説明

燃料電池発電システム及び燃料電池発電システムの復旧処理方法

【課題】燃料電池発電システムが異常停止に至った場合に、その故障の程度により適切な復旧処理を実施することができ、システムの停止時間の短縮化を可能とした燃料電池発電システムの復旧処理方法を提供する。
【解決手段】燃料電池発電システム内の各種の機器の運転情報を常時監視し、適正な運転状態からの逸脱を検出し、当該システムが異常停止に至った場合に、該異常情報とその時のシステム状態を保存し、該保存データと、種々の異常状態に対して適用すべき復旧手順を保存したデータベースの情報とを比較して、当該システムの異常状態を想定し、異常の重要度を判別すると共に、状態復旧手順を選定し、当該異常が、自動復旧が可能な異常と判別された場合には、直ちに自動復旧処理を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池発電システムに係り、特に、燃料電池発電システムが異常停止に至った場合に、その故障の程度により適切な復旧処理を実施できるように改良を施した燃料電池発電システム及び燃料電池発電システムの復旧処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池発電システムにおいては、化石燃料から水素を取り出し、電力・熱を供給するまでに複雑な工程を経ることとなるため、これらの工程のいずれかの段階でイレギュラーな状態が検出された場合、フェイルセーフの設計思想からシステムの安全確保・緊急停止を行うシステムが提案されている(特許文献1、特許文献2参照)。
【0003】
また、近年、燃料電池発電システムの発電実績、運用データも蓄積されており、安全を確保しつつ、運転状態を把握し、自動制御による適正運転や、使用者に対して、運転状態や各種情報提供、あるいは適当な操作手順の情報提供を行うシステムが提案されている(特許文献3参照)。
【特許文献1】特開2005−247648号公報
【特許文献2】特開2006−156169号公報
【特許文献3】特開2006−351408号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述したような従来の燃料電池発電システムにおいては、一度故障停止に至った場合には、事業者や製造者による調査・点検の後、復旧作業を行うため、故障の種類にかかわらず、運転を再開するまでの停止時間や平均復旧時間(MTTR)が長くなっていた。そのため、故障原因の調査・故障箇所の点検作業の省力化、システム停止時間の短縮化を可能とした燃料電池発電システムの開発が切望されていた。
【0005】
本発明は、上述したような従来技術の問題点を解消するために提案されたものであり、その目的は、燃料電池発電システムが異常停止に至った場合に、その故障の程度により適切な復旧処理を実施することができ、システムの停止時間の短縮化を可能とした燃料電池発電システム及び燃料電池発電システムの復旧処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、請求項1に記載の燃料電池発電システムは、燃料電池発電システム内の各種の機器の運転情報を常時監視し、適正な運転状態からの逸脱を検出する異常検出手段と、異常検出時に、その前後の各機器の運転情報を記憶手段に保存するシステム情報保存手段と、燃料電池発電システムの異常停止時に、前記記憶手段に保存した異常発生前後の運転情報と、該燃料電池発電システムに予め備えられ、種々の異常状態に対して適用すべき復旧手順を保存したデータベースの情報とを対比して、当該異常内容を想定し、適用すべき復旧手順を選定するシステム状態判断手段とを備え、当該異常要因がシステムの安全に支障がないと判断され、また異常の原因が一時的な要因によるものと判断された場合に、自動的に該システムの再起動を行う自動復旧手段を備えたことを特徴とする。
【0007】
請求項5に記載の発明は、上記請求項1に記載の発明を方法の観点から捉えたものであって、燃料電池発電システム内の各種の機器の運転情報を常時監視し、適正な運転状態からの逸脱を検出するステップと、当該システムが異常停止に至った場合に、該異常情報とその時のシステム状態を保存するステップと、該保存データと、種々の異常状態に対して適用すべき復旧手順を保存したデータベースの情報とを比較して、当該システムの異常状態を想定し、異常の重要度を判別すると共に、状態復旧手順を選定するステップと、当該異常が、自動復旧が可能な異常と判別された場合には、直ちに自動復旧処理を行うステップを有することを特徴とする。
【0008】
上記のような構成を有する請求項1又は請求項5に記載の発明によれば、燃料電池発電システムが異常停止に至った場合に、異常情報とその時のシステム状態を保存し、そのデータと予めデータベースに保存された異常/復旧シナリオデータとを比較することにより、その異常の程度を高精度に判断することができると共に、発生した異常が、自動復旧が可能な軽度な異常の場合には、直ちに自動復旧処理を行うことができるので、システムの停止時間を大幅に短縮することができる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の燃料電池発電システムにおいて、前記システム状態判断手段により、当該異常要因が使用者により復旧処理が可能な異常であると判断された場合に、想定される異常の内容と使用者による調査・確認内容を使用者に通知する情報提供手段を備えたことを特徴とする。
【0010】
上記のような構成を有する請求項2に記載の発明によれば、発生した異常が使用者により復旧処理が可能な異常の場合には、使用者にその旨を通知し、異常原因の除去方法及び復旧処理方法をガイダンスし、使用者により異常原因を除去することができるので、システムの停止時間を大幅に短縮することができる。
【発明の効果】
【0011】
以上のような本発明によれば、燃料電池発電システムが異常停止に至った場合に、その故障の程度により適切な復旧処理を実施することができ、システムの停止時間の短縮化を可能とした燃料電池発電システム及び燃料電池発電システムの復旧処理方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明に係る燃料電池発電システム及び燃料電池発電システムの復旧処理方法の実施の形態について、図面を参照して具体的に説明する。
【0013】
(1)第1実施形態
(1−1)構成
以下、図1に基づいて、本発明に係る燃料電池発電システム(以下、燃料電池システムという)の全体構成について説明する。
【0014】
図1において、異常検出手段1は、当該燃料電池システムの改質器や空気供給装置等の各装置に備えられた各種のセンサ類から燃料電池システム内の流体温度や圧力、内部機器の出力等の情報を収集し、それらの情報の中から適正な運転条件から逸脱した値を検出する手段である。
【0015】
システム情報保存手段2は、システム異常発生時に、前記異常検出手段1により検出された異常状態情報とその時のシステム状態を異常状態情報記憶部3に保存する手段である。
【0016】
異常/復旧シナリオデータベース4は、適正なシステム状態と、想定される異常なシステム状態とを対比して、燃料電池システムにどの様な異常があるかを想定し、それぞれの異常状態に対して適用すべき復旧手順を保存したデータベースである。
【0017】
システム状態判断手段5は、前記異常状態情報記憶部3と異常/復旧シナリオデータベース4とのデータを対比させ、当該異常状態が、事業者・製造者にて対応すべき重度の異常か、使用者にて対処可能な異常か、あるいは安全に支障なく自動で復旧を試みることが可能な軽度の異常かを判断し、講ずべき対応策を決定する手段である。
【0018】
自動復旧手段6は、前記システム状態判断手段5により、当該異常状態が安全に支障ないと判断された場合に、故障停止した燃料電池システムを自動的に再起動する手段である。
【0019】
情報提供手段7は、前記システム状態判断手段5によって、当該異常状態が安全や機器損壊に関わる可能性がある重度の異常であると判断された場合、あるいは、故障原因が燃料電池システムの外部にあり、使用者によって該故障原因が除去可能であると判断された場合に、使用者に対して、その状況と使用者が行うべき調査、復旧処理方法、事業者・製造者への修理依頼方法等のガイダンスを行うユーザインターフェース装置である。
【0020】
再起動手段8は、使用者によって燃料電池システム以外の原因が除去された場合等に、使用者により燃料電池システムを手動で再起動する手段であり、また、通知手段9は、前記システム状態判断手段5によって、当該異常が燃料電池システムの安全・損壊等に関わると判断されるか、前記異常/復旧シナリオデータベースに当該異常が定義されていないか、または、前記自動復旧手段および再起動手段により再起動中に異常状態が再発した場合等に、事業者、製造者による詳細調査が必要である旨と、燃料電池停止中の留意事項等の所要情報を使用者に通知する手段である。
【0021】
(1−2)作用
上記のような構成を有する燃料電池システムは、以下のように作用する。すなわち、異常検出手段1により燃料電池システムの改質器や空気供給装置等の各部位の温度、出力、流体圧力等の運転情報が常時監視され(ステップ201)、それらが適正な運転状態から逸脱した場合には(ステップ202)、システム情報保存手段2により、その前後の各運転情報が異常状態情報記憶部3に保存される(ステップ203)。
【0022】
その後、燃料電池システムが故障停止に至った場合には(ステップ204)、システム状態判断手段5により燃料電池システムの故障状態が判断され(ステップ205)、燃料電池システムに予め備えられたシステム異常発生シナリオと状態復旧シナリオとを集めた異常/復旧シナリオデータベース4の中に、今回発生した異常に関する情報があるか否かが判断される(ステップ206)。
【0023】
異常/復旧シナリオデータベース4の中に、今回発生した異常に関する情報があると判断された場合には、異常状態情報記憶部3に保存された異常発生前後の運転情報と、異常/復旧シナリオデータベース4の情報とが対比される。
【0024】
そして、システム状態判断手段5により、システムの異常状態が想定され、異常の重要度が判別され、状態復旧手順等が選定され、当該異常要因が燃料電池システムの運転の安全に支障がないと判断され、また異常の原因が一時的な要因によるもの、例えば一部機器の昇温、降温遅れや、点火装置の不調や流体圧力の一時低下等、自動復旧が可能であると判断された場合には(ステップ207)、自動復旧手段6により自動で運転状態の復旧処理が行われ(ステップ208)、自動復旧処理が正常に終了したか否かが判断され(ステップ209)、正常に終了した場合には燃料電池システムの復旧処理を終了する。
【0025】
一方、ステップ207において、異常の要因が軽微なものではなく、自動復旧の対象ではないと判断された場合にはステップ210に進み、前記システム状態判断手段5により、当該異常が使用者の調査・復旧処理の対象か否か、言い換えれば、燃料電池システム自体には異常がないと判断され、当該異常要因が外部の条件によるもの、例えば、燃料の供給停止や系統電圧の異常等と判断された場合には、情報提供手段7により、想定される異常の内容と使用者によって調査・確認すべき内容が、リモコン等のユーザインターフェース装置を介して使用者に通知される(ステップ211)。
【0026】
前記情報提供手段7より通知された情報により、使用者にて燃料電池システム外部の異常要因が除去された後(ステップ212)、使用者にて運転再開を試みる場合、再起動手段7により、異常のあったパラメータを含めシステム状態を監視し、安全に支障がないよう運転状態の復旧処理が行われる(ステップ213)。そして、ユーザによる再起動処理が正常に終了したか否かが判断され(ステップ214)、正常に終了した場合には燃料電池システムの復旧処理を終了する。
【0027】
一方、ステップ210において、前記システム状態判断手段5により、当該異常がユーザの調査・復旧の対象ではない、言い換えれば、当該異常が燃料電池システムの運転の安全・損壊等に関わる重度の異常であると判断されるか、ステップ206において、前記異常/復旧シナリオデータベース4に当該異常が定義されていないか、または、ステップ209又はステップ214において、前記自動復旧手段6又は再起動手段7により運転状態の復旧処理中に、再度異常が発生した場合には、燃料電池システムを安全に停止させ(ステップ215)、事業者、製造者による詳細調査が必要である旨と、燃料電池システムの停止中の留意事項等の所要情報がリモコン等のユーザインターフェース装置を介して使用者に通知される(ステップ216)。
【0028】
(1−3)効果
上記のような本発明の燃料電池システムによれば、燃料電池システムが異常停止に至った場合に、異常情報とその時のシステム状態を保存し、そのデータと予め異常/復旧シナリオデータベースに保存されたデータとを比較して、その異常の程度を高精度に判断することができる。
【0029】
また、発生した異常が、自動復旧が可能な軽度な異常の場合には、直ちに自動復旧処理を行い、使用者により復旧処理が可能な異常の場合には、使用者にその旨を通知し、異常原因の除去方法及び復旧処理方法をガイダンスし、使用者により異常原因が除去された後、復旧処理を実施するよう指示することができる。
【0030】
さらに、発生した異常が燃料電池システムの運転の安全・損壊等に関わる重度の異常である場合には、燃料電池システムを安全に停止させ、使用者に事業者、製造者に対して詳細調査及び修理を依頼するよう通知することができるので、発生した異常の程度に応じて、常に適切な復旧処理を実施することができる。これにより、システムの停止時間の短縮化も可能となる。
【0031】
(2)他の実施形態
本発明は、上述したような実施形態に限定されるものではなく、家庭用燃料電池発電システムの場合には、前記情報提供手段による使用者への通知内容は、より平易な内容とする等、適宜変更可能である。また、前記情報提供手段7と通知手段9を一つの手段としても良い。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明に係る燃料電池発電システムの構成を示すブロック図
【図2】本発明に係る燃料電池発電システムの処理の流れを示すフローチャート
【符号の説明】
【0033】
1…異常検出手段
2…システム情報保存手段
3…異常状態情報記憶部
4…異常/復旧シナリオデータベース
5…システム状態判断手段
6…自動復旧手段
7…情報提供手段
8…再起動手段
9…通知手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池発電システム内の各種の機器の運転情報を常時監視し、適正な運転状態からの逸脱を検出する異常検出手段と、
異常検出時に、その前後の各機器の運転情報を記憶手段に保存するシステム情報保存手段と、
燃料電池発電システムの異常停止時に、前記記憶手段に保存した異常発生前後の運転情報と、該燃料電池発電システムに予め備えられ、種々の異常状態に対して適用すべき復旧手順を保存したデータベースの情報とを対比して、当該異常内容を想定し、適用すべき復旧手順を選定するシステム状態判断手段とを備え、
当該異常要因がシステムの安全に支障がないと判断され、また異常の原因が一時的な要因によるものと判断された場合に、自動的に該システムの再起動を行う自動復旧手段を備えたことを特徴とする燃料電池発電システム。
【請求項2】
前記システム状態判断手段により、当該異常要因が使用者により復旧処理が可能な異常であると判断された場合に、想定される異常の内容と使用者による調査・確認内容を使用者に通知する情報提供手段を備えたことを特徴とする請求項1に記載の燃料電池発電システム。
【請求項3】
前記情報提供手段より通知された情報に基づいて異常要因が除去された後、使用者により該システムの再起動を行う再起動手段を備えたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の燃料電池発電システム。
【請求項4】
前記システム状態判断手段により、当該異常が燃料電池発電システムの安全・損壊等に関わると判断されるか、前記データベースに当該異常が定義されていないか、または、前記自動復旧手段及び/又は再起動手段により再起動中に異常状態が再発した場合に、所要情報を使用者に通知する手段を備えたことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一に記載の燃料電池発電システム。
【請求項5】
燃料電池発電システム内の各種の機器の運転情報を常時監視し、適正な運転状態からの逸脱を検出するステップと、
当該システムが異常停止に至った場合に、該異常情報とその時のシステム状態を保存するステップと、
該保存データと、種々の異常状態に対して適用すべき復旧手順を保存したデータベースの情報とを比較して、当該システムの異常状態を想定し、異常の重要度を判別すると共に、状態復旧手順を選定するステップと、
当該異常が、自動復旧が可能な異常と判別された場合には、直ちに自動復旧処理を行うステップを有することを特徴とする燃料電池発電システムの復旧処理方法。
【請求項6】
前記発生した異常が、使用者により復旧処理が可能な異常と判別された場合に、使用者にその旨を通知し、異常原因の除去方法及び/又は復旧処理方法を通知するステップをさらに有することを特徴とする請求項5に記載の燃料電池発電システムの復旧処理方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−64673(P2009−64673A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−231786(P2007−231786)
【出願日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(301060299)東芝燃料電池システム株式会社 (358)
【Fターム(参考)】