説明

燃料電池装置

【課題】下流側の触媒まで有効に利用することができる燃料電池装置を提供する。
【解決手段】改質流路32を流れる被改質ガスは触媒39との接触によって燃料ガスに改質される。このとき、燃焼部18での燃焼熱によって改質器20は加熱される。改質流路32では、最も外側に配置される第2蛇行流路38のみが改質器20の側壁に沿って延びる。従って、第2蛇行流路38内の被改質ガスには側壁から燃焼熱が伝達される。その一方で、改質器20の側壁に接触しない上流側流路34には燃焼熱は伝達されにくい。その結果、上流側流路34に比べて第2蛇行流路38で被改質ガスをより効率的に加熱することができる。第2蛇行流路38内の触媒が被改質ガスの改質に用いられても、第2蛇行流路38内で被改質ガスを十分に加熱することができる。第2蛇行流路38で加熱特性を向上させることができる。こうして下流側の触媒39まで有効に利用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池セルに供給する燃料ガスを生成する改質器を備える燃料電池装置に関する。
【背景技術】
【0002】
固体電解質型燃料電池(Solid Oxide Fuel Cell:SOFC)装置には改質器が組み込まれる。改質器は、供給される原料ガスである被改質ガス(例えば都市ガス等)を改質触媒によって改質して燃料ガスを生成し、この燃料ガスを燃料電池セルに供給する。燃料電池セルの発電工程における動作温度は600℃〜800℃と高温であるため、燃料電池セルに供給する燃料ガスは、所定の温度以上に加熱された燃料ガスであることが必要である。このため、改質器は、燃料電池セルから排出された発電に寄与しなかった燃料ガスと酸化剤ガスとの混合ガスを燃焼させる燃焼部の上方に配置され、混合ガスの燃焼熱や、燃料電池セルからの輻射熱などによって加熱される。
【0003】
特許文献1に記載される改質器では、改質触媒が充填された改質部は、気化部から供給管まで改質器の短手方向に蛇行して延びる流路を備えている。流路に被改質ガスが供給されると、流路の上流側の改質触媒から改質反応に利用されていく。利用された改質触媒では例えば炭素析出によって劣化し、その劣化に伴って劣化した触媒よりもさらに下流側の改質触媒が改質反応に順に利用されていく。こうした改質反応によって生成された燃料ガスが供給管を通じて燃料電池セルに供給される。このとき、燃料室での燃料によって流路内の燃料ガスは加熱される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−195625号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に、改質反応によって改質触媒では吸熱反応が起きるので、吸熱反応が起きた改質触媒の位置では被改質ガスの温度低下が生じる。前述のように、改質触媒の劣化に伴って、改質反応に利用される改質触媒は下流側のものに移動していくので、流路の下流端まで十分な距離がない下流側の改質触媒によって改質された後の燃料ガスは十分に熱せられないまま燃料電池セルに供給されてしまい、燃料電池セルの動作温度を低下させてしまう。従って、動作温度を低下させない程度の余裕を持って改質触媒の取り替えを行う必要があり、下流側の改質触媒を有効に利用することができなかった。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、下流側の触媒まで有効に利用することができる燃料電池装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明によれば、
燃料ガスと酸化剤ガスとにより発電を行う燃料電池セルを備えた燃料電池装置において、
前記燃料電池セルの内部に形成されて、前記燃料電池セルの下部から上部に向かって前記燃料ガスを流す燃料ガス流路と、
前記燃料電池セルの外部に形成されて、前記燃料電池セルの下部から上部に向かって前記酸化剤ガスを流す酸化剤ガス流路と、
前記燃料電池セルの上方に配置されて、前記燃料ガス流路から排出された前記燃料ガスと前記酸化剤ガス流路から排出された前記酸化剤ガスとを混合して燃焼させる燃焼部と、
前記燃料電池セルの上方に配置されて、供給される被改質ガスを前記燃焼部からの熱によって前記燃料ガスに改質する触媒を充填した改質流路を有する改質器と、を備え、
前記改質流路は、
当該改質流路の上流端から前記改質器の側壁に接触せずに延びる上流側流路と、
前記上流側流路の下流端から分岐して当該改質流路の下流端まで蛇行して延びる1対の下流側流路と、を有しており、
各前記下流側流路は、前記上流側流路の下流端から前記改質器の側壁に接触せずに延びる第1蛇行流路と、前記第1蛇行流路よりも外側に配置されて前記第1蛇行流路の下流端から前記改質流路の下流端まで前記改質器の側壁に接触して延びる第2蛇行流路と、を有する燃料電池装置が提供される。
【0008】
こうした燃料電池装置では、改質器に被改質ガスが供給されると、被改質ガスは、改質器内の改質流路を流れ、改質流路内の触媒との接触によって燃料ガスに改質される。このとき、燃焼部での燃料ガス及び酸化剤ガスの燃焼による燃焼熱や燃料電池セルからの輻射熱によって改質器は加熱される。改質流路では、下流側流路のうちで、内側の第1蛇行流路よりも外側に配置される第2蛇行流路のみが改質器の側壁に沿って延びる。従って、下流側流路の最も外側の第2蛇行流路内の被改質ガスには側壁から燃焼熱が伝達される。その一方で、改質器の側壁に接触しない上流側流路や第1蛇行流路には燃焼熱は伝達されにくい。その結果、上流側流路や第1蛇行流路に比べて第2蛇行流路では被改質ガスをより効率的に加熱することができる。第2蛇行流路内の触媒が被改質ガスの改質に用いられても、第2蛇行流路内で被改質ガスを十分に加熱することができる。すなわち、第2蛇行流路で加熱特性を向上させることができる。こうして下流側の触媒まで有効に利用することができる。
【0009】
また、本発明に係る燃料電池装置によれば、前記下流側流路は前記改質器の長辺に沿って蛇行することが好ましい。こうして下流側流路のうちで最も外側の第2蛇行流路が改質器の長辺側の側壁に接触しつつ延びるので、第2蛇行流路内の被改質ガスは長い時間にわたって加熱される。その結果、燃焼部での燃焼による加熱の効率を高めることができる。
【0010】
また、本発明に係る燃料電池装置によれば、前記下流側流路の第2蛇行流路は、前記改質器の長辺側の側壁及び短辺側の側壁の両方に接触して延びることが好ましい。こうして第2蛇行流路が改質器の長辺側の側壁及び短辺側の側壁の両方に接触しつつ延びるので、第2蛇行流路内の被改質ガスはさらに長い時間にわたって加熱される。その結果、燃焼部での燃焼による加熱の効率をさらに高めることができる。
【0011】
また、本発明に係る燃料電池装置によれば、前記被改質ガスの流れ方向に直交する前記下流側流路の断面積は、前記被改質ガスの流れ方向に直交する前記上流側流路の断面積よりも小さく設定されることが好ましい。こうした流路の断面積の相違によって、上流側流路内の被改質ガスの流速よりも下流側流路内の被改質ガスの流速を大きく設定することができる。こうして下流側流路内の被改質ガスは上流側流路内の被改質ガスに比べてより大きな流速で触媒に衝突するので、上流側流路内に比べて下流側流路内で被改質ガスをより大きく攪拌することができる。その結果、下流側流路では、上流側流路に比べて、被改質ガスの流れに直交する方向に熱拡散効果を高めることができるので、下流側流路内では改質器の壁面から被改質ガスにより効率的に熱を伝達することができる。
【発明の効果】
【0012】
以上のように、本発明によれば、下流側の触媒まで有効に利用することができる燃料電池装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態に係る燃料電池装置の燃料電池モジュールの外観を示す斜視図である。
【図2】図1の燃料電池モジュールの断面図である。
【図3】図1の燃料電池モジュールの断面図である。
【図4】図1のケーシングから一部の外板を取り除いた状態を示す斜視図である。
【図5】図2に相当する模式図であって、酸化剤ガス及び燃焼ガスの流れを示す模式図である。
【図6】図3に相当する模式図であって、酸化剤ガス及び燃焼ガスの流れを示す模式図である。
【図7】燃料電池セルユニットを示す部分断面図である。
【図8】燃料電池セルスタックの構造を示す斜視図である。
【図9】一実施例に係る改質器の外観を示す斜視図である。
【図10】図9の改質器の上壁を取り除いた状態を示す斜視図である。
【図11】改質器の内部構造を示す平面図である。
【図12】図11の12−12線に沿った断面図である。
【図13】他の実施例の内部構造を示す平面図である。
【図14】比較例の内部構造を示す平面図である。
【図15】本発明の効果を検証するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照しながら本発明の一実施形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。図1は、本発明の一実施形態に係る燃料電池装置の燃料電池モジュール2の外観を示す斜視図である。燃料電池モジュール2は、固体電解質型燃料電池(SOFC)装置の一部を構成するものである。すなわち、燃料電池装置は、燃料電池モジュール2と、補機ユニット(図示せず)と、を備える。
【0015】
図1においては、燃料電池モジュール2の高さ方向をy軸方向としている。このy軸に直交する平面に沿ってx軸及びz軸を定義し、燃料電池モジュール2の短手方向(幅方向)に沿った方向をx軸方向とし、燃料電池モジュール2の長手方向(長さ方向)に沿った方向をz軸方向としている。図2以降において図中に記載しているx軸、y軸、及びz軸は、図1におけるx軸、y軸、及びz軸を基準としている。また、z軸の負方向に沿った方向をA方向とし、x軸の正方向に沿った方向をB方向としている。
【0016】
燃料電池モジュール2は、燃料電池セル(詳細は後述する)を収容するケーシング56と、ケーシング56の上部に設けられている熱交換器22と、を備える。ケーシング56は例えば直方体形状に形成されている。熱交換器22はケーシング56の上面上に配置されている。ケーシング56内には後述の燃料電池セル集合体が配置されている。ケーシング56には、被改質ガス供給管60と、水供給管62と、が連結されている。その一方で、熱交換器22には、発電用空気導入管74と、燃焼ガス排出管82と、が連結されている。
【0017】
被改質ガス供給管60は、ケーシング56の内部に都市ガスといった改質用の被改質ガスを供給する管路である。水供給管62は、被改質ガスを水蒸気改質する際に用いられる水をケーシング56の内部に供給する管路である。発電用空気導入管74は、改質によって生成された燃料ガスと発電反応を起こさせるための発電用空気(酸化剤ガス)を供給する管路である。燃焼ガス排出管82は、発電に寄与しなかった残余の燃料ガス及び酸化剤ガスを燃焼させた結果生じる燃焼ガスを外部に排出する管路である。
【0018】
次に、図2〜図4を参照しながら、本発明に係る燃料電池装置の燃料電池モジュール2の内部構造について説明する。図2は、図1のxy平面に平行な切断面に沿って燃料電池モジュール2を切断した断面図である。図3は、図1のyz平面に平行な切断面に沿って燃料電池モジュール2を切断した断面図である。図4は、図1に示す燃料電池モジュール2からケーシング56の一部を取り外した状態を示す斜視図である。
【0019】
図2〜図4に示すように、ケーシング56は燃料電池モジュール2の燃料電池セル集合体12の全体を覆っている。燃料電池セル集合体12は、相互に平行に配置される燃料電池セルユニット16の集合体から形成されている。図5に示すように、燃料電池セル集合体12は、全体としてB方向よりA方向の方が長いほぼ直方体形状であり、改質器20の下面に沿ってxz平面に平行に広がる上面と、燃料ガスタンク68の上面に沿ってxz平面に平行に広がる下面と、yz平面に平行に広がる1対の長辺側面と、xy平面に平行に広がる1対の短辺側面と、を備えている。
【0020】
本実施形態の場合、水供給管62から供給される水を蒸発させるための蒸発混合器は改質器20の内部に設けられている。蒸発混合器は、後述の燃焼部18で燃焼される燃焼ガスにより加熱され、水を水蒸気にすると共に、この水蒸気と、被改質ガス(都市ガス等)と、空気と、を混合するためのものである。被改質ガス供給管60及び水供給管62は、ケーシング56の内部に導かれた後、共に改質器20に繋がる。より具体的には、図3に示すように、被改質ガス供給管60及び水供給管62は、改質器20の上流端である図中右側の端部に繋がれている。
【0021】
改質器20は、燃料電池セル集合体12の上方に形成された燃焼部18の更に上方に配置されている。従って、改質器20は、発電反応後の発電に寄与しなかった残余の燃料ガス及び酸化剤ガスによる燃焼熱によって熱せられ、蒸発混合器としての役割と、改質反応を起こす改質器としての役割とを果たすように構成されている。改質器20の下流端(図3の左端)には燃料供給管66の上端が接続されている。この燃料供給管66の下端側66a(図2参照)は、燃料ガスタンク68内に入り込むように配置されている。なお、改質器20の詳細は後述する。
【0022】
図3及び図4に示すように、燃料ガスタンク68は燃料電池セル集合体12の真下に設けられている。また、燃料ガスタンク68内に挿入された燃料供給管66の下端側66aの外周には、長手方向(A方向)に沿って複数の小穴(図示せず)が形成されている。改質器20で生成された燃料ガスは、これら複数の小穴(図示せず)によって燃料ガスタンク68内に長手方向に均一に供給されるようになっている。燃料ガスタンク68に供給された燃料ガスは、燃料電池セル集合体12を構成する各燃料電池セルユニット16の内部にある燃料ガス流路(詳細は後述する)内に供給され、燃料電池セルユニット16内をその下部から上部に向かって上昇して、燃焼部18に至るようになっている。
【0023】
次に、図2〜図4に加えて図5及び図6を参照しながら、燃料電池モジュール2の内部に発電用空気を供給するための構造を説明する。図5は、図2に対応する模式図であって、酸化剤ガス及び燃焼ガスの流れを示す図である。図6は、図3に対応する模式図であって、同様に酸化剤ガス及び燃焼ガスの流れを示す図である。これらの図に示すように、改質器20の上方に熱交換器22が配置されている。熱交換器22内には、複数の燃焼ガス配管70と、この燃焼ガス配管70の周囲に形成された発電用空気流路72と、が設けられている。
【0024】
熱交換器22の上面における一端側(図3における右端)には上述の発電用空気導入管74が取り付けられている。この発電用空気導入管74により、発電用空気流量調整ユニット(図示しない)から熱交換器22内に酸化剤ガスが導入される。熱交換器22の上側の他端側(図3における左端)には、発電用空気流路72の1対の出口ポート76a、76aが形成されている。この出口ポート76aの各々はそれぞれ連絡流路76につながっている。さらに、図2に示すように、ケーシング56の幅方向の両側の外側には発電用空気供給路77が形成されている。
【0025】
従って、発電用空気供給路77には、発電用空気流路72の出口ポート72a及び連絡流路76から酸化剤ガスが供給される。この発電用空気供給路77は、燃料電池セル集合体12の長手方向に沿って形成されている。さらに、その下方側であり且つ燃料電池セル集合体12の下方側に対応する位置に、発電室10内の燃料電池セル集合体12の各燃料電池セルユニット16に向けて酸化剤ガスを吹き出すための複数の吹出口78a、78bが形成されている。これらの吹出口78a、78bから吹き出された酸化剤ガスは、各燃料電池セルユニット16の外側に沿って燃料電池セルユニット16の下部から上部に向かって流れる。すなわち、燃料電池セルユニット16、16同士の間に酸化剤ガス流路79が形成される。
【0026】
次に、燃料ガスと酸化剤ガスとが燃焼して生成される燃焼ガスを排出するための構造を説明する。燃料電池セルユニット16の上方で発生した燃焼ガスは、燃焼部18内を上昇し、整流板21に至る。整流板21には開口21aが設けられており、開口21a内に燃焼ガスが導かれる。この開口21aを通った燃焼ガスは熱交換器22の他端側に至る。熱交換器22内には、燃焼部18で燃料ガスと酸化剤ガスとが燃焼して生成された燃焼ガスを排出するための複数の燃焼ガス配管70が設けられている。これらの燃焼ガス配管70の下流端側には、燃焼ガス排出管82が接続され、排出管82によって燃焼ガスが外部に排出されるようになっている。
【0027】
次に、図7を参照しながら燃料電池セルユニット16について説明する。図7は、燃料電池セルユニット16を示す部分断面図である。図7に示すように、燃料電池セルユニット16は、燃料電池セル84と、この燃料電池セル84の上下方向端部にそれぞれ接続された内側電極端子86と、を備えている。燃料電池セル84は、上下方向に延びる管状構造体であり、内部に燃料ガス流路88を形成する円筒形の内側電極層90と、内側電極層90と同心円状に広がる円筒形の外側電極層92と、内側電極層90と外側電極層92との間に配置された電解質層94と、を備えている。内側電極層90は、燃料ガスが通過する燃料極であり、(−)極となり、一方、外側電極層92は、空気と接触する空気極であり、(+)極となっている。
【0028】
燃料電池セルユニット16の上端及び下端に取り付けられた内側電極端子86は同一構造であるため、ここでは、上端に取り付けられた内側電極端子86について具体的に説明する。内側電極層90の上部90aは、電解質層94及び外側電極層92に対して露出された外周面90bと上端面90cとを備えている。内側電極端子86は、導電性のシール材96を介して内側電極層90の外周面90bに接続され、さらに、内側電極層90の上端面90cに直接接触することにより、内側電極層90に電気的に接続されている。内側電極端子86の中心部には、内側電極層90の燃料ガス流路88と連通する燃料ガス流路98が形成されている。
【0029】
内側電極層90は、例えば、Niと、CaやY、Sc等の希土類元素から選ばれる少なくとも一種をドープしたジルコニアとの混合体、Niと、希土類元素から選ばれる少なくとも一種をドープしたセリアとの混合体、Niと、Sr、Mg、Co、Fe、Cuから選ばれる少なくとも一種をドープしたランタンガレードとの混合体、の少なくとも一種から形成される。
【0030】
電解質層94は、例えば、Y、Sc等の希土類元素から選ばれる少なくとも一種をドープしたジルコニア、希土類元素から選ばれる少なくとも一種をドープしたセリア、Sr、Mgから選ばれる少なくとも一種をドープしたランタンガレート、の少なくとも一種から形成される。
【0031】
外側電極層92は、例えば、Sr、Caから選ばれた少なくとも一種をドープしたランタンマンガナイト、Sr、Co、Ni、Cuから選ばれた少なくとも一種をドープしたランタンフェライト、Sr、Fe、Ni、Cuから選ばれた少なくとも一種をドープしたランタンコバルタイト、銀、などの少なくとも一種から形成される。
【0032】
次に、図8を参照しながら燃料電池セルスタック14について説明する。図8は、燃料電池セルスタック14を示す斜視図である。図8に示すように、燃料電池セルスタック14は、16本の燃料電池セルユニット16を備え、各燃料電池セルユニット16の下端及び上端が、それぞれ、セラミック製の燃料ガスタンク上板68a及び上支持板100により支持されている。これらの燃料ガスタンク上板68a及び上支持板100には、内側電極端子86が貫通可能な貫通穴がそれぞれ形成されている。
【0033】
さらに、燃料電池セルユニット16には集電体102及び外部端子104が取り付けられている。この集電体102は、燃料極である内側電極層90に取り付けられた内側電極端子86と、隣接する燃料電池セルユニット16の空気極である外側電極層92の外周面と、を電気的に接続する。さらに、燃料電池セルスタック14の端に位置する2個の燃料電池セルユニット16の上側端及び下側端の内側電極端子86にはそれぞれ外部端子104が接続されている。これらの外部端子104は、隣接する燃料電池セルスタック14の端にある燃料電池セルユニット16の外部端子104に接続され、160本の燃料電池セルユニット16の全てが直列接続される。
【0034】
次に、図9〜図12を参照しながら改質器20について説明する。図9は、改質器20の外観を示す斜視図である。図10は、図9に示す改質器20から上壁を取り去った斜視図である。図11は、図10に示す改質器20の内部構造を示す平面図である。図12は、図11の12−12線に沿った断面図である。なお、図10では触媒の図示を省略した。
【0035】
図9及び図10に示すように、改質器20は平たい直方体形状の筐体25を備えている。筐体25は、その短手方向に相互に平行に広がる1対の側壁25a、25bを有している。改質器20の上流端の側壁25aには前述の被改質ガス供給管60及び水供給管62が連結され、改質器20の下流端の側壁25bには前述の燃料供給管66が連結されている。筐体25は、その長手方向に相互に平行に広がる1対の側壁25c、25dと、側壁25a〜25dに連続して相互に平行に広がる上壁25e及び底壁25fと、をさらに備えている。
【0036】
図10及び図11から明らかなように、改質器20は、側壁25a側すなわち上流側に形成される蒸発混合部26と、側壁25b側すなわち下流側に形成される改質部27と、を備えている。蒸発混合部26と改質部27とは、側壁25c、25dの間に延びる1枚の仕切り壁28で相互に仕切られており、仕切り壁28には複数の通気孔29が形成されている。蒸発混合部26では、水供給管62から供給された水が水蒸気に気化される。この水蒸気が、被改質ガス供給管60から供給された被改質ガスと混合される。蒸発混合部26には複数のリブによって様々に蛇行する流路が形成される。
【0037】
改質部27は、仕切り壁28に上流端で接続されて側壁25c、25dに沿って相互に平行に直線的に延びる1対のリブ30、30と、リブ30、30を外側から取り囲む1枚のリブ31と、によって形成される改質流路32を備える。リブ31は、リブ30の外向き面に内向き面で対向しつつそれぞれリブ30に平行に延びる直線リブ33と、直線リブ33、33に連続してリブ30、30の下流端に内向き面で対向する湾曲リブ34と、から形成される。湾曲リブ34の外向き面は燃料供給管66の上流端に対向する。
【0038】
改質流路32は、リブ30、30によって形成されて通気孔29に上流端で接続される上流側流路35と、上流側流路35の下流端に上流端で接続されて上流側流路35の下流端から相互に反対向きに分岐する1対の下流側流路36、36と、を備える。下流側流路36は改質流路32の下流端まで蛇行しつつ延びる。本実施形態では、下流側流路36は改質器20の筐体25の長辺に沿って蛇行する。各下流側流路36は、リブ30と直線リブ33との間に形成される内側流路37と、直線リブ33と改質器20の側壁25c又は側壁25dとの間に形成される外側流路38と、から形成される。外側流路38、38の下流端同士は改質器20の側壁25bと湾曲リブ34との間で合流する。なお、本実施形態では、下流側流路36は、1つの内側流路37と1つの外側流路38とから構成されているが、複数の内側流路37を備えてもよい。すなわち、下流側流路36は2回以上にわたって蛇行してもよい。
【0039】
図10〜図12から明らかなように、上流側流路35及び下流側流路36内にはともに底壁25fを介して燃焼部18からの燃焼熱が伝達される。外側流路38のみが筐体25の側壁25b、25c及び25dに接触しており、外側流路38には側壁25b、25c及び25dを介して燃焼熱が伝達される。その一方で、本実施形態では、外側流路38は上流側流路35及び内側流路37を取り囲んでおり、上流側流路35及び内側流路37は、筐体25の側壁25a〜25dのいずれとも接触していないので、上流側流路35及び内側流路37内には側壁25a〜25dからの燃焼熱は伝達されにくい。
【0040】
図11から明らかなように、改質流路32にはその上流端から下流端まで触媒39が充填される。触媒39としては、Al23(アルミナ)の球体表面にNi(ニッケル)を担持させたものや、アルミナの球体表面にRu(ルテニウム)を担持させたものが適宜用いられる。その上流端から下流端に向かって改質流路32を流れる被改質ガスは、改質用空気や水と混合された後に触媒39との接触によって改質される。改質によって生成された燃料ガスは燃料供給管66に流入する。その後、前述したように、燃料ガスは各燃料電池セルユニット16に供給される。
【0041】
図12に示すように、被改質ガスの流れ方向に直交する上流側流路35の断面積は、同様に被改質ガスの流れ方向に直交する内側流路37の断面積よりも大きく設定される。また、内側流路37の断面積は、同様に被改質ガスの流れ方向に直交する外側流路38の断面積よりも大きく設定される。すなわち、改質流路32の上流端から下流端に向かって断面積は段階的に減少していく。その結果、改質流路32では、内側流路37内の被改質ガスの流速は、上流側流路35内の被改質ガスの流速よりも大きく設定される。また、外側流路38内の被改質ガスの流速は内側流路37内の被改質ガスの流速よりも大きく設定される。
【0042】
次に、燃料電池モジュール2の動作について説明する。燃料電池モジュール2の起動時、燃焼部18には、被改質ガス及び改質用空気が混合された混合ガスが改質器20を経由して供給されるとともに、酸化剤ガスが発電用空気導入管74を介して供給される。燃焼部18では、図示しない点火プラグによって着火された混合ガスと酸化剤ガスとが燃焼し、燃焼による燃焼熱は改質器20の筐体25の底壁28fや側壁25a〜25dを通じて蒸発混合部26及び改質部27を加熱する。同時に、燃焼によって生成された燃焼ガスは、熱交換器22内の燃焼ガス配管70を通過することによって、熱交換器22の発電用空気流路72内の酸化剤ガスを暖める。
【0043】
このとき、改質器20では改質部27において前述の混合ガスが触媒39と接触することによって、以下の式(1)に示す部分酸化改質反応POXが進行する。
mn+xO2 → bCO+cH2 (1)
この部分酸化改質反応POXによって燃料ガスが生成される。部分酸化改質反応POXは発熱反応であるので、生成された燃料ガスは発熱反応によって加熱されてその温度が上昇する。この燃料ガスは、燃料ガスタンク68から燃料電池セル集合体12を経由して燃料室18に供給される。その結果、燃料電池セル集合体12は燃焼部18及び燃料ガスタンク68によって上下方向から加熱される。
【0044】
その後、例えば燃料電池セル集合体12の温度に応じて、改質器20には、被改質ガス及び空気が混合された混合ガスに加えて水が供給される。改質器20はすでに高温に加熱されていることから、水は上記混合室で水蒸気の状態で混合ガスに混合される。このとき、改質器20では改質部27において混合ガスが触媒39と接触することによって、上述の部分酸化改質反応POXと後述の水蒸気改質反応SRとが併用されたオートサーマル改質反応ATRが進行する。
mn+xO2+yH2O → bCO+cH2 (2)
【0045】
その後、空気の供給を停止して水の供給を増加させることによって、改質器20では混合ガスが触媒39と接触することによって水蒸気改質反応SRが進行する。
mn+xH2O → bCO+cH2 (3)
この水蒸気改質反応SRでは、高温の被改質ガスと水蒸気とが触媒39の表面に接触することによって吸熱反応が発生する。この段階では、燃料電池セル集合体12は十分に高温に加熱されているので、吸熱反応が進行しても燃料電池セル集合体12で大幅な温度低下を招くことはない。燃焼部18では継続して燃焼が進行する。
【0046】
以上のように、燃料電池モジュール2の起動時、部分酸化改質反応POX、オートサーマル改質反応ATR及び水蒸気改質反応SRが順次進行することにより、燃料電池セル集合体12の温度が高温まで上昇した後、燃料電池セル集合体12では発電処理が開始される。発電処理中、改質器20内では改質効率の高い水蒸気改質反応SRが継続される。このとき、改質反応によって触媒39の表面には炭素が析出していくので、この炭素析出によって触媒39の表面積が減少する。また、被改質ガスに含まれる不純物等が触媒39の表面に付着することによって、触媒39の活性点が失われていく。こうして触媒39は劣化していく。触媒39の劣化に応じて、改質反応を生じさせる触媒39の位置は下流側に移動していく。
【0047】
改質器20では、下流側流路36では外側流路38のみが改質器20の筐体25の側壁25b、25c及び25dに接触して延びるので、側壁25b、25c及び側壁25dを介して外側流路38内の被改質ガスに燃焼部18から燃焼熱が伝達される。その一方で、改質器20の側壁25b、25c及び側壁25dに接触しない上流側流路35や内側流路37には燃焼熱は伝達されにくいので、上流側流路35や内側流路37に比べて外側流路38では被改質ガスをより効率的に加熱することができる。改質流路32では上流側に比べて下流側でより加熱特性を向上させることができる。その結果、外側流路38内の触媒39が被改質ガスの改質に用いられても、外側流路38内で被改質ガスを十分に加熱することができる。
【0048】
しかも、上流側流路35から内側流路37、外側流路38に向かうにつれて、その断面積の段階的な減少によって被改質ガスの流速が増大していく。その結果、下流に向かうにつれて被改質ガスはより大きな流速で触媒39に接触するので、被改質ガスは、上流側流路35に比べて内側流路37で、同様に、内側流路37に比べて外側流路38で、より大きく攪拌される。こうして上流側流路35や内側流路37に比べると、外側流路38では被改質ガスの流れ方向に直交する方向により熱拡散効果を高めることができる。その結果、改質流路32の上流側に比べて下流側でより加熱特性を向上させることができる。しかも、外側流路38、37同士は下流端で合流することから、合流地点で被改質ガスをさらに大きく攪拌することができる。
【0049】
上述したように、触媒39は改質反応を重ねることによって劣化していく。その結果、改質反応を生じさせる触媒39の位置が下流側に移動していく。しかしながら、本発明によれば、上流側に比べて下流側でより加熱特性を向上させることができるので、たとえ改質反応を生じさせる触媒39の位置が下流側に移動しても、下流側流路36では上流側流路35に比べて燃料室18からの燃焼熱が筐体25を通じて被改質ガスにより効率的に伝達される。従って、本発明では、改質流路32の下流側にある触媒39まで有効に利用することができる。その結果、触媒39を取り替える回数を減らすことができる。
【0050】
次に、本発明の効果を検証した。検証にあたって、本発明の第1実施例として上述の改質器20を用いる一方で、第2実施例として、すべての流路が等しい断面積を有する改質器20を想定した。ここで、第2実施例に係る改質器20では、図13に示すように、改質器20の上流側流路35、内側流路37及び外側流路38において、被改質ガスの流れ方向に直交する断面の断面積をすべて等しく設定した。第2実施例では、改質器20の上流側流路35を同一の断面積を有する2つの流路に分割した。その一方で、比較例に係る改質器では、図14に示すように、第2実施例の改質流路32において、上流側流路35及び内側流路37が側壁25bに接触するように構成した。
【0051】
このとき、第1及び第2実施例に係る改質器並びに比較例に係る改質器において、改質流路32の上流端から下流端までの流路内の温度Tを計測した。図15は、改質流路32の上流端から改質流路32に沿って規定される距離dとその各距離dでの温度Tとの関係を示すグラフである。図15に示すように、第1実施例では、外側流路38内の被改質ガスが側壁25c又は側壁25dと側壁25bを介して燃焼熱を受け取ることができるので、下流側に向かうにつれて加熱特性(温度上昇の傾き)が大きく増大している。その一方で、比較例では加熱特性にあまり大きな変化が見られない。従って、外側流路38のみが側壁に接触していること、下流側に向かうにつれて断面積が減少していること、によって加熱特性を向上させることができることが分かる。その一方で、第2実施例では、断面積を等しく設定したので、その分だけ第1実施例よりも加熱特性が劣っているものの、外側流路38では比較例に比べて加熱特性は向上していることが分かる。
【0052】
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。すなわち、これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、前述した各具体例が備える各要素及びその配置、材料、条件、形状、サイズなどは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0053】
20 改質器
32 改質流路
35 上流側流路
36 下流側流路
37 内側流路(第1蛇行流路)
38 外側流路(第2蛇行流路)
39 触媒
79 酸化剤ガス流路
84 燃料電池セル
88 燃料ガス流路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料ガスと酸化剤ガスとにより発電を行う燃料電池セルを備えた燃料電池装置において、
前記燃料電池セルの内部に形成されて、前記燃料電池セルの下部から上部に向かって前記燃料ガスを流す燃料ガス流路と、
前記燃料電池セルの外部に形成されて、前記燃料電池セルの下部から上部に向かって前記酸化剤ガスを流す酸化剤ガス流路と、
前記燃料電池セルの上方に配置されて、前記燃料ガス流路から排出された前記燃料ガスと前記酸化剤ガス流路から排出された前記酸化剤ガスとを混合して燃焼させる燃焼部と、
前記燃料電池セルの上方に配置されて、供給される被改質ガスを前記燃焼部からの熱によって前記燃料ガスに改質する触媒を充填した改質流路を有する改質器と、を備え、
前記改質流路は、
当該改質流路の上流端から前記改質器の側壁に接触せずに延びる上流側流路と、
前記上流側流路の下流端から分岐して当該改質流路の下流端まで蛇行して延びる1対の下流側流路と、を有しており、
各前記下流側流路は、前記上流側流路の下流端から前記改質器の側壁に接触せずに延びる第1蛇行流路と、前記第1蛇行流路よりも外側に配置されて前記第1蛇行流路の下流端から前記改質流路の下流端まで前記改質器の側壁に接触して延びる第2蛇行流路と、を有することを特徴とする燃料電池装置。
【請求項2】
前記下流側流路は前記改質器の長辺に沿って蛇行することを特徴とする請求項1に記載の燃料電池装置。
【請求項3】
前記第2蛇行流路は、前記改質器の長辺側の側壁及び短辺側の側壁の両方に接触して延びることを特徴とする請求項2に記載の燃料電池装置。
【請求項4】
前記被改質ガスの流れ方向に直交する前記下流側流路の断面積は、前記被改質ガスの流れ方向に直交する前記上流側流路の断面積よりも小さく設定されることを特徴とする請求項2又は3に記載の燃料電池装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2013−73899(P2013−73899A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−214269(P2011−214269)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】