説明

燃料電池用多孔質セパレータ

【課題】 吸水性や水透過性が良好な多孔性を有していながら、高い圧縮強度および優れた圧縮強度保持率を有する燃料電池用多孔質セパレータを提供すること。
【解決手段】 炭素材料粉末と樹脂成分とを含む組成物を成形してなる燃料電池用多孔質セパレータであって、前記樹脂成分が、エポキシ樹脂とその硬化剤とを含み、前記エポキシ樹脂が、150℃におけるICI粘度0.3〜0.9Pa・s、かつ、エポキシ当量175〜195g/eqのフェノールノボラック型エポキシ樹脂であり、前記硬化剤が、水酸基当量103〜106g/eqのノボラック型フェノール樹脂であり、前記炭素材料粉末100質量部に対し、前記樹脂成分が10〜13質量部含まれ、気孔率が16〜25体積%、吸水時間が50秒以下、圧縮強度が50〜80MPaである燃料電池用多孔質セパレータ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池用多孔質セパレータに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池セパレータは、各単位セルに導電性を持たせる役割、並びに単位セルに供給される燃料および空気(酸素)の通路を確保するとともに、それらの分離境界壁としての役割を果たすものである。
このため、セパレータには、高電気導電性、高ガス不浸透性、化学的安定性、耐熱性および親水性などの諸特性が要求される。
特に、内部に水を留めることができる多孔質セパレータは、正負電極の積層方向間での水の移動を可能にするものであるが、その多孔構造のために十分な強度が得られず、さらには経時的にも強度が低下しやすくなり、燃料電池の稼動効率や寿命を減じてしまうという問題がある。
【0003】
この点、特許文献1には、黒鉛、エポキシ樹脂、フェノール樹脂およびイミダゾール触媒を含む成形組成物が開示され、成形体の密度を黒鉛並みに圧縮することで、(ガス不透過性を確保しつつ)低い電気抵抗と高い曲げ応力を達成しているが、その圧縮強度については明らかにされていない。
特許文献2には、樹脂成分を炭素化・黒鉛化した水移動プレートが開示されているが、その圧縮降伏強度は最大で7.59MPa程度と低い。
特許文献3には、炭素繊維で強化した、樹脂組成物からなる多孔質セパレータが開示されているが、その圧壊強度も14.5MPa程度と十分なものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2001−520245号公報
【特許文献2】特表2002−518815号公報
【特許文献3】特表2001−509950号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、吸水性や水透過性が良好な多孔性を有していながら、高い圧縮強度および優れた圧縮強度保持率を有する燃料電池用多孔質セパレータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、特定のICI粘度のノボラック型エポキシ樹脂、および特定の水酸基当量のノボラック型フェノール樹脂を含んで構成される樹脂成分を炭素材料のバインダーとして用いることで、吸水性および水透過性が良好であるとともに、圧縮強度およびその保持率に優れた多孔質セパレータが得られることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、
1. 炭素材料粉末と樹脂成分とを含む組成物を成形してなる燃料電池用多孔質セパレータであって、前記樹脂成分が、エポキシ樹脂とその硬化剤とを含み、前記エポキシ樹脂が、150℃におけるICI粘度0.3〜0.9Pa・s、かつ、エポキシ当量175〜195g/eqのフェノールノボラック型エポキシ樹脂であり、前記硬化剤が、水酸基当量103〜106g/eqのノボラック型フェノール樹脂であり、前記組成物中には、前記炭素材料粉末100質量部に対し、前記樹脂成分が10〜13質量部含まれ、気孔率が16〜25体積%、吸水時間が50秒以下、圧縮強度が50〜80MPaであることを特徴とする燃料電池用多孔質セパレータ、
2. 前記圧縮強度の保持率が、95%以上である1の燃料電池用多孔質セパレータ、
3. 前記炭素材料粉末が、平均粒径(d=50)が20〜80μm、かつ、粒径1μm以下の粒子を1質量%以下、粒径300μm以上の粒子を1質量%以下の範囲で含む人造黒鉛粉末である1または2の燃料電池用多孔質セパレータ、
4. 前記樹脂成分が、硬化促進剤として分子量140〜180のイミダゾール化合物を含む1〜3のいずれかの燃料電池用多孔質セパレータ、
5. 前記イミダゾール化合物が、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル4−メチルイミダゾール、および1−ベンジル2−メチルイミダゾールから選ばれる1種または2種以上である4の燃料電池用多孔質セパレータ
を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の燃料電池用多孔質セパレータは、吸水性および水透過性が良好であるとともに、圧縮強度およびその保持率が良好であり、さらにはガスリーク圧が高いという特徴を有する。
また、多孔質構造であるにもかかわらず、セパレータとして実用上問題ない曲げ強度を有する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明についてさらに詳しく説明する。
本発明に係る燃料電池用多孔質セパレータ(以下、単に多孔質セパレータという)は、炭素材料粉末と樹脂成分とを含む組成物を成形してなり、樹脂成分が、エポキシ樹脂とその硬化剤とを含み、このエポキシ樹脂が、150℃におけるICI粘度0.3〜0.9Pa・s、かつ、エポキシ当量175〜195g/eqのフェノールノボラック型エポキシ樹脂であり、一方、エポキシ樹脂の硬化剤が、水酸基当量103〜106g/eqのノボラック型フェノール樹脂であり、上記組成物中には、炭素材料粉末100質量部に対し、樹脂成分が10〜13質量部含まれ、気孔率が16〜25体積%、吸水時間が50秒以下、圧縮強度が50〜80MPaであることを特徴とする。
【0010】
本発明において、フェノールノボラック型エポキシ樹脂のエポキシ当量は、175〜195g/eqである。この範囲のエポキシ当量のエポキシ樹脂を用いることで、樹脂の分子量が適度であるとともに、硬化物の架橋密度が高まる結果、得られる多孔質セパレータの耐熱水性をより一層向上し得る。
特に、得られる多孔質セパレータの耐熱水性をより高めることを考慮すると、エポキシ当量は、180〜190g/eqがより好ましい。
【0011】
また、フェノールノボラック型エポキシ樹脂の150℃におけるICI粘度は、0.3〜0.9Pa・sである。この範囲のICI粘度のエポキシ樹脂を用いることで、樹脂の分子量が適度となるため、得られる多孔質セパレータの耐熱性が良好になるとともに、樹脂の流動性が良好であるため成形時の圧力が低くできる等、成形加工性が良好になり、気孔分布が均一な多孔質セパレータを得ることができる。
特に、得られる多孔質セパレータの耐熱性および成形加工性をより向上させることを考慮すると、ICI粘度は0.4〜0.6Pa・sがより好ましい。
【0012】
本発明において、上記エポキシ樹脂の硬化剤として作用するフェノール樹脂としては、水酸基当量103〜106g/eqのノボラック型フェノール樹脂を用いる。この範囲の水酸基当量のノボラック型フェノール樹脂を用いることで、樹脂の分子量が適度であるとともに、硬化物の架橋密度が高まる結果、得られる多孔質セパレータの耐熱性をより一層向上し得る。
得られるセパレータの耐熱性をより高めることを考慮すると、水酸基当量103〜105g/eqのノボラック型フェノール樹脂がより好ましい。
【0013】
上記フェノール樹脂の配合量は、未反応成分の残存を防ぐという点から、フェノールノボラック型エポキシ樹脂に対して0.98〜1.02当量が好ましい。フェノール樹脂の配合量をこの範囲とすることで、残存する未反応成分(エポキシ樹脂またはフェノール樹脂)が少なくなって、発電中に未反応成分が溶出するという不都合を防止できる。
【0014】
本発明の樹脂成分には硬化促進剤を配合することが好ましい。硬化促進剤としては、エポキシ樹脂と硬化剤との反応を促進するものであれば特に制限されず、トリフェニルホスフィン(TPP)、テトラフェニルホスフィン等のホスフィン系化合物、ジアザビシクロウンデセン(DBU)、ジメチルベンジルアミン(BDMA)等のアミン系化合物、1−フェニルイミダゾール、1−(2−クロロフェニル)イミダゾール、1−(3−クロロフェニル)イミダゾール、1−(4−クロロフェニル)イミダゾール、1−(3−フルオロフェニル)イミダゾール、1−(4−フルオロフェニル)イミダゾール、1−(4−メトキシフェニル)イミダゾール、1−o−トリルイミダゾール、1−m−トリルイミダゾール、1−(3,5−ジメチルフェニル)イミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−(4−クロロフェニル)イミダゾール、2−(4−フルオロフェニル)イミダゾール、5−フェニルイミダゾール、5−(2−クロロフェニル)イミダゾール、5−(3−クロロフェニル)イミダゾール、5−(4−クロロフェニル)イミダゾール、5−(2−フルオロフェニル)イミダゾール、5−(3−フルオロフェニル)イミダゾール、5−(4−フルオロフェニル)イミダゾール、5−(2−メトキシフェニル)イミダゾール、5−(3−メトキシフェニル)イミダゾール、5−(4−メトキシフェニル)イミダゾール、5−o−トリルイミダゾール、5−m−トリルイミダゾール、5−p−トリルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール等のイミダゾール化合物などが挙げられ、これらは単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0015】
これらの中でも、バインダー成分樹脂の熱安定性を高め、セパレータ成形時に金型内で急激に硬化反応が進行して溶融粘度および成形圧力が上昇することを防止すること、および硬化促進剤としての活性を適度とすることを考慮すると、イミダゾール化合物が好ましく、特に、芳香環含有イミダゾールが好ましく、さらには、その分子量が140〜180のものが好適であり、具体的には、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル4−メチルイミダゾール、1−ベンジル2−メチルイミダゾールが好適である。
【0016】
硬化促進剤の配合量は、効率的、かつ、穏やかに硬化反応を進行させることを考慮すると、上記フェノールノボラック型エポキシ樹脂およびノボラック型フェノール樹脂との混合物100質量部に対し、0.65〜1.02質量部が好ましい。硬化促進剤の配合量をこの範囲とすることで、バインダー成分の硬化反応を、速やかに、かつ、十分に進行させることができるとともに、バインダー成分樹脂の熱安定性が良好になる結果、成形時に、金型内で急激に硬化反応が進行して溶融粘度が上昇することを防止できる。また、保存中に硬化反応が進行してしまうことをも防止できる。
【0017】
本発明で用いられる炭素材料粉末としては、例えば、天然黒鉛、針状コークスを焼成した人造黒鉛、塊状コークスを焼成した人造黒鉛、電極を粉砕したもの、石炭系ピッチ、石油系ピッチ、コークス、活性炭、ガラス状カーボン、アセチレンブラック、ケッチェンブラックなどが挙げられる。これらはそれぞれ単独で、または2種以上組み合わせて用いることができる。これらの中でも、針状コークスを焼成した人造黒鉛、塊状コークスを焼成した人造黒鉛などの黒鉛粉末が好ましい。
【0018】
上記人造黒鉛粉末の平均粒径(d=50)は、特に限定されるものではないが、得られる多孔質セパレータの水透過性および強度のバランスを考慮すると、20〜80μmが好ましく、30〜60μmがより好ましく、40〜50μmがより一層好ましい。
特に、多孔質セパレータの強度を十分に発揮させるためには、粒径1μm以下の黒鉛粒子が1質量%以下、粒径300μm以上の黒鉛粒子が1質量%以下の人造黒鉛材料がより好ましく、粒径3μm以下が1質量%以下、250μm以上が1質量%以下の人造黒鉛材料が最適である。
なお、平均粒径(d=50)は、粒度分布測定装置(日機装(株)製)による測定値である。
【0019】
本発明において、炭素材料粉末および樹脂成分(エポキシ樹脂、フェノール樹脂および硬化促進剤の総量)の使用量としては、炭素材料粉末100質量部に対し、樹脂成分10〜13質量部が好ましい。
バインダー成分樹脂の使用量が10質量部未満であると、気孔率が25体積%超となるため、水の透過性は高くなるが、強度が低くなる虞があり、13質量部を超えると、気孔率が16体積%未満となるため、水透過性が低くなる虞がある。
【0020】
なお、本発明の組成物中には、金型離型性を向上させる目的で内部離型剤を配合してもよい。内部離型剤としては、例えば、ステアリン酸系ワックス、アマイド系ワックス、モンタン酸系ワックス、カルナバワックス、ポリエチレンワックス等が挙げられ、これらはそれぞれ単独で、または2種以上組み合わせて用いることができる。
また、組成物中における内部離型剤の含有量としては、特に限定されるものではないが、炭素材料粉末100質量部に対して0.1〜1.5質量部、特に0.3〜1.0質量部であることが好ましい。
【0021】
本発明の多孔質セパレータは、上記組成物を所望のセパレータの形状に成形してなるものである。組成物の調製方法およびセパレータの成形方法は、特に限定されるものではなく、従来公知の種々の方法を用いることができる。
組成物の調製は、例えば、上記エポキシ樹脂を主剤とする樹脂成分の原材料と黒鉛粉末を、それぞれを任意の順序で所定割合混合して行えばよい。混合に用いられる混合機としては、例えば、プラネタリーミキサ、リボンブレンダ、レディゲミキサ、ヘンシェルミキサ、ロッキングミキサ、ナウターミキサ等が挙げられる。
セパレータの成形方法としても特に限定されるものではなく、射出成形、トランスファ成形、圧縮成形、押出成形等を採用することができる。これらの中でも、精度および機械的強度に優れているセパレータを得るためには、圧縮成形を採用することが好ましい。
圧縮成形の条件は、金型温度が150〜180℃、成形圧力が1.0MPa以上20MPa未満、好ましくは2.0〜10MPa、成形時間20秒〜5分である。
金型温度は、樹脂成分が十分に熱硬化する温度であればよい。
成形圧力は、1.0MPa以上であれば、成形体が多孔質構造の形状を維持できる強度を得られ、20MPa未満であれば、黒鉛粉末が必要以上に変形圧縮されて気孔が塞がったり、気孔の制御が困難になったりすることはない。
【0022】
また、上記成形して得られた多孔質セパレータは、その表面に、プラズマ処理、コロナ放電、フレーム処理、UV処理等の既存の親水化処理を施すことで、水の吸水時間が短くなる等、多孔質セパレータの性能を一層良好にすることができる。
さらには、セパレータにレーザ照射して表面処理を行い、セパレータ表層の樹脂成分を除去して、セパレータの表面抵抗を下げることも可能である。
【0023】
以上のようにして得られた多孔質セパレータは、気孔率が16〜25体積%、吸水時間が50秒以下、圧縮強度が50〜80MPa、曲げ強度が21〜35MPaという特性を有するものである。
気孔率は18〜20体積%が好ましく、吸水時間は低ければ低いほど好ましく、30秒以下が好適であり、圧縮強度は60〜80MPaが好ましく、曲げ強度は25〜30MPaが好ましい。
本発明の多孔質セパレータは、圧縮強度の保持率が高く、95%以上を示す。
また、本発明の多孔質セパレータは、その気孔内に水を保持し、保持された水がセパレータ中を移動できる程度の多孔質構造を有する。
具体的には、ガスリーク圧(泡圧力)が50〜80kPa程度を示し、水透過性が450×10-17〜750×10-172程度を示す。
【実施例】
【0024】
以下、実施例および比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
以下の実施例における各物性は以下の方法によって測定した。
[1]ICI粘度
コーン/プレートタイプのICI粘度計を用いて150℃における溶融粘度を測定した。ICI粘度計の測定コーンを試料粘度に応じて選択し、樹脂試料をセットし、90秒後にコーンを回転させ、コーン回転開始から30秒後に、粘度計の指示値を読み取った。
[2]気孔率
セパレータから切り出した試験片を用いて、水銀圧入法により測定した。
[3]吸水時間
相対湿度80%、温度25℃に設定した恒温槽中で、ガス流路部表面に0.0025gのイオン交換水を垂らし、セパレータ表面に水が吸い込まれるまでの時間を測定した。
[4]圧縮強度
セパレータから切り出した試験片について、セパレータのスタック積層方向の圧縮強度を、JIS R7212に準じて測定評価した。
[5]圧縮強度保持率(125℃熱水浸漬による強度測定)
500mlSUS製耐圧容器に、セパレータから切り出した試験片とイオン交換水400mlを入れ、密封後、内温を125℃に加熱した。3000時間後、試験片を取り出して曲げ強度を測定し、初期曲げ強度に対する維持率を算出した。
なお、上記試験条件における125℃・3000時間は、アレニウスの10℃2倍則に従えば、運転温度75℃での11年の燃料電池運転時間に相当する。
[6]曲げ強度
成形直後のセパレータから切り出した上記試験片を用い、JIS K 6911「プラスチックの一般試験方法」に準じて、支点間距離40mmでの試験片の曲げ強度を測定し、初期曲げ強度とした。
【0025】
[実施例1]
針状コークスを焼成した人造黒鉛(平均粒径:粒度分布d=50にて30μm、粒径1μm以下の粒子:0.2質量%、粒径300μm以上の粒子:0.2質量%)100質量部に、フェノールノボラック型エポキシ樹脂(150℃におけるICI粘度:0.3Pa・s、エポキシ当量:177g/eq)7.48質量部とノボラック型フェノール樹脂(水酸基当量:104g/eq)4.44質量部と2−フェニルイミダゾール0.077質量部とからなる樹脂成分を、ヘンシェルミキサ内に投入し、500rpmで3分間混合して、燃料電池セパレータ用組成物を調製した。
得られた組成物を燃料電池セパレータ作製用の金型内に投入し、金型温度185℃、成形圧力5.2MPa、成形時間30秒の条件で圧縮成形し、200mm×200mm×2mmの燃料電池セパレータを得た。
【0026】
[実施例2]
実施例1において、フェノールノボラック型エポキシ樹脂をフェノールノボラック型エポキシ樹脂(150℃におけるICI粘度:0.5Pa・s、エポキシ当量:190g/eq)7.68質量部に、ノボラック型フェノール樹脂をノボラック型フェノール樹脂(水酸基当量:104g/eq)4.24質量部に変えた以外は、実施例1と同様にして組成物を調製、圧縮成形し、燃料電池セパレータを得た。
【0027】
[実施例3]
実施例1において、フェノールノボラック型エポキシ樹脂をフェノールノボラック型エポキシ樹脂(150℃におけるICI粘度:0.9Pa・s、エポキシ当量:195g/eq)7.75質量部に、ノボラック型フェノール樹脂をノボラック型フェノール樹脂(水酸基当量:104g/eq)4.14質量部に変えた以外は、実施例1と同様にして組成物を調製、圧縮成形し、燃料電池セパレータを得た。
【0028】
[実施例4]
実施例1において、フェノールノボラック型エポキシ樹脂をフェノールノボラック型エポキシ樹脂(150℃におけるICI粘度:0.5Pa・s、エポキシ当量:190g/eq)6.40質量部に、ノボラック型フェノール樹脂をノボラック型フェノール樹脂(水酸基当量:104g/eq)3.54質量部に、2−フェニルイミダゾールの配合量を0.065質量部に変えた以外は、実施例1と同様にして組成物を調製、圧縮成形し、燃料電池セパレータを得た。
【0029】
[実施例5]
実施例1において、フェノールノボラック型エポキシ樹脂をフェノールノボラック型エポキシ樹脂(150℃におけるICI粘度:0.5Pa・s、エポキシ当量:190g/eq)8.32質量部に、ノボラック型フェノール樹脂をノボラック型フェノール樹脂(水酸基当量:104g/eq)4.60質量部に、2−フェニルイミダゾールの配合量を0.084質量部に変えた以外は、実施例1と同様にして組成物を調製、圧縮成形し、燃料電池セパレータを得た。
【0030】
[比較例1]
実施例1において、フェノールノボラック型エポキシ樹脂をフェノールノボラック型エポキシ樹脂(150℃におけるICI粘度:0.5Pa・s、エポキシ当量:190g/eq)5.76質量部に、ノボラック型フェノール樹脂をノボラック型フェノール樹脂(水酸基当量:104g/eq)3.18質量部に、2−フェニルイミダゾールの配合量を0.058質量部に変えた以外は、実施例1と同様にして組成物を調製、圧縮成形し、燃料電池セパレータを得た。
【0031】
[比較例2]
実施例1において、フェノールノボラック型エポキシ樹脂をフェノールノボラック型エポキシ樹脂(150℃におけるICI粘度:0.5Pa・s、エポキシ当量:190g/eq)8.96質量部に、ノボラック型フェノール樹脂をノボラック型フェノール樹脂(水酸基当量:104g/eq)4.95質量部に、2−フェニルイミダゾールの配合量を0.090質量部に変えた以外は、実施例1と同様にして組成物を調製、圧縮成形し、燃料電池セパレータを得た。
【0032】
[比較例3]
実施例1において、フェノールノボラック型エポキシ樹脂をオルソクレゾール型エポキシ樹脂(150℃におけるICI粘度:0.3Pa・s、エポキシ当量:199g/eq)6.50質量部に、ノボラック型フェノール樹脂をノボラック型フェノール樹脂(水酸基当量:104g/eq)3.43質量部に、2−フェニルイミダゾールの配合量を0.065質量部に変えた以外は、実施例1と同様にして組成物を調製、圧縮成形し、燃料電池セパレータを得た。
【0033】
[比較例4]
実施例1において、フェノールノボラック型エポキシ樹脂をオルソクレゾール型エポキシ樹脂(150℃におけるICI粘度:0.3Pa・s、エポキシ当量:199g/eq)8.45質量部に、ノボラック型フェノール樹脂をノボラック型フェノール樹脂(水酸基当量:104g/eq)4.46質量部に、2−フェニルイミダゾールの配合量を0.084質量部に変えた以外は、実施例1と同様にして組成物を調製、圧縮成形し、燃料電池セパレータを得た。
【0034】
[比較例5]
実施例1において、フェノールノボラック型エポキシ樹脂をトリスフェノールメタン型エポキシ樹脂(150℃におけるICI粘度:0.3Pa・s、エポキシ当量:158g/eq)5.99質量部に、ノボラック型フェノール樹脂をノボラック型フェノール樹脂(水酸基当量:104g/eq)3.98質量部に、2−フェニルイミダゾールの配合量を0.065質量部に変えた以外は、実施例1と同様にして組成物を調製、圧縮成形し、燃料電池セパレータを得た。
【0035】
[比較例6]
実施例1において、フェノールノボラック型エポキシ樹脂をジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(150℃におけるICI粘度:0.2Pa・s、エポキシ当量:255g/eq)8.47質量部に、ノボラック型フェノール樹脂をノボラック型フェノール樹脂(水酸基当量:104g/eq)3.45質量部に、2−フェニルイミダゾールの配合量を0.077質量部に変えた以外は、実施例1と同様にして組成物を調製、圧縮成形し、燃料電池セパレータを得た。
【0036】
上記実施例1〜5および比較例1〜6で得られたセパレータについて、各種特性を測定・評価した。結果を表1に示す。
【0037】
【表1】


ガスリーク圧(泡圧力):水で満たされた板を通して気体を押しやることができる圧力。
水透過性: セパレータを通して移動する、単位時間当たりの水量。
【0038】
表1に示されるように、実施例1〜5で得られた多孔質セパレータは吸水時間が短く、水透過性が良好な多孔質構造を有しているにもかかわらず、圧縮強度および曲げ強度が良好であり、また圧縮強度の保持率も高いことがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素材料粉末と樹脂成分とを含む組成物を成形してなる燃料電池用多孔質セパレータであって、
前記樹脂成分が、エポキシ樹脂とその硬化剤とを含み、
前記エポキシ樹脂が、150℃におけるICI粘度0.3〜0.9Pa・s、かつ、エポキシ当量175〜195g/eqのフェノールノボラック型エポキシ樹脂であり、
前記硬化剤が、水酸基当量103〜106g/eqのノボラック型フェノール樹脂であり、
前記組成物には、前記炭素材料粉末100質量部に対し、前記樹脂成分が10〜13質量部含まれ、
気孔率が16〜25体積%、吸水時間が50秒以下、圧縮強度が50〜80MPaであることを特徴とする燃料電池用多孔質セパレータ。
【請求項2】
前記圧縮強度の保持率が、95%以上である請求項1記載の燃料電池用多孔質セパレータ。
【請求項3】
前記炭素材料粉末が、平均粒径(d=50)が20〜80μm、かつ、粒径1μm以下の粒子を1質量%以下、粒径300μm以上の粒子を1質量%以下の範囲で含む人造黒鉛粉末である請求項1または2記載の燃料電池用多孔質セパレータ。
【請求項4】
前記樹脂成分が、硬化促進剤として分子量140〜180のイミダゾール化合物を含む請求項1〜3のいずれか1項記載の燃料電池用多孔質セパレータ。
【請求項5】
前記イミダゾール化合物が、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル4−メチルイミダゾール、および1−ベンジル2−メチルイミダゾールから選ばれる1種または2種以上である請求項4記載の燃料電池用多孔質セパレータ。

【公開番号】特開2013−69605(P2013−69605A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−208505(P2011−208505)
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(309012122)日清紡ケミカル株式会社 (2)
【Fターム(参考)】