説明

燃料電池用金属分離板

【課題】簡単な成形方法で製造される構造を通して、冷却水の円滑な流出入を確保できる燃料電池用金属分離板であり、金属分離板の中間部分に冷却水が流入し、特に、反応熱の蓄積が多い分離板の中間部分を効率的に冷却できる、冷却水流入開口部及び冷却水排出開口部を冷却水チャンネルに連結する冷却水連結通路をさらに含む燃料電池用金属分離板を提供する。
【解決手段】金属分離板100の第1面から第2面に突出形成される反応ガスチャンネル140と、金属分離板の第2面から突出された各反応ガスチャンネルの間に形成される冷却水チャンネル150と、第2面に少なく突出された反応ガスチャンネルの一部によって形成される冷却水チャンネル連結部110とを含むことを特徴とする燃料電池用金属分離板。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池用金属分離板に関するもので、より詳細には、反応ガスチャンネル及び冷却水チャンネルを含み、各冷却水チャンネルの間を連結する冷却水流出入口をさらに含む燃料電池用金属分離板に関するものである。
【0002】
また、本発明は、反応ガス流入部の変形を防止する構造を備える燃料電池用金属分離板に関するものである。
【背景技術】
【0003】
一般的に、燃料電池は、水素と酸素の酸化及び還元反応を用いて化学エネルギーを電気エネルギーに変換する発電装置である。陰極での水素酸化によって水素イオンと電子に分離され、水素イオンは、電解質を通して陽極に移動する。このとき、電子は、回路を通して陽極に移動する。陽極では、水素イオン、電子及び酸素の反応によって水が発生する還元反応が起こる。
【0004】
燃料電池、特に固体高分子形燃料電池(Polymer Electrolyte Membrane Fuel cell:PEMFC)の高分子電解質膜に含有される水の量は、燃料電池の性能を左右する重要な要素の一つである。これは、水が水素イオンを陽極に伝達する媒介体としての役割をするためである。
【0005】
また、水の管理の他に重要に管理されるべき対象が温度である。燃料電池で反応が起こるとき、熱が非常に多く発生するが、その原因としては、アクティベーションロス、(activation loss)、陽極での還元反応及びジュール加熱(Joule heating)などが挙げられる。多くの熱が発生すると、触媒を活性化することになるが、電解質膜の水分減少を促進し、電解質膜の耐久性を低下させる。したがって、水の管理及び耐久性向上と一緒に、温度の制御も、燃料電池の性能を決定するのに必要な核心要素である。
【0006】
一般的に、燃料電池の温度を制御するために、冷却水を利用した冷却方法が用いられる。既存の燃料電池においては、黒鉛材質及び金属材質で製造された分離板が用いられる。冷却水チャンネルは、黒鉛分離板にミーリング加工を通して形成され、金属分離板にプレス加工を通して形成される。このとき、冷却水チャンネルは、その幅が狭いだけでなく、屈曲を有する構造となっているので、冷却水の流出入が円滑でなかった。既存の黒鉛分離板においては、反応面と冷却面が異なるように製作できるが、特に、金属分離板には、反応ガスチャンネルのスタンピング加工によって、その反対面にチャンネルの形態がそのまま投影されるので、冷却水の流路を別個に確保しにくいという短所がある。
【0007】
上記のような問題点を解決するために、別途の冷却水流入構造を製造しにくい金属系分離板への円滑な冷却水流入のために、一般的にマニホールドとチャンネルとの間に緩衝領域を設けて冷却水を流入させる構造が用いられた。しかしながら、熱の蓄積が最も多い分離板の中間部分への冷却水流入がよく行われなく、緩衝領域を別途に備えることで分離板が大きくなるという短所がある。
【0008】
また、米国特許公報US6924052には、エッチングで別途の冷却流路を設ける分離板が開示されている。これを通して、反応熱の蓄積が相対的に多い分離板の中間部分に多量の冷却水を流入できるという長所がある。しかしながら、金属の密度が高くなることで、スタックの重さが増加するようになる。また、各分離板の間に薄板を使用することで、費用増加及びスタック積層における構造的な複雑さなどの問題をもたらす。
【0009】
また、分離板に冷却フィンを適用する構造があるが、これも、スタックの体積増加をもたらし、複数個の分離板を重畳して使用することで生産費用の増加をもたらす。
【0010】
また、燃料電池は、電気化学反応が起こるMEA(膜−電極集合体)と、反応ガスをMEAの表面に均一に分散させる多孔性媒体であるGDLと、MEA及びGDLを支持し、反応ガスと冷却水の輸送及び生成された電気の収集・伝達を担当する分離板などのような多様な部品で構成される。これら部品を数十個または数百個積み重ねることで燃料電池スタックが形成される。燃料電池の発電容量は、MEAの反応面積とスタックの積層量に比例して大きくなる。燃料電池の発電時、MEA、GDL及び分離板の各面に水素、酸素及び冷却水が継続的に供給されて流れるようになるが、反応ガスと冷却水が互いに混合されないように気密性を確保することは、燃料電池システム運転において最も重要な要素の一つである。
【0011】
ほとんどの高分子電解質燃料電池においては、分離板の両側面にガスケットを設置して気密構造を確保する方式を採択しているが、ガスケットを設置して気密性を確保する場合、気密性向上及び電気伝導性向上のために燃料電池スタックに数気圧の締結圧を加えるようになる。このように荷重が加えられると、GDLとガスケットでほとんどの変形が起こりながら気密性と電気伝導性を確保するようになるが、薄板成形で製作された金属系分離板の場合、数気圧の締結圧でガスケットと金属分離板の一部が一緒に変形される。特に、反応ガス及び冷却水の流入部分では、ガスケットが存在する部分と流体が通り過ぎるべき部分における支持構造の不在によって変形が容易に行われる。
【0012】
このような変形が発生する場合、反応ガスと冷却水の円滑な流入が難しくなり、周辺装置、特にブロワーやポンプに多くの負荷を加えるようになり、システムの効率が低下する。
【0013】
従来の燃料電池スタックにおいては、膜−電極接合体の両面に燃料ガス及び還元ガスの反応ガスがそれぞれ流れ、金属分離板は、単位セルの連結によって燃料電池スタックを形成するように燃料ガス、還元ガス及び冷却水を分離する。ガスケットは、反応ガス及び冷却水が漏れないように密封する役割をする。黒鉛系分離板と異なり、薄板成形で製作された金属分離板の場合、反応ガスと冷却水との間の気密性を確保するために反応ガスマニホールドから反応ガスチャンネル内部への反応ガス流入構造が複雑になるしかない。
【0014】
上記のような問題点を解決するために、米国特許公開公報20040219410には、変形が発生する部分に変形防止のための別途のガスケットを塗布する技術が開示されている。しかしながら、ガスケットは、荷重による圧縮を完全に支持することができなく、別途のガスケットの離脱によって反応ガス流入部が遮られる場合、反応ガスの流入時に抵抗が一層大きくなる。
【0015】
また、米国特許公開公報US2001266911には、金属板を付着することで空間の変形を最小化する技術が開示されている。しかしながら、金属分離板に他の金属分離板を装着することは難しいので、金属分離板の製造工程が複雑になるという短所がある。また、別途に金属板が追加されることで、スタックの重さが増加し、燃料電池システムが装着された装置にかかる負荷が大きくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】米国特許公報US6924052
【特許文献2】米国特許公開公報20040219410
【特許文献3】米国特許公開公報US2001266911
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は、分離板の大きさを最小化しながら冷却性能を確保できる燃料電池用金属分離板を提供することを目的とする。
【0018】
また、本発明は、簡単な成形方法で製造される構造を通して、冷却水の円滑な流出入を確保できる燃料電池用金属分離板を提供することを目的とする。
【0019】
また、本発明は、金属分離板の中間部分に冷却水が流入し、特に、反応熱の蓄積が多い分離板の中間部分を効率的に冷却できる燃料電池用金属分離板を提供することを目的とする。
【0020】
また、本発明は、冷却水流入開口部及び冷却水排出開口部を冷却水チャンネルに連結する冷却水連結通路をさらに含む燃料電池用金属分離板を提供することを目的とする。
【0021】
また、本発明は、燃料電池スタックの締結時に、締結圧によって金属分離板に変形が発生することを防止する構造を有する燃料電池用金属分離板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明は、金属分離板の第1面から第2面に突出形成される反応ガスチャンネルと、金属分離板の第2面から突出された各反応ガスチャンネルの間に形成される冷却水チャンネルと、金属分離板に反応ガスを導入するように開口された反応ガスマニホールドと、金属分離板に冷却水を導入するように開口された冷却水マニホールドと、反応ガスチャンネルと反応ガスマニホールドとの間及び反応ガスチャンネルのうち何れか一ヶ所に位置する段差部とを含むことを特徴とする燃料電池用金属分離板を提供する。このような構成を通して、金属分離板において反応ガスが流れる部分と冷却水が流れる部分をより広く確保し、反応ガス及び冷却水が流れる部分の変形を防止し、燃料電池の効率を高めることができる。
【0023】
また、一態様として、段差部は、第2面に少なく突出された反応ガスチャンネルの一部によって形成される冷却水チャンネル連結部であることを特徴とする燃料電池用金属分離板を提供する。このような構成を通して、冷却水チャンネルに流れる冷却水が一つのチャンネルから隣接するチャンネルに容易に流入することができ、冷却水の流れがより円滑になる。
【0024】
一態様として、冷却水チャンネル連結部は、金属分離板の第2面で冷却水が冷却水チャンネルに対して略垂直方向に流れるように冷却水チャンネルに対して略垂直に形成されることを特徴とする燃料電池用金属分離板を提供する。このような構成を通して、冷却水が冷却水チャンネルを貫通して他の冷却水チャンネルに流入するので、冷却水の流れがより円滑になる。
【0025】
一態様として、反応ガスチャンネル及び冷却水チャンネルが蛇行構造で形成されることを特徴とする燃料電池用金属分離板を提供する。特に、蛇行構造に本発明に係る金属分離板の冷却水連結部が適用されると、中間領域で反応熱の蓄積が多い蛇行チャンネルを有する金属分離板を効果的に冷却することができる。
【0026】
一態様として、冷却水チャンネル連結部は、金属分離板の中央部に行くほど幅が狭くなることを特徴とする燃料電池用金属分離板を提供する。このような構成を通して、冷却水チャンネル連結部を通して各冷却水チャンネルに流入する冷却水を均一に分配することができる。
【0027】
また、一態様として、冷却水を金属分離板に導入する冷却水流入マニホールドと、冷却水を金属分離板から排出する冷却水排出マニホールドとをさらに含み、冷却水チャンネル連結部は、冷却水流入マニホールド側及び冷却水排出マニホールド側のうち少なくとも何れか一側に形成されることを特徴とする燃料電池用金属分離板を提供する。
【0028】
一態様として、冷却水流入マニホールド及び冷却水排出マニホールドを冷却水チャンネルに連結する冷却水連結通路をさらに含むことを特徴とする燃料電池用金属分離板を提供する。
【0029】
また、一態様として、金属分離板の第1面から第2面に突出形成される反応ガスチャンネルと、金属分離板の第2面から突出された各反応ガスチャンネルの間に形成される冷却水チャンネルと、第2面に少なく突出された反応ガスチャンネルの一部によって形成される冷却水チャンネル連結部とを含むことを特徴とする燃料電池用金属分離板及び膜−電極接合体が複数個積層されたことを特徴とする燃料電池スタックを提供する。
【0030】
また、本発明の一態様として、段差部は、反応ガスマニホールドと反応ガスチャンネルとの間に形成され、第1面及び第2面のうち何れか一面に突出され、一端が開口された突出開口であることを特徴とする燃料電池用金属分離板を提供する。このような構成を通して、突出開口は、金属分離板の変形を防止しながら、反応ガスを金属分離板内に円滑に流入するように案内する。
【0031】
また、本発明の他の一態様として、突出開口は、金属分離板の第1面に突出された第1突出開口及び第2面に突出された第2突出開口を含むことを特徴とする燃料電池用金属分離板を提供する。このような構成を通して、金属分離板の変形を防止するとともに、より広い空間をガス流入通路として確保することができる。
【0032】
また、本発明の他の一態様として、第1突出開口及び第2突出開口は、反応ガスマニホールドから反応ガスチャンネルに流入する反応ガスの流れと同一方向の直線上に形成されることを特徴とする燃料電池用金属分離板を提供する。このような構成を通して、金属分離板の変形を防止するとともに、支持効果を高めることができる。
【0033】
また、本発明の他の一態様として、第1突出開口が反応ガスマニホールド側に位置し、第2突出開口が反応ガスチャンネル側に位置することを特徴とする燃料電池用金属分離板を提供する。
【0034】
また、本発明の他の一態様として、突出開口は、反応ガスの流れに対して略法線方向に多数個形成されたことを特徴とする燃料電池用金属分離板を提供する。
【0035】
また、一態様として、金属分離板の第1面から第2面に突出形成される反応ガスチャンネルと、金属分離板に反応ガスを導入するように開口された反応ガスマニホールドと、反応ガスマニホールドと反応ガスチャンネルとの間に形成され、第1面及び第2面のうち何れか一面に突出され、一端が開口された突出開口とを含む金属分離板、金属分離板の第1面及び第2面に付着されるガスケット、及び各金属分離板の間に位置する膜−電極接合体が複数個積層されたことを特徴とする燃料電池スタックを提供する。
【0036】
また、一態様として、突出開口は、反応ガスの流れに対して法線方向に複数個形成されたことを特徴とする燃料電池スタックを提供する。
【0037】
一態様として、各突出開口の間に設置される追加的な支持部材をさらに含むことを特徴とする燃料電池スタックを提供する。
【0038】
一態様として徴とする燃料電池スタックを提供する。
【0039】
一態様として、金属分離板は、突出形成されたガスケット固定部を備えており、ガスケットは、ガスケット固定部が挿入される溝を備えていることを特徴とする燃料電池スタックを提供する。
【0040】
一態様として、金属分離板は、ガスケット固定ホールを備えており、ガスケットは、ガスケット固定ホールに挿入される突出部を備えていることを特徴とする燃料電池スタックを提供する。
【発明の効果】
【0041】
本発明に係る金属分離板は、冷却水が冷却水チャンネルの各部分の間または各冷却水チャンネルの間を流出入できるようにする冷却水チャンネル連結部を備えることで、冷却性能を向上させることができる。
【0042】
また、本発明に係る金属分離板は、反応ガスチャンネルに備わる段差によって冷却水チャンネル連結部が形成されることで、分離板の厚さ、面積及び体積を増加させずに冷却性能を向上させることができる。
【0043】
また、本発明に係る金属分離板は、金属材質からなる分離板の場合、従来のスタンピング工程で冷却水チャンネル連結部を生成することができ、分離板の製造時間を短縮させ、製造単価を低下させることができる。
【0044】
また、本発明に係る金属分離板は、冷却水チャンネル内への冷却水の流入量を調節し、発熱の多い部分を集中的に冷却することができ、冷却効率を向上させることができる。
【0045】
また、金属分離板は、反応ガスの流出入空間の変形を防止する構造を有することで、反応ガスの流動抵抗を低減させ、圧力降下量を減少させることができる。
【0046】
また、金属分離板は、冷却水部分と反応ガス部分の全てに二重密封を行うことができ、気密性を向上させ、燃料電池システムの安定性及び効率性を向上させることができる。
【0047】
また、金属分離板は、ガスケット固定部を備えることで、高い締結圧によるガスケットの変形及び元の位置からの離脱を防止することができる。
【0048】
また、金属分離板は、追加的な支持部材を備えることで、金属分離板の変形をより確実に防止できるとともに、ガスケットの変形を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の一実施例に係る金属分離板の第2面を示した図である。
【図2】本発明の一実施例に係る金属分離板の第2面を示した図である。
【図3】本発明の好適な一実施例に係る二つの金属分離板の接合状態を示した図である。
【図4】本発明の好適な一実施例に係る、冷却水を分離板の中間領域に案内するように冷却水流出入部が形成された分離板を示した図である。
【図5】図4に示した本発明の一実施例に係る冷却水流出入部を備える分離板の各領域別冷却水流量を示したグラフである。
【図6】本発明の一実施例に係る金属分離板の第1面を示した図である。
【図7】本発明の一実施例に係る金属分離板を備える燃料電池を示した図である。
【図8】本発明の一実施例に係る、突出開口を備える金属分離板を含む燃料電池スタックを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0050】
以下、図面を参照して本発明を一層詳細に説明する。
【0051】
図1及び図2は、本発明の好適な一実施例に係る分離板を示した図である。金属分離板100は、反応ガスマニホールド130、冷却水マニホールド120、反応ガスチャンネル140、冷却水チャンネル150、冷却水チャンネル連結部110及び冷却水連結通路112を備えている。また、金属分離板100には、金属分離板100から反応ガス及び冷却水が漏れないように密封するガスケット200が付着される。反応ガスマニホールド130は、金属分離板100に反応ガスを供給する役割をする。一般的に、反応ガスマニホールド130は、金属分離板100の一側に位置し、反応ガスマニホールド130を通して金属分離板100に流入した反応ガスは、金属分離板100に形成された反応ガスチャンネル140によって案内され、金属分離板100の表面に流れて電極(図示せず)と反応する。金属分離板100と電極(図示せず)との間には、ガス拡散層(gas diffusion layer:GDL)が介在されることもある。
【0052】
金属材質からなる金属分離板100の場合、燃料電池のスタック体積を減少させるために薄板で形成され、反応ガスチャンネル140は、金属分離板100でプレス機械によってスタンピング工程で形成される。このとき、反応ガスチャンネル140は、一面から他面に突出された形態であり、一面の凹溝部が他面の突出部になる。以下、反応ガスチャンネル140が凹溝部になる面を反応ガス面といい、反応ガスチャンネル140が突出部になる面を冷却水面という。冷却水面において、突出された各反応ガスチャンネル140の間の相対的に窪んだ凹溝部が冷却水チャンネル150になる。冷却水マニホールド120を通して金属分離板100に流入した冷却水は、冷却水チャンネル150に沿って流れながら燃料電池の反応熱を冷却する。
【0053】
本発明の一実施例は、金属分離板100に反応ガスチャンネル140及び冷却水チャンネル150をスタンピング工程を通して形成するとき、反応ガスチャンネル140及び冷却水チャンネル150に反応ガス及び冷却水が円滑に流入するように、所定の高さだけ突出されるか、少なく突出されることで、反応ガス及び冷却水の流路を確保できる段差部を備えている。
【0054】
一例として、冷却水の流路を確保する構造として、反応ガスチャンネル140の一部が少なく突出形成される冷却水チャンネル連結部110を挙げることができる。冷却水チャンネル連結部110は、金属分離板100で冷却水チャンネル150を連結し、冷却水が全体の冷却水チャンネル150内で均一に流れるようにする。このとき、反応ガスチャンネル140及び冷却水チャンネル150は、それぞれ一つまたは複数のチャンネルに形成される。反応ガスチャンネル140及び冷却水チャンネル150がそれぞれ一つのチャンネルに形成されたとき、冷却水チャンネル150の複数個の部分を互いに連結し、各部分に冷却水が均一に流れるようにする。一例として、反応ガスチャンネル140及び冷却水チャンネル150が蛇行形状に形成された場合、平行に形成された冷却水チャンネル150の各部分を互いに連結するように冷却水チャンネル連結部110を形成する。また、反応ガスチャンネル140及び冷却水チャンネル150が複数個形成されたとき、複数個の平行な冷却水チャンネル150を互いに連結するように冷却水チャンネル連結部110を形成する。このような構成を通して、長さに比べて幅が非常に狭い冷却水チャンネル150での冷却水の流動を円滑にすることができる。したがって、金属分離板100の冷却性能を高めることができる。
【0055】
反応ガスチャンネル140が他面に突出形成され、他面での反応ガスチャンネル140の突出形状によって定義される冷却水チャンネル150に沿って冷却水が流れ、金属分離板100の反応熱を冷却する。したがって、冷却水マニホールド120から冷却水連結通路112を通して流入する冷却水の方向と、冷却水連結通路112の付近での冷却水チャンネル150の形状とが互いに法線方向になる。ここで、反応ガスチャンネル140の段差によって冷却水チャンネル連結部110が形成される。冷却水チャンネル連結部110が形成されることで、蛇行構造のチャンネルを備える金属分離板100で冷却水が冷却水マニホールド120から流入する方向と冷却水チャンネル150とが互いに法線方向になり、冷却水の流れが遮られることを改善することができる。また、冷却水チャンネル連結部110が反応ガスチャンネル140及び反応ガスチャンネル140の段差によって形成されながら、冷却水チャンネル連結部110の全体的な形状は、金属分離板100の中間領域に冷却水が流れるように形成される。このような構成を通して、相対的に反応熱の蓄積が多い金属分離板100の中間領域に多量の冷却水が流れるようになり、冷却効率を高めることができる。冷却水チャンネル連結部110が、冷却水マニホールド120の流入側のみならず、冷却水マニホールド120の排出側にも形成されると、冷却効率を一層高めることができる。これは、冷却水が冷却水マニホールド120に排出される方向と冷却水チャンネル150の方向も互いに法線方向であり、冷却水の停滞が発生しうるためである。
【0056】
図3は、本発明の好適な一実施例に係る二つの金属分離板の接合状態を示した図である。各金属分離板100(101,102)の突出された各反応ガスチャンネル140は、互いに当接するように積層される。冷却水チャンネル150は、反応ガスチャンネル140が突出されない各部分によって確保される空間である。このとき、反応ガスチャンネル140の一部分は、少なく突出される段差を備えており、この段差が冷却水チャンネル連結部110である。冷却水チャンネル150、反応ガスチャンネル140及び冷却水チャンネル150が形成された金属分離板100において、冷却水は、冷却水チャンネル連結部110を通して各金属分離板100(101、102)の間を通り過ぎ、隣接する冷却水チャンネル150に流出入することができる。このような構成を通して、従来のようにスタンピング工程に他の工程を追加せずに、金属分離板100に冷却水チャンネル連結部110を形成することができる。また、金属分離板100の反応ガスチャンネル140の一部が、少なく突出された形態で形成されるので、金属分離板100の全体の厚さ及び体積を増加させない。また、冷却水の円滑な流出入によって金属分離板100を効果的に冷却することができ、燃料電池の性能を向上させることができる。
【0057】
本発明の他の好適な一実施例に係る分離板において、各冷却水チャンネル150の間の領域の段差は、一部分が他の部分より突出される段差である。このとき、突出部分は、冷却水流出入部の前・後方を除いた部分に形成されることが好ましい。これは、冷却水の流れを妨害することを最小化するためである。この実施例は、反応ガスチャンネル140(図1を参照)の突出部分を除いた全ての部分が冷却水チャンネル連結部110になるという点で、上述した実施例と異なっている。
【0058】
図4は、本発明の好適な一実施例に係る、冷却水を金属分離板の中間領域に案内するように冷却水流出入部が形成された金属分離板を示した図である。図4に示すように、金属分離板100を三つの領域に区分する場合、領域1及び領域3のような金属分離板100の縁部領域ではスタックの外部に熱を放出できるが、領域2、すなわち、金属分離板100の中間領域では、スタックの外部に熱を放出することが難しく、反応熱の蓄積が多い。ここで、金属分離板100には、領域2を通り過ぎて冷却水チャンネル150に流入する冷却水の流量が他の領域より多くなるように冷却水を案内する冷却水チャンネル連結部110を形成する。すなわち、冷却水が冷却水流入開口部側の冷却水チャンネル150から中間領域に該当する冷却水チャンネル150にまで案内されるように、冷却水チャンネル連結部110は、所定の長さを有して反応ガスチャンネル140に形成される。冷却水チャンネル連結部110によって形成される冷却水チャンネル150を貫通して流れる冷却水の流れは、中間領域まで途切れずにつながる形状を有するべきである。本実施例のような蛇行構造のチャンネルにおいては、冷却水流入開口部側に形成された冷却水チャンネル150から、領域2と領域3の中間に該当する冷却水チャンネル150にまで、冷却水が遮られる部分なしに流れるべきである。したがって、図1に示すように、冷却水チャンネル連結部110の全体が三角形状に形成されることもある。また、金属分離板100は、冷却水マニホールド120と冷却水チャンネル150を連結する連結通路112をさらに含む。冷却水連結通路112は、冷却水マニホールド120及び冷却水チャンネル150の周辺をシーリングするガスケット200と金属分離板100によって形成される。冷却水は、冷却水マニホールド120を通して金属分離板100に流入し、冷却水連結通路112によって案内されて冷却水チャンネル150に流入する。冷却水マニホールド120及び冷却水連結通路112は領域2の付近に位置し、冷却水チャンネル連結部110は、冷却水連結通路112から冷却水が流入する方向と最大限に一致させ、冷却水の流れを妨害せずに冷却水を領域2に流入させることが好ましい。
【0059】
このとき、冷却水マニホールド120及び冷却水連結通路112の位置は任意に選択される。また、各反応ガスチャンネル140に形成される冷却水チャンネル連結部110の長さ、高さ及び位置も任意に選択される。また、冷却水チャンネル連結部110の長さ、高さ及び位置を調節することで、各冷却水チャンネル150に流入する冷却水の量を調節することができる。また、各反応ガスチャンネル140で冷却水チャンネル連結部110が形成される位置を調節し、すなわち、冷却水チャンネル連結部110の全体形状を調節することで、冷却水が冷却水チャンネル150を貫通して流れる方向を調節することができる。これを通して、必要な部分、すなわち、反応熱の蓄積が多い部分に多量の冷却水が流入するように調整し、冷却効率を高めることができる。
【0060】
図5は、図4に示した本発明の一実施例に係る冷却水流出入部を備える分離板の各領域別冷却水の流量を示したグラフで、分離板の第2チャンネルでチャンネル別冷却流量をシミュレーションによって予測したものである。シミュレーション結果、グラフに示すように、冷却流量の偏差は存在するが、反応熱の蓄積が相対的に高い領域2の冷却流量は、他の領域の冷却流量に比べて高い。したがって、同一量の冷却水を用いるとき、反応熱の蓄積が多い領域2をより多く冷却するので、冷却効率が向上する。
【0061】
次に、反応ガスが円滑に流入するように所定の高さだけ突出されることで、反応ガス流路を確保できる構造の一例を説明する。
【0062】
図6は、本発明の一実施例に係る金属分離板の第1面を示した図である。金属分離板100は、反応ガスマニホールド130、冷却水マニホールド120、反応ガスチャンネル140、冷却水チャンネル150、突出開口160、追加的な支持部材170及びガスケット固定部180を備えている。また、金属分離板100には、反応ガスマニホールド130、冷却水マニホールド120、反応ガスチャンネル140及び冷却水チャンネル150を密封するガスケット200が装着される。
【0063】
反応ガスは、反応ガスマニホールド130、反応ガスチャンネル入口142、反応ガスチャンネル140、反応ガスチャンネル出口144及び反応ガスマニホールド130に順次的に流れ、反応ガスチャンネル140を通り過ぎる間に膜電極接合体(図示せず)で酸化または還元反応を行う。また、段差部の他の一例として、反応ガスマニホールド130と反応ガスチャンネル140との間の空間に突出開口160が備わる。金属分離板100は、突出開口160の突出によって変形が防止され、反応ガスは、突出開口160を通して反応ガスチャンネル140に流入する。突出開口160は、金属分離板100の一部が切開され、切開部分及びその周辺部が一面に突出されることで形成される。突出開口160は、金属分離板100の反応ガスチャンネル140の形成方法と同様にスタンピング工程によって形成される。
【0064】
突出開口160は、反応ガス面に突出される第1突出開口162からなり、反応ガス面に突出される第1突出開口162及び冷却水面に突出される第2突出開口164からなることがより好ましい。第1突出開口162と第2突出開口164との間の部分は切開されている。図7を参照すると、突出開口160が第1突出開口162及び第2突出開口164からなる場合、突出開口160が第1突出開口162のみからなる場合に比べて、反応ガスの流入空間が広くなり、金属分離板100の両面が全て突出部を備えているので、金属分離板100の変形をより効果的に防止することができる。
【0065】
突出開口160は、反応ガスマニホールド130と反応ガスチャンネル140との間の反応ガスの流れに対して法線方向に多数個形成されることがより好ましい。そうすると、突出開口160が一つのみ形成された場合に比べて、金属分離板100の締結圧に対する抵抗性を向上させることができる。また、突出開口160が一体に形成された場合に比べて、後述する追加的な支持部材170を容易に設置することができる。
【0066】
追加的な支持部材170は、多数個の突出開口160の間の間隔に設置される。追加的な支持部材170は、突出開口160によって完壁に変形を防止できない部分の変形を防止することができる。また、追加的な支持部材170は、反応ガスを反応ガスチャンネル140側に案内する役割もする。
【0067】
追加的な支持部材170は、ガスケット200と異なる硬度を有する樹脂材質からなることがより好ましい。スタックの締結時、高い締結圧によって、金属分離板100のみならず、ガスケット200にも変形が起こりうる。このとき、追加的な支持部材170がガスケット200と異なる硬度を有する場合、追加的な支持部材170とガスケット200の変形量が互いに異なるようになる。したがって、ガスケット200の変形に対して抵抗性を高めることができる。
【0068】
さらに、追加的な支持部材170は、金属分離板100内に流入していない他の反応ガスの反応ガスマニホールド130と冷却水チャンネル150との間にも設置される。また、追加的な支持部材170は、金属分離板100の冷却水面で反応ガスマニホールド130を密封するガスケット200の内部に設置される。この場合、追加的な支持部材170は、反応ガスを反応ガスチャンネル(図示せず)に案内する役割はせず、ガスケット200の変形に対して抵抗性を高める役割のみをする。
【0069】
ガスケット200としては、金属分離板100のマニホールド130及びチャンネル140,150の形態に合わせて予め製造された固形のガスケット200を金属分離板100に付着することができる。また、ガスケット200は、射出成形法を用いて金属分離板100に直接塗布して製造することもできる。射出成形法を用いてガスケット200を製造する場合、追加的な支持部材170も射出成形法を用いて製造することにより、別途の付着方法及び付着工程が必要でないので、燃料電池を製造するために必要な時間が短縮される。
【0070】
金属分離板100は、各ガスケット200の間にガスケット固定部180を備えている。より好ましくは、反応ガス面に突出されたガスケット固定部182と、冷却水面に突出されたガスケット固定部184とを備えることで、反応ガス面に装着されたガスケット200及び冷却水面に装着されたガスケット200の全ての離脱を防止できるようにする。ガスケット固定部180も、チャンネル140,150及び突出開口160と同様にプレス形成される。
【0071】
また、本発明の好適な一実施例においては、反応ガスマニホールド130、冷却水マニホールド120及び反応ガスチャンネル140を密封するガスケット200がそれぞれ分離されて形成される。したがって、図6を参照すると、第1面で反応ガスマニホールド130と突出開口160との間の二重密封が行われる。また、図1を参照すると、突出開口160と冷却水チャンネル150との間にも二重密封が行われる。したがって、反応ガス及び冷却水の気密性をより向上させることができる。また、図7を参照すると、冷却水面と反応ガス面でそれぞれ二重密封が行われることをより容易に理解することができる。
【0072】
図8は、本発明の一実施例に係る、突出開口を備える金属分離板を含む燃料電池スタックを示した図である。反応ガスは、反応ガスマニホールド130を通して反応ガス貯蔵タンク(図示せず)から流入する。また、反応ガスは、反応ガスマニホールド130に沿って流れながら、一つの単位セルから隣接する単位セルに流れると同時に、単位セルの金属分離板100に沿って流れるようになる。反応ガスは、金属分離板100に付着された追加的な支持部材170によって突出開口160に案内される。反応ガスは、突出開口160によって確保された空間を通して反応ガスチャンネル140に流れる。
【0073】
上述したように、冷却水の流路を確保するための冷却水チャンネル連結部110(図2を参照)及び反応ガスの流路を確保するための突出開口160(図6を参照)は、反応ガスチャンネル140(図2を参照)及び冷却水チャンネル150(図2を参照)を形成するスタンピング工程で一緒に形成される。したがって、別途の追加的な工程及び製造時間の増加なしに金属分離板100(図1を参照)に冷却水及び反応ガスを円滑に流入する構造を形成することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属分離板の第1面から第2面に突出形成される反応ガスチャンネルと、
金属分離板の第2面から突出された各反応ガスチャンネルの間に形成される冷却水チャンネルと、
金属分離板に反応ガスを導入するように開口された反応ガスマニホールドと、
金属分離板に冷却水を導入するように開口された冷却水マニホールドと、
反応ガスチャンネルと反応ガスマニホールドとの間及び反応ガスチャンネルのうち何れか一ヶ所に位置する段差部とを含み、
前記段差部は、反応ガスマニホールドと反応ガスチャンネルとの間に形成され、第1面及び第2面のうち何れか一面に突出され、一端が開口された突出開口である
ことを特徴とする燃料電池用金属分離板。
【請求項2】
前記突出開口は、金属分離板の第1面に突出された第1突出開口及び第2面に突出された第2突出開口を含むことを特徴とする請求項1に記載の燃料電池用金属分離板。
【請求項3】
前記第1突出開口及び第2突出開口は、反応ガスマニホールドから反応ガスチャンネルに流入する反応ガスの流れと同一方向の直線上に形成されることを特徴とする請求項2に記載の燃料電池用金属分離板。
【請求項4】
前記第1突出開口は、反応ガスマニホールド側に位置し、第2突出開口は、反応ガスチャンネル側に位置することを特徴とする請求項3に記載の燃料電池用金属分離板。
【請求項5】
前記突出開口は、反応ガスの流れに対して略法線方向に多数個形成されたことを特徴とする請求項1に記載の燃料電池用金属分離板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−234824(P2012−234824A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−161978(P2012−161978)
【出願日】平成24年7月20日(2012.7.20)
【分割の表示】特願2009−533229(P2009−533229)の分割
【原出願日】平成19年6月4日(2007.6.4)
【出願人】(509107932)ヒュンダイ ハイスコ (20)
【Fターム(参考)】