説明

燃料電池用燃料、燃料電池およびそれを用いた発電方法

燃料極と、空気極と、これらの間に介在する電解質層または中空層とを含んでなる単セルまたはそれを積層したスタックよりなる燃料電池であって、電解液を振動攪拌下で電気分解し捕集することにより得られた水素系−酸素系混合ガスを供給するための供給口を燃料極側に設け、かつ水素系−酸素系混合ガスを供給される側の燃料極をガス透過性とした燃料電池。水素系−酸素系混合ガスは、Hと、Hと、Hおよび/またはHDと、OHと、16Oと、Oとを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、振動撹拌下で電解液を電気分解することにより得られる新規な水素系−酸素系混合ガス及び水素系ガス、それらよりなる燃料電池用燃料、それを用いた発電方法および燃料電池に関する。
【背景技術】
従来、燃料電池による発電は、水素を燃料極(通常はマイナス極である)に供給し、一方酸素または空気を空気極(通常はプラス極である)に供給することにより行なわれている。その理由は、燃料極には水素のみを供給しなければ
2H→4H+4e
の反応は進まず、また空気極に酸素または空気のような酸素含有ガスを供給しなければ、
+4H+4e→2H
の反応は起きないと考えられていたからである。
この技術に関連して、特開2002−348694号公報には、ブラウンガスを燃料電池の燃料として用いることが記載されている。しかし、この場合は、水素と酸素とを分離するための分離器が必要であり、燃料ガスの原価を押上げる大きな要因になっていた。前記のような反応を考えると、水素と酸素との分離が不可避であると思うのは、当然のことでもあった。
さらに今までの燃料電池においては、燃料電池内に電解質層を設けることが不可欠であり、燃料電池のタイプにより電解質層を形成する電解質の種類が決まっていた。例えば、アルカリ水溶液型燃料電池における電解質は水酸化カリウム、酸水溶液型燃料電池における電解質はりん酸、溶融炭酸塩型燃料電池における電解質は炭酸リチウムまたは炭酸カリウム、固体酸化物燃料電池における電解質は安定化ジルコニア、固体高分子型燃料電池における電解質はイオン交換膜というように、電解質層の使用は不可欠であり、これらの電解質層の存在が燃料電池の小型化や低価格化の足かせになっていたのが実情である。
【発明の開示】
本発明の第一の目的は、燃料電池用燃料として利用可能な、新規な水素系−酸素系混合ガスまたは水素系ガスを提供する点にある。
本発明の第二の目的は、新規な水素系−酸素系混合ガスまたは水素系ガスよりなる燃料電池用燃料を提供する点にある。
本発明の第三の目的は、電解質層を有さない新規な燃料電池を提供する点にある。
本発明の第四の目的は、新規な水素系−酸素系混合ガスまたは水素系ガスを燃料として用いる発電方法及び燃料電池を提供する点にある。
即ち、本発明によれば、以上の如き目的を達成するものとして、Hと、Hと、Hおよび/またはHDと、OHと、16Oと、Oとを含むことを特徴とする水素系−酸素系混合ガスが提供される。本発明の一態様においては、前記水素系−酸素系混合ガスは
:55〜70モル%
H:0.12〜0.45モル%
およびHDの合計:0.03〜0.14モル%
OH:0.3〜1.2モル%
16O:1.0〜4.2モル%
:5〜27モル%
を含むものである。本発明の一態様においては、前記水素系−酸素系混合ガスが、
(A)電解液を収容するための電解槽、
(B)該電解槽内に収容される電解液と接するように配置される陽極部材および陰極部材よりなる電極対と、前記陽極部材および陰極部材の間に電圧を印加する電源とを含んでなる電気分解手段、
(C)前記電解槽に収容される電解液を振動撹拌するための振動撹拌手段、及び
(D)前記電解槽内に収容される電解液の前記電気分解手段による電気分解で形成される水素系ガスおよび酸素系ガスを捕集するためのガス捕集手段、
を有する水素系−酸素系混合ガス発生手段、を用いて得られたものである。
また、本発明によれば、以上の如き目的を達成するものとして、上記水素系−酸素系混合ガスよりなる燃料電池用燃料が提供される。
更に、本発明によれば、以上の如き目的を達成するものとして、Hと、Hと、Hおよび/またはHDと、OHとを含むことを特徴とする水素系ガスが提供される。本発明の一態様においては、前記水素系ガスが、
(A)電解液を収容するための電解槽、
(B)該電解槽内に収容される電解液と接するように配置される陽極部材および陰極部材よりなる電極対と、前記陽極部材および陰極部材の間に電圧を印加する電源とを含んでなる電気分解手段、
(C)前記電解槽に収容される電解液を振動撹拌するための振動撹拌手段、及び
(D)前記電解槽内に収容される電解液の前記電気分解手段による電気分解で形成される水素系ガスを捕集するためのガス捕集手段、
を有する水素系ガス発生手段、を用いて得られたものである。
また、本発明によれば、以上の如き目的を達成するものとして、上記水素系ガスよりなる燃料電池用燃料が提供される。
更に、本発明によれば、以上の如き目的を達成するものとして、燃料極と、空気極と、これらの間に介在する中空層とを含んでなる単セルまたはそれを積層したスタックよりなることを特徴とする燃料電池が提供される。
更に、本発明によれば、以上の如き目的を達成するものとして、燃料極と、空気極と、これらの間に介在する電解質層または中空層とを含んでなる単セルまたはそれを積層したスタックよりなる燃料電池であって、
(A)電解液を収容するための電解槽、
(B)該電解槽内に収容される電解液と接するように配置される陽極部材および陰極部材よりなる電極対と、前記陽極部材および陰極部材の間に電圧を印加する電源とを含んでなる電気分解手段、
(C)前記電解槽に収容される電解液を振動撹拌するための振動撹拌手段、及び
(D)前記電解槽内に収容される電解液の前記電気分解手段による電気分解で形成される水素系ガスを捕集するためのガス捕集手段、
を有する水素系ガス発生手段、を用いて得られた水素系ガスを供給するための供給口を燃料極側に設け、かつ前記水素系ガスを供給される側の燃料極をガス透過性としたことを特徴とする燃料電池が提供される。
更に、本発明によれば、以上の如き目的を達成するものとして、燃料極と、空気極と、これらの間に介在する電解質層または中空層とを含んでなる単セルまたはそれを積層したスタックよりなる燃料電池であって、
(A)電解液を収容するための電解槽、
(B)該電解槽内に収容される電解液と接するように配置される陽極部材および陰極部材よりなる電極対と、前記陽極部材および陰極部材の間に電圧を印加する電源とを含んでなる電気分解手段、
(C)前記電解槽に収容される電解液を振動撹拌するための振動撹拌手段、及び
(D)前記電解槽内に収容される電解液の前記電気分解手段による電気分解で形成される水素系ガスおよび酸素系ガスを捕集するためのガス捕集手段、
を有する水素系−酸素系混合ガス発生手段、を用いて得られた水素系−酸素系混合ガスを供給するための供給口を燃料極側または燃料極側と空気極側との両方に設け、かつ前記水素系−酸素系混合ガスを供給される側の極をガス透過性としたことを特徴とする燃料電池が提供される。
本発明の一態様においては、前記振動撹拌手段が、少なくとも1つの振動発生手段と、該振動発生手段に連結された少なくとも1つの振動棒および該振動棒に取付けられた少なくとも1つの振動羽根からなる振動撹拌部材とを含むものである。
更に、本発明によれば、以上の如き目的を達成するものとして、インバータにより振動モータを10〜500Hzで振動させ、この振動を振動応力分散手段を介して振動棒に伝達し、該振動棒に一段または多段に固定された振動羽根を振幅0.01〜30.0mm及び振動数500〜30000回/分で振動させることにより、電解液を振動撹拌しながら電気分解して得られた水素系ガスを燃料電池に供給することを特徴とする燃料電池を用いた発電方法が提供される。
更に、本発明によれば、以上の如き目的を達成するものとして、インバータにより振動モータを10〜500Hzで振動させ、この振動を振動応力分散手段を介して振動棒に伝達し、該振動棒に一段または多段に固定された振動羽根を振幅0.01〜30.0mm及び振動数500〜30000回/分で振動させることにより、電解液を振動撹拌しながら電気分解して得られた水素系−酸素系混合ガスを燃料電池に供給することを特徴とする燃料電池を用いた発電方法が提供される。
更に、本発明によれば、以上の如き目的を達成するものとして、インバータにより振動モータを10〜500Hzで振動させ、この振動を振動応力分散手段を介して振動棒に伝達し、該振動棒に一段または多段に固定された振動羽根を振幅0.01〜30.0mm及び振動数500〜30000回/分で振動させることにより、電解液を振動撹拌しながら電気分解して得られた水素系−酸素系混合ガスを、燃料極と、空気極と、これらの間に介在する中空層とを含んでなる単セルまたはそれを積層したスタックよりなる燃料電池のガス透過性燃料極側またはガス透過性燃料極側とガス透過性空気極側との両方に、燃料として供給して発電することを特徴とする燃料電池を用いた発電方法が提供される。
以上のような本発明によれば、以下の効果が得られる。
(1)本発明の水素系−酸素系混合ガスまたは水素系ガスは、燃料電池用燃料として使用すると、従来の水素ガスを用いた場合に較べて驚くほど高いエネルギー効率(2〜3.5倍の電力を発生できる)を示す。これは、その成分中にOHを含有していること、さらにはH、Hおよび/またはHDを含有していることによるものと推定される。
(2)本発明の水素系−酸素系混合ガスまたは水素系ガスは、通常のブラウンガスに比べて極めて安全であり、貯蔵しておくことが事実上可能であり、ガス組成も驚くべきことに少なくとも1〜2ヶ月間は変化がなく、その結果、ガス製造直後と同一の発電能力を保つ。
(3)通常のブラウンガスは危険性が高いので、圧縮することはできないが、本発明の水素系−酸素系混合ガスまたは水素系ガスは100〜300kg/cm程度まで圧縮しても安全であり、この状態で貯蔵可能である。
(4)本発明の水素系−酸素系混合ガスまたは水素系ガスは、従来から用いられている燃料電池の燃料としてそのまま使用しても従来の水素ガスを用いたときの2〜3.5倍の電力が得られる。
(5)本発明の水素系−酸素系混合ガスまたは水素系ガスを用いる場合には、従来の燃料電池では必要条件とされている電解質層を設けなくともよく、その代わりに燃料極と空気極とがショートしないような中空層を存在させるだけでよいので、電解質が不要の分だけコスト削減につながる。
(6)本発明の電解質層が不要な燃料電池は、構造が簡素化され、製造コスト、修理コストが低減するとともに、故障の確率も低減する。
(7)従来の水素ガスを用いた燃料電池では、供給ガスを80℃程度に加温して水素と酸素の反応を促進してやる必要があり、また結露を防ぐためにも80℃に保温しておく必要があった。しかし、本発明の水素系ガスや、水素系−酸素系混合ガスを用いる場合には、加温の必要は全くない。
【図面の簡単な説明】
図1は、本発明による水素系−酸素系混合ガス発生手段の1例を示す断面図である。
図2、図1の水素系−酸素系混合ガス発生手段の平面図である。
図3は、図1のガス発生手段の側面図である。
図4は、本発明による水素系−酸素系混合ガス発生手段の他の1例を示す断面図である。
図5は、図4のガス発生手段の平面図である。
図6は、図4のガス発生手段の断面図である。
図7は、図1または図4のガス発生手段の部分拡大断面図である。
図8Aは、電極群の構成を示す斜視図である。
図8Bは、電極群の構成を示す正面図である。
図9Aは、電極群を構成する絶縁体枠を示す正面図である。
図9Bは、電極群を構成する電極を示す正面図である。
図10は、図4のガス発生手段の部分拡大平面図である。
図11は、図1または図4のガス発生手段の振動部材への振動棒の取り付け部の拡大断面図である。
図12は、振動部材への振動棒の取り付け部の変形例を示す拡大断面図である。
図13は、図1または図4のガス発生手段の振動棒への振動羽根の取り付け部の拡大断面図である。
図14は、振動羽根の長さとしなりの程度との関係を示すグラフである。
図15は、振動撹拌手段の変形例を示す断面図である。
図16は、振動撹拌手段の変形例を示す断面図である。
図17は、振動撹拌手段の変形例を示す断面図である。
図18は、振動撹拌手段の変形例を示す断面図である。
図19は、振動撹拌手段の変形例を示す断面図である。
図20は、本発明による水素系−酸素系混合ガス発生手段を構成する振動撹拌手段の電解槽への取り付けの形態を示す断面図である。
図21は、図20に示される振動撹拌手段の断面図である。
図22は、図20に示される振動撹拌手段の平面図である。
図23A〜図23Cは、積層体の平面図である。
図24A及び図24Bは、積層体による電解槽の閉塞の様子を示す断面図である。
図25A〜図25Eは、積層体の断面図である。
図26は、振動撹拌手段の変形例を示す断面図である。
図27は、本発明による水素系−酸素系混合ガス発生手段の1例を示す断面図である。
図28は、図27のガス発生手段の断面図である。
図29は、図27のガス発生手段の平面図である。
図30は、振動棒の電気的絶縁領域の近傍を示す部分拡大断面図である。
図31は、振動棒の電気的絶縁領域の斜視図である。
図32は、振動棒の電気的絶縁領域の平面図である。
図33は、絶縁式振動撹拌手段の側面図である。
図34は、絶縁式振動撹拌手段の断面図である。
図35は、絶縁式振動撹拌手段の断面図である。
図36は、振動羽根の近傍を示す断面図である。
図37は、電極用補助羽根を示す図である。
図38は、絶縁式振動撹拌手段の断面図である。
図39は、絶縁式振動撹拌手段の断面図である。
図40は、本発明による水素系−酸素系混合ガス発生手段の1例を示す断面図である。
図41は、図40のガス発生手段の断面図である。
図42は、図40のガス発生手段の平面図である。
図43は、本発明による水素系−酸素系混合ガス発生手段の1例を示す部分断面図である。
図44は、図43のガス発生手段の断面図である。
図45は、絶縁式振動撹拌手段の1例を示す模式図である。
図46は、絶縁式振動撹拌手段の1例を示す模式図である。
図47は、絶縁式振動撹拌手段の1例を示す模式図である。
図48は、絶縁式振動撹拌手段の1例を示す部分断面図である。
図49は、図48の振動撹拌手段の部分側面図である。
図50は、絶縁式振動撹拌手段の1例を示す部分側面図である。
図51は、本発明による水素系−酸素系混合ガス発生手段の1例を示す断面図である。
図52は、本発明による水素系−酸素系混合ガス発生手段の1例を示す断面図である。
図53は、図52のガス発生手段の断面図である。
図54は、本発明による水素系−酸素系混合ガス発生手段の1例を示す断面図である。
図55は、図54のガス発生手段の断面図である。
図56は、電極部材を構成する円柱状チタン網ケースの斜視図である。
図57は、電極部材の正面図である。
図58A〜図58Eは、振動発生手段と振動撹拌部材との接続形態を示す模式図である。
図59は、本発明による水素系−酸素系混合ガス発生手段のガス捕集手段の一部を示す図である。
図60は、本発明の水素系−酸素系混合ガス発生手段から燃料電池の燃料極へ水素系−酸素系混合ガスを送る場合の安全装置の1例を示す図である。
図61は、蓋部材の変形例を示す斜視図である。
図62は、本発明による発電方法の実施される燃料電池の模式図である。
図63は、水素−酸素混合ガス(生ガス)の質量分析で得られたデータの一部を示す図である。
図64は、水素−酸素混合ガス(処理ガス)の質量分析で得られたデータの一部を示す図である。
図65は、本発明の水素系−酸素系混合ガス発生手段の他の1例を示す断面図である。
図66は、図65のガス発生手段の断面図である。
図67は、図65のガス発生手段の部分拡大図である。
図68は、振動棒部分のシール(気密化)手段の1例を示す断面図である。
図69は、小型固体高分子型燃料電池の構成を示す図である。
図70は、図69の構成を組み立てた燃料電池の外観を示す図である。
図71は、本発明の水素系−酸素系混合ガスの燃焼により得られた火焔スペクトル図である。
図72は、本発明の水素系−酸素系混合ガスを用いるときの安全装置の1例を示す図である。
図73は、固体高分子電解質型燃料電池の1例を示す構成図である。
図74は、燃料電池の構造をモデル的に示す図である。
図75は、メタノール型燃料電池の概略図である。
図76は、単室型固体酸化物型燃料電池の概略図である。
図77は、図76の燃料電池の部分拡大斜視図である。
【発明を実施するための最良の形態】
以下、図面を参照しながら本発明の具体的な実施の形態を説明する。尚、図面において、同様な機能を有する部材又は部分には同一の符号が付されている。
図1〜図3は本発明による水素系−酸素系混合ガスの製造に使用される水素系−酸素系混合ガス発生手段の一具体例の構成を示す図である。ここで、図1は断面図であり、図2は平面図であり、図3は側面図である。また、図4〜図6は本発明による水素系−酸素系混合ガスの製造に使用される水素系−酸素系混合ガス発生手段の他の具体例の構成を示す図である。ここで、図1は断面図であり、図2は平面図であり、図3は断面図である。図4〜図6の具体例は図1〜図3の具体例と本質的には同様な機能を有しており、以下の説明は、主として図1〜図3を参照しているが、図4〜図6についても同様にあてはまるものである。
これらの図において、10Aは電解槽であり、該電解槽には電解液14が収容されている。16は振動撹拌手段である。該振動撹拌手段16は、電解槽10Aとは別に配置された支持台100に防振ゴムを介して取り付けられた基台16a、該基台に下端を固定された振動吸収部材としてのコイルバネ16b、該コイルバネの上端に固定された振動部材16c、該振動部材に取り付けられた振動モータ16d、振動部材16cに上端を取り付けられた振動棒(振動伝達ロッド)16e、該振動棒の下半部において電解液14に浸漬する位置に回転不能に複数段に取り付けられた振動羽根16fを有する。振動モータ16d及び振動部材16cを含んで振動発生手段が構成され、該振動発生手段が振動棒16eと連係している。また、振動棒16e及び振動羽根16fを含んで振動撹拌部材が構成され、該振動撹拌部材と上記振動発生部材とを含んで振動撹拌手段が構成されている。コイルバネ16b内には、後述の図16その他に示されているように、棒状のガイド部材を配置することができる。
尚、振動撹拌手段における振動発生手段としては、振動発生源として一般の機械式振動モータを用いたもの以外にマグネット振動モータやエアー振動モータ等を用いたものを使用することも可能である。
振動モータ16dは例えば後述の図15に示されるインバータ35を用いた制御により例えば10〜500Hz、好ましくは10〜200Hz、更に好ましくは10〜120Hz、とくに好ましくは20〜60Hzで振動する。振動モータ16dで発生した振動は、振動部材16c及び振動棒16eを介して振動羽根16fに伝達される。振動羽根16fは、電解液14中で所要の振動数で先端縁が振動する。この振動は、振動羽根16fが振動棒16eへの取り付け部分から先端縁へと「しなる」ように発生する。この振動の振幅及び振動数は、振動モータ16dのものとは異なるが、振動伝達経路の力学的特性及び電解液14との相互作用の特性などに応じて決まり、本発明では、通常、振幅0.01〜30mm、好ましくは0.1〜10mmで、振動数600〜30000回/分、好ましくは600〜12000回/分、更に好ましくは600〜7200回/分、特に好ましくは1200〜3600回/分である。
図11は振動部材16cへの振動棒16eの取り付け部111の拡大断面図である。振動棒16eの上端に形成されたオネジ部に、振動部材16cの上側から振動応力分散部材16g及びワッシャ16hを介してナット16iを適合させており、振動部材16cの下側から振動応力分散部材16gを介してナット16iを適合させている。振動応力分散部材16gは、振動応力分散手段として用いられており、例えばゴムからなる。振動応力分散部材16gは、例えば硬い天然ゴム、硬い合成ゴム、合成樹脂等のショアーA硬度80〜120、好ましくは90〜100の硬質弾性体により構成することができる。とくに、ショアーA硬度90〜100の硬質ウレタンゴムが耐久性、耐薬品性の点で好ましい。振動応力分散手段を使用することにより、振動部材16cと振動棒16eとの接合部分の近辺への振動応力の集中が防止され、振動棒16eが折れにくくなる。とくに、振動モータ16dの振動周波数を150Hz以上に高くした場合や液が高粘度の場合には、振動棒16eの折れ発生防止の効果は顕著である。
図12は振動部材16cへの振動棒16eの取り付け部111の変形例を示す拡大断面図である。この変形例は、図11の取り付け部とは、振動部材16cの上側に振動応力分散部材16gを配置しないこと、及び振動部材16cと振動応力分散部材16gとの間に球面スペーサ16xを介在させたことが異なるのみであり、他は同様である。
図13は振動棒16eへの振動羽根16fの取り付け部の拡大断面図である。振動羽根16fの各々の上下両側には、振動羽根固定部材16jが配置されている。隣接する振動羽根16fどうしの間には固定部材16jを介して振動羽根16fの間隔設定のためのスペーサリング16kが配置されている。尚、最上部の振動羽根16fの上側及び最下部の振動羽根16fの下側には、図1に示されているように、スペーサリング16kを介して又は介することなく、振動棒16eに形成されたオネジに適合するナット16mが配置されている。図13に示されているように、各振動羽根16fと固定部材16jとの間にフッ素系樹脂やフッ素系ゴムなどからなる振動応力分散手段としての弾性部材シート16pを介在させることで、振動羽根16fの破損を防止することができる。弾性部材シート16pは、振動羽根16fの破損防止効果を一層高めるために、固定部材16jから若干はみ出すように配置するのが好ましい。図示されているように、上側の固定部材16jの下面(押圧面)は凸状面とされており、下側の固定部材16jの上面(押圧面)は対応する凹状面とされている。これにより、固定部材16jにより上下方向から押圧される振動羽根16fの部分は湾曲せしめられ、振動羽根16fの先端部は水平面に対して角度αをなしている。この角度αは、例えば−30°以上30°以下好ましくは−20°以上20°以下とすることができる。特に、角度αは、−30°以上−5°以下または5°以上30°以下、好ましくは−20°以上−10°以下または10°以上20°以下とするのが好ましい。固定部材16jの押圧面を平面とした場合には、角度αは0°である。角度αは、全ての振動羽根16fについて同一である必要はなく、例えば、下方の1〜2枚の振動羽根16fについては−の値(即ち下向き:図13に示される向き)とし、それ以外の振動羽根16fについては+の値(即ち上向き:図13に示されるものと逆の向き)とすることができる。振動羽根を下向きにつけると、電解により発生する活性ガスが上部に逃げにくくなり、液中への溶存、溶解に有効であり、好ましい。
振動羽根16fとしては、弾力性のある金属板、合成樹脂板またはゴム板などを用いることができる。振動羽根16fの厚みは、振動条件や電解液14の粘度などにより好ましい範囲は異なるが、振動撹拌手段16の作動時に、振動羽根が折れることなく、振動撹拌の効率を高めるように振動羽根16fの先端部分が“フラッター現象”(波打つような状態)を呈するように設定される。振動羽根16fがステンレス鋼板などの金属板からなる場合には、その厚みは0.2〜2mmとすることができる。また、振動羽根16fが合成樹脂板やゴム板からなる場合には、その厚みは0.5〜10mmとすることができる。振動羽根16fと固定部材16jとを一体成形したものを使用することもできる。この場合は、振動羽根16fと固定部材16jとの接合部に電解液14が浸入し固形分が固着して洗浄に手間がかかるというような問題を回避することができる。
金属製の振動羽根16fの材質としては、チタン、アルミニウム、銅、鉄鋼、ステンレス鋼、磁性鋼などの磁性金属、これらの合金が挙げられる。合成樹脂製の振動羽根16fの材質としては、ポリカーボネート、塩化ビニル系樹脂、ポリプロピレンなどが挙げられる。振動羽根は、プラスチック部材の表面にめっきなどにより導電処理を施したものであってもよい。
電解液14内での振動羽根16fの振動に伴って発生する振動羽根の“フラッター現象”の程度は、振動モータ16dの振動の周波数、振動羽根16fの長さ(固定部材16jの先端縁から振動羽根16fの先端縁までの寸法:後述の図36のD)と厚み、及び電解液14の粘度や比重などによって変化する。与えられた周波数においてもっともよく“しなる”振動羽根16fの長さと厚みとを選択することができる。振動モータ16dの振動の周波数と振動羽根16fの厚みとを一定にして、振動羽根16fの長さを変化させてゆくと、振動羽根のしなりの程度は図14に示すようになる。即ち、長さmが大きくなるに従って、ある段階までは大きくなるが、それをすぎるとしなりの程度Fは小さくなり、ある長さのときには殆どしなりがなくなり、さらに振動羽根を長くするとまたしなりが大きくなるという関係をくりかえすことが判った。
振動羽根の長さは、第1回目のピークを示す長さLか、第2回目のピークを示す長さLを選択することが好ましい。LにするかLにするかは、系の振動を強くするか流動を強くするかに応じて適宜選択できる。
振動周波数37〜60Hz、75kWの振動モータでステンレススチール(SUS304)製の振動羽根の種々の厚みのものについて、L及びLを求めたところ、以下のような結果が得られた。
厚み L
0.10mm 約15mm −
0.20mm 約25mm 約70mm
0.30mm 約45mm 110〜120mm
0.40mm 約50mm 140〜150mm
0.50mm 約55mm 約170mm
尚、この実験において、振動棒16eの中心から固定部材の先端までの距離は27mmであり、振動羽根16fの傾斜角度αは上向き15°(+15°)とした。
以上のような振動撹拌手段16としては、以下の文献(これらは本発明者の発明に係る特許出願に関するものである)及び本出願人による特許出願である特願2001−135528、特願2001−338422に記載されているような振動撹拌機(振動撹拌装置)を使用することが可能である:
特開平3−275130号公報(特許第1941498号)、
特開平6−220697号公報(特許第2707530号)、
特開平6−312124号公報(特許第2762388号)、
特開平8−281272号公報(特許第2767771号)、
特開平8−173785号公報(特許第2852878号)、
特開平7−126896号公報(特許第2911350号)、
特開平9−40482号公報(特許第2911393号)、
特開平11−189880号公報(特許第2988624号)、
特開平7−54192号公報(特許第2989440号)、
特開平6−330395号公報(特許第2992177号)、
特開平6−287799号公報(特許第3035114号)、
特開平6−280035号公報(特許第3244334号)、
特開平6−304461号公報(特許第3142417号)、
特開平10−43569号公報(特許第3320984号)、
特開平10−309453号公報、
特開平11−253782号公報(特許第3196890号)、
特開2000−282293号公報(特許第3046594号)、
特開2000−317295号公報
特開2002−053999号公報
特開2002−121699号公報
特開2002−146597号公報
WO 02/090621A1
WO 03/000395A1
WO 03/048424A1。
本発明において、振動撹拌手段16は、図1に示されている様に、電解槽の両端部に配置しても良いが、一方の端部のみに配置しても良い。また、振動羽根として両側に対称的に延びているものを使用すれば、振動撹拌手段16を電解槽の中央に配置し、その両側に後述の様な電極群を配置することも可能である。
なお、本発明において、特開平6−304461号公報に記載されている様な振動羽根が電解槽の底部に存在するタイプの振動撹拌手段を用いることにより、電解槽内の電極群の配置スペースが広くなり、電解槽の容積あたりのガス発生量を高めることができるとともに、上下方向に沿って電極を配置する場合には電極として後述の多孔性のものを使用する必要がなくなるという利点がある。
再び図1〜図3を参照する。本発明による水素系−酸素系混合ガス発生手段の具体例では、電解槽10Aの両端部にそれぞれ上記の様な振動撹拌手段16が配置されている。電解槽10Aの中央部には、電極対を構成する板状の陽極部材2x及び板状の陰極部材2yが互いに平行に配置されている。一方の振動撹拌手段16は陽極部材2xの表面(主面)と対向するように配置されており、他方の振動撹拌手段16は陰極部材2yの表面(主面)と対向するように配置されている。
陽極部材2x及び陰極部材2yの材料としては、通常の水の電気分解に使用されるものを使用することができる。たとえば、陽極部材として二酸化鉛、マグネタイト、フェライト、黒鉛、白金、Pt−Ir合金、チタン合金、貴金属被覆チタン(例えば白金被覆チタン)などが例示でき、陰極部材としてロジウム、ニッケル、ニッケル合金(Ni−Mo、Ni−Co、Ni−Fe、Ni−Mo−Cd、Ni−S、ラネーニッケル等)、チタン合金等の貴金属が例示できる。陽極と陰極との間の距離は、例えば5mm〜400mmである。
陽極部材2x及び陰極部材2yは板状体であるから、これを多孔性のものとすることで、図1に示すように、振動撹拌手段16の振動羽根16fによる振動撹拌で発生せしめられる電解液14の流動を遮るように振動羽根16fに向かう方向に対してほぼ直角に設けられる場合にも、小孔を通って電解液14がスムースに流動することができる。小孔の形状は円形状でも多角形状でもよく、特に制限はない。また、小孔の大きさや数は電極本来の目的と多孔性にする目的との双方のバランスを考えて、適宜設定するのが好ましい。電極における小孔の面積割合は、有効面積(即ち電解液14と接触する面積)で、電極面積が50%以上となる様にするのが好ましい。多孔性電極は網状または籠状であっても良い。
陽極部材2x及び陰極部材2yは、それぞれ不図示の陽極主ブスバー及び陰極主ブスバーに接続されており、これら陽極主ブスバー及び陰極主ブスバーは図1に示されている電源(例えば整流器)34に接続されている。該電源34と陽極部材2x及び陰極部材2yとを含んで電気分解手段が構成される。
多数枚の電極即ち陽極部材2x及び陰極部材2yを一定の間隔で電解槽内にセットするためには、絶縁体枠/電極/絶縁体枠/……電極/絶縁体枠という形で電極群を組み立てることが好ましい。図8Aにその基本的組合せである絶縁体枠70と電極71との組合せ態様を示す。図9Aは、絶縁体枠の平面図であり、図9Bは電極の平面図であり、図8Bは図9Aの絶縁体枠70の後に図9Bの電極を重ねたときの平面図である。電極は板状体であるから、例えば図1や図2に示すように振動撹拌手段に向かう方向に対して直角に電極板を設ける場合には電極板を多孔質のものとする必要がある。一方、振動撹拌手段に向かう方向と平行に電極板を設ければ、電極板を多孔質にする必要は必ずしもない。また、この場合には電極板を上下方向及び水平方向のいずれにも配置することができる。前記絶縁体枠を形成している絶縁体としては、天然ゴム、合成ゴム、合成樹脂などを用いることができる。
電源34は、直流を発生するものであればよく、通常の平滑な直流でもよいが、その他の種々の波形の電流を使用することができる。この様な電解電流の波形は、例えば、「電気化学」第24巻398〜403頁、同449〜456頁、1996年4月15日全国鍍金材料組合連合会発行、「めっき技術ガイド」378〜385頁、昭和58年6月15日(株)広信社発行「表面技術総覧」301〜302頁、同517〜527頁、同1050〜1053頁、昭和46年7月25日日刊工業新聞社発行「めっき技術便覧」365〜369頁、同618〜622頁等に記載されている。
本発明では、とりわけ、エネルギー効率の向上の観点から、パルス波形のうちの矩形波パルス波形のものを使用することが好ましい。この様な電源(電源装置)は、交流電圧から矩形波状電圧を作成することができるものであり、このような電源は例えばトランジスタを用いた整流回路を有するものであり、パルス電源装置として知られている。このような電源装置または整流器としては、トランジスタ調整式電源、ドロッパー方式の電源、スイッチング電源、シリコン整流器、SCR型整流器、高周波型整流器、インバータデジタル制御方式の整流器〔例えば(株)中央製作所製のPower Master[登録商標]〕、(株)三社電機製作所製のKTSシリーズ、四国電機株式会社製のRCV電源、スイッチングレギュレータ式電源とトランジスタスイッチとからなりトランジスタスイッチがON−OFFすることで矩形波状のパルス電流を供給するもの、高周波スイッチング電源(交流をダイオードにて直流に変換した後にパワートランドスタで20〜30KHzの高周波をトランスに加えて再度整流、平滑化し出力を取り出す)、PR式整流器、高周波制御方式の高速パルスPR電源〔例えばHiPRシリーズ(株)千代田〕などが利用可能である。
陽極部材と陰極部材との間に印加する電圧は、通常の水の電気分解の場合と同様である。
電解液14は、電解質を含む水である。ここにおける電解質としては、水溶性のアルカリ金属水酸化物(KOH、NaOHなど)またはアルカリ土類金属水酸化物〔例えばBa(OH)、Mg(OH)、Ca(OH)など〕、あるいは第4級アルキルアンモニウムなど、またリン酸や硫酸など、従来公知のものを使用することができる。これらの中でもKOHが好ましい。電解液中の電解質の含有量は、5〜30%が好ましい。また、電解液のpHは、7〜10であるのが好ましい。但し、NaClやHClのように電気分解によりハロゲンガスを発生するものは、装置の耐薬品性などが必要であり大量に使用した場合の環境汚染防止の観点から排気ガス処理を必要とする。
図1〜図3に示されている様に、電解槽10Aの上部には蓋部材10Bが付設されている。該蓋部材には、電解により発生する水素系−酸素系混合ガスを回収するための水素系−酸素系混合ガス取出口10B′が設けられている。該取出口10B′には、水素系−酸素系混合ガス採取管10B″が接続されている。これらの蓋部材10B及び水素系−酸素系混合ガス採取管10B″を含んで、水素系−酸素系混合ガス捕集手段が構成される。
この具体例では、水素系ガスと酸素系ガスとはこれらが均一に混合した水素系−酸素系混合ガスとして回収される。この水素系−酸素系混合ガスは、振動流動攪拌を伴わない電解で得られる水素−酸素混合ガス(爆鳴気)とは異なり、加圧しても爆発を生ずることがなく、タンク及びボンベなどの容器に加圧状態、減圧状態または常圧状態で保管することができる。また、電解槽10Aの内部において、上部空間を陽極部材側空間と陰極部材側空間とに区画する分離壁を設け、陽極部材側空間及び陰極部材側空間のそれぞれに連通する水素系ガス採取管及び酸素系ガス採取管を設けることにより、水素系ガスと酸素系ガスとを別々に分離して回収することもできる。
電解槽10A及び蓋部材10Bの材質としては、例えばステンレススチール、銅、その他の金属に絶縁被覆を施したものあるいはポリカーボネート等の合成樹脂が例示される。尚、電解槽10Aには、内部の電解液14のレベル調整のための配管10A′が接続されている。
振動撹拌手段16の振動棒16eは、蓋部材10Bを上下方向に貫通して延びている。この貫通は、図7及び図10に示されている様に、蓋部材10Bに設けられた開口の内端縁に付された固定部材10Dと振動棒16eの外面に付された固定部材10Eとの間をゴム板等のフレキシブル部材10Cにより気密にシールしたものとすることができる。あるいは、気密シールのための手段は、振動棒16eにサポートベアリングの内輪を取り付け、該サポートベアリングの外輪を蓋部材10Bの開口の内端縁に取り付け、外輪に対して内輪を上下に適宜のストロークにわたって移動可能にしたものであっても良い。蓋部材10Bに設けられた開口に、振動棒16eが通過する部分のみ開口したゴム板またはその積層体等の気密シール手段を取り付けてもよい。このシール手段としては例えば、ゴム、特に変形性良好な軟らかいゴムが使用できる。振動棒の上下振動の振幅は、通常20mm以下、好ましくは10mm以下、特に好ましくは5mm以下であり、その下限は例えば0.1mm以上、好ましくは0.5mm以上といった程度であるから、シール部材としてゴムなどを使用することで、追従が可能となり摩擦熱の発生も少なく良好な気密状態が実現される。
なお、より一層完全なシールを達成する手段としては、図68に示すようなタイプがある。このケースにおいては振動棒とパッキンとの間のシールを一層安全、確実にするため、たとえばシリコーン樹脂系の潤滑性シーリング剤を存在させている。即ち、振動棒16eが貫通する蓋部材10Bの部分に設けられているシール手段は、蓋部材10Bに取り付けられた軸支持ボス部10H、及びその上下に合成ゴム製パッキン10Jを介して取り付けられた合成樹脂製のシート部材10Kを有しており、シート部材の部分と振動棒の部分との間にはシリコーン樹脂10Lが充填されている。これにより、極めて優れたシール性能が得られる。
電解は、液温20〜100℃で、電流密度7〜40A/dmで行なうのが好ましい。電解により発生する水素系−酸素系混合ガスは、図59に示されている様に、ガス採取管10B″に接続されたシールポット10B″′を経て取り出される。シールポット10B″′もガス捕集手段を構成する。図60は、ガス発生手段により製造された水素系−酸素系混合ガスを燃料電池へと供給する経路に用いられる安全装置の一例を示す図である。水素系−酸素系混合ガスは、所要の容量のガス溜め、除湿器及び炎止めタンクを経て燃料電池の水素系−酸素系混合ガス供給口へと供給される。
また、上記図59と図60の装置を一体化した図72のものを安全装置として使用することもできる。ここで、ガス溜めは水素系−酸素系混合ガス発生手段を構成する電解槽に連結されている。水素系−酸素系混合ガスは、シールポットを経て、燃料電池の例えば燃料極へ供給することもできるし、貯蔵ボンベに貯蔵することもできる。
図15は振動撹拌手段の一変形例を示す断面図である。この例では、基台16aは、振動吸収部材41を介して電解槽10Aの上部に取り付けられた取り付け台40上に固定されている。また、取り付け台40には、垂直方向に上方へと延びた棒状のガイド部材43が固定されており、該ガイド部材43はコイルバネ16b内に位置している。振動モータ16dとそれを駆動するための電源136との間には、振動モータ16dの振動周波数を制御するためのトランジスタ・インバータ35が介在している。電源136は、例えば200Vである。このような振動モータ16dの駆動手段は、上記その他の本発明の具体例においても使用することができる。
図16は振動撹拌手段の一変形例を示す断面図である。この例では、振動部材16cに垂直方向に下方へと延びた棒状の上側ガイド部材144が固定されており、取り付け台40に垂直方向に上方へと延びた棒状の下側ガイド部材145が固定されており、これらガイド部材144、145はコイルバネ16b内に位置している。上側ガイド部材144の下端と下側ガイド部材145の上端との間には、振動部材16cの振動を許容するような適度の間隙が形成されている。
図17は振動撹拌手段の一変形例を示す断面図である。この例では、振動モータ16dは、振動部材16の上側に付設された付加的振動部材16c′の下側に取り付けられている。また、振動棒16eは、電解槽10A内において分岐して2つの部分134とされており、これら2つのロッド部分134の間に振動羽根16fが掛け渡されて取り付けられている。
図18及び図19は振動撹拌手段の一変形例を示す断面図である。この例では、最も下側の振動羽根16fが下向きに傾斜しており、その他の振動羽根16fが上向きに傾斜している。このようにすると、電解槽10Aの底部に近い部分の電解液14の振動撹拌を充分に行うことができ、電解槽底部に溜りが発生するのを防止することができる。また、振動羽根16fの全部を下向きに傾斜させることができる。
図20及び図21は振動撹拌手段の電解槽への取り付けの他の形態を示す断面図であり、図22はその平面図である。図20及び図21はそれぞれ図22のX−X′断面及びY−Y′断面に相当する。
この形態では、振動吸収部材として上記コイルバネ16bに代えてゴム板2と金属板1、1′との積層体3が用いられている。即ち、積層体3は、電解槽10Aの上端縁部に固定された取り付け部材118に防振ゴム112を介して取り付けられた金属板1′をボルト131により固定し、該金属板1′上にゴム板2を配置し、該ゴム板2上に金属板1を配置し、これらをボルト116及びナット117により一体化することで形成されている。
振動モータ16dは支持部材115を介してボルト132により金属板1に固定されている。また、振動棒16eの上端部はゴムリング119を介して積層体3特に金属板1とゴム板2とに取り付けられている。即ち、上側金属板1は図1、図4その他に記載されている具体例の振動部材16cの機能をも発揮するものであり、下側金属板1′は図1、図4その他に記載されている具体例の基台16aの機能をも発揮するものである。そして、これら金属板1、1′を含む積層体3(主としてゴム板2)が図1、図4その他に記載されているコイルバネ16bと同様な振動吸収機能を発揮する。
図23A〜23Cは積層体3の平面図を示す。図20〜22の形態に対応する図23Aの例では、稿層体3には振動棒16eを通すための貫通孔5が形成されている。また、図23Bの例では、積層体3は貫通孔5を通る分割線により2分割された2つの部分3a、3bからなり、これによれば装置組立の際に振動棒16eを容易に通すことができる。また、図23Cの例では、積層体3は、電解槽10Aの上端縁部に対応する環形状をなしており、中央部に開口部6が形成されている。
図23A、23Bの例では、電解槽10Aの上部が積層体3により塞がれ、これにより上記の蓋部材10Bと同等の機能が発揮される。
図24A、24Bは、このような積層体3による電解槽の閉塞(シール)の様子を示す断面図である。図24Aの形態では、ゴム板2が貫通孔5において振動棒16eに当接してシールがなされる。また、図24Bの形態では、積層体3の開口部6において該積層体3と振動棒16eとに取り付けられこれらの間の空隙を塞ぐフレキシブルシール部材136′が設けられている。
図25A〜25Eに振動吸収部材としての積層体3の例を示す。図25Bの例は上記図20〜22の具体例のものである。図25Aの例では、積層体3は金属板1とゴム板2とからなる。図25Cの例では、積層体3は上側金属板1と上側ゴム板2と下側金属板1′と下側ゴム板2′とからなる。図25Dの例では、積層体3は上側金属板1と上側ゴム板2と中間金属板1″と下側ゴム板2′と下側金属板1′とからなる。積層体3における金属板やゴム板の数は、例えば1〜5とすることができる。尚、本発明においては、ゴム板のみから振動吸収部材を構成することも可能である。
金属板1、1′、1″の材質としては、ステンレス鋼、チタン、鉄、銅、アルミニウム、その他適宜の合金を使用することができる。金属板の厚さは、例えば10〜40mmである。但し、積層体以外の部材に対して直接固定されない金属板(例えば上記中間金属板1″)は0.3〜10mmと薄くすることができる。
ゴム板2、2′の材質としては、合成ゴム又は天然ゴムの加硫物を使用することができ、JIS K6386で規定される防振ゴムが好ましく、更に特に静的剪断弾性率4〜22kgf/cm好ましくは5〜10kgf/cm、伸び250%以上のものが好ましい。合成ゴムとしては、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、ニトリル−クロロプレンゴム、スチレン−クロロプレンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、イソプレンゴム、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体ゴム、エピクロルヒドリン系ゴム、アルキレンオキシド系ゴム、フッ素系ゴム、シリコーン系ゴム、ウレタン系ゴム、多硫化ゴム、フォスファゼンフッ素ゴムを例示することができる。ゴム板の厚さは、例えば5〜60mmである。
図25Eの例では、積層体3は上側金属板1とゴム板2と下側金属板1′とからなり、ゴム板2が上側ソリッドゴム層2aとスポンジゴム層2bと下側ソリッドゴム層2cとからなる。ソリッドゴム層2a、2cのうちの一方を除去してもよいし、更に複数のソリッドゴム層と複数のスポンジゴム層とを積層したものであってもよい。
図26は、振動撹拌手段16の変形例を示す図である。この例では、振動モータ16dが電解槽10Aの側方に位置しており、振動部材16cが電解槽10Aの上方へと水平に延びている。そして、該振動部材16cに振動棒16eが取り付けられている。この構成によれば、電解槽10Aに対する上記蓋部材10Bの着脱が容易となり、高さが低くなって安定度がまし、運送時の振動によるバネの横ゆれを防止できる。尚、図26には電解槽10Aの一側方に位置する振動撹拌手段16のみが示されているが、電解槽10Aの両側方に振動撹拌手段16を配置してもよい。
以上の具体例においては、陽極部材及び陰極部材の少なくとも一方の表面に対向するように振動撹拌手段の振動撹拌部材を配置することで、陽極部材または陰極部材が1つであっても、その高いガス発生効率に基づき、装置あたりの高いガス発生量を得ることが出来る。
図27〜図29は本発明による水素系−酸素系混合ガス発生手段の一具体例の構成を示す図である。ここで、図27〜図28は断面図であり、図29は平面図である。
本具体例においては、振動撹拌手段として絶縁式のものを用いている。即ち、絶縁式振動撹拌部材として、振動部材16cに上端を取り付けられた振動棒上部分16e′と、振動羽根が取り付けられた振動棒下部分16e″′と、振動棒上部分16e′の下端及び振動棒下部分16e″′の上端の間に介在せしめられた絶縁領域16e″とを含んでなる振動棒16eを使用している。
振動モータ16dとそれを駆動するための不図示の電源(例えば200V)との間には、振動モータ16dの振動周波数を制御するためのトランジスタ・インバータが介在している。このような振動モータ16dの駆動手段は、その他の本発明の具体例においても使用することができる。振動モータ16dは、インバータを用いた制御により、上記具体例と同様に10〜500Hzで振動する。振動モータ16dで発生した振動は、振動部材16c及び振動棒16eを介して振動羽根16fに伝達される。
図30は、振動棒の電気的絶縁領域16e″の近傍を示す部分拡大断面図である。また、図31は電気的絶縁領域16e″の斜視図を示し、図32はその平面図を示す。
電気的絶縁領域16e″は、例えば合成樹脂またはゴムで形成することができる。電気的絶縁領域16e″は、振動棒16eを構成するものであるから、振動により破損せず、振動モータの振動を効率よく伝達でき、十分な絶縁性を発揮する材料を選択するのが好ましい。この様な観点から硬質ゴムが最も好ましい。その一例としては、硬質ポリウレタンゴムを挙げることができる。なお、このような絶縁材料のみからなる部材では強度的に不十分である場合には、絶縁性を損なわない範囲で、絶縁部材のみからなる部材の周囲などを例えば金属などで補強して、所要の機械的強度を得ることができる。
絶縁領域16e″は、具体的には、例えば、図示される様な硬質ゴム製の円柱状絶縁部材(多角形状等形状は任意)よりなり、その中央の上部分及び下部分に、振動棒上部分16e′及び振動棒下部分16e″′をそれぞれ嵌合させるための嵌合用穴124、125が設けられている。これらの嵌合用穴は上下には貫通しておらず、そのため、これら嵌合用穴の間の非貫通部分は絶縁部として機能する。
上下の嵌合用穴を貫通させた場合には、振動棒上部分16e′と振動棒下部分16e″′とが接触しないように、上記非貫通部分に対応する箇所に絶縁材料を充填するか、絶縁に十分な程度の空間を設ける。円柱状絶縁部材の嵌合用穴124、125は、振動棒上部分16e′と振動棒下部分16e″′との接合のために機能する。接合は、ネジ止め(たとえば、図示されている様に、振動棒上部分16e′の下端部と振動棒下部分16e″′の上端部とに雄ネジを切り、嵌合用穴124、125に雌ネジを切って、両者を結合させ、必要に応じて更にその上にワッシャーリングを当て、ビス止めする)でもよいし、接着剤による接合でもよい。いずれにしても、これらの部分の構造は、目的とするガスを充分生成できれば、その他のいかなる構造であってもよい。
たとえば、振動棒の直径が13mmの場合には、絶縁領域16e″は、長さ(高さ)Lが例えば100mmであり、外径rが例えば40mmであり、嵌合用穴124、125の内径rが13mmである。
図30及び図27〜図28に示されている様に、振動棒下部分16eの上部には、絶縁領域16e″の直下にて通電線127が接続されている。通電線127は電源34に接続されている。ここで、図27に示されているように、一方の絶縁式振動撹拌手段16(陽極部材2xに近接する方)の通電線127は電源の正極に接続されており、他方の絶縁式振動撹拌手段16(陰極部材2yに近接する方)の通電線127は電源の負極に接続されている。陽極部材2x及び陰極部材2yは、それぞれ図29に示される陽極主ブスバー201及び陰極主ブスバー202を介して電源34に接続されている。
振動棒下部分16e、固定部材16j及び振動羽根16fは導電性部材例えば金属からなる。これにより、一方の絶縁式振動撹拌手段の振動棒下部分16e、固定部材16j及び振動羽根16fをも陽極部材として利用し、他方の絶縁式振動撹拌手段の振動棒下部分16e、固定部材16j及び振動羽根16fをも陰極部材として利用して通電し、電気分解を行うことが出来る。更には、陽極部材及び陰極部材のうちの少なくとも一方を除去して、電気分解を行うことも可能である。
振動羽根16fを陽極部材または陰極部材として利用する際には、特にこれらとは別の陽極部材または陰極部材を使用しない場合のように電極面積が不足する時には、出来るだけ振動羽根の面積を増加させるのが好ましい。そのためには、振動羽根の長さは、図14に示す第2回目のピークを示す長さLまたは第3回目のピークを示す長さLを選択することができる。また、振動撹拌を行なう振動羽根と電流を流す電極用補助羽根とを同一の軸につけることもできる(後述の図33、40、43など参照)。
本具体例では、振動羽根を陽極部材または陰極部材として使用することで、水素系−酸素系混合ガス発生装置が小型化される。更に、本具体例では、絶縁式振動撹拌手段により電解液14を振動撹拌しながら電気分解を行なうので、非絶縁式の振動撹拌手段を用いた場合と同様に、陽極部材と陰極部材との間の距離を例えば20〜400mmとしてもショートすることなく電解処理を行なうことができる。
本具体例においては、振動棒上部分16e′は絶縁領域16e″により振動棒下部分16e″′とは電気的に絶縁されているので、振動棒下部分16e″′を介する通電の影響が振動モータ16dへと及ぶことはない。更に、本具体例では、絶縁領域16e″が熱絶縁性をも有するので、振動棒上部分16e′は振動棒下部分16e″′とは熱的にも絶縁され、電解液14の温度の影響が振動モータ16dへと及ぶことは少ない。
また、本具体例において、絶縁式振動撹拌手段の振動羽根を陽極部材又は陰極部材として用いずに電気分解を行なう場合においても、絶縁領域16e″が存在するので、電解液14内の通電の影響が振動モータ16dへと及ぶことがないという利点がある。
図33は、絶縁式振動撹拌手段の他の具体例を示す側面図である。この具体例は、振動棒下部分16eに、振動羽根16fの他にこれと交互に配置された電極用補助羽根16f′を取り付けたことが、図27〜図29の例と異なる。電極用補助羽根16f′は、導電性を有しており、振動棒下部分16eと電気的に接続されていて、電解液14に対する通電の際の一方の電極として機能し、従って振動撹拌の機能は必須ではない。電極用補助羽根16f′を使用する目的は電極面積の増加と当該電極と反対側の電極との間隔の低減とにあるので、電極用補助羽根16f′の大きさ(面積)は振動羽根16fより大きいほうが好ましく、また図示されている様に、補助羽根16f′の先端縁(右端縁)は振動羽根16fの先端縁(右端縁)より更に右方へと突出しているのが好ましい。
電極用補助羽根16f′は、振動羽根と振動羽根との中間に位置する様に振動棒に取り付けるのが好ましいが、必ずしもこれに限定されることはなく、振動撹拌の効果を著しく低減させない限りは、上下一方の振動羽根に近接して配置することも可能である。振動棒下部分16eへの電極用補助羽根16f′の取り付けは、振動羽根16fの取り付けと同様にして行なうことができる。
電極用補助羽根16f′の材質としては、電極として使用され得るものであればよいが、振動棒の振動に従って振動するものであるから、振動に耐え得ることが要求され、例えば振動羽根として使用可能な導電体例えば金属例えばチタン(表面に白金めっきを施すことができる)またはステンレス(表面に白金めっきを施すことができる)を使用することができる。尚、電極用補助羽根16f′を使用する場合には、振動羽根16fは必ずしも導電性材料からなる必要はなく、合成樹脂製のものを使用することも可能である。振動羽根16fの角度を一定にするため、振動羽根固定部材16jに角度をつけて振動棒16eと一体的に組み立てることもできる。
図34及び図35は絶縁式振動撹拌手段の他の具体例を示す断面図である。本具体例では、2つの振動棒にわたって各振動羽根が取り付けられている。
図36は振動羽根16fの近傍を示す断面図である。振動羽根16fは固定部材16jからはみ出した部分が振動流動の発生に寄与するのであり、このはみ出した部分は幅Dで長さDである。本具体例では、複数の振動棒にわたって各振動羽根が取り付けられているので、各振動羽根の面積を十分大きくとることができる。かくして、大きな振動流動を得ることができ、また電極として使用される面積を大きくすることが可能である。
本具体例においては、図示はしないが、図27〜図29に関し説明した様な電気分解手段の電源34が使用される。本具体例においても、図33の具体例と同様に、電極用補助羽根を使用することができる。
図38は絶縁式振動撹拌手段の1つの具体例を示す断面図である。本具体例の絶縁式振動撹拌手段16においては、振動モータ16dは、電解槽10A外に配置されていて、振動部材16cが電解槽10Aの方へと延びている。本具体例においても、図示はしないが、図27〜図29に関し説明した様な電気分解手段の電源34が使用される。本具体例においても、図33の具体例と同様に、電極用補助羽根を使用することができる。また、図では絶縁式振動撹拌手段が電解槽の片側にのみ配置されているが、もう一方の側にも同様な絶縁式振動撹拌手段を配置することが可能である。
図39は絶縁式振動撹拌手段の他の具体例を示す断面図である。本具体例では、図38の具体例と同様な振動モータ16d、振動部材16c、振動棒16e及び絶縁領域16e″の組が、電解槽10Aの両側に配置されている。そして、振動棒16eは、コの字形状をなしており、その2つの垂直部分が2つの絶縁領域16e″にそれぞれ対応して配置されている。これら2つの垂直部分の上端がそれぞれ絶縁領域16e″を介して2つの振動棒16eにそれぞれ接続されている。振動羽根16fは、振動棒16eの水平部分にほぼ垂直に取り付けられている。図では振動羽根16fは上方に突出しているが、下方に突出していてもよい。また、振動羽根16fは垂直方向に対して傾斜をもって配置されてもよいことは上記と同様である。
図示されている絶縁式振動撹拌手段の上方突出の振動羽根を陽極部材として使用し、他の絶縁式振動撹拌手段の下方突出の振動羽根を陰極部材として使用して、電解処理を行うことが出来る。この場合、後述の図43に関し説明するように、双方の絶縁式振動撹拌手段の振動羽根同士を互いに入り組んだ形態とすることが可能である。
本具体例のように、振動棒は必ずしも上下方向を向いて配置される必要はなく、電解槽の形状などに応じて適宜の形状及び配置のものを使用することが出来る。
本具体例においても、図示はしないが、図27〜図29に関し説明した様な電気分解手段の電源34が使用される。本具体例においても、図33の具体例と同様に、電極用補助羽根を使用することができる。
図40〜図42は水素系−酸素系混合ガス発生手段の一具体例を示す図である。ここで、図40〜図41は断面図であり、図42は平面図である。本具体例は、図27〜図29の具体例において電極用補助羽根16f′を追加使用したものに相当する。
図43〜図44は水素系−酸素系混合ガス発生手段の一具体例を示す図である。ここで、図43は部分断面図であり、図44は断面図である。
本具体例では、2つの絶縁式振動撹拌手段が電解槽10A内に配置されており、一方の絶縁式振動撹拌手段の隣接する電極用補助羽根16f′どうしの間に他方の絶縁式振動撹拌手段の電極用補助羽根16f′が位置している。これにより、2つの絶縁式振動撹拌手段の一方を陽極側として使用し且つ他方を陰極側として使用することで、大面積の陽極部材と陰極部材とを互いに近接して配置することができ、電流密度を著しく向上させることができる。このような非接触で互いに入り組んだ形態での陽極部材と陰極部材との配置は、2つの絶縁式振動撹拌手段の振動羽根同士でも同様にして行うことが出来る。
本具体例においては、互いに上下方向に近接して配置される陽極部材(振動羽根または電極用補助羽根)と陰極部材(振動羽根または電極用補助羽根)との距離を例えば5〜50mmとすることができる。本具体例においては、2つの絶縁式振動撹拌手段の電極用補助羽根16f′どうしが接触してショートするのを防止するために、図37に示す様に、電極用補助羽根16f′の両面の外周部等を絶縁テープ16faなどの貼付や絶縁塗料の塗布などにより絶縁部とすることが好ましい。電極部材として使用する振動羽根16f同士を同様にして互い違いに配置することも可能であり、その場合にも同様な絶縁部を形成することが出来る。或いは、同様な絶縁効果を得るために、同等の形状を有するプラスチック製絶縁板を配置してもよい。
図45〜図47は、絶縁式振動撹拌手段の1例を示す模式図である。これらの例では、共通の振動部材16cに複数の振動棒が接続されている。各振動棒下部分16eに接続される通電線127は、それぞれ電源の図示される極に接続されるが、これに限定されることはなく、適宜変更してもよい。
以上の具体例においては、絶縁式振動撹拌部材の一部(例えば、振動羽根、電極用補助羽根)を陽極部材または陰極部材として使用することで、絶縁式振動撹拌部材以外の陽極部材または陰極部材がなくとも、その高いガス発生効率に基づき、装置あたりの高いガス発生量を得ることが出来る。
図48は絶縁式振動撹拌手段の他の具体例の構成を示す部分断面図であり、図49はその部分側面図である。本具体例では、2つの振動棒16eを機械的に接続する様に取り付けられている振動羽根16f及び固定部材16jを2つの群に区分し、第1の群を一方の振動棒16eと電気的に接続させ、第2の群を他方の振動棒16eと電気的に接続させ、これら2つの群の間で電圧を印加することで、電解液14に通電し電解処理を行なう様にしている。
即ち、図48において、上側から奇数番目の振動羽根16f及び固定部材16jは、右側の振動棒16eとは電気的に接続されているが、左側の振動棒16eとは絶縁ブッシュ16s及び絶縁座金16tを介して取り付けられることで電気的に絶縁されている。一方、上側から偶数番目の振動羽根16f及び固定部材16jは、左側の振動棒16eとは電気的に接続されているが、右側の振動棒16eとは絶縁ブッシュ16s及び絶縁座金16tを介して取り付けられることで電気的に絶縁されている。かくして、上側から奇数番目の振動羽根16f及び固定部材16jを第1の群とし、上側から偶数番目の振動羽根16f及び固定部材16jを第2の群とし、左側の振動棒16eに接続されている通電線127と右側の振動棒16eに接続されている通電線127との間に不図示の処理用電源により所要の電圧を印加することで、第1の群(陽極部材)と第2の群(陰極部材)との間で電解液14に通電することができる。尚、図49では絶縁ブッシュ16s及び絶縁座金16tの図示が省略されている。
本具体例においては、絶縁領域16e″は振動棒16eと振動発生手段を構成する振動部材16cとの間に設けられている。即ち、ここでは、絶縁領域16e″が、上記具体例における振動部材16cへの振動棒16eの取り付け部111の機能を兼ねている。
本具体例においては、陽極側となる振動羽根16fとしてはチタンの表面に白金めっきを施したものが好ましく用いられ、陰極側となる振動羽根16fとしてはチタンが好ましく用いられる。
本具体例によれば、絶縁式振動撹拌手段に対する給電のみで電解処理が可能となるので、装置をコンパクトなものとすることができる。また、振動羽根16fを陽極部材及び陰極部材のそれぞれとして兼用しているので、この点からも装置のコンパクト化がなされている。
図50は絶縁式振動撹拌手段の他の具体例の構成を示す部分側面図である。本具体例では、図48及び図49の具体例における上側から偶数番目の振動羽根16fに代えて陽極部材(電極用補助羽根)16f″を使用している。この陽極部材16f″は、振動撹拌には寄与せず、図の右側にのみ延びている。陽極部材16f″としては、例えばチタン製ラス網(表面に白金めっきを施したもの)が好ましく用いられる。一方、上側から奇数番目の振動羽根16fに対してスペーサ16uを介して陰極部材(電極用補助羽根)16f″′を追加している。この陰極部材16f″′も、振動撹拌には寄与せず、図の右側にのみ延びている。陰極部材16f″′としては、例えばチタン板が好ましく用いられる。尚、陰極部材の場合と同様に、陽極部材とともに振動羽根を取り付けてもよい。本具体例では、振動羽根16fとは別に電極部材としての陽極部材16f″及び陰極部材16f″′を使用しているので、電極材料の選択の自由度が増加する。図50のように陽極部材や陰極部材は振動羽根とは反対方向に延びているので、振動羽根と接触する心配がなく、そのため陽極部材と陰極部材との間隔及び振動羽根と陽極部材または陰極部材との間隔を一層小さくすることができる。
図51は水素系−酸素系混合ガス発生手段の一具体例の構成を示す断面図である。本具体例は、図48〜図49の絶縁式振動撹拌手段を2つ使用したものである。
以上の具体例においては、絶縁式振動撹拌部材に陽極部材及び陰極部材の双方を取り付けて、これらの間で電解液14を介して通電することで電解処理を行うので、装置の小型化が可能であり、更にその高いガス発生効率に基づき、装置あたりの高いガス発生量を得ることが出来る。
図52〜図53は水素系−酸素系混合ガス発生手段の一具体例の構成を示す断面図である。本具体例では、振動撹拌手段として非絶縁式のものが用いられており、陽極部材及び陰極部材からなる電極対として、図48〜図49の絶縁式振動撹拌手段と類似の構成体を使用したものである。即ち、上下方向に互いに平行に配列された2本の導電性棒状体116eに、陽極部材116f″及び陰極部材116f″′を図48〜図49の絶縁式振動撹拌手段の第1群の振動羽根及び第2群の振動羽根の場合と同様にして取り付け、各導電性棒状体116eを電源の正極及び負極の所要のものに接続している。
図54及び図55は水素系−酸素系混合ガス発生手段の一具体例を示す断面図である。本具体例では、絶縁式振動撹拌手段16の振動羽根16fを陰極部材として使用し、陽極部材86として、図56に示される円柱状チタン網ケース内に複数の金属製ボールを充填したものを使用し、網ケースを水平方向に保持したものを用いている。陽極部材86の保持手段82は例えば陽極ブスバーである。
陽極部材としては、例えばチタン製ラス網(表面に白金めっきを施したものが好ましい)からなるものを使用することも出来る。図57にラス網陽極部材84の正面図を示す。上部に吊下げ用の孔が2つ設けられており、中央部から下部にかけて網状部とされており、この網状部が電解液中に浸漬される。
図58A〜図58Eは、振動発生手段と振動撹拌部材との接続形態の例を示す模式図である。図58Aの例では、振動発生手段の振動部材16cに直接振動撹拌部材の振動棒16eが接続されている。これに対して、図58B〜図58Eの例では、振動部材16cに中間部材16ccが取り付けられており、該中間部材16ccに振動棒16eが接続されている。
電解槽内で発生した水素系ガス及び酸素系ガスを均一に混合した水素系−酸素系混合ガスの形態で又は水素系ガス及び酸素系ガスを別々に捕集するための捕集手段は、上記図1〜3の具体例に関して説明したように、電解槽の上方を覆う蓋部材とその蓋部材に設けられたガス取出口とそれに連結されたガス採取管を含むものである。本発明の振動撹拌手段の具体例などを説明する図面においては、発生するガスを効率よく捕集するための前記蓋部材等は省略して画かれているが、実際にはガス発生手段の電解槽には必ず蓋部材が付される。
図61に、蓋部材10Bの変形例を示す。この例では、蓋部材10Bは、図1に示されている電極群2x、2yの上方の部分のみにおいて、電解槽10Aに付設される。そして、該蓋部材10Bの両端部には、下方へと延びた囲み部材63が付設されている。この囲み部材63には、その下部の電解液中に浸漬される部分に該電解液の流通を可能となすための開口65が形成されている。囲み部材63には、該開口65の上部領域の一部を遮蔽する遮蔽板64を上下位置調節可能に取り付けることができる。この上下位置調節のために、遮蔽板64に上下方向の長孔66を形成し、該長孔を介して、囲み部材63に形成されたネジ穴68にボルト67を適合させるようにすることができる。
この蓋部材を使用する場合には、振動撹拌手段の振動棒16eは蓋部材を貫通しないが、上記の様な密閉シール構造とすることが、水素系−酸素系混合ガスの回収効率向上や電解液の飛散防止等の観点から、好ましい。
発生した水素系−酸素系混合ガスを蓋部材と囲み部材とにより密閉すると、その部分のガス圧が上る。ガス圧はある程度ある方が、その後のガスの取り扱い上便利である。遮蔽板64の上下位置を調節することで、電極群2x、2yの上方の部分の液位を調節することができ、ひいてはガス圧が調節される。
しかし、ガス圧を調節する手段が併設できれば一層好都合である。ガス圧調節手段の1例としては図59に示すようなシステムがある。シールポットは例えば水80%、メタノール(着色料)20%よりなる液体を入れたものである。また、図60に示すように燃料電池の水素系−酸素系混合ガス供給口とガス発生手段あるいはガス溜めとの間に炎止めタンク、フレームアスレターを設け、炎の逆流を防止することが好ましい。なお、燃料電池へ直結する場合はシールポットは必ずしも必要ではない。本発明の水素系ガスや水素系−酸素系混合ガスは、安全のため及びガスが肉眼で見えるようにするため、シールポットでガスを処理しているが、もし別の手段で安全性が確保できるのであれば、ガスを処理することなく、生ガスの状態で電池に供給した方が、処理液中で水素の1部が失われることがないから有利である。
電解槽内に設けられる陽極部材と陰極部材は、通常いずれも電極板であることが好ましい。この場合、振動撹拌手段を用いない従来技術においては電極の間隔を最短でも50mm程度の間隔を必要としていた。この程度以上の間隔を設けないと、過電流となり事故が発生するおそれがあったからである。ところが、本発明では振動撹拌手段を用いることにより電極間距離を1〜20mmといった程度まで接近させることができ、これにより電流効率を大幅に向上させることができた。なお、これ以上接近させると過電流となりショートを生じる。本発明では実用的には電極間距離を5〜400mmとすることが好ましい。なお、詳細は同一人の出願にかかるWO03/000395A1に詳述されている。
本発明においては、絶縁式振動撹拌手段を用いて、振動羽根や電極用補助羽根を電極として機能させる場合がある。その例は、図33、38〜51、54、55に示すとおりである。本発明においては、例えば図40に示すように、電極対(2x、2y)に加えて絶縁式振動撹拌手段の振動羽根(16f)と電極用補助羽根(16f′)をも電極として用いるケースや、例えば図43や図47にみられるように絶縁式振動撹拌手段の振動羽根や電極用補助羽根のみを電極とするケースとがある。これらの場合の振動羽根および/または電極用補助羽根の形をとっている電極と電極との間の距離は通常3〜50mm、好ましくは5〜20mmとすることができる。
本発明においては、水素系−酸素系混合ガスを製造するための前記電解液として5〜50重量%、好ましくは5〜30重量%の電解質を含む水溶液で液温20〜100℃、好ましくは20〜90℃でpH7〜10のものを用いて、電流密度5〜100A/dm、好ましくは5〜50A/dmとなるように前記電解液の電気分解を行うことにより水素系−酸素系混合ガスを発生させることができる。
前記電解質としては、水溶性のアルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属酸化物、第4級アルキルアンモニウム、あるいは硫酸、リン酸などの無機酸、有機酸などを挙げることができる。
本発明で電解液に使用する水は、蒸留水が好ましいが、井戸水、工業用水、水道水、河川水、池の水なども使用できる。
本発明の振動撹拌手段の基本的態様は、少なくとも1つの振動発生手段と、該振動発生手段に連係して前記電解槽内で振動する少なくとも1つの振動棒及び該振動棒に取り付けられた少なくとも1つの振動羽根からなる振動撹拌部材とからなる振動撹拌手段である。
また、本発明の振動撹拌手段の他の基本的態様は、少なくとも1つの振動発生手段と、該振動発生手段に連係した前記電解槽内で振動する少なくとも1つの振動棒、該振動棒に取り付けられた少なくとも1つの振動羽根及び前記振動棒と前記振動発生手段との連結部に又は前記振動棒の振動羽根を取り付けた部分より前記連結部に近い部分に設けられた電気的絶縁領域からなる絶縁式振動撹拌部材とからなる絶縁式振動撹拌手段である。そして、本発明における撹拌手段としては絶縁式振動撹拌手段が好ましい。
絶縁式振動撹拌手段における絶縁式振動撹拌部材の振動棒には、振動羽根に加えて通電線と電気的に接続された電極用補助羽根を取り付けることができる。また電極用補助羽根は前記振動羽根と交互に位置するように振動棒に取り付けられていることが好ましい。さらに電極用補助羽根は振動羽根より大きな面積を持ち且つ振動羽根の先端部よりも更に突出していることが好ましい。
振動撹拌手段または絶縁式振動撹拌手段の発生手段は振動モータを含み、振動撹拌手段は振動モータを10Hz〜500Hz、好ましくは10Hz〜200Hz、とくに好ましくは20Hz〜60Hzの振動数で振動させるよう制御するためのインバータと併用することが好ましい。
前記絶縁式振動撹拌手段における振動棒の電気的絶縁領域より振動羽根側の位置に通電線を接続することにより、振動羽根や振動補助羽根を電解のための電極、すなわち陽極部材または陰極部材として使用することができる。
この場合、例えば図50に示すように、振動羽根は、液を振動撹拌させる機能と電極としての機能を兼務するが、電極用補助羽根は、液を振動撹拌する機能はほとんどあるいは全くもたず、もっぱら電極として機能する。
絶縁式振動撹拌手段は、例えば図52における電極対と併用することもできるが、絶縁式振動撹拌手段をもって前記電極対の代役をさせることもできる。この場合、図47に示すように、1つの絶縁式振動撹拌手段を陽極として利用し、他の1つの絶縁式撹拌手段を陰極として利用することもできる。また、一台の絶縁式振動撹拌手段であっても、例えば図48に示すように、振動棒を二本有するタイプのものであれば、一方の振動棒側を陽極とし、他方の振動棒側を陰極として使用することもできる。
以上の様な本発明においては、振動撹拌手段の振動羽根により電解液中に強力な振動流動が生ぜしめられるので、電解液は電極と十分良好な均一性をもって且つ十分な供給量をもって接触せしめられる。このため、陽極と陰極との間の距離を従来より著しく小さくしても、それらの間に電気分解に必要なイオンを十分に供給することが可能になり、また電極に発生する電解熱を迅速に放熱することができる。従って、高い電流密度で電気分解を行なって、高い効率で水素系−酸素系混合ガスを製造することができる。また、以上のように陽極と陰極との間の距離を小さくすることで、単位容積あたりに配置される電極の有効表面積を十分に高めることができるので、小型化しても十分な量の水素系−酸素系混合ガスを製造させることができる。
特に、以上の様な振動撹拌手段による電解液の振動撹拌を併用して電気分解を行う場合には、電極で発生する原子状水素や原子状酸素が電極間で気泡を形成せず、液中に分散するので、電解液中にて生成せしめられた水素や酸素が電極表面に気泡として付着し電気抵抗を増加させるようなことがない。このため、上記の様に容易に高い電流密度での電気分解の実現が可能となり、水素系−酸素系混合ガスを従来法より多量に発生させることができる。
本発明の水素系−酸素系混合ガス発生手段で発生せしめられる水素系−酸素系混合ガスは、所謂ブラウンガスとして知られているものとは異なり、Hと、Hと、Hおよび/またはHDと、OHと、16Oと、Oとを含むものであり、特に、
:55〜70モル%
H:0.12〜0.45モル%
およびHDの合計:0.03〜0.14モル%
OH:0.3〜1.2モル%
16O:1.0〜4.2モル%
:5〜27モル%
を含んでなるものである。
この水素−酸素混合ガスは、以下の点で、所謂ブラウンガスとして知られているものとは異なる。即ち、振動撹拌手段を併用すると、陽極部材と陰極部材との間隔を小さくしても電解が良好に行なわれ、特に陽極部材及び陰極部材に対して高い均一性と高い流速とをもって電解液が接触するので、電気分解に必要なイオン供給が十分となり、電解液中での水素−酸素ガスの泡立ちがなく、電気抵抗が大きくなることはない。かくして、本発明により得られる水素系−酸素系混合ガスはHやOになる以前の発生期の水素や酸素等に近い状態の活性成分(活性水素、活性酸素)の含有率が高い。
すなわち、振動撹拌手段を利用して得られた水素系−酸素系混合ガスを燃焼させてスペクトル分析器によりスペクトルを測定したところ、図71に示すように620nm近傍に活性成分であるOH基の存在を示すピークが認められ、また630nm近傍には活性成分である原子状水素Hαの存在を示すピークが認められた。従来の電気分解で得られるこの種のガス中には活性なOHや原子状水素の存在は全く確認できないのに対し、本発明の水素系−酸素系混合ガスあるいは水素系ガス中には驚くべきことにOHと原子状水素とが存在することが、火炎の輝度スペクトルを測定する(火口から15mmの個所で測定した場合も20mmの個所で測定した場合も、同一波長のところでピークがみられた)ことにより確認されたのである。
しかも、このOHと原子状水素の存在確認の結果は、本発明の振動撹拌手段を用いた電気分解で水素系−酸素系混合ガスが発生した直後に測定した場合と水素系−酸素系混合ガスをガス溜めに12時間程度溜めた後に測定した場合とでほぼ同様であった。したがって、製造により得られたガス中にOHや原子状水素がある瞬間のみ存在していたというわけではないのである。そして、これが水素系−酸素系混合ガスの燃焼にさいし、高温を発生する要因であると考えられる。
従来のブラウンガスにはこのようなピークの存在は認められない。そして、理由は未だ充分解明されていないが、このような相違点に起因して、本発明の振動撹拌手段を利用して得られた水素系−酸素系混合ガスまたは水素ガスを燃料電池の燃料として用いると、今までの燃料電池では得られなかった高度の発電効率を示すものと考えられる。
本発明者らは、振動撹拌手段を利用した水の電気分解により得られたガス(本明細書では、このガスを水素系−酸素系混合ガスと称している)を電子科学株式会社製質量分析計(二重収束質量分析計)[商品名EMD−O5SK]を用い、下記の条件により分析した。
イオン加速電圧:1200V
イオン化方式:電圧衝撃型
分解能:500
イオン飛行距離:26cm
真空度:5×10−7Torr
フルスケール:5V
この分析に供した水素系−酸素系混合ガスは、振動撹拌手段を設けた電解槽から発生したガスを図72のガス溜めに貯蔵し、1つは図72のシールポットを通して得られた処理ガスであり、他の1つは、前記シールポットを通さないで得られた生ガスである。前記シールポットはガスを着色して取扱い上便利にしたものであり、シールポット内にはメタノール30%と水70%よりなるアルコール水溶液が充填されており、シールポットに生ガスを供給すると、生ガスは前記メタノール水溶液中を泡状になって通過したものである。そのため得られた処理ガスの成分は微妙に生ガスのデータと異なっている。
質量分析で得られたデータ(チャート)の一部を図63(生ガス)及び図64(処理ガス)に示す。処理ガスでは、生ガスの構成成分の他に、メタノールに起因すると思われる質量の高い成分が含まれている。いずれにしても、これらのチャートから、本発明のガスは、従来のガスに比べて、H、H及び/またはHD、OH及び16Oをも含有している点に大きな特徴があることが分かる。
但し、図63及び図64での高さは全て同一の条件で測定して表示したものではなく、図示されるGAINが(1)の質量については実際の高さの100倍の高さを示し、図示されるGAINが(2)の質量については実際の高さの10倍の高さを示し、図示されるGAINが(3)の質量については実際の高さを示している。即ち、GAIN(2)及びGAIN(3)の質量については該当するガス成分量が少なすぎるので、増幅して測定したものである。
これらの図から求めたガス組成を以下の表1に示す。

(A),(a):ゴム性容器に採取;測定時真空度8×10−7Torr;ガス採取後0.5時間目に測定
(B),(b):ゴム性容器に採取;測定時真空度8×10−7Torr;ガス採取後24時間目に測定
(C),(c):ガスバリヤー用容器に採取;測定時真空度5×10−7Torr;ガス採取後1時間目に測定。
図62に、本発明による発電方法の実施される燃料電池の模式的構成を示す。従来の燃料電池と同様な燃料極及び空気極が、中空層または電解質層を介在させて配置されている。燃料極側の第1ガス室にはガス供給口から第1のガスが供給され、空気極側の第2ガス室にはガス供給口から第2のガスが供給される。
中空層または電解質層としては、従来の燃料電池で用いられている電解質層と同様なものを使用することができる。例えば、電解質層を構成する電解質としては、アルカリ水溶液型燃料電池における電解質である水酸化カリウム、酸水溶液型燃料電池における電解質であるりん酸、溶融炭酸塩型燃料電池における電解質である炭酸リチウムまたは炭酸カリウム、固体酸化物燃料電池における電解質である安定化ジルコニア、固体高分子型燃料電池における電解質であるイオン交換膜(カチオン交換膜)を使用することができる。
中空層または電解質層としては、その他に、例えば空気のみの空隙層、或いはそこに金属メッシュ、ガラスメッシュ、カーボンメッシュ、濾紙、精密濾過膜、限外濾過膜、NF膜、逆浸透膜、ガス分離膜、高分子ゲル、無機ゲル、高分子フィルム、黒鉛シート等を充填した多孔質の中空層(即ち繊維層やガス透過性セラミック層のようにガスが流通できる機能を有する層)を使用することができる。
燃料極及び空気極のガス室に面する側の表面は、ガスとの接触面積を大きくするために多数の溝を並列させてなる凹凸状表面としておくのが好ましい。
第1のガスとしては、本発明の上記水素系−酸素系混合ガスまたは水素系ガスを用いることができる。また、第2のガスとしては、空気、酸素ガス、上記の酸素系ガス、または本発明の上記水素系−酸素系混合ガスが挙げられる。
従来の水素ガスを燃料とした燃料電池においては、燃料極でプロトンを形成し且つこれを空気極で酸素と反応させて発電を行うためには、電解質層は不可欠であった。本発明では、第1のガスとして上記水素系−酸素系混合ガスまたは水素系ガスを使用することで、電解質層の代わりに中空層を用いることができる。但し、この場合、燃料極はガス透過性のものとする。中空層は、燃料極と空気極との間がショートしないようにするためにのみ必要である。尚、本発明では、第1のガス及び第2のガスの双方として上記水素系−酸素系混合ガスを使用することもでき、この場合、空気極もガス透過性のものとする。これらの本発明による燃料電池は、電解質層が不要である点が大きな特徴であり、セルの構造が簡素化され、電解質層のメンテナンスが不要になるという大きな利点がある。なお、その他の点は、従来の燃料電池の構成及び材料等を転用することができる。
燃料電池の燃料極側に設けられたガス供給口から、水素系−酸素系混合ガスを供給すると、水素は燃料極に電子を与えながら、ガス透過性である燃料極を通り抜けて電解質層または中空層にはいり込む。ガス透過性にするためには燃料極を例えばポーラスな構造とする。
なお、本発明においては、電解質層がなくともよいため、この部分を中空の状態(多孔性プラスチック層や多孔性セラミック層としてもよい)となし上記中空層とすることができる。この部分は燃料極と空気極とを隔離できればそれで充分な部分である。通常、中空層の厚みは1μm程度から10cm程度までの範囲である。
例えば、電解質として固体高分子電解質を用いるとすると、カチオン交換膜を電解質とした場合には、次のような電池反応が起こる。
空気極(陽極):1/2O+2H+2e→HO (1)
燃料極(陰極):H→2H+2e (2)
全反応:1/2O+H→HO (3)
また、アニオン交換膜を電解質とした場合には、次のような電池反応が起こる。
空気極(陽極):1/2O+HO+2e→2OH (4)
燃料極(陰極):H+2OH→2HO+2e (5)
全反応:1/2O+H→HO (6)
固体高分子電解質をガス透過性とするためには、電解質となる固体高分子を繊維状とし、これを織布や不織布の形体とすることなどにより達成できる。なお、本発明においては、電解質層は中空層でもよいのであるから、この場合には、繊維状物質は固体高分子電解質でない単なる繊維状物質を用い、これを含む層を中空層としてもよい。
したがって、反応生成物である水は電解質層または中空層の所定の個所から排出する必要があり、また未反応ガスがある場合を考えると、ガスの流れをスムースにするため、電解質層または中空層にガス排出口も設けることが好ましい。なお、未反応ガスと反応生成物の水とを同時に1つの排出口から系外へ出すこともできる。
燃料電池は、それに用いる電解質の種類によりいろいろのタイプに分類される。例えば、アルカリ型燃料電池、固体酸化物型燃料電池(SOFC)、燃料溶解型燃料電池、リン酸型燃料電池(PAFC)、固体高分子電解質型燃料電池(PEFC/PEM)、溶融炭酸塩型燃料電池などがあり、本発明は、いずれのタイプの燃料電池にも使用できるが、リン酸型燃料電池、固体高分子電解質型燃料電池、固体酸化物型燃料電池あるいはメタノール直接型燃料電池(当然本発明では燃料としてメタノールを用いるのではなく、本発明の水素系−酸素系混合ガスを用いる)に適用するのが好ましく、とりわけ固体高分子電解質型燃料電池や固体酸化物型燃料電池に適用するのがもっとも好ましい。
本発明においては、電解質層に代えて中空層を用いてもよいのであり、中空層の方がコスト的にもっとも有利であることは勿論である。
固体高分子電解質型燃料電池は、固体高分子電解質を使用するのであるが、この固体高分子電解質としては各種の高分子イオン交換膜を挙げることができ、その例としては、平成5年3月15日株式会社オーム社発行、「燃料電池発電システム」第100〜103頁とくに第101頁表−1記載の「フェノールスルフォン酸樹脂」、「ポリスチレンスルフォン酸」、「ポリトリフルオロスチレンスルフォン酸」、「(ポリ)パーフルオロカーボンスルフォン酸」などが挙げられる。とくに「(ポリ)パーフルオロカーボンスルフォン酸」としては、下記式

で示される構造のものが用いられている(xは重合度によって変化する)。尚、m≧1、n=2のものは商品名Nafionとして、m=0、n=2のものは商品名DOW膜として、それぞれ市販されており、これらの物性は、2001年11月30日コロナ社発行「燃料電池発電」第116〜128頁、とくに第120頁表6,1に記載されている。
また、この種の固体高分子電解質型燃料電池の構造は、昭和62年9月30日(株)サイエンスフォーラム発行「燃料電池設計技術」第102頁の図−2、図−3および「燃料電池発電」第118頁、第122頁および2001年6月29日 日経BP社発行「日経メカニカル別冊」第46〜47頁に記載されている。
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれにより何ら限定されるものではない。
【実施例1】
本実施例では図65〜図67の水素系−酸素系混合ガス発生手段であって以下に示すものを使用した。
(イ)振動撹拌手段
日本テクノ(株)商品名超振動α−撹拌機α−1型(電解液中を流れている
電流が振動モータにまで流れることがないように配慮され
ている絶縁式振動攪拌機)
振動モータ:75W×200V×3相
(株)村上精機製作所製低周波振動モータ
商品名ユーラスバイブレーター
振動棒:SUS304製直径16mmのもの2本
振動羽根:SUS304製厚さ6mmのもの4枚
固定部材:SUS304製
弾性部材シート:商品名テフロン(登録商標)シート
(ロ)固定電極
プラス極:チタン板に白金めっき被覆したもの27枚
マイナス極:チタン板24枚
(ハ)インバータ:富士電機(株)製商品名FVR−E11S
45Hzに調整して使用
(ニ)整流器(振動モータ用):中央製作所製Power Master[登録商標]、200V
(ホ)電解槽:SUS304製(内面に塩化ビニル樹脂被覆したもの)
内径220mm×320mm×400mm(H)
蓋部材はSUS304である。
(ヘ)蓋部材と振動棒との間のシール(図68参照)
振動モータの振動軸への振動によってもガス漏れが発生しないよ
うシリコーン充填によりシールを完全にした。
(ト)水素系−酸素系混合ガスを電解槽から燃料電池に導くに当っては、図59や図60の安全装置を使用するが、本実施例では図59と図60の安全装置を併用したタイプの図72のシステムを用いた。
(チ)電解液:蒸留水にKOH20wt%を溶解したもの
55℃、pH10で電解を行い必要量の水を補充する。
本実施例では100アンペアー、3Vで約1000リットル
/分の水素系−酸素系混合ガスを製造できた。
(リ)燃料電池の構造と使用法:
本発明の水素系−酸素系混合ガスを用いて、市販の小型固体高分子型燃料電池を利用して発電を行った。この電池の各部品の構成は図69に示すとおりであり、これを組立てた燃料電池の断面図を図70に示す。図70の左側の開口部(この市販装置はこの開口部より水素ガスを供給する)より水素系−酸素系混合ガスを供給し、右側の開口部(この市販装置ではこの開口部より酸素含有ガス、例えば空気を供給する)はシールした。
図69の市販小型固体高分子型燃料電池の構成において、外周ゴムリング付プレートに膜/電極接合体すなわちMEA(2001年8月20日 株式会社日本実業出版社発行、池田宏之助編著「燃料電池のすべて」第146〜147頁参照)が単セルの機能部分であって、固体高分子電解質である商品名Nafionをマイナス極とプラス極でサンドイッチしたものの外周をゴムリングで覆った構造のものである。本発明においては、水素系−酸素系混合ガスは図69に示すとおり、図69における図の上部に存在する中央の孔から供給されるが、図69における図の下部にある孔(本来空気供給用の孔)はゴム栓によりシールした。
この電池を単セルとして、市販小型固体高分子型燃料電池の本来の使用方法で発電した場合(従来例)は、その出力は0.6〜0.7V、0.15〜0.2Wであるが、実施例1の場合の出力は0.6V、0.5Wであり、出力が2.5倍となっている。
また、従来の使用方法で発電した場合は、長時間使用すると100℃近くまで発熱するので、長時間の使用が困難であるが、この実施例の場合は余り発熱せず、長時間の使用が可能である。
図70に示すように、これを単セルとして使用するときは接続端子1を燃料極とし、接続端子3を空気極として使用し、2セルとして使用するときは、接続端子3を燃料極とし、接続端子2を空気極として使用し、3セルとして使用するときは、接続端子1を燃料極とし、接続端子2を空気極として使用する。
なお、この電池における電解質層は、図69の外周ゴムリング付プレートに相当しており、この層は水を含浸した多孔質高分子(通常、トリエチルホスフェートを可塑剤にしたポリパーフルオロカーボンスルフォン酸の多孔質膜;デュポン社商品名Nafion)であり、水素と酸素とが反応して生成する反応水はここから浸み出して外部に排出される。
また、前記電解質層をとりのぞき、その部分を中空層すなわち空気層とし、ガス透過性の極板を通して本発明の水素系−酸素系混合ガスを導入したところ、混合ガス中に含まれている水分(HO)が電解質的な作用をしているのか、ともかく驚くべきことに電解質層がなくても電解質層がある場合と全く同様に発電が行なわれた。中空層を使用する場合、燃料電池の電極として、Niの他にPt,Rdを使用することも可能である。
実施例1で得られた水素系−酸素系混合ガスを前述の分析手法に従って分析した結果も前記表1の処理ガスのデータとほとんど同一であった。とくに、H、H、HD、OHを含有している点が特徴的であり、これらの存在が活性の高さ、高エネルギー発生の原因になっているものと推定される。また、水素と酸素の比が2:1ではなく、水素がリッチな点も特徴的である。
このような成分をもつ水素系−酸素系混合ガスまたは水素系ガスは、振動撹拌手段を採用した場合のみに認められることであり、これ以外の方法で得られた水素ガス、酸素ガス、水素系−酸素系混合ガスでは認められない。
前記含有成分は非常に不安定なものと考えられていたが、本発明の振動撹拌手段を用いて得られた水素系−酸素系混合ガスまたは水素系ガス中のこれらの成分は密閉容器中で、あるいは圧力容器中で1ヶ月〜2ヶ月位存続することができる。
【実施例2】
実施例1のように電解槽で発生したガスを安全装置を通して直接燃料電池に送ることをせず、電解槽で発生した実施例1の水素系−酸素系混合ガスをガス溜めに貯蔵し、1日放置後、図59のシールポットや図60の炎止めタンクを通すことなく、直接実施例1の燃料電池の水素ガス供給口に前記水素系−酸素系混合ガス(生ガス)を供給したが、実施例1と同一の効果が得られた。また、この生ガスを前記と同様に分析した結果、前記生ガスの分析結果とほぼ同様のデータが得られた。とくにH、H、HD、OHをほぼ同程度含有している点においても共通していることが確認できた。
【実施例3】
本実施例では図50の振動撹拌手段を用いた水素系−酸素系混合ガス発生手段であって以下に示すものを使用した。
(イ)振動撹拌手段(絶縁式振動撹拌手段)
日本テクノ(株)商品名超振動α−撹拌機(α−2型)
振動モータ:150W×200V×3相
振動棒:SUS304製直径16mmのもの2本
振動羽根:SUS304製厚さ6mmのもの5枚
電極用補助羽根
極板マイナス側:SUS304製3枚
極板プラス側 :SUS304製に白金めっき(10μm厚)
したもの2枚
(ロ)インバータ:富士電機(株)製商品名FVR−E11S
55Hzに調整して使用
(ハ)整流器:中央製作所製Hi−Mini、200V
(ニ)電解槽:SUS304製
内径220mm×320mm×440mm(H)
内面塩化ビニル樹脂被覆したもの
蓋部材はSUS304である。
(ホ)蓋部材と振動棒との間のシール(図68参照)
振動モータの振動軸への振動によってもガス漏れが発生しないよ
うシリコーン充填によりシールを完全にした。
(ヘ)水素系−酸素系混合ガスを電解槽から燃料電池に導くに当っては、図59や図60の安全装置を使用するが本実施例では図59と図60の安全装置を併用したタイプの図72のシステムを用いた。
(ト)使用電解液:蒸留水にKOH20wt%を溶解したもの
50℃、pH10で電解を行い必要量の水を補充する。液は
冷却しなくても温度上昇は認められなかった。
本実施例では100アンペアー、3Vで約1000リットル
/分の水素系−酸素系混合ガスを製造できた。
以上の手段により生成した水素系−酸素系混合ガスは、前述の分析手法で分析した結果、前記表1の処理ガスとほぼ同様の分析結果を示し、H、H、HD、HO、OHをほぼ同程度含有している点においても共通していることが確認できた。この水素系−酸素系混合ガスを図73に示す固体高分子電解質型燃料電池に供給した。ただし、この燃料電池においては燃料極外側に水素系−酸素系混合ガスを供給し、未反応のガス成分と反応生成物の水は空気極外側より排出した。燃料極も空気極もガス透過性の白金触媒担持電極であり、固体高分子電解質膜はデュポン社の商品名Nafion(ポリパーフルオロカーボンスルフォン酸)に水を含浸した通気性のものを用いた。
その結果、実施例1と同程度の発電効果が得られた。
また、図73に示す固体高分子電解質型燃料電池から、高分子系電解質膜を取除き、その部分を中空層(空気層)とした以外は同様のテストを行なったところ、ほぼ同様の発電効果が得られた。
【実施例4】
実施例1において、燃料電池として図74に示す燃料電池を用いた以外は実施例1を繰り返した。
固体電解質膜は、ガス透過性のイオン導電性薄膜(500nm以下)で白金製のガス透過性マイナス極と白金製のプラス極に挟まれており、マイナス極はガス透過性になっている。
前記ガス透過性のイオン導電性薄膜としては、前記ポリパーフルオロカーボンスルフォン酸に相当する商品名Nafionを用いた。また、前記ガス透過性マイナス極は、多孔性の薄い導電性カーボンペーパーに粉末状白金をまぶして固定したものを用いた。
この実施例では、市販水素ガスボンベを水素ガス燃料として用いた燃料電池に較べてほぼ同様の電力が得られるのは驚くべきことであり、これは、振動撹拌手段を用いて得られた水素系−酸素系混合ガスの特性である。
また、図74に示す燃料電池より高分子系電解質膜を中空層とした以外は実施例4を繰り返したが、ほぼ同様の発電効果が得られた。
【実施例5】
実施例1における振動モータを高周波振動モータ商品名ハイフレユーラスKHE2−2Tに変更し、インバータで120Hzで振動させた以外は実施例1を繰り返した。実施例1とほぼ同様の結果が得られた。
【実施例6】
本実施例では図35の水素系−酸素系混合ガス発生手段であって以下に示すものを使用した。図48は、振動羽根等の枚数が異なるが、振動棒への振動羽根等の取付け状態を示し、図50はその側面図を示している。振動羽根と電極用補助羽根(陰極部材)の数は後述(イ)の項目に述べたとおりである。
(イ)振動撹拌手段
日本テクノ(株)商品名絶縁式超振動α−撹拌機α−2型
振動モータ:150W×200V×3相
(株)村上精機製作所製低周波振動モータ
商品名ユーラスバイブレーター
振動棒:SUS304製直径16mmのもの2本
振動羽根:SUS304製厚さ6mmのもの5枚
電極用補助羽根(電極部材):
陰極部材:SUS304 3枚
陽極部材:SUS304に10μmの白金めっきを
したもの 2枚
固定部材:SUS304製
弾性部材シート:商品名テフロン(登録商標)シート
(ロ)インバータ:富士電機(株)製商品名FVR−E11S−2
55Hzに調整して使用
(ハ)整流器(振動モーター用):中央製作所製Power Master、
200V
(ニ)電解槽:SUS304製(内面に塩化ビニル樹脂被覆したもの)
内径220mm×320mm×400mm(H)
蓋部材はSUS304である。
(ホ)蓋部材と振動棒との間のシール(図68参照)
振動モータの振動軸への振動によってもガス漏れが発生しないよ
うシリコーン充填によりシールを完全にした。
(ヘ)水素系−酸素系混合ガスを電解槽から燃料電池に導くに当っては、図59や図60の安全装置を使用するが、本実施例では図59と図60の安全装置を併用したタイプの図72のシステムを用いた。
(ト)使用電解液:蒸留水にKOH20wt%を溶解したもの(約55℃以上に
昇温することはないため、電解液を冷却する必要はない。)
55℃;pH10で電解を行い、必要量の水を補充した。
(チ)水素系−酸素系混合ガスの組成;
前述の分析手法で分析した結果、前記実施例と同様、前記表1の処理ガスデータとほぼ同一の結果が得られた。
(リ)燃料電池の構造と使用法、
図73に示す燃料電池の構造物(2001年6月29日、日経BP社発行、日経メカニカル別冊、「燃料電池開発最前線」図3−1−1および図3−1−2参照)を利用した。
図73に示す高分子固体電解質膜は、前述の商品名Nafionである。電極は、カーボンブラックの微粒子に白金系触媒を担持したものであって、白金系触媒を高分子電解質ポリマーに分散し、これをカーボンペーパー上にスクリーン印刷して得られたものである。この電極の間に前記Nafionを挟み、熱圧着してMEA(膜/電極接合体)としたものを一単位のセルとし、これを20枚積層したのが図73の下段に示すスタックである。
図73に示す燃料極(陰極)側より本発明の水素系−酸素系混合ガスを導入し、排出口から反応残渣を排出する。なお、本実施例においては空気極側の空気口はシールして使用した(図73のものの本来の使用法は燃料極に水素を、空気極に空気をそれぞれ供給するため、燃料極側と空気極側にそれぞれ供給口があるが、本発明では燃料極側に水素系−酸素系混合ガスを供給するため、空気極側に空気すなわち酸素を供給する必要はない)。
本実施例の場合は、水冷をしなくても80℃以下に保たれた状態で2日間連続発電が可能であったが、図73本来の使用法によると、冷却をしないと電池は100℃以上に発熱し、高分子膜が破壊した。また発電効率も本発明のものは、本来の使用法の場合に較べて30〜40%向上した。
【実施例7】
実施例6のように、補助羽根を振動羽根と反対側に設置することにより極間距離を短くしても相互の接触が発生しないという大きなメリットがある。
また、このようなタイプの補助羽根と振動羽根を用いることにより実施例1や2のような固定電極を設けるスペースがはぶけるので、実施例6の電解槽の両端に振動撹拌電極をセットすることができた。
このような水素系−酸素系混合ガス発生手段を用いて実施例6の燃料電池を用いて発電を行った。
なお、本実施例の水素系−酸素系混合ガスも前記表1に示す処理ガスと同様の組成と特徴点を有していた。
[比較例1]
実施例6の燃料電池に市販の水素ガスボンベより水素ガスを供給し、該燃料電池の空気口より空気を供給して、発電を行った。
実施例6および7と比較例1の発電状況は、下記表2のとおりである。

【実施例8】
実施例1において、燃料電池として図74に示す燃料電池を用いた以外は実施例1を繰り返した。
図74に示す構成の燃料電池は、「Nature」vol.343,8 February 1990,第547〜548頁に記載されているものである。
固体電解質膜は、ガス透過性のイオン導電性薄膜(500nm以下)で白金製のガス透過性燃料極と白金製の空気極とに挟まれており、燃料極はガス透過性になっている。
前記ガス透過性のイオン導電性薄膜としては、Al・2HOの組成をもつ低密度ベーマイト型(γ−AlOOH)無機材料を用いた。また、前記ガス透過性燃料極は、多孔性の薄い導電性カーボンペーパーに粉末状白金をまぶして固定したものを用いた。
この実施例では、前記Nature記載の燃料電池に較べてほぼ3〜3.5倍の電力が得られるのは驚くべきことであり、これは、振動撹拌手段を用いて得られた水素系−酸素系混合ガスの特性である。
また、セラミック電解質層を中空層(空気層)におきかえて実験を行なったが、ほぼ同じ発電効率が得られた。
【実施例9】
2001年6月29日、日経BP社発行、日経メカニカル別冊、「燃料電池開発最前線」の「自動車、携帯機器、家庭電源が替る」第68〜69頁とくに図44に示されているManhattan Scientifics社の「Micro Fuel Cell」を用いた。その構成を図75に示す。この電池のメタノール供給口にメタノールの代わりに本発明の水素系−酸素系混合ガス(生ガスの場合と処理ガスの場合の両方について実施)を供給し、空気供給口はシールして燃料電池を機能させた。
その結果、メタノールを燃料として用いた場合よりも良好な発電結果が得られた。
また、電解質層を中空層(空気層)におきかえて実験を行なったが、ほぼ同じ発電効率が得られた。
【実施例10】
本実施例は、特開2002−280015号公報記載の単室型固体電解質型燃料電池に、炭化水素と空気の混合ガスを供給する代りに、本発明の水素系−酸素系混合ガス(生ガスの場合と処理ガスの場合の両方について実施)を供給することにより行い、0.5W/cmの電力が得られた。
この単室型固体電解質型燃料電池の構成は、前記特開2002−280015号公報記載のとおりであるが、一応以下にそれを説明する。
この単室型固体電解質型燃料電池は、図76及び図77に示すように、円盤状の酸素イオン伝導性固体電解質の同一面に、それぞれ空気極及び燃料極を備える構成である。また、本単室型固体電解質型燃料電池は、アルミナ管中に収め、このアルミナ管にメタンと空気との混合気体を流通させた状態で使用する。
酸素イオン伝導性固体電解質は、La1−zSrGa1−wMg3−δまたはCe1−γLnγ2−δを用いた。また、空気極は、ストロンチウムをドープしたLn1−xSrCoO3±δ(前記Ln;希土類元素、特にLa、Sm、GdまたはYb)であり、とくにSm0.5Sr0.5CoO3±δを用いた。更に、燃料極は、ニッケルと、サマリウムをドープした酸化セリウムの混合物(Ce1−γSmγ2−δ)とにパラジウムを1質量%添加した電極である。サマリウムをドープした酸化セリウムの混合物は、Ce0.8Sm0.21.9(SDC)を用いた。また、NiとSDCの混合比は重量比で7:3とした。また、空気極及び燃料極は図77に示すように、所定の空隙ができるように、間隔を空けて設けられている。
この単室型固体電解質型燃料電池を次に示すように作製した。始めは、酸素イオン伝導性固体電解質の表面に燃料極を形成する。酸化ニッケル粉末とSDC粉末を所定量秤量し、適当な有機溶媒を用いて混合粉砕した後、所定量の酸化パラジウム粉末を加えて混合粉砕してペースト状の電極材を調節する。これを酸素イオン伝導性固体電解質上にスクリーン印刷し、1400℃にて焼き付け処理を行った。
次いで、酸素イオン伝導性固体電解質における燃料極が形成された面と同じ側に燃料極と所定の間隙を空けて空気極を形成する。Ln1−xSrCoO3±δ(ここでは、Sm0.5Sr0.5CoO3±δを使用した。)を有機溶媒に溶解させて粉砕してペースト状の電極材を調節する。これを酸素イオン伝導性固体電解質の燃料極と同側の面にスクリーン印刷し、900℃にて焼き付け処理を行った。
電極の間隔は3×10−3mとした。また、燃料極のPd添加量は5wt%とし、酸素イオン伝導性固体電解質は、□7×10−3m、厚さ0.3×10−3m、表面粗さRa0.06×10−6mのものを用いた。
【実施例11】
実施例1に使用した水素系−酸素系混合ガス発生手段を用い、発生した水素系−酸素系混合ガスを酸素分離器を用いて酸素系ガスと水素ガス系を分離し、実施例6で用いた燃料電池の燃料極側より前記水素系ガスを、空気極側より前記酸素系ガスを供給して発電を行った。なお、電解槽内のマイナス極とプラス極の間に隔膜を設け、発生するマイナス極側の水素を主成分とするガス成分、すなわち水素系ガスとプラス極側の酸素を主成分とするガス成分、すなわち酸素系ガスを発生段階から分離、捕集し、その水素系ガスを燃料電池の燃料極に、酸素系ガスを燃料電池の空気極に供給して発電を行っても全く同様の結果が得られた。これらの結果、市販の水素ボンベと酸素ボンベを用いて同様の発電を行った場合に較べて約5割アップの発電効率を示した。これは、水素ガスを主成分とするガス成分すなわち水素系ガス中のH、H、HDおよびOHの存在が寄与しているものと推定するほかはない。
【実施例12】
本実施例では図65〜図67の水素系−酸素系混合ガス発生手段であって以下に示すものを使用した。
(イ)振動撹拌手段
日本テクノ(株)商品名絶縁式超振動α−撹拌機α−3型
(図49に示す)2台を電解槽中に振動羽根がそれぞれ
向き合うように設置
振動モータ:250W×200V×3相
(株)村上精機製作所製低周波振動モータ
商品名ユーラスバイブレーター
振動棒:SUS304製直径16mmのもの2本
振動羽根:SUS304製厚さ6mmのもの7枚
固定部材:SUS304製
弾性部材シート:商品名テフロン(登録商標)シート
前記絶縁式超振動α−撹拌機の一方をプラス極に、一方をマイナス極として使用し、両者の間には隔膜を設けて水素ガスを主成分とするガス成分すなわち水素系ガスと、酸素ガスを主成分とするガス成分すなわち酸素系ガスとを別々に採取した。なお、振動羽根をプラス極として使用する場合にかぎり、SUS板に白金めっき被覆を設ける。
(ロ)インバータ:(株)中央製作所製
50Hzに調整して使用
(ハ)整流器(振動モータ用):富士電機(株) 商品名FVR−C9S、
200V
(ニ)電解槽:SUS304製(内面に塩化ビニル樹脂被覆したもの)
内径700mm×500mm×500mm(H)
蓋部材はSUS304である。
(ホ)蓋部材と振動棒との間のシール(図68参照)
振動モータの振動軸への振動によってもガス漏れが発生しないよ
うシリコーン充填によりシールを完全にした。
(ヘ)水素系−酸素系混合ガスを電解槽から燃料電池に導くに当っては、水素ガスを主成分とするガス成分すなわち水素系ガスと酸素ガスを主成分とするガス成分すなわち酸素系ガスを分離し、いずれのガスも図59の安全装置を通し、水素ガスを主成分とするガス成分すなわち水素系ガスは実施例6の燃料電池の燃料極側に、酸素ガスを主成分とするガス成分すなわち酸素系ガスは実施例6の燃料電池の空気極側に供給して発電を行った。
一方、比較のために、市販の水素ガスボンベの水素ガスを実施例6の燃料電池の燃料極側に供給し、空気極側には空気を供給して発電を行った。
比較例のものに較べて本実施例のものの発電効率は約50%アップしていた。
これは、本実施例で得られた水素ガスを主成分とするガス成分すなわち水素系ガスがH、H、HDおよびOHを微量ながら含有しているという本発明ガスの特徴点を備えている(分析結果からみて)ことに基因するものと考えられる。
また、それぞれの単セルにおける電解質層を中空層にかえて実験を行なったが、ほぼ同様の発電効果が得られた。
【実施例13】
本実施例では図52〜図53の水素系−酸素系混合ガス発生手段であって以下に示すものを使用した。
(イ)振動撹拌手段
振動モータ:75W×200V×3相
(株)村上精機工作所製
ユーラスバイブレーター2極型KEE−1−2B
振動棒:チタン製直径16mmのもの2本
振動羽根:チタン製厚さ6mmのもの4枚
羽根の角度は水平面から15°に下向き傾斜
(ロ)固定電極
プラス極:ステンレス板に白金めっき被膜したもの 8枚
マイナス極:ステンレス板 9枚
(ハ)インバータ:富士電機(株)製商品名FVR−C9S
42Hzで作動
(ニ)整流器(振動モーター用):中央製作所製Power Master、
200V
(ホ)電解槽:SUS304製(ただし内面にポリカーボネート被覆をしたもの)
内径320mm×220mm×400mm(H)
(密閉蓋使用)
(ヘ)蓋部材と振動棒との間のシール(図68参照)
上下を合成ゴムでパッキングし、すき間にはシリコーン充填により密封。
(ト)水素系−酸素系混合ガスを電解槽から燃料電池に導くに当っては、図72のシステムを用いた。なお、発生ガスを測定するため、一部は図72のシステムを通さず生ガスとして回収し、他の一部は図72のシステムを追加した処理ガスとして回収し、分析に供した。
(チ)使用電解液:蒸留水にKOHを加え、20重量%水溶液として用いた。
40℃で電気分解を行い、消費された水は逐次補給した。
得られたガスの分析結果は、前記表1に示したとおりである。
(リ)燃料電池の構造と使用法
実施例1で用いた燃料電池をそのまま利用した。実施例1とほぼ同様の結果が得られた。
【実施例14】
本実施例では図65〜図67の水素系−酸素系混合ガス発生手段を用い、実施例13と同様にして水の電気分解を行い、本発明の水素系−酸素系混合ガスを製造した。得られた混合ガスを分析した結果は、前記表1の組成とほぼ同様であった。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】



【図10】

【図11】

【図12】

【図13】

【図14】

【図15】

【図16】

【図17】

【図18】

【図19】

【図20】

【図21】

【図22】




【図26】

【図27】

【図28】

【図29】

【図30】

【図31】

【図32】

【図33】

【図34】

【図35】

【図36】

【図37】

【図38】

【図39】

【図40】

【図41】

【図42】

【図43】

【図44】

【図45】

【図46】

【図47】

【図48】

【図49】

【図50】

【図51】

【図52】

【図53】

【図54】

【図55】

【図56】

【図57】


【図59】

【図60】

【図61】

【図62】

【図63】

【図64】

【図65】

【図66】

【図67】

【図68】

【図69】

【図70】

【図71】

【図72】

【図73】

【図74】

【図75】

【図76】

【図77】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
Hと、Hと、Hおよび/またはHDと、OHと、16Oと、Oとを含むことを特徴とする水素系−酸素系混合ガス。
【請求項2】
:55〜70モル%
H:0.12〜0.45モル%
およびHDの合計:0.03〜0.14モル%
OH:0.3〜1.2モル%
16O:1.0〜4.2モル%
:5〜27モル%
を含むものである請求項1記載の水素系−酸素系混合ガス。
【請求項3】
前記水素系−酸素系混合ガスが、
(A)電解液を収容するための電解槽、
(B)該電解槽内に収容される電解液と接するように配置される陽極部材および陰極部材よりなる電極対と、前記陽極部材および陰極部材の間に電圧を印加する電源とを含んでなる電気分解手段、
(C)前記電解槽に収容される電解液を振動撹拌するための振動撹拌手段、及び
(D)前記電解槽内に収容される電解液の前記電気分解手段による電気分解で形成される水素系ガスおよび酸素系ガスを捕集するためのガス捕集手段、
を有する水素系−酸素系混合ガス発生手段、を用いて得られたものである請求項1記載の水素系−酸素系混合ガス。
【請求項4】
請求項1〜3いずれか記載の水素系−酸素系混合ガスよりなる燃料電池用燃料。
【請求項5】
Hと、Hと、Hおよび/またはHDと、OHとを含むことを特徴とする水素系ガス。
【請求項6】
前記水素系ガスが、
(A)電解液を収容するための電解槽、
(B)該電解槽内に収容される電解液と接するように配置される陽極部材および陰極部材よりなる電極対と、前記陽極部材および陰極部材の間に電圧を印加する電源とを含んでなる電気分解手段、
(C)前記電解槽に収容される電解液を振動撹拌するための振動撹拌手段、及び
(D)前記電解槽内に収容される電解液の前記電気分解手段による電気分解で形成される水素系ガスを捕集するためのガス捕集手段、
を有する水素系ガス発生手段、を用いて得られたものである請求項5記載の水素系ガス。
【請求項7】
請求項5または6記載の水素系ガスよりなる燃料電池用燃料。
【請求項8】
燃料極と、空気極と、これらの間に介在する中空層とを含んでなる単セルまたはそれを積層したスタックよりなることを特徴とする燃料電池。
【請求項9】
燃料極と、空気極と、これらの間に介在する電解質層または中空層とを含んでなる単セルまたはそれを積層したスタックよりなる燃料電池であって、
(A)電解液を収容するための電解槽、
(B)該電解槽内に収容される電解液と接するように配置される陽極部材および陰極部材よりなる電極対と、前記陽極部材および陰極部材の間に電圧を印加する電源とを含んでなる電気分解手段、
(C)前記電解槽に収容される電解液を振動撹拌するための振動撹拌手段、及び
(D)前記電解槽内に収容される電解液の前記電気分解手段による電気分解で形成される水素系ガスを捕集するためのガス捕集手段、
を有する水素系ガス発生手段、を用いて得られた水素系ガスを供給するための供給口を燃料極側に設け、かつ前記水素系ガスを供給される側の燃料極をガス透過性としたことを特徴とする燃料電池。
【請求項10】
燃料極と、空気極と、これらの間に介在する電解質層または中空層とを含んでなる単セルまたはそれを積層したスタックよりなる燃料電池であって、
(A)電解液を収容するための電解槽、
(B)該電解槽内に収容される電解液と接するように配置される陽極部材および陰極部材よりなる電極対と、前記陽極部材および陰極部材の間に電圧を印加する電源とを含んでなる電気分解手段、
(C)前記電解槽に収容される電解液を振動撹拌するための振動撹拌手段、及び
(D)前記電解槽内に収容される電解液の前記電気分解手段による電気分解で形成される水素系ガスおよび酸素系ガスを捕集するためのガス捕集手段、
を有する水素系−酸素系混合ガス発生手段、を用いて得られた水素系−酸素系混合ガスを供給するための供給口を燃料極側または燃料極側と空気極側との両方に設け、かつ前記水素系−酸素系混合ガスを供給される側の極をガス透過性としたことを特徴とする燃料電池。
【請求項11】
前記振動撹拌手段が、少なくとも1つの振動発生手段と、該振動発生手段に連結された少なくとも1つの振動棒および該振動棒に取付けられた少なくとも1つの振動羽根からなる振動撹拌部材とを含むものである請求項9または10記載の燃料電池。
【請求項12】
インバータにより振動モータを10〜500Hzで振動させ、この振動を振動応力分散手段を介して振動棒に伝達し、該振動棒に一段または多段に固定された振動羽根を振幅0.01〜30.0mm及び振動数500〜30000回/分で振動させることにより、電解液を振動撹拌しながら電気分解して得られた水素系ガスを燃料電池に供給することを特徴とする燃料電池を用いた発電方法。
【請求項13】
前記水素系ガスが、Hと、Hと、Hおよび/またはHDと、OHとを含むものである請求項12記載の燃料電池を用いた発電方法。
【請求項14】
インバータにより振動モータを10〜500Hzで振動させ、この振動を振動応力分散手段を介して振動棒に伝達し、該振動棒に一段または多段に固定された振動羽根を振幅0.01〜30.0mm及び振動数500〜30000回/分で振動させることにより、電解液を振動撹拌しながら電気分解して得られた水素系−酸素系混合ガスを燃料電池に供給することを特徴とする燃料電池を用いた発電方法。
【請求項15】
前記水素系−酸素系混合ガスが、Hと、Hと、Hおよび/またはHDと、OHと、16Oと、Oとを含むものである請求項14記載の燃料電池を用いた発電方法。
【請求項16】
前記水素系−酸素系混合ガスが、
:55〜70モル%
H:0.12〜0.45モル%
およびHDの合計:0.03〜0.14モル%
OH:0.3〜1.2モル%
16O:1.0〜4.2モル%
:5〜27モル%
を含むものである請求項15記載の燃料電池を用いた発電方法。
【請求項17】
インバータにより振動モータを10〜500Hzで振動させ、この振動を振動応力分散手段を介して振動棒に伝達し、該振動棒に一段または多段に固定された振動羽根を振幅0.01〜30.0mm及び振動数500〜30000回/分で振動させることにより、電解液を振動撹拌しながら電気分解して得られた水素系−酸素系混合ガスを、燃料極と、空気極と、これらの間に介在する中空層とを含んでなる単セルまたはそれを積層したスタックよりなる燃料電池のガス透過性燃料極側またはガス透過性燃料極側とガス透過性空気極側との両方に、燃料として供給して発電することを特徴とする燃料電池を用いた発電方法。
【請求項18】
前記水素系−酸素系混合ガスが、Hと、Hと、Hおよび/またはHDと、OHと、16Oと、Oとを含むものである請求項17記載の燃料電池を用いた発電方法。
【請求項19】
前記水素系−酸素系混合ガスが、
:55〜70モル%
H:0.12〜0.45モル%
およびHDの合計:0.03〜0.14モル%
OH:0.3〜1.2モル%
16O:1.0〜4.2モル%
:5〜27モル%
を含むものである請求項18記載の燃料電池を用いた発電方法。

【国際公開番号】WO2004/092059
【国際公開日】平成16年10月28日(2004.10.28)
【発行日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−505482(P2005−505482)
【国際出願番号】PCT/JP2004/005497
【国際出願日】平成16年4月16日(2004.4.16)
【出願人】(392026224)日本テクノ株式会社 (8)
【Fターム(参考)】