説明

燃料電池用セパレータおよびその製造方法

【課題】 コスト高の原因となる冷凍粉砕を行う必要のない樹脂微粉末を用いて、導電性、燃料ガス不透過性、耐熱性、耐酸性、耐加水分解性、機械的強度などの諸特性に優れる燃料電池用セパレータ、特に固体高分子型燃料電池用セパレータを提供する。
【解決手段】 金属製基材の両側に、導電性カーボン粉末とポリフェニレンエーテル樹脂微粉末とを含有する組成物を成形してなるカーボン層を有する燃料電池用セパレータであって、該ポリフェニレンエーテル樹脂微粉末の重量平均粒径が30μm以下で、かつ該導電性カーボン粉末の重量平均粒径以下である燃料電池用セパレータ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池、特に固体高分子型燃料電池用のセパレータおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池、例えば固体高分子型の燃料電池は、固体高分子膜を空気極と燃料極で挟持してなる単セルを、表面にガス流路用の溝を有するセパレータを介して連結してなる。
【0003】
このような燃料電池用セパレータは、導電性が高く、かつ燃料ガス不透過性を有し、更に水素/酸素の酸化還元反応に対する耐熱性、耐酸性、耐加水分解性を有する必要がある。また、セパレータを介しての連結に際しては、通常、数MPaの圧力での締結が必要なため、セパレータは、曲げ強度等の機械的強度が高い必要がある。
【0004】
このような理由で、従来のセパレータは、フェノール樹脂等の樹脂単独、あるいは炭素粉末との混練物を平板に成形した後、非酸化雰囲気中で炭化、あるいは黒鉛化処理することにより、炭素質あるいは黒鉛質の平板を形成し、さらに切削加工等により表面にガス流路となる溝を形成することにより製造されている。しかしながら、このセパレータは2000℃以上の熱処理を必要とし、さらにガス流路を切削加工により形成するため、製造コストがかかるという問題点を有している。
【0005】
そこで、特許文献1〜4には、炭化工程および切削工程を経ることなく燃料電池用セパレータを製造する方法として、黒鉛粉末と熱可塑性樹脂粉末の混合物を成形する燃料電池用セパレータの製造方法が開示されている。
【0006】
特許文献1〜4の製造方法では、熱可塑性樹脂を黒鉛粉末に対して均一かつ十分な量分散させ、黒鉛粉末の結着バインダーとして有効に機能させるために、熱可塑性樹脂粉末の粒径を調整する必要がある。特許文献1〜4においては、主に耐熱性の観点から、熱可塑性樹脂としてポリフェニレンスルフィド樹脂を主体とする樹脂を用いているが、一般にポリフェニレンスルフィド樹脂を黒鉛粉末の結着バインダーとして有効に機能する程度の微粉末に粉砕するには、冷凍粉砕を何度も繰り返さなければならず、コストが高くなる問題がある。また、近年、エネルギー効率の観点から、固体高分子型燃料電池の運転温度として100℃以上の高温が要求されており、これに伴ない、ガラス転移温度が高い電解質膜が求められると同時に、周辺部材にもガラス転移温度の高いものが要求されているが、ポリフェニレンスルフィド樹脂は、ガラス転移温度が低く、耐熱的に十分ではないという問題もある。
【0007】
【特許文献1】特開2001−122677号公報
【特許文献2】特開2001−126744号公報
【特許文献3】特開2003−36861号公報
【特許文献4】特開2003−168444号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みてなされたもので、コスト高の原因となる冷凍粉砕を行う必要のない樹脂微粉末を用いて、導電性、燃料ガス不透過性、耐熱性、耐酸性、耐加水分解性、機械的強度などの諸特性に優れる燃料電池用セパレータ、特に固体高分子型燃料電池用セパレータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、導電性カーボン粉末の結着バインダーとして有効に機能し、金属製基材との密着性に優れたカーボン層を形成するためには、ポリフェニレンエーテル樹脂微粉末の重量平均粒径を30μm以下、かつ導電性カーボン粉末の重量平均粒径以下とする必要があること、耐熱性、耐酸性、耐加水分解性に優れるポリフェニレンエーテル樹脂が、他の熱可塑性樹脂とは相違して、きわめて微粉末化しやすく、しかも粒径コントロールも容易であり、上記要件を満たす微粉末を容易に得られること、を見出し、本発明を完成するに至ったものである。
【0010】
即ち、本発明の燃料電池用セパレータは、金属製基材の両側に、導電性カーボン粉末とポリフェニレンエーテル樹脂微粉末とを含有する組成物を成形してなるカーボン層を有する燃料電池用セパレータであって、該ポリフェニレンエーテル樹脂微粉末の重量平均粒径が30μm以下で、かつ該導電性カーボン粉末の重量平均粒径以下であることを特徴とする。
【0011】
本発明の燃料電池用セパレータは、「前記カーボン層表面にガス流路用の溝を有すること」を好ましい態様として含むものである。
【0012】
また、本発明の燃料電池用セパレータの製造方法は、導電性カーボン粉末とポリフェニレンエーテル樹脂微粉末とを含有し、該ポリフェニレンエーテル樹脂微粉末の重量平均粒径が30μm以下で、かつ該導電性カーボン粉末の重量平均粒径以下である組成物、または該組成物を成形してなるシートを、金属製基材の両側に配置し、該ポリフェニレンエーテル樹脂のガラス転移温度以上の温度に加熱した金型間に挟んで加圧することを特徴とする。
【0013】
本発明の燃料電池用セパレータの製造方法は、「前記ポリフェニレンエーテル樹脂微粉末を、常温下でポリフェニレンエーテル樹脂に衝撃を付与して粉砕すること」、「前記金型が溝付き金型であること」を好ましい態様として含むものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の燃料電池用セパレータは、カーボン層にポリフェニレンエーテル樹脂を用いているため、耐熱性、耐酸性、耐加水分解性に優れる。しかも、ポリフェニレンエーテル樹脂微粉末の重量平均粒径を30μm以下、かつ導電性カーボン粉末の重量平均粒径以下とすることにより、ポリフェニレンエーテル樹脂微粉末が導電性カーボン粉末の結着バインダーとして有効に機能し、カーボン層と金属製基材の密着性が優れるため、導電性、燃料ガス不透過性、機械的強度にも優れる。
【0015】
また、本発明の燃料電池用セパレータの製造方法は、きわめて微粉末化しやすく、しかも粒径コントロールも容易なポリフェニレンエーテル樹脂を用いているため、導電性カーボン粉末の結着バインダーとして有効に機能する粒径の微粉末を安価に得られ、その結果、導電性、燃料ガス不透過性、耐熱性、耐酸性、耐加水分解性、機械的強度などの諸特性に優れる燃料電池用セパレータを安価に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の燃料電池用セパレータは、金属製基材の両側に、導電性カーボン粉末とポリフェニレンエーテル樹脂微粉末とを含有する組成物を成形してなるカーボン層を有する。
【0017】
導電性カーボン粉末としては、例えば、黒鉛粒子、導電性カーボンブラック(ファーネスブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラックなど)、コロイダル黒鉛などが例示でき、これらは単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0018】
黒鉛粒子としては、球状の黒鉛粒子(例えば、メソカーボンマイクロビーズの黒鉛化品、球状化された天然及び人造黒鉛、フリュートコークス、ギルソナイトコークスなど)、アスペクト比2.0以下の黒鉛粉末(例えば、アスペクト比1〜2.0程度の天然及び人造黒鉛粉末など)などが挙げられる。
【0019】
メソカーボンマイクロビーズ(以下、MCMBと称する)は、高度に結晶が配向し、黒鉛類似の構造を有する球状体(メソフェーズ小球体)である。球形のMCMBの平均粒径は、通常、5〜50μm(例えば、5〜25μm)、好ましくは10〜40μm(例えば、10〜25μm)、特に10〜30μm程度である。MCMBは、コールタール,コールタールピッチ,重質油などの歴青物を300〜500℃程度で加熱することにより生成する。MCMBの黒鉛化品とは、通常の方法でMCMBを黒鉛化したものである。
【0020】
黒鉛粉末の平均粒径は、例えば、2〜35μm,好ましくは5〜30μm程度である。人造黒鉛粉は、石油コークスなどを原料とし、成形、焼成し、さらに2000℃以上の高温で黒鉛化することにより得られる。
【0021】
本発明で用いるポリフェニレンエーテルは、ポリフェニレンエーテルの単独重合体と、ポリフェニレンエーテル構造を主体とするポリフェニレンエーテル共重合体のいずれでも良いが、粉砕しやすいことから、ポリフェニレンエーテルの単独重合体が好ましい。また、ポニフェニレンエーテルの製造方法としては、2,6−ジメチルフェノールに代表されるフェーノール性化合物をモノマーとして利用する多くの合成方法が知られているが、既知のいかなるモノマーおよび重合方法によって製造されたポリフェニレンエーテルでも用いることができる。
【0022】
ポリフェニレンエーテル単独重合体の例としては、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−エチル1,4フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジエチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−n−プロピル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−エチル−6−n−プロピル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジ−n−プロピル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−i−プロピル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−エチル−6−i−プロピル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジ−i−プロピル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−フェニル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジフェニル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−クロロ−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−ヒドロキシエチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−クロロエチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−メトキシ−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジ(p−フルオロフェニル)−1,4−フェニレン)エーテルなどのホモポリマーを挙げることができる。
【0023】
ポリフェニレンエーテル共重合体の例としては、2,6−ジメチルフェノールとo−クレゾールの共重合体、2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノールの共重合体などを挙げることができる。
【0024】
また、本発明で用いるポリフェニレンエーテルは、従来ポリフェニレンエーテルに存在させても良いことが提案されている他の種々のフェニレンエーテルユニットを含有することができる。例えば、2,6−ジメチルフェノールを主体とするモノマーから誘導されるポリフェニレンエーテルについての例を挙げれば、次のような異種構造体を挙げることができる。
【0025】
まず、末端に異種構造を有するポリフェニレンエーテルとしては、化1に示すようなアミノアルキル置換末端基や、化2に示すような4−ヒドロキシビフェニル末端基を有するポリフェニレンエーテルを挙げることができる。
【0026】
【化1】

(式中、R3,R4は各々独立に炭素数1〜20の炭化水素基を示す)
【0027】
【化2】

【0028】
高分子鎖中に異種構造を有するポリフェニレンエーテルとしては、化3に示すような2−(ジアルキルアミノメチル)−6−メチルフェニレンエーテルユニットや、化4に示すような2−(N−アルキル−N−フェニル−アミノメチル)−6−メチルフェニレンエーテルユニットを有するポリフェニレンエーテルを挙げることができる。
【0029】
【化3】

(式中、R3,R4は各々独立に炭素数1〜20の炭化水素基を示す)
【0030】
【化4】

(式中、R5は炭素数1〜20のアルキル基、アルカノール基を示し、R6は水素、炭素数1〜10の置換あるいは非置換アルキル基を示し、mは該フェニル基の置換基の数で1から5の整数である)
【0031】
さらに、特殊な構造を有するポリフェニレンエーテルとしては、化5に示すようなキノン結合ポリフェニレンエーテルや、化6に示すような二官能性ポリフェニレンエーテルを挙げることができる。
【0032】
【化5】

(式中、p,qは連鎖の数で1以上の整数である)
【0033】
【化6】

(式中、x,yは連鎖の数で0または1以上の整数であるが同時に0ではない)
【0034】
また、本発明で用いるポリフェニレンエーテルは、例えば、マレイン酸、無水マレイン酸、マレイン酸イミド、ビニルメトキシシラン、γ−アミノプロピルメトキシシラン、クエン酸、リンゴ酸等で変性されていてもよい。
【0035】
ポリフェニレンエーテルは、重量平均粒径が30μm以下の微粉末として用いられる。ポリフェニレンエーテルの微粉末化は、本来粉粒状をなすポリフェニレンエーテルを気流で搬送し、金属などの硬質の衝壁に吹き付けて粉砕し、必要に応じて分級することで容易かつ効率的に行うことができる。特にポリフェニレンエーテルは微粉化しやすい性質を有することから、他の熱可塑性樹脂のように、冷凍粉砕することなく重量平均粒径が30μm以下の微粉末とすることができる。
【0036】
ポリフェニレンエーテル樹脂微粉末は、重量平均粒径が30μm以下であることが必要で、20μm以下であることが好ましい。微粉末の粒径が大きすぎると、この微粉末を導電性カーボン粉末と混合するときに、均一に分散しにくくなると共に、ポリフェニレンエーテルが溶融粘度が高く、その後の加熱加圧によっても展延しにくいことから、導電性カーボン粉末の結着バインダーとして有効に機能しにくくなり、金属製基材とカーボン層の密着性が低下する。
【0037】
更に、ポリフェニレンエーテル樹脂微粉末の重量平均粒径は、導電性カーボン粉末の重量平均粒径以下であることが必要である。微粉末の重量平均粒径が導電性カーボン粉末の重量平均粒径を超えると、やはり、この微粉末を導電性カーボン粉末と混合するときに、均一に分散しにくくなると共に、ポリフェニレンエーテルが溶融粘度が高く、その後の加熱加圧によっても展延しにくいことから、導電性カーボン粉末の結着バインダーとして有効に機能しにくくなり、金属製基材とカーボン層の密着性が低下する。
【0038】
ポリフェニレンエーテル樹脂微粉末の重量平均粒径と、導電性カーボン粉末の重量平均粒径の比(ポリフェニレンエーテル樹脂微粉末の重量平均粒径/導電性カーボン粉末の重量平均粒径)は特に限定されないが、1/20〜1/1が好ましく、1/10〜7/10がより好ましい。
【0039】
ポリフェニレンエーテル樹脂微粉末の混合割合は、要求される導電性、強度を勘案して適宜決定すればよいが、導電性カーボン粉末100重量部に対して10〜60重量部であることが好ましく、15〜40重量部であることがより好ましい。ポリフェニレンエーテル樹脂微粉末が10重量部未満では、燃料ガス不透過性、機械的強度が不十分となる可能性があり、60重量部を超えると、導電性が不十分となる可能性がある。
【0040】
本発明で使用する組成物は、さらに炭素繊維を含んでいてもよい。炭素繊維の種類は制限されず、石油系又は石炭系のピッチ系炭素繊維、PAN(ポリアクリロニトリル)系炭素繊維、レーヨン系炭素繊維、フェノール樹脂系炭素繊維などが使用できる。炭素繊維の平均繊維径は、例えば、0.5〜50μm、好ましくは1〜30μm、さらに好ましくは5〜20μmの範囲から選択できる。炭素繊維の平均繊維長は、適当に選択でき、例えば、10μm〜5mm、好ましくは20μm〜3mm程度である。炭素繊維の使用量は、組成物全体の1〜10重量%程度の範囲から選択できる。炭素繊維の含有量が10重量%を超えると気密性が低下し、ガス透過率が大きくなる可能性がある。
【0041】
熱可塑性樹脂微粉末、導電性カーボン粉末及び必要により炭素繊維などで構成された組成物には、必要に応じて、カップリング剤、離型剤、滑剤、可塑剤、安定剤などを適宜配合してもよい。
【0042】
上記組成物を成形してなるカーボン層の厚みは、特に限定されないが、水素もしくは空気の流路形成の観点から、0.3mm〜3mmが好ましく、0.5mm〜2mmがより好ましい。
【0043】
金属製基材としては、特に限定されないが、耐酸性の観点よりフェライト系ステンレス鋼、銅板等が好ましい。また、金属製基材の厚みは、燃料ガス不透過性、機械的強度、導電性の観点から、0.05mm〜1mmが好ましく、0.1mm〜0.5mmがより好ましい。
【0044】
本発明の燃料電池用セパレータは、上記組成物を金属製基材の両側に配置し、加熱加圧し、所定の形状に成形することで得られる。また、あらかじめ、上記組成物を加熱加圧してシートを成形しておき、該シートを金属製基材の両側に配置し、加熱加圧し、所定の形状に成形してもよい。
【0045】
あらかじめシートを成形する際、あるいはセパレータ成形の際の加熱加圧は、ポリフェニレンエーテルのガラス転移温度以上に加熱した金型間に、組成物、あるいは金属製基材の両側に配置した組成物またはシートを挟み込むことで行うことができる。組成物を加熱加圧する際は、粉末状で加圧し、その後ガラス転移温度以上に加熱する方が、ポリフェニレンエーテル樹脂が流動し易く、均一プレスが可能となり、好ましい。また、溝付き金型を用いることで、表面にガス流路用の溝を形成することができる。
【0046】
金型を加熱する方法は、高周波誘導加熱等、従来公知の方法が使用できる。また、プレス圧は10〜50MPaであることが好ましい。プレス圧が低すぎると、機械的強度、導電性が不十分となる可能性がある。また、過剰にプレス圧を高くしても、機械的強度、導電性を大きく向上させることはできない反面、設備的負担が大きくなる。
【実施例】
【0047】
以下、実施例および比較例によって本発明をさらに説明する。
【0048】
尚、実施例における評価方法は以下の通りである。
(1)曲げ強度
ASTM D790に準じ測定した。作成したセパレータを幅約15mmで切り出し、スパン間50.8mm、クロスヘッドスピード2mm/minで測定した。
【0049】
(2)体積抵抗
低抵抗率計「ロレスターEP」((株)ダイアインスツルメンツ製)を用いて、体積抵抗を測定した。
【0050】
(3)水素透過係数
ASTM D1434 気体透過度試験(差圧法)により、40℃環境下で水素透過係数を測定した。
【0051】
<実施例1>
ジェットミルで常温粉砕したポリフェニレンエーテル樹脂粉末(重量平均径10μm、旭化成ケミカルズ(株)製)20wt%と、導電性カーボン粉末(重量平均径50μm、オリエンタル産業(株)製「OSカーボンパウダーAT−NO.5S」)80wt%を、ジェットミルで乾式混合し、厚さ0.2mmのステンレス鋼SUS304板の両面に配置し、240℃、25MPaで加熱プレス後、冷却し、100mm×100mm×厚さ2.2mm(カーボン層の厚さ:各1mm)のセパレータを作成した。
【0052】
このセパレータの曲げ強度を測定したところ、50MPaでカーボン層が破壊したが、金属製基材から剥離はしなかった。また、体積抵抗は3mΩ・cm、水素透過係数は1×10-16mol・m/m2・s・Pa以下であった。
【0053】
<実施例2>
導電性カーボン粉末として、オリエンタル産業(株)製「OSカーボンパウダーAT−NO.15S」(重量平均径10.5μm)を用いた以外は、実施例1と同様にしてセパレータを作成した。
【0054】
このセパレータの曲げ強度を測定したところ、50MPaでカーボン層が破壊したが、金属製基材から剥離はしなかった。また、体積抵抗は3mΩ・cm、水素透過係数は1×10-16mol・m/m2・s・Pa以下であった。
【0055】
<比較例1>
金属製基材をサンドイッチしない以外は、実施例1と同様にして、100mm×100mm×厚さ2mmのセパレータを作成した。
【0056】
このセパレータの曲げ強度を測定したところ、50MPaで破壊した。また、体積抵抗は8mΩ・cm、水素透過係数は2×10-13mol・m/m2・s・Paであった。
【0057】
<比較例2>
導電性カーボン粉末として、オリエンタル産業(株)製「OSカーボンパウダーAT−NO.40S」(重量平均径6μm)を用いた以外は、実施例1と同様にしてセパレータを作成したが、ポリフェニレンエーテル樹脂による結合が充分ではなく、カーボン層の形状が保持されなかったため、物性評価は行わなかった。
【0058】
<比較例3>
ポリフェニレンエーテル樹脂粉末に代えて、ポリフェニレンスルフィド樹脂粉末(重量平均径径20μm、大日本インキ化学工業(株)製)を用いた以外は、実施例1と同様にしてセパレータを作成した。
【0059】
このセパレータの曲げ強度を測定したところ、30MPaでカーボン層が破壊し金属製基材から剥離した。また、体積抵抗は3mΩ・cm、水素透過係数は1×10-16mol・m/m2・s・Pa以下であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製基材の両側に、導電性カーボン粉末とポリフェニレンエーテル樹脂微粉末とを含有する組成物を成形してなるカーボン層を有する燃料電池用セパレータであって、該ポリフェニレンエーテル樹脂微粉末の重量平均粒径が30μm以下で、かつ該導電性カーボン粉末の重量平均粒径以下であることを特徴とする燃料電池用セパレータ。
【請求項2】
前記カーボン層表面にガス流路用の溝を有することを特徴とする請求項1に記載の燃料電池用セパレータ。
【請求項3】
導電性カーボン粉末とポリフェニレンエーテル樹脂微粉末とを含有し、該ポリフェニレンエーテル樹脂微粉末の重量平均粒径が30μm以下で、かつ該導電性カーボン粉末の重量平均粒径以下である組成物、または該組成物を成形してなるシートを、金属製基材の両側に配置し、該ポリフェニレンエーテル樹脂のガラス転移温度以上の温度に加熱した金型間に挟んで加圧することを特徴とする燃料電池用セパレータの製造方法。
【請求項4】
前記ポリフェニレンエーテル樹脂微粉末を、常温下でポリフェニレンエーテル樹脂に衝撃を付与して粉砕することにより製造することを特徴とする請求項3に記載の燃料電池用セパレータの製造方法。
【請求項5】
前記金型が溝付き金型であることを特徴とする請求項3または4に記載の燃料電池用セパレータの製造方法。

【公開番号】特開2006−32187(P2006−32187A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−211116(P2004−211116)
【出願日】平成16年7月20日(2004.7.20)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】