燃料電池用電極触媒の製造方法、燃料電池用電極触媒およびその用途
【課題】比表面積が大きく触媒性能が高い燃料電池用電極触媒およびその製造方法を提供すること。
【解決手段】少なくとも金属化合物(1)と、窒素含有有機化合物(2)と、溶媒とを混合して触媒前駆体溶液を得る工程(1)、前記触媒前駆体溶液から溶媒を除去する工程(2)、および工程(2)で得られた固形分残渣を500〜1300℃の温度で熱処理して電極触媒を得る工程(3)を含み、前記金属化合物(1)の一部または全部が、金属元素として亜鉛、ゲルマニウムおよびインジウムから選ばれる金属元素M1を含有する化合物であり、前記工程(1)で用いられる成分のうち溶媒以外の少なくとも1つの成分が酸素原子を有することを特徴とする燃料電池用電極触媒の製造方法。
【解決手段】少なくとも金属化合物(1)と、窒素含有有機化合物(2)と、溶媒とを混合して触媒前駆体溶液を得る工程(1)、前記触媒前駆体溶液から溶媒を除去する工程(2)、および工程(2)で得られた固形分残渣を500〜1300℃の温度で熱処理して電極触媒を得る工程(3)を含み、前記金属化合物(1)の一部または全部が、金属元素として亜鉛、ゲルマニウムおよびインジウムから選ばれる金属元素M1を含有する化合物であり、前記工程(1)で用いられる成分のうち溶媒以外の少なくとも1つの成分が酸素原子を有することを特徴とする燃料電池用電極触媒の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は燃料電池用電極触媒の製造方法、燃料電池用電極触媒およびその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
高分子固体型燃料電池は、高分子固体電解質をアノードとカソードとで挟み、アノードに燃料を供給し、カソードに酸素または空気を供給して、カソードで酸素が還元されて電気を取り出す形式の燃料電池である。燃料には水素またはメタノールなどが主として用いられる。
【0003】
従来、燃料電池の反応速度を高め、燃料電池のエネルギー変換効率を高めるために、燃料電池のカソード(空気極)表面やアノード(燃料極)表面には、触媒を含む層(以下「燃料電池用触媒層」とも記す。)が設けられていた。
【0004】
この触媒として、一般的に貴金属が用いられており、貴金属の中でも高い電位で安定であり、活性が高い白金、パラジウムなどの貴金属が主として用いられてきた。しかし、これらの貴金属は価格が高く、また資源量が限られていることから、代替可能な触媒の開発が求められていた。
【0005】
また、カソード表面に用いる貴金属は、酸性雰囲気下では溶解する場合があり、長期間に渡る耐久性が必要な用途には適さないという問題があった。このため酸性雰囲気下で腐食せず、耐久性に優れ、高い酸素還元能を有する触媒の開発が強く求められていた。
【0006】
このような貴金属代替触媒として、特許文献1にはニオブの炭窒酸化物からなる触媒が開示されている。特許文献1に記載された触媒は、従来の貴金属代替触媒に比べて極めて高性能であるが、実施例に具体的に開示された触媒のBET比表面積は大きくても119m2/gであった。
【0007】
また、特許文献2には、酸化物と炭素材料前駆体との混合材料を焼成することを特徴とする電極触媒の製造方法が開示されているが、実施例に具体的に開示された触媒のBET比表面積は大きくても127m2/gであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第2009/031383パンフレット
【特許文献2】特開2009−255053号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述のように、従来の燃料電池用の貴金属代替触媒においては、比表面積を大きくして触媒性能をさらに高める余地があった。
したがって本発明は、比表面積が大きく触媒性能が高い燃料電池用電極触媒の製造方法を提供することを目的とする。
【0010】
さらに本発明は、比表面積が大きく触媒性能が高い燃料電池用電極触媒およびその用途(電極等)を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、たとえば以下の[1]〜[18]に関する。
[1]
少なくとも金属化合物(1)と、窒素含有有機化合物(2)と、溶媒とを混合して触媒前駆体溶液を得る工程(1)、
前記触媒前駆体溶液から溶媒を除去する工程(2)、および
工程(2)で得られた固形分残渣を500〜1300℃の温度で熱処理して電極触媒を得る工程(3)
を含み、
前記金属化合物(1)の一部または全部が、金属元素として亜鉛、ゲルマニウムおよびインジウムから選ばれる金属元素M1を含有する化合物であり、
前記工程(1)で用いられる成分のうち溶媒以外の少なくとも1つの成分が酸素原子を有する
ことを特徴とする燃料電池用電極触媒の製造方法。
【0012】
[2]
前記金属化合物(1)の一部が、金属元素として鉄、コバルト、チタン、ジルコニウムおよび銅から選ばれる金属元素M2を含有する化合物であることを特徴とする上記[1]に記載の燃料電池用電極触媒の製造方法。
【0013】
[3]
前記工程(1)において、フッ素を含有する化合物(3)をさらに混合することを特徴とする上記[1]または[2]に記載の燃料電池用電極触媒の製造方法。
【0014】
[4]
前記工程(1)において、前記金属化合物(1)の溶液と、前記窒素含有有機化合物(2)とを混合することを特徴とする上記[1]〜[3]のいずれかに記載の燃料電池用電極触媒の製造方法。
【0015】
[5]
前記工程(1)において、ジケトン構造を有する化合物をさらに混合することを特徴とする上記[1]〜[4]のいずれかに記載の燃料電池用電極触媒の製造方法。
【0016】
[6]
前記金属化合物(1)が、金属リン酸塩、金属硫酸塩、金属硝酸塩、金属有機酸塩、金属酸ハロゲン化物、金属アルコキシド、金属ハロゲン化物、金属過ハロゲン酸塩、金属次亜ハロゲン酸塩および金属錯体からなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする上記[1]〜[5]のいずれかに記載の燃料電池用電極触媒の製造方法。
【0017】
[7]
前記窒素含有有機化合物(2)が、アミノ基、ニトリル基、イミド基、イミン基、ニトロ基、アミド基、アジド基、アジリジン基、アゾ基、イソシアネート基、イソチオシアネート基、オキシム基、ジアゾ基、およびニトロソ基、ならびにピロール環、ポルフィリン環、イミダゾール環、ピリジン環、ピリミジン環、およびピラジン環から選ばれる1種類以上を分子中に有することを特徴とする上記[1]〜[6]のいずれかに記載の燃料電池用電極触媒の製造方法。
【0018】
[8]
前記窒素含有有機化合物(2)が、水酸基、カルボキシル基、アルデヒド基、酸ハライド基、スルホ基、リン酸基、ケトン基、エーテル基、およびエステル基から選ばれる1種類以上を分子中に有することを特徴とする上記[1]〜[7]のいずれかに記載の燃料電池用電極触媒の製造方法。
【0019】
[9]
前記工程(3)において、前記固形分残渣を、水素ガスを0.01体積%以上10体積%以下含む雰囲気中で熱処理することを特徴とする上記[1]〜[8]のいずれかに記載の燃料電池用電極触媒の製造方法。
【0020】
[10]
上記[1]〜[9]のいずれかに記載の製造方法で得られる燃料電池用電極触媒。
[11]
比表面積が230m2/g以上であることを特徴とする上記[10]に記載の燃料電池用電極触媒。
【0021】
[12]
亜鉛、ゲルマニウムおよびインジウムから選ばれる金属元素M1を0.1〜40質量%含むことを特徴とする上記[10]または[11]に記載の燃料電池用電極触媒。
【0022】
[13]
上記[10]〜[12]のいずれかに記載の燃料電池用電極触媒を含むことを特徴とする燃料電池用触媒層。
【0023】
[14]
上記[13]に記載の燃料電池用触媒層と多孔質支持層とを有することを特徴とする電極。
【0024】
[15]
カソードとアノードと前記カソードおよび前記アノードの間に配置された電解質膜とを有する膜電極接合体であって、前記カソードおよび/または前記アノードが上記[14]に記載の電極であることを特徴とする膜電極接合体。
【0025】
[16]
上記[15]に記載の膜電極接合体を備えることを特徴とする燃料電池。
[17]
固体高分子型燃料電池であることを特徴とする上記[16]に記載の燃料電池。
【0026】
[18]
発電機能、発光機能、発熱機能、音響発生機能、運動機能、表示機能および充電機能からなる群より選ばれる少なくとも一つの機能を有する物品であって、上記[16]または[17]に記載の燃料電池を備えることを特徴とする物品。
【発明の効果】
【0027】
本発明の燃料電池用電極触媒の製造方法によれば、比表面積が大きく触媒性能が高い燃料電池用電極触媒を製造することができる。
本発明の燃料電池用電極触媒は、大きい比表面積および高い触媒活性を有し、各種用途(電極等)に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】図1は、固形分残渣の粉末(1−1)の粉末X線回折スペクトルである。
【図2】図2は、固形分残渣の粉末(1−1)を触媒として用いた燃料電池用電極の酸素還元電流密度−電位曲線である。
【図3】図3は、実施例1−1の触媒(1−1)の粉末X線回折スペクトルである。
【図4】図4は、実施例1−1の燃料電池用電極(1−1)の酸素還元電流密度−電位曲線である。
【図5】図5は、実施例1−2の触媒(1−2)の粉末X線回折スペクトルである。
【図6】図6は、実施例1−2の燃料電池用電極(1−2)の酸素還元電流密度−電位曲線である。
【図7】図7は、実施例1−3の触媒(1−3)の粉末X線回折スペクトルである。
【図8】図8は、実施例1−3の燃料電池用電極(1−3)の酸素還元電流密度−電位曲線である。
【図9】図9は、実施例1−4の触媒(1−4)の粉末X線回折スペクトルである。
【図10】図10は、実施例1−4の燃料電池用電極(1−4)の酸素還元電流密度−電位曲線である。
【図11】図11は、実施例1−5の触媒(1−5)の粉末X線回折スペクトルである。
【図12】図12は、実施例1−5の燃料電池用電極(1−5)の酸素還元電流密度−電位曲線である。
【図13】図13は、実施例2−1の触媒(2−1)の粉末X線回折スペクトルである。
【図14】図14は、実施例2−1の燃料電池用電極(2−1)の酸素還元電流密度−電位曲線である。
【図15】図15は、実施例2−2の触媒(2−2)の粉末X線回折スペクトルである。
【図16】図16は、実施例2−2の燃料電池用電極(2−2)の酸素還元電流密度−電位曲線である。
【図17】図17は、実施例2−3の触媒(2−3)の粉末X線回折スペクトルである。
【図18】図18は、実施例2−3の燃料電池用電極(2−3)の酸素還元電流密度−電位曲線である。
【図19】図19は、実施例2−4の触媒(2−4)の粉末X線回折スペクトルである。
【図20】図20は、実施例2−4の燃料電池用電極(2−4)の酸素還元電流密度−電位曲線である。
【図21】図21は、実施例2−5の触媒(2−5)の粉末X線回折スペクトルである。
【図22】図22は、実施例2−5の燃料電池用電極(2−5)の酸素還元電流密度−電位曲線である。
【図23】図23は、実施例2−6の触媒(2−6)の粉末X線回折スペクトルである。
【図24】図24は、実施例2−6の燃料電池用電極(2−6)の酸素還元電流密度−電位曲線である。
【図25】図25は、実施例2−7の触媒(2−7)の粉末X線回折スペクトルである。
【図26】図26は、実施例2−7の燃料電池用電極(2−7)の酸素還元電流密度−電位曲線である。
【図27】図27は、実施例2−8の触媒(2−8)の粉末X線回折スペクトルである。
【図28】図28は、実施例2−8の燃料電池用電極(2−8)の酸素還元電流密度−電位曲線である。
【図29】図29は、実施例2−9の触媒(2−9)の粉末X線回折スペクトルである。
【図30】図30は、実施例2−9の燃料電池用電極(2−9)の酸素還元電流密度−電位曲線である。
【図31】図31は、実施例2−10の触媒(2−10)の粉末X線回折スペクトルである。
【図32】図32は、実施例2−10の燃料電池用電極(2−10)の酸素還元電流密度−電位曲線である。
【図33】図33は、実施例2−11の触媒(2−11)の粉末X線回折スペクトルである。
【図34】図34は、実施例2−11の燃料電池用電極(2−11)の酸素還元電流密度−電位曲線である。
【図35】図35は、実施例2−12の触媒(2−12)の粉末X線回折スペクトルである。
【図36】図36は、実施例2−12の燃料電池用電極(2−12)の酸素還元電流密度−電位曲線である。
【図37】図37は、実施例2−13の触媒(2−13)の粉末X線回折スペクトルである。
【図38】図38は、実施例2−13の燃料電池用電極(2−13)の酸素還元電流密度−電位曲線である。
【図39】図39は、実施例2−14の触媒(2−14)の粉末X線回折スペクトルである。
【図40】図40は、実施例2−14の燃料電池用電極(2−14)の酸素還元電流密度−電位曲線である。
【図41】図41は、実施例2−15の触媒(2−15)の粉末X線回折スペクトルである。
【図42】図42は、実施例2−15の燃料電池用電極(2−15)の酸素還元電流密度−電位曲線である。
【図43】図43は、実施例2−16の触媒(2−16)の粉末X線回折スペクトルである。
【図44】図44は、実施例2−16の燃料電池用電極(2−16)の酸素還元電流密度−電位曲線である。
【図45】図45は、実施例2−17の触媒(2−17)の粉末X線回折スペクトルである。
【図46】図46は、実施例2−17の燃料電池用電極(2−17)の酸素還元電流密度−電位曲線である。
【図47】図47は、実施例3−1の触媒(3−1)の粉末X線回折スペクトルである。
【図48】図48は、実施例3−1の燃料電池用電極(3−1)の酸素還元電流密度−電位曲線である。
【図49】図49は、実施例3−2の触媒(3−2)の粉末X線回折スペクトルである。
【図50】図50は、実施例3−2の燃料電池用電極(3−2)の酸素還元電流密度−電位曲線である。
【図51】図51は、実施例3−3の触媒(3−3)の粉末X線回折スペクトルである。
【図52】図52は、実施例3−3の燃料電池用電極(3−3)の酸素還元電流密度−電位曲線である。
【図53】図53は、実施例3−4の触媒(3−4)の粉末X線回折スペクトルである。
【図54】図54は、実施例3−4の燃料電池用電極(3−4)の酸素還元電流密度−電位曲線である。
【図55】図55は、実施例3−5の触媒(3−5)の粉末X線回折スペクトルである。
【図56】図56は、実施例3−5の燃料電池用電極(3−5)の酸素還元電流密度−電位曲線である。
【図57】図57は、実施例3−6の触媒(3−6)の粉末X線回折スペクトルである。
【図58】図58は、実施例3−6の燃料電池用電極(3−6)の酸素還元電流密度−電位曲線である。
【図59】図59は、実施例3−7の触媒(3−7)の粉末X線回折スペクトルである。
【図60】図60は、実施例3−7の燃料電池用電極(3−7)の酸素還元電流密度−電位曲線である。
【図61】図61は、比較例1の燃料電池用電極(c1)の酸素還元電流密度−電位曲線である。
【図62】図62は、比較例2の燃料電池用電極(c2)の酸素還元電流密度−電位曲線である。
【図63】図63は、比較例3の燃料電池用電極(c3)の酸素還元電流密度−電位曲線である。
【図64】図64は、比較例4の燃料電池用電極(c4)の酸素還元電流密度−電位曲線である。
【図65】図65は、比較例5の燃料電池用電極(c5)の酸素還元電流密度−電位曲線である。
【図66】図66は、比較例6の燃料電池用電極(c6)の酸素還元電流密度−電位曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
[燃料電池用電極触媒の製造方法]
本発明の燃料電池用電極触媒の製造方法は、
少なくとも金属化合物(1)と、窒素含有有機化合物(2)と、溶媒とを混合して溶液(本明細書において「触媒前駆体溶液」とも記す。)を得る工程(1)、
前記触媒前駆体溶液から溶媒を除去する工程(2)、および
工程(2)で得られた固形分残渣を500〜1300℃の温度で熱処理して電極触媒を得る工程(3)
を含み、
前記金属化合物(1)の一部または全部が、亜鉛、ゲルマニウムおよびインジウムから選ばれる金属元素M1を含有する金属化合物(M1)であり、
前記工程(1)で用いられる成分のうち溶媒以外の少なくとも1つの成分が酸素原子を有する(すなわち、後述する化合物(3)を用いる場合には、化合物(1)、化合物(2)および化合物(3)の少なくとも1つが酸素原子を有し、化合物(3)を用いない場合には、化合物(1)および化合物(2)の少なくとも1つが酸素原子を有する)
ことを特徴としている。なお本明細書において、特段の事情がない限り、原子およびイオンを、厳密に区別することなく「原子」と記載する。また、ゲルマニウムを金属元素とみなす。
【0030】
(工程(1))
工程(1)では、少なくとも金属化合物(1)と、窒素含有有機化合物(2)と、溶媒と、任意に後述する化合物(3)を混合して触媒前駆体溶液を得る。
【0031】
前記混合の手順としては、たとえば、
手順(i):1つの容器に溶媒を準備し、そこへ前記金属化合物(1)前記窒素含有有機化合物(2)および任意に前記化合物(3)を添加し、溶解させて、これらを混合する、
手順(ii):前記金属化合物(1)の溶液、ならびに前記窒素含有有機化合物(2)および任意に前記化合物(3)の溶液を準備し、これらを混合する
が挙げられる。
【0032】
各成分に対して溶解性の高い溶媒が異なる場合には、手順(ii)が好ましい。また、前記金属化合物(1)が、たとえば、後述する金属ハロゲン化物の場合には、手順(i)が好ましく、前記金属化合物(1)が、たとえば、後述する金属アルコキシドまたは金属錯体の場合には、手順(ii)が好ましい。
【0033】
前記金属化合物(1)として後述する金属化合物(M1)および金属化合物(M2)を用いる場合の、前記手順(ii)における好ましい手順としては、
手順(ii'):前記金属化合物(M1)の溶液、ならびに前記金属化合物(M2)、前記窒素含有有機化合物(2)および任意に前記化合物(3)の溶液を準備し、これらを混合する
が挙げられる。
【0034】
混合操作は、溶媒への各成分の溶解速度を高めるために、撹拌しながら行うことが好ましい。
複数の溶液を調製してからこれらを混合して触媒前駆体溶液を得る場合には、一方の溶液に対して他方の溶液を、ポンプ等を用いて一定の速度で供給することが好ましい。
【0035】
また、前記窒素含有有機化合物(2)の溶液または前記窒素含有有機化合物(2)および前記化合物(3)の溶液へ、前記金属化合物(1)の溶液を少量ずつ添加する(すなわち、全量を一度に添加しない。)ことも好ましい。後述する金属化合物(M2)(ただし、金属元素M2は鉄またはコバルトである。)を用いる場合であれば、窒素含有有機化合物(2)および金属化合物(M2)の溶液、または前記窒素含有有機化合物(2)、前記化合物(3)および金属化合物(M2)の溶液へ、前記金属化合物(1)(ただし、金属元素はM1および任意にM2(チタン、ジルコニウムまたは銅)である。)の溶液を少量ずつ添加する(すなわち、全量を一度に添加しない。)ことも好ましい。
【0036】
前記触媒前駆体溶液には、沈殿物や分散質が含まれていてもいなくてもよい。
前記触媒前駆体溶液には金属化合物(1)と窒素含有有機化合物(2)との反応生成物が含まれると考えられる。溶媒へのこの反応生成物の溶解度は、金属化合物(1)、窒素含有有機化合物(2)および溶媒等の組み合わせによっても異なる。
【0037】
このため、たとえば金属化合物(1)が金属アルコキシドまたは金属錯体の場合には、前記触媒前駆体溶液は、溶媒の種類、窒素含有有機化合物(2)の種類にもよるが、好ましくは沈殿物や分散質を含まず、含むとしてもこれらは少量(たとえば溶液全量の10質量%以下、好ましくは5質量%以下、より好ましくは1質量%以下。)である。
【0038】
一方、たとえば金属化合物(1)が金属ハロゲン化物の場合には、前記触媒前駆体溶液中には、溶媒の種類、窒素含有有機化合物(2)の種類にもよるが、金属含有化合物(1)と窒素含有有機化合物(2)との反応生成物と考えられる沈殿物が生じやすい。
【0039】
工程(1)では、オートクレーブ等の加圧可能な容器に前記金属化合物(1)、前記窒素含有有機化合物(2)、溶媒、任意に前記化合物(3)を入れ、常圧以上の圧力をかけながら、混合を行ってもよい。
【0040】
前記金属化合物(1)と前記窒素含有有機化合物(2)と溶媒と任意に前記化合物(3)を混合する際の温度は、たとえば、0〜60℃である。前記金属化合物(1)および前記窒素含有有機化合物(2)から錯体が形成されると推測されるところ、この温度が過度に高いと、溶媒が水を含む場合に錯体が加水分解され水酸化物の沈殿を生じ、優れた触媒が得られないと考えられ、この温度が過度に低いと、錯体が形成される前に前記金属化合物(1)が析出してしまい、優れた触媒が得られないと考えられる。
【0041】
<金属化合物(1)>
前記金属化合物(1)の一部または全部は、亜鉛、ゲルマニウムおよびインジウムから選ばれる金属元素M1を含有する金属化合物(M1)である。金属元素M1は、1種単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0042】
前記金属化合物(1)は、好ましくは、酸素原子およびハロゲン原子から選ばれる少なくとも1種を有しており、その具体例としては、金属リン酸塩、金属硫酸塩、金属硝酸塩、金属有機酸塩、金属酸ハロゲン化物(金属ハロゲン化物の中途加水分解物)、金属アルコキシド、金属ハロゲン化物、金属ハロゲン酸塩および金属次亜ハロゲン酸塩、金属錯体が挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0043】
前記金属アルコキシドとしては、前記金属のメトキシド、プロポキシド、イソプロポキシド、エトキシド、ブトキシド、およびイソブトキシドが好ましく、前記金属のイソプロポキシド、エトキシドおよびブトキシドがさらに好ましい。前記金属アルコキシドは、1種のアルコキシ基を有していてもよく、2種以上のアルコキシ基を有していてもよい。
【0044】
酸素原子を有する金属化合物(1)としては、金属アルコキシド、アセチルアセトン錯体、金属酸塩化物、金属硫酸塩および金属硝酸塩が好ましく、コストの面から、金属アルコキシド、アセチルアセトン錯体がより好ましく、前記溶媒への溶解性の観点から、金属アルコキシド、アセチルアセトン錯体がさらに好ましい。
【0045】
前記金属ハロゲン化物としては、金属塩化物、金属臭化物および金属ヨウ化物が好ましく、前記金属酸ハロゲン化物としては、金属酸塩化物、金属酸臭化物、金属酸ヨウ化物が好ましい。
【0046】
金属過ハロゲン酸塩としては金属過塩素酸塩が好ましく、金属次亜ハロゲン酸塩としては金属次亜塩素酸塩が好ましい。
前記金属化合物(M1)の具体例としては、
亜鉛メトキシド、亜鉛エトキシド、亜鉛プロポキシド、亜鉛イソプロポキシド、亜鉛ブトキシド、亜鉛イソブトキシド、亜鉛ペントキシド、亜鉛アセチルアセトナート、ビスジエチルアミノ亜鉛、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオン)亜鉛、亜鉛ヘキサフルオロアセチルアセトナート、ビス-1-メトキシ-2-メチル-2-プロポキシ亜鉛、二塩化亜鉛、オキシ塩化亜鉛、二臭化亜鉛、オキシ臭化亜鉛、二ヨウ化亜鉛、オキシヨウ化亜鉛等の亜鉛化合物;
ゲルマニウム(IV)メトキシド、ゲルマニウム(IV)エトキシド、ゲルマニウム(IV)プロポキシド、ゲルマニウム(IV)イソプロポキシド、ゲルマニウム(IV)ブトキシド、ゲルマニウム(IV)イソブトキシド、ゲルマニウム(IV)ペントキシド、ゲルマニウム(IV)アセチルアセトナート、ゲルマニウム(IV)ジイソプロポキシドジアセチルアセトナート(Ge(acac)2(O-iPr)2、acacはアセチルアセトナトイオンを、iPrはイソプロピル基を表わす。以下も同様である。)、テトラキスジエチルアミノゲルマニウム、テトラキス(2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオン)ゲルマニウム、ゲルマニウム(IV)ヘキサフルオロアセチルアセトナート、テトラキス-1-メトキシ-2-メチル-2-プロポキシゲルマニウム、四塩化ゲルマニウム、オキシ塩化ゲルマニウム、四臭化ゲルマニウム、オキシ臭化ゲルマニウム、四ヨウ化ゲルマニウム、オキシヨウ化ゲルマニウム等のゲルマニウム化合物;
インジウムメトキシド、インジウムエトキシド、インジウムプロポキシド、インジウムイソプロポキシド、インジウムブトキシド、インジウムイソブトキシド、インジウムペントキシド、インジウムアセチルアセトナート、インジウムイソプロポキシドアセチルアセトナート(In(acac)(O-iPr)2、In(acac)2(O-iPr))、トリスジエチルアミノインジウム、トリス(2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオン)インジウム、インジウムヘキサフルオロアセチルアセトナート、トリス-1-メトキシ-2-メチル-2-プロポキシインジウム、三塩化インジウム、オキシ塩化インジウム、三臭化インジウム、オキシ臭化インジウム、三ヨウ化インジウム、オキシヨウ化インジウム等のインジウム化合物;
が挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0047】
これらの化合物の中でも、得られる触媒が均一な粒径の微粒子となり、その活性が高い
ことから、
二塩化亜鉛、オキシ塩化亜鉛、亜鉛エトキシド、亜鉛イソプロポキシド、亜鉛ブトキシド、亜鉛イソブトキシド、亜鉛アセチルアセトナート、
四塩化ゲルマニウム、オキシ塩化ゲルマニウム、ゲルマニウム(IV)メトキシド、ゲルマニウム(IV)エトキシド、ゲルマニウム(IV)イソプロポキシド、ゲルマニウム(IV)ブトキシド、ゲルマニウム(IV)アセチルアセトナート、ゲルマニウム(IV)ジイソプロポキシドジアセチルアセトナート(Ge(acac)2(O-iPr)2)、
三塩化インジウム、オキシ塩化インジウム、インジウムエトキシド、インジウムイソプロポキシド、インジウムブトキシド、インジウムアセチルアセトナート、インジウムイソプロポキシドアセチルアセトナート(In(acac)(O-iPr)2、In(acac)2(O-iPr))
が好ましく、
二塩化亜鉛、亜鉛エトキシド、亜鉛イソプロポキシド、亜鉛ブトキシド、亜鉛イソブトキシド、亜鉛アセチルアセトナート、
四塩化ゲルマニウム、ゲルマニウム(IV)メトキシド、ゲルマニウム(IV)エトキシド、ゲルマニウム(IV)イソプロポキシド、ゲルマニウム(IV)ブトキシド、ゲルマニウム(IV)アセチルアセトナート、
三塩化インジウム、インジウムエトキシド、インジウムイソプロポキシド、インジウムブトキシド、インジウムアセチルアセトナート
がさらに好ましい。
【0048】
また、前記金属化合物(1)として、前記金属化合物(M1)と共に、金属元素として鉄、コバルト、チタン、ジルコニウムおよび銅から選ばれる少なくとも1種の金属元素M2を含む金属化合物(M2)が併用されてもよい。金属化合物(M2)を用いると、得られる触媒の性能が向上する。
【0049】
金属化合物(M2)の具体例としては、
鉄(III)エトキシド、鉄(III)イソプロポキシドアセチルアセトナート(Fe(acac)(O-iPr)2、Fe(acac)2(O-iPr))、鉄(III)アセチルアセトナート、トリス(2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオン)鉄(III)、鉄(III)ヘキサフルオロアセチルアセトナート、塩化鉄(II)、塩化鉄(III)、硫酸鉄(III)、硫化鉄(II)、硫化鉄(III)、フェロシアン化カリウム、フェリシアン化カリウム、フェロシアン化アンモニウム、フェリシアン化アンモニウム、フェロシアン化鉄、ヘキサシアノ鉄(II)酸鉄(III)アンモニウム、硝酸鉄(II)、硝酸鉄(III)、シュウ酸鉄(II)、シュウ酸鉄(III)、リン酸鉄(II)、リン酸鉄(III)フェロセン、水酸化鉄(II)、水酸化鉄(III)、酸化鉄(II)、酸化鉄(III)、四酸化三鉄、酢酸鉄(II)、乳酸鉄(II)、クエン酸鉄(III)等の鉄化合物;
コバルト(III)エトキシド、コバルト(III)イソプロポキシドアセチルアセトナート(Co(acac)(O-iPr)2、Co(acac)2(O-iPr))、コバルト(III)アセチルアセトナート、塩化コバルト(II)、塩化コバルト(III)、硫酸コバルト(II)、硫化コバルト(II)、硝酸コバルト(II)、硝酸コバルト(III)、シュウ酸コバルト(II)、リン酸コバルト(II)、コバルトセン、水酸化コバルト(II)、酸化コバルト(II)、酸化コバルト(III)、四酸化三コバルト、酢酸コバルト(II)、乳酸コバルト(II)等のコバルト化合物;
チタンテトラメトキシド、チタンテトラエトキシド、チタンテトラプロポキシド、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラブトキシド、チタンテトライソブトキシド、チタンテトラペントキシド、チタンテトラアセチルアセトナート、チタンジイソプロポキシドジアセチルアセトナート(Ti(acac)2(O-iPr)2)、チタンオキシジアセチルアセトナート、トリス(アセチルアセトナート)第二チタン塩化物([Ti(acac)3]2[TiCl6])、四塩化チタン、三塩化チタン、オキシ塩化チタン、四臭化チタン、三臭化チタン、オキシ臭化チタン、四ヨウ化チタン、三ヨウ化チタン、オキシヨウ化チタン等のチタン化合物;
ジルコニウムテトラメトキシド、ジルコニウムテトラエトキシド、ジルコニウムテトラプロポキシド、ジルコニウムテトライソプロポキシド、ジルコニウムテトラブトキシド、ジルコニウムテトライソブトキシド、ジルコニウムテトラペントキシド、ジルコニウムテトラアセチルアセトナート、ジルコニウムジイソプロポキシドジアセチルアセトナート(Zr(acac)2(O-iPr)2)、テトラキスジエチルアミノジルコニウム、テトラキス(2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオン)ジルコニウム、ジルコニウム(IV)ヘキサフルオロアセチルアセトナート、テトラ-1-メトキシ-2-メチル-2-プロポキシジルコニウム(IV)、四塩化ジルコニウム、オキシ塩化ジルコニウム、四臭化ジルコニウム、オキシ臭化ジルコニウム、四ヨウ化ジルコニウム、オキシヨウ化ジルコニウム等のジルコニウム化合物;
銅(II)メトキシド、銅(II)エトキシド、銅(II)プロポキシド、銅(II)イソプロポキシド、銅(II)ブトキシド、銅(II)イソブトキシド、銅(II)ペントキシド、銅(II)アセチルアセトナート、ビスジエチルアミノ銅、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオン)銅、銅(II)ヘキサフルオロアセチルアセトナート、ビス-1-メトキシ-2-メチル-2-プロポキシ銅(II)、二塩化銅、オキシ塩化銅、二臭化銅、オキシ臭化銅、二ヨウ化銅、オキシヨウ化銅等の銅化合物;
が挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0050】
これらの化合物の中でも、
鉄(III)エトキシド、鉄(III)イソプロポキシドアセチルアセトナート、鉄(III)アセチルアセトナート、塩化鉄(II)、塩化鉄(III)、フェロシアン化カリウム、フェリシアン化カリウム、フェロシアン化アンモニウム、フェリシアン化アンモニウム、ヘキサシアノ鉄(II)酸鉄(III)アンモニウム、酢酸鉄(II)、乳酸鉄(II)、硝酸鉄(II)、
コバルト(III)エトキシド、コバルト(III)イソプロポキシドアセチルアセトナート、コバルト(III)アセチルアセトナート、塩化コバルト(II)、塩化コバルト(III)、酢酸コバルト(II)、乳酸コバルト(II)、硝酸コバルト(II)、
チタンテトラエトキシド、四塩化チタン、オキシ塩化チタン、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラアセチルアセトナート、チタンジイソプロポキシドジアセチルアセトナート(Ti(acac)2(O-iPr)2)、
ジルコニウムテトラエトキシド、四塩化ジルコニウム、オキシ塩化ジルコニウム、ジルコニウムテトライソプロポキシド、ジルコニウムテトラアセチルアセトナート、ジルコニウムジイソプロポキシドジアセチルアセトナート(Zr(acac)2(O-iPr)2)、
二塩化銅、オキシ塩化銅、銅(II)エトキシド、銅(II)イソプロポキシド、銅(II)ブトキシド、銅(II)アセチルアセトナート
が好ましく、
塩化鉄(II)、塩化鉄(III)、フェロシアン化カリウム、フェリシアン化カリウム、フェロシアン化アンモニウム、フェリシアン化アンモニウム、ヘキサシアノ鉄(II)酸鉄(III)アンモニウム、酢酸鉄(II)、乳酸鉄(II)、五塩化チタン、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラアセチルアセトナート、四塩化ジルコニウム、オキシ塩化ジルコニウム、ジルコニウムテトライソプロポキシド、二塩化銅、オキシ塩化銅、銅(II)エトキシド、銅(II)イソプロポキシド、銅(II)アセチルアセトナート
がさらに好ましい。
【0051】
<窒素含有有機化合物(2)>
前記窒素含有有機化合物(2)としては、前記金属化合物(1)中の金属原子に配位可能な配位子となり得る化合物(好ましくは、単核の錯体を形成し得る化合物)が好ましく、多座配位子(好ましくは、2座配位子または3座配位子)となり得る(キレートを形成し得る)化合物がさらに好ましい。
【0052】
前記窒素含有有機化合物(2)は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
前記窒素含有有機化合物(2)は、好ましくは、アミノ基、ニトリル基、イミド基、イミン基、ニトロ基、アミド基、アジド基、アジリジン基、アゾ基、イソシアネート基、イソチオシアネート基、オキシム基、ジアゾ基、ニトロソ基などの官能基、またはピロール環、ポルフィリン環、ピロリジン環、イミダゾール環、トリアゾール環、ピリジン環、ピペリジン環、ピリミジン環、ピラジン環、プリン環等の環(これらの官能基および環をまとめて「含窒素分子団」ともいう。)を有する。
【0053】
前記窒素含有有機化合物(2)は、含窒素分子団を分子内に有すると、工程(1)での混合を経て、前記金属化合物(1)に由来する金属原子により強く配位することができると考えられる。
【0054】
前記含窒素分子団の中では、アミノ基、イミン基、アミド基、ピロール環、ピリジン環およびピラジン環がより好ましく、アミノ基、イミン基、ピロール環およびピラジン環がさらに好ましく、アミノ基およびピラジン環が、得られる触媒の活性が特に高くなることから、特に好ましい。
【0055】
前記窒素含有有機化合物(2)(ただし、酸素原子を含まない。)の具体例としては、メラミン、エチレンジアミン、トリアゾール、アセトニトリル、アクリロニトリル、エチレンイミン、アニリン、ピロールおよびポリエチレンイミンならびにこれらの塩などが挙げられ、これらの中でも、得られる触媒の活性が高いことからエチレンジアミンおよびエチレンジアミン・二塩酸塩が好ましい。
【0056】
前記窒素含有有機化合物(2)は、好ましくは、さらに水酸基、カルボキシル基、アルデヒド基、酸ハライド基、スルホ基、リン酸基、ケトン基、エーテル基またはエステル基(これらをまとめて「含酸素分子団」ともいう。)を有する。前記窒素含有有機化合物(2)は、含酸素分子団を分子内に有すると、工程(1)での混合を経て、前記金属化合物(1)に由来する金属原子により強く配位できると考えられる。
【0057】
前記含酸素分子団の中では、カルボキシル基およびアルデヒド基が、得られる触媒の活性が特に高くなることから、特に好ましい。
分子中に酸素原子を含む前記窒素含有有機化合物(2)としては、前記含窒素分子団および前記含酸素分子団を有する化合物が好ましい。このような化合物は、工程(1)を経て、前記金属化合物(1)に由来する金属原子に特に強く配位できると考えられる。
【0058】
前記含窒素分子団および前記含酸素分子団を有する化合物としては、アミノ基およびカルボキシル基を有するアミノ酸、ならびにその誘導体が好ましい。
前記アミノ酸としては、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、シスチン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシン、バリン、ノルバリン、グリシルグリシン、トリグリシンおよびテトラグリシンが好ましく、得られる触媒の活性が高いことから、アラニン、グリシン、リシン、メチオニン、チロシンがより好ましく、得られる触媒が極めて高い活性を示すことから、アラニン、グリシンおよびリシンが特に好ましい。
【0059】
分子中に酸素原子を含む前記窒素含有有機化合物(2)の具体例としては、上記アミノ酸等に加えて、アセチルピロールなどのアシルピロール類、ピロールカルボン酸、アセチルイミダゾールなどのアシルイミダゾール類、カルボニルジイミダゾール、イミダゾールカルボン酸、ピラゾール、アセトアニリド、ピラジンカルボン酸、ピペリジンカルボン酸、ピペラジンカルボン酸、モルホリン、ピリミジンカルボン酸、ニコチン酸、2−ピリジンカルボン酸、2,4−ピリジンジカルボン酸、8−キノリノール、およびポリビニルピロリドンが挙げられ、得られる触媒の活性が高いことから、2座配位子となり得る化合物、具体的にはピロール−2−カルボン酸、イミダゾール−4−カルボン酸、2−ピラジンカルボン酸、2,3−ピラジンジカルボン酸、2−ピペリジンカルボン酸、2−ピペラジンカルボン酸、ニコチン酸、2−ピリジンカルボン酸、2,4−ピリジンジカルボン酸、および8−キノリノールが好ましく、2−ピラジンカルボン酸、2,3−ピラジンジカルボン酸および2−ピリジンカルボン酸がより好ましい。
【0060】
工程(1)で用いられる前記金属化合物(1)の金属元素の総原子数Aに対する、工程(1)で用いられる前記窒素含有有機化合物(2)の炭素の総原子数Bの比(B/A)は、工程(3)での熱処理時に二酸化炭素、一酸化炭素等の炭素化合物として脱離する成分を少なくすることが可能であり、すなわち触媒製造時に排気ガスを少量とすることができることから、好ましくは200以下、より好ましくは150以下、さらに好ましくは80以下、特に好ましくは30以下であり、良好な活性の触媒を得るという観点から、好ましくは1以上、より好ましくは2以上、さらに好ましくは3以上、特に好ましくは5以上である。
【0061】
工程(1)で用いられる前記金属化合物(1)の金属元素の総原子数Aに対する、工程(1)で用いられる前記窒素含有有機化合物(2)の窒素の総原子数Cの比(C/A)は、良好な活性の触媒を得るという観点から、好ましくは28以下、より好ましくは17以下、さらに好ましくは12以下、特に好ましくは8.5以下であり、良好な活性の触媒を得るという観点から、好ましくは1以上、より好ましくは2.5以上、さらに好ましくは3以上、特に好ましくは3.5以上である。
【0062】
工程(1)で用いられる前記金属化合物(M1)と前記金属化合物(M2)との割合を、金属元素M1の原子と金属元素M2の原子とのモル比(M1:M2)に換算して、M1:M2=(1−α):αと表わすと、αの範囲は、好ましくは0.01≦α≦0.5、さらに好ましくは0.02≦α≦0.4、特に好ましくは0.05≦α≦0.3である。
【0063】
<フッ素を含有する化合物(3)>
本発明の製造方法においては、工程(1)において、さらにフッ素を含有する化合物(3)(以下「化合物(3)」ともいう。)も混合することによって、さらに高い触媒活性を有する電極触媒が製造することができる。
【0064】
(化学構造中に)フッ素を含有する化合物(3)の具体例としては、フッ素原子を含有するアルコール、フッ素原子を含有するエーテル、フッ素原子を含有するアミン、フッ素原子を含有するカルボン酸、フッ素原子を含有するホウ酸誘導体、フッ素原子を含有するリン酸誘導体およびフッ素原子を含有するスルホン酸誘導体等が挙げられる。
【0065】
前記フッ素原子を含有するアルコールおよびその誘導体としては、たとえば、
炭化水素基の水素原子の全部または一部がフッ素原子で置換された飽和または不飽和の脂肪族アルコール(炭素原子数は、たとえば1〜30である。)、たとえばノナコサデカフルオロテトラデシルアルコール、ノナコサデカフルオロテトラデシルアルコール、ヘプタコサデカフルオロトリデシルアルコール、ペンタコサデカフルオロドデシルアルコール、トリコサデカフルオロウンデカンアルコール、ヘンイコサデカフルオロデシルアルコール、ノナデカフルオロノニルアルコール、ヘプタデカフルオロオクチルアルコール、ペンタデカフルオロヘプチルアルコール、トリデカフルオロヘキシルアルコール、ウンデカフルオロペンチルアルコール、ノナフルオロブチルアルコール、ヘプタフルオロプロピルアルコール、ペンタフルオロエチルアルコール、トリフルオロメチルアルコール、2,2,2−トリフルオロエチルアルコール、6−パーフルオロヘキシルヘキサノール、2,5−ジ(トリフロロメチル)−3,6−ジオキソウンデカフルオロノナノール、パーフルオローメチルエチルヘキサノール、ドデカフルオロヘプタノール、オクタフルオロヘキサンジオールおよびドデカフルオロオクタンジオールなどのフルオロアルキルアルコール
が挙げられる。
【0066】
これらは、1種単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
前記フッ素原子を含有するアルコールまたはその誘導体は、好ましくは、一分子中に3個以上のフッ素原子を有する。
【0067】
前記フッ素原子を含有するエーテルは、式Rf−O−Rf’(RfおよびRf’は、それぞれ独立に、水素原子の全部または一部がフッ素原子で置換された炭化水素基である。)で表される。RfおよびRf’としては、たとえばノナコサデカフルオロテトラデシル基、ヘプタコサデカフルオロトリデシル基、ペンタコサデカフルオロドデシル基、トリコサデカフルオロウンデシル基、ヘンイコサデカフルオロデシル基、ノナデカフルオロノニル基、ヘプタデカフルオロオクチル基、ペンタデカフルオロヘプチル基、トリデカフルオロヘキシル基、ウンデカフルオロペンチル基、ノナフルオロブチル基、ヘプタフルオロプロピル基、ペンタフルオロエチル基、トリフルオロメチル基および2,2,2−トリフルオロエチル基などのフルオロアルキル基が挙げられ、RfおよびRf’はアリール基を有する基(たとえばフェニル基、ピリジル基)であってもよい。
【0068】
前記フッ素原子を含有するエーテルとしては、たとえば、
式[-[(CF2-CF2)-(CH2-CH(OR))n-]で表される構造を有する、テトラフルオロエチレン(CF2=CF2)とビニルエーテル(CH2=CHOR)との交互共重合により得られる交互共重合体(たとえば、ルミフロン(登録商標)(旭硝子(株)))、
フッ素ポリアリールエーテルケトン、フッ素ポリシアノアリールエーテル、3-(2-パーフルオロヘキシルエトキシ)-1,2-ジヒドロキシプロパン、
【0069】
【化1】
で表される化合物、
【0070】
【化2】
で表される化合物、
市販品であれば、ノベックTMHFE(商品名)(ハイドロフルオロエーテル、菱江化学(株))、ノベックTMHFE(商品名)(ハイドロフルオロエーテル、3M社)
が挙げられる。
【0071】
前記フッ素原子を含有するエーテルとして、含フッ素系界面活性剤であるサーフロン(登録商標)S−241、S−242、S−243、S−420(AGCセイミケミカル(株))、フタージェント(登録商標)250((株)ネオス)などを用いてもよい。
【0072】
これらは、1種単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
前記フッ素原子を含有するエーテルまたはその誘導体は、好ましくは、一分子中に3個以上のフッ素原子を有する。
【0073】
前記フッ素原子を含有するアミンおよびその誘導体としては、たとえば、
式Rf−NR1R2(Rfは、水素原子の全部または一部がフッ素原子で置換された飽和または不飽和の脂肪族炭化水素基であり、R1およびR2は、それぞれ独立に、水素原子または、水素原子の全部もしくは一部がフッ素原子で置換されていてもよい炭素原子数1〜10の炭化水素基である。)で表される飽和または不飽和の脂肪族アミン(Rfの炭素原子数は、たとえば1〜30である。)、たとえばノナコサデカフルオロテトラデシルアミン、ヘプタコサデカフルオロトリデシルアミン、ペンタコサデカフルオロドデシルアミン、トリコサデカフルオロウンデシルアミン、ヘンイコサデカフルオロデシルアミン、ノナデカフルオロノニルアミン、ヘプタデカフルオロオクチルアミン、ペンタデカフルオロヘプチルアミン、トリデカフルオロヘキシルアミン、ウンデカフルオロペンチルアミン、ノナフルオロブチルアミン、ヘプタフルオロプロピルアミン、ペンタフルオロエチルアミン、トリフルオロメチルアミンおよび2,2,2−トリフルオロエチルアミンなどのフルオロアルキルアミン;
前記フルオロアルキルアミンの塩(一般式:A+[R4N]-;A+は、たとえばナトリウムイオン、カリウムイオン、アンモニウムイオンを表し、Rはそれぞれ独立に前記フルオロアルキルアミン中のフルオロアルキル基を表す。)(たとえば塩酸塩、硫酸塩、カルボン酸塩、燐酸塩)
が挙げられる。
【0074】
前記フッ素原子を含有するアミンまたはその塩として、含フッ素系界面活性剤であるサーフロン(登録商標)S−221、AGCセイミケミカル(株))、フタージェント(登録商標)300((株)ネオス)などを用いてもよい。
【0075】
これらは、1種単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
前記フッ素原子を含有するアミンまたはその誘導体は、好ましくは、一分子中に3個以上のフッ素原子を有する。
【0076】
前記フッ素原子を含有するカルボン酸およびその誘導体としては、たとえば、
炭化水素基の水素原子の全部または一部がフッ素原子で置換された飽和または不飽和の脂肪族カルボン酸(炭素原子数は、たとえば1〜30である。)、たとえばノナコサデカフルオロテトラデカン酸、ノナコサデカフルオロテトラデカン酸、ヘプタコサデカフルオロトリデカン酸、ペンタコサデカフルオロドデカン酸、トリコサデカフルオロウンデカン酸、ヘンイコサデカフルオロデカン酸、ノナデカフルオロノナン酸、ヘプタデカフルオロオクタン酸、ペンタデカフルオロヘプタン酸、トリデカフルオロヘキサン酸、ウンデカフルオロペンタン酸、ノナフルオロブタン酸、ヘプタフルオロプロパン酸、ペンタフルオロ酢酸、トリフルオロ酸酸、2,2,2−トリフルオロエチルカルボン酸、テトラフルオロクエン酸、ヘキサフルオログルタミン酸およびオクタフルオロアジピン酸などのフルオロアルキルカルボン酸;
アリール基中の水素原子の一部または全部が前記フルオロアルキルカルボン酸中のフルオロアルキル基で置換された芳香族カルボン酸、たとえばトリフルオロメチル安息香酸、トリフルオロメチルサリチル酸、トリフルオロメチルニコチン酸;
前記脂肪族カルボン酸のエステル(たとえば、メチルエステル、エチルエステル、アリールエステル(たとえば、フェニルエステル)、前記フッ素原子を含有するアルコールのエステル)、たとえばヘプタデカフルオロオクタン酸メチル、ヘプタデカフルオロオクタン酸エチル、ヘプタデカフルオロオクタン酸フェニル、ヘプタデカフルオロオクタン酸ヘプタデカフルオロオクチルエステル;
フッ素ポリアリールエーテルポリアリールエーテルエステル;
前記脂肪族カルボン酸の塩(たとえば、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、アルキルアンモニウム(たとえば、メチルアンモニウム、ジメチルアンモニウム、トリメチルアンモニウム、エチルアンモニウム、ジエチルアンモニウム、およびトリエチルアンモニウム)塩、前記フルオロアルキルアミンの塩)、たとえばヘプタデカフルオロオクタン酸アンモニウム、ヘプタデカフルオロオクタン酸ナトリウム、ヘプタデカフルオロオクタン酸トリエチルアンモニウム;
前記脂肪族カルボン酸のアミド(一般式:Rf−CO−NR1R2、Rfは前記脂肪族カルボン酸中のフルオロアルキル基を、R1およびR2はそれぞれ独立に、水素原子の全部または一部がフッ素原子で置換されていてもよい炭素原子数1〜10の炭化水素基(たとえば、メチル基、エチル基、フェニル基)表す。)たとえば、ヘプタデカフルオロオクタン酸アミド、ヘプタデカフルオロオクタン酸ジエチルアミド、ヘプタデカフルオロオクタン酸ヘプタデカフルオロオクチルアミド;
フッ素ポリアリールエーテルアミド;
フッ素ポリアリールエーテルイミド;
前記脂肪族カルボン酸の酸無水物(一般式:(Rf−CO)2O、Rfは前記脂肪族カルボン酸中のフルオロアルキル基を表す。)、たとえばヘプタデカフルオロオクタン酸無水物;
アミノ酸(たとえば、前記フルオロアルキルカルボン酸中のフルオロアルキル基を有するアミノ酸);
前記のカルボン酸またはその誘導体から誘導され得る置換基を有する有機化合物(高分子化合物であってもよい。)
が挙げられる。
【0077】
前記フッ素原子を含有するカルボン酸またはその誘導体として、含フッ素系界面活性剤であるサーフロン(登録商標)S−211、S−212(アミノ酸系) AGCセイミケミカル(株))、フタージェント(登録商標)501、150((株)ネオス)などを用いてもよい。
【0078】
これらは、1種単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
前記フッ素原子を含有するカルボン酸またはその誘導体は、好ましくは、一分子中に3個以上のフッ素原子を有する。
【0079】
前記フッ素原子を含有するホウ酸誘導体としては、たとえば、
テトラフルオロホウ酸塩(たとえば、テトラフルオロホウ酸アンモニウム、テトラフルオロホウ酸メチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸ジメチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸トリメチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸エチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸ジエチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸トリエチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸ブチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸ジブチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸トリブチルアンモニウム)、
テトラフルオロホウ酸四級アンモニウム塩(たとえば、テトラフルオロホウ酸テトラ−n−ブチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸テトラメチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸テトラエチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸テトラプロピルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸テトラブチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸エチルトリメチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸ジエチルジメチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸トリエチルメチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸メチルトリプロピルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸エチルトリプロピルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸トリメチルプロピルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸エチルジメチルプロピルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸ジエチルメチルプロピルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸トリエチルプロピルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸ジメチルジプロピルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸エチルメチルジプロピルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸ジエチルジプロピルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸トリメチルブチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸エチルジメチルブチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸ジエチルメチルブチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸トリエチルブチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸トリプロピルブチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸ジメチルジブチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸エチルメチルジブチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸ジエチルジブチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸へキシルトリメチルアンモニウム(前記プロピルはn−プロピル、i−プロピルを含み、前記ブチルはn−ブチル、i−ブチル、s−ブチル、t−ブチルを含む。))、
テトラフルオロホウ酸四級ピリジニウム塩(たとえば、テトラフルオロホウ酸ピリジニウム、テトラフルオロホウ酸1−メチルピリジニウム、テトラフルオロホウ酸2−ブロモ−1−エチルピリジニウム、テトラフルオロホウ酸1−ブチルピリジニウム)、
テトラフルオロホウ酸四級イミダゾリウム塩(たとえば、テトラフルオロホウ酸1,3−ジメチルイミダゾリウム、テトラフルオロホウ酸1−エチル−3−メチルイミダゾリウム、テトラフルオロホウ酸1,3−ジエチルイミダゾリウム、テトラフルオロホウ酸1,2−ジメチル−3−エチルイミダゾリウム、テトラフルオロホウ酸1,2−ジメチル−3−プロピルイミダゾリウム、テトラフルオロホウ酸1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム)、
アルキル基の水素原子の全部または一部がフッ素原子で置換されたフルオロアルキルホウ酸(たとえば、ノナコサデカフルオロテトラデシルホウ酸、ヘプタコサデカフルオロトリデシルホウ酸、ペンタコサデカフルオロドデシルホウ酸、トリコサデカフルオロウンデシルホウ酸、ヘンイコサデカフルオロデシルホウ酸、ノナデカフルオロノニルホウ酸、ヘプタデカフルオロオクチルホウ酸、ペンタデカフルオロヘプチルホウ酸、トリデカフルオロヘキシルホウ酸、ウンデカフルオロペンチルホウ酸、ノナフルオロブチルホウ酸、ヘプタフルオロプロピルホウ酸、ペンタフルオロエチルホウ酸、トリフルオロメチルホウ酸および2,2,2−トリフルオロエチルホウ酸)
前記フルオロアルキルホウ酸のモノエステルおよびジエステル(たとえば、メチルエステル、エチルエステル)、および
前記フルオロアルキルホウ酸の塩(たとえば、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、メチルアンモニウム塩、ジメチルアンモニウム塩、トリメチルアンモニウム塩、およびトリエチルアンモニウム塩)
が挙げられる。
【0080】
前記フッ素原子を含有するホウ酸誘導体として、好ましくはテトラフルオロホウ酸アンモニウム、テトラフルオロホウ酸メチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸ジメチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸トリメチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸エチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸ジエチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸トリエチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸ブチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸ジブチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸トリブチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸テトラ−n−ブチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸テトラメチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸テトラエチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸テトラプロピルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸テトラブチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸−1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムが挙げられ、より好ましくはテトラフルオロホウ酸アンモニウム、テトラフルオロホウ酸ブチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸テトラエチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸−1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムが挙げられる。
【0081】
前記フッ素原子を含有するリン酸誘導体としては、
ヘキサフルオロリン酸塩(たとえば、ヘキサフルオロリン酸アンモニウム、ヘキサフルオロリン酸メチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸ジメチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸トリメチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸エチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸ジエチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸トリエチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸ブチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸ジブチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸トリブチルアンモニウム)、
ヘキサフルオロリン酸四級アンモニウム塩(たとえば、ヘキサフルオロリン酸テトラ‐n‐ブチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸テトラメチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸テトラエチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸テトラプロピルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸テトラブチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸エチルトリメチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸ジエチルジメチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸トリエチルメチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸メチルトリプロピルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸エチルトリプロピルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸トリメチルプロピルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸エチルジメチルプロピルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸ジエチルメチルプロピルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸トリエチルプロピルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸ジメチルジプロピルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸エチルメチルジプロピルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸ジエチルジプロピルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸トリメチルブチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸エチルジメチルブチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸ジエチルメチルブチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸トリエチルブチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸トリプロピルブチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸ジメチルジブチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸エチルメチルジブチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸ジエチルジブチルアンモニウム、テトラフルオロリン酸へキシルトリメチルアンモニウム(前記プロピルはn−プロピル、i−プロピル、前記ブチルはn−ブチル、i−ブチル、s−ブチル、t−ブチルを含む。)、
ヘキサフルオロリン酸四級ピリジニウム塩(たとえば、ヘキサフルオロリン酸ピリジニウム、ヘキサフルオロリン酸1−メチルピリジニウム、ヘキサフルオロリン酸2−ブロモ−1−エチルピリジニウム)、
テトラフルオロリン酸四級イミダゾリウム塩(たとえば、テトラフルオロリン酸1,3−ジメチルイミダゾリウム、テトラフルオロリン酸1−エチル−3−メチルイミダゾリウム、テトラフルオロリン酸1,3−ジエチルイミダゾリウム、テトラフルオロリン酸1,2−ジメチル−3−エチルイミダゾリウム、テトラフルオロリン酸1,2−ジメチル−3−プロピルイミダゾリウム、テトラフルオロリン酸1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム)、
ヘキサフルオロリン酸、
前記ヘキサフルオロリン酸の塩(たとえば、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、アルキルアンモニウム(たとえば、メチルアンモニウム、ジメチルアンモニウム、トリメチルアンモニウム、エチルアンモニウム、ジエチルアンモニウム、およびトリエチルアンモニウム)塩)、
一般式:(RO)nP=Oで表わされるフルオロアルキルリン酸エステル(式中、nは1〜3であり、Rはアルキル基の水素原子の全部または一部がフッ素原子で置換されたフルオロアルキル基(たとえば、ノナコサデカフルオロテトラデシル基、ノナコサデカフルオロテトラデシル基、ヘプタコサデカフルオロトリデシル基、ペンタコサデカフルオロドデシル基、トリコサデカフルオロウンデシル基、ヘンイコサデカフルオロデシル基、ノナデカフルオロノニル基、ヘプタデカフルオロオクチル基、ペンタデカフルオロヘプチル基、トリデカフルオロヘキシル基、ウンデカフルオロペンチル基、ノナフルオロブチル基、ヘプタフルオロプロピル基、ペンタフルオロエチル基、トリフルオロメチル基および2,2,2−トリフルオロエチル基)である。)、
一般式:(RN)3P=O、(RN)2P=O(OH)、または(RN)P=O(OH)2(式中、Rは前記フルオロアルキル基を表す。)で表されるフルオロアルキルリン酸アミド、
一般式(RO)3P、(RO)2(OH)P、または(RO)(OH)2P(式中、前記フルオロアルキル基を表す。)で表わされるフルオロアルキル亜リン酸、
一般式(RN)3P、(RN)2P(OH)、(RN)P(OH)2(式中、Rは前記フルオロアルキル基を表す。)で表わされるフルオロアルキル亜リン酸アミド、
一般式:RPO(OH)2(式中、Rは前記フルオロアルキル基を表す。)で表わされるフルオロアルキルホスホン酸
が挙げられる。
【0082】
前記フッ素原子を含有するリン酸誘導体として、好ましくはヘキサフルオロリン酸アンモニウム、ヘキサフルオロリン酸メチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸ジメチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸トリメチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸エチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸ジエチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸トリエチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸ブチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸ジブチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸トリブチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸テトラ‐n‐ブチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸テトラメチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸テトラエチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸テトラプロピルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸テトラブチルアンモニウムが挙げられ、より好ましくはヘキサフルオロリン酸アンモニウム、ヘキサフルオロリン酸テトラエチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸−1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムが挙げられる。
【0083】
前記フッ素原子を含有するスルホン酸誘導体としては、
テトラフルオロエチレンとパーフルオロ[2−(フルオロスルホニルエトキシ)プロピルビニルエーテル]との共重合体(たとえば、ナフィオン(NAFION(登録商標)、下式で表わされる構造を有する共重合体))、
【0084】
【化3】
アルキル基の水素原子の全部または一部がフッ素原子で置換されたフルオロアルキルスルホン酸(炭素原子数は、たとえば1〜30である。)(たとえば、ノナコサデカフルオロテトラデカンスルホン酸、ノナコサデカフルオロテトラデカンスルホン酸、ヘプタコサデカフルオロトリデカンスルホン酸、ペンタコサデカフルオロドデカンスルホン酸、トリコサデカフルオロウンデカンスルホン酸、ヘンイコサデカフルオロデカンスルホン酸、ノナデカフルオロノナンスルホン酸、ヘプタデカフルオロオクタンスルホン酸、ペンタデカフルオロヘプタンスルホン酸、トリデカフルオロヘキサンスルホン酸、ウンデカフルオロペンタンスルホン酸、ノナフルオロブタンスルホン酸、ヘプタフルオロプロパンスルホン酸、ペンタフルオロエタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸および2,2,2−トリフルオロエタンスルホン酸)、
前記フルオロアルキルスルホン酸のエステル(たとえば、メチルエステル、エチルエステル、アリールエステル(例えば、フェニルエステル))、
前記フルオロアルキルスルホン酸の塩(一般式:A[RSO3]、Rは前記フルオロアルキル基を表す。)(ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、アルキルアンモニウム(たとえば、メチルアンモニウム、ジメチルアンモニウム、トリメチルアンモニウム、エチルアンモニウム、ジエチルアンモニウム、およびトリエチルアンモニウム)塩)、
前記フルオロアルキルスルホン酸のアミド(一般式:R−SO2−NR1R2、Rは前記フルオロアルキル基を、R1およびR2はそれぞれ独立に、水素原子の全部または一部がフッ素原子で置換されていてもよい炭素原子数1〜10の炭化水素基(たとえば、メチル基、エチル基、フェニル基)表す。)、
前記フルオロアルキルスルホン酸の酸無水物(一般式:(R−SO2)2O、Rは前記フルオロアルキル基を表す。)
前記フルオロアルキルスルホン酸のハロゲン化物(一般式:(R−SO2)X、Rは前記フルオロアルキル基を表す。Xはフッ素、塩素、臭素、ヨウ素を表す。)
が挙げられる。
【0085】
前記フッ素原子を含有するスルホン酸誘導体としては、好ましくは、テトラフルオロエチレンとパーフルオロ[2−(フルオロスルホニルエトキシ)プロピルビニルエーテル]との共重合体(たとえば、ナフィオン(NAFION(登録商標))、ヘプタデカフルオロオクタンスルホン酸、ペンタデカフルオロヘプタンスルホン酸、トリデカフルオロヘキサンスルホン酸、ウンデカフルオロペンタンスルホン酸、ノナフルオロブタンスルホン酸、ヘプタフルオロプロパンスルホン酸、ペンタフルオロエタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ヘプタデカフルオロオクタンスルホン酸アンモニウム、ペンタデカフルオロヘプタンスルホン酸アンモニウム、トリデカフルオロヘキサンスルホン酸アンモニウム、ウンデカフルオロペンタンスルホン酸アンモニウム、ノナフルオロブタンスルホン酸アンモニウム、ヘプタフルオロプロパンスルホン酸アンモニウム、ペンタフルオロエタンスルホン酸アンモニウム、トリフルオロメタンスルホン酸アンモニウム、トリフルオロメタンスルホン酸トリメチルアンモニウム、トリフルオロメタンスルホン酸トリエチルアンモニウム、トリフルオロメタンスルホン酸トリブチルアンモニウム、トリフルオロメタンスルホン酸テトラメチルアンモニウム、トリフルオロメタンスルホン酸テトラエチルアンモニウム、トリフルオロメタンスルホン酸テトラブチルアンモニウム、トリフルオロメタンスルホン酸メチル、トリフルオロメタンスルホン酸エチル、ノナフルオロ−1−ブタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸第一鉄、トリフルオロメタンスルホン酸無水物が挙げられ、
より好ましくは、トリフルオロメタンスルホン酸、ヘプタデカフルオロオクタンスルホン酸、ノナフルオロ−1−ブタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸テトラブチルアンモニウム、ヘプタデカフルオロオクタンスルホン酸アンモニウム、トリフルオロメタンスルホン酸第一鉄が挙げられる。
【0086】
また、界面活性能がある骨格つまり、疎水性部位と親水性部位が存在することで、反応系内の安定化をはかるものが好ましい。
前記化合物(3)を用いる場合には、工程(1)で用いられる化合物(3)に含まれるフッ素の量(総原子数)は、前記金属化合物(1)中の金属原子1モルに対して、通常0.01〜5モル、好ましくは0.02〜4モル、さらに好ましくは0.03〜3モルである。
【0087】
また、前記化合物(3)が前記元素Aを含む場合には、工程(1)で用いられる前記化合物(3)に含まれる元素Aの量(総原子数)は、工程(1)で用いられる前記金属化合物(1)中の金属原子1モルに対して、通常0.01〜3モル、好ましくは0.01〜2モル、さらに好ましくは0.01〜1モルである。
【0088】
元素Aがホウ素のみの場合には、その量は、上記基準で通常0.01〜3モル、好ましくは0.01〜2モル、さらに好ましくは0.01〜1モルであり、元素Aがリンのみの場合には、その量は、上記基準で通常0.01〜3モル、好ましくは0.01〜2モル、さらに好ましくは0.01〜1モルであり、元素Aが硫黄のみの場合には、その量は、上記基準で通常0.01〜3モル、好ましくは0.01〜2モル、さらに好ましくは0.01〜1モルである。
【0089】
上記の化合物(3)の量は、前記工程(1)で用いられる化合物(3)以外の原料が元素Aもフッ素も含まない場合の量であり、化合物(3)以外の原料が元素Aまたはフッ素を含む場合には、工程(1)における化合物(3)の使用量を適宜減らすことが好ましい。
【0090】
<溶媒>
前記溶媒としては、たとえば水、アルコール類および酸類が挙げられる。アルコール類としては、エタノール、メタノール、ブタノール、プロパノールおよびエトキシエタノールが好ましく、エタノールおよびメタノールがさらに好ましい。酸類としては、酢酸、硝酸(水溶液)、塩酸、リン酸水溶液およびクエン酸水溶液が好ましく、酢酸および硝酸がさらに好ましい。これらは、1種単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0091】
前記金属化合物(1)が金属ハロゲン化物の場合の溶媒としてはメタノールが好ましい。
前記溶媒は、触媒前駆体溶液100質量%中にたとえば50〜95質量%となるような量で用いてもよい。
【0092】
<沈殿抑制剤>
前記金属化合物(1)が、ハロゲン原子を含む場合には、これらの化合物は一般的に水によって容易に加水分解され、水酸化物や、酸塩化物等の沈殿を生じやすい。よって、前記金属化合物(1)がハロゲン原子を含む場合には、強酸を1質量%以上添加することが好ましい。たとえば酸が塩酸であれば、溶液中の塩化水素の濃度が5質量%以上、より好ましくは10質量%以上となるように酸を添加すると、前記金属化合物(1)に由来する水酸化物、酸塩化物等の沈殿の発生を抑制しつつ、澄明な触媒前駆体溶液を得ることができる。
【0093】
また、前記金属化合物(1)がハロゲン原子を含む場合には、前記溶媒としてアルコール類を単独で用い、かつ酸を添加することなく、触媒前駆体溶液を得てもよい。
前記金属化合物(1)が金属錯体であって、かつ前記溶媒として水を単独でまたは水と他の化合物とを用いる場合にも、水酸化物または酸塩化物の沈殿の発生を抑制するための沈殿抑制剤を用いることが好ましい。この場合の沈殿抑制剤としては、ジケトン構造を有する化合物が好ましく、ジアセチル、アセチルアセトン、2,5−ヘキサンジオンおよびジメドンがより好ましく、アセチルアセトンおよび2,5−ヘキサンジオンがさらに好ましい。
【0094】
これらの沈殿抑制剤は、金属化合物溶液(金属化合物(1)を含有し、前記窒素含有有機化合物(2)および前記化合物(3)を含有しない溶液)100質量%中に好ましくは1〜70質量%、より好ましくは、2〜50質量%、さらに好ましくは15〜40質量%となる量で添加される。
【0095】
これらの沈殿抑制剤は、触媒前駆体溶液100質量%中に好ましくは0.1〜40質量%、より好ましくは、0.5〜20質量%、さらに好ましくは2〜10質量%となる量で添加される。
【0096】
前記沈殿抑制剤は、工程(1)の中でのいずれの段階で添加されてもよい。
工程(1)では、好ましくは、前記金属化合物(1)および前記沈殿抑制剤を含む溶液を調製して、次いでこの溶液と前記窒素含有有機化合物(2)および任意に前記化合物(3)とを混合して触媒前駆体溶液を得る。このように工程(1)を実施すると、前記沈殿の発生をより確実に抑制することができる。
【0097】
(工程(2))
工程(2)では、工程(1)で得られた前記触媒前駆体溶液から溶媒を除去する。
溶媒の除去は大気下で行ってもよく、不活性ガス(例えば、窒素、アルゴン、ヘリウム)雰囲気下で行ってもよい。不活性ガスとしては、コストの観点から、窒素およびアルゴンが好ましく、窒素がより好ましい。
【0098】
溶媒除去の際の温度は、溶媒の蒸気圧が大きい場合には常温であってもよいが、触媒の量産性の観点からは、下限温度が、好ましくは30℃以上、より好ましくは40℃以上、さらに好ましくは50℃以上であり、かつ、工程(1)で得られる溶液中に含まれる、キレート等の金属錯体であると推定される触媒前駆体を分解させないという観点からは、上限温度が、好ましくは350℃以下、より好ましくは300℃以下、さらに好ましくは150℃以下、特に好ましくは110℃以下である。
【0099】
溶媒の除去は、溶媒の蒸気圧が大きい場合には大気圧下で行ってもよいが、より短時間で溶媒を除去するため、減圧(たとえば、0.1Pa〜0.1MPa)下で行ってもよい。減圧下での溶媒の除去には、たとえばエバポレーターを用いることができる。
【0100】
溶媒の除去は、工程(1)で得られた混合物を静置した状態で行ってもよいが、より均一な固形分残渣を得るためには、混合物を回転させながら溶媒を除去することが好ましい。
【0101】
前記混合物を収容している容器の質量が大きい場合は、撹拌棒、撹拌羽根、撹拌子などを用いて、溶液を回転させることが好ましい。
また、前記混合物を収容している容器の真空度を調節しながら溶媒の除去を行う場合には、密閉できる容器で乾燥を行うこととなるため、容器ごと回転させながら溶媒の除去を行うこと、たとえばロータリーエバポレーターを使用して溶媒の除去を行うことが好ましい。
【0102】
溶媒の除去の方法、あるいは前記金属化合物(1)、前記窒素含有有機化合物(2)または前記化合物(3)の性状によっては、工程(2)で得られた固形分残渣の組成または凝集状態が不均一であることがある。このような場合に、固形分残渣を、混合し、解砕して、より均一、微細な粉末としたものを工程(3)で用いると、粒径がより均一な触媒を得ることができる。
【0103】
固形分残渣を混合し、解砕するには、たとえば、ロール転動ミル、ボールミル、小径ボールミル(ビーズミル)、媒体撹拌ミル、気流粉砕機、乳鉢、自動混練乳鉢、槽解機、ジェトミルを用いることができ、固形分残渣が少量であれば、好ましくは、乳鉢、自動混練乳鉢、またはバッチ式のボールミルが用いられ、固形分残渣が多量であり連続的な混合、解砕処理を行う場合には、好ましくはジェットミルが用いられる。
【0104】
(工程(3))
工程(3)では、工程(2)で得られた固形分残渣を熱処理して電極触媒を得る。
この熱処理の際の温度は、500〜1300℃であり、好ましくは600〜1050℃であり、より好ましくは700〜950℃である。
【0105】
熱処理の温度が上記範囲よりも高すぎると、得られた電極触媒の粒子相互間においての焼結、粒成長がおこり、結果として電極触媒の比表面積が小さくなってしまうため、この粒子を塗布法により触媒層に加工する際の加工性が劣ってしまう。一方、熱処理の温度が上記範囲よりも低過ぎると、高い活性を有する電極触媒を得ることができない。
この工程(3)では、熱処理によって前記金属元素M1原子の少なくとも一部が除去される。このため、電極触媒において、前記金属元素M1原子または前記金属元素M1原子およびその周囲の原子が脱離した箇所に孔が形成され、電極触媒の比表面積が増大する、と考えられる。
【0106】
工程(3)において、前記金属元素M1原子は、工程(2)で得られた固形分残渣の中の金属元素M1の質量を基準(100質量%)として、好ましくは50質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは99質量%以上が除去される。
【0107】
金属元素M1の除去量は、前記熱処理の温度を高くする、前記熱処理の時間を長くする等により、増大させることができる。
前記熱処理の方法としては、たとえば、静置法、攪拌法、落下法、粉末捕捉法が挙げられる。
【0108】
静置法とは、静置式の電気炉などに工程(2)で得られた固形分残渣を置き、これを加熱する方法である。加熱の際に、量り取った前記固形分残渣は、アルミナボード、石英ボードなどのセラミックス容器に入れてもよい。静置法は、大量の前記固形分残渣を加熱することができる点で好ましい。
【0109】
攪拌法とは、ロータリーキルンなどの電気炉中に前記固形分残渣を入れ、これを攪拌しながら加熱する方法である。攪拌法の場合は、大量の前記固形分残渣を加熱することができ、かつ、得られる電極触媒の粒子の凝集および成長を抑制することができる点で好ましい。さらに、撹拌法は、加熱炉に傾斜をつけることによって、連続的に電極触媒を製造することが可能である点で好ましい。
【0110】
落下法とは、誘導炉中に雰囲気ガスを流しながら、炉を所定の加熱温度まで加熱し、該温度で熱的平衡を保った後、炉の加熱区域である坩堝中に前記固形分残渣を落下させ、これを加熱する方法である。落下法は、得られる電極触媒の粒子の凝集および成長を最小限度に抑制できる点で好ましい。
【0111】
粉末捕捉法とは、微量の酸素ガスを含む不活性ガス雰囲気中で、前記固形分残渣を飛沫にして浮遊させ、これを所定の加熱温度に保たれた垂直の管状炉中に捕捉して、加熱する方法である。
【0112】
前記静置法で熱処理を行う場合には、昇温速度は、特に限定されないが、好ましくは1℃/分〜100℃/分程度であり、さらに好ましくは5℃/分〜50℃/分である。また、加熱時間は、好ましくは0.1〜10時間、より好ましくは0.5時間〜5時間、さらに好ましくは0.5〜3時間である。静置法において加熱を赤外線ゴールドイメージ炉などの赤外線炉や管状炉で行なう場合、前記固形分残渣の加熱時間は、0.1〜10時間、好ましくは0.5時間〜5時間である。前記加熱時間が前記範囲内であると、均一な電極触媒粒子が形成される傾向がある。
【0113】
前記攪拌法の場合、前記固形分残渣の加熱時間は、通常10分〜5時間であり、好ましくは30分〜2時間である。本法において、炉に傾斜をつけるなどして連続的に加熱を行う場合は、定常的な炉内のサンプル流量から計算された平均滞留時間を前記加熱時間とする。
【0114】
前記落下法の場合、前記固形分残渣の加熱時間は、通常0.5〜10分であり、好ましくは0.5〜3分である。前記加熱時間が前記範囲内であると、均一な電極触媒粒子が形成される傾向がある。
【0115】
前記粉末捕捉法の場合、前記固形分残渣の加熱時間は、0.2秒〜1分、好ましくは0.2〜10秒である。前記加熱時間が前記範囲内であると、均一な電極触媒粒子が形成される傾向にある。
【0116】
前記静置法で熱処理を行う場合には、熱源としてLNG(液化天然ガス)、LPG(液化石油ガス)、軽油、重油、電気などを用いた加熱炉を熱処理装置として用いてもよい。この場合、本発明においては前記固形分残渣を熱処理する際の雰囲気が重要であるので、燃料の炎が炉内に存在する、炉の内部から加熱する装置ではなく、炉の外部からの加熱する装置が好ましい。
【0117】
前記固形分残渣の量が1バッチあたり50kg以上となるような加熱炉を用いる場合には、コストの観点から、LNG,LPGを熱源とする加熱炉が好ましい。
触媒活性の特に高い電極触媒を得たい場合には、厳密な温度制御が可能な、電気を熱源とした電気炉を用いることが望ましい。
【0118】
炉の形状としては、赤外線ゴールドイメージ炉などの赤外線炉、管状炉、上蓋型炉、トンネル炉、箱型炉、試料台昇降式炉(エレベーター型)、台車炉などが挙げられ、この中でも雰囲気を特に厳密にコントロールすることが可能な、管状炉、上蓋型炉、箱型炉および試料台昇降式炉が好ましく、管状炉および箱型炉が好ましい。
【0119】
前記撹拌法を採用する場合も、上記の熱源を用いることができるが、撹拌法の中でもとくにロータリーキルンに傾斜をつけて、前記固形分残渣を連続的に熱処理する場合には、設備の規模が大きくなり、エネルギー使用量が大きくなりやすいので、LPG等燃料由来の熱源を利用することが好ましい。
【0120】
前記熱処理を行う際の雰囲気としては、得られる電極触媒の活性を高める観点から、その主成分が不活性ガスである雰囲気が好ましい。不活性ガスの中でも、比較的安価であり、入手しやすい点で窒素、アルゴン、ヘリウムが好ましく、窒素およびアルゴンがさらに好ましい。これらの不活性ガスは、1種単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。なお、これらのガスは一般的な通念上不活性といわれるガスであるが、工程(3)の前記熱処理の際にこれらの不活性ガスすなわち、窒素、アルゴン、ヘリウム等が、前記固形分残渣と反応している可能性はある。
【0121】
また、前記熱処理の雰囲気中に反応性ガスが存在すると、得られる電極触媒がより高い触媒性能を発現することがある。たとえば、前記熱処理を、窒素ガス、アルゴンガスもしくは窒素ガスとアルゴンガスとの混合ガス、または窒素ガスおよびアルゴンガスから選ばれる一種以上のガスと、水素ガス、アンモニアガスおよび酸素ガスから選ばれる一種以上のガスとの混合ガスの雰囲気で行うと、高い触媒性能を有する電極触媒が得られる傾向にある。
【0122】
前記熱処理の雰囲気中に水素ガスが含まれる場合には、水素ガスの濃度は、たとえば100体積%以下、好ましくは0.01〜10体積%、より好ましくは1〜5体積%である。
【0123】
前記熱処理の雰囲気中に酸素ガスが含まれる場合には、酸素ガスの濃度は、たとえば0.01〜10体積%、好ましくは0.01〜5体積%である。
前記熱処理の際の圧力は特に制限されず、製造の安定性とコストなどを考慮して大気圧下で熱処理を行ってもよい。
【0124】
前記熱処理の後には、熱処理物を解砕してもよい。解砕を行うと、得られた電極触媒を用いて電極を製造する際の加工性、および得られる電極の特性を改善できることがある。この解砕には、たとえば、ロール転動ミル、ボールミル、小径ボールミル(ビーズミル)、媒体撹拌ミル、気流粉砕機、乳鉢、自動混練乳鉢、槽解機またはジェトミルを用いることができる。電極触媒が少量の場合には、乳鉢、自動混練乳鉢、バッチ式のボールミルが好ましく、熱処理物を連続的に多量に処理する場合には、ジェットミル、連続式のボールミルが好ましく、連続式のボールミルの中でもビーズミルがさらに好ましい。
【0125】
[熱処理物]
本発明の熱処理物は、
少なくとも金属化合物(1)と、窒素含有有機化合物(2)と、溶媒と、任意にホウ素、リンおよび硫黄からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素Aならびにフッ素を含有する化合物(3)とを混合して触媒前駆体溶液を得る工程(1)、
前記触媒前駆体溶液から溶媒を除去する工程(2)、および
工程(2)で得られた固形分残渣を500〜1300℃の温度で熱処理する工程(3)
を経て得られ、
前記金属化合物(1)の一部または全部が、金属元素として亜鉛、ゲルマニウムおよびインジウムからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属元素M1を含有する金属化合物(M1)であり、
前記工程(1)で用いられる成分のうち溶媒以外の少なくとも1つの成分が酸素原子を有する(すなわち、前記化合物(3)を用いる場合には、化合物(1)、化合物(2)および化合物(3)の少なくとも1つが酸素原子を有し、化合物(3)を用いない場合には、化合物(1)および化合物(2)の少なくとも1つが酸素原子を有する)
ことを特徴としている。
【0126】
工程(1)〜(3)および化合物(1)〜(3)の詳細は、上述のとおりである。
本発明の熱処理物は、後述する燃料電池用電極触媒として有用である。
[燃料電池用電極触媒]
本発明の燃料電池用電極触媒(以下、単に「触媒」ともいう)は、上述した本発明の燃料電池用電極触媒の製造方法により製造されることを特徴としている。また、本発明の触媒は、上述した本発明の熱処理物からなっていてもよい。
【0127】
本発明の燃料電池用触媒に含まれる亜鉛、ゲルマニウムおよびインジウムから選ばれる金属元素M1の量は、たとえば0.1〜40質量%、好ましくは0.2〜30質量%である。
【0128】
また本発明の燃料電池用触媒は、鉄、コバルト、チタン、ジルコニウムおよび銅から選ばれる金属元素M2を好ましくは1〜90質量%、より好ましくは3〜60質量%含んでいる。
本発明の燃料電池用電極触媒の製造方法によれば、比表面積の大きな燃料電池用電極触媒が製造され、本発明の触媒のBET法で算出される比表面積は、好ましくは230m2/g以上、より好ましくは230〜1000m2/g、さらに好ましくは300〜1000m2/g、特に好ましくは400〜1000m2/g、最も好ましくは500〜1000m2/gである。この比表面積は、たとえば、工程(3)において金属元素M1を多く除去するほど、大きくすることができる。
【0129】
前記触媒(A)の、下記測定法(A)に従って測定される酸素還元開始電位は、可逆水素電極を基準として好ましくは0.75V(vs.RHE)以上、より好ましくは0.80V(vs.RHE)以上、さらに好ましくは0.85V(vs.RHE)以上であり、上限値はたとえば1.23V(vs.RHE)であってもよい。
【0130】
〔測定法(A):
電子伝導性物質であるカーボンに分散させた触媒が1質量%となるように、該触媒及びカーボンを溶剤中に入れ、超音波で攪拌し懸濁液を得る。なお、カーボンとしては、カーボンブラック(比表面積:100〜300m2/g)(例えばキャボット社製 VULCAN(登録商標) XC72)を用い、触媒とカーボンとが質量比で95:5になるように分散させる。また、溶剤としては、イソプロピルアルコール:水(質量比)=2:1を用いる。
【0131】
前記懸濁液を、超音波をかけながら30μLを採取し、すばやくグラッシーカーボン電極(直径:6mm)上に滴下し、120℃で5分間乾燥させる。乾燥することにより触媒を含む燃料電池用触媒層が、グラッシーカーボン電極上に形成される。この滴下及び乾燥操作を、カーボン電極表面に1.0mg以上の燃料電池触媒層が形成されるまで行う。
【0132】
次いで5%ナフィオン(NAFION(登録商標))溶液(DE−521、デュポン社)をイソプロピルアルコールで10倍に希釈したものを、さらに前記燃料電池用触媒層上に10μL滴下する。これを、120℃で1時間乾燥する。
【0133】
このようにして、得られた電極を用いて、酸素雰囲気及び窒素雰囲気で、0.5mol/Lの硫酸水溶液中、30℃の温度で、同濃度の硫酸水溶液中での可逆水素電極を参照電極とし、5mV/秒の電位走査速度で分極することにより電流−電位曲線を測定した際の、酸素雰囲気での還元電流と窒素雰囲気での還元電流とに0.2μA/cm2以上の差が現れ始める電位を酸素還元開始電位とする。〕
本発明において、酸素還元電流密度は、以下のとおり求めることができる。
【0134】
まず、上記測定法(A)の結果から、特定の電位(たとえば0.80V(vsRHE))における、酸素雰囲気での還元電流と窒素雰囲気での還元電流との差を算出する。算出した値を、さらに電極面積で除した値を酸素還元電流密度(mA/cm2)とする。
【0135】
[用途]
本発明の触媒は、白金触媒の代替触媒として使用することができる。
本発明の燃料電池用触媒層は、前記触媒を含むことを特徴としている。
【0136】
燃料電池用触媒層には、アノード触媒層、カソード触媒層があるが、前記触媒はいずれにも用いることができる。前記触媒は、耐久性に優れ、酸素還元能が大きいので、カソード触媒層に用いることが好ましい。
【0137】
本発明の燃料電池用触媒層は、好ましくは、電子伝導性粉末をさらに含む。前記触媒を含む燃料電池用触媒層がさらに電子伝導性粉末を含む場合には、還元電流をより高めることができる。電子伝導性粉末は、前記触媒に、電気化学的反応を誘起させるための電気的接点を生じさせるため、還元電流を高めると考えられる。
【0138】
前記電子伝導性粒子は通常、触媒の担体として用いられる。
前記触媒はある程度の導電性を有するが、触媒により多くの電子を与える、あるいは、反応基質が触媒から多くの電子を受け取るために、触媒に、導電性を付与するための担体粒子を混合してもよい。これらの担体粒子は、工程(1)〜工程(3)を経て製造された触媒に混合されてもよく、工程(1)〜工程(3)のいずれかの段階で混合されてもよい。
【0139】
電子伝導性粒子の材質としては、炭素、導電性高分子、導電性セラミックス、金属または酸化タングステンもしくは酸化イリジウムなどの導電性無機酸化物が挙げられ、それらを1種単独または組み合わせて用いることができる。特に、炭素からなる電子伝導性粒子は比表面積が大きいため、また、安価に小粒径のものを入手しやすく、耐薬品性、耐高電位性に優れるため、炭素単独または炭素とその他の電子伝導性粒子との混合物が好ましい。すなわち燃料電池用触媒層としては、前記触媒と炭素とを含むことが好ましい。
【0140】
炭素としては、カーボンブラック、グラファイト、活性炭、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、カーボンナノホーン、フラーレン、多孔体カーボン、グラフェンなどが挙げられる。炭素からなる電子伝導性粒子の粒径は、小さすぎると電子伝導パスが形成されにくくなり、また大きすぎると燃料電池用触媒層のガス拡散性の低下や触媒の利用率の低下が起こる傾向があるため、好ましくは10〜1000nmであり、より好ましくは10〜100nmである。
【0141】
電子伝導性粒子が炭素からなる場合、前記触媒と電子伝導性粒子との質量比(触媒:電子伝導性粒子)は、好ましくは4:1〜1000:1である。
前記導電性高分子としては特に限定は無いが、例えばポリアセチレン、ポリ−p−フェニレン、ポリアニリン、ポリアルキルアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリインドール、ポリ−1,5−ジアミノアントラキノン、ポリアミノジフェニル、ポリ(o−フェニレンジアミン)、ポリ(キノリニウム)塩、ポリピリジン、ポリキノキサリン、ポリフェニルキノキサリン等が挙げられる。これらの中でも、ポリピロール、ポリアニリン、ポリチオフェンが好ましく、ポリピロールがより好ましい。
【0142】
本発明の燃料電池用触媒層は、好ましくは、高分子電解質をさらに含む。前記高分子電解質としては、燃料電池用触媒層において一般的に用いられているものであれば特に限定されない。具体的には、スルホン酸基を有するパーフルオロカーボン重合体(例えば、ナフィオン(NAFION(登録商標)))、スルホン酸基を有する炭化水素系高分子化合物、リン酸などの無機酸をドープさせた高分子化合物、一部がプロトン伝導性の官能基で置換された有機/無機ハイブリッドポリマー、高分子マトリックスにリン酸溶液や硫酸溶液を含浸させたプロトン伝導体などが挙げられる。これらの中でも、ナフィオン(NAFION(登録商標))が好ましい。前記燃料電池用触媒層を形成する際のナフィオン(NAFION(登録商標))の供給源としては、5%ナフィオン(NAFION(登録商標))溶液(DE−521、デュポン社)などが挙げられる。
【0143】
本発明の燃料電池用触媒層は、アノード触媒層またはカソード触媒層のいずれにも用いることができる。本発明の燃料電池用触媒層は、高い酸素還元能を有し、酸性電解質中において高電位であっても腐蝕しがたい触媒を含むため、燃料電池のカソードに設けられる触媒層(カソード用触媒層)として有用である。特に固体高分子型燃料電池が備える膜電極接合体のカソードに設けられる触媒層に好適に用いられる。
【0144】
前記触媒を、担体である前記電子伝導性粒子上に分散させる方法としては、気流分散、液中分散等の方法が挙げられる。液中分散は、溶媒中に触媒および電子伝導性粒子を分散したものを、燃料電池用触媒層形成工程に使用できるため好ましい。液中分散としては、オリフィス収縮流による方法、回転せん断流による方法または超音波による方法等があげられる。液中分散の際、使用される溶媒は、触媒や電子伝導性粒子を浸食することがなく、分散できるものであれば特に制限はないが、揮発性の液体有機溶媒または水等が一般に使用される。
【0145】
また、前記触媒を、前記電子伝導性粒子上に分散させる際、さらに上記電解質と分散剤とを同時に分散させてもよい。
燃料電池用触媒層の形成方法としては、特に制限はないが、たとえば、前記触媒と電子伝導性粒子と電解質とを含む懸濁液を、後述する電解質膜またはガス拡散層に塗布する方法が挙げられる。前記塗布する方法としては、ディッピング法、スクリーン印刷法、ロールコーティング法、スプレー法などが挙げられる。また、前記触媒と電子伝導性粒子と電解質とを含む懸濁液を、塗布法またはろ過法により基材に燃料電池用触媒層を形成した後、転写法で電解質膜に燃料電池用触媒層を形成する方法が挙げられる。
【0146】
本発明の電極は、前記燃料電池用触媒層と多孔質支持層とを有することを特徴としている。
本発明の電極はカソードまたはアノードのいずれの電極にも用いることができる。本発明の電極は、耐久性に優れ、触媒能が大きいので、カソードに用いるとより産業上の優位性が高い。
【0147】
多孔質支持層とは、ガスを拡散する層(以下「ガス拡散層」とも記す。)である。ガス拡散層としては、電子伝導性を有し、ガスの拡散性が高く、耐食性の高いものであれば何であっても構わないが、一般的にはカーボンペーパー、カーボンクロスなどの炭素系多孔質材料や、軽量化のためにステンレス、耐食材を被服したアルミニウム箔が用いられる。
【0148】
本発明の膜電極接合体は、カソードとアノードと前記カソードおよび前記アノードの間に配置された電解質膜とを有する膜電極接合体であって、前記カソードおよび/または前記アノードが、前記電極であることを特徴としている。
【0149】
前記膜電極接合体における触媒能は、たとえば、以下のように算出される最大出力密度により評価することができる。
まず、前記膜電極接合体11を、シール材(ガスケット12)、ガス流路付きセパレーター13、および集電板14を挟んでボルトで固定し、所定の面圧(4N)になるように締め付けて、固体高分子型燃料電池の単セルを作成する。
【0150】
アノード側に燃料として水素を流量1リットル/分で供給し、カソード側に酸化剤として酸素を流量2リットル/分で供給し、両側ともに300kPaの背圧をかけながら、前記単セル温度90℃における電流―電圧特性を測定する。得られる電流―電圧特性の曲線から最大出力密度を算出する。最大出力密度が大きいほど、前記膜電極接合体における触媒能が高いことを示す。当該最大出力密度は、好ましくは400mW/cm2以上であり、より好ましくは600mW/cm2以上であり、その上限は、たとえば1000mW/cm2程度である。
【0151】
電解質膜としては、例えば、パーフルオロスルホン酸系を用いた電解質膜または炭化水素系電解質膜などが一般的に用いられるが、高分子微多孔膜に液体電解質を含浸させた膜または多孔質体に高分子電解質を充填させた膜などを用いてもよい。
【0152】
また本発明の燃料電池は、前記膜電極接合体を備えることを特徴としている。
燃料電池の電極反応はいわゆる3相界面(電解質‐電極触媒‐反応ガス)で起こる。燃料電池は、使用される電解質などの違いにより数種類に分類され、溶融炭酸塩型(MCFC)、リン酸型(PAFC)、固体酸化物型(SOFC)、固体高分子型(PEFC)等がある。中でも、本発明の膜電極接合体は、固体高分子型燃料電池に使用することが好ましい。
【0153】
本発明の触媒を用いた燃料電池は性能が高く、また、白金を触媒として用いた場合と比較してきわめて安価であるという特徴を持つ。本発明の燃料電池は、発電機能、発光機能、発熱機能、音響発生機能、運動機能、表示機能および充電機能からなる群より選ばれる少なくとも一つの機能を有し燃料電池を備える物品の性能、特に携帯可能な物品の性能を向上させることができる。前記燃料電池は、好ましくは物品の表面または内部に備えられる。
【0154】
<本発明の燃料電池を備えた物品の具体例>
本発明の燃料電池を備えることができる前記物品の具体例としては、ビル、家屋、テント等の建築物、蛍光灯、LED等、有機EL、街灯、屋内照明、信号機等の照明器具、機械、車両そのものを含む自動車用機器、家電製品、農業機器、電子機器、携帯電話等を含む携帯情報端末、美容機材、可搬式工具、風呂用品トイレ用品等の衛生機材、家具、玩具、装飾品、掲示板、クーラーボックス、屋外発電機などのアウトドア用品、教材、造花、オブジェ、心臓ペースメーカー用電源、ペルチェ素子を備えた加熱および冷却器用の電源が挙げられる。
【実施例】
【0155】
以下に、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
実施例および比較例における各種測定は、下記の方法により行なった。
【0156】
[分析方法]
1.粉末X線回折測定
理学電機株式会社製 ロータフレックスを用いて、試料の粉末X線回折を行った。
【0157】
測定条件の詳細は以下のとおりである。
X線出力(Cu−Kα):50kV、180mA
走査軸:θ/2θ
測定範囲(2θ):10.00°〜89.98°
測定モード:FT
読込幅:0.02°
サンプリング時間:0.70秒
DS、SS、RS:0.5°、0.5°、0.15mm
ゴニオメーター半径:185mm
各試料の粉末X線回折における回折線ピークの本数は、信号(S)とノイズ(N)の比(S/N)が2以上で検出できるシグナルを1つのピークとしてみなして数えた。
【0158】
なお、ノイズ(N)は、ベースラインの幅とした。
2.元素分析
<炭素、硫黄>
試料約0.01gを量り取り、炭素硫黄分析装置(堀場製作所製EMIA−920V)にて測定を行った。
【0159】
<窒素、酸素>
試料約0.01gを量り取り、Niカプセルに試料を封入して、酸素窒素分析装置(LECO製TC600)にて測定を行った。
【0160】
<金属>
試料約0.1gを石英ビーカーに量り取り、硫酸,硝酸およびフッ酸を用いて試料を完全に加熱分解した。冷却後、この溶液を100mlに定容し、さらに適宜希釈し、ICP−OES(SII社製VISTA−PRO)またはICP−MS(Agilent社製HP7500)を用いて定量を行った。
【0161】
<フッ素>
試料数mgを、酸素気流下、水蒸気を通気しながら燃焼分解した。発生したガスを10mM Na2CO3(過酸化水素を含む。補正用標準Br‐:5ppm)に吸収させ、イオンクロマトグラフィーでフッ素の量を測定した。
【0162】
燃焼分解条件:
試料燃焼装置:AQF−100((株)三菱化学アナリテック社製)
燃焼管温度:950℃(試料ボード移動による昇温分解)
イオンクロマトグラフィー測定条件
測定装置:DIONEX DX−500
溶離液:1.8mM Na2CO3+1.7mM NaHCO3
カラム(温度):ShodexSI−90(室温)
流速:1.0ml/分
注入量:25μl
検出器:電気伝導度検出器
サプレッサー:DIONEX ASRS−300
3.BET比表面積測定
島津製作所株式会社製 マイクロメリティクス ジェミニ2360を用いてBET比表面積を測定した。前処理時間、前処理温度は、それぞれ30分、200℃に設定した。
【0163】
4.酸素還元能の評価
(1)燃料電池用電極の製造
実施例および比較例で得られた各触媒について、触媒95mgとカーボン(キャボット社製 VULCAN(登録商標) XC72)5mgとを、イソプロピルアルコール:純水=2:1の質量比で混合した溶液10gに入れ、超音波で撹拌、懸濁して混合した。この混合物30μlをグラッシーカーボン電極(東海カーボン社製、直径:6mm)に塗布し、120℃で5分間乾燥して、カーボン電極表面に1.0mg以上の燃料電池用触媒層が形成した。さらに、燃料電池用触媒層の上に5%ナフィオン(NAFION(登録商標))溶液(DE−521、デュポン社)を10倍にイソプロピルアルコールで希釈したもの10μlを塗布し、120℃で1時間乾燥し、燃料電池用電極を得た。
【0164】
(2)酸素還元能の評価
作製した燃料電池用電極を、酸素雰囲気および窒素雰囲気で、0.5mol/Lの硫酸水溶液中、30℃、5mV/秒の電位走査速度で分極し、それぞれ電流−電位曲線を測定した。その際、同濃度の硫酸水溶液中での可逆水素電極を参照電極とした。
【0165】
上記測定結果から、酸素雰囲気での還元電流と窒素雰囲気での還元電流とに0.2μA/cm2以上差が現れ始める電位を酸素還元開始電位とした。また、0.75Vおよび0.80V(vsRHE)における、酸素雰囲気での還元電流と窒素雰囲気での還元電流との差を算出した。算出した値をさらに電極面積で除した値を、酸素還元電流密度(mA/cm2)とした。
【0166】
酸素還元開始電位および酸素還元電流密度により、作製した燃料電池用電極の触媒能を評価した。
すなわち、酸素還元開始電位が高いほど、酸素還元電流密度が大きいほど、燃料電池用電極における触媒の触媒能が高いことを示す。
【0167】
[実施例1−1]
ビーカーに、メタノール50mlを入れ、これを撹拌しながら二塩化亜鉛5.58g(40.9mmol)、5%ナフィオン(NAFION(登録商標))溶液(DE−521、デュポン社)25.0ml、酢酸鉄(II)710mg(4.09mmol)を順次加えた。得られた溶液にピラジンカルボン酸20.3g(164mmol)を少量ずつ加えた後、3時間の攪拌を行い、触媒前駆体溶液(1−1)を得た。
【0168】
ロータリーエバポレーターを用い、窒素雰囲気の減圧下で、ホットスターラーの温度を約100℃に設定し、前記触媒前駆体溶液(1−1)を撹拌しながら、溶媒をゆっくり蒸発させ固形分残渣を得た。得られた固形分残渣を、さらに窒素気流下300℃で1時間加熱乾燥し、室温まで放冷後、自動乳鉢で30分間すり潰して、11.0gの固形分残渣の粉末(1−1)を得た。
【0169】
この固形分残渣の粉末(1−1)の評価結果を、表1、図1(固形分残渣の粉末(1−1)の粉末X線回折スペクトル)および図2(固形分残渣の粉末(1−1)を触媒として用いた燃料電池用電極(1−1)の酸素還元能の測定結果)に示す。
【0170】
3.600gの前記固形分残渣の粉末(1−1)を、ロータリーキルン炉で、水素ガスを4体積%含む窒素ガス(すなわち、水素ガス:窒素ガス=4体積%:96体積%の混合ガス)を20ml/分の速度で流しながら、昇温速度10℃/分で焼成温度(950℃)まで加熱し、この温度で0.5時間焼成し、自然冷却することにより、粉末状の触媒(1−1)709mgを得た。
【0171】
触媒(1−1)の評価結果を、表1、図3(触媒(1−1)の粉末X線回折スペクトル)および図4(触媒(1−1)を用いた燃料電池用電極(1−1)の酸素還元能の測定結果)に示す。
【0172】
[実施例1−2]
実施例1−1における固形分残渣の粉末(1−1)の製造方法と同じ方法により固形分残渣の粉末(1−2)を製造した。固形分残渣の粉末(1−1)を1.800gの前記固形分残渣の粉末(1−2)に変更し、焼成温度を800℃に変更した以外は実施例1−1と同様の操作を行い、粉末状の触媒(1−2)441mgを得た。
【0173】
触媒(1−2)の評価結果を、表1、図5(触媒(1−2)の粉末X線回折スペクトル)および図6(触媒(1−2)を用いた燃料電池用電極(1−2)の酸素還元能の測定結果)に示す。
【0174】
[実施例1−3]
実施例1−1における固形分残渣の粉末(1−1)の製造方法と同じ方法により固形分残渣の粉末(1−3)を製造した。固形分残渣の粉末(1−1)を1.800gの前記固形分残渣の粉末(1−3)に変更し、焼成温度を700℃に変更した以外は実施例1−1と同様の操作を行い、粉末状の触媒(1−3)608mgを得た。
【0175】
触媒(1−3)の評価結果を、表1、図7(触媒(1−3)の粉末X線回折スペクトル)および図8(触媒(1−3)を用いた燃料電池用電極(1−3)の酸素還元能の測定結果)に示す。
【0176】
[実施例1−4]
実施例1−1における固形分残渣の粉末(1−4)の製造方法と同じ方法により固形分残渣の粉末(1−4)を製造した。3.600gの前記固形分残渣の粉末(1−4)を、ロータリーキルン炉で、窒素ガスを20ml/分の速度で流しながら、昇温速度10℃/分で焼成温度(890℃)まで加熱し、この温度で0.5時間焼成し、自然冷却することにより、粉末状の触媒(1−4)703mgを得た。
【0177】
触媒(1−4)の評価結果を、表1、図9(触媒(1−4)の粉末X線回折スペクトル)および図10(触媒(1−4)を用いた燃料電池用電極(1−4)の酸素還元能の測定結果)に示す。
【0178】
[実施例1−5]
実施例1−1における固形分残渣の粉末(1−5)の製造方法と同じ方法により固形分残渣の粉末(1−5)を製造した。6.000gの前記固形分残渣の粉末(1−5)を、イメージ炉(ULVAC−RIKO社製)で、窒素ガスを125ml/分の速度で流しながら、昇温速度10℃/分で焼成温度(1050℃)まで加熱し、この温度で0.5時間焼成し、自然冷却することにより、粉末状の触媒(1−5)1204mgを得た。
【0179】
触媒(1−5)の評価結果を、表1、図11(触媒(1−5)の粉末X線回折スペクトル)および図12(触媒(1−5)を用いた燃料電池用電極(1−5)の酸素還元能の測定結果)に示す。
【0180】
[実施例2−1]
ビーカーに、酢酸160mlを入れ、これを攪拌しながら亜鉛アセチルアセトナート4.64g(17.6mmol)を加え、亜鉛溶液(2−1)を調製した。
【0181】
ビーカーに、水70ml、エタノール60ml、および酢酸70mlを入れ、ここにピラジンカルボン酸8.74g(70.4mmol)を加えて、超音波洗浄器を用いた超音波の照射により完全に溶解させた。得られた溶液に、これを攪拌しながら、酢酸鉄(II)290mg(1.67mmol)を少量ずつ加えて10分程かけて完全に溶解させた。次に温度を室温に保ちながら、かつ攪拌しながら、上記の亜鉛溶液(2−1)を10分間かけて滴下し、滴下後さらに30分間攪拌を行い、触媒前駆体溶液(2−1)を得た。
【0182】
ロータリーエバポレーターを用い、窒素雰囲気の減圧下で、ホットスターラーの温度を約100℃に設定し、前記触媒前駆体溶液(2−1)を撹拌しながら、溶媒をゆっくり蒸発させた。完全に溶媒を蒸発させて得られた固形分残渣を自動乳鉢で30分間すり潰して、11.2gの固形分残渣の粉末(2−1)を得た。
【0183】
1.200gの前記固形分残渣の粉末(2−1)を、ロータリーキルン炉で、水素ガスを4体積%含む窒素ガス(すなわち、水素ガス:窒素ガス=4体積%:96体積%の混合ガス)を20ml/分の速度で流しながら、昇温速度10℃/分で焼成温度(850℃)まで加熱し、この温度で0.5時間焼成し、自然冷却することにより、粉末状の触媒(2−1)160mgを得た。
【0184】
触媒(2−1)の評価結果を、表2、図13(触媒(2−1)の粉末X線回折スペクトル)および図14(触媒(2−1)を用いた燃料電池用電極(2−1)の酸素還元能の測定結果)に示す。
【0185】
[実施例2−2]
ビーカーに、酢酸160mlを入れ、これを攪拌しながら亜鉛アセチルアセトナート4.64g(17.6mmol)を加え、亜鉛溶液(2−2)を調製した。
【0186】
ビーカーに、水70ml、エタノール60ml、および酢酸70mlを入れ、ここにピラジンカルボン酸8.74g(70.4mmol)を加えて、超音波洗浄器を用いた超音波の照射により完全に溶解させた。得られた溶液に、これを攪拌しながら、5%ナフィオン(NAFION(登録商標))溶液(DE−521、デュポン社)10.0mlを加え、さらに酢酸鉄(II)580mg(3.34mmol)を少量ずつ加えて10分程かけて完全に溶解させた。次に温度を室温に保ちながら、かつ攪拌しながら、上記の亜鉛溶液(2−2)を10分間かけて滴下し、滴下後さらに30分間攪拌を行い、触媒前駆体溶液(2−2)を得た。
【0187】
触媒前駆体溶液(2−1)を触媒前駆体溶液(2−2)に変更したこと以外は実施例2−1と同様の操作を行い、粉末状の触媒(2−2)161mgを得た。なお、この過程で得られた固形分残渣の粉末(2−2)の質量は11.8gであった。
【0188】
触媒(2−2)の評価結果を、表2、図15(触媒(2−2)の粉末X線回折スペクトル)および図16(触媒(2−2)を用いた燃料電池用電極(2−2)の酸素還元能の測定結果)に示す。
【0189】
[実施例2−3]
ビーカーに、メタノール100mlを入れ、これを撹拌しながら二塩化亜鉛5.58g(40.9mmol)、酢酸鉄(II)710mg(4.09mmol)を順次加えた。得られた溶液にピラジンカルボン酸20.3g(164mmol)を少量ずつ加えた後、3時間の攪拌を行い触媒前駆体溶液(2−3)を得た。
【0190】
ロータリーエバポレーターを用い、窒素雰囲気の減圧下で、ホットスターラーの温度を約100℃に設定し、前記触媒前駆体溶液(2−3)を撹拌しながら、溶媒をゆっくり蒸発させた。得られた粉末を、窒素気流下300℃で1時間加熱乾燥し、室温まで放冷後、自動乳鉢で30分間すり潰して、10.1gの固形分残渣の粉末(2−3)を得た。
【0191】
固形分残渣の粉末(2−1)を固形分残渣の粉末(2−3)(1.200g)に変更したこと以外は実施例2−1と同様の操作を行い、粉末状の触媒(2−3)274mgを得た。なお、この過程で得られた固形分残渣の粉末の質量は10.1gであった。
【0192】
触媒(2−3)の評価結果を、表2、図17(触媒(2−3)の粉末X線回折スペクトル)および図18(触媒(2−3)を用いた燃料電池用電極(2−3)の酸素還元能の測定結果)に示す。
【0193】
[実施例2−4]
ビーカーに、メタノール50mlを入れ、これを撹拌しながら二塩化亜鉛5.58g(20.4mmol)、5%ナフィオン(NAFION(登録商標))溶液(DE−521、デュポン社)25.0ml、酢酸鉄(II)710mg(4.09mmol)を順次加えた。得られた溶液にピラジンカルボン酸20.3g(164mmol)を少量ずつ加えた後、3時間の攪拌を行い触媒前駆体溶液(2−4)を得た。
【0194】
触媒前駆体溶液(2−3)を触媒前駆体溶液(2−4)に変更したこと以外は実施例2−3と同様の操作を行い、粉末状の触媒(2−4)299mgを得た。なお、この過程で得られた固形分残渣の粉末の質量は11.2gであった。
【0195】
触媒(2−4)の評価結果を、表2、図19(触媒(2−4)の粉末X線回折スペクトル)および図20(触媒(2−4)を用いた燃料電池用電極(2−4)の酸素還元能の測定結果)に示す。
【0196】
[実施例2−5]
ビーカーに、酢酸160mlを入れ、これを攪拌しながら亜鉛アセチルアセトナート4.64g(17.6mmol)を加え、亜鉛溶液(2−5)を調製した。
【0197】
ナスフラスコに、水60ml、エタノール50ml、および酢酸60mlを入れ、ここにピラジンカルボン酸8.74g(70.4mmol)を加えて、超音波洗浄器を用いた超音波の照射により完全に溶解させた。得られた溶液に、これを攪拌しながら、5%ナフィオン(NAFION(登録商標))溶液(DE−521、デュポン社)10.0mlを加え、さらに酢酸鉄(II)290mg(1.67mmol)を少量ずつ加えて10分程かけて完全に溶解させた。次に温度を室温に保ちながら、かつ攪拌しながら、上記の亜鉛溶液(2−5)を10分間かけて滴下し、滴下後さらに30分間攪拌を行い、触媒前駆体溶液(2−5)を得た。
【0198】
ロータリーエバポレーターを用い、窒素雰囲気の減圧下で、ホットスターラーの温度を約100℃に設定し、前記触媒前駆体溶液(2−5)を撹拌しながら、溶媒をゆっくり蒸発させた。完全に溶媒を蒸発させて得られた固形分残渣を自動乳鉢で30分間すり潰して、10.0gの固形分残渣の粉末(2−5)を得た。
【0199】
1.800gの前記固形分残渣の粉末(2−5)を、ロータリーキルン炉で、水素ガスを4体積%含む窒素ガス(すなわち、水素ガス:窒素ガス=4体積%:96体積%の混合ガス)を20ml/分の速度で流しながら、昇温速度10℃/分で焼成温度(950℃)まで加熱し、この温度で1.5時間焼成し、自然冷却することにより、粉末状の触媒(2−5)204mgを得た。
【0200】
触媒(2−5)の評価結果を、表2、図21(触媒(2−5)の粉末X線回折スペクトル)および図22(触媒(2−5)を用いた燃料電池用電極(2−5)の酸素還元能の測定結果)に示す。
【0201】
[実施例2−6]
ビーカーに、酢酸160mlを入れ、これを攪拌しながら亜鉛アセチルアセトナート4.64g(17.6mmol)を加え、亜鉛溶液(2−6)を調製した。
【0202】
ビーカーに、水70ml、エタノール60ml、および酢酸70mlを入れ、ここにピラジンカルボン酸8.74g(70.4mmol)を加えて、超音波洗浄器を用いた超音波の照射により完全に溶解させた。得られた溶液に、これを攪拌しながら、5%ナフィオン(NAFION(登録商標))溶液(DE−521、デュポン社)10.0mlを少量ずつ加えて10分程かけて完全に溶解させた。次に温度を室温に保ちながら、かつ攪拌しながら、上記の亜鉛溶液(2−6)を10分間かけて滴下し、滴下後さらに30分間攪拌を行い、触媒前駆体溶液(2−6)を得た。
【0203】
触媒前駆体溶液(2−5)を触媒前駆体溶液(2−6)に変更したこと以外は実施例2−5と同様の操作を行い、粉末状の触媒(2−6)344mgを得た。なお、この過程で得られた固形分残渣の粉末(2−6)の質量は10.6gであった。
【0204】
触媒(2−6)の評価結果を、表2、図23(触媒(2−6)の粉末X線回折スペクトル)および図24(触媒(2−6)を用いた燃料電池用電極(2−6)の酸素還元能の測定結果)に示す。
【0205】
[実施例2−7]
ビーカーに、メタノール50mlを入れ、これを撹拌しながら四塩化ゲルマニウム4.40g(20.5mmol)、5%ナフィオン(NAFION(登録商標))溶液(DE−521、デュポン社)10.0ml、酢酸鉄(II)355mg(2.04mmol)を順次加えた。得られた溶液にピラジンカルボン酸10.15g(81.8mmol)を少量ずつ加えた後、3時間の攪拌を行い触媒前駆体溶液(2−7)を得た。
【0206】
触媒前駆体溶液(2−3)を触媒前駆体溶液(2−7)に変更したこと以外は実施例2−3と同様の操作を行い、粉末状の触媒(2−7)259mgを得た。なお、この過程で得られた固形分残渣の粉末(2−7)の質量は2.12gであった。
【0207】
触媒(2−7)の評価結果を、表2、図25(触媒(2−7)の粉末X線回折スペクトル)および図26(触媒(2−7)を用いた燃料電池用電極(2−7)の酸素還元能の測定結果)に示す。
【0208】
[実施例2−8]
ナフィオン(NAFION(登録商標))を用いなかったこと以外は実施例2−7と同様の操作を行い、粉末状の触媒(2−8)424mgを得た。なお、この過程で得られた固形分残渣の粉末(2−8)の質量は1.05gであった。
【0209】
触媒(2−8)の評価結果を、表2、図27(触媒(2−8)の粉末X線回折スペクトル)および図28(触媒(2−8)を用いた燃料電池用電極(2−8)の酸素還元能の測定結果)に示す。
【0210】
[実施例2−9]
ビーカーに、メタノール100mlを入れ、これを撹拌しながら四塩化ゲルマニウム8.77g(40.9mmol)、5%ナフィオン(NAFION(登録商標))溶液(DE−521、デュポン社)25.0ml、酢酸鉄(II)710mg(4.09mmol)を順次加えた。得られた溶液にピラジンカルボン酸20.3g(164mmol)を少量ずつ加えた後、3時間の攪拌を行い触媒前駆体溶液(2−9)を得た。なお、3時間の攪拌の際、時間の経過と共に沈殿物が生じた。
【0211】
ロータリーエバポレーターを用い、窒素雰囲気の減圧下で、ホットスターラーの温度を約100℃に設定し、前記触媒前駆体溶液(2−9)を撹拌しながら、溶媒をゆっくり蒸発させた。得られた粉末を、窒素気流下300℃で1時間加熱乾燥し、室温まで放冷後、自動乳鉢で30分間すり潰して、5.35gの固形分残渣の粉末(2−9)を得た。
【0212】
固形分残渣の粉末(2−5)を1.800gの固形分残渣の粉末(2−9)に変更したこと以外は実施例2−5と同様の操作を行い、粉末状の触媒(2−9)327mgを得た。
【0213】
触媒(2−9)の評価結果を、表2、図29(触媒(2−9)の粉末X線回折スペクトル)および図30(触媒(2−9)を用いた燃料電池用電極(2−9)の酸素還元能の測定結果)に示す。
【0214】
[実施例2−10]
ビーカーに、メタノール50mlを入れ、これを撹拌しながら三塩化インジウム4.53g(20.5mmol)、5%ナフィオン(NAFION(登録商標))溶液(DE−521、デュポン社)10.0ml、酢酸鉄(II)355mg(2.04mmol)を順次加えた。得られた溶液にピラジンカルボン酸10.15g(81.8mmol)を少量ずつ加えた後、3時間の攪拌を行い触媒前駆体溶液(2−10)を得た。
【0215】
触媒前駆体溶液(2−3)を触媒前駆体溶液(2−10)に変更したこと以外は実施例2−3と同様の操作を行い、粉末状の触媒(2−10)303mgを得た。なお、この過程で得られた固形分残渣の粉末(2−10)の質量は7.78gであった。
【0216】
触媒(2−10)の評価結果を、表2、図31(触媒(2−10)の粉末X線回折スペクトル)および図32(触媒(2−10)を用いた燃料電池用電極(2−10)の酸素還元能の測定結果)に示す。
【0217】
[実施例2−11]
ナフィオン(NAFION(登録商標))を用いなかったこと以外は実施例2−10と同様の操作を行い、粉末状の触媒(2−11)259mgを得た。なお、この過程で得られた固形分残渣の粉末(2−11)の質量は7.59gであった。
【0218】
触媒(2−11)の評価結果を、表2、図33(触媒(2−11)の粉末X線回折スペクトル)および図34(触媒(2−11)を用いた燃料電池用電極(2−11)の酸素還元能の測定結果)に示す。
【0219】
[実施例2−12]
実施例2−10における固形分残渣の粉末(2−10)の製造方法と同じ方法により固形分残渣の粉末(2−12)を製造した。
【0220】
固形分残渣の粉末(2−5)を1.800gの固形分残渣の粉末(2−12)に変更したこと以外は実施例2−5と同様の操作を行い、粉末状の触媒(2−12)403mgを得た。
【0221】
触媒(2−12)の評価結果を、表2、図35(触媒(2−12)の粉末X線回折スペクトル)および図36(触媒(2−12)を用いた燃料電池用電極(2−12)の酸素還元能の測定結果)に示す。
【0222】
[実施例2−13]
ビーカーに、メタノール100mlを入れ、これを撹拌しながら二塩化亜鉛2.79g(20.45mmol)、四塩化ゲルマニウム4.39g(20.45mmol)、5%ナフィオン(NAFION(登録商標))溶液(DE−521、デュポン社)25.0ml、酢酸鉄(II)710mg(4.09mmol)を順次加えた。得られた溶液にピラジンカルボン酸20.3g(164mmol)を少量ずつ加えた後、3時間の攪拌を行い触媒前駆体溶液(2−13)を得た。なお、3時間の攪拌の際、時間の経過と共に沈殿物が生じた。
【0223】
触媒前駆体溶液(2−3)を触媒前駆体溶液(2−13)に変更したこと以外は実施例2−3と同様の操作を行い、粉末状の触媒(2−13)335mgを得た。なお、この過程で得られた固形分残渣の粉末(2−13)の質量は8.38gであった。
【0224】
触媒(2−13)の評価結果を、表2、図37(触媒(2−13)の粉末X線回折スペクトル)および図38(触媒(2−13)を用いた燃料電池用電極(2−13)の酸素還元能の測定結果)に示す。
【0225】
[実施例2−14]
ビーカーに、酢酸172mlを入れ、これを攪拌しながら亜鉛アセチルアセトナート4.64g(17.6mmol)を加え、亜鉛溶液(2−14)を調製した。
【0226】
ビーカーに、水70ml、エタノール60ml、および酢酸70mlを入れ、ここにピラジンカルボン酸8.74g(70.4mmol)および5%ナフィオン(NAFION(登録商標))溶液(DE−521、デュポン社)10.0mlを加えて、超音波洗浄器を用いた超音波の照射により完全に溶解させた。得られた溶液に、これを攪拌しながら、酢酸鉄(II)290mg(1.67mmol)を少量ずつ加えて10分程かけて溶解させた。次に温度を室温に保ちながら、かつ攪拌しながら、上記の亜鉛溶液(2−14)を10分間かけて滴下し、溶液Aを得た。
【0227】
ビーカーに、メタノール55mlを入れ、これを攪拌しながら、三塩化インジウム3.88g(17.6mmol)、5%ナフィオン(NAFION(登録商標))溶液(DE−521、デュポン社)10.75ml、酢酸鉄(II)305mg(1.76mmol)を加えた。得られた溶液に、これを攪拌しながら、ピラジンカルボン酸6.55g(52.3mmol)を少量ずつ加え、溶液Bを得た。
【0228】
溶液Aに溶液Bを滴下した後、3時間の攪拌を行い、触媒前駆体溶液(2−14)を得た。なお、3時間の攪拌の際、時間の経過と共に沈殿物が生じた。
触媒前駆体溶液(2−1)を触媒前駆体溶液(2−14)に変更したこと以外は実施例2−1と同様の操作を行い、粉末状の触媒(2−14)191mgを得た。なお、この過程で得られた固形分残渣の粉末(2−14)の質量は11.0gであった。
【0229】
触媒(2−14)の評価結果を、表2、図39(触媒(2−14)の粉末X線回折スペクトル)および図40(触媒(2−14)を用いた燃料電池用電極(2−14)の酸素還元能の測定結果)に示す。
【0230】
[実施例2−15]
ビーカーに、メタノール100mlを入れ、これを撹拌しながら二塩化亜鉛5.58g(40.9mmol)、5%ナフィオン(NAFION(登録商標))溶液(DE−521、デュポン社)25.0ml、酢酸鉄(II)710mg(4.09mmol)を順次加えた。得られた溶液にグリシン9.13g(122mmol)を少量ずつ加えた後、3時間の攪拌を行い触媒前駆体溶液(2−15)を得た。なお、3時間の攪拌の際、時間の経過と共に沈殿物が生じた。
【0231】
ロータリーエバポレーターを用い、窒素雰囲気の減圧下で、ホットスターラーの温度を約100℃に設定し、前記触媒前駆体溶液(2−15)を撹拌しながら、溶媒をゆっくり蒸発させた。得られた粉末を、窒素気流下300℃で1時間加熱し、室温まで放冷後、自動乳鉢で30分間すり潰して、11.2gの固形分残渣の粉末(2−15)を得た。
【0232】
固形分残渣の粉末(2−15)を固形分残渣の粉末(2−15)(1.8g)に変更したこと以外は実施例2−5と同様の操作を行い、粉末状の触媒(2−15)420mgを得た。
【0233】
触媒(2−15)の評価結果を、表2、図41(触媒(2−15)の粉末X線回折スペクトル)および図42(触媒(2−15)を用いた燃料電池用電極(2−15)の酸素還元能の測定結果)に示す。
【0234】
[実施例2−16]
ビーカーに、メタノール25mlおよび酢酸25mlを入れ、これを撹拌しながら二塩化亜鉛2.80g(20.45mmol)5%ナフィオン(NAFION(登録商標))溶液(DE−521、デュポン社)12.5ml、酢酸鉄(II)355mg(2.04mmol)を順次加えた。得られた溶液にシスチン7.31g(30.4mmol)を少量ずつ加えた後、3時間の攪拌を行い触媒前駆体溶液(2−16)を得た。なお、3時間の攪拌の際、時間の経過と共に沈殿物が生じた。
【0235】
触媒前駆体溶液(2−3)を触媒前駆体溶液(2−16)に変更したこと以外は実施例2−3と同様の操作を行い、粉末状の触媒(2−16)561mgを得た。なお、この過程で得られた固形分残渣の粉末(2−16)の質量は5.91gであった。
【0236】
触媒(2−16)の評価結果を、表2、図43(触媒(2−16)の粉末X線回折スペクトル)および図44(触媒(2−16)を用いた燃料電池用電極(2−16)の酸素還元能の測定結果)に示す。
【0237】
[実施例2−17]
ビーカーに、メタノール50mlを入れ、これを撹拌しながら二塩化亜鉛5.58g(40.9mmol)、5%ナフィオン(NAFION(登録商標))溶液(DE−521、デュポン社)25.0ml、酢酸鉄(II)710mg(4.09mmol)を順次加えた。得られた溶液にピラジンカルボン酸5.08g(40.9mmol)を少量ずつ加えた後、3時間の攪拌を行い、触媒前駆体溶液(2−17)を得た。なお、3時間の攪拌の際、時間の経過と共に沈殿物が生じた。
【0238】
触媒前駆体溶液(2−3)を触媒前駆体溶液(2−17)に変更したこと以外は実施例2−3と同様の操作を行い、粉末状の触媒(2−17)130mgを得た。なお、この過程で得られた固形分残渣の粉末(2−17)の質量は9.60gであった。
【0239】
触媒(2−17)の評価結果を、表2、図45(触媒(2−17)の粉末X線回折スペクトル)および図46(触媒(2−17)を用いた燃料電池用電極(2−17)の酸素還元能の測定結果)に示す。
【0240】
[実施例3−1]
ビーカーに、酢酸16mlを入れ、これを攪拌しながら亜鉛エトキシド1.74g(11.2mmol)、アセチルアセトン3.26g(32.4mmol)およびチタンイソプロポキシド3.125ml(11.2mmol)を加え、亜鉛溶液(3−1)を調製した。
【0241】
ビーカーに、水70ml、エタノール60ml、および酢酸70mlを入れ、ここにピラジンカルボン酸11.1g(89.6mmol)を加えて、超音波洗浄器を用いた超音波の照射により完全に溶解させた。得られた溶液に、これを攪拌しながら、5%ナフィオン(NAFION(登録商標))溶液(DE−521、デュポン社)12.5mlを加え、さらに酢酸鉄(II)363mg(2.09mmol)を少量ずつ加えて10分程かけて溶解させた。次に温度を室温に保ちながら、かつ攪拌しながら、上記の亜鉛溶液(3−1)を10分間かけて滴下し、滴下後さらに30分間攪拌を行い、触媒前駆体溶液(3−1)を得た。
【0242】
触媒前駆体溶液(2−1)を触媒前駆体溶液(3−1)に変更したこと以外は実施例2−1と同様の操作を行い、粉末状の触媒(3−1)125mgを得た。なお、この過程で得られた固形分残渣の粉末(3−1)の質量は13.9gであった。
【0243】
触媒(3−1)の評価結果を、表2、図47(触媒(3−1)の粉末X線回折スペクトル)および図48(触媒(3−1)を用いた燃料電池用電極(3−1)の酸素還元能の測定結果)に示す。
【0244】
[実施例3−2]
ビーカーに、酢酸158mlを入れ、これを攪拌しながら亜鉛アセチルアセトナート4.64g(17.6mmol)を加え、亜鉛溶液(3−2)を調製した。
【0245】
ビーカーに、水70ml、エタノール60ml、および酢酸70mlを入れ、ここにピラジンカルボン酸8.74g(70.4mmol)および5%ナフィオン(NAFION(登録商標))溶液(DE−521、デュポン社)10.0mlを加えて、超音波洗浄器を用いた超音波の照射により完全に溶解させた。得られた溶液に、これを攪拌しながら、酢酸鉄(II)290mg(1.67mmol)を少量ずつ加えて10分程かけて溶解させた。次に温度を室温に保ちながら、かつ攪拌しながら、上記の亜鉛溶液(3−2)を10分間かけて滴下し、溶液Aを得た。
【0246】
ビーカーに、メタノール25mlを入れ、これを攪拌しながら、二塩化銅1.37g(10.2mmol)、5%ナフィオン(NAFION(登録商標))溶液(DE−521、デュポン社)6.25ml、酢酸鉄(II)178mg(1.02mmol)を加えた。得られた溶液に、これを攪拌しながら、ピラジンカルボン酸3.81g(30.4mmol)を少量ずつ加え、溶液Bを得た。
【0247】
溶液Aに溶液Bを滴下した後、3時間の攪拌を行い、触媒前駆体溶液(3−2)を得た。なお、3時間の攪拌の際、時間の経過と共に沈殿物が生じた。
触媒前駆体溶液(2−1)を触媒前駆体溶液(3−2)に変更したこと以外は実施例2−1と同様の操作を行い、粉末状の触媒(3−2)327mgを得た。なお、この過程で得られた固形分残渣の粉末(3−2)の質量は5.76gであった。
【0248】
触媒(3−2)の評価結果を、表2、図49(触媒(3−2)の粉末X線回折スペクトル)および図50(触媒(3−2)を用いた燃料電池用電極(3−2)の酸素還元能の測定結果)に示す。
【0249】
[実施例3−3]
ビーカーに、酢酸150mlを入れ、これを攪拌しながら亜鉛アセチルアセトナート1.91g(7.39mmol)、アセチルアセトン2.14g(21.4mmol)、ジルコニウムブトキシド6.68g(14.8mmol)を加え、亜鉛溶液(3−3)を調製した。
【0250】
ビーカーに、水70ml、エタノール60ml、および酢酸70mlを入れ、ここにピラジンカルボン酸11.0g(88.8mmol)、5%ナフィオン(NAFION(登録商標))溶液(DE−521、デュポン社)12.5mlを加えて、超音波洗浄器を用いた超音波の照射により完全に溶解させた。得られた溶液に、これを攪拌しながら、酢酸鉄(II)363mg(2.09mmol)を少量ずつ加えて10分程かけて完全に溶解させた。次に温度を室温に保ちながら、かつ攪拌しながら、上記の亜鉛溶液(3−3)を10分間かけて滴下し、滴下後さらに30分間攪拌を行い、触媒前駆体溶液(3−3)を得た。
【0251】
触媒前駆体溶液(2−1)を触媒前駆体溶液(3−3)に変更したこと以外は実施例2−1と同様の操作を行い、粉末状の触媒(2−1)261mgを得た。なお、この過程で得られた固形分残渣の粉末(3−3)の質量は14.5gであった。
【0252】
触媒(3−3)の評価結果を、表2、図51(触媒(3−3)の粉末X線回折スペクトル)および図52(触媒(3−3)を用いた燃料電池用電極(3−3)の酸素還元能の測定結果)に示す。
【0253】
[実施例3−4]
ビーカーに、メタノール50mlを入れ、これを撹拌しながら四塩化チタン1.28g(6.75mmol)、四塩化ゲルマニウム3.08g(13.5mmol)、5%ナフィオン(NAFION(登録商標))溶液(DE−521、デュポン社)12.5ml、酢酸鉄(II)355mg(2.045mmol)を順次加えた。得られた溶液にピラジンカルボン酸10.15g(81.8mmol)を少量ずつ加えた後、3時間の攪拌を行い触媒前駆体溶液(3−4)を得た。なお、3時間の攪拌の際、時間の経過と共に沈殿物が生じた。
【0254】
触媒前駆体溶液(2−3)を触媒前駆体溶液(3−4)に変更したこと以外は実施例2−3と同様の操作を行い、粉末状の触媒(3−4)299mgを得た。なお、この過程で得られた固形分残渣の粉末(3−4)の質量は2.09gであった。
【0255】
触媒(3−4)の評価結果を、表2、図53(触媒(3−4)の粉末X線回折スペクトル)および図54(触媒(3−4)を用いた燃料電池用電極(3−4)の酸素還元能の測定結果)に示す。
【0256】
[実施例3−5]
ビーカーに、メタノール50mlを入れ、これを撹拌しながら四塩化チタン1.28g(6.75mmol)、三塩化インジウム2.99g(13.5mmol)、5%ナフィオン(NAFION(登録商標))溶液(DE−521、デュポン社)12.5ml、酢酸鉄(II)355mg(2.04mmol)を順次加えた。得られた溶液にピラジンカルボン酸10.15g(81.8mmol)を少量ずつ加えた後、3時間の攪拌を行い触媒前駆体溶液(3−5)を得た。なお、3時間の攪拌の際、時間の経過と共に沈殿物が生じた。
【0257】
触媒前駆体溶液(2−3)を触媒前駆体溶液(3−5)に変更したこと以外は実施例2−3と同様の操作を行い、粉末状の触媒(3−5)290mgを得た。なお、この過程で得られた固形分残渣の粉末(3−5)の質量は5.72gであった。
【0258】
触媒(3−5)の評価結果を、表2、図55(触媒(3−5)の粉末X線回折スペクトル)および図56(触媒(3−5)を用いた燃料電池用電極(3−5)の酸素還元能の測定結果)に示す。
【0259】
[実施例3−6]
ビーカーに、メタノール50mlを入れ、これを撹拌しながら二塩化銅0.907g(6.75mmol)、四塩化ゲルマニウム3.08g(13.5mmol)、5%ナフィオン(NAFION(登録商標))溶液(DE−521、デュポン社)12.5ml、酢酸鉄(II)355mg(2.04mmol)を順次加えた。得られた溶液にピラジンカルボン酸10.15g(81.8mmol)を少量ずつ加えた後、3時間の攪拌を行い触媒前駆体溶液(3−6)を得た。なお、3時間の攪拌の際、時間の経過と共に沈殿物が生じた。
【0260】
触媒前駆体溶液(2−3)を触媒前駆体溶液(3−6)に変更したこと以外は実施例2−3と同様の操作を行い、粉末状の触媒(3−6)353mgを得た。なお、この過程で得られた固形分残渣の粉末(3−6)の質量は2.12gであった。
【0261】
触媒(3−6)の評価結果を、表2、図57(触媒(3−6)の粉末X線回折スペクトル)および図58(触媒(3−6)を用いた燃料電池用電極(3−6)の酸素還元能の測定結果)に示す。
【0262】
[実施例3−7]
ビーカーに、メタノール50mlを入れ、これを撹拌しながら二塩化銅0.907g(6.75mol)、三塩化インジウム2.99g(13.5mmol)、5%ナフィオン(NAFION(登録商標))溶液(DE−521、デュポン社)12.5ml、酢酸鉄(II)355mg(2.04mmol)を順次加えた。得られた溶液にピラジンカルボン酸10.15g(81.8mmol)を少量ずつ加えた後、3時間の攪拌を行い触媒前駆体溶液(3−7)を得た。なお、3時間の攪拌の際、時間の経過と共に沈殿物が生じた。
【0263】
触媒前駆体溶液(2−3)を触媒前駆体溶液(3−7)に変更したこと以外は実施例2−3と同様の操作を行い、粉末状の触媒(3−7)297mgを得た。なお、この過程で得られた固形分残渣の粉末(3−7)の質量は6.67gであった。
【0264】
触媒(3−7)の評価結果を、表2、図59(触媒(3−7)の粉末X線回折スペクトル)および図60(触媒(3−7)を用いた燃料電池用電極(3−7)の酸素還元能の測定結果)に示す。
【0265】
[比較例1]
チタンテトライソプロポキシド(純正化学(株)製)9.37gおよびアセチルアセトン(純正化学)5.12gを、エタノール15mLおよび酢酸5mLの混合液に加え、室温で攪拌しながらチタン溶液を調製した。また、エチレングリコール8.30gおよび酢酸鉄(Aldrich社製)0.582gを純水20mLに加え、室温で攪拌して完全に溶解させてエチレングリコール溶液を調製した。チタン溶液をエチレングリコール溶液にゆっくり添加し、透明な触媒前駆体溶液を得た。ロータリーエバポレーターを用い、窒素雰囲気の減圧下で、ホットスターラーの温度を約100℃に設定し、前記触媒前駆体溶液を加熱かつ攪拌しながら、溶媒をゆっくり蒸発させた。完全に溶媒を蒸発させて得られた固形分残渣を乳鉢で細かく均一に潰して、固形分残渣の粉末を得た。
【0266】
この粉末を管状炉に入れ、水素ガスを4体積%含む窒素ガスの雰囲気下で昇温速度10℃/minで890℃まで加熱し、890℃で1時間保持し、自然冷却することにより粉末状の触媒(c1)を得た。
【0267】
触媒(c1)の評価結果を、表3および図61(触媒(c1)を用いた燃料電池用電極(c1)の酸素還元能の測定結果)に示す。
[比較例2]
エチレングリコールに替えてシュウ酸12.05gを用いた以外は比較例1と同様の操作を行い、粉末状の触媒(c2)を得た。
【0268】
触媒(c2)の評価結果を、表3および図62(触媒(c2)を用いた燃料電池用電極(c2)の酸素還元能の測定結果)に示す。
[比較例3]
エチレングリコールに替えてグリコール酸10.18gを用いた以外は比較例1と同様の操作を行い、粉末状の触媒(c3)を得た。
【0269】
触媒(c3)の評価結果を、表3および図63(触媒(c3)を用いた燃料電池用電極(c3)の酸素還元能の測定結果)に示す。
[比較例4]
酸化チタン(アナターゼ型、100m2/g)を管状炉に入れ、水素ガスを4体積%含む窒素ガスの雰囲気下で昇温速度10℃/minで900℃まで加熱し、900℃で1時間保持し、自然冷却することにより粉末状の触媒(c4)を得た。
【0270】
触媒(c4)の評価結果を、表3および図64(触媒(c4)を用いた燃料電池用電極(c4)の酸素還元能の測定結果)に示す。
[比較例5]
酸化チタン(アナターゼ型、100m2/g)2gとカーボンブラック(キャボット社製 VULCAN(登録商標) XC72)0.75gを乳鉢中でよく混合し、管状炉に入れ、水素ガスを4体積%含む窒素ガスの雰囲気下で昇温速度10℃/minで1700℃まで加熱し、1700℃で3時間保持し、自然冷却することにより粉末状の触媒(c5)を得た。
【0271】
触媒(c5)の評価結果を、表3および図65(触媒(c5)を用いた燃料電池用電極(c5)の酸素還元能の測定結果)に示す。
[比較例6]
ケッチェンブラック(ライオン:EC600JD)2gを管状炉に入れ、水素ガスを4体積%含む窒素ガスの雰囲気下で昇温速度10℃/minで1000℃まで加熱し、1000℃で3時間保持し、自然冷却することにより粉末状の触媒(c6)を得た。
【0272】
触媒(c6)の評価結果を、表3および図66(触媒(c6)を用いた燃料電池用電極(c6)の酸素還元能の測定結果)に示す。
【0273】
【表1】
【0274】
【表2】
【0275】
【表3】
【技術分野】
【0001】
本発明は燃料電池用電極触媒の製造方法、燃料電池用電極触媒およびその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
高分子固体型燃料電池は、高分子固体電解質をアノードとカソードとで挟み、アノードに燃料を供給し、カソードに酸素または空気を供給して、カソードで酸素が還元されて電気を取り出す形式の燃料電池である。燃料には水素またはメタノールなどが主として用いられる。
【0003】
従来、燃料電池の反応速度を高め、燃料電池のエネルギー変換効率を高めるために、燃料電池のカソード(空気極)表面やアノード(燃料極)表面には、触媒を含む層(以下「燃料電池用触媒層」とも記す。)が設けられていた。
【0004】
この触媒として、一般的に貴金属が用いられており、貴金属の中でも高い電位で安定であり、活性が高い白金、パラジウムなどの貴金属が主として用いられてきた。しかし、これらの貴金属は価格が高く、また資源量が限られていることから、代替可能な触媒の開発が求められていた。
【0005】
また、カソード表面に用いる貴金属は、酸性雰囲気下では溶解する場合があり、長期間に渡る耐久性が必要な用途には適さないという問題があった。このため酸性雰囲気下で腐食せず、耐久性に優れ、高い酸素還元能を有する触媒の開発が強く求められていた。
【0006】
このような貴金属代替触媒として、特許文献1にはニオブの炭窒酸化物からなる触媒が開示されている。特許文献1に記載された触媒は、従来の貴金属代替触媒に比べて極めて高性能であるが、実施例に具体的に開示された触媒のBET比表面積は大きくても119m2/gであった。
【0007】
また、特許文献2には、酸化物と炭素材料前駆体との混合材料を焼成することを特徴とする電極触媒の製造方法が開示されているが、実施例に具体的に開示された触媒のBET比表面積は大きくても127m2/gであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第2009/031383パンフレット
【特許文献2】特開2009−255053号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述のように、従来の燃料電池用の貴金属代替触媒においては、比表面積を大きくして触媒性能をさらに高める余地があった。
したがって本発明は、比表面積が大きく触媒性能が高い燃料電池用電極触媒の製造方法を提供することを目的とする。
【0010】
さらに本発明は、比表面積が大きく触媒性能が高い燃料電池用電極触媒およびその用途(電極等)を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、たとえば以下の[1]〜[18]に関する。
[1]
少なくとも金属化合物(1)と、窒素含有有機化合物(2)と、溶媒とを混合して触媒前駆体溶液を得る工程(1)、
前記触媒前駆体溶液から溶媒を除去する工程(2)、および
工程(2)で得られた固形分残渣を500〜1300℃の温度で熱処理して電極触媒を得る工程(3)
を含み、
前記金属化合物(1)の一部または全部が、金属元素として亜鉛、ゲルマニウムおよびインジウムから選ばれる金属元素M1を含有する化合物であり、
前記工程(1)で用いられる成分のうち溶媒以外の少なくとも1つの成分が酸素原子を有する
ことを特徴とする燃料電池用電極触媒の製造方法。
【0012】
[2]
前記金属化合物(1)の一部が、金属元素として鉄、コバルト、チタン、ジルコニウムおよび銅から選ばれる金属元素M2を含有する化合物であることを特徴とする上記[1]に記載の燃料電池用電極触媒の製造方法。
【0013】
[3]
前記工程(1)において、フッ素を含有する化合物(3)をさらに混合することを特徴とする上記[1]または[2]に記載の燃料電池用電極触媒の製造方法。
【0014】
[4]
前記工程(1)において、前記金属化合物(1)の溶液と、前記窒素含有有機化合物(2)とを混合することを特徴とする上記[1]〜[3]のいずれかに記載の燃料電池用電極触媒の製造方法。
【0015】
[5]
前記工程(1)において、ジケトン構造を有する化合物をさらに混合することを特徴とする上記[1]〜[4]のいずれかに記載の燃料電池用電極触媒の製造方法。
【0016】
[6]
前記金属化合物(1)が、金属リン酸塩、金属硫酸塩、金属硝酸塩、金属有機酸塩、金属酸ハロゲン化物、金属アルコキシド、金属ハロゲン化物、金属過ハロゲン酸塩、金属次亜ハロゲン酸塩および金属錯体からなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする上記[1]〜[5]のいずれかに記載の燃料電池用電極触媒の製造方法。
【0017】
[7]
前記窒素含有有機化合物(2)が、アミノ基、ニトリル基、イミド基、イミン基、ニトロ基、アミド基、アジド基、アジリジン基、アゾ基、イソシアネート基、イソチオシアネート基、オキシム基、ジアゾ基、およびニトロソ基、ならびにピロール環、ポルフィリン環、イミダゾール環、ピリジン環、ピリミジン環、およびピラジン環から選ばれる1種類以上を分子中に有することを特徴とする上記[1]〜[6]のいずれかに記載の燃料電池用電極触媒の製造方法。
【0018】
[8]
前記窒素含有有機化合物(2)が、水酸基、カルボキシル基、アルデヒド基、酸ハライド基、スルホ基、リン酸基、ケトン基、エーテル基、およびエステル基から選ばれる1種類以上を分子中に有することを特徴とする上記[1]〜[7]のいずれかに記載の燃料電池用電極触媒の製造方法。
【0019】
[9]
前記工程(3)において、前記固形分残渣を、水素ガスを0.01体積%以上10体積%以下含む雰囲気中で熱処理することを特徴とする上記[1]〜[8]のいずれかに記載の燃料電池用電極触媒の製造方法。
【0020】
[10]
上記[1]〜[9]のいずれかに記載の製造方法で得られる燃料電池用電極触媒。
[11]
比表面積が230m2/g以上であることを特徴とする上記[10]に記載の燃料電池用電極触媒。
【0021】
[12]
亜鉛、ゲルマニウムおよびインジウムから選ばれる金属元素M1を0.1〜40質量%含むことを特徴とする上記[10]または[11]に記載の燃料電池用電極触媒。
【0022】
[13]
上記[10]〜[12]のいずれかに記載の燃料電池用電極触媒を含むことを特徴とする燃料電池用触媒層。
【0023】
[14]
上記[13]に記載の燃料電池用触媒層と多孔質支持層とを有することを特徴とする電極。
【0024】
[15]
カソードとアノードと前記カソードおよび前記アノードの間に配置された電解質膜とを有する膜電極接合体であって、前記カソードおよび/または前記アノードが上記[14]に記載の電極であることを特徴とする膜電極接合体。
【0025】
[16]
上記[15]に記載の膜電極接合体を備えることを特徴とする燃料電池。
[17]
固体高分子型燃料電池であることを特徴とする上記[16]に記載の燃料電池。
【0026】
[18]
発電機能、発光機能、発熱機能、音響発生機能、運動機能、表示機能および充電機能からなる群より選ばれる少なくとも一つの機能を有する物品であって、上記[16]または[17]に記載の燃料電池を備えることを特徴とする物品。
【発明の効果】
【0027】
本発明の燃料電池用電極触媒の製造方法によれば、比表面積が大きく触媒性能が高い燃料電池用電極触媒を製造することができる。
本発明の燃料電池用電極触媒は、大きい比表面積および高い触媒活性を有し、各種用途(電極等)に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】図1は、固形分残渣の粉末(1−1)の粉末X線回折スペクトルである。
【図2】図2は、固形分残渣の粉末(1−1)を触媒として用いた燃料電池用電極の酸素還元電流密度−電位曲線である。
【図3】図3は、実施例1−1の触媒(1−1)の粉末X線回折スペクトルである。
【図4】図4は、実施例1−1の燃料電池用電極(1−1)の酸素還元電流密度−電位曲線である。
【図5】図5は、実施例1−2の触媒(1−2)の粉末X線回折スペクトルである。
【図6】図6は、実施例1−2の燃料電池用電極(1−2)の酸素還元電流密度−電位曲線である。
【図7】図7は、実施例1−3の触媒(1−3)の粉末X線回折スペクトルである。
【図8】図8は、実施例1−3の燃料電池用電極(1−3)の酸素還元電流密度−電位曲線である。
【図9】図9は、実施例1−4の触媒(1−4)の粉末X線回折スペクトルである。
【図10】図10は、実施例1−4の燃料電池用電極(1−4)の酸素還元電流密度−電位曲線である。
【図11】図11は、実施例1−5の触媒(1−5)の粉末X線回折スペクトルである。
【図12】図12は、実施例1−5の燃料電池用電極(1−5)の酸素還元電流密度−電位曲線である。
【図13】図13は、実施例2−1の触媒(2−1)の粉末X線回折スペクトルである。
【図14】図14は、実施例2−1の燃料電池用電極(2−1)の酸素還元電流密度−電位曲線である。
【図15】図15は、実施例2−2の触媒(2−2)の粉末X線回折スペクトルである。
【図16】図16は、実施例2−2の燃料電池用電極(2−2)の酸素還元電流密度−電位曲線である。
【図17】図17は、実施例2−3の触媒(2−3)の粉末X線回折スペクトルである。
【図18】図18は、実施例2−3の燃料電池用電極(2−3)の酸素還元電流密度−電位曲線である。
【図19】図19は、実施例2−4の触媒(2−4)の粉末X線回折スペクトルである。
【図20】図20は、実施例2−4の燃料電池用電極(2−4)の酸素還元電流密度−電位曲線である。
【図21】図21は、実施例2−5の触媒(2−5)の粉末X線回折スペクトルである。
【図22】図22は、実施例2−5の燃料電池用電極(2−5)の酸素還元電流密度−電位曲線である。
【図23】図23は、実施例2−6の触媒(2−6)の粉末X線回折スペクトルである。
【図24】図24は、実施例2−6の燃料電池用電極(2−6)の酸素還元電流密度−電位曲線である。
【図25】図25は、実施例2−7の触媒(2−7)の粉末X線回折スペクトルである。
【図26】図26は、実施例2−7の燃料電池用電極(2−7)の酸素還元電流密度−電位曲線である。
【図27】図27は、実施例2−8の触媒(2−8)の粉末X線回折スペクトルである。
【図28】図28は、実施例2−8の燃料電池用電極(2−8)の酸素還元電流密度−電位曲線である。
【図29】図29は、実施例2−9の触媒(2−9)の粉末X線回折スペクトルである。
【図30】図30は、実施例2−9の燃料電池用電極(2−9)の酸素還元電流密度−電位曲線である。
【図31】図31は、実施例2−10の触媒(2−10)の粉末X線回折スペクトルである。
【図32】図32は、実施例2−10の燃料電池用電極(2−10)の酸素還元電流密度−電位曲線である。
【図33】図33は、実施例2−11の触媒(2−11)の粉末X線回折スペクトルである。
【図34】図34は、実施例2−11の燃料電池用電極(2−11)の酸素還元電流密度−電位曲線である。
【図35】図35は、実施例2−12の触媒(2−12)の粉末X線回折スペクトルである。
【図36】図36は、実施例2−12の燃料電池用電極(2−12)の酸素還元電流密度−電位曲線である。
【図37】図37は、実施例2−13の触媒(2−13)の粉末X線回折スペクトルである。
【図38】図38は、実施例2−13の燃料電池用電極(2−13)の酸素還元電流密度−電位曲線である。
【図39】図39は、実施例2−14の触媒(2−14)の粉末X線回折スペクトルである。
【図40】図40は、実施例2−14の燃料電池用電極(2−14)の酸素還元電流密度−電位曲線である。
【図41】図41は、実施例2−15の触媒(2−15)の粉末X線回折スペクトルである。
【図42】図42は、実施例2−15の燃料電池用電極(2−15)の酸素還元電流密度−電位曲線である。
【図43】図43は、実施例2−16の触媒(2−16)の粉末X線回折スペクトルである。
【図44】図44は、実施例2−16の燃料電池用電極(2−16)の酸素還元電流密度−電位曲線である。
【図45】図45は、実施例2−17の触媒(2−17)の粉末X線回折スペクトルである。
【図46】図46は、実施例2−17の燃料電池用電極(2−17)の酸素還元電流密度−電位曲線である。
【図47】図47は、実施例3−1の触媒(3−1)の粉末X線回折スペクトルである。
【図48】図48は、実施例3−1の燃料電池用電極(3−1)の酸素還元電流密度−電位曲線である。
【図49】図49は、実施例3−2の触媒(3−2)の粉末X線回折スペクトルである。
【図50】図50は、実施例3−2の燃料電池用電極(3−2)の酸素還元電流密度−電位曲線である。
【図51】図51は、実施例3−3の触媒(3−3)の粉末X線回折スペクトルである。
【図52】図52は、実施例3−3の燃料電池用電極(3−3)の酸素還元電流密度−電位曲線である。
【図53】図53は、実施例3−4の触媒(3−4)の粉末X線回折スペクトルである。
【図54】図54は、実施例3−4の燃料電池用電極(3−4)の酸素還元電流密度−電位曲線である。
【図55】図55は、実施例3−5の触媒(3−5)の粉末X線回折スペクトルである。
【図56】図56は、実施例3−5の燃料電池用電極(3−5)の酸素還元電流密度−電位曲線である。
【図57】図57は、実施例3−6の触媒(3−6)の粉末X線回折スペクトルである。
【図58】図58は、実施例3−6の燃料電池用電極(3−6)の酸素還元電流密度−電位曲線である。
【図59】図59は、実施例3−7の触媒(3−7)の粉末X線回折スペクトルである。
【図60】図60は、実施例3−7の燃料電池用電極(3−7)の酸素還元電流密度−電位曲線である。
【図61】図61は、比較例1の燃料電池用電極(c1)の酸素還元電流密度−電位曲線である。
【図62】図62は、比較例2の燃料電池用電極(c2)の酸素還元電流密度−電位曲線である。
【図63】図63は、比較例3の燃料電池用電極(c3)の酸素還元電流密度−電位曲線である。
【図64】図64は、比較例4の燃料電池用電極(c4)の酸素還元電流密度−電位曲線である。
【図65】図65は、比較例5の燃料電池用電極(c5)の酸素還元電流密度−電位曲線である。
【図66】図66は、比較例6の燃料電池用電極(c6)の酸素還元電流密度−電位曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
[燃料電池用電極触媒の製造方法]
本発明の燃料電池用電極触媒の製造方法は、
少なくとも金属化合物(1)と、窒素含有有機化合物(2)と、溶媒とを混合して溶液(本明細書において「触媒前駆体溶液」とも記す。)を得る工程(1)、
前記触媒前駆体溶液から溶媒を除去する工程(2)、および
工程(2)で得られた固形分残渣を500〜1300℃の温度で熱処理して電極触媒を得る工程(3)
を含み、
前記金属化合物(1)の一部または全部が、亜鉛、ゲルマニウムおよびインジウムから選ばれる金属元素M1を含有する金属化合物(M1)であり、
前記工程(1)で用いられる成分のうち溶媒以外の少なくとも1つの成分が酸素原子を有する(すなわち、後述する化合物(3)を用いる場合には、化合物(1)、化合物(2)および化合物(3)の少なくとも1つが酸素原子を有し、化合物(3)を用いない場合には、化合物(1)および化合物(2)の少なくとも1つが酸素原子を有する)
ことを特徴としている。なお本明細書において、特段の事情がない限り、原子およびイオンを、厳密に区別することなく「原子」と記載する。また、ゲルマニウムを金属元素とみなす。
【0030】
(工程(1))
工程(1)では、少なくとも金属化合物(1)と、窒素含有有機化合物(2)と、溶媒と、任意に後述する化合物(3)を混合して触媒前駆体溶液を得る。
【0031】
前記混合の手順としては、たとえば、
手順(i):1つの容器に溶媒を準備し、そこへ前記金属化合物(1)前記窒素含有有機化合物(2)および任意に前記化合物(3)を添加し、溶解させて、これらを混合する、
手順(ii):前記金属化合物(1)の溶液、ならびに前記窒素含有有機化合物(2)および任意に前記化合物(3)の溶液を準備し、これらを混合する
が挙げられる。
【0032】
各成分に対して溶解性の高い溶媒が異なる場合には、手順(ii)が好ましい。また、前記金属化合物(1)が、たとえば、後述する金属ハロゲン化物の場合には、手順(i)が好ましく、前記金属化合物(1)が、たとえば、後述する金属アルコキシドまたは金属錯体の場合には、手順(ii)が好ましい。
【0033】
前記金属化合物(1)として後述する金属化合物(M1)および金属化合物(M2)を用いる場合の、前記手順(ii)における好ましい手順としては、
手順(ii'):前記金属化合物(M1)の溶液、ならびに前記金属化合物(M2)、前記窒素含有有機化合物(2)および任意に前記化合物(3)の溶液を準備し、これらを混合する
が挙げられる。
【0034】
混合操作は、溶媒への各成分の溶解速度を高めるために、撹拌しながら行うことが好ましい。
複数の溶液を調製してからこれらを混合して触媒前駆体溶液を得る場合には、一方の溶液に対して他方の溶液を、ポンプ等を用いて一定の速度で供給することが好ましい。
【0035】
また、前記窒素含有有機化合物(2)の溶液または前記窒素含有有機化合物(2)および前記化合物(3)の溶液へ、前記金属化合物(1)の溶液を少量ずつ添加する(すなわち、全量を一度に添加しない。)ことも好ましい。後述する金属化合物(M2)(ただし、金属元素M2は鉄またはコバルトである。)を用いる場合であれば、窒素含有有機化合物(2)および金属化合物(M2)の溶液、または前記窒素含有有機化合物(2)、前記化合物(3)および金属化合物(M2)の溶液へ、前記金属化合物(1)(ただし、金属元素はM1および任意にM2(チタン、ジルコニウムまたは銅)である。)の溶液を少量ずつ添加する(すなわち、全量を一度に添加しない。)ことも好ましい。
【0036】
前記触媒前駆体溶液には、沈殿物や分散質が含まれていてもいなくてもよい。
前記触媒前駆体溶液には金属化合物(1)と窒素含有有機化合物(2)との反応生成物が含まれると考えられる。溶媒へのこの反応生成物の溶解度は、金属化合物(1)、窒素含有有機化合物(2)および溶媒等の組み合わせによっても異なる。
【0037】
このため、たとえば金属化合物(1)が金属アルコキシドまたは金属錯体の場合には、前記触媒前駆体溶液は、溶媒の種類、窒素含有有機化合物(2)の種類にもよるが、好ましくは沈殿物や分散質を含まず、含むとしてもこれらは少量(たとえば溶液全量の10質量%以下、好ましくは5質量%以下、より好ましくは1質量%以下。)である。
【0038】
一方、たとえば金属化合物(1)が金属ハロゲン化物の場合には、前記触媒前駆体溶液中には、溶媒の種類、窒素含有有機化合物(2)の種類にもよるが、金属含有化合物(1)と窒素含有有機化合物(2)との反応生成物と考えられる沈殿物が生じやすい。
【0039】
工程(1)では、オートクレーブ等の加圧可能な容器に前記金属化合物(1)、前記窒素含有有機化合物(2)、溶媒、任意に前記化合物(3)を入れ、常圧以上の圧力をかけながら、混合を行ってもよい。
【0040】
前記金属化合物(1)と前記窒素含有有機化合物(2)と溶媒と任意に前記化合物(3)を混合する際の温度は、たとえば、0〜60℃である。前記金属化合物(1)および前記窒素含有有機化合物(2)から錯体が形成されると推測されるところ、この温度が過度に高いと、溶媒が水を含む場合に錯体が加水分解され水酸化物の沈殿を生じ、優れた触媒が得られないと考えられ、この温度が過度に低いと、錯体が形成される前に前記金属化合物(1)が析出してしまい、優れた触媒が得られないと考えられる。
【0041】
<金属化合物(1)>
前記金属化合物(1)の一部または全部は、亜鉛、ゲルマニウムおよびインジウムから選ばれる金属元素M1を含有する金属化合物(M1)である。金属元素M1は、1種単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0042】
前記金属化合物(1)は、好ましくは、酸素原子およびハロゲン原子から選ばれる少なくとも1種を有しており、その具体例としては、金属リン酸塩、金属硫酸塩、金属硝酸塩、金属有機酸塩、金属酸ハロゲン化物(金属ハロゲン化物の中途加水分解物)、金属アルコキシド、金属ハロゲン化物、金属ハロゲン酸塩および金属次亜ハロゲン酸塩、金属錯体が挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0043】
前記金属アルコキシドとしては、前記金属のメトキシド、プロポキシド、イソプロポキシド、エトキシド、ブトキシド、およびイソブトキシドが好ましく、前記金属のイソプロポキシド、エトキシドおよびブトキシドがさらに好ましい。前記金属アルコキシドは、1種のアルコキシ基を有していてもよく、2種以上のアルコキシ基を有していてもよい。
【0044】
酸素原子を有する金属化合物(1)としては、金属アルコキシド、アセチルアセトン錯体、金属酸塩化物、金属硫酸塩および金属硝酸塩が好ましく、コストの面から、金属アルコキシド、アセチルアセトン錯体がより好ましく、前記溶媒への溶解性の観点から、金属アルコキシド、アセチルアセトン錯体がさらに好ましい。
【0045】
前記金属ハロゲン化物としては、金属塩化物、金属臭化物および金属ヨウ化物が好ましく、前記金属酸ハロゲン化物としては、金属酸塩化物、金属酸臭化物、金属酸ヨウ化物が好ましい。
【0046】
金属過ハロゲン酸塩としては金属過塩素酸塩が好ましく、金属次亜ハロゲン酸塩としては金属次亜塩素酸塩が好ましい。
前記金属化合物(M1)の具体例としては、
亜鉛メトキシド、亜鉛エトキシド、亜鉛プロポキシド、亜鉛イソプロポキシド、亜鉛ブトキシド、亜鉛イソブトキシド、亜鉛ペントキシド、亜鉛アセチルアセトナート、ビスジエチルアミノ亜鉛、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオン)亜鉛、亜鉛ヘキサフルオロアセチルアセトナート、ビス-1-メトキシ-2-メチル-2-プロポキシ亜鉛、二塩化亜鉛、オキシ塩化亜鉛、二臭化亜鉛、オキシ臭化亜鉛、二ヨウ化亜鉛、オキシヨウ化亜鉛等の亜鉛化合物;
ゲルマニウム(IV)メトキシド、ゲルマニウム(IV)エトキシド、ゲルマニウム(IV)プロポキシド、ゲルマニウム(IV)イソプロポキシド、ゲルマニウム(IV)ブトキシド、ゲルマニウム(IV)イソブトキシド、ゲルマニウム(IV)ペントキシド、ゲルマニウム(IV)アセチルアセトナート、ゲルマニウム(IV)ジイソプロポキシドジアセチルアセトナート(Ge(acac)2(O-iPr)2、acacはアセチルアセトナトイオンを、iPrはイソプロピル基を表わす。以下も同様である。)、テトラキスジエチルアミノゲルマニウム、テトラキス(2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオン)ゲルマニウム、ゲルマニウム(IV)ヘキサフルオロアセチルアセトナート、テトラキス-1-メトキシ-2-メチル-2-プロポキシゲルマニウム、四塩化ゲルマニウム、オキシ塩化ゲルマニウム、四臭化ゲルマニウム、オキシ臭化ゲルマニウム、四ヨウ化ゲルマニウム、オキシヨウ化ゲルマニウム等のゲルマニウム化合物;
インジウムメトキシド、インジウムエトキシド、インジウムプロポキシド、インジウムイソプロポキシド、インジウムブトキシド、インジウムイソブトキシド、インジウムペントキシド、インジウムアセチルアセトナート、インジウムイソプロポキシドアセチルアセトナート(In(acac)(O-iPr)2、In(acac)2(O-iPr))、トリスジエチルアミノインジウム、トリス(2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオン)インジウム、インジウムヘキサフルオロアセチルアセトナート、トリス-1-メトキシ-2-メチル-2-プロポキシインジウム、三塩化インジウム、オキシ塩化インジウム、三臭化インジウム、オキシ臭化インジウム、三ヨウ化インジウム、オキシヨウ化インジウム等のインジウム化合物;
が挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0047】
これらの化合物の中でも、得られる触媒が均一な粒径の微粒子となり、その活性が高い
ことから、
二塩化亜鉛、オキシ塩化亜鉛、亜鉛エトキシド、亜鉛イソプロポキシド、亜鉛ブトキシド、亜鉛イソブトキシド、亜鉛アセチルアセトナート、
四塩化ゲルマニウム、オキシ塩化ゲルマニウム、ゲルマニウム(IV)メトキシド、ゲルマニウム(IV)エトキシド、ゲルマニウム(IV)イソプロポキシド、ゲルマニウム(IV)ブトキシド、ゲルマニウム(IV)アセチルアセトナート、ゲルマニウム(IV)ジイソプロポキシドジアセチルアセトナート(Ge(acac)2(O-iPr)2)、
三塩化インジウム、オキシ塩化インジウム、インジウムエトキシド、インジウムイソプロポキシド、インジウムブトキシド、インジウムアセチルアセトナート、インジウムイソプロポキシドアセチルアセトナート(In(acac)(O-iPr)2、In(acac)2(O-iPr))
が好ましく、
二塩化亜鉛、亜鉛エトキシド、亜鉛イソプロポキシド、亜鉛ブトキシド、亜鉛イソブトキシド、亜鉛アセチルアセトナート、
四塩化ゲルマニウム、ゲルマニウム(IV)メトキシド、ゲルマニウム(IV)エトキシド、ゲルマニウム(IV)イソプロポキシド、ゲルマニウム(IV)ブトキシド、ゲルマニウム(IV)アセチルアセトナート、
三塩化インジウム、インジウムエトキシド、インジウムイソプロポキシド、インジウムブトキシド、インジウムアセチルアセトナート
がさらに好ましい。
【0048】
また、前記金属化合物(1)として、前記金属化合物(M1)と共に、金属元素として鉄、コバルト、チタン、ジルコニウムおよび銅から選ばれる少なくとも1種の金属元素M2を含む金属化合物(M2)が併用されてもよい。金属化合物(M2)を用いると、得られる触媒の性能が向上する。
【0049】
金属化合物(M2)の具体例としては、
鉄(III)エトキシド、鉄(III)イソプロポキシドアセチルアセトナート(Fe(acac)(O-iPr)2、Fe(acac)2(O-iPr))、鉄(III)アセチルアセトナート、トリス(2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオン)鉄(III)、鉄(III)ヘキサフルオロアセチルアセトナート、塩化鉄(II)、塩化鉄(III)、硫酸鉄(III)、硫化鉄(II)、硫化鉄(III)、フェロシアン化カリウム、フェリシアン化カリウム、フェロシアン化アンモニウム、フェリシアン化アンモニウム、フェロシアン化鉄、ヘキサシアノ鉄(II)酸鉄(III)アンモニウム、硝酸鉄(II)、硝酸鉄(III)、シュウ酸鉄(II)、シュウ酸鉄(III)、リン酸鉄(II)、リン酸鉄(III)フェロセン、水酸化鉄(II)、水酸化鉄(III)、酸化鉄(II)、酸化鉄(III)、四酸化三鉄、酢酸鉄(II)、乳酸鉄(II)、クエン酸鉄(III)等の鉄化合物;
コバルト(III)エトキシド、コバルト(III)イソプロポキシドアセチルアセトナート(Co(acac)(O-iPr)2、Co(acac)2(O-iPr))、コバルト(III)アセチルアセトナート、塩化コバルト(II)、塩化コバルト(III)、硫酸コバルト(II)、硫化コバルト(II)、硝酸コバルト(II)、硝酸コバルト(III)、シュウ酸コバルト(II)、リン酸コバルト(II)、コバルトセン、水酸化コバルト(II)、酸化コバルト(II)、酸化コバルト(III)、四酸化三コバルト、酢酸コバルト(II)、乳酸コバルト(II)等のコバルト化合物;
チタンテトラメトキシド、チタンテトラエトキシド、チタンテトラプロポキシド、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラブトキシド、チタンテトライソブトキシド、チタンテトラペントキシド、チタンテトラアセチルアセトナート、チタンジイソプロポキシドジアセチルアセトナート(Ti(acac)2(O-iPr)2)、チタンオキシジアセチルアセトナート、トリス(アセチルアセトナート)第二チタン塩化物([Ti(acac)3]2[TiCl6])、四塩化チタン、三塩化チタン、オキシ塩化チタン、四臭化チタン、三臭化チタン、オキシ臭化チタン、四ヨウ化チタン、三ヨウ化チタン、オキシヨウ化チタン等のチタン化合物;
ジルコニウムテトラメトキシド、ジルコニウムテトラエトキシド、ジルコニウムテトラプロポキシド、ジルコニウムテトライソプロポキシド、ジルコニウムテトラブトキシド、ジルコニウムテトライソブトキシド、ジルコニウムテトラペントキシド、ジルコニウムテトラアセチルアセトナート、ジルコニウムジイソプロポキシドジアセチルアセトナート(Zr(acac)2(O-iPr)2)、テトラキスジエチルアミノジルコニウム、テトラキス(2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオン)ジルコニウム、ジルコニウム(IV)ヘキサフルオロアセチルアセトナート、テトラ-1-メトキシ-2-メチル-2-プロポキシジルコニウム(IV)、四塩化ジルコニウム、オキシ塩化ジルコニウム、四臭化ジルコニウム、オキシ臭化ジルコニウム、四ヨウ化ジルコニウム、オキシヨウ化ジルコニウム等のジルコニウム化合物;
銅(II)メトキシド、銅(II)エトキシド、銅(II)プロポキシド、銅(II)イソプロポキシド、銅(II)ブトキシド、銅(II)イソブトキシド、銅(II)ペントキシド、銅(II)アセチルアセトナート、ビスジエチルアミノ銅、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオン)銅、銅(II)ヘキサフルオロアセチルアセトナート、ビス-1-メトキシ-2-メチル-2-プロポキシ銅(II)、二塩化銅、オキシ塩化銅、二臭化銅、オキシ臭化銅、二ヨウ化銅、オキシヨウ化銅等の銅化合物;
が挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0050】
これらの化合物の中でも、
鉄(III)エトキシド、鉄(III)イソプロポキシドアセチルアセトナート、鉄(III)アセチルアセトナート、塩化鉄(II)、塩化鉄(III)、フェロシアン化カリウム、フェリシアン化カリウム、フェロシアン化アンモニウム、フェリシアン化アンモニウム、ヘキサシアノ鉄(II)酸鉄(III)アンモニウム、酢酸鉄(II)、乳酸鉄(II)、硝酸鉄(II)、
コバルト(III)エトキシド、コバルト(III)イソプロポキシドアセチルアセトナート、コバルト(III)アセチルアセトナート、塩化コバルト(II)、塩化コバルト(III)、酢酸コバルト(II)、乳酸コバルト(II)、硝酸コバルト(II)、
チタンテトラエトキシド、四塩化チタン、オキシ塩化チタン、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラアセチルアセトナート、チタンジイソプロポキシドジアセチルアセトナート(Ti(acac)2(O-iPr)2)、
ジルコニウムテトラエトキシド、四塩化ジルコニウム、オキシ塩化ジルコニウム、ジルコニウムテトライソプロポキシド、ジルコニウムテトラアセチルアセトナート、ジルコニウムジイソプロポキシドジアセチルアセトナート(Zr(acac)2(O-iPr)2)、
二塩化銅、オキシ塩化銅、銅(II)エトキシド、銅(II)イソプロポキシド、銅(II)ブトキシド、銅(II)アセチルアセトナート
が好ましく、
塩化鉄(II)、塩化鉄(III)、フェロシアン化カリウム、フェリシアン化カリウム、フェロシアン化アンモニウム、フェリシアン化アンモニウム、ヘキサシアノ鉄(II)酸鉄(III)アンモニウム、酢酸鉄(II)、乳酸鉄(II)、五塩化チタン、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラアセチルアセトナート、四塩化ジルコニウム、オキシ塩化ジルコニウム、ジルコニウムテトライソプロポキシド、二塩化銅、オキシ塩化銅、銅(II)エトキシド、銅(II)イソプロポキシド、銅(II)アセチルアセトナート
がさらに好ましい。
【0051】
<窒素含有有機化合物(2)>
前記窒素含有有機化合物(2)としては、前記金属化合物(1)中の金属原子に配位可能な配位子となり得る化合物(好ましくは、単核の錯体を形成し得る化合物)が好ましく、多座配位子(好ましくは、2座配位子または3座配位子)となり得る(キレートを形成し得る)化合物がさらに好ましい。
【0052】
前記窒素含有有機化合物(2)は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
前記窒素含有有機化合物(2)は、好ましくは、アミノ基、ニトリル基、イミド基、イミン基、ニトロ基、アミド基、アジド基、アジリジン基、アゾ基、イソシアネート基、イソチオシアネート基、オキシム基、ジアゾ基、ニトロソ基などの官能基、またはピロール環、ポルフィリン環、ピロリジン環、イミダゾール環、トリアゾール環、ピリジン環、ピペリジン環、ピリミジン環、ピラジン環、プリン環等の環(これらの官能基および環をまとめて「含窒素分子団」ともいう。)を有する。
【0053】
前記窒素含有有機化合物(2)は、含窒素分子団を分子内に有すると、工程(1)での混合を経て、前記金属化合物(1)に由来する金属原子により強く配位することができると考えられる。
【0054】
前記含窒素分子団の中では、アミノ基、イミン基、アミド基、ピロール環、ピリジン環およびピラジン環がより好ましく、アミノ基、イミン基、ピロール環およびピラジン環がさらに好ましく、アミノ基およびピラジン環が、得られる触媒の活性が特に高くなることから、特に好ましい。
【0055】
前記窒素含有有機化合物(2)(ただし、酸素原子を含まない。)の具体例としては、メラミン、エチレンジアミン、トリアゾール、アセトニトリル、アクリロニトリル、エチレンイミン、アニリン、ピロールおよびポリエチレンイミンならびにこれらの塩などが挙げられ、これらの中でも、得られる触媒の活性が高いことからエチレンジアミンおよびエチレンジアミン・二塩酸塩が好ましい。
【0056】
前記窒素含有有機化合物(2)は、好ましくは、さらに水酸基、カルボキシル基、アルデヒド基、酸ハライド基、スルホ基、リン酸基、ケトン基、エーテル基またはエステル基(これらをまとめて「含酸素分子団」ともいう。)を有する。前記窒素含有有機化合物(2)は、含酸素分子団を分子内に有すると、工程(1)での混合を経て、前記金属化合物(1)に由来する金属原子により強く配位できると考えられる。
【0057】
前記含酸素分子団の中では、カルボキシル基およびアルデヒド基が、得られる触媒の活性が特に高くなることから、特に好ましい。
分子中に酸素原子を含む前記窒素含有有機化合物(2)としては、前記含窒素分子団および前記含酸素分子団を有する化合物が好ましい。このような化合物は、工程(1)を経て、前記金属化合物(1)に由来する金属原子に特に強く配位できると考えられる。
【0058】
前記含窒素分子団および前記含酸素分子団を有する化合物としては、アミノ基およびカルボキシル基を有するアミノ酸、ならびにその誘導体が好ましい。
前記アミノ酸としては、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、シスチン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシン、バリン、ノルバリン、グリシルグリシン、トリグリシンおよびテトラグリシンが好ましく、得られる触媒の活性が高いことから、アラニン、グリシン、リシン、メチオニン、チロシンがより好ましく、得られる触媒が極めて高い活性を示すことから、アラニン、グリシンおよびリシンが特に好ましい。
【0059】
分子中に酸素原子を含む前記窒素含有有機化合物(2)の具体例としては、上記アミノ酸等に加えて、アセチルピロールなどのアシルピロール類、ピロールカルボン酸、アセチルイミダゾールなどのアシルイミダゾール類、カルボニルジイミダゾール、イミダゾールカルボン酸、ピラゾール、アセトアニリド、ピラジンカルボン酸、ピペリジンカルボン酸、ピペラジンカルボン酸、モルホリン、ピリミジンカルボン酸、ニコチン酸、2−ピリジンカルボン酸、2,4−ピリジンジカルボン酸、8−キノリノール、およびポリビニルピロリドンが挙げられ、得られる触媒の活性が高いことから、2座配位子となり得る化合物、具体的にはピロール−2−カルボン酸、イミダゾール−4−カルボン酸、2−ピラジンカルボン酸、2,3−ピラジンジカルボン酸、2−ピペリジンカルボン酸、2−ピペラジンカルボン酸、ニコチン酸、2−ピリジンカルボン酸、2,4−ピリジンジカルボン酸、および8−キノリノールが好ましく、2−ピラジンカルボン酸、2,3−ピラジンジカルボン酸および2−ピリジンカルボン酸がより好ましい。
【0060】
工程(1)で用いられる前記金属化合物(1)の金属元素の総原子数Aに対する、工程(1)で用いられる前記窒素含有有機化合物(2)の炭素の総原子数Bの比(B/A)は、工程(3)での熱処理時に二酸化炭素、一酸化炭素等の炭素化合物として脱離する成分を少なくすることが可能であり、すなわち触媒製造時に排気ガスを少量とすることができることから、好ましくは200以下、より好ましくは150以下、さらに好ましくは80以下、特に好ましくは30以下であり、良好な活性の触媒を得るという観点から、好ましくは1以上、より好ましくは2以上、さらに好ましくは3以上、特に好ましくは5以上である。
【0061】
工程(1)で用いられる前記金属化合物(1)の金属元素の総原子数Aに対する、工程(1)で用いられる前記窒素含有有機化合物(2)の窒素の総原子数Cの比(C/A)は、良好な活性の触媒を得るという観点から、好ましくは28以下、より好ましくは17以下、さらに好ましくは12以下、特に好ましくは8.5以下であり、良好な活性の触媒を得るという観点から、好ましくは1以上、より好ましくは2.5以上、さらに好ましくは3以上、特に好ましくは3.5以上である。
【0062】
工程(1)で用いられる前記金属化合物(M1)と前記金属化合物(M2)との割合を、金属元素M1の原子と金属元素M2の原子とのモル比(M1:M2)に換算して、M1:M2=(1−α):αと表わすと、αの範囲は、好ましくは0.01≦α≦0.5、さらに好ましくは0.02≦α≦0.4、特に好ましくは0.05≦α≦0.3である。
【0063】
<フッ素を含有する化合物(3)>
本発明の製造方法においては、工程(1)において、さらにフッ素を含有する化合物(3)(以下「化合物(3)」ともいう。)も混合することによって、さらに高い触媒活性を有する電極触媒が製造することができる。
【0064】
(化学構造中に)フッ素を含有する化合物(3)の具体例としては、フッ素原子を含有するアルコール、フッ素原子を含有するエーテル、フッ素原子を含有するアミン、フッ素原子を含有するカルボン酸、フッ素原子を含有するホウ酸誘導体、フッ素原子を含有するリン酸誘導体およびフッ素原子を含有するスルホン酸誘導体等が挙げられる。
【0065】
前記フッ素原子を含有するアルコールおよびその誘導体としては、たとえば、
炭化水素基の水素原子の全部または一部がフッ素原子で置換された飽和または不飽和の脂肪族アルコール(炭素原子数は、たとえば1〜30である。)、たとえばノナコサデカフルオロテトラデシルアルコール、ノナコサデカフルオロテトラデシルアルコール、ヘプタコサデカフルオロトリデシルアルコール、ペンタコサデカフルオロドデシルアルコール、トリコサデカフルオロウンデカンアルコール、ヘンイコサデカフルオロデシルアルコール、ノナデカフルオロノニルアルコール、ヘプタデカフルオロオクチルアルコール、ペンタデカフルオロヘプチルアルコール、トリデカフルオロヘキシルアルコール、ウンデカフルオロペンチルアルコール、ノナフルオロブチルアルコール、ヘプタフルオロプロピルアルコール、ペンタフルオロエチルアルコール、トリフルオロメチルアルコール、2,2,2−トリフルオロエチルアルコール、6−パーフルオロヘキシルヘキサノール、2,5−ジ(トリフロロメチル)−3,6−ジオキソウンデカフルオロノナノール、パーフルオローメチルエチルヘキサノール、ドデカフルオロヘプタノール、オクタフルオロヘキサンジオールおよびドデカフルオロオクタンジオールなどのフルオロアルキルアルコール
が挙げられる。
【0066】
これらは、1種単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
前記フッ素原子を含有するアルコールまたはその誘導体は、好ましくは、一分子中に3個以上のフッ素原子を有する。
【0067】
前記フッ素原子を含有するエーテルは、式Rf−O−Rf’(RfおよびRf’は、それぞれ独立に、水素原子の全部または一部がフッ素原子で置換された炭化水素基である。)で表される。RfおよびRf’としては、たとえばノナコサデカフルオロテトラデシル基、ヘプタコサデカフルオロトリデシル基、ペンタコサデカフルオロドデシル基、トリコサデカフルオロウンデシル基、ヘンイコサデカフルオロデシル基、ノナデカフルオロノニル基、ヘプタデカフルオロオクチル基、ペンタデカフルオロヘプチル基、トリデカフルオロヘキシル基、ウンデカフルオロペンチル基、ノナフルオロブチル基、ヘプタフルオロプロピル基、ペンタフルオロエチル基、トリフルオロメチル基および2,2,2−トリフルオロエチル基などのフルオロアルキル基が挙げられ、RfおよびRf’はアリール基を有する基(たとえばフェニル基、ピリジル基)であってもよい。
【0068】
前記フッ素原子を含有するエーテルとしては、たとえば、
式[-[(CF2-CF2)-(CH2-CH(OR))n-]で表される構造を有する、テトラフルオロエチレン(CF2=CF2)とビニルエーテル(CH2=CHOR)との交互共重合により得られる交互共重合体(たとえば、ルミフロン(登録商標)(旭硝子(株)))、
フッ素ポリアリールエーテルケトン、フッ素ポリシアノアリールエーテル、3-(2-パーフルオロヘキシルエトキシ)-1,2-ジヒドロキシプロパン、
【0069】
【化1】
で表される化合物、
【0070】
【化2】
で表される化合物、
市販品であれば、ノベックTMHFE(商品名)(ハイドロフルオロエーテル、菱江化学(株))、ノベックTMHFE(商品名)(ハイドロフルオロエーテル、3M社)
が挙げられる。
【0071】
前記フッ素原子を含有するエーテルとして、含フッ素系界面活性剤であるサーフロン(登録商標)S−241、S−242、S−243、S−420(AGCセイミケミカル(株))、フタージェント(登録商標)250((株)ネオス)などを用いてもよい。
【0072】
これらは、1種単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
前記フッ素原子を含有するエーテルまたはその誘導体は、好ましくは、一分子中に3個以上のフッ素原子を有する。
【0073】
前記フッ素原子を含有するアミンおよびその誘導体としては、たとえば、
式Rf−NR1R2(Rfは、水素原子の全部または一部がフッ素原子で置換された飽和または不飽和の脂肪族炭化水素基であり、R1およびR2は、それぞれ独立に、水素原子または、水素原子の全部もしくは一部がフッ素原子で置換されていてもよい炭素原子数1〜10の炭化水素基である。)で表される飽和または不飽和の脂肪族アミン(Rfの炭素原子数は、たとえば1〜30である。)、たとえばノナコサデカフルオロテトラデシルアミン、ヘプタコサデカフルオロトリデシルアミン、ペンタコサデカフルオロドデシルアミン、トリコサデカフルオロウンデシルアミン、ヘンイコサデカフルオロデシルアミン、ノナデカフルオロノニルアミン、ヘプタデカフルオロオクチルアミン、ペンタデカフルオロヘプチルアミン、トリデカフルオロヘキシルアミン、ウンデカフルオロペンチルアミン、ノナフルオロブチルアミン、ヘプタフルオロプロピルアミン、ペンタフルオロエチルアミン、トリフルオロメチルアミンおよび2,2,2−トリフルオロエチルアミンなどのフルオロアルキルアミン;
前記フルオロアルキルアミンの塩(一般式:A+[R4N]-;A+は、たとえばナトリウムイオン、カリウムイオン、アンモニウムイオンを表し、Rはそれぞれ独立に前記フルオロアルキルアミン中のフルオロアルキル基を表す。)(たとえば塩酸塩、硫酸塩、カルボン酸塩、燐酸塩)
が挙げられる。
【0074】
前記フッ素原子を含有するアミンまたはその塩として、含フッ素系界面活性剤であるサーフロン(登録商標)S−221、AGCセイミケミカル(株))、フタージェント(登録商標)300((株)ネオス)などを用いてもよい。
【0075】
これらは、1種単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
前記フッ素原子を含有するアミンまたはその誘導体は、好ましくは、一分子中に3個以上のフッ素原子を有する。
【0076】
前記フッ素原子を含有するカルボン酸およびその誘導体としては、たとえば、
炭化水素基の水素原子の全部または一部がフッ素原子で置換された飽和または不飽和の脂肪族カルボン酸(炭素原子数は、たとえば1〜30である。)、たとえばノナコサデカフルオロテトラデカン酸、ノナコサデカフルオロテトラデカン酸、ヘプタコサデカフルオロトリデカン酸、ペンタコサデカフルオロドデカン酸、トリコサデカフルオロウンデカン酸、ヘンイコサデカフルオロデカン酸、ノナデカフルオロノナン酸、ヘプタデカフルオロオクタン酸、ペンタデカフルオロヘプタン酸、トリデカフルオロヘキサン酸、ウンデカフルオロペンタン酸、ノナフルオロブタン酸、ヘプタフルオロプロパン酸、ペンタフルオロ酢酸、トリフルオロ酸酸、2,2,2−トリフルオロエチルカルボン酸、テトラフルオロクエン酸、ヘキサフルオログルタミン酸およびオクタフルオロアジピン酸などのフルオロアルキルカルボン酸;
アリール基中の水素原子の一部または全部が前記フルオロアルキルカルボン酸中のフルオロアルキル基で置換された芳香族カルボン酸、たとえばトリフルオロメチル安息香酸、トリフルオロメチルサリチル酸、トリフルオロメチルニコチン酸;
前記脂肪族カルボン酸のエステル(たとえば、メチルエステル、エチルエステル、アリールエステル(たとえば、フェニルエステル)、前記フッ素原子を含有するアルコールのエステル)、たとえばヘプタデカフルオロオクタン酸メチル、ヘプタデカフルオロオクタン酸エチル、ヘプタデカフルオロオクタン酸フェニル、ヘプタデカフルオロオクタン酸ヘプタデカフルオロオクチルエステル;
フッ素ポリアリールエーテルポリアリールエーテルエステル;
前記脂肪族カルボン酸の塩(たとえば、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、アルキルアンモニウム(たとえば、メチルアンモニウム、ジメチルアンモニウム、トリメチルアンモニウム、エチルアンモニウム、ジエチルアンモニウム、およびトリエチルアンモニウム)塩、前記フルオロアルキルアミンの塩)、たとえばヘプタデカフルオロオクタン酸アンモニウム、ヘプタデカフルオロオクタン酸ナトリウム、ヘプタデカフルオロオクタン酸トリエチルアンモニウム;
前記脂肪族カルボン酸のアミド(一般式:Rf−CO−NR1R2、Rfは前記脂肪族カルボン酸中のフルオロアルキル基を、R1およびR2はそれぞれ独立に、水素原子の全部または一部がフッ素原子で置換されていてもよい炭素原子数1〜10の炭化水素基(たとえば、メチル基、エチル基、フェニル基)表す。)たとえば、ヘプタデカフルオロオクタン酸アミド、ヘプタデカフルオロオクタン酸ジエチルアミド、ヘプタデカフルオロオクタン酸ヘプタデカフルオロオクチルアミド;
フッ素ポリアリールエーテルアミド;
フッ素ポリアリールエーテルイミド;
前記脂肪族カルボン酸の酸無水物(一般式:(Rf−CO)2O、Rfは前記脂肪族カルボン酸中のフルオロアルキル基を表す。)、たとえばヘプタデカフルオロオクタン酸無水物;
アミノ酸(たとえば、前記フルオロアルキルカルボン酸中のフルオロアルキル基を有するアミノ酸);
前記のカルボン酸またはその誘導体から誘導され得る置換基を有する有機化合物(高分子化合物であってもよい。)
が挙げられる。
【0077】
前記フッ素原子を含有するカルボン酸またはその誘導体として、含フッ素系界面活性剤であるサーフロン(登録商標)S−211、S−212(アミノ酸系) AGCセイミケミカル(株))、フタージェント(登録商標)501、150((株)ネオス)などを用いてもよい。
【0078】
これらは、1種単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
前記フッ素原子を含有するカルボン酸またはその誘導体は、好ましくは、一分子中に3個以上のフッ素原子を有する。
【0079】
前記フッ素原子を含有するホウ酸誘導体としては、たとえば、
テトラフルオロホウ酸塩(たとえば、テトラフルオロホウ酸アンモニウム、テトラフルオロホウ酸メチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸ジメチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸トリメチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸エチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸ジエチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸トリエチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸ブチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸ジブチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸トリブチルアンモニウム)、
テトラフルオロホウ酸四級アンモニウム塩(たとえば、テトラフルオロホウ酸テトラ−n−ブチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸テトラメチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸テトラエチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸テトラプロピルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸テトラブチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸エチルトリメチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸ジエチルジメチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸トリエチルメチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸メチルトリプロピルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸エチルトリプロピルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸トリメチルプロピルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸エチルジメチルプロピルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸ジエチルメチルプロピルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸トリエチルプロピルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸ジメチルジプロピルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸エチルメチルジプロピルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸ジエチルジプロピルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸トリメチルブチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸エチルジメチルブチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸ジエチルメチルブチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸トリエチルブチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸トリプロピルブチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸ジメチルジブチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸エチルメチルジブチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸ジエチルジブチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸へキシルトリメチルアンモニウム(前記プロピルはn−プロピル、i−プロピルを含み、前記ブチルはn−ブチル、i−ブチル、s−ブチル、t−ブチルを含む。))、
テトラフルオロホウ酸四級ピリジニウム塩(たとえば、テトラフルオロホウ酸ピリジニウム、テトラフルオロホウ酸1−メチルピリジニウム、テトラフルオロホウ酸2−ブロモ−1−エチルピリジニウム、テトラフルオロホウ酸1−ブチルピリジニウム)、
テトラフルオロホウ酸四級イミダゾリウム塩(たとえば、テトラフルオロホウ酸1,3−ジメチルイミダゾリウム、テトラフルオロホウ酸1−エチル−3−メチルイミダゾリウム、テトラフルオロホウ酸1,3−ジエチルイミダゾリウム、テトラフルオロホウ酸1,2−ジメチル−3−エチルイミダゾリウム、テトラフルオロホウ酸1,2−ジメチル−3−プロピルイミダゾリウム、テトラフルオロホウ酸1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム)、
アルキル基の水素原子の全部または一部がフッ素原子で置換されたフルオロアルキルホウ酸(たとえば、ノナコサデカフルオロテトラデシルホウ酸、ヘプタコサデカフルオロトリデシルホウ酸、ペンタコサデカフルオロドデシルホウ酸、トリコサデカフルオロウンデシルホウ酸、ヘンイコサデカフルオロデシルホウ酸、ノナデカフルオロノニルホウ酸、ヘプタデカフルオロオクチルホウ酸、ペンタデカフルオロヘプチルホウ酸、トリデカフルオロヘキシルホウ酸、ウンデカフルオロペンチルホウ酸、ノナフルオロブチルホウ酸、ヘプタフルオロプロピルホウ酸、ペンタフルオロエチルホウ酸、トリフルオロメチルホウ酸および2,2,2−トリフルオロエチルホウ酸)
前記フルオロアルキルホウ酸のモノエステルおよびジエステル(たとえば、メチルエステル、エチルエステル)、および
前記フルオロアルキルホウ酸の塩(たとえば、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、メチルアンモニウム塩、ジメチルアンモニウム塩、トリメチルアンモニウム塩、およびトリエチルアンモニウム塩)
が挙げられる。
【0080】
前記フッ素原子を含有するホウ酸誘導体として、好ましくはテトラフルオロホウ酸アンモニウム、テトラフルオロホウ酸メチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸ジメチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸トリメチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸エチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸ジエチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸トリエチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸ブチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸ジブチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸トリブチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸テトラ−n−ブチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸テトラメチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸テトラエチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸テトラプロピルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸テトラブチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸−1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムが挙げられ、より好ましくはテトラフルオロホウ酸アンモニウム、テトラフルオロホウ酸ブチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸テトラエチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸−1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムが挙げられる。
【0081】
前記フッ素原子を含有するリン酸誘導体としては、
ヘキサフルオロリン酸塩(たとえば、ヘキサフルオロリン酸アンモニウム、ヘキサフルオロリン酸メチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸ジメチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸トリメチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸エチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸ジエチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸トリエチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸ブチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸ジブチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸トリブチルアンモニウム)、
ヘキサフルオロリン酸四級アンモニウム塩(たとえば、ヘキサフルオロリン酸テトラ‐n‐ブチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸テトラメチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸テトラエチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸テトラプロピルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸テトラブチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸エチルトリメチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸ジエチルジメチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸トリエチルメチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸メチルトリプロピルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸エチルトリプロピルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸トリメチルプロピルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸エチルジメチルプロピルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸ジエチルメチルプロピルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸トリエチルプロピルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸ジメチルジプロピルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸エチルメチルジプロピルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸ジエチルジプロピルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸トリメチルブチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸エチルジメチルブチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸ジエチルメチルブチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸トリエチルブチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸トリプロピルブチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸ジメチルジブチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸エチルメチルジブチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸ジエチルジブチルアンモニウム、テトラフルオロリン酸へキシルトリメチルアンモニウム(前記プロピルはn−プロピル、i−プロピル、前記ブチルはn−ブチル、i−ブチル、s−ブチル、t−ブチルを含む。)、
ヘキサフルオロリン酸四級ピリジニウム塩(たとえば、ヘキサフルオロリン酸ピリジニウム、ヘキサフルオロリン酸1−メチルピリジニウム、ヘキサフルオロリン酸2−ブロモ−1−エチルピリジニウム)、
テトラフルオロリン酸四級イミダゾリウム塩(たとえば、テトラフルオロリン酸1,3−ジメチルイミダゾリウム、テトラフルオロリン酸1−エチル−3−メチルイミダゾリウム、テトラフルオロリン酸1,3−ジエチルイミダゾリウム、テトラフルオロリン酸1,2−ジメチル−3−エチルイミダゾリウム、テトラフルオロリン酸1,2−ジメチル−3−プロピルイミダゾリウム、テトラフルオロリン酸1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム)、
ヘキサフルオロリン酸、
前記ヘキサフルオロリン酸の塩(たとえば、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、アルキルアンモニウム(たとえば、メチルアンモニウム、ジメチルアンモニウム、トリメチルアンモニウム、エチルアンモニウム、ジエチルアンモニウム、およびトリエチルアンモニウム)塩)、
一般式:(RO)nP=Oで表わされるフルオロアルキルリン酸エステル(式中、nは1〜3であり、Rはアルキル基の水素原子の全部または一部がフッ素原子で置換されたフルオロアルキル基(たとえば、ノナコサデカフルオロテトラデシル基、ノナコサデカフルオロテトラデシル基、ヘプタコサデカフルオロトリデシル基、ペンタコサデカフルオロドデシル基、トリコサデカフルオロウンデシル基、ヘンイコサデカフルオロデシル基、ノナデカフルオロノニル基、ヘプタデカフルオロオクチル基、ペンタデカフルオロヘプチル基、トリデカフルオロヘキシル基、ウンデカフルオロペンチル基、ノナフルオロブチル基、ヘプタフルオロプロピル基、ペンタフルオロエチル基、トリフルオロメチル基および2,2,2−トリフルオロエチル基)である。)、
一般式:(RN)3P=O、(RN)2P=O(OH)、または(RN)P=O(OH)2(式中、Rは前記フルオロアルキル基を表す。)で表されるフルオロアルキルリン酸アミド、
一般式(RO)3P、(RO)2(OH)P、または(RO)(OH)2P(式中、前記フルオロアルキル基を表す。)で表わされるフルオロアルキル亜リン酸、
一般式(RN)3P、(RN)2P(OH)、(RN)P(OH)2(式中、Rは前記フルオロアルキル基を表す。)で表わされるフルオロアルキル亜リン酸アミド、
一般式:RPO(OH)2(式中、Rは前記フルオロアルキル基を表す。)で表わされるフルオロアルキルホスホン酸
が挙げられる。
【0082】
前記フッ素原子を含有するリン酸誘導体として、好ましくはヘキサフルオロリン酸アンモニウム、ヘキサフルオロリン酸メチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸ジメチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸トリメチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸エチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸ジエチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸トリエチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸ブチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸ジブチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸トリブチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸テトラ‐n‐ブチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸テトラメチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸テトラエチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸テトラプロピルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸テトラブチルアンモニウムが挙げられ、より好ましくはヘキサフルオロリン酸アンモニウム、ヘキサフルオロリン酸テトラエチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸−1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムが挙げられる。
【0083】
前記フッ素原子を含有するスルホン酸誘導体としては、
テトラフルオロエチレンとパーフルオロ[2−(フルオロスルホニルエトキシ)プロピルビニルエーテル]との共重合体(たとえば、ナフィオン(NAFION(登録商標)、下式で表わされる構造を有する共重合体))、
【0084】
【化3】
アルキル基の水素原子の全部または一部がフッ素原子で置換されたフルオロアルキルスルホン酸(炭素原子数は、たとえば1〜30である。)(たとえば、ノナコサデカフルオロテトラデカンスルホン酸、ノナコサデカフルオロテトラデカンスルホン酸、ヘプタコサデカフルオロトリデカンスルホン酸、ペンタコサデカフルオロドデカンスルホン酸、トリコサデカフルオロウンデカンスルホン酸、ヘンイコサデカフルオロデカンスルホン酸、ノナデカフルオロノナンスルホン酸、ヘプタデカフルオロオクタンスルホン酸、ペンタデカフルオロヘプタンスルホン酸、トリデカフルオロヘキサンスルホン酸、ウンデカフルオロペンタンスルホン酸、ノナフルオロブタンスルホン酸、ヘプタフルオロプロパンスルホン酸、ペンタフルオロエタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸および2,2,2−トリフルオロエタンスルホン酸)、
前記フルオロアルキルスルホン酸のエステル(たとえば、メチルエステル、エチルエステル、アリールエステル(例えば、フェニルエステル))、
前記フルオロアルキルスルホン酸の塩(一般式:A[RSO3]、Rは前記フルオロアルキル基を表す。)(ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、アルキルアンモニウム(たとえば、メチルアンモニウム、ジメチルアンモニウム、トリメチルアンモニウム、エチルアンモニウム、ジエチルアンモニウム、およびトリエチルアンモニウム)塩)、
前記フルオロアルキルスルホン酸のアミド(一般式:R−SO2−NR1R2、Rは前記フルオロアルキル基を、R1およびR2はそれぞれ独立に、水素原子の全部または一部がフッ素原子で置換されていてもよい炭素原子数1〜10の炭化水素基(たとえば、メチル基、エチル基、フェニル基)表す。)、
前記フルオロアルキルスルホン酸の酸無水物(一般式:(R−SO2)2O、Rは前記フルオロアルキル基を表す。)
前記フルオロアルキルスルホン酸のハロゲン化物(一般式:(R−SO2)X、Rは前記フルオロアルキル基を表す。Xはフッ素、塩素、臭素、ヨウ素を表す。)
が挙げられる。
【0085】
前記フッ素原子を含有するスルホン酸誘導体としては、好ましくは、テトラフルオロエチレンとパーフルオロ[2−(フルオロスルホニルエトキシ)プロピルビニルエーテル]との共重合体(たとえば、ナフィオン(NAFION(登録商標))、ヘプタデカフルオロオクタンスルホン酸、ペンタデカフルオロヘプタンスルホン酸、トリデカフルオロヘキサンスルホン酸、ウンデカフルオロペンタンスルホン酸、ノナフルオロブタンスルホン酸、ヘプタフルオロプロパンスルホン酸、ペンタフルオロエタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ヘプタデカフルオロオクタンスルホン酸アンモニウム、ペンタデカフルオロヘプタンスルホン酸アンモニウム、トリデカフルオロヘキサンスルホン酸アンモニウム、ウンデカフルオロペンタンスルホン酸アンモニウム、ノナフルオロブタンスルホン酸アンモニウム、ヘプタフルオロプロパンスルホン酸アンモニウム、ペンタフルオロエタンスルホン酸アンモニウム、トリフルオロメタンスルホン酸アンモニウム、トリフルオロメタンスルホン酸トリメチルアンモニウム、トリフルオロメタンスルホン酸トリエチルアンモニウム、トリフルオロメタンスルホン酸トリブチルアンモニウム、トリフルオロメタンスルホン酸テトラメチルアンモニウム、トリフルオロメタンスルホン酸テトラエチルアンモニウム、トリフルオロメタンスルホン酸テトラブチルアンモニウム、トリフルオロメタンスルホン酸メチル、トリフルオロメタンスルホン酸エチル、ノナフルオロ−1−ブタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸第一鉄、トリフルオロメタンスルホン酸無水物が挙げられ、
より好ましくは、トリフルオロメタンスルホン酸、ヘプタデカフルオロオクタンスルホン酸、ノナフルオロ−1−ブタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸テトラブチルアンモニウム、ヘプタデカフルオロオクタンスルホン酸アンモニウム、トリフルオロメタンスルホン酸第一鉄が挙げられる。
【0086】
また、界面活性能がある骨格つまり、疎水性部位と親水性部位が存在することで、反応系内の安定化をはかるものが好ましい。
前記化合物(3)を用いる場合には、工程(1)で用いられる化合物(3)に含まれるフッ素の量(総原子数)は、前記金属化合物(1)中の金属原子1モルに対して、通常0.01〜5モル、好ましくは0.02〜4モル、さらに好ましくは0.03〜3モルである。
【0087】
また、前記化合物(3)が前記元素Aを含む場合には、工程(1)で用いられる前記化合物(3)に含まれる元素Aの量(総原子数)は、工程(1)で用いられる前記金属化合物(1)中の金属原子1モルに対して、通常0.01〜3モル、好ましくは0.01〜2モル、さらに好ましくは0.01〜1モルである。
【0088】
元素Aがホウ素のみの場合には、その量は、上記基準で通常0.01〜3モル、好ましくは0.01〜2モル、さらに好ましくは0.01〜1モルであり、元素Aがリンのみの場合には、その量は、上記基準で通常0.01〜3モル、好ましくは0.01〜2モル、さらに好ましくは0.01〜1モルであり、元素Aが硫黄のみの場合には、その量は、上記基準で通常0.01〜3モル、好ましくは0.01〜2モル、さらに好ましくは0.01〜1モルである。
【0089】
上記の化合物(3)の量は、前記工程(1)で用いられる化合物(3)以外の原料が元素Aもフッ素も含まない場合の量であり、化合物(3)以外の原料が元素Aまたはフッ素を含む場合には、工程(1)における化合物(3)の使用量を適宜減らすことが好ましい。
【0090】
<溶媒>
前記溶媒としては、たとえば水、アルコール類および酸類が挙げられる。アルコール類としては、エタノール、メタノール、ブタノール、プロパノールおよびエトキシエタノールが好ましく、エタノールおよびメタノールがさらに好ましい。酸類としては、酢酸、硝酸(水溶液)、塩酸、リン酸水溶液およびクエン酸水溶液が好ましく、酢酸および硝酸がさらに好ましい。これらは、1種単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0091】
前記金属化合物(1)が金属ハロゲン化物の場合の溶媒としてはメタノールが好ましい。
前記溶媒は、触媒前駆体溶液100質量%中にたとえば50〜95質量%となるような量で用いてもよい。
【0092】
<沈殿抑制剤>
前記金属化合物(1)が、ハロゲン原子を含む場合には、これらの化合物は一般的に水によって容易に加水分解され、水酸化物や、酸塩化物等の沈殿を生じやすい。よって、前記金属化合物(1)がハロゲン原子を含む場合には、強酸を1質量%以上添加することが好ましい。たとえば酸が塩酸であれば、溶液中の塩化水素の濃度が5質量%以上、より好ましくは10質量%以上となるように酸を添加すると、前記金属化合物(1)に由来する水酸化物、酸塩化物等の沈殿の発生を抑制しつつ、澄明な触媒前駆体溶液を得ることができる。
【0093】
また、前記金属化合物(1)がハロゲン原子を含む場合には、前記溶媒としてアルコール類を単独で用い、かつ酸を添加することなく、触媒前駆体溶液を得てもよい。
前記金属化合物(1)が金属錯体であって、かつ前記溶媒として水を単独でまたは水と他の化合物とを用いる場合にも、水酸化物または酸塩化物の沈殿の発生を抑制するための沈殿抑制剤を用いることが好ましい。この場合の沈殿抑制剤としては、ジケトン構造を有する化合物が好ましく、ジアセチル、アセチルアセトン、2,5−ヘキサンジオンおよびジメドンがより好ましく、アセチルアセトンおよび2,5−ヘキサンジオンがさらに好ましい。
【0094】
これらの沈殿抑制剤は、金属化合物溶液(金属化合物(1)を含有し、前記窒素含有有機化合物(2)および前記化合物(3)を含有しない溶液)100質量%中に好ましくは1〜70質量%、より好ましくは、2〜50質量%、さらに好ましくは15〜40質量%となる量で添加される。
【0095】
これらの沈殿抑制剤は、触媒前駆体溶液100質量%中に好ましくは0.1〜40質量%、より好ましくは、0.5〜20質量%、さらに好ましくは2〜10質量%となる量で添加される。
【0096】
前記沈殿抑制剤は、工程(1)の中でのいずれの段階で添加されてもよい。
工程(1)では、好ましくは、前記金属化合物(1)および前記沈殿抑制剤を含む溶液を調製して、次いでこの溶液と前記窒素含有有機化合物(2)および任意に前記化合物(3)とを混合して触媒前駆体溶液を得る。このように工程(1)を実施すると、前記沈殿の発生をより確実に抑制することができる。
【0097】
(工程(2))
工程(2)では、工程(1)で得られた前記触媒前駆体溶液から溶媒を除去する。
溶媒の除去は大気下で行ってもよく、不活性ガス(例えば、窒素、アルゴン、ヘリウム)雰囲気下で行ってもよい。不活性ガスとしては、コストの観点から、窒素およびアルゴンが好ましく、窒素がより好ましい。
【0098】
溶媒除去の際の温度は、溶媒の蒸気圧が大きい場合には常温であってもよいが、触媒の量産性の観点からは、下限温度が、好ましくは30℃以上、より好ましくは40℃以上、さらに好ましくは50℃以上であり、かつ、工程(1)で得られる溶液中に含まれる、キレート等の金属錯体であると推定される触媒前駆体を分解させないという観点からは、上限温度が、好ましくは350℃以下、より好ましくは300℃以下、さらに好ましくは150℃以下、特に好ましくは110℃以下である。
【0099】
溶媒の除去は、溶媒の蒸気圧が大きい場合には大気圧下で行ってもよいが、より短時間で溶媒を除去するため、減圧(たとえば、0.1Pa〜0.1MPa)下で行ってもよい。減圧下での溶媒の除去には、たとえばエバポレーターを用いることができる。
【0100】
溶媒の除去は、工程(1)で得られた混合物を静置した状態で行ってもよいが、より均一な固形分残渣を得るためには、混合物を回転させながら溶媒を除去することが好ましい。
【0101】
前記混合物を収容している容器の質量が大きい場合は、撹拌棒、撹拌羽根、撹拌子などを用いて、溶液を回転させることが好ましい。
また、前記混合物を収容している容器の真空度を調節しながら溶媒の除去を行う場合には、密閉できる容器で乾燥を行うこととなるため、容器ごと回転させながら溶媒の除去を行うこと、たとえばロータリーエバポレーターを使用して溶媒の除去を行うことが好ましい。
【0102】
溶媒の除去の方法、あるいは前記金属化合物(1)、前記窒素含有有機化合物(2)または前記化合物(3)の性状によっては、工程(2)で得られた固形分残渣の組成または凝集状態が不均一であることがある。このような場合に、固形分残渣を、混合し、解砕して、より均一、微細な粉末としたものを工程(3)で用いると、粒径がより均一な触媒を得ることができる。
【0103】
固形分残渣を混合し、解砕するには、たとえば、ロール転動ミル、ボールミル、小径ボールミル(ビーズミル)、媒体撹拌ミル、気流粉砕機、乳鉢、自動混練乳鉢、槽解機、ジェトミルを用いることができ、固形分残渣が少量であれば、好ましくは、乳鉢、自動混練乳鉢、またはバッチ式のボールミルが用いられ、固形分残渣が多量であり連続的な混合、解砕処理を行う場合には、好ましくはジェットミルが用いられる。
【0104】
(工程(3))
工程(3)では、工程(2)で得られた固形分残渣を熱処理して電極触媒を得る。
この熱処理の際の温度は、500〜1300℃であり、好ましくは600〜1050℃であり、より好ましくは700〜950℃である。
【0105】
熱処理の温度が上記範囲よりも高すぎると、得られた電極触媒の粒子相互間においての焼結、粒成長がおこり、結果として電極触媒の比表面積が小さくなってしまうため、この粒子を塗布法により触媒層に加工する際の加工性が劣ってしまう。一方、熱処理の温度が上記範囲よりも低過ぎると、高い活性を有する電極触媒を得ることができない。
この工程(3)では、熱処理によって前記金属元素M1原子の少なくとも一部が除去される。このため、電極触媒において、前記金属元素M1原子または前記金属元素M1原子およびその周囲の原子が脱離した箇所に孔が形成され、電極触媒の比表面積が増大する、と考えられる。
【0106】
工程(3)において、前記金属元素M1原子は、工程(2)で得られた固形分残渣の中の金属元素M1の質量を基準(100質量%)として、好ましくは50質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは99質量%以上が除去される。
【0107】
金属元素M1の除去量は、前記熱処理の温度を高くする、前記熱処理の時間を長くする等により、増大させることができる。
前記熱処理の方法としては、たとえば、静置法、攪拌法、落下法、粉末捕捉法が挙げられる。
【0108】
静置法とは、静置式の電気炉などに工程(2)で得られた固形分残渣を置き、これを加熱する方法である。加熱の際に、量り取った前記固形分残渣は、アルミナボード、石英ボードなどのセラミックス容器に入れてもよい。静置法は、大量の前記固形分残渣を加熱することができる点で好ましい。
【0109】
攪拌法とは、ロータリーキルンなどの電気炉中に前記固形分残渣を入れ、これを攪拌しながら加熱する方法である。攪拌法の場合は、大量の前記固形分残渣を加熱することができ、かつ、得られる電極触媒の粒子の凝集および成長を抑制することができる点で好ましい。さらに、撹拌法は、加熱炉に傾斜をつけることによって、連続的に電極触媒を製造することが可能である点で好ましい。
【0110】
落下法とは、誘導炉中に雰囲気ガスを流しながら、炉を所定の加熱温度まで加熱し、該温度で熱的平衡を保った後、炉の加熱区域である坩堝中に前記固形分残渣を落下させ、これを加熱する方法である。落下法は、得られる電極触媒の粒子の凝集および成長を最小限度に抑制できる点で好ましい。
【0111】
粉末捕捉法とは、微量の酸素ガスを含む不活性ガス雰囲気中で、前記固形分残渣を飛沫にして浮遊させ、これを所定の加熱温度に保たれた垂直の管状炉中に捕捉して、加熱する方法である。
【0112】
前記静置法で熱処理を行う場合には、昇温速度は、特に限定されないが、好ましくは1℃/分〜100℃/分程度であり、さらに好ましくは5℃/分〜50℃/分である。また、加熱時間は、好ましくは0.1〜10時間、より好ましくは0.5時間〜5時間、さらに好ましくは0.5〜3時間である。静置法において加熱を赤外線ゴールドイメージ炉などの赤外線炉や管状炉で行なう場合、前記固形分残渣の加熱時間は、0.1〜10時間、好ましくは0.5時間〜5時間である。前記加熱時間が前記範囲内であると、均一な電極触媒粒子が形成される傾向がある。
【0113】
前記攪拌法の場合、前記固形分残渣の加熱時間は、通常10分〜5時間であり、好ましくは30分〜2時間である。本法において、炉に傾斜をつけるなどして連続的に加熱を行う場合は、定常的な炉内のサンプル流量から計算された平均滞留時間を前記加熱時間とする。
【0114】
前記落下法の場合、前記固形分残渣の加熱時間は、通常0.5〜10分であり、好ましくは0.5〜3分である。前記加熱時間が前記範囲内であると、均一な電極触媒粒子が形成される傾向がある。
【0115】
前記粉末捕捉法の場合、前記固形分残渣の加熱時間は、0.2秒〜1分、好ましくは0.2〜10秒である。前記加熱時間が前記範囲内であると、均一な電極触媒粒子が形成される傾向にある。
【0116】
前記静置法で熱処理を行う場合には、熱源としてLNG(液化天然ガス)、LPG(液化石油ガス)、軽油、重油、電気などを用いた加熱炉を熱処理装置として用いてもよい。この場合、本発明においては前記固形分残渣を熱処理する際の雰囲気が重要であるので、燃料の炎が炉内に存在する、炉の内部から加熱する装置ではなく、炉の外部からの加熱する装置が好ましい。
【0117】
前記固形分残渣の量が1バッチあたり50kg以上となるような加熱炉を用いる場合には、コストの観点から、LNG,LPGを熱源とする加熱炉が好ましい。
触媒活性の特に高い電極触媒を得たい場合には、厳密な温度制御が可能な、電気を熱源とした電気炉を用いることが望ましい。
【0118】
炉の形状としては、赤外線ゴールドイメージ炉などの赤外線炉、管状炉、上蓋型炉、トンネル炉、箱型炉、試料台昇降式炉(エレベーター型)、台車炉などが挙げられ、この中でも雰囲気を特に厳密にコントロールすることが可能な、管状炉、上蓋型炉、箱型炉および試料台昇降式炉が好ましく、管状炉および箱型炉が好ましい。
【0119】
前記撹拌法を採用する場合も、上記の熱源を用いることができるが、撹拌法の中でもとくにロータリーキルンに傾斜をつけて、前記固形分残渣を連続的に熱処理する場合には、設備の規模が大きくなり、エネルギー使用量が大きくなりやすいので、LPG等燃料由来の熱源を利用することが好ましい。
【0120】
前記熱処理を行う際の雰囲気としては、得られる電極触媒の活性を高める観点から、その主成分が不活性ガスである雰囲気が好ましい。不活性ガスの中でも、比較的安価であり、入手しやすい点で窒素、アルゴン、ヘリウムが好ましく、窒素およびアルゴンがさらに好ましい。これらの不活性ガスは、1種単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。なお、これらのガスは一般的な通念上不活性といわれるガスであるが、工程(3)の前記熱処理の際にこれらの不活性ガスすなわち、窒素、アルゴン、ヘリウム等が、前記固形分残渣と反応している可能性はある。
【0121】
また、前記熱処理の雰囲気中に反応性ガスが存在すると、得られる電極触媒がより高い触媒性能を発現することがある。たとえば、前記熱処理を、窒素ガス、アルゴンガスもしくは窒素ガスとアルゴンガスとの混合ガス、または窒素ガスおよびアルゴンガスから選ばれる一種以上のガスと、水素ガス、アンモニアガスおよび酸素ガスから選ばれる一種以上のガスとの混合ガスの雰囲気で行うと、高い触媒性能を有する電極触媒が得られる傾向にある。
【0122】
前記熱処理の雰囲気中に水素ガスが含まれる場合には、水素ガスの濃度は、たとえば100体積%以下、好ましくは0.01〜10体積%、より好ましくは1〜5体積%である。
【0123】
前記熱処理の雰囲気中に酸素ガスが含まれる場合には、酸素ガスの濃度は、たとえば0.01〜10体積%、好ましくは0.01〜5体積%である。
前記熱処理の際の圧力は特に制限されず、製造の安定性とコストなどを考慮して大気圧下で熱処理を行ってもよい。
【0124】
前記熱処理の後には、熱処理物を解砕してもよい。解砕を行うと、得られた電極触媒を用いて電極を製造する際の加工性、および得られる電極の特性を改善できることがある。この解砕には、たとえば、ロール転動ミル、ボールミル、小径ボールミル(ビーズミル)、媒体撹拌ミル、気流粉砕機、乳鉢、自動混練乳鉢、槽解機またはジェトミルを用いることができる。電極触媒が少量の場合には、乳鉢、自動混練乳鉢、バッチ式のボールミルが好ましく、熱処理物を連続的に多量に処理する場合には、ジェットミル、連続式のボールミルが好ましく、連続式のボールミルの中でもビーズミルがさらに好ましい。
【0125】
[熱処理物]
本発明の熱処理物は、
少なくとも金属化合物(1)と、窒素含有有機化合物(2)と、溶媒と、任意にホウ素、リンおよび硫黄からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素Aならびにフッ素を含有する化合物(3)とを混合して触媒前駆体溶液を得る工程(1)、
前記触媒前駆体溶液から溶媒を除去する工程(2)、および
工程(2)で得られた固形分残渣を500〜1300℃の温度で熱処理する工程(3)
を経て得られ、
前記金属化合物(1)の一部または全部が、金属元素として亜鉛、ゲルマニウムおよびインジウムからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属元素M1を含有する金属化合物(M1)であり、
前記工程(1)で用いられる成分のうち溶媒以外の少なくとも1つの成分が酸素原子を有する(すなわち、前記化合物(3)を用いる場合には、化合物(1)、化合物(2)および化合物(3)の少なくとも1つが酸素原子を有し、化合物(3)を用いない場合には、化合物(1)および化合物(2)の少なくとも1つが酸素原子を有する)
ことを特徴としている。
【0126】
工程(1)〜(3)および化合物(1)〜(3)の詳細は、上述のとおりである。
本発明の熱処理物は、後述する燃料電池用電極触媒として有用である。
[燃料電池用電極触媒]
本発明の燃料電池用電極触媒(以下、単に「触媒」ともいう)は、上述した本発明の燃料電池用電極触媒の製造方法により製造されることを特徴としている。また、本発明の触媒は、上述した本発明の熱処理物からなっていてもよい。
【0127】
本発明の燃料電池用触媒に含まれる亜鉛、ゲルマニウムおよびインジウムから選ばれる金属元素M1の量は、たとえば0.1〜40質量%、好ましくは0.2〜30質量%である。
【0128】
また本発明の燃料電池用触媒は、鉄、コバルト、チタン、ジルコニウムおよび銅から選ばれる金属元素M2を好ましくは1〜90質量%、より好ましくは3〜60質量%含んでいる。
本発明の燃料電池用電極触媒の製造方法によれば、比表面積の大きな燃料電池用電極触媒が製造され、本発明の触媒のBET法で算出される比表面積は、好ましくは230m2/g以上、より好ましくは230〜1000m2/g、さらに好ましくは300〜1000m2/g、特に好ましくは400〜1000m2/g、最も好ましくは500〜1000m2/gである。この比表面積は、たとえば、工程(3)において金属元素M1を多く除去するほど、大きくすることができる。
【0129】
前記触媒(A)の、下記測定法(A)に従って測定される酸素還元開始電位は、可逆水素電極を基準として好ましくは0.75V(vs.RHE)以上、より好ましくは0.80V(vs.RHE)以上、さらに好ましくは0.85V(vs.RHE)以上であり、上限値はたとえば1.23V(vs.RHE)であってもよい。
【0130】
〔測定法(A):
電子伝導性物質であるカーボンに分散させた触媒が1質量%となるように、該触媒及びカーボンを溶剤中に入れ、超音波で攪拌し懸濁液を得る。なお、カーボンとしては、カーボンブラック(比表面積:100〜300m2/g)(例えばキャボット社製 VULCAN(登録商標) XC72)を用い、触媒とカーボンとが質量比で95:5になるように分散させる。また、溶剤としては、イソプロピルアルコール:水(質量比)=2:1を用いる。
【0131】
前記懸濁液を、超音波をかけながら30μLを採取し、すばやくグラッシーカーボン電極(直径:6mm)上に滴下し、120℃で5分間乾燥させる。乾燥することにより触媒を含む燃料電池用触媒層が、グラッシーカーボン電極上に形成される。この滴下及び乾燥操作を、カーボン電極表面に1.0mg以上の燃料電池触媒層が形成されるまで行う。
【0132】
次いで5%ナフィオン(NAFION(登録商標))溶液(DE−521、デュポン社)をイソプロピルアルコールで10倍に希釈したものを、さらに前記燃料電池用触媒層上に10μL滴下する。これを、120℃で1時間乾燥する。
【0133】
このようにして、得られた電極を用いて、酸素雰囲気及び窒素雰囲気で、0.5mol/Lの硫酸水溶液中、30℃の温度で、同濃度の硫酸水溶液中での可逆水素電極を参照電極とし、5mV/秒の電位走査速度で分極することにより電流−電位曲線を測定した際の、酸素雰囲気での還元電流と窒素雰囲気での還元電流とに0.2μA/cm2以上の差が現れ始める電位を酸素還元開始電位とする。〕
本発明において、酸素還元電流密度は、以下のとおり求めることができる。
【0134】
まず、上記測定法(A)の結果から、特定の電位(たとえば0.80V(vsRHE))における、酸素雰囲気での還元電流と窒素雰囲気での還元電流との差を算出する。算出した値を、さらに電極面積で除した値を酸素還元電流密度(mA/cm2)とする。
【0135】
[用途]
本発明の触媒は、白金触媒の代替触媒として使用することができる。
本発明の燃料電池用触媒層は、前記触媒を含むことを特徴としている。
【0136】
燃料電池用触媒層には、アノード触媒層、カソード触媒層があるが、前記触媒はいずれにも用いることができる。前記触媒は、耐久性に優れ、酸素還元能が大きいので、カソード触媒層に用いることが好ましい。
【0137】
本発明の燃料電池用触媒層は、好ましくは、電子伝導性粉末をさらに含む。前記触媒を含む燃料電池用触媒層がさらに電子伝導性粉末を含む場合には、還元電流をより高めることができる。電子伝導性粉末は、前記触媒に、電気化学的反応を誘起させるための電気的接点を生じさせるため、還元電流を高めると考えられる。
【0138】
前記電子伝導性粒子は通常、触媒の担体として用いられる。
前記触媒はある程度の導電性を有するが、触媒により多くの電子を与える、あるいは、反応基質が触媒から多くの電子を受け取るために、触媒に、導電性を付与するための担体粒子を混合してもよい。これらの担体粒子は、工程(1)〜工程(3)を経て製造された触媒に混合されてもよく、工程(1)〜工程(3)のいずれかの段階で混合されてもよい。
【0139】
電子伝導性粒子の材質としては、炭素、導電性高分子、導電性セラミックス、金属または酸化タングステンもしくは酸化イリジウムなどの導電性無機酸化物が挙げられ、それらを1種単独または組み合わせて用いることができる。特に、炭素からなる電子伝導性粒子は比表面積が大きいため、また、安価に小粒径のものを入手しやすく、耐薬品性、耐高電位性に優れるため、炭素単独または炭素とその他の電子伝導性粒子との混合物が好ましい。すなわち燃料電池用触媒層としては、前記触媒と炭素とを含むことが好ましい。
【0140】
炭素としては、カーボンブラック、グラファイト、活性炭、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、カーボンナノホーン、フラーレン、多孔体カーボン、グラフェンなどが挙げられる。炭素からなる電子伝導性粒子の粒径は、小さすぎると電子伝導パスが形成されにくくなり、また大きすぎると燃料電池用触媒層のガス拡散性の低下や触媒の利用率の低下が起こる傾向があるため、好ましくは10〜1000nmであり、より好ましくは10〜100nmである。
【0141】
電子伝導性粒子が炭素からなる場合、前記触媒と電子伝導性粒子との質量比(触媒:電子伝導性粒子)は、好ましくは4:1〜1000:1である。
前記導電性高分子としては特に限定は無いが、例えばポリアセチレン、ポリ−p−フェニレン、ポリアニリン、ポリアルキルアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリインドール、ポリ−1,5−ジアミノアントラキノン、ポリアミノジフェニル、ポリ(o−フェニレンジアミン)、ポリ(キノリニウム)塩、ポリピリジン、ポリキノキサリン、ポリフェニルキノキサリン等が挙げられる。これらの中でも、ポリピロール、ポリアニリン、ポリチオフェンが好ましく、ポリピロールがより好ましい。
【0142】
本発明の燃料電池用触媒層は、好ましくは、高分子電解質をさらに含む。前記高分子電解質としては、燃料電池用触媒層において一般的に用いられているものであれば特に限定されない。具体的には、スルホン酸基を有するパーフルオロカーボン重合体(例えば、ナフィオン(NAFION(登録商標)))、スルホン酸基を有する炭化水素系高分子化合物、リン酸などの無機酸をドープさせた高分子化合物、一部がプロトン伝導性の官能基で置換された有機/無機ハイブリッドポリマー、高分子マトリックスにリン酸溶液や硫酸溶液を含浸させたプロトン伝導体などが挙げられる。これらの中でも、ナフィオン(NAFION(登録商標))が好ましい。前記燃料電池用触媒層を形成する際のナフィオン(NAFION(登録商標))の供給源としては、5%ナフィオン(NAFION(登録商標))溶液(DE−521、デュポン社)などが挙げられる。
【0143】
本発明の燃料電池用触媒層は、アノード触媒層またはカソード触媒層のいずれにも用いることができる。本発明の燃料電池用触媒層は、高い酸素還元能を有し、酸性電解質中において高電位であっても腐蝕しがたい触媒を含むため、燃料電池のカソードに設けられる触媒層(カソード用触媒層)として有用である。特に固体高分子型燃料電池が備える膜電極接合体のカソードに設けられる触媒層に好適に用いられる。
【0144】
前記触媒を、担体である前記電子伝導性粒子上に分散させる方法としては、気流分散、液中分散等の方法が挙げられる。液中分散は、溶媒中に触媒および電子伝導性粒子を分散したものを、燃料電池用触媒層形成工程に使用できるため好ましい。液中分散としては、オリフィス収縮流による方法、回転せん断流による方法または超音波による方法等があげられる。液中分散の際、使用される溶媒は、触媒や電子伝導性粒子を浸食することがなく、分散できるものであれば特に制限はないが、揮発性の液体有機溶媒または水等が一般に使用される。
【0145】
また、前記触媒を、前記電子伝導性粒子上に分散させる際、さらに上記電解質と分散剤とを同時に分散させてもよい。
燃料電池用触媒層の形成方法としては、特に制限はないが、たとえば、前記触媒と電子伝導性粒子と電解質とを含む懸濁液を、後述する電解質膜またはガス拡散層に塗布する方法が挙げられる。前記塗布する方法としては、ディッピング法、スクリーン印刷法、ロールコーティング法、スプレー法などが挙げられる。また、前記触媒と電子伝導性粒子と電解質とを含む懸濁液を、塗布法またはろ過法により基材に燃料電池用触媒層を形成した後、転写法で電解質膜に燃料電池用触媒層を形成する方法が挙げられる。
【0146】
本発明の電極は、前記燃料電池用触媒層と多孔質支持層とを有することを特徴としている。
本発明の電極はカソードまたはアノードのいずれの電極にも用いることができる。本発明の電極は、耐久性に優れ、触媒能が大きいので、カソードに用いるとより産業上の優位性が高い。
【0147】
多孔質支持層とは、ガスを拡散する層(以下「ガス拡散層」とも記す。)である。ガス拡散層としては、電子伝導性を有し、ガスの拡散性が高く、耐食性の高いものであれば何であっても構わないが、一般的にはカーボンペーパー、カーボンクロスなどの炭素系多孔質材料や、軽量化のためにステンレス、耐食材を被服したアルミニウム箔が用いられる。
【0148】
本発明の膜電極接合体は、カソードとアノードと前記カソードおよび前記アノードの間に配置された電解質膜とを有する膜電極接合体であって、前記カソードおよび/または前記アノードが、前記電極であることを特徴としている。
【0149】
前記膜電極接合体における触媒能は、たとえば、以下のように算出される最大出力密度により評価することができる。
まず、前記膜電極接合体11を、シール材(ガスケット12)、ガス流路付きセパレーター13、および集電板14を挟んでボルトで固定し、所定の面圧(4N)になるように締め付けて、固体高分子型燃料電池の単セルを作成する。
【0150】
アノード側に燃料として水素を流量1リットル/分で供給し、カソード側に酸化剤として酸素を流量2リットル/分で供給し、両側ともに300kPaの背圧をかけながら、前記単セル温度90℃における電流―電圧特性を測定する。得られる電流―電圧特性の曲線から最大出力密度を算出する。最大出力密度が大きいほど、前記膜電極接合体における触媒能が高いことを示す。当該最大出力密度は、好ましくは400mW/cm2以上であり、より好ましくは600mW/cm2以上であり、その上限は、たとえば1000mW/cm2程度である。
【0151】
電解質膜としては、例えば、パーフルオロスルホン酸系を用いた電解質膜または炭化水素系電解質膜などが一般的に用いられるが、高分子微多孔膜に液体電解質を含浸させた膜または多孔質体に高分子電解質を充填させた膜などを用いてもよい。
【0152】
また本発明の燃料電池は、前記膜電極接合体を備えることを特徴としている。
燃料電池の電極反応はいわゆる3相界面(電解質‐電極触媒‐反応ガス)で起こる。燃料電池は、使用される電解質などの違いにより数種類に分類され、溶融炭酸塩型(MCFC)、リン酸型(PAFC)、固体酸化物型(SOFC)、固体高分子型(PEFC)等がある。中でも、本発明の膜電極接合体は、固体高分子型燃料電池に使用することが好ましい。
【0153】
本発明の触媒を用いた燃料電池は性能が高く、また、白金を触媒として用いた場合と比較してきわめて安価であるという特徴を持つ。本発明の燃料電池は、発電機能、発光機能、発熱機能、音響発生機能、運動機能、表示機能および充電機能からなる群より選ばれる少なくとも一つの機能を有し燃料電池を備える物品の性能、特に携帯可能な物品の性能を向上させることができる。前記燃料電池は、好ましくは物品の表面または内部に備えられる。
【0154】
<本発明の燃料電池を備えた物品の具体例>
本発明の燃料電池を備えることができる前記物品の具体例としては、ビル、家屋、テント等の建築物、蛍光灯、LED等、有機EL、街灯、屋内照明、信号機等の照明器具、機械、車両そのものを含む自動車用機器、家電製品、農業機器、電子機器、携帯電話等を含む携帯情報端末、美容機材、可搬式工具、風呂用品トイレ用品等の衛生機材、家具、玩具、装飾品、掲示板、クーラーボックス、屋外発電機などのアウトドア用品、教材、造花、オブジェ、心臓ペースメーカー用電源、ペルチェ素子を備えた加熱および冷却器用の電源が挙げられる。
【実施例】
【0155】
以下に、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
実施例および比較例における各種測定は、下記の方法により行なった。
【0156】
[分析方法]
1.粉末X線回折測定
理学電機株式会社製 ロータフレックスを用いて、試料の粉末X線回折を行った。
【0157】
測定条件の詳細は以下のとおりである。
X線出力(Cu−Kα):50kV、180mA
走査軸:θ/2θ
測定範囲(2θ):10.00°〜89.98°
測定モード:FT
読込幅:0.02°
サンプリング時間:0.70秒
DS、SS、RS:0.5°、0.5°、0.15mm
ゴニオメーター半径:185mm
各試料の粉末X線回折における回折線ピークの本数は、信号(S)とノイズ(N)の比(S/N)が2以上で検出できるシグナルを1つのピークとしてみなして数えた。
【0158】
なお、ノイズ(N)は、ベースラインの幅とした。
2.元素分析
<炭素、硫黄>
試料約0.01gを量り取り、炭素硫黄分析装置(堀場製作所製EMIA−920V)にて測定を行った。
【0159】
<窒素、酸素>
試料約0.01gを量り取り、Niカプセルに試料を封入して、酸素窒素分析装置(LECO製TC600)にて測定を行った。
【0160】
<金属>
試料約0.1gを石英ビーカーに量り取り、硫酸,硝酸およびフッ酸を用いて試料を完全に加熱分解した。冷却後、この溶液を100mlに定容し、さらに適宜希釈し、ICP−OES(SII社製VISTA−PRO)またはICP−MS(Agilent社製HP7500)を用いて定量を行った。
【0161】
<フッ素>
試料数mgを、酸素気流下、水蒸気を通気しながら燃焼分解した。発生したガスを10mM Na2CO3(過酸化水素を含む。補正用標準Br‐:5ppm)に吸収させ、イオンクロマトグラフィーでフッ素の量を測定した。
【0162】
燃焼分解条件:
試料燃焼装置:AQF−100((株)三菱化学アナリテック社製)
燃焼管温度:950℃(試料ボード移動による昇温分解)
イオンクロマトグラフィー測定条件
測定装置:DIONEX DX−500
溶離液:1.8mM Na2CO3+1.7mM NaHCO3
カラム(温度):ShodexSI−90(室温)
流速:1.0ml/分
注入量:25μl
検出器:電気伝導度検出器
サプレッサー:DIONEX ASRS−300
3.BET比表面積測定
島津製作所株式会社製 マイクロメリティクス ジェミニ2360を用いてBET比表面積を測定した。前処理時間、前処理温度は、それぞれ30分、200℃に設定した。
【0163】
4.酸素還元能の評価
(1)燃料電池用電極の製造
実施例および比較例で得られた各触媒について、触媒95mgとカーボン(キャボット社製 VULCAN(登録商標) XC72)5mgとを、イソプロピルアルコール:純水=2:1の質量比で混合した溶液10gに入れ、超音波で撹拌、懸濁して混合した。この混合物30μlをグラッシーカーボン電極(東海カーボン社製、直径:6mm)に塗布し、120℃で5分間乾燥して、カーボン電極表面に1.0mg以上の燃料電池用触媒層が形成した。さらに、燃料電池用触媒層の上に5%ナフィオン(NAFION(登録商標))溶液(DE−521、デュポン社)を10倍にイソプロピルアルコールで希釈したもの10μlを塗布し、120℃で1時間乾燥し、燃料電池用電極を得た。
【0164】
(2)酸素還元能の評価
作製した燃料電池用電極を、酸素雰囲気および窒素雰囲気で、0.5mol/Lの硫酸水溶液中、30℃、5mV/秒の電位走査速度で分極し、それぞれ電流−電位曲線を測定した。その際、同濃度の硫酸水溶液中での可逆水素電極を参照電極とした。
【0165】
上記測定結果から、酸素雰囲気での還元電流と窒素雰囲気での還元電流とに0.2μA/cm2以上差が現れ始める電位を酸素還元開始電位とした。また、0.75Vおよび0.80V(vsRHE)における、酸素雰囲気での還元電流と窒素雰囲気での還元電流との差を算出した。算出した値をさらに電極面積で除した値を、酸素還元電流密度(mA/cm2)とした。
【0166】
酸素還元開始電位および酸素還元電流密度により、作製した燃料電池用電極の触媒能を評価した。
すなわち、酸素還元開始電位が高いほど、酸素還元電流密度が大きいほど、燃料電池用電極における触媒の触媒能が高いことを示す。
【0167】
[実施例1−1]
ビーカーに、メタノール50mlを入れ、これを撹拌しながら二塩化亜鉛5.58g(40.9mmol)、5%ナフィオン(NAFION(登録商標))溶液(DE−521、デュポン社)25.0ml、酢酸鉄(II)710mg(4.09mmol)を順次加えた。得られた溶液にピラジンカルボン酸20.3g(164mmol)を少量ずつ加えた後、3時間の攪拌を行い、触媒前駆体溶液(1−1)を得た。
【0168】
ロータリーエバポレーターを用い、窒素雰囲気の減圧下で、ホットスターラーの温度を約100℃に設定し、前記触媒前駆体溶液(1−1)を撹拌しながら、溶媒をゆっくり蒸発させ固形分残渣を得た。得られた固形分残渣を、さらに窒素気流下300℃で1時間加熱乾燥し、室温まで放冷後、自動乳鉢で30分間すり潰して、11.0gの固形分残渣の粉末(1−1)を得た。
【0169】
この固形分残渣の粉末(1−1)の評価結果を、表1、図1(固形分残渣の粉末(1−1)の粉末X線回折スペクトル)および図2(固形分残渣の粉末(1−1)を触媒として用いた燃料電池用電極(1−1)の酸素還元能の測定結果)に示す。
【0170】
3.600gの前記固形分残渣の粉末(1−1)を、ロータリーキルン炉で、水素ガスを4体積%含む窒素ガス(すなわち、水素ガス:窒素ガス=4体積%:96体積%の混合ガス)を20ml/分の速度で流しながら、昇温速度10℃/分で焼成温度(950℃)まで加熱し、この温度で0.5時間焼成し、自然冷却することにより、粉末状の触媒(1−1)709mgを得た。
【0171】
触媒(1−1)の評価結果を、表1、図3(触媒(1−1)の粉末X線回折スペクトル)および図4(触媒(1−1)を用いた燃料電池用電極(1−1)の酸素還元能の測定結果)に示す。
【0172】
[実施例1−2]
実施例1−1における固形分残渣の粉末(1−1)の製造方法と同じ方法により固形分残渣の粉末(1−2)を製造した。固形分残渣の粉末(1−1)を1.800gの前記固形分残渣の粉末(1−2)に変更し、焼成温度を800℃に変更した以外は実施例1−1と同様の操作を行い、粉末状の触媒(1−2)441mgを得た。
【0173】
触媒(1−2)の評価結果を、表1、図5(触媒(1−2)の粉末X線回折スペクトル)および図6(触媒(1−2)を用いた燃料電池用電極(1−2)の酸素還元能の測定結果)に示す。
【0174】
[実施例1−3]
実施例1−1における固形分残渣の粉末(1−1)の製造方法と同じ方法により固形分残渣の粉末(1−3)を製造した。固形分残渣の粉末(1−1)を1.800gの前記固形分残渣の粉末(1−3)に変更し、焼成温度を700℃に変更した以外は実施例1−1と同様の操作を行い、粉末状の触媒(1−3)608mgを得た。
【0175】
触媒(1−3)の評価結果を、表1、図7(触媒(1−3)の粉末X線回折スペクトル)および図8(触媒(1−3)を用いた燃料電池用電極(1−3)の酸素還元能の測定結果)に示す。
【0176】
[実施例1−4]
実施例1−1における固形分残渣の粉末(1−4)の製造方法と同じ方法により固形分残渣の粉末(1−4)を製造した。3.600gの前記固形分残渣の粉末(1−4)を、ロータリーキルン炉で、窒素ガスを20ml/分の速度で流しながら、昇温速度10℃/分で焼成温度(890℃)まで加熱し、この温度で0.5時間焼成し、自然冷却することにより、粉末状の触媒(1−4)703mgを得た。
【0177】
触媒(1−4)の評価結果を、表1、図9(触媒(1−4)の粉末X線回折スペクトル)および図10(触媒(1−4)を用いた燃料電池用電極(1−4)の酸素還元能の測定結果)に示す。
【0178】
[実施例1−5]
実施例1−1における固形分残渣の粉末(1−5)の製造方法と同じ方法により固形分残渣の粉末(1−5)を製造した。6.000gの前記固形分残渣の粉末(1−5)を、イメージ炉(ULVAC−RIKO社製)で、窒素ガスを125ml/分の速度で流しながら、昇温速度10℃/分で焼成温度(1050℃)まで加熱し、この温度で0.5時間焼成し、自然冷却することにより、粉末状の触媒(1−5)1204mgを得た。
【0179】
触媒(1−5)の評価結果を、表1、図11(触媒(1−5)の粉末X線回折スペクトル)および図12(触媒(1−5)を用いた燃料電池用電極(1−5)の酸素還元能の測定結果)に示す。
【0180】
[実施例2−1]
ビーカーに、酢酸160mlを入れ、これを攪拌しながら亜鉛アセチルアセトナート4.64g(17.6mmol)を加え、亜鉛溶液(2−1)を調製した。
【0181】
ビーカーに、水70ml、エタノール60ml、および酢酸70mlを入れ、ここにピラジンカルボン酸8.74g(70.4mmol)を加えて、超音波洗浄器を用いた超音波の照射により完全に溶解させた。得られた溶液に、これを攪拌しながら、酢酸鉄(II)290mg(1.67mmol)を少量ずつ加えて10分程かけて完全に溶解させた。次に温度を室温に保ちながら、かつ攪拌しながら、上記の亜鉛溶液(2−1)を10分間かけて滴下し、滴下後さらに30分間攪拌を行い、触媒前駆体溶液(2−1)を得た。
【0182】
ロータリーエバポレーターを用い、窒素雰囲気の減圧下で、ホットスターラーの温度を約100℃に設定し、前記触媒前駆体溶液(2−1)を撹拌しながら、溶媒をゆっくり蒸発させた。完全に溶媒を蒸発させて得られた固形分残渣を自動乳鉢で30分間すり潰して、11.2gの固形分残渣の粉末(2−1)を得た。
【0183】
1.200gの前記固形分残渣の粉末(2−1)を、ロータリーキルン炉で、水素ガスを4体積%含む窒素ガス(すなわち、水素ガス:窒素ガス=4体積%:96体積%の混合ガス)を20ml/分の速度で流しながら、昇温速度10℃/分で焼成温度(850℃)まで加熱し、この温度で0.5時間焼成し、自然冷却することにより、粉末状の触媒(2−1)160mgを得た。
【0184】
触媒(2−1)の評価結果を、表2、図13(触媒(2−1)の粉末X線回折スペクトル)および図14(触媒(2−1)を用いた燃料電池用電極(2−1)の酸素還元能の測定結果)に示す。
【0185】
[実施例2−2]
ビーカーに、酢酸160mlを入れ、これを攪拌しながら亜鉛アセチルアセトナート4.64g(17.6mmol)を加え、亜鉛溶液(2−2)を調製した。
【0186】
ビーカーに、水70ml、エタノール60ml、および酢酸70mlを入れ、ここにピラジンカルボン酸8.74g(70.4mmol)を加えて、超音波洗浄器を用いた超音波の照射により完全に溶解させた。得られた溶液に、これを攪拌しながら、5%ナフィオン(NAFION(登録商標))溶液(DE−521、デュポン社)10.0mlを加え、さらに酢酸鉄(II)580mg(3.34mmol)を少量ずつ加えて10分程かけて完全に溶解させた。次に温度を室温に保ちながら、かつ攪拌しながら、上記の亜鉛溶液(2−2)を10分間かけて滴下し、滴下後さらに30分間攪拌を行い、触媒前駆体溶液(2−2)を得た。
【0187】
触媒前駆体溶液(2−1)を触媒前駆体溶液(2−2)に変更したこと以外は実施例2−1と同様の操作を行い、粉末状の触媒(2−2)161mgを得た。なお、この過程で得られた固形分残渣の粉末(2−2)の質量は11.8gであった。
【0188】
触媒(2−2)の評価結果を、表2、図15(触媒(2−2)の粉末X線回折スペクトル)および図16(触媒(2−2)を用いた燃料電池用電極(2−2)の酸素還元能の測定結果)に示す。
【0189】
[実施例2−3]
ビーカーに、メタノール100mlを入れ、これを撹拌しながら二塩化亜鉛5.58g(40.9mmol)、酢酸鉄(II)710mg(4.09mmol)を順次加えた。得られた溶液にピラジンカルボン酸20.3g(164mmol)を少量ずつ加えた後、3時間の攪拌を行い触媒前駆体溶液(2−3)を得た。
【0190】
ロータリーエバポレーターを用い、窒素雰囲気の減圧下で、ホットスターラーの温度を約100℃に設定し、前記触媒前駆体溶液(2−3)を撹拌しながら、溶媒をゆっくり蒸発させた。得られた粉末を、窒素気流下300℃で1時間加熱乾燥し、室温まで放冷後、自動乳鉢で30分間すり潰して、10.1gの固形分残渣の粉末(2−3)を得た。
【0191】
固形分残渣の粉末(2−1)を固形分残渣の粉末(2−3)(1.200g)に変更したこと以外は実施例2−1と同様の操作を行い、粉末状の触媒(2−3)274mgを得た。なお、この過程で得られた固形分残渣の粉末の質量は10.1gであった。
【0192】
触媒(2−3)の評価結果を、表2、図17(触媒(2−3)の粉末X線回折スペクトル)および図18(触媒(2−3)を用いた燃料電池用電極(2−3)の酸素還元能の測定結果)に示す。
【0193】
[実施例2−4]
ビーカーに、メタノール50mlを入れ、これを撹拌しながら二塩化亜鉛5.58g(20.4mmol)、5%ナフィオン(NAFION(登録商標))溶液(DE−521、デュポン社)25.0ml、酢酸鉄(II)710mg(4.09mmol)を順次加えた。得られた溶液にピラジンカルボン酸20.3g(164mmol)を少量ずつ加えた後、3時間の攪拌を行い触媒前駆体溶液(2−4)を得た。
【0194】
触媒前駆体溶液(2−3)を触媒前駆体溶液(2−4)に変更したこと以外は実施例2−3と同様の操作を行い、粉末状の触媒(2−4)299mgを得た。なお、この過程で得られた固形分残渣の粉末の質量は11.2gであった。
【0195】
触媒(2−4)の評価結果を、表2、図19(触媒(2−4)の粉末X線回折スペクトル)および図20(触媒(2−4)を用いた燃料電池用電極(2−4)の酸素還元能の測定結果)に示す。
【0196】
[実施例2−5]
ビーカーに、酢酸160mlを入れ、これを攪拌しながら亜鉛アセチルアセトナート4.64g(17.6mmol)を加え、亜鉛溶液(2−5)を調製した。
【0197】
ナスフラスコに、水60ml、エタノール50ml、および酢酸60mlを入れ、ここにピラジンカルボン酸8.74g(70.4mmol)を加えて、超音波洗浄器を用いた超音波の照射により完全に溶解させた。得られた溶液に、これを攪拌しながら、5%ナフィオン(NAFION(登録商標))溶液(DE−521、デュポン社)10.0mlを加え、さらに酢酸鉄(II)290mg(1.67mmol)を少量ずつ加えて10分程かけて完全に溶解させた。次に温度を室温に保ちながら、かつ攪拌しながら、上記の亜鉛溶液(2−5)を10分間かけて滴下し、滴下後さらに30分間攪拌を行い、触媒前駆体溶液(2−5)を得た。
【0198】
ロータリーエバポレーターを用い、窒素雰囲気の減圧下で、ホットスターラーの温度を約100℃に設定し、前記触媒前駆体溶液(2−5)を撹拌しながら、溶媒をゆっくり蒸発させた。完全に溶媒を蒸発させて得られた固形分残渣を自動乳鉢で30分間すり潰して、10.0gの固形分残渣の粉末(2−5)を得た。
【0199】
1.800gの前記固形分残渣の粉末(2−5)を、ロータリーキルン炉で、水素ガスを4体積%含む窒素ガス(すなわち、水素ガス:窒素ガス=4体積%:96体積%の混合ガス)を20ml/分の速度で流しながら、昇温速度10℃/分で焼成温度(950℃)まで加熱し、この温度で1.5時間焼成し、自然冷却することにより、粉末状の触媒(2−5)204mgを得た。
【0200】
触媒(2−5)の評価結果を、表2、図21(触媒(2−5)の粉末X線回折スペクトル)および図22(触媒(2−5)を用いた燃料電池用電極(2−5)の酸素還元能の測定結果)に示す。
【0201】
[実施例2−6]
ビーカーに、酢酸160mlを入れ、これを攪拌しながら亜鉛アセチルアセトナート4.64g(17.6mmol)を加え、亜鉛溶液(2−6)を調製した。
【0202】
ビーカーに、水70ml、エタノール60ml、および酢酸70mlを入れ、ここにピラジンカルボン酸8.74g(70.4mmol)を加えて、超音波洗浄器を用いた超音波の照射により完全に溶解させた。得られた溶液に、これを攪拌しながら、5%ナフィオン(NAFION(登録商標))溶液(DE−521、デュポン社)10.0mlを少量ずつ加えて10分程かけて完全に溶解させた。次に温度を室温に保ちながら、かつ攪拌しながら、上記の亜鉛溶液(2−6)を10分間かけて滴下し、滴下後さらに30分間攪拌を行い、触媒前駆体溶液(2−6)を得た。
【0203】
触媒前駆体溶液(2−5)を触媒前駆体溶液(2−6)に変更したこと以外は実施例2−5と同様の操作を行い、粉末状の触媒(2−6)344mgを得た。なお、この過程で得られた固形分残渣の粉末(2−6)の質量は10.6gであった。
【0204】
触媒(2−6)の評価結果を、表2、図23(触媒(2−6)の粉末X線回折スペクトル)および図24(触媒(2−6)を用いた燃料電池用電極(2−6)の酸素還元能の測定結果)に示す。
【0205】
[実施例2−7]
ビーカーに、メタノール50mlを入れ、これを撹拌しながら四塩化ゲルマニウム4.40g(20.5mmol)、5%ナフィオン(NAFION(登録商標))溶液(DE−521、デュポン社)10.0ml、酢酸鉄(II)355mg(2.04mmol)を順次加えた。得られた溶液にピラジンカルボン酸10.15g(81.8mmol)を少量ずつ加えた後、3時間の攪拌を行い触媒前駆体溶液(2−7)を得た。
【0206】
触媒前駆体溶液(2−3)を触媒前駆体溶液(2−7)に変更したこと以外は実施例2−3と同様の操作を行い、粉末状の触媒(2−7)259mgを得た。なお、この過程で得られた固形分残渣の粉末(2−7)の質量は2.12gであった。
【0207】
触媒(2−7)の評価結果を、表2、図25(触媒(2−7)の粉末X線回折スペクトル)および図26(触媒(2−7)を用いた燃料電池用電極(2−7)の酸素還元能の測定結果)に示す。
【0208】
[実施例2−8]
ナフィオン(NAFION(登録商標))を用いなかったこと以外は実施例2−7と同様の操作を行い、粉末状の触媒(2−8)424mgを得た。なお、この過程で得られた固形分残渣の粉末(2−8)の質量は1.05gであった。
【0209】
触媒(2−8)の評価結果を、表2、図27(触媒(2−8)の粉末X線回折スペクトル)および図28(触媒(2−8)を用いた燃料電池用電極(2−8)の酸素還元能の測定結果)に示す。
【0210】
[実施例2−9]
ビーカーに、メタノール100mlを入れ、これを撹拌しながら四塩化ゲルマニウム8.77g(40.9mmol)、5%ナフィオン(NAFION(登録商標))溶液(DE−521、デュポン社)25.0ml、酢酸鉄(II)710mg(4.09mmol)を順次加えた。得られた溶液にピラジンカルボン酸20.3g(164mmol)を少量ずつ加えた後、3時間の攪拌を行い触媒前駆体溶液(2−9)を得た。なお、3時間の攪拌の際、時間の経過と共に沈殿物が生じた。
【0211】
ロータリーエバポレーターを用い、窒素雰囲気の減圧下で、ホットスターラーの温度を約100℃に設定し、前記触媒前駆体溶液(2−9)を撹拌しながら、溶媒をゆっくり蒸発させた。得られた粉末を、窒素気流下300℃で1時間加熱乾燥し、室温まで放冷後、自動乳鉢で30分間すり潰して、5.35gの固形分残渣の粉末(2−9)を得た。
【0212】
固形分残渣の粉末(2−5)を1.800gの固形分残渣の粉末(2−9)に変更したこと以外は実施例2−5と同様の操作を行い、粉末状の触媒(2−9)327mgを得た。
【0213】
触媒(2−9)の評価結果を、表2、図29(触媒(2−9)の粉末X線回折スペクトル)および図30(触媒(2−9)を用いた燃料電池用電極(2−9)の酸素還元能の測定結果)に示す。
【0214】
[実施例2−10]
ビーカーに、メタノール50mlを入れ、これを撹拌しながら三塩化インジウム4.53g(20.5mmol)、5%ナフィオン(NAFION(登録商標))溶液(DE−521、デュポン社)10.0ml、酢酸鉄(II)355mg(2.04mmol)を順次加えた。得られた溶液にピラジンカルボン酸10.15g(81.8mmol)を少量ずつ加えた後、3時間の攪拌を行い触媒前駆体溶液(2−10)を得た。
【0215】
触媒前駆体溶液(2−3)を触媒前駆体溶液(2−10)に変更したこと以外は実施例2−3と同様の操作を行い、粉末状の触媒(2−10)303mgを得た。なお、この過程で得られた固形分残渣の粉末(2−10)の質量は7.78gであった。
【0216】
触媒(2−10)の評価結果を、表2、図31(触媒(2−10)の粉末X線回折スペクトル)および図32(触媒(2−10)を用いた燃料電池用電極(2−10)の酸素還元能の測定結果)に示す。
【0217】
[実施例2−11]
ナフィオン(NAFION(登録商標))を用いなかったこと以外は実施例2−10と同様の操作を行い、粉末状の触媒(2−11)259mgを得た。なお、この過程で得られた固形分残渣の粉末(2−11)の質量は7.59gであった。
【0218】
触媒(2−11)の評価結果を、表2、図33(触媒(2−11)の粉末X線回折スペクトル)および図34(触媒(2−11)を用いた燃料電池用電極(2−11)の酸素還元能の測定結果)に示す。
【0219】
[実施例2−12]
実施例2−10における固形分残渣の粉末(2−10)の製造方法と同じ方法により固形分残渣の粉末(2−12)を製造した。
【0220】
固形分残渣の粉末(2−5)を1.800gの固形分残渣の粉末(2−12)に変更したこと以外は実施例2−5と同様の操作を行い、粉末状の触媒(2−12)403mgを得た。
【0221】
触媒(2−12)の評価結果を、表2、図35(触媒(2−12)の粉末X線回折スペクトル)および図36(触媒(2−12)を用いた燃料電池用電極(2−12)の酸素還元能の測定結果)に示す。
【0222】
[実施例2−13]
ビーカーに、メタノール100mlを入れ、これを撹拌しながら二塩化亜鉛2.79g(20.45mmol)、四塩化ゲルマニウム4.39g(20.45mmol)、5%ナフィオン(NAFION(登録商標))溶液(DE−521、デュポン社)25.0ml、酢酸鉄(II)710mg(4.09mmol)を順次加えた。得られた溶液にピラジンカルボン酸20.3g(164mmol)を少量ずつ加えた後、3時間の攪拌を行い触媒前駆体溶液(2−13)を得た。なお、3時間の攪拌の際、時間の経過と共に沈殿物が生じた。
【0223】
触媒前駆体溶液(2−3)を触媒前駆体溶液(2−13)に変更したこと以外は実施例2−3と同様の操作を行い、粉末状の触媒(2−13)335mgを得た。なお、この過程で得られた固形分残渣の粉末(2−13)の質量は8.38gであった。
【0224】
触媒(2−13)の評価結果を、表2、図37(触媒(2−13)の粉末X線回折スペクトル)および図38(触媒(2−13)を用いた燃料電池用電極(2−13)の酸素還元能の測定結果)に示す。
【0225】
[実施例2−14]
ビーカーに、酢酸172mlを入れ、これを攪拌しながら亜鉛アセチルアセトナート4.64g(17.6mmol)を加え、亜鉛溶液(2−14)を調製した。
【0226】
ビーカーに、水70ml、エタノール60ml、および酢酸70mlを入れ、ここにピラジンカルボン酸8.74g(70.4mmol)および5%ナフィオン(NAFION(登録商標))溶液(DE−521、デュポン社)10.0mlを加えて、超音波洗浄器を用いた超音波の照射により完全に溶解させた。得られた溶液に、これを攪拌しながら、酢酸鉄(II)290mg(1.67mmol)を少量ずつ加えて10分程かけて溶解させた。次に温度を室温に保ちながら、かつ攪拌しながら、上記の亜鉛溶液(2−14)を10分間かけて滴下し、溶液Aを得た。
【0227】
ビーカーに、メタノール55mlを入れ、これを攪拌しながら、三塩化インジウム3.88g(17.6mmol)、5%ナフィオン(NAFION(登録商標))溶液(DE−521、デュポン社)10.75ml、酢酸鉄(II)305mg(1.76mmol)を加えた。得られた溶液に、これを攪拌しながら、ピラジンカルボン酸6.55g(52.3mmol)を少量ずつ加え、溶液Bを得た。
【0228】
溶液Aに溶液Bを滴下した後、3時間の攪拌を行い、触媒前駆体溶液(2−14)を得た。なお、3時間の攪拌の際、時間の経過と共に沈殿物が生じた。
触媒前駆体溶液(2−1)を触媒前駆体溶液(2−14)に変更したこと以外は実施例2−1と同様の操作を行い、粉末状の触媒(2−14)191mgを得た。なお、この過程で得られた固形分残渣の粉末(2−14)の質量は11.0gであった。
【0229】
触媒(2−14)の評価結果を、表2、図39(触媒(2−14)の粉末X線回折スペクトル)および図40(触媒(2−14)を用いた燃料電池用電極(2−14)の酸素還元能の測定結果)に示す。
【0230】
[実施例2−15]
ビーカーに、メタノール100mlを入れ、これを撹拌しながら二塩化亜鉛5.58g(40.9mmol)、5%ナフィオン(NAFION(登録商標))溶液(DE−521、デュポン社)25.0ml、酢酸鉄(II)710mg(4.09mmol)を順次加えた。得られた溶液にグリシン9.13g(122mmol)を少量ずつ加えた後、3時間の攪拌を行い触媒前駆体溶液(2−15)を得た。なお、3時間の攪拌の際、時間の経過と共に沈殿物が生じた。
【0231】
ロータリーエバポレーターを用い、窒素雰囲気の減圧下で、ホットスターラーの温度を約100℃に設定し、前記触媒前駆体溶液(2−15)を撹拌しながら、溶媒をゆっくり蒸発させた。得られた粉末を、窒素気流下300℃で1時間加熱し、室温まで放冷後、自動乳鉢で30分間すり潰して、11.2gの固形分残渣の粉末(2−15)を得た。
【0232】
固形分残渣の粉末(2−15)を固形分残渣の粉末(2−15)(1.8g)に変更したこと以外は実施例2−5と同様の操作を行い、粉末状の触媒(2−15)420mgを得た。
【0233】
触媒(2−15)の評価結果を、表2、図41(触媒(2−15)の粉末X線回折スペクトル)および図42(触媒(2−15)を用いた燃料電池用電極(2−15)の酸素還元能の測定結果)に示す。
【0234】
[実施例2−16]
ビーカーに、メタノール25mlおよび酢酸25mlを入れ、これを撹拌しながら二塩化亜鉛2.80g(20.45mmol)5%ナフィオン(NAFION(登録商標))溶液(DE−521、デュポン社)12.5ml、酢酸鉄(II)355mg(2.04mmol)を順次加えた。得られた溶液にシスチン7.31g(30.4mmol)を少量ずつ加えた後、3時間の攪拌を行い触媒前駆体溶液(2−16)を得た。なお、3時間の攪拌の際、時間の経過と共に沈殿物が生じた。
【0235】
触媒前駆体溶液(2−3)を触媒前駆体溶液(2−16)に変更したこと以外は実施例2−3と同様の操作を行い、粉末状の触媒(2−16)561mgを得た。なお、この過程で得られた固形分残渣の粉末(2−16)の質量は5.91gであった。
【0236】
触媒(2−16)の評価結果を、表2、図43(触媒(2−16)の粉末X線回折スペクトル)および図44(触媒(2−16)を用いた燃料電池用電極(2−16)の酸素還元能の測定結果)に示す。
【0237】
[実施例2−17]
ビーカーに、メタノール50mlを入れ、これを撹拌しながら二塩化亜鉛5.58g(40.9mmol)、5%ナフィオン(NAFION(登録商標))溶液(DE−521、デュポン社)25.0ml、酢酸鉄(II)710mg(4.09mmol)を順次加えた。得られた溶液にピラジンカルボン酸5.08g(40.9mmol)を少量ずつ加えた後、3時間の攪拌を行い、触媒前駆体溶液(2−17)を得た。なお、3時間の攪拌の際、時間の経過と共に沈殿物が生じた。
【0238】
触媒前駆体溶液(2−3)を触媒前駆体溶液(2−17)に変更したこと以外は実施例2−3と同様の操作を行い、粉末状の触媒(2−17)130mgを得た。なお、この過程で得られた固形分残渣の粉末(2−17)の質量は9.60gであった。
【0239】
触媒(2−17)の評価結果を、表2、図45(触媒(2−17)の粉末X線回折スペクトル)および図46(触媒(2−17)を用いた燃料電池用電極(2−17)の酸素還元能の測定結果)に示す。
【0240】
[実施例3−1]
ビーカーに、酢酸16mlを入れ、これを攪拌しながら亜鉛エトキシド1.74g(11.2mmol)、アセチルアセトン3.26g(32.4mmol)およびチタンイソプロポキシド3.125ml(11.2mmol)を加え、亜鉛溶液(3−1)を調製した。
【0241】
ビーカーに、水70ml、エタノール60ml、および酢酸70mlを入れ、ここにピラジンカルボン酸11.1g(89.6mmol)を加えて、超音波洗浄器を用いた超音波の照射により完全に溶解させた。得られた溶液に、これを攪拌しながら、5%ナフィオン(NAFION(登録商標))溶液(DE−521、デュポン社)12.5mlを加え、さらに酢酸鉄(II)363mg(2.09mmol)を少量ずつ加えて10分程かけて溶解させた。次に温度を室温に保ちながら、かつ攪拌しながら、上記の亜鉛溶液(3−1)を10分間かけて滴下し、滴下後さらに30分間攪拌を行い、触媒前駆体溶液(3−1)を得た。
【0242】
触媒前駆体溶液(2−1)を触媒前駆体溶液(3−1)に変更したこと以外は実施例2−1と同様の操作を行い、粉末状の触媒(3−1)125mgを得た。なお、この過程で得られた固形分残渣の粉末(3−1)の質量は13.9gであった。
【0243】
触媒(3−1)の評価結果を、表2、図47(触媒(3−1)の粉末X線回折スペクトル)および図48(触媒(3−1)を用いた燃料電池用電極(3−1)の酸素還元能の測定結果)に示す。
【0244】
[実施例3−2]
ビーカーに、酢酸158mlを入れ、これを攪拌しながら亜鉛アセチルアセトナート4.64g(17.6mmol)を加え、亜鉛溶液(3−2)を調製した。
【0245】
ビーカーに、水70ml、エタノール60ml、および酢酸70mlを入れ、ここにピラジンカルボン酸8.74g(70.4mmol)および5%ナフィオン(NAFION(登録商標))溶液(DE−521、デュポン社)10.0mlを加えて、超音波洗浄器を用いた超音波の照射により完全に溶解させた。得られた溶液に、これを攪拌しながら、酢酸鉄(II)290mg(1.67mmol)を少量ずつ加えて10分程かけて溶解させた。次に温度を室温に保ちながら、かつ攪拌しながら、上記の亜鉛溶液(3−2)を10分間かけて滴下し、溶液Aを得た。
【0246】
ビーカーに、メタノール25mlを入れ、これを攪拌しながら、二塩化銅1.37g(10.2mmol)、5%ナフィオン(NAFION(登録商標))溶液(DE−521、デュポン社)6.25ml、酢酸鉄(II)178mg(1.02mmol)を加えた。得られた溶液に、これを攪拌しながら、ピラジンカルボン酸3.81g(30.4mmol)を少量ずつ加え、溶液Bを得た。
【0247】
溶液Aに溶液Bを滴下した後、3時間の攪拌を行い、触媒前駆体溶液(3−2)を得た。なお、3時間の攪拌の際、時間の経過と共に沈殿物が生じた。
触媒前駆体溶液(2−1)を触媒前駆体溶液(3−2)に変更したこと以外は実施例2−1と同様の操作を行い、粉末状の触媒(3−2)327mgを得た。なお、この過程で得られた固形分残渣の粉末(3−2)の質量は5.76gであった。
【0248】
触媒(3−2)の評価結果を、表2、図49(触媒(3−2)の粉末X線回折スペクトル)および図50(触媒(3−2)を用いた燃料電池用電極(3−2)の酸素還元能の測定結果)に示す。
【0249】
[実施例3−3]
ビーカーに、酢酸150mlを入れ、これを攪拌しながら亜鉛アセチルアセトナート1.91g(7.39mmol)、アセチルアセトン2.14g(21.4mmol)、ジルコニウムブトキシド6.68g(14.8mmol)を加え、亜鉛溶液(3−3)を調製した。
【0250】
ビーカーに、水70ml、エタノール60ml、および酢酸70mlを入れ、ここにピラジンカルボン酸11.0g(88.8mmol)、5%ナフィオン(NAFION(登録商標))溶液(DE−521、デュポン社)12.5mlを加えて、超音波洗浄器を用いた超音波の照射により完全に溶解させた。得られた溶液に、これを攪拌しながら、酢酸鉄(II)363mg(2.09mmol)を少量ずつ加えて10分程かけて完全に溶解させた。次に温度を室温に保ちながら、かつ攪拌しながら、上記の亜鉛溶液(3−3)を10分間かけて滴下し、滴下後さらに30分間攪拌を行い、触媒前駆体溶液(3−3)を得た。
【0251】
触媒前駆体溶液(2−1)を触媒前駆体溶液(3−3)に変更したこと以外は実施例2−1と同様の操作を行い、粉末状の触媒(2−1)261mgを得た。なお、この過程で得られた固形分残渣の粉末(3−3)の質量は14.5gであった。
【0252】
触媒(3−3)の評価結果を、表2、図51(触媒(3−3)の粉末X線回折スペクトル)および図52(触媒(3−3)を用いた燃料電池用電極(3−3)の酸素還元能の測定結果)に示す。
【0253】
[実施例3−4]
ビーカーに、メタノール50mlを入れ、これを撹拌しながら四塩化チタン1.28g(6.75mmol)、四塩化ゲルマニウム3.08g(13.5mmol)、5%ナフィオン(NAFION(登録商標))溶液(DE−521、デュポン社)12.5ml、酢酸鉄(II)355mg(2.045mmol)を順次加えた。得られた溶液にピラジンカルボン酸10.15g(81.8mmol)を少量ずつ加えた後、3時間の攪拌を行い触媒前駆体溶液(3−4)を得た。なお、3時間の攪拌の際、時間の経過と共に沈殿物が生じた。
【0254】
触媒前駆体溶液(2−3)を触媒前駆体溶液(3−4)に変更したこと以外は実施例2−3と同様の操作を行い、粉末状の触媒(3−4)299mgを得た。なお、この過程で得られた固形分残渣の粉末(3−4)の質量は2.09gであった。
【0255】
触媒(3−4)の評価結果を、表2、図53(触媒(3−4)の粉末X線回折スペクトル)および図54(触媒(3−4)を用いた燃料電池用電極(3−4)の酸素還元能の測定結果)に示す。
【0256】
[実施例3−5]
ビーカーに、メタノール50mlを入れ、これを撹拌しながら四塩化チタン1.28g(6.75mmol)、三塩化インジウム2.99g(13.5mmol)、5%ナフィオン(NAFION(登録商標))溶液(DE−521、デュポン社)12.5ml、酢酸鉄(II)355mg(2.04mmol)を順次加えた。得られた溶液にピラジンカルボン酸10.15g(81.8mmol)を少量ずつ加えた後、3時間の攪拌を行い触媒前駆体溶液(3−5)を得た。なお、3時間の攪拌の際、時間の経過と共に沈殿物が生じた。
【0257】
触媒前駆体溶液(2−3)を触媒前駆体溶液(3−5)に変更したこと以外は実施例2−3と同様の操作を行い、粉末状の触媒(3−5)290mgを得た。なお、この過程で得られた固形分残渣の粉末(3−5)の質量は5.72gであった。
【0258】
触媒(3−5)の評価結果を、表2、図55(触媒(3−5)の粉末X線回折スペクトル)および図56(触媒(3−5)を用いた燃料電池用電極(3−5)の酸素還元能の測定結果)に示す。
【0259】
[実施例3−6]
ビーカーに、メタノール50mlを入れ、これを撹拌しながら二塩化銅0.907g(6.75mmol)、四塩化ゲルマニウム3.08g(13.5mmol)、5%ナフィオン(NAFION(登録商標))溶液(DE−521、デュポン社)12.5ml、酢酸鉄(II)355mg(2.04mmol)を順次加えた。得られた溶液にピラジンカルボン酸10.15g(81.8mmol)を少量ずつ加えた後、3時間の攪拌を行い触媒前駆体溶液(3−6)を得た。なお、3時間の攪拌の際、時間の経過と共に沈殿物が生じた。
【0260】
触媒前駆体溶液(2−3)を触媒前駆体溶液(3−6)に変更したこと以外は実施例2−3と同様の操作を行い、粉末状の触媒(3−6)353mgを得た。なお、この過程で得られた固形分残渣の粉末(3−6)の質量は2.12gであった。
【0261】
触媒(3−6)の評価結果を、表2、図57(触媒(3−6)の粉末X線回折スペクトル)および図58(触媒(3−6)を用いた燃料電池用電極(3−6)の酸素還元能の測定結果)に示す。
【0262】
[実施例3−7]
ビーカーに、メタノール50mlを入れ、これを撹拌しながら二塩化銅0.907g(6.75mol)、三塩化インジウム2.99g(13.5mmol)、5%ナフィオン(NAFION(登録商標))溶液(DE−521、デュポン社)12.5ml、酢酸鉄(II)355mg(2.04mmol)を順次加えた。得られた溶液にピラジンカルボン酸10.15g(81.8mmol)を少量ずつ加えた後、3時間の攪拌を行い触媒前駆体溶液(3−7)を得た。なお、3時間の攪拌の際、時間の経過と共に沈殿物が生じた。
【0263】
触媒前駆体溶液(2−3)を触媒前駆体溶液(3−7)に変更したこと以外は実施例2−3と同様の操作を行い、粉末状の触媒(3−7)297mgを得た。なお、この過程で得られた固形分残渣の粉末(3−7)の質量は6.67gであった。
【0264】
触媒(3−7)の評価結果を、表2、図59(触媒(3−7)の粉末X線回折スペクトル)および図60(触媒(3−7)を用いた燃料電池用電極(3−7)の酸素還元能の測定結果)に示す。
【0265】
[比較例1]
チタンテトライソプロポキシド(純正化学(株)製)9.37gおよびアセチルアセトン(純正化学)5.12gを、エタノール15mLおよび酢酸5mLの混合液に加え、室温で攪拌しながらチタン溶液を調製した。また、エチレングリコール8.30gおよび酢酸鉄(Aldrich社製)0.582gを純水20mLに加え、室温で攪拌して完全に溶解させてエチレングリコール溶液を調製した。チタン溶液をエチレングリコール溶液にゆっくり添加し、透明な触媒前駆体溶液を得た。ロータリーエバポレーターを用い、窒素雰囲気の減圧下で、ホットスターラーの温度を約100℃に設定し、前記触媒前駆体溶液を加熱かつ攪拌しながら、溶媒をゆっくり蒸発させた。完全に溶媒を蒸発させて得られた固形分残渣を乳鉢で細かく均一に潰して、固形分残渣の粉末を得た。
【0266】
この粉末を管状炉に入れ、水素ガスを4体積%含む窒素ガスの雰囲気下で昇温速度10℃/minで890℃まで加熱し、890℃で1時間保持し、自然冷却することにより粉末状の触媒(c1)を得た。
【0267】
触媒(c1)の評価結果を、表3および図61(触媒(c1)を用いた燃料電池用電極(c1)の酸素還元能の測定結果)に示す。
[比較例2]
エチレングリコールに替えてシュウ酸12.05gを用いた以外は比較例1と同様の操作を行い、粉末状の触媒(c2)を得た。
【0268】
触媒(c2)の評価結果を、表3および図62(触媒(c2)を用いた燃料電池用電極(c2)の酸素還元能の測定結果)に示す。
[比較例3]
エチレングリコールに替えてグリコール酸10.18gを用いた以外は比較例1と同様の操作を行い、粉末状の触媒(c3)を得た。
【0269】
触媒(c3)の評価結果を、表3および図63(触媒(c3)を用いた燃料電池用電極(c3)の酸素還元能の測定結果)に示す。
[比較例4]
酸化チタン(アナターゼ型、100m2/g)を管状炉に入れ、水素ガスを4体積%含む窒素ガスの雰囲気下で昇温速度10℃/minで900℃まで加熱し、900℃で1時間保持し、自然冷却することにより粉末状の触媒(c4)を得た。
【0270】
触媒(c4)の評価結果を、表3および図64(触媒(c4)を用いた燃料電池用電極(c4)の酸素還元能の測定結果)に示す。
[比較例5]
酸化チタン(アナターゼ型、100m2/g)2gとカーボンブラック(キャボット社製 VULCAN(登録商標) XC72)0.75gを乳鉢中でよく混合し、管状炉に入れ、水素ガスを4体積%含む窒素ガスの雰囲気下で昇温速度10℃/minで1700℃まで加熱し、1700℃で3時間保持し、自然冷却することにより粉末状の触媒(c5)を得た。
【0271】
触媒(c5)の評価結果を、表3および図65(触媒(c5)を用いた燃料電池用電極(c5)の酸素還元能の測定結果)に示す。
[比較例6]
ケッチェンブラック(ライオン:EC600JD)2gを管状炉に入れ、水素ガスを4体積%含む窒素ガスの雰囲気下で昇温速度10℃/minで1000℃まで加熱し、1000℃で3時間保持し、自然冷却することにより粉末状の触媒(c6)を得た。
【0272】
触媒(c6)の評価結果を、表3および図66(触媒(c6)を用いた燃料電池用電極(c6)の酸素還元能の測定結果)に示す。
【0273】
【表1】
【0274】
【表2】
【0275】
【表3】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも金属化合物(1)と、窒素含有有機化合物(2)と、溶媒とを混合して触媒前駆体溶液を得る工程(1)、
前記触媒前駆体溶液から溶媒を除去する工程(2)、および
工程(2)で得られた固形分残渣を500〜1300℃の温度で熱処理して電極触媒を得る工程(3)
を含み、
前記金属化合物(1)の一部または全部が、金属元素として亜鉛、ゲルマニウムおよびインジウムから選ばれる金属元素M1を含有する化合物であり、
前記工程(1)で用いられる成分のうち溶媒以外の少なくとも1つの成分が酸素原子を有する
ことを特徴とする燃料電池用電極触媒の製造方法。
【請求項2】
前記金属化合物(1)の一部が、金属元素として鉄、コバルト、チタン、ジルコニウムおよび銅から選ばれる金属元素M2を含有する化合物である請求項1に記載の燃料電池用電極触媒の製造方法。
【請求項3】
前記工程(1)において、フッ素を含有する化合物(3)をさらに混合する請求項1または2に記載の燃料電池用電極触媒の製造方法。
【請求項4】
前記工程(1)において、前記金属化合物(1)の溶液と、前記窒素含有有機化合物(2)とを混合する請求項1〜3のいずれかに記載の燃料電池用電極触媒の製造方法。
【請求項5】
前記工程(1)において、ジケトン構造を有する化合物をさらに混合する請求項1〜4のいずれかに記載の燃料電池用電極触媒の製造方法。
【請求項6】
前記金属化合物(1)が、金属リン酸塩、金属硫酸塩、金属硝酸塩、金属有機酸塩、金属酸ハロゲン化物、金属アルコキシド、金属ハロゲン化物、金属過ハロゲン酸塩、金属次亜ハロゲン酸塩および金属錯体からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1〜5のいずれかに記載の燃料電池用電極触媒の製造方法。
【請求項7】
前記窒素含有有機化合物(2)が、アミノ基、ニトリル基、イミド基、イミン基、ニトロ基、アミド基、アジド基、アジリジン基、アゾ基、イソシアネート基、イソチオシアネート基、オキシム基、ジアゾ基、およびニトロソ基、ならびにピロール環、ポルフィリン環、イミダゾール環、ピリジン環、ピリミジン環、およびピラジン環から選ばれる1種類以上を分子中に有する請求項1〜6のいずれかに記載の燃料電池用電極触媒の製造方法。
【請求項8】
前記窒素含有有機化合物(2)が、水酸基、カルボキシル基、アルデヒド基、酸ハライド基、スルホ基、リン酸基、ケトン基、エーテル基、およびエステル基から選ばれる1種類以上を分子中に有する請求項1〜7のいずれかに記載の燃料電池用電極触媒の製造方法。
【請求項9】
前記工程(3)において、前記固形分残渣を、水素ガスを0.01体積%以上10体積%以下含む雰囲気中で熱処理する請求項1〜8のいずれかに記載の燃料電池用電極触媒の製造方法。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載の製造方法で得られる燃料電池用電極触媒。
【請求項11】
比表面積が230m2/g以上である請求項10に記載の燃料電池用電極触媒。
【請求項12】
亜鉛、ゲルマニウムおよびインジウムから選ばれる金属元素M1を0.1〜40質量%含む請求項10または11に記載の燃料電池用電極触媒。
【請求項13】
請求項10〜12のいずれかに記載の燃料電池用電極触媒を含むことを特徴とする燃料電池用触媒層。
【請求項14】
請求項13に記載の燃料電池用触媒層と多孔質支持層とを有することを特徴とする電極。
【請求項15】
カソードとアノードと前記カソードおよび前記アノードの間に配置された電解質膜とを有する膜電極接合体であって、前記カソードおよび/または前記アノードが請求項14に記載の電極であることを特徴とする膜電極接合体。
【請求項16】
請求項15に記載の膜電極接合体を備えることを特徴とする燃料電池。
【請求項17】
固体高分子型燃料電池である請求項16に記載の燃料電池。
【請求項18】
発電機能、発光機能、発熱機能、音響発生機能、運動機能、表示機能および充電機能からなる群より選ばれる少なくとも一つの機能を有する物品であって、請求項16または17に記載の燃料電池を備えることを特徴とする物品。
【請求項1】
少なくとも金属化合物(1)と、窒素含有有機化合物(2)と、溶媒とを混合して触媒前駆体溶液を得る工程(1)、
前記触媒前駆体溶液から溶媒を除去する工程(2)、および
工程(2)で得られた固形分残渣を500〜1300℃の温度で熱処理して電極触媒を得る工程(3)
を含み、
前記金属化合物(1)の一部または全部が、金属元素として亜鉛、ゲルマニウムおよびインジウムから選ばれる金属元素M1を含有する化合物であり、
前記工程(1)で用いられる成分のうち溶媒以外の少なくとも1つの成分が酸素原子を有する
ことを特徴とする燃料電池用電極触媒の製造方法。
【請求項2】
前記金属化合物(1)の一部が、金属元素として鉄、コバルト、チタン、ジルコニウムおよび銅から選ばれる金属元素M2を含有する化合物である請求項1に記載の燃料電池用電極触媒の製造方法。
【請求項3】
前記工程(1)において、フッ素を含有する化合物(3)をさらに混合する請求項1または2に記載の燃料電池用電極触媒の製造方法。
【請求項4】
前記工程(1)において、前記金属化合物(1)の溶液と、前記窒素含有有機化合物(2)とを混合する請求項1〜3のいずれかに記載の燃料電池用電極触媒の製造方法。
【請求項5】
前記工程(1)において、ジケトン構造を有する化合物をさらに混合する請求項1〜4のいずれかに記載の燃料電池用電極触媒の製造方法。
【請求項6】
前記金属化合物(1)が、金属リン酸塩、金属硫酸塩、金属硝酸塩、金属有機酸塩、金属酸ハロゲン化物、金属アルコキシド、金属ハロゲン化物、金属過ハロゲン酸塩、金属次亜ハロゲン酸塩および金属錯体からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1〜5のいずれかに記載の燃料電池用電極触媒の製造方法。
【請求項7】
前記窒素含有有機化合物(2)が、アミノ基、ニトリル基、イミド基、イミン基、ニトロ基、アミド基、アジド基、アジリジン基、アゾ基、イソシアネート基、イソチオシアネート基、オキシム基、ジアゾ基、およびニトロソ基、ならびにピロール環、ポルフィリン環、イミダゾール環、ピリジン環、ピリミジン環、およびピラジン環から選ばれる1種類以上を分子中に有する請求項1〜6のいずれかに記載の燃料電池用電極触媒の製造方法。
【請求項8】
前記窒素含有有機化合物(2)が、水酸基、カルボキシル基、アルデヒド基、酸ハライド基、スルホ基、リン酸基、ケトン基、エーテル基、およびエステル基から選ばれる1種類以上を分子中に有する請求項1〜7のいずれかに記載の燃料電池用電極触媒の製造方法。
【請求項9】
前記工程(3)において、前記固形分残渣を、水素ガスを0.01体積%以上10体積%以下含む雰囲気中で熱処理する請求項1〜8のいずれかに記載の燃料電池用電極触媒の製造方法。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載の製造方法で得られる燃料電池用電極触媒。
【請求項11】
比表面積が230m2/g以上である請求項10に記載の燃料電池用電極触媒。
【請求項12】
亜鉛、ゲルマニウムおよびインジウムから選ばれる金属元素M1を0.1〜40質量%含む請求項10または11に記載の燃料電池用電極触媒。
【請求項13】
請求項10〜12のいずれかに記載の燃料電池用電極触媒を含むことを特徴とする燃料電池用触媒層。
【請求項14】
請求項13に記載の燃料電池用触媒層と多孔質支持層とを有することを特徴とする電極。
【請求項15】
カソードとアノードと前記カソードおよび前記アノードの間に配置された電解質膜とを有する膜電極接合体であって、前記カソードおよび/または前記アノードが請求項14に記載の電極であることを特徴とする膜電極接合体。
【請求項16】
請求項15に記載の膜電極接合体を備えることを特徴とする燃料電池。
【請求項17】
固体高分子型燃料電池である請求項16に記載の燃料電池。
【請求項18】
発電機能、発光機能、発熱機能、音響発生機能、運動機能、表示機能および充電機能からなる群より選ばれる少なくとも一つの機能を有する物品であって、請求項16または17に記載の燃料電池を備えることを特徴とする物品。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
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【図26】
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【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
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【図39】
【図40】
【図41】
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【図45】
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【図48】
【図49】
【図50】
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【図53】
【図54】
【図55】
【図56】
【図57】
【図58】
【図59】
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【図20】
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【図29】
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【図36】
【図37】
【図38】
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【図50】
【図51】
【図52】
【図53】
【図54】
【図55】
【図56】
【図57】
【図58】
【図59】
【図60】
【図61】
【図62】
【図63】
【図64】
【図65】
【図66】
【公開番号】特開2013−37941(P2013−37941A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−174055(P2011−174055)
【出願日】平成23年8月9日(2011.8.9)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月9日(2011.8.9)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】
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