説明

燃料電池自動車

【課題】 フロアパネルの全高の上昇や車室内の着座スペースの圧迫等による車室内の快適性を損なうことなく、しかも、外部からの荷重入力に対して燃料電池スタックを確実に保護し得る燃料電池自動車を提供する。
【解決手段】 車幅方向の略中央位置でフロアパネルから上方に膨出して車両前後方向に延出するセンターコンソール23を設ける。燃料電池スタック12を、燃料電池セル12aの高さ方向の寸法が幅方向の寸法に対して長くなり、かつ、燃料電池セル12aの積層方向が車両前後方向になるようにサブフレーム40に取り付け、燃料電池スタック12がセンターコンソール23内に収容されるようにサブフレーム40を車体に取り付ける。燃料電池スタック12は、その重心Gの下方側位置と上方側位置で車体に支持固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は燃料電池自動車に関するものである。
【背景技術】
【0002】
燃料電池自動車においては、複数の燃料電池セルを積層して燃料電池スタックが形成され、その燃料電池スタックがフロアパネルの下方等に搭載されている。この種の燃料電池自動車として、燃料電池スタックをサブフレームに取り付け、このサブフレームを車体下方側から車両のサイドフレーム等の車体骨格部材に結合したものが案出されている(例えば、特許文献1等参照)。
【特許文献1】特開2003−182624号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、この従来の燃料電池自動車の場合、燃料電池スタックがフロアパネルの下面側で車幅方向に広範囲に亙って配置されるため、フロアパネル全体の高さの上昇や、乗員の着座スペースの圧迫等の不具合を招く。
【0004】
また、この種の燃料電池自動車においては、燃料電池スタックを車体前後方向に積層することも検討されているが、この場合には、燃料電池スタックの積層方向と直交する車両側方からの荷重入力に対して、燃料電池スタックを確実に保護することが課題となる。
【0005】
そこでこの発明は、フロアパネルの全高の上昇や車室内の着座スペースの圧迫等による車室内の快適性を損なうことなく、しかも、外部からの荷重入力に対して燃料電池スタックを確実に保護し得る燃料電池自動車を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するための手段として、請求項1に記載の発明は、燃料電池スタック(例えば、後述の実施形態における燃料電池スタック12)がサブフレーム(例えば、後述の実施形態におけるサブフレーム40)を介して車両のフロアパネル(例えば、後述の実施形態におけるフロアパネル1)の下方に取り付けられる燃料電池自動車において、車幅方向の略中央位置で前記フロアパネルを左右のフロントシート間で上方に膨出して形成した車両前後方向に延出するセンターコンソール(例えば、後述の実施形態におけるセンターコンソール23)を設け、前記燃料電池スタックを、燃料電池セル(例えば、後述の実施形態における燃料電池セル12a)の高さ方向の寸法が幅方向の寸法に対して長くなり、かつ、燃料電池セルの積層方向が車両前後方向になるようにして前記センターコンソール内に収容するとともに、前記燃料電池スタックを、その重心(例えば、後述の実施形態における重心G)の下方側位置と上方側位置で車体に支持させるようにした。
【0007】
これにより、燃料電池スタックは縦長の断面が車体前後方向に連続するようにセンターコンソール内に配置されるとともに、その重心を挟む下方位置と上方位置で車体に支持されるようになる。
【0008】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記燃料電池スタックの積層方向の端部にエンドプレート(例えば、後述の実施形態におけるエンドプレート12FE,12RE)を設け、燃料電池スタックを車体に支持するための部材(例えば、後述の実施形態における下部ブラケット48,49、上部ブラケット60,61)をこのエンドプレートに取り付けるようにした。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、燃料電池スタックが左右のフロントシート間のセンターコンソールの内側に、燃料電池スタックを縦長の断面が車体前後方向に連続するように配置するため、燃料電池スタックをフロアレベル上側に位置させることで車両の側方からの荷重入力に対し燃料電池スタックを保護することができると共に、センターコンソールによって居住空間と燃料電池スタックとを区分けすることができる。また、フロアパネルの全高の上昇や居住空間内の着座スペースの圧迫を無くすことができるので、居住空間内の快適性を損なうことがない。しかも、重心を挟む下方位置と上方位置で燃料電池スタックを車体に支持させることから、荷重の入力時に燃料電池スタックに大きなモーメントが生じず、このことから外部からの荷重入力に対して燃料電池スタックをより確実に保護することができる。
【0010】
請求項2に記載の発明によれば、燃料電池スタックのエンドプレートに支持部材を取付けるように構成したので、強度的に強い部材であるエンドプレートによって強固に車体に支持することができ、例えば車両の側方からの荷重入力に対し燃料電池スタックが損傷するのを阻止することができ、燃料電池スタックを確実に保護することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
次に、この発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1〜図5に示すように、燃料電池自動車には車体前部から車体後部に亘りフロアパネル1下に車体骨格部材を形成する左右一対のサイドフレーム2が設けられている。車体左右のサイドフレーム2は車体前後方向に沿って配置されており、各サイドフレーム2の外側壁3にはアウトリガー4を介してサイドシル5が接合されている。サイドシル5の後端部はイクステンション6を介してサイドフレーム2の後部に合流するように接続されている。サイドフレーム2には車幅方向に車体骨格部材であるクロスメンバ7,8,9が接続されている。
【0012】
車体前部のモータルーム10にはフロントサブフレーム11が設けられ、ここに燃料電池スタック12に空気を送給するコンプレッサ13と走行用の駆動モータ14からなるポンプモータユニット15が配置されている。
車体後部にはサイドフレーム2に下側から図示しない車輪及びサスペンションを一体で備えたリヤサブフレーム16が取り付けられ、このリヤサブフレーム16には燃料電池スタック12の燃料である水素を貯留する水素タンク17及び蓄電池18が取り付けられている。
このように構成されたサイドフレーム2上であってサイドシル5,5間に亘る部位にフロアパネル1が接合されている。フロアパネル1の前端部は前側に立ち上がりダッシュロア1aへと連なり、フロアパネル1の後端部は前記リヤサブフレーム16の水素タンク17上部を覆う位置まで延出している。
【0013】
フロアパネル1上には、フロントシート20とリヤシート21が配置され、左右のフロントシート20間には、ダッシュロア1aの下端部からリヤシート21の近傍まで延出するセンターコンソール23が車室内上方に膨出するように形成されている。
【0014】
図4に示すように、センターコンソール23の左右の側壁25の付根側の立ち上がり部24には、略三角形状の断面を形成するようにレインフォース26が下面側から接合され、これによってセンターコンソール23の側壁25下端が補強されている。一方、車体幅方向の略中央位置には、閉断面構造の左右一対のセンターフレーム27が車体前後方向に延出して設けられている。このセンターフレーム27の上方にはセンターコンソール23の各側壁25の下端が配置され、各センターフレーム27の上面に前記レインフォース26が結合されることで前記センターコンソール23が支持されている。
【0015】
また、両側のセンターフレーム27の車幅方向外側に位置されている左右のサイドフレーム2とその上面に接続されるフロアパネル1との内側コーナー部分には、車体前後方向に沿った閉断面構造を成す補強フレーム28が接合されている。そして、この左右のサイドフレーム2に一体化された補強フレーム28と、前記各センターフレーム27の下面には後述するサブフレーム40が結合され、このサブフレーム40に搭載された燃料電池スタック12と一部の補機類19がセンターコンソール23内に配置されるようになっている。
【0016】
図5に示すように、サブフレーム40は、前記アウトリガー4に対応した位置に配置され車幅方向に延出する前サブクロスフレーム41と後サブクロスフレーム42を備えている。前後のサブクロスフレーム41,42の間には、これらのサブクロスフレーム41,42の左右の端部同士を接合するサブサイドフレーム43,43が設けられている。このサブサイドフレーム43,43は前記サイドフレーム2の内側壁に沿って補強フレーム28下に配置される。尚、図5中FRはフロント側を示す。
【0017】
各サブサイドフレーム43の内側には前記センターフレーム27の下側に位置するサブセンターフレーム44が車体前後方向に沿って配置されている。このサブセンターフレーム44の前端部は前サブクロスフレーム41に接続され、サブセンターフレーム44の後端部は後サブクロスフレーム42に接合され、サブセンターフレーム44は更に後サブクロスフレーム42よりも後方に延出している。左右のサブセンターフレーム44の後端部は車幅方向に配置されたエンドパイプ45によって連結され、エンドパイプ45の左右の端部と後サブクロスフレーム42の左右の端部は斜めに配置されたガセットパイプ46により接合されている。ガセットパイプ46は、アウトリガー4に対し側部から衝撃荷重が入力された場合には、その衝撃荷重を燃料電池スタック12から遠ざける方向に逃がすように配置されており、側突時の衝撃荷重が燃料電池スタックに作用しづらくなっている。
各サブセンターフレーム44とサブサイドフレーム43との間には前側と後側に中間パイプ47,47が所定間隔をもって接続されている。
【0018】
サブフレーム40上のサブサイドフレーム43と前後のサブクロスフレーム41,42との連結部には、車体側の補強フレーム28に対する取付点Pが設定され、サブセンターフレーム44と前後のサブクロスフレーム41,42との連結部には車体側のセンターフレーム27に対する取付点Pが設定され、エンドパイプ45とガセットパイプ46とサブセンターフレーム44との連結部には車体側のセンターフレーム27に対する取付点Pが設定されている。これら10箇所の取付点P,P,…において、前記サブフレーム40が車体のセンターフレーム27及び補強フレーム28に下方から結合され、サイドフレーム2の上下幅寸法内に収まるようになっている。このように、補強フレーム28の下側であって、サイドフレーム2の上下幅寸法内に収まるようにサブフレーム40が取付けられているので、サブフレーム40の上下幅寸法の分、フロアパネル1の低床化を図ることができる。
【0019】
また、サブフレーム40の前後のサブクロスフレーム41,42間には、左右のサブセンターフレーム44間に納まるように燃料電池スタック12が配置されている。この燃料電池スタック12はサブクロスフレーム41,42に夫々固定した下部ブラケット48,49(図5,図6参照)を介してサブフレーム40に支持固定されている。また、エンドパイプ45と後サブクロスフレーム42には、サブセンターフレーム44間に位置されるように燃料電池スタック12の一部の補機類19が取り付けられている。具体的には、補機類19は下側から酸素系補機類、その上に水素系補機類、更に上に燃料電池スタック12のシステムを管理するECUの順に配置されている。
【0020】
サブフレーム40は、以上のように構成されているが、このサブフレーム40の前後のサブクロスフレーム41,42や左右のサブセンターフレーム44、エンドパイプ45等の構成要素間はボルト結合や溶接等によって結合されている。
【0021】
ところで、燃料電池スタック12は、略長方形状の複数の燃料電池セル12a…を積層して一体ブロック状にしたものであり、積層方向の端部である前端部と後端部には、図6〜図8に示すように金属製のエンドプレート12FE、12REが取り付けられ、このエンドプレート12FE,21REによって積層された燃料電池セル12a…を挟み込んで締め付け固定されている。こうして構成された燃料電池スタック12は前述のようにサブフレーム40に取り付けられるが、このとき燃料電池スタック12は、燃料電池セル12a…の高さ方向の寸法が幅方向の寸法に対して長くなり、かつ、燃料電池セル12aの積層方向が車体前後方向となる。つまり、燃料電池スタック12は縦長の断面が車体前後方向に連続するようにしてサブフレーム40に取り付けられる。
【0022】
燃料電池スタック12は、前後のエンドプレート12FE,21REに下部ブラケット48,19がボルト結合され、この下部ブラケット48,49を介してサブフレーム40の前後のサブクロスフレーム41,42に取り付けられるが、下部ブラケット48,49の結合位置は、図7,図8に示すようにエンドプレート12FE,21REの下縁部であって燃料電池スタック12の重心Gよりも下方位置となっている。
【0023】
一方、サブフレーム40がサイドフレーム2とセンターフレーム27に取り付けられることでセンターコンソール23内に配置された燃料電池スタック12は、図8に示すようにセンターコンソール23の前壁23a内面と後壁23b内面に接合された補強フレーム62に夫々上部ブラケット60,61を介して支持結合される。この各上部ブラケット60,61は、燃料電池スタック12のエンドプレート12FE,21REの各上縁部に結合されるが、この上部ブラケット60,61の結合位置は、燃料電池スタック12の重心Gよりも上方位置となっている。
したがって、燃料電池スタック12はその重心Gを挟む下方位置と上方位置において車体側に支持固定されている。
【0024】
この燃料電池自動車は、以上のように左右のフロントシート20,20間に部分的に膨出したセンターコンソール23内に燃料電池スタック12が収容されるため、フロアパネル1の全体の高さを低く抑え、かつ、居住空間内の着座スペースを圧迫することなく、燃料電池スタック12を居住空間外となるフロアパネル1下にコンパクトに配置することができる。つまり、燃料電池スタック12を配置するために居住空間内に大きく膨出するのはセンターコンソール23部分のみであり、しかも、センターコンソール23部分はその上方にアームレスト等が配置されて乗員にとって居住空間内への膨出が気にならない部分であるため、センターコンソール23の膨出による圧迫感や違和感を乗員に与えることがない。
特に、この燃料電池自動車においては、燃料電池スタック12をフロアレベルの上側に位置させることで車両の側方からの荷重入力に対し燃料電池スタック12を保護することができると共に、センターコンソール23によって居住空間と燃料電池スタック12とを区分けすることができる。
さらに、この実施形態においては、横断面が縦長になるようにして燃料電池スタック12をコンソールボックス23内に収容するようにしているため、車室空間内におけるコンソールボックス23の占有幅をより小さく抑えるのに有利となっている。
【0025】
また、この燃料電池自動車の場合、燃料電池スタック12を支持するサブフレーム40が、フロアパネル1下において車体前後方向に沿う車体左右のサイドフレーム2,2とセンターフレーム27,27に夫々取り付けられているため、車体骨格部材に対して燃料電池スタック12を充分な強度をもって支持させることができる。
【0026】
さらに、この燃料電池自動車においては、燃料電池スタック12が重心Gの下方位置で下部ブラケット48,49を介してサブフレーム40に支持固定されるとともに、重心Gの上方位置において上部ブラケット60,61を介して補強フレーム62に支持固定されているため、外部からの荷重入力時、特に、側方からの荷重入力時に燃料電池スタック12に大きなモーメントが生じることがない。これにより、モーメントの作用による燃料電池スタック12の位置ずれやそれに伴う周囲の部材との干渉等を防止でき、燃料電池スタック12を確実に保護することが可能になる。
【0027】
また、この実施形態の場合、燃料電池スタック12の積層方向の前後端に一体に結合した金属製のエンドプレート12FE,21REに下部ブラケット48,49と上部ブラケット60,61を取り付けるようにしているため、燃料電池スタック12を車体に強固にかつ安定的に固定することができるという利点がある。
【0028】
なお、この発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。例えば、以上の実施形態においては、サブフレーム40の車幅方向の両端部を、補強フレーム28を介してサイドフレーム2に結合するようにしたが、サブフレーム40をサイドフレーム2に直接結合するようにしても良い。
また、以上の実施形態では、燃料電池スタック12の車体前後方向の端部のみを車体側に支持固定するようにしたが、燃料電池スタック12の幅方向の端部も同様にブラケット等を介して車体側に支持固定するようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】この発明の実施形態の車両の側面説明図である。
【図2】この発明の実施形態の車両の平面説明図である。
【図3】この発明の実施形態の車両を裏面から見た斜視図である。
【図4】図2のA−A線に沿うフロアパネルの断面図である。
【図5】この発明の実施形態のサブフレームの平面図である。
【図6】この発明の実施形態の燃料電池スタックの取付部を示す平面図である。
【図7】図6のB−B線に沿う断面図である。
【図8】図6のC−C線に沿う断面図である。
【符号の説明】
【0030】
1…フロアパネル
12…燃料電池スタック
12a…燃料電池セル
12FE,12RE…エンドプレート
23…センターコンソール
40…サブフレーム
48,49…下部ブラケット(車体に支持するための部材)
60,61…上部ブラケット(車体に支持するための部材)
G…重心


【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池スタックがサブフレームを介して車両のフロアパネルの下方に取り付けられる燃料電池自動車において、
車幅方向の略中央位置で前記フロアパネルを左右のフロントシート間で上方に膨出して形成した車両前後方向に延出するセンターコンソールを設け、
前記燃料電池スタックを、燃料電池セルの高さ方向の寸法が幅方向の寸法に対して長くなり、かつ、燃料電池セルの積層方向が車両前後方向になるようにして前記センターコンソール内に収容するとともに、
前記燃料電池スタックを、その重心の下方側位置と上方側位置で車体に支持させたことを特徴とする燃料電池自動車。
【請求項2】
前記燃料電池スタックの積層方向の端部にエンドプレートを設け、燃料電池スタックを車体に支持するための部材をこのエンドプレートに取り付けたことを特徴とする請求項1に記載の燃料電池自動車。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−15591(P2007−15591A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−200192(P2005−200192)
【出願日】平成17年7月8日(2005.7.8)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】