説明

燃料電池用電極触媒の製造方法、燃料電池用電極触媒およびその用途

【課題】高い触媒活性を有する燃料電池用電極触媒を提供すること。
【解決手段】ホウ素、リンおよび硫黄からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素A、金属元素、炭素、窒素、酸素ならびにフッ素を含む触媒であって、前記触媒を構成する金属元素、炭素、窒素、酸素、前記元素A、フッ素の原子数の比を、金属元素:炭素:窒素:酸素:前記元素A:フッ素=1:x:y:z:a:bと表すと、0<x≦9、0<y≦2、0<z≦5、0<a≦1、0<b≦2である燃料電池用電極触媒。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は燃料電池用電極触媒の製造方法、燃料電池用電極触媒およびその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
高分子固体型燃料電池は、高分子固体電解質をアノードとカソードとで挟み、アノードに燃料を供給し、カソードに酸素または空気を供給して、カソードで酸素が還元されて電気を取り出す形式の燃料電池である。燃料には水素またはメタノールなどが主として用いられる。
【0003】
従来、燃料電池の反応速度を高め、燃料電池のエネルギー変換効率を高めるために、燃料電池のカソード(空気極)表面やアノード(燃料極)表面には、触媒を含む層(以下「燃料電池用触媒層」とも記す。)が設けられていた。
【0004】
この触媒として、一般的に貴金属が用いられており、貴金属の中でも高い電位で安定であり、活性が高い白金、パラジウムなどの貴金属が主として用いられてきた。しかし、これらの貴金属は価格が高く、また資源量が限られていることから、代替可能な触媒の開発が求められていた。
【0005】
また、カソード表面に用いる貴金属は、酸性雰囲気下では溶解する場合があり、長期間に渡る耐久性が必要な用途には適さないという問題があった。このため酸性雰囲気下で腐食せず、耐久性に優れ、高い酸素還元能を有する触媒の開発が強く求められていた。
【0006】
貴金属代替触媒として、貴金属を一切使わない卑金属炭化物、卑金属酸化物、卑金属炭窒酸化物、カルコゲン化合物及び炭素触媒などが報告されている(例えば、特許文献1〜特許文献4を参照)。これらの材料は、白金などの貴金属材料に比べて、安価であり、資源量が豊富である。
【0007】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2に記載された卑金属材料を含むこれらの触媒は、実用的に充分な酸素還元能が得られていないという問題点がある。
【0008】
また、特許文献3及び特許文献4に記載された触媒は、高い酸素還元触媒活性を示すが、燃料電池運転条件下での安定性が非常に低いことが問題点である。
【0009】
このような貴金属代替触媒として、特許文献5及び特許文献6でのNb及びTi炭窒酸化物は上記性能を有効に発現できることから、特に注目されている。
【0010】
特許文献5及び特許文献6に記載された触媒は、従来の貴金属代替触媒に比べてきわめて高性能であるが、その製造工程の一部において1600℃〜1800℃という高温下での加熱処理が必要であった(例えば特許文献5 実施例1または特許文献6 実施例1)。
【0011】
このような高温加熱処理は工業的には不可能ではないが困難をともない、設備費の高騰や運転管理の困難を招き、ひいては製造コストが高くなることからより安価に製造出来る方法の開発が望まれていた。
【0012】
特許文献7には炭素、窒素及び酸素を含有するカーボン含有チタンオキシナイトライドの製造に関する技術が報告されている。
【0013】
しかしながら、特許文献7に記載されている製造方法では、カーボン含有チタンオキシナイトライドを製造するために、窒素含有有機化合物とチタン前駆体との反応によるチタンオキシナイトライドの製造とフェノール樹脂とチタンオキシナイトライド前駆体との反応によるカーボン含有チタンオキシナイトライド製造の二段階合成が必要であり、工程が複雑である。特に、チタンオキシナイトライド前駆体の製造は80℃での攪拌、過熱、および還流、ならびに冷却および減圧濃縮などの複雑な工程が必要であるため、製造コストが高い。
【0014】
また、フェノール樹脂は3次元網目構造を持つ熱硬化性樹脂であるため、金属酸化物と均一に混合して反応させることが難しい。特に、フェノール樹脂の熱分解温度は400℃〜900℃であるため、1000℃以下の温度で、フェノール樹脂の完全分解による炭化反応が起こりにくい問題点もある。
【0015】
さらに、特許文献7および非特許文献1には、その用途として太陽光集熱器用の薄膜および光触媒としての応用が記されているだけで、電極触媒として有用性の高い粒状または繊維状などの形状を持つ金属炭窒酸化物の製造方法及びその用途は開示も検討もなされていない。
【0016】
特許文献8には、酸化物と炭素材料前駆体との混合材料を焼成することを特徴とする電極触媒の製造方法が開示されているが、充分な触媒性能を持つ電極触媒は得られていない。
【0017】
また、特許文献9には、コバルトなどの多核錯体を用いてなる燃料電池用電極触媒が開示されているが、原料の毒性が高く、高コストであり、充分な触媒活性を持たないという問題があった。
【0018】
非特許文献2には、チタンアルコキシドと炭素材料前駆体との混合材料を焼成することを特徴とする電極触媒の製造方法が開示されているが、製造工程においては、窒素を含有する有機物は使用されておらず、充分な触媒性能を持つ電極触媒は得られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】特開2004−303664号公報
【特許文献2】国際公開第07/072665号パンフレット
【特許文献3】米国特許出願公開第2004/0096728号明細書
【特許文献4】特開2005−19332号公報
【特許文献5】国際公開第2009/031383パンフレット
【特許文献6】国際公開第2009/107518パンフレット
【特許文献7】特開2009−23887号公報
【特許文献8】特開2009−255053号公報
【特許文献9】特開2008−258150号公報
【非特許文献】
【0020】
【非特許文献1】Journal of Inorganic Materials (Chinese) 20, 4, P785
【非特許文献2】Electrochemistry Communications Volume 12, Issue 9, September 2010, Pages 1177-1179
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
本発明はこのような従来技術における問題点の解決を課題とする。
【0022】
すなわち本発明の目的は、比較的低い温度での熱処理を経て、遷移金属(チタン等)を用いた高い触媒活性を有する燃料電池用電極触媒を製造する方法を提供することである。
【0023】
また本発明は、燃料電池用電極触媒として有用な新規な熱処理物を提供することを目的とする。
【0024】
さらに本発明は、高い触媒活性を有する燃料電池用電極触媒およびその用途(電極等)を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明は、たとえば以下の[1]〜[16]に関する。
【0026】
[1]
少なくとも金属化合物(1)と、窒素含有有機化合物(2)と、ホウ素、リンおよび硫黄からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素Aならびにフッ素を含有する化合物(3)と溶媒とを混合して触媒前駆体溶液を得る工程(1)、
前記触媒前駆体溶液から溶媒を除去する工程(2)、および
工程(2)で得られた固形分残渣を500〜1100℃の温度で熱処理して電極触媒を得る工程(3)
を含み、
前記金属化合物(1)の一部または全部が、金属元素として周期表第4族および第5族の元素から選ばれる少なくとも1種の遷移金属元素M1を含有する化合物であり、
前記金属化合物(1)、前記窒素含有有機化合物(2)および前記化合物(3)の少なくとも1つが酸素原子を有する
ことを特徴とする燃料電池用電極触媒の製造方法。
【0027】
[2]
前記化合物(3)が、フッ素を含有するホウ酸誘導体、フッ素を含有するスルホン酸誘導体およびフッ素を含有するリン酸誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする上記[1]に記載の燃料電池用電極触媒の製造方法。
【0028】
[3]
前記工程(1)において、前記金属化合物(1)の溶液と、前記窒素含有有機化合物(2)とを混合することを特徴とする上記[1]または[2]に記載の燃料電池用電極触媒の製造方法。
【0029】
[4]
前記工程(1)において、ジケトン構造を有する化合物からなる沈殿抑制剤をさらに混合することを特徴とする上記[1]〜[3]のいずれかに記載の燃料電池用電極触媒の製造方法。
【0030】
[5]
前記金属化合物(1)の一部が、金属元素として鉄、ニッケル、クロム、コバルトおよびマンガンから選ばれる少なくとも1種の遷移金属元素M2を含む化合物であることを特徴とする上記[1]〜[4]のいずれかに記載の燃料電池用電極触媒の製造方法。
【0031】
[6]
前記金属化合物(1)が、金属リン酸塩、金属硫酸塩、金属硝酸塩、金属有機酸塩、金属酸ハロゲン化物、金属アルコキシド、金属ハロゲン化物、金属過ハロゲン酸塩、金属次亜ハロゲン酸塩および金属錯体からなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする上記[1]〜[5]のいずれかに記載の燃料電池用電極触媒の製造方法。
【0032】
[7]
前記窒素含有有機化合物(2)が、アミノ基、ニトリル基、イミド基、イミン基、ニトロ基、アミド基、アジド基、アジリジン基、アゾ基、イソシアネート基、イソチオシアネート基、オキシム基、ジアゾ基、およびニトロソ基、ならびにピロール環、ポルフィリン環、イミダゾール環、ピリジン環、ピリミジン環、およびピラジン環から選ばれる1種類以上を分子中に有することを特徴とする上記[1]〜[6]のいずれかに記載の燃料電池用電極触媒の製造方法。
【0033】
[8]
前記窒素含有有機化合物(2)が、水酸基、カルボキシル基、アルデヒド基、酸ハライド基、スルホ基、リン酸基、ケトン基、エーテル基、およびエステル基から選ばれる1種類以上を分子中に有することを特徴とする上記[1]〜[7]のいずれかに記載の燃料電池用電極触媒の製造方法。
【0034】
[9]
前記工程(3)において、前記固形分残渣を、水素ガスを0.01体積%以上10体積%以下含む雰囲気中で熱処理することを特徴とする上記[1]〜[8]のいずれかに記載の燃料電池用電極触媒の製造方法。
【0035】
[10]
上記[1]〜[9]のいずれかに記載の製造方法で得られる燃料電池用電極触媒。
【0036】
[11]
上記[10]に記載の燃料電池用電極触媒を含むことを特徴とする燃料電池用触媒層。
【0037】
[12]
上記[11]に記載の燃料電池用触媒層と多孔質支持層とを有することを特徴とする電極。
【0038】
[13]
カソードとアノードと前記カソードおよび前記アノードの間に配置された電解質膜とを有する膜電極接合体であって、前記カソードおよび/または前記アノードが上記[12]に記載の電極であることを特徴とする膜電極接合体。
【0039】
[14]
上記[13]に記載の膜電極接合体を備えることを特徴とする燃料電池。
【0040】
[15]
固体高分子型燃料電池であることを特徴とする上記[14]に記載の燃料電池。
【0041】
[16]
発電機能、発光機能、発熱機能、音響発生機能、運動機能、表示機能および充電機能からなる群より選ばれる少なくとも一つの機能を有する物品であって、上記[14]または[15]に記載の燃料電池を備えることを特徴とする物品。
【発明の効果】
【0042】
本発明の燃料電池用電極触媒の製造方法によれば、比較的低い温度での熱処理を経て、遷移金属(チタン等)を用いた高い触媒活性を有する燃料電池用電極触媒を製造することができる。
【0043】
また本発明の熱処理物は、燃料電池用電極触媒として有用である。
【0044】
さらに本発明の燃料電池用電極触媒は、高い触媒活性を有し、各種用途(電極等)に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】図1は、実施例1の触媒(1)の粉末X線回折スペクトルである。
【図2】図2は、実施例1の燃料電池用電極(1)の酸素還元電流密度−電位曲線である。
【図3】図3は、実施例2の触媒(2)の粉末X線回折スペクトルである。
【図4】図4は、実施例2の燃料電池用電極(2)の酸素還元電流密度−電位曲線である。
【図5】図5は、実施例3の触媒(3)の粉末X線回折スペクトルである。
【図6】図6は、実施例3の燃料電池用電極(3)の酸素還元電流密度−電位曲線である。
【図7】図7は、実施例4の触媒(4)の粉末X線回折スペクトルである。
【図8】図8は、実施例4の燃料電池用電極(4)の酸素還元電流密度−電位曲線である。
【図9】図9は、実施例5の触媒(5)の粉末X線回折スペクトルである。
【図10】図10は、実施例5の燃料電池用電極(5)の酸素還元電流密度−電位曲線である。
【図11】図11は、実施例6の触媒(6)の粉末X線回折スペクトルである。
【図12】図12は、実施例6の燃料電池用電極(6)の酸素還元電流密度−電位曲線である。
【図13】図13は、実施例7の触媒(7)の粉末X線回折スペクトルである。
【図14】図14は、実施例7の燃料電池用電極(7)の酸素還元電流密度−電位曲線である。
【図15】図15は、実施例8の触媒(8)の粉末X線回折スペクトルである。
【図16】図16は、実施例8の燃料電池用電極(8)の酸素還元電流密度−電位曲線である。
【図17】図17は、実施例9の触媒(9)の粉末X線回折スペクトルである。
【図18】図18は、実施例9の燃料電池用電極(9)の酸素還元電流密度−電位曲線である。
【図19】図19は、実施例10の触媒(10)の粉末X線回折スペクトルである。
【図20】図20は、実施例10の燃料電池用電極(10)の酸素還元電流密度−電位曲線である。
【図21】図21は、実施例11の触媒(11)の粉末X線回折スペクトルである。
【図22】図22は、実施例11の燃料電池用電極(11)の酸素還元電流密度−電位曲線である。
【図23】図23は、実施例12の触媒(12)の粉末X線回折スペクトルである。
【図24】図24は、実施例12の燃料電池用電極(12)の酸素還元電流密度−電位曲線である。
【図25】図25は、実施例13の触媒(13)の粉末X線回折スペクトルである。
【図26】図26は、実施例13の燃料電池用電極(13)の酸素還元電流密度−電位曲線である。
【図27】図27は、固体高分子型燃料電池の単セルの分解断面図の一例である。
【図28】図28は、実施例13で作成した単セル(13)における電圧−電流密度曲線である。
【図29】図29は、実施例14の触媒(14)の粉末X線回折スペクトルである。
【図30】図30は、実施例14の燃料電池用電極(14)の酸素還元電流密度−電位曲線である。
【図31】図31は、実施例14で作成した単セル(14)における電圧−電流密度曲線である。
【図32】図32は、実施例15の触媒(15)の粉末X線回折スペクトルである。
【図33】図33は、実施例15の燃料電池用電極(15)の酸素還元電流密度−電位曲線である。
【図34】図34は、実施例16の触媒(16)の粉末X線回折スペクトルである。
【図35】図35は、実施例16の燃料電池用電極(16)の酸素還元電流密度−電位曲線である。
【図36】図36は、実施例17の触媒(17)の粉末X線回折スペクトルである。
【図37】図37は、実施例17の燃料電池用電極(17)の酸素還元電流密度−電位曲線である。
【図38】図38は、実施例18の触媒(18)の粉末X線回折スペクトルである。
【図39】図39は、実施例18の燃料電池用電極(18)の酸素還元電流密度−電位曲線である。
【図40】図40は、実施例19の触媒(19)の粉末X線回折スペクトルである。
【図41】図41は、実施例19の燃料電池用電極(19)の酸素還元電流密度−電位曲線である。
【図42】図42は、実施例20の触媒(20)の粉末X線回折スペクトルである。
【図43】図43は、実施例20の燃料電池用電極(20)の酸素還元電流密度−電位曲線である。
【図44】図44は、実施例21の触媒(21)の粉末X線回折スペクトルである。
【図45】図45は、実施例21の燃料電池用電極(21)の酸素還元電流密度−電位曲線である。
【図46】図46は、実施例22の触媒(22)の粉末X線回折スペクトルである。
【図47】図47は、実施例22の燃料電池用電極(22)の酸素還元電流密度−電位曲線である。
【図48】図48は、実施例23の触媒(23)の粉末X線回折スペクトルである。
【図49】図49は、実施例23の燃料電池用電極(23)の酸素還元電流密度−電位曲線である。
【図50】図50は、実施例24の触媒(24)の粉末X線回折スペクトルである。
【図51】図51は、実施例24の燃料電池用電極(24)の酸素還元電流密度−電位曲線である。
【図52】図52は、実施例25の触媒(25)の粉末X線回折スペクトルである。
【図53】図53は、実施例25の燃料電池用電極(25)の酸素還元電流密度−電位曲線である。
【図54】図54は、実施例26の触媒(26)の粉末X線回折スペクトルである。
【図55】図55は、実施例26の燃料電池用電極(26)の酸素還元電流密度−電位曲線である。
【図56】図56は、実施例27の触媒(27)の粉末X線回折スペクトルである。
【図57】図57は、実施例27の燃料電池用電極(27)の酸素還元電流密度−電位曲線である。
【図58】図58は、実施例28の触媒(28)の粉末X線回折スペクトルである。
【図59】図59は、実施例28の燃料電池用電極(28)の酸素還元電流密度−電位曲線である。
【図60】図60は、実施例28で作成した単セル(28)における電圧−電流密度曲線である。
【図61】図61は、実施例29の触媒(29)の粉末X線回折スペクトルである。
【図62】図62は、実施例29の燃料電池用電極(29)の酸素還元電流密度−電位曲線である。
【図63】図63は、実施例30の触媒(30)の粉末X線回折スペクトルである。
【図64】図64は、実施例30の燃料電池用電極(30)の酸素還元電流密度−電位曲線である。
【図65】図65は、比較例1の触媒(c1)の粉末X線回折スペクトルである。
【図66】図66は、比較例1の燃料電池用電極(c1)の酸素還元電流密度−電位曲線である。
【図67】図67は、比較例2の触媒(c2)の粉末X線回折スペクトルである。
【図68】図68は、比較例2の燃料電池用電極(c2)の酸素還元電流密度−電位曲線である。
【図69】図69は、比較例3の触媒(c3)の粉末X線回折スペクトルである。
【図70】図70は、比較例3の燃料電池用電極(c3)の酸素還元電流密度−電位曲線である。
【図71】図71は、比較例4の触媒(c4)の粉末X線回折スペクトルである。
【図72】図72は、比較例4の燃料電池用電極(c4)の酸素還元電流密度−電位曲線である。
【図73】図73は、比較例5の触媒(c5)の粉末X線回折スペクトルである。
【図74】図74は、比較例5の燃料電池用電極(c5)の酸素還元電流密度−電位曲線である。
【図75】図75は、比較例6の触媒(c6)の粉末X線回折スペクトルである。
【図76】図76は、比較例6の燃料電池用電極(c6)の酸素還元電流密度−電位曲線である。
【図77】図77は、比較例7の触媒(c7)の粉末X線回折スペクトルである。
【図78】図78は、比較例7の燃料電池用電極(c7)の酸素還元電流密度−電位曲線である。
【図79】図79は、比較例8の触媒(c8)の粉末X線回折スペクトルである。
【図80】図80は、比較例8の燃料電池用電極(c8)の酸素還元電流密度−電位曲線である。
【図81】図81は、比較例9の触媒(c9)の粉末X線回折スペクトルである。
【図82】図82は、比較例9の燃料電池用電極(c9)の酸素還元電流密度−電位曲線である。
【図83】図83は、比較例10の触媒(c10)の粉末X線回折スペクトルである。
【図84】図84は、比較例10の燃料電池用電極(c10)の酸素還元電流密度−電位曲線である。
【図85】図85は、比較例11の燃料電池用電極(c11)の酸素還元電流密度−電位曲線である。
【図86】図86は、比較例11の燃料電池用電極(c11)の酸素還元電流密度−電位曲線である。
【図87】図87は、比較例12の燃料電池用電極(c12)の酸素還元電流密度−電位曲線である。
【図88】図88は、比較例12の燃料電池用電極(c12)の酸素還元電流密度−電位曲線である。
【図89】図89は、比較例13の燃料電池用電極(c13)の酸素還元電流密度−電位曲線である。
【図90】図90は、比較例14の燃料電池用電極(c14)の酸素還元電流密度−電位曲線である。
【図91】図91は、比較例15の燃料電池用電極(c15)の酸素還元電流密度−電位曲線である。
【図92】図92は、比較例16の燃料電池用電極(c16)の酸素還元電流密度−電位曲線である。
【図93】図93は、比較例17の燃料電池用電極(c17)の酸素還元電流密度−電位曲線である。
【図94】図94は、実施例31の触媒(31)の粉末X線回折スペクトルである。
【図95】図95は、実施例31の燃料電池用電極(31)の酸素還元電流密度−電位曲線である。
【図96】図96は、実施例32の触媒(32)の粉末X線回折スペクトルである。
【図97】図97は、実施例32の燃料電池用電極(32)の酸素還元電流密度−電位曲線である。
【図98】図98は、実施例33の触媒(33)の粉末X線回折スペクトルである。
【図99】図99は、実施例33の燃料電池用電極(33)の酸素還元電流密度−電位曲線である。
【図100】図100は、実施例34の触媒(34)の粉末X線回折スペクトルである。
【図101】図101は、実施例34の燃料電池用電極(34)の酸素還元電流密度−電位曲線である。
【図102】図102は、実施例35の触媒(35)の粉末X線回折スペクトルである。
【図103】図103は、実施例35燃料電池用電極(35)の酸素還元電流密度−電位曲線である。
【図104】図104は、実施例36の触媒(36)の粉末X線回折スペクトルである。
【図105】図105は、実施例36の燃料電池用電極(36)の酸素還元電流密度−電位曲線である。
【図106】図106は、実施例37の触媒(37)の粉末X線回折スペクトルである。
【図107】図107は、実施例37の燃料電池用電極(37)の酸素還元電流密度−電位曲線である。
【図108】図108は、実施例38の触媒(38)の粉末X線回折スペクトルである。
【図109】図109は、実施例38の燃料電池用電極(38)の酸素還元電流密度−電位曲線である。
【図110】図110は、実施例39の触媒(39)の粉末X線回折スペクトルである。
【図111】図111は、実施例39の燃料電池用電極(39)の酸素還元電流密度−電位曲線である。
【図112】図112は、実施例40の触媒(40)の粉末X線回折スペクトルである。
【図113】図113は、実施例40の燃料電池用電極(40)の酸素還元電流密度−電位曲線である。
【図114】図114は、実施例41の触媒(41)の粉末X線回折スペクトルである。
【図115】図115は、実施例41の燃料電池用電極(41)の酸素還元電流密度−電位曲線である。
【図116】図116は、実施例42の触媒(42)の粉末X線回折スペクトルである。
【図117】図117は、実施例42の燃料電池用電極(42)の酸素還元電流密度−電位曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
[燃料電池用電極触媒の製造方法]
本発明の燃料電池用電極触媒の製造方法は、
少なくとも金属化合物(1)と、窒素含有有機化合物(2)と、ホウ素、リンおよび硫黄からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素Aならびにフッ素を含有する化合物(3)と溶媒とを混合して溶液(本明細書において「触媒前駆体溶液」とも記す。)を得る工程(1)、
前記触媒前駆体溶液から溶媒を除去する工程(2)、および
工程(2)で得られた固形分残渣を500〜1100℃の温度で熱処理して電極触媒を得る工程(3)
を含み、
前記金属化合物(1)の一部または全部が、金属元素として周期表第4族および第5族の元素から選ばれる少なくとも1種の遷移金属元素M1を含有する遷移金属化合物(M1)であり、
前記金属化合物(1)、前記窒素含有有機化合物(2)および前記化合物(3)の少なくとも1つが酸素原子を有することを特徴としている。
【0047】
なお本明細書において、特段の事情がない限り、原子およびイオンを、厳密に区別することなく「原子」と記載する。
【0048】
(工程(1))
工程(1)では、少なくとも金属化合物(1)と、窒素含有有機化合物(2)と、ホウ素、リンおよび硫黄からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素Aならびにフッ素を含有する化合物(3)と溶媒とを混合して触媒前駆体溶液を得る。
【0049】
前記混合の手順としては、たとえば、
手順(i):1つの容器に溶媒を準備し、そこへ前記金属化合物(1)、前記窒素含有有機化合物(2)および前記化合物(3)を添加し、溶解させて、これらを混合する、
手順(ii):前記金属化合物(1)の溶液、ならびに前記窒素含有有機化合物(2)および前記化合物(3)の溶液を準備し、これらを混合する
が挙げられる。
【0050】
各成分に対して溶解性の高い溶媒が異なる場合には、手順(ii)が好ましい。また、前記金属化合物(1)が、たとえば、後述する金属ハロゲン化物の場合には、手順(i)が好ましく、前記金属化合物(1)が、たとえば、後述する金属アルコキシドまたは金属錯体の場合には、手順(ii)が好ましい。
【0051】
前記金属化合物(1)として後述する遷移金属化合物(M1)および遷移金属化合物(M2)を用いる場合の、前記手順(ii)における好ましい手順としては、
手順(ii'):前記遷移金属化合物(M1)の溶液、ならびに前記遷移金属化合物(M2)、前記窒素含有有機化合物(2)および前記化合物(3)の溶液を準備し、これらを混合するが挙げられる。
【0052】
混合操作は、溶媒への各成分の溶解速度を高めるために、撹拌しながら行うことが好ましい。
【0053】
複数の溶液を調製してからこれらを混合して触媒前駆体溶液を得る場合には、一方の溶液に対して他方の溶液を、ポンプ等を用いて一定の速度で供給することが好ましい。
【0054】
また、前記窒素含有有機化合物(2)の溶液または前記窒素含有有機化合物(2)および前記化合物(3)の溶液へ、前記金属化合物(1)の溶液を少量ずつ添加する(すなわち、全量を一度に添加しない。)ことも好ましい。後述する遷移金属化合物(M2)を用いる場合であれば、窒素含有有機化合物(2)および遷移金属化合物(M2)の溶液、または前記窒素含有有機化合物(2)、前記化合物(3)および遷移金属化合物(M2)の溶液へ、前記遷移金属化合物(M1)の溶液を少量ずつ添加する(すなわち、全量を一度に添加しない。)ことも好ましい。
【0055】
前記触媒前駆体溶液には金属化合物(1)と窒素含有有機化合物(2)との反応生成物が含まれると考えられる。溶媒へのこの反応生成物の溶解度は、金属化合物(1)、窒素含有有機化合物(2)および溶媒等の組み合わせによっても異なる。
【0056】
このため、たとえば金属化合物(1)が金属アルコキシドまたは金属錯体の場合には、前記触媒前駆体溶液は、溶媒の種類、窒素含有有機化合物(2)の種類にもよるが、好ましくは沈殿物や分散質を含まず、含むとしてもこれらは少量(たとえば溶液全量の10重量%以下、好ましくは5重量%以下、より好ましくは1重量%以下。)である。
【0057】
一方、たとえば金属化合物(1)が金属ハロゲン化物の場合には、前記触媒前駆体溶液中には、溶媒の種類、窒素含有有機化合物(2)の種類にもよるが、金属含有化合物(1)と窒素含有有機化合物(2)との反応生成物と考えられる沈殿物が生じやすい。
【0058】
工程(1)では、オートクレーブ等の加圧可能な容器に前記金属化合物(1)、前記窒素含有有機化合物(2)、前記化合物(3)、溶媒を入れ、常圧以上の圧力をかけながら、混合を行ってもよい。
【0059】
前記金属化合物(1)と前記窒素含有有機化合物(2)と前記化合物(3)と溶媒とを混合する際の温度は、たとえば、0〜60℃である。前記金属化合物(1)および前記窒素含有有機化合物(2)から錯体が形成されると推測されるところ、この温度が過度に高いと、溶媒が水を含む場合に錯体が加水分解され水酸化物の沈殿を生じ、優れた触媒が得られないと考えられ、この温度が過度に低いと、錯体が形成される前に前記金属化合物(1)が析出してしまい、優れた触媒が得られないと考えられる。
【0060】
<金属化合物(1)>
前記金属化合物(1)の一部または全部は、金属元素として周期表第4族および第5族の元素から選ばれる少なくとも1種の遷移金属元素M1を含有する遷移金属化合物(M1)である。
【0061】
遷移金属元素M1としては、具体的にはチタン、ジルコニウム、ハフニウム、ニオブ、バナジウムおよびタンタルが挙げられ、コストおよび得られる触媒の性能の観点から、チタン、ジルコニウム、ニオブ、バナジウムおよびタンタルが好ましく、チタンおよびジルコニウムがさらに好ましい。これらは、1種単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0062】
前記金属化合物(1)は、好ましくは、酸素原子およびハロゲン原子から選ばれる少なくとも1種を有しており、その具体例としては、金属リン酸塩、金属硫酸塩、金属硝酸塩、金属有機酸塩、金属酸ハロゲン化物(金属ハロゲン化物の中途加水分解物)、金属アルコキシド、金属ハロゲン化物、金属ハロゲン酸塩および金属次亜ハロゲン酸塩、金属錯体が挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0063】
前記金属アルコキシドとしては、前記遷移金属のメトキシド、プロポキシド、イソプロポキシド、エトキシド、ブトキシド、およびイソブトキシドが好ましく、前記遷移金属のイソプロポキシド、エトキシドおよびブトキシドがさらに好ましい。前記金属アルコキシドは、1種のアルコキシ基を有していてもよく、2種以上のアルコキシ基を有していてもよい。
【0064】
酸素原子を有する金属化合物(1)としては、金属アルコキシド、アセチルアセトン錯体、金属酸塩化物、金属硫酸塩および金属硝酸塩が好ましく、コストの面から、金属アルコキシド、アセチルアセトン錯体がより好ましく、前記溶媒への溶解性の観点から、金属アルコキシド、アセチルアセトン錯体がさらに好ましい。
【0065】
前記金属ハロゲン化物としては、金属塩化物、金属臭化物および金属ヨウ化物が好ましく、前記金属酸ハロゲン化物としては、金属酸塩化物、金属酸臭化物、金属酸ヨウ化物が好ましい。
【0066】
金属過ハロゲン酸塩としては金属過塩素酸塩が好ましく、金属次亜ハロゲン酸塩としては金属次亜塩素酸塩が好ましい。
【0067】
前記金属化合物(1)(遷移金属化合物(M1))の具体例としては、
チタンテトラメトキシド、チタンテトラエトキシド、チタンテトラプロポキシド、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラブトキシド、チタンテトライソブトキシド、チタンテトラペントキシド、チタンテトラアセチルアセトナート、チタンジイソプロポキシドジアセチルアセトナート(Ti(acac)2(O-iPr)2、acacはアセチルアセトナトイオンを、iPrはイソプロピル基を表わす。以下も同様である。)、チタンオキシジアセチルアセトナート、トリス(アセチルアセトナト)第二チタン塩化物([Ti(acac)3]2[TiCl6])、四塩化チタン、三塩化チタン、オキシ塩化チタン、四臭化チタン、三臭化チタン、オキシ臭化チタン、四ヨウ化チタン、三ヨウ化チタン、オキシヨウ化チタン等のチタン化合物;
ニオブペンタメトキシド、ニオブペンタエトキシド、ニオブペンタイソプロポキシド、ニオブペンタブトキシド、ニオブペンタペントキシド、ニオブトリアセチルアセトナート、ニオブペンタアセチルアセトナート、ニオブジイソプロポキシドトリアセチルアセトナート(Nb(acac)3(O-iPr)2)、トリス(2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオン)ニオブ、ニオブ(III)ヘキサフルオロアセチルアセトナート、五塩化ニオブ、オキシ塩化ニオブ、五臭化ニオブ、オキシ臭化ニオブ、五ヨウ化ニオブ、オキシヨウ化ニオブ等のニオブ化合物;
ジルコニウムテトラメトキシド、ジルコニウムテトラエトキシド、ジルコニウムテトラプロポキシド、ジルコニウムテトライソプロポキシド、ジルコニウムテトラブトキシド、ジルコニウムテトライソブトキシド、ジルコニウムテトラペントキシド、ジルコニウムテトラアセチルアセトナート、ジルコニウムジイソプロポキシドジアセチルアセトナート(Zr(acac)2(O-iPr)2)、テトラキスジエチルアミノジルコニウム、テトラキス(2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオン)ジルコニウム、ジルコニウム(IV)ヘキサフルオロアセチルアセトナート、テトラ-1-メトキシ-2-メチル-2-プロポキシジルコニウム(IV)、四塩化ジルコニウム、オキシ塩化ジルコニウム、四臭化ジルコニウム、オキシ臭化ジルコニウム、四ヨウ化ジルコニウム、オキシヨウ化ジルコニウム等のジルコニウム化合物;
タンタルペンタメトキシド、タンタルペンタエトキシド、タンタルペンタイソプロポキシド、タンタルペンタブトキシド、タンタルペンタペントキシド、タンタルテトラエトキシアセチルアセトナート、タンタルジイソプロポキシドジアセチルアセトナート(Ta(acac)2(O-iPr)2)、ペンタキスジエチルアミノタンタル、五塩化タンタル、オキシ塩化タンタル、五臭化タンタル、オキシ臭化タンタル、五ヨウ化タンタル、オキシヨウ化タンタル等のタンタル化合物;
ハフニウムテトラメトキシド、ハフニウムテトラエトキシド、ハフニウムテトラプロポキシド、ハフニウムテトライソプロポキシド、ハフニウムテトラブトキシド、ハフニウムテトライソブトキシド、ハフニウムテトラペントキシド、ハフニウムテトラアセチルアセトナート、テトラキスジエチルアミノハフニウム、テトラ-1-メトキシ-2-メチル-2-プロポキシハフニウム(IV)、ハフニウム(IV)アセチルアセトナート、テトラキス(2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオン)ハフニウム、ハフニウム(IV)ヘキサフルオロアセチルアセトン、四塩化ハフニウム、オキシ塩化ハフニウム、臭化ハフニウム、オキシ臭化ハフニウム、ヨウ化ハフニウム、オキシヨウ化ハフニウム等のハフニウム化合物;
バナジウム(V)トリメトキシドオキシド、バナジウム(V)エトキシド、バナジウム(V)トリエトキシドオキシド、バナジウム(V)トリ−i−プロポキシドオキシド、バナジウム(V)トリ−n−ブトキシドオキシド、バナジウム(V)トリ−t−ブトキシドオキシド、バナジウム(V)イソプロポキシドアセチルアセトナート(V(acac)(O-iPr)4、V(acac)2(O-iPr)3、V(acac)3(O-iPr)2、V(acac)4(O-iPr))、バナジウム(III)アセチルアセトナート、バナジウム(III)アセチルアセトン、トリス(2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオン)バナジウム(III)、バナジウム(III)ヘキサフルオロアセチルアセトン、塩化バナジウム(II)、塩化バナジウム(III)、塩化バナジウム(IV)、オキシ三塩化バナジウム(V)、臭化バナジウム(III)、オキシ臭化バナジウム(V)、ヨウ化バナジウム(III)、オキシヨウ化バナジウム(V)等のバナジウム化合物;
が挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0068】
これらの化合物の中でも、得られる触媒が均一な粒径の微粒子となり、その活性が高いことから、
チタンテトラエトキシド、四塩化チタン、オキシ塩化チタン、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラアセチルアセトナート、チタンジイソプロポキシドジアセチルアセトナート(Ti(acac)2(O-iPr)2)、
ニオブペンタエトキシド、五塩化ニオブ、オキシ塩化ニオブ、ニオブペンタイソプロポキシド、ニオブペンタアセチルアセトナート、ニオブトリアセチルアセトナート、ニオブジイソプロポキシドトリアセチルアセトナート(Nb(acac)3(O-iPr)2)、
ジルコニウムテトラエトキシド、四塩化ジルコニウム、オキシ塩化ジルコニウム、ジルコニウムテトライソプロポキシド、ジルコニウムテトラアセチルアセトナート、ジルコニウムジイソプロポキシドジアセチルアセトナート(Zr(acac)2(O-iPr)2)、
タンタルペンタメトキシド、タンタルペンタエトキシド、五塩化タンタル、オキシ塩化タンタル、タンタルペンタイソプロポキシド、タンタルテトラエトキシアセチルアセトナート(Ta(acac)(O-C2H5)4)、タンタルジイソプロポキシドトリアセチルアセトナート(Ta(acac)3(O-iPr)2)、
バナジウム(V)トリメトキシドオキシド、バナジウム(V)エトキシド、バナジウム(V)トリエトキシドオキシド、バナジウム(V)トリ−i−プロポキシドオキシド、バナジウム(V)トリ−n−ブトキシドオキシド、バナジウム(V)トリ−t−ブトキシドオキシド、バナジウム(V)イソプロポキシドアセチルアセトナート(V(acac)(O-iPr)4、V(acac)2(O-iPr)3、V(acac)3(O-iPr)2、V(acac)4(O-iPr))、バナジウム(III)アセチルアセトナート、バナジウム(III)アセチルアセトン、塩化バナジウム(III)、塩化バナジウム(IV)が好ましく、
五塩化チタン、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラアセチルアセトナート、ニオブペンタエトキシド、ニオブペンタイソプロポキシド、四塩化ジルコニウム、オキシ塩化ジルコニウム、ジルコニウムテトライソプロポキシド、タンタルペンタイソプロポキシド、バナジウム(V)トリ−i−プロポキシドオキシド、バナジウム(III)アセチルアセトン、塩化バナジウム(III)がさらに好ましい。
【0069】
また、前記金属化合物(1)として、前記遷移金属化合物(M1)と共に、金属元素として鉄、ニッケル、クロム、コバルトおよびマンガンから選ばれる少なくとも1種の遷移金属元素M2を含む遷移金属化合物(M2)が併用されてもよい。遷移金属化合物(M2)を用いると、得られる触媒の性能が向上する。
【0070】
前記遷移金属元素M2としては、コストと得られる触媒の性能とのバランスの観点から、鉄およびクロムが好ましく、鉄がさらに好ましい。
【0071】
遷移金属化合物(M2)の具体例としては、
鉄(III)エトキシド、鉄(III)イソプロポキシドアセチルアセトナート(Fe(acac)(O-iPr)2、Fe(acac)2(O-iPr))、鉄(III)アセチルアセトナート、トリス(2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオン)鉄(III)、鉄(III)ヘキサフルオロアセチルアセトナート、塩化鉄(II)、塩化鉄(III)、硫酸鉄(III)、硫化鉄(II)、硫化鉄(III)、フェロシアン化カリウム、フェリシアン化カリウム、フェロシアン化アンモニウム、フェリシアン化アンモニウム、フェロシアン化鉄、硝酸鉄(II)、硝酸鉄(III)、シュウ酸鉄(II)、シュウ酸鉄(III)、リン酸鉄(II)、リン酸鉄(III)フェロセン、水酸化鉄(II)、水酸化鉄(III)、酸化鉄(II)、酸化鉄(III)、四酸化三鉄、酢酸鉄(II)、乳酸鉄(II)、クエン酸鉄(III)等の鉄化合物;
ニッケル(II)エトキシド、ニッケル(II)イソプロポキシドアセチルアセトナート(Ni(acac)(O-iPr))、ニッケル(II)アセチルアセトナート、塩化ニッケル(II)、硫酸ニッケル(II)、硫化ニッケル(II)、硝酸ニッケル(II)、シュウ酸ニッケル(II)、リン酸ニッケル(II)、ニッケルセン、水酸化ニッケル(II)、酸化ニッケル(II)、酢酸ニッケル(II)、乳酸ニッケル(II)等のニッケル化合物;
クロム(III)エトキシド、クロム(III)イソプロポキシドアセチルアセトナート(Cr(acac)(O-iPr)2、Cr(acac)2(O-iPr))、クロム(III)アセチルアセトナート、塩化クロム(II)、塩化クロム(III)、硫酸クロム(III)、硫化クロム(III)、硝酸クロム(III)、シュウ酸クロム(III)、リン酸クロム(III)、水酸化クロム(III)、酸化クロム(II)、酸化クロム(III)、酸化クロム(IV)、酸化クロム(VI)、酢酸クロム(II)、酢酸クロム(III)、乳酸クロム(III)等のクロム化合物;
コバルト(III)エトキシド、コバルト(III)イソプロポキシドアセチルアセトナート(Co(acac)(O-iPr)2、Co(acac)2(O-iPr))、コバルト(III)アセチルアセトナート、塩化コバルト(II)、塩化コバルト(III)、硫酸コバルト(II)、硫化コバルト(II)、硝酸コバルト(II)、硝酸コバルト(III)、シュウ酸コバルト(II)、リン酸コバルト(II)、コバルトセン、水酸化コバルト(II)、酸化コバルト(II)、酸化コバルト(III)、四酸化三コバルト、酢酸コバルト(II)、乳酸コバルト(II)等のコバルト化合物;
マンガン(III)エトキシド、マンガン(III)イソプロポキシドアセチルアセトナート(Mn(acac)(O-iPr)2、Mn(acac)2(O-iPr))、マンガン(III)アセチルアセトナート、トリス(2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオン)マンガン(III)、マンガン(III)ヘキサフルオロアセチルアセトン、塩化マンガン(II)、硫酸マンガン(II)、硫化マンガン(II)、硝酸マンガン(II)、シュウ酸マンガン(II)、水酸化マンガン(II)、酸化マンガン(II)、酸化マンガン(III)、酢酸マンガン(II)、乳酸マンガン(II)、クエン酸マンガン等のマンガン化合物;
が挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0072】
これらの化合物の中でも、
鉄(III)エトキシド、鉄(III)イソプロポキシドアセチルアセトナート、鉄(III)アセチルアセトナート、塩化鉄(II)、塩化鉄(III)、フェロシアン化カリウム、フェリシアン化カリウム、フェロシアン化アンモニウム、フェリシアン化アンモニウム、酢酸鉄(II)、乳酸鉄(II)、
ニッケル(III)エトキシド、ニッケル(III)イソプロポキシドアセチルアセトナート、ニッケル(III)アセチルアセトナート、塩化ニッケル(II)、塩化ニッケル(III)、酢酸ニッケル(II)、乳酸ニッケル(II)、硝酸ニッケル(II)、
クロム(III)エトキシド、クロム(III)イソプロポキシドアセチルアセトナート、クロム(III)アセチルアセトナート、塩化クロム(II)、塩化クロム(III)、酢酸クロム(II)、酢酸クロム(III)、乳酸クロム(III)、
コバルト(III)エトキシド、コバルト(III)イソプロポキシドアセチルアセトナート、コバルト(III)アセチルアセトナート、塩化コバルト(II)、塩化コバルト(III)、酢酸コバルト(II)、乳酸コバルト(II)、
マンガン(III)エトキシド、マンガン(III)イソプロポキシドアセチルアセトナート、マンガン(III)アセチルアセトナート、塩化マンガン(II)、酢酸マンガン(II)、乳酸マンガン(II)が好ましく、
塩化鉄(II)、塩化鉄(III)、フェロシアン化カリウム、フェリシアン化カリウム、フェロシアン化アンモニウム、フェリシアン化アンモニウム、酢酸鉄(II)、乳酸鉄(II)、塩化クロム(II)、塩化クロム(III)、酢酸クロム(II)、酢酸クロム(III)、乳酸クロム(III)がさらに好ましい。
【0073】
工程1で用いられる前記遷移金属化合物(M1)と前記遷移金属化合物(M2)との割合を、遷移金属元素M1の原子と遷移金属元素M2の原子とのモル比(M1:M2)に換算して、M1:M2=(1−α):αと表わすと、αの範囲は、好ましくは0.01≦α≦0.5、さらに好ましくは0.02≦α≦0.4、特に好ましくは0.05≦α≦0.3である。
【0074】
また、前記金属化合物(1)として、金属元素としてアルミニウム、イットリウム、スズおよびアンチモンから選ばれる少なくとも1種の金属(ただし、アンチモンは金属元素とみなす。)元素M3を含む金属化合物(M3)が併用されてもよい。これらは、1種単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0075】
前記金属化合物(M3)の具体例としては、
アルミニウムメトキシド、アルミニウムエトキシド、アルミニウムプロポキシド、アルミニウムイソプロポキシド、アルミニウムブトキシド、アルミニウムイソブトキシド、アルミニウムペントキシド、アルミニウムアセチルアセトナート、アルミニウムイソプロポキシドアセチルアセトナート(Al(acac)(O-iPr)2、Al(acac)2(O-iPr))、トリスジエチルアミノアルミニウム、トリス(2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオン)アルミニウム、アルミニウムヘキサフルオロアセチルアセトナート、トリス-1-メトキシ-2-メチル-2-プロポキシアルミニウム、三塩化アルミニウム、オキシ塩化アルミニウム、三臭化アルミニウム、オキシ臭化アルミニウム、三ヨウ化アルミニウム、オキシヨウ化アルミニウム、硝酸アルミニウム、シュウ酸アルミニウム、硫酸アルミニウム等のアルミニウム化合物;
イットリウム(III)メトキシド、イットリウム(III)エトキシド、イットリウム(III)プロポキシド、イットリウム(III)イソプロポキシド、イットリウム(III)ブトキシド、イットリウム(III)イソブトキシド、イットリウム(III)ペントキシド、イットリウム(III)アセチルアセトナート、イットリウム(III)イソプロポキシドアセチルアセトナート(Y(acac)(O-iPr)2、Y(acac)2(O-iPr))、トリスジエチルアミノイットリウム、トリス(2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオン)イットリウム、イットリウム(III)ヘキサフルオロアセチルアセトナート、トリス-1-メトキシ-2-メチル-2-プロポキシイットリウム(III)、三塩化イットリウム、オキシ塩化イットリウム、三臭化イットリウム、オキシ臭化イットリウム、三ヨウ化イットリウム、オキシヨウ化イットリウム、酢酸イットリウム、硝酸イットリウム、シュウ酸イットリウム、硫酸イットリウム等のイットリウム化合物;
スズ(IV)メトキシド、スズ(IV)エトキシド、スズ(IV)プロポキシド、スズ(IV)イソプロポキシド、スズ(IV)ブトキシド、スズ(IV)イソブトキシド、スズ(IV)ペントキシド、スズ(II)アセチルアセトナート、スズ(IV)ジイソプロポキシドジアセチルアセトナート(Sn(acac)2(O-iPr)2)、テトラキスジエチルアミノスズ、テトラキス(2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオン)スズ、スズ(II)ヘキサフルオロアセチルアセトナート、テトラ-1-メトキシ-2-メチル-2-プロポキシスズ(IV)、四塩化スズ、二塩化スズ、オキシ塩化スズ、四臭化スズ、二臭化スズ、オキシ臭化スズ、四ヨウ化スズ、二ヨウ化スズ、オキシヨウ化スズ、酢酸スズ、シュウ酸スズ、酒石酸スズ、硫酸スズ等のスズ化合物;
アンチモン(III)メトキシド、アンチモン(III)エトキシド、アンチモン(III)プロポキシド、アンチモン(III)イソプロポキシド、アンチモン(III)ブトキシド、アンチモン(III)イソブトキシド、アンチモン(III)ペントキシド、アンチモン(III)アセチルアセトナート、アンチモン(III)イソプロポキシドアセチルアセトナート(Sb(acac)(O-iPr)2、Sb(acac)2(O-iPr))、トリスジエチルアミノアンチモン、トリス(2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオン)アンチモン、アンチモン(III)ヘキサフルオロアセチルアセトナート、トリス-1-メトキシ-2-メチル-2-プロポキシアンチモン(III)三塩化アンチモン、オキシ塩化アンチモン、三臭化アンチモン、オキシ臭化アンチモン、三ヨウ化アンチモン、オキシヨウ化アンチモン、酢酸アンチモン、硝酸アンチモン等のアンチモン化合物;
が挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0076】
これらの化合物の中でも、得られる触媒が均一な粒径の微粒子となり、その活性が高いことから、
三塩化アルミニウム、オキシ塩化アルミニウム、アルミニウムエトキシド、アルミニウムイソプロポキシド、アルミニウムブトキシド、アルミニウムアセチルアセトナート、アルミニウムイソプロポキシドアセチルアセトナート(Al(acac)(O-iPr)2、Al(acac)2(O-iPr))、
三塩化イットリウム、オキシ塩化イットリウム、イットリウム(III)エトキシド、イットリウム(III)イソプロポキシド、イットリウム(III)ブトキシド、イットリウム(III)アセチルアセトナート、イットリウム(III)イソプロポキシドアセチルアセトナート(Y(acac)(O-iPr)2、Y(acac)2(O-iPr))、
四塩化スズ、二塩化スズ、オキシ塩化スズ、スズ(IV)メトキシド、スズ(IV)エトキシド、スズ(IV)イソプロポキシド、スズ(IV)ブトキシド、スズ(IV)アセチルアセトナート、スズ(IV)ジイソプロポキシドジアセチルアセトナート(Sn(acac)2(O-iPr)2)、
三塩化アンチモン、オキシ塩化アンチモン、アンチモン(III)エトキシド、アンチモン(III)プロポキシド、アンチモン(III)イソプロポキシド、アンチモン(III)ブトキシド、アンチモン(III)イソブトキシド、アンチモン(III)ペントキシド、アンチモン(III)アセチルアセトナート、アンチモン(III)イソプロポキシドアセチルアセトナート(Sb(acac)(O-iPr)2、Sb(acac)2(O-iPr))が好ましく、
三塩化アルミニウム、アルミニウムエトキシド、アルミニウムイソプロポキシド、アルミニウムブトキシド、アルミニウムアセチルアセトナート、
三塩化イットリウム、イットリウム(III)エトキシド、イットリウム(III)イソプロポキシド、イットリウム(III)アセチルアセトナート、
四塩化スズ、二塩化スズ、スズ(IV)メトキシド、スズ(IV)エトキシド、スズ(IV)イソプロポキシド、スズ(IV)ブトキシド、スズ(IV)アセチルアセトナート、
三塩化アンチモン、アンチモン(III)エトキシド、アンチモン(III)プロポキシド、アンチモン(III)イソプロポキシド、アンチモン(III)ブトキシド、アンチモン(III)アセチルアセトナートがさらに好ましい。
【0077】
前記金属化合物(M3)は、金属原子のモル数に換算して、前記金属化合物(M1)に対してたとえば100モル%以下、50モル%以下または30モル%以下の量で用いられてもよい。
【0078】
工程1で用いられる前記遷移金属化合物(M1)と前記金属化合物(M3)との割合を、遷移金属元素M1の原子と金属元素M3の原子とのモル比(M1:M3)に換算して、M1:M2=1:βと表わすと、βの範囲は、たとえば0≦β≦1、0≦β≦0.5、または0≦β≦0.3であってもよい。
【0079】
<窒素含有有機化合物(2)>
前記窒素含有有機化合物(2)としては、前記金属化合物(1)中の金属原子に配位可能な配位子となり得る化合物(好ましくは、単核の錯体を形成し得る化合物)が好ましく、多座配位子(好ましくは、2座配位子または3座配位子)となり得る(キレートを形成し得る)化合物がさらに好ましい。
【0080】
前記窒素含有有機化合物(2)は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0081】
前記窒素含有有機化合物(2)は、好ましくは、アミノ基、ニトリル基、イミド基、イミン基、ニトロ基、アミド基、アジド基、アジリジン基、アゾ基、イソシアネート基、イソチオシアネート基、オキシム基、ジアゾ基、ニトロソ基などの官能基、またはピロール環、ポルフィリン環、ピロリジン環、イミダゾール環、トリアゾール環、ピリジン環、ピペリジン環、ピリミジン環、ピラジン環、プリン環等の環(これらの官能基および環をまとめて「含窒素分子団」ともいう。)を有する。
【0082】
前記窒素含有有機化合物(2)は、含窒素分子団を分子内に有すると、工程(1)での混合を経て、前記金属化合物(1)に由来する金属原子により強く配位することができると考えられる。
【0083】
前記含窒素分子団の中では、アミノ基、イミン基、アミド基、ピロール環、ピリジン環およびピラジン環がより好ましく、アミノ基、イミン基、ピロール環およびピラジン環がさらに好ましく、アミノ基およびピラジン環が、得られる触媒の活性が特に高くなることから、特に好ましい。
【0084】
前記窒素含有有機化合物(2)(ただし、酸素原子を含まない。)の具体例としては、メラミン、エチレンジアミン、トリアゾール、アセトニトリル、アクリロニトリル、エチレンイミン、アニリン、ピロールおよびポリエチレンイミンならびにこれらの塩などが挙げられ、これらの中でも、得られる触媒の活性が高いことからエチレンジアミンおよびエチレンジアミン・二塩酸塩が好ましい。
【0085】
前記窒素含有有機化合物(2)は、好ましくは、さらに水酸基、カルボキシル基、アルデヒド基、酸ハライド基、スルホ基、リン酸基、ケトン基、エーテル基またはエステル基(これらをまとめて「含酸素分子団」ともいう。)を有する。前記窒素含有有機化合物(2)は、含酸素分子団を分子内に有すると、工程(1)での混合を経て、前記金属化合物(1)に由来する金属原子により強く配位できると考えられる。
【0086】
前記含酸素分子団の中では、カルボキシル基およびアルデヒド基が、得られる触媒の活性が特に高くなることから、特に好ましい。
【0087】
分子中に酸素原子を含む前記窒素含有有機化合物(2)としては、前記含窒素分子団および前記含酸素分子団を有する化合物が好ましい。このような化合物は、工程(1)を経て、前記金属化合物(1)に由来する金属原子に特に強く配位できると考えられる。
【0088】
前記含窒素分子団および前記含酸素分子団を有する化合物としては、アミノ基およびカルボキシル基を有するアミノ酸、ならびにその誘導体が好ましい。
【0089】
前記アミノ酸としては、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシン、バリン、ノルバリン、グリシルグリシン、トリグリシンおよびテトラグリシンが好ましく、得られる触媒の活性が高いことから、アラニン、グリシン、リシン、メチオニン、チロシンがより好ましく、得られる触媒が極めて高い活性を示すことから、アラニン、グリシンおよびリシンが特に好ましい。
【0090】
分子中に酸素原子を含む前記窒素含有有機化合物(2)の具体例としては、上記アミノ酸等に加えて、アセチルピロールなどのアシルピロール類、ピロールカルボン酸、アセチルイミダゾールなどのアシルイミダゾール類、カルボニルジイミダゾール、イミダゾールカルボン酸、ピラゾール、アセトアニリド、ピラジンカルボン酸、ピペリジンカルボン酸、ピペラジンカルボン酸、モルホリン、ピリミジンカルボン酸、ニコチン酸、2−ピリジンカルボン酸、2,4−ピリジンジカルボン酸、8−キノリノール、およびポリビニルピロリドンが挙げられ、得られる触媒の活性が高いことから、2座配位子となり得る化合物、具体的にはピロール−2−カルボン酸、イミダゾール−4−カルボン酸、2−ピラジンカルボン酸、2−ピペリジンカルボン酸、2−ピペラジンカルボン酸、ニコチン酸、2−ピリジンカルボン酸、2,4−ピリジンジカルボン酸、および8−キノリノールが好ましく、2−ピラジンカルボン酸、および2−ピリジンカルボン酸がより好ましい。
【0091】
工程(1)で用いられる前記金属化合物(1)の金属元素の総原子数Aに対する、工程(1)で用いられる前記窒素含有有機化合物(2)の炭素の総原子数Bの比(B/A)は、工程(3)での熱処理時に二酸化炭素、一酸化炭素等の炭素化合物として脱離する成分を少なくすることが可能であり、すなわち触媒製造時に排気ガスを少量とすることができることから、好ましくは200以下、より好ましくは150以下、さらに好ましくは80以下、特に好ましくは30以下であり、良好な活性の触媒を得るという観点から、好ましくは1以上、より好ましくは2以上、さらに好ましくは3以上、特に好ましくは5以上である。
【0092】
工程(1)で用いられる前記金属化合物(1)の金属元素の総原子数Aに対する、工程(1)で用いられる前記窒素含有有機化合物(2)の窒素の総原子数Cの比(C/A)は、良好な活性の触媒を得るという観点から、好ましくは28以下、より好ましくは17以下、さらに好ましくは12以下、特に好ましくは8.5以下であり、良好な活性の触媒を得るという観点から、好ましくは1以上、より好ましくは2.5以上、さらに好ましくは3以上、特に好ましくは3.5以上である。
【0093】
<化合物(3)>
化合物(3)を用いないこと以外は本発明の製造方法と同様の触媒の製造方法によっても、従来よりも高い触媒活性を有する電極触媒が製造されるが、化合物(3)を用いる本発明の触媒の製造方法によれば、さらに高い触媒活性を有する電極触媒が製造される。
【0094】
ホウ素、リンおよび硫黄からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素Aならびにフッ素を含有する化合物(3)の具体例としては、フッ素を含有するホウ酸誘導体、フッ素を含有するリン酸誘導体、フッ素を含有するスルホン酸誘導体が挙げられる。
【0095】
前記フッ素を含有するホウ酸誘導体としては、たとえば、テトラフルオロホウ酸塩、たとえば、テトラフルオロホウ酸四級アンモニウム塩(たとえば、テトラフルオロホウ酸アンモニウム、テトラフルオロホウ酸メチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸ジメチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸トリメチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸エチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸ジエチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸トリエチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸ブチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸ジブチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸トリブチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸テトラ−n−ブチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸テトラメチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸テトラエチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸テトラプロピルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸テトラブチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸エチルトリメチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸ジエチルジメチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸トリエチルメチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸メチルトリプロピルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸エチルトリプロピルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸トリメチルプロピルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸エチルジメチルプロピルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸ジエチルメチルプロピルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸トリエチルプロピルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸ジメチルジプロピルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸エチルメチルジプロピルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸ジエチルジプロピルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸トリメチルブチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸エチルジメチルブチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸ジエチルメチルブチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸トリエチルブチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸トリプロピルブチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸ジメチルジブチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸エチルメチルジブチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸ジエチルジブチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸へキシルトリメチルアンモニウム(前記プロピルはn−プロピル、i−プロピルを含み、前記ブチルはn−ブチル、i−ブチル、s−ブチル、t−ブチルを含む。))、
テトラフルオロホウ酸四級ピリジニウム塩(たとえば、テトラフルオロホウ酸ピリジニウム、テトラフルオロホウ酸1−メチルピリジニウム、テトラフルオロホウ酸2−ブロモ−1−エチルピリジニウム、テトラフルオロホウ酸1−ブチルピリジニウム)、
テトラフルオロホウ酸四級イミダゾリウム塩(たとえば、テトラフルオロホウ酸1,3−ジメチルイミダゾリウム、テトラフルオロホウ酸1−エチル−3−メチルイミダゾリウム、テトラフルオロホウ酸1,3−ジエチルイミダゾリウム、テトラフルオロホウ酸1,2−ジメチル−3−エチルイミダゾリウム、テトラフルオロホウ酸1,2−ジメチル−3−プロピルイミダゾリウム、テトラフルオロホウ酸1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム)、
アルキル基の水素原子の全部または一部がフッ素原子で置換されたフルオロアルキルホウ酸(たとえば、ノナコサデカフルオロテトラデシルホウ酸、ヘプタコサデカフルオロトリデシルホウ酸、ペンタコサデカフルオロドデシルホウ酸、トリコサデカフルオロウンデシルホウ酸、ヘンイコサデカフルオロデシルホウ酸、ノナデカフルオロノニルホウ酸、ヘプタデカフルオロオクチルホウ酸、ペンタデカフルオロヘプチルホウ酸、トリデカフルオロヘキシルホウ酸、ウンデカフルオロペンチルホウ酸、ノナフルオロブチルホウ酸、ヘプタフルオロプロピルホウ酸、ペンタフルオロエチルホウ酸、トリフルオロメチルホウ酸および2,2,2−トリフルオロエチルホウ酸)、
前記フルオロアルキルホウ酸のモノエステルおよびジエステル(たとえば、メチルエステル、エチルエステル)、および
前記フルオロアルキルホウ酸の塩(たとえば、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、メチルアンモニウム塩、ジメチルアンモニウム塩、トリメチルアンモニウム塩、およびトリエチルアンモニウム塩)、
が挙げられる。
【0096】
具体的には、テトラフルオロホウ酸アンモニウム、テトラフルオロホウ酸メチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸ジメチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸トリメチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸エチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸ジエチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸トリエチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸ブチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸ジブチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸トリブチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸テトラ−n−ブチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸テトラメチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸テトラエチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸テトラプロピルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸テトラブチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸−1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムが好ましく、テトラフルオロホウ酸アンモニウム、テトラフルオロホウ酸ブチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸テトラエチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸−1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムがより好ましい。
【0097】
前記フッ素を含有するリン酸誘導体としては、
ヘキサフルオロリン酸塩、たとえば、ヘキサフルオロリン酸四級アンモニウム塩(たとえば、ヘキサフルオロリン酸アンモニウム、ヘキサフルオロリン酸メチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸ジメチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸トリメチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸エチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸ジエチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸トリエチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸ブチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸ジブチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸トリブチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸テトラ‐n‐ブチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸テトラメチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸テトラエチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸テトラプロピルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸テトラブチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸エチルトリメチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸ジエチルジメチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸トリエチルメチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸メチルトリプロピルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸エチルトリプロピルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸トリメチルプロピルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸エチルジメチルプロピルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸ジエチルメチルプロピルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸トリエチルプロピルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸ジメチルジプロピルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸エチルメチルジプロピルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸ジエチルジプロピルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸トリメチルブチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸エチルジメチルブチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸ジエチルメチルブチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸トリエチルブチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸トリプロピルブチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸ジメチルジブチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸エチルメチルジブチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸ジエチルジブチルアンモニウム、テトラフルオロリン酸へキシルトリメチルアンモニウム(前記プロピルはn−プロピル、i−プロピル、前記ブチルはn−ブチル、i−ブチル、s−ブチル、t−ブチルを含む。)、
ヘキサフルオロリン酸四級ピリジニウム塩(たとえば、ヘキサフルオロリン酸ピリジニウム、ヘキサフルオロリン酸1−メチルピリジニウム、ヘキサフルオロリン酸2−ブロモ−1−エチルピリジニウム)、
テトラフルオロリン酸四級イミダゾリウム塩(たとえば、テトラフルオロリン酸1,3−ジメチルイミダゾリウム、テトラフルオロリン酸1−エチル−3−メチルイミダゾリウム、テトラフルオロリン酸1,3−ジエチルイミダゾリウム、テトラフルオロリン酸1,2−ジメチル−3−エチルイミダゾリウム、テトラフルオロリン酸1,2−ジメチル−3−プロピルイミダゾリウム、テトラフルオロリン酸1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム)、
ヘキサフルオロリン酸、
前記ヘキサフルオロリン酸の塩(たとえば、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、アルキルアンモニウム(たとえば、メチルアンモニウム、ジメチルアンモニウム、トリメチルアンモニウム、エチルアンモニウム、ジエチルアンモニウム、およびトリエチルアンモニウム)塩)
一般式:(RO)nP=Oで表わされるフルオロアルキルリン酸エステル(式中、nは1〜3であり、Rはアルキル基の水素原子の全部または一部がフッ素原子で置換されたフルオロアルキル基(たとえば、ノナコサデカフルオロテトラデシル基、ノナコサデカフルオロテトラデシル基、ヘプタコサデカフルオロトリデシル基、ペンタコサデカフルオロドデシル基、トリコサデカフルオロウンデシル基、ヘンイコサデカフルオロデシル基、ノナデカフルオロノニル基、ヘプタデカフルオロオクチル基、ペンタデカフルオロヘプチル基、トリデカフルオロヘキシル基、ウンデカフルオロペンチル基、ノナフルオロブチル基、ヘプタフルオロプロピル基、ペンタフルオロエチル基、トリフルオロメチル基および2,2,2−トリフルオロエチル基)である。)、
一般式:(RN)3P=O、(RN)2P=O(OH)、または(RN)P=O(OH)2(式中、Rは前記フルオロアルキル基を表す。)で表されるフルオロアルキルリン酸アミド、
一般式(RO)3P、(RO)2(OH)P、または(RO)(OH)2P(式中、前記フルオロアルキル基を表す。)で表わされるフルオロアルキル亜リン酸、
一般式(RN)3P、(RN)2P(OH)、(RN)P(OH)2(式中、Rは前記フルオロアルキル基を表す。)で表わされるフルオロアルキル亜リン酸アミド、
一般式:RPO(OH)2(式中、Rは前記フルオロアルキル基を表す。)で表わされるフルオロアルキルホスホン酸
が挙げられる。
【0098】
具体的には、ヘキサフルオロリン酸アンモニウム、ヘキサフルオロリン酸メチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸ジメチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸トリメチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸エチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸ジエチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸トリエチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸ブチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸ジブチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸トリブチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸テトラ‐n‐ブチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸テトラメチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸テトラエチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸テトラプロピルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸テトラブチルアンモニウムが好ましく、ヘキサフルオロリン酸アンモニウム、ヘキサフルオロリン酸テトラエチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸−1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムがより好ましい。
【0099】
前記フッ素を含有するスルホン酸誘導体としては、
テトラフルオロエチレンとパーフルオロ[2−(フルオロスルホニルエトキシ)プロピルビニルエーテル]との共重合体(たとえば、ナフィオン(NAFION(登録商標)、下式で表わされる構造を有する共重合体))、
【0100】
【化1】

アルキル基の水素原子の全部または一部がフッ素原子で置換されたフルオロアルキルスルホン酸(炭素原子数は、たとえば1〜30である。)(たとえば、ノナコサデカフルオロテトラデカンスルホン酸、ヘプタコサデカフルオロトリデカンスルホン酸、ペンタコサデカフルオロドデカンスルホン酸、トリコサデカフルオロウンデカンスルホン酸、ヘンイコサデカフルオロデカンスルホン酸、ノナデカフルオロノナンスルホン酸、ヘプタデカフルオロオクタンスルホン酸、ペンタデカフルオロヘプタンスルホン酸、トリデカフルオロヘキサンスルホン酸、ウンデカフルオロペンタンスルホン酸、ノナフルオロブタンスルホン酸、ヘプタフルオロプロパンスルホン酸、ペンタフルオロエタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸および2,2,2−トリフルオロエタンスルホン酸)、
前記フルオロアルキルスルホン酸のエステル(たとえば、メチルエステル、エチルエステル、アリールエステル(例えば、フェニルエステル))
前記フルオロアルキルスルホン酸の塩(一般式:A[RSO3]、Rは前記フルオロアルキル基を表す。)(ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、アルキルアンモニウム(たとえば、メチルアンモニウム、ジメチルアンモニウム、トリメチルアンモニウム、エチルアンモニウム、ジエチルアンモニウム、およびトリエチルアンモニウム)塩)、
前記フルオロアルキルスルホン酸のアミド(一般式:R−SO2−NR12、Rは前記フルオロアルキル基を、R1およびR2はそれぞれ独立に、水素原子の全部または一部がフッ素原子で置換されていてもよい炭素原子数1〜10の炭化水素基(たとえば、メチル基、エチル基、フェニル基)表す。)、
前記フルオロアルキルスルホン酸のハロゲン化物(一般式:(R−SO2)X、Rは前記フルオロアルキル基を表す。Xはフッ素、塩素、臭素、ヨウ素を表す。)
前記フルオロアルキルスルホン酸の酸無水物(一般式:(R−SO22O、Rは前記フルオロアルキル基を表す。)
が挙げられる。
【0101】
具体的には、テトラフルオロエチレンとパーフルオロ[2−(フルオロスルホニルエトキシ)プロピルビニルエーテル]との共重合体(たとえば、ナフィオン(NAFION(登録商標))、ヘプタデカフルオロオクタンスルホン酸、ペンタデカフルオロヘプタンスルホン酸、トリデカフルオロヘキサンスルホン酸、ウンデカフルオロペンタンスルホン酸、ノナフルオロブタンスルホン酸、ヘプタフルオロプロパンスルホン酸、ペンタフルオロエタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ヘプタデカフルオロオクタンスルホン酸アンモニウム、ペンタデカフルオロヘプタンスルホン酸アンモニウム、トリデカフルオロヘキサンスルホン酸アンモニウム、ウンデカフルオロペンタンスルホン酸アンモニウム、ノナフルオロブタンスルホン酸アンモニウム、ヘプタフルオロプロパンスルホン酸アンモニウム、ペンタフルオロエタンスルホン酸アンモニウム、トリフルオロメタンスルホン酸アンモニウム、トリフルオロメタンスルホン酸トリメチルアンモニウム、トリフルオロメタンスルホン酸トリエチルアンモニウム、トリフルオロメタンスルホン酸トリブチルアンモニウム、トリフルオロメタンスルホン酸テトラメチルアンモニウム、トリフルオロメタンスルホン酸テトラエチルアンモニウム、トリフルオロメタンスルホン酸テトラブチルアンモニウム、トリフルオロメタンスルホン酸メチル、トリフルオロメタンスルホン酸エチル、ノナフルオロ−1−ブタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸第一鉄、トリフルオロメタンスルホン酸無水物が好ましく、トリフルオロメタンスルホン酸、ヘプタデカフルオロオクタンスルホン酸、ノナフルオロ−1−ブタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸テトラブチルアンモニウム、ヘプタデカフルオロオクタンスルホン酸アンモニウム、トリフルオロメタンスルホン酸第一鉄がより好ましい。
【0102】
また、界面活性能がある骨格つまり、疎水性部位と親水性部位が存在することで、反応系内の安定化をはかるものが好ましい。
【0103】
これらは、1種単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0104】
工程(1)で用いられる前記化合物(3)に含まれる元素Aの量(すなわち、工程(1)で用いられる前記化合物(3)に含まれる元素Aの総原子数)は、工程(1)で用いられる前記金属化合物(1)中の金属原子1モルに対して、通常0.01〜3モル、好ましくは0.01〜2モル、さらに好ましくは0.01〜1モルである。
【0105】
元素Aがホウ素のみの場合には、その量は、上記基準で通常0.01〜3モル、好ましくは0.01〜2モル、さらに好ましくは0.01〜1モルであり、元素Aがリンのみの場合には、その量は、上記基準で通常0.01〜3モル、好ましくは0.01〜2モル、さらに好ましくは0.01〜1モルであり、元素Aが硫黄のみの場合には、その量は、上記基準で通常0.01〜3モル、好ましくは0.01〜2モル、さらに好ましくは0.01〜1モルである。
【0106】
また工程(1)で用いられる化合物(3)に含まれるフッ素の量(すなわち、工程(1)で用いられる前記化合物(3)に含まれるフッ素の総原子数)は、工程(1)で用いられる前記金属化合物(1)中の金属原子1モルに対して、通常0.01〜5モル、好ましくは0.02〜4モル、さらに好ましくは0.03〜3モルである。
【0107】
上記の化合物(3)の量は、前記工程(1)で用いられる化合物(3)以外の原料が元素Aもフッ素も含まない場合の量であり、化合物(3)以外の原料が元素Aまたはフッ素を含む場合には、工程(1)における化合物(3)の使用量を適宜減らすことが好ましい。
【0108】
<溶媒>
前記溶媒としては、たとえば水、アルコール類および酸類が挙げられる。アルコール類としては、エタノール、メタノール、ブタノール、プロパノールおよびエトキシエタノールが好ましく、エタノールおよびメタノールがさらに好ましい。酸類としては、酢酸、硝酸(水溶液)、塩酸、リン酸水溶液およびクエン酸水溶液が好ましく、酢酸および硝酸がさらに好ましく、酢酸が特に好ましい。これらは、1種単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0109】
前記金属化合物(1)が金属ハロゲン化物の場合の溶媒としてはメタノールが好ましい。
【0110】
前記溶媒は、触媒前駆体溶液100重量%中にたとえば50〜95重量%となるような量で用いてもよい。
【0111】
<沈殿抑制剤>
前記金属化合物(1)が、塩化チタン、塩化ニオブ、塩化ジルコニウム、塩化タンタルなど、ハロゲン原子を含む場合には、これらの化合物は一般的に水によって容易に加水分解され、水酸化物や、酸塩化物等の沈殿を生じやすい。よって、前記金属化合物(1)がハロゲン原子を含む場合には、強酸を溶液(触媒前駆体溶液)中に1重量%以上となる量で添加することが好ましい。たとえば酸が塩酸であれば、溶液(触媒前駆体溶液)中の塩化水素の濃度が5重量%以上、より好ましくは10重量%以上となるように酸を添加すると、前記金属化合物(1)に由来する水酸化物、酸塩化物等の沈殿の発生を抑制しつつ、澄明な触媒前駆体溶液を得ることができる。
【0112】
また、前記金属化合物(1)がハロゲン原子を含む場合には、前記溶媒としてアルコール類を単独で用い、かつ酸を添加することなく、澄明な触媒前駆体溶液を得てもよい。
【0113】
前記金属化合物(1)が金属錯体であって、かつ前記溶媒として水を単独でまたは水と他の化合物とを用いる場合にも、水酸化物または酸塩化物の沈殿の発生を抑制するための沈殿抑制剤を用いることが好ましい。この場合の沈殿抑制剤としては、ジケトン構造を有する化合物が好ましく、ジアセチル、アセチルアセトン、2,5−ヘキサンジオンおよびジメドンがより好ましく、アセチルアセトンおよび2,5−ヘキサンジオンがさらに好ましい。
【0114】
これらの沈殿抑制剤は、金属化合物溶液(金属化合物(1)を含有し、前記窒素含有有機化合物(2)および前記化合物(3)を含有しない溶液)100重量%中に好ましくは1〜70重量%、より好ましくは、2〜50重量%、さらに好ましくは15〜40重量%となる量で添加される。
【0115】
これらの沈殿抑制剤は、触媒前駆体溶液100重量%中に好ましくは0.1〜40重量%、より好ましくは、0.5〜20重量%、さらに好ましくは2〜10重量%となる量で添加される。
【0116】
前記沈殿抑制剤は、工程(1)の中でのいずれの段階で添加されてもよい。
【0117】
工程(1)では、好ましくは、前記金属化合物(1)および前記沈殿抑制剤を含む溶液を調製して、次いでこの溶液と前記窒素含有有機化合物(2)および前記化合物(3)とを混合して触媒前駆体溶液を得る。このように工程(1)を実施すると、前記沈殿の発生をより確実に抑制することができる。
【0118】
(工程(2))
工程(2)では、工程(1)で得られた前記触媒前駆体溶液から溶媒を除去する。
【0119】
溶媒の除去は大気下で行ってもよく、不活性ガス(例えば、窒素、アルゴン、ヘリウム)雰囲気下で行ってもよい。不活性ガスとしては、コストの観点から、窒素およびアルゴンが好ましく、窒素がより好ましい。
【0120】
溶媒除去の際の温度は、溶媒の蒸気圧が大きい場合には常温であってもよいが、触媒の量産性の観点からは、好ましくは30℃以上、より好ましくは40℃以上、さらに好ましくは50℃以上であり、工程(1)で得られる溶液中に含まれる、キレート等の金属錯体であると推定される触媒前駆体を分解させないという観点からは、好ましくは350℃以下、より好ましくは150℃以下、さらに好ましくは110℃以下である。
【0121】
溶媒の除去は、溶媒の蒸気圧が大きい場合には大気圧下で行ってもよいが、より短時間で溶媒を除去するため、減圧(たとえば、0.1Pa〜0.1MPa)下で行ってもよい。減圧下での溶媒の除去には、たとえばエバポレーターを用いることができる。
【0122】
溶媒の除去は、工程(1)で得られた混合物を静置した状態で行ってもよいが、より均一な固形分残渣を得るためには、混合物を回転させながら溶媒を除去することが好ましい。
【0123】
前記混合物を収容している容器の重量が大きい場合は、撹拌棒、撹拌羽根、撹拌子などを用いて、溶液を回転させることが好ましい。
【0124】
また、前記混合物を収容している容器の真空度を調節しながら溶媒の除去を行う場合には、密閉できる容器で乾燥を行うこととなるため、容器ごと回転させながら溶媒の除去を行うこと、たとえばロータリーエバポレーターを使用して溶媒の除去を行うことが好ましい。
【0125】
溶媒の除去の方法、あるいは前記金属化合物(1)、前記窒素含有有機化合物(2)または前記化合物(3)の性状によっては、工程(2)で得られた固形分残渣の組成または凝集状態が不均一であることがある。このような場合に、固形分残渣を、混合し、解砕して、より均一、微細な粉末としたものを工程(3)で用いると、粒径がより均一な触媒を得ることができる。
【0126】
固形分残渣を混合し、解砕するには、たとえば、ロール転動ミル、ボールミル、小径ボールミル(ビーズミル)、媒体撹拌ミル、気流粉砕機、乳鉢、自動混練乳鉢、槽解機、ジェトミルを用いることができ、固形分残渣が少量であれば、好ましくは、乳鉢、自動混練乳鉢、またはバッチ式のボールミルが用いられ、固形分残渣が多量であり連続的な混合、解砕処理を行う場合には、好ましくはジェットミルが用いられる。
【0127】
(工程(3))
工程(3)では、工程(2)で得られた固形分残渣を熱処理して電極触媒を得る。
【0128】
この熱処理の際の温度は、500〜1100℃であり、好ましくは600〜1050℃であり、より好ましくは700〜950℃である。
【0129】
熱処理の温度が上記範囲よりも高すぎると、得られた電極触媒の粒子相互間においての焼結、粒成長がおこり、結果として電極触媒の比表面積が小さくなってしまうため、この粒子を塗布法により触媒層に加工する際の加工性が劣ってしまう。一方、熱処理の温度が上記範囲よりも低過ぎると、高い活性を有する電極触媒を得ることができない。
【0130】
前記熱処理の方法としては、たとえば、静置法、攪拌法、落下法、粉末捕捉法が挙げられる。
【0131】
静置法とは、静置式の電気炉などに工程(2)で得られた固形分残渣を置き、これを加熱する方法である。加熱の際に、量り取った前記固形分残渣は、アルミナボード、石英ボードなどのセラミックス容器に入れてもよい。静置法は、大量の前記固形分残渣を加熱することができる点で好ましい。
【0132】
攪拌法とは、ロータリーキルンなどの電気炉中に前記固形分残渣を入れ、これを攪拌しながら加熱する方法である。攪拌法の場合は、大量の前記固形分残渣を加熱することができ、かつ、得られる電極触媒の粒子の凝集および成長を抑制することができる点で好ましい。さらに、撹拌法は、加熱炉に傾斜をつけることによって、連続的に電極触媒を製造することが可能である点で好ましい。
【0133】
落下法とは、誘導炉中に雰囲気ガスを流しながら、炉を所定の加熱温度まで加熱し、該温度で熱的平衡を保った後、炉の加熱区域である坩堝中に前記固形分残渣を落下させ、これを加熱する方法である。落下法は、得られる電極触媒の粒子の凝集および成長を最小限度に抑制できる点で好ましい。
【0134】
粉末捕捉法とは、微量の酸素ガスを含む不活性ガス雰囲気中で、前記固形分残渣を飛沫にして浮遊させ、これを所定の加熱温度に保たれた垂直の管状炉中に捕捉して、加熱する方法である。
【0135】
前記静置法で熱処理を行う場合には、昇温速度は、特に限定されないが、好ましくは1℃/分〜100℃/分程度であり、さらに好ましくは5℃/分〜50℃/分である。また、加熱時間は、好ましくは0.1〜10時間、より好ましくは0.5時間〜5時間、さらに好ましくは0.5〜3時間である。静置法において加熱を管状炉で行なう場合、前記固形分残渣の加熱時間は、0.1〜10時間、好ましくは0.5時間〜5時間である。前記加熱時間が前記範囲内であると、均一な電極触媒粒子が形成される傾向がある。
【0136】
前記攪拌法の場合、前記固形分残渣の加熱時間は、通常10分〜5時間であり、好ましくは30分〜2時間である。本法において、炉に傾斜をつけるなどして連続的に加熱を行う場合は、定常的な炉内のサンプル流量から計算された平均滞留時間を前記加熱時間とする。
【0137】
前記落下法の場合、前記固形分残渣の加熱時間は、通常0.5〜10分であり、好ましくは0.5〜3分である。前記加熱時間が前記範囲内であると、均一な電極触媒粒子が形成される傾向がある。
【0138】
前記粉末捕捉法の場合、前記固形分残渣の加熱時間は、0.2秒〜1分、好ましくは0.2〜10秒である。前記加熱時間が前記範囲内であると、均一な電極触媒粒子が形成される傾向にある。
【0139】
前記静置法で熱処理を行う場合には、熱源としてLNG(液化天然ガス)、LPG(液化石油ガス)、軽油、重油、電気などを用いた加熱炉を熱処理装置として用いてもよい。この場合、本発明においては前記固形分残渣を熱処理する際の雰囲気が重要であるので、燃料の炎が炉内に存在する、炉の内部から加熱する装置ではなく、炉の外部からの加熱する装置が好ましい。
【0140】
前記固形分残渣の量が1バッチあたり50kg以上となるような加熱炉を用いる場合には、コストの観点から、LNG,LPGを熱源とする加熱炉が好ましい。
【0141】
触媒活性の特に高い電極触媒を得たい場合には、厳密な温度制御が可能な、電気を熱源とした電気炉を用いることが望ましい。
【0142】
炉の形状としては、管状炉、上蓋型炉、トンネル炉、箱型炉、試料台昇降式炉(エレベーター型)、台車炉などが挙げられ、この中でも雰囲気を特に厳密にコントロールすることが可能な、管状炉、上蓋型炉、箱型炉および試料台昇降式炉が好ましく、管状炉および箱型炉が好ましい。
【0143】
前記撹拌法を採用する場合も、上記の熱源を用いることができるが、撹拌法の中でもとくにロータリーキルンに傾斜をつけて、前記固形分残渣を連続的に熱処理する場合には、設備の規模が大きくなり、エネルギー使用量が大きくなりやすいので、LPG等燃料由来の熱源を利用することが好ましい。
【0144】
前記熱処理を行う際の雰囲気としては、得られる電極触媒の活性を高める観点から、その主成分が不活性ガスである雰囲気が好ましい。不活性ガスの中でも、比較的安価であり、入手しやすい点で窒素、アルゴン、ヘリウムが好ましく、窒素およびアルゴンがさらに好ましい。これらの不活性ガスは、1種単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。なお、これらのガスは一般的な通念上不活性といわれるガスであるが、工程(3)の前記熱処理の際にこれらの不活性ガスすなわち、窒素、アルゴン、ヘリウム等が、前記固形分残渣と反応している可能性はある。
【0145】
また、前記熱処理の雰囲気中に反応性ガスが存在すると、得られる電極触媒がより高い触媒性能を発現することがある。たとえば、前記熱処理を、窒素ガス、アルゴンガスもしくは窒素ガスとアルゴンガスとの混合ガス、または窒素ガスおよびアルゴンガスから選ばれる一種以上のガスと、水素ガス、アンモニアガスおよび酸素ガスから選ばれる一種以上のガスとの混合ガスの雰囲気で行うと、高い触媒性能を有する電極触媒が得られる傾向にある。
【0146】
前記熱処理の雰囲気中に水素ガスが含まれる場合には、水素ガスの濃度は、たとえば100体積%以下、好ましくは0.01〜10体積%、より好ましくは1〜5体積%である。
【0147】
前記熱処理の雰囲気中に酸素ガスが含まれる場合には、酸素ガスの濃度は、たとえば0.01〜10体積%、好ましくは0.01〜5体積%である。
【0148】
前記熱処理の際の圧力は特に制限されず、製造の安定性とコストなどを考慮して大気圧下で熱処理を行ってもよい。
【0149】
前記熱処理の後には、熱処理物を解砕してもよい。解砕を行うと、得られた電極触媒を用いて電極を製造する際の加工性、および得られる電極の特性を改善できることがある。この解砕には、たとえば、ロール転動ミル、ボールミル、小径ボールミル(ビーズミル)、媒体撹拌ミル、気流粉砕機、乳鉢、自動混練乳鉢、槽解機またはジェトミルを用いることができる。電極触媒が少量の場合には、乳鉢、自動混練乳鉢、バッチ式のボールミルが好ましく、熱処理物を連続的に多量に処理する場合には、ジェットミル、連続式のボールミルが好ましく、連続式のボールミルの中でもビーズミルがさらに好ましい。
【0150】
[熱処理物]
本発明の熱処理物は、
少なくとも金属化合物(1)と、窒素含有有機化合物(2)と、ホウ素、リンおよび硫黄からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素Aならびにフッ素を含有する化合物(3)と溶媒とを混合して触媒前駆体溶液を得る工程(1)、
前記触媒前駆体溶液から溶媒を除去する工程(2)、および
工程(2)で得られた固形分残渣を500〜1100℃の温度で熱処理する工程(3)
を経て得られ、
前記金属化合物(1)の一部または全部が、金属元素として周期表第4族および第5族の元素から選ばれる少なくとも1種の遷移金属元素M1を含有する遷移金属化合物(M1)であり、
前記金属化合物(1)、前記窒素含有有機化合物(2)および前記化合物(3)の少なくとも1つが酸素原子を有する
ことを特徴としている。
【0151】
工程(1)〜(3)および化合物(1)〜(3)の詳細は、上述のとおりである。
【0152】
本発明の熱処理物は、後述する燃料電池用電極触媒として有用である。
【0153】
[燃料電池用電極触媒]
本発明の燃料電池用電極触媒(以下、単に「触媒」ともいう)は、上述した本発明の燃料電池用電極触媒の製造方法により製造されることを特徴としている。また、本発明の触媒は、上述した本発明の熱処理物からなっていてもよい。
【0154】
前記触媒を構成する金属元素、炭素、窒素、酸素、前記元素A、フッ素の原子数の比を、金属元素:炭素:窒素:酸素:前記元素A:フッ素=1:x:y:z:a:bと表すと、好ましくは、0<x≦9、0<y≦2、0<z≦5、0<a≦1、0<b≦2である。
【0155】
電極触媒の活性が高いことから、
xの範囲は、より好ましくは0.15≦x≦9.0、さらに好ましくは0.2≦x≦8.0であり、特に好ましくは1.0≦x≦7.0であり、
yの範囲は、より好ましくは0.01≦y≦2.0、さらに好ましくは0.02≦y≦1.8であり、特に好ましくは0.03≦y≦1.5であり、
zの範囲は、より好ましくは0.05≦z≦5.0であり、さらに好ましくは0.1≦z≦4.0であり、特に好ましくは0.2≦z≦3.5であり、
aの範囲は、より好ましくは0.001≦a≦1であり、さらに好ましくは0.001≦a≦0.5であり、特に好ましくは0.001≦a≦0.2であり、
bの範囲は、より好ましくは0.0001≦b≦2であり、さらに好ましくは0.001≦b≦1であり、特に好ましくは0.001≦b≦0.2である。
【0156】
また、前記触媒中に前記金属元素として、周期表第4族および第5族の元素からなる群から選択される1種である遷移金属元素M1、ならびに鉄、ニッケル、クロム、コバルトおよびマンガンより選択される少なくとも1種である遷移金属元素M2が含まれる場合には、前記触媒を構成する遷移金属元素M1と遷移金属元素M2との原子数の比を、遷移金属元素M1:遷移金属元素M2=(1−α):αと表すと、好ましくは0<α≦0.5であり、電極触媒の活性が高いことから、より好ましくは0.01≦α≦0.5、さらに好ましくは0.02≦α≦0.4、特に好ましくは0.05≦α≦0.3である。
【0157】
さらに、前記触媒中には、前記金属元素M3の原子が含まれていてもよく、前記触媒を構成する遷移金属元素M1と金属元素M3との原子数の比を、遷移金属元素M1:金属元素M3=1:βと表すと、たとえば0≦β≦1、0≦β≦0.5または0≦β≦0.3である。
【0158】
前記α、x、y、z、aおよびbの値は、後述する実施例で採用した方法により測定した場合の値である。
【0159】
本発明の燃料電池用電極触媒の製造方法によれば、比表面積の大きな燃料電池用電極触媒が製造され、本発明の触媒のBET法で算出される比表面積は、好ましくは30〜1000m2/g、より好ましくは30〜350m2/g、さらに好ましくは50〜300m2/g、特に好ましくは100〜300m2/gである。
【0160】
前記触媒(A)の、下記測定法(A)に従って測定される酸素還元開始電位は、可逆水素電極を基準として好ましくは0.6V(vs.RHE)以上、より好ましくは0.7V(vs.RHE)以上、さらに好ましくは0.8V以上、特に好ましくは0.85V以上である。
【0161】
〔測定法(A):
電子伝導性物質であるカーボンに分散させた触媒が1質量%となるように、該触媒及びカーボンを溶剤中に入れ、超音波で攪拌し懸濁液を得る。なお、カーボンとしては、カーボンブラック(比表面積:100〜300m2/g)(例えばキャボット社製 VULCAN(登録商標) XC72)を用い、触媒とカーボンとが質量比で95:5になるように分散させる。また、溶剤としては、イソプロピルアルコール:水(質量比)=2:1を用いる。
【0162】
前記懸濁液を、超音波をかけながら10μLを採取し、すばやくグラッシーカーボン電極(直径:5.2mm)上に滴下し、120℃で5分間乾燥させる。乾燥することにより触媒を含む燃料電池用触媒層が、グラッシーカーボン電極上に形成される。この滴下及び乾燥操作を、カーボン電極表面に1.0mg以上の燃料電池触媒層が形成されるまで行う。
【0163】
次いで5%ナフィオン(NAFION(登録商標))溶液(DE521、デュポン社)をイソプロピルアルコールで10倍に希釈したものを、さらに前記燃料電池用触媒層上に10μL滴下する。これを、120℃で1時間乾燥する。
【0164】
このようにして、得られた電極を用いて、酸素雰囲気及び窒素雰囲気で、0.5mol/Lの硫酸水溶液中、30℃の温度で、同濃度の硫酸水溶液中での可逆水素電極を参照電極とし、5mV/秒の電位走査速度で分極することにより電流−電位曲線を測定した際の、酸素雰囲気での還元電流と窒素雰囲気での還元電流とに0.2μA/cm2以上の差が現れ始める電位を酸素還元開始電位とする。〕
本発明において、酸素還元電流密度は、以下のとおり求めることができる。
【0165】
まず、上記測定法(A)の結果から、特定の電位(たとえば0.80V(vsRHE))における、酸素雰囲気での還元電流と窒素雰囲気での還元電流との差を算出する。算出した値を、さらに電極面積で除した値を酸素還元電流密度(mA/cm2)とする。
【0166】
本発明の触媒は、金属元素M1がチタンである場合には、好ましくはX線回折測定(測定法の詳細は、実施例の欄に記載のとおりである。)により、酸化チタンに帰属するピークが観測される触媒であり、より好ましくはアナターゼ型の酸化チタンに帰属するピークが観測される触媒である。
【0167】
前記金属化合物(1)としてチタン化合物を用い、本発明の燃料電池用電極触媒の製造方法により触媒を製造すると、前記化合物(3)の中にフッ素が存在するため、前記工程(3)において、前記化合物(3)を用いない場合と比べて触媒の焼結温度が下がり、これに起因してアナターゼ骨格が形成されると考えられる。
【0168】
酸化チタンを従来の一般的な方法で製造すると、原料を800℃以上で熱処理することによりルチル型の酸化チタンが得られるが、本発明の触媒の製造方法によれば、工程(3)において800℃以上で熱処理を行ってもアナターゼ型の酸化チタンが得ることができる。
【0169】
また、酸化チタンに帰属するピークが観測される触媒は、チタン原子を含む前記固形分残渣を500℃以上で熱処理することにより製造できる。
【0170】
[用途]
本発明の触媒は、白金触媒の代替触媒として使用することができる。
【0171】
本発明の燃料電池用触媒層は、前記触媒を含むことを特徴としている。
【0172】
燃料電池用触媒層には、アノード触媒層、カソード触媒層があるが、前記触媒はいずれにも用いることができる。前記触媒は、耐久性に優れ、酸素還元能が大きいので、カソード触媒層に用いることが好ましい。
【0173】
本発明の燃料電池用触媒層は、好ましくは、電子伝導性粉末をさらに含む。前記触媒を含む燃料電池用触媒層がさらに電子伝導性粉末を含む場合には、還元電流をより高めることができる。電子伝導性粉末は、前記触媒に、電気化学的反応を誘起させるための電気的接点を生じさせるため、還元電流を高めると考えられる。
【0174】
前記電子伝導性粒子は通常、触媒の担体として用いられる。
【0175】
前記触媒はある程度の導電性を有するが、触媒により多くの電子を与える、あるいは、反応基質が触媒から多くの電子を受け取るために、触媒に、導電性を付与するための担体粒子を混合してもよい。これらの担体粒子は、工程(1)〜工程(3)を経て製造された触媒に混合されてもよく、工程(1)〜工程(3)のいずれかの段階で混合されてもよい。
【0176】
電子伝導性粒子の材質としては、炭素、導電性高分子、導電性セラミックス、金属または酸化タングステンもしくは酸化イリジウムなどの導電性無機酸化物が挙げられ、それらを1種単独または組み合わせて用いることができる。特に、炭素からなる電子伝導性粒子は比表面積が大きいため、また、安価に小粒径のものを入手しやすく、耐薬品性、耐高電位性に優れるため、炭素単独または炭素とその他の電子伝導性粒子との混合物が好ましい。すなわち燃料電池用触媒層としては、前記触媒と炭素とを含むことが好ましい。
【0177】
炭素としては、カーボンブラック、グラファイト、活性炭、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、カーボンナノホーン、フラーレン、多孔体カーボン、グラフェンなどが挙げられる。炭素からなる電子伝導性粒子の粒径は、小さすぎると電子伝導パスが形成されにくくなり、また大きすぎると燃料電池用触媒層のガス拡散性の低下や触媒の利用率の低下が起こる傾向があるため、好ましくは10〜1000nmであり、より好ましくは10〜100nmである。
【0178】
電子伝導性粒子が炭素からなる場合、前記触媒と電子伝導性粒子との重量比(触媒:電子伝導性粒子)は、好ましくは4:1〜1000:1である。
【0179】
前記導電性高分子としては特に限定は無いが、例えばポリアセチレン、ポリ−p−フェニレン、ポリアニリン、ポリアルキルアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリインドール、ポリ−1,5−ジアミノアントラキノン、ポリアミノジフェニル、ポリ(o−フェニレンジアミン)、ポリ(キノリニウム)塩、ポリピリジン、ポリキノキサリン、ポリフェニルキノキサリン等が挙げられる。これらの中でも、ポリピロール、ポリアニリン、ポリチオフェンが好ましく、ポリピロールがより好ましい。
【0180】
本発明の燃料電池用触媒層は、好ましくは、高分子電解質をさらに含む。前記高分子電解質としては、燃料電池用触媒層において一般的に用いられているものであれば特に限定されない。具体的には、スルホン酸基を有するパーフルオロカーボン重合体(例えば、ナフィオン(NAFION(登録商標)))、スルホン酸基を有する炭化水素系高分子化合物、リン酸などの無機酸をドープさせた高分子化合物、一部がプロトン伝導性の官能基で置換された有機/無機ハイブリッドポリマー、高分子マトリックスにリン酸溶液や硫酸溶液を含浸させたプロトン伝導体などが挙げられる。これらの中でも、ナフィオン(NAFION(登録商標))が好ましい。前記燃料電池用触媒層を形成する際のナフィオン(NAFION(登録商標))の供給源としては、5%ナフィオン(NAFION(登録商標))溶液(DE521、デュポン社)などが挙げられる。
【0181】
本発明の燃料電池用触媒層は、アノード触媒層またはカソード触媒層のいずれにも用いることができる。本発明の燃料電池用触媒層は、高い酸素還元能を有し、酸性電解質中において高電位であっても腐蝕しがたい触媒を含むため、燃料電池のカソードに設けられる触媒層(カソード用触媒層)として有用である。特に固体高分子型燃料電池が備える膜電極接合体のカソードに設けられる触媒層に好適に用いられる。
【0182】
前記触媒を、担体である前記電子伝導性粒子上に分散させる方法としては、気流分散、液中分散等の方法が挙げられる。液中分散は、溶媒中に触媒および電子伝導性粒子を分散したものを、燃料電池用触媒層形成工程に使用できるため好ましい。液中分散としては、オリフィス収縮流による方法、回転せん断流による方法または超音波による方法等があげられる。液中分散の際、使用される溶媒は、触媒や電子伝導性粒子を浸食することがなく、分散できるものであれば特に制限はないが、揮発性の液体有機溶媒または水等が一般に使用される。
【0183】
また、前記触媒を、前記電子伝導性粒子上に分散させる際、さらに上記電解質と分散剤とを同時に分散させてもよい。
【0184】
燃料電池用触媒層の形成方法としては、特に制限はないが、たとえば、前記触媒と電子伝導性粒子と電解質とを含む懸濁液を、後述する電解質膜またはガス拡散層に塗布する方法が挙げられる。前記塗布する方法としては、ディッピング法、スクリーン印刷法、ロールコーティング法、スプレー法などが挙げられる。また、前記触媒と電子伝導性粒子と電解質とを含む懸濁液を、塗布法またはろ過法により基材に燃料電池用触媒層を形成した後、転写法で電解質膜に燃料電池用触媒層を形成する方法が挙げられる。
【0185】
本発明の電極は、前記燃料電池用触媒層と多孔質支持層とを有することを特徴としている。
【0186】
本発明の電極はカソードまたはアノードのいずれの電極にも用いることができる。本発明の電極は、耐久性に優れ、触媒能が大きいので、カソードに用いるとより産業上の優位性が高い。
【0187】
多孔質支持層とは、ガスを拡散する層(以下「ガス拡散層」とも記す。)である。ガス拡散層としては、電子伝導性を有し、ガスの拡散性が高く、耐食性の高いものであれば何であっても構わないが、一般的にはカーボンペーパー、カーボンクロスなどの炭素系多孔質材料や、軽量化のためにステンレス、耐食材を被服したアルミニウム箔が用いられる。
【0188】
本発明の膜電極接合体は、カソードとアノードと前記カソードおよび前記アノードの間に配置された電解質膜とを有する膜電極接合体であって、前記カソードおよび/または前記アノードが、前記電極であることを特徴としている。
【0189】
前記膜電極接合体における触媒能は、たとえば、以下のように算出される最大出力密度により評価することができる。
【0190】
まず、図27に示すように、前記膜電極接合体11を、シール材(ガスケット12)、ガス流路付きセパレーター13、および集電板14を挟んでボルトで固定し、所定の面圧(4N)になるように締め付けて、固体高分子型燃料電池の単セルを作成する。
【0191】
アノード側に燃料として水素を流量1リットル/分で供給し、カソード側に酸化剤として酸素を流量2リットル/分で供給し、両側ともに300kPaの背圧をかけながら、前記単セル温度90℃における電流−電圧特性を測定する。得られる電流−電圧特性の曲線から最大出力密度を算出する。最大出力密度が大きいほど、前記膜電極接合体における触媒能が高いことを示す。当該最大出力密度は、好ましくは400mW/cm2以上であり、より好ましくは600mW/cm2以上であり、その上限は、たとえば1000mW/cm2程度である。
【0192】
電解質膜としては、例えば、パーフルオロスルホン酸系を用いた電解質膜または炭化水素系電解質膜などが一般的に用いられるが、高分子微多孔膜に液体電解質を含浸させた膜または多孔質体に高分子電解質を充填させた膜などを用いてもよい。
【0193】
また本発明の燃料電池は、前記膜電極接合体を備えることを特徴としている。
【0194】
燃料電池の電極反応はいわゆる3相界面(電解質‐電極触媒‐反応ガス)で起こる。燃料電池は、使用される電解質などの違いにより数種類に分類され、溶融炭酸塩型(MCFC)、リン酸型(PAFC)、固体酸化物型(SOFC)、固体高分子型(PEFC)等がある。中でも、本発明の膜電極接合体は、固体高分子型燃料電池に使用することが好ましい。
【0195】
本発明の触媒を用いた燃料電池は性能が高く、また、白金を触媒として用いた場合と比較してきわめて安価であるという特徴を持つ。本発明の燃料電池は、発電機能、発光機能、発熱機能、音響発生機能、運動機能、表示機能および充電機能からなる群より選ばれる少なくとも一つの機能を有し燃料電池を備える物品の性能、特に携帯可能な物品の性能を向上させることができる。前記燃料電池は、好ましくは物品の表面または内部に備えられる。
【0196】
<本発明の燃料電池を備えた物品の具体例>
本発明の燃料電池を備えることができる前記物品の具体例としては、ビル、家屋、テント等の建築物、蛍光灯、LED等、有機EL、街灯、屋内照明、信号機等の照明器具、機械、車両そのものを含む自動車用機器、家電製品、農業機器、電子機器、携帯電話等を含む携帯情報端末、美容機材、可搬式工具、風呂用品トイレ用品等の衛生機材、家具、玩具、装飾品、掲示板、クーラーボックス、屋外発電機などのアウトドア用品、教材、造花、オブジェ、心臓ペースメーカー用電源、ペルチェ素子を備えた加熱および冷却器用の電源が挙げられる。
【実施例】
【0197】
以下に、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
【0198】
実施例および比較例における各種測定は、下記の方法により行なった。
【0199】
[分析方法]
1.粉末X線回折測定
理学電機株式会社製 ロータフレックスを用いて、試料の粉末X線回折を行った。
【0200】
測定条件の詳細は以下のとおりである。
【0201】
X線出力(Cu−Kα):50kV、180mA
走査軸:θ/2θ
測定範囲(2θ):10.00°〜89.98°
測定モード:FT
読込幅:0.02°
サンプリング時間:0.70秒
DS、SS、RS:0.5°、0.5°、0.15mm
ゴニオメーター半径:185mm
各試料の粉末X線回折における回折線ピークの本数は、信号(S)とノイズ(N)の比(S/N)が2以上で検出できるシグナルを1つのピークとしてみなして数えた。
【0202】
なお、ノイズ(N)は、ベースラインの幅とした。
【0203】
2.元素分析
<炭素、硫黄>
試料約0.01gを量り取り、炭素硫黄分析装置(堀場製作所製EMIA−920V)にて測定を行った。
【0204】
<窒素、酸素>
試料約0.01gを量り取り、Niカプセルに試料を封入して、酸素窒素分析装置(LECO製TC600)にて測定を行った。
【0205】
<金属(ニオブ、バナジウム、チタン、ジルコニウム、タンタル、鉄など)>
試料約0.1gを石英ビーカーに量り取り、硫酸,硝酸およびフッ酸を用いて試料を完全に加熱分解した。冷却後、この溶液を100mlに定容し、さらに適宜希釈し、ICP−OES(SII社製VISTA−PRO)またはICP−MS(Agilent社製HP7500)を用いて定量を行った。
【0206】
<フッ素>
試料数mgを、酸素気流下、水蒸気を通気しながら燃焼分解した。発生したガスを10mM Na2CO3(過酸化水素を含む。補正用標準Br‐:5ppm)に吸収させ、イオンクロマトグラフィーでフッ素の量を測定した。
【0207】
燃焼分解条件:
試料燃焼装置:AQF−100((株)三菱化学アナリテック社製)
燃焼管温度:950℃(試料ボード移動による昇温分解)
イオンクロマトグラフィー測定条件
測定装置:DIONEX DX−500
溶離液:1.8mM Na2CO3+1.7mM NaHCO3
カラム(温度):ShodexSI−90(室温)
流速:1.0ml/分
注入量:25μl
検出器:電気伝導度検出器
サプレッサー:DIONEX ASRS−300
<ホウ素>
試料数十mgを、リン酸を加えた後、硫酸を加えて硫酸の白煙を発生するまで加熱し、放冷した。その後、硝酸添加加熱放冷の操作を数回繰り返した。これらの操作後の試料をポリ容器中で純水で50mlに定容後、定容物を(ただし、沈殿物が生じた場合には上澄み液を)純水で10倍希釈した。その後、ICP発光分析でホウ素量を測定した。
【0208】
<リン>
試料約0.02gを、硫酸を加え、硫酸の白煙が発生するまで加熱し、放冷後、硝酸を加え、完全分解するまで、硝酸添加加熱放冷の操作を繰り返した。これらの操作後の試料をポリ容器中で純水で100mlに定容した。白濁が認めた場合には、白濁が認められなくなるまでフッ酸を添加した。定容物を純水でさらに50倍に希釈し、ICP発光分析でリン量を測定した。
【0209】
3.BET比表面積測定
島津製作所株式会社製 マイクロメリティクス ジェミニ2360を用いてBET比表面積を測定した。前処理時間、前処理温度は、それぞれ30分、200℃に設定した。
【0210】
[アノード作製例1]
1.アノード用インクの調製
純水50mlに、白金担持カーボン(TEC10E60E、田中貴金属工業製)0.6gと、プロトン伝導性材料(NAFION(登録商標))0.25gを含有する水溶液(5%ナフィオン(NAFION(登録商標))水溶液、和光純薬工業製)5gとを入れて、超音波分散機(UT−106H型シャープマニファクチャリングシステム社製)で1時間混合することにより、アノード用インク(1)を調製した。
【0211】
2.アノード触媒層を有する電極の作製
ガス拡散層(カーボンペーパー(TGP−H−060、東レ社製))を、アセトンに30秒間浸漬して脱脂した後、乾燥させ、次いで10%のポリテトラフルオロエチレン(以下「PTFE」とも記す。)水溶液に30秒間浸漬した。
【0212】
浸漬物を、室温乾燥後、350℃で1時間加熱することにより、カーボンペーパー内部にPTFEが分散し撥水性を有するガス拡散層(以下「GDL」とも記す。)を得た。
【0213】
次に、5cm×5cmの大きさとした前記GDLの表面に、自動スプレー塗布装置(サンエイテック社製)により、80℃で、上記アノード用インク(1)を塗布した。スプレー塗布を繰り返し行うことにより、単位面積あたりの白金(Pt)量が1mg/cm2であるアノード触媒層(1)を有する電極を作製した。
【0214】
[実施例1]
1.触媒の製造
ビーカーに、アセチルアセトン2.60g(25.94mmol)を入れ、これを攪拌しながらニオブエトキシド5.60g(17.59mmol)を加え、さらに酢酸8ml(140.00mmol)を2分間かけて滴下し、ニオブ溶液を調製した。
【0215】
ビーカーに水60ml、エタノール50ml、および酢酸60mlを入れ、ここにピラジンカルボン酸8.74g(70.36mmol)を加えて完全に溶解させた。得られた溶液に、これを攪拌しながら、テトラフルオロホウ酸テトラエチルアンモニウム191mg(0.88mmol)を加え、さらに酢酸鉄290mg(1.67mmol)を少量ずつ加えて溶解させた。次に温度を室温に保ちながら、かつ攪拌しながら、上記のニオブ溶液を10分間かけて滴下し、滴下後さらに30分間攪拌を行い、触媒前駆体溶液(1)を得た。
【0216】
ロータリーエバポレーターを用い、窒素雰囲気の減圧下で、ホットスターラーの温度を約100℃に設定し、前記触媒前駆体溶液(1)を加熱かつ攪拌しながら、溶媒をゆっくり蒸発させた。完全に溶媒を蒸発させて得られた固形物残渣を自動乳鉢ですり潰して、11.3gの焼成用粉末(1)を得た。
【0217】
1.2gの焼成用粉末(1)を、ロータリーキルン炉に水素ガスを4体積%含む窒素ガス(すなわち、水素ガス:窒素ガス=4体積%:96体積%の混合ガス)を20ml/分の速度で流しながら、昇温速度10℃/分で890℃まで加熱し、890℃で0.5時間焼成し、自然冷却することにより、粉末状の触媒(1)282mgを得た。
【0218】
触媒(1)の粉末X線回折スペクトルを図1に示す。
【0219】
触媒(1)を構成する各元素の割合(原子数の比)は、Nb:Fe:C:N:O:B:F=1:0.10:3.20:0.55:2.77:0.04:0.001であった。
【0220】
また、触媒(1)のBET比表面積は208.8m2/gであった。
【0221】
2.燃料電池用電極の製造
触媒(1)0.095gとカーボン(キャボット社製 VULCAN(登録商標) XC72)0.005gとを、イソプロピルアルコール:純水=2:1の質量比で混合した溶液10gに入れ、超音波で撹拌、懸濁して混合した。この混合物30μlをグラッシーカーボン電極(東海カーボン社製、直径:6mm)に塗布し、120℃で5分間乾燥して、カーボン電極表面に1.0mg以上の燃料電池用触媒層が形成した。さらに、燃料電池用触媒層の上に5%ナフィオン(NAFION(登録商標))溶液(DE521、デュポン社)を10倍にイソプロピルアルコールで希釈したもの10μlを塗布し、120℃で1時間乾燥し、燃料電池用電極(1)を得た。
【0222】
3.酸素還元能の評価
作製した燃料電池用電極(1)を、酸素雰囲気および窒素雰囲気で、0.5mol/Lの硫酸水溶液中、30℃、5mV/秒の電位走査速度で分極し、それぞれ電流−電位曲線を測定した。その際、同濃度の硫酸水溶液中での可逆水素電極を参照電極とした。
【0223】
上記測定結果から、酸素雰囲気での還元電流と窒素雰囲気での還元電流とに0.2μA/cm2以上差が現れ始める電位を酸素還元開始電位とした。また、0.80V(vsRHE)における、酸素雰囲気での還元電流と窒素雰囲気での還元電流との差を算出した。算出した値を、さらに電極面積で除した値を酸素還元電流密度(mA/cm2)とした。
【0224】
酸素還元開始電位および酸素還元電流密度により、作製した燃料電池用電極(1)の触媒能を評価した。
【0225】
すなわち、酸素還元開始電位が高いほど、酸素還元電流密度が大きいほど、燃料電池用電極における触媒の触媒能が高いことを示す。
【0226】
図2に、上記測定により得られた電流−電位曲線を示す。
【0227】
触媒(1)は、酸素還元開始電位が1.02V(vs.RHE)、酸素還元電流密度が、0.80Vで0.266mA/cm2であった。
【0228】
[実施例2]
1.触媒の製造
テトラフルオロホウ酸テトラエチルアンモニウムに替えて5%ナフィオン(NAFION(登録商標))溶液(DE521、デュポン社)10mlを用いた以外は実施例1と同様の操作を行い、粉末状の触媒(2)231mgを得た。なお、この過程で得られた焼成用粉末の重量は10.8gであった。
【0229】
触媒(2)の粉末X線回折スペクトルを図3に示す。
【0230】
触媒(2)を構成する各元素の割合(原子数の比)は、Nb:Fe:C:N:O:S:F=1:0.10:4.50:1.10:2.03:0.013:0.001であった。
【0231】
また、触媒(2)のBET比表面積は220m2/gであった。
【0232】
2.燃料電池用電極の製造および酸素還元能の評価
触媒(1)0.095gに替えて触媒(2)0.095gを用いた以外は実施例1と同様の方法により、燃料電池用電極(2)を作製し、その酸素還元能を評価した。
【0233】
測定結果を図4に示す。触媒(2)は、酸素還元開始電位が0.96V(vs.RHE)、酸素還元電流密度が、0.80Vで0.645mA/cm2であった。
【0234】
[実施例3]
1.触媒の製造
テトラフルオロホウ酸テトラエチルアンモニウムに替えてヘプタデカフルオロオクタンスルホン酸880mg(1.76mmol)を用いた以外は実施例1と同様の操作を行い、粉末状の触媒(3)209mgを得た。なお、この過程で得られた焼成用粉末の重量は11.5gであった。
【0235】
触媒(3)の粉末X線回折スペクトルを図5に示す。
【0236】
触媒(3)を構成する各元素の割合(原子数の比)は、Nb:Fe:C:N:O:S:F=1:0.10:4.68:1.00:2.16:0.05:0.001であった。
【0237】
また、触媒(3)のBET比表面積は204.9m2/gであった。
【0238】
2.燃料電池用電極の製造および酸素還元能の評価
触媒(1)0.095gに替えて触媒(3)0.095gを用いた以外は実施例1と同様の方法により、燃料電池用電極(3)を作製し、その酸素還元能を評価した。
【0239】
測定結果を図6に示す。触媒(3)は、酸素還元開始電位が0.95V(vs.RHE)、酸素還元電流密度が、0.80Vで0.570mA/cm2であった。
【0240】
[実施例4]
1.触媒の製造
テトラフルオロホウ酸テトラエチルアンモニウムに替えて5%ナフィオン(NAFION(登録商標))溶液(DE521、デュポン社)10mlを用い、酢酸鉄を用いなかった以外は実施例1と同様の操作を行い、粉末状の触媒(4)209mgを得た。なお、この過程で得られた焼成用粉末の重量は11.3gであった。
【0241】
触媒(4)の粉末X線回折スペクトルを図7に示す。
【0242】
触媒(4)を構成する各元素の割合(原子数の比)は、Nb:C:N:O:S:F=1:4.51:0.72:2.64:0.006:0.001であった。
【0243】
また、触媒(4)のBET比表面積は229m2/gであった。
【0244】
2.燃料電池用電極の製造および酸素還元能の評価
触媒(1)0.095gに替えて触媒(4)0.095gを用いた以外は実施例1と同様の方法により、燃料電池用電極(4)を作製し、その酸素還元能を評価した。
【0245】
測定結果を図8に示す。触媒(4)は、酸素還元開始電位が0.83V(vs.RHE)、酸素還元電流密度が、0.80Vで0.010mA/cm2であった。
【0246】
[実施例5]
1.触媒の製造
ニオブエトキシドに替えてジルコニウムブトキシド7.94g(17.59mmol)を用いた以外は実施例2と同様の操作を行い、粉末状の触媒(5)341mgを得た。なお、この過程で得られた焼成用粉末の重量は12.1gであった。
【0247】
触媒(5)の粉末X線回折スペクトルを図9に示す。
【0248】
触媒(5)を構成する各元素の割合(原子数の比)は、Zr:Fe:C:N:O:S:F=1:0.08:5.89:0.39:2.71:0.006:0.09であった。
【0249】
また、触媒(5)のBET比表面積は245m2/gであった。
【0250】
2.燃料電池用電極の製造および酸素還元能の評価
触媒(1)0.095gに替えて触媒(5)0.095gを用いた以外は実施例1と同様の方法により、燃料電池用電極(5)を作製し、その酸素還元能を評価した。
【0251】
測定結果を図10に示す。触媒(5)は、酸素還元開始電位が0.95V(vs.RHE)、酸素還元電流密度が、0.80Vで0.997mA/cm2であった。
【0252】
[実施例6]
1.触媒の製造
ナフィオン(NAFION(登録商標))溶液に替えてヘプタデカフルオロオクタンスルホン酸880mg(1.76mmol)を用いた以外は実施例5と同様の操作を行い、粉末状の触媒(6)341mgを得た。なお、この過程で得られた焼成用粉末の重量は12.8gであった。
【0253】
触媒(6)の粉末X線回折スペクトルを図11に示す。
【0254】
触媒(6)を構成する各元素の割合(原子数の比)は、Zr:Fe:C:N:O:S:F=1:0.08:6.08:0.50:2.71:0.012:0.08であった。
【0255】
また、触媒(6)のBET比表面積は236.7m2/gであった。
【0256】
2.燃料電池用電極の製造および酸素還元能の評価
触媒(1)0.095gに替えて触媒(6)0.095gを用いた以外は実施例1と同様の方法により、燃料電池用電極(6)を作製し、その酸素還元能を評価した。
【0257】
測定結果を図12に示す。触媒(6)は、酸素還元開始電位が0.96V(vs.RHE)、酸素還元電流密度が、0.80Vで0.603mA/cm2であった。
【0258】
[実施例7]
1.触媒の製造
ニオブエトキシドに替えてジルコニウムブトキシド7.94g(17.59mmol)を用いた以外は実施例1と同様の操作を行い、粉末状の触媒(7)349mgを得た。なお、この過程で得られた焼成用粉末の重量は11.8gであった。
【0259】
触媒(7)の粉末X線回折スペクトルを図13に示す。
【0260】
触媒(7)を構成する各元素の割合(原子数の比)は、Zr:Fe:C:N:O:B:F=1:0.08:5.86:0.15:2.25:0.04:0.01であった。
【0261】
また、触媒(7)のBET比表面積は260.1m2/gであった。
【0262】
2.燃料電池用電極の製造および酸素還元能の評価
触媒(1)0.095gに替えて触媒(7)0.095gを用いた以外は実施例1と同様の方法により、燃料電池用電極(7)を作製し、その酸素還元能を評価した。
【0263】
測定結果を図14に示す。触媒(7)は、酸素還元開始電位が1.00V(vs.RHE)、酸素還元電流密度が、0.80Vで0.768mA/cm2であった。
【0264】
[実施例8]
1.触媒の製造
ビーカーに、酢酸58mlを入れ、これを攪拌しながらジルコニウム(IV)アセチルアセトナート8.578g(17.59mmol)を加え、ジルコニウム溶液を調製した。
【0265】
ニオブ溶液に替えてこのジルコニウム溶液を用いた以外は実施例2と同様の操作を行い、粉末状の触媒(8)344mgを得た。なお、この過程で得られた焼成用粉末の重量は11.8gであった。
【0266】
触媒(8)の粉末X線回折スペクトルを図15に示す。
【0267】
触媒(8)を構成する各元素の割合(原子数の比)は、Zr:Fe:C:N:O:S:F=1:0.08:5.70:0.37:2.65:0.005:0.154であった。
【0268】
また、触媒(8)のBET比表面積は163.4m2/gであった。
【0269】
2.燃料電池用電極の製造および酸素還元能の評価
触媒(1)0.095gに替えて触媒(8)0.095gを用いた以外は実施例1と同様の方法により、燃料電池用電極(8)を作製し、その酸素還元能を評価した。
【0270】
測定結果を図16に示す。触媒(8)は、酸素還元開始電位が1.02V(vs.RHE)、酸素還元電流密度が、0.80Vで0.516mA/cm2であった。
【0271】
[実施例9]
1.触媒の製造
ニオブエトキシドに替えてジルコニウムブトキシド7.94g(17.59mmol)を用いた以外は実施例4と同様の操作を行い、粉末状の触媒(9)332mgを得た。なお、この過程で得られた焼成用粉末の重量は12.1gであった。
【0272】
触媒(9)の粉末X線回折スペクトルを図17に示す。
【0273】
触媒(9)を構成する各元素の割合(原子数の比)は、Zr:C:N:O:S:F=1:5.82:0.42:2.82:0.001:0.09であった。
【0274】
また、触媒(9)のBET比表面積は216.2m2/gであった。
【0275】
2.燃料電池用電極の製造および酸素還元能の評価
触媒(1)0.095gに替えて触媒(9)0.095gを用いた以外は実施例1と同様の方法により、燃料電池用電極(9)を作製し、その酸素還元能を評価した。
【0276】
測定結果を図18に示す。触媒(9)は、酸素還元開始電位が0.94V(vs.RHE)、酸素還元電流密度が、0.80Vで0.065mA/cm2であった。
【0277】
[実施例10]
1.触媒の製造
ビーカーに、アセチルアセトン1.82g(18.14mmol)を入れ、これを攪拌しながらタンタルエトキシド5.00g(12.31mmol)を加え、さらに酢酸6ml(105.00mmol)を2分間かけて滴下し、タンタル溶液を調製した。
【0278】
ビーカーに水60ml、エタノール50ml、および酢酸60mlを入れ、ここにピラジンカルボン酸6.109g(49.2mmol)を加えて完全に溶解させた。得られた溶液に、5%ナフィオン(NAFION(登録商標))溶液(DE521、デュポン社)7mlを加え、さらに酢酸鉄203mg(1.17mmol)を攪拌しながら少量ずつ加えて溶解させた。次に温度を室温に保ちながら、かつ攪拌しながら、上記のタンタル溶液を10分間かけて滴下し、滴下後さらに30分間攪拌を行った。
【0279】
得られた溶液からエバポレーターで溶媒を完全に除去し、固形物残渣を自動乳鉢ですり潰して、10.8gの焼成用粉末(10)を得た。
【0280】
1.2gの焼成用粉末(10)を、ロータリーキルン炉に水素ガスを4体積%含む窒素ガスを20ml/分の速度で流しながら、昇温速度10℃/分で890℃まで加熱し、890℃で0.5時間焼成し、自然冷却することにより、粉末状の触媒(10)326mgを得た。
【0281】
触媒(10)の粉末X線回折スペクトルを図19に示す。
【0282】
触媒(10)を構成する各元素の割合(原子数の比)は、Ta:Fe:C:N:O:S:F=1:0.09:3.43:0.42:2.56:0.013:0.03であった。
【0283】
また、触媒(10)のBET比表面積は20.3m2/gであった。
【0284】
2.燃料電池用電極の製造および酸素還元能の評価
触媒(1)0.095gに替えて触媒(10)0.095gを用いた以外は実施例1と同様の方法により、燃料電池用電極(10)を作製し、その酸素還元能を評価した。
【0285】
測定結果を図20に示す。触媒(10)は、酸素還元開始電位が0.92V(vs.RHE)、酸素還元電流密度が、0.80Vで0.087mA/cm2であった。
【0286】
[実施例11]
1.触媒の製造
5%ナフィオン(NAFION(登録商標))溶液の量を7mlから10mlに変更し、酢酸鉄を用いなかった以外は実施例10と同様の操作を行い、粉末状の触媒(11)383mgを得た。なお、この過程で得られた焼成用粉末の重量は10.8gであった。
【0287】
触媒(11)の粉末X線回折スペクトルを図21に示す。
【0288】
触媒(11)を構成する各元素の割合(原子数の比)は、Ta:C:N:O:S:F=1:3.30:0.38:2.42:0.009:0.03であった。
【0289】
また、触媒(11)のBET比表面積は1.1m2/gであった。
【0290】
2.燃料電池用電極の製造および酸素還元能の評価
触媒(1)0.095gに替えて触媒(11)0.095gを用いた以外は実施例1と同様の方法により、燃料電池用電極(11)を作製し、その酸素還元能を評価した。
【0291】
測定結果を図22に示す。触媒(11)は、酸素還元開始電位が0.87V(vs.RHE)、酸素還元電流密度が、0.80Vで0.006mA/cm2であった。
【0292】
[実施例12]
1.触媒の製造
ニオブエトキシドに替えてチタニウムテトライソプロポキシド5ml(17.59mmol)を用い、テトラフルオロホウ酸テトラエチルアンモニウムに替えてテトラフルオロホウ酸368mg(1.76mmol)を用いた以外は実施例1と同様の操作を行い、粉末状の触媒(12)230mgを得た。なお、この過程で得られた焼成用粉末の重量は11.1gであった。
【0293】
触媒(12)の粉末X線回折スペクトルを図23に示す。
【0294】
触媒(12)を構成する各元素の割合(原子数の比)は、Ti:Fe:C:N:O:B:F=1:0.08:2.85:0.30:2.30:0.032:0.005であった。
【0295】
また、触媒(12)のBET比表面積は293.1m2/gであった。
【0296】
2.燃料電池用電極の製造および酸素還元能の評価
触媒(1)0.095gに替えて触媒(12)0.095gを用いた以外は実施例1と同様の方法により、燃料電池用電極(12)を作製し、その酸素還元能を評価した。
【0297】
測定結果を図24に示す。触媒(12)は、酸素還元開始電位が0.92V(vs.RHE)、酸素還元電流密度が、0.80Vで0.550mA/cm2であった。
【0298】
[実施例13]
1.触媒の製造
テトラフルオロホウ酸に替えてテトラフルオロリン酸アンモニウム287mg(1.76mmol)を用いた以外は実施例12と同様の操作を行い、粉末状の触媒(13)224mgを得た。なお、この過程で得られた焼成用粉末の重量は11.0gであった。
【0299】
触媒(13)の粉末X線回折スペクトルを図25に示す。
【0300】
触媒(13)を構成する各元素の割合(原子数の比)は、Ti:Fe:C:N:O:P:F=1:0.10:2.37:0.31:2.10:0.10:0.007であった。
【0301】
また、触媒(13)のBET比表面積は240.9m2/gであった。
【0302】
2.燃料電池用電極の製造および酸素還元能の評価
触媒(1)0.095gに替えて触媒(13)0.095gを用いた以外は実施例1と同様の方法により、燃料電池用電極(13)を作製し、その酸素還元能を評価した。
【0303】
測定結果を図26に示す。触媒(13)は、酸素還元開始電位が0.97V(vs.RHE)、酸素還元電流密度が、0.80Vで0.580mA/cm2であった。
【0304】
3.燃料電池用膜電極接合体の製造とその発電特性の評価
(1)インクの調製
2−プロパノール(和光純薬工業製)50mlに、上記作製した触媒(13)0.237gと、電子伝導性材料としてカーボンブラック(ケッチェンブラックEC300J、LION社製)0.1183gとを加え、さらにプロトン伝導性材料(ナフィオン(NAFION(登録商標)))0.142gを含有する水溶液(5%ナフィオン(NAFION(登録商標))水溶液、和光純薬工業製)2.84gを入れて、超音波分散機(UT−106H型シャープマニファクチャリングシステム社製)で1時間混合することにより、カソード用インク(1)を調製した。
【0305】
(2)燃料電池用触媒層を有する電極の作製
ガス拡散層(カーボンペーパー(TGP−H−060、東レ社製))を、アセトンに30秒間浸漬して脱脂した後、乾燥させ、次いで10%のPTFE水溶液に30秒間浸漬した。
【0306】
浸漬物を、室温乾燥後、350℃で1時間加熱することにより、カーボンペーパー内部にPTFEが分散し撥水性を有するガス拡散層(以下「GDL」とも記す。)を得た。
【0307】
次に、5cm×5cmの大きさとした前記GDLの表面に、自動スプレー塗布装置(サンエイテック社製)により、80℃で、上記カソード用インク(1)を塗布した。スプレー塗布を繰り返し行うことにより、燃料電池用触媒(13)およびカーボンブラックの総量が単位面積あたり5mg/cm2であるカソード触媒層(1)をGDL表面に有する電極(以下「カソード(1)」ともいう。)を作製した。また、カソード触媒層(1)における単位面積あたりの燃料電池用触媒(13)の質量は、3.3mg/cm2であった。
【0308】
(3)燃料電池用膜電極接合体の作製
電解質膜としてナフィオン(NAFION(登録商標))膜(N−117、DuPont社製)を、カソードとして上記カソード(1)を、アノードとしてアノード作製例1で作製したGDLの表面にアノード触媒層(1)を有する電極(以下「アノード(1)」ともいう。)をそれぞれ準備した。
【0309】
前記カソードと前記アノードとの間に前記電解質膜を配置した燃料電池用膜電極接合体(以下「MEA」ともいう。)を以下のように作製した。
【0310】
まず、前記電解質膜を、3%過酸化水素水中、80℃で1時間加熱し、その後、純水中、80℃で1時間加熱した。続いて、1M硫酸水溶液中、80℃で1時間加熱し、その後、純水中、80℃で1時間加熱した。
【0311】
このようにして水分を取り除いた前記電解質膜を前記カソード(1)および前記アノード(1)で挟み、カソード触媒層(1)およびアノード触媒層(1)が前記電解質膜に密着するように、ホットプレス機を用いて、温度140℃、圧力3MPaで6分間かけてこれらを熱圧着し、MEA(13)を作製した(図27)。
【0312】
(4)単セルの作製
図27に示すように、上記4で作製したMEA(13)を、2つシール材(ガスケット)、2つのガス流路付きセパレーター、2つの集電板および2つのラバーヒータで挟んでボルトで固定し、これらを所定の面圧(4N)になるように締め付けて、固体高分子型燃料電池の単セル(以下「単セル(13)」ともいう。)(セル面積:25cm2)を作製した。
【0313】
(5)発電特性の評価(触媒能の測定)
上記単セル(13)を90℃、アノード加湿器を95℃、カソード加湿器を65℃に温度調節した。アノード側に燃料として水素を流量1リットル/分で供給し、カソード側に酸化剤として酸素を流量2リットル/分で供給し、両側ともに300kPaの背圧をかけながら、単セル(13)における電流−電圧特性を測定した。
【0314】
測定結果を図28に示す。得られた電流−電圧特性曲線から最大出力密度を算出した。当該最大出力密度が大きいほど、MEAにおける触媒能が高いことを示す。MEA(13)における触媒能、すなわち最大出力密度は、559mW/cm2であった。
【0315】
[実施例14]
1.触媒の製造
ニオブエトキシドに替えてチタニウムテトライソプロポキシド5ml(17.59mmol)を用い、テトラフルオロホウ酸テトラエチルアンモニウムの量を368mg(1.76mmol)に変更し、焼成時間を0.25時間に変更した以外は実施例1と同様の操作を行い、粉末状の触媒(14)205.5mgを得た。なお、この過程で得られた焼成用粉末の重量は11.4gであった。
【0316】
触媒(14)の粉末X線回折スペクトルを図29に示す。
【0317】
触媒(14)を構成する各元素の割合(原子数の比)は、Ti:Fe:C:N:O:B:F=1:0.08:1.84:0.12:1.54:0.03:0.002であった。
【0318】
また、触媒(14)のBET比表面積は264.3m2/gであった。
【0319】
2.燃料電池用電極の製造および酸素還元能の評価
触媒(1)0.095gに替えて触媒(14)0.095gを用いた以外は実施例1と同様の方法により、燃料電池用電極(14)を作製し、その酸素還元能を評価した。
【0320】
測定結果を図30に示す。触媒(14)は、酸素還元開始電位が0.93V(vs.RHE)、酸素還元電流密度が、0.80Vで0.654mA/cm2であった。
【0321】
3.燃料電池用膜電極接合体の製造とその発電特性の評価
触媒(13)に替えて触媒(14)を用いた以外は実施例13と同様の方法で燃料電池用膜電極接合体(以下「MEA(14)」ともいう。)を作製し、MEA(13)に替えてMEA(14)を用いた以外は実施例13と同様の方法で固体高分子型燃料電池の単セル(以下「単セル(14)」ともいう。)を作製した。
【0322】
単セル(14)について、実施例13と同様の方法で発電特性の評価を行った。
【0323】
測定結果を図31に示す。MEA(14)における触媒能、すなわち最大出力密度は、822mW/cm2であった。
【0324】
[実施例15]
1.触媒の製造
チタン溶液を調製する際の酢酸滴下量を8mlから28mlに変更したこと、およびテトラフルオロホウ酸に替えて5%ナフィオン(NAFION(登録商標))溶液(DE521、デュポン社)を10ml用いたこと以外は実施例12と同様の操作を行い、粉末状の触媒(15)208mgを得た。なお、この過程で得られた焼成用粉末(15)の重量は11.7gであった。
【0325】
触媒(15)の粉末X線回折スペクトルを図32に示す。
【0326】
触媒(15)を構成する各元素の割合(原子数の比)は、Ti:Fe:C:N:O:S:F=1:0.11:3.31:0.43:1.62:0.03:0.005であった。
【0327】
また、触媒(15)のBET比表面積は296.6m2/gであった。
【0328】
2.燃料電池用電極の製造および酸素還元能の評価
触媒(1)0.095gに替えて触媒(15)0.095gを用いた以外は実施例1と同様の方法により、燃料電池用電極(15)を作製し、その酸素還元能を評価した。
【0329】
測定結果を図33に示す。触媒(15)は、酸素還元開始電位が0.97V(vs.RHE)、酸素還元電流密度が、0.80Vで1.300mA/cm2であった。
【0330】
[実施例16]
1.触媒の製造
ビーカーに、アセチルアセトン5.12g(51.08mmol)を入れ、これを攪拌しながらチタニウムテトライソプロポキシド10ml(35.18mmol)を加え、チタン溶液を調製した。
【0331】
ビーカーに水120mlを入れ、ここにグリシン10.043g(140.72mmol)を加えて完全に溶解させた。得られた溶液に、これを攪拌しながら、テトラフルオロホウ酸テトラエチルアンモニウム764mg(3.52mmol)を加え、さらに酢酸鉄580mg(3.34mmol)を少量ずつ加えて溶解させた。次に温度を室温に保ちながら、かつ攪拌しながら、上記のチタン溶液を10分間かけて滴下し、滴下後さらに30分間攪拌を行った。
【0332】
得られた溶液からエバポレーターで溶媒を完全に除去し、固形物残渣を自動乳鉢ですり潰して、15.3gの焼成用粉末(16)を得た。
【0333】
1.2gの焼成用粉末(16)を、ロータリーキルン炉に水素ガスを4体積%含む窒素ガスを20ml/分の速度で流しながら、昇温速度10℃/分で890℃まで加熱し、890℃で0.5時間焼成し、自然冷却することにより、粉末状の触媒(16)370mgを得た。
【0334】
触媒(16)の粉末X線回折スペクトルを図34に示す。
【0335】
触媒(16)を構成する各元素の割合(原子数の比)は、Ti:Fe:C:N:O:B:F=1:0.12:4.44:0.51:2.39:0.040:0.007であった。
【0336】
また、触媒(16)のBET比表面積は269m2/gであった。
【0337】
2.燃料電池用電極の製造および酸素還元能の評価
触媒(1)0.095gに替えて触媒(16)0.095gを用いた以外は実施例1と同様の方法により、燃料電池用電極(16)を作製し、その酸素還元能を評価した。
【0338】
測定結果を図35に示す。触媒(16)は、酸素還元開始電位が0.90V(vs.RHE)、酸素還元電流密度が、0.80Vで0.428mA/cm2であった。
【0339】
[実施例17]
1.触媒の製造
ビーカーに、アセチルアセトン2.6g(25.94mmol)を入れ、これを攪拌しながらチタンイソプロポキシド5ml(17.59mmol)およびジルコニウムブトキシド0.794g(1.759mmol)を加え、チタン・ジルコニウム溶液を調製した。
【0340】
ニオブ溶液に替えてこのチタン・ジルコニウム溶液を用いた以外は実施例2と同様の操作を行い、粉末状の触媒(17)203mgを得た。なお、この過程で得られた焼成用粉末(17)の重量は11.4であった。
【0341】
触媒(17)の粉末X線回折スペクトルを図36に示す。
【0342】
触媒(17)を構成する各元素の割合(原子数の比)は、Ti:Zr:Fe:C:N:O:S:F=1:0.08:0.10:3.16:0.38:1.44:0.009:0.003であった。
【0343】
また、触媒(17)のBET比表面積は256.1m2/gであった。
【0344】
2.燃料電池用電極の製造および酸素還元能の評価
触媒(1)0.095gに替えて触媒(17)0.095gを用いた以外は実施例1と同様の方法により、燃料電池用電極(17)を作製し、その酸素還元能を評価した。
【0345】
測定結果を図37に示す。触媒(17)は、酸素還元開始電位が0.95V(vs.RHE)、酸素還元電流密度が、0.80Vで1.070mA/cm2であった。
【0346】
[実施例18]
1.触媒の製造
ピラジンカルボン酸に替えて2,3−ピラジンジカルボン酸11.83g(70.36mmol)を用いた以外は実施例15と同様の操作を行い、粉末状の触媒(18)168mgを得た。なお、この過程で得られた焼成用粉末の重量は11.7gであった。
【0347】
触媒(18)の粉末X線回折スペクトルを図38に示す。
【0348】
触媒(18)を構成する各元素の割合(原子数の比)は、Ti:Fe:C:N:O:S:F=1:0.09:2.51:0.39:1.67:0.006:0.002であった。
【0349】
また、触媒(18)のBET比表面積は241.9m2/gであった。
【0350】
2.燃料電池用電極の製造および酸素還元能の評価
触媒(1)0.095gに替えて触媒(18)0.095gを用いた以外は実施例1と同様の方法により、燃料電池用電極(18)を作製し、その酸素還元能を評価した。
【0351】
測定結果を図39に示す。触媒(18)は、酸素還元開始電位が0.95V(vs.RHE)、酸素還元電流密度が、0.80Vで0.88mA/cm2であった。
【0352】
[実施例19]
1.触媒の製造
ピラジンカルボン酸に替えて3−アミノピラジン−2−カルボン酸9.788g(70.36mmol)を用いた以外は実施例15と同様の操作を行い、粉末状の触媒(19)173mgを得た。なお、この過程で得られた焼成用粉末の重量は12.7gであった。
【0353】
触媒(19)の粉末X線回折スペクトルを図40に示す。
【0354】
触媒(19)を構成する各元素の割合(原子数の比)は、Ti:Fe:C:N:O:S:F=1:0.09:2.73:0.64:1.17:0.006:0.002であった。
【0355】
また、触媒(19)のBET比表面積は297.4m2/gであった。
【0356】
2.燃料電池用電極の製造および酸素還元能の評価
触媒(1)0.095gに替えて触媒(19)0.095gを用いた以外は実施例1と同様の方法により、燃料電池用電極(19)を作製し、その酸素還元能を評価した。
【0357】
測定結果を図41に示す。触媒(19)は、酸素還元開始電位が0.93V(vs.RHE)、酸素還元電流密度が、0.80Vで1.07mA/cm2であった。
【0358】
[実施例20]
1.触媒の製造
ビーカーに、メタノール25mlを入れ、これを撹拌しながら四塩化チタン3.78g(20mmol)、5%ナフィオン(NAFION(登録商標))溶液(DE521、デュポン社)10ml、酢酸鉄694mg(4.00mmol)を順次加えた。得られた溶液に2−アミノピリミジン7.608g(80mmol)を少量ずつ加えた後、3時間の攪拌を行い、触媒前駆体溶液(20)を得た。
【0359】
ロータリーエバポレーターを用い、窒素雰囲気の減圧下で、ホットスターラーの温度を約100℃に設定し、前記触媒前駆体溶液(20)を加熱かつ撹拌しながら、溶媒をゆっくり蒸発させ、さらに窒素気流下、300℃で1時間の加熱を行うことにより、塩化物残渣などを除去し、3.7gの焼成用粉末(20)を得た。
【0360】
1.2gの焼成用粉末(20)を、ロータリーキルン炉に水素ガスを4体積%含む窒素ガス(すなわち、水素ガス:窒素ガス=4体積%:96体積%の混合ガス)を20ml/分の速度で流しながら、昇温速度10℃/分で890℃まで加熱し、890℃で0.5時間焼成し、自然冷却することにより、粉末状の触媒(20)473mgを得た。
【0361】
触媒(20)の粉末X線回折スペクトルを図42に示す。
【0362】
触媒(20)を構成する各元素の割合(原子数の比)は、Ti:Fe:C:N:O:S:F=1:0.23:6.40:0.85:1.37:0.026:0.018であった。
【0363】
また、触媒(20)のBET比表面積は246.5m2/gであった。
【0364】
2.燃料電池用電極の製造および酸素還元能の評価
触媒(1)0.095gに替えて触媒(20)0.095gを用いた以外は実施例1と同様の方法により、燃料電池用電極(20)を作製し、その酸素還元能を評価した。
【0365】
測定結果を図43に示す。触媒(20)は、酸素還元開始電位が0.94V(vs.RHE)、酸素還元電流密度が、0.80Vで0.709mA/cm2であった。
【0366】
[実施例21]
1.触媒の製造
ビーカーに、酢酸16mlを入れ、これを攪拌しながらチタンジイソプロポキシドジアセチルアセトナート4.5ml(15.83mmol)を加え、チタン溶液を調製した。
【0367】
ニオブ溶液に替えてこのチタン溶液を用いた以外は実施例2と同様の操作を行い、粉末状の触媒(21)219mgを得た。なお、この過程で得られた焼成用粉末の重量は11.4gであった。
【0368】
触媒(21)の粉末X線回折スペクトルを図44に示す。
【0369】
触媒(21)を構成する各元素の割合(原子数の比)は、Ti:Fe:C:N:O:S:F=1:0.09:3.02:0.30:1.24:0.007:0.003であった。
【0370】
また、触媒(21)のBET比表面積は286.1m2/gであった。
【0371】
2.燃料電池用電極の製造および酸素還元能の評価
触媒(1)0.095gに替えて触媒(21)0.095gを用いた以外は実施例1と同様の方法により、燃料電池用電極(21)を作製し、その酸素還元能を評価した。
【0372】
測定結果を図45に示す。触媒(21)は、酸素還元開始電位が0.95V(vs.RHE)、酸素還元電流密度が、0.80Vで1.233mA/cm2であった。
【0373】
[実施例22]
1.触媒の製造
5%ナフィオン(NAFION(登録商標))溶液(DE521、デュポン社)に替えて1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート378mg(1.67mmol)を用いた以外は実施例15と同様の操作を行い、粉末状の触媒(22)220mgを得た。なお、この過程で得られた焼成用粉末の重量は10.8gであった。
【0374】
触媒(22)の粉末X線回折スペクトルを図46に示す。
【0375】
触媒(22)を構成する各元素の割合(原子数の比)は、Ti:Fe:C:N:O:B:F=1:0.08:2.46:0.26:2.08:0.034:0.005であった。
【0376】
また、触媒(22)のBET比表面積は277m2/gであった。
【0377】
2.燃料電池用電極の製造および酸素還元能の評価
触媒(1)0.095gに替えて触媒(22)0.095gを用いた以外は実施例1と同様の方法により、燃料電池用電極(22)を作製し、その酸素還元能を評価した。
【0378】
測定結果を図47に示す。触媒(22)は、酸素還元開始電位が0.94V(vs.RHE)、酸素還元電流密度が、0.80Vで0.606mA/cm2であった。
【0379】
[実施例23]
1.触媒の製造
5%ナフィオン(NAFION(登録商標))溶液(DE521、デュポン社)に替えてトリフルオロメタンスルホン酸251mg(1.67mmol)を用いた以外は実施例15と同様の操作を行い、粉末状の触媒(23)205mgを得た。なお、この過程で得られた焼成用粉末の重量は11.7gであった。
【0380】
触媒(23)の粉末X線回折スペクトルを図48に示す。
【0381】
触媒(23)を構成する各元素の割合(原子数の比)は、Ti:Fe:C:N:O:S:F=1:0.09:2.28:0.37:1.56:0.011:0.002であった。
【0382】
また、触媒(23)のBET比表面積は253.3m2/gであった。
【0383】
2.燃料電池用電極の製造および酸素還元能の評価
触媒(1)0.095gに替えて触媒(23)0.095gを用いた以外は実施例1と同様の方法により、燃料電池用電極(23)を作製し、その酸素還元能を評価した。
【0384】
測定結果を図49に示す。触媒(23)は、酸素還元開始電位が0.93V(vs.RHE)、酸素還元電流密度が、0.80Vで1.07mA/cm2であった。
【0385】
[実施例24]
1.触媒の製造
1.2gの前記焼成用粉末(15)を、ロータリーキルン炉に水素ガスを4体積%含む窒素ガスを20ml/分の速度で流しながら、昇温速度10℃/分で950℃まで加熱し、950℃で0.5時間焼成し、自然冷却することにより、粉末状の触媒(24)210mgを得た。
【0386】
触媒(24)の粉末X線回折スペクトルを図50に示す。
【0387】
触媒(24)を構成する各元素の割合(原子数の比)は、Ti:Fe:C:N:O:S:F=1:0.10:3.66:0.53:1.29:0.012:0.002であった。
【0388】
また、触媒(24)のBET比表面積は280.9m2/gであった。
【0389】
2.燃料電池用電極の製造および酸素還元能の評価
触媒(1)0.095gに替えて触媒(24)0.095gを用いた以外は実施例1と同様の方法により、燃料電池用電極(24)を作製し、その酸素還元能を評価した。
【0390】
測定結果を図51に示す。触媒(24)は、酸素還元開始電位が0.90V(vs.RHE)、酸素還元電流密度が、0.80Vで0.513mA/cm2であった。
【0391】
[実施例25]
1.触媒の製造
2.0gの前記焼成用粉末(15)を、ロータリーキルン炉に水素ガスを4体積%含む窒素ガスを20ml/分の速度で流しながら、昇温速度10℃/分で1050℃まで加熱し、1050℃で0.5時間焼成し、自然冷却することにより、粉末状の触媒(25)284mgを得た。
【0392】
触媒(25)の粉末X線回折スペクトルを図52に示す。
【0393】
触媒(25)を構成する各元素の割合(原子数の比)は、Ti:Fe:C:N:O:S:F=1:0.11:3.87:0.32:1.45:0.010:0.003であった。
【0394】
また、触媒(25)のBET比表面積は260.0m2/gであった。
【0395】
2.燃料電池用電極の製造および酸素還元能の評価
触媒(1)0.095gに替えて触媒(25)0.095gを用いた以外は実施例1と同様の方法により、燃料電池用電極(25)を作製し、その酸素還元能を評価した。
【0396】
測定結果を図53に示す。触媒(25)は、酸素還元開始電位が0.88V(vs.RHE)、酸素還元電流密度が、0.80Vで0.083mA/cm2であった。
【0397】
[実施例26]
1.触媒の製造
テトラフルオロホウ酸に替えてヘプタデカフルオロオクタンスルホン酸アンモニウム910mg(1.76mmol)を用いたこと以外は実施例12と同様の操作を行い、粉末状の触媒(26)190mgを得た。なお、この過程で得られた焼成用粉末の重量は11.8gであった。
【0398】
触媒(26)の粉末X線回折スペクトルを図54に示す。
【0399】
触媒(26)を構成する各元素の割合(原子数の比)は、Ti:Fe:C:N:O:S:F=1:0.11:3.20:0.43:1.62:0.013:0.005であった。
【0400】
また、触媒(26)のBET比表面積は343.7m2/gであった。
【0401】
2.燃料電池用電極の製造および酸素還元能の評価
触媒(1)0.095gに替えて触媒(26)0.095gを用いた以外は実施例1と同様の方法により、燃料電池用電極(26)を作製し、その酸素還元能を評価した。
【0402】
測定結果を図55に示す。触媒(26)は、酸素還元開始電位が0.94V(vs.RHE)、酸素還元電流密度が、0.80Vで0.950mA/cm2であった。
【0403】
[実施例27]
1.触媒の製造
テトラフルオロホウ酸に替えてヘプタデカフルオロオクタンスルホン酸1762mg(3.52mmol)を用いたこと以外は実施例12と同様の操作を行い、粉末状の触媒(27)162mgを得た。なお、この過程で得られた焼成用粉末の重量は12.7gであった。
【0404】
触媒(27)の粉末X線回折スペクトルを図56示す。
【0405】
触媒(27)を構成する各元素の割合(原子数の比)は、Ti:Fe:C:N:O:S:F=1:0.11:4.42:0.44:1.51:0.028:0.011であった。
【0406】
また、触媒(27)のBET比表面積は404.5m2/gであった。
【0407】
2.燃料電池用電極の製造および酸素還元能の評価
触媒(1)0.095gに替えて触媒(27)0.095gを用いた以外は実施例1と同様の方法により、燃料電池用電極(27)を作製し、その酸素還元能を評価した。
【0408】
測定結果を図57に示す。触媒(27)は、酸素還元開始電位が0.94V(vs.RHE)、酸素還元電流密度が、0.80Vで0.856mA/cm2であった。
【0409】
[実施例28]
1.触媒の製造
テトラフルオロホウ酸テトラエチルアンモニウムに替えて5%ナフィオン(NAFION(登録商標))溶液(DE521、デュポン社)10mlを用い、酢酸鉄を用いなかった以外は実施例14と同様の操作を行い、粉末状の触媒(28)187mgを得た。なお、この過程で得られた焼成用粉末の重量は11.5gであった。
【0410】
触媒(28)の粉末X線回折スペクトルを図58に示す。
【0411】
触媒(28)を構成する各元素の割合(原子数の比)は、Ti:C:N:O:S:F=1:2.46:0.19:0.95:0.002:0.003であった。
【0412】
また、触媒(28)のBET比表面積は300.2m2/gであった。
【0413】
2.燃料電池用電極の製造および酸素還元能の評価
触媒(1)0.095gに替えて触媒(28)0.095gを用いた以外は実施例1と同様の方法により、燃料電池用電極(28)を作製し、その酸素還元能を評価した。
【0414】
測定結果を図59に示す。触媒(28)は、酸素還元開始電位が0.87V(vs.RHE)、酸素還元電流密度が、0.80Vで0.049mA/cm2であった。
【0415】
3.燃料電池用膜電極接合体の製造とその発電特性の評価
触媒(13)に替えて触媒(28)を用いた以外は実施例13と同様の方法で燃料電池用膜電極接合体(以下「MEA(28)」ともいう。)を作製し、MEA(13)に替えてMEA(28)を用いた以外は実施例13と同様の方法で固体高分子型燃料電池の単セル(以下「単セル(28)」ともいう。)を作製した。
【0416】
単セル(28)について、実施例13同様の方法で発電特性の評価を行った。
【0417】
測定結果を図60に示す。MEA(28)における触媒能、すなわち最大出力密度は、510mW/cm2であった。
【0418】
[実施例29]
1.触媒の製造
ビーカーに、アセチルアセトン2.60g(25.94mmol)を入れ、これを攪拌しながらバナジウム(V)トリ−i−プロポキシドオキシド4.30g(17.59mmol)を加え、さらに酢酸28mlを2分間かけて滴下し、バナジウム溶液を調製した。
【0419】
ビーカーに水60ml、エタノール50ml、および酢酸60mlを入れ、ここにピラジンカルボン酸8.74g(70.36mmol)を加えて完全に溶解させた。得られた溶液に、これを攪拌しながら、5%ナフィオン(NAFION(登録商標))溶液(DE521、デュポン社)10mlを加え、さらに酢酸鉄290mg(1.67mmol)を少量ずつ加えて溶解させた。次に温度を室温に保ちながら、かつ攪拌しながら、上記のバナジウム溶液を10分間かけて滴下し、滴下後さらに30分間攪拌を行い、触媒前駆体溶液(29)を得た。
【0420】
ロータリーエバポレーターを用い、窒素雰囲気の減圧下で、ホットスターラーの温度を約100℃に設定し、前記触媒前駆体溶液を加熱かつ攪拌しながら、溶媒をゆっくり蒸発させた。完全に溶媒を蒸発させて得られた固形物残渣を自動乳鉢ですり潰して、11.2gの焼成用粉末(29)を得た。
【0421】
1.2gの焼成用粉末(29)を、ロータリーキルン炉に水素ガスを4体積%含む窒素ガス(すなわち、水素ガス:窒素ガス=4体積%:96体積%の混合ガス)を20ml/分の速度で流しながら、昇温速度10℃/分で890℃まで加熱し、890℃で0.5時間焼成し、自然冷却することにより、粉末状の触媒(29)189mgを得た。
【0422】
触媒(29)の粉末X線回折スペクトルを図61に示す。
【0423】
触媒(29)を構成する各元素の割合(原子数の比)は、V:Fe:C:N:O:S:F=1:0.09:5.48:0.96:1.73:0.016:0.007であった。
【0424】
また、触媒(29)のBET比表面積は50.5m2/gであった。
【0425】
2.燃料電池用電極の製造および酸素還元能の評価
触媒(1)0.095gに替えて触媒(29)0.095gを用いた以外は実施例1と同様の方法により、燃料電池用電極(29)を作製し、その酸素還元能を評価した。
【0426】
測定結果を図62に示す。触媒(29)は、酸素還元開始電位が0.92V(vs.RHE)、酸素還元電流密度が、0.80Vで0.257mA/cm2であった。
【0427】
[実施例30]
1.触媒の製造
ビーカーに、酢酸70mlを入れ、これを攪拌しながらバナジウム(III)アセチルアセトナート6.14g(17.54mmol)を加え、バナジウム溶液を調製した。
【0428】
ビーカーに水60ml、エタノール50ml、および酢酸60mlを入れ、ここにピラジンカルボン酸8.74g(70.36mmol)を加えて完全に溶解させた。得られた溶液に、これを攪拌しながら、5%ナフィオン(NAFION(登録商標))溶液(DE521、デュポン社)10mlを加え、さらに酢酸鉄290mg(1.67mmol)を少量ずつ加えて溶解させた。次に温度を室温に保ちながら、かつ攪拌しながら、上記のバナジウム溶液を10分間かけて滴下し、滴下後さらに30分間攪拌を行い、触媒前駆体溶液(30)を得た。
【0429】
触媒前駆体溶液(25)を触媒前駆体溶液(30)に変更したこと以外は実施例25と同様の操作を行い、粉末状の触媒(30)266mgを得た。なお、この過程で得られた焼成用粉末の重量は11.4gであった。
【0430】
触媒(30)の粉末X線回折スペクトルを図63に示す。
【0431】
触媒(30)を構成する各元素の割合(原子数の比)は、V:Fe:C:N:O:S:F=1:0.09:6.06:0.92:1.88:0.015:0.031であった。
【0432】
また、触媒(30)のBET比表面積は100.8m2/gであった。
【0433】
2.燃料電池用電極の製造および酸素還元能の評価
触媒(1)0.095gに替えて触媒(30)0.095gを用いた以外は実施例1と同様の方法により、燃料電池用電極(30)を作製し、その酸素還元能を評価した。
【0434】
測定結果を図64に示す。触媒(30)は、酸素還元開始電位が0.88V(vs.RHE)、酸素還元電流密度が、0.80Vで0.207mA/cm2であった。
【0435】
[実施例31]
1.触媒の製造
ビーカーに、メタノール50mlを入れ、これを撹拌しながら四塩化チタン2.56g(13.5mmol)、五塩化タンタル2.42g(6.75mmol)、5%ナフィオン(NAFION(登録商標))溶液(DE521、デュポン社)12.5ml、酢酸鉄355mg(2.05mmol)を順次加えた。得られた溶液にピラジンカルボン酸10.15g(81.8mmol)を少量ずつ加えた後、3時間の攪拌を行い、触媒前駆体溶液(31)を得た。なお、3時間の攪拌の際、時間の経過と共に沈殿物が生じた。
【0436】
触媒前駆体溶液(20)を触媒前駆体溶液(31)に変更したこと以外は実施例20と同様の操作を行い、粉末状の触媒(31)259mgを得た。なお、この過程で得られた焼成用粉末の重量は7.59gであった。
【0437】
触媒(31)の粉末X線回折スペクトルを図94に示す。
【0438】
また、触媒(31)のBET比表面積は197.2m2/gであった。
【0439】
2.燃料電池用電極の製造および酸素還元能の評価
触媒(1)0.095gに替えて触媒(31)0.095gを用いた以外は実施例1と同様の方法により、燃料電池用電極(31)を作製し、その酸素還元能を評価した。
【0440】
測定結果を図95に示す。触媒(31)は、酸素還元開始電位が0.95V(vs.RHE)、酸素還元電流密度が、0.80Vで0.699mA/cm2であった。
【0441】
[実施例32]
1.触媒の製造
ビーカーに、メタノール50mlを入れ、これを撹拌しながら四塩化チタン1.28g(6.75mmol)、五塩化タンタル4.84g(13.5mmol)、5%ナフィオン(NAFION(登録商標))溶液(DE521、デュポン社)12.5ml、酢酸鉄355mg(2.05mmol)を順次加えた。得られた溶液にピラジンカルボン酸10.15g(81.8mmol)を少量ずつ加えた後、3時間の攪拌を行い、触媒前駆体溶液(32)を得た。なお、3時間の攪拌の際、時間の経過と共に沈殿物が生じた。
【0442】
触媒前駆体溶液(31)を触媒前駆体溶液(32)に変更したこと以外は実施例31と同様の操作を行い、粉末状の触媒(32)259mgを得た。なお、この過程で得られた焼成用粉末の重量は7.59gであった。
【0443】
触媒(32)の粉末X線回折スペクトルを図96に示す。
【0444】
また、触媒(32)のBET比表面積は177.2m2/gであった。
【0445】
2.燃料電池用電極の製造および酸素還元能の評価
触媒(1)0.095gに替えて触媒(32)0.095gを用いた以外は実施例1と同様の方法により、燃料電池用電極(32)を作製し、その酸素還元能を評価した。
【0446】
測定結果を図97に示す。触媒(32)は、酸素還元開始電位が0.97V(vs.RHE)、酸素還元電流密度が、0.80Vで0.506mA/cm2であった。
【0447】
[実施例33]
1.触媒の製造
ビーカーに、アセチルアセトン2.60g(25.94mmol)を入れ、これを攪拌しながらニオブエトキシドをチタンイソプロポキシド1ml(3.52mmol)および85%ジルコニウムブトキシド1−ブタノール溶液6.53g(14.1mmol)を加え、さらに酢酸20mlを2分間かけて滴下し、チタン・ジルコニウム溶液(33)を調製した。
【0448】
ビーカーに水60ml、エタノール50ml、および酢酸60mlを入れ、ここにピラジンカルボン酸8.74g(70.4mmol)を加えて完全に溶解させた。得られた溶液に、これを攪拌しながら、5%ナフィオン(NAFION(登録商標))溶液(DE521、デュポン社)10.0mlを加え、さらに酢酸鉄290mg(1.67mmol)を少量ずつ加えて溶解させた。次に温度を室温に保ちながら、かつ攪拌しながら、上記のチタン・ジルコニウム溶液(33)を10分間かけて滴下し、滴下後さらに30分間攪拌を行い、触媒前駆体溶液(33)を得た。
【0449】
ロータリーエバポレーターを用い、窒素雰囲気の減圧下で、ホットスターラーの温度を約100℃に設定し、前記触媒前駆体溶液(33)を加熱かつ撹拌しながら、溶媒をゆっくり蒸発させた。完全に溶媒を蒸発させて得られた固形物残渣を自動乳鉢で30分間すり潰して、11.7gの焼成用粉末(33)を得た。
【0450】
焼成用粉末(31)に替えて焼成用粉末(33)(1.200g)を用いたこと以外は実施例31と同様の操作を行い、粉末状の触媒(33)321mgを得た。
【0451】
触媒(33)の粉末X線回折スペクトルを図98に示す。
【0452】
また、触媒(33)のBET比表面積は242.5m2/gであった。
【0453】
2.燃料電池用電極の製造および酸素還元能の評価
触媒(1)0.095gに替えて触媒(33)0.095gを用いた以外は実施例と同様の方法により、燃料電池用電極(33)を作製し、その酸素還元能を評価した。
【0454】
測定結果を図99に示す。触媒(33)は、酸素還元開始電位が0.94V(vs.RHE)、酸素還元電流密度が、0.80Vで0.856mA/cm2であった。
【0455】
[実施例34]
1.触媒の製造
ビーカーに、アセチルアセトン2.60g(25.94mmol)を入れ、これを攪拌しながらニオブエトキシドをチタンイソプロポキシド4ml(17.6mmol)およびジルコニウムブトキシド1.59g(3.52mmol)を加え、さらに酢酸16mlを2分間かけて滴下し、チタン・ジルコニウム溶液(34)を調製した。
【0456】
チタン・ジルコニウム溶液(33)に替えてチタン・ジルコニウム溶液(34)を用いたこと以外は実施例33と同様の操作を行い、粉末状の触媒(34)236mgを得た。なお、この過程で得られた焼成用粉末の重量は11.1gであった。
【0457】
触媒(34)の粉末X線回折スペクトルを図100に示す。
【0458】
また、触媒(34)のBET比表面積は209.3m2/gであった。
【0459】
2.燃料電池用電極の製造および酸素還元能の評価
触媒(1)0.095gに替えて触媒(34)0.095gを用いた以外は実施例1と同様の方法により、燃料電池用電極(34)を作製し、その酸素還元能を評価した。
【0460】
測定結果を図101に示す。触媒(34)は、酸素還元開始電位が0.91V(vs.RHE)、酸素還元電流密度が、0.80Vで1.002mA/cm2であった。
【0461】
[実施例35]
1.触媒の製造
ビーカーに、アセチルアセトン2.60g(25.94mmol)を入れ、これを攪拌しながらチタンイソプロポキシド5ml(17.6mmol)を加え、さらに酢酸16mlを2分間かけて滴下し、チタン溶液を調製した。
【0462】
ビーカーに水60ml、エタノール50ml、および酢酸60mlを入れ、ここにピラジンカルボン酸8.74g(70.4mmol)を加えて完全に溶解させた。得られた溶液に、これを攪拌しながら、5%ナフィオン(NAFION(登録商標))溶液(DE521、デュポン社)10.0ml、酢酸イットリウム・四水和物476mg(1.41mmol)を加え、さらに酢酸鉄290mg(1.67mmol)を少量ずつ加えて溶解させた。次に温度を室温に保ちながら、かつ攪拌しながら、上記のチタン溶液を10分間かけて滴下し、滴下後さらに30分間攪拌を行い、触媒前駆体溶液(35)を得た。
【0463】
触媒前駆体溶液(33)に替えて触媒前駆体溶液(35)を用いたこと以外は実施例33と同様の操作を行い、粉末状の触媒(35)229mgを得た。なお、この過程で得られた焼成用粉末の重量は11.5gであった。
【0464】
触媒(1)の粉末X線回折スペクトルを図102に示す。
【0465】
また、触媒(35)のBET比表面積は271m2/gであった。
【0466】
2.燃料電池用電極の製造および酸素還元能の評価
触媒(1)0.095gに替えて触媒(35)0.095gを用いた以外は実施例1と同様の方法により、燃料電池用電極(35)を作製し、その酸素還元能を評価した。
【0467】
測定結果を図103に示す。触媒(35)は、酸素還元開始電位が0.98V(vs.RHE)、酸素還元電流密度が、0.80Vで1.158mA/cm2であった。
【0468】
[実施例36]
1.触媒の製造
酢酸イットリウム・四水和物の量を178mg(0.526mmol)に変更したこと以外は実施例35と同様の操作を行い、粉末状の触媒(36)217mgを得た。なお、この過程で得られた焼成用粉末の重量は11.3gであった。
【0469】
触媒(36)の粉末X線回折スペクトルを図104に示す。
【0470】
また、触媒(36)のBET比表面積は275.1m2/gであった。
【0471】
2.燃料電池用電極の製造および酸素還元能の評価
触媒(1)0.095gに替えて触媒(36)0.095gを用いた以外は実施例1と同様の方法により、燃料電池用電極(36)を作製し、その酸素還元能を評価した。
【0472】
測定結果を図105に示す。触媒(36)は、酸素還元開始電位が0.96V(vs.RHE)、酸素還元電流密度が、0.80Vで1.321mA/cm2であった。
【0473】
[実施例37]
1.触媒の製造
ビーカーに、アセチルアセトン2.60g(25.94mmol)を入れ、これを攪拌しながらジルコニウムブトキシド7.94ml(17.6mmol)を加え、さらに酢酸28mlを2分間かけて滴下し、チタン溶液を調製した。
【0474】
ビーカーに水60ml、エタノール50ml、および酢酸60mlを入れ、ここにピラジンカルボン酸8.74g(70.4mmol)を加えて完全に溶解させた。得られた溶液に、これを攪拌しながら、5%ナフィオン(NAFION(登録商標))溶液(DE521、デュポン社)10.0mlを加え、さらに酢酸鉄290mg(1.67mmol)および酢酸イットリウム・四水和物476mg(1.41mmol)を少量ずつ加えて溶解させた。次に温度を室温に保ちながら、かつ攪拌しながら、上記のジルコニウム溶液を10分間かけて滴下し、滴下後さらに30分間攪拌を行い、触媒前駆体溶液(37)を得た。
【0475】
触媒前駆体溶液(33)に替えて触媒前駆体溶液(37)を用いたこと以外は実施例33と同様の操作を行い、粉末状の触媒(37)339mgを得た。なお、この過程で得られた焼成用粉末の重量は12.6gであった。
【0476】
触媒(1)の粉末X線回折スペクトルを図106に示す。
【0477】
また、触媒(37)のBET比表面積は250.6m2/gであった。
【0478】
2.燃料電池用電極の製造および酸素還元能の評価
触媒(1)0.095gに替えて触媒(37)0.095gを用いた以外は実施例1と同様の方法により、燃料電池用電極(37)を作製し、その酸素還元能を評価した。
【0479】
測定結果を図107に示す。触媒(37)は、酸素還元開始電位が1.07V(vs.RHE)、酸素還元電流密度が、0.80Vで0.971mA/cm2であった。
【0480】
[実施例38]
1.触媒の製造
ビーカーに、四塩化チタン2.56g(13.5mmol)を入れ、これを撹拌しながら、三塩化スズ1.28g(6.75mmol)、メタノール50ml、5%ナフィオン(NAFION(登録商標))溶液(DE521、デュポン社)12.5ml、酢酸鉄355mg(2.05mmol)を順次加えた。得られた溶液にピラジンカルボン酸10.15g(81.8mmol)を少量ずつ加えた後、3時間の攪拌を行い、触媒前駆体溶液(38)を得た。なお、3時間の攪拌の際、時間の経過と共に沈殿物が生じた。
【0481】
触媒前駆体溶液(31)を触媒前駆体溶液(38)に変更したこと以外は実施例31と同様の操作を行い、粉末状の触媒(38)374mgを得た。なお、この過程で得られた焼成用粉末の重量は4.49gであった。
【0482】
触媒(38)の粉末X線回折スペクトルを図108に示す。
【0483】
また、触媒(38)のBET比表面積は316.8m2/gであった。
【0484】
2.燃料電池用電極の製造および酸素還元能の評価
触媒(1)0.095gに替えて触媒(38)0.095gを用いた以外は実施例1と同様の方法により、燃料電池用電極(38)を作製し、その酸素還元能を評価した。
【0485】
測定結果を図109に示す。触媒(38)は、酸素還元開始電位が1.01V(vs.RHE)、酸素還元電流密度が、0.80Vで0.708mA/cm2であった。
【0486】
[実施例39]
1.触媒の製造
ビーカーに、四塩化チタン2.56g(13.5mmol)を入れ、これを撹拌しながら、三塩化アンチモン1.55g(6.75mmol)、メタノール50ml、5%ナフィオン(NAFION(登録商標))溶液(DE521、デュポン社)12.5ml、酢酸鉄355mg(2.05mmol)を順次加えた。得られた溶液にピラジンカルボン酸10.15g(81.8mmol)を少量ずつ加えた後、3時間の攪拌を行い、触媒前駆体溶液(39)を得た。なお、3時間の攪拌の際、時間の経過と共に沈殿物が生じた。
【0487】
触媒前駆体溶液(31)を触媒前駆体溶液(39)に変更したこと以外は実施例31と同様の操作を行い、粉末状の触媒(39)360mgを得た。なお、この過程で得られた焼成用粉末の重量は3.16gであった。
【0488】
触媒(39)の粉末X線回折スペクトルを図110に示す。
【0489】
また、触媒(39)のBET比表面積は382m2/gであった。
【0490】
2.燃料電池用電極の製造および酸素還元能の評価
触媒(1)0.095gに替えて触媒(39)0.095gを用いた以外は実施例1と同様の方法により、燃料電池用電極(39)を作製し、その酸素還元能を評価した。
【0491】
測定結果を図111に示す。触媒(39)は、酸素還元開始電位が0.98V(vs.RHE)、酸素還元電流密度が、0.80Vで1.036mA/cm2であった。
【0492】
[実施例40]
1.触媒の製造
ビーカーに、アセチルアセトン2.60g(25.94mmol)を入れ、これを攪拌しながらチタンイソプロポキシド5ml(17.6mmol)およびアルミニウムイソプロポキシド172mg(0.84mmol)を加え、さらに酢酸28ml(140.00mmol)を2分間かけて滴下し、チタン・アルミニウム溶液を調製した。
【0493】
ビーカーに水60ml、エタノール50ml、および酢酸60mlを入れ、ここにピラジンカルボン酸8.74g(70.4mmol)を加えて完全に溶解させた。得られた溶液に、これを攪拌しながら、ヘプタデカフルオロオクタンスルホン酸アンモニウム910mg(1.76mmol)を加え、さらに酢酸鉄290mg(1.67mmol)を少量ずつ加えて溶解させた。次に温度を室温に保ちながら、かつ攪拌しながら、上記のチタン・アルミニウム溶液を10分間かけて滴下し、滴下後さらに30分間攪拌を行い、触媒前駆体溶液(40)を得た。
【0494】
触媒前駆体溶液(33)に替えて触媒前駆体溶液(40)を用いたこと以外は実施例33と同様の操作を行い、粉末状の触媒(40)199mgを得た。なお、この過程で得られた焼成用粉末の重量は12.0gであった。
【0495】
触媒(40)の粉末X線回折スペクトルを図112に示す。
【0496】
また、触媒(40)のBET比表面積は271.5m2/gであった。
【0497】
2.燃料電池用電極の製造および酸素還元能の評価
触媒(1)0.095gに替えて触媒(40)0.095gを用いた以外は実施例1と同様の方法により、燃料電池用電極(40)を作製し、その酸素還元能を評価した。
【0498】
測定結果を図113に示す。触媒(40)は、酸素還元開始電位が0.97V(vs.RHE)、酸素還元電流密度が、0.80Vで0.998mA/cm2であった。
【0499】
[実施例41]
1.触媒の製造
ビーカーに、アセチルアセトン2.60g(25.94mmol)を入れ、これを攪拌しながらニオブエトキシド4.80g(17.6mmol)およびアルミニウムイソプロポキシド171mg(0.84mmol)を加え、さらに酢酸28ml(140.00mmol)を2分間かけて滴下し、ニオブ・アルミニウム溶液を調製した。
【0500】
ビーカーに水60ml、エタノール50ml、および酢酸60mlを入れ、ここにピラジンカルボン酸8.74g(70.4mmol)を加えて完全に溶解させた。得られた溶液に、これを攪拌しながら、5%ナフィオン(NAFION(登録商標))溶液(DE521、デュポン社)10.0mlを加え、さらに酢酸鉄290mg(1.67mmol)を少量ずつ加えて溶解させた。次に温度を室温に保ちながら、かつ攪拌しながら、上記のニオブ・アルミニウム溶液を10分間かけて滴下し、滴下後さらに30分間攪拌を行い、触媒前駆体溶液(41)を得た。
【0501】
触媒前駆体溶液(33)に替えて触媒前駆体溶液(41)を用いたこと以外は実施例33と同様の操作を行い、粉末状の触媒(41)266mgを得た。なお、この過程で得られた焼成用粉末の重量は11.9gであった。
【0502】
触媒(41)の粉末X線回折スペクトルを図114に示す。
【0503】
また、触媒(41)のBET比表面積は203.5m2/gであった。
【0504】
2.燃料電池用電極の製造および酸素還元能の評価
触媒(1)0.095gに替えて触媒(41)0.095gを用いた以外は実施例1と同様の方法により、燃料電池用電極(41)を作製し、その酸素還元能を評価した。
【0505】
測定結果を図115に示す。触媒(41)は、酸素還元開始電位が0.95V(vs.RHE)、酸素還元電流密度が、0.80Vで0.514mA/cm2であった。
【0506】
[実施例42]
1.触媒の製造
ビーカーに、アセチルアセトン2.60g(25.94mmol)を入れ、これを攪拌しながらジルコニウムブトキシド7.95mg(17.6mmol)およびアルミニウムイソプロポキシド342mg(1.67mmol)を加え、さらに酢酸36ml(140.00mmol)を2分間かけて滴下し、ニオブ・アルミニウム溶液を調製した。
【0507】
ビーカーに水60ml、エタノール50ml、および酢酸60mlを入れ、ここにピラジンカルボン酸8.74g(70.4mmol)を加えて完全に溶解させた。得られた溶液に、これを攪拌しながら、ヘプタデカフルオロオクタンスルホン酸アンモニウム910mg(1.76mmol)を加え、さらに酢酸鉄290mg(1.67mmol)を少量ずつ加えて溶解させた。次に温度を室温に保ちながら、かつ攪拌しながら、上記のニオブ・アルミニウム溶液を10分間かけて滴下し、滴下後さらに30分間攪拌を行い、触媒前駆体溶液(42)を得た。
【0508】
触媒前駆体溶液(33)に替えて触媒前駆体溶液(42)を用いたこと以外は実施例33と同様の操作を行い、粉末状の触媒(42)349mgを得た。なお、この過程で得られた焼成用粉末の重量は13.4gであった。
【0509】
触媒(42)の粉末X線回折スペクトルを図116に示す。
【0510】
また、触媒(42)のBET比表面積は249.4m2/gであった。
【0511】
2.燃料電池用電極の製造および酸素還元能の評価
触媒(1)0.095gに替えて触媒(42)0.095gを用いた以外は実施例1と同様の方法により、燃料電池用電極(42)を作製し、その酸素還元能を評価した。
【0512】
測定結果を図117に示す。触媒(42)は、酸素還元開始電位が0.97V(vs.RHE)、酸素還元電流密度が、0.80Vで0.491mA/cm2であった。
【0513】
[比較例1]
1.触媒の製造
テトラフルオロホウ酸テトラエチルアンモニウムを用いなかった以外は実施例1と同様の操作を行い、粉末状の触媒(c1)290mgを得た。なお、この過程で得られた焼成用粉末の重量は10.3gであった。
【0514】
触媒(c1)の粉末X線回折スペクトルを図65に示す。
【0515】
触媒(c1)を構成する各元素の割合(原子数の比)は、Nb:Fe:C:N:O=1:0.10:3.51:0.72:2.84であった。
【0516】
また、触媒(c1)のBET比表面積は173.7m2/gであった。
【0517】
2.燃料電池用電極の製造および酸素還元能の評価
触媒(1)0.095gに替えて触媒(c1)0.095gを用いた以外は実施例1と同様の方法により、燃料電池用電極(c1)を作製し、その酸素還元能を評価した。
【0518】
測定結果を図66に示す。触媒(c1)は、酸素還元開始電位が0.90V(vs.RHE)、酸素還元電流密度が、0.80Vで0.194mA/cm2であった。
【0519】
[比較例2]
1.触媒の製造
テトラフルオロホウ酸テトラエチルアンモニウムおよび酢酸鉄を用いなかった以外は実施例1と同様の操作を行い、粉末状の触媒(c2)239mgを得た。なお、この過程で得られた焼成用粉末の重量は10.7gであった。
【0520】
触媒(c2)の粉末X線回折スペクトルを図67に示す。
【0521】
触媒(c2)を構成する各元素の割合(原子数の比)は、Nb:C:N:O=1:3.17:0.72:2.84であった。
【0522】
また、触媒(c2)のBET比表面積は167.2m2/gであった。
【0523】
2.燃料電池用電極の製造および酸素還元能の評価
触媒(1)0.095gに替えて触媒(c2)0.095gを用いた以外は実施例1と同様の方法により、燃料電池用電極(c2)を作製し、その酸素還元能を評価した。
【0524】
測定結果を図68に示す。触媒(c2)は、酸素還元開始電位が0.78V(vs.RHE)、酸素還元電流密度が、0.80Vで0.001mA/cm2であった。
【0525】
[比較例3]
1.触媒の製造
テトラフルオロホウ酸テトラエチルアンモニウムを用いなかった以外は実施例5と同様の操作を行い、粉末状の触媒(c3)361mgを得た。なお、この過程で得られた焼成用粉末の重量は11.5gであった。
【0526】
触媒(c3)の粉末X線回折スペクトルを図69に示す。
【0527】
触媒(c3)を構成する各元素の割合(原子数の比)は、Zr:Fe:C:N:O=1:0.08:6.49:0.08:2.64であった。
【0528】
また、触媒(c3)のBET比表面積は163m2/gであった。
【0529】
2.燃料電池用電極の製造および酸素還元能の評価
触媒(1)0.095gに替えて触媒(c3)0.095gを用いた以外は実施例1と同様の方法により、燃料電池用電極(c3)を作製し、その酸素還元能を評価した。
【0530】
測定結果を図70に示す。触媒(c3)は、酸素還元開始電位が0.87V(vs.RHE)、酸素還元電流密度が、0.80Vで0.142mA/cm2であった。
【0531】
[比較例4]
1.触媒の製造
5%ナフィオン(NAFION(登録商標))溶液および酢酸鉄を用いなかった以外は実施例5と同様の操作を行い、粉末状の触媒(c4)348mgを得た。なお、この過程で得られた焼成用粉末の重量は11.8gであった。
【0532】
触媒(c4)の粉末X線回折スペクトルを図71に示す。
【0533】
触媒(c4)を構成する各元素の割合(原子数の比)は、Zr:C:N:O=1:5.68:0.28:2.73であった。
【0534】
また、触媒(c4)のBET比表面積は32.7m2/gであった。
【0535】
2.燃料電池用電極の製造および酸素還元能の評価
触媒(1)0.095gに替えて触媒(c4)0.095gを用いた以外は実施例1と同様の方法により、燃料電池用電極(c4)を作製し、その酸素還元能を評価した。
【0536】
測定結果を図72に示す。触媒(c4)は、酸素還元開始電位が0.75V(vs.RHE)、酸素還元電流密度が、0.80Vで0.002mA/cm2であった。
【0537】
[比較例5]
1.触媒の製造
5%ナフィオン(NAFION(登録商標))溶液を用いなかった以外は実施例10と同様の操作を行い、粉末状の触媒(c5)435mgを得た。なお、この過程で得られた焼成用粉末の重量は9.21gであった。
【0538】
触媒(c5)の粉末X線回折スペクトルを図73に示す。
【0539】
触媒(c5)を構成する各元素の割合(原子数の比)は、Ta:Fe:C:N:O=1:0.09:3.84:0.47:2.72であった。
【0540】
また、触媒(c5)のBET比表面積は12.5m2/gであった。
【0541】
2.燃料電池用電極の製造および酸素還元能の評価
触媒(1)0.095gに替えて触媒(c5)0.095gを用いた以外は実施例1と同様の方法により、燃料電池用電極(c5)を作製し、その酸素還元能を評価した。
【0542】
測定結果を図74に示す。触媒(c5)は、酸素還元開始電位が0.95V(vs.RHE)、酸素還元電流密度が、0.80Vで0.068mA/cm2であった。
【0543】
[比較例6]
1.触媒の製造
酢酸鉄を用いなかった以外は実施例11と同様の操作を行い、粉末状の触媒(c6)330mgを得た。なお、この過程で得られた焼成用粉末の重量は11.1gであった。
【0544】
触媒(c6)の粉末X線回折スペクトルを図75に示す。
【0545】
触媒(c6)を構成する各元素の割合(原子数の比)は、Ta:C:N:O=1:3.61:0.48:2.95であった。
【0546】
また、触媒(c6)のBET比表面積は4.2m2/gであった。
【0547】
2.燃料電池用電極の製造および酸素還元能の評価
触媒(1)0.095gに替えて触媒(c6)0.095gを用いた以外は実施例1と同様の方法により、燃料電池用電極(c6)を作製し、その酸素還元能を評価した。
【0548】
測定結果を図76に示す。触媒(c6)は、酸素還元開始電位が0.70V(vs.RHE)、酸素還元電流密度が、0.80Vで0.002mA/cm2であった。
【0549】
[比較例7]
1.触媒の製造
テトラフルオロホウ酸を用いなかった以外は実施例12と同様の操作を行い、粉末状の触媒(c7)224mgを得た。なお、この過程で得られた焼成用粉末の重量は11.1gであった。
【0550】
触媒(c7)の粉末X線回折スペクトルを図77に示す。
【0551】
触媒(c7)を構成する各元素の割合(原子数の比)は、Ti:Fe:C:N:O=1:0.10:1.80:0.17:1.20であった。
【0552】
また、触媒(c7)のBET比表面積は196.4m2/gであった。
【0553】
2.燃料電池用電極の製造および酸素還元能の評価
触媒(1)0.095gに替えて触媒(c7)0.095gを用いた以外は実施例1と同様の方法により、燃料電池用電極(c7)を作製し、その酸素還元能を評価した。
【0554】
測定結果を図78に示す。触媒(c7)は、酸素還元開始電位が0.91V(vs.RHE)、酸素還元電流密度が、0.80Vで0.497VmA/cm2であった。
【0555】
[比較例8]
1.触媒の製造
テトラフルオロホウ酸および酢酸鉄を用いなかった以外は実施例12と同様の操作を行い、粉末状の触媒(c8)186mgを得た。なお、この過程で得られた焼成用粉末の重量は10.8gであった。
【0556】
触媒(c8)の粉末X線回折スペクトルを図79に示す。
【0557】
触媒(c8)を構成する各元素の割合(原子数の比)は、Ti:C:N:O=1:1.72:0.32:1.65であった。
【0558】
また、触媒(c8)のBET比表面積は224.2m2/gであった。
【0559】
2.燃料電池用電極の製造および酸素還元能の評価
触媒(1)0.095gに替えて触媒(c8)0.095gを用いた以外は実施例1と同様の方法により、燃料電池用電極(c8)を作製し、その酸素還元能を評価した。
【0560】
測定結果を図80に示す。触媒(c8)は、酸素還元開始電位が0.75V(vs.RHE)、酸素還元電流密度が、0.80Vで0.006mA/cm2であった。
【0561】
[比較例9]
1.触媒の製造
テトラフルオロホウ酸に替えてホウ酸109mgを用いた以外は実施例12と同様の操作を行い、粉末状の触媒(c9)219mgを得た。なお、この過程で得られた焼成用粉末の重量は11.0gであった。
【0562】
触媒(c9)の粉末X線回折スペクトルを図81に示す。
【0563】
触媒(c9)を構成する各元素の割合(原子数の比)は、Ti:Fe:C:N:O:B=1:0.09:2.64:0.58:2.09:0.09であった。
【0564】
また、触媒(c9)のBET比表面積は178.3m2/gであった。
【0565】
2.燃料電池用電極の製造および酸素還元能の評価
触媒(1)0.095gに替えて触媒(c9)0.095gを用いた以外は実施例1と同様の方法により、燃料電池用電極(c9)を作製し、その酸素還元能を評価した。
【0566】
測定結果を図82に示す。触媒(c9)は、酸素還元開始電位が0.89V(vs.RHE)、酸素還元電流密度が、0.80Vで0.177mA/cm2であった。
【0567】
[比較例10]
1.触媒の製造
テトラフルオロホウ酸に替えてリン酸二水素アンモニウム202mgを用いた以外は実施例12と同様の操作を行い、粉末状の触媒(c10)213mgを得た。なお、この過程で得られた焼成用粉末の重量は11.1gであった。
【0568】
触媒(c10)の粉末X線回折スペクトルを図83に示す。
【0569】
触媒(c10)を構成する各元素の割合(原子数の比)は、Ti:Fe:C:N:O:P=1:0.09:2.04:0.50:2.04:0.08であった。
【0570】
また、触媒(c10)のBET比表面積は221m2/gであった。
【0571】
2.燃料電池用電極の製造および酸素還元能の評価
触媒(1)0.095gに替えて触媒(c10)0.095gを用いた以外は実施例1と同様の方法により、燃料電池用電極(c10)を作製し、その酸素還元能を評価した。
【0572】
測定結果を図84に示す。触媒(c10)は、酸素還元開始電位が0.86V(vs.RHE)、酸素還元電流密度が、0.80Vで0.156mA/cm2であった。
【0573】
[比較例11]
1.触媒の製造
ナフィオン(NAFION(登録商標))を用いなかった以外は実施例25と同様の操作を行い、粉末状の触媒(c11)265mgを得た。なお、この過程で得られた焼成用粉末の重量は8.0gであった。
【0574】
触媒(c11)の粉末X線回折スペクトルを図85に示す。
【0575】
触媒(c11)を構成する各元素の割合(原子数の比)は、V:Fe:C:N:O=1:0.10:6.64:0.89:1.70であった。
【0576】
また、触媒(c11)のBET比表面積は50.6m2/gであった。
【0577】
2.燃料電池用電極の製造および酸素還元能の評価
触媒(1)0.095gに替えて触媒(c11)0.095gを用いた以外は実施例1と同様の方法により、燃料電池用電極(c11)を作製し、その酸素還元能を評価した。
【0578】
測定結果を図86に示す。触媒(c11)は、酸素還元開始電位が0.86V(vs.RHE)、酸素還元電流密度が、0.80Vで0.233mA/cm2であった。
【0579】
[比較例12]
1.触媒の製造
5%ナフィオン(NAFION(登録商標))溶液を用いなかった以外は実施例26と同様の操作を行い、粉末状の触媒(c12)274mgを得た。なお、この過程で得られた焼成用粉末の重量は10.6gであった。
【0580】
触媒(c12)の粉末X線回折スペクトルを図87に示す。
【0581】
触媒(c12)を構成する各元素の割合(原子数の比)は、V:Fe:C:N:O=1:0.09:6.1:0.88:1.85であった。
【0582】
また、触媒(c12)のBET比表面積は170.1m2/gであった。
【0583】
2.燃料電池用電極の製造および酸素還元能の評価
触媒(1)0.095gに替えて触媒(c12)0.095gを用いた以外は実施例1と同様の方法により、燃料電池用電極(c12)を作製し、その酸素還元能を評価した。
【0584】
測定結果を図88に示す。触媒(c12)は、酸素還元開始電位が0.85V(vs.RHE)、酸素還元電流密度が、0.80Vで0.297mA/cm2であった。
【0585】
[比較例13]
1.触媒の製造
チタンテトライソプロポキシド(純正化学(株)製)9.37gおよびアセチルアセトン(純正化学)5.12gを、エタノール15mLおよび酢酸5mLの混合液に加え、室温で攪拌しながらチタン溶液を調製した。また、エチレングリコール8.30gおよび酢酸鉄(Aldrich社製)0.582gを純水20mLに加え、室温で攪拌して完全に溶解させてエチレングリコール溶液を調製した。チタン溶液をエチレングリコール溶液にゆっくり添加し、透明な触媒前駆体溶液を得た。ロータリーエバポレーターを用い、窒素雰囲気の減圧下で、ホットスターラーの温度を約100℃に設定し、前記触媒前駆体溶液を加熱かつ攪拌しながら、溶媒をゆっくり蒸発させた。完全に溶媒を蒸発させて得られた固形分残渣を乳鉢で細かく均一に潰して、焼成用粉末を得た。
【0586】
この粉末を管状炉に入れ、水素ガスを4体積%含む窒素ガスの雰囲気下で昇温速度10℃/minで890℃まで加熱し、890℃で1時間保持し、自然冷却することにより粉末状の触媒(c13)を得た。
【0587】
触媒(c13)を構成する各元素の割合(原子数の比)は、Ti:Fe:C:N:O=0.96:0.04:0.96:0.01:1.04であった。
【0588】
また、触媒(c13)のBET比表面積は77m2/gであった。
【0589】
2.燃料電池用電極の製造および酸素還元能の評価
触媒(1)0.095gに替えて触媒(c13)0.095gを用いた以外は実施例1と同様の方法により、燃料電池用電極(c13)を作製し、その酸素還元能を評価した。
【0590】
測定結果を図89に示す。触媒(c13)は、酸素還元開始電位が0.62V(vs.RHE)、酸素還元電流密度が、0.80Vで0.000mA/cm2であった。
【0591】
[比較例14]
1.触媒の製造
エチレングリコールに替えてシュウ酸12.05gを用いた以外は比較例13と同様の操作を行い、粉末状の触媒(c14)を得た。
【0592】
触媒(c14)を構成する各元素の割合(原子数の比)は、Ti:Fe:C:N:O=0.96:0.04:0.94:0.02:0.89であった。
【0593】
また、触媒(c14)のBET比表面積は3.6m2/gであった。
【0594】
2.燃料電池用電極の製造および酸素還元能の評価
触媒(1)0.095gに替えて触媒(c14)0.095gを用いた以外は実施例1と同様の方法により、燃料電池用電極(c14)を作製し、その酸素還元能を評価した。
【0595】
測定結果を図90に示す。触媒(c14)は、酸素還元開始電位が0.64V(vs.RHE)、酸素還元電流密度が、0.80Vで0.000mA/cm2であった。
【0596】
[比較例15]
1.触媒の製造
エチレングリコールに替えてグリコール酸10.18gを用いた以外は比較例13と同様の操作を行い、粉末状の触媒(c15)を得た。
【0597】
触媒(c15)を構成する各元素の割合(原子数の比)は、Ti:Fe:C:N:O=0.95:0.05:0.96:0.01:1.02であった。
【0598】
また、触媒(c15)のBET比表面積は229m2/gであった。
【0599】
2.燃料電池用電極の製造および酸素還元能の評価
触媒(1)0.095gに替えて触媒(c15)0.095gを用いた以外は実施例1と同様の方法により、燃料電池用電極(c15)を作製し、その酸素還元能を評価した。
【0600】
測定結果を図91に示す。触媒(c15)は、酸素還元開始電位が0.76V(vs.RHE)、酸素還元電流密度が、0.80Vで0.000mA/cm2であった。
【0601】
[比較例16]
1.触媒の製造
酸化チタン(アナターゼ型、100m2/g)を管状炉に入れ、水素ガスを4体積%含む窒素ガスの雰囲気下で昇温速度10℃/minで900℃まで加熱し、900℃で1時間保持し、自然冷却することにより粉末状の触媒(c16)を得た。
【0602】
触媒(c16)を構成する各元素の割合(原子数の比)は、Ti:O=1:1.8であった。
【0603】
また、触媒(c16)のBET比表面積は9.4m2/gであった。
【0604】
2.燃料電池用電極の製造および酸素還元能の評価
触媒(1)0.095gに替えて触媒(c16)0.095gを用いた以外は実施例1と同様の方法により、燃料電池用電極(c16)を作製し、その酸素還元能を評価した。
【0605】
測定結果を図92に示す。触媒(c16)は、酸素還元開始電位が0.47V(vs.RHE)、酸素還元電流密度が、0.80Vで0.000mA/cm2であった。
【0606】
[比較例17]
1.触媒の製造
酸化チタン(アナターゼ型、100m2/g)2gとカーボンブラック(キャボット社製 VULCAN(登録商標) XC72)0.75gを乳鉢中でよく混合し、管状炉に入れ、水素ガスを4体積%含む窒素ガスの雰囲気下で昇温速度10℃/minで1700℃まで加熱し、1700℃で3時間保持し、自然冷却することにより粉末状の触媒(c17)を得た。
【0607】
触媒(c17)を構成する各元素の割合(原子数の比)は、Ti:C:N:O=1:0.52:0.48:0.01であった。
【0608】
また、触媒(c17)のBET比表面積は1.8m2/gであった。
【0609】
2.燃料電池用電極の製造および酸素還元能の評価
触媒(1)0.095gに替えて触媒(c17)0.095gを用いた以外は実施例1と同様の方法により、燃料電池用電極(c17)を作製し、その酸素還元能を評価した。
【0610】
測定結果を図93に示す。触媒(c17)は、酸素還元開始電位が0.55V(vs.RHE)、酸素還元電流密度が、0.80Vで0.000mA/cm2であった。
【0611】
表1に、実施例1〜30で得られた触媒の原子数の比、酸素還元開始電位、酸素還元電流密度の各測定結果を示した。さらに、実施例13,14及び28については最大出力密度の測定結果も示した。
【0612】
【表1】

表2に、実施例31〜42で得られた触媒の金属元素の原子数の比、酸素還元電流密度、BET比表面積の各測定結果を示した。
【0613】
【表2】

表3に、比較例1〜17で得られた触媒の原子数の比、酸素還元開始電位、酸素還元電流密度の各測定結果を示した。
【0614】
【表3】

【符号の説明】
【0615】
11 膜電極接合体(MEA)
12 ガスケット
13 セパレーター
14 集電板
15 ラバーヒータ
21 固体高分子型燃料電池の単セル
22 カソード加湿器
23 アノード加湿器
24 電流−電圧特性測定装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホウ素、リンおよび硫黄からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素A、金属元素、炭素、窒素、酸素ならびにフッ素を含む触媒であって、前記触媒を構成する金属元素、炭素、窒素、酸素、前記元素A、フッ素の原子数の比を、金属元素:炭素:窒素:酸素:前記元素A:フッ素=1:x:y:z:a:bと表すと、0<x≦9、0<y≦2、0<z≦5、0<a≦1、0<b≦2である燃料電池用電極触媒。
【請求項2】
少なくとも金属化合物(1)と、窒素含有有機化合物(2)と、ホウ素、リンおよび硫黄からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素Aならびにフッ素を含有する化合物(3)と溶媒とを混合して触媒前駆体を得る工程(1)、
前記触媒前駆体を500〜1100℃の温度で熱処理して電極触媒を得る工程(3)
を含み、
前記金属化合物(1)の一部または全部が、金属元素として周期表第4族および第5族の元素から選ばれる少なくとも1種の遷移金属元素M1を含有する化合物であり、
前記金属化合物(1)、前記窒素含有有機化合物(2)および前記化合物(3)の少なくとも1つが酸素原子を有する
ことを特徴とする燃料電池用電極触媒の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【図47】
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【図48】
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【図49】
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【図50】
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【図51】
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【図52】
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【図53】
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【図54】
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【図55】
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【図56】
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【図57】
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【図58】
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【図59】
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【図60】
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【図61】
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【図62】
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【図63】
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【図64】
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【図65】
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【図66】
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【図67】
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【図68】
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【図69】
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【図70】
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【図71】
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【図72】
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【図73】
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【図74】
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【図75】
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【図76】
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【図77】
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【図78】
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【図79】
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【図80】
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【図81】
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【図82】
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【図83】
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【図84】
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【図85】
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【図86】
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【図87】
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【図88】
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【図89】
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【図90】
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【図91】
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【図92】
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【図93】
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【図94】
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【図95】
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【図96】
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【図97】
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【図98】
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【図99】
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【図100】
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【図101】
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【図102】
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【図103】
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【図104】
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【図105】
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【図106】
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【図107】
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【図108】
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【図109】
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【図110】
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【図111】
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【図112】
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【図113】
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【図114】
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【図115】
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【図116】
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【図117】
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【公開番号】特開2012−160457(P2012−160457A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−45260(P2012−45260)
【出願日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【分割の表示】特願2011−551333(P2011−551333)の分割
【原出願日】平成23年8月9日(2011.8.9)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】