説明

燃料電池車両

【課題】車室内や空調機器からの空気を導入することなく蓄電装置の温度を調整できる燃料電池車両を提供すること。
【解決手段】燃料電池車両1は、車室外に設けられた燃料電池10と、燃料電池10の後方側に配置された蓄電装置21と、蓄電装置21を収納する蓄電装置収納ケース20と、を備える。蓄電装置収納ケース20には、燃料電池10側を向いた暖機用吸気口31を含む複数の吸気口30が形成され、複数の吸気口30を選択的に開放して、蓄電装置21の温度を調整する温度調整装置40をさらに備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池車両に関する。詳しくは、車室外に設けられた燃料電池と、当該燃料電池の後方側に配置される蓄電装置と、当該蓄電装置を収納する蓄電装置収納ケースと、を備える燃料電池車両に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池を動力源とする燃料電池車両では、燃料電池を起動する際に補機類に電力を供給したり、車両の加速時に駆動モータに補助的な電力を供給したりするための蓄電装置としてのバッテリが搭載される。車両に搭載されるバッテリには、効率よく充電および放電を行うことができる最適温度範囲がある。
このバッテリの温度が最適温度範囲より低い場合には、充電および放電を行う際の内部抵抗が大きくなる。その結果、充放電の効率が低下して、燃費や加速性能が悪化してしまう。
また、このバッテリの温度が最適温度範囲より高い場合には、バッテリの性能劣化が加速される。その結果、バッテリの耐久性が悪化してしまう。
【0003】
そこで、バッテリを収容するバッテリケースと、車両の車室内の空気、トランクルーム内の空気およびエアコンユニットと、をダクトで接続し、これらのダクトの中から1つを選択してバッテリケースに連通させる切り替えダンパとを設ける車両用温度調節システムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
この提案手法によれば、切り替えダンパを制御することで、バッテリケース内に、車両の車室内の空気、トランクルーム内の空気およびエアコンユニットとの間で熱交換された空気のうちのいずれかの空気を選択的に導入して、バッテリを最適温度となるように調節できる。
【特許文献1】特開2005−254974号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1で提案された車両用温度調節システムには、以下のような問題があった。
すなわち、第1に、車室、トランクルームおよびエアコンユニットとバッテリケースとの間にそれぞれ空気を導入するためのダクトを設ける必要があった。よって、これら複数のダクトの配置が複雑となり、車両のレイアウトの自由度が低かった。
【0005】
第2に、車室とバッテリケースとをダクトで連通させたので、車室のフロアに開口を設けることになり、バッテリケース内の空気が車室内に流入する場合があった。
第3に、エアコンユニットからの空気でバッテリの温度調節をした場合、エアコンユニットは、車室内の温度を調節するだけでなく、バッテリの温度を調節するための余分な能力を備える必要がある。さらに、車両用温度調節システムをエアコンユニットと協調制御させる必要がある。
【0006】
本発明は、上述した問題点を考慮してなされたものであり、車室内や空調機器からの空気を導入することなく蓄電装置の温度を調整できる燃料電池車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の燃料電池車両(例えば、後述の燃料電池車両1)は、車室外に設けられた燃料電池(例えば、後述の燃料電池10)と、当該燃料電池の後方に配置された蓄電装置(例えば、後述のバッテリ21)と、当該蓄電装置を収納する蓄電装置収納ケース(例えば、後述のバッテリボックス20)と、を備える燃料電池車両であって、前記蓄電装置収納ケースには、前記燃料電池側を向いた暖機用吸気口(例えば、後述の暖機用吸気口31)を含む複数の吸気口(例えば、後述の吸気口30)が形成され、当該複数の吸気口を選択的に開放して、前記蓄電装置の温度を調整する温度調整装置(例えば、後述の温度調整装置40)をさらに備えることを特徴とする。
【0008】
この発明によれば、車室外に配置された蓄電装置収納ケースに、暖機用吸気口を含む複数の吸気口を設けるとともに、当該複数の吸気口を選択的に開放して、蓄電装置の温度を調整する温度調整装置を設けた。
ここで、暖機用吸気口を、燃料電池側に向けて配置したので、この暖機用吸気口には、燃料電池の発電により暖められた空気が導入される。よって、複数の吸気口を選択的に開放することで、異なる温度の空気を蓄電装置収納ケース内に導入できる。これにより、車室内や空調機器からの空気を導入することなく、蓄電装置の温度を調整できる。
【0009】
また、従来のように車室内の空気を導入するためのダクトを設ける必要がないので、車両のレイアウトの自由度を向上できるうえに、車両の軽量化を実現できる。
【0010】
この場合、前記複数の吸気口は、前記暖機用吸気口とは位置および向きのうち少なくとも一方が異なる冷却用吸気口(例えば、後述の冷却用吸気口32)を含むことが好ましい。
【0011】
この発明によれば、暖機用吸気口とは位置および向きのうち少なくとも一方が異なる冷却用吸気口を設けた。よって、この冷却用吸気口から蓄電装置収納ケース内に空気を導入することで、蓄電装置を冷却できる。その結果、車室外の空気により蓄電装置を暖機したり冷却したりでき、蓄電装置の充放電の効率が向上する。
【0012】
この場合、前記蓄電装置収納ケースは、前記蓄電装置を覆うケース本体(例えば、後述のバッテリボックス本体22)と、当該ケース本体から延びる配管(例えば、後述の配管23)と、を備え、前記暖機用吸気口は、前記配管の先端の車両前方側の壁面に形成され、前記冷却用吸気口は、前記配管の先端の車両後方側の壁面に形成され、前記配管の先端には、当該配管の軸方向に延びる切り替え板(例えば、後述の切り替え板41)が回動可能に設けられ、前記温度調整装置は、前記切り替え板を回動して、前記暖機用吸気口が閉鎖されて前記冷却用吸気口が開放された状態と、前記暖機用吸気口が開放されて前記冷却用吸気口が閉鎖された状態と、を切り替え可能であることが好ましい。
【0013】
この発明によれば、蓄電装置収納ケースを、ケース本体と配管とを含んで構成した。そして、暖機用吸気口を、配管の先端の車両前方側の壁面に形成し、冷却用吸気口を、配管の先端の車両後方側の壁面に形成し、配管の先端には、当該配管の軸方向に延びる切り替え板を回動可能に設けた。
よって、温度調整装置により切り替え板を回動することで、暖機用吸気口が閉鎖されて冷却用吸気口が開放された状態と、暖機用吸気口が開放されて冷却用吸気口が閉鎖された状態とを切り替えられるので、開放する吸気口を容易に切り替えることができる。
【0014】
この場合、前記燃料電池車両を低温状態で起動させた場合には、前記温度調整装置は、前記暖機用吸気口を開放することが好ましい。
【0015】
燃料電池車両を低温状態で起動させた場合、燃料電池が発電することにより、燃料電池の温度は、蓄電装置よりも早く上昇することが判っている。
そこで、この発明によれば、燃料電池車両を低温状態で起動させた場合に、暖機用吸気口を開放する。これにより、燃料電池の発電により暖められた空気を暖機用吸気口から蓄電装置収納ケース内に導入でき、蓄電装置を効率よく暖機できる。
【0016】
この場合、車両の水素ガス滞留部(例えば、後述の水素ガス滞留部53、54)に設けられて水素ガスを検知する水素漏れ検知手段(例えば、後述の水素ガスセンサ51、52)をさらに備え、前記複数の吸気口のうちの1つは、前記水素ガス滞留部の近傍に配置され、前記水素漏れ検知手段により水素ガスを検知すると、前記温度調整装置は、前記水素ガス滞留部の近傍に配置された吸気口を開放することが好ましい。
【0017】
この発明によれば、複数の吸気口のうちの1つを水素ガス滞留部の近傍に配置するとともに、水素漏れ検知手段が水素ガスを検知すると、温度調整装置により水素ガス滞留部の近傍に配置された吸気口を開放させる。これにより、水素漏れが発生して水素ガスが水素ガス滞留部に滞留しても、水素ガス滞留部の近傍に配置された吸気口を通して、この水素ガスを蓄電装置収納ケース内に導入し、水素ガス滞留部を換気できる。
【0018】
この場合、前記水素ガス滞留部は、前記燃料電池の上方に設けられ、前記水素ガス滞留部の近傍に配置された吸気口は、前記暖機用吸気口であることが好ましい。
【0019】
この発明によれば、燃料電池の上方を水素ガス滞留部とし、この水素ガス滞留部の近傍に暖機用吸気口を配置した。これにより、水素漏れが発生して水素ガスが燃料電池の上方に滞留しても、暖機用吸気口を通して、この水素ガスを蓄電装置収納ケース内に導入し、燃料電池の上方の空間を換気できる。
【0020】
この場合、水素ガスを収容する水素タンク(例えば、後述の水素タンク50)をさらに備え、前記水素ガス滞留部は、前記水素タンクの上方に設けられ、前記水素ガス滞留部の近傍に配置された吸気口は、前記冷却用吸気口であることが好ましい。
【0021】
この発明によれば、水素タンクの上方を水素ガス滞留部とし、この水素ガス滞留部の近傍に冷却用吸気口を配置した。これにより、水素漏れが発生して水素ガスが水素タンクの上方に溜まっても、冷却用吸気口を通して、この水素ガスを蓄電装置収納ケース内に導入し、水素タンクの上方の空間を換気できる。
【0022】
この場合、前記温度調整装置は、前記複数の吸気口のそれぞれの周囲温度と、前記蓄電装置の温度と、に基づいて、前記複数の吸気口の中から少なくとも1つの吸気口を選択し、当該選択した吸気口を開放することが好ましい。
【0023】
この発明によれば、複数の吸気口のそれぞれの周囲温度と、蓄電装置の温度とに基づいて選択した吸気口を開放する。よって、蓄電装置の温度に応じて、最適の吸気口を開放できるので、蓄電装置の温度を精度よく調整できる。
【0024】
この場合、前記温度調整装置は、前記蓄電装置の温度が所定の最適温度よりも低くかつ前記複数の吸気口のうちの少なくとも1つの周囲の温度よりも低い場合には、当該吸気口を開放することが好ましい。
【0025】
この発明によれば、蓄電装置の温度が所定の最適温度よりも低くかつ複数の吸気口のうちの少なくとも1つの周囲の温度よりも低い場合に、この吸気口を開放する。この吸気口の周囲の温度は、蓄電装置の温度よりも高いので、これにより、確実に蓄電装置を暖機できる。
【0026】
この場合、前記燃料電池および前記暖機用吸気口は、センターコンソール(例えば、後述のセンターコンソール60)内に設けられることが好ましい。
【0027】
この発明によれば、燃料電池および暖機用吸気口を、センターコンソール内に設けた。これにより、燃料電池の発電により暖められた空気を、センターコンソール内を通って暖機用吸気口に導入できるので、簡易な構成で、燃料電池の発電により発生した廃熱を有効利用できる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、車室外に配置された蓄電装置収納ケースに、暖機用吸気口を含む複数の吸気口を設けるとともに、当該複数の吸気口を選択的に開放して、蓄電装置の温度を調整する温度調整装置を設けた。
ここで、暖機用吸気口を、燃料電池側に向けて配置したので、この暖機用吸気口には、燃料電池の発電により暖められた空気が導入される。よって、複数の吸気口を選択的に開放することで、異なる温度の空気を蓄電装置収納ケース内に導入できる。これにより、車室内や空調機器からの空気を導入することなく、蓄電装置の温度を調整できる。
また、従来のように車室内の空気を導入するためのダクトを設ける必要がないので、車両のレイアウトの自由度を向上できるうえに、車両の軽量化を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明の各実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の実施形態の説明にあたって、同一構成要件については同一符号を付し、その説明を省略もしくは簡略化する。
【0030】
〔第1実施形態〕
図1は、本発明の一実施形態に係る燃料電池車両1の概略構成を示す側面図であり、図2は、図1に示す燃料電池車両1の上面図である。図3は、図1の部分拡大図である。
燃料電池車両1は、燃料電池10と、燃料電池10の後方側に配置される蓄電装置としてのバッテリ21と、バッテリ21を収納する蓄電装置収納ケースとしてのバッテリボックス20と、バッテリボックス20の後方に配置され燃料電池10に供給する水素ガスを貯留する水素タンク50と、バッテリ21の温度を制御する温度調整装置としての制御装置40と、を備える。
【0031】
燃料電池10、バッテリボックス20、および水素タンク50は、燃料電池車両1の車室の床となるフロアパネル61の下方、すなわち車室外に設けられる。
具体的には、このフロアパネル61には、このフロアパネル61の車幅方向の中央部が車室内方へ向けて凸状となって形成されたセンターコンソール60が設けられている。燃料電池10およびバッテリボックス20は、このセンターコンソール60内に設けられている。
また、燃料電池10、バッテリボックス20および水素タンク50は、フロアパネル61の下方に設けられたアンダーカバー62により各々の底部側が覆われている。
【0032】
燃料電池10は、例えば、数十個から数百個のセルが積層されたスタック構造である。各セルは、膜電極構造体(MEA)を一対のセパレータで挟持して構成される。膜電極構造体は、アノード電極(陽極)およびカソード電極(陰極)の2つの電極と、これら電極に挟持された固体高分子電解質膜とで構成される。通常、両電極は、固体高分子電解質膜に接して酸化・還元反応を行う触媒層と、この触媒層に接するガス拡散層とから形成される。
この燃料電池10には、図示しない反応ガス供給装置により、アノード電極(陽極)側に水素タンク50から水素ガスが供給され、カソード電極(陰極)側に酸素を含むエアが供給される。すると、燃料電池10は、電気化学反応により発電する。また、この燃料電池10により発電された電力は、図示しない駆動モータに供給される。
【0033】
バッテリ21は、燃料電池10で発電した電力や、減速時における駆動モータからの回生電力などを蓄電する。また、バッテリ21に蓄電された電力は、運転状態に応じて駆動モータに適宜供給される。
また、このバッテリ21には、バッテリ21の温度であるバッテリ温度Tを検出するバッテリ温度センサ24が接続されており、このバッテリ温度センサ24の検出信号は、制御装置40に入力される。
【0034】
バッテリボックス20は、バッテリボックス本体22と、このバッテリボックス本体22から上方に延出する配管23と、を備える。
バッテリボックス本体22は、箱状であり、その内部にはバッテリ21が収納される。このバッテリボックス本体22には、内部の空気を排出するための排気口35が設けられる。
配管23は、センターコンソール60内に位置しており、この配管23の先端には、バッテリボックス20の内部に空気を導入するための複数の吸気口30が設けられる。
【0035】
具体的には、配管23の先端の車両前方側の壁面には、暖機用吸気口31が設けられている。また、暖機用吸気口31とは位置および向きが異なる配管23の先端の車両後方側の壁面には、冷却用吸気口32が設けられる。すなわち、暖機用吸気口31は、燃料電池10側を向いて形成され、冷却用吸気口32は、水素タンク50側を向いて形成される。
【0036】
暖機用吸気口31には、この暖機用吸気口31の周囲の温度である吸気口温度を検出する吸気口温度センサ33が接続されており、冷却用吸気口32には、この冷却用吸気口32の周囲の温度である吸気口温度を検出する吸気口温度センサ34が接続されている。これら吸気口温度センサ33,34の検出信号は、制御装置40に入力される。
【0037】
配管23の先端には、配管23の軸方向に延びる切り替え板41が設けられる。切り替え板41の上端は、配管23の上面に回動可能に支持される。
よって、切り替え板41を回動させて、この切り替え板41の下端側を車両前方側の壁面に当接させると、暖機用吸気口31が閉鎖されて冷却用吸気口32が開放された状態となり、切り替え板41の先端側を車両後方側の壁面に当接させると、暖機用吸気口31が開放されて冷却用吸気口32が閉鎖された状態となる。
【0038】
排気口35は、バッテリボックス本体22の下方側に設けられる。排気口35には、排気ファン42が設けられており、この排気ファン42を回転駆動することにより、バッテリボックス20内に導入された空気を排出する。
【0039】
水素タンク50の上方は、この水素タンク50から漏れた水素ガスが滞留する水素ガス滞留部53となっている。この水素ガス滞留部53には、水素ガスを検知する水素漏れ検知手段としての水素ガスセンサ51が設けられている。この水素ガスセンサ51の検出信号は、制御装置40に入力される。
【0040】
制御装置40は、バッテリ温度センサ24および吸気口温度センサ33,34から入力された検出信号に基づいて、切り替え板41および排気ファン42を制御し、バッテリ21の温度を調整する。
具体的には、まず、制御装置40は、排気ファン42を回転させる。この状態で、切り替え板41を回動することで、切り替え板41の先端側を車両前方側の壁面に当接させて、暖機用吸気口31が閉鎖されて冷却用吸気口32が開放された状態と、切り替え板41の先端側を車両後方側の壁面に当接させて、暖機用吸気口31が開放されて冷却用吸気口32が閉鎖された状態と、を切り替える。これにより、バッテリボックス20内に空気を導入する吸気口を切り替え、バッテリ21の温度を調整する。
また、制御装置40は、水素ガスセンサ51から入力された検出信号に基づいて、切り替え板41および排気ファン42を制御し、換気を行う。
【0041】
ところで、燃料電池車両1を起動させると、燃料電池10の温度、バッテリ21の温度、暖機用吸気口31周囲の温度、および冷却用吸気口32周囲の温度は、以下のように変化する。
【0042】
まず、燃料電池車両1の起動前には、燃料電池10の温度、バッテリ21の温度、暖機用吸気口31周囲の温度、および冷却用吸気口32周囲の温度は、いずれも外気の温度と略等しい低温状態となっている。また、通常、外気の温度は、バッテリ21が効率よく充電および放電を行うことができる最適温度よりも低い。
【0043】
つぎに、燃料電池車両1の起動後、燃料電池10による発電が開始すると、この燃料電池10の温度の上昇率は、バッテリ21の温度の上昇率よりも高いため、時間の経過に伴って、燃料電池10の温度は、バッテリ21の温度よりも高くなる。
すると、燃料電池10の周囲の空気は、燃料電池10の発電により発生した廃熱により暖められるので、暖機用吸気口31周囲の温度は、バッテリ21の温度や冷却用吸気口32周囲の温度よりも高くなる。
【0044】
よって、この場合、制御装置40は、暖機用吸気口31を選択的に開放し、燃料電池10の発電により暖められた空気をバッテリボックス20内に導入して、バッテリ21を暖機する。
【0045】
図4は、燃料電池車両1のバッテリ21の温度を調整する動作のフローチャートである。
以下の説明において、バッテリ21の温度を、バッテリ温度Tとし、バッテリ21が効率よく充電および放電を行うことができる所定の温度を、最適温度Tとする。また、暖機用吸気口31および冷却用吸気口32を含む吸気口の個数をn個とし、これらn個の吸気口の周囲の温度を、吸気口温度TI1,TI2,・・・TInとする。
【0046】
ステップS1では、バッテリ温度センサ24によりバッテリ温度Tを、吸気口温度センサにより複数の吸気口温度TI1,TI2・・・TInそれぞれを検出する。
【0047】
ステップST2では、バッテリ21が効率よく充電および放電を行うことができる所定の温度である最適温度Tと、バッテリ温度Tと、複数の吸気口温度TI1,TI2,・・・TInと、を比較する。
バッテリ温度Tが最適温度Tよりも低く、かつ、バッテリ温度Tが複数の吸気口温度TI1,TI2,・・・TInのうち最も高いものであるMaxTInよりも低い場合には、ステップST3に移り、バッテリ温度Tが最適温度T以上であり、かつ、バッテリ温度Tが複数の吸気口温度TI1,TI2,・・・TInのうち最も低いものであるMinTIn以上である場合には、ステップST5に移る。また、ステップST3およびステップST5のいずれにもあてはまらない場合には、ステップST7に移る。
【0048】
ステップST3では、加温モードとなり、最も高い吸気口温度MaxTInを検出した吸気口すなわち暖機用吸気口31を選択的に開放し、当該吸気口から空気を導入する。これにより、バッテリ21を暖機する(ステップST4)。
【0049】
ステップST5では、冷却モードとなり、最も低い吸気口温度MinTInを検出した吸気口すなわち冷却用吸気口32を選択的に開放し、当該吸気口から空気を導入する。これにより、バッテリ21を冷却する(ステップST6)。
【0050】
ステップST7では、現状維持モードとなり、複数の吸気口30すべてを閉鎖して、排気ファン42の回転を停止するか、またはそれまで開放されていた吸気口からの空気の導入を継続する(ステップST8)。
【0051】
図5は、燃料電池車両1の水素ガスセンサ51から水素漏れが発生した場合の動作を示すフローチャートである。
ステップST11では、水素ガスセンサ51が水素漏れを検知して、ステップST12に移る。
【0052】
ステップST12では、水素換気モードを実行する。水素換気モードでは、水素換気用の吸気口である冷却用吸気口32を開放し、水素タンク50の上方に溜まった水素ガスを、冷却用吸気口32を通してバッテリボックス20内に導入し換気する。
なお、この水素換気モードは、上述のステップST3、ステップST4およびステップST5のすべてのステップの制御に優先して実行される。
【0053】
本実施形態の燃料電池車両1によれば、以下の効果を奏する。
(1)車室外に配置されたバッテリボックス20に、暖機用吸気口31を含む複数の吸気口30を設けるとともに、当該複数の吸気口30を選択的に開放して、バッテリ21の温度を調整する制御装置40を設けた。
ここで、暖機用吸気口31を、燃料電池10側に向けて配置したので、この暖機用吸気口31には、燃料電池10の発電により暖められた空気が導入される。よって、複数の吸気口30を選択的に開放することで、異なる温度の空気をバッテリボックス20内に導入できるので、車室内や空調機器からの空気を導入することなく、バッテリ21の温度を調整できる。
【0054】
(2)従来のように車室内の空気を導入するためのダクトを設ける必要がないので、車両のレイアウトの自由度を向上できるうえに、車両の軽量化を実現できる。
【0055】
(3)暖機用吸気口31とは位置および向きのうち少なくとも一方が異なる冷却用吸気口32を設けたので、この冷却用吸気口32からバッテリボックス20内に空気を導入することで、バッテリ21を冷却できる。その結果、車室外の空気によりバッテリ21を暖機したり冷却したりでき、バッテリ21の充放電の効率が向上する。
【0056】
(4)バッテリボックス20を、バッテリボックス本体22と配管23とを含んで構成し、暖機用吸気口31を、配管23の先端の車両前方側の壁面に形成し、冷却用吸気口32を、配管23の先端の車両後方側の壁面に形成し、配管23の先端には、当該配管23の軸方向に延びる切り替え板41を回動可能に設けた。
よって、温度調整装置により切り替え板41を回動することで、暖機用吸気口31が閉鎖されて冷却用吸気口32が開放された状態と、暖機用吸気口31が開放されて冷却用吸気口32が閉鎖された状態とを切り替えできるので、開放する吸気口30を容易に切り替えることができる。
【0057】
(5)燃料電池車両1を低温状態で起動させた場合、燃料電池10の温度は、バッテリ21の温度よりも早く上昇する。よって、燃料電池車両1を低温状態で起動させた場合に、暖機用吸気口31を開放することで、燃料電池10の発電により暖められた空気を暖機用吸気口31からバッテリボックス20内に導入でき、バッテリ21を効率よく暖機できる。
(6)水素ガスセンサ51が水素漏れを検知すると、制御装置40により冷却用吸気口32を開放させるので、水素漏れが発生して水素ガスが水素タンク50の上方に溜まっても、冷却用吸気口32を通して、この水素ガスをバッテリボックス20内に導入し、水素タンク50の上方の空間を換気できる。
【0058】
(7)複数の吸気口30のそれぞれの周囲温度TI1,TI2,・・・TInと、バッテリ21の温度Tと、に基づいて選択した吸気口30を開放するので、バッテリ21の温度に応じて、最適の吸気口30を開放でき、バッテリ21の温度を精度よく調整できる。
【0059】
(8)バッテリ21の温度Tが所定の最適温度Tよりも低く、かつ、複数の吸気口温度TI1,TI2,・・・TInのうち最も高いものであるMaxTInよりも低い場合に、最も高い吸気口温度MaxTInを検出した吸気口を開放する。この吸気口の周囲の温度は、バッテリ21の温度よりも高いので、これにより、確実にバッテリ21を暖機できる。
【0060】
(9)燃料電池10および暖機用吸気口31を、センターコンソール60内に設けたので、燃料電池10の発電により暖められた空気を、センターコンソール60内を通じて暖機用吸気口31に導入でき、簡易な構成で、燃料電池10の発電により発生した廃熱を有効利用できる。
【0061】
〔第2実施形態〕
図6は、第2実施形態に係る燃料電池車両1Aの概略構成を示す側面図である。
本実施形態では、配管23Aの形状および水素ガスセンサ51、52の配置が、第1実施形態と異なる。
具体的には、本実施形態では、配管23Aを分岐させて、配管231Aおよび配管232Aで構成している。そして、配管231Aの先端側を燃料電池10の近傍まで延出させて、この配管231Aの先端を暖機用吸気口31Aとし、配管232Aの先端側を水素タンク50の上方まで延出させて、この配管232Aの先端を冷却用吸気口32Aとしている。
【0062】
また、水素タンク50の上方の空間および燃料電池10の上方の空間がそれぞれ水素ガス滞留部53、54となっている。そして、これら水素ガス滞留部53、54に、それぞれ水素ガスセンサ51,52を配置している。
本実施形態によれば、上述した(1)〜(9)の効果に加え、以下のような効果がある。
【0063】
(10)燃料電池10の上方を水素ガス滞留部54とし、この水素ガス滞留部54の近傍に暖機用吸気口31Aを配置した。これにより、水素漏れが発生して水素ガスが水素ガス滞留部54に滞留しても、暖機用吸気口31Aを通して、この水素ガスをバッテリボックス20内に導入し、燃料電池10の上方の空間を換気できる。
【0064】
(11)水素タンク50の上方を水素ガス滞留部53とし、この水素ガス滞留部53の近傍に冷却用吸気口32Aを配置した。これにより、水素ガスが水素ガス滞留部53に溜まっても、冷却用吸気口32を通して、この水素ガスをバッテリボックス20内に導入し、水素タンク50の上方の空間を換気できる。
【0065】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良などは本発明に含まれるものである。
例えば、本実施形態では、複数の吸気口30を、暖機用吸気口31および冷却用吸気口32の2つの吸気口から構成したが、これに限らず、複数の吸気口を、3つ以上の吸気口で構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の一実施形態に係る燃料電池車両の概略構成を示す側面図である。
【図2】前記実施形態に係る燃料電池車両の上面図である。
【図3】図1の部分拡大図である。
【図4】燃料電池車両のバッテリの温度を調整する動作のフローチャートである。
【図5】燃料電池車両の水素ガスセンサから水素漏れが発生した場合の動作を示すフローチャートである。
【図6】第2実施形態に係る燃料電池車両の概略構成を示す側面図である。
【符号の説明】
【0067】
1、1A 燃料電池車両
10 燃料電池
20 バッテリボックス(蓄電装置収納ケース)
21 バッテリ(蓄電装置)
22 バッテリボックス本体
23 配管
30 吸気口
31 暖機用吸気口
32 冷却用吸気口
40 制御装置(温度調整装置)
41 切り替え板
50 水素タンク
51 水素ガスセンサ(水素検出手段)
60 センターコンソール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室外に設けられた燃料電池と、当該燃料電池の後方に配置された蓄電装置と、当該蓄電装置を収納する蓄電装置収納ケースと、を備える燃料電池車両であって、
前記蓄電装置収納ケースには、前記燃料電池側を向いた暖機用吸気口を含む複数の吸気口が形成され、
当該複数の吸気口を選択的に開放して、前記蓄電装置の温度を調整する温度調整装置をさらに備えることを特徴とする燃料電池車両。
【請求項2】
前記複数の吸気口は、前記暖機用吸気口とは位置および向きのうち少なくとも一方が異なる冷却用吸気口を含むことを特徴とする請求項1に記載の燃料電池車両。
【請求項3】
前記蓄電装置収納ケースは、前記蓄電装置を覆うケース本体と、当該ケース本体から延びる配管と、を備え、
前記暖機用吸気口は、前記配管の先端の車両前方側の壁面に形成され、
前記冷却用吸気口は、前記配管の先端の車両後方側の壁面に形成され、
前記配管の先端には、当該配管の軸方向に延びる切り替え板が回動可能に設けられ、
前記温度調整装置は、前記切り替え板を回動して、前記暖機用吸気口が閉鎖されて前記冷却用吸気口が開放された状態と、前記暖機用吸気口が開放されて前記冷却用吸気口が閉鎖された状態と、を切り替え可能である請求項2に記載の燃料電池車両。
【請求項4】
前記燃料電池車両を低温状態で起動させた場合には、前記温度調整装置は、前記暖機用吸気口を開放することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の燃料電池車両。
【請求項5】
車両の水素ガス滞留部に設けられて水素ガスを検知する水素漏れ検知手段をさらに備え、
前記複数の吸気口のうちの1つは、前記水素ガス滞留部の近傍に配置され、
前記水素漏れ検知手段により水素ガスを検知すると、前記温度調整装置は、前記水素ガス滞留部の近傍に配置された吸気口を開放することを特徴とする請求項2に記載の燃料電池車両。
【請求項6】
前記水素ガス滞留部は、前記燃料電池の上方に設けられ、
前記水素ガス滞留部の近傍に配置された吸気口は、前記暖機用吸気口であることを特徴とする請求項5に記載の燃料電池車両。
【請求項7】
水素ガスを収容する水素タンクをさらに備え、
前記水素ガス滞留部は、前記水素タンクの上方に設けられ、
前記水素ガス滞留部の近傍に配置された吸気口は、前記冷却用吸気口であることを特徴とする請求項5に記載の燃料電池車両。
【請求項8】
前記温度調整装置は、前記複数の吸気口のそれぞれの周囲温度と、前記蓄電装置の温度と、に基づいて、前記複数の吸気口の中から少なくとも1つの吸気口を選択し、当該選択した吸気口を開放することを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の燃料電池車両。
【請求項9】
前記温度調整装置は、前記蓄電装置の温度が所定の最適温度よりも低くかつ前記複数の吸気口のうちの少なくとも1つの周囲の温度よりも低い場合には、当該吸気口を開放することを特徴とする請求項8に記載の燃料電池車両。
【請求項10】
前記燃料電池および前記暖機用吸気口は、センターコンソール内に設けられることを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載の燃料電池車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−247150(P2009−247150A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−92089(P2008−92089)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】