説明

燃料電池用高分子膜組成物、これを用いて製造された高分子膜、ならびにこれを含む膜−電極接合体及び燃料電池

【課題】機械的物性が優れていて、イオン伝導度が高く、燃料透過率が低い燃料電池用高分子膜組成物を提供する。
【解決手段】陽イオン交換基及び炭素二重結合含有架橋基を含む高分子、陽イオン交換基を含む(メタ)アクリル系化合物、ならびに重合開始剤を含む、燃料電池用高分子膜組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池用高分子膜組成物、これを用いて製造された高分子膜、ならびにこれを含む膜−電極接合体(MEA)及び燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、メタノール、エタノール、天然ガスなどの炭化水素系の物質内に含まれている水素(H)及び酸素(O)の化学反応エネルギーを電気エネルギーに直接変換させる発電システムである。
【0003】
このような燃料電池は、化石エネルギーに代替されるクリーンなエネルギー源として、単電池の積層によるスタック構成で多様な範囲の出力を行うことができる長所があり、小型のリチウム電池に比べてエネルギー密度が4〜10倍であり、NOxやCOの排出が殆どなく、騒音も非常に少ないので、次世代エネルギー変換装置として脚光を浴びている。
【0004】
燃料電池の代表的な例としては、高分子電解質膜燃料電池(polymer electrolyte membrane fuel cell;PEMFC)、直接酸化型燃料電池(DOFC)が挙げられる。前記直接酸化型燃料電池において、燃料としてメタノールを使用する場合には、直接メタノール型燃料電池(DMFC)という。
【0005】
前記高分子電解質膜燃料電池は、エネルギー密度が大きく、出力が高い長所があるが、水素ガスの取り扱いに注意が必要で、燃料ガスである水素を生成するためにメタン、メタノール、及び天然ガスなどを改質するための燃料改質装置などの付帯設備が必要であるなどの問題点がある。
【0006】
これに対して、直接酸化型燃料電池は、高分子電解質膜燃料電池に比べてエネルギー密度は小さいが、燃料の取り扱いが容易で、運転温度が低いため常温で運転が可能であり、特に燃料改質装置が必要でないという長所がある。
【0007】
このような燃料電池システムにおいて、電気を実質的に発生させるスタックは、膜−電極接合体及びセパレータ(またはバイポーラプレートともいう)からなる単電池が数個〜数十個積層された構造からなる。前記膜−電極接合体は、水素イオン伝導性高分子を含む高分子電解質膜を挟んでアノード(「燃料極」または「酸化電極」ともいう)及びカソード(「空気極」または「還元電極」ともいう)が配置される構造を有する。
【0008】
燃料電池の発電の原理としては、燃料が燃料極であるアノードに供給されてアノードの触媒に吸着され、燃料が酸化されて水素イオン及び電子を生成し、この時に生成された電子は外部回路によって酸化極であるカソードに到達し、水素イオンは高分子電解質膜を通過してカソードに伝達される。そして、カソードに酸化剤が供給され、前記酸化剤、水素イオン、及び電子がカソードの触媒上で反応して、水を生成しながら発電する。
【0009】
燃料電池用高分子膜としては、ポリアリールエーテルスルホン高分子膜を使用することができる。下記非特許文献1には、架橋基が含まれていないポリアリールエーテルスルホン高分子を利用した高分子膜の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Journal of Membrane Science,197(2002)231
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、前記非特許文献1のように、架橋基が含まれていないポリアリールエーテルスルホン高分子を合成して膜を製造する場合、燃料電池に適用する際に高分子膜が薄くなる問題点や、陽イオン交換基の含有量が増加すると高分子膜の機械的物性が低下する問題点がある。前記非特許文献1においても、陽イオン交換基を含む単量体の含有量が50%以上増加すると水の吸収量(water uptake)が急激に増加し、これは膨潤現象を伴って、高分子膜のサイズ安定性及び機械的物性の低下をもたらすことが指摘されている。したがって、前記高分子膜の低い機械的物性を補完する必要がある。
【0012】
そこで本発明の目的は、機械的物性に優れ、イオン伝導度が高く、燃料透過率が低い燃料電池用高分子膜組成物を提供することにある。
【0013】
本発明の他の目的は、前記高分子膜組成物を用いて製造された高分子膜を提供することにある。
【0014】
本発明のまた他の目的は、前記高分子膜を含む膜−電極接合体を提供することにある。
【0015】
本発明のまた他の目的は、前記膜−電極接合体を含む燃料電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の一実施形態によれば、陽イオン交換基及び炭素二重結合含有架橋基を含む高分子、陽イオン交換基を含む(メタ)アクリル系化合物、ならびに重合開始剤を含む燃料電池用高分子膜組成物を提供する。
【0017】
前記高分子中の陽イオン交換基の含有量(またはイオン交換容量(IEC、ion exchange capacity))は、好ましくは、0.3〜2.5mmol/gであり、架橋基の含有量は、好ましくは、0.1〜3.0mmol/gである。
【0018】
前記高分子としては、例えば、ポリスルホン系高分子、ポリエーテルケトン系高分子、ポリエーテル系高分子、ポリエステル系高分子、ポリベンズイミダゾール系高分子、ポリイミド系高分子、またはこれらの組み合わせから選択される高分子が用いられうる。前記高分子は、好ましくは、下記化学式1で表される繰り返し単位を含む。
【0019】
【化1】

【0020】
上記式中、R及びRは互いに同一であっても異なっていてもよく、水素、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数6〜20のアリール基、ニトロ基、アミン基、スルホン酸基、ホスホン酸基、カルボン酸基、またはスルホンイミド基であり、ただし、R及びRのうちの少なくとも1つはスルホン酸基、ホスホン酸基、カルボン酸基、またはスルホンイミド基であり、スルホン酸基、ホスホン酸基、カルボン酸基、およびスルホンイミド基は塩の形態であってもよく;R及びRは互いに同一であっても異なっていてもよく、水素、−CF、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数6〜20のアリール基、またはニトロ基であり;R及びRは互いに同一であっても異なっていてもよく、水素、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、ニトロ基、アミン基、炭素数2〜20のアルケニル基(例えばビニル基)、アリル基、または(メタ)アクリロイル基であり、ただし、R及びRのうちの少なくとも1つは炭素数2〜20のアルケニル基、アリル基、または(メタ)アクリロイル基であり;p、r、s、及びtは互いに独立して、0〜4の整数であり、p及びrが同時に0ではなく、s及びtが同時に0ではない。
【0021】
好ましくは、前記高分子は、下記化学式2で表される高分子である。
【0022】
【化2】

【0023】
上記式中、R’及びR’は互いに同一であっても異なっていてもよく、炭素数2〜20のアルケニル基(例えばビニル基)またはアリル基であり;MはNa、K、またはHであり、k、m、n、及びoはモル数である。
【0024】
前記高分子の数平均分子量(Mn)は、好ましくは、100,000〜1,500,000である。
【0025】
前記(メタ)アクリル系化合物は、好ましくは、下記化学式4、化学式5、化学式6、またはこれらの組み合わせから選択される化合物である。
【0026】
【化3】

【0027】
上記式中、R、R、及びR11は互いに同一であっても異なっていてもよく、水素、炭素数1〜炭素数20のアルキル基、炭素数2〜炭素数20のアルケニル基、炭素数6〜20のアリール基、ニトロ基、またはアミン基であり;R、R10、及びR13は互いに同一であっても異なっていてもよく、炭素数1〜20のアルキレン基、炭素数6〜20のアリーレン基、−NH−、または−NR(Rは炭素数1〜10のアルキル基)であり;R12は−NH−、または−NR(Rは炭素数1〜10のアルキル基)であり;X、X、及びXは互いに同一であっても異なっていてもよく、スルホン酸基、ホスホン酸基、カルボン酸基、またはスルホンイミド基である。
【0028】
好ましくは、前記(メタ)アクリル系化合物は、スルホン化(メタ)アクリル系化合物である。前記(メタ)アクリル系化合物としては、例えば、3−スルホプロピルアクリレート(3−sulfopropyl acrylate)、3−スルホプロピルメタクリレート(3−sulfopropyl methacrylate)、および2−アクリルアミノ−2−メチルプロパンスルホン酸(2−acrylamino−2−methyl−1−propanesulfonic acid)などが挙げられる。これらを組み合わせて用いてもよい。
【0029】
好ましくは、前記(メタ)アクリル系化合物は、前記高分子100質量部に対して1〜30質量部で含まれる。より好ましくは、前記(メタ)アクリル系化合物は、前記高分子100質量部に対して1〜20質量部で含まれる。
【0030】
前記重合開始剤は、好ましくは、紫外線重合開始剤または熱重合開始剤である。前記重合開始剤は、好ましくは、前記高分子及び前記(メタ)アクリル系化合物の総含有量100質量部に対して1〜10質量部で含まれる。
【0031】
また、本発明の他の実施形態によれば、前記陽イオン交換基及び炭素二重結合含有架橋基を含む高分子と(メタ)アクリル系化合物との架橋反応によって生成された架橋重合体を含む高分子膜が提供される。
【0032】
本発明のさらに他の実施形態によれば、前記燃料電池用高分子膜組成物を用いて製造された高分子膜を含む燃料電池用膜−電極接合体及び前記膜−電極接合体を含む燃料電池が提供される。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、機械的物性が優れているだけでなく、燃料透過率が低く、イオン伝導度特性が優れた燃料電池用高分子膜組成物が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の一実施態様による高分子膜組成物から製造された高分子膜を含む膜−電極接合体(MEA)を模式的に示した概略図である。
【図2】本発明の一実施形態による高分子膜が適用された直接メタノール型燃料電池の発電原理を説明するための概略図である。
【図3】本発明の一実施形態による高分子膜組成物から製造された高分子膜を含む膜−電極接合体を含む燃料電池を模式的に示した分解斜視図である。
【図4】実施例1、2、及び比較例1によって調製された高分子膜のMeOH透過率を評価した結果を示した図である。グラフの縦軸は透過したMeOHのモル濃度に高分子膜の厚さを乗じた値である。
【図5】実施例1、2、及び比較例1によって調製された高分子膜のインピーダンスを測定した結果を示した図である。グラフの横軸及び縦軸は各々インピーダンスの実数部及び虚数部の抵抗に高分子膜の厚さをかけた値である。
【図6】実施例1、2、及び比較例1によって調製された高分子膜の引張強度及び延伸率を測定した結果を示した図である。
【図7A】実施例1、2及び比較例1によって調製された膜−電極接合体の単電池の性能を評価した結果を示した図である。
【図7B】実施例1、2及び比較例1によって製造された膜−電極接合体の単電池の性能を評価した結果を示した図である。
【図8】実施例1、2、及び比較例1によって製造された高分子膜のイオン伝導度及び燃料透過率特性を比較したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明を詳細に説明する。本明細書中、「(メタ)アクリロイル基」とはメタクリロイル基及びアクリロイル基の総称であり、「(メタ)アクリル系化合物」とはメタクリル系化合物及びアクリル系化合物の総称である。
【0036】
なお、化学式中の「*」は他の元素と連結される結合を意味する。
【0037】
<燃料電池用高分子膜組成物>
本発明の一実施形態による燃料電池用高分子膜組成物は、陽イオン交換基及び炭素二重結合含有架橋基を含む高分子、陽イオン交換基を含む(メタ)アクリル系化合物、及び重合開始剤を含む。
【0038】
<(A)陽イオン交換基及び炭素二重結合含有架橋基を含む高分子>
本発明の一実施形態による燃料電池用高分子膜組成物は、陽イオン交換基及び炭素二重結合含有架橋基を含む高分子を含む。前記高分子は、高分子膜組成物の主材料に相当する。
【0039】
前記高分子は、好ましくは、ポリスルホン系高分子、ポリエーテルケトン系高分子、ポリエーテル系高分子、ポリエステル系高分子、ポリベンズイミダゾール系高分子、ポリイミド系高分子、またはこれらの組み合わせから選択される。
【0040】
前記高分子中の陽イオン交換基は、好ましくは、酸または塩の形態であり、好ましくは、高分子膜の製造後の酸処理工程によって酸の形態になる。
【0041】
前記陽イオン交換基は、好ましくは、スルホン酸基、ホスホン酸基、カルボン酸基、およびスルホンイミド基からなる群から選択される1以上である。特に、前記陽イオン交換基は、スルホン酸基であることが好ましい。
【0042】
前記炭素二重結合含有架橋基は、炭素二重結合を1つ以上含む官能基であれば特に制限されない。例えば、アリル基、炭素数2〜20のアルケニル基、(メタ)アクリロイル基などが挙げられる。炭素数2〜20のアルケニル基の例としては、ビニル基が挙げられる。
【0043】
前記高分子は、好ましくは、下記化学式1で表される繰り返し単位を含む。
【0044】
【化4】

【0045】
上記式中、R及びRは互いに同一であっても異なっていてもよく、水素、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数6〜20のアリール基、ニトロ基、アミン基、スルホン酸基、ホスホン酸基、カルボン酸基、またはスルホンイミド基であり、ただし、R及びRのうちの少なくとも1つはスルホン酸基、ホスホン酸基、カルボン酸基、またはスルホンイミド基であり、スルホン酸基、ホスホン酸基、カルボン酸基、およびスルホンイミド基は塩の形態であってもよく;R及びRは互いに同一であっても異なっていてもよく、水素、−CF、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数6〜20のアリール基、またはニトロ基であり;R及びRは互いに同一であっても異なっていてもよく、水素、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、ニトロ基、アミン基、炭素数2〜20のアルケニル基(例えばビニル基)、アリル基、または(メタ)アクリロイル基であり、ただし、R及びRのうちの少なくとも1つは炭素数2〜20のアルケニル基、アリル基、または(メタ)アクリロイル基であり;p、r、s、及びtは互いに独立して、0〜4の整数であり、p及びrが同時に0ではなく、s及びtが同時に0ではない。なお、R、R、R、Rがそれぞれ複数存在する場合、複数のR、R、R、Rは、それぞれ、互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0046】
前記化学式1中、主鎖であるアリーレン基の置換基であるR及びRのうちの少なくとも1つは陽イオン交換基である、スルホン酸基、ホスホン酸基、カルボン酸基、またはスルホンイミド基を含む。好ましくは、R及びRのうちの少なくとも1つはスルホン酸基を含み、より好ましくは、R及びRが共にスルホン酸基である。スルホン酸基は、陽イオン伝導性基として代表的な官能基であり、強酸(Hの活動度が大きい)であるため、高いイオン伝導度を示す。さらに、耐熱性にも優れるため好ましい。また、好ましくは、陽イオン交換基が主鎖のアリール環当たり各々1つずつ存在する。
【0047】
前記高分子中の陽イオン交換基の含有量は、好ましくは、0.3〜2.5mmol/gである。前記高分子中の陽イオン交換基の含有量が前記範囲内である場合、燃料電池への適用に適したイオン伝導度を有する。前記高分子中の陽イオン交換基の含有量が2.5mmol/gを超える場合には、濡れた状態で高分子膜の膨潤率が増加し、乾燥した状態で柔軟性が減少するため、機械的物性が低下する。また、メタノールやその他の液体燃料の透過率が増加するため、燃料電池の性能が低下し、燃料利用効率が低下する。一方、前記高分子中の陽イオン交換基の含有量が0.3mmol/gよりも低い場合には、イオン伝導度が不十分になり、燃料電池への適用が難しい。
【0048】
前記高分子中の架橋基の含有量は、好ましくは、0.1〜3.0mmol/gである。前記高分子中の架橋基の含有量が前記範囲内である場合、前記高分子膜組成物から製造される高分子膜の機械的物性が向上しうる。また、燃料透過率が低下し、前記高分子膜のTg(ガラス転移温度)の急激な低下を防止するため、高分子膜の耐久性を向上させることができる。
【0049】
前記高分子は、陽イオン交換基だけでなく炭素二重結合含有架橋基を含むため、前記高分子間の架橋反応を行うことができる。また、(メタ)アクリロイル基を含む架橋性単量体である(メタ)アクリル系化合物との架橋反応を行うこともできる。
【0050】
上記のように高分子中の架橋基の含有量に応じて前記高分子膜組成物から製造される高分子膜の耐溶剤性が異なる。つまり、架橋反応によって生成される架橋重合体の架橋程度が高ければ、この高分子は溶媒に溶解されずに膨潤される特性を示す。
【0051】
前記高分子の好ましい例としては、下記の化学式2で表される高分子が挙げられる。
【0052】
【化5】

【0053】
前記化学式2中、R’及びR’は互いに同一であっても異なっていてもよく、炭素二重結合含有架橋基であり、前記炭素二重結合含有架橋基としては、例えばアリル基、炭素数2〜20のアルケニル基、(メタ)アクリロイル基などが挙げられる。上記式中、MはNa、K、またはHであり、k、m、n、及びoはモル数である。
【0054】
前記化学式2中、R’及びR’が主鎖のアリール環当たり各々1つずつ存在し、全てアリル基である化合物は、下記化学式3で表される。アリル基は代表的な架橋基であり、架橋反応を誘導し靭性を高める効果が高い。
【0055】
【化6】

【0056】
上記式中、MはNa、K、またはHであり、k、m、n、及びoはモル数である。
【0057】
前記化学式3のように高分子にアリル基を導入するためには、例えば、ポリアリールエーテルスルホンの合成時に単量体としてジアリルビスフェノール−A(diallyl bisphenol−A)を使用する。架橋程度はジアリルビスフェノール−Aの含有量を調節することによって変更することができる。
【0058】
前記高分子の数平均分子量(Mn)は100,000〜1,500,000であることが好ましく、300,000〜1,000,000であることがより好ましい。前記高分子の数平均分子量(Mn)が前記範囲内である場合、製造された高分子膜の機械的物性に優れ、膜−電極接合体及びスタックの製造時に高温及び高圧の圧着によってクラック(crack)が発生する問題を減少させることがでる。そのため、燃料電池の長時間運転の際に割れたり溶解する問題を減少させることができ、耐久性を向上させることができる。
【0059】
<(B)(メタ)アクリル系化合物>
(メタ)アクリル系化合物は、陽イオン交換基及び(メタ)アクリロイル基を含む化合物を意味する。
【0060】
前記(メタ)アクリル系化合物において、陽イオン交換基としては、例えば、スルホン酸基、ホスホン酸基、カルボン酸基、スルホンイミド基、またはこれらの組み合わせから選択され、特にスルホン酸基が好ましい。
【0061】
前記(メタ)アクリル系化合物は、好ましくは、下記化学式4〜6で表される化合物またはこれらの組み合わせから選択される。
【0062】
【化7】

【0063】
化学式4〜6中、R、R、及びR11は互いに同一であっても異なっていてもよく、水素、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数6〜20のアリール基(例えばフェニル基)、ニトロ基、またはアミン基であり、R、R10、及びR13は互いに同一であっても異なっていてもよく、炭素数1〜20のアルキレン基、炭素数6〜20のアリーレン基、−NH−、または−NR(Rは炭素数1〜10のアルキル基)であり;R12は−NH−、または−NR(Rは炭素数1〜10のアルキル基)であり、X、X、及びXは互いに同一であっても異なっていてもよく、スルホン酸基、ホスホン酸基、カルボン酸基、またはスルホンイミド基である。
【0064】
前記(メタ)アクリル系化合物は、1種または2種以上を混合して使用することによって、陽イオン交換基及び炭素二重結合含有架橋基を含む高分子との架橋反応によって多様な構造の架橋重合体を製造することができる。
【0065】
前記(メタ)アクリル系化合物は、好ましくは、スルホン化(メタ)アクリル系化合物である。スルホン化(メタ)アクリル系化合物の具体的な例としては、3−スルホプロピルアクリレート(3−sulfopropyl acrylate、SPA)、3−スルホプロピルメタクリレート(3−sulfopropyl methacrylate)、2−アクリルアミノ−2−メチルプロパンスルホン酸(2−acrylamino−2−methyl−1−propanesulfonicacid)などが挙げられる。
【0066】
前記燃料電池用高分子膜組成物において、好ましくは、前記高分子100質量部に対して前記(メタ)アクリル系化合物は1〜30質量部で含まれる。前記高分子100質量部に対して前記(メタ)アクリル系化合物は1〜20質量部で含まれることがより好ましい。前記(メタ)アクリル系化合物の含有量が前記範囲内である場合、架橋反応後に前記(メタ)アクリル系化合物及び前記高分子の架橋程度が適切な範囲になる。また、製造される高分子膜の機械的物性が向上すると同時に、前記(メタ)アクリル系化合物との反応によって生成された架橋重合体の比率が高くなりすぎないため、高分子膜の機械的物性が脆弱になるのを防止することができる。
【0067】
<(C)重合開始剤>
前記燃料電池用高分子膜を製造するために、紫外線(UV)架橋工程や熱架橋工程を適用することができる。したがって、前記燃料電池用高分子膜組成物は、架橋工程の種類によって、紫外線架橋工程を適用する場合には紫外線重合開始剤をさらに含むことができ、熱架橋工程を適用する場合には熱重合開始剤をさらに含むことができる。
【0068】
<(C1)紫外線重合開始剤>
前記高分子膜組成物において、前記高分子及び前記(メタ)アクリル系化合物の重合反応のために紫外線重合反応を行う場合には、紫外線の照射時にラジカルを生成する紫外線重合開始剤がさらに必要である。
【0069】
前記紫外線重合開始剤としては、例えば、ジエトキシアセトフェノン、ベンジルジメチルケタル、1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトンなどのアセトフェノン類;ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテルなどのベンゾインエーテル類;4−フェニルベンゾフェノン、(4−ベンゾイルベンジル)トリメチルアンモニウムクロライドなどのベンゾフェノン類;2,4−ジエチルチオキサントン、1−クロロ−4、4’−ジクロロチオキサントンなどのチオキサントン類;2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルベンゾイルオキシドなどが挙げられる。前記紫外線重合開始剤は、単独で用いてもよく、2つ以上を混合して使用してもよい。
【0070】
また、紫外線重合反応の促進剤(増感剤)として、例えば、N,N−ジメチルパラトルイジンなどのアミン系化合物をさらに使用することもできる。
【0071】
前記紫外線重合開始剤の含有量は特に制限されないが、高分子膜組成物中の前記高分子及び前記(メタ)アクリル系化合物の総含有量100質量部に対して1〜10質量部で用いることが好ましい。2種以上の紫外線重合開始剤を用いる場合は、その合計量は上記範囲であることが好ましい。前記紫外線重合開始剤の含有量が前記範囲である場合、架橋程度が低すぎず、高分子膜組成物中でゲルの形成や相分離などの不均一の問題が発生するのを防止することができる。また、物性が均一で、外観が良好な高分子膜を製造することができる。
【0072】
<(C2)熱重合開始剤>
前記高分子膜組成物において、前記高分子及び前記(メタ)アクリル系化合物の重合反応のために熱重合反応を行う場合には、熱を加えた時にラジカルを生成する熱重合開始剤がさらに必要である。
【0073】
熱重合開始剤としては、例えば、ジアルキル過酸化物、ジアシル過酸化物、ベンゾイルパーオキシドなどの有機過酸化物類、キュミルハイドロパーオキシドなどのハイドロ過酸化物類、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、アゾメタン、アゾイソプロパンなどのアゾ化合物類、エチル銀などの金属アルキル類などを使用することができる。特に、アゾ化合物類の熱重合開始剤は、開始温度範囲が約40〜約60℃と広範囲であり、分解時に窒素ガスが発生するため、生成された窒素の量を測定することによって生成された開始ラジカルの量が分かるので、好適に使用されうる。
【0074】
前記熱重合開始剤の含有量は、特に制限されないが、高分子膜組成物の前記高分子及び前記(メタ)アクリル系化合物の総含有量100質量部に対して1〜10質量部であることが好ましい。2種以上の熱重合開始剤を用いる場合は、その合計量は上記範囲であることが好ましい。前記熱開始剤の含有量が前記範囲である場合、高分子膜の製造工程中に大気中の酸素が開始剤によって生成されたラジカルと反応することに起因する、架橋反応に使用されるラジカルの量の不足を防止することができる。また、高分子膜の製造工程中に開始剤の分解によって発生する窒素ガスによって高分子膜に微細気孔が生じることを防止できる。
【0075】
<陽イオン交換基及び炭素二重結合含有架橋基を含む高分子の製造方法>
以下、前記陽イオン交換基及び炭素二重結合含有架橋基を含む高分子の製造方法を説明する。
【0076】
例えば、前記高分子は、下記化学式7で表される重合性単量体、下記化学式8で表される重合性単量体、下記化学式9で表されるジオール化合物、および下記化学式10で表されるジオール化合物を、例えばN−メチルピロリドン、トルエンなどの溶媒及び炭酸カリウムなどの塩と混合して、これらを重合反応させることによって製造することができる。
【0077】
【化8】

【0078】
上記式中、R’及びR’は互いに同一であっても異なっていてもよく、水素炭素数1〜10のアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数6〜20のアリール基、ニトロ基、アミン基であり;R”及びR”は互いに同一であっても異なっていてもよく、スルホン酸基、ホスホン酸基、カルボン酸基、またはスルホンイミド基であり、スルホン酸基、ホスホン酸基、カルボン酸基、およびスルホンイミド基は塩の形態であってもよく;p及びrは各々0〜4の整数であり、p及びrが同時に0ではなく、Y、Y、Y、及びYは互いに同一であるか異なる反応性基であり、例えばCl、F、Br、またはIであり、好ましくは、Clである。
【0079】
【化9】

【0080】
上記式中、R及びRは互いに同一であっても異なっていてもよく、水素、−CF、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数6〜20のアリール基、またはニトロ基であり;R’及びR’は互いに同一であっても異なっていてもよく、水素炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、ニトロ基、またはアミン基であり;R”及びR”は互いに同一であっても異なっていてもよく、炭素数2〜20のアルケニル基(例えばビニル基)、アリル基、または(メタ)アクリロイル基であり;s及びtは互いに独立して、0〜4の整数であり、s及びtが同時に0ではない。
【0081】
このとき、これらの原料において、1つのアリール環あたり1つの架橋基または陽イオン交換基がそれぞれ存在すれば、単量体の含有量で高分子の架橋基と陽イオン交換基の含有量を容易に調節することができる。
【0082】
前記化学式7の重合性単量体の具体的な例としては、4,4’−ジクロロジフェニルスルホン(4,4’−dichlorodiphenyl sulfone:DCDPS)、4,4’−ジフルオロジフェニルスルホンなどが挙げられる。前記化学式8の重合性単量体の具体的な例としては、スルホン化−4,4’−ジクロロジフェニルスルホン(sulfonated−4,4’−dichlorodiphenyl sulfone:S−DCDPS)などが挙げられる。
【0083】
前記化学式9のジオール化合物の具体的な例としては、ビスフェノール−A(BPA)などが挙げられる。前記化学式10のジオール化合物の具体的な例としては、ジアリルビスフェノール−A(DABPA)などが挙げられる。
【0084】
前記化学式8の重合性単量体の含有量は、好ましくは、化学式7の単量体と化学式8の単量体との総モル数1モルに対して0.1〜0.7モルである。上記範囲であれば、高分子膜の適切なイオン伝導度が得られうる。
【0085】
また、UV照射や熱処理で架橋可能な炭素二重結合含有架橋基を含む化学式10のジオール化合物の含有量は、好ましくは、化学式9のジオール化合物と化学式10のジオール化合物との総モル数1モルに対して0.1〜0.7モルである。前記範囲内であれば、架橋反応の可能性が十分に高く、架橋反応で好ましくないゲルの形成を防止することができる。
【0086】
前記化学式9のジオール化合物と前記化学式10のジオール化合物との総含有量は、好ましくは、前記化学式7の重合性単量体と化学式8の重合性単量体との総モル数1モルに対して約0.1〜約4モルである。化学式9のジオール化合物と化学式10のジオール化合物との総含有量が前記範囲内であれば、重合反応の反応性に優れる。
【0087】
前記重合反応の温度は、求核反応過程で発生する水をトルエンと還流して除去することができる温度であれば十分であり、例えば、約100〜約250℃で実施する。反応時間も特に制限されない。好ましくは、前記反応物を冷却した後、イソプロピルアルコール(IPA)、蒸溜水に順次に沈澱させる後処理(work−up)工程を経て、前記燃料電池用高分子膜組成物を製造する。
【0088】
<燃料電池用高分子膜の製造方法>
次に、前記高分子膜組成物を使用した燃料電池用高分子膜の製造方法を説明する。前記高分子膜組成物を使用した燃料電池用高分子膜の製造方法は、紫外線架橋工程または熱架橋工程によって行われうる。
【0089】
まず、紫外線架橋工程によって高分子膜を製造する場合には、前記陽イオン交換基及び炭素二重結合含有架橋基を含む高分子及び前記(メタ)アクリル系化合物を溶媒に溶解して、その溶液に紫外線重合開始剤を添加して、均一な組成物を製造する。溶媒としては、特に制限されず、従来公知のものが用いられうるが、好ましくは、DMSOが用いられる。その後、前記溶液を基材フィルムにキャスティングする製膜工程を行う。前記キャスティングされた高分子膜組成物に含まれている溶媒を蒸発させるために乾燥工程を行った後、紫外線照射によって架橋重合体を含む燃料電池用高分子膜を製造することができる。前記高分子膜の緻密度を向上させるために、紫外線照射後にさらに乾燥工程を行うこともできる。紫外線照射によって形成された架橋重合体は、前記陽イオン交換基及び炭素二重結合含有架橋基を有する高分子と前記(メタ)アクリル系化合物との間の架橋重合体、前記陽イオン交換基及び炭素二重結合含有架橋基を有する高分子間の架橋重合体、及び前記(メタ)アクリル系化合物間の架橋重合体のうちの1つ以上を含む。
【0090】
または、前記のようにキャスティングされた高分子膜を乾燥する前に、先に紫外線照射を行った後で最後に乾燥工程を行ってもよい。
【0091】
また他の製造方法として、前記のようにキャスティングされた高分子膜に対して先に紫外線照射を行った後で乾燥工程を行って、再び紫外線照射を行ってもよい。
【0092】
使用される基材フィルムとしては、燃料電池用高分子膜の製造時に使用される一般的な基材フィルムを制限なく使用することができる。例えば、ポリエチレンテレフタレート(PE)系フィルム、ポリエチレンナフタレート(PEN)系フィルム、ポリカーボネート(PC)系フィルム、フッ素系フィルム(例えば、DuPont社製のTeflon(登録商標))、ポリイミド系フィルム、ポリオレフィン系フィルム、または異形物質が表面処理されたフィルムなどが挙げられる。ここで、異形物質が処理されたフィルムとは、離形剤が表面に塗布されたフィルムを意味する。前記基材フィルムの厚さは、好ましくは、50〜150μmである。
【0093】
熱架橋工程によって燃料電池用高分子膜を製造する場合には、例えば、前記陽イオン交換基及び炭素二重結合含有架橋基を有する高分子及び前記(メタ)アクリル系化合物を溶媒に溶解して、その溶液に熱重合開始剤を添加して、均一な組成物を調製する。溶媒としては、特に制限されず、従来公知のものが用いられうるが、好ましくは、DMSOが用いられる。その後、この溶液を前記基材フィルムにキャスティングする製膜工程を行う。キャスティングされた高分子膜に含まれている溶媒を蒸発させて、架橋反応を進めるために、例えば、約50〜約150℃の範囲の温度で約5分〜約12時間乾燥工程を行う。高分子膜が薄い場合や生産性を向上させるために、高い温度で短時間乾燥させてもよく、高分子膜が厚い場合や十分な架橋程度を確保するために、長時間乾燥してもよい。この際に加えられた熱によって乾燥と同時に熱重合開始剤からラジカルが形成されて架橋反応が開始される。このように調製された架橋重合体は、前記陽イオン交換基及び炭素二重結合含有架橋基を有する高分子と前記(メタ)アクリル系化合物との間の架橋重合体、前記陽イオン交換基及び炭素二重結合含有架橋基を有する高分子間の架橋重合体、および前記(メタ)アクリル系化合物間の架橋重合体のうちの1つ以上を含む。
【0094】
使用される基材フィルムは、燃料電池用高分子膜の製造に使用される一般的な基材フィルムを制限なく使用することができ、その具体的な例は紫外線照射による架橋工程で詳述したので省略する。
【0095】
前記紫外線架橋または熱架橋によって調製された多様な架橋高分子膜において、MEAの作製に使用する前に残留溶媒を除去し、製造された高分子膜の架橋構造を緻密にするために、例えば、約50〜約150℃の温度で約1時間〜約24時間熟成工程(aging process)を行うのが効果的である。
【0096】
紫外線架橋または熱架橋の工程によって調製された燃料電池用高分子膜は、好ましくは、基材フィルムから剥離して使用される。前記剥離された高分子膜は、好ましくは、硫酸などを利用して酸処理して、塩の形態の陽イオン交換基を酸の形態に変換させた後でMEAを製造する。
【0097】
前記のように製造された高分子膜の厚さは、特に制限されないが、燃料電池の種類及び用途に応じて、20〜150μmの範囲であることが好ましい。高分子膜の厚さが前記範囲内であれば、燃料透過率が増加しすぎないために耐久性が維持される。また、MEAの製造後にオーム抵抗値が高くなりすぎないため、燃料電池の性能が向上する。したがって、高分子膜の厚さを決定する際には、高分子膜のイオン伝導度及び燃料透過率を考慮して、当該燃料電池で要求される特性に適するように厚さを決定することが好ましい。
【0098】
従来は、燃料電池用架橋性高分子膜を製造するために塩基性高分子や陽イオン交換基が含まれていない(メタ)アクリル系化合物を陽イオン交換基を含む高分子と混合していたが、このような非イオン伝導性化合物を架橋構造の形成のための材料として使用する場合には、機械的物性は向上するが、製造された高分子膜のイオン伝導度を低下させる場合がある。
【0099】
一方、前記陽イオン交換基及び(メタ)アクリロイル基を含む(メタ)アクリル系化合物を陽イオン交換基及び炭素二重結合含有架橋基を有する高分子と混合して架橋重合体を製造する場合には、機械的物性を向上させることができるだけでなく、前記(メタ)アクリル系化合物中の陽イオン交換基がイオン伝導性を有するため、架橋重合体からなる高分子膜のイオン伝導度の低下を最小限にする、または防止することができる。
【0100】
したがって、前記陽イオン交換基及び炭素二重結合含有架橋基を有する高分子、及び前記陽イオン交換基を有する(メタ)アクリル系化合物を含む高分子膜組成物中の前記高分子及び前記(メタ)アクリル系化合物の混合比を調整して、非架橋高分子膜と比較して優れたイオン伝導度を有し、メタノールなどの燃料の透過率も減少した、燃料電池用高分子膜組成物を製造することができる。
【0101】
前記陽イオン交換基及び炭素二重結合含有架橋基を有する高分子、及び前記陽イオン交換基を有する(メタ)アクリル系化合物を含む高分子膜組成物を用いて高分子膜を製造する場合、高分子膜を構成する高分子全体で架橋が進められるため、高分子膜の表面だけが架橋された場合に比べて耐久性がより優れる。これは、高分子膜の表面だけが架橋される場合には、前記高分子膜の構造がコア、内部及び外部の多層構造からなるので、燃料電池を長時間動作させると高分子膜の内部層と外部層との剥離が起き、それによって前記高分子膜の耐久性が低下するためである。また、本発明の一実施形態による高分子膜の場合、高分子全体に含まれている架橋基の含有量を調節することによって架橋程度を容易に調節できるが、高分子膜の表面だけが架橋する場合には、内部の高分子の構造を変更せずに高分子膜の外部表面処理によって高分子膜全体の機械的物性を調節するのは難しく、前記高分子膜の外部表面だけが架橋されるので、物性の向上に限界がある。
【0102】
<膜−電極接合体(MEA)>
本発明の一実施形態によるMEAは、例えば、前記燃料電池用高分子膜の両面にカソード及びアノードの各触媒層をコーティングして触媒被覆膜(CCM)を作製し、前記CCMの両面にガス拡散層(GDL)を接合させて製造することができる。
【0103】
一方、他の方法として、基材フィルムにカソード及びアノードの触媒スラリーをコーティングしてカソード及びアノード触媒層を各々製造した後、前記基材フィルム上に形成された触媒層を高分子膜の両面に接合させて製造することができる。前記基材フィルムは、一般的な基材フィルムを使用することができ、例えば異形PETフィルム、ポリイミドフィルム、またはテフロンフィルムなどが挙げられる。ここで、異形PETフィルムは、離型剤で表面処理されたPETフィルムである。また、前記CCMの両面にガス拡散層をさらに接合させて製造することもできる。
【0104】
また他の方法として、ガス拡散層の一面にカソードまたはアノードの各触媒層をコーティングして触媒被覆電極(CCE)を先に作製した後、前記高分子膜の両面にカソードのCCE及びアノードのCCEを各々接合させて調製することもできる。
【0105】
図1は本発明の一実施形態による高分子膜組成物を用いて製造された高分子膜を含むMEAを模式的に示した図である。図1を参照すれば、前記MEA20は、高分子膜200の両面に蒸着またはコーティングされた触媒層210、210’(触媒被覆膜:CCM)及び触媒層210、210’の両面に配置されるガス拡散層220、220’を含む。
【0106】
または、MEA20は、高分子膜200及びガス拡散層220、220’の一面に触媒層がコーティングされたカソード及びアノード(触媒被覆電極:CCE)が高分子膜200の両面に配置される構造を有してもよい。
【0107】
触媒層210、210’は、白金、ルテニウム、オスミウム、白金−ルテニウム合金、白金−オスミウム合金、白金−パラジウム合金、または白金−M合金(ここで、MはGa、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、及びZnからなる群より選択される1種以上の遷移金属である)から選択される1つ以上の触媒を含むのが好ましく、前記触媒を単独で、またはカーボンブラックと混合して使用するか、前記触媒をカーボン担体に担持させて使用することができる。また、前記触媒を陽イオン伝導性高分子(イオノマー)溶液に分散させて、触媒層形成用スラリーを形成することができる。
【0108】
ガス拡散層220、220’は、外部から供給される燃料(メタノール、エタノール、水素、炭化水素ガスなど)及び空気や酸素を前記触媒層210、210’に円滑に供給して、触媒−高分子膜−燃料の三相界面の形成を助ける機能を有するもので、好ましくは、カーボンペーパーまたはカーボンクロスなどから製造される。
【0109】
また、前記触媒層210、210’とガス拡散層220、220’の間に燃料及び酸素の拡散を調節するために、微多孔質層(micro porous layer;MPL)221、221’をさらに含むことができる。
【0110】
<燃料電池>
上記のように調製された燃料電池用MEA及びバイポーラプレートが結合されて燃料電池の単電池が構成される。
【0111】
前記燃料電池の発電原理は図2に示された通りである。図2には直接メタノール型燃料電池を示した。図2を参照すれば、前記直接メタノール型燃料電池は、メタノール及び水供給部100と酸素供給部140との間にアノード110、高分子膜120及びカソード130が積層されている。直接メタノール型燃料電池における燃料であるメタノール(CHOH)及び水(HO)はメタノール及び水供給部100からアノード(燃料極ともいう)110を通して供給され、酸素(O)は酸素供給部140からカソード(空気極ともいう)130を通して供給される。
【0112】
前記高分子膜120は、アノード110の触媒層から発生した水素イオン(6H)をカソード130に伝達し、アノード110に供給される燃料(直接メタノール型燃料電池の場合にはメタノール及び水が燃料に該当し、その他の燃料電池の場合には水素(H)が燃料に該当する)がアノード110でイオン化されない状態でカソード130にクロスオーバーされないようにする機能を有する。
【0113】
燃料電池は、使用用途によって必要な電力範囲が多様であるが、このような単電池を積層してスタックを構成することによって、必要な電力を与える燃料電池を製造することができる。
【0114】
図3はMEAを含むスタック3を模式的に示した分解斜視図である。図3を参照すれば、本発明の一実施形態による燃料電池のスタック3は、MEA20及び前記MEA20の両面に配置されるバイポーラプレート30、30’を含む。
【実施例】
【0115】
以下、実施例によって本発明の構成及び作用をより詳細に説明する。ただし、以下の実施例は本発明の好ましい例として例示されたものであり、これによって本発明が制限されると解釈されてはならない。
【0116】
(実施例1)
4,4’−ジクロロジフェニルスルホン(4,4’−dichlorodiphenyl sulfone:DCDPS)、スルホン化4,4’−ジクロロジフェニルスルホン(sulfonated 4,4’−dichlorodiphenyl sulfone:S−DCDPS、ナトリウム塩の形態)、ビスフェノール−A(BPA)、及びジアリルビスフェノール−A(DABPA)を下記の表1に示す含有量でN−メチルピロリドン(NMP)120ml及びトルエン100mlに溶解させ、ここに炭酸カリウム0.5モルを添加し、これを180℃で8時間反応させて、陽イオン交換基及び炭素二重結合含有架橋基を有する高分子として、前記化学式3の構造を有するポリアリールエーテルスルホン(DA−PAES)を調製した(数平均分子量(Mn)=600,000)。
【0117】
【表1】

【0118】
次いで、上記で調製されたポリアリールエーテルスルホン(DA−PAES)100質量部を溶媒であるジメチルスルホキシド(DMSO)200質量部に溶解させて、均一な溶液を調製した。一方で、陽イオン交換基を含む(メタ)アクリル系化合物として3−スルホプロピルアクリレート(SPA)5質量部を溶媒であるDMSO80質量部に溶解させて、均一な溶液を調製した。上記の2つの溶液を混合して、十分に攪拌した後、重合開始剤として、紫外線重合開始剤であるイルガキュア184(Irgacure184、Ciba社製)3質量部及びイルガキュア2100(Irgacure2100、Ciba社製)0.3質量部を投入して、燃料電池用高分子膜組成物を調製した。
【0119】
このように調製した組成物をドクターブレード法によって約100μmのPETフィルムにキャスティングし、これを熱風乾燥機に投入して約120℃で約5分間乾燥した。次に、紫外線照射装置に投入して約3000mJ/cmの紫外線を照射し、紫外線架橋反応によって約70μmの厚さの燃料電池用高分子膜を調製した。
【0120】
さらに、残留溶媒を除去するために、約100℃の温度で約12時間乾燥した後、前記高分子膜を1Mの硫酸水溶液に含浸させて約95℃の温度で約4時間維持した後、脱イオン水で洗浄する酸処理工程を行うことによって、最終的に燃料電池用高分子膜を調製した。得られた高分子膜を下記の物性評価方法で評価し、前記高分子膜を含むMEAを製造して、燃料電池の単電池の性能を評価した。
【0121】
(実施例2)
(メタ)アクリル系化合物として3−スルホプロピルアクリレート(SPA)10質量部を溶媒であるDMSO80質量部に溶解させたことを除いては、実施例1と同様な方法で燃料電池用高分子膜を調製した。
【0122】
(比較例1)
高分子の合成時に、ジアリルビスフェノール−A(DABPA)を使用せずにビスフェノール−A(BPA)だけを0.5モルで使用して、実施例1と同様な方法で架橋基を含まないポリアリールエーテルスルホン(PAES)高分子を合成した。高分子膜組成物の製造時に、(メタ)アクリル系化合物及び紫外線重合開始剤を投入せずに架橋基を含まないポリアリールエーテルスルホン(PAES)だけをDMSOに溶解して、コーティング組成物を製造した。高分子膜の製造時に紫外線照射工程を行わないことを除いては、実施例1と同様な方法で燃料電池用高分子膜を製造した。
【0123】
<物性の評価及び単電池の性能の評価>
(1)メタノール透過率(Permeability)
水保存部(reservoir)及び1M濃度のMeOH保存部から構成された拡散セルを利用して、常温でMeOH保存部側から水保存部側に拡散するMeOHの単位時間当りのモル濃度の変化(dC/dt)を測定して、下記の数式1のように計算して、MeOH透過率(permeability)Pを測定した。
【0124】
【数1】

【0125】
この際、MeOH保存部の初期モル濃度を1Mにして測定した。図4は実施例1、2、及び比較例1によって調製された高分子膜のMeOH透過量の変化を時間に応じたモル濃度で示したものである。縦軸は、透過したMeOHのモル濃度に高分子膜の厚さを乗じた値である。
【0126】
(2)イオン伝導度(Conductivity)
四端子(4−point probe)法を利用して測定装置を脱イオン水に浸漬した後、常温条件でインピーダンスアナライザを用いて測定した。インピーダンスグラフの複素平面で実数軸を通過する点の値が高分子膜の抵抗値であり、これを利用してイオン伝導度σを求めた。図5のインピーダンスグラフでは、実施例1、2、及び比較例1によって調製された高分子膜のインピーダンスを測定した結果を示した。グラフの横軸及び縦軸は各々インピーダンスの実数部及び虚数部の抵抗Z’、Z”(Ω)に高分子膜の厚さt(μm)を乗じた値である。
【0127】
【数2】

【0128】
(3)機械的物性
高分子膜の機械的物性をInstron社製の引張試験器で測定した。前記高分子膜の試片は、乾燥した後で幅5mm、長さ30mmに作製され、試片を支持する両側のグリップ間の間隔を10mm、試片を引張る速度を50mm/minに設定して、引張強度及び延伸率を測定した。図6は実施例1、2、及び比較例1によって調製された高分子膜の引張強度(N/mm)及び延伸率(%)を測定した結果を示したものである。
【0129】
(4)単電池の性能の評価
前記実施例1、実施例2、及び比較例1で調製した高分子膜の一方の表面にPtRuブラック触媒(HiSpec6000、Johnson Matthey社製)スラリーをバーコーティングした後で乾燥して、PtRuが2mg/cmであるアノード触媒層を調製した。次いで、前記高分子膜の他の表面にPtブラック触媒(HiSpec1000、Johnson Matthey社製)スラリーをバーコーティングした後で乾燥して、Ptが2mg/cmのカソード触媒層を塗布することによって、電極面積10cmの触媒被覆膜(CCM)を作製した。この時、高分子膜の一面に触媒層をコーティングする間に高分子膜の反対面に真空を加えて、コーティングする間に高分子膜に膨潤によってシワができないようにした。前記CCMの両面に各々ガス拡散層(25BC、SGL社製)を2段階の熱間圧縮(Hot−Pressing)工程によって接合してMEAを作製した。前記2段階の工程は、まず0.5トンで1分間圧縮した後、1トンで3分間圧縮することによって行われた。
【0130】
このように作製されたMEAにバイポーラプレートを結合させて、DMFC単電池を作製し、性能を評価した。電極面積は10cmであり、カソードには空気を、アノードには1Mメタノールを各々2.5化学量論的(stoich.)に供給し、温度は60℃に維持した。電圧を開放電圧(open circuit voltage、OCV)から0.2Vまで1mV/secの速度で降下させて、I−V曲線を得た。
【0131】
結果を下記の表2に示す。表2中、引張強度の値は、図6の縦軸で表される引張強度の最大値である。また、表2中、延伸率の値は、図6の横軸で表される延伸率の最大値である。
【0132】
【表2】

【0133】
前記表2に示すように、架橋基を含まないポリアリールエーテルスルホン(PAES)高分子だけを単独で使用した非架橋高分子膜(比較例1)の場合、架橋基を含むポリアリールエーテルスルホン(DA−PAES)及びSPAを含む実施例1及び実施例2によって調製された高分子膜に比べて引張強度及び延伸率などの機械的物性が低く、単電池の性能が低下することが分かる。
【0134】
図6は表2に記載された実施例1、2、及び比較例1によって製造された高分子膜の引張強度及び延伸率を測定した結果を示したグラフである。前記のように架橋基を含むポリアリールエーテルスルホン(DA−PAES)及びSPAを含む実施例1及び実施例2の高分子膜は、架橋基を含まないポリアリールエーテルスルホン(PAES)高分子のみから構成された比較例1の高分子膜に比べて機械的物性が優れていることが確認できる。図7A及び図7Bは実施例1、2、及び比較例1によって製造された高分子膜を含むMEAを利用して製造された単電池の性能を評価した結果を示したグラフである。高分子膜組成物中のSPAの含有量に応じて前記高分子膜組成物から製造された高分子膜を含む単電池の性能が向上することが確認できる。
【0135】
図4は実施例1、2、及び比較例1によって製造された高分子膜のMeOH透過率を測定した結果を示したグラフである。図4に示すように、比較例1の非架橋高分子膜のMeOH透過率が高いことが確認できる。また、図7A、図7Bに示すように、比較例1の非架橋高分子膜が適用されたMEAを用いた単電池は、MeOH透過率の増加及びイオン伝導度の低下によって実施例1、2の架橋高分子膜に比べて性能が低い。これは、MeOH透過率が増加するとアノード及びカソードの電位差が減少するのでOCVが低下し、イオン伝導度が低いと高分子膜の抵抗が増加してI−V曲線でオーム損失が発生するためである。
【0136】
一方、架橋基を含むポリアリールエーテルスルホン(DA−PAES)と3−スルホプロピルアクリレート(SPA)との架橋重合体、ポリアリールエーテルスルホン間の架橋重合体、及び3−スルホプロピルアクリレート間の架橋重合体を含む架橋高分子膜(実施例1及び実施例2)の場合、架橋構造が膜全体に均一に形成されるので、非架橋高分子膜(比較例1)に比べて機械的物性が優れているだけでなく、図4に示すようにMeOH透過率も減少することが分かる。
【0137】
図5は上述の方法で3−スルホプロピルアクリレート(SPA)の含有量に応じた高分子膜の抵抗を測定した結果を示したグラフである。図5に示したように、実施例1及び実施例2によって調製された高分子膜は、架橋構造を有するにもかかわらず、イオン伝導性アクリル系化合物(SPA)を混合することによって、高分子膜の抵抗が上昇しにくくなった。
【0138】
図8は実施例1、2、及び比較例1によって製造された高分子膜のイオン伝導度及び燃料透過率特性を比較して示したグラフである。燃料電池用高分子膜では、イオン伝導度が高いと同時に燃料透過率が低いほど性能が優れている。図8を参照すれば、実施例1、2の高分子膜では、ポリアリールエーテルスルホン高分子との架橋のために非伝導性化合物を混合せずにイオン伝導性スルホン化アクリル系化合物を使用するため、架橋構造の形成によるイオン伝導度の低下が最小限になり、イオン伝導度が向上した。
【符号の説明】
【0139】
3 スタック、
20 膜−電極接合体(MEA)、
30、30’ バイポーラプレート、
100 メタノールおよび水供給部、
110 アノード、
120、200 高分子膜、
130 カソード、
140 酸素供給部、
210、210’ 触媒層、
220、220’ ガス拡散層、
221、221’ 微多孔質層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽イオン交換基及び炭素二重結合含有架橋基を含む高分子、陽イオン交換基を含む(メタ)アクリル系化合物、ならびに重合開始剤を含む、燃料電池用高分子膜組成物。
【請求項2】
前記高分子は、ポリスルホン系高分子、ポリエーテルケトン系高分子、ポリエーテル系高分子、ポリエステル系高分子、ポリベンズイミダゾール系高分子、およびポリイミド系高分子からなる群から選択される1以上である、請求項1に記載の燃料電池用高分子膜組成物。
【請求項3】
前記高分子中の前記陽イオン交換基の含有量は、0.3〜2.5mmol/gである、請求項1または2に記載の燃料電池用高分子膜組成物。
【請求項4】
前記高分子中の前記炭素二重結合含有架橋基の含有量は、0.1〜3.0mmol/gである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の燃料電池用高分子膜組成物。
【請求項5】
前記高分子は、下記化学式1で表される繰り返し単位を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の燃料電池用高分子膜組成物。
【化1】

(上記式中、R及びRは互いに同一であっても異なっていてもよく、水素、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数6〜20のアリール基、ニトロ基、アミン基、スルホン酸基、ホスホン酸基、カルボン酸基、またはスルホンイミド基であり、ただし、R及びRのうちの少なくとも1つはスルホン酸基、ホスホン酸基、カルボン酸基、またはスルホンイミド基であり、スルホン酸基、ホスホン酸基、カルボン酸基、およびスルホンイミド基は塩の形態であってもよく;R及びRは互いに同一であっても異なっていてもよく、水素、−CF、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数6〜20のアリール基、またはニトロ基であり;R及びRは互いに同一であっても異なっていてもよく、水素、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、ニトロ基、アミン基、炭素数2〜20のアルケニル基、アリル基、または(メタ)アクリロイル基であり、ただし、R及びRのうちの少なくとも1つは炭素数2〜20のアルケニル基、アリル基、または(メタ)アクリロイル基であり;p、r、s、及びtは互いに独立して、0〜4の整数であり、p及びrが同時に0ではなく、s及びtが同時に0ではない。)
【請求項6】
前記高分子は、下記化学式2で表される高分子である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の燃料電池用高分子膜組成物。
【化2】

(上記式中、R’及びR’は互いに同一であっても異なっていてもよく、炭素数2〜20のアルケニル基、アリル基、または(メタ)アクリロイル基であり;MはNa、K、またはHであり;k、m、n、及びoはモル数である。)
【請求項7】
前記高分子の数平均分子量(Mn)は、100,000〜1,500,000である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の燃料電池用高分子膜組成物。
【請求項8】
前記(メタ)アクリル系化合物は、下記化学式4、化学式5、化学式6で表される化合物、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1〜7のいずれか1項に記載の燃料電池用高分子膜組成物。
【化3】

(上記式中、R、R、及びR11は互いに同一であっても異なっていてもよく、水素、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数6〜20のアリール基、ニトロ基、またはアミン基であり、R、R10、及びR13は互いに同一であっても異なっていてもよく、炭素数1〜20のアルキレン基、炭素数6〜20のアリーレン基、−NH−、または−NR(Rは炭素数1〜10のアルキル基)であり、R12は−NH−、または−NR(Rは炭素数1〜10のアルキル基)であり、X、X、及びXは互いに同一であっても異なっていてもよく、スルホン酸基、ホスホン酸基、カルボン酸基、またはスルホンイミド基である。)
【請求項9】
前記(メタ)アクリル系化合物は、スルホン化(メタ)アクリル系化合物である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の燃料電池用高分子膜組成物。
【請求項10】
前記(メタ)アクリル系化合物は、3−スルホプロピルアクリレート、3−スルホプロピルメタクリレート、および2−アクリルアミノ−2−メチルプロパンスルホン酸からなる群から選択される1以上である、請求項1〜9のいずれか1項に記載の燃料電池用高分子膜組成物。
【請求項11】
前記(メタ)アクリル系化合物は、前記高分子100質量部に対して1〜30質量部で含まれる、請求項1〜10のいずれか1項に記載の燃料電池用高分子膜組成物。
【請求項12】
前記(メタ)アクリル系化合物は、前記高分子100質量部に対して1〜20質量部で含まれる、請求項1〜11のいずれか1項に記載の燃料電池用高分子膜組成物。
【請求項13】
前記重合開始剤は、紫外線重合開始剤または熱重合開始剤である、請求項1〜12のいずれか1項に記載の燃料電池用高分子膜組成物。
【請求項14】
前記重合開始剤は、前記高分子及び前記(メタ)アクリル系化合物の総含有量100質量部に対して1〜10質量部で含まれる、請求項1〜13のいずれか1項に記載の燃料電池用高分子膜組成物。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか1項に記載の燃料電池用高分子膜組成物を用いて製造され、陽イオン交換基及び炭素二重結合含有架橋基を含む高分子と陽イオン交換基を含む(メタ)アクリル系化合物との架橋反応によって生成された架橋重合体を含む、燃料電池用高分子膜。
【請求項16】
請求項15に記載の燃料電池用高分子膜;および前記燃料電池用高分子膜の両面に配置された電極;を含み、前記電極は、触媒層及びガス拡散層を含む、膜−電極接合体。
【請求項17】
請求項16に記載の膜−電極接合体;及び前記膜−電極接合体の両面に配置されたバイポーラプレートを含む、燃料電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−57982(P2011−57982A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−201357(P2010−201357)
【出願日】平成22年9月8日(2010.9.8)
【出願人】(500005066)チェイル インダストリーズ インコーポレイテッド (263)
【Fターム(参考)】