燃料電池用電極触媒の製造方法、燃料電池用電極触媒およびその用途
【課題】貴金属触媒の代替となる、比表面積が大きく触媒性能が高い燃料電池用電極触媒の製造方法を提供すること。
【解決手段】チタン、ニオブ、ジルコニウム、タンタル、アルミニウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ゲルマニウム、イットリウム、インジウム、スズ、タングステンおよびセリウムからなる群から選ばれる金属元素M1の原子、アルカリ金属およびアルカリ土類金属からなる群から選ばれる金属元素M3の原子、炭素原子、窒素原子ならびに酸素原子を含む触媒前駆材料を熱処理する工程(II)、および工程(II)で得られた熱処理物から前記金属元素M3の原子を除去して電極触媒を得る工程(III)を含むことを特徴する燃料電池用電極触媒の製造方法。
【解決手段】チタン、ニオブ、ジルコニウム、タンタル、アルミニウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ゲルマニウム、イットリウム、インジウム、スズ、タングステンおよびセリウムからなる群から選ばれる金属元素M1の原子、アルカリ金属およびアルカリ土類金属からなる群から選ばれる金属元素M3の原子、炭素原子、窒素原子ならびに酸素原子を含む触媒前駆材料を熱処理する工程(II)、および工程(II)で得られた熱処理物から前記金属元素M3の原子を除去して電極触媒を得る工程(III)を含むことを特徴する燃料電池用電極触媒の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は燃料電池用電極触媒の製造方法、燃料電池用電極触媒およびその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
高分子固体型燃料電池は、高分子固体電解質をアノードとカソードとで挟み、アノードに燃料を供給し、カソードに酸素または空気を供給して、カソードで酸素が還元されて電気を取り出す形式の燃料電池である。燃料には水素またはメタノールなどが主として用いられる。
【0003】
従来、燃料電池の反応速度を高め、燃料電池のエネルギー変換効率を高めるために、燃料電池のカソード(空気極)表面やアノード(燃料極)表面には、触媒を含む層(以下「燃料電池用触媒層」とも記す。)が設けられていた。
【0004】
この触媒として、一般的に貴金属が用いられており、貴金属の中でも高い電位で安定であり、活性が高い白金、パラジウムなどの貴金属が主として用いられてきた。しかし、これらの貴金属は価格が高く、また資源量が限られていることから、代替可能な触媒の開発が求められていた。
【0005】
また、カソード表面に用いる貴金属は、酸性雰囲気下では溶解する場合があり、長期間に渡る耐久性が必要な用途には適さないという問題があった。このため酸性雰囲気下で腐食せず、耐久性に優れ、高い酸素還元能を有する触媒の開発が強く求められていた。
【0006】
このような貴金属代替触媒として、特許文献1にはニオブの炭窒酸化物からなる触媒が開示されている。特許文献1に記載された触媒は、従来の貴金属代替触媒に比べて極めて高性能であるが、実施例に具体的に開示された触媒のBET比表面積は大きくても119m2/gであった。
【0007】
また、特許文献2には、酸化物と炭素材料前駆体との混合材料を焼成することを特徴とする電極触媒の製造方法が開示されているが、実施例に具体的に開示された触媒のBET比表面積は大きくても127m2/gであった。
【0008】
一方、特許文献3には、燃料電池用電極触媒との関連性はないが、炭素質原料を炭化処理して炭化物にする炭化処理工程、該炭化物にアルカリ金属水酸化物及び水を混合してスラリーにする混合工程、当該スラリーを加熱する反応工程、得られた生成物を水洗する水洗工程、および水洗した生成物を乾燥する乾燥工程を順次行う活性炭の製造方法が開示され、この方法によれば、高い比表面積を有する活性炭が製造されると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第2009/031383パンフレット
【特許文献2】特開2009−255053号公報
【特許文献3】特開2011−79705号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述のように、従来の燃料電池用の貴金属代替触媒においては、比表面積を大きくして触媒性能をさらに高める余地があった。
したがって本発明は、貴金属触媒の代替となる、比表面積が大きく触媒性能が高い燃料電池用電極触媒の製造方法を提供することを目的とする。
【0011】
さらに本発明は、比表面積が大きく触媒性能が高い燃料電池用電極触媒およびその用途(電極等)を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、たとえば以下の[1]〜[13]に関する。
[1]
チタン、ニオブ、ジルコニウム、タンタル、アルミニウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ゲルマニウム、イットリウム、インジウム、スズ、タングステンおよびセリウムからなる群から選ばれる金属元素M1の原子、アルカリ金属およびアルカリ土類金属からなる群から選ばれる金属元素M3の原子、炭素原子、窒素原子ならびに酸素原子を含む触媒前駆材料を熱処理する工程(II)、ならびに
工程(II)で得られた熱処理物から前記金属元素M3の原子を除去して電極触媒を得る工程(III)
を含むことを特徴する燃料電池用電極触媒の製造方法。
【0013】
[2]
液相中で原料を混合して前記前駆材料を得る工程(I)を含むことを特徴とする上記[1]に記載の燃料電池用電極触媒の製造方法。
【0014】
[3]
前記工程(I)が、少なくとも前記金属元素M1の化合物と、窒素含有有機化合物(2)と、前記金属元素M3の化合物と、溶媒とを混合する工程(Ia)を含み、
前記工程(Ia)で用いられる成分のうち溶媒以外の少なくとも1つの成分が酸素原子を有し、
前記工程(II)において、前記前駆材料を500〜1100℃の温度で熱処理する
ことを特徴とする上記[2]に記載の燃料電池用電極触媒の製造方法。
【0015】
[4]
前記工程(I)が、前記工程(Ia)の後に前記溶媒を除去する工程(Ib)を含むことを特徴とする上記[3]に記載の燃料電池用電極触媒の製造方法。
【0016】
[5]
前記工程(Ia)において、フッ素含有化合物(4)をさらに混合することを特徴とする上記[4]に記載の燃料電池用電極触媒の製造方法。
【0017】
[6]
前記工程(III)において、工程(II)で得られた熱処理物と酸とを接触させて、前記熱処理物からアルカリ金属を除去することを特徴とする上記[1]〜[5]のいずれかに記載の燃料電池用電極触媒の製造方法。
【0018】
[7]
上記[1]〜[6]のいずれかに記載の製造方法で得られる燃料電池用電極触媒。
[8]
上記[7]に記載の燃料電池用電極触媒を含むことを特徴とする燃料電池用触媒層。
【0019】
[9]
上記[8]に記載の燃料電池用触媒層と多孔質支持層とを有することを特徴とする電極。
【0020】
[10]
カソードとアノードと前記カソードおよび前記アノードの間に配置された電解質膜とを有する膜電極接合体であって、前記カソードおよび/または前記アノードが上記[9]に記載の電極であることを特徴とする膜電極接合体。
【0021】
[11]
上記[10]に記載の膜電極接合体を備えることを特徴とする燃料電池。
[12]
固体高分子型燃料電池であることを特徴とする上記[11]に記載の燃料電池。
【0022】
[13]
発電機能、発光機能、発熱機能、音響発生機能、運動機能、表示機能および充電機能からなる群より選ばれる少なくとも一つの機能を有する物品であって、上記[11]または[12]に記載の燃料電池を備えることを特徴とする物品。
【発明の効果】
【0023】
本発明の燃料電池用電極触媒の製造方法によれば、貴金属触媒の代替となる、比表面積が大きく触媒性能が高い燃料電池用電極触媒を製造することができる。
本発明の燃料電池用電極触媒は、大きい比表面積および高い触媒活性を有し、各種用途(電極等)に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1は、参考例1の熱処理物(1)の粉末X線回折スペクトルである。
【図2】図2は、参考例1の熱処理物(1)を触媒として用いた燃料電池用電極の酸素還元電流密度−電位曲線である。
【図3】図3は、実施例1の触媒(1)の粉末X線回折スペクトルである。
【図4】図4は、実施例1の燃料電池用電極(1)の酸素還元電流密度−電位曲線である。
【図5】図5は、参考例2の熱処理物(2)の粉末X線回折スペクトルである。
【図6】図6は、参考例2の熱処理物(2)を触媒として用いた燃料電池用電極の酸素還元電流密度−電位曲線である。
【図7】図7は、実施例2の触媒(2)の粉末X線回折スペクトルである。
【図8】図8は、実施例2の燃料電池用電極(2)の酸素還元電流密度−電位曲線である。
【図9】図9は、参考例3の熱処理物(3)の粉末X線回折スペクトルである。
【図10】図10は、参考例3の熱処理物(3)を触媒として用いた燃料電池用電極の酸素還元電流密度−電位曲線である。
【図11】図11は、実施例3の触媒(3)の粉末X線回折スペクトルである。
【図12】図12は、実施例3の燃料電池用電極(3)の酸素還元電流密度−電位曲線である。
【図13】図13は、比較例1の燃料電池用電極(c1)の酸素還元電流密度−電位曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
[燃料電池用電極触媒の製造方法]
本発明の燃料電池用電極触媒の製造方法は、
チタン、ニオブ、ジルコニウム、タンタル、アルミニウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ゲルマニウム、イットリウム、インジウム、スズ、タングステンおよびセリウムからなる群から選ばれる金属元素M1の原子、アルカリ金属およびアルカリ土類金属からなる群から選ばれる金属元素M3の原子、炭素原子、窒素原子ならびに酸素原子を含む触媒前駆材料を熱処理する工程(II)、ならびに
工程(II)で得られた熱処理物から前記金属元素M3の原子を除去して電極触媒を得る工程(III)
を含むことを特徴としている。なお本明細書において、特段の事情がない限り、原子およびイオンを、厳密に区別することなく「原子」と記載する。また、ゲルマニウムを金属元素とみなす。
【0026】
(工程(I))
本発明の燃料電池用電極触媒の製造方法は、原料を混合して前記触媒前駆材料を得る工程(I)を含んでいてもよい。
【0027】
前記触媒前駆材料は、少なくとも前記金属元素M1の原子、前記金属元素M3の原子、炭素原子、窒素原子および酸素原子を含んでいる。
この金属元素M1としては、チタン、ニオブ、ジルコニウム、タンタル、アルミニウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ゲルマニウム、イットリウム、インジウム、スズ、タングステンおよびセリウムが挙げられ、チタン、ニオブ、ジルコニウム、銅、亜鉛、ゲルマニウム、インジウムおよびスズが高い触媒能力を得やすく好ましい。
【0028】
また、金属元素M3としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムなどが挙げられ、ナトリウム、カリウム、マグネシウムおよびカルシウムが、高い触媒能力を得やすく好ましい。
【0029】
この触媒前駆材料は、原料に前記金属元素M3の原子が含まれること、および金属元素M1として上記の金属の少なくとも1種が用いられることを除いて、触媒前駆材料を熱処理(焼成)して金属原子、炭素原子、窒素原子および酸素原子を含む燃料電池用電極触媒を製造する従来の方法(たとえば、特許文献1に記載の方法)における触媒前駆材料の調製方法と同様の方法で、得てもよい。
【0030】
金属元素M3は、前記触媒前駆材料中に金属の化合物として含まれる。
触媒前駆材料を得る方法としては、触媒前駆材料の原料を固相で混合する方法、および触媒前駆材料の原料を液体(以下、原料が可溶か不溶かを区別せずに「溶媒」という。)中、すなわち液相で混合する方法が挙げられ、原料をより均一に混合する観点からは、原料を液相で混合する方法が好ましい。
【0031】
原料を液相で混合する方法の場合、得られた溶液、分散液、スラリー等(以下、これらを特に区別せずに「溶液」ともいう。)を前記触媒前駆材料として熱処理に供してもよく、得られた溶液から溶媒を除去したものを前記触媒前駆材料として熱処理に供してもよい。
【0032】
前記工程(I)は、好ましくは、金属元素M1の化合物(M1)(以下「金属化合物(M1)」または「化合物(M1)」ともいう。)と、窒素を含む有機化合物(以下「窒素含有有機化合物(2)」または「化合物(2)」ともいう。)と、前記金属元素M3の化合物(以下「金属化合物(M3)」または「化合物(M3)」ともいう。)と、溶媒とを混合する工程(Ia)を含み、混合される成分のうち溶媒以外のいずれか(好ましくは、前記化合物(M1)および前記化合物(2)の少なくとも一方)に酸素原子を含む化合物を用いる工程(以下「工程(I−1)」ともいう。)であってもよい。
【0033】
以下、工程(I−1)について、さらに詳細に説明する。
(工程I−1)
工程(I−1)は、工程(Ia)を含んでおり、任意に、さらに後述する工程(Ib)を含む。
【0034】
(工程Ia)
工程(Ia)では、少なくとも金属化合物(M1)と、窒素含有有機化合物(2)と、金属化合物(M3)と、任意に後述する溶媒等とを混合して触媒前駆材料を得る。
【0035】
工程(Ia)において、前記混合の手順としては、たとえば、
手順(i):1つの容器に各成分を入れ、これらを混合する
手順(ii):1つの容器に溶媒を準備し、そこへ各成分を添加し、溶解させて、これらを混合する、
手順(iii):前記金属化合物(M1)の溶液、および他の成分の溶液を準備し、これらを混合する
が挙げられる。
【0036】
溶媒を用いる場合であって、各成分に対して溶解性の高い溶媒が異なる場合には、手順(iii)が好ましい。また、前記金属化合物(M1)が、たとえば、後述する金属ハロゲン化物の場合には、手順(ii)が好ましく、前記金属化合物(M1)が、たとえば、後述する金属アルコキシドまたは金属錯体の場合には、手順(iii)が好ましい。
【0037】
金属化合物(M1)として後述する遷移金属化合物(M12)を用いる場合の、前記手順(iii)における好ましい手順としては、
手順(iii'):前記金属化合物(M1)(ただし、遷移金属化合物(M12)を除く。)の溶液、前記遷移金属化合物(M12)および他の成分の溶液を準備し、これらを混合する
が挙げられる。
【0038】
溶媒を用いる場合の混合操作は、溶媒への各成分の溶解速度を高めるために、撹拌しながら行うことが好ましい。
複数の溶液を調製してからこれらを混合して触媒前駆材料を得る場合には、一方の溶液に対して他方の溶液を、ポンプ等を用いて一定の速度で供給することが好ましい。
【0039】
また、前記窒素含有有機化合物(2)を含む溶液へ、前記金属化合物(M1)の溶液を少量ずつ添加する(すなわち、全量を一度に添加しない。)ことも好ましい。後述する遷移金属化合物(M12)を用いる場合であれば、窒素含有有機化合物(2)および遷移金属化合物(M12)を含む溶液へ、前記金属化合物(M1)(ただし、遷移金属化合物(M12)を除く。)の溶液を少量ずつ添加する(すなわち、全量を一度に添加しない。)ことも好ましい。
【0040】
触媒前駆材料には金属化合物(M1)と窒素含有有機化合物(2)との反応生成物が含まれると考えられる。溶媒へのこの反応生成物の溶解度は、金属化合物(M1)、窒素含有有機化合物(2)および溶媒等の組み合わせによっても異なる。
【0041】
このため、たとえば金属化合物(M1)が金属アルコキシドまたは金属錯体の場合には、溶液である前記触媒前駆材料は、溶媒の種類、窒素含有有機化合物(2)の種類にもよるが、好ましくは沈殿物や分散質を含まず、含むとしてもこれらは少量(たとえば溶液全量の10質量%以下、好ましくは5質量%以下、より好ましくは1質量%以下。)である。
【0042】
一方、たとえば金属化合物(M1)が金属ハロゲン化物の場合には、溶液である前記触媒前駆材料には、溶媒の種類、窒素含有有機化合物(2)の種類にもよるが、金属化合物(M1)と窒素含有有機化合物(2)との反応生成物と考えられる沈殿物が生じやすい。
【0043】
工程(Ia)では、オートクレーブ等の加圧可能な容器に各成分を入れ、常圧以上の圧力をかけながら、混合を行ってもよい。
工程(Ia)において各成分を混合する際の温度は、たとえば、0〜60℃である。前記金属化合物(M1)および前記窒素含有有機化合物(2)から錯体が形成されると推測されるところ、この温度が過度に高いと、溶媒が水を含む場合に錯体が加水分解され水酸化物の沈殿を生じると考えられ、この温度が過度に低いと、錯体が形成される前に前記金属化合物(M1)が析出すると考えられる。
【0044】
<金属化合物(M1)>
前記金属化合物(M1)は、チタン、ニオブ、ジルコニウム、タンタル、アルミニウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ゲルマニウム、イットリウム、インジウム、スズ、タングステンおよびセリウムから選ばれる金属元素M1を含有する。金属元素M1は、1種単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0045】
前記金属化合物(M1)は、好ましくは、酸素原子およびハロゲン原子から選ばれる少なくとも1種を有しており、その具体例としては、金属リン酸塩、金属硫酸塩、金属硝酸塩、金属有機酸塩、金属酸ハロゲン化物(金属ハロゲン化物の中途加水分解物)、金属アルコキシド、金属ハロゲン化物、金属ハロゲン酸塩および金属次亜ハロゲン酸塩、金属錯体が挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0046】
前記金属アルコキシドとしては、前記金属のメトキシド、プロポキシド、イソプロポキシド、エトキシド、ブトキシド、およびイソブトキシドが好ましく、前記金属のイソプロポキシド、エトキシドおよびブトキシドがさらに好ましい。前記金属アルコキシドは、1種のアルコキシ基を有していてもよく、2種以上のアルコキシ基を有していてもよい。
【0047】
酸素原子を有する金属化合物(M1)としては、金属アルコキシド、アセチルアセトン錯体、金属酸塩化物、金属硫酸塩および金属硝酸塩が好ましく、コストの面から、金属アルコキシド、アセチルアセトン錯体がより好ましく、前記溶媒への溶解性の観点から、金属アルコキシド、アセチルアセトン錯体がさらに好ましい。
【0048】
前記金属ハロゲン化物としては、金属塩化物、金属臭化物および金属ヨウ化物が好ましく、前記金属酸ハロゲン化物としては、金属酸塩化物、金属酸臭化物、金属酸ヨウ化物が好ましい。
【0049】
金属過ハロゲン酸塩としては金属過塩素酸塩が好ましく、金属次亜ハロゲン酸塩として
は金属次亜塩素酸塩が好ましい。
前記金属化合物(M1)の具体例としては、
チタンテトラメトキシド、チタンテトラエトキシド、チタンテトラプロポキシド、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラブトキシド、チタンテトライソブトキシド、チタンテトラペントキシド、チタンテトラアセチルアセトナート、チタンジイソプロポキシドジアセチルアセトナート(Ti(acac)2(O-iPr)2、acacはアセチルアセトナトイオンを、iPrはイソプロピル基を表わす。以下も同様である。))チタンオキシジアセチルアセトナート、トリス(アセチルアセトナト)第二チタン塩化物([Ti(acac)3]2[TiCl6])、四塩化チタン、三塩化チタン、オキシ塩化チタン、四臭化チタン、三臭化チタン、オキシ臭化チタン、四ヨウ化チタン、三ヨウ化チタン、オキシヨウ化チタン等のチタン化合物;
ニオブペンタメトキシド、ニオブペンタエトキシド、ニオブペンタイソプロポキシド、ニオブペンタブトキシド、ニオブペンタペントキシド、ニオブトリアセチルアセトナート、ニオブペンタアセチルアセトナート、ニオブジイソプロポキシドトリアセチルアセトナート(Nb(acac)3(O-iPr)2)、トリス(2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオン)ニオブ、ニオブ(III)ヘキサフルオロアセチルアセトナート、五塩化ニオブ、オキシ塩化ニオブ、五臭化ニオブ、オキシ臭化ニオブ、五ヨウ化ニオブ、オキシヨウ化ニオブ等のニオブ化合物;
ジルコニウムテトラメトキシド、ジルコニウムテトラエトキシド、ジルコニウムテトラプロポキシド、ジルコニウムテトライソプロポキシド、ジルコニウムテトラブトキシド、ジルコニウムテトライソブトキシド、ジルコニウムテトラペントキシド、ジルコニウムテトラアセチルアセトナート、ジルコニウムジイソプロポキシドジアセチルアセトナート(Zr(acac)2(O-iPr)2)、テトラキスジエチルアミノジルコニウム、テトラキス(2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオン)ジルコニウム、ジルコニウム(IV)ヘキサフルオロアセチルアセトナート、テトラ-1-メトキシ-2-メチル-2-プロポキシジルコニウム(IV)、四塩化ジルコニウム、オキシ塩化ジルコニウム、四臭化ジルコニウム、オキシ臭化ジルコニウム、四ヨウ化ジルコニウム、オキシヨウ化ジルコニウム等のジルコニウム化合物;
タンタルペンタメトキシド、タンタルペンタエトキシド、タンタルペンタイソプロポキシド、タンタルペンタブトキシド、タンタルペンタペントキシド、タンタルテトラエトキシアセチルアセトナート、タンタルジイソプロポキシドジアセチルアセトナート(Ta(acac)2(O-iPr)2)、ペンタキスジエチルアミノタンタル、五塩化タンタル、オキシ塩化タンタル、五臭化タンタル、オキシ臭化タンタル、五ヨウ化タンタル、オキシヨウ化タンタル等のタンタル化合物;
アルミニウムメトキシド、アルミニウムエトキシド、アルミニウムプロポキシド、アルミニウムイソプロポキシド、アルミニウムブトキシド、アルミニウムイソブトキシド、アルミニウムペントキシド、アルミニウムアセチルアセトナート、アルミニウムイソプロポキシドアセチルアセトナート(Al(acac)(O-iPr)2、Al(acac)2(O-iPr))、トリスジエチルアミノアルミニウム、トリス(2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオン)アルミニウム、アルミニウムヘキサフルオロアセチルアセトナート、トリス-1-メトキシ-2-メチル-2-プロポキシアルミニウム、三塩化アルミニウム、オキシ塩化アルミニウム、三臭化アルミニウム、オキシ臭化アルミニウム、三ヨウ化アルミニウム、オキシヨウ化アルミニウム等のアルミニウム化合物;
クロム(III)メトキシド、クロム(III)エトキシド、クロム(III)プロポキシド、クロム(III)イソプロポキシド、クロム(III)ブトキシド、クロム(III)イソブトキシド、クロム(III)ペントキシド、クロム(III)アセチルアセトナート、クロム(III)イソプロポキシドアセチルアセトナート(Cr(acac)(O-iPr)2、Cr(acac)2(O-iPr))、トリスジエチルアミノクロム、トリス(2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオン)クロム、クロム(III)ヘキサフルオロアセチルアセトナート、トリ-1-メトキシ-2-メチル-2-プロポキシクロム(III)、三塩化クロム、二塩化クロム、オキシ塩化クロム、三臭化クロム、二臭化クロム、オキシ臭化クロム、三ヨウ化クロム、二ヨウ化クロム、オキシヨウ化クロム等のクロム化合物;
マンガン(III)メトキシド、マンガン(III)エトキシド、マンガン(III)プロポキシド、マンガン(III)イソプロポキシド、マンガン(III)ブトキシド、マンガン(III)イソブトキシド、マンガン(III)ペントキシド、マンガン(III)アセチルアセトナート、マンガン(III)イソプロポキシドアセチルアセトナート(Mn(acac)(O-iPr)2、Mn(acac)2(O-iPr)、トリスジエチルアミノマンガン、トリス(2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオン)マンガン、マンガン(III)ヘキサフルオロアセチルアセトナート、トリ-1-メトキシ-2-メチル-2-プロポキシマンガン(III)、三塩化マンガン、二塩化マンガン、オキシ塩化マンガン、三臭化マンガン、二臭化マンガン、オキシ臭化マンガン、三ヨウ化マンガン、二ヨウ化マンガン、オキシヨウ化マンガン等のマンガン化合物;
鉄(III)メトキシド、鉄(III)エトキシド、鉄(III)プロポキシド、鉄(III)イソプロポキシド、鉄(III)ブトキシド、鉄(III)イソブトキシド、鉄(III)ペントキシド、鉄(III)アセチルアセトナート、鉄(III)イソプロポキシドアセチルアセトナート(Fe(acac)(O-iPr)2、Fe(acac)2(O-iPr))、トリスジエチルアミノ鉄、トリス(2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオン)鉄、鉄(III)ヘキサフルオロアセチルアセトナート、トリ-1-メトキシ-2-メチル-2-プロポキシ鉄(III)、三塩化鉄、二塩化鉄、オキシ塩化鉄、三臭化鉄、二臭化鉄、オキシ臭化鉄、三ヨウ化鉄、二ヨウ化鉄、オキシヨウ化鉄等の鉄化合物;
コバルト(II)メトキシド、コバルト(II)エトキシド、コバルト(II)プロポキシド、コバルト(II)イソプロポキシド、コバルト(II)ブトキシド、コバルト(II)イソブトキシド、コバルト(II)ペントキシド、コバルト(II)アセチルアセトナート、コバルト(III)アセチルアセトナート、コバルト(II)イソプロポキシドアセチルアセトナート(Co(acac)(O-iPr))、コバルト(III)イソプロポキシドアセチルアセトナート(Co(acac)(O-iPr)2、Co(acac)2(O-iPr))、ビスジエチルアミノコバルト、トリス(2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオン)コバルト、コバルト(II)ヘキサフルオロアセチルアセトナート、トリ-1-メトキシ-2-メチル-2-プロポキシコバルト(II)、三塩化コバルト、二塩化コバルト、オキシ塩化コバルト、三臭化コバルト、二臭化コバルト、オキシ臭化コバルト、三ヨウ化コバルト、二ヨウ化コバルト、オキシヨウ化コバルト等のコバルト化合物;
ニッケル(II)メトキシド、ニッケル(II)エトキシド、ニッケル(II)プロポキシド、ニッケル(II)イソプロポキシド、ニッケル(II)ブトキシド、ニッケル(II)イソブトキシド、ニッケル(II)ペントキシド、ニッケル(II)アセチルアセトナート、ニッケル(II)イソプロポキシドアセチルアセトナート(Ni(acac)(O-iPr))、ビスジエチルアミノニッケル、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオン)ニッケル、ニッケル(II)ヘキサフルオロアセチルアセトナート、ビス-1-メトキシ-2-メチル-2-プロポキシニッケル(II)、二塩化ニッケル、オキシ塩化ニッケル、二臭化ニッケル、オキシ臭化ニッケル、二ヨウ化ニッケル、オキシヨウ化ニッケル等のニッケル化合物;
銅(II)メトキシド、銅(II)エトキシド、銅(II)プロポキシド、銅(II)イソプロポキシド、銅(II)ブトキシド、銅(II)イソブトキシド、銅(II)ペントキシド、銅(II)アセチルアセトナート、ビスジエチルアミノ銅、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオン)銅、銅(II)ヘキサフルオロアセチルアセトナート、ビス-1-メトキシ-2-メチル-2-プロポキシ銅(II)、二塩化銅、オキシ塩化銅、二臭化銅、オキシ臭化銅、二ヨウ化銅、オキシヨウ化銅等の銅化合物;
亜鉛メトキシド、亜鉛エトキシド、亜鉛プロポキシド、亜鉛イソプロポキシド、亜鉛ブトキシド、亜鉛イソブトキシド、亜鉛ペントキシド、亜鉛アセチルアセトナート、ビスジエチルアミノ亜鉛、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオン)亜鉛、亜鉛ヘキサフルオロアセチルアセトナート、ビス-1-メトキシ-2-メチル-2-プロポキシ亜鉛、二塩化亜鉛、オキシ塩化亜鉛、二臭化亜鉛、オキシ臭化亜鉛、二ヨウ化亜鉛、オキシヨウ化亜鉛等の亜鉛化合物;
ゲルマニウム(IV)メトキシド、ゲルマニウム(IV)エトキシド、ゲルマニウム(IV)プロポキシド、ゲルマニウム(IV)イソプロポキシド、ゲルマニウム(IV)ブトキシド、ゲルマニウム(IV)イソブトキシド、ゲルマニウム(IV)ペントキシド、ゲルマニウム(IV)アセチルアセトナート、ゲルマニウム(IV)ジイソプロポキシドジアセチルアセトナート(Ge(acac)2(O-iPr)2)、テトラキスジエチルアミノゲルマニウム、テトラキス(2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオン)ゲルマニウム、ゲルマニウム(IV)ヘキサフルオロアセチルアセトナート、テトラキス-1-メトキシ-2-メチル-2-プロポキシゲルマニウム、四塩化ゲルマニウム、オキシ塩化ゲルマニウム、四臭化ゲルマニウム、オキシ臭化ゲルマニウム、四ヨウ化ゲルマニウム、オキシヨウ化ゲルマニウム等のゲルマニウム化合物;
イットリウム(III)メトキシド、イットリウム(III)エトキシド、イットリウム(III)プロポキシド、イットリウム(III)イソプロポキシド、イットリウム(III)ブトキシド、イットリウム(III)イソブトキシド、イットリウム(III)ペントキシド、イットリウム(III)アセチルアセトナート、イットリウム(III)イソプロポキシドアセチルアセトナート(Y(acac)(O-iPr)2、Y(acac)2(O-iPr))、トリスジエチルアミノイットリウム、トリス(2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオン)イットリウム、イットリウム(III)ヘキサフルオロアセチルアセトナート、トリス-1-メトキシ-2-メチル-2-プロポキシイットリウム(III)、三塩化イットリウム、オキシ塩化イットリウム、三臭化イットリウム、オキシ臭化イットリウム、三ヨウ化イットリウム、オキシヨウ化イットリウム等のイットリウム化合物;
インジウムメトキシド、インジウムエトキシド、インジウムプロポキシド、インジウムイソプロポキシド、インジウムブトキシド、インジウムイソブトキシド、インジウムペントキシド、インジウムアセチルアセトナート、インジウムイソプロポキシドアセチルアセトナート(In(acac)(O-iPr)2、In(acac)2(O-iPr))、トリスジエチルアミノインジウム、トリス(2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオン)インジウム、インジウムヘキサフルオロアセチルアセトナート、トリス-1-メトキシ-2-メチル-2-プロポキシインジウム、三塩化インジウム、オキシ塩化インジウム、三臭化インジウム、オキシ臭化インジウム、三ヨウ化インジウム、オキシヨウ化インジウム等のインジウム化合物;
スズ(IV)メトキシド、スズ(IV)エトキシド、スズ(IV)プロポキシド、スズ(IV)イソプロポキシド、スズ(IV)ブトキシド、スズ(IV)イソブトキシド、スズ(IV)ペントキシド、スズ(II)アセチルアセトナート、スズ(IV)ジイソプロポキシドジアセチルアセトナート(Sn(acac)2(O-iPr)2)、テトラキスジエチルアミノスズ、テトラキス(2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオン)スズ、スズ(II)ヘキサフルオロアセチルアセトナート、テトラ-1-メトキシ-2-メチル-2-プロポキシスズ(IV)、四塩化スズ、二塩化スズ、オキシ塩化スズ、四臭化スズ、二臭化スズ、オキシ臭化スズ、四ヨウ化スズ、二ヨウ化スズ、オキシヨウ化スズ等のスズ化合物;
タングステン(VI)メトキシド、タングステン(VI)エトキシド、タングステン(VI)プロポキシド、タングステン(VI)イソプロポキシド、タングステン(VI)ブトキシド、タングステン(VI)イソブトキシド、タングステン(VI)ペントキシド、タングステン(VI)アセチルアセトナート、タングステン(VI)タングステンジイソプロポキシドジアセチルアセトナート(W(acac)3(O-iPr)3)、ヘキサキスジエチルアミノタングステン(VI)、ヘキサキス(2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオン)タングステン(VI)、タングステン(VI)ヘキサフルオロアセチルアセトナート、ヘキサキス-1-メトキシ-2-メチル-2-プロポキシタングステン(VI)、六塩化タングステン、四塩化タングステン、オキシ塩化タングステン、六臭化タングステン、四臭化タングステン、オキシ臭化タングステン、六ヨウ化タングステン、四ヨウ化タングステン、オキシヨウ化タングステン等のタングステン化合物;
セリウム(III)メトキシド、セリウム(III)エトキシド、セリウム(III)プロポキシド、セリウム(III)イソプロポキシド、セリウム(III)ブトキシド、セリウム(III)イソブトキシド、セリウム(III)ペントキシド、セリウム(III)アセチルアセトナート、セリウムイソプロポキシドアセチルアセトナート(Ce(acac)(O-iPr)2、Ce(acac)2(O-iPr))、トリスジエチルアミノセリウム、トリス(2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオン)セリウム、セリウム(III)ヘキサフルオロアセチルアセトナート、トリス-1-メトキシ-2-メチル-2-プロポキシセリウム(III)、三塩化セリウム、オキシ塩化セリウム、三臭化セリウム、オキシ臭化セリウム、三ヨウ化セリウム、オキシヨウ化セリウム等のセリウム化合物;
が挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0050】
これらの化合物の中でも、得られる触媒が均一な粒径の微粒子となり、その活性が高いことから、
チタンテトラエトキシド、四塩化チタン、オキシ塩化チタン、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラアセチルアセトナート、チタンジイソプロポキシドジアセチルアセトナート(Ti(acac)2(O-iPr)2)、
ニオブペンタエトキシド、五塩化ニオブ、オキシ塩化ニオブ、ニオブペンタイソプロポキシド、ニオブペンタアセチルアセトナート、ニオブトリアセチルアセトナート、ニオブジイソプロポキシドトリアセチルアセトナート(Nb(acac)3(O-iPr)2)、
ジルコニウムテトラエトキシド、四塩化ジルコニウム、オキシ塩化ジルコニウム、ジルコニウムテトライソプロポキシド、ジルコニウムテトラアセチルアセトナート、ジルコニウムジイソプロポキシドジアセチルアセトナート(Zr(acac)2(O-iPr)2)、
タンタルペンタメトキシド、タンタルペンタエトキシド、五塩化タンタル、オキシ塩化タンタル、タンタルペンタイソプロポキシド、タンタルテトラエトキシアセチルアセトナート(Ta(acac)(O-C2H5)4)、タンタルジイソプロポキシドトリアセチルアセトナート(Ta(acac)3(O-iPr)2)、
三塩化アルミニウム、オキシ塩化アルミニウム、アルミニウムエトキシド、アルミニウムイソプロポキシド、アルミニウムブトキシド、アルミニウムアセチルアセトナート、アルミニウムイソプロポキシドアセチルアセトナート(Al(acac)(O-iPr)2、Al(acac)2(O-iPr))、
三塩化クロム、二塩化クロム、オキシ塩化クロム、クロム(III)エトキシド、クロム(III)イソプロポキシド、クロム(III)ブトキシド、クロム(III)アセチルアセトナート、クロム(III)イソプロポキシドアセチルアセトナート(Cr(acac)(O-iPr)2、
三塩化マンガン、二塩化マンガン、オキシ塩化マンガン、マンガン(III)エトキシド、マンガン(III)イソプロポキシド、マンガン(III)ブトキシド、マンガン(III)アセチルアセトナート、マンガン(III)イソプロポキシドアセチルアセトナート(Mn(acac)(O-iPr)2、Mn(acac)2(O-iPr))、
三塩化鉄、二塩化鉄、オキシ塩化鉄、鉄(III)エトキシド、鉄(III)イソプロポキシド、鉄(III)ブトキシド、鉄(III)アセチルアセトナート、鉄(III)イソプロポキシドアセチルアセトナート(Fe(acac)(O-iPr)2、Fe(acac)2(O-iPr))、
三塩化コバルト、二塩化コバルト、オキシ塩化コバルト、コバルト(II)エトキシド、コバルト(II)イソプロポキシド、コバルト(II)ブトキシド、コバルト(III)アセチルアセトナート、コバルト(II)イソプロポキシドアセチルアセトナート(Co(acac)(O-iPr))、コバルト(III)イソプロポキシドアセチルアセトナート(Co(acac)(O-iPr)2、Co(acac)2(O-iPr))、
二塩化ニッケル、オキシ塩化ニッケル、ニッケル(II)エトキシド、ニッケル(II)イソプロポキシド、ニッケル(II)ブトキシド、ニッケル(II)アセチルアセトナート、ニッケル(II)イソプロポキシドアセチルアセトナート(Ni(acac)(O-iPr))、
二塩化銅、オキシ塩化銅、銅(II)エトキシド、銅(II)イソプロポキシド、銅(II)ブトキシド、銅(II)アセチルアセトナート、
二塩化亜鉛、オキシ塩化亜鉛、亜鉛エトキシド、亜鉛イソプロポキシド、亜鉛ブトキシド、亜鉛イソブトキシド、亜鉛アセチルアセトナート、
四塩化ゲルマニウム、オキシ塩化ゲルマニウム、ゲルマニウム(IV)メトキシド、ゲルマニウム(IV)エトキシド、ゲルマニウム(IV)イソプロポキシド、ゲルマニウム(IV)ブトキシド、ゲルマニウム(IV)アセチルアセトナート、ゲルマニウム(IV)ジイソプロポキシドジアセチルアセトナート(Ge(acac)2(O-iPr)2)、
三塩化イットリウム、オキシ塩化イットリウム、イットリウム(III)エトキシド、イットリウム(III)イソプロポキシド、イットリウム(III)ブトキシド、イットリウム(III)アセチルアセトナート、イットリウム(III)イソプロポキシドアセチルアセトナート(Y(acac)(O-iPr)2、Y(acac)2(O-iPr))、
三塩化インジウム、オキシ塩化インジウム、インジウムエトキシド、インジウムイソプロポキシド、インジウムブトキシド、インジウムアセチルアセトナート、インジウムイソプロポキシドアセチルアセトナート(In(acac)(O-iPr)2、In(acac)2(O-iPr))、
四塩化スズ、二塩化スズ、オキシ塩化スズ、スズ(IV)メトキシド、スズ(IV)エトキシド、スズ(IV)イソプロポキシド、スズ(IV)ブトキシド、スズ(IV)アセチルアセトナート、スズ(IV)ジイソプロポキシドジアセチルアセトナート(Sn(acac)2(O-iPr)2)
六塩化タングステン、四塩化タングステン、オキシ塩化タングステン、タングステン(VI)エトキシド、タングステン(VI)イソプロポキシド、タングステン(VI)ブトキシド、タングステン(VI)アセチルアセトナート、タングステン(VI)タングステンジイソプロポキシドジアセチルアセトナート(W(acac)3(O-iPr)3)、
三塩化セリウム、オキシ塩化セリウム、セリウム(III)エトキシド、セリウム(III)イソプロポキシド、セリウム(III)ブトキシド、セリウム(III)アセチルアセトナート、セリウムイソプロポキシドアセチルアセトナート(Ce(acac)(O-iPr)2、Ce(acac)2(O-iPr))
が好ましく、
五塩化チタン、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラアセチルアセトナート、
ニオブペンタエトキシド、ニオブペンタイソプロポキシド、
四塩化ジルコニウム、オキシ塩化ジルコニウム、ジルコニウムテトライソプロポキシド、
タンタルペンタイソプロポキシド、
三塩化アルミニウム、アルミニウムエトキシド、アルミニウムイソプロポキシド、アルミニウムブトキシド、アルミニウムアセチルアセトナート、
三塩化クロム、二塩化クロム、クロム(III)エトキシド、クロム(III)アセチルアセトナート、
三塩化マンガン、二塩化マンガン、マンガン(III)エトキシド、マンガン(III)アセチルアセトナート、
三塩化鉄、二塩化鉄、鉄(III)エトキシド、鉄(III)イソプロポキシド、鉄(III)ブトキシド、鉄(III)アセチルアセトナート、
三塩化コバルト、二塩化コバルト、コバルト(II)エトキシド、コバルト(II)イソプロポキシド、コバルト(II)ブトキシド、コバルト(III)アセチルアセトナート、
二塩化ニッケル、ニッケル(II)エトキシド、ニッケル(II)イソプロポキシド、ニッケル(II)ブトキシド、ニッケル(II)アセチルアセトナート、
二塩化銅、オキシ塩化銅、銅(II)エトキシド、銅(II)イソプロポキシド、銅(II)アセチルアセトナート、
二塩化亜鉛、亜鉛エトキシド、亜鉛イソプロポキシド、亜鉛ブトキシド、亜鉛イソブトキシド、亜鉛アセチルアセトナート、
四塩化ゲルマニウム、ゲルマニウム(IV)メトキシド、ゲルマニウム(IV)エトキシド、ゲルマニウム(IV)イソプロポキシド、ゲルマニウム(IV)ブトキシド、ゲルマニウム(IV)アセチルアセトナート、
三塩化イットリウム、イットリウム(III)エトキシド、イットリウム(III)イソプロポキシド、イットリウム(III)アセチルアセトナート、
三塩化インジウム、インジウムエトキシド、インジウムイソプロポキシド、インジウムブトキシド、インジウムアセチルアセトナート、
四塩化スズ、二塩化スズ、スズ(IV)メトキシド、スズ(IV)エトキシド、スズ(IV)イソプロポキシド、スズ(IV)ブトキシド、スズ(IV)アセチルアセトナート、
六塩化タングステン、四塩化タングステン、タングステン(VI)エトキシド、タングステン(VI)イソプロポキシド、タングステン(VI)アセチルアセトナート、
三塩化セリウム、セリウム(III)エトキシド、セリウム(III)イソプロポキシド、セリウム(III)ブトキシド、セリウム(III)アセチルアセトナート
がさらに好ましい。
【0051】
また、金属元素M1として2種以上の金属元素が併用される場合には、金属元素M1のうち、金属原子のモル分率が最も高い元素(以下「金属元素M11」ともいう。)ではない金属元素として、金属元素M11とは異なる元素であって、鉄、ニッケル、クロム、コバルトおよびマンガンから選ばれる少なくとも1種の遷移金属元素M12を含む遷移金属化合物(M12)が用いられてもよい。遷移金属化合物(M12)を用いると、得られる触媒の性能が向上する。
【0052】
前記遷移金属元素M12としては、コストと得られる触媒の性能とのバランスの観点から、鉄およびクロムが好ましく、鉄がさらに好ましい。
遷移金属化合物(M12)の具体例としては、
鉄(III)エトキシド、鉄(III)イソプロポキシドアセチルアセトナート(Fe(acac)(O-iPr)2、Fe(acac)2(O-iPr))、鉄(III)アセチルアセトナート、トリス(2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオン)鉄(III)、鉄(III)ヘキサフルオロアセチルアセトナート、塩化鉄(II)、塩化鉄(III)、硫酸鉄(III)、硫化鉄(II)、硫化鉄(III)、フェロシアン化カリウム、フェリシアン化カリウム、フェロシアン化アンモニウム、フェリシアン化アンモニウム、フェロシアン化鉄、硝酸鉄(II)、硝酸鉄(III)、シュウ酸鉄(II)、シュウ酸鉄(III)、リン酸鉄(II)、リン酸鉄(III)フェロセン、水酸化鉄(II)、水酸化鉄(III)、酸化鉄(II)、酸化鉄(III)、四酸化三鉄、酢酸鉄(II)、乳酸鉄(II)、クエン酸鉄(III)等の鉄化合物;
ニッケル(II)エトキシド、ニッケル(II)イソプロポキシドアセチルアセトナート(Ni(acac)(O-iPr))、ニッケル(II)アセチルアセトナート、塩化ニッケル(II)、硫酸ニッケル(II)、硫化ニッケル(II)、硝酸ニッケル(II)、シュウ酸ニッケル(II)、リン酸ニッケル(II)、ニッケルセン、水酸化ニッケル(II)、酸化ニッケル(II)、酢酸ニッケル(II)、乳酸ニッケル(II)等のニッケル化合物;
クロム(III)エトキシド、クロム(III)イソプロポキシドアセチルアセトナート(Cr(acac)(O-iPr)2、Cr(acac)2(O-iPr))、クロム(III)アセチルアセトナート、塩化クロム(II)、塩化クロム(III)、硫酸クロム(III)、硫化クロム(III)、硝酸クロム(III)、シュウ酸クロム(III)、リン酸クロム(III)、水酸化クロム(III)、酸化クロム(II)、酸化クロム(III)、酸化クロム(IV)、酸化クロム(VI)、酢酸クロム(II)、酢酸クロム(III)、乳酸クロム(III)等のクロム化合物;
コバルト(III)エトキシド、コバルト(III)イソプロポキシドアセチルアセトナート(Co(acac)(O-iPr)2、Co(acac)2(O-iPr))、コバルト(III)アセチルアセトナート、塩化コバルト(II)、塩化コバルト(III)、硫酸コバルト(II)、硫化コバルト(II)、硝酸コバルト(II)、硝酸コバルト(III)、シュウ酸コバルト(II)、リン酸コバルト(II)、コバルトセン、水酸化コバルト(II)、酸化コバルト(II)、酸化コバルト(III)、四酸化三コバルト、酢酸コバルト(II)、乳酸コバルト(II)等のコバルト化合物;
マンガン(III)エトキシド、マンガン(III)イソプロポキシドアセチルアセトナート(Mn(acac)(O-iPr)2、Mn(acac)2(O-iPr))、マンガン(III)アセチルアセトナート、トリス(2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオン)マンガン(III)、マンガン(III)ヘキサフルオロアセチルアセトン、塩化マンガン(II)、硫酸マンガン(II)、硫化マンガン(II)、硝酸マンガン(II)、シュウ酸マンガン(II)、水酸化マンガン(II)、酸化マンガン(II)、酸化マンガン(III)、酢酸マンガン(II)、乳酸マンガン(II)、クエン酸マンガン等のマンガン化合物;
が挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0053】
これらの化合物の中でも、
鉄(III)エトキシド、鉄(III)イソプロポキシドアセチルアセトナート、鉄(III)アセチルアセトナート、塩化鉄(II)、塩化鉄(III)、フェロシアン化カリウム、フェリシアン化カリウム、フェロシアン化アンモニウム、フェリシアン化アンモニウム、酢酸鉄(II)、乳酸鉄(II)、硝酸鉄(II)、
ニッケル(III)エトキシド、ニッケル(III)イソプロポキシドアセチルアセトナート、ニッケル(III)アセチルアセトナート、塩化ニッケル(II)、塩化ニッケル(III)、酢酸ニッケル(II)、乳酸ニッケル(II)、硝酸ニッケル(II)、
クロム(III)エトキシド、クロム(III)イソプロポキシドアセチルアセトナート、クロム(III)アセチルアセトナート、塩化クロム(II)、塩化クロム(III)、酢酸クロム(II)、酢酸クロム(III)、乳酸クロム(III)、硝酸クロム(III)、
コバルト(III)エトキシド、コバルト(III)イソプロポキシドアセチルアセトナート、コバルト(III)アセチルアセトナート、塩化コバルト(II)、塩化コバルト(III)、酢酸コバルト(II)、乳酸コバルト(II)、硝酸コバルト(II)、
マンガン(III)エトキシド、マンガン(III)イソプロポキシドアセチルアセトナート、マンガン(III)アセチルアセトナート、塩化マンガン(II)、酢酸マンガン(II)、乳酸マンガン(II)、硝酸マンガン(II)が好ましく、
塩化鉄(II)、塩化鉄(III)、フェロシアン化カリウム、フェリシアン化カリウム、フェロシアン化アンモニウム、フェリシアン化アンモニウム、酢酸鉄(II)、乳酸鉄(II)、塩化クロム(II)、塩化クロム(III)、酢酸クロム(II)、酢酸クロム(III)、乳酸クロム(III)がさらに好ましい。
【0054】
工程(Ia)で用いられる前記遷移金属化合物(M12)の割合を、金属元素M1の原子に占める遷移金属元素M12の原子数の割合αに換算すると、αの範囲は、好ましくは0.01≦α≦0.45、さらに好ましくは0.02≦α≦0.4、特に好ましくは0.05≦α≦0.3である。
【0055】
<窒素含有有機化合物(2)>
前記窒素含有有機化合物(2)としては、前記金属化合物(M1)中の金属原子に配位可能な配位子となり得る化合物(好ましくは、単核の錯体を形成し得る化合物)が好ましく、多座配位子(好ましくは、2座配位子または3座配位子)となり得る(キレートを形成し得る)化合物がさらに好ましい。
【0056】
前記窒素含有有機化合物(2)は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
前記窒素含有有機化合物(2)は、好ましくは、アミノ基、ニトリル基、イミド基、イミン基、ニトロ基、アミド基、アジド基、アジリジン基、アゾ基、イソシアネート基、イソチオシアネート基、オキシム基、ジアゾ基、ニトロソ基などの官能基、またはピロール環、ポルフィリン環、ピロリジン環、イミダゾール環、トリアゾール環、ピリジン環、ピペリジン環、ピリミジン環、ピラジン環、プリン環等の環(これらの官能基および環をまとめて「含窒素分子団」ともいう。)を有する。
【0057】
前記窒素含有有機化合物(2)は、含窒素分子団を分子内に有すると、工程(Ia)での混合を経て、前記金属化合物(M1)に由来する金属原子により強く配位することができると考えられる。
【0058】
前記含窒素分子団の中では、アミノ基、イミン基、アミド基、ピロール環、ピリジン環およびピラジン環がより好ましく、アミノ基、イミン基、ピロール環およびピラジン環がさらに好ましく、アミノ基およびピラジン環が、得られる触媒の活性が特に高くなることから、特に好ましい。
【0059】
前記窒素含有有機化合物(2)(ただし、酸素原子を含まない。)の具体例としては、メラミン、エチレンジアミン、エチレンジアミン、トリアゾール、アセトニトリル、アクリロニトリル、エチレンイミン、アニリン、ピロールおよびポリエチレンイミンならびにこれらの塩などが挙げられ、これらの中でも、得られる触媒の活性が高いことからエチレンジアミンおよびエチレンジアミン・二塩酸塩が好ましい。
【0060】
前記窒素含有有機化合物(2)は、好ましくは、さらに水酸基、カルボキシル基、アルデヒド基、酸ハライド基、スルホ基、リン酸基、ケトン基、エーテル基またはエステル基(これらをまとめて「含酸素分子団」ともいう。)を有する。前記窒素含有有機化合物(2)は、含酸素分子団を分子内に有すると、工程(Ia)での混合を経て、前記金属化合物(M1)に由来する金属原子により強く配位できると考えられる。
【0061】
前記含酸素分子団の中では、カルボキシル基およびアルデヒド基が、得られる触媒の活性が特に高くなることから、特に好ましい。
分子中に酸素原子を含む前記窒素含有有機化合物(2)としては、前記含窒素分子団および前記含酸素分子団を有する化合物が好ましい。このような化合物は、工程(Ia)を経て、前記金属化合物(M1)に由来する金属原子に特に強く配位できると考えられる。
【0062】
前記含窒素分子団および前記含酸素分子団を有する化合物としては、アミノ基およびカルボキシル基を有するアミノ酸、ならびにその誘導体が好ましい。
前記アミノ酸としては、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、シスチン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシン、バリン、ノルバリン、グリシルグリシン、トリグリシンおよびテトラグリシンが好ましく、得られる触媒の活性が高いことから、アラニン、グリシン、リシン、メチオニン、チロシンがより好ましく、得られる触媒が極めて高い活性を示すことから、アラニン、グリシンおよびリシンが特に好ましい。
【0063】
分子中に酸素原子を含む前記窒素含有有機化合物(2)の具体例としては、上記アミノ酸等に加えて、アセチルピロールなどのアシルピロール類、ピロールカルボン酸、アセチルイミダゾールなどのアシルイミダゾール類、カルボニルジイミダゾール、イミダゾールカルボン酸、ピラゾール、アセトアニリド、ピラジンカルボン酸、ピペリジンカルボン酸、ピペラジンカルボン酸、モルホリン、ピリミジンカルボン酸、ニコチン酸、2−ピリジンカルボン酸、2,4−ピリジンジカルボン酸、8−キノリノール、およびポリビニルピロリドンが挙げられ、得られる触媒の活性が高いことから、2座配位子となり得る化合物、具体的にはピロール−2−カルボン酸、イミダゾール−4−カルボン酸、2−ピラジンカルボン酸、2,3−ピラジンジカルボン酸、2−ピペリジンカルボン酸、2−ピペラジンカルボン酸、ニコチン酸、2−ピリジンカルボン酸、2,4−ピリジンジカルボン酸、および8−キノリノールが好ましく、2−ピラジンカルボン酸、2,3−ピラジンジカルボン酸および2−ピリジンカルボン酸がより好ましい。
【0064】
工程(Ia)で用いられる前記金属化合物(M1)の金属元素の総原子数Aに対する、工程(Ia)で用いられる前記窒素含有有機化合物(2)の炭素の総原子数Bの比(B/A)は、工程(II)での熱処理時に二酸化炭素、一酸化炭素等の炭素化合物として脱離する成分を少なくすることが可能であり、すなわち触媒製造時に排気ガスを少量とすることができることから、好ましくは200以下、より好ましくは150以下、さらに好ましくは80以下、特に好ましくは30以下であり、良好な活性の触媒を得るという観点から、好ましくは1以上、より好ましくは2以上、さらに好ましくは3以上、特に好ましくは5以上である。
【0065】
工程(Ia)で用いられる前記金属化合物(M1)の金属元素の総原子数Aに対する、工程(Ia)で用いられる前記窒素含有有機化合物(2)の窒素の総原子数Cの比(C/A)は、良好な活性の触媒を得るという観点から、好ましくは28以下、より好ましくは17以下、さらに好ましくは12以下、特に好ましくは8.5以下であり、良好な活性の触媒を得るという観点から、好ましくは1以上、より好ましくは2.5以上、さらに好ましくは3以上、特に好ましくは3.5以上である。
【0066】
<金属化合物(M3)>
アルカリ金属およびアルカリ土類金属からなる群から選ばれる金属元素M3の化合物(金属化合物(M3))としては、カリウム、ナトリウム、ルビジウム、セシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウムまたはバリウムの水酸化物、炭酸塩、硫酸塩、硝酸塩、酢酸塩、塩化物などが挙げられ、たとえば、
水酸化カリウム、炭酸カリウム、硫酸カリウム、硝酸カリウム、酢酸カリウム、塩化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、硝酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、酢酸マグネシウム、塩化マグネシウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、硝酸カルシウム、酢酸カルシウム、塩化カルシウム、、水酸化バリウム、炭酸バリウム、硫酸バリウム、硝酸バリウム、酢酸バリウム、塩化バリウムなどが挙げられ、
水酸化カリウム、炭酸カリウム、酢酸カリウム、塩化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、酢酸マグネシウム、塩化マグネシウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、酢酸カルシウム、塩化カルシウム、水酸化バリウム、炭酸バリウム、酢酸バリウムおよび塩化バリウムが好ましい。
【0067】
工程(Ia)で用いられる前記金属化合物(M3)の量は、前記金属化合物(M3)に含まれる金属元素M3の量(すなわち、工程(Ia)で用いられる前記化合物(M3)に含まれる金属元素M3の総原子数)に換算すると、前記金属化合物(M1)の中の金属元素M1の原子1モルに対して、通常0.05〜1モル、好ましくは0.05〜0.8モル、さらに好ましくは0.1〜0.5モルである。
【0068】
<フッ素含有化合物(4)>
工程(I−1)において、さらにフッ素を含有する化合物(以下「フッ素含有化合物(4)」または「化合物(4)」ともいう。)も混合することによって、さらに高い触媒活性を有する電極触媒を製造することができる。
【0069】
前記フッ素含有化合物(4)は、好ましくは以下の(i)または(ii)を満たす;
(i):0.1MPa、150℃(より好ましくは、200℃、さらに好ましくは250℃)において、固体または液体である。
(ii):0.1MPaにおいて、150℃以上(より好ましくは、200℃以上、さらに好ましくは250℃以上)、かつ、500℃未満の分解温度を有する。
【0070】
前記フッ素含有化合物(4)が上記(i)または(ii)を満たすと、より多くのフッ素原子を、得られる電極触媒中に残存させることができると考えられる。
前記フッ素を含有する化合物の具体例としては、フッ素を含有するホウ酸誘導体、フッ素を含有するリン酸誘導体、フッ素を含有するスルホン酸誘導体、フッ素原子を含有するアルコール、フッ素原子を含有するエーテル、フッ素原子を含有するカルボン酸およびフッ素原子を含有するアミン等が挙げられる。
【0071】
前記フッ素を含有するホウ酸誘導体としては、たとえば、
テトラフルオロホウ酸四級アンモニウム塩(たとえば、テトラフルオロホウ酸テトラ−n−ブチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸テトラメチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸テトラエチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸テトラプロピルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸テトラブチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸エチルトリメチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸ジエチルジメチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸トリエチルメチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸メチルトリプロピルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸エチルトリプロピルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸トリメチルプロピルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸エチルジメチルプロピルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸ジエチルメチルプロピルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸トリエチルプロピルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸ジメチルジプロピルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸エチルメチルジプロピルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸ジエチルジプロピルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸トリメチルブチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸エチルジメチルブチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸ジエチルメチルブチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸トリエチルブチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸トリプロピルブチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸ジメチルジブチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸エチルメチルジブチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸ジエチルジブチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸へキシルトリメチルアンモニウム(前記プロピルはn−プロピル、i−プロピルを含み、前記ブチルはn−ブチル、i−ブチル、s−ブチル、t−ブチルを含む。))、
テトラフルオロホウ酸四級ピリジニウム塩(たとえば、テトラフルオロホウ酸ピリジニウム、テトラフルオロホウ酸1−メチルピリジニウム、テトラフルオロホウ酸2−ブロモ−1−エチルピリジニウム、テトラフルオロホウ酸1−ブチルピリジニウム)、
テトラフルオロホウ酸四級イミダゾリウム塩(たとえば、テトラフルオロホウ酸1,3−ジメチルイミダゾリウム、テトラフルオロホウ酸1−エチル−3−メチルイミダゾリウム、テトラフルオロホウ酸1,3−ジエチルイミダゾリウム、テトラフルオロホウ酸1,2−ジメチル−3−エチルイミダゾリウム、テトラフルオロホウ酸1,2−ジメチル−3−プロピルイミダゾリウム、テトラフルオロホウ酸1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム)、
アルキル基の水素原子の全部または一部がフッ素原子で置換されたフルオロアルキルホウ酸(たとえば、ノナコサデカフルオロテトラデシルホウ酸、ヘプタコサデカフルオロトリデシルホウ酸、ペンタコサデカフルオロドデシルホウ酸、トリコサデカフルオロウンデシルホウ酸、ヘンイコサデカフルオロデシルホウ酸、ノナデカフルオロノニルホウ酸、ヘプタデカフルオロオクチルホウ酸、ペンタデカフルオロヘプチルホウ酸、トリデカフルオロヘキシルホウ酸、ウンデカフルオロペンチルホウ酸、ノナフルオロブチルホウ酸、ヘプタフルオロプロピルホウ酸、ペンタフルオロエチルホウ酸、トリフルオロメチルホウ酸および2,2,2−トリフルオロエチルホウ酸)
前記フルオロアルキルホウ酸のモノエステルおよびジエステル(たとえば、メチルエステル、エチルエステル)、および
前記フルオロアルキルホウ酸の塩(たとえば、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、メチルアンモニウム塩、ジメチルアンモニウム塩、トリメチルアンモニウム塩、およびトリエチルアンモニウム塩)、
が挙げられる。
【0072】
前記フッ素を含有するホウ酸誘導体として、好ましくはテトラフルオロホウ酸アンモニウム、テトラフルオロホウ酸メチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸ジメチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸トリメチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸エチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸ジエチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸トリエチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸ブチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸ジブチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸トリブチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸テトラ−n−ブチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸テトラメチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸テトラエチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸テトラプロピルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸テトラブチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸−1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムが挙げられ、より好ましくはテトラフルオロホウ酸アンモニウム、テトラフルオロホウ酸ブチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸テトラエチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸−1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムが挙げられる。
【0073】
前記フッ素を含有するリン酸誘導体としては、
ヘキサフルオロリン酸塩、たとえば、ヘキサフルオロリン酸四級アンモニウム塩(たとえば、ヘキサフルオロリン酸テトラ‐n‐ブチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸テトラメチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸テトラエチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸テトラプロピルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸テトラブチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸エチルトリメチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸ジエチルジメチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸トリエチルメチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸メチルトリプロピルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸エチルトリプロピルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸トリメチルプロピルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸エチルジメチルプロピルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸ジエチルメチルプロピルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸トリエチルプロピルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸ジメチルジプロピルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸エチルメチルジプロピルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸ジエチルジプロピルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸トリメチルブチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸エチルジメチルブチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸ジエチルメチルブチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸トリエチルブチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸トリプロピルブチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸ジメチルジブチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸エチルメチルジブチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸ジエチルジブチルアンモニウム、テトラフルオロリン酸へキシルトリメチルアンモニウム(前記プロピルはn−プロピル、i−プロピル、前記ブチルはn−ブチル、i−ブチル、s−ブチル、t−ブチルを含む。)、
ヘキサフルオロリン酸四級ピリジニウム塩(たとえば、ヘキサフルオロリン酸ピリジニウム、ヘキサフルオロリン酸1−メチルピリジニウム、ヘキサフルオロリン酸2−ブロモ−1−エチルピリジニウム)、
テトラフルオロリン酸四級イミダゾリウム塩(たとえば、テトラフルオロリン酸1,3−ジメチルイミダゾリウム、テトラフルオロリン酸1−エチル−3−メチルイミダゾリウム、テトラフルオロリン酸1,3−ジエチルイミダゾリウム、テトラフルオロリン酸1,2−ジメチル−3−エチルイミダゾリウム、テトラフルオロリン酸1,2−ジメチル−3−プロピルイミダゾリウム、テトラフルオロリン酸1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム)、
ヘキサフルオロリン酸、
前記ヘキサフルオロリン酸の塩(たとえば、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、アルキルアンモニウム(たとえば、メチルアンモニウム、ジメチルアンモニウム、トリメチルアンモニウム、エチルアンモニウム、ジエチルアンモニウム、およびトリエチルアンモニウム)塩)、
一般式:(RO)nP=Oで表わされるフルオロアルキルリン酸エステル(式中、nは1〜3であり、Rはアルキル基の水素原子の全部または一部がフッ素原子で置換されたフルオロアルキル基(たとえば、ノナコサデカフルオロテトラデシル基、ノナコサデカフルオロテトラデシル基、ヘプタコサデカフルオロトリデシル基、ペンタコサデカフルオロドデシル基、トリコサデカフルオロウンデシル基、ヘンイコサデカフルオロデシル基、ノナデカフルオロノニル基、ヘプタデカフルオロオクチル基、ペンタデカフルオロヘプチル基、トリデカフルオロヘキシル基、ウンデカフルオロペンチル基、ノナフルオロブチル基、ヘプタフルオロプロピル基、ペンタフルオロエチル基、トリフルオロメチル基および2,2,2−トリフルオロエチル基)である。)
一般式:(RN)3P=O、(RN)2P=O(OH)、または(RN)P=O(OH)2(式中、Rは前記フルオロアルキル基を表す。)で表されるフルオロアルキルリン酸アミド、
一般式(RO)3P、(RO)2(OH)P、または(RO)(OH)2P(式中、前記フルオロアルキル基を表す。)で表わされるフルオロアルキル亜リン酸、
一般式(RN)3P、(RN)2P(OH)、(RN)P(OH)2(式中、Rは前記フルオロアルキル基を表す。)で表わされるフルオロアルキル亜リン酸アミド、
一般式:RPO(OH)2(式中、Rは前記フルオロアルキル基を表す。)で表わされるフルオロアルキルホスホン酸
が挙げられる。
【0074】
前記フッ素を含有するリン酸誘導体として、好ましくはヘキサフルオロリン酸アンモニウム、ヘキサフルオロリン酸メチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸ジメチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸トリメチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸エチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸ジエチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸トリエチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸ブチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸ジブチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸トリブチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸テトラ‐n‐ブチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸テトラメチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸テトラエチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸テトラプロピルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸テトラブチルアンモニウムが挙げられ、より好ましくはヘキサフルオロリン酸アンモニウム、ヘキサフルオロリン酸テトラエチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸−1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムが挙げられる。
【0075】
前記フッ素を含有するスルホン酸誘導体としては、
テトラフルオロエチレンとパーフルオロ[2−(フルオロスルホニルエトキシ)プロピルビニルエーテル]との共重合体(たとえば、ナフィオン(NAFION(登録商標)、下式で表わされる構造を有する共重合体))、
【0076】
【化1】
アルキル基の水素原子の全部または一部がフッ素原子で置換されたフルオロアルキルスルホン酸(炭素原子数は、たとえば1〜30である。)(たとえば、ノナコサデカフルオロテトラデカンスルホン酸、ヘプタコサデカフルオロトリデカンスルホン酸、ペンタコサデカフルオロドデカンスルホン酸、トリコサデカフルオロウンデカンスルホン酸、ヘンイコサデカフルオロデカンスルホン酸、ノナデカフルオロノナンスルホン酸、ヘプタデカフルオロオクタンスルホン酸、ペンタデカフルオロヘプタンスルホン酸、トリデカフルオロヘキサンスルホン酸、ウンデカフルオロペンタンスルホン酸、ノナフルオロブタンスルホン酸、ヘプタフルオロプロパンスルホン酸、ペンタフルオロエタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸および2,2,2−トリフルオロエタンスルホン酸)、
前記フルオロアルキルスルホン酸のエステル(たとえば、メチルエステル、エチルエステル、アリールエステル(例えば、フェニルエステル))、
前記フルオロアルキルスルホン酸の塩(一般式:A[RSO3]、Rは前記フルオロアルキル基を表す。)(ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、アルキルアンモニウム(たとえば、メチルアンモニウム、ジメチルアンモニウム、トリメチルアンモニウム、エチルアンモニウム、ジエチルアンモニウム、およびトリエチルアンモニウム)塩)、
前記フルオロアルキルスルホン酸のアミド(一般式:R−SO2−NR1R2、Rは前記フルオロアルキル基を、R1およびR2はそれぞれ独立に、水素原子の全部または一部がフッ素原子で置換されていてもよい炭素原子数1〜10の炭化水素基(たとえば、メチル基、エチル基、フェニル基)表す。)、
前記フルオロアルキルスルホン酸の酸無水物(一般式:(R−SO2)2O、Rは前記フルオロアルキル基を表す。)、
前記フルオロアルキルスルホン酸のハロゲン化物(一般式:(R−SO2)X、Rは前記フルオロアルキル基を表す。Xはフッ素、塩素、臭素、ヨウ素を表す。)
が挙げられる。
【0077】
前記フッ素を含有するスルホン酸誘導体としては、好ましくは、テトラフルオロエチレンとパーフルオロ[2−(フルオロスルホニルエトキシ)プロピルビニルエーテル]との共重合体(たとえば、ナフィオン(NAFION(登録商標))、ヘプタデカフルオロオクタンスルホン酸、ペンタデカフルオロヘプタンスルホン酸、トリデカフルオロヘキサンスルホン酸、ウンデカフルオロペンタンスルホン酸、ノナフルオロブタンスルホン酸、ヘプタフルオロプロパンスルホン酸、ペンタフルオロエタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ヘプタデカフルオロオクタンスルホン酸アンモニウム、ペンタデカフルオロヘプタンスルホン酸アンモニウム、トリデカフルオロヘキサンスルホン酸アンモニウム、ウンデカフルオロペンタンスルホン酸アンモニウム、ノナフルオロブタンスルホン酸アンモニウム、ヘプタフルオロプロパンスルホン酸アンモニウム、ペンタフルオロエタンスルホン酸アンモニウム、トリフルオロメタンスルホン酸アンモニウム、トリフルオロメタンスルホン酸トリメチルアンモニウム、トリフルオロメタンスルホン酸トリエチルアンモニウム、トリフルオロメタンスルホン酸トリブチルアンモニウム、トリフルオロメタンスルホン酸テトラメチルアンモニウム、トリフルオロメタンスルホン酸テトラエチルアンモニウム、トリフルオロメタンスルホン酸テトラブチルアンモニウム、トリフルオロメタンスルホン酸メチル、トリフルオロメタンスルホン酸エチル、ノナフルオロ−1−ブタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸第一鉄、トリフルオロメタンスルホン酸無水物が挙げられ、
より好ましくは、トリフルオロメタンスルホン酸、ヘプタデカフルオロオクタンスルホン酸、ノナフルオロ−1−ブタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸テトラブチルアンモニウム、ヘプタデカフルオロオクタンスルホン酸アンモニウム、トリフルオロメタンスルホン酸第一鉄が挙げられ、
さらに、界面活性能がある骨格つまり、分子内に疎水性部位と親水性部位が存在すると反応系内の安定化がはかれるのでさらに好ましい。
【0078】
前記アルコールおよびその誘導体としては、たとえば、
炭化水素基の水素原子の全部または一部がフッ素原子で置換された飽和または不飽和の脂肪族アルコール(炭素原子数は、たとえば1〜30である。)、たとえばノナコサデカフルオロテトラデシルアルコール、ノナコサデカフルオロテトラデシルアルコール、ヘプタコサデカフルオロトリデシルアルコール、ペンタコサデカフルオロドデシルアルコール、トリコサデカフルオロウンデカンアルコール、ヘンイコサデカフルオロデシルアルコール、ノナデカフルオロノニルアルコール、ヘプタデカフルオロオクチルアルコール、ペンタデカフルオロヘプチルアルコール、トリデカフルオロヘキシルアルコール、ウンデカフルオロペンチルアルコール、ノナフルオロブチルアルコール、ヘプタフルオロプロピルアルコール、ペンタフルオロエチルアルコール、トリフルオロメチルアルコール、2,2,2−トリフルオロエチルアルコール、6−パーフルオロヘキシルヘキサノール、2,5−ジ(トリフロロメチル)−3,6−ジオキソウンデカフルオロノナノール、パーフルオローメチルエチルヘキサノール、ドデカフルオロヘプタノール、オクタフルオロヘキサンジオールおよびドデカフルオロオクタンジオールなどのフルオロアルキルアルコール
が挙げられる。
【0079】
これらは、1種単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
前記アルコールまたはその誘導体は、好ましくは、一分子中に3個以上のフッ素原子を有する。
【0080】
前記エーテルは、式Rf−O−Rf’(RfおよびRf’は、それぞれ独立に、水素原子の全部または一部がフッ素原子で置換された炭化水素基である。)で表される。RfおよびRf’としては、たとえばノナコサデカフルオロテトラデシル基、ヘプタコサデカフルオロトリデシル基、ペンタコサデカフルオロドデシル基、トリコサデカフルオロウンデシル基、ヘンイコサデカフルオロデシル基、ノナデカフルオロノニル基、ヘプタデカフルオロオクチル基、ペンタデカフルオロヘプチル基、トリデカフルオロヘキシル基、ウンデカフルオロペンチル基、ノナフルオロブチル基、ヘプタフルオロプロピル基、ペンタフルオロエチル基、トリフルオロメチル基および2,2,2−トリフルオロエチル基などのフルオロアルキル基が挙げられ、RfおよびRf’はアリール基を有する基(たとえばフェニル基、ピリジル基)であってもよい。
【0081】
前記エーテルとしては、たとえば、
式[-[(CF2-CF2)-(CH2-CH(OR))n-]で表される構造を有する、テトラフルオロエチレン(CF2=CF2)とビニルエーテル(CH2=CHOR)との交互共重合により得られる交互共重合体(たとえば、ルミフロン(登録商標)(旭硝子(株)))、
フッ素ポリアリールエーテルケトン、フッ素ポリシアノアリールエーテル、3-(2-パーフルオロヘキシルエトキシ)-1,2-ジヒドロキシプロパン、
【0082】
【化2】
で表される化合物、
【0083】
【化3】
で表される化合物、
市販品であれば、ノベックTMHFE(商品名)(ハイドロフルオロエーテル、菱江化学(株))、ノベックTMHFE(商品名)(ハイドロフルオロエーテル、3M社)
が挙げられる。
【0084】
前記エーテルとして、含フッ素系界面活性剤であるサーフロン(登録商標)S−241、S−242、S−243、S−420(AGCセイミケミカル(株))、フタージェント(登録商標)250((株)ネオス)などを用いてもよい。
【0085】
これらは、1種単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
前記エーテルまたはその誘導体は、好ましくは、一分子中に3個以上のフッ素原子を有する。
【0086】
前記アミンおよびその誘導体としては、たとえば、
式Rf−NR1R2(Rfは、水素原子の全部または一部がフッ素原子で置換された飽和または不飽和の脂肪族炭化水素基であり、R1およびR2は、それぞれ独立に、水素原子または、水素原子の全部もしくは一部がフッ素原子で置換されていてもよい炭素原子数1〜10の炭化水素基である。)で表される飽和または不飽和の脂肪族アミン(Rfの炭素原子数は、たとえば1〜30である。)、たとえばノナコサデカフルオロテトラデシルアミン、ヘプタコサデカフルオロトリデシルアミン、ペンタコサデカフルオロドデシルアミン、トリコサデカフルオロウンデシルアミン、ヘンイコサデカフルオロデシルアミン、ノナデカフルオロノニルアミン、ヘプタデカフルオロオクチルアミン、ペンタデカフルオロヘプチルアミン、トリデカフルオロヘキシルアミン、ウンデカフルオロペンチルアミン、ノナフルオロブチルアミン、ヘプタフルオロプロピルアミン、ペンタフルオロエチルアミン、トリフルオロメチルアミンおよび2,2,2−トリフルオロエチルアミンなどのフルオロアルキルアミン;
前記フルオロアルキルアミンの塩(一般式:A+[R4N]-;A+は、たとえばナトリウムイオン、カリウムイオン、アンモニウムイオンを表し、Rはそれぞれ独立に前記フルオロアルキルアミン中のフルオロアルキル基を表す。)(たとえば塩酸塩、硫酸塩、カルボン酸塩、燐酸塩)が挙げられる。
【0087】
前記アミンまたはその塩として、含フッ素系界面活性剤であるサーフロン(登録商標)S−221、AGCセイミケミカル(株))、フタージェント(登録商標)300((株)ネオス)などを用いてもよい。
【0088】
これらは、1種単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
前記アミンまたはその誘導体は、好ましくは、一分子中に3個以上のフッ素原子を有する。
【0089】
前記カルボン酸およびその誘導体としては、たとえば、
炭化水素基の水素原子の全部または一部がフッ素原子で置換された飽和または不飽和の脂肪族カルボン酸(炭素原子数は、たとえば1〜30である。)、たとえばノナコサデカフルオロテトラデカン酸、ノナコサデカフルオロテトラデカン酸、ヘプタコサデカフルオロトリデカン酸、ペンタコサデカフルオロドデカン酸、トリコサデカフルオロウンデカン酸、ヘンイコサデカフルオロデカン酸、ノナデカフルオロノナン酸、ヘプタデカフルオロオクタン酸、ペンタデカフルオロヘプタン酸、トリデカフルオロヘキサン酸、ウンデカフルオロペンタン酸、ノナフルオロブタン酸、ヘプタフルオロプロパン酸、ペンタフルオロ酢酸、トリフルオロ酢酸、2,2,2−トリフルオロエチルカルボン酸、テトラフルオロクエン酸、ヘキサフルオログルタミン酸およびオクタフルオロアジピン酸などのフルオロアルキルカルボン酸;
アリール基中の水素原子の一部または全部が前記フルオロアルキルカルボン酸中のフルオロアルキル基で置換された芳香族カルボン酸、たとえばトリフルオロメチル安息香酸、トリフルオロメチルサリチル酸、トリフルオロメチルニコチン酸;
前記脂肪族カルボン酸のエステル(たとえば、メチルエステル、エチルエステル、アリールエステル(たとえば、フェニルエステル)、前記フッ素原子を含有するアルコールのエステル)、たとえばヘプタデカフルオロオクタン酸メチル、ヘプタデカフルオロオクタン酸エチル、ヘプタデカフルオロオクタン酸フェニル、ヘプタデカフルオロオクタン酸ヘプタデカフルオロオクチルエステル;
フッ素ポリアリールエーテルポリアリールエーテルエステル;
前記脂肪族カルボン酸の塩(たとえば、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、アルキルアンモニウム(たとえば、メチルアンモニウム、ジメチルアンモニウム、トリメチルアンモニウム、エチルアンモニウム、ジエチルアンモニウム、およびトリエチルアンモニウム)塩、前記フルオロアルキルアミンの塩)、たとえばヘプタデカフルオロオクタン酸アンモニウム、ヘプタデカフルオロオクタン酸ナトリウム、ヘプタデカフルオロオクタン酸トリエチルアンモニウム;
前記脂肪族カルボン酸のアミド(一般式:Rf−CO−NR1R2、Rfは前記脂肪族カルボン酸中のフルオロアルキル基を、R1およびR2はそれぞれ独立に、水素原子の全部または一部がフッ素原子で置換されていてもよい炭素原子数1〜10の炭化水素基(たとえば、メチル基、エチル基、フェニル基)表す。)たとえば、ヘプタデカフルオロオクタン酸アミド、ヘプタデカフルオロオクタン酸ジエチルアミド、ヘプタデカフルオロオクタン酸ヘプタデカフルオロオクチルアミド;
フッ素ポリアリールエーテルアミド;
フッ素ポリアリールエーテルイミド;
前記脂肪族カルボン酸の酸無水物(一般式:(Rf−CO)2O、Rfは前記脂肪族カルボン酸中のフルオロアルキル基を表す。)、たとえばヘプタデカフルオロオクタン酸無水物;
アミノ酸(たとえば、前記フルオロアルキルカルボン酸中のフルオロアルキル基を有するアミノ酸);
前記のカルボン酸またはその誘導体から誘導され得る置換基を有する有機化合物(高分子化合物であってもよい。)
が挙げられる。
【0090】
前記カルボン酸またはその誘導体として、含フッ素系界面活性剤であるサーフロン(登録商標)S−211、S−212(アミノ酸系) AGCセイミケミカル(株))、フタージェント(登録商標)501、150((株)ネオス)などを用いてもよい。
【0091】
これらは、1種単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
前記カルボン酸またはその誘導体は、好ましくは、一分子中に3個以上のフッ素原子を有する。
【0092】
また化合物(4)に含まれるフッ素原子の量(すなわち、工程(Ia)で用いられる前記化合物(4)に含まれるフッ素の総原子数)は、前記金属化合物(M1)の中の金属原子1モルに対して、通常0.01〜5モル、好ましくは0.02〜4モル、さらに好ましくは0.03〜3モルである。
【0093】
上記の化合物(4)の量は、前記工程(Ia)で用いられる化合物(4)以外の原料がフッ素を含まない場合の量であり、化合物(4)以外の原料がフッ素を含む場合には、工程(Ia)における化合物(4)の使用量を適宜減らすことが好ましい。
【0094】
<溶媒>
前記溶媒としては、たとえば水、アルコール類および酸類が挙げられる。アルコール類としては、エタノール、メタノール、ブタノール、プロパノールおよびエトキシエタノールが好ましく、エタノールおよびメタノールがさらに好ましい。酸類としては、酢酸、硝酸(水溶液)、塩酸、リン酸水溶液およびクエン酸水溶液が好ましく、酢酸および硝酸がさらに好ましい。これらは、1種単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0095】
前記金属化合物(M1)が金属ハロゲン化物の場合の溶媒としてはメタノールが好ましい。
前記溶媒は、溶液である触媒前駆体材料の100質量%中にたとえば50〜95質量%となるような量で用いてもよい。
【0096】
<沈殿抑制剤>
前記溶媒を用いる場合であって、前記金属化合物(M1)が、ハロゲン原子を含む場合には、これらの化合物は一般的に水によって容易に加水分解され、水酸化物や、酸塩化物等の沈殿を生じやすい。よって、前記金属化合物(M1)がハロゲン原子を含み、沈殿物の生成を抑制する場合には、強酸を1質量%以上添加することが好ましい。たとえば酸が塩酸であれば、溶液中の塩化水素の濃度が5質量%以上、より好ましくは10質量%以上となるように酸を添加すると、前記金属化合物(M1)に由来する、水酸化物、酸塩化物等の沈殿の発生を抑制しつつ、溶液である触媒前駆材料を得ることができる。
【0097】
また、前記金属化合物(M1)がハロゲン原子を含む場合には、前記溶媒としてアルコール類を単独で用い、かつ酸を添加することなく、溶液である触媒前駆材料を得てもよい。
【0098】
前記金属化合物(M1)が金属錯体であって、かつ前記溶媒として水を単独でまたは水と他の化合物とを用いる場合にも、水酸化物または酸塩化物の沈殿の発生を抑制するための沈殿抑制剤を用いることが好ましい。この場合の沈殿抑制剤としては、ジケトン構造を有する化合物が好ましく、ジアセチル、アセチルアセトン、2,5−ヘキサンジオンおよびジメドンがより好ましく、アセチルアセトンおよび2,5−ヘキサンジオンがさらに好ましい。
【0099】
これらの沈殿抑制剤は、金属化合物溶液(金属化合物(M1)を含有し、前記窒素含有有機化合物(2)を含有しない溶液)100質量%中に好ましくは1〜70質量%、より好ましくは、2〜50質量%、さらに好ましくは15〜40質量%となる量で添加される。
【0100】
これらの沈殿抑制剤は、溶液である触媒前駆材料100質量%中に好ましくは0.1〜40質量%、より好ましくは、0.5〜20質量%、さらに好ましくは2〜10質量%となる量で添加される。
【0101】
前記沈殿抑制剤は、工程(Ia)の中でのいずれの段階で添加されてもよい。
工程(Ia)では、好ましくは、前記金属化合物(M1)および前記沈殿抑制剤を含む溶液を調製して、次いでこの溶液と他の成分とを混合して溶液である触媒前駆材料を得る。このように工程(Ia)を実施すると、前記沈殿の発生をより確実に抑制することができる。
【0102】
(工程(Ib))
工程(Ia)と工程(II)との間で、溶液である触媒前駆材料から溶媒を除去しても良い。
【0103】
溶媒の除去は大気下で行ってもよく、溶媒除去の温度下における不活性ガス(例えば、窒素、アルゴン、ヘリウム)雰囲気下で行ってもよい。不活性ガスとしては、コストの観点から、窒素ガスおよびアルゴンガスが好ましく、窒素ガスがより好ましい。
【0104】
溶媒除去の際の温度は、溶媒の蒸気圧が大きい場合には常温であってもよいが、触媒の量産性の観点からは、好ましくは30℃以上、より好ましくは40℃以上、さらに好ましくは50℃以上であり、工程(Ia)で溶媒を用いる場合に得られる溶液中に含まれる、キレート等の金属錯体であると推定される物質を分解させないという観点からは、好ましくは350℃以下、より好ましくは150℃以下、さらに好ましくは110℃以下である。
【0105】
溶媒の除去は、溶媒の蒸気圧が大きい場合には大気圧下で行ってもよいが、より短時間で溶媒を除去するため、減圧(たとえば、0.1Pa〜0.1MPa)下で行ってもよい。減圧下での溶媒の除去には、たとえばエバポレーターを用いることができる。
【0106】
溶媒の除去は、工程(Ia)で得られた混合物を静置した状態で行ってもよいが、より均一な固形分残渣を得るためには、混合物を回転させながら溶媒を除去することが好ましい。
【0107】
前記混合物を収容している容器の質量が大きい場合は、撹拌棒、撹拌羽根、撹拌子などを用いて、溶液を回転させることが好ましい。
また、前記混合物を収容している容器の真空度を調節しながら溶媒の除去を行う場合には、密閉できる容器で乾燥を行うこととなるため、容器ごと回転させながら溶媒の除去を行うこと、たとえばロータリーエバポレーターを使用して溶媒の除去を行うことが好ましい。
【0108】
溶媒の除去の方法、あるいは工程(Ia)で混合される各成分の性状によっては、工程(Ib)で得られた固形分残渣の組成または凝集状態が不均一であることがある。このような場合に、固形分残渣を、混合し、解砕して、より均一、微細な粉末としたものを工程(II)で用いると、粒径がより均一な触媒を得ることができる。
【0109】
固形分残渣を混合し、解砕するには、たとえば、ロール転動ミル、ボールミル、小径ボールミル(ビーズミル)、媒体撹拌ミル、気流粉砕機、乳鉢、自動混練乳鉢、槽解機、ジェトミルを用いることができ、固形分残渣が少量であれば、好ましくは、乳鉢、自動混練乳鉢、またはバッチ式のボールミルが用いられ、固形分残渣が多量であり連続的な混合、解砕処理を行う場合には、好ましくはジェットミルが用いられる。
【0110】
(工程(II))
工程(II)では、前記触媒前駆材料を熱処理する。
この熱処理の際の温度は、500〜1100℃程度であり、前記触媒前駆材料を工程(I−1)を経て得る場合であれば、500〜1100℃であり、好ましくは600〜1050℃であり、より好ましくは700〜950℃である。
【0111】
熱処理の温度が上記範囲にあると、高い活性を有する電極触媒を得ることができる。
前記熱処理の方法としては、たとえば、静置法、攪拌法、落下法、粉末捕捉法が挙げられる。
【0112】
静置法とは、静置式の電気炉などに前記触媒前駆材料(好ましくは、固形である触媒前駆材料。)を置き、これを加熱する方法である。加熱の際に、量り取った前記触媒前駆材料は、アルミナボード、石英ボードなどのセラミックス容器に入れてもよい。静置法は、大量の前記触媒前駆材料を加熱することができる点で好ましい。
【0113】
攪拌法とは、ロータリーキルンなどの電気炉中に前記触媒前駆材料(好ましくは、固形である触媒前駆材料。)を入れ、これを攪拌しながら加熱する方法である。攪拌法の場合は、大量の前記触媒前駆材料を加熱することができ、かつ、得られる熱処理物の粒子の凝集および成長を抑制することができる点で好ましい。さらに、撹拌法は、加熱炉に傾斜をつけることによって、連続的に熱処理物が得られる点で好ましい。
【0114】
落下法とは、誘導炉中に雰囲気ガスを流しながら、炉を所定の加熱温度まで加熱し、該温度で熱的平衡を保った後、炉の加熱区域である坩堝中に前記触媒前駆材料を落下させ、これを加熱する方法である。落下法は、得られる熱処理物の粒子の凝集および成長を最小限度に抑制できる点で好ましい。前記触媒前駆材料が溶液である場合には、この加熱の際に、まず溶媒が除去されると考えられる。
【0115】
粉末捕捉法とは、微量の酸素ガスを含む不活性ガス雰囲気中で、固形である前記触媒前駆材料を飛沫にして浮遊させ、これを所定の加熱温度に保たれた垂直の管状炉中に捕捉して、加熱する方法である。
【0116】
前記静置法で熱処理を行う場合には、昇温速度は、特に限定されないが、好ましくは1℃/分〜100℃/分程度であり、さらに好ましくは5℃/分〜50℃/分である。また、加熱時間は、好ましくは0.1〜10時間、より好ましくは0.5時間〜5時間、さらに好ましくは0.5〜3時間である。静置法において加熱を管状炉で行なう場合、触媒前駆材料の加熱時間は、0.1〜10時間、好ましくは0.5時間〜5時間である。前記加熱時間が前記範囲内であると、均一な電極触媒熱処理物の粒子が形成される傾向がある。
【0117】
前記攪拌法の場合、前記触媒前駆材料の加熱時間は、通常10分〜5時間であり、好ましくは30分〜2時間である。本法において、炉に傾斜をつけるなどして連続的に加熱を行う場合は、定常的な炉内のサンプル流量から計算された平均滞留時間を前記加熱時間とする。
【0118】
前記落下法の場合、前記触媒前駆材料の加熱時間は、通常0.5〜10分であり、好ましくは0.5〜3分である。前記加熱時間が前記範囲内であると、均一な熱処理物の粒子が形成される傾向がある。
【0119】
前記粉末捕捉法の場合、前記触媒前駆材料の加熱時間は、0.2秒〜1分、好ましくは0.2〜10秒である。前記加熱時間が前記範囲内であると、均一な熱処理物の粒子が形成される傾向にある。
【0120】
前記静置法で熱処理を行う場合には、熱源としてLNG(液化天然ガス)、LPG(液化石油ガス)、軽油、重油、電気などを用いた加熱炉を熱処理装置として用いてもよい。この場合、本発明においては前記触媒前駆材料を熱処理する際の雰囲気が重要であるので、燃料の炎が炉内に存在する、炉の内部から加熱する装置ではなく、炉の外部からの加熱する装置が好ましい。
【0121】
前記触媒前駆材料の量が1バッチあたり50kg以上となるような加熱炉を用いる場合には、コストの観点から、LNG,LPGを熱源とする加熱炉が好ましい。
触媒活性の特に高い電極触媒を得たい場合には、厳密な温度制御が可能な、電気を熱源とした電気炉を用いることが望ましい。
【0122】
炉の形状としては、管状炉、上蓋型炉、トンネル炉、箱型炉、試料台昇降式炉(エレベーター型)、台車炉などが挙げられ、この中でも雰囲気を特に厳密にコントロールすることが可能な、管状炉、上蓋型炉、箱型炉および試料台昇降式炉が好ましく、管状炉および箱型炉が好ましい。
【0123】
前記撹拌法を採用する場合も、上記の熱源を用いることができるが、撹拌法の中でもとくにロータリーキルンに傾斜をつけて、前記触媒前駆材料を連続的に熱処理する場合には、設備の規模が大きくなり、エネルギー使用量が大きくなりやすいので、LPG等燃料由来の熱源を利用することが好ましい。
【0124】
前記熱処理を行う際の雰囲気としては、得られる電極触媒の活性を高める観点から、その主成分が不活性ガスである雰囲気が好ましい。不活性ガスの中でも、比較的安価であり、入手しやすい点で窒素、アルゴン、ヘリウムが好ましく、窒素およびアルゴンがさらに好ましい。これらの不活性ガスは、1種単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。なお、これらのガスは一般的な通念上不活性といわれるガスであるが、工程(II)の前記熱処理の際にこれらの不活性ガスすなわち、窒素、アルゴン、ヘリウム等が、前記触媒前駆材料と反応している可能性はある。
【0125】
また、前記熱処理の雰囲気中に反応性ガスが存在すると、得られる電極触媒がより高い触媒性能を発現することがある。たとえば、前記熱処理を、窒素ガス、アルゴンガスもしくは窒素ガスとアルゴンガスとの混合ガス、または窒素ガスおよびアルゴンガスから選ばれる一種以上のガスと、水素ガス、アンモニアガスおよび酸素ガスから選ばれる一種以上のガスとの混合ガスの雰囲気で行うと、高い触媒性能を有する電極触媒が得られる傾向にある。
【0126】
前記熱処理の雰囲気中に水素ガスが含まれる場合には、水素ガスの濃度は、たとえば100体積%以下、好ましくは0.01〜10体積%、より好ましくは1〜5体積%である。
【0127】
前記熱処理の雰囲気中に酸素ガスが含まれる場合には、酸素ガスの濃度は、たとえば0.01〜10体積%、好ましくは0.01〜5体積%である。
前記熱処理の際の圧力は特に制限されず、製造の安定性とコストなどを考慮して大気圧下で熱処理を行ってもよい。
【0128】
前記熱処理の後には、熱処理物を解砕してもよい。解砕を行うと、得られた電極触媒を用いて電極を製造する際の加工性、および得られる電極の特性を改善できることがある。この解砕には、たとえば、ロール転動ミル、ボールミル、小径ボールミル(ビーズミル)、媒体撹拌ミル、気流粉砕機、乳鉢、自動混練乳鉢、槽解機またはジェトミルを用いることができる。電極触媒が少量の場合には、乳鉢、自動混練乳鉢、バッチ式のボールミルが好ましく、熱処理物を連続的に多量に処理する場合には、ジェットミル、連続式のボールミルが好ましく、連続式のボールミルの中でもビーズミルがさらに好ましい。
【0129】
(工程(III))
工程(III)では、工程(II)で得られた熱処理物からアルカリ金属およびアルカリ土類金属からなる群から選ばれる前記金属元素M3の原子を除去して電極触媒を得る。
【0130】
前記金属元素M3の原子を除去する方法としては、前記熱処理物を水または酸と接触させる方法などが挙げられ、好ましくは前記熱処理物を酸と接触させる方法、さらに好ましくは前記熱処理物を酸および水に順次接触させる方法が挙げられる。より具体的には、たとえば、前記熱処理物を大過剰の水で洗浄する方法が挙げられ、好ましくは、前記水で洗浄する前に、前記熱処理物を酸溶液中に浸漬し金属元素M3を酸溶液に溶出させておく方法が挙げられる。前記溶出にはオートクレーブを用いても良い。
【0131】
前記熱処理物を酸と接触させて前記金属元素M3の原子を除去する方法においては、酸としては、塩酸、硫酸、硝酸などの鉱酸や、酢酸、クエン酸、シュウ酸などの有機酸などが挙げられ、好ましくは塩酸、硝酸、硫酸、酢酸などが挙げられる。熱処理物を酸とを接触させる時間は、たとえば0.5〜12時間、好ましくは1〜8時間である。この接触時間を長くする、酸のpHを下げるなどにより、より多くの前記金属元素M3の原子を除去することができる。
【0132】
前記触媒前駆材料中の前記金属元素M3の原子の割合が高く、かつ工程(III)における前記金属元素M3の原子の除去量が多いほど、比表面積が大きい電極触媒粒子を得ることができる。
【0133】
[燃料電池用電極触媒]
本発明の燃料電池用電極触媒(以下、単に「触媒」ともいう)は、上述した本発明の燃料電池用電極触媒の製造方法により製造されることを特徴としている。
【0134】
本発明の燃料電池用電極触媒の製造方法によれば、比表面積の大きな燃料電池用電極触媒が製造され、本発明の触媒のBET法で算出される比表面積は、好ましくは200〜2000m2/g、より好ましくは400〜1800m2/g、さらに好ましくは500〜1500m2/g、特に好ましくは1000〜1500m2/gである。
【0135】
前記触媒(A)の、下記測定法(A)に従って測定される酸素還元開始電位は、可逆水素電極を基準として好ましくは0.70V(vs.RHE)以上、より好ましくは0.80V(vs.RHE)以上、さらに好ましくは0.85V以上である。
【0136】
〔測定法(A):
電子伝導性物質であるカーボンに分散させた触媒が1質量%となるように、該触媒及びカーボンを溶剤中に入れ、超音波で攪拌し懸濁液を得る。なお、カーボンとしては、カーボンブラック(比表面積:100〜300m2/g)(例えばキャボット社製 VULCAN(登録商標) XC72)を用い、触媒とカーボンとが質量比で95:5になるように分散させる。また、溶剤としては、イソプロピルアルコール:水(質量比)=2:1を用いる。
【0137】
前記懸濁液を、超音波をかけながら30μLを採取し、すばやくグラッシーカーボン電極(直径:6mm)上に滴下し、120℃で5分間乾燥させる。乾燥することにより触媒を含む燃料電池用触媒層が、グラッシーカーボン電極上に形成される。この滴下及び乾燥操作を、カーボン電極表面に1.0mg以上の燃料電池触媒層が形成されるまで行う。
【0138】
次いで5%ナフィオン(NAFION(登録商標))溶液(DE−521、デュポン社)をイソプロピルアルコールで10倍に希釈したものを、さらに前記燃料電池用触媒層上に10μL滴下する。これを、120℃で1時間乾燥する。
【0139】
このようにして、得られた電極を用いて、酸素雰囲気及び窒素雰囲気で、0.5mol/Lの硫酸水溶液中、30℃の温度で、同濃度の硫酸水溶液中での可逆水素電極を参照電極とし、5mV/秒の電位走査速度で分極することにより電流−電位曲線を測定した際の、酸素雰囲気での還元電流と窒素雰囲気での還元電流とに0.2μA/cm2以上の差が現れ始める電位を酸素還元開始電位とする。〕
本発明において、酸素還元電流密度は、以下のとおり求めることができる。
【0140】
まず、上記測定法(A)の結果から、特定の電位(たとえば0.80V(vsRHE))における、酸素雰囲気での還元電流と窒素雰囲気での還元電流との差を算出する。算出した値を、さらに電極面積で除した値を酸素還元電流密度(mA/cm2)とする。
【0141】
[用途]
本発明の触媒は、白金触媒の代替触媒として使用することができる。
本発明の燃料電池用触媒層は、前記触媒を含むことを特徴としている。
【0142】
燃料電池用触媒層には、アノード触媒層、カソード触媒層があるが、前記触媒はいずれにも用いることができる。前記触媒は、耐久性に優れ、酸素還元能が大きいので、カソード触媒層に用いることが好ましい。
【0143】
本発明の燃料電池用触媒層は、好ましくは、電子伝導性粉末をさらに含む。前記触媒を含む燃料電池用触媒層がさらに電子伝導性粉末を含む場合には、還元電流をより高めることができる。電子伝導性粉末は、前記触媒に、電気化学的反応を誘起させるための電気的接点を生じさせるため、還元電流を高めると考えられる。
【0144】
前記電子伝導性粒子は通常、触媒の担体として用いられる。
前記触媒はある程度の導電性を有するが、触媒により多くの電子を与える、あるいは、反応基質が触媒から多くの電子を受け取るために、触媒に、導電性を付与するための担体粒子を混合してもよい。これらの担体粒子は、工程(II)〜工程(III)を経て製造された触媒に混合されてもよく、工程(I)〜工程(III)のいずれかの段階で混合されてもよい。
【0145】
電子伝導性粒子の材質としては、炭素、導電性高分子、導電性セラミックス、金属または酸化タングステンもしくは酸化イリジウムなどの導電性無機酸化物が挙げられ、それらを1種単独または組み合わせて用いることができる。特に、炭素からなる電子伝導性粒子は比表面積が大きいため、また、安価に小粒径のものを入手しやすく、耐薬品性、耐高電位性に優れるため、炭素単独または炭素とその他の電子伝導性粒子との混合物が好ましい。すなわち燃料電池用触媒層としては、前記触媒と炭素とを含むことが好ましい。
【0146】
炭素としては、カーボンブラック、グラファイト、活性炭、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、カーボンナノホーン、フラーレン、多孔体カーボン、グラフェンなどが挙げられる。炭素からなる電子伝導性粒子の粒径は、小さすぎると電子伝導パスが形成されにくくなり、また大きすぎると燃料電池用触媒層のガス拡散性の低下や触媒の利用率の低下が起こる傾向があるため、好ましくは10〜1000nmであり、より好ましくは10〜100nmである。
【0147】
電子伝導性粒子が炭素からなる場合、前記触媒と電子伝導性粒子との質量比(触媒:電子伝導性粒子)は、好ましくは4:1〜1000:1である。
前記導電性高分子としては特に限定は無いが、例えばポリアセチレン、ポリ−p−フェニレン、ポリアニリン、ポリアルキルアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリインドール、ポリ−1,5−ジアミノアントラキノン、ポリアミノジフェニル、ポリ(o−フェニレンジアミン)、ポリ(キノリニウム)塩、ポリピリジン、ポリキノキサリン、ポリフェニルキノキサリン等が挙げられる。これらの中でも、ポリピロール、ポリアニリン、ポリチオフェンが好ましく、ポリピロールがより好ましい。
【0148】
本発明の燃料電池用触媒層は、好ましくは、高分子電解質をさらに含む。前記高分子電解質としては、燃料電池用触媒層において一般的に用いられているものであれば特に限定されない。具体的には、スルホン酸基を有するパーフルオロカーボン重合体(例えば、ナフィオン(NAFION(登録商標)))、スルホン酸基を有する炭化水素系高分子化合物、リン酸などの無機酸をドープさせた高分子化合物、一部がプロトン伝導性の官能基で置換された有機/無機ハイブリッドポリマー、高分子マトリックスにリン酸溶液や硫酸溶液を含浸させたプロトン伝導体などが挙げられる。これらの中でも、ナフィオン(NAFION(登録商標))が好ましい。前記燃料電池用触媒層を形成する際のナフィオン(NAFION(登録商標))の供給源としては、5%ナフィオン(NAFION(登録商標))溶液(DE−521、デュポン社)などが挙げられる。
【0149】
本発明の燃料電池用触媒層は、アノード触媒層またはカソード触媒層のいずれにも用いることができる。本発明の燃料電池用触媒層は、高い酸素還元能を有し、酸性電解質中において高電位であっても腐蝕しがたい触媒を含むため、燃料電池のカソードに設けられる触媒層(カソード用触媒層)として有用である。特に固体高分子型燃料電池が備える膜電極接合体のカソードに設けられる触媒層に好適に用いられる。
【0150】
前記触媒を、担体である前記電子伝導性粒子上に分散させる方法としては、気流分散、液中分散等の方法が挙げられる。液中分散は、溶媒中に触媒および電子伝導性粒子を分散したものを、燃料電池用触媒層形成工程に使用できるため好ましい。液中分散としては、オリフィス収縮流による方法、回転せん断流による方法または超音波による方法等があげられる。液中分散の際、使用される溶媒は、触媒や電子伝導性粒子を浸食することがなく、分散できるものであれば特に制限はないが、揮発性の液体有機溶媒または水等が一般に使用される。
【0151】
また、前記触媒を、前記電子伝導性粒子上に分散させる際、さらに上記電解質と分散剤とを同時に分散させてもよい。
燃料電池用触媒層の形成方法としては、特に制限はないが、たとえば、前記触媒と電子伝導性粒子と電解質とを含む懸濁液を、後述する電解質膜またはガス拡散層に塗布する方法が挙げられる。前記塗布する方法としては、ディッピング法、スクリーン印刷法、ロールコーティング法、スプレー法などが挙げられる。また、前記触媒と電子伝導性粒子と電解質とを含む懸濁液を、塗布法またはろ過法により基材に燃料電池用触媒層を形成した後、転写法で電解質膜に燃料電池用触媒層を形成する方法が挙げられる。
【0152】
本発明の電極は、前記燃料電池用触媒層と多孔質支持層とを有することを特徴としている。
本発明の電極はカソードまたはアノードのいずれの電極にも用いることができる。本発明の電極は、耐久性に優れ、触媒能が大きいので、カソードに用いるとより産業上の優位性が高い。
【0153】
多孔質支持層とは、ガスを拡散する層(以下「ガス拡散層」とも記す。)である。ガス拡散層としては、電子伝導性を有し、ガスの拡散性が高く、耐食性の高いものであれば何であっても構わないが、一般的にはカーボンペーパー、カーボンクロスなどの炭素系多孔質材料や、軽量化のためにステンレス、耐食材を被服したアルミニウム箔が用いられる。
【0154】
本発明の膜電極接合体は、カソードとアノードと前記カソードおよび前記アノードの間に配置された電解質膜とを有する膜電極接合体であって、前記カソードおよび/または前記アノードが、前記電極であることを特徴としている。
【0155】
前記膜電極接合体における触媒能は、たとえば、以下のように算出される最大出力密度により評価することができる。
まず、前記膜電極接合体11を、シール材(ガスケット12)、ガス流路付きセパレーター13、および集電板14を挟んでボルトで固定し、所定の面圧(4N)になるように締め付けて、固体高分子型燃料電池の単セルを作成する。
【0156】
アノード側に燃料として水素を流量1リットル/分で供給し、カソード側に酸化剤として酸素を流量2リットル/分で供給し、両側ともに300kPaの背圧をかけながら、前記単セル温度90℃における電流―電圧特性を測定する。得られる電流―電圧特性の曲線から最大出力密度を算出する。最大出力密度が大きいほど、前記膜電極接合体における触媒能が高いことを示す。当該最大出力密度は、好ましくは400mW/cm2以上であり、より好ましくは600mW/cm2以上であり、その上限は、たとえば1000mW/cm2程度である。
【0157】
電解質膜としては、例えば、パーフルオロスルホン酸系を用いた電解質膜または炭化水素系電解質膜などが一般的に用いられるが、高分子微多孔膜に液体電解質を含浸させた膜または多孔質体に高分子電解質を充填させた膜などを用いてもよい。
【0158】
また本発明の燃料電池は、前記膜電極接合体を備えることを特徴としている。
燃料電池の電極反応はいわゆる3相界面(電解質‐電極触媒‐反応ガス)で起こる。燃料電池は、使用される電解質などの違いにより数種類に分類され、溶融炭酸塩型(MCFC)、リン酸型(PAFC)、固体酸化物型(SOFC)、固体高分子型(PEFC)等がある。中でも、本発明の膜電極接合体は、固体高分子型燃料電池に使用することが好ましい。
【0159】
本発明の触媒を用いた燃料電池は性能が高く、また、白金を触媒として用いた場合と比較してきわめて安価であるという特徴を持つ。本発明の燃料電池は、発電機能、発光機能、発熱機能、音響発生機能、運動機能、表示機能および充電機能からなる群より選ばれる少なくとも一つの機能を有し燃料電池を備える物品の性能、特に携帯可能な物品の性能を向上させることができる。前記燃料電池は、好ましくは物品の表面または内部に備えられる。
【0160】
<本発明の燃料電池を備えた物品の具体例>
本発明の燃料電池を備えることができる前記物品の具体例としては、ビル、家屋、テント等の建築物、蛍光灯、LED等、有機EL、街灯、屋内照明、信号機等の照明器具、機械、車両そのものを含む自動車用機器、家電製品、農業機器、電子機器、携帯電話等を含む携帯情報端末、美容機材、可搬式工具、風呂用品トイレ用品等の衛生機材、家具、玩具、装飾品、掲示板、クーラーボックス、屋外発電機などのアウトドア用品、教材、造花、オブジェ、心臓ペースメーカー用電源、ペルチェ素子を備えた加熱および冷却器用の電源が挙げられる。
【実施例】
【0161】
以下に、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
実施例および比較例における各種測定は、下記の方法により行なった。
【0162】
[分析方法]
1.粉末X線回折測定
理学電機株式会社製 ロータフレックスを用いて、試料の粉末X線回折を行った。
【0163】
測定条件の詳細は以下のとおりである。
X線出力(Cu−Kα):50kV、180mA
走査軸:θ/2θ
測定範囲(2θ):10.00°〜89.98°
測定モード:FT
読込幅:0.02°
サンプリング時間:0.70秒
DS、SS、RS:0.5°、0.5°、0.15mm
ゴニオメーター半径:185mm
各試料の粉末X線回折における回折線ピークの本数は、信号(S)とノイズ(N)の比(S/N)が2以上で検出できるシグナルを1つのピークとしてみなして数えた。
【0164】
なお、ノイズ(N)は、ベースラインの幅とした。
2.BET比表面積測定
島津製作所株式会社製 マイクロメリティクス ジェミニ2360を用いてBET比表面積を測定した。前処理時間、前処理温度は、それぞれ30分、200℃に設定した。
【0165】
3.酸素還元能の評価
(1)燃料電池用電極の製造
実施例および比較例で得られた各触媒について、触媒95mgとカーボン(キャボット社製 VULCAN(登録商標) XC72)5mgとを、イソプロピルアルコール:純水=2:1の質量比で混合した溶液10gに入れ、超音波で撹拌、懸濁して混合した。この混合物30μlをグラッシーカーボン電極(東海カーボン社製、直径:6mm)に塗布し、120℃で5分間乾燥して、カーボン電極表面に1.0mg以上の燃料電池用触媒層が形成した。さらに、燃料電池用触媒層の上に5%ナフィオン(NAFION(登録商標))溶液(DE−521、デュポン社)を10倍にイソプロピルアルコールで希釈したもの10μlを塗布し、120℃で1時間乾燥し、燃料電池用電極を得た。
【0166】
(2)酸素還元能の評価
作製した燃料電池用電極を、酸素雰囲気および窒素雰囲気で、0.5mol/Lの硫酸水溶液中、30℃、5mV/秒の電位走査速度で分極し、それぞれ電流−電位曲線を測定した。その際、同濃度の硫酸水溶液中での可逆水素電極を参照電極とした。
【0167】
上記測定結果から、酸素雰囲気での還元電流と窒素雰囲気での還元電流とに0.2μA/cm2以上差が現れ始める電位を酸素還元開始電位とした。また、0.75Vおよび0.80V(vsRHE)における、酸素雰囲気での還元電流と窒素雰囲気での還元電流との差を算出した。算出した値をさらに電極面積で除した値を、酸素還元電流密度(mA/cm2)とした。
【0168】
酸素還元開始電位および酸素還元電流密度により、作製した燃料電池用電極の触媒能を評価した。
すなわち、酸素還元開始電位が高いほど、酸素還元電流密度が大きいほど、燃料電池用電極における触媒の触媒能が高いことを示す。
【0169】
[参考例1]
ビーカーに、アセチルアセトン2.60g(25.9mmol)を入れ、これを攪拌しながらチタンイソプロポキシド5.00ml(17.6mmol)を加え、さらに酢酸16mlを2分間かけて滴下し、チタン溶液(1)を調製した。
【0170】
ビーカーに、水60ml、エタノール50ml、および酢酸60mlを入れ、ここにピラジンカルボン酸8.74g(70.4mmol)を加えて、超音波洗浄器を用いた超音波の照射により完全に溶解させた。得られた溶液に、これを攪拌しながら、ナフィオン(NAFION(登録商標))(DE−521、デュポン社)10.0ml、および炭酸ナトリウム190mg(1.76mmol)を加え、さらに酢酸鉄(II)290mg(1.67mmol)を少量ずつ加えて10分程かけて完全に溶解させた。次に温度を室温に保ちながら、かつ攪拌しながら、上記のチタン溶液(1)を10分間かけて滴下し、滴下後さらに30分間攪拌を行い、溶液である触媒前駆材料を得た。
【0171】
ロータリーエバポレーターを用い、窒素雰囲気の減圧下で、ホットスターラーの温度を約100℃に設定し、前記触媒前駆材料を攪拌しながら、溶媒をゆっくり蒸発させた。完全に溶媒を蒸発させて得られた固形物残渣を自動乳鉢ですり潰して、11.0gの固形物残渣の粉末(1)を得た。
【0172】
3.60gの前記固形物残渣の粉末(1)を、ロータリーキルン炉に水素ガスを4体積%含む窒素ガス(すなわち、水素ガス:窒素ガス=4体積%:96体積%の混合ガス)を20ml/分の速度で流しながら、昇温速度10℃/分で890℃まで加熱し、890℃で0.5時間焼成し、自然冷却することにより、粉末状の熱処理物(1)539mgを得た。
【0173】
熱処理物(1)の評価結果を、表1、図1(熱処理物(1)の粉末X線回折スペクトル)および図2(熱処理物(1)を触媒として用いた燃料電池用電極の酸素還元能の測定結果)に示す。
【0174】
[実施例1]
前記熱処理物(1)の全量および10%の塩酸水溶液50mlを、フラスコ内で6時間攪拌した後、ろ過した。次いで、残渣を純水(pH7〜8)で洗浄しろ過する操作を、ろ液のpHが7になるまで行い、粉末を得た。
【0175】
得られた粉末を80℃で12時間乾燥させ、次いで自動乳鉢で30分間すり潰して、触媒(1)236mgを得た。
触媒(1)の評価結果を、表1、図3(触媒(1)の粉末X線回折スペクトル)および図4(触媒(1)を用いた燃料電池用電極(1)の酸素還元能の測定結果)に示す。
【0176】
[参考例2]
炭酸ナトリウムの量を380mg(3.52mmol)に変更したこと以外は参考例1における熱処理物(1)の製造方法と同様の操作を行い、熱処理物(2)625mgを得た。なお、この過程で得られた固形物残渣の粉末(2)の質量は11.3gであった。
【0177】
熱処理物(2)の評価結果を、表1、図5(熱処理物(2)の粉末X線回折スペクトル)および図6(熱処理物(2)を触媒として用いた燃料電池用電極の酸素還元能の測定結果)に示す。
【0178】
[実施例2]
熱処理物(1)を500mgの熱処理物(2)に変更したこと以外は実施例1と同様の操作を行い、触媒(2)151mgを得た。
【0179】
触媒(2)の評価結果を、表1、図7(触媒(2)の粉末X線回折スペクトル)および図8(触媒(2)を用いた燃料電池用電極(2)の酸素還元能の測定結果)に示す。
[参考例3]
ビーカーに、メタノール100mlを入れ、これを攪拌しながら二塩化亜鉛5.58g(40.9mmol)、ナフィオン(NAFION(登録商標))(DE−521、デュポン社)25.0ml、酢酸鉄(II)711mg(4.09mmol)順次加えた。得られた液に、ピラジンカルボン酸20.3g(164mmol)を少量ずつ加え、3時間攪拌を行った後、さらに炭酸ナトリウム867mg(8.18mmol)を蒸留水30mlに溶解した液を加え、溶液である触媒前駆材料を得た。
【0180】
ロータリーエバポレーターを用い、窒素雰囲気の減圧下で、ホットスターラーの温度を約100℃に設定し、前記触媒前駆材料を攪拌しながら、溶媒をゆっくり蒸発させた。次に、窒素気流下、300℃で、1時間乾燥し、固形物残渣を自動乳鉢ですり潰して、9.50gの固形物残渣の粉末(3)を得た。
【0181】
固形物残渣の粉末(1)を固形物残渣の粉末(3)(3.60g)に変更したこと以外は参考例1と同様の操作を行い、熱処理物(3)668mgを得た。
熱処理物(3)の評価結果を、表1、図9(熱処理物(3)の粉末X線回折スペクトル)および図10(熱処理物(3)を触媒として用いた燃料電池用電極の酸素還元能の測定結果)に示す。
【0182】
[実施例3]
熱処理物(1)を500mgの熱処理物(3)に変更したこと以外は実施例1と同様の操作を行い、触媒(3)226mgを得た。
【0183】
触媒(3)の評価結果を、表1、図11(触媒(3)の粉末X線回折スペクトル)および図12(触媒(3)を用いた燃料電池用電極(3)の酸素還元能の測定結果)に示す。
[比較例1]
〔活性炭のアルカリ処理〕
市販の椰子殻活性炭(BET比表面積1617m2 /g)を120℃で1時間真空加熱処理した。フラスコ内に1モル/リットルの水酸化カリウム水溶液500mlを準備し、ここへ真空加熱処理した活性炭10gを添加した。活性炭と水酸化カリウム水溶液との混合物を、ロータリーエバポレーターを用いて40〜60℃で加熱しながら攪拌し、水がなくなるまで濃縮した。得られた活性炭2gを管状炉に入れ、水素ガスを4体積%含む窒素ガス(すなわち、水素ガス:窒素ガス=4体積%:96体積%の混合ガス)の雰囲気下で昇温速度10℃/minで900℃まで加熱し、900℃で3時間保持し、自然冷却することにより粉末状の熱処理物(c1)を得た。熱処理物(c1)を水500mlで洗浄しろ過した。次いで、残渣を純水で洗浄しろ過する操作を、ろ液のpHが7付近になるまで行い、残渣を乾燥させて活性炭(c1)を得た。
【0184】
この活性炭(c1)の評価結果を、表1および図13(活性炭(c1)を触媒として用いた燃料電池用電極(c1)の酸素還元能の測定結果)に示す。
【0185】
【表1】
【技術分野】
【0001】
本発明は燃料電池用電極触媒の製造方法、燃料電池用電極触媒およびその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
高分子固体型燃料電池は、高分子固体電解質をアノードとカソードとで挟み、アノードに燃料を供給し、カソードに酸素または空気を供給して、カソードで酸素が還元されて電気を取り出す形式の燃料電池である。燃料には水素またはメタノールなどが主として用いられる。
【0003】
従来、燃料電池の反応速度を高め、燃料電池のエネルギー変換効率を高めるために、燃料電池のカソード(空気極)表面やアノード(燃料極)表面には、触媒を含む層(以下「燃料電池用触媒層」とも記す。)が設けられていた。
【0004】
この触媒として、一般的に貴金属が用いられており、貴金属の中でも高い電位で安定であり、活性が高い白金、パラジウムなどの貴金属が主として用いられてきた。しかし、これらの貴金属は価格が高く、また資源量が限られていることから、代替可能な触媒の開発が求められていた。
【0005】
また、カソード表面に用いる貴金属は、酸性雰囲気下では溶解する場合があり、長期間に渡る耐久性が必要な用途には適さないという問題があった。このため酸性雰囲気下で腐食せず、耐久性に優れ、高い酸素還元能を有する触媒の開発が強く求められていた。
【0006】
このような貴金属代替触媒として、特許文献1にはニオブの炭窒酸化物からなる触媒が開示されている。特許文献1に記載された触媒は、従来の貴金属代替触媒に比べて極めて高性能であるが、実施例に具体的に開示された触媒のBET比表面積は大きくても119m2/gであった。
【0007】
また、特許文献2には、酸化物と炭素材料前駆体との混合材料を焼成することを特徴とする電極触媒の製造方法が開示されているが、実施例に具体的に開示された触媒のBET比表面積は大きくても127m2/gであった。
【0008】
一方、特許文献3には、燃料電池用電極触媒との関連性はないが、炭素質原料を炭化処理して炭化物にする炭化処理工程、該炭化物にアルカリ金属水酸化物及び水を混合してスラリーにする混合工程、当該スラリーを加熱する反応工程、得られた生成物を水洗する水洗工程、および水洗した生成物を乾燥する乾燥工程を順次行う活性炭の製造方法が開示され、この方法によれば、高い比表面積を有する活性炭が製造されると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第2009/031383パンフレット
【特許文献2】特開2009−255053号公報
【特許文献3】特開2011−79705号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述のように、従来の燃料電池用の貴金属代替触媒においては、比表面積を大きくして触媒性能をさらに高める余地があった。
したがって本発明は、貴金属触媒の代替となる、比表面積が大きく触媒性能が高い燃料電池用電極触媒の製造方法を提供することを目的とする。
【0011】
さらに本発明は、比表面積が大きく触媒性能が高い燃料電池用電極触媒およびその用途(電極等)を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、たとえば以下の[1]〜[13]に関する。
[1]
チタン、ニオブ、ジルコニウム、タンタル、アルミニウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ゲルマニウム、イットリウム、インジウム、スズ、タングステンおよびセリウムからなる群から選ばれる金属元素M1の原子、アルカリ金属およびアルカリ土類金属からなる群から選ばれる金属元素M3の原子、炭素原子、窒素原子ならびに酸素原子を含む触媒前駆材料を熱処理する工程(II)、ならびに
工程(II)で得られた熱処理物から前記金属元素M3の原子を除去して電極触媒を得る工程(III)
を含むことを特徴する燃料電池用電極触媒の製造方法。
【0013】
[2]
液相中で原料を混合して前記前駆材料を得る工程(I)を含むことを特徴とする上記[1]に記載の燃料電池用電極触媒の製造方法。
【0014】
[3]
前記工程(I)が、少なくとも前記金属元素M1の化合物と、窒素含有有機化合物(2)と、前記金属元素M3の化合物と、溶媒とを混合する工程(Ia)を含み、
前記工程(Ia)で用いられる成分のうち溶媒以外の少なくとも1つの成分が酸素原子を有し、
前記工程(II)において、前記前駆材料を500〜1100℃の温度で熱処理する
ことを特徴とする上記[2]に記載の燃料電池用電極触媒の製造方法。
【0015】
[4]
前記工程(I)が、前記工程(Ia)の後に前記溶媒を除去する工程(Ib)を含むことを特徴とする上記[3]に記載の燃料電池用電極触媒の製造方法。
【0016】
[5]
前記工程(Ia)において、フッ素含有化合物(4)をさらに混合することを特徴とする上記[4]に記載の燃料電池用電極触媒の製造方法。
【0017】
[6]
前記工程(III)において、工程(II)で得られた熱処理物と酸とを接触させて、前記熱処理物からアルカリ金属を除去することを特徴とする上記[1]〜[5]のいずれかに記載の燃料電池用電極触媒の製造方法。
【0018】
[7]
上記[1]〜[6]のいずれかに記載の製造方法で得られる燃料電池用電極触媒。
[8]
上記[7]に記載の燃料電池用電極触媒を含むことを特徴とする燃料電池用触媒層。
【0019】
[9]
上記[8]に記載の燃料電池用触媒層と多孔質支持層とを有することを特徴とする電極。
【0020】
[10]
カソードとアノードと前記カソードおよび前記アノードの間に配置された電解質膜とを有する膜電極接合体であって、前記カソードおよび/または前記アノードが上記[9]に記載の電極であることを特徴とする膜電極接合体。
【0021】
[11]
上記[10]に記載の膜電極接合体を備えることを特徴とする燃料電池。
[12]
固体高分子型燃料電池であることを特徴とする上記[11]に記載の燃料電池。
【0022】
[13]
発電機能、発光機能、発熱機能、音響発生機能、運動機能、表示機能および充電機能からなる群より選ばれる少なくとも一つの機能を有する物品であって、上記[11]または[12]に記載の燃料電池を備えることを特徴とする物品。
【発明の効果】
【0023】
本発明の燃料電池用電極触媒の製造方法によれば、貴金属触媒の代替となる、比表面積が大きく触媒性能が高い燃料電池用電極触媒を製造することができる。
本発明の燃料電池用電極触媒は、大きい比表面積および高い触媒活性を有し、各種用途(電極等)に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1は、参考例1の熱処理物(1)の粉末X線回折スペクトルである。
【図2】図2は、参考例1の熱処理物(1)を触媒として用いた燃料電池用電極の酸素還元電流密度−電位曲線である。
【図3】図3は、実施例1の触媒(1)の粉末X線回折スペクトルである。
【図4】図4は、実施例1の燃料電池用電極(1)の酸素還元電流密度−電位曲線である。
【図5】図5は、参考例2の熱処理物(2)の粉末X線回折スペクトルである。
【図6】図6は、参考例2の熱処理物(2)を触媒として用いた燃料電池用電極の酸素還元電流密度−電位曲線である。
【図7】図7は、実施例2の触媒(2)の粉末X線回折スペクトルである。
【図8】図8は、実施例2の燃料電池用電極(2)の酸素還元電流密度−電位曲線である。
【図9】図9は、参考例3の熱処理物(3)の粉末X線回折スペクトルである。
【図10】図10は、参考例3の熱処理物(3)を触媒として用いた燃料電池用電極の酸素還元電流密度−電位曲線である。
【図11】図11は、実施例3の触媒(3)の粉末X線回折スペクトルである。
【図12】図12は、実施例3の燃料電池用電極(3)の酸素還元電流密度−電位曲線である。
【図13】図13は、比較例1の燃料電池用電極(c1)の酸素還元電流密度−電位曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
[燃料電池用電極触媒の製造方法]
本発明の燃料電池用電極触媒の製造方法は、
チタン、ニオブ、ジルコニウム、タンタル、アルミニウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ゲルマニウム、イットリウム、インジウム、スズ、タングステンおよびセリウムからなる群から選ばれる金属元素M1の原子、アルカリ金属およびアルカリ土類金属からなる群から選ばれる金属元素M3の原子、炭素原子、窒素原子ならびに酸素原子を含む触媒前駆材料を熱処理する工程(II)、ならびに
工程(II)で得られた熱処理物から前記金属元素M3の原子を除去して電極触媒を得る工程(III)
を含むことを特徴としている。なお本明細書において、特段の事情がない限り、原子およびイオンを、厳密に区別することなく「原子」と記載する。また、ゲルマニウムを金属元素とみなす。
【0026】
(工程(I))
本発明の燃料電池用電極触媒の製造方法は、原料を混合して前記触媒前駆材料を得る工程(I)を含んでいてもよい。
【0027】
前記触媒前駆材料は、少なくとも前記金属元素M1の原子、前記金属元素M3の原子、炭素原子、窒素原子および酸素原子を含んでいる。
この金属元素M1としては、チタン、ニオブ、ジルコニウム、タンタル、アルミニウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ゲルマニウム、イットリウム、インジウム、スズ、タングステンおよびセリウムが挙げられ、チタン、ニオブ、ジルコニウム、銅、亜鉛、ゲルマニウム、インジウムおよびスズが高い触媒能力を得やすく好ましい。
【0028】
また、金属元素M3としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムなどが挙げられ、ナトリウム、カリウム、マグネシウムおよびカルシウムが、高い触媒能力を得やすく好ましい。
【0029】
この触媒前駆材料は、原料に前記金属元素M3の原子が含まれること、および金属元素M1として上記の金属の少なくとも1種が用いられることを除いて、触媒前駆材料を熱処理(焼成)して金属原子、炭素原子、窒素原子および酸素原子を含む燃料電池用電極触媒を製造する従来の方法(たとえば、特許文献1に記載の方法)における触媒前駆材料の調製方法と同様の方法で、得てもよい。
【0030】
金属元素M3は、前記触媒前駆材料中に金属の化合物として含まれる。
触媒前駆材料を得る方法としては、触媒前駆材料の原料を固相で混合する方法、および触媒前駆材料の原料を液体(以下、原料が可溶か不溶かを区別せずに「溶媒」という。)中、すなわち液相で混合する方法が挙げられ、原料をより均一に混合する観点からは、原料を液相で混合する方法が好ましい。
【0031】
原料を液相で混合する方法の場合、得られた溶液、分散液、スラリー等(以下、これらを特に区別せずに「溶液」ともいう。)を前記触媒前駆材料として熱処理に供してもよく、得られた溶液から溶媒を除去したものを前記触媒前駆材料として熱処理に供してもよい。
【0032】
前記工程(I)は、好ましくは、金属元素M1の化合物(M1)(以下「金属化合物(M1)」または「化合物(M1)」ともいう。)と、窒素を含む有機化合物(以下「窒素含有有機化合物(2)」または「化合物(2)」ともいう。)と、前記金属元素M3の化合物(以下「金属化合物(M3)」または「化合物(M3)」ともいう。)と、溶媒とを混合する工程(Ia)を含み、混合される成分のうち溶媒以外のいずれか(好ましくは、前記化合物(M1)および前記化合物(2)の少なくとも一方)に酸素原子を含む化合物を用いる工程(以下「工程(I−1)」ともいう。)であってもよい。
【0033】
以下、工程(I−1)について、さらに詳細に説明する。
(工程I−1)
工程(I−1)は、工程(Ia)を含んでおり、任意に、さらに後述する工程(Ib)を含む。
【0034】
(工程Ia)
工程(Ia)では、少なくとも金属化合物(M1)と、窒素含有有機化合物(2)と、金属化合物(M3)と、任意に後述する溶媒等とを混合して触媒前駆材料を得る。
【0035】
工程(Ia)において、前記混合の手順としては、たとえば、
手順(i):1つの容器に各成分を入れ、これらを混合する
手順(ii):1つの容器に溶媒を準備し、そこへ各成分を添加し、溶解させて、これらを混合する、
手順(iii):前記金属化合物(M1)の溶液、および他の成分の溶液を準備し、これらを混合する
が挙げられる。
【0036】
溶媒を用いる場合であって、各成分に対して溶解性の高い溶媒が異なる場合には、手順(iii)が好ましい。また、前記金属化合物(M1)が、たとえば、後述する金属ハロゲン化物の場合には、手順(ii)が好ましく、前記金属化合物(M1)が、たとえば、後述する金属アルコキシドまたは金属錯体の場合には、手順(iii)が好ましい。
【0037】
金属化合物(M1)として後述する遷移金属化合物(M12)を用いる場合の、前記手順(iii)における好ましい手順としては、
手順(iii'):前記金属化合物(M1)(ただし、遷移金属化合物(M12)を除く。)の溶液、前記遷移金属化合物(M12)および他の成分の溶液を準備し、これらを混合する
が挙げられる。
【0038】
溶媒を用いる場合の混合操作は、溶媒への各成分の溶解速度を高めるために、撹拌しながら行うことが好ましい。
複数の溶液を調製してからこれらを混合して触媒前駆材料を得る場合には、一方の溶液に対して他方の溶液を、ポンプ等を用いて一定の速度で供給することが好ましい。
【0039】
また、前記窒素含有有機化合物(2)を含む溶液へ、前記金属化合物(M1)の溶液を少量ずつ添加する(すなわち、全量を一度に添加しない。)ことも好ましい。後述する遷移金属化合物(M12)を用いる場合であれば、窒素含有有機化合物(2)および遷移金属化合物(M12)を含む溶液へ、前記金属化合物(M1)(ただし、遷移金属化合物(M12)を除く。)の溶液を少量ずつ添加する(すなわち、全量を一度に添加しない。)ことも好ましい。
【0040】
触媒前駆材料には金属化合物(M1)と窒素含有有機化合物(2)との反応生成物が含まれると考えられる。溶媒へのこの反応生成物の溶解度は、金属化合物(M1)、窒素含有有機化合物(2)および溶媒等の組み合わせによっても異なる。
【0041】
このため、たとえば金属化合物(M1)が金属アルコキシドまたは金属錯体の場合には、溶液である前記触媒前駆材料は、溶媒の種類、窒素含有有機化合物(2)の種類にもよるが、好ましくは沈殿物や分散質を含まず、含むとしてもこれらは少量(たとえば溶液全量の10質量%以下、好ましくは5質量%以下、より好ましくは1質量%以下。)である。
【0042】
一方、たとえば金属化合物(M1)が金属ハロゲン化物の場合には、溶液である前記触媒前駆材料には、溶媒の種類、窒素含有有機化合物(2)の種類にもよるが、金属化合物(M1)と窒素含有有機化合物(2)との反応生成物と考えられる沈殿物が生じやすい。
【0043】
工程(Ia)では、オートクレーブ等の加圧可能な容器に各成分を入れ、常圧以上の圧力をかけながら、混合を行ってもよい。
工程(Ia)において各成分を混合する際の温度は、たとえば、0〜60℃である。前記金属化合物(M1)および前記窒素含有有機化合物(2)から錯体が形成されると推測されるところ、この温度が過度に高いと、溶媒が水を含む場合に錯体が加水分解され水酸化物の沈殿を生じると考えられ、この温度が過度に低いと、錯体が形成される前に前記金属化合物(M1)が析出すると考えられる。
【0044】
<金属化合物(M1)>
前記金属化合物(M1)は、チタン、ニオブ、ジルコニウム、タンタル、アルミニウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ゲルマニウム、イットリウム、インジウム、スズ、タングステンおよびセリウムから選ばれる金属元素M1を含有する。金属元素M1は、1種単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0045】
前記金属化合物(M1)は、好ましくは、酸素原子およびハロゲン原子から選ばれる少なくとも1種を有しており、その具体例としては、金属リン酸塩、金属硫酸塩、金属硝酸塩、金属有機酸塩、金属酸ハロゲン化物(金属ハロゲン化物の中途加水分解物)、金属アルコキシド、金属ハロゲン化物、金属ハロゲン酸塩および金属次亜ハロゲン酸塩、金属錯体が挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0046】
前記金属アルコキシドとしては、前記金属のメトキシド、プロポキシド、イソプロポキシド、エトキシド、ブトキシド、およびイソブトキシドが好ましく、前記金属のイソプロポキシド、エトキシドおよびブトキシドがさらに好ましい。前記金属アルコキシドは、1種のアルコキシ基を有していてもよく、2種以上のアルコキシ基を有していてもよい。
【0047】
酸素原子を有する金属化合物(M1)としては、金属アルコキシド、アセチルアセトン錯体、金属酸塩化物、金属硫酸塩および金属硝酸塩が好ましく、コストの面から、金属アルコキシド、アセチルアセトン錯体がより好ましく、前記溶媒への溶解性の観点から、金属アルコキシド、アセチルアセトン錯体がさらに好ましい。
【0048】
前記金属ハロゲン化物としては、金属塩化物、金属臭化物および金属ヨウ化物が好ましく、前記金属酸ハロゲン化物としては、金属酸塩化物、金属酸臭化物、金属酸ヨウ化物が好ましい。
【0049】
金属過ハロゲン酸塩としては金属過塩素酸塩が好ましく、金属次亜ハロゲン酸塩として
は金属次亜塩素酸塩が好ましい。
前記金属化合物(M1)の具体例としては、
チタンテトラメトキシド、チタンテトラエトキシド、チタンテトラプロポキシド、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラブトキシド、チタンテトライソブトキシド、チタンテトラペントキシド、チタンテトラアセチルアセトナート、チタンジイソプロポキシドジアセチルアセトナート(Ti(acac)2(O-iPr)2、acacはアセチルアセトナトイオンを、iPrはイソプロピル基を表わす。以下も同様である。))チタンオキシジアセチルアセトナート、トリス(アセチルアセトナト)第二チタン塩化物([Ti(acac)3]2[TiCl6])、四塩化チタン、三塩化チタン、オキシ塩化チタン、四臭化チタン、三臭化チタン、オキシ臭化チタン、四ヨウ化チタン、三ヨウ化チタン、オキシヨウ化チタン等のチタン化合物;
ニオブペンタメトキシド、ニオブペンタエトキシド、ニオブペンタイソプロポキシド、ニオブペンタブトキシド、ニオブペンタペントキシド、ニオブトリアセチルアセトナート、ニオブペンタアセチルアセトナート、ニオブジイソプロポキシドトリアセチルアセトナート(Nb(acac)3(O-iPr)2)、トリス(2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオン)ニオブ、ニオブ(III)ヘキサフルオロアセチルアセトナート、五塩化ニオブ、オキシ塩化ニオブ、五臭化ニオブ、オキシ臭化ニオブ、五ヨウ化ニオブ、オキシヨウ化ニオブ等のニオブ化合物;
ジルコニウムテトラメトキシド、ジルコニウムテトラエトキシド、ジルコニウムテトラプロポキシド、ジルコニウムテトライソプロポキシド、ジルコニウムテトラブトキシド、ジルコニウムテトライソブトキシド、ジルコニウムテトラペントキシド、ジルコニウムテトラアセチルアセトナート、ジルコニウムジイソプロポキシドジアセチルアセトナート(Zr(acac)2(O-iPr)2)、テトラキスジエチルアミノジルコニウム、テトラキス(2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオン)ジルコニウム、ジルコニウム(IV)ヘキサフルオロアセチルアセトナート、テトラ-1-メトキシ-2-メチル-2-プロポキシジルコニウム(IV)、四塩化ジルコニウム、オキシ塩化ジルコニウム、四臭化ジルコニウム、オキシ臭化ジルコニウム、四ヨウ化ジルコニウム、オキシヨウ化ジルコニウム等のジルコニウム化合物;
タンタルペンタメトキシド、タンタルペンタエトキシド、タンタルペンタイソプロポキシド、タンタルペンタブトキシド、タンタルペンタペントキシド、タンタルテトラエトキシアセチルアセトナート、タンタルジイソプロポキシドジアセチルアセトナート(Ta(acac)2(O-iPr)2)、ペンタキスジエチルアミノタンタル、五塩化タンタル、オキシ塩化タンタル、五臭化タンタル、オキシ臭化タンタル、五ヨウ化タンタル、オキシヨウ化タンタル等のタンタル化合物;
アルミニウムメトキシド、アルミニウムエトキシド、アルミニウムプロポキシド、アルミニウムイソプロポキシド、アルミニウムブトキシド、アルミニウムイソブトキシド、アルミニウムペントキシド、アルミニウムアセチルアセトナート、アルミニウムイソプロポキシドアセチルアセトナート(Al(acac)(O-iPr)2、Al(acac)2(O-iPr))、トリスジエチルアミノアルミニウム、トリス(2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオン)アルミニウム、アルミニウムヘキサフルオロアセチルアセトナート、トリス-1-メトキシ-2-メチル-2-プロポキシアルミニウム、三塩化アルミニウム、オキシ塩化アルミニウム、三臭化アルミニウム、オキシ臭化アルミニウム、三ヨウ化アルミニウム、オキシヨウ化アルミニウム等のアルミニウム化合物;
クロム(III)メトキシド、クロム(III)エトキシド、クロム(III)プロポキシド、クロム(III)イソプロポキシド、クロム(III)ブトキシド、クロム(III)イソブトキシド、クロム(III)ペントキシド、クロム(III)アセチルアセトナート、クロム(III)イソプロポキシドアセチルアセトナート(Cr(acac)(O-iPr)2、Cr(acac)2(O-iPr))、トリスジエチルアミノクロム、トリス(2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオン)クロム、クロム(III)ヘキサフルオロアセチルアセトナート、トリ-1-メトキシ-2-メチル-2-プロポキシクロム(III)、三塩化クロム、二塩化クロム、オキシ塩化クロム、三臭化クロム、二臭化クロム、オキシ臭化クロム、三ヨウ化クロム、二ヨウ化クロム、オキシヨウ化クロム等のクロム化合物;
マンガン(III)メトキシド、マンガン(III)エトキシド、マンガン(III)プロポキシド、マンガン(III)イソプロポキシド、マンガン(III)ブトキシド、マンガン(III)イソブトキシド、マンガン(III)ペントキシド、マンガン(III)アセチルアセトナート、マンガン(III)イソプロポキシドアセチルアセトナート(Mn(acac)(O-iPr)2、Mn(acac)2(O-iPr)、トリスジエチルアミノマンガン、トリス(2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオン)マンガン、マンガン(III)ヘキサフルオロアセチルアセトナート、トリ-1-メトキシ-2-メチル-2-プロポキシマンガン(III)、三塩化マンガン、二塩化マンガン、オキシ塩化マンガン、三臭化マンガン、二臭化マンガン、オキシ臭化マンガン、三ヨウ化マンガン、二ヨウ化マンガン、オキシヨウ化マンガン等のマンガン化合物;
鉄(III)メトキシド、鉄(III)エトキシド、鉄(III)プロポキシド、鉄(III)イソプロポキシド、鉄(III)ブトキシド、鉄(III)イソブトキシド、鉄(III)ペントキシド、鉄(III)アセチルアセトナート、鉄(III)イソプロポキシドアセチルアセトナート(Fe(acac)(O-iPr)2、Fe(acac)2(O-iPr))、トリスジエチルアミノ鉄、トリス(2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオン)鉄、鉄(III)ヘキサフルオロアセチルアセトナート、トリ-1-メトキシ-2-メチル-2-プロポキシ鉄(III)、三塩化鉄、二塩化鉄、オキシ塩化鉄、三臭化鉄、二臭化鉄、オキシ臭化鉄、三ヨウ化鉄、二ヨウ化鉄、オキシヨウ化鉄等の鉄化合物;
コバルト(II)メトキシド、コバルト(II)エトキシド、コバルト(II)プロポキシド、コバルト(II)イソプロポキシド、コバルト(II)ブトキシド、コバルト(II)イソブトキシド、コバルト(II)ペントキシド、コバルト(II)アセチルアセトナート、コバルト(III)アセチルアセトナート、コバルト(II)イソプロポキシドアセチルアセトナート(Co(acac)(O-iPr))、コバルト(III)イソプロポキシドアセチルアセトナート(Co(acac)(O-iPr)2、Co(acac)2(O-iPr))、ビスジエチルアミノコバルト、トリス(2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオン)コバルト、コバルト(II)ヘキサフルオロアセチルアセトナート、トリ-1-メトキシ-2-メチル-2-プロポキシコバルト(II)、三塩化コバルト、二塩化コバルト、オキシ塩化コバルト、三臭化コバルト、二臭化コバルト、オキシ臭化コバルト、三ヨウ化コバルト、二ヨウ化コバルト、オキシヨウ化コバルト等のコバルト化合物;
ニッケル(II)メトキシド、ニッケル(II)エトキシド、ニッケル(II)プロポキシド、ニッケル(II)イソプロポキシド、ニッケル(II)ブトキシド、ニッケル(II)イソブトキシド、ニッケル(II)ペントキシド、ニッケル(II)アセチルアセトナート、ニッケル(II)イソプロポキシドアセチルアセトナート(Ni(acac)(O-iPr))、ビスジエチルアミノニッケル、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオン)ニッケル、ニッケル(II)ヘキサフルオロアセチルアセトナート、ビス-1-メトキシ-2-メチル-2-プロポキシニッケル(II)、二塩化ニッケル、オキシ塩化ニッケル、二臭化ニッケル、オキシ臭化ニッケル、二ヨウ化ニッケル、オキシヨウ化ニッケル等のニッケル化合物;
銅(II)メトキシド、銅(II)エトキシド、銅(II)プロポキシド、銅(II)イソプロポキシド、銅(II)ブトキシド、銅(II)イソブトキシド、銅(II)ペントキシド、銅(II)アセチルアセトナート、ビスジエチルアミノ銅、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオン)銅、銅(II)ヘキサフルオロアセチルアセトナート、ビス-1-メトキシ-2-メチル-2-プロポキシ銅(II)、二塩化銅、オキシ塩化銅、二臭化銅、オキシ臭化銅、二ヨウ化銅、オキシヨウ化銅等の銅化合物;
亜鉛メトキシド、亜鉛エトキシド、亜鉛プロポキシド、亜鉛イソプロポキシド、亜鉛ブトキシド、亜鉛イソブトキシド、亜鉛ペントキシド、亜鉛アセチルアセトナート、ビスジエチルアミノ亜鉛、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオン)亜鉛、亜鉛ヘキサフルオロアセチルアセトナート、ビス-1-メトキシ-2-メチル-2-プロポキシ亜鉛、二塩化亜鉛、オキシ塩化亜鉛、二臭化亜鉛、オキシ臭化亜鉛、二ヨウ化亜鉛、オキシヨウ化亜鉛等の亜鉛化合物;
ゲルマニウム(IV)メトキシド、ゲルマニウム(IV)エトキシド、ゲルマニウム(IV)プロポキシド、ゲルマニウム(IV)イソプロポキシド、ゲルマニウム(IV)ブトキシド、ゲルマニウム(IV)イソブトキシド、ゲルマニウム(IV)ペントキシド、ゲルマニウム(IV)アセチルアセトナート、ゲルマニウム(IV)ジイソプロポキシドジアセチルアセトナート(Ge(acac)2(O-iPr)2)、テトラキスジエチルアミノゲルマニウム、テトラキス(2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオン)ゲルマニウム、ゲルマニウム(IV)ヘキサフルオロアセチルアセトナート、テトラキス-1-メトキシ-2-メチル-2-プロポキシゲルマニウム、四塩化ゲルマニウム、オキシ塩化ゲルマニウム、四臭化ゲルマニウム、オキシ臭化ゲルマニウム、四ヨウ化ゲルマニウム、オキシヨウ化ゲルマニウム等のゲルマニウム化合物;
イットリウム(III)メトキシド、イットリウム(III)エトキシド、イットリウム(III)プロポキシド、イットリウム(III)イソプロポキシド、イットリウム(III)ブトキシド、イットリウム(III)イソブトキシド、イットリウム(III)ペントキシド、イットリウム(III)アセチルアセトナート、イットリウム(III)イソプロポキシドアセチルアセトナート(Y(acac)(O-iPr)2、Y(acac)2(O-iPr))、トリスジエチルアミノイットリウム、トリス(2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオン)イットリウム、イットリウム(III)ヘキサフルオロアセチルアセトナート、トリス-1-メトキシ-2-メチル-2-プロポキシイットリウム(III)、三塩化イットリウム、オキシ塩化イットリウム、三臭化イットリウム、オキシ臭化イットリウム、三ヨウ化イットリウム、オキシヨウ化イットリウム等のイットリウム化合物;
インジウムメトキシド、インジウムエトキシド、インジウムプロポキシド、インジウムイソプロポキシド、インジウムブトキシド、インジウムイソブトキシド、インジウムペントキシド、インジウムアセチルアセトナート、インジウムイソプロポキシドアセチルアセトナート(In(acac)(O-iPr)2、In(acac)2(O-iPr))、トリスジエチルアミノインジウム、トリス(2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオン)インジウム、インジウムヘキサフルオロアセチルアセトナート、トリス-1-メトキシ-2-メチル-2-プロポキシインジウム、三塩化インジウム、オキシ塩化インジウム、三臭化インジウム、オキシ臭化インジウム、三ヨウ化インジウム、オキシヨウ化インジウム等のインジウム化合物;
スズ(IV)メトキシド、スズ(IV)エトキシド、スズ(IV)プロポキシド、スズ(IV)イソプロポキシド、スズ(IV)ブトキシド、スズ(IV)イソブトキシド、スズ(IV)ペントキシド、スズ(II)アセチルアセトナート、スズ(IV)ジイソプロポキシドジアセチルアセトナート(Sn(acac)2(O-iPr)2)、テトラキスジエチルアミノスズ、テトラキス(2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオン)スズ、スズ(II)ヘキサフルオロアセチルアセトナート、テトラ-1-メトキシ-2-メチル-2-プロポキシスズ(IV)、四塩化スズ、二塩化スズ、オキシ塩化スズ、四臭化スズ、二臭化スズ、オキシ臭化スズ、四ヨウ化スズ、二ヨウ化スズ、オキシヨウ化スズ等のスズ化合物;
タングステン(VI)メトキシド、タングステン(VI)エトキシド、タングステン(VI)プロポキシド、タングステン(VI)イソプロポキシド、タングステン(VI)ブトキシド、タングステン(VI)イソブトキシド、タングステン(VI)ペントキシド、タングステン(VI)アセチルアセトナート、タングステン(VI)タングステンジイソプロポキシドジアセチルアセトナート(W(acac)3(O-iPr)3)、ヘキサキスジエチルアミノタングステン(VI)、ヘキサキス(2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオン)タングステン(VI)、タングステン(VI)ヘキサフルオロアセチルアセトナート、ヘキサキス-1-メトキシ-2-メチル-2-プロポキシタングステン(VI)、六塩化タングステン、四塩化タングステン、オキシ塩化タングステン、六臭化タングステン、四臭化タングステン、オキシ臭化タングステン、六ヨウ化タングステン、四ヨウ化タングステン、オキシヨウ化タングステン等のタングステン化合物;
セリウム(III)メトキシド、セリウム(III)エトキシド、セリウム(III)プロポキシド、セリウム(III)イソプロポキシド、セリウム(III)ブトキシド、セリウム(III)イソブトキシド、セリウム(III)ペントキシド、セリウム(III)アセチルアセトナート、セリウムイソプロポキシドアセチルアセトナート(Ce(acac)(O-iPr)2、Ce(acac)2(O-iPr))、トリスジエチルアミノセリウム、トリス(2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオン)セリウム、セリウム(III)ヘキサフルオロアセチルアセトナート、トリス-1-メトキシ-2-メチル-2-プロポキシセリウム(III)、三塩化セリウム、オキシ塩化セリウム、三臭化セリウム、オキシ臭化セリウム、三ヨウ化セリウム、オキシヨウ化セリウム等のセリウム化合物;
が挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0050】
これらの化合物の中でも、得られる触媒が均一な粒径の微粒子となり、その活性が高いことから、
チタンテトラエトキシド、四塩化チタン、オキシ塩化チタン、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラアセチルアセトナート、チタンジイソプロポキシドジアセチルアセトナート(Ti(acac)2(O-iPr)2)、
ニオブペンタエトキシド、五塩化ニオブ、オキシ塩化ニオブ、ニオブペンタイソプロポキシド、ニオブペンタアセチルアセトナート、ニオブトリアセチルアセトナート、ニオブジイソプロポキシドトリアセチルアセトナート(Nb(acac)3(O-iPr)2)、
ジルコニウムテトラエトキシド、四塩化ジルコニウム、オキシ塩化ジルコニウム、ジルコニウムテトライソプロポキシド、ジルコニウムテトラアセチルアセトナート、ジルコニウムジイソプロポキシドジアセチルアセトナート(Zr(acac)2(O-iPr)2)、
タンタルペンタメトキシド、タンタルペンタエトキシド、五塩化タンタル、オキシ塩化タンタル、タンタルペンタイソプロポキシド、タンタルテトラエトキシアセチルアセトナート(Ta(acac)(O-C2H5)4)、タンタルジイソプロポキシドトリアセチルアセトナート(Ta(acac)3(O-iPr)2)、
三塩化アルミニウム、オキシ塩化アルミニウム、アルミニウムエトキシド、アルミニウムイソプロポキシド、アルミニウムブトキシド、アルミニウムアセチルアセトナート、アルミニウムイソプロポキシドアセチルアセトナート(Al(acac)(O-iPr)2、Al(acac)2(O-iPr))、
三塩化クロム、二塩化クロム、オキシ塩化クロム、クロム(III)エトキシド、クロム(III)イソプロポキシド、クロム(III)ブトキシド、クロム(III)アセチルアセトナート、クロム(III)イソプロポキシドアセチルアセトナート(Cr(acac)(O-iPr)2、
三塩化マンガン、二塩化マンガン、オキシ塩化マンガン、マンガン(III)エトキシド、マンガン(III)イソプロポキシド、マンガン(III)ブトキシド、マンガン(III)アセチルアセトナート、マンガン(III)イソプロポキシドアセチルアセトナート(Mn(acac)(O-iPr)2、Mn(acac)2(O-iPr))、
三塩化鉄、二塩化鉄、オキシ塩化鉄、鉄(III)エトキシド、鉄(III)イソプロポキシド、鉄(III)ブトキシド、鉄(III)アセチルアセトナート、鉄(III)イソプロポキシドアセチルアセトナート(Fe(acac)(O-iPr)2、Fe(acac)2(O-iPr))、
三塩化コバルト、二塩化コバルト、オキシ塩化コバルト、コバルト(II)エトキシド、コバルト(II)イソプロポキシド、コバルト(II)ブトキシド、コバルト(III)アセチルアセトナート、コバルト(II)イソプロポキシドアセチルアセトナート(Co(acac)(O-iPr))、コバルト(III)イソプロポキシドアセチルアセトナート(Co(acac)(O-iPr)2、Co(acac)2(O-iPr))、
二塩化ニッケル、オキシ塩化ニッケル、ニッケル(II)エトキシド、ニッケル(II)イソプロポキシド、ニッケル(II)ブトキシド、ニッケル(II)アセチルアセトナート、ニッケル(II)イソプロポキシドアセチルアセトナート(Ni(acac)(O-iPr))、
二塩化銅、オキシ塩化銅、銅(II)エトキシド、銅(II)イソプロポキシド、銅(II)ブトキシド、銅(II)アセチルアセトナート、
二塩化亜鉛、オキシ塩化亜鉛、亜鉛エトキシド、亜鉛イソプロポキシド、亜鉛ブトキシド、亜鉛イソブトキシド、亜鉛アセチルアセトナート、
四塩化ゲルマニウム、オキシ塩化ゲルマニウム、ゲルマニウム(IV)メトキシド、ゲルマニウム(IV)エトキシド、ゲルマニウム(IV)イソプロポキシド、ゲルマニウム(IV)ブトキシド、ゲルマニウム(IV)アセチルアセトナート、ゲルマニウム(IV)ジイソプロポキシドジアセチルアセトナート(Ge(acac)2(O-iPr)2)、
三塩化イットリウム、オキシ塩化イットリウム、イットリウム(III)エトキシド、イットリウム(III)イソプロポキシド、イットリウム(III)ブトキシド、イットリウム(III)アセチルアセトナート、イットリウム(III)イソプロポキシドアセチルアセトナート(Y(acac)(O-iPr)2、Y(acac)2(O-iPr))、
三塩化インジウム、オキシ塩化インジウム、インジウムエトキシド、インジウムイソプロポキシド、インジウムブトキシド、インジウムアセチルアセトナート、インジウムイソプロポキシドアセチルアセトナート(In(acac)(O-iPr)2、In(acac)2(O-iPr))、
四塩化スズ、二塩化スズ、オキシ塩化スズ、スズ(IV)メトキシド、スズ(IV)エトキシド、スズ(IV)イソプロポキシド、スズ(IV)ブトキシド、スズ(IV)アセチルアセトナート、スズ(IV)ジイソプロポキシドジアセチルアセトナート(Sn(acac)2(O-iPr)2)
六塩化タングステン、四塩化タングステン、オキシ塩化タングステン、タングステン(VI)エトキシド、タングステン(VI)イソプロポキシド、タングステン(VI)ブトキシド、タングステン(VI)アセチルアセトナート、タングステン(VI)タングステンジイソプロポキシドジアセチルアセトナート(W(acac)3(O-iPr)3)、
三塩化セリウム、オキシ塩化セリウム、セリウム(III)エトキシド、セリウム(III)イソプロポキシド、セリウム(III)ブトキシド、セリウム(III)アセチルアセトナート、セリウムイソプロポキシドアセチルアセトナート(Ce(acac)(O-iPr)2、Ce(acac)2(O-iPr))
が好ましく、
五塩化チタン、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラアセチルアセトナート、
ニオブペンタエトキシド、ニオブペンタイソプロポキシド、
四塩化ジルコニウム、オキシ塩化ジルコニウム、ジルコニウムテトライソプロポキシド、
タンタルペンタイソプロポキシド、
三塩化アルミニウム、アルミニウムエトキシド、アルミニウムイソプロポキシド、アルミニウムブトキシド、アルミニウムアセチルアセトナート、
三塩化クロム、二塩化クロム、クロム(III)エトキシド、クロム(III)アセチルアセトナート、
三塩化マンガン、二塩化マンガン、マンガン(III)エトキシド、マンガン(III)アセチルアセトナート、
三塩化鉄、二塩化鉄、鉄(III)エトキシド、鉄(III)イソプロポキシド、鉄(III)ブトキシド、鉄(III)アセチルアセトナート、
三塩化コバルト、二塩化コバルト、コバルト(II)エトキシド、コバルト(II)イソプロポキシド、コバルト(II)ブトキシド、コバルト(III)アセチルアセトナート、
二塩化ニッケル、ニッケル(II)エトキシド、ニッケル(II)イソプロポキシド、ニッケル(II)ブトキシド、ニッケル(II)アセチルアセトナート、
二塩化銅、オキシ塩化銅、銅(II)エトキシド、銅(II)イソプロポキシド、銅(II)アセチルアセトナート、
二塩化亜鉛、亜鉛エトキシド、亜鉛イソプロポキシド、亜鉛ブトキシド、亜鉛イソブトキシド、亜鉛アセチルアセトナート、
四塩化ゲルマニウム、ゲルマニウム(IV)メトキシド、ゲルマニウム(IV)エトキシド、ゲルマニウム(IV)イソプロポキシド、ゲルマニウム(IV)ブトキシド、ゲルマニウム(IV)アセチルアセトナート、
三塩化イットリウム、イットリウム(III)エトキシド、イットリウム(III)イソプロポキシド、イットリウム(III)アセチルアセトナート、
三塩化インジウム、インジウムエトキシド、インジウムイソプロポキシド、インジウムブトキシド、インジウムアセチルアセトナート、
四塩化スズ、二塩化スズ、スズ(IV)メトキシド、スズ(IV)エトキシド、スズ(IV)イソプロポキシド、スズ(IV)ブトキシド、スズ(IV)アセチルアセトナート、
六塩化タングステン、四塩化タングステン、タングステン(VI)エトキシド、タングステン(VI)イソプロポキシド、タングステン(VI)アセチルアセトナート、
三塩化セリウム、セリウム(III)エトキシド、セリウム(III)イソプロポキシド、セリウム(III)ブトキシド、セリウム(III)アセチルアセトナート
がさらに好ましい。
【0051】
また、金属元素M1として2種以上の金属元素が併用される場合には、金属元素M1のうち、金属原子のモル分率が最も高い元素(以下「金属元素M11」ともいう。)ではない金属元素として、金属元素M11とは異なる元素であって、鉄、ニッケル、クロム、コバルトおよびマンガンから選ばれる少なくとも1種の遷移金属元素M12を含む遷移金属化合物(M12)が用いられてもよい。遷移金属化合物(M12)を用いると、得られる触媒の性能が向上する。
【0052】
前記遷移金属元素M12としては、コストと得られる触媒の性能とのバランスの観点から、鉄およびクロムが好ましく、鉄がさらに好ましい。
遷移金属化合物(M12)の具体例としては、
鉄(III)エトキシド、鉄(III)イソプロポキシドアセチルアセトナート(Fe(acac)(O-iPr)2、Fe(acac)2(O-iPr))、鉄(III)アセチルアセトナート、トリス(2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオン)鉄(III)、鉄(III)ヘキサフルオロアセチルアセトナート、塩化鉄(II)、塩化鉄(III)、硫酸鉄(III)、硫化鉄(II)、硫化鉄(III)、フェロシアン化カリウム、フェリシアン化カリウム、フェロシアン化アンモニウム、フェリシアン化アンモニウム、フェロシアン化鉄、硝酸鉄(II)、硝酸鉄(III)、シュウ酸鉄(II)、シュウ酸鉄(III)、リン酸鉄(II)、リン酸鉄(III)フェロセン、水酸化鉄(II)、水酸化鉄(III)、酸化鉄(II)、酸化鉄(III)、四酸化三鉄、酢酸鉄(II)、乳酸鉄(II)、クエン酸鉄(III)等の鉄化合物;
ニッケル(II)エトキシド、ニッケル(II)イソプロポキシドアセチルアセトナート(Ni(acac)(O-iPr))、ニッケル(II)アセチルアセトナート、塩化ニッケル(II)、硫酸ニッケル(II)、硫化ニッケル(II)、硝酸ニッケル(II)、シュウ酸ニッケル(II)、リン酸ニッケル(II)、ニッケルセン、水酸化ニッケル(II)、酸化ニッケル(II)、酢酸ニッケル(II)、乳酸ニッケル(II)等のニッケル化合物;
クロム(III)エトキシド、クロム(III)イソプロポキシドアセチルアセトナート(Cr(acac)(O-iPr)2、Cr(acac)2(O-iPr))、クロム(III)アセチルアセトナート、塩化クロム(II)、塩化クロム(III)、硫酸クロム(III)、硫化クロム(III)、硝酸クロム(III)、シュウ酸クロム(III)、リン酸クロム(III)、水酸化クロム(III)、酸化クロム(II)、酸化クロム(III)、酸化クロム(IV)、酸化クロム(VI)、酢酸クロム(II)、酢酸クロム(III)、乳酸クロム(III)等のクロム化合物;
コバルト(III)エトキシド、コバルト(III)イソプロポキシドアセチルアセトナート(Co(acac)(O-iPr)2、Co(acac)2(O-iPr))、コバルト(III)アセチルアセトナート、塩化コバルト(II)、塩化コバルト(III)、硫酸コバルト(II)、硫化コバルト(II)、硝酸コバルト(II)、硝酸コバルト(III)、シュウ酸コバルト(II)、リン酸コバルト(II)、コバルトセン、水酸化コバルト(II)、酸化コバルト(II)、酸化コバルト(III)、四酸化三コバルト、酢酸コバルト(II)、乳酸コバルト(II)等のコバルト化合物;
マンガン(III)エトキシド、マンガン(III)イソプロポキシドアセチルアセトナート(Mn(acac)(O-iPr)2、Mn(acac)2(O-iPr))、マンガン(III)アセチルアセトナート、トリス(2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオン)マンガン(III)、マンガン(III)ヘキサフルオロアセチルアセトン、塩化マンガン(II)、硫酸マンガン(II)、硫化マンガン(II)、硝酸マンガン(II)、シュウ酸マンガン(II)、水酸化マンガン(II)、酸化マンガン(II)、酸化マンガン(III)、酢酸マンガン(II)、乳酸マンガン(II)、クエン酸マンガン等のマンガン化合物;
が挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0053】
これらの化合物の中でも、
鉄(III)エトキシド、鉄(III)イソプロポキシドアセチルアセトナート、鉄(III)アセチルアセトナート、塩化鉄(II)、塩化鉄(III)、フェロシアン化カリウム、フェリシアン化カリウム、フェロシアン化アンモニウム、フェリシアン化アンモニウム、酢酸鉄(II)、乳酸鉄(II)、硝酸鉄(II)、
ニッケル(III)エトキシド、ニッケル(III)イソプロポキシドアセチルアセトナート、ニッケル(III)アセチルアセトナート、塩化ニッケル(II)、塩化ニッケル(III)、酢酸ニッケル(II)、乳酸ニッケル(II)、硝酸ニッケル(II)、
クロム(III)エトキシド、クロム(III)イソプロポキシドアセチルアセトナート、クロム(III)アセチルアセトナート、塩化クロム(II)、塩化クロム(III)、酢酸クロム(II)、酢酸クロム(III)、乳酸クロム(III)、硝酸クロム(III)、
コバルト(III)エトキシド、コバルト(III)イソプロポキシドアセチルアセトナート、コバルト(III)アセチルアセトナート、塩化コバルト(II)、塩化コバルト(III)、酢酸コバルト(II)、乳酸コバルト(II)、硝酸コバルト(II)、
マンガン(III)エトキシド、マンガン(III)イソプロポキシドアセチルアセトナート、マンガン(III)アセチルアセトナート、塩化マンガン(II)、酢酸マンガン(II)、乳酸マンガン(II)、硝酸マンガン(II)が好ましく、
塩化鉄(II)、塩化鉄(III)、フェロシアン化カリウム、フェリシアン化カリウム、フェロシアン化アンモニウム、フェリシアン化アンモニウム、酢酸鉄(II)、乳酸鉄(II)、塩化クロム(II)、塩化クロム(III)、酢酸クロム(II)、酢酸クロム(III)、乳酸クロム(III)がさらに好ましい。
【0054】
工程(Ia)で用いられる前記遷移金属化合物(M12)の割合を、金属元素M1の原子に占める遷移金属元素M12の原子数の割合αに換算すると、αの範囲は、好ましくは0.01≦α≦0.45、さらに好ましくは0.02≦α≦0.4、特に好ましくは0.05≦α≦0.3である。
【0055】
<窒素含有有機化合物(2)>
前記窒素含有有機化合物(2)としては、前記金属化合物(M1)中の金属原子に配位可能な配位子となり得る化合物(好ましくは、単核の錯体を形成し得る化合物)が好ましく、多座配位子(好ましくは、2座配位子または3座配位子)となり得る(キレートを形成し得る)化合物がさらに好ましい。
【0056】
前記窒素含有有機化合物(2)は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
前記窒素含有有機化合物(2)は、好ましくは、アミノ基、ニトリル基、イミド基、イミン基、ニトロ基、アミド基、アジド基、アジリジン基、アゾ基、イソシアネート基、イソチオシアネート基、オキシム基、ジアゾ基、ニトロソ基などの官能基、またはピロール環、ポルフィリン環、ピロリジン環、イミダゾール環、トリアゾール環、ピリジン環、ピペリジン環、ピリミジン環、ピラジン環、プリン環等の環(これらの官能基および環をまとめて「含窒素分子団」ともいう。)を有する。
【0057】
前記窒素含有有機化合物(2)は、含窒素分子団を分子内に有すると、工程(Ia)での混合を経て、前記金属化合物(M1)に由来する金属原子により強く配位することができると考えられる。
【0058】
前記含窒素分子団の中では、アミノ基、イミン基、アミド基、ピロール環、ピリジン環およびピラジン環がより好ましく、アミノ基、イミン基、ピロール環およびピラジン環がさらに好ましく、アミノ基およびピラジン環が、得られる触媒の活性が特に高くなることから、特に好ましい。
【0059】
前記窒素含有有機化合物(2)(ただし、酸素原子を含まない。)の具体例としては、メラミン、エチレンジアミン、エチレンジアミン、トリアゾール、アセトニトリル、アクリロニトリル、エチレンイミン、アニリン、ピロールおよびポリエチレンイミンならびにこれらの塩などが挙げられ、これらの中でも、得られる触媒の活性が高いことからエチレンジアミンおよびエチレンジアミン・二塩酸塩が好ましい。
【0060】
前記窒素含有有機化合物(2)は、好ましくは、さらに水酸基、カルボキシル基、アルデヒド基、酸ハライド基、スルホ基、リン酸基、ケトン基、エーテル基またはエステル基(これらをまとめて「含酸素分子団」ともいう。)を有する。前記窒素含有有機化合物(2)は、含酸素分子団を分子内に有すると、工程(Ia)での混合を経て、前記金属化合物(M1)に由来する金属原子により強く配位できると考えられる。
【0061】
前記含酸素分子団の中では、カルボキシル基およびアルデヒド基が、得られる触媒の活性が特に高くなることから、特に好ましい。
分子中に酸素原子を含む前記窒素含有有機化合物(2)としては、前記含窒素分子団および前記含酸素分子団を有する化合物が好ましい。このような化合物は、工程(Ia)を経て、前記金属化合物(M1)に由来する金属原子に特に強く配位できると考えられる。
【0062】
前記含窒素分子団および前記含酸素分子団を有する化合物としては、アミノ基およびカルボキシル基を有するアミノ酸、ならびにその誘導体が好ましい。
前記アミノ酸としては、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、シスチン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシン、バリン、ノルバリン、グリシルグリシン、トリグリシンおよびテトラグリシンが好ましく、得られる触媒の活性が高いことから、アラニン、グリシン、リシン、メチオニン、チロシンがより好ましく、得られる触媒が極めて高い活性を示すことから、アラニン、グリシンおよびリシンが特に好ましい。
【0063】
分子中に酸素原子を含む前記窒素含有有機化合物(2)の具体例としては、上記アミノ酸等に加えて、アセチルピロールなどのアシルピロール類、ピロールカルボン酸、アセチルイミダゾールなどのアシルイミダゾール類、カルボニルジイミダゾール、イミダゾールカルボン酸、ピラゾール、アセトアニリド、ピラジンカルボン酸、ピペリジンカルボン酸、ピペラジンカルボン酸、モルホリン、ピリミジンカルボン酸、ニコチン酸、2−ピリジンカルボン酸、2,4−ピリジンジカルボン酸、8−キノリノール、およびポリビニルピロリドンが挙げられ、得られる触媒の活性が高いことから、2座配位子となり得る化合物、具体的にはピロール−2−カルボン酸、イミダゾール−4−カルボン酸、2−ピラジンカルボン酸、2,3−ピラジンジカルボン酸、2−ピペリジンカルボン酸、2−ピペラジンカルボン酸、ニコチン酸、2−ピリジンカルボン酸、2,4−ピリジンジカルボン酸、および8−キノリノールが好ましく、2−ピラジンカルボン酸、2,3−ピラジンジカルボン酸および2−ピリジンカルボン酸がより好ましい。
【0064】
工程(Ia)で用いられる前記金属化合物(M1)の金属元素の総原子数Aに対する、工程(Ia)で用いられる前記窒素含有有機化合物(2)の炭素の総原子数Bの比(B/A)は、工程(II)での熱処理時に二酸化炭素、一酸化炭素等の炭素化合物として脱離する成分を少なくすることが可能であり、すなわち触媒製造時に排気ガスを少量とすることができることから、好ましくは200以下、より好ましくは150以下、さらに好ましくは80以下、特に好ましくは30以下であり、良好な活性の触媒を得るという観点から、好ましくは1以上、より好ましくは2以上、さらに好ましくは3以上、特に好ましくは5以上である。
【0065】
工程(Ia)で用いられる前記金属化合物(M1)の金属元素の総原子数Aに対する、工程(Ia)で用いられる前記窒素含有有機化合物(2)の窒素の総原子数Cの比(C/A)は、良好な活性の触媒を得るという観点から、好ましくは28以下、より好ましくは17以下、さらに好ましくは12以下、特に好ましくは8.5以下であり、良好な活性の触媒を得るという観点から、好ましくは1以上、より好ましくは2.5以上、さらに好ましくは3以上、特に好ましくは3.5以上である。
【0066】
<金属化合物(M3)>
アルカリ金属およびアルカリ土類金属からなる群から選ばれる金属元素M3の化合物(金属化合物(M3))としては、カリウム、ナトリウム、ルビジウム、セシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウムまたはバリウムの水酸化物、炭酸塩、硫酸塩、硝酸塩、酢酸塩、塩化物などが挙げられ、たとえば、
水酸化カリウム、炭酸カリウム、硫酸カリウム、硝酸カリウム、酢酸カリウム、塩化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、硝酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、酢酸マグネシウム、塩化マグネシウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、硝酸カルシウム、酢酸カルシウム、塩化カルシウム、、水酸化バリウム、炭酸バリウム、硫酸バリウム、硝酸バリウム、酢酸バリウム、塩化バリウムなどが挙げられ、
水酸化カリウム、炭酸カリウム、酢酸カリウム、塩化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、酢酸マグネシウム、塩化マグネシウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、酢酸カルシウム、塩化カルシウム、水酸化バリウム、炭酸バリウム、酢酸バリウムおよび塩化バリウムが好ましい。
【0067】
工程(Ia)で用いられる前記金属化合物(M3)の量は、前記金属化合物(M3)に含まれる金属元素M3の量(すなわち、工程(Ia)で用いられる前記化合物(M3)に含まれる金属元素M3の総原子数)に換算すると、前記金属化合物(M1)の中の金属元素M1の原子1モルに対して、通常0.05〜1モル、好ましくは0.05〜0.8モル、さらに好ましくは0.1〜0.5モルである。
【0068】
<フッ素含有化合物(4)>
工程(I−1)において、さらにフッ素を含有する化合物(以下「フッ素含有化合物(4)」または「化合物(4)」ともいう。)も混合することによって、さらに高い触媒活性を有する電極触媒を製造することができる。
【0069】
前記フッ素含有化合物(4)は、好ましくは以下の(i)または(ii)を満たす;
(i):0.1MPa、150℃(より好ましくは、200℃、さらに好ましくは250℃)において、固体または液体である。
(ii):0.1MPaにおいて、150℃以上(より好ましくは、200℃以上、さらに好ましくは250℃以上)、かつ、500℃未満の分解温度を有する。
【0070】
前記フッ素含有化合物(4)が上記(i)または(ii)を満たすと、より多くのフッ素原子を、得られる電極触媒中に残存させることができると考えられる。
前記フッ素を含有する化合物の具体例としては、フッ素を含有するホウ酸誘導体、フッ素を含有するリン酸誘導体、フッ素を含有するスルホン酸誘導体、フッ素原子を含有するアルコール、フッ素原子を含有するエーテル、フッ素原子を含有するカルボン酸およびフッ素原子を含有するアミン等が挙げられる。
【0071】
前記フッ素を含有するホウ酸誘導体としては、たとえば、
テトラフルオロホウ酸四級アンモニウム塩(たとえば、テトラフルオロホウ酸テトラ−n−ブチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸テトラメチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸テトラエチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸テトラプロピルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸テトラブチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸エチルトリメチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸ジエチルジメチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸トリエチルメチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸メチルトリプロピルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸エチルトリプロピルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸トリメチルプロピルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸エチルジメチルプロピルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸ジエチルメチルプロピルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸トリエチルプロピルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸ジメチルジプロピルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸エチルメチルジプロピルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸ジエチルジプロピルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸トリメチルブチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸エチルジメチルブチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸ジエチルメチルブチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸トリエチルブチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸トリプロピルブチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸ジメチルジブチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸エチルメチルジブチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸ジエチルジブチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸へキシルトリメチルアンモニウム(前記プロピルはn−プロピル、i−プロピルを含み、前記ブチルはn−ブチル、i−ブチル、s−ブチル、t−ブチルを含む。))、
テトラフルオロホウ酸四級ピリジニウム塩(たとえば、テトラフルオロホウ酸ピリジニウム、テトラフルオロホウ酸1−メチルピリジニウム、テトラフルオロホウ酸2−ブロモ−1−エチルピリジニウム、テトラフルオロホウ酸1−ブチルピリジニウム)、
テトラフルオロホウ酸四級イミダゾリウム塩(たとえば、テトラフルオロホウ酸1,3−ジメチルイミダゾリウム、テトラフルオロホウ酸1−エチル−3−メチルイミダゾリウム、テトラフルオロホウ酸1,3−ジエチルイミダゾリウム、テトラフルオロホウ酸1,2−ジメチル−3−エチルイミダゾリウム、テトラフルオロホウ酸1,2−ジメチル−3−プロピルイミダゾリウム、テトラフルオロホウ酸1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム)、
アルキル基の水素原子の全部または一部がフッ素原子で置換されたフルオロアルキルホウ酸(たとえば、ノナコサデカフルオロテトラデシルホウ酸、ヘプタコサデカフルオロトリデシルホウ酸、ペンタコサデカフルオロドデシルホウ酸、トリコサデカフルオロウンデシルホウ酸、ヘンイコサデカフルオロデシルホウ酸、ノナデカフルオロノニルホウ酸、ヘプタデカフルオロオクチルホウ酸、ペンタデカフルオロヘプチルホウ酸、トリデカフルオロヘキシルホウ酸、ウンデカフルオロペンチルホウ酸、ノナフルオロブチルホウ酸、ヘプタフルオロプロピルホウ酸、ペンタフルオロエチルホウ酸、トリフルオロメチルホウ酸および2,2,2−トリフルオロエチルホウ酸)
前記フルオロアルキルホウ酸のモノエステルおよびジエステル(たとえば、メチルエステル、エチルエステル)、および
前記フルオロアルキルホウ酸の塩(たとえば、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、メチルアンモニウム塩、ジメチルアンモニウム塩、トリメチルアンモニウム塩、およびトリエチルアンモニウム塩)、
が挙げられる。
【0072】
前記フッ素を含有するホウ酸誘導体として、好ましくはテトラフルオロホウ酸アンモニウム、テトラフルオロホウ酸メチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸ジメチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸トリメチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸エチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸ジエチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸トリエチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸ブチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸ジブチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸トリブチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸テトラ−n−ブチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸テトラメチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸テトラエチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸テトラプロピルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸テトラブチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸−1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムが挙げられ、より好ましくはテトラフルオロホウ酸アンモニウム、テトラフルオロホウ酸ブチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸テトラエチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸−1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムが挙げられる。
【0073】
前記フッ素を含有するリン酸誘導体としては、
ヘキサフルオロリン酸塩、たとえば、ヘキサフルオロリン酸四級アンモニウム塩(たとえば、ヘキサフルオロリン酸テトラ‐n‐ブチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸テトラメチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸テトラエチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸テトラプロピルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸テトラブチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸エチルトリメチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸ジエチルジメチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸トリエチルメチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸メチルトリプロピルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸エチルトリプロピルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸トリメチルプロピルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸エチルジメチルプロピルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸ジエチルメチルプロピルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸トリエチルプロピルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸ジメチルジプロピルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸エチルメチルジプロピルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸ジエチルジプロピルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸トリメチルブチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸エチルジメチルブチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸ジエチルメチルブチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸トリエチルブチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸トリプロピルブチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸ジメチルジブチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸エチルメチルジブチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸ジエチルジブチルアンモニウム、テトラフルオロリン酸へキシルトリメチルアンモニウム(前記プロピルはn−プロピル、i−プロピル、前記ブチルはn−ブチル、i−ブチル、s−ブチル、t−ブチルを含む。)、
ヘキサフルオロリン酸四級ピリジニウム塩(たとえば、ヘキサフルオロリン酸ピリジニウム、ヘキサフルオロリン酸1−メチルピリジニウム、ヘキサフルオロリン酸2−ブロモ−1−エチルピリジニウム)、
テトラフルオロリン酸四級イミダゾリウム塩(たとえば、テトラフルオロリン酸1,3−ジメチルイミダゾリウム、テトラフルオロリン酸1−エチル−3−メチルイミダゾリウム、テトラフルオロリン酸1,3−ジエチルイミダゾリウム、テトラフルオロリン酸1,2−ジメチル−3−エチルイミダゾリウム、テトラフルオロリン酸1,2−ジメチル−3−プロピルイミダゾリウム、テトラフルオロリン酸1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム)、
ヘキサフルオロリン酸、
前記ヘキサフルオロリン酸の塩(たとえば、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、アルキルアンモニウム(たとえば、メチルアンモニウム、ジメチルアンモニウム、トリメチルアンモニウム、エチルアンモニウム、ジエチルアンモニウム、およびトリエチルアンモニウム)塩)、
一般式:(RO)nP=Oで表わされるフルオロアルキルリン酸エステル(式中、nは1〜3であり、Rはアルキル基の水素原子の全部または一部がフッ素原子で置換されたフルオロアルキル基(たとえば、ノナコサデカフルオロテトラデシル基、ノナコサデカフルオロテトラデシル基、ヘプタコサデカフルオロトリデシル基、ペンタコサデカフルオロドデシル基、トリコサデカフルオロウンデシル基、ヘンイコサデカフルオロデシル基、ノナデカフルオロノニル基、ヘプタデカフルオロオクチル基、ペンタデカフルオロヘプチル基、トリデカフルオロヘキシル基、ウンデカフルオロペンチル基、ノナフルオロブチル基、ヘプタフルオロプロピル基、ペンタフルオロエチル基、トリフルオロメチル基および2,2,2−トリフルオロエチル基)である。)
一般式:(RN)3P=O、(RN)2P=O(OH)、または(RN)P=O(OH)2(式中、Rは前記フルオロアルキル基を表す。)で表されるフルオロアルキルリン酸アミド、
一般式(RO)3P、(RO)2(OH)P、または(RO)(OH)2P(式中、前記フルオロアルキル基を表す。)で表わされるフルオロアルキル亜リン酸、
一般式(RN)3P、(RN)2P(OH)、(RN)P(OH)2(式中、Rは前記フルオロアルキル基を表す。)で表わされるフルオロアルキル亜リン酸アミド、
一般式:RPO(OH)2(式中、Rは前記フルオロアルキル基を表す。)で表わされるフルオロアルキルホスホン酸
が挙げられる。
【0074】
前記フッ素を含有するリン酸誘導体として、好ましくはヘキサフルオロリン酸アンモニウム、ヘキサフルオロリン酸メチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸ジメチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸トリメチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸エチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸ジエチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸トリエチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸ブチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸ジブチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸トリブチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸テトラ‐n‐ブチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸テトラメチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸テトラエチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸テトラプロピルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸テトラブチルアンモニウムが挙げられ、より好ましくはヘキサフルオロリン酸アンモニウム、ヘキサフルオロリン酸テトラエチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸−1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムが挙げられる。
【0075】
前記フッ素を含有するスルホン酸誘導体としては、
テトラフルオロエチレンとパーフルオロ[2−(フルオロスルホニルエトキシ)プロピルビニルエーテル]との共重合体(たとえば、ナフィオン(NAFION(登録商標)、下式で表わされる構造を有する共重合体))、
【0076】
【化1】
アルキル基の水素原子の全部または一部がフッ素原子で置換されたフルオロアルキルスルホン酸(炭素原子数は、たとえば1〜30である。)(たとえば、ノナコサデカフルオロテトラデカンスルホン酸、ヘプタコサデカフルオロトリデカンスルホン酸、ペンタコサデカフルオロドデカンスルホン酸、トリコサデカフルオロウンデカンスルホン酸、ヘンイコサデカフルオロデカンスルホン酸、ノナデカフルオロノナンスルホン酸、ヘプタデカフルオロオクタンスルホン酸、ペンタデカフルオロヘプタンスルホン酸、トリデカフルオロヘキサンスルホン酸、ウンデカフルオロペンタンスルホン酸、ノナフルオロブタンスルホン酸、ヘプタフルオロプロパンスルホン酸、ペンタフルオロエタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸および2,2,2−トリフルオロエタンスルホン酸)、
前記フルオロアルキルスルホン酸のエステル(たとえば、メチルエステル、エチルエステル、アリールエステル(例えば、フェニルエステル))、
前記フルオロアルキルスルホン酸の塩(一般式:A[RSO3]、Rは前記フルオロアルキル基を表す。)(ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、アルキルアンモニウム(たとえば、メチルアンモニウム、ジメチルアンモニウム、トリメチルアンモニウム、エチルアンモニウム、ジエチルアンモニウム、およびトリエチルアンモニウム)塩)、
前記フルオロアルキルスルホン酸のアミド(一般式:R−SO2−NR1R2、Rは前記フルオロアルキル基を、R1およびR2はそれぞれ独立に、水素原子の全部または一部がフッ素原子で置換されていてもよい炭素原子数1〜10の炭化水素基(たとえば、メチル基、エチル基、フェニル基)表す。)、
前記フルオロアルキルスルホン酸の酸無水物(一般式:(R−SO2)2O、Rは前記フルオロアルキル基を表す。)、
前記フルオロアルキルスルホン酸のハロゲン化物(一般式:(R−SO2)X、Rは前記フルオロアルキル基を表す。Xはフッ素、塩素、臭素、ヨウ素を表す。)
が挙げられる。
【0077】
前記フッ素を含有するスルホン酸誘導体としては、好ましくは、テトラフルオロエチレンとパーフルオロ[2−(フルオロスルホニルエトキシ)プロピルビニルエーテル]との共重合体(たとえば、ナフィオン(NAFION(登録商標))、ヘプタデカフルオロオクタンスルホン酸、ペンタデカフルオロヘプタンスルホン酸、トリデカフルオロヘキサンスルホン酸、ウンデカフルオロペンタンスルホン酸、ノナフルオロブタンスルホン酸、ヘプタフルオロプロパンスルホン酸、ペンタフルオロエタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ヘプタデカフルオロオクタンスルホン酸アンモニウム、ペンタデカフルオロヘプタンスルホン酸アンモニウム、トリデカフルオロヘキサンスルホン酸アンモニウム、ウンデカフルオロペンタンスルホン酸アンモニウム、ノナフルオロブタンスルホン酸アンモニウム、ヘプタフルオロプロパンスルホン酸アンモニウム、ペンタフルオロエタンスルホン酸アンモニウム、トリフルオロメタンスルホン酸アンモニウム、トリフルオロメタンスルホン酸トリメチルアンモニウム、トリフルオロメタンスルホン酸トリエチルアンモニウム、トリフルオロメタンスルホン酸トリブチルアンモニウム、トリフルオロメタンスルホン酸テトラメチルアンモニウム、トリフルオロメタンスルホン酸テトラエチルアンモニウム、トリフルオロメタンスルホン酸テトラブチルアンモニウム、トリフルオロメタンスルホン酸メチル、トリフルオロメタンスルホン酸エチル、ノナフルオロ−1−ブタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸第一鉄、トリフルオロメタンスルホン酸無水物が挙げられ、
より好ましくは、トリフルオロメタンスルホン酸、ヘプタデカフルオロオクタンスルホン酸、ノナフルオロ−1−ブタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸テトラブチルアンモニウム、ヘプタデカフルオロオクタンスルホン酸アンモニウム、トリフルオロメタンスルホン酸第一鉄が挙げられ、
さらに、界面活性能がある骨格つまり、分子内に疎水性部位と親水性部位が存在すると反応系内の安定化がはかれるのでさらに好ましい。
【0078】
前記アルコールおよびその誘導体としては、たとえば、
炭化水素基の水素原子の全部または一部がフッ素原子で置換された飽和または不飽和の脂肪族アルコール(炭素原子数は、たとえば1〜30である。)、たとえばノナコサデカフルオロテトラデシルアルコール、ノナコサデカフルオロテトラデシルアルコール、ヘプタコサデカフルオロトリデシルアルコール、ペンタコサデカフルオロドデシルアルコール、トリコサデカフルオロウンデカンアルコール、ヘンイコサデカフルオロデシルアルコール、ノナデカフルオロノニルアルコール、ヘプタデカフルオロオクチルアルコール、ペンタデカフルオロヘプチルアルコール、トリデカフルオロヘキシルアルコール、ウンデカフルオロペンチルアルコール、ノナフルオロブチルアルコール、ヘプタフルオロプロピルアルコール、ペンタフルオロエチルアルコール、トリフルオロメチルアルコール、2,2,2−トリフルオロエチルアルコール、6−パーフルオロヘキシルヘキサノール、2,5−ジ(トリフロロメチル)−3,6−ジオキソウンデカフルオロノナノール、パーフルオローメチルエチルヘキサノール、ドデカフルオロヘプタノール、オクタフルオロヘキサンジオールおよびドデカフルオロオクタンジオールなどのフルオロアルキルアルコール
が挙げられる。
【0079】
これらは、1種単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
前記アルコールまたはその誘導体は、好ましくは、一分子中に3個以上のフッ素原子を有する。
【0080】
前記エーテルは、式Rf−O−Rf’(RfおよびRf’は、それぞれ独立に、水素原子の全部または一部がフッ素原子で置換された炭化水素基である。)で表される。RfおよびRf’としては、たとえばノナコサデカフルオロテトラデシル基、ヘプタコサデカフルオロトリデシル基、ペンタコサデカフルオロドデシル基、トリコサデカフルオロウンデシル基、ヘンイコサデカフルオロデシル基、ノナデカフルオロノニル基、ヘプタデカフルオロオクチル基、ペンタデカフルオロヘプチル基、トリデカフルオロヘキシル基、ウンデカフルオロペンチル基、ノナフルオロブチル基、ヘプタフルオロプロピル基、ペンタフルオロエチル基、トリフルオロメチル基および2,2,2−トリフルオロエチル基などのフルオロアルキル基が挙げられ、RfおよびRf’はアリール基を有する基(たとえばフェニル基、ピリジル基)であってもよい。
【0081】
前記エーテルとしては、たとえば、
式[-[(CF2-CF2)-(CH2-CH(OR))n-]で表される構造を有する、テトラフルオロエチレン(CF2=CF2)とビニルエーテル(CH2=CHOR)との交互共重合により得られる交互共重合体(たとえば、ルミフロン(登録商標)(旭硝子(株)))、
フッ素ポリアリールエーテルケトン、フッ素ポリシアノアリールエーテル、3-(2-パーフルオロヘキシルエトキシ)-1,2-ジヒドロキシプロパン、
【0082】
【化2】
で表される化合物、
【0083】
【化3】
で表される化合物、
市販品であれば、ノベックTMHFE(商品名)(ハイドロフルオロエーテル、菱江化学(株))、ノベックTMHFE(商品名)(ハイドロフルオロエーテル、3M社)
が挙げられる。
【0084】
前記エーテルとして、含フッ素系界面活性剤であるサーフロン(登録商標)S−241、S−242、S−243、S−420(AGCセイミケミカル(株))、フタージェント(登録商標)250((株)ネオス)などを用いてもよい。
【0085】
これらは、1種単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
前記エーテルまたはその誘導体は、好ましくは、一分子中に3個以上のフッ素原子を有する。
【0086】
前記アミンおよびその誘導体としては、たとえば、
式Rf−NR1R2(Rfは、水素原子の全部または一部がフッ素原子で置換された飽和または不飽和の脂肪族炭化水素基であり、R1およびR2は、それぞれ独立に、水素原子または、水素原子の全部もしくは一部がフッ素原子で置換されていてもよい炭素原子数1〜10の炭化水素基である。)で表される飽和または不飽和の脂肪族アミン(Rfの炭素原子数は、たとえば1〜30である。)、たとえばノナコサデカフルオロテトラデシルアミン、ヘプタコサデカフルオロトリデシルアミン、ペンタコサデカフルオロドデシルアミン、トリコサデカフルオロウンデシルアミン、ヘンイコサデカフルオロデシルアミン、ノナデカフルオロノニルアミン、ヘプタデカフルオロオクチルアミン、ペンタデカフルオロヘプチルアミン、トリデカフルオロヘキシルアミン、ウンデカフルオロペンチルアミン、ノナフルオロブチルアミン、ヘプタフルオロプロピルアミン、ペンタフルオロエチルアミン、トリフルオロメチルアミンおよび2,2,2−トリフルオロエチルアミンなどのフルオロアルキルアミン;
前記フルオロアルキルアミンの塩(一般式:A+[R4N]-;A+は、たとえばナトリウムイオン、カリウムイオン、アンモニウムイオンを表し、Rはそれぞれ独立に前記フルオロアルキルアミン中のフルオロアルキル基を表す。)(たとえば塩酸塩、硫酸塩、カルボン酸塩、燐酸塩)が挙げられる。
【0087】
前記アミンまたはその塩として、含フッ素系界面活性剤であるサーフロン(登録商標)S−221、AGCセイミケミカル(株))、フタージェント(登録商標)300((株)ネオス)などを用いてもよい。
【0088】
これらは、1種単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
前記アミンまたはその誘導体は、好ましくは、一分子中に3個以上のフッ素原子を有する。
【0089】
前記カルボン酸およびその誘導体としては、たとえば、
炭化水素基の水素原子の全部または一部がフッ素原子で置換された飽和または不飽和の脂肪族カルボン酸(炭素原子数は、たとえば1〜30である。)、たとえばノナコサデカフルオロテトラデカン酸、ノナコサデカフルオロテトラデカン酸、ヘプタコサデカフルオロトリデカン酸、ペンタコサデカフルオロドデカン酸、トリコサデカフルオロウンデカン酸、ヘンイコサデカフルオロデカン酸、ノナデカフルオロノナン酸、ヘプタデカフルオロオクタン酸、ペンタデカフルオロヘプタン酸、トリデカフルオロヘキサン酸、ウンデカフルオロペンタン酸、ノナフルオロブタン酸、ヘプタフルオロプロパン酸、ペンタフルオロ酢酸、トリフルオロ酢酸、2,2,2−トリフルオロエチルカルボン酸、テトラフルオロクエン酸、ヘキサフルオログルタミン酸およびオクタフルオロアジピン酸などのフルオロアルキルカルボン酸;
アリール基中の水素原子の一部または全部が前記フルオロアルキルカルボン酸中のフルオロアルキル基で置換された芳香族カルボン酸、たとえばトリフルオロメチル安息香酸、トリフルオロメチルサリチル酸、トリフルオロメチルニコチン酸;
前記脂肪族カルボン酸のエステル(たとえば、メチルエステル、エチルエステル、アリールエステル(たとえば、フェニルエステル)、前記フッ素原子を含有するアルコールのエステル)、たとえばヘプタデカフルオロオクタン酸メチル、ヘプタデカフルオロオクタン酸エチル、ヘプタデカフルオロオクタン酸フェニル、ヘプタデカフルオロオクタン酸ヘプタデカフルオロオクチルエステル;
フッ素ポリアリールエーテルポリアリールエーテルエステル;
前記脂肪族カルボン酸の塩(たとえば、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、アルキルアンモニウム(たとえば、メチルアンモニウム、ジメチルアンモニウム、トリメチルアンモニウム、エチルアンモニウム、ジエチルアンモニウム、およびトリエチルアンモニウム)塩、前記フルオロアルキルアミンの塩)、たとえばヘプタデカフルオロオクタン酸アンモニウム、ヘプタデカフルオロオクタン酸ナトリウム、ヘプタデカフルオロオクタン酸トリエチルアンモニウム;
前記脂肪族カルボン酸のアミド(一般式:Rf−CO−NR1R2、Rfは前記脂肪族カルボン酸中のフルオロアルキル基を、R1およびR2はそれぞれ独立に、水素原子の全部または一部がフッ素原子で置換されていてもよい炭素原子数1〜10の炭化水素基(たとえば、メチル基、エチル基、フェニル基)表す。)たとえば、ヘプタデカフルオロオクタン酸アミド、ヘプタデカフルオロオクタン酸ジエチルアミド、ヘプタデカフルオロオクタン酸ヘプタデカフルオロオクチルアミド;
フッ素ポリアリールエーテルアミド;
フッ素ポリアリールエーテルイミド;
前記脂肪族カルボン酸の酸無水物(一般式:(Rf−CO)2O、Rfは前記脂肪族カルボン酸中のフルオロアルキル基を表す。)、たとえばヘプタデカフルオロオクタン酸無水物;
アミノ酸(たとえば、前記フルオロアルキルカルボン酸中のフルオロアルキル基を有するアミノ酸);
前記のカルボン酸またはその誘導体から誘導され得る置換基を有する有機化合物(高分子化合物であってもよい。)
が挙げられる。
【0090】
前記カルボン酸またはその誘導体として、含フッ素系界面活性剤であるサーフロン(登録商標)S−211、S−212(アミノ酸系) AGCセイミケミカル(株))、フタージェント(登録商標)501、150((株)ネオス)などを用いてもよい。
【0091】
これらは、1種単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
前記カルボン酸またはその誘導体は、好ましくは、一分子中に3個以上のフッ素原子を有する。
【0092】
また化合物(4)に含まれるフッ素原子の量(すなわち、工程(Ia)で用いられる前記化合物(4)に含まれるフッ素の総原子数)は、前記金属化合物(M1)の中の金属原子1モルに対して、通常0.01〜5モル、好ましくは0.02〜4モル、さらに好ましくは0.03〜3モルである。
【0093】
上記の化合物(4)の量は、前記工程(Ia)で用いられる化合物(4)以外の原料がフッ素を含まない場合の量であり、化合物(4)以外の原料がフッ素を含む場合には、工程(Ia)における化合物(4)の使用量を適宜減らすことが好ましい。
【0094】
<溶媒>
前記溶媒としては、たとえば水、アルコール類および酸類が挙げられる。アルコール類としては、エタノール、メタノール、ブタノール、プロパノールおよびエトキシエタノールが好ましく、エタノールおよびメタノールがさらに好ましい。酸類としては、酢酸、硝酸(水溶液)、塩酸、リン酸水溶液およびクエン酸水溶液が好ましく、酢酸および硝酸がさらに好ましい。これらは、1種単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0095】
前記金属化合物(M1)が金属ハロゲン化物の場合の溶媒としてはメタノールが好ましい。
前記溶媒は、溶液である触媒前駆体材料の100質量%中にたとえば50〜95質量%となるような量で用いてもよい。
【0096】
<沈殿抑制剤>
前記溶媒を用いる場合であって、前記金属化合物(M1)が、ハロゲン原子を含む場合には、これらの化合物は一般的に水によって容易に加水分解され、水酸化物や、酸塩化物等の沈殿を生じやすい。よって、前記金属化合物(M1)がハロゲン原子を含み、沈殿物の生成を抑制する場合には、強酸を1質量%以上添加することが好ましい。たとえば酸が塩酸であれば、溶液中の塩化水素の濃度が5質量%以上、より好ましくは10質量%以上となるように酸を添加すると、前記金属化合物(M1)に由来する、水酸化物、酸塩化物等の沈殿の発生を抑制しつつ、溶液である触媒前駆材料を得ることができる。
【0097】
また、前記金属化合物(M1)がハロゲン原子を含む場合には、前記溶媒としてアルコール類を単独で用い、かつ酸を添加することなく、溶液である触媒前駆材料を得てもよい。
【0098】
前記金属化合物(M1)が金属錯体であって、かつ前記溶媒として水を単独でまたは水と他の化合物とを用いる場合にも、水酸化物または酸塩化物の沈殿の発生を抑制するための沈殿抑制剤を用いることが好ましい。この場合の沈殿抑制剤としては、ジケトン構造を有する化合物が好ましく、ジアセチル、アセチルアセトン、2,5−ヘキサンジオンおよびジメドンがより好ましく、アセチルアセトンおよび2,5−ヘキサンジオンがさらに好ましい。
【0099】
これらの沈殿抑制剤は、金属化合物溶液(金属化合物(M1)を含有し、前記窒素含有有機化合物(2)を含有しない溶液)100質量%中に好ましくは1〜70質量%、より好ましくは、2〜50質量%、さらに好ましくは15〜40質量%となる量で添加される。
【0100】
これらの沈殿抑制剤は、溶液である触媒前駆材料100質量%中に好ましくは0.1〜40質量%、より好ましくは、0.5〜20質量%、さらに好ましくは2〜10質量%となる量で添加される。
【0101】
前記沈殿抑制剤は、工程(Ia)の中でのいずれの段階で添加されてもよい。
工程(Ia)では、好ましくは、前記金属化合物(M1)および前記沈殿抑制剤を含む溶液を調製して、次いでこの溶液と他の成分とを混合して溶液である触媒前駆材料を得る。このように工程(Ia)を実施すると、前記沈殿の発生をより確実に抑制することができる。
【0102】
(工程(Ib))
工程(Ia)と工程(II)との間で、溶液である触媒前駆材料から溶媒を除去しても良い。
【0103】
溶媒の除去は大気下で行ってもよく、溶媒除去の温度下における不活性ガス(例えば、窒素、アルゴン、ヘリウム)雰囲気下で行ってもよい。不活性ガスとしては、コストの観点から、窒素ガスおよびアルゴンガスが好ましく、窒素ガスがより好ましい。
【0104】
溶媒除去の際の温度は、溶媒の蒸気圧が大きい場合には常温であってもよいが、触媒の量産性の観点からは、好ましくは30℃以上、より好ましくは40℃以上、さらに好ましくは50℃以上であり、工程(Ia)で溶媒を用いる場合に得られる溶液中に含まれる、キレート等の金属錯体であると推定される物質を分解させないという観点からは、好ましくは350℃以下、より好ましくは150℃以下、さらに好ましくは110℃以下である。
【0105】
溶媒の除去は、溶媒の蒸気圧が大きい場合には大気圧下で行ってもよいが、より短時間で溶媒を除去するため、減圧(たとえば、0.1Pa〜0.1MPa)下で行ってもよい。減圧下での溶媒の除去には、たとえばエバポレーターを用いることができる。
【0106】
溶媒の除去は、工程(Ia)で得られた混合物を静置した状態で行ってもよいが、より均一な固形分残渣を得るためには、混合物を回転させながら溶媒を除去することが好ましい。
【0107】
前記混合物を収容している容器の質量が大きい場合は、撹拌棒、撹拌羽根、撹拌子などを用いて、溶液を回転させることが好ましい。
また、前記混合物を収容している容器の真空度を調節しながら溶媒の除去を行う場合には、密閉できる容器で乾燥を行うこととなるため、容器ごと回転させながら溶媒の除去を行うこと、たとえばロータリーエバポレーターを使用して溶媒の除去を行うことが好ましい。
【0108】
溶媒の除去の方法、あるいは工程(Ia)で混合される各成分の性状によっては、工程(Ib)で得られた固形分残渣の組成または凝集状態が不均一であることがある。このような場合に、固形分残渣を、混合し、解砕して、より均一、微細な粉末としたものを工程(II)で用いると、粒径がより均一な触媒を得ることができる。
【0109】
固形分残渣を混合し、解砕するには、たとえば、ロール転動ミル、ボールミル、小径ボールミル(ビーズミル)、媒体撹拌ミル、気流粉砕機、乳鉢、自動混練乳鉢、槽解機、ジェトミルを用いることができ、固形分残渣が少量であれば、好ましくは、乳鉢、自動混練乳鉢、またはバッチ式のボールミルが用いられ、固形分残渣が多量であり連続的な混合、解砕処理を行う場合には、好ましくはジェットミルが用いられる。
【0110】
(工程(II))
工程(II)では、前記触媒前駆材料を熱処理する。
この熱処理の際の温度は、500〜1100℃程度であり、前記触媒前駆材料を工程(I−1)を経て得る場合であれば、500〜1100℃であり、好ましくは600〜1050℃であり、より好ましくは700〜950℃である。
【0111】
熱処理の温度が上記範囲にあると、高い活性を有する電極触媒を得ることができる。
前記熱処理の方法としては、たとえば、静置法、攪拌法、落下法、粉末捕捉法が挙げられる。
【0112】
静置法とは、静置式の電気炉などに前記触媒前駆材料(好ましくは、固形である触媒前駆材料。)を置き、これを加熱する方法である。加熱の際に、量り取った前記触媒前駆材料は、アルミナボード、石英ボードなどのセラミックス容器に入れてもよい。静置法は、大量の前記触媒前駆材料を加熱することができる点で好ましい。
【0113】
攪拌法とは、ロータリーキルンなどの電気炉中に前記触媒前駆材料(好ましくは、固形である触媒前駆材料。)を入れ、これを攪拌しながら加熱する方法である。攪拌法の場合は、大量の前記触媒前駆材料を加熱することができ、かつ、得られる熱処理物の粒子の凝集および成長を抑制することができる点で好ましい。さらに、撹拌法は、加熱炉に傾斜をつけることによって、連続的に熱処理物が得られる点で好ましい。
【0114】
落下法とは、誘導炉中に雰囲気ガスを流しながら、炉を所定の加熱温度まで加熱し、該温度で熱的平衡を保った後、炉の加熱区域である坩堝中に前記触媒前駆材料を落下させ、これを加熱する方法である。落下法は、得られる熱処理物の粒子の凝集および成長を最小限度に抑制できる点で好ましい。前記触媒前駆材料が溶液である場合には、この加熱の際に、まず溶媒が除去されると考えられる。
【0115】
粉末捕捉法とは、微量の酸素ガスを含む不活性ガス雰囲気中で、固形である前記触媒前駆材料を飛沫にして浮遊させ、これを所定の加熱温度に保たれた垂直の管状炉中に捕捉して、加熱する方法である。
【0116】
前記静置法で熱処理を行う場合には、昇温速度は、特に限定されないが、好ましくは1℃/分〜100℃/分程度であり、さらに好ましくは5℃/分〜50℃/分である。また、加熱時間は、好ましくは0.1〜10時間、より好ましくは0.5時間〜5時間、さらに好ましくは0.5〜3時間である。静置法において加熱を管状炉で行なう場合、触媒前駆材料の加熱時間は、0.1〜10時間、好ましくは0.5時間〜5時間である。前記加熱時間が前記範囲内であると、均一な電極触媒熱処理物の粒子が形成される傾向がある。
【0117】
前記攪拌法の場合、前記触媒前駆材料の加熱時間は、通常10分〜5時間であり、好ましくは30分〜2時間である。本法において、炉に傾斜をつけるなどして連続的に加熱を行う場合は、定常的な炉内のサンプル流量から計算された平均滞留時間を前記加熱時間とする。
【0118】
前記落下法の場合、前記触媒前駆材料の加熱時間は、通常0.5〜10分であり、好ましくは0.5〜3分である。前記加熱時間が前記範囲内であると、均一な熱処理物の粒子が形成される傾向がある。
【0119】
前記粉末捕捉法の場合、前記触媒前駆材料の加熱時間は、0.2秒〜1分、好ましくは0.2〜10秒である。前記加熱時間が前記範囲内であると、均一な熱処理物の粒子が形成される傾向にある。
【0120】
前記静置法で熱処理を行う場合には、熱源としてLNG(液化天然ガス)、LPG(液化石油ガス)、軽油、重油、電気などを用いた加熱炉を熱処理装置として用いてもよい。この場合、本発明においては前記触媒前駆材料を熱処理する際の雰囲気が重要であるので、燃料の炎が炉内に存在する、炉の内部から加熱する装置ではなく、炉の外部からの加熱する装置が好ましい。
【0121】
前記触媒前駆材料の量が1バッチあたり50kg以上となるような加熱炉を用いる場合には、コストの観点から、LNG,LPGを熱源とする加熱炉が好ましい。
触媒活性の特に高い電極触媒を得たい場合には、厳密な温度制御が可能な、電気を熱源とした電気炉を用いることが望ましい。
【0122】
炉の形状としては、管状炉、上蓋型炉、トンネル炉、箱型炉、試料台昇降式炉(エレベーター型)、台車炉などが挙げられ、この中でも雰囲気を特に厳密にコントロールすることが可能な、管状炉、上蓋型炉、箱型炉および試料台昇降式炉が好ましく、管状炉および箱型炉が好ましい。
【0123】
前記撹拌法を採用する場合も、上記の熱源を用いることができるが、撹拌法の中でもとくにロータリーキルンに傾斜をつけて、前記触媒前駆材料を連続的に熱処理する場合には、設備の規模が大きくなり、エネルギー使用量が大きくなりやすいので、LPG等燃料由来の熱源を利用することが好ましい。
【0124】
前記熱処理を行う際の雰囲気としては、得られる電極触媒の活性を高める観点から、その主成分が不活性ガスである雰囲気が好ましい。不活性ガスの中でも、比較的安価であり、入手しやすい点で窒素、アルゴン、ヘリウムが好ましく、窒素およびアルゴンがさらに好ましい。これらの不活性ガスは、1種単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。なお、これらのガスは一般的な通念上不活性といわれるガスであるが、工程(II)の前記熱処理の際にこれらの不活性ガスすなわち、窒素、アルゴン、ヘリウム等が、前記触媒前駆材料と反応している可能性はある。
【0125】
また、前記熱処理の雰囲気中に反応性ガスが存在すると、得られる電極触媒がより高い触媒性能を発現することがある。たとえば、前記熱処理を、窒素ガス、アルゴンガスもしくは窒素ガスとアルゴンガスとの混合ガス、または窒素ガスおよびアルゴンガスから選ばれる一種以上のガスと、水素ガス、アンモニアガスおよび酸素ガスから選ばれる一種以上のガスとの混合ガスの雰囲気で行うと、高い触媒性能を有する電極触媒が得られる傾向にある。
【0126】
前記熱処理の雰囲気中に水素ガスが含まれる場合には、水素ガスの濃度は、たとえば100体積%以下、好ましくは0.01〜10体積%、より好ましくは1〜5体積%である。
【0127】
前記熱処理の雰囲気中に酸素ガスが含まれる場合には、酸素ガスの濃度は、たとえば0.01〜10体積%、好ましくは0.01〜5体積%である。
前記熱処理の際の圧力は特に制限されず、製造の安定性とコストなどを考慮して大気圧下で熱処理を行ってもよい。
【0128】
前記熱処理の後には、熱処理物を解砕してもよい。解砕を行うと、得られた電極触媒を用いて電極を製造する際の加工性、および得られる電極の特性を改善できることがある。この解砕には、たとえば、ロール転動ミル、ボールミル、小径ボールミル(ビーズミル)、媒体撹拌ミル、気流粉砕機、乳鉢、自動混練乳鉢、槽解機またはジェトミルを用いることができる。電極触媒が少量の場合には、乳鉢、自動混練乳鉢、バッチ式のボールミルが好ましく、熱処理物を連続的に多量に処理する場合には、ジェットミル、連続式のボールミルが好ましく、連続式のボールミルの中でもビーズミルがさらに好ましい。
【0129】
(工程(III))
工程(III)では、工程(II)で得られた熱処理物からアルカリ金属およびアルカリ土類金属からなる群から選ばれる前記金属元素M3の原子を除去して電極触媒を得る。
【0130】
前記金属元素M3の原子を除去する方法としては、前記熱処理物を水または酸と接触させる方法などが挙げられ、好ましくは前記熱処理物を酸と接触させる方法、さらに好ましくは前記熱処理物を酸および水に順次接触させる方法が挙げられる。より具体的には、たとえば、前記熱処理物を大過剰の水で洗浄する方法が挙げられ、好ましくは、前記水で洗浄する前に、前記熱処理物を酸溶液中に浸漬し金属元素M3を酸溶液に溶出させておく方法が挙げられる。前記溶出にはオートクレーブを用いても良い。
【0131】
前記熱処理物を酸と接触させて前記金属元素M3の原子を除去する方法においては、酸としては、塩酸、硫酸、硝酸などの鉱酸や、酢酸、クエン酸、シュウ酸などの有機酸などが挙げられ、好ましくは塩酸、硝酸、硫酸、酢酸などが挙げられる。熱処理物を酸とを接触させる時間は、たとえば0.5〜12時間、好ましくは1〜8時間である。この接触時間を長くする、酸のpHを下げるなどにより、より多くの前記金属元素M3の原子を除去することができる。
【0132】
前記触媒前駆材料中の前記金属元素M3の原子の割合が高く、かつ工程(III)における前記金属元素M3の原子の除去量が多いほど、比表面積が大きい電極触媒粒子を得ることができる。
【0133】
[燃料電池用電極触媒]
本発明の燃料電池用電極触媒(以下、単に「触媒」ともいう)は、上述した本発明の燃料電池用電極触媒の製造方法により製造されることを特徴としている。
【0134】
本発明の燃料電池用電極触媒の製造方法によれば、比表面積の大きな燃料電池用電極触媒が製造され、本発明の触媒のBET法で算出される比表面積は、好ましくは200〜2000m2/g、より好ましくは400〜1800m2/g、さらに好ましくは500〜1500m2/g、特に好ましくは1000〜1500m2/gである。
【0135】
前記触媒(A)の、下記測定法(A)に従って測定される酸素還元開始電位は、可逆水素電極を基準として好ましくは0.70V(vs.RHE)以上、より好ましくは0.80V(vs.RHE)以上、さらに好ましくは0.85V以上である。
【0136】
〔測定法(A):
電子伝導性物質であるカーボンに分散させた触媒が1質量%となるように、該触媒及びカーボンを溶剤中に入れ、超音波で攪拌し懸濁液を得る。なお、カーボンとしては、カーボンブラック(比表面積:100〜300m2/g)(例えばキャボット社製 VULCAN(登録商標) XC72)を用い、触媒とカーボンとが質量比で95:5になるように分散させる。また、溶剤としては、イソプロピルアルコール:水(質量比)=2:1を用いる。
【0137】
前記懸濁液を、超音波をかけながら30μLを採取し、すばやくグラッシーカーボン電極(直径:6mm)上に滴下し、120℃で5分間乾燥させる。乾燥することにより触媒を含む燃料電池用触媒層が、グラッシーカーボン電極上に形成される。この滴下及び乾燥操作を、カーボン電極表面に1.0mg以上の燃料電池触媒層が形成されるまで行う。
【0138】
次いで5%ナフィオン(NAFION(登録商標))溶液(DE−521、デュポン社)をイソプロピルアルコールで10倍に希釈したものを、さらに前記燃料電池用触媒層上に10μL滴下する。これを、120℃で1時間乾燥する。
【0139】
このようにして、得られた電極を用いて、酸素雰囲気及び窒素雰囲気で、0.5mol/Lの硫酸水溶液中、30℃の温度で、同濃度の硫酸水溶液中での可逆水素電極を参照電極とし、5mV/秒の電位走査速度で分極することにより電流−電位曲線を測定した際の、酸素雰囲気での還元電流と窒素雰囲気での還元電流とに0.2μA/cm2以上の差が現れ始める電位を酸素還元開始電位とする。〕
本発明において、酸素還元電流密度は、以下のとおり求めることができる。
【0140】
まず、上記測定法(A)の結果から、特定の電位(たとえば0.80V(vsRHE))における、酸素雰囲気での還元電流と窒素雰囲気での還元電流との差を算出する。算出した値を、さらに電極面積で除した値を酸素還元電流密度(mA/cm2)とする。
【0141】
[用途]
本発明の触媒は、白金触媒の代替触媒として使用することができる。
本発明の燃料電池用触媒層は、前記触媒を含むことを特徴としている。
【0142】
燃料電池用触媒層には、アノード触媒層、カソード触媒層があるが、前記触媒はいずれにも用いることができる。前記触媒は、耐久性に優れ、酸素還元能が大きいので、カソード触媒層に用いることが好ましい。
【0143】
本発明の燃料電池用触媒層は、好ましくは、電子伝導性粉末をさらに含む。前記触媒を含む燃料電池用触媒層がさらに電子伝導性粉末を含む場合には、還元電流をより高めることができる。電子伝導性粉末は、前記触媒に、電気化学的反応を誘起させるための電気的接点を生じさせるため、還元電流を高めると考えられる。
【0144】
前記電子伝導性粒子は通常、触媒の担体として用いられる。
前記触媒はある程度の導電性を有するが、触媒により多くの電子を与える、あるいは、反応基質が触媒から多くの電子を受け取るために、触媒に、導電性を付与するための担体粒子を混合してもよい。これらの担体粒子は、工程(II)〜工程(III)を経て製造された触媒に混合されてもよく、工程(I)〜工程(III)のいずれかの段階で混合されてもよい。
【0145】
電子伝導性粒子の材質としては、炭素、導電性高分子、導電性セラミックス、金属または酸化タングステンもしくは酸化イリジウムなどの導電性無機酸化物が挙げられ、それらを1種単独または組み合わせて用いることができる。特に、炭素からなる電子伝導性粒子は比表面積が大きいため、また、安価に小粒径のものを入手しやすく、耐薬品性、耐高電位性に優れるため、炭素単独または炭素とその他の電子伝導性粒子との混合物が好ましい。すなわち燃料電池用触媒層としては、前記触媒と炭素とを含むことが好ましい。
【0146】
炭素としては、カーボンブラック、グラファイト、活性炭、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、カーボンナノホーン、フラーレン、多孔体カーボン、グラフェンなどが挙げられる。炭素からなる電子伝導性粒子の粒径は、小さすぎると電子伝導パスが形成されにくくなり、また大きすぎると燃料電池用触媒層のガス拡散性の低下や触媒の利用率の低下が起こる傾向があるため、好ましくは10〜1000nmであり、より好ましくは10〜100nmである。
【0147】
電子伝導性粒子が炭素からなる場合、前記触媒と電子伝導性粒子との質量比(触媒:電子伝導性粒子)は、好ましくは4:1〜1000:1である。
前記導電性高分子としては特に限定は無いが、例えばポリアセチレン、ポリ−p−フェニレン、ポリアニリン、ポリアルキルアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリインドール、ポリ−1,5−ジアミノアントラキノン、ポリアミノジフェニル、ポリ(o−フェニレンジアミン)、ポリ(キノリニウム)塩、ポリピリジン、ポリキノキサリン、ポリフェニルキノキサリン等が挙げられる。これらの中でも、ポリピロール、ポリアニリン、ポリチオフェンが好ましく、ポリピロールがより好ましい。
【0148】
本発明の燃料電池用触媒層は、好ましくは、高分子電解質をさらに含む。前記高分子電解質としては、燃料電池用触媒層において一般的に用いられているものであれば特に限定されない。具体的には、スルホン酸基を有するパーフルオロカーボン重合体(例えば、ナフィオン(NAFION(登録商標)))、スルホン酸基を有する炭化水素系高分子化合物、リン酸などの無機酸をドープさせた高分子化合物、一部がプロトン伝導性の官能基で置換された有機/無機ハイブリッドポリマー、高分子マトリックスにリン酸溶液や硫酸溶液を含浸させたプロトン伝導体などが挙げられる。これらの中でも、ナフィオン(NAFION(登録商標))が好ましい。前記燃料電池用触媒層を形成する際のナフィオン(NAFION(登録商標))の供給源としては、5%ナフィオン(NAFION(登録商標))溶液(DE−521、デュポン社)などが挙げられる。
【0149】
本発明の燃料電池用触媒層は、アノード触媒層またはカソード触媒層のいずれにも用いることができる。本発明の燃料電池用触媒層は、高い酸素還元能を有し、酸性電解質中において高電位であっても腐蝕しがたい触媒を含むため、燃料電池のカソードに設けられる触媒層(カソード用触媒層)として有用である。特に固体高分子型燃料電池が備える膜電極接合体のカソードに設けられる触媒層に好適に用いられる。
【0150】
前記触媒を、担体である前記電子伝導性粒子上に分散させる方法としては、気流分散、液中分散等の方法が挙げられる。液中分散は、溶媒中に触媒および電子伝導性粒子を分散したものを、燃料電池用触媒層形成工程に使用できるため好ましい。液中分散としては、オリフィス収縮流による方法、回転せん断流による方法または超音波による方法等があげられる。液中分散の際、使用される溶媒は、触媒や電子伝導性粒子を浸食することがなく、分散できるものであれば特に制限はないが、揮発性の液体有機溶媒または水等が一般に使用される。
【0151】
また、前記触媒を、前記電子伝導性粒子上に分散させる際、さらに上記電解質と分散剤とを同時に分散させてもよい。
燃料電池用触媒層の形成方法としては、特に制限はないが、たとえば、前記触媒と電子伝導性粒子と電解質とを含む懸濁液を、後述する電解質膜またはガス拡散層に塗布する方法が挙げられる。前記塗布する方法としては、ディッピング法、スクリーン印刷法、ロールコーティング法、スプレー法などが挙げられる。また、前記触媒と電子伝導性粒子と電解質とを含む懸濁液を、塗布法またはろ過法により基材に燃料電池用触媒層を形成した後、転写法で電解質膜に燃料電池用触媒層を形成する方法が挙げられる。
【0152】
本発明の電極は、前記燃料電池用触媒層と多孔質支持層とを有することを特徴としている。
本発明の電極はカソードまたはアノードのいずれの電極にも用いることができる。本発明の電極は、耐久性に優れ、触媒能が大きいので、カソードに用いるとより産業上の優位性が高い。
【0153】
多孔質支持層とは、ガスを拡散する層(以下「ガス拡散層」とも記す。)である。ガス拡散層としては、電子伝導性を有し、ガスの拡散性が高く、耐食性の高いものであれば何であっても構わないが、一般的にはカーボンペーパー、カーボンクロスなどの炭素系多孔質材料や、軽量化のためにステンレス、耐食材を被服したアルミニウム箔が用いられる。
【0154】
本発明の膜電極接合体は、カソードとアノードと前記カソードおよび前記アノードの間に配置された電解質膜とを有する膜電極接合体であって、前記カソードおよび/または前記アノードが、前記電極であることを特徴としている。
【0155】
前記膜電極接合体における触媒能は、たとえば、以下のように算出される最大出力密度により評価することができる。
まず、前記膜電極接合体11を、シール材(ガスケット12)、ガス流路付きセパレーター13、および集電板14を挟んでボルトで固定し、所定の面圧(4N)になるように締め付けて、固体高分子型燃料電池の単セルを作成する。
【0156】
アノード側に燃料として水素を流量1リットル/分で供給し、カソード側に酸化剤として酸素を流量2リットル/分で供給し、両側ともに300kPaの背圧をかけながら、前記単セル温度90℃における電流―電圧特性を測定する。得られる電流―電圧特性の曲線から最大出力密度を算出する。最大出力密度が大きいほど、前記膜電極接合体における触媒能が高いことを示す。当該最大出力密度は、好ましくは400mW/cm2以上であり、より好ましくは600mW/cm2以上であり、その上限は、たとえば1000mW/cm2程度である。
【0157】
電解質膜としては、例えば、パーフルオロスルホン酸系を用いた電解質膜または炭化水素系電解質膜などが一般的に用いられるが、高分子微多孔膜に液体電解質を含浸させた膜または多孔質体に高分子電解質を充填させた膜などを用いてもよい。
【0158】
また本発明の燃料電池は、前記膜電極接合体を備えることを特徴としている。
燃料電池の電極反応はいわゆる3相界面(電解質‐電極触媒‐反応ガス)で起こる。燃料電池は、使用される電解質などの違いにより数種類に分類され、溶融炭酸塩型(MCFC)、リン酸型(PAFC)、固体酸化物型(SOFC)、固体高分子型(PEFC)等がある。中でも、本発明の膜電極接合体は、固体高分子型燃料電池に使用することが好ましい。
【0159】
本発明の触媒を用いた燃料電池は性能が高く、また、白金を触媒として用いた場合と比較してきわめて安価であるという特徴を持つ。本発明の燃料電池は、発電機能、発光機能、発熱機能、音響発生機能、運動機能、表示機能および充電機能からなる群より選ばれる少なくとも一つの機能を有し燃料電池を備える物品の性能、特に携帯可能な物品の性能を向上させることができる。前記燃料電池は、好ましくは物品の表面または内部に備えられる。
【0160】
<本発明の燃料電池を備えた物品の具体例>
本発明の燃料電池を備えることができる前記物品の具体例としては、ビル、家屋、テント等の建築物、蛍光灯、LED等、有機EL、街灯、屋内照明、信号機等の照明器具、機械、車両そのものを含む自動車用機器、家電製品、農業機器、電子機器、携帯電話等を含む携帯情報端末、美容機材、可搬式工具、風呂用品トイレ用品等の衛生機材、家具、玩具、装飾品、掲示板、クーラーボックス、屋外発電機などのアウトドア用品、教材、造花、オブジェ、心臓ペースメーカー用電源、ペルチェ素子を備えた加熱および冷却器用の電源が挙げられる。
【実施例】
【0161】
以下に、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
実施例および比較例における各種測定は、下記の方法により行なった。
【0162】
[分析方法]
1.粉末X線回折測定
理学電機株式会社製 ロータフレックスを用いて、試料の粉末X線回折を行った。
【0163】
測定条件の詳細は以下のとおりである。
X線出力(Cu−Kα):50kV、180mA
走査軸:θ/2θ
測定範囲(2θ):10.00°〜89.98°
測定モード:FT
読込幅:0.02°
サンプリング時間:0.70秒
DS、SS、RS:0.5°、0.5°、0.15mm
ゴニオメーター半径:185mm
各試料の粉末X線回折における回折線ピークの本数は、信号(S)とノイズ(N)の比(S/N)が2以上で検出できるシグナルを1つのピークとしてみなして数えた。
【0164】
なお、ノイズ(N)は、ベースラインの幅とした。
2.BET比表面積測定
島津製作所株式会社製 マイクロメリティクス ジェミニ2360を用いてBET比表面積を測定した。前処理時間、前処理温度は、それぞれ30分、200℃に設定した。
【0165】
3.酸素還元能の評価
(1)燃料電池用電極の製造
実施例および比較例で得られた各触媒について、触媒95mgとカーボン(キャボット社製 VULCAN(登録商標) XC72)5mgとを、イソプロピルアルコール:純水=2:1の質量比で混合した溶液10gに入れ、超音波で撹拌、懸濁して混合した。この混合物30μlをグラッシーカーボン電極(東海カーボン社製、直径:6mm)に塗布し、120℃で5分間乾燥して、カーボン電極表面に1.0mg以上の燃料電池用触媒層が形成した。さらに、燃料電池用触媒層の上に5%ナフィオン(NAFION(登録商標))溶液(DE−521、デュポン社)を10倍にイソプロピルアルコールで希釈したもの10μlを塗布し、120℃で1時間乾燥し、燃料電池用電極を得た。
【0166】
(2)酸素還元能の評価
作製した燃料電池用電極を、酸素雰囲気および窒素雰囲気で、0.5mol/Lの硫酸水溶液中、30℃、5mV/秒の電位走査速度で分極し、それぞれ電流−電位曲線を測定した。その際、同濃度の硫酸水溶液中での可逆水素電極を参照電極とした。
【0167】
上記測定結果から、酸素雰囲気での還元電流と窒素雰囲気での還元電流とに0.2μA/cm2以上差が現れ始める電位を酸素還元開始電位とした。また、0.75Vおよび0.80V(vsRHE)における、酸素雰囲気での還元電流と窒素雰囲気での還元電流との差を算出した。算出した値をさらに電極面積で除した値を、酸素還元電流密度(mA/cm2)とした。
【0168】
酸素還元開始電位および酸素還元電流密度により、作製した燃料電池用電極の触媒能を評価した。
すなわち、酸素還元開始電位が高いほど、酸素還元電流密度が大きいほど、燃料電池用電極における触媒の触媒能が高いことを示す。
【0169】
[参考例1]
ビーカーに、アセチルアセトン2.60g(25.9mmol)を入れ、これを攪拌しながらチタンイソプロポキシド5.00ml(17.6mmol)を加え、さらに酢酸16mlを2分間かけて滴下し、チタン溶液(1)を調製した。
【0170】
ビーカーに、水60ml、エタノール50ml、および酢酸60mlを入れ、ここにピラジンカルボン酸8.74g(70.4mmol)を加えて、超音波洗浄器を用いた超音波の照射により完全に溶解させた。得られた溶液に、これを攪拌しながら、ナフィオン(NAFION(登録商標))(DE−521、デュポン社)10.0ml、および炭酸ナトリウム190mg(1.76mmol)を加え、さらに酢酸鉄(II)290mg(1.67mmol)を少量ずつ加えて10分程かけて完全に溶解させた。次に温度を室温に保ちながら、かつ攪拌しながら、上記のチタン溶液(1)を10分間かけて滴下し、滴下後さらに30分間攪拌を行い、溶液である触媒前駆材料を得た。
【0171】
ロータリーエバポレーターを用い、窒素雰囲気の減圧下で、ホットスターラーの温度を約100℃に設定し、前記触媒前駆材料を攪拌しながら、溶媒をゆっくり蒸発させた。完全に溶媒を蒸発させて得られた固形物残渣を自動乳鉢ですり潰して、11.0gの固形物残渣の粉末(1)を得た。
【0172】
3.60gの前記固形物残渣の粉末(1)を、ロータリーキルン炉に水素ガスを4体積%含む窒素ガス(すなわち、水素ガス:窒素ガス=4体積%:96体積%の混合ガス)を20ml/分の速度で流しながら、昇温速度10℃/分で890℃まで加熱し、890℃で0.5時間焼成し、自然冷却することにより、粉末状の熱処理物(1)539mgを得た。
【0173】
熱処理物(1)の評価結果を、表1、図1(熱処理物(1)の粉末X線回折スペクトル)および図2(熱処理物(1)を触媒として用いた燃料電池用電極の酸素還元能の測定結果)に示す。
【0174】
[実施例1]
前記熱処理物(1)の全量および10%の塩酸水溶液50mlを、フラスコ内で6時間攪拌した後、ろ過した。次いで、残渣を純水(pH7〜8)で洗浄しろ過する操作を、ろ液のpHが7になるまで行い、粉末を得た。
【0175】
得られた粉末を80℃で12時間乾燥させ、次いで自動乳鉢で30分間すり潰して、触媒(1)236mgを得た。
触媒(1)の評価結果を、表1、図3(触媒(1)の粉末X線回折スペクトル)および図4(触媒(1)を用いた燃料電池用電極(1)の酸素還元能の測定結果)に示す。
【0176】
[参考例2]
炭酸ナトリウムの量を380mg(3.52mmol)に変更したこと以外は参考例1における熱処理物(1)の製造方法と同様の操作を行い、熱処理物(2)625mgを得た。なお、この過程で得られた固形物残渣の粉末(2)の質量は11.3gであった。
【0177】
熱処理物(2)の評価結果を、表1、図5(熱処理物(2)の粉末X線回折スペクトル)および図6(熱処理物(2)を触媒として用いた燃料電池用電極の酸素還元能の測定結果)に示す。
【0178】
[実施例2]
熱処理物(1)を500mgの熱処理物(2)に変更したこと以外は実施例1と同様の操作を行い、触媒(2)151mgを得た。
【0179】
触媒(2)の評価結果を、表1、図7(触媒(2)の粉末X線回折スペクトル)および図8(触媒(2)を用いた燃料電池用電極(2)の酸素還元能の測定結果)に示す。
[参考例3]
ビーカーに、メタノール100mlを入れ、これを攪拌しながら二塩化亜鉛5.58g(40.9mmol)、ナフィオン(NAFION(登録商標))(DE−521、デュポン社)25.0ml、酢酸鉄(II)711mg(4.09mmol)順次加えた。得られた液に、ピラジンカルボン酸20.3g(164mmol)を少量ずつ加え、3時間攪拌を行った後、さらに炭酸ナトリウム867mg(8.18mmol)を蒸留水30mlに溶解した液を加え、溶液である触媒前駆材料を得た。
【0180】
ロータリーエバポレーターを用い、窒素雰囲気の減圧下で、ホットスターラーの温度を約100℃に設定し、前記触媒前駆材料を攪拌しながら、溶媒をゆっくり蒸発させた。次に、窒素気流下、300℃で、1時間乾燥し、固形物残渣を自動乳鉢ですり潰して、9.50gの固形物残渣の粉末(3)を得た。
【0181】
固形物残渣の粉末(1)を固形物残渣の粉末(3)(3.60g)に変更したこと以外は参考例1と同様の操作を行い、熱処理物(3)668mgを得た。
熱処理物(3)の評価結果を、表1、図9(熱処理物(3)の粉末X線回折スペクトル)および図10(熱処理物(3)を触媒として用いた燃料電池用電極の酸素還元能の測定結果)に示す。
【0182】
[実施例3]
熱処理物(1)を500mgの熱処理物(3)に変更したこと以外は実施例1と同様の操作を行い、触媒(3)226mgを得た。
【0183】
触媒(3)の評価結果を、表1、図11(触媒(3)の粉末X線回折スペクトル)および図12(触媒(3)を用いた燃料電池用電極(3)の酸素還元能の測定結果)に示す。
[比較例1]
〔活性炭のアルカリ処理〕
市販の椰子殻活性炭(BET比表面積1617m2 /g)を120℃で1時間真空加熱処理した。フラスコ内に1モル/リットルの水酸化カリウム水溶液500mlを準備し、ここへ真空加熱処理した活性炭10gを添加した。活性炭と水酸化カリウム水溶液との混合物を、ロータリーエバポレーターを用いて40〜60℃で加熱しながら攪拌し、水がなくなるまで濃縮した。得られた活性炭2gを管状炉に入れ、水素ガスを4体積%含む窒素ガス(すなわち、水素ガス:窒素ガス=4体積%:96体積%の混合ガス)の雰囲気下で昇温速度10℃/minで900℃まで加熱し、900℃で3時間保持し、自然冷却することにより粉末状の熱処理物(c1)を得た。熱処理物(c1)を水500mlで洗浄しろ過した。次いで、残渣を純水で洗浄しろ過する操作を、ろ液のpHが7付近になるまで行い、残渣を乾燥させて活性炭(c1)を得た。
【0184】
この活性炭(c1)の評価結果を、表1および図13(活性炭(c1)を触媒として用いた燃料電池用電極(c1)の酸素還元能の測定結果)に示す。
【0185】
【表1】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チタン、ニオブ、ジルコニウム、タンタル、アルミニウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ゲルマニウム、イットリウム、インジウム、スズ、タングステンおよびセリウムからなる群から選ばれる金属元素M1の原子、アルカリ金属およびアルカリ土類金属からなる群から選ばれる金属元素M3の原子、炭素原子、窒素原子ならびに酸素原子を含む触媒前駆材料を熱処理する工程(II)、ならびに
工程(II)で得られた熱処理物から前記金属元素M3の原子を除去して電極触媒を得る工程(III)
を含むことを特徴する燃料電池用電極触媒の製造方法。
【請求項2】
液相中で原料を混合して前記前駆材料を得る工程(I)を含む請求項1に記載の燃料電池用電極触媒の製造方法。
【請求項3】
前記工程(I)が、少なくとも前記金属元素M1の化合物と、窒素含有有機化合物(2)と、前記金属元素M3の化合物と、溶媒とを混合する工程(Ia)を含み、
前記工程(Ia)で用いられる成分のうち溶媒以外の少なくとも1つの成分が酸素原子を有し、
前記工程(II)において、前記前駆材料を500〜1100℃の温度で熱処理する
ことを特徴とする請求項2に記載の燃料電池用電極触媒の製造方法。
【請求項4】
前記工程(I)が、前記工程(Ia)の後に前記溶媒を除去する工程(Ib)を含む請求項3に記載の燃料電池用電極触媒の製造方法。
【請求項5】
前記工程(Ia)において、フッ素含有化合物(4)をさらに混合する請求項4に記載の燃料電池用電極触媒の製造方法。
【請求項6】
前記工程(III)において、工程(II)で得られた熱処理物と酸とを接触させて、前記熱処理物からアルカリ金属を除去する請求項1〜5のいずれかに記載の燃料電池用電極触媒の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法で得られる燃料電池用電極触媒。
【請求項8】
請求項7に記載の燃料電池用電極触媒を含むことを特徴とする燃料電池用触媒層。
【請求項9】
請求項8に記載の燃料電池用触媒層と多孔質支持層とを有することを特徴とする電極。
【請求項10】
カソードとアノードと前記カソードおよび前記アノードの間に配置された電解質膜とを有する膜電極接合体であって、前記カソードおよび/または前記アノードが請求項9に記載の電極であることを特徴とする膜電極接合体。
【請求項11】
請求項10に記載の膜電極接合体を備えることを特徴とする燃料電池。
【請求項12】
固体高分子型燃料電池である請求項11に記載の燃料電池。
【請求項13】
発電機能、発光機能、発熱機能、音響発生機能、運動機能、表示機能および充電機能からなる群より選ばれる少なくとも一つの機能を有する物品であって、請求項11または12に記載の燃料電池を備えることを特徴とする物品。
【請求項1】
チタン、ニオブ、ジルコニウム、タンタル、アルミニウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ゲルマニウム、イットリウム、インジウム、スズ、タングステンおよびセリウムからなる群から選ばれる金属元素M1の原子、アルカリ金属およびアルカリ土類金属からなる群から選ばれる金属元素M3の原子、炭素原子、窒素原子ならびに酸素原子を含む触媒前駆材料を熱処理する工程(II)、ならびに
工程(II)で得られた熱処理物から前記金属元素M3の原子を除去して電極触媒を得る工程(III)
を含むことを特徴する燃料電池用電極触媒の製造方法。
【請求項2】
液相中で原料を混合して前記前駆材料を得る工程(I)を含む請求項1に記載の燃料電池用電極触媒の製造方法。
【請求項3】
前記工程(I)が、少なくとも前記金属元素M1の化合物と、窒素含有有機化合物(2)と、前記金属元素M3の化合物と、溶媒とを混合する工程(Ia)を含み、
前記工程(Ia)で用いられる成分のうち溶媒以外の少なくとも1つの成分が酸素原子を有し、
前記工程(II)において、前記前駆材料を500〜1100℃の温度で熱処理する
ことを特徴とする請求項2に記載の燃料電池用電極触媒の製造方法。
【請求項4】
前記工程(I)が、前記工程(Ia)の後に前記溶媒を除去する工程(Ib)を含む請求項3に記載の燃料電池用電極触媒の製造方法。
【請求項5】
前記工程(Ia)において、フッ素含有化合物(4)をさらに混合する請求項4に記載の燃料電池用電極触媒の製造方法。
【請求項6】
前記工程(III)において、工程(II)で得られた熱処理物と酸とを接触させて、前記熱処理物からアルカリ金属を除去する請求項1〜5のいずれかに記載の燃料電池用電極触媒の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法で得られる燃料電池用電極触媒。
【請求項8】
請求項7に記載の燃料電池用電極触媒を含むことを特徴とする燃料電池用触媒層。
【請求項9】
請求項8に記載の燃料電池用触媒層と多孔質支持層とを有することを特徴とする電極。
【請求項10】
カソードとアノードと前記カソードおよび前記アノードの間に配置された電解質膜とを有する膜電極接合体であって、前記カソードおよび/または前記アノードが請求項9に記載の電極であることを特徴とする膜電極接合体。
【請求項11】
請求項10に記載の膜電極接合体を備えることを特徴とする燃料電池。
【請求項12】
固体高分子型燃料電池である請求項11に記載の燃料電池。
【請求項13】
発電機能、発光機能、発熱機能、音響発生機能、運動機能、表示機能および充電機能からなる群より選ばれる少なくとも一つの機能を有する物品であって、請求項11または12に記載の燃料電池を備えることを特徴とする物品。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2013−37942(P2013−37942A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−174056(P2011−174056)
【出願日】平成23年8月9日(2011.8.9)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月9日(2011.8.9)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】
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