説明

燃料電池用電極基板及びその製造方法

【発明の詳細な説明】
(産業上の利用分野)
本発明は、燃料電池用電極基板及びその製造方法に係り、詳細には、改良された特性を有するセパレーターを使用し、全体が焼成されてカーボンとして一体化されている燃料電池用電極基板及びその製造方法に係る。
(従来の技術)
燃料電池用電極基板としては従来から種々のものが提案されている。
従来提案されているモノポーラ型燃料電池セルは、一方の面にリブを設け他方の面は平坦な構造を有する電極基板,触媒層,電解質を含浸させたマトリックス及びセパレーターシートを積層して構成されており、電極基板のリブ付き面から反応ガス(酸素又は水素)が平坦な電極面に拡散してくるものである。
一方、従来モノポーラ型燃料電池用電極基板の製造方法としては、短炭素繊維をベースにしてプレス成形する方法(特開昭 58-117649),炭素繊維を分散させた抄造法(特公昭53-18603),炭素繊維のウェブに熱分解炭素を化学的に蒸着する方法(米国特許第 3,829,327号明細書)が提案されている。これら従来の製造方法によって得られる電極基板は、いずれも全体的に均質な構造の一つの層からなっている。
このような均質単層の電極基板は、その嵩密度が大きい場合、ガス拡散係数が小さいため限界電流密度が小となるとともに電解液の保持量が充分でないため性能の低下する時期が早くなる、すなわち寿命が短いという欠点を有する。他方、その嵩密度が小さい場合には、電気抵抗,熱抵抗が大きく、曲げ強度などの機械的強度が低いという欠点を有している。
また、燃料電池用セパレーターは、各反応ガスを相互に隔離すると同時に単位セル間の接続導体としての機能を有している。従って、燃料電池用セパレーターには、ガス透過が小さい、熱的及び電気的抵抗が小さい、更に、特に電池面積が大きい場合には機械的強度例えば曲げ強度が大きい等の特性が要求される。
しかし、従来のモノポーラ型燃料電池では、ガス拡散部としての多孔性電極基板とセパレーターを積層する際、電極基板とセパレーターとの電気的及び熱的接触抵抗が無視し得ない程大きくなるという欠点があった。一般にこのような接触抵抗は基板内の伝達抵抗の数倍にも達するといわれており、セル間温度分布の不均一性,発電効率の低下を招く可能性がある。
本発明者等は、特開昭59-68170号公報に於いて、セパレーターとしての機能を果たすチ密炭素質層の両側にガス拡散層としての多孔性炭素質層を有し一体化されている燃料電池用電極基板を提供した。この電極基板では上述の接触抵抗が皆無となり、熱的及び電気伝導性が大いに改良された。
一方、燃料電池に於いては、例えば前記多孔質基板の側面にも反応ガスが拡散するため、これを防止すべく通常、基板端部にフッ素系樹脂等を含浸したり、及び/又は、周辺シール部材を使用する。
近年、この周辺へシール部材を兼ねるセパレーターが開発されて来ている。
例えば、特開昭 58-214277号公報には、表面全面に亘り互いに交錯する方向に各反応ガス供給溝が形成され、両側縁には前記供給溝に係合する数列の突条を有する帯条弾性片を接合して各シール面が形成されてなる燃料電池のガス分離板が記載されている。このガス分離板(セパレーター)では、例えばフッ素ゴム又はフッ素樹脂成形体から成る前記帯状片がガスシール材の機能を果たすが、この帯状片はガス分離板と一体的に炭化されたものでなく、そのため該シール材部の熱的及び電気的抵抗が大きくなる。
又、特開昭58-12267号公報には、上記のシール材用帯状片付ガス分離板と同様な外形を有し(反応ガス供給溝は形成されていない)一体的に炭化されている燃料電池のガス分離板が記載されている。
上記両ガス分離板は、グラファイト粉末とフェノール樹脂の混合物から作成されている。このため、特にガス透過度及び機械的強度(特に曲げ高度)の面で不充分であった。
本発明者等も特開昭59-96661号公報に於いて、セパレーターとしてのグラファイトシートと一体化され、電池側面への反応ガスの漏出を防止する周辺シール用グラファイトシートと、ガス拡散部としての多孔性炭素質層とから成る燃料電池用電極基板を提供した。
その後、更に研究を続けた結果、充填材として、例えば前記特開昭58-12267号公報に開示の如きグラファイト粉末に代えて、酸化ピッチ焼成破砕品等の難黒鉛化炭素質粒子を使用すると、炭化焼成により反応ガスの電池側面への漏出を防ぐ周辺シール部と実質的に反応ガスを隔離するセパレーター部とが一体化された燃料電池用セパレーターが得られ、且つこのセパレーターは優れた機械的強度を有ししかもガス透過性が改良されていることを見い出し本発明を完成した。
(発明の課題)
本発明は、より優れた機械的強度例えば曲げ強度、優れた気密性(低ガス透過度)、良好な熱的及び電気的伝導性等を有する燃料電池用セパレーターを使用することにより、従来の燃料電池用電極基板が有していた欠点を改良することを主目的とする。また、製造工程中での焼成時に見られやすい焼成収縮の差による欠点、つまり割れや剥離などを防止することも目的とする(発明の構成)
本発明の燃料電池用電極基板は、ガス拡散層としての多孔性炭素質層、グラファイトシート、セパレーター、グラファイトシート、多孔性炭素質層をこの順に含み、全体が焼成されてカーボンとして一体化されている、燃料電池用電極基板であり、該セパレーターは、対極の反応ガスを相互に隔離するガス隔離セパレーター部と、電池の側面への反応ガスの漏出を防止するガス漏出防止縁部とから成り、1対の前記ガス漏出防止縁部が前記ガス隔離セパレーター部を挟んで相対しており、前記ガス隔離セパレーター部の両面の各1対の前記ガス漏出防止縁部が互いに直交しており、該多孔性炭素質層は、夫々前記1対のガス漏出防止縁部間に嵌着され、グラファイトシートを介して前記ガス隔離セパレーター部の両面に接合されており、その厚みのほぼ中心に反応ガス流路としての中空孔道群を有し、該多孔性炭素質層の該中空孔道群よりセパレーター側の平均嵩密度が該中空孔道群より電極側の平均嵩密度より大きいことを特徴とする。
また、本発明の燃料電池用電極基板の製造方法は、(a)短炭素繊維100重量部、結合材樹脂20〜100重量部及び所定の粒径分布を有する粒状高分子物質0〜100重量部から成る混合物を加熱加圧成形し複数の中空孔道用溝を有する成形板を製造する工程、(b)短炭素繊維100重量部、結合材樹脂20〜100重量部及び所定の粒径分布を有する粒状高分子物質40〜200重量部から成る混合物を加熱加圧成形し平板を製造する工程、(c)所定の金型へグラファイトシート、溝を有する面を上にした前記中空孔道用溝を有する成形板及び前記平板をこの順序に積層し、加熱プレスしてグラファイトシートを表面に有する多孔性炭素層質用成形体を製造する工程、(d)前記多孔性炭素質層用成形体のグラファイトシート面にフェノール系樹脂接着剤を塗布する工程、(e)対極の反応ガスを相互に隔離するガス隔離セパレーター部と、電池の側面への反応ガスの漏出を防止するガス漏出防止縁部とからなり、1対の前記漏出防止縁部が前記ガス隔離セパレーター部を挟んで相対しており、前記ガス隔離セパレーター部の両面の各1対の前記ガス漏出防止縁部が互いに直交しており、炭化焼成されて一体化されているセパレーターを製造する工程、(f)前記セパレーターの両面の1対のガス漏出防止縁部の間に前記多孔性炭素質層用成形体を嵌合し多孔性炭素質層用成形体のフェノール樹脂塗布面を介して加熱プレスにより接着して電極基板用成形体を製造する工程及び(g)得られた電極基板用成形体を1000℃以上の温度で焼成する工程から成る。
(好ましい実施態様の解説)
以下、添附の第1図及び第2図を参照して本発明を詳述するが、本発明はこれらの好ましい態様に限定されるものではない。
第1図に示したように、本発明の電極基板1 は、セパレーター10の両面に 2個の多孔性炭素質層2,3 を一体的に形成してなる 3層の積層構造を有している。
本発明電極基板のセパレーター10は、第2図に示されているように、対極の反応ガスを相互に隔離する機能を果たすガス隔離セパレーター部11と、反応ガスが電池側面方向に漏出するのを防ぐ機能を果たすガス漏出防止縁部12とから成っている。ガス漏出防止縁部12はガス隔離セパレーター部11を挟んで相対する周辺部に1対設けられており、ガス隔離セパレーター部11の表面と裏面の各1対のガス漏出防止縁部12は互いに直交するように設けられている。本発明電極基板用セパレーター10は炭化焼成されて一体化されている。
本発明で使用するセパレーター10のガス隔離セパレーター部11の厚みは、反応ガスを相互に隔離し得る程度で充分であり、あまり厚くなると積層して燃料電池として使用する際に不利となる。一般にこの厚みは 1.5mm以下である。
このセパレーターのガス隔離セパレーター部11は、気密性に優れており、ガス透過度は10-7cm2/sec.cmHg 以下であり、又、機械的強度が大きく、例えば曲げ強度は500 kg/cm2以上であり、更に、熱及び電気伝導性に優れており、熱伝導率は 4kcal/m.hr. ℃以上、電気抵抗は10 mΩcm以下である。
セパレーター10のガス漏出防止縁部12の高さ(ガス隔離セパレーター部11の面からの高さ)は、前記の多孔性炭素質層の厚み(第1図の 2と3 の合計の厚み)に相当するものであり、一般には2.5 mm以下である。尚、このガス漏出防止縁部12内を反応ガスが電池側面方向へ透過するガス透過度は、反応ガスの電池側面への漏出を防ぐように充分低い値であり、一般には10-3cm2/sec.cmHg以下である。
該セパレーター10は後述の方法によって製造し得るが、重要なことは、ガス隔離セパレーター部11とガス漏出防止縁部12が炭化焼成されて一体となっており、且つ上記の如き優れた物性を有していることである。
本発明の電極基板の多孔性炭素質層は、第1図に示したように、前記ガス隔離セパレーター部11の両面に接合され、夫々前記1対のガス漏出防止縁部12間に嵌合されている。又、その厚みのほぼ中心には、反応ガス流路としての中空孔道4 からなる中空孔道群が設けられている。この中空孔道4 は、電極基板の一端面から相対する端面まで連続しており、各々の中空孔道4 は互いにほぼ平行であり且つ電極基板の電極面及び一側面に対してほぼ平行であり、更に前記ガス隔離セパレーター部11の表裏両面の中空孔道群4 は互いに直角の方位を有する(第1図参照)。
中空孔道4 の断面形状は任意でよく、例えば、第1図に示す如く矩形でもよいし、又は円形でもよい。この中空孔道4 の断面積を円の断面積に換算した場合の円の直径に相当する寸法(相当直径と称する)は、 0.5〜1.5mm が好ましく、この相当直径が 0.5mmより小さいと電極基板面積が大きくなり中空孔道の長さが長くなる場合には、ガス流動の抵抗が大きくなり過ぎ、 1.5mmより大きいと中空孔道群の両側の多孔性炭素質層が厚くなり過ぎ電極基板を積層したセルの容積効率が減少する。
本発明電極基板1 の多孔性炭素質層は、嵩密度の異なる 2層から成っており、中空孔道4 よりガス隔離セパレーター部側(セパレーター側層3 という)の嵩密度は、反対側の電極面側(電極面側層2 という)の嵩密度より大きい。
電極面側層2 の平均嵩密度は、 0.4〜0.8g/cm3であり、且つガス透過度は20ml/cm.hr.mmAq.以上であることが好ましい。又、電極面側層2 の気孔率は50〜80%であり、その細孔は開細孔であり、且つ60%以上が10〜100 μの範囲内の径を有することが好ましい。
本発明電極基板1 の前記セパレーター側層3 は、 0.5〜1.0g/cm3の平均嵩密度を有するのが好ましい。
このように本発明電極基板1の多孔性炭素質層は、嵩密度の大きいセパレーター側層3 とそれより嵩密度の小さい電極面側層2 より成っているので、実質的なガス拡散部は前記電極面側層2 のみとなる。しかし、これら 2層は一体的に炭化焼成されているので熱的及び電気的抵抗は良好である。また、本発明に於いて、前記セパレーター側層3 と前記ガス隔離セパレーター部11の間にグラファイトシート(図示せず)が一体的に接着されている。このため、反応ガス透過度が更に減少し、且つセパレーターと多孔性炭素質層が焼成される時に生じる両部間の焼成収縮の差に依る応力を緩和し、より好ましい結果が得られる。
本発明の電極基板は以下のようにして製造される。
セパレーターは以下のように製造する。
本発明に用いるセパレーターを製造する好ましい1つの方法では、ガス隔離セパレーター部用の薄板とガス漏出防止縁部用の単板とを別個に予備成形して作り、その後所望の構造になるように金型内でプレス成形し、更に1000℃以上の温度で焼成炭化する。
この方法で使用する原料は炭素充填材50〜90重量%,好ましくは60〜80重量%とバインダー10〜50重量%,好ましくは20〜40重量%から成る混合物である。
炭素充填材は、酸化ピッチ焼成破砕品,炭素繊維破砕品,フェノール粒子焼成品等の難黒鉛化炭素質粒子から選択される平均粒径40μ以下,好ましくは10μ以下の粒子であり、例えば、特公昭53-31116号公報に記載の方法で製造される酸化ピッチの焼成破砕品が好ましく使用できる。尚、炭素充填材としては上記難黒鉛化炭素質粒子 2種以上の混合物を使用することもできる。
セパレーターの製造に用いるバインダーとしては、フェノール樹脂が好ましい。
上記混合物を所定形状の金型に供給し予備成形してガス隔離セパレーター部用薄板又はガス漏出防止縁部用単板を製造する。予備成形条件は70〜130 ℃,好ましくは 100〜120 ℃の温度、30〜200 kg/cm2,好ましくは80〜150 kg/cm2の圧力で 5〜30分である。
このようにして予備成形した薄板及び単板を、例えば第2図2図に示すような所定の構造を与えるような所定形状の金型に入れてプレス成形する。プレス成形条件は温度 120〜200 ℃,好ましくは 130〜160 ℃、圧力30〜200 kg/cm2,好ましくは80〜150 kg/cm2で10〜20分である。プレス成形後、温度 130〜160 ℃,圧力 0.5kg/cm2以下で少なくとも 2時間後硬化させると好ましい結果が得られる。その後1000℃以上の温度で炭化焼成すると一体化したセパレーターが得られる。
尚、本発明で使用するセパレーターは以下のように一体成形することもできる。即ち、(例えば第2図に示すような構造を与える)所定形状の金型に前記混合物を供給し、前記条件でプレス成形し、好ましくは後硬化させた後、1000℃以上の温度で炭化焼成する。
次に、多孔生炭素質層は以下のようにして製造される。
まず、多孔生炭素質層のセパレーター側層3 としての、複数の中空孔道用溝を有する成形板は以下のように製造される。
短炭素繊維 100重量部、結合材樹脂20〜100 重量部及び所定の粒径分布を有する粒状高分子物質(細孔調節材) 0〜100 重量部を混合する。短炭素繊維としては、例えば2000℃で焼成した 1.0mm以下の平均繊維長を有する炭素繊維、結合材樹脂としては、平均粒径 100μ以下で炭化収率30重量%以上のフェノール樹脂等、細孔調節材としては70%以上の粒子が30〜300 μの粒径を有し、少なくとも 100℃にて揮発もしくは溶融流動を示さないポリビニルアルコール粒子等が好ましく用いられる。これらの材料は、例えば特開昭 59-96661号等に開示されている。
次に、上記で得た混合物を所定形状の金型に入れ加熱加圧成形する。成形はプレス成形で行なう。プレス成形条件は、金型加熱温度70〜130 %成形圧20〜100 kg/cm2、圧保持時間 1〜30分である。
次に、多孔性炭素質層の電極面側層2 としての平板は以下のように製造される。
短炭素繊維 100重量部、結合材樹脂20〜100 重量部及び所定の粒径分布を有する粒状高分子物質(細孔調節材)40〜200 重量部を混合する。各原料は上記と同様であり、短炭素繊維としては2000℃で焼成した1.0 mm以下の平均繊維長を有するものが好ましい。
次に得られた混合物を金型に入れ加熱加圧成形する。プレス成形条件は上記と同様である。
以上のようにして得られた成形板を溝を上にして所定の金型に入れ、次いで平板を該成形板の上に積層し、金型加熱温度 130〜 160℃、成形圧20〜100 kg/cm2、圧保持時間 1〜60分でプレス成形する。この際、最初にグラファイトシートを入れ、次に溝を上にした成形板、更に、平板の順に金型に入れて一体成形する。これにより好ましい結果が得られる。尚、プレス成形後、成形温度で約 2時間以上後硬化させると好ましい。
このようにして得た多孔性炭素質層用成形体のグラファイトシート面にフェノール系接着材を塗布し、塗布面を上にして金型に入れ、次いでセパレータ、更に接着材塗布面を下にした成形体を金型に供給し、金型加熱温度 130〜160 ℃、成形圧 1〜30kg/cm2、圧保持時間 5〜60分の条件でプレス成形する。その後、成形温度で約 2時間以上後硬化させる。更に1000℃以上の温度で焼成すると本発明の電極基板が得られる。
(発明の作用効果)
以上のようにして得られる本発明の燃料電池用電極基板は、機械的強度特に曲げ強度が大きく、熱的及び電気的伝導性に優れている。更に、従来反応ガスの電池側面への漏出を防ぐために必要とされていたシール手段が不要になる。同時に、ガス漏出防止縁部も一体的に炭化焼成されているため熱的及び電気的抵抗が小さくなるという効果もある。又、多孔性炭素質層のセパレーター側層の嵩密度は比較的大きいため、反応ガスの拡散部は実質的に電極面側層のみとなり基板全体としての熱的及び電気的抵抗も小さくなるという利点が得られる。また、本発明では、セパレーターと多孔性炭素質層用成形体の間にグラファイトシートが挟まれているので、製造工程中の焼成時に生じる両部材間の収縮の差による応力が緩和され、割れや剥離が防止されている。この点が、本発明の特に優れる点である。
(実施例)
以下、非限定実施例によって本発明を説明する。
実施例1(セパレーターの製造)
特公昭53-31116号に記載の方法で製造した酸化ピッチを 800℃で焼成し、破砕して平均粒径10μ以下とした。
上記酸化ピッチ焼成破砕品65重量%とフェノール樹脂(旭有機材製,RM−210 )35重量%とを羽根ミキサーで混合した。この混合物を所定形状の金型に供給し、120 ℃,100 kg/cm2で予備成形してガス隔離セパレーター部用薄板を作成した。
同様にして、ガス漏出防止縁部用単板を作成した。
上記の薄板及び単板を第1図に示す如き所望の構造が得られるように所定形状の金型に入れ、150 ℃,50kg/cm2でプレス成形した。その後、約150 ℃,0.4 kg/cm2で後硬化させ、更に1200℃で炭化焼成した。
得られたセパレーターの物性を以下に示す。
ガス透過率(at N2,0.2 kg/cm2 G)
1.8× 10-8 cm2/sec.cmHg電気抵抗 7.6 mΩ.cm熱伝導度 4.7 kcal/m.hr. ℃曲げ強度 860 kg/cm2ガス隔離セパレーター部厚み 0.9 mmガス漏出縁部高さ 2.0 mm側面へのガス透過率(at N2,0.2 kg/cm2 G)
5.4× 10-5 cm2/sec.cmHg実施例2短炭素繊維(呉羽化学製,平均繊維長0.4mm,M− 204S) 100重量部と細孔調節材としてポリビニルアルコール粒子(日本合成化学K.K.製)60重量部及びフェノール樹脂(旭有機材K.K.製,RM−210 )60重量部からなる混合物を、所定形状のプレス成形用金型に供給し、 120℃、40kg/cm2で20分プレス成形して、複数の溝を有する成形板を得た。
次に、上記短炭素繊維 100重量部、上記ポリビニルアルコール 100重量部及び上記フェノール樹脂40重量部からなる混合物を金型に供給し、上記と同条件でプレス成形して平板を得た。
その後、金型に厚さ 0.3mmのグラファイトシート(UCC製グラフォイル)を供給し、その上に前記成形板を(溝を上にして)供給し、更に前記平板を供給し、 150℃、40kg/cm2で40分プレス成形し、 150℃で 2時間後硬化させた。
上記成形体のグラフォイル面にフェノール系接着材を塗布し、塗布面を上にして金型に供給した。更にその上に上記実施例1で製造したセパレーターを供給し、相対する縁部間に成形体を嵌着させた。次に、上記成形体をフェノール系接着剤を塗布したグラフォイル面を下にしてセパレーター縁部間に嵌着するように供給し、 150、25kg/cm2で40分プレス成形した。その後 150℃で 2時間後硬化させ、更に1000℃以上の温度で焼成して本発明の電極基板を得た。
得られた電極基板の物性を表に示す。




【図面の簡単な説明】
第1図は本発明の燃料電池用電極基板の斜視図であり、第2図は本発明の燃料電池用電極基板に使用するセパレーターの斜視図である。
1……電極基板、 2……電極面側層、
3……セパレーター側層、 4……中空孔道、
10……セパレーター、11……ガス隔離セパレーター部、
12……ガス漏出防止縁部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】ガス拡散層としての多孔性炭素質層、グラファイトシート、セパレーター、グラファイトシート、多孔性炭素質層をこの順に含み、全体が焼成されてカーボンとして一体化されている、燃料電池用電極基板であり、該セパレーターは、対極の反応ガスを相互に隔離するガス隔離セパレーター部と、電池の側面への反応ガスの漏出を防止するガス漏出防止縁部とから成り、1対の前記ガス漏出防止縁部が前記ガス隔離セパレーター部を挟んで相対しており、前記ガス隔離セパレーター部の両面の各1対の前記ガス漏出防止縁部が互いに直交しており、該多孔性炭素質層は、夫々前記1対のガス漏出防止縁部間に嵌着され、グラファイトシートを介して前記ガス隔離セパレーター部の両面に接合されており、その厚みのほぼ中心に反応ガス流路としての中空孔道群を有し、該多孔性炭素質層の該中空孔道群よりセパレーター側の平均嵩密度が該中空孔道群より電極側の平均嵩密度より大きいことを特徴とする燃料電池用電極基板。
【請求項2】(a)短炭素繊維100重量部、結合材樹脂20〜100重量部及び所定の粒径分布を有する粒状高分子物質0〜100重量部から成る混合物を加熱加圧成形し複数の中空孔道用溝を有する成形板を製造する工程、(b)短炭素繊維100重量部、結合材樹脂20〜100重量部及び所定の粒径分布を有する粒状高分子物質40〜200重量部から成る混合物を加熱加圧成形し平板を製造する工程、(c)所定の金型へグラファイトシート、溝を有する面を上にした前記中空孔道用溝を有する成形板及び前記平板をこの順序に積層し、加熱プレスしてグラファイトシートを表面に有する多孔性炭素質層用成形体を製造する工程、(d)前記多孔性炭素質層用成形体のグラファイトシート面にフェノール系樹脂接着剤を塗布する工程、(e)対極の反応ガスを相互に隔離するガス隔離セパレーター部と、電池の側面への反応ガスの漏出を防止するガス漏出防止縁部とからなり、1対の前記漏出防止縁部が前記ガス隔離セパレーター部を挟んで相対しており、前記ガス隔離セパレーター部の両面の各1対の前記ガス漏出防止縁部が互いに直交しており、炭化焼成されて一体化されているセパレーターを製造する工程、(f)前記セパレーターの両面の1対のガス漏出防止縁部の間に前記多孔性炭素質層用成形体を嵌合し多孔性炭素質層用成形体のフェノール樹脂塗布面を介して加熱プレスにより接着して電極基板用成形体を製造する工程及び(g)得られた電極基板用成形体を1000℃以上の温度で焼成する工程から成る、ガス拡散層としての多孔性炭素質層、グラファイトシート、セパレーター、グラファイトシート、多孔性炭素質層をこの順に含み、全体が焼成されてカーボンとして一体化されている燃料電池用電極基板であり、該セパレーターは、対極の反応ガスを相互に隔離するガス隔離セパレーター部と、電池の側面への反応ガスの漏出を防止するガス漏出防止縁部とから成り、1対の前記ガス漏出防止縁部が前記ガス隔離セパレーター部を挟んで相対しており、前記ガス隔離セパレーター部の両面の各1対の前記ガス漏出防止縁部が互いに直交しており、該多孔性炭素質層は、夫々前記1対のガス漏出防止縁部間に嵌着され、グラファイトシートを介して前記ガス隔離セパレーター部の両面に接合されており、その厚みのほぼ中心に反応ガス流路としての中空孔道群を有し、該多孔性炭素質層の該中空孔道群よりセパレーター側の平均嵩密度が該中空孔道群より電極側の平均嵩密度より大きい燃料電池用電極基板の製造方法。

【第1図】
image rotate


【第2図】
image rotate


【公告番号】特公平6−22137
【公告日】平成6年(1994)3月23日
【国際特許分類】
【出願番号】特願昭59−140259
【出願日】昭和59年(1984)7月5日
【公開番号】特開昭61−19069
【公開日】昭和61年(1986)1月27日
【出願人】(999999999)呉羽化学工業株式会社
【参考文献】
【文献】特開昭59−68170(JP,A)
【文献】特開昭58−12267(JP,A)
【文献】特開昭59−78459(JP,A)