説明

燃料電池用セパレータの処理方法

【課題】 イオン性物質や不純物をより一層除去して導電性等を向上させることのできる燃料電池用セパレータの処理方法を提供する。
【解決手段】 成形された燃料電池用セパレータを一気圧以上の状態でプレッシャークッカー装置の純水に投入し、加熱煮沸して不純物を除去した後、乾燥させる。燃料電池用セパレータの成形材料を単に洗浄したり、燃料電池用セパレータの表面層をサンドブラストで除去して水洗いするのではなく、プレッシャークッカー装置により加熱煮沸するので、燃料電池用セパレータからイオン性物質や不純物をより一層除去することができる。したがって、燃料電池用セパレータの導電性や起電力等を著しく向上させたり、安定させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池に使用される燃料電池用セパレータの処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
燃料電池に使用される燃料電池用セパレータは、高い導電性や起電力を確保するため、イオン性物質や不純物の除去が求められる(特許文献1、2、3参照)。そこで、燃料電池用セパレータは、製造後の最終工程でサンプルが溶質試験に供され、イオン性物質や不純物の除去の程度が確認される。溶質試験は、例えば純水中にサンプルの燃料電池用セパレータを投入し、所定時間煮沸して燃料電池用セパレータ表面からの溶質イオンを測定することにより行われる。
【0003】
係るイオン性物質や不純物の除去を実現するため、従来においては、燃料電池用セパレータの成形材料をアルコールや純水で洗浄したり、燃料電池用セパレータの表面層をサンドブラストで除去して水洗いする手法が採用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009‐99475号公報
【特許文献2】特開2000‐100453号公報
【特許文献3】特開2007‐157701号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来における燃料電池用セパレータの処理方法は、以上のようになされ、優れた作用効果が期待できるものの、イオン性物質や不純物をより一層除去して導電性や起電力等を向上させたいという要望がある。
【0006】
本発明は上記に鑑みなされたもので、イオン性物質や不純物をより一層除去して導電性等を向上させることのできる燃料電池用セパレータの処理方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明においては上記課題を解決するため、成形した燃料電池用セパレータを一気圧以上の状態で洗浄水に投入し、煮沸することを特徴としている。
なお、燃料電池用セパレータをプレッシャークッカー装置の純水に投入して煮沸することが好ましい。
【0008】
ここで、特許請求の範囲における燃料電池用セパレータは、単数複数いずれでも良い。この燃料電池用セパレータは、圧縮成形、射出成形、加熱粉体成形等される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、燃料電池用セパレータを一気圧以上の状態で洗浄水に投入し、煮沸するので、イオン性物質や不純物をより一層除去し、導電性等を向上させることができるという効果がある。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を説明すると、本実施形態における燃料電池用セパレータの処理方法は、図示しないが、成形された複数枚の燃料電池用セパレータを一気圧以上の状態でプレッシャークッカー装置の純水に投入し、煮沸して不純物を除去した後、乾燥させるようにしている。
【0011】
各燃料電池用セパレータは、例えば粉末の導電性材料と熱可塑性樹脂とを含む成形材料により平面矩形の板に加熱粉体成形され、表裏面に燃料と酸化剤用の流路が複数形成される。
【0012】
プレッシャークッカー装置は、圧力釜とも、オートクレープ装置とも呼ばれ、本来的には高温高圧の飽和水蒸気による減菌処理のための小型の装置である。このプレッシャークッカー装置としては、例えば平山製作所製、協真エンジニアリング製、トミー精工製の装置等が使用される。
【0013】
上記において、燃料電池用セパレータを処理してイオン性物質や不純物を除去したい場合には、加熱粉体成形された複数枚の燃料電池用セパレータをプレッシャークッカー装置のチャンバー内に貯えた純水中にまとめて投入し、高温高圧の状態で所定の時間加熱煮沸してイオン性物質や不純物を除去する。
【0014】
この際、複数枚の燃料電池用セパレータをプレッシャークッカー装置に直接投入しても良いが、何らこれに限定されるものではない。例えば、複数枚の燃料電池用セパレータを各種の容器に重ねて収容し、この容器をプレッシャークッカー装置に投入して加熱煮沸しても良い。また、燃料電池用セパレータには、高圧が作用するので、内部に対する純水の浸透性が向上し、イオン性物質や不純物を早期に除去することができる。
【0015】
こうして複数枚の燃料電池用セパレータを高温高圧で加熱煮沸したら、これらをプレッシャークッカー装置から取り出し、この取り出した各燃料電池用セパレータにエアを噴射して表面に付着した純水を除去し、所定の時間(例えば1〜8時間)乾燥させれば、全ての作業を終了することができる。
この際、プレッシャークッカー装置にエア噴射装置や乾燥装置が併設されている場合には、プレッシャークッカー装置内で燃料電池用セパレータにエアを噴射したり、乾燥させることができる。
【0016】
上記によれば、燃料電池用セパレータの成形材料を単に洗浄したり、燃料電池用セパレータの表面層をサンドブラストで除去して水洗いするのではなく、プレッシャークッカー装置により加熱煮沸するので、燃料電池用セパレータからイオン性物質や不純物を従来よりもより一層短時間で除去することができる。したがって、燃料電池用セパレータの導電性や起電力等を著しく向上させたり、安定させることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形した燃料電池用セパレータを一気圧以上の状態で洗浄水に投入し、煮沸することを特徴とする燃料電池用セパレータの処理方法。
【請求項2】
燃料電池用セパレータをプレッシャークッカー装置の純水に投入して煮沸する請求項1記載の燃料電池用セパレータの処理方法。

【公開番号】特開2011−159603(P2011−159603A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−22733(P2010−22733)
【出願日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】