説明

燃料電池用セパレータ

【課題】膜電極接合体を備える燃料電池において、オフガスの出口領域における電解質膜の乾燥を抑制する。
【解決手段】アノード側セパレータ100は、サーペンタイン型のガス流路40,42,44,46,48と、貯水部44eと、出口バッファ部50と、隔壁52と、アノードオフガス導出流路60と、アノードオフガス排出部70と、を備える。貯水部44eは、ガス流路48から分岐して接続され、ガス流路48を流れる水素の一部を分岐して導入し、導入した水素に含まれる水を一時的に貯水する。貯水部44eは、膜電極接合体のアノードと対向する部位において、出口バッファ部50の鉛直上方に隣接して設けられる。貯水部44eは、貯水した水が膜電極接合体のアノードと接触するように形成される。隔壁52は、膜電極接合体のアノードと対向する部位において、貯水部44eと出口バッファ部50とを隔離する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池用セパレータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
燃料ガスと酸化剤ガスとの電気化学反応によって発電する燃料電池がエネルギ源として注目されている。この燃料電池は、一般に、電解質膜の両面に電極を接合してなる膜電極接合体を、セパレータで挟持することによって構成される。セパレータの表面には、燃料電池の電極の表面に沿って発電に供する反応ガスを流すためのガス流路が形成される。なお、このガス流路としては、燃料電池の電極の表面に沿って反応ガスが蛇行して流れるように形成されたサーペンタイン型のガス流路が用いられる場合がある。
【0003】
そして、このような燃料電池について、従来、反応ガス流路からの排水性を向上させるための種々の技術が提案されている。例えば、下記特許文献1には、燃料電池において、サーペンタイン型の燃料ガス流路の出口側と燃料ガス出口連通孔との間に、これらを連通するバッファ部と連結通路とを設け、連結通路の流路開口断面積を燃料ガス流路の出口側の流路開口断面積よりも小さくすることが記載されている。下記特許文献1に記載された技術によれば、連結流路から燃料ガス出口連通孔に排出される燃料ガスの流速を高め、排水性を向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−278177号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、燃料電池の高温運転時には、膜電極接合体における燃料ガス(オフガス)の出口領域では、電解質膜が乾燥しやすくなる。そして、電解質膜が乾燥すると、プロトン伝導性が低下し、燃料電池の発電性能の低下を招く。しかし、上記特許文献1に記載された技術では、この燃料ガス(オフガス)の出口領域における電解質膜の乾燥については、考慮されていなかった。
【0006】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであり、膜電極接合体を備える燃料電池において、膜電極接合体のオフガスの出口領域における電解質膜の乾燥を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0008】
[適用例1]
燃料電池用セパレータであって、
電解質膜の両面に電極を接合してなる膜電極接合体における前記電極の表面に沿って発電に供する反応ガスが蛇行して流れるように形成されたサーペンタイン型のガス流路と、
前記燃料電池用セパレータの厚さ方向に貫通し、前記電極から排出されたオフガスを前記燃料電池の外部に排出するためのオフガス排出部と、
前記ガス流路の終端に接続され、該ガス流路の終端から排出された前記オフガスが流入するバッファ部であって、前記電極と対向する内壁面に、該内壁面から前記電極の表面側に向かって突起し、前記電極と当接する複数の突起部が形成されたバッファ部と、
前記バッファ部に流入した前記オフガスを前記オフガス排出部に導出するためのオフガス導出流路と、
前記ガス流路から分岐して接続され、該ガス流路を流れる前記反応ガスの一部を分岐して導入し、該導入した前記反応ガスに含まれる水を一時的に貯水する貯水部であって、前記電極と対向する部位において、前記バッファ部の鉛直上方に隣接して設けられ、前記燃料電池用セパレータを前記膜電極接合体に積層したときに、貯水した水が前記電極と接触するように形成された貯水部と、
前記電極と対向する部位において、前記貯水部と前記バッファ部とを隔離する隔壁と、
を備える燃料電池用セパレータ。
【0009】
適用例1の燃料電池用セパレータを用いた燃料電池では、サーペンタイン型のガス流路およびバッファ部には、反応ガスおよびオフガスとともに、水(例えば、発電によって生成された生成水)も流れる。この水は、オフガスととともに、オフガス導出流路を通じて、オフガス排出部に排出される。この燃料電池において、ガス流路を流れる反応ガスの一部に含まれる水は、一時的に、バッファ部の鉛直上方に隣接して設けられた貯水部に貯水される。そして、この貯水部に貯水された水は、燃料電池用セパレータに積層された膜電極接合体の電極と接触して、膜電極接合体に浸透する。そして、この膜電極接合体に浸透した水は、膜電極接合体における貯水部と対向する部位から、重力によって、隔壁をくぐって、貯水部の鉛直下方に隣接するバッファ部と対向する部位、すなわち、膜電極接合体におけるオフガスの出口領域に移動する。したがって、適用例1の燃料電池用セパレータを燃料電池に用いることによって、膜電極接合体のオフガスの出口領域における電解質膜の乾燥を抑制することができる。本発明は、膜電極接合体のオフガスの出口領域において電解質膜が乾燥しやすくなる燃料電池の高温運転時に特に効果的である。
【0010】
[適用例2]
適用例1記載の燃料電池用セパレータであって、
前記ガス流路は、
前記反応ガスを水平方向に沿った第1の方向に流すための第1のガス流路と、
前記第1のガス流路の終端に接続され、前記第1のガス流路から流入した前記反応ガスを鉛直下方に流すための第2のガス流路と、
前記第2のガス流路の終端に接続され、前記第2のガス流路から流入した前記反応ガスを前記第1の方向と対向する第2の方向に流すための第3のガス流路と、
を含み、
前記バッファ部は、前記第3のガス流路の終端に接続されており、
前記貯水部は、前記第1のガス流路から分岐して接続されており、該第1のガス流路を流れる前記反応ガスの一部を分岐して導入する、
燃料電池用セパレータ。
【0011】
適用例2の燃料電池用セパレータでは、膜電極接合体の電極と対向する部位に、ガス流路と、貯水部と、バッファ部と、隔壁とを、面積効率よく配置することができる。したがって、燃料電池用セパレータの小型化、さらには、燃料電池の小型化を図ることができる。
【0012】
[適用例3]
適用例2記載の燃料電池用セパレータであって、
前記第3のガス流路の終端と、前記バッファ部と、前記オフガス導出流路とは、水平方向に並べて配置されており、
前記オフガス導出流路の上端は、前記第3のガス流路の上端よりも鉛直下方に配置されており、
前記隔壁は、前記第3のガス流路の上端から前記オフガス導出流路の上端に亘って、連続的に傾斜して設けられた傾斜面を有する、
燃料電池用セパレータ。
【0013】
適用例3の燃料電池用セパレータでは、第3のガス流路の終端と、バッファ部と、オフガス導出流路とは、水平方向に並べて配置されており、オフガス導出流路の上端は、第3のガス流路の上端よりも鉛直下方に配置されている。この場合、バッファ部において、第3のガス流路の上端とオフガス導出流の上端との段差があると、この段差部分に水が滞留しやすい。一方、適用例3の燃料電池用セパレータでは、隔壁が、第3のガス流路の上端からオフガス導出流路の上端に亘って、連続的に傾斜して設けられた傾斜面を有している。このため、バッファ部において、第3のガス流路の上端とオフガス導出流の上端との段差をなくすことができる。そして、適用例3の燃料電池用セパレータを用いた燃料電池では、バッファ部に流入した水を、オフガス、あるいは、燃料電池の運転停止時に燃料電池の外部から供給された掃気ガスの流れによって、隔壁の傾斜面に沿って流動させることができる。したがって、バッファ部において、第3のガス流路の上端とオフガス導出流の上端との段差がある場合よりも、燃料電池の運転停止時に、バッファ部に水が滞留することを抑制することができる。この結果、氷点下時に、バッファ部やオフガス導出流路に残留した水が凍結してガスの流路が閉塞されることを抑制することができる。
【0014】
[適用例4]
適用例1ないし3のいずれかに記載の燃料電池用セパレータであって、
前記貯水部の前記電極と対向する内壁面に、該内壁面から前記電極の表面側に向かって突起し、前記電極と当接する複数の突起部であって、導電性を有する複数の突起部が形成されている、
燃料電池用セパレータ。
【0015】
適用例4の燃料電池用セパレータを燃料電池に用いることによって、貯水部の上記内壁面に上記複数の突起部が形成されていない場合よりも、燃料電池の内部抵抗を減少させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】アノード側セパレータ100の概略構成を示す説明図である。
【図2】アノード側セパレータ100の効果を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、実施例に基づき説明する。
A.実施例:
図1は、本発明の一実施例としてのアノード側セパレータ100の概略構成を示す説明図である。このアノード側セパレータ100は、燃料電池(図示省略)において、膜電極接合体のアノード側に積層される。図1では、アノード側セパレータ100を、膜電極接合体のアノードと当接する側から見た平面図を示した。
【0018】
なお、膜電極接合体は、プロトン伝導性を有する電解質膜の両面に電極としての触媒層およびガス拡散層を接合することによって構成されている。触媒層は、電解質膜の表面に、触媒インクを塗布して乾燥させることによって形成される。本実施例では、電解質膜として、ナフィオン(登録商標)等の固体高分子からなる電解質膜を用いるものとした。また、本実施例では、ガス拡散層として、カーボンクロスを用いるものとした。ガス拡散層として、カーボンペーパ等、ガス拡散性、および、導電性を有する他の材料を用いるものとしてもよい。
【0019】
アノード側セパレータ100は、1枚の金属プレートを加工することによって作製されている。アノード側セパレータ100には、例えば、プレス加工や打ち抜き加工によって、ガスや冷却媒体が流れる流路が形成されている。
【0020】
図1に示したように、アノード側セパレータ100は、水素供給部10と、水素導入流路20と、入口バッファ部30と、複数のガス流路40,42,44,46,48と、貯水部44eと、出口バッファ部50と、隔壁52と、アノードオフガス導出流路60と、アノードオフガス排出部70と、を備えている。入口バッファ部30と、複数のガス流路40,42,46,48と、貯水部44eと、出口バッファ部50と、隔壁52とは、膜電極接合体のアノードと対向する矩形領域内(図中に一点鎖線で囲って示した矩形領域内)に配置されている。
【0021】
水素供給部10(「水素in」と記載)は、アノード側セパレータ100の厚さ方向に貫通する貫通孔である。水素供給部10は、燃料電池の外部から供給された水素を燃料電池の積層方向に流すための流路を形成する。また、アノードオフガス排出部70(「水素out」と記載)は、アノード側セパレータ100の厚さ方向に貫通する貫通孔である。アノードオフガス排出部70は、膜電極接合体のアノードから排出されたアノードオフガスを燃料電池の積層方向に流して燃料電池の外部に排出するための流路を形成する。
【0022】
水素供給部10と複数のガス流路40とは、水素導入流路20、および、入口バッファ部30を介して連通している。入口バッファ部30における膜電極接合体のアノードと対向する内壁面には、この内壁面からアノードと当接する表面側に向かって突起し、アノードと当接する複数の突起部30pが形成されている。
【0023】
燃料電池の外部から供給された水素は、水素供給部10から水素導入流路20を通じて入口バッファ部30に流入する。そして、この水素は、入口バッファ部30において複数の突起部30pによって分散されて、複数のガス流路40に分配される。
【0024】
複数のガス流路40,42,44,46,48は、膜電極接合体のアノードの表面に沿って水素が蛇行して流れるように形成されたサーペンタイン型のガス流路である。このサーペンタイン型のガス流路において、複数のガス流路40は、入口バッファ部30から流入した水素を水平方向に沿った方向(図示した例では、右から左)に流すためのガス流路である。また、複数のガス流路42は、複数のガス流路40のそれぞれ終端に接続され、複数のガス流路40から流入した水素をそれぞれ鉛直下方に流すための流路である。また、複数のガス流路44は、複数のガス流路42のそれぞれの終端に接続され、複数のガス流路42から流入した水素をそれぞれ水平方向に沿った方向(図示した例では、左から右)に流すためのガス流路である。また、複数のガス流路46は、複数のガス流路44のそれぞれ終端に接続され、複数のガス流路44から流入した水素をそれぞれ鉛直下方に流すための流路である。また、複数のガス流路48は、複数のガス流路46のそれぞれの終端に接続され、複数のガス流路46から流入した水素をそれぞれ水平方向に沿った方向(図示した例では、右から左)に流すためのガス流路である。複数のガス流路44は、[課題を解決するための手段]における第1のガス流路に相当する。また、ガス流路46は、[課題を解決するための手段]における第2のガス流路に相当する。また、ガス流路48は、[課題を解決するための手段]における第3のガス流路に相当する。
【0025】
貯水部44eは、複数のガス流路44の鉛直下方に配置されており、複数のガス流路44のうちの最下部に位置するガス流路44から分岐して接続されている。この貯水部44eは、複数のガス流路44を流れる水素の一部を分岐して導入し、導入した水素に含まれる水を一時的に貯水する。貯水部44eに導入された水素の一部は、貯水部44eと対向する部位の膜電極接合体で消費され、未消費の水素は、ガス流路44に戻る。貯水部44eは、膜電極接合体のアノードと対向する部位において、出口バッファ部50の鉛直上方に隣接して設けられている。貯水部44eは、アノード側セパレータ100を膜電極接合体に積層したときに、貯水した水が膜電極接合体のアノードと接触するように形成されている。貯水部44eと出口バッファ部50とは、隔壁52によって隔離されている。したがって、貯水部44eに流入した水素および貯水された水は、直接的には出口バッファ部50に流入しない。なお、貯水部44eにおける膜電極接合体のアノードと対向する内壁面には、この内壁面からアノードと当接する表面側に突起し、アノードと当接する複数の突起部44pが形成されている。
【0026】
複数のガス流路48とアノードオフガス排出部70とは、出口バッファ部50、および、アノードオフガス導出流路60を介して連通している。出口バッファ部50は、複数のガス流路48の終端に接続されている。出口バッファ部50における膜電極接合体のアノードと対向する内壁面には、この内壁面からアノードと当接する表面側に突起し、アノードと当接する複数の突起部50pが形成されている。出口バッファ部50は、[課題を解決するための手段]におけるバッファ部に相当する。また、アノードオフガス導出流路60は、[課題を解決するための手段]におけるオフガス導出流路に相当する。
【0027】
複数のガス流路48の終端と、出口バッファ部50と、アノードオフガス導出流路60とは、水平方向に並べて配置されている。また、アノードオフガス導出流路60の上端は、複数のガス流路48の上端よりも鉛直下方に配置されている。そして、隔壁52は、複数のガス流路48の上端からアノードオフガス導出流路60の上端に亘って、連続的に傾斜して設けられた傾斜面を有している。
【0028】
複数のガス流路48の終端から排出されたアノードオフガスは、出口バッファ部50に流入する。このとき、出口バッファ部50には、アノードオフガスとともに、水(例えば、発電によって生成された生成水)も流入する。出口バッファ部50では、複数の突起部50pによって、水を含むアノードオフガスの流れ方向が分散される。そして、出口バッファ部50に流入したアノードオフガスおよび水は、出口バッファ部50からアノードオフガス導出流路60を通じてアノードオフガス排出部70に導出される。
【0029】
図2は、アノード側セパレータ100の効果を示す説明図である。図2では、アノード側セパレータ100を用いた燃料電池における貯水部44e、出口バッファ部50、隔壁52近傍の断面図を示した。そして、図2中に、貯水部44e、出口バッファ部50、隔壁52近傍における水の流れを矢印で示した。
【0030】
本実施例のアノード側セパレータ100を用いた燃料電池では、ガス流路44を流れる水素の一部に含まれる水が、一時的に、出口バッファ部50の鉛直上方に隣接して設けられた貯水部44eに貯水される。そして、この貯水部44eに貯水された水は、アノード側セパレータ100に積層された膜電極接合体と接触して、膜電極接合体に浸透する。そして、この膜電極接合体に浸透した水は、膜電極接合体における貯水部44eと対応する部位から、重力によって、隔壁52をくぐって、貯水部44eの鉛直下方に隣接する出口バッファ部50と対向する部位、すなわち、膜電極接合体におけるアノードオフガスの出口領域に移動する。したがって、本実施例のアノード側セパレータ100を燃料電池に用いることによって、膜電極接合体のアノードオフガスの出口領域における電解質膜の乾燥を抑制することができる。本実施例のアノード側セパレータ100は、膜電極接合体のオフガスの出口領域において電解質膜が乾燥しやすくなる燃料電池の高温運転時に特に効果的である。
【0031】
また、本実施例のアノード側セパレータ100では、サーペンタイン型のガス流路は、ガス流路40,42,44,46,48を含む。そして、出口バッファ部50は、ガス流路48の終端に接続されている。そして、貯水部44eは、ガス流路44から分岐して接続されており、ガス流路44を流れる水素の一部を分岐して導入する。このため、図1に示したように、膜電極接合体のアノードと対向する部位に、ガス流路40,42,44,46,48と、貯水部44eと、出口バッファ部50と、隔壁52とを、面積効率よく配置することができる。したがって、アノード側セパレータ100の小型化、さらには、燃料電池の小型化を図ることができる。
【0032】
また、本実施例のアノード側セパレータ100では、ガス流路48の終端と、出口バッファ部50と、アノードオフガス導出流路60とは、水平方向に並べて配置されており、アノードオフガス導出流路60の上端は、ガス流路48の上端よりも鉛直下方に配置されている。この場合、出口バッファ部50において、ガス流路48の上端とアノードオフガス導出流路60の上端との段差があると、この段差部分に水が滞留しやすい。一方、本実施例のアノード側セパレータ100では、隔壁52が、ガス流路48の上端からアノードオフガス導出流路60の上端に亘って、連続的に傾斜して設けられた傾斜面を有している。このため、出口バッファ部50において、ガス流路48の上端とアノードオフガス導出流路60の上端との段差をなくすことができる。そして、本実施例のアノード側セパレータ100を用いた燃料電池では、出口バッファ部50に流入した水を、アノードオフガス、あるいは、燃料電池の運転停止時に燃料電池の外部から供給された掃気ガスの流れによって、隔壁52の傾斜面に沿って流動させることができる。したがって、出口バッファ部50において、ガス流路48の上端とアノードオフガス導出流路60の上端との段差がある場合よりも、燃料電池の運転停止時に、出口バッファ部50に水が滞留することを抑制することができる。この結果、氷点下時に、出口バッファ部50やアノードオフガス導出流路60に残留した水が凍結してガスの流路が閉塞されることを抑制することができる。
【0033】
また、本実施例のアノード側セパレータ100では、貯水部44eにおける膜電極接合体のアノードと対向する内壁面に、この内壁面からアノードの表面側に向かって突起し、アノードと当接する複数の突起部44pが形成されている。そして、この突起部44pは、導電性を有している。したがって、本実施例のアノード側セパレータ100を燃料電池に用いることによって、貯水部44eの上記内壁面に複数の突起部44pが形成されていない場合よりも、燃料電池の内部抵抗を減少させることができる。
【0034】
B.変形例:
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明はこのような実施の形態になんら限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内において種々なる態様での実施が可能である。例えば、以下のような変形が可能である。
【0035】
B1.変形例1:
上記実施例のアノード側セパレータ100では、サーペンタイン型のガス流路は、ガス流路40,42,44,46,48からなるものとしたが、本発明は、これに限られない。アノード側セパレータ100において、サーペンタイン型のガス流路は、膜電極接合体のアノードの表面に沿って水素が蛇行して流れるように形成されていればよく、他の構成としてもよい。
【0036】
B2.変形例2:
上記実施例のアノード側セパレータ100では、貯水部44eは、ガス流路44から分岐して接続されており、ガス流路44を流れる水素の一部を分岐して導入するものとしたが、本発明は、これに限られない。貯水部44eは、サーペンタイン型のガス流路40,42,44,46,48を流れる水素の一部を導入し、導入した水素に含まれる水を一時的に貯水することができるように形成されればよい。
【0037】
B3.変形例3:
上記実施例のアノード側セパレータ100では、隔壁52は、複数のガス流路48の上端からアノードオフガス導出流路60の上端に亘って、連続的に傾斜して設けられた傾斜面を有するものとしたが、本発明は、これに限られない。隔壁52は、鉛直方向に隣接して配置された貯水部44eと出口バッファ部50とを隔離すればよく、隔壁52の形状、すなわち、出口バッファ部50、および、貯水部44eの形状を他の形状としてもよい。
【0038】
B4.変形例4:
上記実施例のアノード側セパレータ100では、貯水部44eにおける膜電極接合体のアノードと対向する内壁面に、この内壁面からアノードの表面側に向かって突起し、アノードと当接する複数の突起部が形成されているものとしたが、本発明は、これに限られない。貯水部44eにおいて、複数の突起部44pを省略するようにしてもよい。
【0039】
B5:変形例5:
上記実施例では、本発明の燃料電池用セパレータの構成を、膜電極接合体のアノード側に積層されるアノード側セパレータに適用した場合について説明したが、本発明は、これに限られない。本発明の燃料電池用セパレータの構成を、膜電極接合体のカソード側に積層されるカソード側セパレータに適用するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0040】
100…アノード側セパレータ
10…水素供給部
20…水素導入流路
30…入口バッファ部
30p…突起部
40,42,44,46,48…ガス流路
44e…貯水部
44p…突起部
50…出口バッファ部
50p…突起部
52…隔壁
60…アノードオフガス導出流路
70…アノードオフガス排出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池用セパレータであって、
電解質膜の両面に電極を接合してなる膜電極接合体における前記電極の表面に沿って発電に供する反応ガスが蛇行して流れるように形成されたサーペンタイン型のガス流路と、
前記燃料電池用セパレータの厚さ方向に貫通し、前記電極から排出されたオフガスを前記燃料電池の外部に排出するためのオフガス排出部と、
前記ガス流路の終端に接続され、該ガス流路の終端から排出された前記オフガスが流入するバッファ部であって、前記電極と対向する内壁面に、該内壁面から前記電極の表面側に向かって突起し、前記電極と当接する複数の突起部が形成されたバッファ部と、
前記バッファ部に流入した前記オフガスを前記オフガス排出部に導出するためのオフガス導出流路と、
前記ガス流路から分岐して接続され、該ガス流路を流れる前記反応ガスの一部を分岐して導入し、該導入した前記反応ガスに含まれる水を一時的に貯水する貯水部であって、前記電極と対向する部位において、前記バッファ部の鉛直上方に隣接して設けられ、前記燃料電池用セパレータを前記膜電極接合体に積層したときに、貯水した水が前記電極と接触するように形成された貯水部と、
前記電極と対向する部位において、前記貯水部と前記バッファ部とを隔離する隔壁と、
を備える燃料電池用セパレータ。
【請求項2】
請求項1記載の燃料電池用セパレータであって、
前記ガス流路は、
前記反応ガスを水平方向に沿った第1の方向に流すための第1のガス流路と、
前記第1のガス流路の終端に接続され、前記第1のガス流路から流入した前記反応ガスを鉛直下方に流すための第2のガス流路と、
前記第2のガス流路の終端に接続され、前記第2のガス流路から流入した前記反応ガスを前記第1の方向と対向する第2の方向に流すための第3のガス流路と、
を含み、
前記バッファ部は、前記第3のガス流路の終端に接続されており、
前記貯水部は、前記第1のガス流路から分岐して接続されており、該第1のガス流路を流れる前記反応ガスの一部を分岐して導入する、
燃料電池用セパレータ。
【請求項3】
請求項2記載の燃料電池用セパレータであって、
前記第3のガス流路の終端と、前記バッファ部と、前記オフガス導出流路とは、水平方向に並べて配置されており、
前記オフガス導出流路の上端は、前記第3のガス流路の上端よりも鉛直下方に配置されており、
前記隔壁は、前記第3のガス流路の上端から前記オフガス導出流路の上端に亘って、連続的に傾斜して設けられた傾斜面を有する、
燃料電池用セパレータ。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の燃料電池用セパレータであって、
前記貯水部の前記電極と対向する内壁面に、該内壁面から前記電極の表面側に向かって突起し、前記電極と当接する複数の突起部であって、導電性を有する複数の突起部が形成されている、
燃料電池用セパレータ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−110058(P2013−110058A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−255909(P2011−255909)
【出願日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】