燃料電池装置
【課題】カソードガス通路を形成する通路形成部材を流れるカソードガスを、燃料電池に供給する前に効果的に加熱でき、更に、ガスの流れを損なうことが抑制されている燃料電池装置が提供される。
【解決手段】燃料電池装置は、発電時に相対的に高温となる高温領域と高温領域よりも相対的に低温となる低温領域を形成するスタック2と、カソードガスをスタック2に供給するためのカソードガス通路8とを備える。カソードガス通路8を形成する通路形成部材832の外壁面834は、輻射熱吸収膜88を備えている。輻射熱吸収膜88は、スタック2のうち相対的に高温領域2highに対面すると共に、通路形成部材832が延びる方向に膜状に延設されている。
【解決手段】燃料電池装置は、発電時に相対的に高温となる高温領域と高温領域よりも相対的に低温となる低温領域を形成するスタック2と、カソードガスをスタック2に供給するためのカソードガス通路8とを備える。カソードガス通路8を形成する通路形成部材832の外壁面834は、輻射熱吸収膜88を備えている。輻射熱吸収膜88は、スタック2のうち相対的に高温領域2highに対面すると共に、通路形成部材832が延びる方向に膜状に延設されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池のカソードに供給されるカソードガスが通過する通路形成部材を有する燃料電池装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、スタックを収容する収納容器において、発電に使用されなかった燃料オフガスと空気オフガスとが混合している燃焼排ガスと、発電用空気とを熱交換する燃料電池装置が開示されている。このものによれば、複数のスタック群の間に空気導入路(デリバリー通路)を設け、空気導入路の空気をスタックの発熱で加熱させる。この燃料電池装置によれば、スタックの中間高さの近傍となるように空気噴出孔を空気導入路(デリバリー通路)に設け、スタックの上下方向温度分布を改善し、スタックの耐久性を向上させるようにしている。
【0003】
特許文献2には、空気導入路(デリバリー通路)内の空気流れを、近接する気化部と対向する側に設けることで空気温度を上昇させ、スタックの積層方向温度分布を改善し、発電効率を向上させる燃料電池装置が開示されている。
【0004】
特許文献3には、複数のセルを保持すると共に燃料ガスが流れる通路を形成するセルチューブ管の外周部の一部のみに、セラミックスで形成された厚肉リング状の輻射変換体を設けたスタックの熱交換構造が開示されている。この輻射変換体はセルからの熱輻射を受熱して加熱される。輻射変換体は蓄熱エネルギを蓄積するため、燃料ガス等を予熱させることができる。しかし輻射変換体はバルクであり、厚肉リング状をなしており、蓄熱性を期待できるものの、表出面積の増加、ひいては輻射熱の受熱面積の増加には限界がある。
【0005】
特許文献4には、スタックを収容する発電室を形成する底部に輻射変換体が設けられているスタックモジュールが開示されている。輻射変換体は、空気を透過させ得るように多孔質の熱電材料で形成されている。輻射変換体は、発電室からの輻射熱を吸収して空気を再生加熱させると同時に電力を発生させ、モジュールの電気出力を増加させる。この輻射変換体はその厚みがかなり厚く、バルク状をなしており、蓄熱性を期待できるものの、表出面積の増加、ひいては輻射熱の受熱面積の増加には限界がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010-55917号公報
【特許文献2】特開2010-80152号公報
【特許文献3】特開2003-123827号公報
【特許文献4】特開平9-289030号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1では、空気導入路(デリバリー通路)を流れる空気の予熱には限界がある。更に、スタックの下部の温度が過剰に低下してしまう傾向がある。このためスタックの上部と下部とで温度むらが発生し、スタックにおける発電効率が充分に得られない問題がある。更に特許文献1では、空気導入路(デリバリー通路)には輻射熱吸収膜が設けられていない。
【0008】
特許文献2では、空気導入路(デリバリー通路)には輻射熱吸収膜が設けられていない。
【0009】
特許文献3では、輻射変換体はバルクであり、厚肉リング状をなしており、蓄熱性を期待できるものの、表出面積の増加、ひいては輻射熱の受熱面積の増加には限界がある。このため、輻射変換体と空気とが接触できる時間は極く短時間である。従って、輻射変換体により空気が加熱される時間は極く短時間であり、空気の予熱には限界がある。更には、輻射変換体はその厚みがかなり厚くてバルク状をなすため、ガスの通路側に突出する量が大きい。この場合、ガスが輻射変換体に衝突すると、ガスの流れの円滑性を損なうおそれがある。
【0010】
特許文献4では、この輻射変換体はその厚みがかなり厚く、バルク状をなしており、蓄熱性を期待できるものの、表出面積の増加、ひいては輻射熱の受熱面積の増加には限界がある。このため輻射変換体はバルク状をなしており、膜状ではないため、輻射変換体と空気とが接触できる時間が極く短時間である。従って、輻射変換体により空気が加熱される時間は極く短時間であり、空気の予熱には限界がある。更には、輻射変換体はその厚みがかなり厚くてバルク状をなすため、ガスの通路側に突出する量が大きい。この場合、ガスが輻射変換体に衝突し、ガスの流れの円滑性を損なうおそれがある。
【0011】
本発明は上記した実情に鑑みてなされたものであり、カソードガス通路を形成する通路形成部材を流れるカソードガスを、スタックに供給する前に効果的に加熱でき、更に、輻射熱吸収膜に接触するガスの流れを損なうことが抑制されている燃料電池装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(1)様相1の本発明に係る燃料電池装置は、アノードガスとカソードガスとで発電するとともに、発電時に相対的に高温となる高温領域と高温領域よりも相対的に低温となる低温領域とを形成するスタックと、アノードガスをスタックに供給するためのアノードガス通路と、カソードガスをスタックに供給するためのカソードガス通路とを具備しており、カソードガス通路を形成する通路形成部材の外壁面の少なくとも一部は、スタックに対面すると共にスタックからの輻射熱を吸収する輻射熱吸収膜を備えており、輻射熱吸収膜は、スタックの高温領域に対面すると共に通路形成部材の延びる方向に膜状に延設されている。
【0013】
本様相によれば、カソードガス通路を形成する通路形成部材の外壁面の少なくとも一部は、スタックに対面すると共にスタックからの輻射熱を吸収する輻射熱吸収膜を備えている。輻射熱吸収膜は、スタックの高温領域に対面すると共に、通路形成部材が延びる方向に膜状に延設されている。
【0014】
本様相によれば、輻射熱吸収膜の厚みは膜であるため、バルク体に比較して薄い。しかも、輻射熱吸収膜は、通路形成部材の延びる方向に延設されているため、通路形成部材をカソードガスが流れる方向において延設されている。このため、輻射熱吸収材料がバルク体で形成されている場合に比較して、輻射熱吸収膜は、少ない材料で広面積化されており、しかも、高温のスタックから受熱する輻射熱の熱量を増加できる。このため輻射熱吸収膜が設けられている通路形成部材を効果的に昇温できる。故に、通路形成部材を流れるカソードガスの予熱に有利であり、スタックの発電効率を向上できる。
【0015】
ところで、スタックにおける各部位における温度は、各部位における発電効率に影響を与える。スタック全体の発電効率を高める為には、スタックにおける温度ムラが抑制されていることが好ましい。この点本様相によれば、輻射熱吸収膜は、スタックのうち相対的に高温領域に対面する。このため、スタックの高温領域付近の熱を効率よく通路形成部材の輻射熱吸収膜に伝達できる。換言すると、スタックの高温領域の温度を適度に低下させることができ、スタックの高温領域の過剰高温化が抑制される。このためスタックにおける各部位における温度ムラを抑制させるのに有利である。従って、スタックにおける各部位の発電ムラを抑制させるのに有利である。この意味においてもスタックの発電効率を向上できる。更に本様相によれば、輻射熱吸収膜は、通路形成部材が延びる方向に膜状に延設されているため、バルク体と異なり、ガスの通路に大きく突出しない。このため、通路形成部材を流れるカソードガスの円滑な流れを損なうことが抑制される。
【0016】
(2)様相2の本発明に係る燃料電池装置によれば、上記様相において、通路形成部材の外壁面のうちスタックの低温領域に対面する領域には、輻射熱吸収膜が設けられていない。この場合、スタックの低温領域からの放熱が制限され、スタックの低温領域付近における温度の過剰低下が抑制される。換言すると、スタックの高温領域付近の温度と、スタックの低温領域付近の温度との間において、両者の温度差の増加が抑制される。このためスタック全体に温度ムラを抑制させるのに有利である。この意味においてもスタックの発電効率を向上できる。
【0017】
(3)様相3の本発明に係る燃料電池装置によれば、上記様相において、アノードガス通路を介してスタックに供給するアノードガスを燃料原料から生成させる改質器が設けられており、通路形成部材の外壁面のうち改質器に対面する領域には輻射熱吸収膜が設けられていない。輻射熱吸収膜が設けられている場合には、スタックの高温領域付近の熱を効率よく通路形成部材の輻射熱吸収膜に伝達できる。言い換えると、スタックのうち相対的に高温領域の温度を適度に低下させることができ、スタックの高温領域の過剰高温化を抑制できる。
【0018】
本様相によれば、通路形成部材の外壁面のうち改質器に対面する領域には、輻射熱吸収膜が設けられていない。従って、改質器付近における温度を過剰に低下させることが抑制される。ひいては改質器の温度を改質反応に適するように維持させるのに有利である。故に、改質器における改質反応を効率よく行うことができ、燃料原料を改質させて形成されたアノードガスの組成(水素濃度)の安定化に有利である。
【0019】
(4)様相4の本発明に係る燃料電池装置によれば、上記様相において、高さ方向を矢印H方向とするとき、通路形成部材の外壁面のうち輻射熱吸収膜は、スタックの高温領域に対面するように、矢印H方向の中間領域に設けられており、通路形成部材の外壁面のうち輻射熱吸収膜の少なくとも上方または下方の領域には、輻射熱吸収膜が設けられていない。
【0020】
スタックが発電運転しているとき、スタックにおいて矢印H方向の中間領域では、スタックに置ける熱こもり等の影響で、温度が上昇し易い。これに対して、スタックにおいて矢印H方向の端領域では、放熱等の影響で、温度が当該中間領域に比較して低下し易い。
【0021】
この点について本様相によれば、スタックの高温領域は、スタックにおいて矢印H方向の中間領域に相当する。このように輻射熱吸収膜がスタックの中間領域に対面するように設けられていると、スタックの高温領域から輻射熱吸収膜への放熱が促進される。このため、スタックの高温領域の温度が過剰に高温化することが抑制される。更に本様相によれば、通路形成部材の外壁面のうち輻射熱吸収膜の少なくとも上方または下方の領域には輻射熱吸収膜が設けられていない。スタックの低温領域は、通路形成部材の外壁面のうち輻射熱吸収膜の少なくとも上方または下方の領域に相当する。このため、スタックの低温領域の温度が過剰に低下することが抑制される。
【0022】
このような本様相によれば、スタックの高温領域付近の温度と、スタックの低温領域付近の温度との間において、両者の温度差が抑制される。このためスタックにおける各部位における温度ムラを抑制させるのに有利である。従って、スタック全体において、各部位の発電ムラを抑制させるのに有利である。この意味においてもスタックの発電効率を向上できる。
【0023】
(5)様相5の本発明に係る燃料電池装置によれば、上記様相において、高さ方向を矢印H方向とし、矢印H方向と交差すると共に前記スタックが延びる方向を矢印L方向とするとき、スタックは、電解質膜をアノードおよびカソードで挟んだ構造をもつ燃料電池を矢印L方向に間隔を隔てて並設して形成されており、
通路形成部材の外壁面のうち輻射熱吸収膜は、スタックの前記高温領域に対面するように、矢印H方向の中間領域且つ矢印L方向の中間領域に設けられており、
通路形成部材の外壁面のうち矢印H方向において輻射熱吸収膜の上方または下方の領域には輻射熱吸収膜が設けられておらず、且つ、矢印L方向において輻射熱吸収膜よりも外方の領域には、輻射熱吸収膜が設けられていない。
【0024】
スタックが発電運転しているとき、スタックにおいて矢印H方向の中間領域、および、矢印L方向の中間領域では熱こもり等の影響で温度が上昇し易い。これに対して、スタックにおいて矢印H方向の端領域、および、矢印L方向の端領域では、放熱等の影響で、温度が当該中間領域に比較して低下し易い。
【0025】
この点について本様相によれば、スタックの高温領域は、スタックにおいて矢印H方向の中間領域、且つ、矢印L方向の中間領域に相当する。このように輻射熱吸収膜がスタックの中間領域に対面するように設けられていると、スタックの高温領域の放熱が輻射熱吸収膜により促進される。このため、スタックの高温領域の温度が過剰に高温化することが抑制される。更に本様相によれば、通路形成部材の外壁面のうち輻射熱吸収膜の少なくとも上方または下方の領域には輻射熱吸収膜が設けられていない。通路形成部材の外壁面のうち輻射熱吸収膜の上方または下方の領域は、スタックの低温領域に対面する。このため、スタックの低温領域の放熱が制限され、スタックの低温領域の温度が過剰に低下することが抑制される。
【0026】
このような本様相によれば、スタックの高温領域付近の温度と、スタックの低温領域付近の温度との間において、両者の温度差が抑制される。このためスタックにおける各部位における温度ムラを抑制させるのに有利である。従って、スタック全体において、各部位の発電ムラを抑制させるのに有利である。この意味においてもスタックの発電効率を向上できる。
【発明の効果】
【0027】
本発明に係る燃料電池装置によれば、カソードガス通路を形成する通路形成部材の外壁面は、輻射熱吸収膜を備えている。輻射熱吸収膜は、スタックの高温領域に対面すると共に、通路形成部材が延びる方向に膜状に延設されている。このように輻射熱吸収膜は膜であるため、バルク体に比較して薄い。しかも、輻射熱吸収膜は、通路形成部材の外壁面において通路形成部材の延びる方向に膜状に延設されているため、通路形成部材に沿ってカソードガスの流れる方向において延設されている。このため輻射熱吸収膜は少ない材料で広面積化され、高温のスタックから受熱する輻射熱の熱量を増加できる。このため輻射熱吸収膜が設けられている通路形成部材を効果的に昇温できる。故にカソードガスの予熱に有利であり、スタックの発電効率を向上できる。
【0028】
本発明に係る燃料電池装置によれば、輻射熱吸収膜はスタックの高温領域に対面する。このため、スタックの高温領域付近の熱を効率よく通路形成部材の輻射熱吸収膜に伝達できる。言い換えると、スタックの高温領域の放熱性を促進させ、スタックの高温領域の温度を適度に低下させることができる。即ち、スタックの高温領域の過剰高温化が抑制される。このためスタックにおける各部位における温度ムラを抑制させるのに有利である。従って、スタックにおける各部位の発電ムラを抑制させるのに有利である。この意味においてもスタックの発電効率を向上できる。
【0029】
更に輻射熱吸収膜は、通路形成部材の延びる方向に膜状に延設されているため、輻射熱吸収材料がバルク体で形成されている従来技術とは異なり、ガスの通路に大きく突出しない。このため輻射熱吸収膜に沿って流れるガスの円滑な流れを損なうことが抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】実施形態1に係り、燃料電池装置の断面図である。
【図2】実施形態1に係り、スタック付近を模試的に示す断面図である。
【図3】通路形成部材付近を示す斜視図である。
【図4】通路形成部材付近を示す断面図である。
【図5】実施形態2に係り、輻射熱吸収膜が積層されている通路形成部材の斜視図である。
【図6】実施形態3に係り、輻射熱吸収膜が積層されている通路形成部材の斜視図である。
【図7】実施形態4に係り、通路形成部材付近を示す断面図である。
【図8】実施形態5に係り、通路形成部材からスタックにカソードガスを供給させる形態を模式的に示す図である。
【図9】実施形態6に係り、輻射熱吸収膜を有する通路形成部材およびスタックを示す図である。
【図10】実施形態6に係り、輻射熱吸収膜を有する通路形成部材およびスタックを示す図である。
【図11】実施形態7に係り、輻射熱吸収膜が積層されている通路形成部材の板体の断面図である。
【図12】実施形態8に係り、輻射熱吸収膜が積層されている通路形成部材の板体の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
スタックは複数の燃料電池で形成されている。スタックのアノードにアノードガスが供給され、カソードにカソードガスが供給されて、スタックは発電する。燃料電池は、固体酸化物形燃料電池、りん酸形燃料電池、溶融炭酸塩形燃料電池、高分子電解質膜形燃料電池でも良い。発電運転時におけるスタックの温度は、80℃以上、100℃以上が好ましく、300℃以上でも良い。
【0032】
発電時には、スタックにおいて、相対的に高温となる高温領域と、高温領域よりも相対的に低温となる低温領域とが形成される。『スタックの高温領域』とは、輻射熱吸収膜が設けられていない場合において、スタックの温度が相対的に高温となる領域を意味する。『スタックの低温領域』とは、輻射熱吸収膜が設けられていない場合において、スタックの温度が高温領域に比較して相対的に低温となる領域を意味する。閾値温度に基づいて閾位置をスタックにおいて決定し、閾位置に基づいて『スタックの高温領域』および『スタックの低温領域』を識別することができる。閾値温度は、スタックにおける最高温度と最低温度との間における温度にできる。
【0033】
アノードガス通路はアノードガスをスタックのアノードに供給させるための通路である。アノードガスはアノードにおいて発電反応に使用されるガスである。カソードガス通路は、カソードガスをスタックのカソードに供給させるための通路である。カソードガスはカソードにおいて発電反応に使用されるガスであり、一般的には空気、酸素含有ガス、酸素ガスを例示できる。カソードガス通路を形成する通路形成部材の外壁面は、輻射熱吸収膜を備えている。輻射熱吸収膜は、スタックのうち相対的に高温領域に対面すると共に、通路形成部材の延びる方向(つまりカソードガスが流れる方向)に膜状に延設されている。膜電極接合体の厚みは適宜設定されるが、2ミリメートル以下、1ミリメートル以下にできる。更に500マイクロメートル以下、300マイクロメートル以下にできる。
【0034】
次の(i)および(ii)の形態が例示される。
【0035】
(i)通路形成部材の外壁面のうち輻射熱吸収膜が設けられている表面は、通路形成部材の外壁面のうち輻射熱吸収膜が設けられていない領域の表面よりも粗面化されている。一般的には、輻射熱吸収膜が粗面化されていると、輻射熱の散乱が増加し、輻射熱吸収膜による輻射熱の吸収性が良好となると言われている。
【0036】
この点について、通路形成部材の外壁面のうち輻射熱吸収膜が設けられている表面は、通路形成部材の外壁面のうち輻射熱吸収膜が設けられていない領域の表面よりも粗面化されている形態が例示される。この場合、輻射熱吸収膜の表面が粗面化され、輻射熱の吸収率を高めることができる。このため、スタックの高温領域付近の熱を効率よく通路形成部材の輻射熱吸収膜に伝達できる。言い換えると、スタックの高温領域の放熱を促進させ、スタックの高温領域の温度を適度に低下させることができ、スタックの高温領域の過剰高温化が抑制される。このためスタックにおける各部位における温度ムラを抑制させるのに有利である。
【0037】
(ii)輻射熱吸収膜の中央領域の厚みは、輻射熱吸収膜の縁領域の厚みより相対的に厚くできる。輻射熱吸収膜の厚みが過剰に薄いと、輻射熱の吸収が低下する傾向がある。輻射熱吸収膜の厚みは、輻射熱の吸収性に影響を与える。輻射熱吸収膜の厚みが厚いと、輻射熱の吸収が良好となる。この点についてスタックの高温領域においては、輻射熱吸収膜の厚みは厚くすることができる。このためスタックの高温領域付近の熱を効率よく通路形成部材の輻射熱吸収膜に伝達できる。言い換えると、スタックの高温領域付近の放熱が促進され、スタックの高温領域付近の温度を効率よく低下させることができる。このためスタックにおける各部位における温度ムラを抑制させるのに有利である。従って、スタックにおける各部位の発電ムラを抑制させるのに有利である。この意味においてもスタックの発電効率を向上できる。
【0038】
本発明の実施形態について説明する。
(実施形態1)
図1〜図4は実施形態1を示す。本実施形態は固体酸化物型の燃料電池装置に適用した例を示す。図1に示すように、燃料電池装置は、スタック2と、スタック2の上側に配置された改質器4と、スタック2の上面と改質器4の下面との間に形成された燃焼用空間5と、スタック2の外側に配置された断熱材料で形成された断熱層6と、断熱層6の外側に配置された排気ガス通路7と、排気ガス通路7の外側に配置されたカソードガス通路8とを有する。
【0039】
図2は、スタック2および改質器4付近の概念図を示す。図2に示すように、スタック2は、複数の燃料電池20を通路22rを介して一方向(矢印L方向)に並設することにより形成されている。図2から理解できるように、燃料電池20は、アノードガスが供給される通路21rをもつ燃料極として機能するアノード21と、カソードガスが供給される酸化剤極(空気極)として機能するカソード22と、アノード21およびカソード22で挟まれた固体酸化物を母材とする膜状の電解質膜23とを有する。電解質膜23を形成する固体酸化物は、スタック2の作動温度において酸素イオンを伝導させる性質をもつものであり、YSZ等のジルコニア系、ランタンガレート系を例示できる。アノード21の材質は、ニッケル−セリア系のサーメットを例示される。カソード22の材質は、サマリウムコバルタイト、ランタンマンガナイトを例示できる。但し、アノード21、カソード3および電解質膜23の材質は、上記に限定されるものではない。なお、排気ガス通路7およびカソードガス通路8は、スタック2の長手方向(図2の矢印L方向,燃料電池20の並設方向)に沿って延設されている。
【0040】
図2に示すように、改質器4は、改質水を水蒸気化させる蒸発部40と、水蒸気を利用して燃料原料を改質される改質部42とを備えている。蒸発部40は、改質水系から蒸発部40に供給される液相状の改質水を水蒸気化させる。改質部42は、改質反応を促進させる改質触媒を担持する粒子状のセラミックス材を有する。セラミックス材はハニカム構造体でも良い。図2に示すように、改質部42は、蒸発部40の下流に設けられており、蒸発部40で生成された水蒸気でガス状または液状の炭化水素系の燃料原料を改質させてアノードガスを生成させる。アノードガスは水素ガスまたは水素含有ガスである。なお、定格運転におけるスタック2の作動温度は、例えば450〜1100℃の範囲内、殊に550〜800℃の範囲内であることが好ましい。
【0041】
図1に示すように、カソードガス通路8は、入口80と、入口80から延びる入口通路81と、入口通路81の上端から横方向にのびる第1通路82と、第1通路82の先端から下向きに延びる第2通路83と、第2通路83の下端側に形成された出口84とをもつ。第2通路83および出口84は、金属(例えば炭素鋼、合金鋼(ステンレス鋼を含む)等の鉄系)で形成された薄い偏平箱形状の通路形成部材832で形成されている。
【0042】
図3に示すように、通路形成部材832は、第2通路83を介して互いに対向する金属製の板体836,837と、板体836,837の下端部同士を繋ぐ底板838と、側板839とを備える。図1に示すように、更に、カソードガス通路8は、殻状をなす内側部材801と、外箱状をなす外側部材850とを備える。なお、図3に示すようにスタック2の高さ方向を矢印H方向とし、矢印H方向と交差(直交)する方向を矢印L方向とする。上方を矢印H1として示す。
【0043】
図1に示すように、排気ガス通路7は、金属製の内側部材801と金属製の排気通路形成部材700とで形成されている。排気通路形成部材700は、スタック2を収容して発電する発電室720を形成する。
【0044】
図1に示すように、排気ガス通路7は、排ガスを改質器4に接触させ得る接触通路70と、接触通路70の下流に連通するように延設された排出通路73とを有する。排出通路73は入口72および出口74(排気ガス出口)を有する。図1に示すように、排出通路73において、相対的に高温側の排気ガスは矢印A1,A2,A3方向に流れる。なお、スタック2は、カソードガス通路8の通路形成部材832を挟むように2組設けられている(図1参照)。但しこれに限定されるものではない。
【0045】
図2に示すように、スタック2の下部にはアノードガスマニホルド24が配置されている。アノードガスマニホルド24は、改質部42で生成されたアノードガスをアノードガス通路25を介して燃料電池20のアノード21に案内する。ここで、スタック2、カソードガス通路8、排気ガス通路7、改質器4およびアノードガスマニホルド24、燃焼用空間5は、燃料電池装置の長手方向(図2および図3に示す矢印L方向,燃料電池20の並設方向)に沿って延設されている。
【0046】
次に、スタック2が発電運転するときについて、説明を加える。この場合、図2に示す燃料原料ポンプ90(燃料原料搬送源)が駆動するため、炭化水素系のガス状または液状の燃料原料(都市ガス等)が燃料原料供給通路92を介して改質器4の蒸発部40に供給される。また改質水ポンプ93(水搬送源)が駆動し、図略のタンクの改質水が改質水供給通路94を介して蒸発部40に供給される。ここで、燃焼火炎50で蒸発部40および改質部42は加熱されているため、蒸発部40は液相状の改質水を水蒸気化させる。生成された水蒸気は改質部42に供給される。改質部42は燃料原料を水蒸気改質させ、水素を含むアノードガスを生成させる。燃料原料がメタン系である場合には、水蒸気改質ではアノードガスの生成は、次の(1)式に基づくと考えられている。固体酸化物形の燃料電池20では、H2の他にCOも燃料となり得る。
【0047】
(1)…CH4+2H2O→4H2+CO2
CH4+H2O→3H2+CO
CnHmが炭化水素の一般的な化学式であるとすると、水蒸気改質の一般式は次の(1−1)式のようになる。n=1、m=4であると、メタンの水蒸気改質の式が得られる。
(1−1)…CnHm+nH2O→nCO+[(m/2)+n]H2
生成された水素を含有するアノードガスは、アノードガス通路25およびアノードガスマニホルド24を介して、燃料電池20のアノード21に供給されて発電に使用される。
【0048】
また図1において、カソードガスポンプ95(カソードガス搬送源)が駆動するため、空気であるカソードガスが、矢印C1方向,矢印C2方向,矢印C3方向,矢印C4方向,矢印C5方向,矢印C6方向に沿って、カソードガス通路8の入口通路81、第1通路82および第2通路83を流れ、カソードガス通路8の先端の出口84から発電室720に供給され、カソード22の発電反応に使用される。スタック2のカソードに供給されなかったカソードガスは、発電室720内の通路722(図4参照)等を上昇して燃焼用空間55および改質器4側に向かう。従って、通路722には、ガス流れの障害物が存在しないことが好ましい。
【0049】
改質部42で生成されたアノードガスは、アノードガスマニホルド24からスタック2のアノード21の通路21rを上向きに通過しつつ、アノードの発電反応に使用される。これによりスタック2と電力負荷とが電気的に接続されている状態で、スタック2は発電する。
【0050】
発電反応においては、水素含有ガスが供給されるアノード21では、基本的には(2)の反応が発生すると考えられている。酸素を含む空気が供給されるカソード22では、基本的には(3)の反応が発生すると考えられている。カソードにおいて発生した酸素イオン(O2−)がカソード22からアノード21に向けて電解質膜23(酸素イオン伝導体,イオン伝導体)を伝導する。
【0051】
(2)…H2+O2−→H2O+2e−
COが含まれている場合には、CO+O2−→CO2+2e−
(3)…1/2O2+2e−→O2−
さて、上記した発電反応後のアノードオフガスは、未反応の燃焼成分(水素)を含有している。アノードオフガスは、スタック2のアノード21の通路21rの上部から燃焼用空間5に排出される(図2参照)。この結果、燃焼用空間5において、アノードオフガスは、カソードオフガスおよび/または発電室720のカソードガスにより燃焼し、燃焼火炎50を形成する。燃焼火炎50により、改質部42および蒸発部40が加熱される。これにより改質部42における改質反応が維持され、蒸発部40において水蒸気生成反応が維持される。
【0052】
上記したように燃焼用空間5において燃焼した後の排気ガスは、図1に示すように、排気ガス通路7の入口72から排出通路73に進入し、下向き(矢印A1,A2,A3方向)に流れ、出口74、排出口74xから吐出される。ここで、排気ガス通路7の排出通路73を下向きに流れる相対的に高温の排気ガスと、カソードガス通路8の入口通路81を上向き(排出通路73における排気ガスの流れ方向と反対方向,矢印C1〜C6方向)に流れる相対的に低温のカソードガスとが、対向流として、互いに熱交換し、熱交換器7Xを形成する。よって排気ガスが冷却されると共に、スタック2に供給される直前のカソードガスが予熱される。このように予熱されたカソードガスが、カソードガス通路8の第1通路82,第2通路83,出口84を経て、つまり矢印C1,C2,C3,C4,C5,C6方向に流れ、出口84から発電室720に供給されるため、スタック1の発電効率が高まる。
【0053】
さて要部構成について説明する。図4は、カソードガス通路8を形成する通路形成部材832付近の断面を示す。このような本実施形態によれば、図4に示すように、スタック2において、相対的に高温となる高温領域2highが存在する。更に、高温領域2highよりも相対的に低温となる低温領域2lowが存在する。具体的には、スタック2において、スタック2の高さ方向(矢印H方向)の全高をHallとし、スタック2の高さ方向の中央部を閾位置2mとするとき、閾位置2mよりも上の領域は、相対的に高温となる高温領域2highとなると考えることができる。スタック2において、スタック2の高さ方向の閾位置2mよりも下の領域は、高温領域2highよりも低温となる低温領域2lowとなると考えることができる。高温領域2highと低温領域2lowとの温度差は、スタック2の種類、スタック2の発電条件等によっても相違するが、例えば、20〜120℃の範囲内、30〜70℃の範囲内と考えられる。
【0054】
本実施形態によれば、図4に示すように、通路形成部材832を構成する金属(例えば炭素鋼、ステンレス鋼等の合金鋼等の鉄系)製の板体836,837の外壁面834には、輻射熱吸収膜88が膜状に積層されている。輻射熱吸収膜88は、通路形成部材832の母材(炭素鋼系、合金鋼系等の鉄系)よりも輻射熱に対して高い吸収率を有する。吸収率は前記母材よりも高く、0.7以上、0.8以上が好ましい。図4に示すように、輻射熱吸収膜88は、スタック2のうち相対的に高温となる高温領域2highに対面すると共に、通路形成部材832の矢印H方向に延びる方向(即ち、カソードガスが通過する方向)に沿って膜状に延設されている。更に、図3に示す輻射熱吸収膜88は矢印L方向に沿っても延設されている。
【0055】
このような本実施形態によれば、輻射熱吸収膜88の厚みは膜であるため、バルク体に比較して薄い。しかも、輻射熱吸収膜88は、通路形成部材832の延びる方向(カソードガスが通過する方向)に沿って延設されている。このため輻射熱吸収膜88は、少ない輻射熱吸収材料で、通路形成部材832においてカソードガスの通過する方向において広面積化されている。よって、スタック2の発電運転において、スタック20の高温領域2highから放射された輻射熱を受熱する単位時間あたりの受熱熱量を増加できる。このため輻射熱吸収膜88が設けられている通路形成部材832を効果的に昇温できる。故に、カソードガスがスタック2に供給される前において、カソードガスを予熱させるのに有利であり、スタック2の発電効率を向上できる。
【0056】
上記した輻射熱吸収膜88は、輻射熱に対して高い吸収率をもつ高吸収率物質を用いて形成されていることが好ましい。高吸収率物質は一般的には、輻射熱に対して高い吸収率をもつ粉末粒子の集合体で形成できる。発電運転中で高温に加熱されているスタック2が放射する波長に対して、吸収率は0.6以上、0.7以上が好ましい。特に0.8以上、0.9以上が好ましい。完全黒体の吸収率は1とする。高吸収率物質の色調は、黒色、黒色に近いことが好ましい。この場合、黒色、黒色に近いセラミックス、金属が例示される。高吸収率物質はスタック2の発電運転の温度に対して耐久性を有することが好ましい。かかる観点から酸化物系、炭化物系、窒化物系、硼化物系を例示できる。具体的には、AlN系、SiC系、四三酸化鉄(鉄黒)系、モリブデン酸化物系、チタン酸化物系、窒化ケイ素系、マイカ系を例示できる。SiCはα−SiC、β−SiCを例示できる。なお、ファインセラミックスの多くは白系・黒系の色をしているが、顔料を加えることでさまざまな黒色を作り出すことも可能である。
【0057】
輻射熱吸収膜88においては、高吸収率物質で形成されている粉末粒子自体が焼き付け、焼結等により固結されて一体化されていても良いし、あるいは、粉末粒子自体が溶射等により固結されて一体化されていても良いし、あるいは、粉末粒子自体が無機バインダ等のバインダにより一体化されていても良い。粉末粒子のサイズは特に制限されないが、2〜500マイクロメートルの範囲を例示できる。輻射熱吸収膜88の厚みtは特に制限されないが、下限値は適宜設定できるが、10マイクロメートル、50マイクロメートル、100マイクロメートルを例示できる。厚みの上限値は適宜設定できるが、2ミリメートル、1ミリメートル、500マイクロメートルを例示できる。
【0058】
また、スタック2における各部位における温度は、各部位における発電効率に影響を与える。このためスタック2における温度ムラは抑制されていることが好ましい。この点本実施形態によれば、通路形成部材832の外壁面834において、輻射熱吸収膜88は、スタック2のうち相対的に高温となる高温領域2highに対面する。このため、スタック2の高温領域2high付近の熱を効率よく通路形成部材832の輻射熱吸収膜88に伝達できる。言い換えると、スタック2の高温領域2highの放熱性を促進でき、スタック2の高温領域2highの温度を適度に低下させることができ、スタック2の高温領域2highの過剰高温化を抑制できる。このためスタック2における各部位における温度ムラを抑制させるのに有利である。従って、スタック2における各部位の発電ムラを抑制させるのに有利である。この意味においてもスタック2の発電効率を向上できる。
【0059】
更に、輻射熱吸収膜88は、通路形成部材832の延びる方向(矢印H方向および矢印L方向)に膜状に延設されているため、輻射熱吸収材料がバルク体で形成されている場合と異なり、ガスを通過させる通路722(図4)側に大きく突出しない。このため、通路形成部材832の輻射熱吸収膜88付近を流れるガスの円滑な流れを損なうことが抑制される。
【0060】
なお本実施形態によれば、図4から理解できるように、輻射熱吸収膜88は通路形成部材832の外壁面834に積層されて形成されているものの、通路形成部材832の内壁面832iには形成されていない。この場合、通路形成部材832の外壁面834に積層されている輻射熱吸収膜88がスタック1の高温領域2highから受熱した熱量を通路形成部材832の全体に分配させるのに有利である。この場合、通路形成部材832を矢印C5方向に流れるカソードガスを通路形成部材832の全体において効率よく予熱させるのに貢献できる。
【0061】
もし、輻射熱吸収膜が通路形成部材832の外壁面834および通路形成部材832の内壁面832iの双方に形成されている場合には、内壁面832iに形成されている輻射熱吸収膜から第2通路83側への放熱が促進されるため、通路形成部材832の全体を昇温させるためには好ましくないと考えられる。
【0062】
加えて、輻射熱吸収膜88は通路形成部材832の内壁面832iに形成されていないため、第2通路83の流路断面積が小さな場合でも、第2通路83の流路断面積が輻射熱吸収膜により小さくなることが抑制される。
【0063】
更に本実施形態によれば、図4から理解できるように、通路形成部材832の外壁面834において、スタック2の低温領域2lowに対面する領域832lowには、輻射熱吸収膜88が設けられていない。この場合、スタック2のうち低温領域2low付近の過剰放射が抑制され、スタック2の低温領域2low付近における温度の過剰低下が抑制される。換言すると、スタック2の高温領域2high付近の温度と低温領域2low付近の温度との間において、両者の温度差が小さくされる。このためスタック2における各部位における温度ムラを抑制させるのに有利である。従って、スタック2における各部位の発電ムラを抑制させるのに有利である。この意味においてもスタック2の発電効率を向上できる。
【0064】
更に本実施形態によれば、図4に示すように、スタック2に供給するアノードガスを燃料原料から生成させる改質器4が設けられている。通路形成部材832の外壁面834において、改質器4の側面4sに対面する対面領域835には輻射熱吸収膜88が設けられていない。このため改質器4の側面4sからの放熱が過剰とならない。従って、改質器4付近における温度を過剰に低下させることが抑制される。ひいては改質器4の温度を改質反応に適するように高温に維持させるのに有利である。故に、改質器4における改質反応を効率よく行うことができ、燃料原料を改質させて形成されたアノードガスの組成(水素濃度)の安定化に有利である。もし通路形成部材832の対面領域835に輻射熱吸収膜88が設けられている場合には、改質器4の側面4sからの放熱が過剰となり、改質器4の温度が適温領域から低下し、水蒸気改質に影響を与えるおそれがある。
【0065】
(実施形態2)
図5は実施形態2を示す。本実施形態は実施形態1と基本的には同様の構成、同様の作用効果を有する。実施形態1とは寸法関係が若干相違する。図5に示すようにスタック2の高さ方向を矢印H方向とする。矢印H方向と交差(直交)すると共にスタックの延びる方向を矢印L方向とする。図5に示すように、カソードガスを矢印C5方向に向けて通過させる通路形成部材832は、矢印H方向および矢印L方向にそれぞれ延設されている。
【0066】
図5に示すように、通路形成部材832は、カソードガスを矢印C5方向に通過させる第2通路83を区画する金属製の板体836,837を備えている。板体836,837の外壁面834には、スタック2の高温領域に対面するように輻射熱吸収膜88が積層されている。輻射熱吸収膜88は、矢印L方向に沿って通路形成部材832の一端832eから他端832fに向けてほぼ全長に延設されている。図5に示すように、通路形成部材832の外壁面834において、輻射熱吸収膜88の上方の領域834u(図1に示す改質器4の側面4sに対面する領域)、および、下方の領域834dには、輻射熱吸収膜88が設けられていない。即ち、図5に示すように、通路形成部材832の外壁面834のうちスタック2の低温領域に対面する領域832lowには、輻射熱吸収膜88が積層されていない。その理由としては、スタック2の低温領域2lowからの放熱を抑制させ、スタック2の低温領域2lowの温度をできるだけ高めに維持させるためである。更に、図5に示すように、通路形成部材832の外壁面834のうち改質器4に対面する対面領域835には、輻射熱吸収膜88が積層されていない。その理由改質器4の温度をできるだけ高温に維持させるためである。
【0067】
(実施形態3)
図6は実施形態3を示す。本実施形態は実施形態1,2と基本的には同様の構成、同様の作用効果を有する。以下、相違する部分を中心として説明する。図6に示すようにカソードガスを通過させる通路形成部材832は、矢印H方向および矢印L方向にそれぞれ延設されている。通路形成部材832の金属製の板体836,837の外壁面834には、輻射熱吸収膜88が積層されている。通路形成部材832の外壁面834において、輻射熱吸収膜88は、スタック2のうち相対的に高温となる高温領域2highに対面するように、通路形成部材832の矢印H方向の中間領域、且つ、矢印L方向の中間領域に設けられている。
【0068】
ここで、スタック2が発電運転しているとき、スタック2において矢印H方向の中間領域、矢印L方向の中間領域では、熱こもり等の影響でスタック2の温度が上昇し易い。これに対して、スタック2において矢印H方向の端領域、矢印L方向の端領域では、放熱等の影響で、温度は中間領域に比較して低下し易い。
【0069】
本実施形態によれば、図6に示すように、通路形成部材832の板体836,837の外壁面834において、輻射熱吸収膜88の上方の領域834uまたは下方の領域834dには、輻射熱吸収膜88が設けられていない。即ち、通路形成部材832の外壁面834においてスタック2の低温領域に対面する領域832lowには、輻射熱吸収膜88が積層されていない。更に、通路形成部材832の外壁面834において改質器4に対面する対面領域835には、輻射熱吸収膜88が積層されていない。更に、図6に示すように、輻射熱吸収膜88は、矢印L方向において通路形成部材832の一端832e、および、他端832fには形成されていない。
【0070】
このような本実施形態によれば、スタック2の高温領域付近の温度と低温領域付近の温度との間における温度差が小さくされる。このためスタック2における各部位における温度ムラを抑制させるのに有利である。従って、スタック2における各部位の発電ムラを抑制させるのに有利である。この意味においてもスタック2の発電効率を向上できる。
【0071】
(実施形態4)
図7は実施形態4を示す。本実施形態は実施形態1,2,3と基本的には同様の構成、同様の作用効果を有する。以下、相違する部分を中心として説明する。図7に示すように、カソードガス通路8を形成する通路形成部材832の板体836,837の外壁面834に、輻射熱吸収膜88が積層されている。輻射熱吸収膜88は、スタック2のうち相対的に高温となる高温領域に対面する。輻射熱吸収膜88は、高さ方向(矢印H方向)において間隔αを介して複数個に分断されている。隣設する輻射熱吸収膜88間では、通路形成部材832の金属製の板体836,837の外壁面834の母材が露出している。輻射熱吸収膜88がスタック2の輻射熱を吸収する度合が高いため、スタック2の高温領域2highが過剰に冷却されてしまう場合には、輻射熱吸収膜88を広面積化させるのでなく、図7に示すように分断させることが好ましい。更に、図7に示すように、輻射熱吸収膜88は、矢印L方向において通路形成部材832の一端832e、および、他端832fには形成されていない。
【0072】
なお本実施形態によれば、輻射熱吸収膜88は矢印H方向において複数個に分断されているが、輻射熱吸収膜88は矢印L方向において複数個に分断されていても良い。他の実施形態についても輻射熱吸収膜88を分断させても良い。
【0073】
(実施形態5)
図8は実施形態5を示す。本実施形態は実施形態1〜4と基本的には同様の構成、同様の作用効果を有する。以下、相違する部分を中心として説明する。図8に示すように、通路形成部材832の外壁面834のうち、スタック2の高温領域2highに対面する領域には、厚みt1をもつ第1輻射熱吸収膜88aが積層されている。外壁面834のうち、スタック2の低温領域2lowに対面する領域に832lowには、厚みt2(t2<t1)をもつ第2輻射熱吸収膜88bが積層されている。輻射熱吸収膜88a,88bの厚みは、輻射熱の吸収性に影響を与える。通路形成部材832の外壁面834において改質器4に対面する対面領域835には、輻射熱吸収膜が積層されていない。改質器4の温度をできるだけ高温に維持させるためである。
【0074】
(実施形態6)
図9および図10は実施形態6を示す。本実施形態は前記した実施形態と基本的には同様の構成、同様の作用効果を有する。以下、相違する部分を中心として説明する。図9に示すように、スタック2の両側には、カソードガスを通過させる第2通路83をもつ通路形成部材832A,832Bが形成されている。通路形成部材832A,832Bは、互いに対向する金属製の板体836,837と、金属製の底板838とをそれぞれ有する。板体836,837は、カソードガスをスタック2に向けて矢印C6方向に吹き出す出口84をもつ。
【0075】
図10に示すように、スタック2は、複数の燃料電池20を通路22rを介して一方向(矢印L方向)に並設させることにより形成されている。図9および図10から理解できるように、輻射熱吸収膜88は、スタック2のうち相対的に高温となる高温領域2highに対面する。このため輻射熱吸収膜88は、矢印H方向の中間領域、且つ、矢印L方向の中間領域に設けられている。図9に示すように、通路形成部材832の外壁面834において改質器4に対面する対面領域835には、輻射熱吸収膜88が積層されていない。このため、改質器4の温度を改質反応に適するように高めに維持させるのに有利である。なお、図9では、輻射熱吸収膜88の厚みは強調されて図示されている。
【0076】
(実施形態7)
図11は実施形態7を示す。本実施形態は前記した実施形態と基本的には同様の構成、同様の作用効果を有する。以下、相違する部分を中心として説明する。輻射熱吸収膜88の厚みは、輻射熱の吸収性に影響を与える。輻射熱吸収膜88の厚みが過剰に薄いと、輻射熱吸収膜88が島状膜の集合となり易く、輻射熱の吸収を低下させる傾向がある。輻射熱吸収膜88の厚みが確保されていると、輻射熱の吸収が良好となる。この点について本実施形態によれば、図11に示すように、輻射熱吸収膜88の中央部88mの厚みt3は、輻射熱吸収膜88の縁88eの厚みt4より相対的に厚い。
【0077】
スタック2のうち相対的に高温領域においては、輻射熱吸収膜88の厚みは厚くなる。このためスタック2のうち相対的に高温となる高温領域付近の熱を、効率よく通路形成部材832の輻射熱吸収膜88に伝達できる。換言すると、スタック2の高温領域の温度を効率よく低下させることができる。このためスタック2における各部位における温度ムラを抑制させるのに有利である。従って、スタック2における各部位の発電ムラを抑制させるのに有利である。この意味においてもスタック2の発電効率を向上できる。なお本実施形態を他の実施形態に適用しても良い。
【0078】
(実施形態8)
図12は実施形態8を示す。本実施形態は実施形態1〜7と基本的には同様の構成、同様の作用効果を有する。便宜上、図12では矢印H方向を横方向として図示する。以下、相違する部分を中心として説明する。図12に示すよう通路形成部材832の板体836,837の外壁面834の表面834xには、輻射熱吸収膜88が積層されている。当該外壁面834の表面834yには輻射熱吸収膜88が積層されていない。表面834xは表面834yよりも粗面化されている。この場合、輻射熱吸収膜88が積層される前にブラスト処理により粗面化できる。この場合、通路形成部材832の板体836,837のうち輻射熱吸収膜88が積層されるべき板部分に、ショット、グリッド、砂粒等の微小投射剤を投射させることができる。当該板体836,837のうち輻射熱吸収膜88を積層させない領域にはマスキングすることが好ましい。
【0079】
一般的には、輻射熱吸収膜88が粗面化されていると、輻射熱の散乱が増加し、輻射熱吸収膜88による輻射熱の吸収性が良好となると言われている。この点について本実施形態によれば、通路形成部材832の外壁面834のうち輻射熱吸収膜88が設けられている表面834xは、通路形成部材832の外壁面834のうち輻射熱吸収膜88が設けられていない領域の表面834yよりも粗面化されている。輻射熱吸収膜88の表面834xが粗面化され、輻射熱の吸収率を高めることができる。このため、燃料電池のうち相対的に高温領域付近の熱を、効率よく通路形成部材832の輻射熱吸収膜88に伝達できる。言い換えると、スタック2のうち相対的に高温領域の温度を効率よく低下させることができる。このため燃料電池における各部位における温度ムラを抑制させるのに有利である。なお本実施形態を他の実施形態に適用しても良い。
【0080】
(その他)
本発明は上記し且つ図面に示した実施形態のみに限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施できる。実施形態1では、スタック2の高さ方向の中央部を閾位置2mとし、閾位置2mよりも上の領域は高温領域2high、閾位置2mよりも下の領域は低温領域2lowとされているが、これに限らず、スタック2の形状や構造によっては変更しても良い。即ち、スタック2の上端から1/3の位置を閾位置2mとし、閾位置2mよりも上の領域は高温領域2high、閾位置2mよりも下の領域は低温領域2lowとされていても良い。あるいは、スタック2の上端から2/3の位置を閾位置2mとし、閾位置2mよりも上の領域は高温領域2high、閾位置2mよりも下の領域は低温領域2lowとされていても良い。あるいは、スタック2の上端から3/4の位置を閾位置2mとし、閾位置2mよりも上の領域は高温領域2high、閾位置2mよりも下の領域は低温領域2lowとされていても良い。
【0081】
実施形態1では、通路形成部材832の外壁面834のうち改質器4の側面4sに対面する対面領域835には、輻射熱吸収膜88が設けられていないが、これに限らず、改質器4の温度が維持できる場合には、対面領域835に輻射熱吸収膜88が設けられていても良い。輻射熱吸収膜88は矢印H方向および矢印L方向のうちの少なくとも一つの方向において分断されていても良い。実施形態1では、スタック2は、カソードガス通路8の第2通路83を挟むように2組設けられているが、これに限らず、1組設けられている構造でも良い。燃料電池20は平板型とされているが、これに限らず、チューブ型としても良い。図1では、排気ガスを排出させる排出通路73は、排気通路形成部材700と内側部材801と形成されているが、これに限らず、内側部材801と断熱層6とで形成されていても良い。カソードガスを通過させる通路形成部材832は薄い箱形状とされているが、これに限らず、パイプ形状でも良い。
【0082】
本明細書から次の技術的思想が把握される。
[付記項1]アノードガスとカソードガスとで発電する燃料電池のスタックと、アノードガスを前記スタックに供給するためのアノードガス通路と、カソードガスを前記スタックに供給するためのカソードガス通路とを具備しており、カソードガス通路を形成する通路形成部材の外壁面の少なくとも一部は、スタックに対面すると共に前記スタックからの輻射熱を吸収する輻射熱吸収膜を備えている。輻射熱吸収膜は、スタックのうち高温領域に対面することが好ましい。輻射熱吸収膜は通路形成部材の延びる方向に膜状に延設されていることが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明は例えば定置用、車両用、電気機器用、電子機器用等の燃料電池装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0084】
2はスタック、2highは高温領域、2lowは低温領域、20は燃料電池、21はアノード、22はカソード、23は電解質膜、25はアノードガス通路、4は改質器、40は蒸発部、42は改質部、5は燃焼用空間、50は燃焼火炎、6は断熱層、7は排気ガス通路、8はカソードガス通路、832は通路形成部材、836,837は板体、838は底板、839は側板、88は輻射熱吸収膜を示す。
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池のカソードに供給されるカソードガスが通過する通路形成部材を有する燃料電池装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、スタックを収容する収納容器において、発電に使用されなかった燃料オフガスと空気オフガスとが混合している燃焼排ガスと、発電用空気とを熱交換する燃料電池装置が開示されている。このものによれば、複数のスタック群の間に空気導入路(デリバリー通路)を設け、空気導入路の空気をスタックの発熱で加熱させる。この燃料電池装置によれば、スタックの中間高さの近傍となるように空気噴出孔を空気導入路(デリバリー通路)に設け、スタックの上下方向温度分布を改善し、スタックの耐久性を向上させるようにしている。
【0003】
特許文献2には、空気導入路(デリバリー通路)内の空気流れを、近接する気化部と対向する側に設けることで空気温度を上昇させ、スタックの積層方向温度分布を改善し、発電効率を向上させる燃料電池装置が開示されている。
【0004】
特許文献3には、複数のセルを保持すると共に燃料ガスが流れる通路を形成するセルチューブ管の外周部の一部のみに、セラミックスで形成された厚肉リング状の輻射変換体を設けたスタックの熱交換構造が開示されている。この輻射変換体はセルからの熱輻射を受熱して加熱される。輻射変換体は蓄熱エネルギを蓄積するため、燃料ガス等を予熱させることができる。しかし輻射変換体はバルクであり、厚肉リング状をなしており、蓄熱性を期待できるものの、表出面積の増加、ひいては輻射熱の受熱面積の増加には限界がある。
【0005】
特許文献4には、スタックを収容する発電室を形成する底部に輻射変換体が設けられているスタックモジュールが開示されている。輻射変換体は、空気を透過させ得るように多孔質の熱電材料で形成されている。輻射変換体は、発電室からの輻射熱を吸収して空気を再生加熱させると同時に電力を発生させ、モジュールの電気出力を増加させる。この輻射変換体はその厚みがかなり厚く、バルク状をなしており、蓄熱性を期待できるものの、表出面積の増加、ひいては輻射熱の受熱面積の増加には限界がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010-55917号公報
【特許文献2】特開2010-80152号公報
【特許文献3】特開2003-123827号公報
【特許文献4】特開平9-289030号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1では、空気導入路(デリバリー通路)を流れる空気の予熱には限界がある。更に、スタックの下部の温度が過剰に低下してしまう傾向がある。このためスタックの上部と下部とで温度むらが発生し、スタックにおける発電効率が充分に得られない問題がある。更に特許文献1では、空気導入路(デリバリー通路)には輻射熱吸収膜が設けられていない。
【0008】
特許文献2では、空気導入路(デリバリー通路)には輻射熱吸収膜が設けられていない。
【0009】
特許文献3では、輻射変換体はバルクであり、厚肉リング状をなしており、蓄熱性を期待できるものの、表出面積の増加、ひいては輻射熱の受熱面積の増加には限界がある。このため、輻射変換体と空気とが接触できる時間は極く短時間である。従って、輻射変換体により空気が加熱される時間は極く短時間であり、空気の予熱には限界がある。更には、輻射変換体はその厚みがかなり厚くてバルク状をなすため、ガスの通路側に突出する量が大きい。この場合、ガスが輻射変換体に衝突すると、ガスの流れの円滑性を損なうおそれがある。
【0010】
特許文献4では、この輻射変換体はその厚みがかなり厚く、バルク状をなしており、蓄熱性を期待できるものの、表出面積の増加、ひいては輻射熱の受熱面積の増加には限界がある。このため輻射変換体はバルク状をなしており、膜状ではないため、輻射変換体と空気とが接触できる時間が極く短時間である。従って、輻射変換体により空気が加熱される時間は極く短時間であり、空気の予熱には限界がある。更には、輻射変換体はその厚みがかなり厚くてバルク状をなすため、ガスの通路側に突出する量が大きい。この場合、ガスが輻射変換体に衝突し、ガスの流れの円滑性を損なうおそれがある。
【0011】
本発明は上記した実情に鑑みてなされたものであり、カソードガス通路を形成する通路形成部材を流れるカソードガスを、スタックに供給する前に効果的に加熱でき、更に、輻射熱吸収膜に接触するガスの流れを損なうことが抑制されている燃料電池装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(1)様相1の本発明に係る燃料電池装置は、アノードガスとカソードガスとで発電するとともに、発電時に相対的に高温となる高温領域と高温領域よりも相対的に低温となる低温領域とを形成するスタックと、アノードガスをスタックに供給するためのアノードガス通路と、カソードガスをスタックに供給するためのカソードガス通路とを具備しており、カソードガス通路を形成する通路形成部材の外壁面の少なくとも一部は、スタックに対面すると共にスタックからの輻射熱を吸収する輻射熱吸収膜を備えており、輻射熱吸収膜は、スタックの高温領域に対面すると共に通路形成部材の延びる方向に膜状に延設されている。
【0013】
本様相によれば、カソードガス通路を形成する通路形成部材の外壁面の少なくとも一部は、スタックに対面すると共にスタックからの輻射熱を吸収する輻射熱吸収膜を備えている。輻射熱吸収膜は、スタックの高温領域に対面すると共に、通路形成部材が延びる方向に膜状に延設されている。
【0014】
本様相によれば、輻射熱吸収膜の厚みは膜であるため、バルク体に比較して薄い。しかも、輻射熱吸収膜は、通路形成部材の延びる方向に延設されているため、通路形成部材をカソードガスが流れる方向において延設されている。このため、輻射熱吸収材料がバルク体で形成されている場合に比較して、輻射熱吸収膜は、少ない材料で広面積化されており、しかも、高温のスタックから受熱する輻射熱の熱量を増加できる。このため輻射熱吸収膜が設けられている通路形成部材を効果的に昇温できる。故に、通路形成部材を流れるカソードガスの予熱に有利であり、スタックの発電効率を向上できる。
【0015】
ところで、スタックにおける各部位における温度は、各部位における発電効率に影響を与える。スタック全体の発電効率を高める為には、スタックにおける温度ムラが抑制されていることが好ましい。この点本様相によれば、輻射熱吸収膜は、スタックのうち相対的に高温領域に対面する。このため、スタックの高温領域付近の熱を効率よく通路形成部材の輻射熱吸収膜に伝達できる。換言すると、スタックの高温領域の温度を適度に低下させることができ、スタックの高温領域の過剰高温化が抑制される。このためスタックにおける各部位における温度ムラを抑制させるのに有利である。従って、スタックにおける各部位の発電ムラを抑制させるのに有利である。この意味においてもスタックの発電効率を向上できる。更に本様相によれば、輻射熱吸収膜は、通路形成部材が延びる方向に膜状に延設されているため、バルク体と異なり、ガスの通路に大きく突出しない。このため、通路形成部材を流れるカソードガスの円滑な流れを損なうことが抑制される。
【0016】
(2)様相2の本発明に係る燃料電池装置によれば、上記様相において、通路形成部材の外壁面のうちスタックの低温領域に対面する領域には、輻射熱吸収膜が設けられていない。この場合、スタックの低温領域からの放熱が制限され、スタックの低温領域付近における温度の過剰低下が抑制される。換言すると、スタックの高温領域付近の温度と、スタックの低温領域付近の温度との間において、両者の温度差の増加が抑制される。このためスタック全体に温度ムラを抑制させるのに有利である。この意味においてもスタックの発電効率を向上できる。
【0017】
(3)様相3の本発明に係る燃料電池装置によれば、上記様相において、アノードガス通路を介してスタックに供給するアノードガスを燃料原料から生成させる改質器が設けられており、通路形成部材の外壁面のうち改質器に対面する領域には輻射熱吸収膜が設けられていない。輻射熱吸収膜が設けられている場合には、スタックの高温領域付近の熱を効率よく通路形成部材の輻射熱吸収膜に伝達できる。言い換えると、スタックのうち相対的に高温領域の温度を適度に低下させることができ、スタックの高温領域の過剰高温化を抑制できる。
【0018】
本様相によれば、通路形成部材の外壁面のうち改質器に対面する領域には、輻射熱吸収膜が設けられていない。従って、改質器付近における温度を過剰に低下させることが抑制される。ひいては改質器の温度を改質反応に適するように維持させるのに有利である。故に、改質器における改質反応を効率よく行うことができ、燃料原料を改質させて形成されたアノードガスの組成(水素濃度)の安定化に有利である。
【0019】
(4)様相4の本発明に係る燃料電池装置によれば、上記様相において、高さ方向を矢印H方向とするとき、通路形成部材の外壁面のうち輻射熱吸収膜は、スタックの高温領域に対面するように、矢印H方向の中間領域に設けられており、通路形成部材の外壁面のうち輻射熱吸収膜の少なくとも上方または下方の領域には、輻射熱吸収膜が設けられていない。
【0020】
スタックが発電運転しているとき、スタックにおいて矢印H方向の中間領域では、スタックに置ける熱こもり等の影響で、温度が上昇し易い。これに対して、スタックにおいて矢印H方向の端領域では、放熱等の影響で、温度が当該中間領域に比較して低下し易い。
【0021】
この点について本様相によれば、スタックの高温領域は、スタックにおいて矢印H方向の中間領域に相当する。このように輻射熱吸収膜がスタックの中間領域に対面するように設けられていると、スタックの高温領域から輻射熱吸収膜への放熱が促進される。このため、スタックの高温領域の温度が過剰に高温化することが抑制される。更に本様相によれば、通路形成部材の外壁面のうち輻射熱吸収膜の少なくとも上方または下方の領域には輻射熱吸収膜が設けられていない。スタックの低温領域は、通路形成部材の外壁面のうち輻射熱吸収膜の少なくとも上方または下方の領域に相当する。このため、スタックの低温領域の温度が過剰に低下することが抑制される。
【0022】
このような本様相によれば、スタックの高温領域付近の温度と、スタックの低温領域付近の温度との間において、両者の温度差が抑制される。このためスタックにおける各部位における温度ムラを抑制させるのに有利である。従って、スタック全体において、各部位の発電ムラを抑制させるのに有利である。この意味においてもスタックの発電効率を向上できる。
【0023】
(5)様相5の本発明に係る燃料電池装置によれば、上記様相において、高さ方向を矢印H方向とし、矢印H方向と交差すると共に前記スタックが延びる方向を矢印L方向とするとき、スタックは、電解質膜をアノードおよびカソードで挟んだ構造をもつ燃料電池を矢印L方向に間隔を隔てて並設して形成されており、
通路形成部材の外壁面のうち輻射熱吸収膜は、スタックの前記高温領域に対面するように、矢印H方向の中間領域且つ矢印L方向の中間領域に設けられており、
通路形成部材の外壁面のうち矢印H方向において輻射熱吸収膜の上方または下方の領域には輻射熱吸収膜が設けられておらず、且つ、矢印L方向において輻射熱吸収膜よりも外方の領域には、輻射熱吸収膜が設けられていない。
【0024】
スタックが発電運転しているとき、スタックにおいて矢印H方向の中間領域、および、矢印L方向の中間領域では熱こもり等の影響で温度が上昇し易い。これに対して、スタックにおいて矢印H方向の端領域、および、矢印L方向の端領域では、放熱等の影響で、温度が当該中間領域に比較して低下し易い。
【0025】
この点について本様相によれば、スタックの高温領域は、スタックにおいて矢印H方向の中間領域、且つ、矢印L方向の中間領域に相当する。このように輻射熱吸収膜がスタックの中間領域に対面するように設けられていると、スタックの高温領域の放熱が輻射熱吸収膜により促進される。このため、スタックの高温領域の温度が過剰に高温化することが抑制される。更に本様相によれば、通路形成部材の外壁面のうち輻射熱吸収膜の少なくとも上方または下方の領域には輻射熱吸収膜が設けられていない。通路形成部材の外壁面のうち輻射熱吸収膜の上方または下方の領域は、スタックの低温領域に対面する。このため、スタックの低温領域の放熱が制限され、スタックの低温領域の温度が過剰に低下することが抑制される。
【0026】
このような本様相によれば、スタックの高温領域付近の温度と、スタックの低温領域付近の温度との間において、両者の温度差が抑制される。このためスタックにおける各部位における温度ムラを抑制させるのに有利である。従って、スタック全体において、各部位の発電ムラを抑制させるのに有利である。この意味においてもスタックの発電効率を向上できる。
【発明の効果】
【0027】
本発明に係る燃料電池装置によれば、カソードガス通路を形成する通路形成部材の外壁面は、輻射熱吸収膜を備えている。輻射熱吸収膜は、スタックの高温領域に対面すると共に、通路形成部材が延びる方向に膜状に延設されている。このように輻射熱吸収膜は膜であるため、バルク体に比較して薄い。しかも、輻射熱吸収膜は、通路形成部材の外壁面において通路形成部材の延びる方向に膜状に延設されているため、通路形成部材に沿ってカソードガスの流れる方向において延設されている。このため輻射熱吸収膜は少ない材料で広面積化され、高温のスタックから受熱する輻射熱の熱量を増加できる。このため輻射熱吸収膜が設けられている通路形成部材を効果的に昇温できる。故にカソードガスの予熱に有利であり、スタックの発電効率を向上できる。
【0028】
本発明に係る燃料電池装置によれば、輻射熱吸収膜はスタックの高温領域に対面する。このため、スタックの高温領域付近の熱を効率よく通路形成部材の輻射熱吸収膜に伝達できる。言い換えると、スタックの高温領域の放熱性を促進させ、スタックの高温領域の温度を適度に低下させることができる。即ち、スタックの高温領域の過剰高温化が抑制される。このためスタックにおける各部位における温度ムラを抑制させるのに有利である。従って、スタックにおける各部位の発電ムラを抑制させるのに有利である。この意味においてもスタックの発電効率を向上できる。
【0029】
更に輻射熱吸収膜は、通路形成部材の延びる方向に膜状に延設されているため、輻射熱吸収材料がバルク体で形成されている従来技術とは異なり、ガスの通路に大きく突出しない。このため輻射熱吸収膜に沿って流れるガスの円滑な流れを損なうことが抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】実施形態1に係り、燃料電池装置の断面図である。
【図2】実施形態1に係り、スタック付近を模試的に示す断面図である。
【図3】通路形成部材付近を示す斜視図である。
【図4】通路形成部材付近を示す断面図である。
【図5】実施形態2に係り、輻射熱吸収膜が積層されている通路形成部材の斜視図である。
【図6】実施形態3に係り、輻射熱吸収膜が積層されている通路形成部材の斜視図である。
【図7】実施形態4に係り、通路形成部材付近を示す断面図である。
【図8】実施形態5に係り、通路形成部材からスタックにカソードガスを供給させる形態を模式的に示す図である。
【図9】実施形態6に係り、輻射熱吸収膜を有する通路形成部材およびスタックを示す図である。
【図10】実施形態6に係り、輻射熱吸収膜を有する通路形成部材およびスタックを示す図である。
【図11】実施形態7に係り、輻射熱吸収膜が積層されている通路形成部材の板体の断面図である。
【図12】実施形態8に係り、輻射熱吸収膜が積層されている通路形成部材の板体の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
スタックは複数の燃料電池で形成されている。スタックのアノードにアノードガスが供給され、カソードにカソードガスが供給されて、スタックは発電する。燃料電池は、固体酸化物形燃料電池、りん酸形燃料電池、溶融炭酸塩形燃料電池、高分子電解質膜形燃料電池でも良い。発電運転時におけるスタックの温度は、80℃以上、100℃以上が好ましく、300℃以上でも良い。
【0032】
発電時には、スタックにおいて、相対的に高温となる高温領域と、高温領域よりも相対的に低温となる低温領域とが形成される。『スタックの高温領域』とは、輻射熱吸収膜が設けられていない場合において、スタックの温度が相対的に高温となる領域を意味する。『スタックの低温領域』とは、輻射熱吸収膜が設けられていない場合において、スタックの温度が高温領域に比較して相対的に低温となる領域を意味する。閾値温度に基づいて閾位置をスタックにおいて決定し、閾位置に基づいて『スタックの高温領域』および『スタックの低温領域』を識別することができる。閾値温度は、スタックにおける最高温度と最低温度との間における温度にできる。
【0033】
アノードガス通路はアノードガスをスタックのアノードに供給させるための通路である。アノードガスはアノードにおいて発電反応に使用されるガスである。カソードガス通路は、カソードガスをスタックのカソードに供給させるための通路である。カソードガスはカソードにおいて発電反応に使用されるガスであり、一般的には空気、酸素含有ガス、酸素ガスを例示できる。カソードガス通路を形成する通路形成部材の外壁面は、輻射熱吸収膜を備えている。輻射熱吸収膜は、スタックのうち相対的に高温領域に対面すると共に、通路形成部材の延びる方向(つまりカソードガスが流れる方向)に膜状に延設されている。膜電極接合体の厚みは適宜設定されるが、2ミリメートル以下、1ミリメートル以下にできる。更に500マイクロメートル以下、300マイクロメートル以下にできる。
【0034】
次の(i)および(ii)の形態が例示される。
【0035】
(i)通路形成部材の外壁面のうち輻射熱吸収膜が設けられている表面は、通路形成部材の外壁面のうち輻射熱吸収膜が設けられていない領域の表面よりも粗面化されている。一般的には、輻射熱吸収膜が粗面化されていると、輻射熱の散乱が増加し、輻射熱吸収膜による輻射熱の吸収性が良好となると言われている。
【0036】
この点について、通路形成部材の外壁面のうち輻射熱吸収膜が設けられている表面は、通路形成部材の外壁面のうち輻射熱吸収膜が設けられていない領域の表面よりも粗面化されている形態が例示される。この場合、輻射熱吸収膜の表面が粗面化され、輻射熱の吸収率を高めることができる。このため、スタックの高温領域付近の熱を効率よく通路形成部材の輻射熱吸収膜に伝達できる。言い換えると、スタックの高温領域の放熱を促進させ、スタックの高温領域の温度を適度に低下させることができ、スタックの高温領域の過剰高温化が抑制される。このためスタックにおける各部位における温度ムラを抑制させるのに有利である。
【0037】
(ii)輻射熱吸収膜の中央領域の厚みは、輻射熱吸収膜の縁領域の厚みより相対的に厚くできる。輻射熱吸収膜の厚みが過剰に薄いと、輻射熱の吸収が低下する傾向がある。輻射熱吸収膜の厚みは、輻射熱の吸収性に影響を与える。輻射熱吸収膜の厚みが厚いと、輻射熱の吸収が良好となる。この点についてスタックの高温領域においては、輻射熱吸収膜の厚みは厚くすることができる。このためスタックの高温領域付近の熱を効率よく通路形成部材の輻射熱吸収膜に伝達できる。言い換えると、スタックの高温領域付近の放熱が促進され、スタックの高温領域付近の温度を効率よく低下させることができる。このためスタックにおける各部位における温度ムラを抑制させるのに有利である。従って、スタックにおける各部位の発電ムラを抑制させるのに有利である。この意味においてもスタックの発電効率を向上できる。
【0038】
本発明の実施形態について説明する。
(実施形態1)
図1〜図4は実施形態1を示す。本実施形態は固体酸化物型の燃料電池装置に適用した例を示す。図1に示すように、燃料電池装置は、スタック2と、スタック2の上側に配置された改質器4と、スタック2の上面と改質器4の下面との間に形成された燃焼用空間5と、スタック2の外側に配置された断熱材料で形成された断熱層6と、断熱層6の外側に配置された排気ガス通路7と、排気ガス通路7の外側に配置されたカソードガス通路8とを有する。
【0039】
図2は、スタック2および改質器4付近の概念図を示す。図2に示すように、スタック2は、複数の燃料電池20を通路22rを介して一方向(矢印L方向)に並設することにより形成されている。図2から理解できるように、燃料電池20は、アノードガスが供給される通路21rをもつ燃料極として機能するアノード21と、カソードガスが供給される酸化剤極(空気極)として機能するカソード22と、アノード21およびカソード22で挟まれた固体酸化物を母材とする膜状の電解質膜23とを有する。電解質膜23を形成する固体酸化物は、スタック2の作動温度において酸素イオンを伝導させる性質をもつものであり、YSZ等のジルコニア系、ランタンガレート系を例示できる。アノード21の材質は、ニッケル−セリア系のサーメットを例示される。カソード22の材質は、サマリウムコバルタイト、ランタンマンガナイトを例示できる。但し、アノード21、カソード3および電解質膜23の材質は、上記に限定されるものではない。なお、排気ガス通路7およびカソードガス通路8は、スタック2の長手方向(図2の矢印L方向,燃料電池20の並設方向)に沿って延設されている。
【0040】
図2に示すように、改質器4は、改質水を水蒸気化させる蒸発部40と、水蒸気を利用して燃料原料を改質される改質部42とを備えている。蒸発部40は、改質水系から蒸発部40に供給される液相状の改質水を水蒸気化させる。改質部42は、改質反応を促進させる改質触媒を担持する粒子状のセラミックス材を有する。セラミックス材はハニカム構造体でも良い。図2に示すように、改質部42は、蒸発部40の下流に設けられており、蒸発部40で生成された水蒸気でガス状または液状の炭化水素系の燃料原料を改質させてアノードガスを生成させる。アノードガスは水素ガスまたは水素含有ガスである。なお、定格運転におけるスタック2の作動温度は、例えば450〜1100℃の範囲内、殊に550〜800℃の範囲内であることが好ましい。
【0041】
図1に示すように、カソードガス通路8は、入口80と、入口80から延びる入口通路81と、入口通路81の上端から横方向にのびる第1通路82と、第1通路82の先端から下向きに延びる第2通路83と、第2通路83の下端側に形成された出口84とをもつ。第2通路83および出口84は、金属(例えば炭素鋼、合金鋼(ステンレス鋼を含む)等の鉄系)で形成された薄い偏平箱形状の通路形成部材832で形成されている。
【0042】
図3に示すように、通路形成部材832は、第2通路83を介して互いに対向する金属製の板体836,837と、板体836,837の下端部同士を繋ぐ底板838と、側板839とを備える。図1に示すように、更に、カソードガス通路8は、殻状をなす内側部材801と、外箱状をなす外側部材850とを備える。なお、図3に示すようにスタック2の高さ方向を矢印H方向とし、矢印H方向と交差(直交)する方向を矢印L方向とする。上方を矢印H1として示す。
【0043】
図1に示すように、排気ガス通路7は、金属製の内側部材801と金属製の排気通路形成部材700とで形成されている。排気通路形成部材700は、スタック2を収容して発電する発電室720を形成する。
【0044】
図1に示すように、排気ガス通路7は、排ガスを改質器4に接触させ得る接触通路70と、接触通路70の下流に連通するように延設された排出通路73とを有する。排出通路73は入口72および出口74(排気ガス出口)を有する。図1に示すように、排出通路73において、相対的に高温側の排気ガスは矢印A1,A2,A3方向に流れる。なお、スタック2は、カソードガス通路8の通路形成部材832を挟むように2組設けられている(図1参照)。但しこれに限定されるものではない。
【0045】
図2に示すように、スタック2の下部にはアノードガスマニホルド24が配置されている。アノードガスマニホルド24は、改質部42で生成されたアノードガスをアノードガス通路25を介して燃料電池20のアノード21に案内する。ここで、スタック2、カソードガス通路8、排気ガス通路7、改質器4およびアノードガスマニホルド24、燃焼用空間5は、燃料電池装置の長手方向(図2および図3に示す矢印L方向,燃料電池20の並設方向)に沿って延設されている。
【0046】
次に、スタック2が発電運転するときについて、説明を加える。この場合、図2に示す燃料原料ポンプ90(燃料原料搬送源)が駆動するため、炭化水素系のガス状または液状の燃料原料(都市ガス等)が燃料原料供給通路92を介して改質器4の蒸発部40に供給される。また改質水ポンプ93(水搬送源)が駆動し、図略のタンクの改質水が改質水供給通路94を介して蒸発部40に供給される。ここで、燃焼火炎50で蒸発部40および改質部42は加熱されているため、蒸発部40は液相状の改質水を水蒸気化させる。生成された水蒸気は改質部42に供給される。改質部42は燃料原料を水蒸気改質させ、水素を含むアノードガスを生成させる。燃料原料がメタン系である場合には、水蒸気改質ではアノードガスの生成は、次の(1)式に基づくと考えられている。固体酸化物形の燃料電池20では、H2の他にCOも燃料となり得る。
【0047】
(1)…CH4+2H2O→4H2+CO2
CH4+H2O→3H2+CO
CnHmが炭化水素の一般的な化学式であるとすると、水蒸気改質の一般式は次の(1−1)式のようになる。n=1、m=4であると、メタンの水蒸気改質の式が得られる。
(1−1)…CnHm+nH2O→nCO+[(m/2)+n]H2
生成された水素を含有するアノードガスは、アノードガス通路25およびアノードガスマニホルド24を介して、燃料電池20のアノード21に供給されて発電に使用される。
【0048】
また図1において、カソードガスポンプ95(カソードガス搬送源)が駆動するため、空気であるカソードガスが、矢印C1方向,矢印C2方向,矢印C3方向,矢印C4方向,矢印C5方向,矢印C6方向に沿って、カソードガス通路8の入口通路81、第1通路82および第2通路83を流れ、カソードガス通路8の先端の出口84から発電室720に供給され、カソード22の発電反応に使用される。スタック2のカソードに供給されなかったカソードガスは、発電室720内の通路722(図4参照)等を上昇して燃焼用空間55および改質器4側に向かう。従って、通路722には、ガス流れの障害物が存在しないことが好ましい。
【0049】
改質部42で生成されたアノードガスは、アノードガスマニホルド24からスタック2のアノード21の通路21rを上向きに通過しつつ、アノードの発電反応に使用される。これによりスタック2と電力負荷とが電気的に接続されている状態で、スタック2は発電する。
【0050】
発電反応においては、水素含有ガスが供給されるアノード21では、基本的には(2)の反応が発生すると考えられている。酸素を含む空気が供給されるカソード22では、基本的には(3)の反応が発生すると考えられている。カソードにおいて発生した酸素イオン(O2−)がカソード22からアノード21に向けて電解質膜23(酸素イオン伝導体,イオン伝導体)を伝導する。
【0051】
(2)…H2+O2−→H2O+2e−
COが含まれている場合には、CO+O2−→CO2+2e−
(3)…1/2O2+2e−→O2−
さて、上記した発電反応後のアノードオフガスは、未反応の燃焼成分(水素)を含有している。アノードオフガスは、スタック2のアノード21の通路21rの上部から燃焼用空間5に排出される(図2参照)。この結果、燃焼用空間5において、アノードオフガスは、カソードオフガスおよび/または発電室720のカソードガスにより燃焼し、燃焼火炎50を形成する。燃焼火炎50により、改質部42および蒸発部40が加熱される。これにより改質部42における改質反応が維持され、蒸発部40において水蒸気生成反応が維持される。
【0052】
上記したように燃焼用空間5において燃焼した後の排気ガスは、図1に示すように、排気ガス通路7の入口72から排出通路73に進入し、下向き(矢印A1,A2,A3方向)に流れ、出口74、排出口74xから吐出される。ここで、排気ガス通路7の排出通路73を下向きに流れる相対的に高温の排気ガスと、カソードガス通路8の入口通路81を上向き(排出通路73における排気ガスの流れ方向と反対方向,矢印C1〜C6方向)に流れる相対的に低温のカソードガスとが、対向流として、互いに熱交換し、熱交換器7Xを形成する。よって排気ガスが冷却されると共に、スタック2に供給される直前のカソードガスが予熱される。このように予熱されたカソードガスが、カソードガス通路8の第1通路82,第2通路83,出口84を経て、つまり矢印C1,C2,C3,C4,C5,C6方向に流れ、出口84から発電室720に供給されるため、スタック1の発電効率が高まる。
【0053】
さて要部構成について説明する。図4は、カソードガス通路8を形成する通路形成部材832付近の断面を示す。このような本実施形態によれば、図4に示すように、スタック2において、相対的に高温となる高温領域2highが存在する。更に、高温領域2highよりも相対的に低温となる低温領域2lowが存在する。具体的には、スタック2において、スタック2の高さ方向(矢印H方向)の全高をHallとし、スタック2の高さ方向の中央部を閾位置2mとするとき、閾位置2mよりも上の領域は、相対的に高温となる高温領域2highとなると考えることができる。スタック2において、スタック2の高さ方向の閾位置2mよりも下の領域は、高温領域2highよりも低温となる低温領域2lowとなると考えることができる。高温領域2highと低温領域2lowとの温度差は、スタック2の種類、スタック2の発電条件等によっても相違するが、例えば、20〜120℃の範囲内、30〜70℃の範囲内と考えられる。
【0054】
本実施形態によれば、図4に示すように、通路形成部材832を構成する金属(例えば炭素鋼、ステンレス鋼等の合金鋼等の鉄系)製の板体836,837の外壁面834には、輻射熱吸収膜88が膜状に積層されている。輻射熱吸収膜88は、通路形成部材832の母材(炭素鋼系、合金鋼系等の鉄系)よりも輻射熱に対して高い吸収率を有する。吸収率は前記母材よりも高く、0.7以上、0.8以上が好ましい。図4に示すように、輻射熱吸収膜88は、スタック2のうち相対的に高温となる高温領域2highに対面すると共に、通路形成部材832の矢印H方向に延びる方向(即ち、カソードガスが通過する方向)に沿って膜状に延設されている。更に、図3に示す輻射熱吸収膜88は矢印L方向に沿っても延設されている。
【0055】
このような本実施形態によれば、輻射熱吸収膜88の厚みは膜であるため、バルク体に比較して薄い。しかも、輻射熱吸収膜88は、通路形成部材832の延びる方向(カソードガスが通過する方向)に沿って延設されている。このため輻射熱吸収膜88は、少ない輻射熱吸収材料で、通路形成部材832においてカソードガスの通過する方向において広面積化されている。よって、スタック2の発電運転において、スタック20の高温領域2highから放射された輻射熱を受熱する単位時間あたりの受熱熱量を増加できる。このため輻射熱吸収膜88が設けられている通路形成部材832を効果的に昇温できる。故に、カソードガスがスタック2に供給される前において、カソードガスを予熱させるのに有利であり、スタック2の発電効率を向上できる。
【0056】
上記した輻射熱吸収膜88は、輻射熱に対して高い吸収率をもつ高吸収率物質を用いて形成されていることが好ましい。高吸収率物質は一般的には、輻射熱に対して高い吸収率をもつ粉末粒子の集合体で形成できる。発電運転中で高温に加熱されているスタック2が放射する波長に対して、吸収率は0.6以上、0.7以上が好ましい。特に0.8以上、0.9以上が好ましい。完全黒体の吸収率は1とする。高吸収率物質の色調は、黒色、黒色に近いことが好ましい。この場合、黒色、黒色に近いセラミックス、金属が例示される。高吸収率物質はスタック2の発電運転の温度に対して耐久性を有することが好ましい。かかる観点から酸化物系、炭化物系、窒化物系、硼化物系を例示できる。具体的には、AlN系、SiC系、四三酸化鉄(鉄黒)系、モリブデン酸化物系、チタン酸化物系、窒化ケイ素系、マイカ系を例示できる。SiCはα−SiC、β−SiCを例示できる。なお、ファインセラミックスの多くは白系・黒系の色をしているが、顔料を加えることでさまざまな黒色を作り出すことも可能である。
【0057】
輻射熱吸収膜88においては、高吸収率物質で形成されている粉末粒子自体が焼き付け、焼結等により固結されて一体化されていても良いし、あるいは、粉末粒子自体が溶射等により固結されて一体化されていても良いし、あるいは、粉末粒子自体が無機バインダ等のバインダにより一体化されていても良い。粉末粒子のサイズは特に制限されないが、2〜500マイクロメートルの範囲を例示できる。輻射熱吸収膜88の厚みtは特に制限されないが、下限値は適宜設定できるが、10マイクロメートル、50マイクロメートル、100マイクロメートルを例示できる。厚みの上限値は適宜設定できるが、2ミリメートル、1ミリメートル、500マイクロメートルを例示できる。
【0058】
また、スタック2における各部位における温度は、各部位における発電効率に影響を与える。このためスタック2における温度ムラは抑制されていることが好ましい。この点本実施形態によれば、通路形成部材832の外壁面834において、輻射熱吸収膜88は、スタック2のうち相対的に高温となる高温領域2highに対面する。このため、スタック2の高温領域2high付近の熱を効率よく通路形成部材832の輻射熱吸収膜88に伝達できる。言い換えると、スタック2の高温領域2highの放熱性を促進でき、スタック2の高温領域2highの温度を適度に低下させることができ、スタック2の高温領域2highの過剰高温化を抑制できる。このためスタック2における各部位における温度ムラを抑制させるのに有利である。従って、スタック2における各部位の発電ムラを抑制させるのに有利である。この意味においてもスタック2の発電効率を向上できる。
【0059】
更に、輻射熱吸収膜88は、通路形成部材832の延びる方向(矢印H方向および矢印L方向)に膜状に延設されているため、輻射熱吸収材料がバルク体で形成されている場合と異なり、ガスを通過させる通路722(図4)側に大きく突出しない。このため、通路形成部材832の輻射熱吸収膜88付近を流れるガスの円滑な流れを損なうことが抑制される。
【0060】
なお本実施形態によれば、図4から理解できるように、輻射熱吸収膜88は通路形成部材832の外壁面834に積層されて形成されているものの、通路形成部材832の内壁面832iには形成されていない。この場合、通路形成部材832の外壁面834に積層されている輻射熱吸収膜88がスタック1の高温領域2highから受熱した熱量を通路形成部材832の全体に分配させるのに有利である。この場合、通路形成部材832を矢印C5方向に流れるカソードガスを通路形成部材832の全体において効率よく予熱させるのに貢献できる。
【0061】
もし、輻射熱吸収膜が通路形成部材832の外壁面834および通路形成部材832の内壁面832iの双方に形成されている場合には、内壁面832iに形成されている輻射熱吸収膜から第2通路83側への放熱が促進されるため、通路形成部材832の全体を昇温させるためには好ましくないと考えられる。
【0062】
加えて、輻射熱吸収膜88は通路形成部材832の内壁面832iに形成されていないため、第2通路83の流路断面積が小さな場合でも、第2通路83の流路断面積が輻射熱吸収膜により小さくなることが抑制される。
【0063】
更に本実施形態によれば、図4から理解できるように、通路形成部材832の外壁面834において、スタック2の低温領域2lowに対面する領域832lowには、輻射熱吸収膜88が設けられていない。この場合、スタック2のうち低温領域2low付近の過剰放射が抑制され、スタック2の低温領域2low付近における温度の過剰低下が抑制される。換言すると、スタック2の高温領域2high付近の温度と低温領域2low付近の温度との間において、両者の温度差が小さくされる。このためスタック2における各部位における温度ムラを抑制させるのに有利である。従って、スタック2における各部位の発電ムラを抑制させるのに有利である。この意味においてもスタック2の発電効率を向上できる。
【0064】
更に本実施形態によれば、図4に示すように、スタック2に供給するアノードガスを燃料原料から生成させる改質器4が設けられている。通路形成部材832の外壁面834において、改質器4の側面4sに対面する対面領域835には輻射熱吸収膜88が設けられていない。このため改質器4の側面4sからの放熱が過剰とならない。従って、改質器4付近における温度を過剰に低下させることが抑制される。ひいては改質器4の温度を改質反応に適するように高温に維持させるのに有利である。故に、改質器4における改質反応を効率よく行うことができ、燃料原料を改質させて形成されたアノードガスの組成(水素濃度)の安定化に有利である。もし通路形成部材832の対面領域835に輻射熱吸収膜88が設けられている場合には、改質器4の側面4sからの放熱が過剰となり、改質器4の温度が適温領域から低下し、水蒸気改質に影響を与えるおそれがある。
【0065】
(実施形態2)
図5は実施形態2を示す。本実施形態は実施形態1と基本的には同様の構成、同様の作用効果を有する。実施形態1とは寸法関係が若干相違する。図5に示すようにスタック2の高さ方向を矢印H方向とする。矢印H方向と交差(直交)すると共にスタックの延びる方向を矢印L方向とする。図5に示すように、カソードガスを矢印C5方向に向けて通過させる通路形成部材832は、矢印H方向および矢印L方向にそれぞれ延設されている。
【0066】
図5に示すように、通路形成部材832は、カソードガスを矢印C5方向に通過させる第2通路83を区画する金属製の板体836,837を備えている。板体836,837の外壁面834には、スタック2の高温領域に対面するように輻射熱吸収膜88が積層されている。輻射熱吸収膜88は、矢印L方向に沿って通路形成部材832の一端832eから他端832fに向けてほぼ全長に延設されている。図5に示すように、通路形成部材832の外壁面834において、輻射熱吸収膜88の上方の領域834u(図1に示す改質器4の側面4sに対面する領域)、および、下方の領域834dには、輻射熱吸収膜88が設けられていない。即ち、図5に示すように、通路形成部材832の外壁面834のうちスタック2の低温領域に対面する領域832lowには、輻射熱吸収膜88が積層されていない。その理由としては、スタック2の低温領域2lowからの放熱を抑制させ、スタック2の低温領域2lowの温度をできるだけ高めに維持させるためである。更に、図5に示すように、通路形成部材832の外壁面834のうち改質器4に対面する対面領域835には、輻射熱吸収膜88が積層されていない。その理由改質器4の温度をできるだけ高温に維持させるためである。
【0067】
(実施形態3)
図6は実施形態3を示す。本実施形態は実施形態1,2と基本的には同様の構成、同様の作用効果を有する。以下、相違する部分を中心として説明する。図6に示すようにカソードガスを通過させる通路形成部材832は、矢印H方向および矢印L方向にそれぞれ延設されている。通路形成部材832の金属製の板体836,837の外壁面834には、輻射熱吸収膜88が積層されている。通路形成部材832の外壁面834において、輻射熱吸収膜88は、スタック2のうち相対的に高温となる高温領域2highに対面するように、通路形成部材832の矢印H方向の中間領域、且つ、矢印L方向の中間領域に設けられている。
【0068】
ここで、スタック2が発電運転しているとき、スタック2において矢印H方向の中間領域、矢印L方向の中間領域では、熱こもり等の影響でスタック2の温度が上昇し易い。これに対して、スタック2において矢印H方向の端領域、矢印L方向の端領域では、放熱等の影響で、温度は中間領域に比較して低下し易い。
【0069】
本実施形態によれば、図6に示すように、通路形成部材832の板体836,837の外壁面834において、輻射熱吸収膜88の上方の領域834uまたは下方の領域834dには、輻射熱吸収膜88が設けられていない。即ち、通路形成部材832の外壁面834においてスタック2の低温領域に対面する領域832lowには、輻射熱吸収膜88が積層されていない。更に、通路形成部材832の外壁面834において改質器4に対面する対面領域835には、輻射熱吸収膜88が積層されていない。更に、図6に示すように、輻射熱吸収膜88は、矢印L方向において通路形成部材832の一端832e、および、他端832fには形成されていない。
【0070】
このような本実施形態によれば、スタック2の高温領域付近の温度と低温領域付近の温度との間における温度差が小さくされる。このためスタック2における各部位における温度ムラを抑制させるのに有利である。従って、スタック2における各部位の発電ムラを抑制させるのに有利である。この意味においてもスタック2の発電効率を向上できる。
【0071】
(実施形態4)
図7は実施形態4を示す。本実施形態は実施形態1,2,3と基本的には同様の構成、同様の作用効果を有する。以下、相違する部分を中心として説明する。図7に示すように、カソードガス通路8を形成する通路形成部材832の板体836,837の外壁面834に、輻射熱吸収膜88が積層されている。輻射熱吸収膜88は、スタック2のうち相対的に高温となる高温領域に対面する。輻射熱吸収膜88は、高さ方向(矢印H方向)において間隔αを介して複数個に分断されている。隣設する輻射熱吸収膜88間では、通路形成部材832の金属製の板体836,837の外壁面834の母材が露出している。輻射熱吸収膜88がスタック2の輻射熱を吸収する度合が高いため、スタック2の高温領域2highが過剰に冷却されてしまう場合には、輻射熱吸収膜88を広面積化させるのでなく、図7に示すように分断させることが好ましい。更に、図7に示すように、輻射熱吸収膜88は、矢印L方向において通路形成部材832の一端832e、および、他端832fには形成されていない。
【0072】
なお本実施形態によれば、輻射熱吸収膜88は矢印H方向において複数個に分断されているが、輻射熱吸収膜88は矢印L方向において複数個に分断されていても良い。他の実施形態についても輻射熱吸収膜88を分断させても良い。
【0073】
(実施形態5)
図8は実施形態5を示す。本実施形態は実施形態1〜4と基本的には同様の構成、同様の作用効果を有する。以下、相違する部分を中心として説明する。図8に示すように、通路形成部材832の外壁面834のうち、スタック2の高温領域2highに対面する領域には、厚みt1をもつ第1輻射熱吸収膜88aが積層されている。外壁面834のうち、スタック2の低温領域2lowに対面する領域に832lowには、厚みt2(t2<t1)をもつ第2輻射熱吸収膜88bが積層されている。輻射熱吸収膜88a,88bの厚みは、輻射熱の吸収性に影響を与える。通路形成部材832の外壁面834において改質器4に対面する対面領域835には、輻射熱吸収膜が積層されていない。改質器4の温度をできるだけ高温に維持させるためである。
【0074】
(実施形態6)
図9および図10は実施形態6を示す。本実施形態は前記した実施形態と基本的には同様の構成、同様の作用効果を有する。以下、相違する部分を中心として説明する。図9に示すように、スタック2の両側には、カソードガスを通過させる第2通路83をもつ通路形成部材832A,832Bが形成されている。通路形成部材832A,832Bは、互いに対向する金属製の板体836,837と、金属製の底板838とをそれぞれ有する。板体836,837は、カソードガスをスタック2に向けて矢印C6方向に吹き出す出口84をもつ。
【0075】
図10に示すように、スタック2は、複数の燃料電池20を通路22rを介して一方向(矢印L方向)に並設させることにより形成されている。図9および図10から理解できるように、輻射熱吸収膜88は、スタック2のうち相対的に高温となる高温領域2highに対面する。このため輻射熱吸収膜88は、矢印H方向の中間領域、且つ、矢印L方向の中間領域に設けられている。図9に示すように、通路形成部材832の外壁面834において改質器4に対面する対面領域835には、輻射熱吸収膜88が積層されていない。このため、改質器4の温度を改質反応に適するように高めに維持させるのに有利である。なお、図9では、輻射熱吸収膜88の厚みは強調されて図示されている。
【0076】
(実施形態7)
図11は実施形態7を示す。本実施形態は前記した実施形態と基本的には同様の構成、同様の作用効果を有する。以下、相違する部分を中心として説明する。輻射熱吸収膜88の厚みは、輻射熱の吸収性に影響を与える。輻射熱吸収膜88の厚みが過剰に薄いと、輻射熱吸収膜88が島状膜の集合となり易く、輻射熱の吸収を低下させる傾向がある。輻射熱吸収膜88の厚みが確保されていると、輻射熱の吸収が良好となる。この点について本実施形態によれば、図11に示すように、輻射熱吸収膜88の中央部88mの厚みt3は、輻射熱吸収膜88の縁88eの厚みt4より相対的に厚い。
【0077】
スタック2のうち相対的に高温領域においては、輻射熱吸収膜88の厚みは厚くなる。このためスタック2のうち相対的に高温となる高温領域付近の熱を、効率よく通路形成部材832の輻射熱吸収膜88に伝達できる。換言すると、スタック2の高温領域の温度を効率よく低下させることができる。このためスタック2における各部位における温度ムラを抑制させるのに有利である。従って、スタック2における各部位の発電ムラを抑制させるのに有利である。この意味においてもスタック2の発電効率を向上できる。なお本実施形態を他の実施形態に適用しても良い。
【0078】
(実施形態8)
図12は実施形態8を示す。本実施形態は実施形態1〜7と基本的には同様の構成、同様の作用効果を有する。便宜上、図12では矢印H方向を横方向として図示する。以下、相違する部分を中心として説明する。図12に示すよう通路形成部材832の板体836,837の外壁面834の表面834xには、輻射熱吸収膜88が積層されている。当該外壁面834の表面834yには輻射熱吸収膜88が積層されていない。表面834xは表面834yよりも粗面化されている。この場合、輻射熱吸収膜88が積層される前にブラスト処理により粗面化できる。この場合、通路形成部材832の板体836,837のうち輻射熱吸収膜88が積層されるべき板部分に、ショット、グリッド、砂粒等の微小投射剤を投射させることができる。当該板体836,837のうち輻射熱吸収膜88を積層させない領域にはマスキングすることが好ましい。
【0079】
一般的には、輻射熱吸収膜88が粗面化されていると、輻射熱の散乱が増加し、輻射熱吸収膜88による輻射熱の吸収性が良好となると言われている。この点について本実施形態によれば、通路形成部材832の外壁面834のうち輻射熱吸収膜88が設けられている表面834xは、通路形成部材832の外壁面834のうち輻射熱吸収膜88が設けられていない領域の表面834yよりも粗面化されている。輻射熱吸収膜88の表面834xが粗面化され、輻射熱の吸収率を高めることができる。このため、燃料電池のうち相対的に高温領域付近の熱を、効率よく通路形成部材832の輻射熱吸収膜88に伝達できる。言い換えると、スタック2のうち相対的に高温領域の温度を効率よく低下させることができる。このため燃料電池における各部位における温度ムラを抑制させるのに有利である。なお本実施形態を他の実施形態に適用しても良い。
【0080】
(その他)
本発明は上記し且つ図面に示した実施形態のみに限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施できる。実施形態1では、スタック2の高さ方向の中央部を閾位置2mとし、閾位置2mよりも上の領域は高温領域2high、閾位置2mよりも下の領域は低温領域2lowとされているが、これに限らず、スタック2の形状や構造によっては変更しても良い。即ち、スタック2の上端から1/3の位置を閾位置2mとし、閾位置2mよりも上の領域は高温領域2high、閾位置2mよりも下の領域は低温領域2lowとされていても良い。あるいは、スタック2の上端から2/3の位置を閾位置2mとし、閾位置2mよりも上の領域は高温領域2high、閾位置2mよりも下の領域は低温領域2lowとされていても良い。あるいは、スタック2の上端から3/4の位置を閾位置2mとし、閾位置2mよりも上の領域は高温領域2high、閾位置2mよりも下の領域は低温領域2lowとされていても良い。
【0081】
実施形態1では、通路形成部材832の外壁面834のうち改質器4の側面4sに対面する対面領域835には、輻射熱吸収膜88が設けられていないが、これに限らず、改質器4の温度が維持できる場合には、対面領域835に輻射熱吸収膜88が設けられていても良い。輻射熱吸収膜88は矢印H方向および矢印L方向のうちの少なくとも一つの方向において分断されていても良い。実施形態1では、スタック2は、カソードガス通路8の第2通路83を挟むように2組設けられているが、これに限らず、1組設けられている構造でも良い。燃料電池20は平板型とされているが、これに限らず、チューブ型としても良い。図1では、排気ガスを排出させる排出通路73は、排気通路形成部材700と内側部材801と形成されているが、これに限らず、内側部材801と断熱層6とで形成されていても良い。カソードガスを通過させる通路形成部材832は薄い箱形状とされているが、これに限らず、パイプ形状でも良い。
【0082】
本明細書から次の技術的思想が把握される。
[付記項1]アノードガスとカソードガスとで発電する燃料電池のスタックと、アノードガスを前記スタックに供給するためのアノードガス通路と、カソードガスを前記スタックに供給するためのカソードガス通路とを具備しており、カソードガス通路を形成する通路形成部材の外壁面の少なくとも一部は、スタックに対面すると共に前記スタックからの輻射熱を吸収する輻射熱吸収膜を備えている。輻射熱吸収膜は、スタックのうち高温領域に対面することが好ましい。輻射熱吸収膜は通路形成部材の延びる方向に膜状に延設されていることが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明は例えば定置用、車両用、電気機器用、電子機器用等の燃料電池装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0084】
2はスタック、2highは高温領域、2lowは低温領域、20は燃料電池、21はアノード、22はカソード、23は電解質膜、25はアノードガス通路、4は改質器、40は蒸発部、42は改質部、5は燃焼用空間、50は燃焼火炎、6は断熱層、7は排気ガス通路、8はカソードガス通路、832は通路形成部材、836,837は板体、838は底板、839は側板、88は輻射熱吸収膜を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アノードガスとカソードガスとで発電するとともに、発電時に相対的に高温となる高温領域と前記高温領域よりも相対的に低温となる低温領域とを形成する燃料電池のスタックと、
アノードガスを前記スタックに供給するためのアノードガス通路と、
カソードガスを前記スタックに供給するためのカソードガス通路とを具備しており、
前記カソードガス通路を形成する通路形成部材の外壁面の少なくとも一部は、
前記スタックに対面すると共に前記スタックからの輻射熱を吸収する輻射熱吸収膜を備えており、前記輻射熱吸収膜は、前記スタックのうち前記高温領域に対面すると共に、前記通路形成部材の延びる方向に膜状に延設されている燃料電池装置。
【請求項2】
請求項1において、前記通路形成部材の前記外壁面のうち前記スタックの前記低温領域に対面する領域には、前記輻射熱吸収膜が設けられていない燃料電池装置。
【請求項3】
請求項1または2において、前記スタックに供給するアノードガスを燃料原料から生成させる改質器が設けられており、
前記通路形成部材の前記外壁面のうち前記改質器に対面する領域には前記輻射熱吸収膜が設けられていない燃料電池装置。
【請求項4】
請求項1〜3のうちの一項において、高さ方向を矢印H方向とするとき、前記通路形成部材の前記外壁面のうち前記輻射熱吸収膜は、前記スタックの前記高温領域に対面するように、矢印H方向の中間領域に設けられており、
前記通路形成部材の前記外壁面のうち前記輻射熱吸収膜の少なくとも上方または下方の領域には、前記輻射熱吸収膜が設けられていない燃料電池装置。
【請求項5】
請求項1〜3のうちの一項において、高さ方向を矢印H方向とし、矢印H方向と交差すると共に前記スタックが延びる方向を矢印L方向とするとき、前記スタックは、前記電解質膜をアノードおよびカソードで挟んだ構造をもつ前記燃料電池を矢印L方向に間隔を隔てて並設して形成されており、
前記通路形成部材の前記外壁面のうち前記輻射熱吸収膜は、前記スタックの前記高温領域に対面するように、矢印H方向の中間領域且つ矢印L方向の中間領域に設けられており、
前記通路形成部材の前記外壁面のうち矢印H方向において前記輻射熱吸収膜の上方または下方の領域には前記輻射熱吸収膜が設けられておらず、且つ、矢印L方向において前記輻射熱吸収膜よりも外方の領域には、前記輻射熱吸収膜が設けられていない燃料電池装置。
【請求項1】
アノードガスとカソードガスとで発電するとともに、発電時に相対的に高温となる高温領域と前記高温領域よりも相対的に低温となる低温領域とを形成する燃料電池のスタックと、
アノードガスを前記スタックに供給するためのアノードガス通路と、
カソードガスを前記スタックに供給するためのカソードガス通路とを具備しており、
前記カソードガス通路を形成する通路形成部材の外壁面の少なくとも一部は、
前記スタックに対面すると共に前記スタックからの輻射熱を吸収する輻射熱吸収膜を備えており、前記輻射熱吸収膜は、前記スタックのうち前記高温領域に対面すると共に、前記通路形成部材の延びる方向に膜状に延設されている燃料電池装置。
【請求項2】
請求項1において、前記通路形成部材の前記外壁面のうち前記スタックの前記低温領域に対面する領域には、前記輻射熱吸収膜が設けられていない燃料電池装置。
【請求項3】
請求項1または2において、前記スタックに供給するアノードガスを燃料原料から生成させる改質器が設けられており、
前記通路形成部材の前記外壁面のうち前記改質器に対面する領域には前記輻射熱吸収膜が設けられていない燃料電池装置。
【請求項4】
請求項1〜3のうちの一項において、高さ方向を矢印H方向とするとき、前記通路形成部材の前記外壁面のうち前記輻射熱吸収膜は、前記スタックの前記高温領域に対面するように、矢印H方向の中間領域に設けられており、
前記通路形成部材の前記外壁面のうち前記輻射熱吸収膜の少なくとも上方または下方の領域には、前記輻射熱吸収膜が設けられていない燃料電池装置。
【請求項5】
請求項1〜3のうちの一項において、高さ方向を矢印H方向とし、矢印H方向と交差すると共に前記スタックが延びる方向を矢印L方向とするとき、前記スタックは、前記電解質膜をアノードおよびカソードで挟んだ構造をもつ前記燃料電池を矢印L方向に間隔を隔てて並設して形成されており、
前記通路形成部材の前記外壁面のうち前記輻射熱吸収膜は、前記スタックの前記高温領域に対面するように、矢印H方向の中間領域且つ矢印L方向の中間領域に設けられており、
前記通路形成部材の前記外壁面のうち矢印H方向において前記輻射熱吸収膜の上方または下方の領域には前記輻射熱吸収膜が設けられておらず、且つ、矢印L方向において前記輻射熱吸収膜よりも外方の領域には、前記輻射熱吸収膜が設けられていない燃料電池装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2013−114853(P2013−114853A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−258994(P2011−258994)
【出願日】平成23年11月28日(2011.11.28)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月28日(2011.11.28)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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