説明

燃料電池用セパレータおよびその製造方法

【課題】高導電性と耐食性を両立し、燃料電池内で長期間安定して使用できる燃料電池用セパレータおよびその製造方法を提供することにある。
【解決手段】燃料電池用セパレータ1は、純アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる基板2と、基板2の上に形成されためっき層3とを備え、めっき層3が、基板2側に形成された銅層3aと、銅層3aの上に形成された錫層3bとを備え、錫層3bが最表層に形成されており、銅層3aの厚さが0.10μm以上であり、かつ、錫層3bの厚さを銅層3aの厚さで除した値が0.1〜50であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池、特に固体高分子型燃料電池に使用される燃料電池用セパレータおよびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図2に示すように、固体高分子型燃料電池(燃料電池)20は、固体高分子電解質膜(固体高分子膜)12をアノード電極(アノード部)とカソード電極(カソード部)とで挟んだものを単セル10として、セパレータ(あるいはバイポーラプレート)1と呼ばれる電極を介して単セル10を複数個重ね合わせて構成される。
【0003】
この燃料電池用のセパレータ材料には、接触抵抗が低く、それがセパレータとしての使用中に長期間維持されるという特性が要求される。このような特性を有する材料として、従来より、加工性および強度の面も合わせて、アルミ合金、ステンレス鋼、ニッケル合金、チタン合金などの金属材料の適用が検討されている。
【0004】
一方、例えば自動車用の燃料電池用セパレータ(以下、セパレータと称す)では、小型化、軽量化、低コスト化が強く求められている。この点において、アルミニウムは、ステンレス鋼やチタン合金に比べて軽量であり加工性が良く、かつ、安価であることから、有望な材料のひとつとして期待されている。
【0005】
そして、セパレータが置かれている燃料電池内の環境は、高温かつ酸性雰囲気であるため、無垢のアルミニウム基板でセパレータを構成した場合には、アルミニウム基板の表面が短時間で腐食され、基板よりアルミニウムイオンが溶出すると共に、基板表面に生成した腐食生成物により電気抵抗が増大して、セパレータとしての役割を果たさなくなる。
【0006】
このような問題に対して、アルミニウム基板に耐食性と導電性を兼備させるため、特許文献1には、アルミニウム基板表面にカーボン層、炭化ケイ素層、ニッケル層、クロム層、錫層のうちいずれかを形成したセパレータが記載されている。また、特許文献2、特許文献3には、耐食性を重視して、まずアルミニウム基板上に多孔質の陽極酸化皮膜を形成し、その表面もしくは孔内に導電性被膜(絶縁破壊領域)を形成したセパレータが記載されている。特許文献4には、アルミニウム基板と、ニッケルめっき層または銅めっき層からなる第1中間層、錫めっき層または錫合金めっき層からなる第2中間層を介してアルミニウム基板を被覆するように形成された導電材料を含有する樹脂層とを備えたセパレータが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−58080号公報
【特許文献2】特開2006−49209号公報
【特許文献3】特開2005−243595号公報
【特許文献4】特開2009−32671号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1においては、単一層のみで耐食性と導電性を両立しようとしているが、単一層ではピンホールをゼロにするのは困難であり、このピンホールを基点として腐食が進行する恐れが有る。また、特許文献2、特許文献3においては、陽極酸化皮膜は絶縁性であるため、その表面に導電性被膜(絶縁破壊領域)を形成させても、電気抵抗を十分に低くすることができなかった。特許文献4においては、樹脂は絶縁性であるため、導電材料を含有させても、電気抵抗を十分低くすることができなかった。
【0009】
そこで、本発明は、このような問題を解決すべく創案されたもので、その目的は、高導電性と耐食性を両立し、燃料電池内で長期間安定して使用できる燃料電池用セパレータおよびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するために、本発明に係る燃料電池用セパレータは、純アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる基板と、前記基板の上に形成されためっき層とを備える燃料電池用セパレータであって、前記めっき層が、前記基板側に形成された銅層と、前記銅層の上に形成された錫層とを備え、前記錫層が最表層に形成されており、前記銅層の厚さが0.10μm以上であり、かつ、前記錫層の厚さを前記銅層の厚さで除した値が0.1〜50であることを特徴とする。
【0011】
前記構成によれば、錫層を備えることによって、セパレータの接触抵抗が長期間低く維持される。また、所定の厚さの銅層および錫層を備えることによって、銅層および錫層のピンホールが抑制されると共に、銅層を備えることによって、基板と銅層、および、銅層と錫層の密着性が向上し、銅層および錫層の剥離が抑制される。そのため、基板が高温・酸性雰囲気に曝されることが防止でき、基板からのアルミニウムイオンの溶出が低くなると共に、基板表面に生成される腐食生成物の発生が低くなる。さらに、銅層と錫層の界面には錫層中に銅が拡散した拡散層が形成され、この拡散層が燃料電池(セパレータ)の作動温度で成長し、銅層と錫層の界面に生成される空隙が埋められるため、銅層と錫層の密着性が向上する。
【0012】
本発明に係る燃料電池用セパレータは、前記基板と前記めっき層との間に下地層をさらに備え、前記下地層がニッケル、クロム、鉄、コバルトから選ばれる金属もしくはこれらの合金からなることを特徴とする。さらに、前記下地層の厚さが0.5μm以上である。
前記構成によれば、これらの下地層を備えることによって、基板と銅層の密着性がさらに向上する。
【0013】
本発明に係る燃料電池用セパレータは、前記錫層が、錫のみからなる錫単独層であり、前記錫単独層が最表層に形成されておることを特徴とする。
前記構成によれば、錫層が錫単独層であることによって、導電性を有する錫層を容易に製造できる。
【0014】
本発明に係る燃料電池セパレータは、前記錫層が錫と炭素からなる錫炭素混合層であり、前記錫炭素混合層が最表層に形成されているセパレータ、または、前記錫層が錫のみからなる錫単独層と、前記錫単独層の上に形成された錫と炭素からなる錫炭素混合層とを備え、前記錫炭素混合層が最表層に形成されているセパレータであって、最表層側より走査型電子顕微鏡/エネルギー分散型分析装置(SEM/EDX)によって加速電圧15kVの条件で組成分析をした際の錫と炭素の原子%の比(Sn(at%)/C(at%))が0.01〜2であることを特徴とする。
【0015】
前記構成によれば、錫炭素混合層が最表層に形成され、Sn(at%)/C(at%)が所定範囲内であることによって、錫炭素混合層の炭素が、セパレータ表面と錫層内部を導通させる導電パスとして機能し、燃料電池として運転する間、最表層が錫単独層の場合よりもセパレータ表面の接触抵抗の増加が更に抑えられ、低接触抵抗が長く維持されるようになる。
【0016】
本発明に係る燃料電池用セパレータの製造方法は、基板を作製する基板作製工程と、前記基板の上に前記めっき層を形成するめっき層形成工程とを含み、前記めっき層形成工程において、前記めっき層が湿式めっき法で形成されたことを特徴とする。
【0017】
前記手順によれば、めっき層が湿式めっき法で形成されることによって、基板の上にその形状に沿って均一なめっき層が形成され、基板が高温・酸性雰囲気に曝されることが防止できる。
【0018】
本発明に係る燃料電池用セパレータの製造方法は、基板を作製する基板作製工程と、前記基板の上に前記下地層を形成する下地層形成工程と、前記下地層の上に前記めっき層を形成するめっき層形成工程とを含み、前記下地層形成工程および前記めっき層形成工程において、前記下地層および前記めっき層が湿式めっき法で形成されたことを特徴とする。
【0019】
前記手順によれば、下地層およびめっき層が湿式めっき法で形成されることによって、基板の上にその形状に沿って均一な下地層およびめっき層が形成され、基板が高温・酸性雰囲気に曝されることが防止できる。
【0020】
本発明に係る燃料電池用セパレータの製造方法は、前記めっき層形成工程で形成される前記めっき層の前記錫層が、錫のみからなる錫単独層であることを特徴とする。
前記手順によれば、錫層が錫単独層であることによって、導電性を有する錫層を容易に製造できる。
【0021】
本発明に係る燃料電池用セパレータの製造方法は、前記めっき層形成工程で形成される前記めっき層の前記錫層が、錫と炭素からなる錫炭素混合層であるセパレータの製造方法、または、前記めっき層形成工程で形成される前記めっき層の前記錫層が、錫からなる錫単独層と、前記錫単独層の上に形成された錫と炭素からなる錫炭素混合層とを備えるセパレータの製造方法であって、前記錫炭素混合層が、炭素およびカチオン系界面活性剤を錫めっき浴中に添加し、前記錫めっき浴中の炭素濃度を1〜200g/lに調整してめっき処理することによって形成されることを特徴とする。
【0022】
前記手順によれば、錫炭素混合層が形成されるセパレータの製造方法において、錫炭素混合層が、炭素およびカチオン系界面活性剤を錫めっき浴中に添加し、錫めっき浴中の炭素濃度を所定範囲内に調整してめっき処理することによって形成されるため、錫炭素混合層のSn(at%)/C(at%)を所定範囲内に制御できる。それによって、錫炭素混合層の炭素が、セパレータ表面と錫層内部を導通させる導電パスとして機能し、燃料電池として運転する間、最表層が錫単独層の場合よりもセパレータ表面の接触抵抗の増加が更に抑えられ、低接触抵抗が長く維持されるようになる。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る燃料電池用セパレータによれば、導電性および耐食性に優れ、燃料電池内で長期間安定して使用できるものとなる。また、本発明に係る燃料電池用セパレータの製造方法によれば、導電性および耐食性に優れた燃料電池用セパレータが製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】(a)、(b)は、本発明に係る燃料電池用セパレータの構成を示す断面図である。
【図2】燃料電池の一部を展開した様子を示す斜視図である。
【図3】接触抵抗値の測定方法を説明する説明図である。
【図4】本発明に係る燃料電池用セパレータのめっき層の構成を示す走査電子顕微鏡写真である。
【図5】(a)、(b)は、本発明に係る燃料電池用セパレータの製造方法の工程を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
まず、本発明に係る燃料電池用セパレータの実施の形態について、詳細に説明する。
<燃料電池用セパレータ>
図1(a)に示すように、燃料電池用セパレータ(以下、必要に応じてセパレータと称す)1は、基板2と、基板2の上に形成されためっき層3とを備える。また、めっき層3は、銅層3aと錫層3bとを備える。以下、各構成について説明する。
【0026】
(基板)
基板2は、純アルミニウムまたはアルミニウム合金(1000系、2000系、3000系、4000系、5000系、6000系、7000系、8000系)からなり、耐食性および加工性の点でJIS規定の1000系合金(工業用純アルミニウム)、3000系合金(Al−Mn系合金)、5000系合金(Al−Mg系合金)、6000系合金(Al−Mg−Si系合金)または8000系合金(Al−Fe−Si系合金またはAl−Li系合金)が好ましい。
【0027】
基板2の厚さは、特に限定されるものではないが、0.05〜0.5mmが好ましい。厚さをこの範囲とすれば、かかる板厚に加工するのが比較的容易でありながら、板材としての強度やハンドリング性を備えることができる。もちろん、必要に応じて0.05mm未満の厚さや0.5mm超える厚さに設定してもよい。
【0028】
基板2は、その表面に、燃料電池20の作動の際に水素や空気等のガスを流す凹部11を形成してもよい(図2参照)。凹部11のパターンは、図2のパターンに限定されるものではなく、必要に応じて適宜変更してもよい。
【0029】
(めっき層)
めっき層3は、基板2側に形成された銅層3aと、銅層3aの上に形成された錫層3bとを備え、前記錫層3bが最表層に形成されており、銅層3aの厚さが0.10μm以上であり、かつ、錫層3bの厚さを銅層3aの厚さで除した値が0.1〜50である。ここで、最表層とは、セパレータ1において高温・酸性雰囲気に曝される表面側に形成された層をいう。
【0030】
銅層3aは、めっき層3の密着性を向上させることによって、セパレータ1の耐食性を向上させる作用を有する。例えば、アルミニウム基板(基板2)の上に直接錫層3bを形成しようとしても、密着性が悪いため局所的な皮膜(錫層3b)剥離が起こる。これに対して、基板2の上にまず銅層3aを形成し、その上に錫層3bを形成する場合では、基板2と銅層3aの密着性、銅層3aと錫層3bの密着性は共によく、皮膜(銅層3aおよび錫層3b)の剥離が生じない。その結果、基板2が露出して腐食が起こり、基板2からアルミニウムイオンが溶出することを防ぐことができる。そして、このような理由から、めっき層3の基板2側に銅層3aを配置する。
【0031】
銅層3aは、その厚さが0.10μm未満では、銅層3aの形成時にピンホールが多く発生する。銅層3aにピンホールがある場合、その上に錫層3bを厚く形成すれば見かけ上のピンホールは低減されるが、その部分では錫層3bと基板2の密着性が不十分であるため、その部分が容易に剥離し、基板2が露出して腐食が起こる。したがって、銅層3aの厚さは0.10μm以上である。一方、銅層3aの厚さの上限値は、性能によって規定されるものではないが、生産性の観点から50μmとするのがよい。
【0032】
錫層3bは、セパレータ1の最表層に形成され、導電性および耐食性を向上させる作用を有する。錫は、セパレータ1が曝される高温・酸性雰囲気(pH2〜4)では酸化錫として存在する領域であるため、優れた耐食性を示す。また、酸化錫の膜は透明導電膜として用いられるように、酸化錫は導電性を有する。そして、このような理由から、めっき層3の最表層(銅層3aの上)に錫層3bを配置する。また、錫層3bは、錫のみからなる錫単独層である一層、錫と炭素からなる錫炭素混合層である一層、および、錫単独層とその上に形成した錫炭素混合層との二層のいずれでもよい。
【0033】
錫層3bは、錫層3bの厚さを銅層3aの厚さで除した値が0.1より小さな値になると、錫層3bの厚さが薄くなりすぎて、錫層3bにピンホール部が発生する。錫層3bにピンホール部が発生すると、そこには銅(銅層3a)が露出する。銅は高温・酸性雰囲気(pH2〜4)では錫に対して貴な金属であるため、ピンホール部に露出すると銅がカソードサイトになり、錫層3bの酸化を促進するか、もしくは錫の溶出が起こる。これにより、セパレータ1の導電性が劣化する。一方、錫層3bの厚さを銅層3aの厚さで除した値が50を超えた場合、耐久性の点では特に問題は起こらないものの、厚く形成するために長時間を要することとなり、生産性が低下する。したがって、錫層3bの厚さを銅層3aの厚さで除した値は0.1〜50であり、0.2以上が好ましく、0.3以上がより好ましい。
【0034】
めっき層3には、銅層3aと錫層3bの界面において、錫層3b中に銅が拡散した拡散層3cが形成されている。この拡散層3cは、めっき層の断面を観察したときに、島状に連なって形成されている(図4参照)。そして、この拡散層3cの形成は、銅層と錫層の密着性にとっては非常に有効に作用する。
【0035】
拡散層3cは、燃料電池20(セパレータ1、図2参照)の作動温度である60〜90℃の範囲では、銅と錫が共存する拡散層3cが成長するため、作動時間と共に銅層3aと錫層3bの密着性が向上する。そして、銅層3aと錫層3bの二層界面に小さな空隙が存在した場合でも、この拡散層3cの成長により、その空隙が埋められ、言わば拡散層3cが自己修復的な作用を発揮する。その結果、セパレータ1のめっき層3を長期間安定して維持することができる。
【0036】
図1(b)に示すように、セパレータ1Aは、前記構成(基板2、めっき層3(銅層3a、錫層3b))に加えて、基板2とめっき層3との間に下地層4をさらに備えるものであってもよい。なお、基板2およびめっき層3については、前記で説明したので説明を省略し、下地層4について説明する。
【0037】
(下地層)
本来、図1(a)に記載されたセパレータ1のように、基板2の上に銅層3aを直接形成しても良好な密着性が得られる。しかしながら、基板2と銅層3aの密着性をさらに高めるためには、銅層3aと基板2との間にニッケル、クロム、鉄、コバルトから選ばれる金属もしくはこれらの合金(例えば、Ni−P、Ni−B等)からなる下地層4を備えるのがよい。そして、下地層4の厚さは、0.5μm以上とすることが好ましい。また、下地層4の厚さの上限値は、特に規定されるものではないが、生産性の点から20μm以下とするのが好ましい。
【0038】
前記したセパレータ1、1A(図1(a)、(b)参照)においては、燃料電池内部の環境においてセパレータ表面の接触抵抗の上昇を抑えるため、錫層3bは、その少なくとも表面に炭素が含まれたもの、具体的には炭素(例えば、黒鉛)の粒子や微細繊維を含ませたものが好ましい。
【0039】
前記のように、錫層3bは燃料電池内部のような高温・酸性雰囲気ではその表面に酸化錫層が形成されるが、この酸化錫は導電性を有するために接触抵抗の著しい上昇は起こらない。しかしながら、金属錫と比較すると接触抵抗の値自体は大きなものとなる。高温・酸性雰囲気下でも錫層3b表面の接触抵抗の上昇を抑えるためには、錫層3bの少なくとも表面に、セパレータ1、1Aの表面と錫層3b内部を導通させるように炭素の粒子や微細繊維を含ませ、この炭素の部分が導電パスとなるよう構成するのが好ましい。したがって、錫層3bは、錫炭素混合層の一層、および、錫単独層とその上に形成した錫炭素混合層との二層が好ましい。
【0040】
このような構成としたとき、セパレータ1、1Aの最表層側より走査型電子顕微鏡/エネルギー分散型分析装置(SEM/EDX)によって加速電圧15kVの条件で組成分析をした際の錫と炭素の原子%の比(Sn(at%)/C(at%))が0.01〜2の範囲内にあることが好ましい。錫と炭素の原子%の比(Sn(at%)/C(at%))が0.01よりも小さいと、最表層はほぼ炭素の粒子や微細繊維のみで覆われることになるが、炭素の粒子や微細繊維はそれぞれ同士が密着しないため、指で触れると容易に剥離するような弱い層になる。炭素の粒子や微細繊維同士を錫が繋ぐような状態になることで、層としての強度が保たれるようになる。
【0041】
一方、錫と炭素の原子%の比(Sn(at%)/C(at%))が2を超えると導電パスとして作用する炭素の量が減少し、高温・酸性雰囲気中でセパレータ1、1Aの表面の接触抵抗上昇を抑えるという効果が得られなくなる。錫と炭素の原子%の比(Sn(at%)/C(at%))の好ましい範囲は0.05〜1.8であり、より好ましくは0.1〜1.5である。
【0042】
接触抵抗上昇を抑える目的で炭素の粒子や微細繊維を用いる例は従来知られているが、炭素の粒子や微細繊維を樹脂と混合したものである(例えば、特開2009−32671号公報参照)。温度や酸に対する耐性や吸水性を考慮して樹脂を選定し、炭素の粒子や微細繊維を適正量混合させることで、樹脂にも導電性を発現させることができ、燃料電池内の高温・酸性雰囲気でも接触抵抗値の増加を抑えることは可能となっている。しかしながら、炭素の粒子等を含む樹脂層を備えたセパレータの初期接触抵抗値は、樹脂が絶縁性であるため、本発明の接触抵抗値よりも大きな値となる傾向がある。
【0043】
例えば、後述する図3に示す方法で接触抵抗値を測定する場合、本発明のセパレータ1、1Aの初期接触抵抗値は1〜2mΩ・cmであるのに対して、炭素の粒子などを含む樹脂層を備えたセパレータの初期接触抵抗値は5mΩ・cmを超える値であることを確認している。
【0044】
次に、本発明に係る燃料電池用セパレータの製造方法について、詳細に説明する。
<燃料電池用セパレータの製造方法>
図5(a)に示すように、燃料電池用セパレータの製造方法は、基板作製工程S1と、めっき層形成工程S2とを含むものである。また、基板作製工程S1の後に、凹部形成工程S1Aを含んでもよい。以下、各工程について説明する。なお、セパレータの構成については、図1(a)を参照して説明する。
【0045】
(基板作製工程:S1)
基板作製工程S1は、所定の厚さ(例えば、0.05〜0.5mm)の純アルミニウムまたはアルミニウム合金(以下、アルミニウム合金と称す)からなる基板2を作製する工程である。基板2の作製には、従来公知の方法が用いられる。例えば、アルミニウム合金を溶解鋳造し、鋳塊を熱間圧延し、必要に応じて、冷間圧延、焼鈍等を行い、アルミニウム合金板を作製する。そして、このアルミニウム合金板を所定寸法(例えば、20mm×50mm)に切断加工して基板2を作製する。
【0046】
(凹部形成工程:S1A)
凹部形成工程S1Aは、必要に応じて、前記工程で作製された基板2の表面に、燃料電池20の作動の際に水素や空気などのガスを流す流路となる凹部11(図2参照)を形成する工程である。凹部11の形成には、機械加工法、プレス法等が用いられる。
【0047】
(めっき層形成工程:S2)
めっき層形成工程S2は、前記工程で作製された基板2(表面に凹部11が形成された基板を含む)の表面に、銅層3aと錫層3bの二重層からなるめっき層3を形成する工程である。そして、めっき層3は、基板2側に銅層3aを形成し、銅層3aの上に錫層3bを形成する。めっき層3の形成には、湿式めっき法が用いられる。湿式めっき法を用いることによって、基板2の表面に、ガス流路(凹部11)を形成した場合には流路の凹凸形状に沿って、ほぼ均一の厚さでめっき層3を形成することができる。また、基板2に形成されたガス流入口およびガス流出口(図示せず)のような基板2の端面が出ている部分にもめっき層3が形成されるため、基板自身が露出する部分をほとんど無くすることができる。湿式めっき法は、電解めっき法、無電解めっき法のいずれの方法でもよいが、めっき層3の緻密性や生産性を考慮すると、電解めっき法が好ましい。そして、めっき処理時間を制御して、銅層3aの厚さが0.10μm以上、錫層3bの厚さを銅層3aの厚さで除した値が0.1〜50になるようにする。
【0048】
また、めっき層形成工程S2では、銅層3aの上に錫層3bを形成することによって、銅層3aと錫層3bの界面において錫層3b中に銅が拡散した拡散層3cが形成される。また、めっき層形成工程S2の後、80℃以上で錫の融点以下の温度で加熱処理するとよい。この加熱処理によって、拡散層3cが成長し、銅層3aと錫層3bの密着性がさらに向上する。なお、加熱処理の時間は処理温度によって適宜調整すればよい。一方、錫の融点以上の温度で短時間の加熱処理を行い、錫層3bを一旦溶融させてその後急冷させると、錫層3bのピンホールをより低減させる効果がある。例えば、300℃で5秒間の熱処理、急冷を行うとその効果が得られるが、その際には、錫層3bの変色を抑えるための変色防止剤を予め塗布することが好ましい。
【0049】
また、錫層3bの形成は、基板2の上に銅層3aを形成させた後に炭素を含まない錫のみからなる錫単独層を形成してもよいし、銅層3aを形成させた後に錫と炭素からなる錫炭素混合層を形成してもよいし、銅層3aを形成させた後に錫単独層を形成し、次いで錫炭素混合層を形成してもよい。錫炭素混合層の形成によって、錫層3bがその少なくとも表面に炭素を含んだものとなる。
【0050】
錫炭素混合層を形成するには、炭素の粒子や微細繊維を均一に分散させた錫めっき浴中で電解めっきを行うとよい。しかしながら、単純に錫めっき浴中に炭素の粒子や微細繊維を分散させて電気めっきをしても錫層3bに炭素の粒子や微細繊維は取り込まれにくい。炭素の粒子や微細繊維を効率良く錫層3bに取り込ませるには、錫めっき浴中で炭素の粒子や微細繊維をプラスに荷電させるためのカチオン系界面活性剤等を添加するのが有効である。めっき処理時には被めっき材は陰極になるため、炭素の粒子や微細繊維がプラスに荷電していれば、めっき処理時に電気的に被めっき材側に寄り易くなり、錫層3bに取り込まれ易くなる。カチオン系界面活性剤としてはヘキサメチルトリメチルアンモニウムクロリド、ヘキサメチルアンモニウムブロミド、アルキルトリメチルアンモニウムクロリド等が好適に用いられる。
【0051】
また、Sn(at%)/C(at%):0.01〜2にするためには、錫めっき液中に分散させる炭素の粒子や微細繊維の濃度(炭素濃度)を一定範囲に調整するのがよく、その範囲は1〜200g/lである。錫めっき液中の炭素濃度が1g/lよりも低いと、Sn(at%)/C(at%)が2を超える値となってしまい、導電パスとして作用する炭素の量が減少し、高温・酸性雰囲気中でのセパレータ1、1Aの表面の接触抵抗上昇を抑える効果が得られなくなる。錫めっき浴中の炭素濃度が200g/lを超えると、錫めっき液の粘度が高くなり、均一なめっき層を形成できなくなる。また、Sn(at%)/C(at%)が0.01よりも小さくなり、最表層がほぼ炭素のみで覆われることとなり、錫層3bが指で触れると容易に剥離するような弱い層になる。錫めっき液中の炭素濃度の好ましい範囲は3〜180g/lであり、より好ましい範囲は5〜150g/lである。
【0052】
本発明に係る燃料電池用セパレータの製造方法は、基板作製工程S1と、下地層形成工程S3と、めっき層形成工程S2と、必要に応じて、凹部形成工程S1Aとを含むものであってもよい。なお、基板作製工程S1、めっき層形成工程S2、凹部形成工程S1Aについては、前記同様であるので説明を省略する。また、めっき層形成工程S2においては、めっき層3は基板2の上ではなく、下地層形成工程S3で形成された下地層4(図1(b)参照)の上に形成する。
【0053】
(下地層形成工程:S3)
下地層形成工程S3は、基板作製工程S1で作製された基板2(表面に凹部11が形成された基板を含む)の上に、ニッケル、クロム、鉄、コバルトから選ばれる金属もしくはこれらの合金(例えば、Ni−P、Ni−B等)からなる下地層4を形成する工程である。下地層4の形成には、めっき層形成工程S2と同様に、湿式めっき法が用いられる。湿式めっき法を用いることによって、基板2の表面に(凹部11の凹凸形状に沿って)、ほぼ均一の厚さで下地層4を形成することができる。また、基板2の端面が出ている部分にも下地層4が形成されるため、基板自身が露出する部分をほとんど無くすることができる。湿式めっき法は、電解めっき法、無電解めっき法のいずれの方法でもよいが、下地層4の緻密性や生産性を考慮すると、電解めっき法が好ましい。
【0054】
本発明の製造方法は、以上説明したとおりであるが、本発明を行うにあたり、前記各工程に悪影響を与えない範囲において、前記各工程の間あるいは前後に、他の工程を含めてもよい。例えば、基板作製工程S1(凹部形成工程S1A)の後に、基板2の表面を脱脂洗浄する洗浄工程、脱スマット処理する脱スマット処理工程、ジンケート処理するジンケート処理工程を行ってもよい。
【実施例1】
【0055】
本発明の効果を確認した実施例について説明する。
板厚0.5mmの工業用純アルミニウム(1050合金)板および4種類のアルミニウム合金(3003、5052、5182、6061合金)板を20mm×50mmのサイズに切断加工し、アセトン中で脱脂洗浄した。次いで50℃の10質量%の水酸化ナトリウム水溶液中に1分間浸漬し、水洗後に室温の20質量%の硝酸水溶液に2分間浸漬して脱スマットし、その後水洗した。その後、市販のジンケート処理液を用いて、板表面をジンケート処理し、その後下地層、銅、錫のそれぞれのめっき処理を行い、試験板を作製した。
【0056】
下地層、銅、錫それぞれのめっき処理には、市販のめっき浴を使用し、処理の温度および電流密度は以下の条件にて行った。また、めっき厚さの制御は処理時間の制御によって行った。作製した各種試験板の層構造、めっき厚さを表1に示す。
<めっき処理条件>
(下地層めっき)
(ニッケルめっき)温度:60℃、電流密度:0.1A/cm
(クロムめっき) 温度:50℃、電流密度:0.3A/cm
(鉄めっき) 温度:60℃、電流密度:0.05A/cm
(コバルトめっき)温度:室温 、電流密度:0.1A/cm
(銅めっき)温度:50℃、電流密度:0.05A/cm
(錫めっき)温度:40℃、電流密度:0.15A/cm
【0057】
まず、各種試験板について、めっき層の密着性を目視にて確認し、その結果を表1に示す。表1において、基板とめっき層の間が完全に剥離しているものを「×」、一部に剥離があるものを「△」、剥離がないものを「○」と記載した。
【0058】
次に、作製した各種試験板の接触抵抗値を測定した。接触抵抗値の測定は、図3に示す接触抵抗測定装置30を用いて、加重98N(10kgf)における接触抵抗値を測定した。図3に示すように、試験板1の両面をカーボンクロスCではさみ、さらにその外側を接触面積1cmの銅電極31を用いて98Nで加圧し、直流電流電源32を用いて、7.4mAの電流を通電し、当該カーボンクロスC間に印加される電圧を電圧計33で測定して接触抵抗値を算出した。次に、各試験板をそれぞれ80℃の硫酸水溶液(pH3)に500時間浸漬した後に、前記と同様の方法にて、再び接触抵抗値を算出した。また、この硫酸水溶液浸漬後に、溶液中へのアルミニウムイオンの溶出量をICP(Inductivity Coupled Plasma:誘導結合プラズマ)発光質量分析法により測定した。その結果を表1に示す。
【0059】
測定(算出)した接触抵抗値(初期接触抵抗値および硫酸水溶液浸漬後の接触抵抗値)、アルミニウムイオンの溶出量に基づいて、以下のように導電性および耐食性を評価した。
(導電性)
初期接触抵抗値および硫酸水溶液浸漬後の接触抵抗値の両者が、5mΩ・cm以下であるものを合格とした。
(耐食性)
硫酸水溶液浸漬後の接触抵抗値が5mΩ・cm以下であり、かつ、アルミニウムイオンの溶出量が10μg/cm以下であるものを合格とした。
【0060】
【表1】

【0061】
表1の結果から、特許請求の範囲を満足する実施例(No.1〜17)では、初期接触抵抗値および硫酸水溶液浸漬後の接触抵抗値の両者が5mΩ・cm以下であり、かつ、アルミニウムイオンの溶出量も10μg/cm以下であるため、導電性および耐食性に優れていることが確認された。また、いずれの合金を基板に用いた場合でも、同様に導電性および耐食性に優れることが確認された。
【0062】
一方、特許請求の範囲を満足しない比較例(No.18〜24)では、硫酸水溶液浸漬により接触抵抗値が増加して5mΩ・cmを超えるものとなった。また、基板からのアルミニウムイオンの溶出量も10μg/cmを超えるものであった。さらに、これらの試験板では、目視上著しい変色や腐食生成物が確認された。したがって、比較例(No.18〜24)は、導電性および耐食性が劣っていることが確認された。
【0063】
次に、導電性および耐食性に優れた実施例(No.2)の試験板について、その断面構造の観察を行った。断面観察の方法は、まずクロスセクションポリッシャ装置(日本電子製 SM-09010)により断面加工を行い、その断面を電界放射型走査電子顕微鏡(FE-SEM)にて観察した。その断面観察像を図4に示す。図4に示すように、錫層と銅層との界面にはコントラストの異なる領域が観察され、この領域をエネルギー分散型X線分析装置で組成分析すると、銅と錫が共存していることが分かった。よって、この領域が拡散層であり、拡散層が界面に沿って島状に連なって形成されていることが確認された。
【実施例2】
【0064】
実施例1と同様の方法でアルミニウム合金(5182合金)板上に下地層および銅層を形成した後、炭素の粒子を分散させた錫めっき浴中で炭素の粒子を含む錫炭素混合層(Sn+C)を形成させた試験板を作製した。また、実施例1と同様の方法でアルミニウム合金(5182合金)板上に下地層、銅層、錫のみからなる錫単独層(Sn)を形成した後、炭素の粒子を分散させた錫めっき浴中で炭素の粒子を含む錫炭素混合層(Sn+C)を形成した試験板も作製した。
【0065】
錫炭素混合層の形成は、炭素の粒子は平均粒径5μmのものを用い、カチオン系界面活性剤としてヘキサメチルトリメチルアンモニウムクロリドを10g/lとなるように添加した錫めっき浴中に炭素粒子を50g/lの濃度で分散させ、浴温度40℃、電流密度0.15A/cmとしてめっき処理を行った。
【0066】
また、錫めっき浴中に炭素粒子を分散させる際に、アニオン系界面活性剤としてラウリル硫酸ナトリウムを10g/lとなるように添加し、この錫めっき浴中に炭素粒子を50g/lの濃度で分散させ、上記と同様の条件でめっき処理を行った。
【0067】
作製した試験板の単に表面に付着した炭素粒子を超音波洗浄により除去後、表面の組成分析および接触抵抗測定を実施例1と同様にして実施した。
【0068】
表面の組成分析は、試験板の最表層側より走査型電子顕微鏡/エネルギー分散型分析装置(SEM/EDX)によって加速電圧15kVの条件で行い、錫と炭素について定量分析(原子%)を行った後、錫と炭素の原子%の比(Sn(at%)/C(at%))を算出した。作製した試験板の層構造、めっき厚さ、錫と炭素の原子%の比(Sn(at%)/C(at%))、初期接触抵抗値、硫酸水溶液浸漬後の接触抵抗値を表2に示した。
【0069】
【表2】

【0070】
表2の結果から、銅層上に炭素粒子を分散させた錫炭素混合層を形成した実施例(No.25〜30)では、錫単独層のみを形成した実施例(No.1〜17、表1参照)と比較して硫酸水溶液浸漬後の接触抵抗値が低い傾向にあり、高温・酸性雰囲気での接触抵抗値の増加が抑えられていることが分かる。
【0071】
一方、炭素粒子を分散させる際にアニオン系界面活性剤を使用して作製した実施例No.31では、錫層中に炭素があまり取り込まれずに錫と炭素の原子%の比(Sn(at%)/C(at%))が2を超える値であったため、硫酸水溶液浸漬後の接触抵抗値は表1の錫単独層を形成した実施例(No.1〜17、表1参照)と同等の値であった。
【符号の説明】
【0072】
1、1A 燃料電池用セパレータ
2 基板
3 めっき層
3a 銅層
3b 錫層
3c 拡散層
4 下地層
S1 基板作製工程
S1A 凹部形成工程
S2 めっき層形成工程
S3 下地層形成工程

【特許請求の範囲】
【請求項1】
純アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる基板と、前記基板の上に形成されためっき層とを備える燃料電池用セパレータであって、
前記めっき層が、前記基板側に形成された銅層と、前記銅層の上に形成された錫層とを備え、前記錫層が最表層に形成されており、前記銅層の厚さが0.10μm以上であり、かつ、前記錫層の厚さを前記銅層の厚さで除した値が0.1〜50であることを特徴とする燃料電池用セパレータ。
【請求項2】
前記基板と前記めっき層との間に下地層をさらに備え、前記下地層がニッケル、クロム、鉄、コバルトから選ばれる金属もしくはこれらの合金からなることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池用セパレータ。
【請求項3】
前記下地層の厚さが0.5μm以上であることを特徴とする請求項2に記載の燃料電池用セパレータ。
【請求項4】
前記錫層が、錫のみからなる錫単独層であり、前記錫単独層が最表層に形成されておることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の燃料電池用セパレータ。
【請求項5】
前記錫層が、錫と炭素からなる錫炭素混合層であり、前記錫炭素混合層が最表層に形成されており、最表層側より走査型電子顕微鏡/エネルギー分散型分析装置(SEM/EDX)によって加速電圧15kVの条件で組成分析をした際の錫と炭素の原子%の比(Sn(at%)/C(at%))が0.01〜2であることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の燃料電池セパレータ。
【請求項6】
前記錫層が、錫のみからなる錫単独層と、前記錫単独層の上に形成された錫と炭素からなる錫炭素混合層とを備え、前記錫炭素混合層が最表層に形成されており、最表層側より走査型電子顕微鏡/エネルギー分散型分析装置(SEM/EDX)によって加速電圧15kVの条件で組成分析をした際の錫と炭素の原子%の比(Sn(at%)/C(at%))が0.01〜2であることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の燃料電池セパレータ。
【請求項7】
請求項1に記載の燃料電池用セパレータの製造方法であって、
基板を作製する基板作製工程と、
前記基板の上に前記めっき層を形成するめっき層形成工程とを含み、
前記めっき層形成工程において、前記めっき層が湿式めっき法で形成されたことを特徴とする燃料電池用セパレータの製造方法。
【請求項8】
請求項2または請求項3に記載の燃料電池用セパレータの製造方法であって、
基板を作製する基板作製工程と、
前記基板の上に前記下地層を形成する下地層形成工程と、
前記下地層の上に前記めっき層を形成するめっき層形成工程とを含み、
前記下地層形成工程および前記めっき層形成工程において、前記下地層および前記めっき層が湿式めっき法で形成されたことを特徴とする燃料電池用セパレータの製造方法。
【請求項9】
前記めっき層形成工程で形成される前記めっき層の前記錫層が、錫のみからなる錫単独層であることを特徴とする請求項7または請求項8に記載の燃料電池用セパレータの製造方法。
【請求項10】
前記めっき層形成工程で形成される前記めっき層の前記錫層が、錫と炭素からなる錫炭素混合層であって、
前記錫炭素混合層が、炭素およびカチオン系界面活性剤を錫めっき浴中に添加し、前記錫めっき浴中の炭素濃度を1〜200g/lに調整してめっき処理することによって形成されることを特徴とする請求項7または請求項8に記載の燃料電池用セパレータの製造方法。
【請求項11】
前記めっき層形成工程で形成される前記めっき層の前記錫層が、錫からなる錫単独層と、前記錫単独層の上に形成された錫と炭素からなる錫炭素混合層とを備え、
前記錫炭素混合層が、炭素およびカチオン系界面活性剤を錫めっき浴中に添加し、前記錫めっき浴中の炭素濃度を1〜200g/lに調整してめっき処理することによって形成されることを特徴とする請求項7または請求項8に記載の燃料電池用セパレータの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−71080(P2011−71080A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−270475(P2009−270475)
【出願日】平成21年11月27日(2009.11.27)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】