説明

燃料電池発電装置および機器支持構造

【課題】燃料電池発電装置を構成する水平方向に振動する機器の重量を支持しつつ、その振動が支持フレームに伝わるのを抑制して、その振動に起因する騒音を低減し、しかもコンパクトな燃料電池発電装置を実現する。
【解決手段】燃料電池発電装置は、水平方向に往復振動をする振動機器1と、振動機器1の重量を上向きに支持するとともに、振動機器1に対して振動方向10に相対的に摺動可能な支持フレーム5と、振動方向10と異なる水平方向に延びて、その一端が振動機器1に固定され、他の一端が支持フレーム5に固定された、支持フレーム5よりも柔軟な振動減衰部材3と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水平方向に往復振動をする補機などの振動機器を有する燃料電池発電装置ならびに、かかる振動機器を支持する支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池発電装置は、燃料処理装置により生成された水素と酸素の結合エネルギを直接電気エネルギに変換するものであり、化学反応であるために発電効率が高く、汚染物質の排出が少ない環境性に優れた発電システムとして評価されている。
【0003】
一方、家庭用の燃料電池発電装置には静粛性が求められており、住宅が隣接する環境や隣家との敷地境界が近い都市部において、低騒音化の要求が強い。
【0004】
従来、流体ポンプなどのモーター機器の伝播振動を低減する対策として、一般に発泡ウレタンや低反発性の防振ゴムなどの内部損失係数が高く振動が減衰しやすい材料が緩衝材料として用いられてきた。
【0005】
この効果を高める目的として、振動機器であるウォーターポンプを、ブラケットを介して中間プレートに固定し、その前後に材料自身の振動減衰効果が大きい防振ゴムを設置した例(たとえば、特許文献1)がある。しかし、家庭用燃料電池において、補機を固定する金属構造に連結した樹脂構造物の構造減衰を利用して往復式の補機から伝播する振動を低減させるようにした例はみあたらない。
【特許文献1】特開2006−112519号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
家庭に普及させる燃料電池発電装置は、限られたスペースに設置するためにできるだけコンパクトな装置パッケージとする必要があり、防振対策は省スペースで実現しなければならない。
【0007】
ゴムや発泡材などの弾性係数が低い樹脂材料は防振性能に優れているが、その効果を十分に得るためには防振部材の専用スペースを大きく設けなければならず、また、材料の強度が低いために重量物を支持する構造部材として利用することは困難であった。
【0008】
一方、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)などの成形性に優れた樹脂材料は、金属材料と比較して大きな振動減衰の効果が得られるが、発泡ウレタンや低反発ゴムほどは内部損失が大きくないため、材料だけで振動減衰させようとした場合に機能上必要な部材のサイズが大きくなる問題があった。
【0009】
本発明は、前述したような背景技術の課題を解決するためになされたものであり、その目的は、燃料電池発電装置などの一部を構成する水平方向に振動する機器の重量を支持しつつ、その振動が支持フレームに伝わるのを抑制して、その振動に起因する騒音を低減し、しかもコンパクトな燃料電池発電装置などを実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明に係る燃料電池発電装置は、一定の水平方向に往復振動をする振動機器と、前記振動機器の重量を上向きに支持するとともに、前記振動機器に対して前記往復振動の方向に相対的に摺動可能な上向き支持面を備えた支持フレームと、前記往復振動の方向と異なる水平方向に延びて、その一端が前記振動機器に固定され、他の一端が前記支持フレームに固定された、前記支持フレームよりも高い振動減衰特性を有する材料を用いた振動減衰部材と、を有することを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る機器支持構造は、一定の水平方向に往復振動をする振動機器を支持する機器支持構造であって、前記振動機器の重量を上向きに支持するとともに、前記振動機器に対して前記往復振動の方向に対して相対的に摺動可能な上向き支持面を備えた支持フレームと、前記往復振動の方向と異なる水平方向に延びて、その一端が前記振動機器に固定され、他の一端が前記支持フレームに固定された、前記支持フレームよりも高い振動減衰特性を有する材料を用いた振動減衰部材と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、燃料電池発電装置などの一部を構成する水平方向に振動する機器の重量を支持しつつ、その振動が支持フレームに伝わるのを抑制して、その振動に起因する騒音を低減し、しかもコンパクトな燃料電池発電装置などを実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の実施形態について図面を参照して以下に説明する。ここで、互いに同一または類似の部分には共通の符号を付して、重複説明は省略する。
【0014】
[第1の実施形態]
図1は本発明の第1の実施形態における振動機器支持構造を示す模式的立面図、図2は図1の振動機器支持構造の模式的平面図である。
【0015】
流体ポンプなどの補機(振動機器)1は、たとえば家庭用のパッケージ型燃料電池発電装置のウォーターポンプであって、一定の水平方向の振動方向10に振動するものである。補機1は、たとえば金属製の支持台2に対して、ボルトなどの固定部4aによって固定されている。支持台2の下面は支持フレーム5の上向き支持面5aに接触して、水平方向に摺動可能に支持されている。支持台2は、燃料電池発電装置のパッケージの下面に固定されている。
【0016】
支持台2の振動方向10に垂直な水平方向に隣接して振動減衰部材3が支持台2に固定されている。振動減衰部材3は水平方向に広がる長方形の板状で、振動方向10に垂直な水平方向に延び、支持台2から遠い側の端部は支持フレーム5の立ち上がり部5bに対して、ボルトなどの固定部4bによって固定されている。支持フレーム5は、支持台2に接する上向き支持面5aと、振動減衰部材3が固定される立ち上がり部5bとの間に、窪み部5cが形成され、振動減衰部材3の下面が支持フレーム5と接触しないように構成されている。
【0017】
振動減衰部材3は、たとえばポリエチレンやポリプロピレンなどの成形性に優れた樹脂材料であって、金属製の支持フレーム5などよりも柔軟で振動減衰特性のよいものである。
【0018】
上記構成で、補機1の重量は支持台2を介して支持フレーム5の上向き支持面5aで支持されている。比較的柔軟な材料からなる振動減衰部材3は、補機1の重量の支持の機能を担っていない。一方、補機1は振動減衰部材3を介して、支持フレーム5の立ち上がり部5bに対して水平方向に支持されている。
【0019】
したがって、補機1の水平な振動方向10の振動は、振動減衰部材3を介して支持フレーム5に伝播され、支持フレーム5への振動伝播を抑制することができる。しかも、振動減衰部材3は補機1の重量を支持しないので、振動減衰部材3として大きなものとする必要がなく、簡素な構造とすることができる。
【0020】
[第2の実施形態]
図3は本発明の第2の実施形態における振動機器支持構造を示す模式的立面図である。この実施形態では、支持フレーム5の上向き支持面5aと支持台2の底面との間に低摩擦接触構造7が設けられている。その他の構成は第1の実施形態と同様である。
【0021】
低摩擦接触構造7は、支持フレーム5の上向き支持面5aが支持台2を介して補機1の重力を受けながら、支持台2を上向き支持面5aに対して水平方向に滑らかに摺動させるものである。低摩擦接触構造7は、たとえばすべり軸受けや転がり軸受けと同様の構造でもよい。
【0022】
この実施形態によれば、第1の実施形態の効果と同様の効果が得られるとともに、支持台2が支持フレーム5の上向き支持面5aに対して、水平振動方向に、より自由に動くことができるので、支持台2から振動減衰部材3を介さずに支持フレーム5の上向き支持面5aに直接伝わる振動をさらに低減することができる。
【0023】
[第3の実施形態]
図4は本発明の第3の実施形態における振動機器支持構造を示す模式的立面図、図5は図4の振動機器支持構造の模式的平面図である。
【0024】
この実施形態では、振動減衰部材13が、水平な振動方向10に対して垂直な鉛直面方向に広がる長方形の板状であって、互いに平行な2枚の板状の振動減衰部材13が振動方向10に沿って並んで配置されている。その他の構成は第2の実施形態と同様である。
【0025】
この実施形態では、板状の振動減衰部材13がその湾曲しやすい方向に柔軟に湾曲して補機1の振動を吸収することができるので、第2の実施形態の効果と同様の効果が得られるとともに、支持フレーム5への伝播振動をさらに減衰させることができる。
【0026】
なお、図示の例では板状の振動減衰部材13が2枚あるものとしたが、振動減衰部材13が1枚または3枚以上であってもよい。
【0027】
[第4の実施形態]
図6は本発明の第4の実施形態における振動機器支持構造を示す模式的立面図、図7は図6の振動機器支持構造の模式的平面図である。
【0028】
この実施形態では、振動減衰部材23が、上部開放の直方体箱形状である。この箱形状の振動減衰部材23内に、燃料電池発電装置の構成上必要な部品(たとえば、タンクなどの機器)6を収納できる。ただし、この実施形態では、箱形状の振動減衰部材23は浅く、その中に収容された部品6の上部は振動減衰部材23の上端部よりも上方に突出している。
【0029】
この実施形態によれば、第2の実施形態の効果と同様の効果が得られるとともに、燃料電池発電装置のパッケージ内部のスペースの有効活用ができ、パッケージのコンパクト化を実現することができる。
【0030】
[第5の実施形態]
図8は本発明の第5の実施形態における振動機器支持構造を示す模式的立面図、図9は図8の振動機器支持構造の模式的平面図である。
【0031】
この実施形態は第4の実施形態の変形であって、この実施形態の振動減衰部材33は第4の実施形態の場合よりも深く、その中に収容された部品6の上端部が振動減衰部材33の上方に突出することはなく、部品6全体が振動減衰部材33内に収容されている。さらに、振動減衰部材33の肉厚が第4の実施形態よりも薄くできている。その他の構成は第4の実施形態と同様である。
【0032】
この実施形態によれば、第4の実施形態の効果と同様の効果を得られるとともに、振動減衰部材33内に部品6全体を収容できるので、部品収納性が向上し、しかも、振動減衰部材33の肉厚を薄くすることによって振動減衰部材33の剛性が必要以上に高くなるのを避けることができ、所望の振動の減衰特性を得ることができる。
【0033】
[第6の実施形態]
図10は本発明の第6の実施形態における振動機器支持構造を示す模式的立面図、図11は図10の振動機器支持構造の模式的平面図である。
【0034】
この実施形態では、第5の実施形態の深い箱状の振動減衰部材33の外側面にシート状の制振部材8が貼付されている。制振部材8は、たとえばエチルゴムシートとアルミホイルを貼り合わせたものであって、制振シートとして一般に市販されているものを利用できる。
【0035】
この実施形態によれば、第5の実施形態の効果と同様の効果を得られるとともに、振動減衰部材33が伝播する振動に伴って振動減衰部材33が振動することに起因する騒音を効果的に抑制することができる。
【0036】
[他の実施形態]
以上説明した各実施形態は単なる例示であって、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0037】
たとえば、第3ないし第6の実施形態では、第2の実施形態と同様の低摩擦接触構造7を有しているが、第3ないし第6の実施形態で第1の実施形態と同様に低摩擦接触構造7を省略することもできる。
【0038】
また、上記各実施形態では補機1が支持台2に固定されていて、支持台2が支持フレーム5の上向き支持面5aに対して摺動するとともに支持台2が振動減衰部材3、13、23、33と接合されるものとした。しかし、補機1と支持台2とが一体のもの、あるいは、支持台2がない場合もありうる。この場合、補機1が支持フレーム5の上向き支持面5aに対して直接摺動するとともに、補機1が振動減衰部材3、13、23、33と直接接合される。
【0039】
さらに、上記各実施形態では燃料電池発電装置の中の補機の振動が支持フレームに伝播することを抑制する場合について説明したが、燃料電池発電装置以外においても、一般に、機器の水平方向の振動が支持フレームに伝播することを抑制するための振動機器支持構造として広くこの発明を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の第1の実施形態における振動機器支持構造を示す模式的立面図。
【図2】図1の振動機器支持構造の模式的平面図。
【図3】本発明の第2の実施形態における振動機器支持構造を示す模式的立面図。
【図4】本発明の第3の実施形態における振動機器支持構造を示す模式的立面図。
【図5】図4の振動機器支持構造の模式的平面図。
【図6】本発明の第4の実施形態における振動機器支持構造を示す模式的立面図。
【図7】図6の振動機器支持構造の模式的平面図。
【図8】本発明の第5の実施形態における振動機器支持構造を示す模式的立面図。
【図9】図8の振動機器支持構造の模式的平面図。
【図10】本発明の第6の実施形態における振動機器支持構造を示す模式的立面図。
【図11】図10の振動機器支持構造の模式的平面図。
【符号の説明】
【0041】
1 : 補機(振動機器)
2 : 支持台
3、13、23、33 : 振動減衰部材
4a、4b : 固定部
5 : 支持フレーム
5a : 上向き支持面
5b : 立ち上がり部
5c : 窪み部
6 : 部品
7 : 低摩擦接触構造
8 : 制振部材
10 : 振動方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一定の水平方向に往復振動をする振動機器と、
前記振動機器の重量を上向きに支持するとともに、前記振動機器に対して前記往復振動の方向に相対的に摺動可能な上向き支持面を備えた支持フレームと、
前記往復振動の方向と異なる水平方向に延びて、その一端が前記振動機器に固定され、他の一端が前記支持フレームに固定された、前記支持フレームよりも高い振動減衰特性を有する材料を用いた振動減衰部材と、
を有することを特徴とする燃料電池発電装置。
【請求項2】
前記振動機器の重量が前記支持フレームに支持される部分に、低摩擦接触構造が構成されていることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池発電装置。
【請求項3】
前記振動減衰部材は、前記往復振動の方向に垂直な方向に広がった面を有する板材を含むこと、を特徴とする請求項1または請求項2に記載の燃料電池発電装置。
【請求項4】
前記振動減衰部材は樹脂材を用いたものであること、を特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の燃料電池発電装置。
【請求項5】
前記振動減衰部材は、その表面の少なくとも一部がシート状の制振部材で覆われていること、を特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の燃料電池発電装置。
【請求項6】
一定の水平方向に往復振動をする振動機器を支持する機器支持構造であって、
前記振動機器の重量を上向きに支持するとともに、前記振動機器に対して前記往復振動の方向に対して相対的に摺動可能な上向き支持面を備えた支持フレームと、
前記往復振動の方向と異なる水平方向に延びて、その一端が前記振動機器に固定され、他の一端が前記支持フレームに固定された、前記支持フレームよりも高い振動減衰特性を有する材料を用いた振動減衰部材と、
を有することを特徴とする機器支持構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−86919(P2010−86919A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−257791(P2008−257791)
【出願日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【出願人】(301060299)東芝燃料電池システム株式会社 (358)
【Fターム(参考)】