燃料電池層および燃料電池層の製造方法
【課題】セルを平面状に配列した平面配列型の燃料電池において、ガスリークを抑制しつつ、セルの間隔を狭める。
【解決手段】基材14に設けられた開口部に対応する領域に膜電極接合体20が形成されている。膜電極接合体20は、電解質膜22、アノード触媒層24、およびカソード触媒層26を備える。隣接する膜電極接合体20の間において、基材14は、第1のガス不透過部100および第2のガス不透過部102を有する。第3のガス不透過部104は、第1のガス不透過部100および第2のガス不透過部102の間に設けられている。第3のガス不透過部104は導電性を有しており、インターコネクタ18の一部を構成する。
【解決手段】基材14に設けられた開口部に対応する領域に膜電極接合体20が形成されている。膜電極接合体20は、電解質膜22、アノード触媒層24、およびカソード触媒層26を備える。隣接する膜電極接合体20の間において、基材14は、第1のガス不透過部100および第2のガス不透過部102を有する。第3のガス不透過部104は、第1のガス不透過部100および第2のガス不透過部102の間に設けられている。第3のガス不透過部104は導電性を有しており、インターコネクタ18の一部を構成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池に関する。より具体的には、本発明は、セルが平面配列された燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は水素と酸素とから電気エネルギを発生させる装置であり、高い発電効率を得ることができる。燃料電池の主な特徴としては、従来の発電方式のように熱エネルギや運動エネルギの過程を経ない直接発電であるので、小規模でも高い発電効率が期待できること、窒素化合物等の排出が少なく、騒音や振動も小さいので環境性が良いことなどが挙げられる。このように、燃料電池は燃料のもつ化学エネルギを有効に利用でき、環境にやさしい特性を持っているので、21世紀を担うエネルギ変換システムとして期待され、宇宙用から自動車用、携帯機器用まで、大規模発電から小規模発電まで、種々の用途に使用できる将来有望な新しい発電システムとして注目され、実用化に向けて技術開発が本格化している。
【0003】
中でも、固体高分子形燃料電池は、他の種類の燃料電池に比べて、作動温度が低く、高い出力密度を持つ特徴が有り、特に近年、携帯機器(携帯電話、ノート型パーソナルコンピュータ、PDA、MP3プレーヤ、デジタルカメラあるいは電子辞書、電子書籍)などの電源への利用が期待されている。携帯機器用の固体高分子形燃料電池としては、複数の単セルを平面状に配列した平面配列型の燃料電池が知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
平面配列型の燃料電池では、電力は電極の総面積に依存する。一方、電圧については、直列に接続されるセルの数に依存する。このため、燃料電池の小型化を図るとともに、必要な電力および電圧を得るためには、限られた面積内で直列接続をするセルの数を増やすことが必要となり、セルの面積を小さくするとともに、隣接するセルの間隔をより短くするセルの微細化が必要となる。
【0005】
セルのピッチは、集電端部からの抵抗損失を減らすために、より小さいことが望ましい。一般に、燃料電池の数を増やすと抵抗損失が減るが、隣接するセル間のインターコネクタの上方に空間があるため、平面配列された燃料電池の全有効面積が減少する。本発明の目的は、平面配列型の燃料電池において、燃料電池用のインターコネクタ領域の面積を小さくすることに役立つ設計および方法を提供することにある。
【0006】
本発明はこうした課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、セルを平面状に配列した平面配列型の燃料電池において、ガスリークを抑制しつつ、セルの間隔を狭めて微細化を図ることのできる技術の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある態様は、燃料電池層である。第1の表面および第2の表面を有し、複数のインターコネクタと、前記複数のインターコネクタの間に設けられた複数のイオン伝導部材とを含む、複合層と、前記第1の表面に設けられ、アノードを形成する第1の複数の電極被覆層と、前記第2の表面に設けられ、カソードを形成する第2の複数の電極被覆層と、を備え、各第1の複数の電極被覆層および各第2の複数の電極被覆層は前記イオン伝導部材の一つとイオン接触し、前記インターコネクタの一つと電気的に接触し、少なくとも一つのインターコネクタは、絶縁材料で構成され、レーザビームの透過を遮るように構成された、第1のガス不透過部および第2のガス不透過部と、電気伝導性を有し、2つの表面および当該2つの表面に平行な長さを有し、当該2つの表面の一つが前記第1のガス不透過部および前記第2のガス不透過部の前記第2の表面に近接している第3のガス不透過部と、を含み、前記第1のガス不透過部および前記第2のガス不透過部は、それぞれ、第1の表面および第2の表面を有し、第1の表面は前記イオン伝導部材の一つと接触し、 前記インターコネクタおよび前記第3のガス不透過部がある燃料電池のアノードを隣接する燃料電池のカソードに電気的に接続させ、第1のガス不透過部と第2のガス不透過部とが触媒層の加工に用いられるレーザビームの透過を妨げることを特徴とする。
【0008】
上記態様の燃料電池層において、前記複合層から延在する第1の電極が、前記第1のガス不透過部を被覆し、かつ前記第3のガス不透過部に接続していてもよい。前記複合層から延在する第2の電極が、前記第3のガス不透過部に接続していてもよい。前記第1の電極と前記第2の電極が一体的に形成されており、前記インターコネクタは前記第1の複数の電極被覆層および前記第2の複数の電極被覆層に設けられた貫通孔を介して前記第1の電極および前記第2の電極とを電気的に接続してもよい。前記第3のガス不透過部を含むインターコネクタが膜電極接合体と他の膜電極接合体との間に延在し、前記膜電極接合体の電解質膜と前記他の膜電極接合体の電解質膜とが前記インターコネクタにより分断されていてもよい。少なくとも1つのインターコネクタは、第1または第2の複数の電極と外部回路との電気的な伝導経路を提供し、前記経路は3番目のガス不浸透性の領域の長さに沿って伸びる経路であってもよい。前記第1および第2のガス不透過部が、複数の材料により構成され、少なくとも1つの材料が顔料を含んでもよい。前記顔料は、前記第1のガス不透過部および前記第2のガス不透過部の材料特性を変えて、レーザビームの透過量を減少またはレーザビームの吸収量を増加させる、またはこの両者を行ってもよい。前記第1および第2のガス不透過部が、複数の材料により構成され、少なくとも1つの材料が金属酸化物の粒子を含んでもよい。前記金属酸化物の粒子は、前記第1のガス不透過部および前記第2のガス不透過部の材料特性を変えて、レーザビームの透過量を減少またはレーザビームの吸収量を増加させる、またはこの両者を行ってもよい。前記第1および第2のガス不透過部が、ガラス繊維を織った布にエポキシ樹脂を含侵して形成され、前記ガラス繊維が電解質膜の第1主面に対して、90度未満の角度で配置されてもよい。
【0009】
本発明の他の態様は、燃料電池層の製造方法である。当該燃料電池層の製造方法は、第1の表面および第2の表面を有し、複数のインターコネクタと、前記複数のインターコネクタの間に設けられた複数のイオン伝導部材とを含む、複合層を形成する工程と、前記第1の表面に第1の複数の電極被覆層を設けて、アノードを形成する工程と、前記第2の表面に第2の複数の電極被覆層を設けて、カソードを形成する工程と、を備え、各第1の複数の電極被覆層および各第2の複数の電極被覆層は前記イオン伝導部材の一つとイオン接触し、前記インターコネクタの一つと電気的に接触し、少なくとも一つのインターコネクタは、絶縁材料で構成され、レーザビームの透過を遮るように構成された、第1のガス不透過部および第2のガス不透過部と、電気伝導性を有し、2つの表面および当該2つの表面に平行な長さを有し、当該2つの表面の一つが前記第1のガス不透過部および前記第2のガス不透過部の前記第2の表面に近接している第3のガス不透過部と、を含み、前記インターコネクタおよび前記第3のガス不透過部が燃料電池のアノードと隣接する値料電池のカソードとを電気的に接続し、前記第1のガス不透過部および前記第2のガス不透過部に沿って前記電極被覆層の一部をレーザビームを用いて選択的に除去し、隣接する燃料電池間を電気的に絶縁する工程をさらに備え、触媒層の加工に用いられるレーザービームの透過に関して、前記第1のガス不透過部および前記第2のガス不透過部の透過率が第1のおよび第2の複数の電極被覆層の透過率より小さいことを特徴とする。
【0010】
なお、上述した各要素を適宜組み合わせたものも、本件特許出願によって特許による保護を求める発明の範囲に含まれうる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、セルを平面状に配列した平面配列型の燃料電池において、ガスリークを抑制しつつ、セルの間隔を狭めて微細化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
実施の形態が、図面を参照してあくまで例として説明される。なお、図面は例示でありこれに制限されない。
【図1】実施の形態1に係る燃料電池の構造を示す分解斜視図である。
【図2】図1の部品を組み合わせた状態でのA−A線に沿った燃料電池の断面図である。
【図3】基材および電解質膜の形態を示す斜視図である。
【図4】実施の形態1に係る燃料電池に用いられる複合膜を作製する方法を示す工程図である。
【図5】実施の形態1に係る燃料電池に用いられる複合膜を作製する方法を示す工程図である。
【図6】変形例に係る複合膜を作製する方法を示す工程図である。
【図7】変形例の複合材を示す拡大斜視図である。
【図8】変形例に係る複合膜を作製する方法を示す工程図である。
【図9】変形例に係る複合膜を作製する方法を示す工程図である。
【図10】実施の形態2に係る燃料電池の構造を示す断面図である。
【図11】実施の形態2に係る燃料電池に用いられる複合膜を作製する方法を示す工程図である。
【図12】実施の形態3の燃料電池の電解質膜およびインターコネクタをカソード側からみた平面図を示す。
【図13】実施の形態3に係る燃料電池に用いられる複合膜を作製する方法を示す工程図である。
【図14】実施の形態4に係る燃料電池の構造を示す断面図である。
【図15】実施の形態4に係る燃料電池に用いられる複合膜を作製する方法を示す工程図である。
【図16】実施の形態4に係る燃料電池に用いられる複合膜を作製する方法を示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書を通して、本発明に対する理解をより完全にするために特定の形態が説明される。しかし、本発明は、これらの特定の形態以外でも実施可能である。他の例では、本発明を不必要にあいまいにすることを避けるため、周知の要素は、詳細に図示または説明されていない。図面により、本発明が実施される特定の実施の形態を図示される。これらの実施の形態は組み合わせることができ、他の要素が利用され、構造的または論理的な変更が本発明の範囲を逸脱しない範囲で可能である。したがって、本明細書および図面は、限定的な意味ではなく、例示的であるとみなすべきである。
【0014】
本明細書で参照される全ての出版物、特許および特許文献は参照により個々に組み込まれるかのように、参照によりその全てが組み込まれる。本明細書とこれらの文献との間の使用法が一致しない場合には、組み込まれた文献の使用法は、本明細書の使用法を補足するとみなされる。相容れない不一致に関しては、本発明の使用法が優先する。
【0015】
本明細書において、「または」という用語は、非制限的に、または、「A、BまたはC」が特に指示がない限り、「Aのみ」、「Bのみ」、「Cのみ」、「AおよびB」、「BおよびC」、「AおよびC」、「A、BおよびC」を含むように用いられる。「上方に」および「下方に」という用語は、構成の中心に関して2つの異なる方向を示すために用いられる。「より上の」および「より下の」という用語は、構成の2つの異なる表面を記述するために用いられる。しかし、これらの用語は、単に説明を容易にするために用いられ、記述された実施の形態の燃料電池層の方向を固定するものではないと理解されるべきである。各実施の形態および請求項において、「第1の」、「第2の」および「第3の」等の用語は、単にラベルとして用いられ、これらの目的物に数字を要件と課すことを意図しない。本明細書で明確に開示された数値範囲は、たとえ、明確に開示された範囲の部分集合の範囲が明確に開示されているとしても、明確に開示された範囲のいかなる部分集合も含む。たとえば、1−100、または1以上100以下、は、1−80、2−76または1から100の間にある他のいかなる数値範囲も含む。
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。なお、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0017】
本発明の方法に従って複合層としてしようされうる燃料電池層などの電気化学セルを含む複合層構造の複数の例は、PCT出願:PCT/CA/09/00253として2009年2月27日に出願された、「電気化学セルおよびこれに関連する膜」というタイトルの米国特許出願公開番号2011/0003229に記述されている。当該文献は参照によりその全てが本明細書に組み込まれる。さらに、燃料電池層の例は、米国特許出願番号11/047560として2005年2月2日に出願された、「電気化学反応層の下にある電流通過構造を有する電流電気化学セル」というタイトルの米国特許出願公開番号2005/0250004、2010年12月23日に出願された、「燃料電池、非対称な構造を有する燃料電池部材、およびその使用法」というタイトルのPCT国際出願公開番号WO 2011/079377、および、2008年12月22日に出願された、「不連続領域を含む電気化学セル組み立て部品」というタイトルの米国特許公開番号2009/0162722に開示されている。これらの文献の全開示内容は、参照により本明細書に組み込まれる。燃料電池層の例は、以下の実施の形態で説明されるが、参照により組み込まれるいかなる特許文献に記載された燃料電池および燃料電池層を用いて本発明が実施されうることを理解されたい。明確にするために、比較的少ない数の燃料電池の部材を配置したものを含む燃料電池層の種々の形態が図面に示される。しかし、本発明の方法は、より多くの数の燃料電池の部品を有する燃料電池層に適用されうる。
【0018】
平面配列型の燃料電池のサイズを小さくするために、セル間の間隔が狭められる。たとえば、レーザ加工を用いた手法が当該間隔を狭める方法として知られている。この手法では、通常の膜電極接合体の触媒層がレーザビームを用いて部分的に除去され、平面配列型の燃料電池が製造される。
【0019】
本発明が解決する課題は、ある平面配列型の燃料電池の構成において、可能な限り燃料電池の充填密度を維持しつつ、隣接する燃料電池を分離するために、非常に狭い不連続領域を燃料電池層の表面に形成しなければいけないことである。レーザビームは、非常に狭いギャップっを形成するために有効に用いられてきたが、レーザビームは、燃料電池層を透過し、加工中の側とは反対側のセルの側にある電極を溶かしてしまう傾向を有しうる。この望ましくない透過による効果により、平面配列型の燃料電池の触媒層に望ましくない不連続領域が形成される。本発明の目的は、ギャップとは反対側の触媒層にける不連続の度合い、およびレーザ溶融による水素リークの頻度を低減することができる、改良された構造およびギャップ形成の方法を提供することにある。
【0020】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1に係る燃料電池の構造を示す分解斜視図である。図2は、図1のA−A線に沿った断面図である。図1および図2に示すように、燃料電池10は、膜電極接合体(MEA、触媒塗布プロトン交換膜(CCM)ともいう)20が組み込まれた複合膜12、アノード用ハウジング40およびカソード用ハウジング42を備える。また、複合膜12の周縁部に後述する封止部材50が設けられている。
【0021】
複合膜12は、基材14、複数の膜電極接合体20および隣接する膜電極接合体20を電気的に接続するために必要な部材を含む。
【0022】
基材14は、エポキシ樹脂やポリアクリレートなどの一般的なポリマーなどの絶縁性の材料により形成されている。基材14には、膜電極接合体20と同数の開口部16が設けられている。
【0023】
各膜電極接合体20は、電解質膜22、電解質膜22の一方の面に設けられたアノード触媒層(第1の電極)24、電解質膜22の他方の面に設けられたカソード触媒層(第1の電極の対向電極である第2の電極)26を備える。膜電極接合体20は、基材14に設けられた開口部16に対応して設けられている。アノード触媒層24には、燃料ガスとして水素が供給される。一方、カソード触媒層26には酸化剤として空気が供給される。一対のアノード触媒層24とカソード触媒層26との間に電解質膜22が狭持されることによりセルが構成され、各セルは水素と空気中の酸素との電気化学反応により発電する。
【0024】
このように、本実施の形態の燃料電池では、アノード触媒層24にカソード触媒層26が対となり、複数のセルが平面状に形成されている。
【0025】
以下、隣接する2つの膜電極接合体20の一方を膜電極接合体20aとし、他方を膜電極接合体20bとして、隣接する2つの膜電極接合体20の間の電気接続構造および膜電極接合体20の形態の説明を行う。
【0026】
インターコネクタ18は、隣接する膜電極接合体20の間において、基材14および電解質膜22を貫通して設けられている。膜電極接合体20aの電解質膜22に被覆されたアノード触媒層24aは、インターコネクタ18の方へ延在して設けられており、インターコネクタ18と一方のセルの電解質膜22との間の基材14を被覆し、インターコネクタ18に接続されている。また、隣接するセルにおいて、他方のセルの電解質膜22に被覆されたカソード触媒層26は、インターコネクタ18の方へ延在して設けられており、インターコネクタ18と他方のセルの電解質膜22との間の基材14を被覆し、インターコネクタ18に接続されている。インターコネクタ18は導電性の材料で形成され、たとえば、カーボンなどが用いられる。以上の構成により、隣接するセル同士はインターコネクタ18により直列接続されている。
【0027】
電解質膜22は、湿潤状態において良好なイオン伝導性を示すことが好ましく、アノード触媒層24とカソード触媒層26との間でプロトンを移動させるイオン交換膜として機能する。電解質膜22は、含フッ素重合体や非フッ素重合体等の固体高分子材料によって形成され、例えば、スルホン酸型パーフルオロカーボン重合体、ポリサルホン樹脂、ホスホン酸基又はカルボン酸基を有するパーフルオロカーボン重合体等を用いることができる。スルホン酸型パーフルオロカーボン重合体の例として、ナフィオン(デュポン社製:登録商標)112などが挙げられる。また、非フッ素重合体の例として、スルホン化された、芳香族ポリエーテルエーテルケトン、ポリスルホンなどが挙げられる。
【0028】
アノード触媒層24およびカソード触媒層26は、イオン交換樹脂ならびに触媒粒子、場合によって炭素粒子を有する。
【0029】
アノード触媒層24およびカソード触媒層26が有するイオン交換樹脂は、触媒粒子と電解質膜22を接続し、両者間においてプロトンを伝達する役割を持つ。このイオン交換樹脂は、電解質膜22と同様の高分子材料から形成されてよい。触媒金属としては、Sc、Y、Ti、Zr、V、Nb、Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、Pt、Os、Ir、ランタノイド系列元素やアクチノイド系列の元素の中から選ばれる合金や単体が挙げられる。また触媒を担持する場合には炭素粒子として、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンナノチューブなどを用いてもよい。
【0030】
図3は、基材14および電解質膜22の形態を示す斜視図である。本実施の形態では、基材14に形成された貫通孔112および電解質膜22に形成された貫通孔110の開口形状は円形状であるが、貫通孔110の開口形状はこれに限られず、楕円状や矩形状であってもよい。貫通孔110の開口形状が楕円状や矩形状である場合には、長辺方向や長軸方向を隣接する膜電極接合体20の対向辺に沿った方向とすることが好ましい。これによれば、隣接する膜電極接合体20の間に生じる無駄なスペースを低減し、発電有効面積を増加させることができる。
【0031】
基材14は、絶縁性およびガス不透過性を有する材料で形成されており、隣接する膜電極接合体20のアノード触媒層24間を絶縁する機能を担う。基材14の材料としては、エポキシ樹脂やポリアクリレートなどの一般的なポリマー絶縁層、ファイバー強化されたエポキシ樹脂やポリアクリレートなどの一般的なポリマー絶縁層、レーザ光線吸収する添加剤を添加したエポキシ樹脂やポリアクリレートなどの一般的なポリマー絶縁層が挙げられる。
【0032】
図2に戻り、隣接する膜電極接合体20の間の領域において、基材14は、第1のガス不透過部100および第2のガス不透過部102を有する。
【0033】
第1のガス不透過部100は、膜電極接合体20aのカソード触媒層26aと膜電極接合体20bのカソード触媒層26bとの隙間に対応して、膜電極接合体20aから延在する電解質膜22aのアノード側の主面に接して設けられている。
【0034】
第2のガス不透過部102は、膜電極接合体20aのアノード触媒層24aと膜電極接合体20bのアノード触媒層24bとの間の隙間において露出し、膜電極接合体20bから延在する電解質膜22bのアノード側の主面に接して設けられている。
【0035】
第1のガス不透過部100および第2のガス不透過部102は、触媒層の加工に用いられるレーザビームの透過を妨げるように構成される。後述する複合膜の作製方法で説明するように、アノード触媒層24やカソード触媒層26の加工の際にレーザビームを照射する場合に、レーザビームを第1のガス不透過部100や第2のガス不透過部102を透過しないようにする。この結果、加工されるべき触媒層とは反対側の触媒層にレーザ溶融が生じることを抑制することができる。
【0036】
より具体的には、第1のガス不透過部100および第2のガス不透過部102は、触媒加工用のレーザ光を吸収する添加剤が加えられたエポキシ樹脂または一般的なポリマー樹脂からなる絶縁層で構成される。当該絶縁層はファイバー強化されていてもよい。添加剤は、レーザ加工によって加工されるべき触媒層とは反対側の触媒層にレーザ溶融が生じることを抑制するために2つのメカニズムを有する。第1に、添加剤によりレーザビームが散乱され、レーザビームの透過が低減される。第2に、レーザビームの波長と同調する吸収バンドに応じて添加剤を選択することにより、添加剤がレーザビームを吸収することで、レーザの透過が抑制され、ひいてはレーザ加工によって加工されるべき触媒層とは反対側の触媒層にレーザ溶融が生じることを低減することができる。たとえば、もともと赤い酸化鉄はグリーンレーザビームを非常によく吸収する。酸化チタンは、UVレーザビームを非常によく吸収する。レーザビームを散乱させる能力だけでなく、使用される特定のレーザビームの波長を吸収する能力に基づいて添加剤を選択することが望ましい。第1のガス不透過部100および第2のガス不透過部102に含まれる添加剤の量は当該部分の全質量を基準として、10質量%以内の範囲が好ましい。添加剤として用いられる金属酸化物材料としては、酸化第二鉄(99.5%、325メッシュ、Alfa Aesar社製)、酸化チタン(ルチル型、99.5%、1〜2μm粉末、Alfa Aesar社製)、酸化亜鉛(ナノガード、400〜100nm粉末、Alfa Aesar社製)、酸化亜鉛(ACS等級、325メッシュ、Alfa Aesar社製)などが挙げられる。
【0037】
この他、第1のガス不透過部100および第2のガス不透過部102は、ファイバー強化されたエポキシ樹脂または一般的なポリマー樹脂からなる絶縁層で形成される。より具体的には、第1のガス不透過部100および第2のガス不透過部102はガラス繊維を織った布にエポキシ樹脂を含侵して形成される。この場合、絶縁層中のファイバーは、レーザビームの透過を防ぐように配向されうる。たとえば、ファイバーの織布を用いた形態では、ファイバーが光透過材として働くことを防ぐために、ファイバーの配向がレーザビームの方向に向かないようにすることが好ましい。たとえば、触媒層の加工に用いられるレーザビームに対して、ファイバーが45°の角度に配向することにより、レーザの透過量を顕著に低減することができる。また、ファイバー強化されたエポキシ樹脂または一般的なポリマー樹脂からなる絶縁層は、不織布系の繊維材料またはランダム配向した短繊維で形成されてもよい。
【0038】
インターコネクタ18は、膜電極接合体20aのアノード触媒層24aと、膜電極接合体20bのカソード触媒層26bとを電気的に接続する機能を担う。
【0039】
インターコネクタ18は、第3のガス不透過部104および導電部106を含む。
第3のガス不透過部104は、第1のガス不透過部100と第2のガス不透過部102との間に設けられ、かつ、第1のガス不透過部100および第2のガス不透過部102と同層である。本実施の形態では、第3のガス不透過部104は基材14に設けられた貫通孔112を充填している。インターコネクタ18の第3のガス不透過部104は、導電性およびガス不透過性を有する材料で形成されている。第3のガス不透過部104の材料としては、カーボンFRP、樹脂含侵した膨張黒鉛やグラファイト、貴金属などが挙げられる。
【0040】
導電部106は、隣接する膜電極接合体20の間において、電解質膜22を貫通するように形成されている。導電部106は、アノード側では上述した第3のガス不透過部104と接し、カソード側ではカソード触媒層26bと接続している。本実施の形態では、導電部106とカソード触媒層26bとが一体的に形成されており、カソード触媒層26bの一部が導電部106を兼ねている。なお、導電部106はカソード触媒層26bと異なる材料で形成されていてもよい。
【0041】
アノード触媒層24aは膜電極接合体20aから膜電極接合体20bの方へ延在する領域Aを有する。領域Aは、第1のガス不透過部100を被覆し、かつ第3のガス不透過部104の表面に位置しており、領域Aと第3のガス不透過部104とが電気的に接続している。
【0042】
本実施の形態では、膜電極接合体20aの電解質膜22と膜電極接合体20bの電解質膜22が一体的に形成されている。膜電極接合体20aと膜電極接合体20bとの間の領域において、電解質膜22に貫通孔110が設けられている。カソード触媒層26bは膜電極接合体20bから膜電極接合体20aの方へ延在する領域Bを有する。カソード触媒層26bの領域Bは、電解質膜22に設けられた貫通孔110を貫通し、第3のガス不透過部104に電気的および物理的に接続している。これにより、膜電極接合体20aのアノード触媒層24aと膜電極接合体20bのカソード触媒層26bとが電気的に接続されている。
【0043】
第3のガス不透過部104は、第1のガス不透過部100、第2のガス不透過部102と同様にカス不透過性を備えており、膜電極接合体20aと膜電極接合体20bとの間の領域が、第1のガス不透過部100、第2のガス不透過部102および第3のガス不透過部104からなるガス不透過部によって占められている。
【0044】
アノード用ハウジング40により、燃料貯蔵用の燃料貯蔵部37が形成されている。なお、アノード用ハウジング40に燃料供給口(図示せず)を設置することにより、燃料カートリッジなどから燃料を適宜補充可能である。
【0045】
一方、カソード用ハウジング42には、外部から空気を取り込むための空気取入口44が設けられている。
【0046】
アノード用ハウジング40とカソード用ハウジング42とは、複合膜12の周縁部に設けられた封止部材50を介して、ボルト、ナットなどの締結部材(図示せず)を用いて締結されている。これにより、封止部材50に圧力が加えられ、封止部材50によるシール性が高められる。このような締結部材は、燃料電池および筐体の構造および配置に応じて選択される。
【0047】
気液分離部49は、空気取入口44が設けられたカソード用ハウジング42の面とカソード触媒層26との間に設けられている。気液分離部49は、たとえばテフロン(登録商標)で形成される。空気取入口44から取り込まれた空気は気液分離部49を通過してカソード触媒層26に流入する。カソード触媒層26で生成した水が気化することで生成した水蒸気は、気液分離部49を通過し空気取入口44から外部に排出される。一方、気液分離部49の外部で水蒸気が結露することで生成した凝縮水は気液分離部49を通過できない。これにより、カソード触媒層26における水分量が過剰になること、いわゆるフラッディングが抑制される。
【0048】
以上説明した燃料電池10では、隣接する膜電極接合体20を電気的に接続するインターコネクタの一部をガス不透過性を有する第3のガス不透過部104とし、第3のガス不透過部104に連結した第1のガス不透過部100と第2のガス不透過部102を含む基材14により、隣接する膜電極接合体20の間が塞がれている。これにより、インターコネクタ形成領域となる隣接する膜電極接合体20の間においてガスリークが生じることが抑制される。
【0049】
さらに、第1のガス不透過部100、第2のガス不透過部102および第3のガス不透過部104により、隣接する膜電極接合体20の間においてガスリークが生じることが抑制されているため、インターコネクタを構成する導電部をガス透過性を有する触媒層自体とすることが可能となる。この結果、隣接する膜電極接合体20の間隔を狭めることができ、平面配列型の燃料電池の高集積化を図ることができる。
【0050】
なお、本明細書において、「燃料電池層」は、互いに近接して配置された1以上の燃料電池を含む。
【0051】
(複合膜の作製方法)
実施の形態1に係る燃料電池10に用いられる複合膜12の作製方法について、図4乃至図5を参照して説明する。図4乃至図5は、実施の形態1に係る複合膜12を作製する方法を示す工程図である。なお、図4乃至図5において、左側(i)に平面図を示し、右側(ii)に平面図のA−A線に沿った断面図を示す。
【0052】
平面配列型の燃料電池は異なる波長の2つのレーザビームを用いて加工が行われる。第1の波長は、電解質材料を除去することができ、電解質層に貫通孔を形成し、電気的なインターコネクタを形成するために用いられる。第2の波長は、触媒層を選択的に除去するために用いられる。ただし、この波長は、電解質層を貫通せず、電解質層を加工しない。
【0053】
まず、図4(A)に示すように、複数の膜電極接合体を併設可能な形状および面積を有する電解質膜22を用意する。
【0054】
次に、図4(B)に示すように、電解質膜22の上に基材14を載置し、熱圧着により接着する。接着性およびガスシール性能を向上させるために、Nafion分散液(DuPont D2020)が接着剤として電解質膜22と基材14との間に用いられてもよい。基材14には、膜電極接合体形成領域に対応する開口部16を設けておく。また、隣接する開口部16の間に位置する領域には貫通孔112が所定の間隔で形成されている。この貫通孔112に、第3のガス不透過部104が充填されている。基材14を電解質膜22の上に載置する前に貫通孔112に第3のガス不透過部104を予め充填してもよく、基材14を電解質膜22の上に載置した後に貫通孔112に第3のガス不透過部104を充填してもよい。本実施の形態では、基材14が設けられた電解質膜22の面がアノード側であり、基材14が設けられた側とは反対側の電解質膜22の面がカソード側である。なお、図4(B)(ii)に示すように、第3のガス不透過部104を挟む基材14の領域が第1のガス不透過部100、第2のガス不透過部102である。基材14の一部をなす「第1のガス不透過部100および第2のガス不透過部102」は、触媒層の加工に用いられる第2の波長のレーザが貫通しないような材料で構成される。
【0055】
次に、図5(A)に示すように、カソード側から電解質膜22の所定位置にレーザを照射する。この所定領域は、第3のガス不透過部104が形成された領域に対応しており、レーザ照射により所定領域の電解質膜22が選択的に除去されると、電解質膜22に貫通孔110が形成されるとともに、カソード側に第3のガス不透過部104が露出する。この工程で用いるレーザビームの波長は、電解質膜22を加工できる範囲、たとえば1064−10600nmである。
【0056】
次に、図5(B)に示すように、電解質膜22の周縁部分を残し、電解質膜22のアノード側およびカソード側の全体にそれぞれ触媒スラリーを塗布し、触媒層80および触媒層82を形成する。
【0057】
次に、図5(C)に示すように、電解質膜22のアノード側に塗布された触媒層をレーザ照射により選択的に除去してアノード触媒層24を形成するとともに、第2のガス不透過部102を露出させる。一方、電解質膜22のカソード側に塗布された触媒層をレーザ照射により選択的に除去してカソード触媒層26を形成するとともに、第1のガス不透過部100に接触している領域の電解質膜22を露出させる。言い換えると、電解質膜22を挟んで第1のガス不透過部100と対応している領域の触媒層82にレーザ照射を行い、触媒層82を選択的に除去する。電解質膜22を透過したレーザビームは第1のガス不透過部100で遮断されるため、触媒層80にダメージが生じることが抑制される。ここでの工程で用いるレーザの波長は、触媒層(電極)82を加工可能で、かつ、電解質膜22を透過する範囲、たとえば180−550nmである。このように、この工程で用いられるレーザの波長は、図5(A)に示した工程で用いられるレーザの波長と異なる。
【0058】
以上の製造工程により、実施の形態1に係る膜電極接合体が組み込まれた複合膜12が簡便に作製される。
【0059】
以下では、複合膜の作製方法の変形例を説明する。図6、図8および図9は、変形例に係る複合膜を作製する方法を示す工程図である。図8乃至図9において、左側(i)に平面図を示し、右側(ii)に平面図のA−A線に沿った断面図を示す。
【0060】
平面配列型の燃料電池は異なる波長の2つのレーザビームを用いて加工が行われる。第1の波長は、電解質材料を除去することができ、電解質層に貫通孔を形成し、電気的なインターコネクタを形成するために用いられる。第2の波長は、触媒層を選択的に除去するために用いられる。ただし、この波長は、電解質層を貫通せず、電解質層を加工しない。
【0061】
図6(A)に示すように、カーボンFRPなどガス不透過性と導電性を具備する材料で形成された導電シート400と、縦繊維と横繊維からなるガラス繊維を縦繊維と横繊維とが直交するように編み込んだ部材にエポキシ樹脂を含浸させて得られた樹脂シート410を複数枚用意する。導電シート400の両主表面にそれぞれ複数の樹脂シート410を積層した後、樹脂シート410を加熱して硬化させる。
【0062】
次に、図6(B)に示すように、導電シート400と樹脂シート410からなる積層体420を短冊状に切断した後、洗浄して複合材430を得る。
【0063】
ここで、導電シート400は、図4(B)に示すように、第3のガス不透過部104に対応する。また、導電シート400の一方の側に積層された樹脂シート410は、第1のガス不透過部100に対応する。図4(B)に示すように、導電シート400の他方の側に積層された樹脂シート410は、第2のガス不透過部102に対応する。
【0064】
第1のガス不透過部100および第2のガス不透過部102は、触媒層の加工に用いられるレーザビームが透過することを妨げるように構成される。この方法および構造を実施することにより、レーザビームがアノード触媒層24およびカソード触媒層26を加工するために照射されるとき、当該レーザビームが第1のガス不透過部100および第2のガス不透過部102を貫通しないように制御される。
【0065】
絶縁層中の繊維は、レーザビームが透過することを妨げるように配向される。たとえば、ガラス繊維布が用いられる場合には、ガラス繊維の方向は、ガラス繊維が光透過材料として機能しないようにレーザビームの方向を向かないことが望ましい。たとえば、レーザ透過量が十分に減少するように、ガラス繊維は触媒層の加工に用いられるレーザビームに対して45°の角度をなす。さらに、絶縁層は、触媒層の加工に用いられるレーザビームを吸収する添加剤が加えられたエポキシ樹脂で構成されてもよい。
【0066】
図6(C)は、複合材430の拡大斜視図である。導電シート400および樹脂シート410からなる積層構造が露出する複合材430の切断面の法線(上述した、加工用レーザビームの方向)に対して、樹脂シート410中のガラス繊維の縦繊維および横繊維はともに45°の方向を向いている。
【0067】
なお、上述した変形例では、樹脂シート410中のガラス繊維の縦繊維および横繊維の方向は、上記法線に対して45°の角度をなしているが、樹脂シート410を作製する際に、樹脂シート410の辺に対するガラス繊維の方向を変えることで、積層体中のガラス繊維の縦繊維および横繊維の方向を所望の方向に向けることができる。図7は、樹脂シート410中のガラス繊維の縦繊維の方向を切断面の法線と平行とし、横繊維の方向を切断面の法線に対して90°とした形態を示す。
【0068】
次に、図8(A)に示すように、複数の膜電極接合体を併設可能な形状および面積を有する電解質膜22を用意する。
【0069】
次に、図8(B)に示すように、隣接する膜電極接合体の形成領域を分断するように短冊状の複合材(集電体)420を電解質膜22の上に固定する。また、電解質膜22の長手方向の端部に沿って短冊状の複合材(集電体)420を設置し、熱圧着により接着する。接着性およびガスシール性能を向上させるために、Nafion分散液(DuPont D2020)が接着剤として電解質膜22と基材14との間に用いられてもよい。
【0070】
次に、図9(A)に示すように、電解質膜22のカソード側からレーザビームを照射して、導電シート400と重なる部分の電解質膜22に複数の貫通孔を形成する。この工程で用いるレーザビームの波長は、電解質膜22を加工できる範囲、たとえば1064−10600nmである。
【0071】
図9(B)に示すように、電解質膜22の周縁部分を残し、電解質膜22のアノード側およびカソード側の全体にそれぞれ触媒スラリーを塗布し、触媒層80および触媒層82を形成する。
【0072】
次に、図9(C)に示すように、電解質膜22のアノード側に塗布された触媒層をレーザ照射により選択的に除去してアノード触媒層24を形成するとともに、第2のガス不透過部102に相当する樹脂シート410を露出させる。一方、電解質膜22のカソード側に塗布された触媒層をレーザ照射により選択的に除去してカソード触媒層26を形成するとともに、第1のガス不透過部100に相当する樹脂シート410に接触している領域の電解質膜22を露出させる。電解質膜22を透過したレーザビームは第1のガス不透過部100に相当する樹脂シート410で遮断されるため、触媒層80にダメージが生じることが抑制される。ここでの工程で用いるレーザの波長は、触媒層(電極)82を加工可能で、かつ、電解質膜22を透過する範囲、たとえば180−550nmである。このように、この工程で用いられるレーザの波長は、図9(A)に示した工程で用いられるレーザの波長と異なる。
【0073】
以上の製造工程により、変形例に係る膜電極接合体が組み込まれた複合膜12が簡便に作製される。
【0074】
(実施の形態2)
図10は、実施の形態2に係る燃料電池10の構造を示す断面図である。実施の形態1の燃料電池10では、第1のガス不透過部100、第2のガス不透過部102および第3のガス不透過部104が同等の厚みであるが、本実施の形態では、第1のガス不透過部100および第2のガス不透過部102の方が第3のガス不透過部104より厚くなっている。さらに、第1のガス不透過部100の一部が第3のガス不透過部104の縁部の上に延在している。同様に、第2のガス不透過部102の一部が第3のガス不透過部104の縁部の上に延在している。これによれば、第1のガス不透過部100および第2のガス不透過部102により、第3のガス不透過部104が電解質膜22の方へ押さえ付けられるため、第3のガス不透過部104と導電部106との接続信頼性を向上させることができ、ひいては、燃料電池10の動作信頼性を向上させることができる。
【0075】
(複合膜の作製方法)
実施の形態2に係る燃料電池10に用いられる複合膜12の作製方法について、図11を参照して説明する。
【0076】
まず、図3(A)と同様に電解質膜22を用意する。次に、図11(A)に示すように、膜電極接合体形成領域に挟まれた領域において、電解質膜22の上に第3のガス不透過部104を形成する。本実施の形態では、第3のガス不透過部104の平面形状は長方形であるが、この形状に限定されない。
【0077】
次に、図11(B)に示すように、電解質膜22の上に基材14を載置し、第3のガス不透過部104を封止するように基材14を変形させながら熱圧着させる。基材14には、膜電極接合体形成領域に対応する開口部16を設けておく。また、第3のガス不透過部104が厚い場合は、基材14には、隣接する開口部16の間において、第3のガス不透過部104を填め込み可能な凹部114を予め設けてもよい。
【0078】
次に、図11(C)に示すように、電解質膜22のアノード側から、第3のガス不透過部104に接する領域の基材14にレーザを照射し、基材14を選択的に除去して、第3のガス不透過部104を露出させる。
【0079】
続いて、図4(A)乃至図4(C)と同様な工程を順に実施することにより、実施の形態2に係る膜電極接合体が組み込まれた複合膜12を簡便に作製することができる。
【0080】
(実施の形態3)
実施の形態3に係る燃料電池10は、電解質膜22およびインターコネクタ18の形態を除き、実施の形態1と同様である。図12に、実施の形態3の燃料電池10の電解質膜22およびインターコネクタ18をカソード側からみた平面図を示す。上述した実施の形態1および実施の形態2に係る燃料電池10では、隣接する膜電極接合体20の間において、一方の膜電極接合体20を構成する電解質膜22と他方の膜電極接合体20を構成する電解質膜22が連結している。一方、実施の形態3に係る燃料電池10では、隣接する膜電極接合体20の間全体にインターコネクタ18が延在している。このインターコネクタ18によって一方の膜電極接合体20を構成する電解質膜22と他方の膜電極接合体20を構成する電解質膜22とが分断されている。
【0081】
本実施の形態によれば、実施の形態1と同様な効果を奏する他、インターコネクタの断面積を大きくすることができるため、膜電極接合体20間を電気的に接続する際の抵抗を低減することができる。
【0082】
(複合膜の作製方法)
実施の形態3に係る燃料電池10に用いられる複合膜12の作製方法について、図13を参照して説明する。図13では、左側(i)に平面図を示し、右側(ii)、(iii)に平面図のA−A線、B−B線に沿った断面図をそれぞれ示す。
【0083】
実施の形態3に係る燃料電池10に用いられる複合膜12の基本的な作製方法は、実施の形態1と同様である。以下、実施の形態3に係る燃料電池10に用いられる複合膜12の作製方法について実施の形態1の作製方法と異なる点を中心に説明する。
【0084】
図3(A)乃至図3(B)に示す工程の後、図13に示すように、カソード側から電解質膜22の所定位置にレーザを照射する。この所定領域は、第3のガス不透過部104が形成された領域を含み、電解質膜22を横断する領域に対応しており、レーザ照射により所定領域の電解質膜22が選択的に除去されると、電解質膜22が個々の膜電極接合体20に対応した領域に分割されるとともに、カソード側に第3のガス不透過部104が露出する。この工程で用いるレーザビームの波長は、電解質膜22を加工できる範囲、たとえば1064−10600nmである。
【0085】
続いて、図4(B)乃至図4(C)と同様な工程を順に実施することにより、実施の形態3に係る膜電極接合体20が組み込まれた複合膜12を簡便に作製することができる。
【0086】
(実施の形態4)
図14は、実施の形態4に係る燃料電池10の構造を示す断面図である。上述した実施の形態1、2および3の燃料電池10では、複数の膜電極接合体を併設可能な形状および面積を有する電解質膜22の上に、膜電極接合体形成領域に対応する開口部16を設けて、基材14を載置しているが、本実施の形態では、膜電極接合体形成領域に対応する開口部16を設けて配置した基材14の間に、電解質膜22を形成している。また、上述した実施の形態1および実施の形態2に係る燃料電池10では、隣接する膜電極接合体20の間において、一方の膜電極接合体20を構成する電解質膜22と他方の膜電極接合体20を構成する電解質膜22が連結している。一方、実施の形態4に係る燃料電池10では、実施の形態3と同様に隣接する膜電極接合体20の間全体にインターコネクタ18が延在している。このインターコネクタ18によって一方の膜電極接合体20を構成する電解質膜22と他方の膜電極接合体20を構成する電解質膜22とが分断されている。
【0087】
次に、図6(B)に示すように、導電シート400と樹脂シート410からなる積層体420を短冊状に切断した後、洗浄して複合材430を得る。
【0088】
ここで、導電シート400は、図15(B)に示すように、第3のガス不透過部104に対応する。また、導電シート400の一方の側に積層された樹脂シート410は、第1のガス不透過部100に対応する。図15(B)に示すように、導電シート400の他方の側に積層された樹脂シート410は、第2のガス不透過部102に対応する。
【0089】
第1のガス不透過部100および第2のガス不透過部102は、触媒層の加工に用いられるレーザビームが透過することを妨げるように構成される。この方法および構造を実施することにより、レーザビームがアノード触媒層24およびカソード触媒層26を加工するために照射されるとき、当該レーザビームが第1のガス不透過部100および第2のガス不透過部102を貫通しないように制御される。この結果、加工されるべき触媒層とは反対側の触媒層にレーザ溶融が生じることが抑制される。
【0090】
絶縁層中の繊維は、レーザビームが透過することを妨げるように配向される。たとえば、ガラス繊維布が用いられる場合には、ガラス繊維の方向は、ガラス繊維が光透過材料として機能しないようにレーザビームの方向を向かないことが望ましい。たとえば、レーザ透過量が十分に減少するように、ガラス繊維は触媒層の加工に用いられるレーザビームに対して45°の角度をなす。さらに、絶縁層は、触媒層の加工に用いられるレーザビームを吸収する添加剤が加えられたエポキシ樹脂で構成されてもよい。
【0091】
本実施の形態によれば、実施の形態1、2、3と同様な効果を奏する他、電解質膜22と基材14の接続部を、基材14の側面とすることで発電に寄与しない基材部分の投影面積を小さくすることができるので、実施の形態1、2、3と比べて集積度の高い、言い換えれば投影面積当たりの出力が高い燃料電池を形成することができる。
【0092】
(複合膜の作製方法)
実施の形態4に係る燃料電池10に用いられる複合膜12の作製方法について、図15を参照して説明する。図15では、左側(i)に平面図を示し、右側(ii)に平面図のA−A線に沿った断面図をそれぞれ示す。
【0093】
まず、図15(A)に示すように、複数の膜電極接合体を形成する基盤となるガラス板500を用意する。なお、このガラス板500は工程の途中で取り除かれるものである。
【0094】
次に、図15(B)に示すように、ガラス板の上に基材14を載置し、端部を接着剤(図示せず)にて固定する。基材14には、膜電極接合体形成領域に対応する開口部16を設けておく。また、隣接する開口部16の間に位置する領域には貫通孔112が所定の間隔で形成されている。この貫通孔112に、第3のガス不透過部104が充填されている。基材14を電解質膜22の上に載置する前に貫通孔112に第3のガス不透過部104を予め充填してもよく、基材14を電解質膜22の上に載置した後に貫通孔112に第3のガス不透過部104を充填してもよい。
【0095】
次に、図15(C)に示すように、開口部16に溶媒中に電解質を分散させた電解質分散液を塗布し、溶媒を蒸発させて硬化させ、さらに熱処理を行う。電解質分散液はガス不透過で均質な厚さに形成することが望ましく、また塗布時に気泡の混入を防ぐごとが重要である。製膜時に気泡の混入防止と、混入した気泡を抜くためにはできるだけ濃度の薄い溶液を用いる方が望ましい。また、電解質を基材の開口部に基材の上面まで充填し乾燥させることにより、基材と電解質の界面は基材の高さ方向全体に密着した状態で形成できるため、より薄い溶液とより深い基材の開口部を用いたほうが、電解質膜と基材の接着面積が大きくなり接着強度を増すことができる。一方、濃度の薄い溶液と濃度の濃い溶液を使用して同じ厚みの膜を形成する場合、濃度の薄い溶液を用いる場合はより多くの溶液を開口部に保持する必要があり基材の開口を深くしなければならないが、濃度の濃い溶液を用いる場合はより少ない溶液を開口部に保持すればよいので基材の開口を浅くできる。濃い濃度の溶液を用いる方がより薄い燃料電池層を形成するためには望ましい。たとえば濃度が20wt%のNafion分散液(DuPont D2020)を用い、基材14の開口部16の深さを75〜150μmとし、基材14の上面までNafion分散液を充填し乾燥させることで、電解質膜と基材の接着強度を確保しながら、燃料電池に適切な15〜30μmの厚みの電解質膜を形成することができる。なお、75〜150μmの厚みの20wt%のNafion分散液を常温で放置し乾燥させると表面の硬化が先に進行し電解質膜にクラックが入ってしまう。表面にクラックを入れずに電解質膜を形成するためには、溶媒を徐々に蒸発させる必要があり、温度を下げたり、加圧することで溶媒の蒸発速度を抑えることができる。たとえば、20wt%のNafion分散液を75〜150μmで充填した際には、雰囲気を乾燥した状態に保ちながら10〜15℃程度の温度範囲で8時間程度かけて乾燥させ、その後に120℃で20分間の熱処理を行うことで良好な膜を形成できる。
【0096】
次に、図16(A)に示すように、基材14の開口部16に電解質膜22を形成した複合膜をガラス板からはがす。本実施の形態では、ガラスの面に密着し、基材14と同一面に形成された電解質膜22の面がカソード側であり、反対側の電解質膜22の面がアノード側である。なお、図16(A)(ii)に示すように、第3のガス不透過部104を挟む基材14の領域が第1のガス不透過部100、第2のガス不透過部102である。
【0097】
次に、図16(B)に示すように、電解質膜22の周縁部分を残し、電解質膜22のアノード側およびカソード側の全体にそれぞれ触媒スラリーを塗布し、触媒層80および触媒層82を形成する。
【0098】
次に、図16(C)に示すように、電解質膜22のアノード側に塗布された触媒層をレーザ照射により選択的に除去してアノード触媒層24を形成するとともに、第2のガス不透過部102を露出させる。一方、電解質膜22のカソード側に塗布された触媒層をレーザ照射により選択的に除去してカソード触媒層26を形成するとともに、第1のガス不透過部100に接触している領域の電解質膜22を露出させる。言い換えると、電解質膜22を挟んで第1のガス不透過部100と対応している領域の触媒層82にレーザ照射を行い、触媒層82を選択的に除去する。電解質膜22を透過したレーザビームは第1のガス不透過部100で遮断されるため、触媒層80にダメージが生じることが抑制される。ここでの工程で用いるレーザの波長は、触媒層(電極)82を加工可能で、かつ、電解質膜22を透過する範囲、たとえば180−550nmである。
【0099】
以上の製造工程により、実施の形態4に係る膜電極接合体が組み込まれた複合膜12が簡便に作製される。
【0100】
変形例として、実施形態1の変形例と同様の短冊状の複合材(集電体)420を用いることで、実施の形態4に係る膜電極接合体が組み込まれた複合膜12が簡便に作製される。
【0101】
基材14の第1のガス不透過部100、第2のガス不透過部102および、短冊状の複合材(集電体)420において、第1、2のガス不透過部100、102に相当する樹脂シート410には、電解質膜22と十分な強度で接合される必要がある。
【0102】
第1のガス不透過部100、第2のガス不透過部102および樹脂シート410と、電解質膜22の間に接着性の高い中間層を設けてもよい。
【0103】
また、第1のガス不透過部100、第2のガス不透過部102および樹脂シート410の材質を、電解質膜22と接着性の高い材質としてもよい。たとえば、電解質膜22として20wt%Nafion分散液を使用した場合は、第1のガス不透過部100、第2のガス不透過部102および樹脂シート410の材質をエポキシ樹脂とし、たとえばHuntsmanのAraldite LY1556、Aradur 917、Araldite GY508 Accelerator 070を29:29:41:1の重量比で配合することで、優れた密着性を得ることができる。
【0104】
また、第1のガス不透過部100、第2のガス不透過部102および樹脂シート410を、電解質膜22と接着させる前に、サンドブラスト等の処理を行い表面に1μm程度の微細な凹凸を設け、アンカー効果により電解質膜22との接着強度を高めてもよい。
【0105】
本発明は、上述の各実施の形態に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて各種の設計変更等の変形を加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施の形態も本発明の範囲に含まれうるものである。
【0106】
上述した説明は、例示を意図とし、限定的ではない。上述した説明に基づいて当業者の通常の能力によって他の実施の形態が使用されうる。また、上述した詳細な説明において、開示内容を簡素化するように種々の特徴が分類される。これは、請求項に記載されていない開示内容がいかなる請求項にも本質的であることを意図しないと解される。むしろ、意図した主題は特定の開示された実施の形態の全ての特徴を含まない場合がある。このため、請求項の記載は、詳細な説明に組み込まれ、各請求項は個別の実施の形態として自立する。本発明の範囲は、請求項に付与される権利と等かな全ての範囲に沿って、請求項を参照して定められるべきである。
【符号の説明】
【0107】
10 燃料電池、12 複合膜、14 基材、20 膜電極接合体、22 電解質膜、24 アノード触媒層、26 カソード触媒層、16 開口部、18 インターコネクタ、37 燃料貯蔵部、40 アノード用ハウジング、42 カソード用ハウジング、44 空気取入口、50 封止部材、80 触媒層、82 触媒層、100 第1のガス不透過部、102 第2のガス不透過部、104 第3のガス不透過部、110 貫通孔、112 貫通孔
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池に関する。より具体的には、本発明は、セルが平面配列された燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は水素と酸素とから電気エネルギを発生させる装置であり、高い発電効率を得ることができる。燃料電池の主な特徴としては、従来の発電方式のように熱エネルギや運動エネルギの過程を経ない直接発電であるので、小規模でも高い発電効率が期待できること、窒素化合物等の排出が少なく、騒音や振動も小さいので環境性が良いことなどが挙げられる。このように、燃料電池は燃料のもつ化学エネルギを有効に利用でき、環境にやさしい特性を持っているので、21世紀を担うエネルギ変換システムとして期待され、宇宙用から自動車用、携帯機器用まで、大規模発電から小規模発電まで、種々の用途に使用できる将来有望な新しい発電システムとして注目され、実用化に向けて技術開発が本格化している。
【0003】
中でも、固体高分子形燃料電池は、他の種類の燃料電池に比べて、作動温度が低く、高い出力密度を持つ特徴が有り、特に近年、携帯機器(携帯電話、ノート型パーソナルコンピュータ、PDA、MP3プレーヤ、デジタルカメラあるいは電子辞書、電子書籍)などの電源への利用が期待されている。携帯機器用の固体高分子形燃料電池としては、複数の単セルを平面状に配列した平面配列型の燃料電池が知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
平面配列型の燃料電池では、電力は電極の総面積に依存する。一方、電圧については、直列に接続されるセルの数に依存する。このため、燃料電池の小型化を図るとともに、必要な電力および電圧を得るためには、限られた面積内で直列接続をするセルの数を増やすことが必要となり、セルの面積を小さくするとともに、隣接するセルの間隔をより短くするセルの微細化が必要となる。
【0005】
セルのピッチは、集電端部からの抵抗損失を減らすために、より小さいことが望ましい。一般に、燃料電池の数を増やすと抵抗損失が減るが、隣接するセル間のインターコネクタの上方に空間があるため、平面配列された燃料電池の全有効面積が減少する。本発明の目的は、平面配列型の燃料電池において、燃料電池用のインターコネクタ領域の面積を小さくすることに役立つ設計および方法を提供することにある。
【0006】
本発明はこうした課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、セルを平面状に配列した平面配列型の燃料電池において、ガスリークを抑制しつつ、セルの間隔を狭めて微細化を図ることのできる技術の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある態様は、燃料電池層である。第1の表面および第2の表面を有し、複数のインターコネクタと、前記複数のインターコネクタの間に設けられた複数のイオン伝導部材とを含む、複合層と、前記第1の表面に設けられ、アノードを形成する第1の複数の電極被覆層と、前記第2の表面に設けられ、カソードを形成する第2の複数の電極被覆層と、を備え、各第1の複数の電極被覆層および各第2の複数の電極被覆層は前記イオン伝導部材の一つとイオン接触し、前記インターコネクタの一つと電気的に接触し、少なくとも一つのインターコネクタは、絶縁材料で構成され、レーザビームの透過を遮るように構成された、第1のガス不透過部および第2のガス不透過部と、電気伝導性を有し、2つの表面および当該2つの表面に平行な長さを有し、当該2つの表面の一つが前記第1のガス不透過部および前記第2のガス不透過部の前記第2の表面に近接している第3のガス不透過部と、を含み、前記第1のガス不透過部および前記第2のガス不透過部は、それぞれ、第1の表面および第2の表面を有し、第1の表面は前記イオン伝導部材の一つと接触し、 前記インターコネクタおよび前記第3のガス不透過部がある燃料電池のアノードを隣接する燃料電池のカソードに電気的に接続させ、第1のガス不透過部と第2のガス不透過部とが触媒層の加工に用いられるレーザビームの透過を妨げることを特徴とする。
【0008】
上記態様の燃料電池層において、前記複合層から延在する第1の電極が、前記第1のガス不透過部を被覆し、かつ前記第3のガス不透過部に接続していてもよい。前記複合層から延在する第2の電極が、前記第3のガス不透過部に接続していてもよい。前記第1の電極と前記第2の電極が一体的に形成されており、前記インターコネクタは前記第1の複数の電極被覆層および前記第2の複数の電極被覆層に設けられた貫通孔を介して前記第1の電極および前記第2の電極とを電気的に接続してもよい。前記第3のガス不透過部を含むインターコネクタが膜電極接合体と他の膜電極接合体との間に延在し、前記膜電極接合体の電解質膜と前記他の膜電極接合体の電解質膜とが前記インターコネクタにより分断されていてもよい。少なくとも1つのインターコネクタは、第1または第2の複数の電極と外部回路との電気的な伝導経路を提供し、前記経路は3番目のガス不浸透性の領域の長さに沿って伸びる経路であってもよい。前記第1および第2のガス不透過部が、複数の材料により構成され、少なくとも1つの材料が顔料を含んでもよい。前記顔料は、前記第1のガス不透過部および前記第2のガス不透過部の材料特性を変えて、レーザビームの透過量を減少またはレーザビームの吸収量を増加させる、またはこの両者を行ってもよい。前記第1および第2のガス不透過部が、複数の材料により構成され、少なくとも1つの材料が金属酸化物の粒子を含んでもよい。前記金属酸化物の粒子は、前記第1のガス不透過部および前記第2のガス不透過部の材料特性を変えて、レーザビームの透過量を減少またはレーザビームの吸収量を増加させる、またはこの両者を行ってもよい。前記第1および第2のガス不透過部が、ガラス繊維を織った布にエポキシ樹脂を含侵して形成され、前記ガラス繊維が電解質膜の第1主面に対して、90度未満の角度で配置されてもよい。
【0009】
本発明の他の態様は、燃料電池層の製造方法である。当該燃料電池層の製造方法は、第1の表面および第2の表面を有し、複数のインターコネクタと、前記複数のインターコネクタの間に設けられた複数のイオン伝導部材とを含む、複合層を形成する工程と、前記第1の表面に第1の複数の電極被覆層を設けて、アノードを形成する工程と、前記第2の表面に第2の複数の電極被覆層を設けて、カソードを形成する工程と、を備え、各第1の複数の電極被覆層および各第2の複数の電極被覆層は前記イオン伝導部材の一つとイオン接触し、前記インターコネクタの一つと電気的に接触し、少なくとも一つのインターコネクタは、絶縁材料で構成され、レーザビームの透過を遮るように構成された、第1のガス不透過部および第2のガス不透過部と、電気伝導性を有し、2つの表面および当該2つの表面に平行な長さを有し、当該2つの表面の一つが前記第1のガス不透過部および前記第2のガス不透過部の前記第2の表面に近接している第3のガス不透過部と、を含み、前記インターコネクタおよび前記第3のガス不透過部が燃料電池のアノードと隣接する値料電池のカソードとを電気的に接続し、前記第1のガス不透過部および前記第2のガス不透過部に沿って前記電極被覆層の一部をレーザビームを用いて選択的に除去し、隣接する燃料電池間を電気的に絶縁する工程をさらに備え、触媒層の加工に用いられるレーザービームの透過に関して、前記第1のガス不透過部および前記第2のガス不透過部の透過率が第1のおよび第2の複数の電極被覆層の透過率より小さいことを特徴とする。
【0010】
なお、上述した各要素を適宜組み合わせたものも、本件特許出願によって特許による保護を求める発明の範囲に含まれうる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、セルを平面状に配列した平面配列型の燃料電池において、ガスリークを抑制しつつ、セルの間隔を狭めて微細化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
実施の形態が、図面を参照してあくまで例として説明される。なお、図面は例示でありこれに制限されない。
【図1】実施の形態1に係る燃料電池の構造を示す分解斜視図である。
【図2】図1の部品を組み合わせた状態でのA−A線に沿った燃料電池の断面図である。
【図3】基材および電解質膜の形態を示す斜視図である。
【図4】実施の形態1に係る燃料電池に用いられる複合膜を作製する方法を示す工程図である。
【図5】実施の形態1に係る燃料電池に用いられる複合膜を作製する方法を示す工程図である。
【図6】変形例に係る複合膜を作製する方法を示す工程図である。
【図7】変形例の複合材を示す拡大斜視図である。
【図8】変形例に係る複合膜を作製する方法を示す工程図である。
【図9】変形例に係る複合膜を作製する方法を示す工程図である。
【図10】実施の形態2に係る燃料電池の構造を示す断面図である。
【図11】実施の形態2に係る燃料電池に用いられる複合膜を作製する方法を示す工程図である。
【図12】実施の形態3の燃料電池の電解質膜およびインターコネクタをカソード側からみた平面図を示す。
【図13】実施の形態3に係る燃料電池に用いられる複合膜を作製する方法を示す工程図である。
【図14】実施の形態4に係る燃料電池の構造を示す断面図である。
【図15】実施の形態4に係る燃料電池に用いられる複合膜を作製する方法を示す工程図である。
【図16】実施の形態4に係る燃料電池に用いられる複合膜を作製する方法を示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書を通して、本発明に対する理解をより完全にするために特定の形態が説明される。しかし、本発明は、これらの特定の形態以外でも実施可能である。他の例では、本発明を不必要にあいまいにすることを避けるため、周知の要素は、詳細に図示または説明されていない。図面により、本発明が実施される特定の実施の形態を図示される。これらの実施の形態は組み合わせることができ、他の要素が利用され、構造的または論理的な変更が本発明の範囲を逸脱しない範囲で可能である。したがって、本明細書および図面は、限定的な意味ではなく、例示的であるとみなすべきである。
【0014】
本明細書で参照される全ての出版物、特許および特許文献は参照により個々に組み込まれるかのように、参照によりその全てが組み込まれる。本明細書とこれらの文献との間の使用法が一致しない場合には、組み込まれた文献の使用法は、本明細書の使用法を補足するとみなされる。相容れない不一致に関しては、本発明の使用法が優先する。
【0015】
本明細書において、「または」という用語は、非制限的に、または、「A、BまたはC」が特に指示がない限り、「Aのみ」、「Bのみ」、「Cのみ」、「AおよびB」、「BおよびC」、「AおよびC」、「A、BおよびC」を含むように用いられる。「上方に」および「下方に」という用語は、構成の中心に関して2つの異なる方向を示すために用いられる。「より上の」および「より下の」という用語は、構成の2つの異なる表面を記述するために用いられる。しかし、これらの用語は、単に説明を容易にするために用いられ、記述された実施の形態の燃料電池層の方向を固定するものではないと理解されるべきである。各実施の形態および請求項において、「第1の」、「第2の」および「第3の」等の用語は、単にラベルとして用いられ、これらの目的物に数字を要件と課すことを意図しない。本明細書で明確に開示された数値範囲は、たとえ、明確に開示された範囲の部分集合の範囲が明確に開示されているとしても、明確に開示された範囲のいかなる部分集合も含む。たとえば、1−100、または1以上100以下、は、1−80、2−76または1から100の間にある他のいかなる数値範囲も含む。
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。なお、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0017】
本発明の方法に従って複合層としてしようされうる燃料電池層などの電気化学セルを含む複合層構造の複数の例は、PCT出願:PCT/CA/09/00253として2009年2月27日に出願された、「電気化学セルおよびこれに関連する膜」というタイトルの米国特許出願公開番号2011/0003229に記述されている。当該文献は参照によりその全てが本明細書に組み込まれる。さらに、燃料電池層の例は、米国特許出願番号11/047560として2005年2月2日に出願された、「電気化学反応層の下にある電流通過構造を有する電流電気化学セル」というタイトルの米国特許出願公開番号2005/0250004、2010年12月23日に出願された、「燃料電池、非対称な構造を有する燃料電池部材、およびその使用法」というタイトルのPCT国際出願公開番号WO 2011/079377、および、2008年12月22日に出願された、「不連続領域を含む電気化学セル組み立て部品」というタイトルの米国特許公開番号2009/0162722に開示されている。これらの文献の全開示内容は、参照により本明細書に組み込まれる。燃料電池層の例は、以下の実施の形態で説明されるが、参照により組み込まれるいかなる特許文献に記載された燃料電池および燃料電池層を用いて本発明が実施されうることを理解されたい。明確にするために、比較的少ない数の燃料電池の部材を配置したものを含む燃料電池層の種々の形態が図面に示される。しかし、本発明の方法は、より多くの数の燃料電池の部品を有する燃料電池層に適用されうる。
【0018】
平面配列型の燃料電池のサイズを小さくするために、セル間の間隔が狭められる。たとえば、レーザ加工を用いた手法が当該間隔を狭める方法として知られている。この手法では、通常の膜電極接合体の触媒層がレーザビームを用いて部分的に除去され、平面配列型の燃料電池が製造される。
【0019】
本発明が解決する課題は、ある平面配列型の燃料電池の構成において、可能な限り燃料電池の充填密度を維持しつつ、隣接する燃料電池を分離するために、非常に狭い不連続領域を燃料電池層の表面に形成しなければいけないことである。レーザビームは、非常に狭いギャップっを形成するために有効に用いられてきたが、レーザビームは、燃料電池層を透過し、加工中の側とは反対側のセルの側にある電極を溶かしてしまう傾向を有しうる。この望ましくない透過による効果により、平面配列型の燃料電池の触媒層に望ましくない不連続領域が形成される。本発明の目的は、ギャップとは反対側の触媒層にける不連続の度合い、およびレーザ溶融による水素リークの頻度を低減することができる、改良された構造およびギャップ形成の方法を提供することにある。
【0020】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1に係る燃料電池の構造を示す分解斜視図である。図2は、図1のA−A線に沿った断面図である。図1および図2に示すように、燃料電池10は、膜電極接合体(MEA、触媒塗布プロトン交換膜(CCM)ともいう)20が組み込まれた複合膜12、アノード用ハウジング40およびカソード用ハウジング42を備える。また、複合膜12の周縁部に後述する封止部材50が設けられている。
【0021】
複合膜12は、基材14、複数の膜電極接合体20および隣接する膜電極接合体20を電気的に接続するために必要な部材を含む。
【0022】
基材14は、エポキシ樹脂やポリアクリレートなどの一般的なポリマーなどの絶縁性の材料により形成されている。基材14には、膜電極接合体20と同数の開口部16が設けられている。
【0023】
各膜電極接合体20は、電解質膜22、電解質膜22の一方の面に設けられたアノード触媒層(第1の電極)24、電解質膜22の他方の面に設けられたカソード触媒層(第1の電極の対向電極である第2の電極)26を備える。膜電極接合体20は、基材14に設けられた開口部16に対応して設けられている。アノード触媒層24には、燃料ガスとして水素が供給される。一方、カソード触媒層26には酸化剤として空気が供給される。一対のアノード触媒層24とカソード触媒層26との間に電解質膜22が狭持されることによりセルが構成され、各セルは水素と空気中の酸素との電気化学反応により発電する。
【0024】
このように、本実施の形態の燃料電池では、アノード触媒層24にカソード触媒層26が対となり、複数のセルが平面状に形成されている。
【0025】
以下、隣接する2つの膜電極接合体20の一方を膜電極接合体20aとし、他方を膜電極接合体20bとして、隣接する2つの膜電極接合体20の間の電気接続構造および膜電極接合体20の形態の説明を行う。
【0026】
インターコネクタ18は、隣接する膜電極接合体20の間において、基材14および電解質膜22を貫通して設けられている。膜電極接合体20aの電解質膜22に被覆されたアノード触媒層24aは、インターコネクタ18の方へ延在して設けられており、インターコネクタ18と一方のセルの電解質膜22との間の基材14を被覆し、インターコネクタ18に接続されている。また、隣接するセルにおいて、他方のセルの電解質膜22に被覆されたカソード触媒層26は、インターコネクタ18の方へ延在して設けられており、インターコネクタ18と他方のセルの電解質膜22との間の基材14を被覆し、インターコネクタ18に接続されている。インターコネクタ18は導電性の材料で形成され、たとえば、カーボンなどが用いられる。以上の構成により、隣接するセル同士はインターコネクタ18により直列接続されている。
【0027】
電解質膜22は、湿潤状態において良好なイオン伝導性を示すことが好ましく、アノード触媒層24とカソード触媒層26との間でプロトンを移動させるイオン交換膜として機能する。電解質膜22は、含フッ素重合体や非フッ素重合体等の固体高分子材料によって形成され、例えば、スルホン酸型パーフルオロカーボン重合体、ポリサルホン樹脂、ホスホン酸基又はカルボン酸基を有するパーフルオロカーボン重合体等を用いることができる。スルホン酸型パーフルオロカーボン重合体の例として、ナフィオン(デュポン社製:登録商標)112などが挙げられる。また、非フッ素重合体の例として、スルホン化された、芳香族ポリエーテルエーテルケトン、ポリスルホンなどが挙げられる。
【0028】
アノード触媒層24およびカソード触媒層26は、イオン交換樹脂ならびに触媒粒子、場合によって炭素粒子を有する。
【0029】
アノード触媒層24およびカソード触媒層26が有するイオン交換樹脂は、触媒粒子と電解質膜22を接続し、両者間においてプロトンを伝達する役割を持つ。このイオン交換樹脂は、電解質膜22と同様の高分子材料から形成されてよい。触媒金属としては、Sc、Y、Ti、Zr、V、Nb、Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、Pt、Os、Ir、ランタノイド系列元素やアクチノイド系列の元素の中から選ばれる合金や単体が挙げられる。また触媒を担持する場合には炭素粒子として、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンナノチューブなどを用いてもよい。
【0030】
図3は、基材14および電解質膜22の形態を示す斜視図である。本実施の形態では、基材14に形成された貫通孔112および電解質膜22に形成された貫通孔110の開口形状は円形状であるが、貫通孔110の開口形状はこれに限られず、楕円状や矩形状であってもよい。貫通孔110の開口形状が楕円状や矩形状である場合には、長辺方向や長軸方向を隣接する膜電極接合体20の対向辺に沿った方向とすることが好ましい。これによれば、隣接する膜電極接合体20の間に生じる無駄なスペースを低減し、発電有効面積を増加させることができる。
【0031】
基材14は、絶縁性およびガス不透過性を有する材料で形成されており、隣接する膜電極接合体20のアノード触媒層24間を絶縁する機能を担う。基材14の材料としては、エポキシ樹脂やポリアクリレートなどの一般的なポリマー絶縁層、ファイバー強化されたエポキシ樹脂やポリアクリレートなどの一般的なポリマー絶縁層、レーザ光線吸収する添加剤を添加したエポキシ樹脂やポリアクリレートなどの一般的なポリマー絶縁層が挙げられる。
【0032】
図2に戻り、隣接する膜電極接合体20の間の領域において、基材14は、第1のガス不透過部100および第2のガス不透過部102を有する。
【0033】
第1のガス不透過部100は、膜電極接合体20aのカソード触媒層26aと膜電極接合体20bのカソード触媒層26bとの隙間に対応して、膜電極接合体20aから延在する電解質膜22aのアノード側の主面に接して設けられている。
【0034】
第2のガス不透過部102は、膜電極接合体20aのアノード触媒層24aと膜電極接合体20bのアノード触媒層24bとの間の隙間において露出し、膜電極接合体20bから延在する電解質膜22bのアノード側の主面に接して設けられている。
【0035】
第1のガス不透過部100および第2のガス不透過部102は、触媒層の加工に用いられるレーザビームの透過を妨げるように構成される。後述する複合膜の作製方法で説明するように、アノード触媒層24やカソード触媒層26の加工の際にレーザビームを照射する場合に、レーザビームを第1のガス不透過部100や第2のガス不透過部102を透過しないようにする。この結果、加工されるべき触媒層とは反対側の触媒層にレーザ溶融が生じることを抑制することができる。
【0036】
より具体的には、第1のガス不透過部100および第2のガス不透過部102は、触媒加工用のレーザ光を吸収する添加剤が加えられたエポキシ樹脂または一般的なポリマー樹脂からなる絶縁層で構成される。当該絶縁層はファイバー強化されていてもよい。添加剤は、レーザ加工によって加工されるべき触媒層とは反対側の触媒層にレーザ溶融が生じることを抑制するために2つのメカニズムを有する。第1に、添加剤によりレーザビームが散乱され、レーザビームの透過が低減される。第2に、レーザビームの波長と同調する吸収バンドに応じて添加剤を選択することにより、添加剤がレーザビームを吸収することで、レーザの透過が抑制され、ひいてはレーザ加工によって加工されるべき触媒層とは反対側の触媒層にレーザ溶融が生じることを低減することができる。たとえば、もともと赤い酸化鉄はグリーンレーザビームを非常によく吸収する。酸化チタンは、UVレーザビームを非常によく吸収する。レーザビームを散乱させる能力だけでなく、使用される特定のレーザビームの波長を吸収する能力に基づいて添加剤を選択することが望ましい。第1のガス不透過部100および第2のガス不透過部102に含まれる添加剤の量は当該部分の全質量を基準として、10質量%以内の範囲が好ましい。添加剤として用いられる金属酸化物材料としては、酸化第二鉄(99.5%、325メッシュ、Alfa Aesar社製)、酸化チタン(ルチル型、99.5%、1〜2μm粉末、Alfa Aesar社製)、酸化亜鉛(ナノガード、400〜100nm粉末、Alfa Aesar社製)、酸化亜鉛(ACS等級、325メッシュ、Alfa Aesar社製)などが挙げられる。
【0037】
この他、第1のガス不透過部100および第2のガス不透過部102は、ファイバー強化されたエポキシ樹脂または一般的なポリマー樹脂からなる絶縁層で形成される。より具体的には、第1のガス不透過部100および第2のガス不透過部102はガラス繊維を織った布にエポキシ樹脂を含侵して形成される。この場合、絶縁層中のファイバーは、レーザビームの透過を防ぐように配向されうる。たとえば、ファイバーの織布を用いた形態では、ファイバーが光透過材として働くことを防ぐために、ファイバーの配向がレーザビームの方向に向かないようにすることが好ましい。たとえば、触媒層の加工に用いられるレーザビームに対して、ファイバーが45°の角度に配向することにより、レーザの透過量を顕著に低減することができる。また、ファイバー強化されたエポキシ樹脂または一般的なポリマー樹脂からなる絶縁層は、不織布系の繊維材料またはランダム配向した短繊維で形成されてもよい。
【0038】
インターコネクタ18は、膜電極接合体20aのアノード触媒層24aと、膜電極接合体20bのカソード触媒層26bとを電気的に接続する機能を担う。
【0039】
インターコネクタ18は、第3のガス不透過部104および導電部106を含む。
第3のガス不透過部104は、第1のガス不透過部100と第2のガス不透過部102との間に設けられ、かつ、第1のガス不透過部100および第2のガス不透過部102と同層である。本実施の形態では、第3のガス不透過部104は基材14に設けられた貫通孔112を充填している。インターコネクタ18の第3のガス不透過部104は、導電性およびガス不透過性を有する材料で形成されている。第3のガス不透過部104の材料としては、カーボンFRP、樹脂含侵した膨張黒鉛やグラファイト、貴金属などが挙げられる。
【0040】
導電部106は、隣接する膜電極接合体20の間において、電解質膜22を貫通するように形成されている。導電部106は、アノード側では上述した第3のガス不透過部104と接し、カソード側ではカソード触媒層26bと接続している。本実施の形態では、導電部106とカソード触媒層26bとが一体的に形成されており、カソード触媒層26bの一部が導電部106を兼ねている。なお、導電部106はカソード触媒層26bと異なる材料で形成されていてもよい。
【0041】
アノード触媒層24aは膜電極接合体20aから膜電極接合体20bの方へ延在する領域Aを有する。領域Aは、第1のガス不透過部100を被覆し、かつ第3のガス不透過部104の表面に位置しており、領域Aと第3のガス不透過部104とが電気的に接続している。
【0042】
本実施の形態では、膜電極接合体20aの電解質膜22と膜電極接合体20bの電解質膜22が一体的に形成されている。膜電極接合体20aと膜電極接合体20bとの間の領域において、電解質膜22に貫通孔110が設けられている。カソード触媒層26bは膜電極接合体20bから膜電極接合体20aの方へ延在する領域Bを有する。カソード触媒層26bの領域Bは、電解質膜22に設けられた貫通孔110を貫通し、第3のガス不透過部104に電気的および物理的に接続している。これにより、膜電極接合体20aのアノード触媒層24aと膜電極接合体20bのカソード触媒層26bとが電気的に接続されている。
【0043】
第3のガス不透過部104は、第1のガス不透過部100、第2のガス不透過部102と同様にカス不透過性を備えており、膜電極接合体20aと膜電極接合体20bとの間の領域が、第1のガス不透過部100、第2のガス不透過部102および第3のガス不透過部104からなるガス不透過部によって占められている。
【0044】
アノード用ハウジング40により、燃料貯蔵用の燃料貯蔵部37が形成されている。なお、アノード用ハウジング40に燃料供給口(図示せず)を設置することにより、燃料カートリッジなどから燃料を適宜補充可能である。
【0045】
一方、カソード用ハウジング42には、外部から空気を取り込むための空気取入口44が設けられている。
【0046】
アノード用ハウジング40とカソード用ハウジング42とは、複合膜12の周縁部に設けられた封止部材50を介して、ボルト、ナットなどの締結部材(図示せず)を用いて締結されている。これにより、封止部材50に圧力が加えられ、封止部材50によるシール性が高められる。このような締結部材は、燃料電池および筐体の構造および配置に応じて選択される。
【0047】
気液分離部49は、空気取入口44が設けられたカソード用ハウジング42の面とカソード触媒層26との間に設けられている。気液分離部49は、たとえばテフロン(登録商標)で形成される。空気取入口44から取り込まれた空気は気液分離部49を通過してカソード触媒層26に流入する。カソード触媒層26で生成した水が気化することで生成した水蒸気は、気液分離部49を通過し空気取入口44から外部に排出される。一方、気液分離部49の外部で水蒸気が結露することで生成した凝縮水は気液分離部49を通過できない。これにより、カソード触媒層26における水分量が過剰になること、いわゆるフラッディングが抑制される。
【0048】
以上説明した燃料電池10では、隣接する膜電極接合体20を電気的に接続するインターコネクタの一部をガス不透過性を有する第3のガス不透過部104とし、第3のガス不透過部104に連結した第1のガス不透過部100と第2のガス不透過部102を含む基材14により、隣接する膜電極接合体20の間が塞がれている。これにより、インターコネクタ形成領域となる隣接する膜電極接合体20の間においてガスリークが生じることが抑制される。
【0049】
さらに、第1のガス不透過部100、第2のガス不透過部102および第3のガス不透過部104により、隣接する膜電極接合体20の間においてガスリークが生じることが抑制されているため、インターコネクタを構成する導電部をガス透過性を有する触媒層自体とすることが可能となる。この結果、隣接する膜電極接合体20の間隔を狭めることができ、平面配列型の燃料電池の高集積化を図ることができる。
【0050】
なお、本明細書において、「燃料電池層」は、互いに近接して配置された1以上の燃料電池を含む。
【0051】
(複合膜の作製方法)
実施の形態1に係る燃料電池10に用いられる複合膜12の作製方法について、図4乃至図5を参照して説明する。図4乃至図5は、実施の形態1に係る複合膜12を作製する方法を示す工程図である。なお、図4乃至図5において、左側(i)に平面図を示し、右側(ii)に平面図のA−A線に沿った断面図を示す。
【0052】
平面配列型の燃料電池は異なる波長の2つのレーザビームを用いて加工が行われる。第1の波長は、電解質材料を除去することができ、電解質層に貫通孔を形成し、電気的なインターコネクタを形成するために用いられる。第2の波長は、触媒層を選択的に除去するために用いられる。ただし、この波長は、電解質層を貫通せず、電解質層を加工しない。
【0053】
まず、図4(A)に示すように、複数の膜電極接合体を併設可能な形状および面積を有する電解質膜22を用意する。
【0054】
次に、図4(B)に示すように、電解質膜22の上に基材14を載置し、熱圧着により接着する。接着性およびガスシール性能を向上させるために、Nafion分散液(DuPont D2020)が接着剤として電解質膜22と基材14との間に用いられてもよい。基材14には、膜電極接合体形成領域に対応する開口部16を設けておく。また、隣接する開口部16の間に位置する領域には貫通孔112が所定の間隔で形成されている。この貫通孔112に、第3のガス不透過部104が充填されている。基材14を電解質膜22の上に載置する前に貫通孔112に第3のガス不透過部104を予め充填してもよく、基材14を電解質膜22の上に載置した後に貫通孔112に第3のガス不透過部104を充填してもよい。本実施の形態では、基材14が設けられた電解質膜22の面がアノード側であり、基材14が設けられた側とは反対側の電解質膜22の面がカソード側である。なお、図4(B)(ii)に示すように、第3のガス不透過部104を挟む基材14の領域が第1のガス不透過部100、第2のガス不透過部102である。基材14の一部をなす「第1のガス不透過部100および第2のガス不透過部102」は、触媒層の加工に用いられる第2の波長のレーザが貫通しないような材料で構成される。
【0055】
次に、図5(A)に示すように、カソード側から電解質膜22の所定位置にレーザを照射する。この所定領域は、第3のガス不透過部104が形成された領域に対応しており、レーザ照射により所定領域の電解質膜22が選択的に除去されると、電解質膜22に貫通孔110が形成されるとともに、カソード側に第3のガス不透過部104が露出する。この工程で用いるレーザビームの波長は、電解質膜22を加工できる範囲、たとえば1064−10600nmである。
【0056】
次に、図5(B)に示すように、電解質膜22の周縁部分を残し、電解質膜22のアノード側およびカソード側の全体にそれぞれ触媒スラリーを塗布し、触媒層80および触媒層82を形成する。
【0057】
次に、図5(C)に示すように、電解質膜22のアノード側に塗布された触媒層をレーザ照射により選択的に除去してアノード触媒層24を形成するとともに、第2のガス不透過部102を露出させる。一方、電解質膜22のカソード側に塗布された触媒層をレーザ照射により選択的に除去してカソード触媒層26を形成するとともに、第1のガス不透過部100に接触している領域の電解質膜22を露出させる。言い換えると、電解質膜22を挟んで第1のガス不透過部100と対応している領域の触媒層82にレーザ照射を行い、触媒層82を選択的に除去する。電解質膜22を透過したレーザビームは第1のガス不透過部100で遮断されるため、触媒層80にダメージが生じることが抑制される。ここでの工程で用いるレーザの波長は、触媒層(電極)82を加工可能で、かつ、電解質膜22を透過する範囲、たとえば180−550nmである。このように、この工程で用いられるレーザの波長は、図5(A)に示した工程で用いられるレーザの波長と異なる。
【0058】
以上の製造工程により、実施の形態1に係る膜電極接合体が組み込まれた複合膜12が簡便に作製される。
【0059】
以下では、複合膜の作製方法の変形例を説明する。図6、図8および図9は、変形例に係る複合膜を作製する方法を示す工程図である。図8乃至図9において、左側(i)に平面図を示し、右側(ii)に平面図のA−A線に沿った断面図を示す。
【0060】
平面配列型の燃料電池は異なる波長の2つのレーザビームを用いて加工が行われる。第1の波長は、電解質材料を除去することができ、電解質層に貫通孔を形成し、電気的なインターコネクタを形成するために用いられる。第2の波長は、触媒層を選択的に除去するために用いられる。ただし、この波長は、電解質層を貫通せず、電解質層を加工しない。
【0061】
図6(A)に示すように、カーボンFRPなどガス不透過性と導電性を具備する材料で形成された導電シート400と、縦繊維と横繊維からなるガラス繊維を縦繊維と横繊維とが直交するように編み込んだ部材にエポキシ樹脂を含浸させて得られた樹脂シート410を複数枚用意する。導電シート400の両主表面にそれぞれ複数の樹脂シート410を積層した後、樹脂シート410を加熱して硬化させる。
【0062】
次に、図6(B)に示すように、導電シート400と樹脂シート410からなる積層体420を短冊状に切断した後、洗浄して複合材430を得る。
【0063】
ここで、導電シート400は、図4(B)に示すように、第3のガス不透過部104に対応する。また、導電シート400の一方の側に積層された樹脂シート410は、第1のガス不透過部100に対応する。図4(B)に示すように、導電シート400の他方の側に積層された樹脂シート410は、第2のガス不透過部102に対応する。
【0064】
第1のガス不透過部100および第2のガス不透過部102は、触媒層の加工に用いられるレーザビームが透過することを妨げるように構成される。この方法および構造を実施することにより、レーザビームがアノード触媒層24およびカソード触媒層26を加工するために照射されるとき、当該レーザビームが第1のガス不透過部100および第2のガス不透過部102を貫通しないように制御される。
【0065】
絶縁層中の繊維は、レーザビームが透過することを妨げるように配向される。たとえば、ガラス繊維布が用いられる場合には、ガラス繊維の方向は、ガラス繊維が光透過材料として機能しないようにレーザビームの方向を向かないことが望ましい。たとえば、レーザ透過量が十分に減少するように、ガラス繊維は触媒層の加工に用いられるレーザビームに対して45°の角度をなす。さらに、絶縁層は、触媒層の加工に用いられるレーザビームを吸収する添加剤が加えられたエポキシ樹脂で構成されてもよい。
【0066】
図6(C)は、複合材430の拡大斜視図である。導電シート400および樹脂シート410からなる積層構造が露出する複合材430の切断面の法線(上述した、加工用レーザビームの方向)に対して、樹脂シート410中のガラス繊維の縦繊維および横繊維はともに45°の方向を向いている。
【0067】
なお、上述した変形例では、樹脂シート410中のガラス繊維の縦繊維および横繊維の方向は、上記法線に対して45°の角度をなしているが、樹脂シート410を作製する際に、樹脂シート410の辺に対するガラス繊維の方向を変えることで、積層体中のガラス繊維の縦繊維および横繊維の方向を所望の方向に向けることができる。図7は、樹脂シート410中のガラス繊維の縦繊維の方向を切断面の法線と平行とし、横繊維の方向を切断面の法線に対して90°とした形態を示す。
【0068】
次に、図8(A)に示すように、複数の膜電極接合体を併設可能な形状および面積を有する電解質膜22を用意する。
【0069】
次に、図8(B)に示すように、隣接する膜電極接合体の形成領域を分断するように短冊状の複合材(集電体)420を電解質膜22の上に固定する。また、電解質膜22の長手方向の端部に沿って短冊状の複合材(集電体)420を設置し、熱圧着により接着する。接着性およびガスシール性能を向上させるために、Nafion分散液(DuPont D2020)が接着剤として電解質膜22と基材14との間に用いられてもよい。
【0070】
次に、図9(A)に示すように、電解質膜22のカソード側からレーザビームを照射して、導電シート400と重なる部分の電解質膜22に複数の貫通孔を形成する。この工程で用いるレーザビームの波長は、電解質膜22を加工できる範囲、たとえば1064−10600nmである。
【0071】
図9(B)に示すように、電解質膜22の周縁部分を残し、電解質膜22のアノード側およびカソード側の全体にそれぞれ触媒スラリーを塗布し、触媒層80および触媒層82を形成する。
【0072】
次に、図9(C)に示すように、電解質膜22のアノード側に塗布された触媒層をレーザ照射により選択的に除去してアノード触媒層24を形成するとともに、第2のガス不透過部102に相当する樹脂シート410を露出させる。一方、電解質膜22のカソード側に塗布された触媒層をレーザ照射により選択的に除去してカソード触媒層26を形成するとともに、第1のガス不透過部100に相当する樹脂シート410に接触している領域の電解質膜22を露出させる。電解質膜22を透過したレーザビームは第1のガス不透過部100に相当する樹脂シート410で遮断されるため、触媒層80にダメージが生じることが抑制される。ここでの工程で用いるレーザの波長は、触媒層(電極)82を加工可能で、かつ、電解質膜22を透過する範囲、たとえば180−550nmである。このように、この工程で用いられるレーザの波長は、図9(A)に示した工程で用いられるレーザの波長と異なる。
【0073】
以上の製造工程により、変形例に係る膜電極接合体が組み込まれた複合膜12が簡便に作製される。
【0074】
(実施の形態2)
図10は、実施の形態2に係る燃料電池10の構造を示す断面図である。実施の形態1の燃料電池10では、第1のガス不透過部100、第2のガス不透過部102および第3のガス不透過部104が同等の厚みであるが、本実施の形態では、第1のガス不透過部100および第2のガス不透過部102の方が第3のガス不透過部104より厚くなっている。さらに、第1のガス不透過部100の一部が第3のガス不透過部104の縁部の上に延在している。同様に、第2のガス不透過部102の一部が第3のガス不透過部104の縁部の上に延在している。これによれば、第1のガス不透過部100および第2のガス不透過部102により、第3のガス不透過部104が電解質膜22の方へ押さえ付けられるため、第3のガス不透過部104と導電部106との接続信頼性を向上させることができ、ひいては、燃料電池10の動作信頼性を向上させることができる。
【0075】
(複合膜の作製方法)
実施の形態2に係る燃料電池10に用いられる複合膜12の作製方法について、図11を参照して説明する。
【0076】
まず、図3(A)と同様に電解質膜22を用意する。次に、図11(A)に示すように、膜電極接合体形成領域に挟まれた領域において、電解質膜22の上に第3のガス不透過部104を形成する。本実施の形態では、第3のガス不透過部104の平面形状は長方形であるが、この形状に限定されない。
【0077】
次に、図11(B)に示すように、電解質膜22の上に基材14を載置し、第3のガス不透過部104を封止するように基材14を変形させながら熱圧着させる。基材14には、膜電極接合体形成領域に対応する開口部16を設けておく。また、第3のガス不透過部104が厚い場合は、基材14には、隣接する開口部16の間において、第3のガス不透過部104を填め込み可能な凹部114を予め設けてもよい。
【0078】
次に、図11(C)に示すように、電解質膜22のアノード側から、第3のガス不透過部104に接する領域の基材14にレーザを照射し、基材14を選択的に除去して、第3のガス不透過部104を露出させる。
【0079】
続いて、図4(A)乃至図4(C)と同様な工程を順に実施することにより、実施の形態2に係る膜電極接合体が組み込まれた複合膜12を簡便に作製することができる。
【0080】
(実施の形態3)
実施の形態3に係る燃料電池10は、電解質膜22およびインターコネクタ18の形態を除き、実施の形態1と同様である。図12に、実施の形態3の燃料電池10の電解質膜22およびインターコネクタ18をカソード側からみた平面図を示す。上述した実施の形態1および実施の形態2に係る燃料電池10では、隣接する膜電極接合体20の間において、一方の膜電極接合体20を構成する電解質膜22と他方の膜電極接合体20を構成する電解質膜22が連結している。一方、実施の形態3に係る燃料電池10では、隣接する膜電極接合体20の間全体にインターコネクタ18が延在している。このインターコネクタ18によって一方の膜電極接合体20を構成する電解質膜22と他方の膜電極接合体20を構成する電解質膜22とが分断されている。
【0081】
本実施の形態によれば、実施の形態1と同様な効果を奏する他、インターコネクタの断面積を大きくすることができるため、膜電極接合体20間を電気的に接続する際の抵抗を低減することができる。
【0082】
(複合膜の作製方法)
実施の形態3に係る燃料電池10に用いられる複合膜12の作製方法について、図13を参照して説明する。図13では、左側(i)に平面図を示し、右側(ii)、(iii)に平面図のA−A線、B−B線に沿った断面図をそれぞれ示す。
【0083】
実施の形態3に係る燃料電池10に用いられる複合膜12の基本的な作製方法は、実施の形態1と同様である。以下、実施の形態3に係る燃料電池10に用いられる複合膜12の作製方法について実施の形態1の作製方法と異なる点を中心に説明する。
【0084】
図3(A)乃至図3(B)に示す工程の後、図13に示すように、カソード側から電解質膜22の所定位置にレーザを照射する。この所定領域は、第3のガス不透過部104が形成された領域を含み、電解質膜22を横断する領域に対応しており、レーザ照射により所定領域の電解質膜22が選択的に除去されると、電解質膜22が個々の膜電極接合体20に対応した領域に分割されるとともに、カソード側に第3のガス不透過部104が露出する。この工程で用いるレーザビームの波長は、電解質膜22を加工できる範囲、たとえば1064−10600nmである。
【0085】
続いて、図4(B)乃至図4(C)と同様な工程を順に実施することにより、実施の形態3に係る膜電極接合体20が組み込まれた複合膜12を簡便に作製することができる。
【0086】
(実施の形態4)
図14は、実施の形態4に係る燃料電池10の構造を示す断面図である。上述した実施の形態1、2および3の燃料電池10では、複数の膜電極接合体を併設可能な形状および面積を有する電解質膜22の上に、膜電極接合体形成領域に対応する開口部16を設けて、基材14を載置しているが、本実施の形態では、膜電極接合体形成領域に対応する開口部16を設けて配置した基材14の間に、電解質膜22を形成している。また、上述した実施の形態1および実施の形態2に係る燃料電池10では、隣接する膜電極接合体20の間において、一方の膜電極接合体20を構成する電解質膜22と他方の膜電極接合体20を構成する電解質膜22が連結している。一方、実施の形態4に係る燃料電池10では、実施の形態3と同様に隣接する膜電極接合体20の間全体にインターコネクタ18が延在している。このインターコネクタ18によって一方の膜電極接合体20を構成する電解質膜22と他方の膜電極接合体20を構成する電解質膜22とが分断されている。
【0087】
次に、図6(B)に示すように、導電シート400と樹脂シート410からなる積層体420を短冊状に切断した後、洗浄して複合材430を得る。
【0088】
ここで、導電シート400は、図15(B)に示すように、第3のガス不透過部104に対応する。また、導電シート400の一方の側に積層された樹脂シート410は、第1のガス不透過部100に対応する。図15(B)に示すように、導電シート400の他方の側に積層された樹脂シート410は、第2のガス不透過部102に対応する。
【0089】
第1のガス不透過部100および第2のガス不透過部102は、触媒層の加工に用いられるレーザビームが透過することを妨げるように構成される。この方法および構造を実施することにより、レーザビームがアノード触媒層24およびカソード触媒層26を加工するために照射されるとき、当該レーザビームが第1のガス不透過部100および第2のガス不透過部102を貫通しないように制御される。この結果、加工されるべき触媒層とは反対側の触媒層にレーザ溶融が生じることが抑制される。
【0090】
絶縁層中の繊維は、レーザビームが透過することを妨げるように配向される。たとえば、ガラス繊維布が用いられる場合には、ガラス繊維の方向は、ガラス繊維が光透過材料として機能しないようにレーザビームの方向を向かないことが望ましい。たとえば、レーザ透過量が十分に減少するように、ガラス繊維は触媒層の加工に用いられるレーザビームに対して45°の角度をなす。さらに、絶縁層は、触媒層の加工に用いられるレーザビームを吸収する添加剤が加えられたエポキシ樹脂で構成されてもよい。
【0091】
本実施の形態によれば、実施の形態1、2、3と同様な効果を奏する他、電解質膜22と基材14の接続部を、基材14の側面とすることで発電に寄与しない基材部分の投影面積を小さくすることができるので、実施の形態1、2、3と比べて集積度の高い、言い換えれば投影面積当たりの出力が高い燃料電池を形成することができる。
【0092】
(複合膜の作製方法)
実施の形態4に係る燃料電池10に用いられる複合膜12の作製方法について、図15を参照して説明する。図15では、左側(i)に平面図を示し、右側(ii)に平面図のA−A線に沿った断面図をそれぞれ示す。
【0093】
まず、図15(A)に示すように、複数の膜電極接合体を形成する基盤となるガラス板500を用意する。なお、このガラス板500は工程の途中で取り除かれるものである。
【0094】
次に、図15(B)に示すように、ガラス板の上に基材14を載置し、端部を接着剤(図示せず)にて固定する。基材14には、膜電極接合体形成領域に対応する開口部16を設けておく。また、隣接する開口部16の間に位置する領域には貫通孔112が所定の間隔で形成されている。この貫通孔112に、第3のガス不透過部104が充填されている。基材14を電解質膜22の上に載置する前に貫通孔112に第3のガス不透過部104を予め充填してもよく、基材14を電解質膜22の上に載置した後に貫通孔112に第3のガス不透過部104を充填してもよい。
【0095】
次に、図15(C)に示すように、開口部16に溶媒中に電解質を分散させた電解質分散液を塗布し、溶媒を蒸発させて硬化させ、さらに熱処理を行う。電解質分散液はガス不透過で均質な厚さに形成することが望ましく、また塗布時に気泡の混入を防ぐごとが重要である。製膜時に気泡の混入防止と、混入した気泡を抜くためにはできるだけ濃度の薄い溶液を用いる方が望ましい。また、電解質を基材の開口部に基材の上面まで充填し乾燥させることにより、基材と電解質の界面は基材の高さ方向全体に密着した状態で形成できるため、より薄い溶液とより深い基材の開口部を用いたほうが、電解質膜と基材の接着面積が大きくなり接着強度を増すことができる。一方、濃度の薄い溶液と濃度の濃い溶液を使用して同じ厚みの膜を形成する場合、濃度の薄い溶液を用いる場合はより多くの溶液を開口部に保持する必要があり基材の開口を深くしなければならないが、濃度の濃い溶液を用いる場合はより少ない溶液を開口部に保持すればよいので基材の開口を浅くできる。濃い濃度の溶液を用いる方がより薄い燃料電池層を形成するためには望ましい。たとえば濃度が20wt%のNafion分散液(DuPont D2020)を用い、基材14の開口部16の深さを75〜150μmとし、基材14の上面までNafion分散液を充填し乾燥させることで、電解質膜と基材の接着強度を確保しながら、燃料電池に適切な15〜30μmの厚みの電解質膜を形成することができる。なお、75〜150μmの厚みの20wt%のNafion分散液を常温で放置し乾燥させると表面の硬化が先に進行し電解質膜にクラックが入ってしまう。表面にクラックを入れずに電解質膜を形成するためには、溶媒を徐々に蒸発させる必要があり、温度を下げたり、加圧することで溶媒の蒸発速度を抑えることができる。たとえば、20wt%のNafion分散液を75〜150μmで充填した際には、雰囲気を乾燥した状態に保ちながら10〜15℃程度の温度範囲で8時間程度かけて乾燥させ、その後に120℃で20分間の熱処理を行うことで良好な膜を形成できる。
【0096】
次に、図16(A)に示すように、基材14の開口部16に電解質膜22を形成した複合膜をガラス板からはがす。本実施の形態では、ガラスの面に密着し、基材14と同一面に形成された電解質膜22の面がカソード側であり、反対側の電解質膜22の面がアノード側である。なお、図16(A)(ii)に示すように、第3のガス不透過部104を挟む基材14の領域が第1のガス不透過部100、第2のガス不透過部102である。
【0097】
次に、図16(B)に示すように、電解質膜22の周縁部分を残し、電解質膜22のアノード側およびカソード側の全体にそれぞれ触媒スラリーを塗布し、触媒層80および触媒層82を形成する。
【0098】
次に、図16(C)に示すように、電解質膜22のアノード側に塗布された触媒層をレーザ照射により選択的に除去してアノード触媒層24を形成するとともに、第2のガス不透過部102を露出させる。一方、電解質膜22のカソード側に塗布された触媒層をレーザ照射により選択的に除去してカソード触媒層26を形成するとともに、第1のガス不透過部100に接触している領域の電解質膜22を露出させる。言い換えると、電解質膜22を挟んで第1のガス不透過部100と対応している領域の触媒層82にレーザ照射を行い、触媒層82を選択的に除去する。電解質膜22を透過したレーザビームは第1のガス不透過部100で遮断されるため、触媒層80にダメージが生じることが抑制される。ここでの工程で用いるレーザの波長は、触媒層(電極)82を加工可能で、かつ、電解質膜22を透過する範囲、たとえば180−550nmである。
【0099】
以上の製造工程により、実施の形態4に係る膜電極接合体が組み込まれた複合膜12が簡便に作製される。
【0100】
変形例として、実施形態1の変形例と同様の短冊状の複合材(集電体)420を用いることで、実施の形態4に係る膜電極接合体が組み込まれた複合膜12が簡便に作製される。
【0101】
基材14の第1のガス不透過部100、第2のガス不透過部102および、短冊状の複合材(集電体)420において、第1、2のガス不透過部100、102に相当する樹脂シート410には、電解質膜22と十分な強度で接合される必要がある。
【0102】
第1のガス不透過部100、第2のガス不透過部102および樹脂シート410と、電解質膜22の間に接着性の高い中間層を設けてもよい。
【0103】
また、第1のガス不透過部100、第2のガス不透過部102および樹脂シート410の材質を、電解質膜22と接着性の高い材質としてもよい。たとえば、電解質膜22として20wt%Nafion分散液を使用した場合は、第1のガス不透過部100、第2のガス不透過部102および樹脂シート410の材質をエポキシ樹脂とし、たとえばHuntsmanのAraldite LY1556、Aradur 917、Araldite GY508 Accelerator 070を29:29:41:1の重量比で配合することで、優れた密着性を得ることができる。
【0104】
また、第1のガス不透過部100、第2のガス不透過部102および樹脂シート410を、電解質膜22と接着させる前に、サンドブラスト等の処理を行い表面に1μm程度の微細な凹凸を設け、アンカー効果により電解質膜22との接着強度を高めてもよい。
【0105】
本発明は、上述の各実施の形態に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて各種の設計変更等の変形を加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施の形態も本発明の範囲に含まれうるものである。
【0106】
上述した説明は、例示を意図とし、限定的ではない。上述した説明に基づいて当業者の通常の能力によって他の実施の形態が使用されうる。また、上述した詳細な説明において、開示内容を簡素化するように種々の特徴が分類される。これは、請求項に記載されていない開示内容がいかなる請求項にも本質的であることを意図しないと解される。むしろ、意図した主題は特定の開示された実施の形態の全ての特徴を含まない場合がある。このため、請求項の記載は、詳細な説明に組み込まれ、各請求項は個別の実施の形態として自立する。本発明の範囲は、請求項に付与される権利と等かな全ての範囲に沿って、請求項を参照して定められるべきである。
【符号の説明】
【0107】
10 燃料電池、12 複合膜、14 基材、20 膜電極接合体、22 電解質膜、24 アノード触媒層、26 カソード触媒層、16 開口部、18 インターコネクタ、37 燃料貯蔵部、40 アノード用ハウジング、42 カソード用ハウジング、44 空気取入口、50 封止部材、80 触媒層、82 触媒層、100 第1のガス不透過部、102 第2のガス不透過部、104 第3のガス不透過部、110 貫通孔、112 貫通孔
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の表面および第2の表面を有し、複数のインターコネクタと、前記複数のインターコネクタの間に設けられた複数のイオン伝導部材とを含む、複合層と、
前記第1の表面に設けられ、アノードを形成する第1の複数の電極被覆層と、
前記第2の表面に設けられ、カソードを形成する第2の複数の電極被覆層と、
を備え、
各第1の複数の電極被覆層および各第2の複数の電極被覆層は前記イオン伝導部材の一つとイオン接触し、前記インターコネクタの一つと電気的に接触し、
少なくとも一つのインターコネクタは、絶縁材料で構成され、レーザビームの透過を遮るように構成された、第1のガス不透過部および第2のガス不透過部と、
電気伝導性を有し、2つの表面および当該2つの表面に平行な長さを有し、当該2つの表面の一つが前記第1のガス不透過部および前記第2のガス不透過部の前記第2の表面に近接している第3のガス不透過部と、
を含み、
前記第1のガス不透過部および前記第2のガス不透過部は、それぞれ、第1の表面および第2の表面を有し、第1の表面は前記イオン伝導部材の一つと接触し、
前記インターコネクタおよび前記第3のガス不透過部がある燃料電池のアノードを隣接する燃料電池のカソードに電気的に接続させ、
第1のガス不透過部と第2のガス不透過部とが触媒層の加工に用いられるレーザビームの透過を妨げることを特徴とする燃料電池層。
【請求項2】
前記複合層から延在する第1の電極が、前記第1のガス不透過部を被覆し、かつ前記第3のガス不透過部に接続している請求項1に記載の燃料電池層。
【請求項3】
前記複合層から延在する第2の電極が、前記第3のガス不透過部に接続している請求項1に記載の燃料電池層。
【請求項4】
前記第1の電極と前記第2の電極が一体的に形成されており、
前記インターコネクタは前記第1の複数の電極被覆層および前記第2の複数の電極被覆層に設けられた貫通孔を介して前記第1の電極および前記第2の電極とを電気的に接続する請求項1に記載の燃料電池層。
【請求項5】
前記第3のガス不透過部を含むインターコネクタが膜電極接合体と他の膜電極接合体との間に延在し、
前記膜電極接合体の電解質膜と前記他の膜電極接合体の電解質膜とが前記インターコネクタにより分断されている請求項1に記載の燃料電池層。
【請求項6】
少なくとも1つのインターコネクタは、第1または第2の複数の電極と外部回路との電気的な伝導経路を提供し、前記経路は3番目のガス不浸透性の領域の長さに沿って伸びる経路であることを特徴とする、請求項1に記載の燃料電池層。
【請求項7】
前記第1および第2のガス不透過部が、複数の材料により構成され、少なくとも1つの材料が顔料を含むことを特徴とする、請求項6に記載の燃料電池層。
【請求項8】
前記顔料は、前記第1のガス不透過部および前記第2のガス不透過部の材料特性を変えて、レーザビームの透過量を減少またはレーザビームの吸収量を増加させる、またはこの両者を行う請求項7に記載の燃料電池層。
【請求項9】
前記第1および第2のガス不透過部が、複数の材料により構成され、少なくとも1つの材料が金属酸化物の粒子を含むことを特徴とする、請求項6に記載の燃料電池層。
【請求項10】
前記金属酸化物の粒子は、前記第1のガス不透過部および前記第2のガス不透過部の材料特性を変えて、レーザビームの透過量を減少またはレーザビームの吸収量を増加させる、またはこの両者を行う請求項9に記載の燃料電池層。
【請求項11】
前記第1および第2のガス不透過部が、ガラス繊維を織った布にエポキシ樹脂を含侵して形成され、
前記ガラス繊維が電解質膜の第1主面に対して、90度未満の角度で配置されることを特徴とする請求項9に記載1に記載の燃料電池層。
【請求項12】
第1の表面および第2の表面を有し、複数のインターコネクタと、前記複数のインターコネクタの間に設けられた複数のイオン伝導部材とを含む、複合層を形成する工程と、
前記第1の表面に第1の複数の電極被覆層を設けて、アノードを形成する工程と、
前記第2の表面に第2の複数の電極被覆層を設けて、カソードを形成する工程と、
を備え、
各第1の複数の電極被覆層および各第2の複数の電極被覆層は前記イオン伝導部材の一つとイオン接触し、前記インターコネクタの一つと電気的に接触し、
少なくとも一つのインターコネクタは、絶縁材料で構成され、レーザビームの透過を遮るように構成された、第1のガス不透過部および第2のガス不透過部と、
電気伝導性を有し、2つの表面および当該2つの表面に平行な長さを有し、当該2つの表面の一つが前記第1のガス不透過部および前記第2のガス不透過部の前記第2の表面に近接している第3のガス不透過部と、
を含み、
前記インターコネクタおよび前記第3のガス不透過部が燃料電池のアノードと隣接する値料電池のカソードとを電気的に接続し、
前記第1のガス不透過部および前記第2のガス不透過部に沿って前記電極被覆層の一部をレーザビームを用いて選択的に除去し、隣接する燃料電池間を電気的に絶縁する工程をさらに備え、
触媒層の加工に用いられるレーザービームの透過に関して、前記第1のガス不透過部および前記第2のガス不透過部の透過率が第1のおよび第2の複数の電極被覆層の透過率より小さいことを特徴とする燃料電池層の製造方法。
【請求項1】
第1の表面および第2の表面を有し、複数のインターコネクタと、前記複数のインターコネクタの間に設けられた複数のイオン伝導部材とを含む、複合層と、
前記第1の表面に設けられ、アノードを形成する第1の複数の電極被覆層と、
前記第2の表面に設けられ、カソードを形成する第2の複数の電極被覆層と、
を備え、
各第1の複数の電極被覆層および各第2の複数の電極被覆層は前記イオン伝導部材の一つとイオン接触し、前記インターコネクタの一つと電気的に接触し、
少なくとも一つのインターコネクタは、絶縁材料で構成され、レーザビームの透過を遮るように構成された、第1のガス不透過部および第2のガス不透過部と、
電気伝導性を有し、2つの表面および当該2つの表面に平行な長さを有し、当該2つの表面の一つが前記第1のガス不透過部および前記第2のガス不透過部の前記第2の表面に近接している第3のガス不透過部と、
を含み、
前記第1のガス不透過部および前記第2のガス不透過部は、それぞれ、第1の表面および第2の表面を有し、第1の表面は前記イオン伝導部材の一つと接触し、
前記インターコネクタおよび前記第3のガス不透過部がある燃料電池のアノードを隣接する燃料電池のカソードに電気的に接続させ、
第1のガス不透過部と第2のガス不透過部とが触媒層の加工に用いられるレーザビームの透過を妨げることを特徴とする燃料電池層。
【請求項2】
前記複合層から延在する第1の電極が、前記第1のガス不透過部を被覆し、かつ前記第3のガス不透過部に接続している請求項1に記載の燃料電池層。
【請求項3】
前記複合層から延在する第2の電極が、前記第3のガス不透過部に接続している請求項1に記載の燃料電池層。
【請求項4】
前記第1の電極と前記第2の電極が一体的に形成されており、
前記インターコネクタは前記第1の複数の電極被覆層および前記第2の複数の電極被覆層に設けられた貫通孔を介して前記第1の電極および前記第2の電極とを電気的に接続する請求項1に記載の燃料電池層。
【請求項5】
前記第3のガス不透過部を含むインターコネクタが膜電極接合体と他の膜電極接合体との間に延在し、
前記膜電極接合体の電解質膜と前記他の膜電極接合体の電解質膜とが前記インターコネクタにより分断されている請求項1に記載の燃料電池層。
【請求項6】
少なくとも1つのインターコネクタは、第1または第2の複数の電極と外部回路との電気的な伝導経路を提供し、前記経路は3番目のガス不浸透性の領域の長さに沿って伸びる経路であることを特徴とする、請求項1に記載の燃料電池層。
【請求項7】
前記第1および第2のガス不透過部が、複数の材料により構成され、少なくとも1つの材料が顔料を含むことを特徴とする、請求項6に記載の燃料電池層。
【請求項8】
前記顔料は、前記第1のガス不透過部および前記第2のガス不透過部の材料特性を変えて、レーザビームの透過量を減少またはレーザビームの吸収量を増加させる、またはこの両者を行う請求項7に記載の燃料電池層。
【請求項9】
前記第1および第2のガス不透過部が、複数の材料により構成され、少なくとも1つの材料が金属酸化物の粒子を含むことを特徴とする、請求項6に記載の燃料電池層。
【請求項10】
前記金属酸化物の粒子は、前記第1のガス不透過部および前記第2のガス不透過部の材料特性を変えて、レーザビームの透過量を減少またはレーザビームの吸収量を増加させる、またはこの両者を行う請求項9に記載の燃料電池層。
【請求項11】
前記第1および第2のガス不透過部が、ガラス繊維を織った布にエポキシ樹脂を含侵して形成され、
前記ガラス繊維が電解質膜の第1主面に対して、90度未満の角度で配置されることを特徴とする請求項9に記載1に記載の燃料電池層。
【請求項12】
第1の表面および第2の表面を有し、複数のインターコネクタと、前記複数のインターコネクタの間に設けられた複数のイオン伝導部材とを含む、複合層を形成する工程と、
前記第1の表面に第1の複数の電極被覆層を設けて、アノードを形成する工程と、
前記第2の表面に第2の複数の電極被覆層を設けて、カソードを形成する工程と、
を備え、
各第1の複数の電極被覆層および各第2の複数の電極被覆層は前記イオン伝導部材の一つとイオン接触し、前記インターコネクタの一つと電気的に接触し、
少なくとも一つのインターコネクタは、絶縁材料で構成され、レーザビームの透過を遮るように構成された、第1のガス不透過部および第2のガス不透過部と、
電気伝導性を有し、2つの表面および当該2つの表面に平行な長さを有し、当該2つの表面の一つが前記第1のガス不透過部および前記第2のガス不透過部の前記第2の表面に近接している第3のガス不透過部と、
を含み、
前記インターコネクタおよび前記第3のガス不透過部が燃料電池のアノードと隣接する値料電池のカソードとを電気的に接続し、
前記第1のガス不透過部および前記第2のガス不透過部に沿って前記電極被覆層の一部をレーザビームを用いて選択的に除去し、隣接する燃料電池間を電気的に絶縁する工程をさらに備え、
触媒層の加工に用いられるレーザービームの透過に関して、前記第1のガス不透過部および前記第2のガス不透過部の透過率が第1のおよび第2の複数の電極被覆層の透過率より小さいことを特徴とする燃料電池層の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2013−115036(P2013−115036A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−284388(P2011−284388)
【出願日】平成23年12月26日(2011.12.26)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(501436665)ソシエテ ビック (73)
【氏名又は名称原語表記】SOCIETE BIC
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年12月26日(2011.12.26)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(501436665)ソシエテ ビック (73)
【氏名又は名称原語表記】SOCIETE BIC
【Fターム(参考)】
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