融通系に供給された水素を消費する燃料電池がない場合も、対水素融通系水素供給許可情報には、水素供給不許可状態を示す情報が格納される。一方、水素融通系に保持されている水素量が少なく、水素融通系の許容水素量まで余裕があり、かつ燃料電池が連結されている場合、対水素融通系水素供給許可情報には、水素供給許可状態を示す情報が格納される。
【0046】
対水素融通系水素要求情報とは、水素融通系に連結した燃料電池が、水素融通系から水素を供給してもらうことを要求するための情報である。例えば、燃料電池が水素融通系に連結されていて、発電のために水素を必要とする場合、対水素融通系水素要求情報には、水素要求を示す情報が格納される。
【0047】
水素融通系稼動状態情報とは、水素融通系が稼動状態であるか非稼動状態であるかを判別するための情報である。例えば、保守などのために水素融通系を稼動停止する場合、水素融通系稼動状態情報には、水素融通系が非稼動状態であることを示す情報が格納される。
【0048】
水素融通系属性情報とは、水素融通系の属性に関する情報であり、水素融通系の許容水素量、最大水素流量、最大水素圧力、バージョン情報、水素融通系の保守に関する情報などを含む。
【0049】
燃料電池情報103、104としては、燃料電池機器番号、燃料電池種類、燃料電池状態情報等が含まれる。図2において、燃料電池情報103は、例えば、燃料電池機器番号がFC01の燃料電池に関する情報であり、当該燃料電池の燃料電池機器番号、燃料電池種類、燃料電池状態情報が含まれる。また、燃料電池情報104は、例えば、燃料電池機器番号がFC02の燃料電池に関する情報であり、当該燃料電池の燃料電池機器番号、燃料電池種類、燃料電池状態情報が含まれる。このように制御データフィールドの中に燃料電池種類に関する情報が共有されているため、多様な種類の複数の燃料電池を、本発明の燃料電池制御システムに連結可能である。また、燃料電池状態情報としては、例えば、燃料電池の定格電圧、最大電圧、電流電圧特性、平均寿命に関する情報が含まれる。これらを複数の自律分散制御部間で共有することで、安定したシステムの運用を図ることができる。さらに、燃料電池状態情報に、燃料電池の異常発生頻度を含めた場合、異常発生頻度の高い燃料電池については使用しないようにすることができるため、システムの信頼性を高めることができる。
【0050】
水素発生部情報105は、水素発生部番号、水素発生部種類、水素発生部状態情報から構成され、こうした情報を制御データフィールドで共有し、参照することで、複数の水素発生部や、水素発生方法が異なる複数の水素発生部を用いることが可能となる。水素発生部状態情報としては、例えば、水素発生部での水素流量、温度、圧力、水素発生部自身の平均寿命に関する情報が含まれる。これらを複数の自律分散制御部間で共有することで、安定したシステムの運用を図ることができる。
【0051】
さらに、上記水素発生部状態情報に、水素発生部の異常発生頻度を含めた場合、異常発生頻度の高い水素発生部については使用しないようにすることができるため、システムの信頼性を高めることができる。ここで、異常発生頻度とは、自律分散制御部が制御する対象が、正常な動作を行わなかった頻度に関する情報である。自律分散制御部が制御する対象としては、燃料電池または水素発生部が挙げられる。燃料電池の異常発生頻度は、燃料電池が発電動作を開始した後、発電に異常が発生した確率に関する情報が格納される。水素発生部の異常発生頻度は、水素発生部が水素発生を開始した後、水素発生に異常が発生した確率に関する情報が格納される。
【0052】
また、上記水素発生部状態情報に、水素発生材料の反応累積量に応じた水素発生可能容量情報を含めた場合には、水素発生部で発生可能な水素量を事前に確認でき、発生可能な水素量が少ない場合には、当該水素発生部による水素発生を停止させたり、当該水素発生部に新たな水素発生材料を補給したりすることができる。
【0053】
次に、自律分散制御部4aによる自律分散制御を説明する。図3は、燃料電池5aに連結されている自律分散制御部4aによる自律分散制御を説明するためのフローチャート図である。
【0054】
まず、制御データフィールド1に保持されているデータを取得(受信)すると(ステップS201)、受信したデータに含まれる配電系情報101(図2)中の対配電系電力供給許可情報を参照し、配電系2に対して電力供給許可状態であるかを判断する(ステップS202)。ここで、「配電系2に対して電力供給許可状態」とは、本発明の配電系2に接続された機器(ここでは、燃料電池5a)から配電系2に電力を供給することが許可されている状態を意味する。例えば、図示しない部分に、十分な充電容量を有する充電機器等を接続することで、配電系2に対して電力供給許可状態とすることができる。つまり、配電系に電子機器や充電機器等の負荷が全く連結されていない場合、配電系に供給された電力を、適切に消費する負荷がない状態であるため、このような状態で無理矢理に電力を配電系に供給すると、配電系の電気抵抗に応じた発熱が発生し、配電系に破損を生ずるおそれがある。しかし、十分な充電容量を有する充電機器を接続すれば、上記のような状態で配電系に電力が供給されても、その電力を充電機器の充電に用いればよいので、意図しない発熱を抑えることができる。
【0055】
ステップS202の判断の結果、配電系2に対して電力供給許可状態である場合、ステップS203に進み、そうでない場合、ステップS201の制御データフィールド1のデータを受信する状態に戻る。
【0056】
ステップS203では、燃料電池情報103(図2)中の燃料電池状態情報を確認し、制御する燃料電池5a、つまり、本自律分散制御部4aに連結されている燃料電池5aが発電可能な状態であるかを判断する。なお、ここでは、燃料電池5aに関する情報が図2の燃料電池情報103に保持されているものとした。ステップS203の判断の結果、制御する燃料電池5aが発電可能な状態である場合、ステップS204に進み、そうでない場合、ステップS201の制御データフィールド1のデータを受信する状態に戻る。
【0057】
ステップS204では、制御する燃料電池5aが現在発電中であるかを判断する。ステップS204の判断の結果、制御する燃料電池5aが現在発電中である場合、ステップS205に進み、そうでない場合、制御する燃料電池5aで発電を開始させて(ステップS206)、ステップ205に進む。
【0058】
ステップS205では、燃料電池5aの発電により生じた電力を配電系2に送電し、かつ制御データフィールド1に保持されている配電系情報101(図2)と燃料電池情報103(図2)の燃料電池状態情報を更新し、ステップS207に進む。
【0059】
ステップS207では、更新後のデータに基づいて、配電系2に対して、電力供給許可状態かどうかを判断する。ステップS207の判断の結果、配電系2に対して電力供給許可状態である場合、ステップS208に進み、そうでない場合、ステップS209に進む。
【0060】
ステップS208では、制御する燃料電池5aが発電可能かどうかを判断する。ステップS208の判断の結果、制御する燃料電池5aが発電可能である場合、ステップS204に進み、そうでない場合、ステップS209に進む。
【0061】
ステップS209では、制御する燃料電池5aの発電を停止し、制御データフィールド1の配電系情報101(図2)と燃料電池情報103(図2)の燃料電池状態情報を更新する。そして、ステップS201の制御データフィールド1のデータを受信する状態に戻る。
【0062】
このように、自律分散制御部4aは、図3に示すフローチャートに従う処理を行い、燃料電池5aを自律制御することにより、中央処理方式に伴う諸問題を回避した、信頼性の高い自律分散制御型の燃料電池制御システムを実現可能で、安定した燃料電池制御システムの運用が可能となる。また、自律分散制御部4aは、図3に示す自律分散制御に応じて制御データフィールド1の内容の更新を行うことで、より信頼性の高い燃料電池制御システムを実現できる。
【0063】
次に、自律分散制御部4bによる自律分散制御を説明する。図4は、水素発生部6aに連結されている自律分散制御部4bによる自律分散制御を説明するためのフローチャート図である。
【0064】
まず、制御データフィールド1に保持されているデータを取得(受信)すると(ステップS301)、受信したデータに含まれる水素融通系情報102(図2)中の対水素融通系水素供給許可情報を参照し、水素融通系3に対して水素供給許可状態であるかを判断する(ステップS302)。ここで、「水素融通系3に対して水素供給許可状態」とは、本発明の水素融通系3に接続された機器(ここでは、水素発生部6a)から水素融通系3に水素を供給することが許可されている状態を意味する。
【0065】
ステップS302の判断の結果、水素融通系3に対して水素供給許可状態である場合、ステップ303に進み、そうでない場合、ステップ301の制御データフィールド1のデータを受信する状態に戻る。
【0066】
ステップS303では、水素発生部情報105(図2)中の水素発生部状態情報を確認し、自律分散制御部4b自身が制御する水素発生部6aが水素発生可能な状態であるかを判断する。なお、ここでは、水素発生部6aに関する情報が、図2の105に保持されているものとした。ステップS303の判断の結果、制御する水素発生部6aが水素発生可能な状態である場合、ステップS304に進み、そうでない場合、ステップS301の制御データフィールド1のデータを受信する状態に戻る。
【0067】
ステップS304では、制御する水素発生部6aが現在水素発生中であるかを判断する。ステップS304の判断の結果、制御する水素発生部6aが現在水素発生中である場合、ステップS305に進み、そうでない場合、制御する水素発生部6aで水素発生を開始させて(ステップS306)、ステップ305に進む。
【0068】
ステップS305では、水素発生部6aで発生させた水素を水素融通系3に供給し、かつ制御データフィールド1に保持されている水素融通系情報102(図2)と水素発生部情報105(図2)の水素発生部状態情報を更新し、ステップS307に進む。なお、ここでは、水素発生部6aに関する情報は、図2の105に保持されているものとした。
【0069】
ステップS307では、更新後のデータに基づいて、水素融通系3に対して、水素供給許可状態かどうかを判断する。ステップS307の判断の結果、水素融通系3に対して水素供給許可状態である場合、ステップS308に進み、そうでない場合、ステップS309に進む。
【0070】
ステップS308では、制御する水素発生部6aが水素発生可能かどうかを判断する。ステップS308で、制御する水素発生部6aが水素発生可能である場合、ステップS304に進み、そうでない場合、ステップS309に進む。
【0071】
ステップS309では、制御する水素発生部6aによる水素発生を停止し、制御データフィールド1の水素融通系情報102(図2)と水素発生部情報105(図2)の水素発生部状態情報を更新する。そして、ステップS301の制御データフィールド1のデータを受信する状態に戻る。
【0072】
このように、自律分散制御部4bは、図4に示すフローチャートに従う処理を行い、水素発生部6aを自律制御することにより、中央処理方式に伴う諸問題を回避した、信頼性の高い自律分散制御型の燃料電池制御システムを実現でき、安定した燃料電池制御システムの運用が可能となる。また、自律分散制御部4bは、図4に示す自律分散制御に応じて制御データフィールド1の内容の更新を行うことで、より信頼性の高い燃料電池制御システムを実現できる。
【0073】
(実施形態2)
次に、本発明の燃料電池制御システムの他の例を、実施形態2として説明する。上記実施形態1と異なる点は、燃料電池に水素発生部が搭載されていること、1つの自律分散制御部で燃料電池の発電及び水素発生部による水素供給を自律制御可能であること、である。
【0074】
図5は、本実施形態の燃料電池制御システムの概略構成を示す図である。図5において、図1と同一構成要素については同一符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0075】
本実施形態の燃料電池制御システムは、図5に示すように、燃料電池5b及び水素発生部6bを有する水素発生部搭載燃料電池7と、自律分散制御部4cとを備えている。燃料電池5bは、水素を燃料源として用いて発電を行う。燃料電池5bとしては、例えば、PEFCを用いることができる。水素発生部6bは、例えば、水素発生材料と水とを反応させて水素を発生させ、この水素を燃料電池5bまたは水素融通系3に供給する。自律分散制御部4cは、燃料電池5b及び水素発生部6bに連結されており、制御データフィールド1に保持されているデータを参照し、後述する図7に示すフローチャートに従う動作を行い、燃料電池5b及び水素発生部6bを自律制御する。
【0076】
また、この燃料電池制御システムは、各種情報が保持されている制御データフィールド1と、配電系2と、水素融通系3とを有する。これらについては、上記実施形態1で説明したので、ここでは説明を省略する。
【0077】
次に、自律分散制御部4cによる自律分散制御を説明する。図7は、水素発生部搭載燃料電池7に連結されている自律分散制御部4cによる自律分散制御を説明するためのフローチャート図である。
【0078】
まず、制御データフィールド1に保持されているデータを取得(受信)すると(ステップS401)、受信したデータに含まれる配電系情報101(図2)中の対配電系電力供給許可情報を参照し、配電系2に対して電力供給許可状態であるかを判断する(ステップS402)。
【0079】
ステップ402の判断の結果、配電系2に対して電力供給許可状態である場合、ステップS403に進み、そうでない場合、ステップS401の制御データフィールド1のデータを受信する状態に戻る。
【0080】
ステップS403では、燃料電池情報104(図2)中の燃料電池状態情報を確認し、制御する燃料電池5bが発電可能な状態であるかを判断する。なお、ここでは、燃料電池5bに関する情報が、図2の104に保持されているものとした。ステップS403の判断の結果、制御する燃料電池5bが発電可能な状態である場合、ステップS404に進み、そうでない場合、ステップS401の制御データフィールド1のデータを受信する状態に戻る。
【0081】
ステップS404では、制御する燃料電池5bが現在発電中であるかを判断する。ステップS404の判断の結果、制御する燃料電池5bが現在発電中である場合、ステップS405に進み、そうでない場合、ステップS409に進む。
【0082】
ステップS409では、水素発生部情報105(図2)中の水素発生部状態情報を確認し、制御する水素発生部6bが水素発生可能であるかを判断する。ステップS409において、制御する水素発生部6bが水素発生可能であると判断した場合、ステップS410に進み、そうでない場合、ステップS401の制御データフィールド1のデータを受信する状態に戻る。ステップS410では、制御する水素発生部6bが現在水素を発生中かどうかを判断する。ステップS410において、制御する水素発生部6bが現在水素を発生中であると判断した場合、ステップS411に進み、そうでない場合、制御する水素発生部6bによる水素発生を開始させて(ステップS412)、ステップS411に進む。ステップS411では、水素発生部6bで発生した水素を燃料電池5bに供給し、水素発生部6bからの水素を用いて燃料電池5bを発電させる。そして、ステップS405及びステップS413に進む。
【0083】
ステップS405では、燃料電池5bの発電により生じた電力を配電系2に送電し、かつ制御データフィールド1の保持されている配電系情報101(図2)と燃料電池情報104(図2)の燃料電池状態情報を更新し、ステップS406に進む。
【0084】
ステップS406では、更新後のデータに基づいて、配電系2に対して、電力供給許可状態かどうかを判断する。ステップS406の判断の結果、配電系2に対して電力供給許可状態である場合、ステップS407に進み、そうでない場合、ステップS408に進む。
【0085】
ステップS407では、制御する燃料電池5bが発電可能かどうかを判断する。ステップS407の判断の結果、制御する燃料電池5bが発電可能である場合、ステップS404に進み、そうでない場合、ステップS408に進む。
【0086】
ステップS408では、制御する燃料電池5bの発電を停止し、制御データフィールド1の配電系情報101(図2)と燃料電池情報104(図2)の燃料電池状態情報を更新する。そして、ステップS401の制御データフィールド1のデータを受信する状態に戻る。
【0087】
ステップS413では、燃料電池5bの発電中において、余剰水素が存在し、かつ、対水素融通系3に対して水素供給可能であるかどうかを判断する。ステップS413において、余剰水素が存在し、かつ、対水素融系3に対して水素供給可能であると判断した場合、ステップS414に進み、そうでない場合、ステップS410に進む。
【0088】
ステップS414では、水素融通系3に余剰水素を供給し、制御データフィールド1の水素融通系情報102(図2)と水素発生部情報105(図2)の水素発生部状態情報を更新する。そして、ステップS401の制御データフィールド1のデータを受信する状態に戻る。
【0089】
このように、自律分散制御部7は、図7に示すフローチャートに従う処理を行い、燃料電池5b及び水素発生部6bを有する水素発生部搭載燃料電池7を自律制御することにより、中央処理方式に伴う諸問題を回避した、信頼性の高い自律分散制御型の燃料電池制御システムを実現でき、安定した燃料電池制御システムの運用が可能となる。また、水素発生部6bで発生した水素のうち、余剰水素がある場合には、水素融通系3が水素を受け入れ可能な状態であれば、余剰水素を供給するようにしたので、余剰水素を有効に活用できる燃料電池制御システムを実現できる。
【0090】
(実施形態3)
次に、本発明の燃料電池制御システムの他の例を、実施形態3として説明する。
【0091】
本実施形態3の燃料電池制御システムは、上記実施形態1の燃料電池制御システムと上記実施形態2の燃料電池制御システムを備える。図6に、本実施形態の燃料電池制御システムの概略構成を示す。図6において、図1または図5と同一構成要素については同一符号を付し、その説明を省略する。なお、本実施形態3の燃料電池制御システムの自律分散制御については、上記実施形態1または2と同じであるため、ここではその説明を省略する。
【0092】
本実施形態3によれば、分散された複数の燃料電池5a、複数の水素発生部6a、複数の水素供給部搭載燃料電池7をそれぞれ自律制御できるため、中央処理方式に伴う諸問題を回避した、信頼性の高い自律分散制御型の燃料電池制御システムを実現できる。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明の燃料電池制御システムは、信頼性の高い、自律分散制御型の燃料電池制御システムとして幅広く利用可能である。
【符号の説明】
【0094】
1 制御データフィールド
2 配電系
3 水素融通系
4a、4b、4c 自律分散制御部
5a、5b 燃料電池
6a、6b 水素発生部
7 水素発生部搭載燃料電池

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素を用いて発電する複数の燃料電池と、
前記各燃料電池に連結され、前記各燃料電池を自律制御する複数の第1の自律分散制御部と、
電力を融通するための配電系と、
前記配電系に関する配電系情報及び前記各燃料電池に関する燃料電池情報を含むデータを保持する制御データフィールドと、を備え、
前記各第1の自律分散制御部は、前記制御データフィールドに保持されている前記データに含まれる前記配電系情報を参照し、前記配電系が電力を受け入れ可能な状態であることを確認したとき、当該第1の自律分散制御部に連結されている燃料電池を発電させ、該燃料電池の発電により生じた電力を前記配電系に供給することを特徴とする燃料電池制御システム。
【請求項2】
水素を発生する水素発生部と、
前記水素発生部に連結され、前記水素発生部を自律制御する第2の自律分散制御部と、
水素を融通するための水素融通系と、をさらに備え、
前記制御データフィールドに保持されている前記データは、前記水素融通系に関する水素融通系情報及び前記水素発生部に関する水素発生部情報を含み、
前記第2の自律分散制御部は、前記制御データフィールドに保持されている前記データに含まれる前記水素融通系情報を参照し、前記水素融通系が水素を受け入れ可能な状態であることを確認したとき、前記水素発生部で水素を発生させて前記水素融通系に供給する請求項1に記載の燃料電池制御システム。
【請求項3】
水素を用いて発電する燃料電池と、水素を発生する水素発生部とを含む水素発生部搭載燃料電池と、
前記水素発生部搭載燃料電池に連結され、前記水素発生部搭載燃料電池内の前記燃料電池及び水素発生部を自律制御する第3の自律分散制御部と、
水素を融通するための水素融通系と、をさらに備え、
前記制御データフィールドに保持されている前記データは、前記水素融通系に関する水素融通系情報及び前記各水素発生部に関する水素発生部情報を含み、
前記第3の自律分散制御部は、前記制御データフィールドに保持されている前記データに含まれる前記配電系情報を参照し、前記配電系が電力を受け入れ可能な状態であることを確認したとき、当該第3の自律分散制御部に連結されている水素発生部で水素を発生させて当該第3の自律分散制御部に連結されている燃料電池に供給し、前記水素を用いて該燃料電池を発電させ、該燃料電池の発電により生じた電力を前記配電系に供給する請求項1または2に記載の燃料電池制御システム。
【請求項4】
水素を用いて発電する燃料電池と、水素を発生する水素発生部とを含む複数の水素発生部搭載燃料電池と、
前記各水素発生部搭載燃料電池に連結され、前記各水素発生部搭載燃料電池内の前記燃料電池及び前記水素発生部を自律制御する複数の自律分散制御部と、
電力を融通するための配電系と、
水素を融通するための水素融通系と、
前記配電系に関する配電系情報、前記水素融通系に関する水素融通系情報、前記燃料電池に関する燃料電池情報、前記水素発生部に関する水素発生部情報を含むデータを保持する制御データフィールドと、を備え、
前記各自律分散制御部は、前記制御データフィールドに保持されている前記データに含まれる前記配電系情報を参照し、前記配電系が電力を受け入れ可能な状態であることを確認したとき、当該自律分散制御部に連結されている水素発生部で水素を発生させて当該自律分散制御部に連結されている燃料電池に供給し、前記水素を用いて該燃料電池を発電させ、該燃料電池の発電により生じた電力を前記配電系に供給することを特徴とする燃料電池制御システム。
【請求項5】
前記水素発生部及び前記第2の自律分散制御部を複数備えた請求項2に記載の燃料電池制御システム。
【請求項6】
前記第1の自律分散制御部は、自身が自律制御を行う燃料電池の異常発生頻度を含むデータを、上記制御データフィールドに送信する請求項1に記載の燃料電池制御システム。
【請求項7】
前記第2の自律分散制御部は、自身が自律制御を行う前記水素発生部の異常発生頻度を含むデータを、前記制御データフィールドに送信する請求項2に記載の燃料電池制御システム。
【請求項8】
前記第3の自律分散制御部は、自身が自律制御を行う前記燃料電池及び前記水素発生部の異常発生頻度を含むデータを、前記制御データフィールドに送信する請求項3に記載の燃料電池制御システム。
【請求項9】
前記自律分散制御部は、自身が自律制御を行う前記燃料電池及び前記水素発生部の異常発生頻度を含むデータを、前記制御データフィールドに送信する請求項4に記載の燃料電池システム。
【請求項10】
前記第3の自律分散制御部は、余剰水素を前記水素融通系に供給するよう前記水素発生部を制御する請求項3に記載の燃料電池制御システム。
【請求項11】
前記自律分散制御部は、余剰水素を前記水素融通系に供給するよう前記水素発生部を制御する請求項4に記載の燃料電池システム。
【請求項12】
前記燃料電池情報は、前記燃料電池の状態情報を含む請求項1〜4のいずれか1項に記載の燃料電池制御システム。
【請求項13】
前記水素発生部情報は、前記水素発生部の状態情報を含む請求項2〜4のいずれか1項に記載の燃料電池制御システム。
【請求項14】
前記水素発生部は、水との反応により水素を発生する水素発生材料を用いて水素を発生させる請求項2〜4のいずれか1項に記載の燃料電池制御システム。
【請求項15】
前記水素発生部情報は、前記水素発生材料の反応累積量に応じた水素発生可能容量情報を含む請求項14に記載の燃料電池制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−243447(P2011−243447A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−115344(P2010−115344)
【出願日】平成22年5月19日(2010.5.19)
【出願人】(511084555)日立マクセルエナジー株式会社 (212)
【Fターム(参考)】