説明

燃料電池発電設備

【課題】 燃料電池と圧力容器の差圧制御を特別な装置、機器を用いることなく行い得るようにする。
【解決手段】 圧力容器4に格納された燃料電池3のアノード排ガスGEA及びカソード排ガスGECを改質器1の燃焼室1bに供給し、カソード排ガスGECの熱によりアノード排ガスGEA中の可燃成分を燃焼させて燃料ガスGFの改質を行わせるようにした燃料電池発電設備において、燃料電池3のカソード極3bへカソードガスGCを送給する混合ガス循環管43の圧力容器4内に位置する部分にカソードガスGCを差圧制御ガスGGとして圧力容器内に噴出させるガス噴出孔を設ける。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、溶融炭酸塩型燃料電池を用いた燃料電池発電設備に関するものである。
【0002】
【従来の技術】溶融炭酸塩型燃料電池は、高効率で且つ環境への影響が少い、等従来の発電設備にはない特長を有しており、水力、火力、原子力に続く発電システムとして注目を集め、現在世界各国で鋭意、研究開発が行われている。
【0003】而して、溶融炭酸塩型燃料電池を用いた従来の燃料電池発電設備の一例は図6に示されている。
【0004】図6中、1は改質室1aと燃焼室1bを有する改質器、2は燃料ガス予熱器、3はアノード極3aとカソード極3bをひとつの組み合せとして複数層積重ね形成した溶融炭酸塩型の燃料電池であり、改質器1及び燃料ガス予熱器2並に燃料電池3は設備全体をコンパクトにするために、図6の仮想線で示すように所定の圧力容器4内に格納されている。
【0005】改質器1及び燃料ガス予熱器2並に燃料電池3を圧力容器4内に格納するのは、次のような理由による。すなわち、改質器1及び燃料ガス予熱器2並に燃料電池3は何れも内圧が高いため、改質器1及び燃料ガス予熱器2並に燃料電池3を内圧に耐えるように製作すると、これら各機器は大型化する。そこで、これら各機器に外圧を与えて内圧と外圧の圧力差を小さくし、全体として設備のコンパクト化を図るのである。
【0006】改質器1における改質室1aの入口側には、都市ガス等の燃料ガスGFを改質室1aへ送給し得るよう、中途部に上流側から下流側へ向けて燃料ガス送給ブロワ5、脱硫器6、燃料ガス予熱器2を順次接続した燃料ガス送給管7が接続されている。
【0007】改質器1における改質室1aの出口側には、中途部に燃料ガス予熱器2を接続したアノードガス送給管8が接続され、アノードガス送給管8の先端は燃料電池3のアノード極3a入口側に接続されている。
【0008】而して、改質室1aで燃料ガスGFを改質して得られた水素、一酸化炭素、メタン等の可燃成分を含むアノードガスGAは、アノードガス送給管8を通って燃料電池3のアノード極3aへ送給されるようになっている。
【0009】燃料電池3におけるアノード極3aの出口側と、改質器1における燃焼室1bの入口側とは、アノード極3aから排出されたアノード排ガスGEAが改質器1における燃焼室1bへ送給されるよう、アノード排ガス送給管9により接続され、アノード排ガス送給管9の中途部には、アノード排ガスGEAが燃焼室1b側からアノード極3a側へ逆流しないよう、逆止弁10が接続されている。
【0010】燃料電池3におけるカソード極3bの出口側と、改質器1における燃焼室1bの入口側とは、カソード極3bから排出されたカソード排ガスGECが改質器1における燃焼室1bへ送給されるよう、カソード排ガス送給管11により接続され、カソード排ガス送給管11の中途部には、カソード排ガスGECが燃焼室1bからカソード極3b側へ逆流しないよう、逆止弁12が接続されている。
【0011】カソード排ガス送給管11の逆止弁12接続位置よりもカソード排ガスGEC流れ方向上流側には、カソード排ガスGECの一部をカソード極3bの入口側に循環させるための循環管13が接続されており、循環管13の中途部には、ガス流れ方向上流側から下流側へ向けて順次高温ブロワ14、熱風発生炉15で発生して送給された熱風WHにより循環管13内を流れる混合ガスGM2を加熱するための加熱器16が接続されている。
【0012】カソード排ガス送給管11の循環管接続部X1と、逆止弁12取付け部との間には、カソード排ガスGECの残りの一部を抽出するためのカソード排ガス抽出管17が接続され、カソード排ガス抽出管17の先端側は、ガスタービン駆動ガス送給管21を介し、圧縮機18を駆動するためのガスタービン19の入口側に接続されている。
【0013】前記加熱器16には、循環管13中の混合ガスGM2を加熱した後の熱風排ガスGEHをカソード排ガス抽出管17との接続部へ導入するための熱風排ガス送給管20が接続され、カソード排ガス抽出管17から送給されたカソード排ガスGECの一部と加熱器16から排出された熱風排ガスGEHは、カソード排ガス抽出管17と熱風排ガス送給管20の接続部で混合し、ガスタービン駆動ガスGEDとしてガスタービン駆動ガス送給管21からガスタービン19へ導入し得るようになっている。
【0014】ガスタービン19から抽気されたタービン排ガスGETは排熱回収装置22へ送給されるようになっており、排熱回収装置22で生成された蒸気VPは蒸気管23を通り、脱硫器6の下流側で燃料ガス送給管7に供給され、燃料ガス送給管7内の燃料ガスGFと混合し得るようになっている。
【0015】改質器1の燃焼室1b出口側には、燃焼排ガス送給管24が接続され、燃焼排ガス送給管24の中途部には、ガス流れ方向上流側から下流側へ向けて混合ガス予熱器25、凝縮器26、気水分離器27、低温ブロワ28が順次接続されている。
【0016】圧縮機18の出口側に接続した圧縮空気送給管29の先端は前記燃焼排ガス送給管24の先端に接続され、燃焼排ガス送給管24と圧縮空気送給管29との接続部よりも下流側は混合ガス送給管30となり、燃焼排ガス送給管24からの燃焼排ガスGEXと圧縮空気送給管29からの圧縮空気ACの混合した混合ガスGM1を混合ガス予熱器25で予熱したうえ、前記循環管13の高温ブロワ14吸入側へ送給し得るようになっている。
【0017】圧力容器4には、中途部に流量制御弁31を有する窒素ガス送給管32を介して窒素ガス製造装置33が接続され、窒素ガス製造装置33で製造された窒素ガスN2を窒素ガス送給管32から圧力容器4へ送給し得るようになっている。
【0018】なお、図中、34はガスタービン19側から燃料電池3のカソード極3b側へガスが逆流しないようにした逆止弁、35はガスタービン19側から加熱器16側へガスが逆流しないようにした逆止弁、36は燃焼排ガス送給管24側から圧縮機18側へガスが逆流しないようにした逆止弁である。
【0019】上述の燃料電池発電設備での発電は次のように行われる。
【0020】すなわち、燃料ガス送給ブロワ5により加圧されて燃料ガス送給管7内を送られて来た燃料ガスGFは、脱硫器6で脱硫され、又燃料ガスGFには、排熱回収装置22から蒸気管23を介して送られて来た蒸気VPが吹き込まれ、蒸気VPを吹き込まれた燃料ガスGFは、燃料ガス予熱器2で予熱されて改質器1の改質室1a内へ導入される。
【0021】燃料ガスGFとしては、都市ガスのように、メタン、水素、一酸化炭素等可燃性成分を多量に含むガスを用いる。又燃料ガスGFに蒸気を吹き込むのは、改質器1で燃料ガスGF中の可燃成分が炭化することなく、改質が円滑に行われるようにするためである。
【0022】一方、燃料電池3のアノード極3aから排出された、水素や一酸化炭素等を若干含むアノード排ガスGEAは、アノード排ガス送給管9を通り、又カソード極3bから排出された、二酸化炭素や空気を含むカソード排ガスGECの一部はカソード排ガス送給管11を通り、夫々改質器1の燃焼室1bへ導入され、燃焼室1bでは、カソード排ガスGECの熱によりアノード排ガスGEA中の可燃成分が燃焼し、高温の燃焼ガスが生成される。
【0023】このため、燃焼ガスの熱により燃焼室1bを介して改質室1aが加熱され、燃料ガス送給管7から改質室1a内に導入された燃料ガスGFは、改質室1aの熱により加熱され、改質されてアノードガスGAが生成され、生成されたアノードガスGAは、改質器1の改質室1aから送出され、アノードガス送給管8から燃料ガス予熱器2へ導入され、該燃料ガス予熱器2においてアノードガスGAの熱により、燃料ガス送給管7内を送給されて来た燃料ガスGFが加熱され、しかる後、燃料電池3のアノード極3aへ送給される。
【0024】改質器1の燃焼室1bで生成された燃焼ガスは、燃料ガスGFを加熱して改質した後、燃焼室1bから二酸化炭素を含む燃焼排ガスGEXとして燃焼排ガス送給管24へ排出され、下流側へ送給されて混合ガス予熱器25で熱を放出し、次いで凝縮器26を通り、凝縮器26から気水分離器27へ導入され、気水分離器27では、凝縮器26で凝縮した、燃焼排ガスGEX中の水分を除去され、低温ブロワ28へ吸入されて加圧され、更に燃焼排ガス送給管24中を下流側へ送給される。
【0025】一方、燃料電池3のカソード極3bから排出された、カソード排ガスGECの一部はカソード排ガス抽出管17内を下流側へ送給される。
【0026】又、熱風発生炉15で生成された熱風WHは加熱器16において循環管13を送られて来た混合ガスGM2を加熱し、熱風排ガスGEHとして熱風排ガス送給管20内を下流側へ送られる。
【0027】カソード排ガス抽出管17内を送給されて来たカソード排ガスGECと熱風排ガス送給管20を送給されて来た熱風排ガスGEHは、カソード排ガス抽出管17と熱風排ガス送給管20の接続部で合流、混合し、ガスタービン駆動ガスGEDとしてガスタービン駆動ガス送給管21内を通りガスタービン19へ導入され、ガスタービン19を駆動した後タービン排ガスGETとして排熱回収装置22へ送給され、排熱回収装置22で蒸気VPを生成させた後大気中へ排出される。
【0028】排熱回収装置22で生成した蒸気VPは前述のごとく、蒸気管23を介し燃料ガス送給管7内を流れる燃料ガスGF内に導入される。
【0029】ガスタービン19が駆動されると、圧縮機18が駆動されるため、圧縮機18内へ導入された空気は圧縮空気ACとして圧縮機18から圧縮空気送給管29へ送出され、圧縮空気送給管29を通って燃焼排ガス送給管24と圧縮空気送給管29の接続部へ送給され、混合ガス送給管30で合流、混合して混合ガスGM1となり、該混合ガスGM1は混合ガス予熱器25で予熱されたうえ更に下流側へ送給される。
【0030】更に燃料電池3のカソード極3bから排出されたカソード排ガスGECの残りは、循環管13へ流入し、混合ガス送給管30からの混合ガスGM1と合流し混合して空気や二酸化炭素を含む別の混合ガスGM2となり、循環管13に設けた高温ブロワ14により加圧された後前述のごとく加熱器16で高温に加熱され、循環管13を通って燃料電池3のカソード極3bへカソードガスGCとして導入される。
【0031】而して、燃料電池3のアノード極3aにアノードガスGAが導入され、カソード極3bにカソードガスGCが導入されると、各極では、従来周知の所定の化学反応が生じて発電が行われ、発電された電気は所定の手段で外部へ取り出される。この際アノード極3aでは可燃成分の約80%が消費されるが、改質器1の燃焼室1bでは残りの約20%の可燃成分が燃焼するため、その熱により改質器1では燃料ガスGFの改質が行われることになる。
【0032】燃料電池3内の圧力と圧力容器4内の圧力の差を所定の圧力差とする差圧制御を行う場合には、流量制御弁31を適宜開き、窒素ガス製造装置33で製造した窒素ガスN2を窒素ガス送給管32から圧力容器4内へ送給し、圧力容器4内の圧力を所定の圧力に保持するようにしている。
【0033】燃料電池3内の圧力と圧力容器4内の圧力の差を制御するのは、燃料電池3を構成するコルゲート材等の厚さが薄いにも拘らず、燃料電池3の内圧が高いため、燃料電池3が内圧により破損するのを防止するためである。
【0034】溶融炭酸塩型燃料電池を用いた従来の燃料電池発電設備の他の例は図7にも示されている。
【0035】本例では、圧力容器4内に窒素ガスN2を導入せず、燃焼排ガスGEXの一部を圧力容器4内に導入するようにしている。すなわち、燃焼排ガス送給管24の低温ブロワ28と圧縮空気送給管29との接続部X2との間に燃焼排ガスGEXの一部を抽出するための燃焼排ガス抽出管37の後端を接続し、該燃焼排ガス抽出管37の先端を圧力容器4に接続している。なお、図7中、38は燃焼排ガス抽出管37の中途部に接続した流量制御弁である。
【0036】本例においては、発電時の燃料ガスGF、アノードガスGA、カソードガスGC、アノード排ガスGEA、カソード排ガスGEC、圧縮空気AC、混合ガスGM1,GM2、タービン排ガスGETの流れは、図6の場合と略同じであり、燃料電池3における発電も図6の場合と同様にして行われる。
【0037】しかし、本例において、燃料電池3内の圧力と圧力容器4内の圧力の差を所定の圧力差にする差圧制御を行う場合には、流量制御弁38を適宜開き、気水分離器27で水分を除去されて後低温ブロワ28で加圧された燃焼排ガスGEXの一部を燃焼排ガス送給管24と圧縮空気送給管29との接続部X2の手前で抽出し、抽出した燃焼排ガスGEXを燃焼排ガス抽出管37から圧力容器4内に送給し、圧力容器4内を所定の圧力に保持するようにしている。
【0038】
【発明が解決しようとする課題】上述の各燃料電池発電設備のうち図6の設備においては、前述の差圧制御のために流量制御弁31及び窒素ガス送給管32並に窒素ガス製造装置33が必要であり、図7の設備においては燃焼排ガス抽出管37及び流量制御弁38が必要である。
【0039】従って、図6、7の何れの燃料電池発電設備においても、余分な装置や機器が必要となり、それだけ設備が大型化すると共に価格が高騰するという問題があった。
【0040】本発明は上述の実情に鑑み、設備の小型化や設備費の低減を行い得るようにした燃料電池発電設備を提供することを目的としてなしたものである。
【0041】
【課題を解決するための手段】本発明は、アノード極とカソード極を有する燃料電池と、燃料電池のカソード極からのカソード排ガスの熱により燃料電池のアノード極からのアノード排ガスを燃焼させて燃焼ガスを生成させる燃焼室と導入された燃料ガスを前記燃焼ガスの熱により改質して得られたアノードガスを前記アノード極へ供給する改質室とを有する改質器と、改質器の燃焼室から排出された燃焼排ガスの一部により駆動されると共に圧縮機を駆動するガスタービンと、前記燃焼排ガスのうち残りの燃焼排ガスと前記圧縮機で生成された圧縮空気を混合したガスを加熱しカソードガスとする加熱器と、該加熱器で加熱されて得られたカソードガスを前記燃料電池のカソード極へ循環させる循環管路とを備え、燃料電池及び改質器のうち少くとも燃料電池が圧力容器内に格納された燃料電池発電設備であって、前記循環管路の圧力容器内に位置する部分にカソードガスの一部を差圧制御ガスとして圧力容器内に噴出させるガス噴出孔を設けたものである。
【0042】又、本発明は、アノード極とカソード極を有する燃料電池と、燃料電池のカソード極からのカソード排ガスの熱により燃料電池のアノード極からのアノード排ガスを燃焼させて燃焼ガスを生成させる燃焼室と導入された燃料ガスを前記燃焼ガスの熱により改質して得られたアノードガスを前記アノード極へ供給する改質室とを有する改質器と、改質器の燃焼室から排出された燃焼排ガスの一部により駆動されると共に圧縮機を駆動するガスタービンと、前記燃焼排ガスのうち残りの燃焼排ガスと前記圧縮機で生成された圧縮空気を混合したガスを加熱しカソードガスとして前記燃料電池のカソード極へ供給する加熱器とを備え、燃料電池及び改質器のうち少くとも燃料電池が圧力容器内に格納された燃料電池発電設備であって、前記カソード排ガスを改質器の燃焼室へ送給する管路の圧力容器内に位置する部分に、カソード排ガスの一部を差圧制御ガスとして圧力容器内に噴出させるガス噴出孔を設けたものである。
【0043】更に本発明は、隣り合うアノード極同士及びカソード極同士が連結管を介して接続されて直列接続された複数の燃料電池と、ガス流れ方向に対して最下流側にある燃料電池のカソード極からのカソード排ガスの熱によりガス流れ方向に対して最下流側にある燃料電池のアノード極からのアノード排ガスを燃焼させて燃焼ガスを生成させる燃焼室と導入された燃料ガスを前記燃焼ガスの熱により改質して得られたアノードガスをガス流れ方向に対して最上流にある燃料電池のアノード極へ供給する改質室とを有する改質器と、改質器の燃焼室から排出された燃焼排ガスの一部により駆動されると共に圧縮機を駆動するガスタービンと、前記燃焼排ガスのうち残りの燃焼排ガスと前記圧縮機で生成された圧縮空気を混合したガスを加熱しカソードガスとしてガス流れ方向に対し最上流側にある燃料電池のカソード極へ供給する加熱器とを備え、燃料電池及び改質器のうち少くとも燃料電池が圧力容器内に格納された燃料電池発電設備であって、前記隣り合う燃料電池のカソード極同士を接続する連結管に、カソードガスの一部を差圧制御ガスとして圧力容器内に噴出させるガス噴出孔を設けたものである。
【0044】本発明においては、カソードガスやカソード排ガスを圧力容器内に導入しているため、特別な装置や機器がなくとも燃料電池と圧力容器の差圧制御を行うことができる。このため設備全体の小型化が可能になると共に設備費、運転維持費を安価にすることができる。
【0045】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照しつつ説明する。
【0046】図1、2、3は本発明の実施の形態の第一例で、請求項1に対応するものである。而して、以下に述べる事項は従来の図6、7に示す燃料電池発電設備の構成と略同じである。すなわち、改質器1及び燃料ガス予熱器2、燃料電池3を備え、改質器1及び燃料ガス予熱器2並に燃料電池3は、設備をコンパクトにするために圧力容器4内に格納されていること、燃料ガス送給ブロワ5及び脱硫器6を備えた燃料ガス送給管7が燃料ガス予熱器2を経て改質器1の改質室1a入口側に接続されていること、改質室1aの出口側に接続されたアノードガス送給管8は燃料ガス予熱器2を経て燃料電池3のアノード極3a入口側に接続されていること、アノード極3aの出口側に接続されたアノード排ガス送給管9及びカソード極3bの出口側に接続されたカソード排ガス送給管11は、夫々中途部に逆止弁10,12を備えて改質器1の燃焼室1b入口側に接続されていること、ガスタービン19を介して圧縮機18を駆動した後ガスタービン19から抽気されたタービン排ガスGETを排熱回収装置22へ送給し得るようにすること、排熱回収装置22で発生した蒸気VPを蒸気管23を介して燃料ガス送給管7の脱硫器6下流側へ送給し得るようにしたこと、においては、図6、7に示す従来の燃料電池発電設備と略同じである。
【0047】改質器1における燃焼室1bの出口側には、燃焼室1bから排出された燃焼排ガスGEXを下流側へ送給するための燃焼排ガス送給管39が接続され、燃焼排ガス送給管39の中途部には、燃焼排ガスGEXの一部を抽出するガスタービン駆動ガス送給管40が接続され、ガスタービン駆動ガス送給管40はガスタービン19の入口側に接続されている。
【0048】ガスタービン駆動ガス送給管40の中途部には、加熱器16からの熱風排ガスGEHをガスタービン駆動ガス送給管40へ流入させて燃焼排ガスGEXと混合させ、ガスタービン駆動ガスGEDを生成させるよう、熱風排ガス送給管41が接続されている。
【0049】圧縮機18内へ導入され圧縮されて生成された圧縮空気ACは、前記燃焼排ガスGEXと合流、混合し、混合ガスGMが生成されるよう、圧縮機18出口側に接続された圧縮空気送給管42の先端は、燃焼排ガス送給管39の先端に接続されている。
【0050】燃焼排ガス送給管39と圧縮空気送給管42の接続部には、混合ガスGMを下流側へ送給して燃料電池3のカソード極3bへ循環させ得るよう混合ガス循環管43が接続され、混合ガス循環管43の先端は、燃料電池3におけるカソード極3bの入口側に接続されている。
【0051】又、混合ガス循環管43には、ガス流れ方向上流側から下流側へ向けて、低温ブロワ28及び燃料電池3のカソード極3b側から燃焼排ガス送給管39や圧縮空気送給管42側へ混合ガスGMが逆流しないようにした逆止弁44並に前述の加熱器16が順次接続されている。
【0052】前記加熱器16には、熱風発生炉15で発生した熱風WHを送給し混合ガス循環管43内を流れる混合ガスGMを熱風により加熱してカソードガスGCを生成し得るようになっており、混合ガス循環管43内を送給される混合ガスGMを加熱してカソードガスGCとした後の熱風排ガスGEHは、前述のように加熱器16から排出され、熱風排ガス送給管41を通ってガスタービン駆動ガス送給管40へ導入し得るようになっている。
【0053】混合ガス循環管43の圧力容器4内における所定位置には、図2、3に示すごとく、所要数のガス噴出孔47が穿設されており、カソードガスGCの一部をガス噴出孔47から圧力容器4内へ差圧制御ガスGGとして噴出させ得るようになっている。
【0054】なお、図中、45はガスタービン19側から燃焼排ガス送給管39側へガスタービン駆動ガスGEDが逆流しないよう、ガスタービン駆動ガス送給管40の熱風排ガス送給管41接続部よりも燃焼排ガスGEX流れ方向上流側に接続された逆止弁、46はガスタービン駆動ガス送給管40側から加熱器16側へ熱風排ガスGEH等が逆流しないよう、熱風排ガス送給管41に接続された逆止弁である。
【0055】次に本発明の実施の形態における作用について説明する。
【0056】燃料ガス送給ブロワ5により加圧されて燃料ガス送給管7内を送られて来た燃料ガスGFは、脱硫器6で脱硫され、脱硫された燃料ガスGFには、排熱回収装置22から蒸気管23を介して送給されて来た蒸気VPが吹き込まれ、蒸気VPを吹き込まれた燃料ガスGFは、燃料ガス予熱器2で予熱されて改質器1の改質室1a内へ導入される。
【0057】又、燃料電池3のアノード極3aから排出されたアノード排ガスGEAはアノード排ガス送給管9を通り、又カソード極3bから排出されたカソード排ガスGECはカソード排ガス送給管11を通り、夫々改質器1の燃焼室1bへ導入され、燃焼室1bでは、カソード排ガスGECの熱によりアノード排ガスGEA中の可燃成分が燃焼し、高温の燃焼ガスが生成される。
【0058】このため燃焼ガスの熱により燃焼室1bを介して改質室1aが加熱され、燃料ガス送給管7から改質室1a内に導入された燃料ガスGFは、改質室1aの熱により加熱され、改質されてアノードガスGAが生成され、生成されたアノードガスGAは改質器1の改質室1aから送出され、アノードガス送給管8から燃料ガス予熱器2へ導入され、該燃料ガス予熱器2において、アノードガスGAの熱により、燃料ガス送給管7内を送給されて来た燃料ガスGFを加熱し、しかる後、アノードガスGAは燃料電池3のアノード極3aへ導入される。
【0059】改質器1の燃焼室1bで生成された燃焼ガスは、燃料ガスGFを加熱して改質した後、燃焼排ガスGEXとして燃焼室1bから燃焼排ガス送給管39へ排出され、下流側へ送給される。
【0060】而して、燃焼排ガスGEXの一部は、途中でガスタービン駆動ガス送給管40へ送られ、残りの燃焼排ガスGEXは全て燃焼排ガス送給管39を経て下流側へ送給される。
【0061】ガスタービン駆動ガス送給管40へ導入された一部の燃焼排ガスGEXは、ガスタービン駆動ガス送給管40内を通ってガスタービン19方向へ送給される。
【0062】一方、熱風発生炉15で発生した熱風WHは、加熱器16へ送給され、混合ガス循環管43を通って加熱器16へ送給された混合ガスGMを加熱し、しかる後、加熱器16から熱風排ガスGEHとして熱風排ガス送給管41へ排出され、熱風排ガス送給管41からガスタービン駆動ガス送給管40内へ導入され、ガスタービン駆動ガス送給管40内を流れる燃焼排ガスGEXと合流して混合し、ガスタービン駆動ガスGEDが生成される。
【0063】而して、生成したガスタービン駆動ガスGEDは、更にガスタービン駆動ガス送給管40を下流側へ向け送られてガスタービン19内へ導入され、ガスタービン19を駆動する。
【0064】又、ガスタービン19を駆動した後排出されたタービン排ガスGETは、排熱回収装置22へ送られ、排熱回収装置22において水を加熱し、蒸気VPを生成させる。
【0065】水や蒸気により排熱を回収されたタービン排ガスGETは、排熱回収装置22から外部へ放出され、排熱回収装置22で生成された蒸気VPは前述したごとく蒸気管23を通って燃料ガス送給管7へ送給され、燃料ガス送給管7中の燃料ガスGFに吹き込まれる。
【0066】ガスタービン駆動ガスGEDによりガスタービン19が駆動されると、ガスタービン19により圧縮機18が駆動され、圧縮機18内に導入された空気は圧縮空気ACとして圧縮機18から圧縮空気送給管42内へ吐出され、圧縮空気送給管42から燃焼排ガス送給管39の先端側へ送られて燃焼排ガス送給管39からの燃焼排ガスGEXと合流、混合し、混合ガスGMとなり、混合ガスGMは混合ガス循環管43中を下流側へ向けて送給される。
【0067】而して、混合ガスGMは混合ガス循環管43の中途部で低温ブロワ28に吸入されると共に加圧され、混合ガス循環管43を通って加熱器16へ導入され、加熱器16において熱風発生炉15で生成されて送給されて来た熱風WHにより加熱され、更に混合ガス循環管43を下流に向って送給され、一部はカソードガスGCとして燃料電池3のカソード極3bへ導入される。
【0068】燃料電池3のアノード極3aにアノードガスGAが導入され、カソード極3bにカソードガスGCが導入されると、各極では図6、7の設備と同様、従来周知の所定の化学反応が生じて発電が行われ、発電された電気は所定の手段で外部へ取り出される。
【0069】一方、カソードガスGCのうちの残りは、差圧制御ガスGGとしてガス噴出孔47から圧力容器4内へ噴出され、圧力容器4内の圧力は、燃料電池3のカソード極3bへ導入されたカソードガスGCと略同じ圧力になるまで上昇する。その結果、特別な装置や機器を用いることなく、燃料電池3内の圧力と圧力容器4内の圧力の差を所定の圧力差とする差圧制御を行うことができ、設備の小型化及び設備費、運転維持費の低減を図ることができる。
【0070】図4は本発明の実施の形態の第二例で、請求項2に対応するものである。而して、本実施の形態例においては、基本構成は図1に示すものと同一であるが、図2、3に示すごときガス噴出孔47を設ける位置が図1の場合とは異なっている。
【0071】すなわち、本実施の形態例においては、燃料電池3におけるカソード極3bの出口側に接続されたカソード排ガス送給管11の圧力容器4内に位置する部分に図2、3に示すごときガス噴出孔47を設けている。
【0072】本実施の形態例においては、発電のための各流体の流れは図1の実施の形態例と全く同じである。
【0073】又、発電の際には、カソード排ガス送給管11のガス噴出孔47(図2、3参照)からカソード排ガスGECの一部が差圧制御ガスGGとして圧力容器4内に噴出されるため、特別な装置や機器を用いることなく、燃料電池3内の圧力と圧力容器4内の圧力の差を所定の圧力差とする差圧制御を行うことができ、従って装置の小型化及び設備費、運転維持費の低減が可能となる。
【0074】図5は、本発明の実施の形態の第三例で、請求項3に対応するものである。
【0075】而して、本形態例では、燃料電池3の下流側に別の燃料電池48を圧力容器4内に格納されるよう直列配置し、燃料電池3のアノード極3a出口側と燃料電池48のアノード極48a入口側とを連結管49により接続し、カソード極3b出口側とカソード極48b出口側とを連結管50により接続し、アノード極48aの出口側にアノード排ガス送給管9を接続し、カソード極48bの出口側にカソード排ガス送給管11を接続し、連結管50の中途部に図2、3に示すごときガス噴出孔47を設けている。
【0076】本実施の形態例では、発電時には、燃料電池3において発電が行われた後、燃料電池3のアノード極3a、カソード極3bから送出されたアノードガスGA、カソードガスGCは連結管49,50を介して燃料電池48のアノード極48a、カソード極48bへ導入されて燃料電池48においても発電が行われる。
【0077】又、発電の際には、連結管50のガス噴出孔47(図2、3参照)からカソードガスGCの一部が差圧制御ガスGGとして圧力容器4内に噴出されて圧力容器4内の圧力が所定の圧力となり、前述の各形態例と同様、燃料電池3,48と圧力容器4の差圧制御を行うことができ、装置の小型化、運転維持費の低減を図ることができる。
【0078】なお、本発明の実施の形態は、前述の各形態例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々変更を加え得ること、等は勿論である。
【0079】
【発明の効果】本発明の燃料電池発電設備においては、何れの請求項においても特別な装置や機器を用いることなく、燃料電池と圧力容器との間の圧力差を所定の圧力差とする、いわゆる差圧制御を行うことができるため、設備の小型化、設備費、運転維持費の低減を図ることができる、等種々の優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の燃料電池発電設備における実施の形態の第一例を示す全体構成図である。
【図2】図1の混合ガス循環管に形成したガス噴出孔を示す側面図である。
【図3】図2のIII−III方向矢視図である。
【図4】本発明の燃料電池発電設備における実施の形態の第二例を示す全体構成図である。
【図5】本発明の燃料電池発電設備における実施の形態の第三例を示す全体構成図である。
【図6】従来の燃料電池発電設備の一例を示す全体構成図である。
【図7】従来の燃料電池発電設備の他の例を示す全体構成図である。
【符号の説明】
1 改質器
1a 改質室
1b 燃焼室
3,48 燃料電池
3a,48a アノード極
3b,48b カソード極
4 圧力容器
11 カソード排ガス送給管(管路)
16 加熱器
18 圧縮機
19 ガスタービン
43 混合ガス循環管(循環管路)
47 ガス噴出孔
49,50 連結管
F 燃料ガス
A アノードガス
EA アノード排ガス
C カソードガス
EC カソード排ガス
EX 燃焼排ガス
M 混合ガス(ガス)
G 差圧制御ガス
C 圧縮空気

【特許請求の範囲】
【請求項1】 アノード極とカソード極を有する燃料電池と、燃料電池のカソード極からのカソード排ガスの熱により燃料電池のアノード極からのアノード排ガスを燃焼させて燃焼ガスを生成させる燃焼室と導入された燃料ガスを前記燃焼ガスの熱により改質して得られたアノードガスを前記アノード極へ供給する改質室とを有する改質器と、改質器の燃焼室から排出された燃焼排ガスの一部により駆動されると共に圧縮機を駆動するガスタービンと、前記燃焼排ガスのうち残りの燃焼排ガスと前記圧縮機で生成された圧縮空気を混合したガスを加熱しカソードガスとする加熱器と、該加熱器で加熱されて得られたカソードガスを前記燃料電池のカソード極へ循環させる循環管路とを備え、燃料電池及び改質器のうち少くとも燃料電池が圧力容器内に格納された燃料電池発電設備であって、前記循環管路の圧力容器内に位置する部分にカソードガスの一部を差圧制御ガスとして圧力容器内に噴出させるガス噴出孔を設けたことを特徴とする燃料電池発電設備。
【請求項2】 アノード極とカソード極を有する燃料電池と、燃料電池のカソード極からのカソード排ガスの熱により燃料電池のアノード極からのアノード排ガスを燃焼させて燃焼ガスを生成させる燃焼室と導入された燃料ガスを前記燃焼ガスの熱により改質して得られたアノードガスを前記アノード極へ供給する改質室とを有する改質器と、改質器の燃焼室から排出された燃焼排ガスの一部により駆動されると共に圧縮機を駆動するガスタービンと、前記燃焼排ガスのうち残りの燃焼排ガスと前記圧縮機で生成された圧縮空気を混合したガスを加熱しカソードガスとして前記燃料電池のカソード極へ供給する加熱器とを備え、燃料電池及び改質器のうち少くとも燃料電池が圧力容器内に格納された燃料電池発電設備であって、前記カソード排ガスを改質器の燃焼室へ送給する管路の圧力容器内に位置する部分に、カソード排ガスの一部を差圧制御ガスとして圧力容器内に噴出させるガス噴出孔を設けたことを特徴とする燃料電池発電設備。
【請求項3】 隣り合うアノード極同士及びカソード極同士が連結管を介して接続されて直列接続された複数の燃料電池と、ガス流れ方向に対して最下流側にある燃料電池のカソード極からのカソード排ガスの熱によりガス流れ方向に対して最下流側にある燃料電池のアノード極からのアノード排ガスを燃焼させて燃焼ガスを生成させる燃料室と導入された燃料ガスを前記燃焼ガスの熱により改質して得られたアノードガスをガス流れ方向に対して最上流にある燃料電池のアノード極へ供給する改質室とを有する改質器と、改質器の燃焼室から排出された燃焼排ガスの一部により駆動されると共に圧縮機を駆動するガスタービンと、前記燃焼排ガスのうち残りの燃焼排ガスと前記圧縮機で生成された圧縮空気を混合したガスを加熱しカソードガスとしてガス流れ方向に対し最上流側にある燃料電池のカソード極へ供給する加熱器とを備え、燃料電池及び改質器のうち少くとも燃料電池が圧力容器内に格納された燃料電池発電設備であって、前記隣り合う燃料電池のカソード極同士を接続する連結管に、カソードガスの一部を差圧制御ガスとして圧力容器内に噴出させるガス噴出孔を設けたことを特徴とする燃料電池発電設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開平9−219207
【公開日】平成9年(1997)8月19日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平8−25249
【出願日】平成8年(1996)2月13日
【出願人】(000000099)石川島播磨重工業株式会社 (5,014)