説明

燃料電池用ガスケットの製造方法及びガスケット一体型MEAの製造方法

【課題】燃料電池用ガスケットの製造及びガスケット一体型MEAの製造において、金型によるガスケット成形時のフィルムの撓みを防止する。
【解決手段】フィルム2の四隅2aに折り曲げ加工を施す。そして、四隅2aを折り曲げ加工されたフィルム2の外周部を金型で押えながらフィルム2にガスケット4を一体に成形する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池用ガスケットの製造方法、及び、燃料電池に用いられるガスケット一体型MEAの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池には、その内部空間を外部からシールするため、MEA(膜電極接合体)の周縁部を囲むようにガスケットが配置されている。このガスケットは、例えば、特許文献1,2に記載されるようにMEAと一体化することもできる。特許文献1,2に記載されているガスケットは樹脂製のフィルム上にゴムからなる凸状のシール部を積層成形した構成となっている。フィルムは上下2枚からなりMEAの端部を2枚のフィルムで挟み込むことでMEAとガスケットととの一体化が図られている。また、特許文献3には薄型のプラスチックフィルムによってゴム材からなるガスケットを補強する技術について開示されている。
【特許文献1】WO01/017048号公報
【特許文献2】WO00/64995号公報
【特許文献3】特開2003−123800号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
以上の各特許文献に記載されているように、燃料電池ではガスケットの補強部材としてフィルムが用いられている。ところが、フィルム自体も柔らかくて撓みやすい。ガスケットの製造では、フィルムを金型で挟み、その状態でガスケットをフィルムに一体に成形することが行われる。このためフィルムが撓むとガスケットを上手く成形することができずガスケットの型崩れがおきてしまう。また、金型の押え箇所を増やすことでフィルムの撓みを防止することができるが、そのためにはフィルムの外周部だけでなく内側も押える必要がある。しかし、フィルムの金型で押えられる部分は成形後には露出することになる。そして、その露出部分は燃料電池内部の酸性環境化では劣化しやすいという問題がある。したがって、成形時のフィルムの撓みは防止したいが、フィルムの内側を金型で押えることはしたくはない。
【0004】
本発明は上述のような課題を解決するためになされたもので、その目的は、燃料電池用ガスケットの製造及びガスケット一体型MEAの製造において、金型によるガスケット成形時のフィルムの撓みを防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するため、第1の発明である燃料電池用ガスケットの製造方法は、
ガスケット補強用のフィルムの四隅に折り曲げ加工を施す工程と、
折り曲げ加工された前記フィルムの外周部を金型で押えながら前記フィルムにガスケットを一体に成形する工程と、
を含むことを特徴としている。
【0006】
また、第2の発明であるガスケット一体型MEAの製造方法は、
ガスケット補強用のフィルムの四隅に折り曲げ加工を施す工程と、
折り曲げ加工された前記フィルムをMEAと同一面上に配置し、前記フィルムの外周部を前記MEAとともに金型で押えながら前記フィルムと前記MEAとを両側から挟むようにガスケットを一体に成形する工程と、
を含むことを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、フィルムの四隅に折り曲げ加工を施すことでフィルムの剛性を高めることができる。これによれば、金型でフィルムの内側を押えなくてもガスケット成形時のフィルムの撓みを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、図を参照して本発明の実施の形態としてのガスケット一体型MEAの製造方法について説明する。本実施の形態にかかる製造方法では、ガスケットを補強するフィルムの四隅に折り曲げ加工を施し、その折り曲げ加工を施したフィルムを使用してガスケットの金型成形を行う。図1は折り曲げ加工を施したフィルム2の隅2aを拡大した斜視図である。
【0009】
図2は図1に示すフィルム2を用いて作製されたガスケット一体型MEAの平面図である。ガスケット4はMEA6の周縁部を囲むように取り付けられている。このガスケット4を補強するフィルム2は長方形であり、その外周部がガスケット4の外側にはみ出すようにガスケット4よりも大きいサイズのフィルム2が用いられている。ガスケット4の材料には例えばゴムを用いることができ、フィルム2の材料には例えば樹脂を用いることができる。上述の折り曲げ加工は、フィルム2の4隅2aであってガスケット4の外側にはみ出している部分に施されている。
【0010】
図3は金型成形中のガスケット一体型MEAの断面図であり、図2のA−A断面図に相当する。この図に示すように、フィルム2はMEA(膜電極接合体)6と同一面上に配置され、MEA6とともに上下の金型10,12で押えられる。そして、フィルム2とMEA6とを両側から挟むようにガスケット4が一体に成形される。ガスケット4の成形方向には限定はない。積層成形や射出成形など、ガスケット4の材料に応じて成形方法を選択すればよい。
【0011】
この金型成形において、金型10,12によってフィルム2を押える部分はフィルム2の外周部2bだけでよい。フィルム2の内側を押える必要はない。図1及び図2に示すごとく四隅2aに施された折り曲げ加工によってフィルム2の剛性は高められており、外周部2bを金型10,12で押えるだけでフィルム2の撓みは防止できるからである。
【0012】
ガスケット4の成形が完了した後は金型10,12からガスケット一体型MEAを取り外す。図2の平面図に示すガスケット一体型MEAは、金型10,12から取り出した直後の構成を示している。上述のように金型10,12で押える部分はフィルム2の外周部2bのみであるので、フィルム2の内側に露出した部分はない。フィルム2の外周部2bは、図4に示すようにガスケット4の外形に合わせて切除される。図4は整形処理後のガスケット一体型MEAの断面図であり、図2のA−A断面図に相当する。
【0013】
以上説明したように、本実施の形態にかかるガスケット一体型MEAの製造方法によれば、フィルム2の四隅2aに折り曲げ加工を施すことでフィルム2の剛性を高めることができる。これによれば、金型10,12で押える部分はフィルム2の外周部2bだけでよく、フィルム2の内側を押えずともガスケット成形時のフィルム2の撓みを防止することができる。
【0014】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。例えば、上述の実施の形態ではガスケットをMEAに一体化しているが、ガスケットはMEAに一体化されていなくともよい。ガスケット単体の金型成形においてもフィルムの四隅に折り曲げ加工を施しておくことで上述のような効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】折り曲げ加工が施された補強フィルムの角部を示す斜視図である。
【図2】ガスケット一体型MEAの平面図である。
【図3】金型成形中の図2のA−A断面図である。
【図4】整形処理後の図2のA−A断面図である。
【符号の説明】
【0016】
2 フィルム
2a フィルムの隅
2b フィルムの外周部
4 ガスケット
6 MEA
10,12 金型

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池用ガスケットの製造方法であって、
ガスケット補強用のフィルムの四隅に折り曲げ加工を施す工程と、
折り曲げ加工された前記フィルムの外周部を金型で押えながら前記フィルムにガスケットを一体に成形する工程と、
を含むことを特徴とする燃料電池用ガスケットの製造方法。
【請求項2】
ガスケット一体型MEAの製造方法であって、
ガスケット補強用のフィルムの四隅に折り曲げ加工を施す工程と、
折り曲げ加工された前記フィルムをMEAと同一面上に配置し、前記フィルムの外周部を前記MEAとともに金型で押えながら前記フィルムと前記MEAとを両側から挟むようにガスケットを一体に成形する工程と、
を含むことを特徴とするガスケット一体型MEAの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−218287(P2008−218287A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−56035(P2007−56035)
【出願日】平成19年3月6日(2007.3.6)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】