燃料電池用電圧制御装置
本発明は、燃料電池のセルの電圧を制御するための制御装置に関する。前記制御装置は、セルと関連付けられ且つベースを介してセルに接続され且つ電流源に接続された第1のトランジスタ(Q1)と、セルと関連付けられた第1のトランジスタとの間に挿入された制御電源(VRi)とを備えている。制御電源は、セルが前記第1の閾値電圧よりも高い電圧(V1)を示すとき、第1のトランジスタが、そのベース-エミッタ結合の端子において、第2の閾値電圧よりも高い電圧(Vbe1)を示し、電流を通し、セルが第1の閾値電圧よりも低い電圧(V1)を示すとき、第1のトランジスタが、そのベース-エミッタ結合の端子において、第2の閾値電圧よりも低い電圧(Vbe1)を示し、電流の伝達を遮断するように、第1と第2の閾値電圧の電位差と等しい制御電圧を供給する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池の1つ以上の個別セルの電圧を制御するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、燃料(水素、メタノール、又は同種物)に含まれる化学エネルギーを電気エネルギーに変換する発電機である。燃料電池は、燃料のタイプ及び供給された電流に依存して、0.3Vから1.2Vの間の電圧を供給する個別セルの形をとる。
【0003】
良好な電圧レベルを得るために、燃料電池は、各々の電圧が総計されるように直列に取り付けられた多数の個別セルを備えている。
【0004】
個別セルの電圧は、電流密度に応じて変化し、例えば、供給される電流密度が増大したとき、電圧降下をもたらす。個別セルから供給される電圧は、個別セル内で生じる化学反応に応じても変化する。反応は、通常は安定しているが、しばしば攪乱が生じる(例えば、不適切に放出された水の落下等)。そのとき、電圧は、急速に低下しやすく、その後、攪乱が過ぎ去ると、通常状態に復帰する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
個別セルが劣化しないようにするため、その電圧が一定の閾値電圧より低下しないようにすることが必須である。もし、そのようになれば、個別セルは、その不十分なエージング又はその全体的な劣化に帰結する加熱及び部分的な劣化を被ってしまう。
【0006】
従来技術で知られている解決策によると、各個別セルの電圧は、アナログ的な様式で計測され、その情報は、その電圧が閾値電圧よりも上であるか下であるかを確認するコントローラに送られる。コントローラは、各個別セルの電圧を、これらを詳しく調べることによって、一つずつ分析する。従来、特に燃料電池が危険な電圧を示している場合、コントローラが燃料電池に接続されないように、燃料電池とコントローラの間には、ガルバニック絶縁が与えられている。
【0007】
更に、直列な配置においては、電流は、総ての個別セルにおいて同一であるので、欠陥のある個別セル上に付加されてしまう。その場合、これは、燃料電池の個別セルの膜表面の一部に集中し、例えば加熱又は部分乾燥によって、後者に損害を与え得る。
【0008】
したがって、本発明の目的は、個別セル、ひいては燃料電池の劣化を防止するため、個別セルが閾値電圧を通過するとき、容易に監視することができるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的のため、本発明の対象は、燃料電池の個別セルの電圧を制御する制御装置において、前記制御装置が、個別セルと関連付けられた第1のトランジスタを備え、第1のトランジスタは、そのベースにおいて個別セルに接続されている一方で、個別セルが第1の閾値電圧よりも大きな電圧を示したときには、第1のトランジスタがそのベース‐エミッタ結合の端子において第2の閾値電圧よりも大きな電圧を示し、電流を通し、個別セルが第1の閾値電圧よりも小さな電圧を示したときには、第1のトランジスタがそのベース‐エミッタ結合の端子において第2の閾値電圧よりも小さな電圧を示し、電流を遮断するように、電流源に接続されていることを特徴とする制御装置である。
【0010】
よって、個別セルが、その閾値電圧を通過すると直ちに、電流の流れは遮断される。
【0011】
電圧制御装置は、また、以下の特徴の1つ以上を、単独に又は組み合わせて備え得る:
‐前記制御装置は、燃料電池の直列接続された多数の個別セルの少なくとも1つの閾値電圧の通過を検知するように設計されており、前記制御装置は:
・関連付けられた個別セルに対してベースにおいて接続されることにより、それぞれが、燃料電池と関連付けられた個別セルと並列に取り付けられた複数の第1のトランジスタと、
・第2の閾値電圧を有する複数の第2のトランジスタであって、それぞれがベースにおいて第1のトランジスタのコレクタに接続され、そのエミッタにおいて隣接の第2のトランジスタのコレクタに接続されるように、互いに直列に取り付けられ、個別セルが第1の閾値電圧よりも小さな電圧を示したときに電流を遮断するように、電流源に直列に取り付けられた第2のトランジスタと
を備えている。
‐第1の閾値電圧は、第2の閾値電圧と等しい。
‐第1の閾値電圧は、第2の閾値電圧と異なっており、調整電源が、各個別セルと各第1のトランジスタとの間に挿入され、調整電源が、第1と第2の閾値電圧の電位差に等しい調整電圧を供給する。
‐前記調整電源は、調整電流源と抵抗とからなる。
‐前記調整電流源は、定電圧源と抵抗とからなる。
‐定電圧源は、燃料電池の所定個数の個別セル、ツェナーダイオード、及び抵抗により実現される。
‐前記個別セルの端子の電圧は、ツェナーダイオードのツェナー電圧よりも大きい。
‐電流源は、トランジスタを用いた電流源であり:
・トランジスタと、
・トランジスタと直列に取り付けられ、トランジスタのエミッタに接続された第1の抵抗と、
・トランジスタを通って流れる電流を制限するために、トランジスタのベースに接続された第2の抵抗と、
・電源と、
・電源と並列に取り付けられた、第2の抵抗と直列なツェナーダイオードであって、その端子で定電圧を示し、第1の抵抗及びトランジスタのベースに接続されたツェナーダイオードと
を備えている。
‐電流源の電源は、燃料電池の所定個数の個別セルからなり、前記個別セルの端子の電圧が、ツェナーダイオードのツェナー電圧よりも大きくなっている。
‐前記制御装置は、電流情報を電圧情報に転換するために、電流源と直列に取り付けられた電流回路終端部抵抗を備えている。
‐前記装置は、ガルバニック絶縁を提供するために、電流源と直列に取り付けられた電流回路終端部光結合素子を備えている。
【0012】
本発明の他の特徴及び利点は、添付の図面を考慮したうえで、限定を与えるものでない例として与えられる下記の記載から明らかになるであろう。図面においては、同一の構成要素には、同一の参照番号が付されている。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】燃料電池の個別セルの閾値電圧の通過を制御するための回路の概要を示す図である。
【図2a】燃料電池の直列に接続された個別セルの閾値電圧の通過を制御するための回路の第1実施形態を示す図である。
【図2b】燃料電池の直列に接続された個別セルの閾値電圧の通過を制御するための回路の第2実施形態を示す図である。
【図2c】燃料電池の直列に接続された個別セルの閾値電圧の通過を制御するための回路の第3実施形態を示す図である。
【図2d】燃料電池の直列に接続された個別セルの閾値電圧の通過を制御するための回路の第4実施形態を示す図である。
【図3a】トランジスタを用いた電流源を示す図である。
【図3b】図3aのトランジスタを用いた電流源を備えた燃料電池の直列接続された個別セルの閾値電圧の通過を制御するための回路を示す図である。
【図4】調整電源を備えた制御回路の第2実施形態の概要を示す図である。
【図5】図4の調整電源の第1変形例を示す図である。
【図6】図4の調整電源の第2変形例を示す図である。
【図7】図4の調整電源の第3変形例を示す図である。
【図8】図7の第3変形例による調整電源を備えた、燃料電池の直列接続された個別セルの閾値電圧の通過を制御するための回路の概要を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1には、燃料電池の個別セルの電圧V1を制御するための第1実施例の回路を示す。一例として、個別セルの閾値電圧は、0.6Vである。
【0015】
第1のトランジスタQ1は、個別セルと並列に取り付けられている。本実施例では、第1のトランジスタQ1は、NPNトランジスタであり、そのベースが個別セルの正極+に接続されており、エミッタが個別セルの負極−に結合されている。PNPトランジスタも同様に用いられ得ることは明らかである。
【0016】
第1の実施形態では、第1のトランジスタQ1の閾値電圧は、個別セルの閾値電圧と同一、すなわち本実施例では0.6Vである。
【0017】
第1のトランジスタQ1のベース‐エミッタ結合の端子の電圧Vbe1は、個別セルの電圧V1に依存している。
【0018】
よって、個別セルの電圧V1が閾値電圧よりも大きいとき(V1>0.6V)、個別セルの劣化の危険はなく、第1のトランジスタQ1は、0.6Vよりも大きなベース‐エミッタ結合の端子の電圧Vbe1を示す(Vbe1>0.6V)。それゆえ、第1のトランジスタQ1は導通状態である。
【0019】
一方、個別セルの電圧V1が0.6Vよりも小さなとき(V1<0.6V)、個別セルにとって危険が存在する。第1のトランジスタQ1のベース‐エミッタ結合の端子の電圧は、そのとき、同様に0.6Vより小さく(Vbe1<0.6V)、その結果、第1のトランジスタQ1を導通状態とするのに不十分である。それゆえ、第1のトランジスタQ1は、非導通状態となる。
【0020】
図1から分かるように、第1のトランジスタは、また、例えば電流回路上の電流源Iに直列に取り付けられた第2のトランジスタQ2を介して、電流源Iにも接続されている。より具体的には、この場合はPNPトランジスタである第2のトランジスタQ2は、そのベースが第1のトランジスタQ1のコレクタに接続されており、そのエミッタが電流源Iに接続されている。
【0021】
よって、第1のトランジスタQ1が、0.6Vよりも大きな電圧Vbe1を示し、それゆえに導通状態であるとき、第1のトランジスタは、第2のトランジスタが導通状態となり、電流源により供給された電流Iの通過を許容する状態を引き起こす。
【0022】
一方、第1のトランジスタQ1が0.6Vよりも小さな電圧Vbe1を示し、それゆえに非導通状態であるとき、これを通る電流は止められ、結果として、第2のトランジスタQ2の遮断が引き起こされる。したがって、電流回路内を流れる電流は、もはや存在しない。電流の伝達は止められる。
【0023】
更に、第1のトランジスタQ1と第2のトランジスタQ2を流れる電流を制限するため、抵抗R1が備えられ、第1のトランジスタQ1のエミッタと個別セルとの間に挿入され得る。
【0024】
また更に、電流回路の終端部においては、電流の形式の情報流が、抵抗Rzを用いて電圧型情報へと変換され得るか、又は、ガルバニック絶縁をもたらすように光結合素子に電力供給するために用いられ得る。
【0025】
図2aから2dは、燃料電池の少なくとも2つの直列に接続された、それぞれの電圧がVi,Vi+1である個別セルのための電圧制御装置の様々な実施形態を、概略的に示す。
【0026】
この場合、個別セルの各々のために、第1のトランジスタQ1i、Q1i+1は、関連付けられた個別セルにそのベースが接続されることにより、関連付けられた個別セルに対して並列に取り付けられ、第2のトランジスタQ2i、Q2i+1は、関連付けられた第1のトランジスタQ1i、Q1i+1のコレクタに対してそのベースが接続されている。
【0027】
総ての第2のトランジスタQ2i、Q2i+1は、1つの第2のトランジスタのエミッタが隣接の第2のトランジスタのコレクタに接続されるように、互いに直列に取り付けられており、また共通の電流源Iを備え、個別セルが閾値電圧よりも小さな電圧を示したときに、電流の伝達を遮断するようになっている。
【0028】
更に、前述のように、1つの抵抗Rzが、電流回路の終端部に取り付けられ得る。
【0029】
これらの図2aから2dに図示された実施形態は、第1のトランジスタQ1i、Q1i+1及び第2のトランジスタQ2i、Q2i+1のNPN又はPNPドーピングによって異なっている。
【0030】
より具体的には、図2aと2bでは、図1の実施形態と同様に、第1のトランジスタQ1i、Q1i+1はNPNトランジスタであり、第2のトランジスタQ2i、Q2i+1はPNPトランジスタである。この配置によれば、第2のトランジスタQ2iは、そのエミッタが、上流に隣接する第2のトランジスタQ2i+1のコレクタに接続されている。
【0031】
図2cと2dでは、第1のトランジスタQ1i、Q1i+1は、ベースが個別セルの陰極−に接続され且つエミッタが個別セルの陽極+に接続されたPNPトランジスタであり、第2のトランジスタは、NPNトランジスタであり、第2のトランジスタQ2iのコレクタが、上流に隣接する第2のトランジスタQ2i+1のエミッタに接続されている。
【0032】
図3aと3bには、制御回路の変形例を示す。この変形例では、電流源Iは、トランジスタを用いた電流源であり、その電流は、トランジスタにより止められ得るものである。
【0033】
図3aによれば、トランジスタを用いた電流源は、
‐トランジスタQ3と、
‐トランジスタQ3と直列に取り付けられ、トランジスタQ3のエミッタに接続された第1の抵抗R31と、
‐トランジスタQ3に流れる電流を制限するために、トランジスタQ3のベースに接続された第2の抵抗R32と、
‐電源V3と、
‐電源V3と並列に取り付けられ、第2の抵抗R32と直列なツェナーダイオードDであって、その端子において定電圧を示し、第1の抵抗R31及びトランジスタQ3のベースに接続されたツェナーダイオードDと
を備えている。
【0034】
ツェナーダイオードDは、トランジスタQ3と第1の抵抗R31との接続の端子における電位を設定する。第1の抵抗R31を通って流れる電流は、ツェナーダイオードDと第1の抵抗R31の接続点との間の電位差の比に等しい。
【0035】
電流Iは、第1の抵抗R31を通って流れる電流とほぼ等しい。それゆえ、電流Iは、第1の抵抗R31とツェナーダイオードDによって調整される。
【0036】
図3bから分かるように、電圧V3は、個別セルCelln−xから個別セルCellnまでの、所定個数Xのより高い個別セルによって与えられ得る。ここで、第1の個別セルCell1は、最も低い電位を示し、n番目のセルCellnは、最も高い電位を示す。個別セルの個数Xは、電流源の設計において要求される電圧にしたがって決められる。これらX個の個別セルの端子の電圧は、ツェナーダイオードDのツェナー電圧よりも大きい。
【0037】
第1の個別セルCell1と個別セルCellnとの間の個別セルの数は、大きくあり得る。
【0038】
この回路には、以下の部品を有する、トランジスタを用いた電流源が存在する;ツェナーダイオードD、トランジスタQ3、抵抗R31及びR32。
【0039】
この回路は、図1から2dの回路と同様の方法で作動する。個別セルCell1からCelln−x−1の電圧が0.6Vよりも上のとき、トランジスタQ11からQ1n-x-1が導通状態となり、またトランジスタQ21からQ2n-x-1も導通状態となる。
【0040】
作動方法は、電源として用いられるX個の個別セルCelln−xからCellnについて同様である。
【0041】
更に、トランジスタQ4が、
‐1つの形態では、そのエミッタがツェナーダイオードDに、そのコレクタがトランジスタを用いた電流源の第1の抵抗R31に、
‐他の形態では、トランジスタを用いた電流源のための電源として用いられるX個の個別セルに関連付けられた直列接続の第2のトランジスタQ2n-xからQ2nの総てに、
接続されている。
【0042】
よって、電源として用いられるX個の個別セルに関連付けられた直列接続の第2のトランジスタQ2n-xからQ2nが導通状態ならば、トランジスタQ4は導通状態となり、トランジスタを用いた電流源によって生成された電流の通過を許容する。
【0043】
更に、抵抗R´が、トランジスタを通って流れる電流を制限するために備えられる。
【0044】
図4には、第2の実施形態を示す。この実施形態では、第1のトランジスタの閾値電圧が、監視されるべき関連付けられた個別セルの閾値電圧と異なっている。
【0045】
制御装置は、第1の閾値電圧と異なる第2の閾値電圧を有する少なくとも1つのトランジスタを用いて、個別セルの第1の閾値電圧の通過を監視する。
【0046】
この場合、制御装置は、個別セルCelli、Celli+1の各々に、個別セルCelli、Celli+1と、関連付けられたトランジスタQ1i、Q1i+1との間に挿入された調整電源VRi、VRi+1を備えている。調整電源は、個別セルの第1の閾値電圧にしたがって調整され得る電圧を供給し、この電圧は、個別セルの電圧に加えられる。
【0047】
それゆえ、監視されるべき閾値電圧を選択することが容易に可能となる。
【0048】
一例として、0.4Vの第1の個別セルの閾値電圧と、0.6Vの第2のトランジスタの閾値電圧のために、調整電源は、個別セルと第1トランジスタの間の0.2Vに設定される。
【0049】
よって、個別セルの電圧が0.4Vよりも大きいとき、ベース‐エミッタ結合の端子における第1のトランジスタの電圧は、個別セルの電圧0.4Vと調整電圧0.2Vの和、すなわち0.6Vよりも大きくなる。
【0050】
同様に、個別セルの電圧が0.4Vよりも小さいとき、ベース‐エミッタ結合の端子における第1のトランジスタの電圧は、個別セルの電圧0.4Vと調整電圧0.2Vの和、すなわち0.6Vよりも小さくなる。
【0051】
図5には、調整電源の実施形態を示す。この実施形態では、抵抗Rji、Rji+1が用いられ、その端子で電圧が生じるように、電流Iji、Iji+1が流される。
【0052】
図6に図示された代替例によれば、電流源Iji、Iji+1は、定電圧源Vji、Vji+1と抵抗ブリッジRki、Rji;Rki+1、Rji+1とを用いて形成され得る。
【0053】
変形例として、図7に示されるように、定電圧を得るために、燃料電池の所定個数の個別セルの電圧を用い、ツェナーダイオードDi、Di+1と抵抗R1i、R1i+1を用いることも可能である。
【0054】
ツェナーダイオードDi、Di+1は、それぞれ、安定した電源として機能する。抵抗RkjとRji、Rkj+1とRji+1は、それぞれ、電圧分割器として用いられる。抵抗Rji、Rji+1の電圧は、それぞれ、構成要素DiとRkjとRji、Di+1とRjiとRkj+1の値を調整することにより決められる。
【0055】
Di、Di+1が安定した電源と見做されるために、端子の電圧がツェナー電圧よりも十分に大きいことが必須である。それゆえ、電源として用いられる個別セルCelli+x、Celli+x+1の端子における電圧が、ツェナーダイオードDi、Di+1のツェナー電圧よりも大きいことが必須である。
【0056】
直列に接続された個別セルの個数が、かなり大きい場合、電源として用いられる個別セルCelli+x、Celli+x+1は、例えば、最も高い電位を示す10個程度の個別セルから取られ得る。
【0057】
更に、直列に接続された個別セルの個数が、より高い個別セルの電位を用いるのに十分に大きな場合、高電位の個別セルに関して、困難が生じる。これら高電位の個別セルのために、安定した電源を形成するのに必要な電位は、より低い電位を示す個別セルから取られる。
【0058】
実際には、図8から分かるように、最初の2個のセルCell1及びCell2のような低電位の個別セルのために、ツェナーダイオードD1、D2が、監視されるべき個別セルCell1及びCell2の陽極+の間に配置され、電位は、より高い電位の10個程度の個別セルから、例えば、第1番目の個別セルCell1のために第10番目の個別セルCell10から、第2番目の個別セルCell2のために第11番目の個別セルCell11から、取られる。
【0059】
一方、個別セルCellnからCelln−xのような高電位の個別セルのために、ツェナーダイオードDnからDn−xが、監視されるべき個別セルCellnからCelln−xの陰極−の間に配置され、電位は、より低い電位の10個程度の個別セルから、例えば、個別セルCellnのために個別セルCelln−10から、個別セルCelln−xのために第11番目の個別セルCelln−x−10から、取られる。
【0060】
それゆえ、このような制御装置によれば、個別セルの劣化、ひいては燃料電池の劣化を防止することを可能とするために、燃料電池の個別セルがその閾値電圧を通過したとき、電流の伝達を止めることを可能とすることによって、簡単かつ効果的に監視することが可能であることが理解されるであろう。
【符号の説明】
【0061】
Q1 第1のトランジスタ
Q2 第2のトランジスタ
VRi 調整電源
Cell 個別セル
I 電流源
D ツェナーダイオード
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池の1つ以上の個別セルの電圧を制御するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、燃料(水素、メタノール、又は同種物)に含まれる化学エネルギーを電気エネルギーに変換する発電機である。燃料電池は、燃料のタイプ及び供給された電流に依存して、0.3Vから1.2Vの間の電圧を供給する個別セルの形をとる。
【0003】
良好な電圧レベルを得るために、燃料電池は、各々の電圧が総計されるように直列に取り付けられた多数の個別セルを備えている。
【0004】
個別セルの電圧は、電流密度に応じて変化し、例えば、供給される電流密度が増大したとき、電圧降下をもたらす。個別セルから供給される電圧は、個別セル内で生じる化学反応に応じても変化する。反応は、通常は安定しているが、しばしば攪乱が生じる(例えば、不適切に放出された水の落下等)。そのとき、電圧は、急速に低下しやすく、その後、攪乱が過ぎ去ると、通常状態に復帰する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
個別セルが劣化しないようにするため、その電圧が一定の閾値電圧より低下しないようにすることが必須である。もし、そのようになれば、個別セルは、その不十分なエージング又はその全体的な劣化に帰結する加熱及び部分的な劣化を被ってしまう。
【0006】
従来技術で知られている解決策によると、各個別セルの電圧は、アナログ的な様式で計測され、その情報は、その電圧が閾値電圧よりも上であるか下であるかを確認するコントローラに送られる。コントローラは、各個別セルの電圧を、これらを詳しく調べることによって、一つずつ分析する。従来、特に燃料電池が危険な電圧を示している場合、コントローラが燃料電池に接続されないように、燃料電池とコントローラの間には、ガルバニック絶縁が与えられている。
【0007】
更に、直列な配置においては、電流は、総ての個別セルにおいて同一であるので、欠陥のある個別セル上に付加されてしまう。その場合、これは、燃料電池の個別セルの膜表面の一部に集中し、例えば加熱又は部分乾燥によって、後者に損害を与え得る。
【0008】
したがって、本発明の目的は、個別セル、ひいては燃料電池の劣化を防止するため、個別セルが閾値電圧を通過するとき、容易に監視することができるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的のため、本発明の対象は、燃料電池の個別セルの電圧を制御する制御装置において、前記制御装置が、個別セルと関連付けられた第1のトランジスタを備え、第1のトランジスタは、そのベースにおいて個別セルに接続されている一方で、個別セルが第1の閾値電圧よりも大きな電圧を示したときには、第1のトランジスタがそのベース‐エミッタ結合の端子において第2の閾値電圧よりも大きな電圧を示し、電流を通し、個別セルが第1の閾値電圧よりも小さな電圧を示したときには、第1のトランジスタがそのベース‐エミッタ結合の端子において第2の閾値電圧よりも小さな電圧を示し、電流を遮断するように、電流源に接続されていることを特徴とする制御装置である。
【0010】
よって、個別セルが、その閾値電圧を通過すると直ちに、電流の流れは遮断される。
【0011】
電圧制御装置は、また、以下の特徴の1つ以上を、単独に又は組み合わせて備え得る:
‐前記制御装置は、燃料電池の直列接続された多数の個別セルの少なくとも1つの閾値電圧の通過を検知するように設計されており、前記制御装置は:
・関連付けられた個別セルに対してベースにおいて接続されることにより、それぞれが、燃料電池と関連付けられた個別セルと並列に取り付けられた複数の第1のトランジスタと、
・第2の閾値電圧を有する複数の第2のトランジスタであって、それぞれがベースにおいて第1のトランジスタのコレクタに接続され、そのエミッタにおいて隣接の第2のトランジスタのコレクタに接続されるように、互いに直列に取り付けられ、個別セルが第1の閾値電圧よりも小さな電圧を示したときに電流を遮断するように、電流源に直列に取り付けられた第2のトランジスタと
を備えている。
‐第1の閾値電圧は、第2の閾値電圧と等しい。
‐第1の閾値電圧は、第2の閾値電圧と異なっており、調整電源が、各個別セルと各第1のトランジスタとの間に挿入され、調整電源が、第1と第2の閾値電圧の電位差に等しい調整電圧を供給する。
‐前記調整電源は、調整電流源と抵抗とからなる。
‐前記調整電流源は、定電圧源と抵抗とからなる。
‐定電圧源は、燃料電池の所定個数の個別セル、ツェナーダイオード、及び抵抗により実現される。
‐前記個別セルの端子の電圧は、ツェナーダイオードのツェナー電圧よりも大きい。
‐電流源は、トランジスタを用いた電流源であり:
・トランジスタと、
・トランジスタと直列に取り付けられ、トランジスタのエミッタに接続された第1の抵抗と、
・トランジスタを通って流れる電流を制限するために、トランジスタのベースに接続された第2の抵抗と、
・電源と、
・電源と並列に取り付けられた、第2の抵抗と直列なツェナーダイオードであって、その端子で定電圧を示し、第1の抵抗及びトランジスタのベースに接続されたツェナーダイオードと
を備えている。
‐電流源の電源は、燃料電池の所定個数の個別セルからなり、前記個別セルの端子の電圧が、ツェナーダイオードのツェナー電圧よりも大きくなっている。
‐前記制御装置は、電流情報を電圧情報に転換するために、電流源と直列に取り付けられた電流回路終端部抵抗を備えている。
‐前記装置は、ガルバニック絶縁を提供するために、電流源と直列に取り付けられた電流回路終端部光結合素子を備えている。
【0012】
本発明の他の特徴及び利点は、添付の図面を考慮したうえで、限定を与えるものでない例として与えられる下記の記載から明らかになるであろう。図面においては、同一の構成要素には、同一の参照番号が付されている。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】燃料電池の個別セルの閾値電圧の通過を制御するための回路の概要を示す図である。
【図2a】燃料電池の直列に接続された個別セルの閾値電圧の通過を制御するための回路の第1実施形態を示す図である。
【図2b】燃料電池の直列に接続された個別セルの閾値電圧の通過を制御するための回路の第2実施形態を示す図である。
【図2c】燃料電池の直列に接続された個別セルの閾値電圧の通過を制御するための回路の第3実施形態を示す図である。
【図2d】燃料電池の直列に接続された個別セルの閾値電圧の通過を制御するための回路の第4実施形態を示す図である。
【図3a】トランジスタを用いた電流源を示す図である。
【図3b】図3aのトランジスタを用いた電流源を備えた燃料電池の直列接続された個別セルの閾値電圧の通過を制御するための回路を示す図である。
【図4】調整電源を備えた制御回路の第2実施形態の概要を示す図である。
【図5】図4の調整電源の第1変形例を示す図である。
【図6】図4の調整電源の第2変形例を示す図である。
【図7】図4の調整電源の第3変形例を示す図である。
【図8】図7の第3変形例による調整電源を備えた、燃料電池の直列接続された個別セルの閾値電圧の通過を制御するための回路の概要を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1には、燃料電池の個別セルの電圧V1を制御するための第1実施例の回路を示す。一例として、個別セルの閾値電圧は、0.6Vである。
【0015】
第1のトランジスタQ1は、個別セルと並列に取り付けられている。本実施例では、第1のトランジスタQ1は、NPNトランジスタであり、そのベースが個別セルの正極+に接続されており、エミッタが個別セルの負極−に結合されている。PNPトランジスタも同様に用いられ得ることは明らかである。
【0016】
第1の実施形態では、第1のトランジスタQ1の閾値電圧は、個別セルの閾値電圧と同一、すなわち本実施例では0.6Vである。
【0017】
第1のトランジスタQ1のベース‐エミッタ結合の端子の電圧Vbe1は、個別セルの電圧V1に依存している。
【0018】
よって、個別セルの電圧V1が閾値電圧よりも大きいとき(V1>0.6V)、個別セルの劣化の危険はなく、第1のトランジスタQ1は、0.6Vよりも大きなベース‐エミッタ結合の端子の電圧Vbe1を示す(Vbe1>0.6V)。それゆえ、第1のトランジスタQ1は導通状態である。
【0019】
一方、個別セルの電圧V1が0.6Vよりも小さなとき(V1<0.6V)、個別セルにとって危険が存在する。第1のトランジスタQ1のベース‐エミッタ結合の端子の電圧は、そのとき、同様に0.6Vより小さく(Vbe1<0.6V)、その結果、第1のトランジスタQ1を導通状態とするのに不十分である。それゆえ、第1のトランジスタQ1は、非導通状態となる。
【0020】
図1から分かるように、第1のトランジスタは、また、例えば電流回路上の電流源Iに直列に取り付けられた第2のトランジスタQ2を介して、電流源Iにも接続されている。より具体的には、この場合はPNPトランジスタである第2のトランジスタQ2は、そのベースが第1のトランジスタQ1のコレクタに接続されており、そのエミッタが電流源Iに接続されている。
【0021】
よって、第1のトランジスタQ1が、0.6Vよりも大きな電圧Vbe1を示し、それゆえに導通状態であるとき、第1のトランジスタは、第2のトランジスタが導通状態となり、電流源により供給された電流Iの通過を許容する状態を引き起こす。
【0022】
一方、第1のトランジスタQ1が0.6Vよりも小さな電圧Vbe1を示し、それゆえに非導通状態であるとき、これを通る電流は止められ、結果として、第2のトランジスタQ2の遮断が引き起こされる。したがって、電流回路内を流れる電流は、もはや存在しない。電流の伝達は止められる。
【0023】
更に、第1のトランジスタQ1と第2のトランジスタQ2を流れる電流を制限するため、抵抗R1が備えられ、第1のトランジスタQ1のエミッタと個別セルとの間に挿入され得る。
【0024】
また更に、電流回路の終端部においては、電流の形式の情報流が、抵抗Rzを用いて電圧型情報へと変換され得るか、又は、ガルバニック絶縁をもたらすように光結合素子に電力供給するために用いられ得る。
【0025】
図2aから2dは、燃料電池の少なくとも2つの直列に接続された、それぞれの電圧がVi,Vi+1である個別セルのための電圧制御装置の様々な実施形態を、概略的に示す。
【0026】
この場合、個別セルの各々のために、第1のトランジスタQ1i、Q1i+1は、関連付けられた個別セルにそのベースが接続されることにより、関連付けられた個別セルに対して並列に取り付けられ、第2のトランジスタQ2i、Q2i+1は、関連付けられた第1のトランジスタQ1i、Q1i+1のコレクタに対してそのベースが接続されている。
【0027】
総ての第2のトランジスタQ2i、Q2i+1は、1つの第2のトランジスタのエミッタが隣接の第2のトランジスタのコレクタに接続されるように、互いに直列に取り付けられており、また共通の電流源Iを備え、個別セルが閾値電圧よりも小さな電圧を示したときに、電流の伝達を遮断するようになっている。
【0028】
更に、前述のように、1つの抵抗Rzが、電流回路の終端部に取り付けられ得る。
【0029】
これらの図2aから2dに図示された実施形態は、第1のトランジスタQ1i、Q1i+1及び第2のトランジスタQ2i、Q2i+1のNPN又はPNPドーピングによって異なっている。
【0030】
より具体的には、図2aと2bでは、図1の実施形態と同様に、第1のトランジスタQ1i、Q1i+1はNPNトランジスタであり、第2のトランジスタQ2i、Q2i+1はPNPトランジスタである。この配置によれば、第2のトランジスタQ2iは、そのエミッタが、上流に隣接する第2のトランジスタQ2i+1のコレクタに接続されている。
【0031】
図2cと2dでは、第1のトランジスタQ1i、Q1i+1は、ベースが個別セルの陰極−に接続され且つエミッタが個別セルの陽極+に接続されたPNPトランジスタであり、第2のトランジスタは、NPNトランジスタであり、第2のトランジスタQ2iのコレクタが、上流に隣接する第2のトランジスタQ2i+1のエミッタに接続されている。
【0032】
図3aと3bには、制御回路の変形例を示す。この変形例では、電流源Iは、トランジスタを用いた電流源であり、その電流は、トランジスタにより止められ得るものである。
【0033】
図3aによれば、トランジスタを用いた電流源は、
‐トランジスタQ3と、
‐トランジスタQ3と直列に取り付けられ、トランジスタQ3のエミッタに接続された第1の抵抗R31と、
‐トランジスタQ3に流れる電流を制限するために、トランジスタQ3のベースに接続された第2の抵抗R32と、
‐電源V3と、
‐電源V3と並列に取り付けられ、第2の抵抗R32と直列なツェナーダイオードDであって、その端子において定電圧を示し、第1の抵抗R31及びトランジスタQ3のベースに接続されたツェナーダイオードDと
を備えている。
【0034】
ツェナーダイオードDは、トランジスタQ3と第1の抵抗R31との接続の端子における電位を設定する。第1の抵抗R31を通って流れる電流は、ツェナーダイオードDと第1の抵抗R31の接続点との間の電位差の比に等しい。
【0035】
電流Iは、第1の抵抗R31を通って流れる電流とほぼ等しい。それゆえ、電流Iは、第1の抵抗R31とツェナーダイオードDによって調整される。
【0036】
図3bから分かるように、電圧V3は、個別セルCelln−xから個別セルCellnまでの、所定個数Xのより高い個別セルによって与えられ得る。ここで、第1の個別セルCell1は、最も低い電位を示し、n番目のセルCellnは、最も高い電位を示す。個別セルの個数Xは、電流源の設計において要求される電圧にしたがって決められる。これらX個の個別セルの端子の電圧は、ツェナーダイオードDのツェナー電圧よりも大きい。
【0037】
第1の個別セルCell1と個別セルCellnとの間の個別セルの数は、大きくあり得る。
【0038】
この回路には、以下の部品を有する、トランジスタを用いた電流源が存在する;ツェナーダイオードD、トランジスタQ3、抵抗R31及びR32。
【0039】
この回路は、図1から2dの回路と同様の方法で作動する。個別セルCell1からCelln−x−1の電圧が0.6Vよりも上のとき、トランジスタQ11からQ1n-x-1が導通状態となり、またトランジスタQ21からQ2n-x-1も導通状態となる。
【0040】
作動方法は、電源として用いられるX個の個別セルCelln−xからCellnについて同様である。
【0041】
更に、トランジスタQ4が、
‐1つの形態では、そのエミッタがツェナーダイオードDに、そのコレクタがトランジスタを用いた電流源の第1の抵抗R31に、
‐他の形態では、トランジスタを用いた電流源のための電源として用いられるX個の個別セルに関連付けられた直列接続の第2のトランジスタQ2n-xからQ2nの総てに、
接続されている。
【0042】
よって、電源として用いられるX個の個別セルに関連付けられた直列接続の第2のトランジスタQ2n-xからQ2nが導通状態ならば、トランジスタQ4は導通状態となり、トランジスタを用いた電流源によって生成された電流の通過を許容する。
【0043】
更に、抵抗R´が、トランジスタを通って流れる電流を制限するために備えられる。
【0044】
図4には、第2の実施形態を示す。この実施形態では、第1のトランジスタの閾値電圧が、監視されるべき関連付けられた個別セルの閾値電圧と異なっている。
【0045】
制御装置は、第1の閾値電圧と異なる第2の閾値電圧を有する少なくとも1つのトランジスタを用いて、個別セルの第1の閾値電圧の通過を監視する。
【0046】
この場合、制御装置は、個別セルCelli、Celli+1の各々に、個別セルCelli、Celli+1と、関連付けられたトランジスタQ1i、Q1i+1との間に挿入された調整電源VRi、VRi+1を備えている。調整電源は、個別セルの第1の閾値電圧にしたがって調整され得る電圧を供給し、この電圧は、個別セルの電圧に加えられる。
【0047】
それゆえ、監視されるべき閾値電圧を選択することが容易に可能となる。
【0048】
一例として、0.4Vの第1の個別セルの閾値電圧と、0.6Vの第2のトランジスタの閾値電圧のために、調整電源は、個別セルと第1トランジスタの間の0.2Vに設定される。
【0049】
よって、個別セルの電圧が0.4Vよりも大きいとき、ベース‐エミッタ結合の端子における第1のトランジスタの電圧は、個別セルの電圧0.4Vと調整電圧0.2Vの和、すなわち0.6Vよりも大きくなる。
【0050】
同様に、個別セルの電圧が0.4Vよりも小さいとき、ベース‐エミッタ結合の端子における第1のトランジスタの電圧は、個別セルの電圧0.4Vと調整電圧0.2Vの和、すなわち0.6Vよりも小さくなる。
【0051】
図5には、調整電源の実施形態を示す。この実施形態では、抵抗Rji、Rji+1が用いられ、その端子で電圧が生じるように、電流Iji、Iji+1が流される。
【0052】
図6に図示された代替例によれば、電流源Iji、Iji+1は、定電圧源Vji、Vji+1と抵抗ブリッジRki、Rji;Rki+1、Rji+1とを用いて形成され得る。
【0053】
変形例として、図7に示されるように、定電圧を得るために、燃料電池の所定個数の個別セルの電圧を用い、ツェナーダイオードDi、Di+1と抵抗R1i、R1i+1を用いることも可能である。
【0054】
ツェナーダイオードDi、Di+1は、それぞれ、安定した電源として機能する。抵抗RkjとRji、Rkj+1とRji+1は、それぞれ、電圧分割器として用いられる。抵抗Rji、Rji+1の電圧は、それぞれ、構成要素DiとRkjとRji、Di+1とRjiとRkj+1の値を調整することにより決められる。
【0055】
Di、Di+1が安定した電源と見做されるために、端子の電圧がツェナー電圧よりも十分に大きいことが必須である。それゆえ、電源として用いられる個別セルCelli+x、Celli+x+1の端子における電圧が、ツェナーダイオードDi、Di+1のツェナー電圧よりも大きいことが必須である。
【0056】
直列に接続された個別セルの個数が、かなり大きい場合、電源として用いられる個別セルCelli+x、Celli+x+1は、例えば、最も高い電位を示す10個程度の個別セルから取られ得る。
【0057】
更に、直列に接続された個別セルの個数が、より高い個別セルの電位を用いるのに十分に大きな場合、高電位の個別セルに関して、困難が生じる。これら高電位の個別セルのために、安定した電源を形成するのに必要な電位は、より低い電位を示す個別セルから取られる。
【0058】
実際には、図8から分かるように、最初の2個のセルCell1及びCell2のような低電位の個別セルのために、ツェナーダイオードD1、D2が、監視されるべき個別セルCell1及びCell2の陽極+の間に配置され、電位は、より高い電位の10個程度の個別セルから、例えば、第1番目の個別セルCell1のために第10番目の個別セルCell10から、第2番目の個別セルCell2のために第11番目の個別セルCell11から、取られる。
【0059】
一方、個別セルCellnからCelln−xのような高電位の個別セルのために、ツェナーダイオードDnからDn−xが、監視されるべき個別セルCellnからCelln−xの陰極−の間に配置され、電位は、より低い電位の10個程度の個別セルから、例えば、個別セルCellnのために個別セルCelln−10から、個別セルCelln−xのために第11番目の個別セルCelln−x−10から、取られる。
【0060】
それゆえ、このような制御装置によれば、個別セルの劣化、ひいては燃料電池の劣化を防止することを可能とするために、燃料電池の個別セルがその閾値電圧を通過したとき、電流の伝達を止めることを可能とすることによって、簡単かつ効果的に監視することが可能であることが理解されるであろう。
【符号の説明】
【0061】
Q1 第1のトランジスタ
Q2 第2のトランジスタ
VRi 調整電源
Cell 個別セル
I 電流源
D ツェナーダイオード
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池の個別セルの電圧を制御する制御装置において、前記個別セルは、第1の閾値電圧を有し、前記制御装置は、
前記第1の閾値電圧と異なる第2の閾値電圧を有する第1のトランジスタ(Q1)であって、前記個別セルと関連付けられており、そのベースにおいて前記個別セルに接続される一方で、電流源に接続された第1のトランジスタ(Q1)と、
前記個別セルと、関連付けられた前記第1のトランジスタ(Q1)との間に挿入された調整電源(VRi)と
を備え、
前記調整電源は、
前記個別セルが前記第1の閾値電圧よりも大きな電圧(V1)を示すとき、前記第1のトランジスタは、ベース-エミッタ結合の端子において、前記第2の閾値電圧よりも大きな電圧(Vbe1)を示し、電流を通し、
前記個別セルが前記第1の閾値電圧よりも小さな電圧(V1)を示すとき、前記第1のトランジスタは、ベース-エミッタ結合の端子において、前記第2の閾値電圧よりも小さな電圧(Vbe1)を示し、電流の伝達を遮断する
ように、前記第1と第2の閾値電圧の電位差に等しい調整電圧を供給することを特徴とする制御装置。
【請求項2】
燃料電池の直列に接続された複数の個別セル(Cell1からCelln)の少なくとも1つの個別セルにおける第1の閾値電圧の通過を検知するように設計され、
前記制御装置は、
関連付けられた個別セル(Cell1からCelln)に対してベースが接続されることにより、燃料電池と関連する個別セル(Cell1からCelln)に対して、それぞれ並列に取り付けられた複数の第1のトランジスタ(Q11からQ1n)と、
第2の閾値電圧を有する複数の第2のトランジスタ(Q21からQ2n)と
を備え、
前記複数の第2のトランジスタは、
ぞれぞれ、第1のトランジスタ(Q11からQ1n)のコレクタに対してベースが接続され、
1つの第2のトランジスタが、そのエミッタにおいて隣接の第2のトランジスタのコレクタに接続されるように、互いに直列に取り付けられ、
個別セル(Cell1からCelln)が前記第1の閾値電圧よりも小さな電圧を示したとき、電流の伝達を遮断するように、電流源(I)と直列に取り付けられている
ことを特徴とする請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記調整電源(VRi)は、調整電流源(Iij)と抵抗(Rij)とからなることを特徴とする請求項1又は2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記調整電流源(Iij)は、定電圧源(Vij)と抵抗(Rki)とを備えていることを特徴とする請求項3に記載の制御装置。
【請求項5】
前記定電圧源は、燃料電池の所定個数の個別セルと、ツェナーダイオード(Di)と、抵抗(R1j)とから実現されることを特徴とする請求項4に記載の制御装置。
【請求項6】
前記個別セルの端子における電圧は、ツェナーダイオード(Di)のツェナー電圧よりも大きいことを特徴とする請求項5に記載の制御装置。
【請求項7】
前記電流源は、トランジスタを用いた電流源であり、前記トランジスタを用いた電流源は、
トランジスタ(Q3)と、
前記トランジスタと直列に取り付けられ、前記トランジスタ(Q3)のエミッタに接続された第1の抵抗(R31)と、
前記トランジスタ(Q3)を通って流れる電流を制限するために、トランジスタ(Q3)のベースに接続された第2の抵抗(R32)と、
電源(V3)と、
前記電源(V3)と並列に取り付けられ、前記第2の抵抗(R32)と直列なツェナーダイオード(D)であって、その端子において定電圧を示し、前記第1の抵抗(R31)及び前記トランジスタ(Q3)のベースに接続されたツェナーダイオード(D)と
を備えていることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項8】
前記電流源の電源(V3)は、前記燃料電池の所定個数の個別セルからなり、前記個別セルの端子における電圧は、前記ツェナーダイオード(D)のツェナー電圧よりも大きいことを特徴とする請求項7に記載の制御装置。
【請求項9】
電流情報を電圧情報に変換するために、前記電流源に直列に取り付けられた電流回路終端部抵抗(Rz)を備えていることを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項10】
前記制御装置は、ガルバニック絶縁を提供するために、前記電流源に直列に取り付けられた電流回路終端部光結合素子を備えていることを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項1】
燃料電池の個別セルの電圧を制御する制御装置において、前記個別セルは、第1の閾値電圧を有し、前記制御装置は、
前記第1の閾値電圧と異なる第2の閾値電圧を有する第1のトランジスタ(Q1)であって、前記個別セルと関連付けられており、そのベースにおいて前記個別セルに接続される一方で、電流源に接続された第1のトランジスタ(Q1)と、
前記個別セルと、関連付けられた前記第1のトランジスタ(Q1)との間に挿入された調整電源(VRi)と
を備え、
前記調整電源は、
前記個別セルが前記第1の閾値電圧よりも大きな電圧(V1)を示すとき、前記第1のトランジスタは、ベース-エミッタ結合の端子において、前記第2の閾値電圧よりも大きな電圧(Vbe1)を示し、電流を通し、
前記個別セルが前記第1の閾値電圧よりも小さな電圧(V1)を示すとき、前記第1のトランジスタは、ベース-エミッタ結合の端子において、前記第2の閾値電圧よりも小さな電圧(Vbe1)を示し、電流の伝達を遮断する
ように、前記第1と第2の閾値電圧の電位差に等しい調整電圧を供給することを特徴とする制御装置。
【請求項2】
燃料電池の直列に接続された複数の個別セル(Cell1からCelln)の少なくとも1つの個別セルにおける第1の閾値電圧の通過を検知するように設計され、
前記制御装置は、
関連付けられた個別セル(Cell1からCelln)に対してベースが接続されることにより、燃料電池と関連する個別セル(Cell1からCelln)に対して、それぞれ並列に取り付けられた複数の第1のトランジスタ(Q11からQ1n)と、
第2の閾値電圧を有する複数の第2のトランジスタ(Q21からQ2n)と
を備え、
前記複数の第2のトランジスタは、
ぞれぞれ、第1のトランジスタ(Q11からQ1n)のコレクタに対してベースが接続され、
1つの第2のトランジスタが、そのエミッタにおいて隣接の第2のトランジスタのコレクタに接続されるように、互いに直列に取り付けられ、
個別セル(Cell1からCelln)が前記第1の閾値電圧よりも小さな電圧を示したとき、電流の伝達を遮断するように、電流源(I)と直列に取り付けられている
ことを特徴とする請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記調整電源(VRi)は、調整電流源(Iij)と抵抗(Rij)とからなることを特徴とする請求項1又は2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記調整電流源(Iij)は、定電圧源(Vij)と抵抗(Rki)とを備えていることを特徴とする請求項3に記載の制御装置。
【請求項5】
前記定電圧源は、燃料電池の所定個数の個別セルと、ツェナーダイオード(Di)と、抵抗(R1j)とから実現されることを特徴とする請求項4に記載の制御装置。
【請求項6】
前記個別セルの端子における電圧は、ツェナーダイオード(Di)のツェナー電圧よりも大きいことを特徴とする請求項5に記載の制御装置。
【請求項7】
前記電流源は、トランジスタを用いた電流源であり、前記トランジスタを用いた電流源は、
トランジスタ(Q3)と、
前記トランジスタと直列に取り付けられ、前記トランジスタ(Q3)のエミッタに接続された第1の抵抗(R31)と、
前記トランジスタ(Q3)を通って流れる電流を制限するために、トランジスタ(Q3)のベースに接続された第2の抵抗(R32)と、
電源(V3)と、
前記電源(V3)と並列に取り付けられ、前記第2の抵抗(R32)と直列なツェナーダイオード(D)であって、その端子において定電圧を示し、前記第1の抵抗(R31)及び前記トランジスタ(Q3)のベースに接続されたツェナーダイオード(D)と
を備えていることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項8】
前記電流源の電源(V3)は、前記燃料電池の所定個数の個別セルからなり、前記個別セルの端子における電圧は、前記ツェナーダイオード(D)のツェナー電圧よりも大きいことを特徴とする請求項7に記載の制御装置。
【請求項9】
電流情報を電圧情報に変換するために、前記電流源に直列に取り付けられた電流回路終端部抵抗(Rz)を備えていることを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項10】
前記制御装置は、ガルバニック絶縁を提供するために、前記電流源に直列に取り付けられた電流回路終端部光結合素子を備えていることを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の制御装置。
【図1】
【図2a】
【図2b】
【図2c】
【図2d】
【図3a】
【図3b】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図2a】
【図2b】
【図2c】
【図2d】
【図3a】
【図3b】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【公表番号】特表2013−504845(P2013−504845A)
【公表日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−528382(P2012−528382)
【出願日】平成22年9月13日(2010.9.13)
【国際出願番号】PCT/EP2010/063397
【国際公開番号】WO2011/029933
【国際公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(510132347)コミサリア ア レネルジ アトミク エ オウ エネルジ アルタナティヴ (51)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月13日(2010.9.13)
【国際出願番号】PCT/EP2010/063397
【国際公開番号】WO2011/029933
【国際公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(510132347)コミサリア ア レネルジ アトミク エ オウ エネルジ アルタナティヴ (51)
【Fターム(参考)】
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