説明

燃料電池

【課題】 燃料電池のエネルギー効率を向上させる。
【解決手段】 発電セルを多数積層して構成したスタック3を断熱ハウジング2内に収納して成る燃料電池1において、断熱ハウジング2内には発電セルを予熱する予熱用バーナ20が設けられている。この予熱用バーナ20は、燃焼を行うバーナ本体21と、バーナ本体21の外面部を冷却するための空気熱交換機構を備え、且つ、空気熱交換機構には熱交換を終えた冷却用空気をスタック3に導入するための予熱空気通路16が配設されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池スタックの排熱を有効に利用したエネルギー効率の高い燃料電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
固体酸化物形燃料電池は、第三世代の発電用燃料電池として開発が進んでおり、現在、円筒型、モノリス型、および平板積層型の3種類が知られている。これら固体酸化物形燃料電池は、何れも酸化物イオン伝導体から成る固体電解質層を両側から空気極層(カソード)と燃料極層(アノード)で挟み込んだ積層構造を有し、この積層体から成る発電セルとセパレータを交互に複数積層(スタック化)すると共に、このスタックを断熱材で包囲されたハウジング内に収納することによりモジュール化されている。
【0003】
固体酸化物形燃料電池では、反応用ガスとして空気極層側に酸化剤ガス(酸素) が供給され、燃料極層側に燃料ガス (H2、CO、CH4等) が供給される。空気極層と燃料極層は、反応用ガスが固体電解質層との界面に到達することができるよう、何れも多孔質の層とされている。
【0004】
発電セル内において、空気極層側に供給された酸素は、空気極層内の気孔を通って固体電解質層との界面近傍に到達し、この部分で空気極層から電子を受け取って酸化物イオン(O2-)にイオン化される。この酸化物イオンは、燃料極層に向かって固体電解質層内を拡散移動する。燃料極層との界面近傍に到達した酸化物イオンは、この部分で、燃料ガスと反応して反応生成物(H2O、CO2等)を生じ、燃料極層に電子を放出する。
このような電極反応で生じた電子は、別ルートの外部負荷にて起電力として取り出すことができる。
【0005】
ところで、上記した固体酸化物形燃料電池を含む従来公知の燃料電池を運転する場合は、燃料電池スタック(特に発電セル)を各燃料電池の作動温度(例えば、固体酸化物形燃料電池では600〜800℃程度)に予熱する必要がある。これは、発電セルでの電気化学反応を活性化するためであって、従来では、燃料電池スタックの外周に電気ヒータやバーナ等の加熱手段を配設して予熱する方法や、外部より加熱したガスを燃料電池スタックの周囲に導入する予熱方法等が行われている。
【0006】
これら予熱方法の内、電気ヒータによる予熱は電力消費が大きく、その分、燃料電池の発電効率が低下するという欠点もあり、近年では、反応用ガスとして燃料電池に供給する燃料ガス(例えば、都市ガス)を使用したバーナによる予熱方法が多く採用されるようになってきた。
【0007】
尚、燃料電池の予熱手段にバーナを用いたものとして、例えば、特許文献1が開示されている。
【特許文献1】特開2003−249250号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、上記した電気ヒータやバーナ等の加熱手段が配設されるモジュール内空間は断熱材により保温されていて常時600〜800℃の高温雰囲気となっており、このため、バーナによる予熱の場合は、金属製(例えば、SUS製)のバーナ本体が高温雰囲気に曝されることによるバーナ本体の耐熱性が問題となっている。
このような高温雰囲気からバーナ本体を保護し、バーナの耐熱性を向上するにはバーナ本体を空気冷却する必要があるが、冷却空気による熱交換でモジュール内の熱が奪われることになり、その分、燃料電池のエネルギー効率が悪くなるという弊害が生じる。尚、熱交換を終えた冷却用空気はそのまま外部に排出されていた。
【0009】
本発明は、上記問題に鑑み成されたもので、予熱用バーナの冷却空気を燃料電池の予熱空気として使用することにより、エネルギー効率の向上を図った燃料電池を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち、請求項1に記載の発明は、発電セルを多数積層してスタックを構成すると共に、当該スタックを断熱ハウジング内に収納して成る燃料電池において、前記断熱ハウジング内に前記発電セルを予熱する予熱用バーナが設けられ、前記予熱用バーナは、燃焼を行うバーナ本体と、当該バーナ本体の外面部を冷却するための空気熱交換機構を備え、且つ、当該空気熱交換機構には熱交換を終えた冷却用空気を前記スタックに導入するための予熱空気通路が配設されていることを特徴としている。
【0011】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の燃料電池において、前記予熱用バーナとして赤外線バーナを用い、その燃焼プレートが前記スタックの側面に対向するように配設されていることを特徴としている。
【0012】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2の何れかに記載の燃料電池において、前記予熱用バーナが、前記スタックの周辺に複数個配設されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、バーナ本体に空気熱交換機構を備えるため、運転開始時や発電運転中にバーナ本体が過度の高温に加熱されることが回避でき、バーナ本体の耐久性が向上すると共に、熱交換を終えた予熱用バーナからの冷却用空気を燃料電池の予熱空気として利用するように構成したので、従来、外部に無駄に排出していた熱エネルギーを有効に利用することができ、エネルギー効率の高い燃料電池を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図1〜図4に基づいて本発明の実施形態を説明する。
図1、図2は本発明の固体酸化物形燃料電池の内部構成を示し、図3は燃料電池スタックの要部概略構成を示し、図4は予熱用バーナの構成を示している。
【0015】
図1、図2において、符号1は固体酸化物形燃料電池、符号2は内壁に断熱材18を付装したハウジング(缶体)、符号3は積層方向を縦にしてハウジング2の内部に配設された燃料電池スタックである。本実施形態は、ハウジング2内に合計12基の燃料電池スタック3を集合・配置した高出力型の燃料電池モジュールである。そして各燃料電池スタック3には、反応用ガスとしての外部からの燃料ガスおよび酸化剤ガス(空気)を各燃料電池スタック内に導入するための燃料ガス供給管15と酸化剤ガス供給管16が接続されている。
尚、上記燃料ガス供給管15は、燃料熱交換器33、改質器32等を介して燃料電池スタック3に接続されている。
【0016】
上記燃料電池スタック3は、図3に示すように、固体電解質層4の両面に燃料極層5および空気極層(酸化剤極層)6を配した発電セル7と、燃料極層5の外側の燃料極集電体8と、空気極層6の外側の空気極集電体(酸化剤極集電体)9と、各集電体8、9の外側のセパレータ10を順番に積層した構造を有する。
【0017】
ここで、固体電解質層4はイットリアを添加した安定化ジルコニア(YSZ)等で構成され、燃料極層5はNi、Co等の金属あるいはNi−YSZ、Co−YSZ等のサーメットで構成され、空気極層6はLaMnO3、LaCoO3等で構成され、燃料極集電体8はNi基合金等のスポンジ状の多孔質焼結金属板で構成され、空気極集電体9はAg基合金等のスポンジ状の多孔質焼結金属板で構成され、セパレータ10はステンレス等で構成されている。
【0018】
セパレータ10は、発電セル7間を電気的に接続すると共に、発電セル7に反応用ガスを供給する機能を有し、上記した燃料ガス供給管15を通して供給される燃料ガスをセパレータ10の外周面から導入してセパレータ10の燃料極集電体8に対向するほぼ中央部から吐出する燃料ガス通路11と、上記した酸化剤ガス供給管16を通して供給される酸化剤ガスをセパレータ10の外周面から導入してセパレータ10の空気極集電体9に対向する面のほぼ中央部から吐出する酸化剤ガス通路12を備えている。
【0019】
この固体酸化物形燃料電池1は、発電セル7の外周部にガス漏れ防止シールを設けないシールレス構造とされており、運転時には、図3に示すように、燃料ガス通路11および酸化剤ガス通路12を通してセパレータ10の略中心部から発電セル7に向けて吐出される燃料ガスおよび酸化剤ガス(空気)を、発電セル7の外周方向に拡散させながら燃料極層5および空気極層6の全面に良好な分布で行き渡らせて発電反応を生じさせると共に、発電反応で消費されなかった残余のガス(排ガス)を発電セル7の外周部から外に自由に放出するようになっている。そして、ハウジング2の上部と下部には、ハウジング2の内部空間に放出された排ガスを外部に排出するための排気管19a、19bが設けられている。
【0020】
また、ハウジング2内には、運転開始時に燃料電池スタック3を予熱するための予熱用バーナ20が配設されている。
【0021】
上記予熱用バーナ20として赤外線バーナ20が使用され、この赤外線バーナ20が、図1、図2に示すように、燃焼プレート22を露出させた状態で燃料電池モジュールの側部を囲むように4基が断熱材18内に埋設されている。
【0022】
この赤外線バーナ20は、例えば、図4に一例として示すように、細長箱形に形成されたSUS製の内箱24と外箱25の大小2つの箱体により成る2重構造のバーナ本体21を備えており、その前面開口部に多孔質セラミックス製板材による上記した燃焼プレート22が取り付けられている。これら内箱24と外箱25は、それぞれの周縁部に設けたフランジ24a、25aが上下に重なり合って一体的に固定されている。
【0023】
また、内箱24の背面部には、燃焼用の混合ガスを導入するためのガス導入口23、23が設けられており、当ガス導入口23、23より混合ガスが供給されることにより、内箱24は混合ガスが充満した燃焼用の混合ガス室として機能する。
【0024】
また、この内箱24と外箱25との間に空間部26(すなわち、冷却空気流路26)が形成されており、且つ、外箱25の長手一端部には、この冷却空気流路26に冷却用空気を導入するための空気導入口27が設けられ、他端部には、冷却空気流路26を通過中に熱交換された空気を外部に取り出すための空気排出口28が設けられている。
運転時に空気導入口27より冷却空気流路26に冷却用空気が供給されることにより、この外箱25部分はバーナ本体21の空気熱交換機構として機能する。そして、図1に示すように、このバーナ本体21のガス導入口23には、外部から誘導されたバーナ用燃焼ガス供給管30が接続され、空気導入口27には、外部から誘導された冷却用空気供給管31が接続され、空気排出口28には、ハウジング内において各燃料電池スタック3に誘導される予熱空気通路としての酸化剤ガス管16が接続されている。
【0025】
また、燃料電池モジュールの外部には図示しない空気供給装置としてのブロアとミキサーが配設されており、ブロアからの送風が冷却用空気として冷却用空気供給管31に供給されると共に、その一部が予熱用バーナ20の燃料空気としてこのミキサーにも供給されるようになっている。
一方、燃料ガス(例えば、都市ガス)は、燃料電池の反応ガス用として上記した燃料ガス供給管15に供給されると共に、予熱用バーナの燃焼用としてその一部が上記ミキサーに供給され、このミキサー内において燃料ガスがブロアからの空気と混合され、混合ガスとして上記したバーナ用燃焼ガス供給管30に供給されるようになっている。
【0026】
次ぎに、上記構成の予熱機構による予熱動作を説明する。
【0027】
運転開始の際の予熱時に、バーナ本体21の内箱24にはバーナ用燃焼ガス供給管30を通して背面部のガス導入口23より混合ガスが送り込まれる。この混合ガスは燃焼プレート22の多数の細孔を通ってプレート表面に達し、バーナ本体21に設けた図示しない着火手段(例えば、イグナイター)により着火され、プレート表面付近で燃焼して燃焼プレート22を赤熱させる。
この赤熱した燃焼プレート22の輻射熱で、その近傍に対面位置する複数の燃料電池スタック3を側面部より加熱すると共に、燃料電池スタック3の周辺雰囲気(モジュール内空間の雰囲気)を高温にする。この赤外線バーナ20は、燃料電池スタック3の集合体を囲むようその周辺に複数配置(4基)されているので、モジュール外周部を満遍なく均等に加熱することができる。
【0028】
一方、バーナ本体21の冷却空気流路26には、冷却用空気供給管31を通して外箱25の空気導入口27より冷却用空気が送り込まれる。この冷却用空気が冷却空気路26内を流通することにより、周囲と熱交換してバーナ本体21の背面部と外周部が冷却されるため、バーナ本体21が過度の高温に加熱されることを回避でき、耐久性が向上する。また、熱交換により加熱された空気は外箱25の空気排出口28よりバーナ外に排出される。
排出された加熱空気は、酸化剤ガス供給管16により空気熱交換器34に導入され、この空気熱交換器34にて更に加熱されると共に、各燃料電池スタック3に分岐・誘導されて、図3に示すように、燃料電池スタック内の各セパレータ10に導入され、セパレータ10の外周部より内部の酸化剤ガス通路12を通して空気極側に吐出し、空気極集電体9内を拡散移動して空気極層に達する。加熱空気がセパレータ10の酸化剤ガス通路12を通過する過程で周囲と熱交換してセパレータ10は内部からも加熱(予熱)される。
【0029】
燃料電池スタック3が発電可能な所定温度に昇温されると、バーナ本体21への混合ガスの供給が断たれて赤外線バーナ20の燃焼運転が停止されるが、ブロアからの送風は継続されている。昇温後は、燃料ガス供給管15を通し、燃料電池スタック3への燃料ガスの供給が開始される。
すなわち、燃料ガス供給管15に導入された燃料ガス(例えば、都市ガス)は、外部からの水と混合させられて混合ガスとなり、この混合ガスが燃料熱交換器33にて加熱された後、改質器32に導入されると共に、この改質器32において改質されて水素リッチな燃料ガスとなって各燃料電池スタック3に分岐・供給される。そして、酸化剤ガス供給管16を通して供給される空気と共に燃料電池スタック内において発電が開始されるが、バーナ本体21は冷却用空気により冷却されるため、発電運転中においてもバーナ本体21は排ガスによる高温雰囲気から保護されることになり、同時に熱交換により得られた加熱空気は酸化剤ガス供給管16より空気熱交換器34を通して予熱用として燃料電池スタック3に供給され、昇温時と同様に燃料電池スタック3は内部より加熱され、スタック内温度を好適な反応温度に維持する。
尚、運転中のバーナ20への送風量は運転開始時の送風量に比べて増加されているため、バーナ本体21への冷却効果はより向上しており、よって、発電運転中に生じる高温排ガスに対してもバーナ本体21は十分耐え得るものである。
【0030】
このように、本発明によれば、バーナ本体21に空気熱交換機構を備えるため、予熱用バーナ20による昇温時も昇温後の発電時も、予熱用バーナ20の燃焼熱や排ガスの熱によってバーナ本体21が過度の高温に加熱されることはなくなり、予熱用バーナ20の耐久性が向上すると共に、熱交換を終えた予熱用バーナ20の冷却用空気を外部に無駄に放出せずに予熱用空気として利用し、燃料電池スタック3を内部より加熱する。これにより、燃料電池スタック3の外周部と内部の温度差を小さく抑えながら発電セル7の昇温を促進することができ、よって、排熱の利用効率に優れたエネルギー効率の高い燃料電池を提供することができる。
【0031】
尚、以上説明した本実施形態では、複数の燃料電池スタック3を集合配置した高出力型の燃料電池モジュールについて説明したが、単数の燃料電池スタック3で構成された燃料電池モジュールについても本発明が適用可能であることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明に係る固体酸化物形燃料電池の内部構造を示す側断面図。
【図2】本発明に係る固体酸化物形燃料電池の内部構造を示す平断面図。
【図3】本発明に係る燃料電池スタックの要部概略構成図で、運転時のガスの流れを示す。
【図4】本発明に係る予熱用バーナの構成を示し、(a)は長さ方向の断面図、(b)は幅方向の断面図。
【符号の説明】
【0033】
1 燃料電池(固体酸化物形燃料電池)
2 ハウジング
3 燃料電池スタック
7 発電セル
16 予熱空気通路(酸化剤ガス供給管)
20 予熱用バーナ(赤外線バーナ)
21 バーナ本体
22 燃焼プレート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電セルを多数積層してスタックを構成すると共に、当該スタックを断熱ハウジング内に収納して成る燃料電池において、
前記断熱ハウジング内に前記発電セルを予熱する予熱用バーナが設けられ、
前記予熱用バーナは、燃焼を行うバーナ本体と、当該バーナ本体の外面部を冷却するための空気熱交換機構を備え、且つ、当該空気熱交換機構には熱交換を終えた冷却用空気を前記スタックに導入するための予熱空気通路が配設されていることを特徴とする燃料電池。
【請求項2】
前記予熱用バーナとして赤外線バーナを用い、その燃焼プレートが前記スタックの側面に対向するように配設されていることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池。
【請求項3】
前記予熱用バーナが、前記スタックの周辺に複数個配設されていることを特徴とする請求項1または請求項2の何れかに記載の燃料電池。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate