説明

燃料電池用高分子電解質膜とその用途

【課題】寸法安定性を改良すると共に、低湿度でのプロトン伝導性を改良した複合高分子電解質膜及び、それを用いた膜/電極接合体と燃料電池の提供。
【解決手段】高分子電解質とチタン酸繊維とからなる複合高分子電解質膜。好ましくは、チタン酸繊維の平均繊維径が0.01〜1μmの範囲であり、平均繊維長が1〜50μmの範囲であり、高分子電解質に対する添加量が0.1〜10質量%である該複合高分子電解質膜。より好ましくは、チタン酸繊維が四チタン酸繊維であり、さらに好ましくは、高分子電解質が炭化水素系高分子電解質である複合高分子電解質膜。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、寸法安定性かつ低湿度でのプロトン伝導性に優れた燃料電池用高分子電解質膜、該高分子電解質膜を用いた膜/電極接合体並びに燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、エネルギー効率や環境性に優れた新しい発電技術が注目を集めている。中でも高分子固体電解質膜を使用した固体高分子形燃料電池はエネルギー密度が高く、また、他の方式の燃料電池に比べて運転温度が低いため起動、停止が容易であるなどの特徴を有するため、電気自動車や分散発電などの電源装置としての開発が進んできている。
【0003】
高分子固体電解質膜には通常プロトン伝導性の高分子電解質膜が使用される。高分子固体電解質膜にはプロトン伝導性以外にも、燃料の水素などの透過を防ぐ燃料透過抑止性や機械的強度などの特性が必要である。このような高分子固体電解質膜としては、例えばスルホン酸基を導入したパーフルオロカーボンスルホン酸ポリマーを含む膜が知られている。しかしながら、分子中にフッ素を含むため、使用条件によっては排気ガス中に腐食性のフッ酸が混入することや、廃棄時に環境への負荷が大きいことなどが問題視されている。
【0004】
パーフルオロカーボンスルホン酸系高分子電解質膜は、燃料電池の電解質膜としてバランスのよい特性を示すものの、コストや性能などで、より優れた膜を得るために、炭化水素系高分子電解質膜の開発が盛んに行われている。
【0005】
多くの炭化水素系高分子電解質膜には、ポリイミドやポリスルホンなどの耐熱性ポリマーに、スルホン酸基などのイオン性基を導入したポリマーが用いられている(例えば特許文献1を参照)。
【0006】
一般に炭化水素系高分子電解質膜では、パーフルオロカーボンスルホン酸系高分子電解質膜と同等のプロトン伝導性を発現させるためには、より多くのイオン性基を導入する必要がある。しかしながら、イオン性基の量が多くなると、水による膨潤性が大きくなり、吸湿時において、寸法変化や、物理特性低下などの問題の原因となる。そのため、ポリマーの構造を改良し、より膨潤性を抑制した炭化水素系高分子電解質膜もある(例えば特許文献2を参照)。しかしながら、プロトン伝導性を向上させるためにイオン性基を増やしていくと、構造を改良したポリマーからなる高分子電解質膜であっても、膨潤が著しくなる傾向があった。
【0007】
高分子電解質膜の膨潤を抑制し寸法安定性を向上させる手段の一つとして、繊維状の物質による補強が行われている(特許文献3〜7を参照)。しかしながら、繊維状物質の添加によって寸法安定性は向上するものの、低湿度下でのプロトン伝導性が低下するという問題は知られていなかった。また、高分子電解質膜のメタノールクロスオーバーを抑制するために金属酸化物の水和物を添加するという技術も公開されているが、金属酸化物の水和物について、その形態については何ら記載がなく、高分子電解質膜の寸法安定性についても言及されていない(特許文献8を参照)。
【特許文献1】特表2004−509224号公報
【特許文献2】特開2004−149779号公報
【特許文献3】特開平11−204121号公報
【特許文献4】特開2005−32543号公報
【特許文献5】特開2005−222736号公報
【特許文献6】特開2006−185631号公報
【特許文献7】特開2006−185832号公報
【特許文献8】特開2003−331869号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は従来技術の課題を背景になされたもので、寸法安定性を改良すると共に、低湿度でのプロトン伝導性を改良した複合高分子電解質膜及び、それを用いた膜/電極接合体と燃料電池の提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは上記課題を解決するため、鋭意研究した結果、チタン酸繊維が課題を達成するための手段として有効であり、さらにチタン酸繊維の構造や形状が重要であることを見出し、ついに本発明を完成するに至った。すなわち本発明は、
【0010】
(1)高分子電解質とチタン酸繊維とからなることを特徴とする複合高分子電解質膜。
(2)平均繊維径が0.01〜1μmであり、平均繊維長が1〜50μmであるチタン酸繊維を、高分子電解質に対して、0.1〜10質量%含有させてなる請求項1に記載の複合高分子電解質膜。
(3)チタン酸繊維が、四チタン酸繊維である前記(1)又は(2)に記載の複合高分子電解質膜。
(4)高分子電解質が、炭化水素系高分子電解質である前記(1)〜(3)のいずれかに記載の複合高分子電解質膜。
(5)炭化水素系高分子電解質が主として芳香族系のポリマーから構成されてなる前記(4)に記載の複合高分子電解質膜。
(6)炭化水素系高分子電解質が、スルホン酸基を含有し、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンオキサイド、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルフィドスルホン、ポリエーテルケトン系ポリマーの少なくとも1種を含むポリアリーレンエーテル系化合物、ポリアリーレンスルフィド系化合物、ポリアリーレン系化合物から主として構成されており、かつ0.5〜3.0meq/gのイオン交換容量を有する前記(5)に記載の複合高分子電解質膜。
(7)炭化水素系高分子電解質が、下記化学式1で表される構造単位の少なくとも1種と下記化学式2で表される構造単位の少なくとも1種とを有するポリマーの1種以上を含む前記(6)に記載の複合高分子電解質膜。
【0011】
【化1】

[化学式1及び2において、Xは−S(=O)−基又は−C(=O)−基を、YはH又は1価の陽イオンを、Arは電子吸引性基を有する1種以上の芳香族基を、Zは酸素原子又は硫黄原子のいずれかを、Arは二価の芳香族基及び二価の脂肪族基からなる群より選ばれる1種以上の基を、それぞれ表す。]
【0012】
(8)前記(1)〜(7)のいずれかに記載の高分子電解質膜を用いた膜/電極接合体。
(9)前記(8)の膜/電極接合体を用いた燃料電池。
である。
【発明の効果】
【0013】
本発明による複合高分子電解質膜は、耐膨潤性及び寸法安定性に優れ、かつ低湿度でのプロトン伝導性が改良され、燃料電池に用いた場合に、その出力と耐久性を向上させるという優れた効果を有する。また、本発明の複合高分子電解質膜は、水素を燃料とする燃料電池に特に好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を詳細に説明する。なお、本発明における重量とは、質量を意味する。
本発明の複合高分子電解質膜におけるチタン酸繊維は、平均繊維径が0.001〜5μmの範囲であることが好ましく、0.01〜1μmの範囲にあることが好ましい。平均繊維径が0.001μmよりも小さいと、十分な補強効果が得られない傾向がある。平均繊維径が5μmよりも大きいと、複合高分子電解質膜の柔軟性が失われ、固く脆くなる傾向がある。
【0015】
本発明の複合高分子電解質膜におけるチタン酸繊維は、平均繊維長が0.1〜100μmの範囲にあることが好ましく、1〜50μmであることがより好ましく、2〜10μmの範囲にあることがさらに好ましい。平均繊維長が0.1μmよりも小さいと、膨潤を抑制し寸法変化を小さくする効果が得られにくくなる傾向がある。平均繊維長が100μmよりも長いと、複合高分子電解質膜が固くなり柔軟性が失われたり、膜の表面から突出したりして、膜の形状や耐久性が悪化する傾向がある。
【0016】
チタン酸繊維の平均繊維長や平均繊維径は、公知の任意の方法で測定することができるが、例えば電子顕微鏡や光学顕微鏡による観察で行うことができる。すなわち、チタン酸繊維の観察映像から、各繊維の直径と長さを求め、それらを平均することによって算出することができる。チタン酸繊維は、複合高分子電解質膜の状態で構造を観察してもよいし、複合高分子電解質膜から、溶解や燃焼によって高分子電解質を除去して残留物を観察して行うこともできる。
【0017】
本発明の複合高分子電解質膜におけるチタン酸繊維の含有量は、高分子電解質に対して0.01〜50質量%の範囲にあることが好ましく、0.1〜10質量%の範囲にあることが好ましく、1〜10質量%の範囲にあることがさらに好ましい。チタン酸繊維の含有量が0.01質量%よりも少ないと十分な補強効果を得ることができない傾向がある。チタン酸繊維の含有量が50質量%よりも大きいと複合高分子電解質膜が硬くなって柔軟性が失われ破壊しやすくなる傾向がある。高分子電解質膜中のチタン酸繊維含有量は、蛍光X線法や、高周波プラズマ発光法など、公知の任意の方法で求めることができる。
【0018】
本発明の複合高分子電解質膜におけるチタン酸繊維は、チタン酸の結晶からなる結晶質チタン酸繊維であることが好ましい。チタン酸繊維としては、一チタン酸繊維、二チタン酸繊維及び四チタン酸繊維が好ましく、複合高分子電解質膜の低湿度下でのプロトン伝導性の低下がより小さくなる傾向がある点で、四チタン酸繊維がより好ましい。一チタン酸、二チタン酸及び四チタン酸は、それぞれ、HTiO、HTi、HTiの組成式で表される。チタン酸繊維は公知の任意の方法で得ることができるが、例えば、二チタン酸カリウムの結晶からなる繊維や、四チタン酸カリウムの結晶からなる繊維などのチタン酸塩の結晶からなる繊維を、酸で処理してカチオンを水素イオンにイオン交換することによって製造することができる。本発明においては、単なる酸化チタンの水和物ではなく、チタン酸が結晶を形成しており、さらに結晶が繊維構造を形成しているチタン酸繊維を用いることが好ましい。本発明で用いるチタン酸繊維における残留カチオンの量はできるだけ少ないことが好ましく、5質量%以下であることが好ましいが、1質量%以下であることがより好ましい。
【0019】
本発明の複合高分子電解質膜は、0.1〜5.0meq/gのイオン交換容量を有することが好ましく、0.5〜3.0meq/gのイオン交換容量を有することがより好ましい。さらに、1.0〜3.0meq/gのイオン交換容量を有することがより好ましい。イオン交換容量が大きいほど、本発明の効果が大きく現れる。
【0020】
本発明の複合高分子電解質膜における高分子電解質は、炭化水素系高分子電解質であることが好ましい。炭化水素系高分子電解質膜は、フッ素系高分子電解質膜に比べて、ハロゲンを含まないことや、有害な排出物が少ないこと、コストを小さくできることなどの利点を有しているが、膨潤や寸法安定性に劣るためである。炭化水素系高分子電解質膜は、チタン酸繊維と複合化することによって、前記の欠点を克服することができる。炭化水素系高分子電解質とは、主な構造が酸素原子、硫黄原子、窒素原子などのヘテロ原子を含んでいてもよい炭化水素系高分子から主になっており、スルホン酸基、ホスホン酸基、スルホンイミド基、リン酸基、カルボキシル基などの酸性のイオン性基を有するものをいう。イオン性基としては、スルホン酸基やスルホンイミド基などの強酸基であるとプロトン伝導性が高くなるため好ましく、ホスホン酸基やリン酸基では、高温低湿度の状態でもプロトン伝導性を示すため好ましい。
【0021】
本発明の炭化水素系高分子電解質を構成するポリマーの具体的な例としては、ポリアリーレン、ポリアリーレンエーテル、ポリアリーレンスルフィド、ポリアリーレンエーテルスルフィド、ポリアリーレンエーテルニトリル、ポリアリーレンエーテルニトリルスルフィド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド、ポリベンザゾール、ポリエーテルイミド、ポリアミド、ポリアミドイミドなどの耐熱性ポリマーを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0022】
中でも、ポリアリーレンエーテル、ポリアリーレンスルフィド、ポリアリーレンエーテルスルフィド、ポリアリーレンエーテルニトリル、ポリアリーレンエーテルニトリルスルフィド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトンが、さらに好ましい例として挙げることができるがこれらに限定されるものではない。
【0023】
本発明における炭化水素系高分子電解質は、主として芳香族系のポリマーから構成されていることが好ましいが、部分的に脂肪族基を有していてもよい。例えば、側鎖や主鎖の少なくとも一部が脂肪族基で構成されていてもよい。
【0024】
本発明における炭化水素系高分子電解質は、スルホン酸基を含有し、ポリスルホン,ポリエーテルスルホン,ポリフェニレンオキサイド,ポリフェニレンスルフィド,ポリフェニレンスルフィドスルホン,ポリエーテルケトン系ポリマーの少なくとも1種を含むポリアリーレンエーテル系化合物、ポリアリーレンスルフィド系化合物、ポリアリーレン系化合物から主として構成されていることが好ましい。前記のポリマーは、合成が容易であり、溶媒への溶解性が良く、耐熱性や機械的特性にも優れているためである。本発明における炭化水素系高分子電解質膜は、0.5〜3.0meq/gのイオン交換容量を有することが好ましく、1.0〜2.5meq/gのイオン交換容量を有することがより好ましい。
【0025】
本発明における炭化水素系高分子電解質の好ましい態様は、化学式1で表される構造から選ばれる1種以上の構造、及び化学式2で表される構造から選ばれる1種以上の構造を有するポリマーの1種以上のポリマーから構成されている炭化水素系高分子電解質膜である。化学式1及び2において、Xは−S(=O)−基又は−C(=O)−基を、YはH又は1価の陽イオンを、Arは電子吸引性基を有する1種以上の芳香族基を、Zは酸素原子又は硫黄原子のいずれかを、Arは二価の芳香族基及び二価の脂肪族基からなる群より選ばれる1種以上の基を、それぞれ表す。
【0026】
本発明における炭化水素系高分子電解質は、化学式1又は2で表される構造単位の範囲内において複数の構造単位を含んでいてもよい。また、化学式1で表される構造単位と、化学式2で表される構造単位との結合様式は特に限定されるものではなく、ランダムに結合していてもよいし、化学式及び化学式2で表されるものうちのいずれかの構造単位が連続したブロック構造や、化学式1で表される構造単位が連続したブロックと化学式2で表される構造単位が連続したブロック構造とが結合した形態であってもよく、化学式1で表される構造単位と化学式2で表される構造単位が交互に結合していてもよい。
【0027】
化学式1におけるXは−S(=O)−基であると溶剤への溶解性が向上するため好ましい。Xが−C(=O)−基であると、ポリマーの軟化温度を下げて電極との接合性を高めたり、電解質膜に光架橋性を付与したりすることができるため好ましい。高分子電解質膜として用いる場合には、YはH原子であることが好ましい。ただし、YがH原子であると、熱などによって分解しやすくなるので、電解質膜の製造などの加工時にはYをNaやKなどのアルカリ金属塩としておき、加工後に酸処理によってYをH原子に変換して高分子電解質膜を得ることもできる。ZはOであるとポリマーの着色が少なかったり、原料が入手しやすかったりするなどの利点があり好ましい。ZがSであると耐酸化性が向上するため好ましい。
【0028】
化学式1及び2におけるArは二価の芳香族基及び二価の脂肪族基からなる群より選ばれる1種以上の基である。Arの例としては、ベンゼン環、ピリジン環などの芳香環、ナフタレン環、アントラセン環などの縮合多環芳香族基や、芳香族基が直接結合、脂肪族基、スルホン基、エーテル基、スルフィド基、パーフルオロアルキル基及び芳香族基を含む脂肪族基で複数連結した基や、脂肪族基や、芳香族基を含む脂肪族基などを挙げることができるがこれらに限定されるものではない。化学式1及び2におけるArは、複数の構造単位からなっていてもよい。
化学式1及び2におけるArの例を以下に示すが、これらに限定されるものではない。
【0029】
【化2】

【0030】
【化3】

【0031】
【化4】

【0032】
化学式1及び2におけるArの例として記した上記の分子構造の中でも、化学式3E、3AVの分子構造は、高分子電解質膜の膨潤を抑制するため好ましい。また、化学式3F、3G、3N、3O、3U、3Yなどの分子構造は高分子電解質膜の軟化温度を低下させるため電極触媒層との接合性が向上し好ましい。化学式3AX、3AYで表される分子構造も高分子電解質膜の軟化温度を低下させるため電極触媒層との接合性が向上し好ましい。さらに化学式3AY〜3BNで表される分子構造は、電極触媒層との接合性が向上すると共に耐久性を向上させるため好ましい、また、化学式3AO、3AI、3AN、3AQ、3Xで表される構造単位は、メタノール透過性を抑制するため好ましい。また、化学式3I、3J、3Kで表される分子構造は、燃料電池におけるフラディングを抑制するため好ましい。また、化学式3BOで表される分子構造は、高分子電解質膜の耐久性を向上させるため好ましい。なお、Arが化学式3AY〜3BNで表される分子構造の場合は、化学式1及び2におけるZが硫黄原子であることが好ましい。化学式3Nにおけるoは2〜10の整数を表す。
【0033】
化学式1及び2におけるArは複数の基から構成されていてもよいが、好ましい組み合わせとしては、化学式3Eで表される分子構造と、化学式3F、3G、3N、3O、3U、3Y、3AX、3AY、3AY〜3BNで表される分子構造からなる群より選ばれる1種以上の分子構造との組み合わせ、化学式3F、3G、3N、3O、3U、3Yで表される分子構造からなる群より選ばれる1種以上の分子構造と、3AY〜3BNで表される分子構造からなる群より選ばれる1種以上の分子構造との組み合わせ、化学式3AO、3AI、3AN、3AQ、3Xで表される分子構造からなる群より選ばれる1種以上の分子構造と、及び、3AY〜3BNで表される分子構造から群より選ばれる1種以上の分子構造との組み合わせが好ましい。また、前記の好ましい分子構造、及び好ましい分子構造の組み合わせに、化学式3I、3J、3Kをさらに組み合わせることによってフラッディング抑制効果を、化学式3BOで表される分子構造をさらに組み合わせることによって耐久性向上効果を、それぞれ得ることができる。
【0034】
化学式2におけるArは、電子吸引性基を有する二価の芳香族基が好ましい。電子吸引性基とは、例えばスルホン基、スルホニル基、スルホン酸基、スルホン酸エステル基、スルホン酸アミド基、スルホン酸イミド基、カルボキシル基、カルボニル基、カルボン酸エステル基、シアノ基、ハロゲン基、トリフルオロメチル基、ニトロ基などを挙げることができるが、これらに限定されず、公知の任意の電子吸引性基であればよい。
化学式2におけるArの分子構造の例を以下に示すが、これらに限定されるものではない。
【0035】
【化5】

【0036】
化学式2におけるArの好ましい分子構造は、化学式4A〜4Dで表される分子構造であり、中でも化学式4C及び4Dで表される分子構造がより好ましく、さらに化学式4Dで表される分子構造が好ましい。化学式4Aの分子構造はポリマーの溶解性を高めることができ好ましい。化学式4Bの分子構造はポリマーの軟化温度を下げて電極との接合性を高めたり、光架橋性を付与したりするので好ましい。化学式4C又は4Dの構造はポリマーの膨潤を少なくできるので好ましく、化学式4Dの分子構造がより好ましい。化学式2におけるArは、複数の構造からなっていてもよく、複数の分子構造から構成される場合には、化学式4A〜4Dからなる群より選ばれる2種以上の分子構造や、化学式4A〜4Dからなる群より選ばれる1種以上の分子構造と化学式4E〜4Qからなる群より選ばれる1種以上の分子構造の組み合わせが好ましい。
【0037】
本発明における高分子電解質を構成するポリマーは、例えば、電子吸引性基で活性化された芳香族ジハロゲン化合物や芳香族ジニトロ化合物からなる群より選ばれる2種以上の化合物と、ビスフェノール化合物、ビスチオフェノール化合物、アルキルジチオール化合物からなる群より選ばれる1種以上の化合物とを、塩基性化合物の存在下、加熱することによって芳香族求核置換反応により重合することができる。
【0038】
電子吸引性基で活性化された芳香族ジハロゲン化合物のうち、イオン性基を有するものとしては、3,3’−ジスルホ−4,4’−ジクロロジフェニルスルホン、3,3’−ジスルホ−4,4’−ジフルオロジフェニルスルホン、3,3’−ジスルホ−4,4’−ジクロロジフェニルケトン、3,3’−ジスルホ−4,4’−ジフルオロジフェニルスルホン、及びそれらのスルホン酸基が1価陽イオン種との塩になったもの等が挙げられる。1価陽イオン種としては、ナトリウム、カリウムや他の金属種や各種アミン類等でも良く、これらに制限されるわけではない。スルホン酸基が塩になっている化合物の例としては、3,3’−ジスルホン酸ナトリウム−4,4’−ジクロロジフェニルスルホン、3,3’−ジスルホン酸ナトリウム−4,4’−ジフルオロジフェニルスルホン、3,3’−ジスルホン酸ナトリウム−4,4’−ジクロロジフェニルケトン、3,3’−ジスルホン酸ナトリウム−4,4’−ジフルオロジフェニルスルホン、3,3’−ジスルホン酸ナトリウム−4,4’−ジフルオロジフェニルケトン、3,3’−ジスルホン酸カリウム4,4’−ジクロロジフェニルスルホン、3,3’−ジスルホン酸カリウム4,4’−ジフルオロジフェニルスルホン、3,3’−ジスルホン酸カリウム4,4’−ジクロロジフェニルケトン、3,3’−ジスルホン酸カリウム4,4’−ジフルオロジフェニルスルホン、3,3’−ジスルホン酸カリウム4,4’−ジフルオロジフェニルケトンなどを挙げることができ、3,3’−ジスルホン酸ナトリウム−4,4’−ジクロロジフェニルスルホン、3,3’−ジスルホン酸ナトリウム−4,4’−ジフルオロジフェニルスルホンが好ましい。
【0039】
イオン性基を含有しない、活性化芳香族ジハロゲン化合物としては、2,6−ジクロロベンゾニトリル、2,4−ジクロロベンゾニトリル、2,6−ジフルオロベンゾニトリル、2,4−ジフルオロベンゾニトリル、4,4’−ジクロロジフェニルスルホン、4,4’−ジフルオロジフェニルスルホン、4,4’−ジフルオロベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、デカフルオロビフェニル、3,3’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジクロロビフェニル、3,3’−ビス(トリフルオロメチル)−p−ターフェニル、等が挙げられるがこれらに制限されることなく、芳香族求核置換反応に活性のある他の芳香族ジハロゲン化合物、芳香族ジニトロ化合物、芳香族ジシアノ化合物なども使用することができる。中でも好ましいのは、2,6−ジクロロベンゾニトリル、2,4−ジクロロベンゾニトリル、2,6−ジフルオロベンゾニトリル、2,4−ジフルオロベンゾニトリルであり、2,6−ジクロロベンゾニトリル、2,6−ジフルオロベンゾニトリルがさらに好ましい。
【0040】
ビスフェノール化合物又はビスチオフェノール化合物の例としては、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、4,4’−ビフェノール、4,4’−ジメルカプトビフェニル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−2,5−ジメチルフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、4−ヘキシルレゾルシノール、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ハイドロキノン、レゾルシン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、4,4’−チオジフェノール、4,4’−オキシジフェノール、1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)アダマンタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)アダマンタン、4,4’−チオビスベンゼンチオール、1,3−ベンゼンジチオール、1,4−ベンゼンジチオール、10−(2,5−ジヒドロキシフェニル)−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−フォスファフェナントレン−10−オキサイド、4,4’−ビフェノール、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)アダマンタン、4,4’−チオジフェノール、4,4’−オキシジフェノール、4,4’−チオビスベンゼンチオール、4−エチルレゾルシノール、4−ヘキシルレゾルシノール、2−ヘキシルハイドロキノン、2−オクチルハイドロキノン、2−オクダデシルハイドロキノン、2−ターシャリーブチルハイドロキノン、2,5−ジターシャリーブチルハイドロキノン、2,5−ジターシャリーアミルハイドロキノン、2,2’−ジヘキシル−4,4’−ジヒドロキシビフェニル、1−オクチル−2,6−ジヒドロキシナフタレン、2−ヘキシル−1,5−ジヒドロキシナフタレン、などが挙げられるがこれらに限定されることなく、上記の電子吸引性基で活性化された芳香族ジハロゲン化合物や芳香族ジニトロ化合物と反応し得る化合物であれば用いることができる。
【0041】
アルキルジチオール化合物の例としては、1,2−エタンジチオール、1,3−プロパンジチオール、1,2−プロパンジチオール、1,4−ブタンジチオール、2,3−ジヒドロキシ−1,4−ブタンジチオール、1,5−ペンタンジチオール、1,6−ヘキサンジチオール、1,7−ヘプタンジチオール、1,8−オクタンジチオール、1,9−ノナンジチオール、1,10−デカンジチオール、1,11−ウンデカンジチオール、1,12−ドデカンジチオール、1,13−トリデカンジチオール、1,14−テトラデカンジチオール、1,15−ペンタデカンジチオール、1,16−ヘキサデカンジチオール、1,17−ヘプタデカンジチオール、1,18−オクタデカンジチオール、1,19−ノナデカンジチオール、1,20−イコサンジチオール、3,6−ジオキサ−1,8−オクタンジチオール、3,7−ジチア−1,9−ノナンジチオール、3−チア−1,5−ペンタンジチオール、2,3−ジヒドロキシ−1,4−ブタンジチオール、1,4−ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,3−ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,2−ビス(メルカプトメチル)ベンゼンなどが挙げられるがこれらに限定されることなく、上記の電子吸引性基で活性化された芳香族ジハロゲン化合物や芳香族ジニトロ化合物と反応し得る化合物であれば用いることができる。
【0042】
本発明に用いる高分子電解質を芳香族求核置換反応により重合する場合、活性化芳香族ジハロゲン化合物及び活性化ジニトロ芳香族化合物からなる群より選ばれる2種以上の化合物と、ビスフェノール化合物、ビスチオフェノール化合物、及びアルキルジチオール化合物からなる群より選ばれる1種以上の化合物を加えて、塩基性化合物の存在下で加熱して反応させることで重合体を得ることができる。モノマー中の、反応性のハロゲン基又はニトロ基と、反応性のヒドロキシ基又はメルカプト基のモル比は任意のモル比にすることで、得られるポリマーの重合度を調整することができるが、好ましくは0.8〜1.2であり、より好ましくは0.9〜1.1であり、0.95〜1.05であるとさらに好ましく、1であると最も高重合度のポリマーを得ることができる。
【0043】
重合は、0〜350℃の温度範囲で行うことができるが、50〜250℃の温度であることが好ましい。0℃より低い場合には、十分に反応が進まない傾向にあり、350℃より高い場合には、ポリマーの分解も起こり始める傾向がある。反応は、無溶媒下で行うこともできるが、溶媒中で行うことが好ましい。使用できる溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジフェニルスルホン、スルホランなどを挙げることができるが、これらに限定されることはなく、芳香族求核置換反応において安定な溶媒として使用できるものであればよい。これらの有機溶媒は、単独でも2種以上の混合物として使用されても良い。
【0044】
また、上記重合反応において、塩基性化合物を用いずに、ビスフェノール化合物、ビスチオフェノール化合物、及びアルキルジチオール化合物を、フェニルイソシアネートなどのイソシアネート化合物と反応させてカルバモイル化したものと、活性化ジハロゲン芳香族化合物やジニトロ芳香族化合物とを直接反応させることもできる。
【0045】
塩基性化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等が挙げられるが、芳香族ジオール類や芳香族ジメルカプト化合物を活性なフェノキシド構造にし得るものであれば、これらに限定されず使用することができる。塩基性化合物は、ビスフェノール化合物、ビスチオフェノール化合物、及びアルキルジチオール化合物の、水酸基及びメルカプト基に対して、アルカリ金属として100モル%以上の量を用いると良好に重合することができ、好ましくは、ビスフェノール化合物、ビスチオフェノール化合物、及びアルキルジチオール化合物の、水酸基及びメルカプト基に対して、アルカリ金属として105〜125モル%の範囲である。塩基性化合物の量が多くなりすぎると、分解などの副反応の原因となるので好ましくない。
【0046】
芳香族求核置換反応においては、副生物として水が生成する場合がある。この際は、重合溶媒とは関係なく、トルエンなどを反応系に共存させて共沸物として水を系外に除去することもできる。水を系外に除去する方法としては、モレキュラーシーブなどの吸水材を使用することもできる。芳香族求核置換反応を溶媒中で行う場合、得られるポリマー濃度として5〜50質量%となるようにモノマーを仕込むことが好ましい。5質量%よりも少ない場合は、重合度が上がりにくい傾向がある。一方、50質量%よりも多い場合には、反応系の粘性が高くなりすぎ、反応物の後処理が困難になる傾向がある。重合反応終了後は、反応溶液より蒸発によって溶媒を除去し、必要に応じて残留物を洗浄することによって、所望のポリマーが得られる。また、反応溶液を、ポリマーの溶解度が低い溶媒中に加えることによって、ポリマーを固体として沈殿させ、沈殿物の濾取によりポリマーを得ることもできる。また副生する塩類を濾過によって取り除いてポリマー溶液を得ることもできる。
【0047】
また、本発明の複合高分子電解質膜に用いる高分子電解質は、後で述べる方法により測定した対数粘度が0.1dL/g以上であることが好ましい。対数粘度が0.1dL/gよりも小さいと、高分子電解質膜として成形したときに、膜が脆くなりやすくなる。対数粘度は、0.3dL/g以上であることがさらに好ましい。一方、対数粘度が5dL/gを超えると、ポリマーの溶解が困難になるなど、加工性での問題が出てくるので好ましくない。なお、対数粘度を測定する溶媒としては、一般にN−メチルピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミドなどの極性有機溶媒を使用することができるが、これらに溶解性が低い場合には濃硫酸を用いて測定することもできる。
【0048】
本発明の複合高分子電解質膜は任意の厚さにすることができるが、10μm以下であると所定の特性を満たすことが困難になるので10μm以上であることが好ましく、20μm以上であることがより好ましい。また、300μmを超えると製造が困難になるため、300μm以下であることが好ましい。
【0049】
本発明の複合高分子電解質膜は、その他のポリマーを含んでいてもよい。そのようなポリマーとしては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル類、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン12などのポリアミド類、ポリメチルメタクリレート、ポリメタクリル酸エステル類、ポリメチルアクリレート、ポリアクリル酸エステル類などのアクリレート系樹脂、ポリアクリル酸系樹脂、ポリメタクリル酸系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンやジエン系ポリマーを含む各種ポリオレフィン、ポリウレタン系樹脂、酢酸セルロース、エチルセルロースなどのセルロース系樹脂、ポリアリレート、アラミド、ポリカーボネート、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンオキサイド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリベンズイミダゾール、ポリベンズオキサゾール、ポリベンズチアゾールなどの芳香族系ポリマー、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ノボラック樹脂、ベンゾオキサジン樹脂などの熱硬化性樹脂等、特に制限はない。ポリベンズイミダゾールやポリビニルピリジンなどの塩基性ポリマーとの樹脂組成物は、ポリマー寸法性の向上のために好ましい組み合わせといえる、これらの塩基性ポリマー中に、さらにスルホン酸基を導入しておくと、組成物の加工性がより好ましいものとなる。本発明の高分子電解質膜には、プロトン伝導性ポリマーが全体の50質量%以上100質量%未満含まれていることが好ましい。より好ましくは70質量%以上100質量%未満である。50質量%未満の場合には、高分子電解質膜のスルホン酸基濃度が低くなり良好なイオン伝導性が得られない傾向にあり、また、スルホン酸基を含有するユニットが非連続相となり伝導するイオンの移動度が低下する傾向にある。なお、本発明の高分子電解質膜は、必要に応じて、例えば酸化防止剤、熱安定剤、滑剤、粘着付与剤、可塑剤、架橋剤、粘度調整剤、静電気防止剤、抗菌剤、消泡剤、分散剤、重合禁止剤などの各種添加剤を含んでいても良い。
【0050】
本発明の複合高分子電解質膜は、1種以上の高分子電解質、及びチタン酸繊維を含む組成物から、押し出し、圧延又はキャストなど任意の方法で得ることができる。中でも適当な溶媒に溶解した溶液組成物から成形することが好ましい。溶液組成物から成形体を得る方法は従来から公知の方法を用いて行うことができる。例えば、加熱、減圧乾燥、化合物を溶解する溶媒と混和することができる化合物非溶媒への浸漬等によって、溶媒を除去し成形体を得ることができる。溶媒が、有機溶媒の場合には、加熱又は減圧乾燥によって溶媒を留去させることが好ましい。この際、必要に応じて他の化合物と複合された形で成形することもできる。溶解挙動が類似する化合物と組み合わせた場合には、良好な成形ができる点で好ましい。このようにして得られた成形体中のスルホン酸基は陽イオン種との塩の形のものを含んでいても良いが、必要に応じて酸処理することによりフリーのスルホン酸基に変換することもできる。
【0051】
高分子電解質とチタン酸繊維を含む組成物は、公知の任意の方法で行うことができる。例えば、高分子電解質を溶解することができる溶媒や、高分子電解質の溶液に混和することができる溶媒に対して、予めチタン酸繊維を分散しておき、得られた分散液と、高分子電解質溶液を混合することによって得ることができる。チタン酸繊維を分散する方法としては、ミキサーなどで攪拌する方法や、超音波などによって振動を与える方法などを挙げることができる。また、高分子電解質、チタン酸繊維、及び溶媒を混合することによって得ることもできる。高分子電解質を含む溶液を混合するには、スターラー、攪拌翼、ミキサー、押し出し機、などを用いることができ、混合する際に、溶媒の沸点以下の温度で加熱してもよい。高分子電解質の溶液に混和することのできる溶媒としては、水、メタノール、アセトン、メチルエチルケトン、ジブチルケトン、酢酸エチル、酢酸メチル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0052】
本発明の高分子電解質膜を製造するための溶液組成物に用いることのできる溶媒としては、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホンアミド、N−モルフォリンオキサイドなどの非プロトン性有機極性溶媒や、メタノール、エタノールなどのアルコール系溶媒、アセトンなどのケトン系溶媒、ジエチルエーテルなどのエーテル系溶媒などの極性溶媒、及びこれらの有機溶媒の混合物、並びに水との混合物を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0053】
溶液組成物における高分子電解質の濃度は0.1〜50質量%の範囲が好ましく、5〜50質量%の範囲にあることがより好ましく、10〜40質量%の範囲がさらに好ましい。
【0054】
本発明の複合高分子電解質膜を成形する手法として最も好ましいのは、溶液組成物からのキャストであり、キャストした溶液組成物から上記のように溶媒を除去して高分子電解質膜を得ることができる。溶媒の除去は、乾燥によることが高分子電解質膜の均一性からは好ましい。また、化合物や溶媒の分解や変質を避けるため、減圧下できるだけ低い温度で乾燥することもできる。また、溶液組成物の粘度が高い場合には、基板や溶液を加熱して高温でキャストすると溶液組成物の粘度が低下して容易にキャストすることができる。キャストする際の溶液組成物の厚さは特に制限されないが、10〜2000μmであることが好ましい。より好ましくは50〜1500μmである。溶液組成物の厚さが10μmよりも薄いと高分子電解質膜としての形態を保てなくなる傾向にあり、2000μmよりも厚いと不均一な膜ができやすくなる傾向にある。溶液組成物のキャスト厚を制御する方法は公知の方法を用いることができる。例えば、アプリケーター、ドクターブレードなどを用いて一定の厚さにしたり、ガラスシャーレなどを用いてキャスト面積を一定にしたりして溶液の量や濃度で厚さを制御することができる。キャストした溶液組成物は、溶媒の除去速度を調整することでより均一な膜を得ることができる。例えば、加熱する場合には最初の段階では低温にして蒸発速度を下げたりすることができる。また、水などの非溶媒に浸漬する場合には、溶液組成物を空気中や不活性ガス中に適当な時間放置しておくなどして化合物の凝固速度を調整することができる。加工において、加熱を伴う場合、プロトン伝導性ポリマー中のスルホン酸基がカチオンと塩を形成していると、安定性が向上するため好ましい。ただし、高分子電解質膜として使用するためには、適当な酸処理によりフリーのスルホン酸に変換することもできる。この場合、硫酸、塩酸等の水溶液中に加熱下あるいは加熱せずに膜を浸漬処理することで行うことが効果的である。
【0055】
本発明の膜/電極接合体は、本発明の複合高分子電解質膜を電極触媒層と接合することによって得ることができる。
電極は、電極材料と、その表面に形成された触媒を含む層(電極触媒層)とからなり、電極材料としては、公知の材料を用いることができる。例えば、カーボンペーパーやカーボンクロスなど、導電性の多孔質材料を用いることができるが、それらに限定されるものではない。カーボンペーパーやカーボンクロスなど、導電性の多孔質材料は、撥水処理、親水処理などの表面処理がされたものを用いることもできる。触媒には、公知の材料を用いることができる。例えば、白金、白金とルテニウムなどの合金などを挙げることができるが、それらに限定されるものではない。
触媒は公知の任意の形態で用いることができ、例えば触媒微粒子を坦持させたカーボン粒子を用いることができるが、それらに限定されるものではない。
触媒や触媒を坦持した粒子を含む電極触媒層には、接着剤を用いることができ、接着剤としては、プロトン伝導性を有する樹脂を用いることができる。
【0056】
この接合体の作製方法としては、従来から公知の方法を用いて行うことができ、例えば、電極表面に接着剤を塗布し複合高分子電解質膜と電極とを接着する方法、複合高分子電解質膜と、予め電極に触媒を含むペーストを塗布して作製しておいた電極触媒層とを加熱加圧する方法、別のシートに作製した触媒層を複合高分子電解質膜に転写した後、電極を取り付ける方法、複合高分子電解質膜の表面に触媒及び導電性粒子などを含む分散液を、スプレー、印刷などでコートしてから電極を接合する方法等があるが、これらに限定されるものではない。接着剤としては、ナフィオン(商品名)溶液など公知のものを用いてもよいし、本発明における高分子電解質を構成するポリマーと同種のポリマー組成物を主成分としたものを用いてもよいし、他の炭化水素系プロトン伝導性ポリマーを主成分とするものを用いてもよい。電極反応に必要な白金、白金―ルテニウム合金などの触媒は、カーボンなどの導電性粒子に坦持させたものを、上記接着剤中に分散させておくことで、電極触媒層を得ることができる。
【0057】
本発明の燃料電池は、本発明の複合高分子電解質膜又は膜/電極接合体を用いて作製することができる。本発明の燃料電池は、例えば酸素極と、燃料極と、それぞれの極に挟まれて配置された高分子電解質膜と、酸素極側に設けられた酸化剤の流路と、燃料極側に設けられた燃料の流路を有するものである。このような一つの単位セルを導電性のセパレーターで連結することによって燃料電池スタックを得ることができる。
【0058】
本発明の複合高分子電解質膜は、固体高分子型燃料電池に適している。本発明の複合高分子電解質膜は、耐膨潤性、寸法安定性、耐久性に優れるので、膜/電極接合体にして燃料電池に用いた場合、電解質膜の膨潤と乾燥による電極触媒層の剥離や、電解質膜の破損を抑制できる。また、本発明の複合高分子電解質膜は、低湿度でもプロトン伝導性の低下が少ないので、幅広い湿度条件で優れた特性を有する燃料電池を得ることができる。さらに、本発明の複合高分子電解質膜は、燃料にメタノール、ジメチルエーテル、ギ酸などの液体を用いる燃料電池以外に、水素などの気体などを用いる燃料電池に特に好適に用いることができる。さらにまた、電解膜、分離膜など、高分子電解質膜としても公知の任意の用途にも用いることができる。
【実施例】
【0059】
以下本発明を、実施例を用いて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されることはない。なお、各種測定は次のように行った。
<対数粘度>
ポリマー粉末を0.5g/dlの濃度でN−メチルピロリドンに溶解し、30℃の恒温槽中でウベローデ型粘度計を用いて粘度測定を行い、対数粘度ln[ta/tb]/c)で評価した(taは試料溶液の落下秒数、tbは溶媒のみの落下秒数、cはポリマー濃度)。
【0060】
<プロトン伝導性>
自作測定用プローブ(テトラフルオロエチレン樹脂製)上で短冊状膜試料の表面に白金線(直径:0.2mm)を押しあて、温度を80℃に、相対湿度を66及び95%に調整した恒湿恒温槽に試料を保持し、白金線間のインピーダンスをSOLARTRON社1250FREQUENCY RESPONSE ANALYSERにより測定した。極間距離を変化させて測定し、極間距離とC−Cプロットから見積もられる抵抗測定値をプロットした勾配から以下の式により膜と白金線間の接触抵抗をキャンセルした導電率を算出した。
導電率[S/cm]=1/膜幅[cm]×膜厚[cm]×抵抗極間勾配[Ω/cm]
【0061】
<吸水性>
高分子電解質膜を23℃、相対湿度50%の室内において、高分子電解質膜を50mm四方の正方形に切り出し、70℃の純水中で2時間処理した後、取り出して、表面の水をろ紙で挟んですばやく取り除き直ちに秤量瓶に入れ、膜の吸水質量W70[g]を測定した。その後、膜を110℃で2時間減圧乾燥し、取り出した膜を直ちに秤量瓶に入れ、膜の乾燥質量W[g]を測定した。以下の式より吸水率を算出した。
吸水率[%]=(W70−W)÷W×100
【0062】
<面積増加率>
高分子電解質膜を23℃、相対湿度50%の室内において、高分子電解質膜を50mm四方の正方形に切り出し、直交する2辺の長さ、LA[mm]及びLB[mm]を測定した。切り出した高分子電解質膜を70℃の純水中で2時間処理した後、取り出して、直ちに、直交する2辺の長さLA70[mm]及びLB70[mm]を測定した。以下の式より面積増加率を算出した。
面積増加率[%]=(LA70×LB70)÷(LA×LB)×100−100
【0063】
<水素を燃料とする燃料電池(PEFC)の発電評価>
デュポン社製20%ナフィオン(商品名)溶液に、市販の40%Pt触媒担持カーボン(田中貴金属工業社 燃料電池用触媒 TEC10V40E)と、少量の超純水及びイソプロパノールを加えた後、均一になるまで撹拌し、触媒ペーストを調製した。この触媒ペーストを、カーボンペーパー(東レ社製 TGPH−060)に白金の付着量が0.5mg/cmになるように均一に塗布・乾燥して、電極触媒層付きガス拡散層を作製した。上記の電極触媒層付きガス拡散層の間に、高分子電解質膜を、電極触媒層が膜に接するように挟み、ホットプレス法により160℃、10MPaにて3分間加圧、加熱することにより、膜−電極接合体とした。
なお、実施例8、9、比較例6、7、13、14の高分子電解質膜のみ、ホットプレス温度を120℃とした。この接合体をElectrochem社製の評価用燃料電池セルFC25−02SPに組み込んでセル温度80℃で、アノード及びカソードにそれぞれ75℃で加湿した水素と空気を供給して発電特性を評価した。開始直後における電流密度が0.5A/cmにおける出力電圧を初期出力とした。
また、耐久性評価として、1時間に3回の割合で開回路電圧を測定しつつ上記の条件で連続運転を行った。開回路電圧が開始直後の値よりも10%以上低下したときの時間を耐久時間とした。
【0064】
<イオン交換容量>
110℃で1時間乾燥し、窒素雰囲気下室温で一晩放置した試料の質量をはかり、水酸化ナトリウム水溶液と撹拌処理した後、塩酸水溶液による逆滴定でイオン交換容量を求めた。
【0065】
<合成例1>
3,3’−ジスルホン酸ナトリウム−4,4’−ジクロロジフェニルスルホン(略号:S−DCDPS) 70.00g、2,6−ジクロロベンゾニトリル(略号:DCBN) 31.19g、4,4’−ビフェノール(略号:BP) 60.30g、炭酸カリウム 49.24g、N−メチル−2−ピロリドン(略号:NMP) 500.00g、乾燥したモレキュラーシーブ3−A 20gを、攪拌翼、窒素導入管、還流冷却管を取り付けた1000ml四つ口フラスコに計り取り、窒素を流した。攪拌しながら加熱を行い、反応溶液の温度が190〜200℃になるようにオイルバスで加熱し、0.5L/分の窒素を流して還流した状態で16時間反応させた。その後、室温まで冷却し、反応溶液を水中に注いでストランド状に沈殿させた。得られたポリマーは、沸騰水中で2回、室温の純水で5回洗浄した後、110℃で乾燥した。ポリマーの対数粘度は1.41dL/gであった。
【0066】
<合成例2>
3,3’−ジスルホン酸ナトリウム−4,4’−ジクロロベンゾフェノン(略号:S−DCBP) 70.00g、DCBN 36.53g、BP 68.18g、炭酸カリウム 55.66g、NMP 550.00g、乾燥したモレキュラーシーブ3−A 25gを用い、合成例1と同様の操作を行い、ポリマーを得た。ポリマーの対数粘度は1.23dL/gであった。
【0067】
<合成例3>
S−DCDPS 70.00g、DCBN 31.19g、BP 48.24g、4−ヘキシルレゾルシノール 14.79g、炭酸カリウム 49.24g、NMP 450.00g、乾燥したモレキュラーシーブ3−A 20gを用い、合成例1と同様の操作を行い、ポリマーを得た。ポリマーの対数粘度は1.35dL/gであった。
【0068】
<合成例4>
S−DCDPS 70.00g、DCBN 26.55g、BP 44.78g、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド(略号:BPS) 9.72g、10−(2,5−ジヒドロキシフェニル)−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−フォスファフェナンスレン−10−オキサイド(三光株式会社製 HCA−HQ、略号:HCQ) 3.85g、炭酸カリウム 45.13g、NMP 430.00g、乾燥したモレキュラーシーブ3−A 20gを用い、合成例1と同様の操作を行い、ポリマーを得た。ポリマーの対数粘度は1.15dL/gであった。
【0069】
<合成例5>
S−DCBP 70.00g、DCBN 32.33g、BP 51.54g、BPS 11.19g、HCQ 4.43g、炭酸カリウム 51.95g、NMP 470.00g、乾燥したモレキュラーシーブ3−A 20gを用い、合成例1と同様の操作を行い、ポリマーを得た。ポリマーの対数粘度は1.13dL/gであった。
【0070】
<合成例6>
S−DCDPS 40.00g、DCBN 42.02g、BP 30.32g、1,6−ヘキサンジチオール(略号:HDT) 24.48g、炭酸カリウム 49.52g、NMP 370.00g、乾燥したモレキュラーシーブ3−A 20gを用い、合成例1と同様の操作を行い、ポリマーを得た。ポリマーの対数粘度は0.57dL/gであった。
【0071】
<合成例7>
S−DCDPS 40.00g、DCBN 47.86g、BP 34.09g、HDT 27.52g、炭酸カリウム 55.66g、NMP 410.00g、乾燥したモレキュラーシーブ3−A 20gを用い、合成例1と同様の操作を行い、ポリマーを得た。ポリマーの対数粘度は0.59dL/gであった。
【0072】
合成例1〜7で得られたポリマーの構造式を、それぞれ化学式5〜11として以下に示す。
【0073】
【化6】

【0074】
化学式5〜11において、[]内の()で囲まれた1種以上の構造単位のいずれかと、別の[]内の()で囲まれた1種以上の構造単位のいずれかとが、結合していることを表す。また、数字は構造単位の数の比を表す。
【0075】
<実施例1>
合成例1のポリマー 10g、四チタン酸繊維(平均繊維径 0.6μm、平均繊維長5μm、残存カリウム0.3質量%) 0.6g、NMP 30gを100mLのガラスフラスコに投入し、窒素雰囲気下、60℃で12時間攪拌した。得られたポリマー溶液を、ホットプレート上に置いたガラス板に約400μm厚にキャストして80℃で0.5時間、120℃で0.5時間、150℃で0.5時間加熱した後、窒素雰囲気の150℃のオーブン中で1時間乾燥し、ガラス板からフィルムを剥離した。得られたフィルムは室温の純水に1日浸漬した後、2mol/Lの硫酸水溶液に1時間ずつ2回浸漬した。その後、洗浄水が中性になるまでフィルムを純水で洗浄し、表面に付着した水をろ紙で除いた後、新たなろ紙で両面を挟み、さらにガラス板で両面を挟み、上面から3kgfの荷重をかけて23℃で相対湿度50%の室内に2日間放置して乾燥して、複合高分子電解質膜を得た。得られた複合高分子電解質膜について評価を行った。
【0076】
<実施例2>
四チタン酸繊維の量を1gにした他は、実施例1と同様にして複合高分子電解質膜を作製し、評価を行った。
<実施例3>
四チタン酸繊維の量を0.3gにした他は、実施例1と同様にして複合高分子電解質膜を作製し、評価を行った。
<実施例4〜9>
合成例1のポリマーの代わりに、それぞれ合成例2〜7のポリマーを用いた他は、実施例1と同様にして複合高分子電解質膜を作製し、評価を行った。
【0077】
<比較例1>
四チタン酸繊維を添加しない他は実施例1と同様にして高分子電解質膜を作製した。
<比較例2〜7>
四チタン酸繊維を添加しない他は実施例4〜9と同様にして高分子電解質膜を作製した。
<比較例8>
四チタン酸繊維の代わりにチタン酸カリウム繊維(大塚化学社製 商品名:ティスモN)を用いた他は実施例1と同様にして高分子電解質膜を作製した。
<比較例9〜14>
四チタン酸繊維の代わりに六チタン酸カリウム繊維(大塚化学社製 商品名:ティスモN)を用いた他は実施例4〜9と同様にして高分子電解質膜を作製した。
実施例及び比較例の高分子電解質膜の評価結果を表1に示す。
【0078】
【表1】

【0079】
表1より、本発明の複合高分子電解質膜は、チタン酸繊維を添加していない比較例1〜7の高分子電解質膜に対して、吸水率及び面積増加率が低く膨潤性が抑制され寸法安定性が高いことが明らかである。また、本発明の複合高分子電解質膜は、チタン酸カリウム繊維を添加した比較例8〜14の複合高分子電解質膜に比べて、特に低湿度でのプロトン伝導性が改善されていることが明らかである。本発明の複合高分子電解質膜を用いた燃料電池は、チタン酸繊維を添加していない高分子電解質膜を用いた燃料電池と同等の初期出力を示しつつ、耐久性が改善されている。また、本発明の複合高分子電解質膜を用いた燃料電池は、チタン酸カリウム繊維を添加した複合高分子電解質膜を用いた燃料電池に比べて初期出力が高い。これらのことから、本発明におけるチタン酸繊維は、比較例のチタン酸カリウム繊維のように単純に膨潤を抑制するだけではなく、プロトン伝導性をも改良していることが明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明の複合高分子電解質膜は、耐膨潤性、寸法安定性及びプロトン伝導性が改良され、燃料電池用高分子電解質膜に用いることによってその出力と耐久性を大きく改善することができ、固体高分子型燃料電池用電解質膜として好適である。
また、本発明の複合高分子電解質膜は、耐膨潤性、寸法安定性、耐久性に優れるので、膜/電極接合体にして燃料電池に用いた場合、電解質膜の膨潤と乾燥による電極触媒層の剥離や電解質膜の破損を抑制でき、また、低湿度でもプロトン伝導性の低下が少ないので、幅広い湿度条件で優れた特性を有する燃料電池を得ることができる。
さらに、本発明の複合高分子電解質膜は、燃料にメタノール、ジメチルエーテル、ギ酸などの液体を用いる燃料電池以外に、水素などの気体などを用いる燃料電池に特に好適に用いることができる。さらにまた、電解膜、分離膜など、高分子電解質膜としても公知の任意の用途に用いることができ、産業界に寄与すること大である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子電解質とチタン酸繊維とからなることを特徴とする複合高分子電解質膜。
【請求項2】
平均繊維径が0.01〜1μmであり、平均繊維長が1〜50μmであるチタン酸繊維を、高分子電解質に対して、0.1〜10質量%含有させてなる請求項1に記載の複合高分子電解質膜。
【請求項3】
チタン酸繊維が、四チタン酸繊維である請求項1又は2に記載の複合高分子電解質膜。
【請求項4】
高分子電解質が、炭化水素系高分子電解質である請求項1〜3のいずれかに記載の複合高分子電解質膜。
【請求項5】
炭化水素系高分子電解質が主として芳香族系のポリマーから構成されてなる請求項4に記載の複合高分子電解質膜。
【請求項6】
炭化水素系高分子電解質が、スルホン酸基を含有し、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンオキサイド、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルフィドスルホン、ポリエーテルケトン系ポリマーの少なくとも1種を含むポリアリーレンエーテル系化合物、ポリアリーレンスルフィド系化合物、ポリアリーレン系化合物から主として構成されており、かつ0.5〜3.0meq/gのイオン交換容量を有する請求項5に記載の複合高分子電解質膜。
【請求項7】
炭化水素系高分子電解質が、下記化学式1で表される構造単位の少なくとも1種と下記化学式2で表される構造単位の少なくとも1種とを有するポリマーの1種以上を含む請求項6に記載の複合高分子電解質膜。
【化1】

[化学式1及び2において、Xは−S(=O)−基又は−C(=O)−基を、YはH又は1価の陽イオンを、Arは電子吸引性基を有する1種以上の芳香族基を、Zは酸素原子又は硫黄原子のいずれかを、Arは二価の芳香族基及び二価の脂肪族基からなる群より選ばれる1種以上の基を、それぞれ表す。]
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の高分子電解質膜を用いた膜/電極接合体。
【請求項9】
請求項8の膜/電極接合体用いた燃料電池。

【公開番号】特開2008−97847(P2008−97847A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−274775(P2006−274775)
【出願日】平成18年10月6日(2006.10.6)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】