説明

燃料電池

【課題】反応ガス流路内に滞留する水によるガス閉塞の発生を抑制する。
【解決手段】カソード側プレート31の連通孔51および中間プレート33の連通部55が形成する空間により構成される酸化ガス排出流路部に、導水部材60が内挿される。導水部材60は、比較的高い親水性を有する高親水性部位60bと、比較的低い親水性を有する低親水性部位60aとが、それぞれ、ガス給排流路部の流路に沿って、導水部材60の全体にわたって連続するように形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、燃料電池において、導電性多孔部材によって構成される反応ガス流路内に滞留する水によるガス閉塞の発生を抑制する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、水素と酸素の電気化学反応によって発電する燃料電池がエネルギ源として注目されている。このような燃料電池は、一般に、電解質膜と電解質膜上に設けられた電極(酸素極および水素極。酸素極を以下では、カソードと呼び、水素極を以下では、アノードと呼ぶ。)と、を備える単セルを、セパレータにより挟持することにより構成される。そして、電気化学反応に供される反応ガス(燃料ガスまたは酸化ガス)の電極に対しての給排は、例えば、単セルを挟持するセパレータに設けられた貫通孔を介して行うことが提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2001−148252号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、燃料電池では、水素と酸素の電気化学反応によって、水が生成される。この生成水は、上記燃料電池の場合、貫通孔を介して排出される反応ガスとともに外部に排出される。しかし、この貫通孔は、例えば、低温時における水の凍結により閉塞する場合がある。貫通孔が閉塞すると、反応ガスの排出が妨げられ、結果として、燃料電池の発電能力が低下し、さらには、発電停止となる可能性がある。なお、以下では、反応ガスの流れが妨げられることを、簡単に「ガス閉塞」とも呼ぶ。
【0005】
特に、電解質膜上に設けられた電極に対して反応ガスを給排すると共に、ガス拡散性あるいは集電性を確保するために、電極とセパレータとの間に、多孔質な導電性部材から成る層(以下では、ガス流路形成部とも呼ぶ。)が反応ガス流路として配設される場合には、多孔質な部材の気孔に滞留する生成水が多くなるため、低温時における凍結により、貫通孔が閉塞する可能性がより高くなり、ガス閉塞が発生する可能性が高くなる。
【0006】
本発明は、上述した従来の課題を解決するためになされたものであり、燃料電池において、導電性多孔質部材によって構成される反応ガス流路内に滞留する水によるガス閉塞の発生を抑制する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的の少なくとも一部を達成するために、本発明の第1の燃料電池は、
電解質膜上に電極が形成された膜電極接合体と、導電性多孔質部材によって形成されるとともに、前記膜電極接合体上に積層して配置され、電気化学反応に供される反応ガスを前記電極に供給するための反応ガス流路を構成するガス流路形成部と、前記ガス流路形成部上に積層して配置されたセパレータと、を備える燃料電池であって、
前記セパレータは、
前記ガス流路形成部に当接する表面に開口を有し、前記ガス流路形成部に前記開口を介して前記反応ガスを供給するためのガス供給流路部と、前記ガス流路形成部から前記開口を介して前記反応ガスを排出するためのガス排出流路部と、の少なくとも一方として機能する複数のガス給排流路部を備えており、
前記複数のガス給排流路部のうち、少なくとも一部のガス給排流路部には、多孔質部材によって形成された導水部材が内挿されており、
前記導水部材は、比較的高い親水性を有する高親水性部位と、比較的低い親水性を有する低親水性部位とが、それぞれ、前記ガス給排流路部の流路に沿って、前記導水部材の全体にわたって連続するように形成されている、
ことを特徴とする。
【0008】
上記構成の第1の燃料電池によれば、電気化学反応により生成されてガス流路形成部に滞留する水の量を、導水部材による排水の促進により低下させることができる。また、導水部材を介して排出される水は、導水部材の低親水性部位への移動が抑制され、高親水性部位を介して排出されることになる。これにより、低親水性部位には、ほとんど水が含まれないことになるので、例えば、低温時において、導水部材に含まれている水が凍結しても、低親水性部位の凍結を防ぐことができ、ガス流路を確保することができるので、ガス閉塞の発生を抑制することができる。
【0009】
また、第2の燃料電池は、
電解質膜上に電極が形成された膜電極接合体と、導電性多孔質部材によって形成されるとともに、前記膜電極接合体上に積層して配置され、電気化学反応に供される反応ガスを前記電極に供給するための反応ガス流路を構成するガス流路形成部と、前記ガス流路形成部上に積層して配置されたセパレータと、を備える燃料電池であって、
前記セパレータは、
前記ガス流路形成部に当接する表面に開口を有し、前記ガス流路形成部に前記開口を介して前記反応ガスを供給するためのガス供給流路部と、前記ガス流路形成部から前記開口を介して前記反応ガスを排出するためのガス排出流路部と、の少なくとも一方として機能する複数のガス給排流路部を備えており、
前記複数のガス給排流路部のうち、少なくとも一部のガス給排流路部には、多孔質部材によって形成された導水部材が内挿されており、
前記導水部材が内挿されている前記ガス給排流路部において、前記導水部材が内挿されている内挿部位に対応する内壁面の少なくとも一部であって、前記ガス給排流路部の流路に沿った方向に連続する内壁面には、比較的高い親水性を有する高親水性部位としての前記導水部材よりも低い親水性を有する低親水性部位が形成されている、
ことを特徴とする。
【0010】
上記構成の第2の燃料電池においても、電気化学反応による生成されてガス流路形成部に滞留する水の量を、導水部材による排水の促進により低下させることができる。また、ガス給排流路部において、導水部材が内挿されている内挿部位に対応する内壁面のうち少なくとも一部であって、ガス給排流路部の流路に沿った方向に連続する内壁面には、導水部材よりも親水性の低い低親水性部位が形成されているので、導水部材を介して排出される水は、上記低親水性部位が形成されている内壁面付近への移動が抑制される。これにより、低親水性部位が形成されているガス給排流路部の内壁面付近は、ほとんど水が含まれないことになるので、例えば、低温時において、導水部材に含まれている生成水が凍結しても、ガス給排流路部の低親水性部位が形成されている内壁面近傍における凍結を防ぐことができ、ガス流路を確保することができるので、ガス閉塞の発生を抑制することができる。
【0011】
上記燃料電池において、
前記膜電極接合体と前記ガス流路形成部と前記セパレータの積層方向に垂直な方向が鉛直方向であり、
前記導水部材は、前記ガス流路形成部に構成される前記鉛直方向に沿った前記反応ガス流路の下端側に、前記開口を有する前記ガス給排流路部に内挿されているようにしてもよい。
【0012】
このような構成とすれば、ガス流路形成部に滞留する水を自重により効率よく排出することが可能となり、ガス流路形成部に滞留する水を抑制することができるので、ガス流路形成部に滞留する水によるガス閉塞を抑制することができる。
【0013】
また、上記燃料電池において、
前記導水部材が内挿されている前記ガス給排流路部は、前記ガス排出流路部であるようにしてもよい。
【0014】
このような構成とすれば、ガス排出流路部を介して接続されるガス排出マニホールドへ排出された水の逆流により、ガス排出流路流路部におけるガス閉塞が発生することを抑制することができる。
【0015】
なお、前記導水部材が内挿される前記ガス給排流路部は、カソード電極として機能する前記電極に対応する前記ガス流路形成部上に配置されたセパレータに備えられていることが好ましい。
【0016】
電気化学反応により水が生成されるのは、カソード電極であるので、このような構成とすれば、効果的なガス閉塞の抑制が可能である。
【0017】
また、前記低親水性部位は、前記高親水性部位に比べて、固体表面における水滴の接触角が大きくなるように撥水化処理がなされているようにしてもよく、あるいは、前記高親水性部位は、前記低親水性部位に比べて固体表面における水滴の接触角が小さくなるように親水化処理がなされているようにしてもよい。
【0018】
いずれのようにしても、低親水性部位が高親水性部位に比べて親水性が低く、言い換えると、撥水性が高くなるようにすることが容易に可能である。
【0019】
また、前記低親水性部位は、前記高親水性部位に比べて、固体表面における水滴の接触角が大きくなるように撥水化処理がなされているようにし、かつ、前記高親水性部位は、前記低親水性部位に比べて固体表面における水滴の接触角が小さくなるように親水化処理がなされているようにしてもよい。
【0020】
このようにすれば、生成水は、反応ガス流路閉塞抑制部位以外の親水化処理がなされた部位に移動しやすくなり、撥水化処理がなされた低親水性部位への移動の抑制効果を高めることが可能である。また、親水化処理がなされた部位による生成水の排出を促進することも可能である。
【0021】
なお、前記低親水性部位の前記接触角は90度以上であることが好ましい。
【0022】
このようにすれば、高い撥水性が得られるので、低親水性部位への水の移動の抑制効果を高めることが可能である。
【0023】
本発明は、種々の態様で実現可能であり、例えば、本発明の燃料電池や、その燃料電池を備える燃料電池システム、その燃料電池システムを備える発電装置、その燃料電池システムを備える電気自動車等の態様で実現することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下では、本発明の実施の形態を実施例に基づいて以下の手順で説明する。
A.第1実施例:
A1.燃料電池の構成:
A2.燃料電池モジュールの構成:
A3.酸化ガス排出流路部の構成:
B.第2実施例:
C.変形例:
【0025】
A.第1実施例:
A1.燃料電池の構成:
図1は、第1実施例に係る燃料電池100の外観構成を示す説明図である。燃料電池100は、比較的小型で発電効率に優れる固体高分子型燃料電池である。燃料電池100は、スタック110と、エンドプレート300と、テンションプレート310と、インシュレータ330と、ターミナル340とを備えている。スタック110は、モジュール200が、設置面に対して垂直に複数個積層されて構成される。また、スタック110は、インシュレータ330およびターミナル340を挟んで、2枚のエンドプレート300によって挟持される。そして、燃料電池100は、テンションプレート310がボルト320によって各エンドプレート300に結合されることによって、スタック110(各モジュール200)を、積層方向に所定の力で締結する構造となっている。なお、設置面は、鉛直方向に垂直な方向(水平方向)に沿った面(水平面)である。
【0026】
燃料電池100のカソード(図1には示さず)には、酸化ガス(カソードガス)が供給され、電気化学反応後、酸化排ガスとして燃料電池100外に排出される。燃料電池100のアノード(図1には示さず)には、燃料ガス(アノードガス)が供給され、電気化学反応後、燃料排ガスとして燃料電池100外に排出される。また、燃料電池100には、燃料電池100を冷却するための冷却媒体(水、エチレングリコール等の不凍水、空気等)が供給される。
【0027】
A2.燃料電池モジュールの構成:
図2は、燃料電池100を構成するモジュール200の概略構成を示す断面模式図である。モジュール200は、図2に示すように、単セル10とセパレータ30とを交互に積層して構成される。なお、以下では、単セル10とセパレータ30とを積層する方向(x方向)を積層方向とも呼び、単セル10のセパレータ30を積層する面に平行な方向(y方向)を面方向とも呼ぶ。また、図2では、面方向は鉛直方向となっており、面方向下向きが重力方向となっている。
【0028】
単セル10は、MEA(膜電極接合体、Membrance Electrode Assembly)12と、MEA12の外側に配設されたガス流路形成部14,15と、シール部16と、を備える。ここで、MEA12は、電解質膜20と、電解質膜20を間に挟んでその表面に形成された触媒電極であるカソード22およびアノード24と、上記触媒電極のさらに外側に配設されたガス拡散層26,28と、を備えている。
【0029】
電解質膜20は、固体高分子材料、例えばパーフルオロカーボンスルホン酸を備えるフッ素系樹脂により形成されたプロトン伝導性のイオン交換膜であり、湿潤状態で良好な電気伝導性を示す。カソード22およびアノード24は、電気化学反応を促進する触媒、例えば、白金、あるいは白金と他の金属から成る合金を備えている。ガス拡散層26,28は、例えばカーボン製の多孔質部材である。なお、ガス拡散層は、触媒電極に対するガス供給効率を向上させるとともに、ガス流路形成部と触媒電極との間の集電性を高め、電解質膜を保護する働きを有するが、ガス流路形成部の構成材料やガス流路形成部の気孔率によっては、ガス拡散層を設けないこととしてもよい。
【0030】
ガス流路形成部14,15は、発砲金属や金属メッシュなどの金属製多孔質体によって形成されており、本実施例では、チタン(Ti)製の多孔質体を用いている。ガス流路形成部14,15は、MEA12とセパレータ30との間に形成される空間全体を占めるように配設されており、内部に形成される多数の細孔から成る空間は、電気化学反応に供されるガス(反応ガス、すなわち、燃料ガスまたは酸化ガス)が通過する単セル内ガス流路として機能する。記述したガス拡散層においても、内部に形成される空間をガスが通過するが、本実施例では、ガス流路形成部14,15は、単セル10に供給されたガスが通過する主たる空間を形成する。この場合、特に、ガス流路形成部15を酸化ガス流路形成部とも呼び、ガス流路形成部14内に形成される単セル内ガス流路を酸化ガス流路とも呼ぶ。また、ガス流路形成部15を燃料ガス流路形成部とも呼び、ガス流路形成部15内に形成される単セル内ガス流路を燃料ガス流路とも呼ぶ。
【0031】
シール部16は、隣り合うセパレータ30間であって、MEA12およびガス流路形成部14,15の外周部に設けられている。このシール部16は、例えば、シリコンゴム、ブチルゴム、フッ素ゴムなどの絶縁性ゴム材料によって形成されると共に、MEA12およびと一体で形成されている。
【0032】
図3は、MEAと一体形成されたシール部16の概略構成を表わす平面図である。図3に示すように、シール部16は、略四角形状の薄板状部材であり、外周部に設けられた6つの穴部と、中央部に設けられてMEAが組み込まれている略四角形の穴部とを有している。なお、図3の平面図には表わしていないが、シール部16は実際には図2に示すように所定の凹凸形状を有しており、燃料電池内では、上記6つの穴部および略四角形の穴部を取り囲む位置に設けられた凸部で、隣接するセパレータ30と接触する。シール部16とセパレータ30との接触位置(図2において一点鎖線で示す)を、図3の平面図においてシールラインSLとして示している。シール部16は、弾性を有する樹脂材料から成るため、燃料電池100内で積層方向に平行な方向に押圧力が加えられることにより、上記シールラインSLを形成する。なお、図3では、シール部16と一体化されたMEAにおける外部に露出している部分(以下では、「集電領域」と呼ぶ。)を、ハッチを付して示している。また、図3では、シール部16内部に埋め込まれているMEA12の外周線を、破線で示している。なお、図3では図示を省略するが、ガス流路形成部14,15は上記集電領域と略同一形状に形成されており、集電領域においてシール部16に嵌め込まれている。
【0033】
セパレータ30は、3枚のプレートから形成され、いわゆる、三層積層セパレータとなっている。セパレータ30は、図2に示すように、ガス流路形成部14と接するカソード側プレート31と、ガス流路形成部15と接するアノード側プレート32と、カソード側プレート31およびアノード側プレート32に挟持される中間プレート33と、を備えている。これら3枚のプレートは、導電性材料、例えばステンレス鋼あるいはチタンやチタン合金といった金属によって形成される薄板状部材であり、図2に示すように、カソード側プレート31、中間プレート33、アノード側プレート32の順に重ね合わされて、例えば拡散接合により接合されている。これら3種のプレートは、いずれも凹凸のない平坦な表面を有すると共に、各々、所定の位置に所定形状の穴部を有している。
【0034】
図4は、カソード側プレート31の形状を示す説明図である。図5は、アノード側プレート32の形状を示す説明図である。図6は、中間プレート33の形状を示す説明図である。
【0035】
カソード側プレート31(図4)およびアノード側プレート32(図5)は、同様の位置に、6つの穴部を備えている。これらの6つの穴部は、スタック110を形成するために各々の薄板状部材が積層された際に互いに重なり合って、燃料電池内部において積層方向に平行に流体を導くマニホールドを形成する。穴部40は、燃料電池に対して供給された酸化ガスを各単セル10に分配する酸化ガス供給マニホールドを形成し(図中、O inと表わす)、穴部41は、各単セル10から排出されて集合した酸化排ガスを外部へと導く酸化ガス排出マニホールドを形成する(図中、O outと表わす)。また、穴部42は、燃料電池に対して供給された燃料ガスを各単セル10に分配する燃料ガス供給マニホールドを形成し(図中、H inと表わす)、穴部43は、各単セル10から排出されて集合した燃料排ガスを外部へと導く燃料ガス排出マニホールドを形成する(図中、H outと表わす)。さらに、穴部44は、燃料電池100に供給された冷却媒体を各セパレータ30内に分配する冷媒供給マニホールドを形成し(図中、水 inと表わす)、穴部45は、各セパレータ30から排出されて集合した冷媒を外部へと導く冷媒排出マニホールドを形成する(図中、水 outと表わす)。なお、中間プレート33(図6)は、上記した穴部のうち、穴部40,41,42,43を備えており、また、後述する複数の冷媒孔58が、穴部44,45に対応する位置に重なるように設けられている。
【0036】
また、カソード側プレート31は、図4に示すように、穴部40の近傍に穴部40に平行に配列する複数の穴部である連通孔50を、穴部41の近傍に穴部41に平行に配列する複数の連通孔51を、それぞれ備えている。アノード側プレート32は、図6に示すように、穴部42の近傍に、穴部42に平行に配列する複数の穴部である連通孔52を、穴部43の近傍に穴部43に平行に配列する複数の連通孔53を、それぞれ備えている。中間プレート33においては、図6に示すように、穴部40の形状が他のプレートとは異なっており、突出する複数の突出部(以下では、連通部54と呼ぶ。)を備える形状となっている。この連通部54は、中間プレート33とカソード側プレート31とが積層されたときに連通孔50と重なり合って、酸化ガス供給マニホールドと連通孔50とが連通するように、各連通孔50に対応して設けられている。中間プレート33では、他の穴部41,42,43においても同様に、連通孔51,52,53に対応して、複数の連通部55,56,57がそれぞれ設けられている。
【0037】
図2に示すように、燃料電池100(モジュール200)の内部において、各プレートの穴部40が形成する酸化ガス供給マニホールドを流れる酸化ガスは、中間プレート33の連通部54が形成する空間およびカソード側プレート31の連通孔50により構成される酸化ガス供給流路部を介して、ガス流路形成部14内に形成される酸化ガス流路へと流入し、面方向に流れると共に、積層方向へとさらに拡散する。積層方向に拡散した酸化ガスは、ガス流路形成部14から第1ガス拡散層26を介してカソード22に至り、電気化学反応に供される。このように電気化学反応に寄与しつつ酸化ガス流路を通過した酸化ガスは、ガス流路形成部14から、カソード側プレート31の連通孔51および中間プレート33の連通部55が形成する空間により構成される酸化ガス排出流路部を介して、穴部41が形成する酸化ガス排出マニホールドへと排出される。同様に、燃料電池の内部において、穴部42が形成する燃料ガス供給マニホールドを流れる燃料ガスは、中間プレート33の連通部56が形成する空間およびアノード側プレート32の連通孔52により構成される燃料ガス供給流路部を介して、ガス流路形成部15内に形成される燃料ガス流路へと流入し、面方向に流れると共に、積層方向へとさらに拡散する。積層方向に拡散した燃料ガスは、ガス流路形成部15から第1ガス拡散層28を介してアノード24に至り、電気化学反応に供される。このように電気化学反応に寄与しつつ燃料ガス流路を通過した燃料ガスは、ガス流路形成部15から、アノード側プレート32の連通孔53および中間プレート33の連通部57が形成する空間により構成される燃料ガス排出流路部を介して、穴部43が形成する燃料ガス排出マニホールドへと排出される。
【0038】
なお、中間プレート33の連通部54が形成する空間およびカソード側プレート31の連通孔50により構成される酸化ガス供給流路部や、中間プレート33の連通部56が形成する空間およびアノード側プレート32の連通孔52により構成される燃料ガス供給流路部が、請求項におけるガス供給流路部に相当する。また、カソード側プレート31の連通孔51および中間プレート33の連通部55が形成する空間により構成される酸化ガス排出流路部や、アノード側プレート32の連通孔53および中間プレート33の連通部57が形成する空間により構成される燃料ガス排出流路部が、請求項におけるガス排出流路部に相当する。さらに、これらガス供給流路部やガス排出流路部が、請求項におけるガス給排流路部に相当する。
【0039】
ところで、カソード22(図2)では、電気化学反応により水が生成される。この生成水は、ガス流路形成部14の毛管吸引力により酸化ガス流路(ガス流路形成部14)中に拡散し、通過する酸化ガスに押し出されて連通孔51を介して酸化ガス排出マニホールドを形成する穴部41へ排出される。さらに、アノード24(図2)においても、カソード22側から電解質膜20を透過してくるなどして水が生じ、同様に、燃料ガスとともに、連通孔53(図5)を介して燃料ガス排出マニホールドを形成する穴部43へ排出される。
【0040】
また、ガス流路形成部14中に拡散した水の中には、通過する酸化ガスに押し出されずに滞留する水もある。このような水は、自重により次第に鉛直方向下向きに移動し、連通孔51付近に蓄積される。そして、連通孔51付近で保持可能な上限水量を超えると、ガス流路形成部14から連通孔51へ排出され、連通部55が形成する空間を介して酸化ガス排出マニホールドとしての穴部41に排出される。このようにして行われる水の排出を促進するために、連通孔51および連通部55が形成する空間により構成される酸化ガス排出流路部には、多孔質部材によって形成された導水部材60(図2)が内挿されており、この導水部材60によってガス流路形成部14中の水の排出が促進される。なお、本実施例の燃料電池100は、この導水部材60の構造に特徴を有しているが、その詳細は後で詳述する。
【0041】
図3ないし図6においてA−A断面の位置を示しているが、このA−A断面の位置は、図2に示した断面図に相当する位置を表わしている。図2に示すように、A−A断面では、穴部40が形成する酸化ガス供給マニホールドから、中間プレート33の連通部54およびカソード側プレート31の連通孔50により形成される酸化ガス供給連通部を介して、ガス流路形成部14内へと酸化ガスが供給される様子が表わされる。さらに、A−A断面では、ガス流路形成部14から、カソード側プレート31の連通孔51および中間プレート33の連通部55を介して、穴部41が形成する酸化ガス排出マニホールドへと酸化ガスが排出される様子が表わされる。
【0042】
なお、中間プレート33(図6)は、集電領域を含む領域に、互いに平行に形成された細長い複数の冷媒孔58を備えている。これらの冷媒孔58の端部は、中間プレート33を他の薄板状部材と重ね合わせたときに、穴部44,45と重なり合い、冷媒が流れるためのセル間冷媒流路をセパレータ30内で形成する。すなわち、燃料電池の内部において、穴部44が形成する冷媒供給マニホールドを流れる冷媒は、上記冷媒孔58によって形成されるセル間冷媒流路に分配され、セル間冷媒流路から排出される冷媒は、穴部45が形成する冷媒排出マニホールドに排出される。
【0043】
A3.酸化ガス排出流路部の構成:
図7は、酸化ガス排出流路部に内挿される導水部材60の概略形状を示す説明図である。図7(a)は、導水部材60を図2のガス流路形成部14側から見た正面図であり、図7(b)は、導水部材60を図2の紙面表側から見た側面図であり、図7(c)は、導水部材60を図2のアノード側プレート32側から見た背面図である。また、図7(d)は、図4のカソード側プレート31の連通孔51および図6の中間プレート33の連通部55が形成する空間により構成される酸化ガス排出流路部に、導水部材60を内挿した状態の一部分を拡大して示しており、アノード側プレート32側から見た様子を示している。
【0044】
図7(a)〜図7(c)に示すように、導水部材60は、円柱状の先端部62と、正面から見た形状が鉛直下方向に尖った略ティアドロップ形状を有する柱状のフランジ部64と、を備えている。先端部62とフランジ部64とは多孔質体を用いて一体に形成されている。多孔質体としては、ガス流路形成部14,15と同じ、金属製多孔質体を用いることができる。ただし、これに限定されるものではなく、ガス流路形成部14,15とは異なった金属製多孔質体を用いることもできる。また、カーボン製の多孔質体など種々の多孔質体を用いることができる。
【0045】
導水部材60は、図7(d)に示すように、先端部62をカソード側プレート31の連通孔51に挿入することにより、カソード側プレート31の連通孔51および中間プレート33の連通部55が形成する空間により構成される酸化ガス排出流路部に内挿される。なお、導水部材60は、酸化ガス排出流路部の内壁面に接していても接していなくてもよい。
【0046】
ここで、導水部材60は、比較的低い親水性を有する低親水性部位60aと、比較的高い親水性を有する高親水性部位60bとを備えている。低親水性部位60aおよび高親水性部位60bは、それぞれ、連通孔51および連通部55が形成する空間により構成される酸化ガス排出流路の壁面に沿って、導水部材60の全体にわたって連続するように形成されている。具体的には、図7に示すように、導水部材60の、連通孔51の鉛直方向(y方向)の上端側の内壁側、連通部55の上鉛直方向の上端側の内壁側、および、連通部55の中間プレート33側の内壁側の部分に、低親水性部位60aが形成されており、他の部分に高親水性部位60bが形成されている。
【0047】
低親水性部位60aは、固体表面(気孔表面を含む)における水滴の接触角が高くなるように、テフロン(登録商標)などの撥水化処理部材を塗工する撥水化処理を施すことにより形成することができる。このとき、例えば、接触角が90度以上となるような撥水化処理をすれば、非常に高い撥水性、言い換えると、非常に低い親水性を有することができる。また、高親水性部位60bは、固体表面(気孔表面を含む)における水滴の接触角が低くなるように、SiO、TiOなどの親水化水化処理部材を塗工する親水化処理を施すことにより形成することができる。このとき、例えば、接触角が60度以下となるような親水化処理をすれば、非常に高い親水性を有することができる。
【0048】
図8は、酸化ガス排出流路部における排水動作について説明図である。図8は、図7(d)のB−B位置における断面模式図である。なお、図中の矢印は水の流れの概略を模式的に示している。
【0049】
導水部材60は、上記したように、多孔質体により形成されているので、導水部材60が挿入されない場合に比べて、ガス排出流路部内における固体表面に接触する水の単位体積あたりの接触面積を増加させることができるため、ガス流路形成部14から水の移動を促進することができ、結果として、ガス流路形成部14からの排水を促進することができる。なお、排水の促進効果を高めるためには、ガス流路形成部14の気孔率よりも導水部材60の気孔率を高くするほうが好ましい。
【0050】
以上説明したように、導水部材60によりガス流路形成部14からの排水を促進し、ガス流路形成部14に滞留する水の量を抑制することが可能である。しかしながら、多孔質体の構造上、水の滞留を完全になくすことは困難であり、運転停止時に、ガス流路形成部14内に水が残留する可能性が高い。そして、この残水は、導水部材60に移動して、導水部材60内において連続した水の領域(「水膜」と呼ばれる)を形成する。そして、この水膜が低温時に凍結すると、酸化ガス排出流路部を閉塞することにより、結果として、酸化ガスのガス閉塞を招くことになる。
【0051】
ここで、導水部材60は、上記したように、高親水性部位60bと低親水性部位60aとで構成されている。高親水性部位60bは、親水化処理が施されており、ガス流路形成部14からの排水を促進する機能を担っている。一方、低親水性部位60aは、撥水化処理が施されており、ガス流路形成部14や高親水性部位60bからの水の移動を抑制する。これにより、燃料電池の運転停止後において、ガス流路形成部14から排出される水は、ほとんど導水部材60の高親水性部位60bへ移動する。そして、高親水性部位60bに含まれている水は、低親水性部位60aとの境界で撥ねられることになる。このため、低親水性部60aは、水をほとんど含まず水膜の形成を抑制することができるので、低温時における低親水性部位60aの凍結を抑制することができる。この結果、燃料電池の運転停止後における低温時において、酸化ガス排出流路部に内挿されている導水部材60のうち、高親水性部位60bによる酸化ガス流路が凍結により閉塞しても、低親水性部位60aの凍結を抑制して酸化ガス流路として確保することができるので、酸化ガスのガス閉塞が発生することを抑制することができる。
【0052】
なお、必ずしも、高親水性部位60bに親水化処理を施す必要はないが、高親水性部位60bに親水化処理を施すことにより、高親水性部位60bへの水の移動を促進することができるので、低親水性部位60aへの水の移動の抑制効果をいっそう高めることが可能である。
【0053】
以上のように、本実施例の燃料電池100では、導水部材60は、比較的低い親水性を有する低親水性部位60aと、比較的高い親水性を有する高親水性部位60bとを備えている。低親水性部位60aおよび高親水性部位60bは、それぞれ、連通孔51および連通部55が形成する空間により構成される酸化ガス排出流路部の壁面に沿って、導水部材60の全体にわたって連続するように形成される。これにより、導水部材60中において、低親水性部位60aにおける水の滞留を抑制して水膜の形成を抑制することができる。この結果、燃料電池の運転停止後における低温時において、酸化ガス排出流路部の全てが凍結して酸化ガス流路が閉塞することを抑制することができるので、酸化ガスのガス閉塞が発生することを抑制することが可能となる。
【0054】
なお、上記実施例の導水部材60は、先端部62の上側の部分およびこれに続くフランジ部64の部分に低親水性部位60aを備える場合を例に示したが、これに限定されるものではく、例えば、先端部62の下側の部分およびこれに続くフランジ部64の部分に低親水性部位を備えるようにしてもよい。すなわち、比較的高い親水性を有する高親水性部位と、比較的低い親水性を有する低親水性部位とが、酸化ガス排出流路部の流路に沿って、導水部材の全体にわたって連続するように形成されていればよい。
【0055】
また、上記実施例の導水部材60のフランジ部64は、鉛直下方向に尖った略ティアドロップ形状を有する柱状のフランジ部を例に説明したが、これに限定されるものではなく、ガス流路形成部14からの水の排出を促進することが可能な形状ならばどのような形状でも良い。
【0056】
B.第2実施例:
図9は、第2実施例における酸化ガス排出流路部における排水動作について説明図である。図9も、図8と同様に、図7(d)のB−B位置における断面模式図である。
【0057】
第2実施例における導水部材60'は、第1実施例の導水部材60と同様の形状を有しており、多孔質体により形成されている。ただし、第1実施例の導水部材60のような低親水性部位を備えておらず、全て高親水性部位となっている。
【0058】
ただし、導水部材60'が内挿されている酸化ガス排出流路部において、その導水部材60'の内挿部位に対応する内壁面のうち、カソード側プレート31およびアノード側プレート32の上側の内壁面と中間プレート33の内壁面に、撥水化処理が施された低親水性部位30aが、ガス給排流路部の流路に沿った方向で内挿部位に対応する内壁面の全体にわたって連続するように形成されている。なお、導水部材60'は、酸化ガス排出流路部の内壁面に接していても接していなくてもよい。
【0059】
第2実施例においても、酸化ガス排出流路部の内壁面に形成された低親水性部位30aは、撥水化処理が施されているので、ガス流路形成部14から排出される水や導水部材60'に含まれる水が低親水性部位30aに接するとはじかれる。この結果、水は、低親水性部位30aに接しない領域に移動することになり、低親水性部位30aの近傍には、水が滞留せず、水膜が形成されることが抑制されるので、低親水性部位30aの近傍の酸化ガス排出流路部は、低温時における凍結を抑制することができる。この結果、燃料電池の運転停止後における低温時において、低親水性部位30aの近傍を除く酸化ガス排出流路部が凍結により閉塞しても、低親水性部位30aの近傍の酸化ガス排出流路部の凍結を抑制して酸化ガス流路として確保することができるので、酸化ガスのガス閉塞が発生することを抑制することができる。
【0060】
なお、上記実施例では、カソード側プレート31の貫通孔51の上側の内壁面とこれに続く連通部55が形成する空間の内壁面に、撥水化処理が施された低親水性部位30aが形成されている場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、カソード側プレート31の貫通孔51の下側の内壁面とこれに続く連通部55が形成する空間の内壁面に、低親水性部位が形成されているようにしてもよい。また、カソード側プレート31の貫通孔51の内壁面の全面とこれに続く連通部55が形成する空間の内壁面に、低親水性部位が形成されるようにしてもよい。すなわち、導水部材が内挿されている内挿部位に対応する内壁面の少なくとも一部であって、前記ガス給排流路部の流路に沿った方向に連続する内壁面に、低親水性部位が形成されているようにすればよい。
【0061】
また、上記実施例の導水部材60'は、説明の便宜上、第1実施例の導水部材60と同じ形状を例に説明したが、これに限定されるものではなく、ガス流路形成部14からの水の排出を促進することが可能な形状ならばどのような形状でも良い。
【0062】
C.変形例:
なお、本発明では、上記した実施の形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様にて実施することが可能である。
【0063】
C1.変形例1:
上記実施例では、カソード側プレート31の連通孔51および中間プレート33の連通部55が形成する空間により構成される複数の酸化ガス排出流路部のいずれにも、導水部材を内挿する場合を示しているが、これに限定されるものではなく、一部の酸化ガス排出流路部に導出部材を内挿するようにしてもよい。このようにしても、燃料電池の運転停止後において、低温時凍結により発生する酸化ガスのガス閉塞を抑制することができる。
【0064】
C2.変形例2:
上記実施例において、接触角が大きくなるように撥水化処理を施すことにより低親水性部位を形成し、接触角が小さくなるように親水化処理を施すことにより高親水性部位を形成する場合を例に説明しているが、これに限定されるものではない。低親水性部位についてのみ、低親水化処理(撥水化処理を含む)を施すようにしてもよく、高親水性部位についてのみ、高親水化処理を施すようにしてもよい。要するに、高親水性部位と低親水性部位とで、親水性に差が発生するように、構成されていればよい。
【0065】
なお、低親水性部は接触角が90度未満の状態であってもよいが、実施例のように接触角が90度以上の高い撥水性を有する状態とした方が望ましい。また、高親水性部位は接触角が90度未満でより小さくなる状態、すなわち、実施例のように、高い親水性(例えば、接触角が60度以下)を有する状態としたほうが望ましい。このように、低親水性部位は接触角が大きく高い撥水性を有することにし、高親水性部位は接触角が小さく高い親水性を有するようにすれば、燃料電池の運転時における水の排出を促進して、酸化ガス流路の閉塞を抑制することができるとともに、運転停止時における酸化ガス排出流路部の低温時凍結による閉塞を抑制して、酸化ガスのガス閉塞の発生を抑制することができる。
【0066】
C3.変形例3:
上記実施例では、カソード側プレート31の連通孔51および中間プレート33の連通部55が形成する空間により構成される酸化ガス排出流路部に導水部材を内挿する場合を例に説明しているが、中間プレート33の連通部54が形成する空間およびカソード側プレート31の連通孔50により構成される酸化ガス供給流路部に、導水部材を内挿するようにしてもよい。このようにしても、燃料電池の運転停止後において、酸化ガス供給流路部が凍結することにより酸化ガスのガス閉塞が発生することを抑制することができる。特に、ガス供給流路部を構成する連通孔50が、ガス流路形成部14の鉛直方向の下端側に対応する位置に設けられている場合に、燃料電池の運転停止後に、ガス流路形成部14に滞留する水を効果的に排出することが可能であり、低温時ガス供給流路部が凍結して、酸化ガスのガス閉塞が発生することを抑制することができる。
【0067】
また、複数の酸化ガス排出流路部および複数の酸化ガス供給流路部の全てに導水部材が内挿されるようにしてもよく、また、一部の酸化ガス排出流路部および一部の酸化ガス供給流路部に導水部材を内挿するようにしてもよい。
【0068】
C4.変形例4:
上記実施例や変形例3では、酸化ガス排出流路部や酸化ガス供給流路部に導水部材を内挿する場合を例に説明しているが、中間プレート33の連通部56が形成する空間およびアノード側プレート32の連通孔52により構成される燃料ガス供給流路部やアノード側プレート32の連通孔53および中間プレート33の連通部57が形成する空間により構成される燃料ガス排出流路部に導水部材を内挿するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】第1実施例に係る燃料電池100の外観構成を示す説明図である。
【図2】燃料電池100を構成するモジュール200の概略構成を示す断面模式図である。
【図3】MEAと一体形成されたシール部16の概略構成を表わす平面図である。
【図4】カソード側プレート31の形状を示す説明図である。
【図5】アノード側プレート32の形状を示す説明図である。
【図6】中間プレート33の形状を示す説明図である。
【図7】酸化ガス排出流路部に内挿される導水部材60の概略形状を示す説明図である。
【図8】酸化ガス排出流路部における排水動作について説明図である。
【図9】第2実施例における酸化ガス排出流路部における排水動作について説明図である。
【符号の説明】
【0070】
10...単セル
14...ガス流路形成部
15...ガス流路形成部
16...シール部
20...電解質膜
22...カソード
24...アノード
26...ガス拡散層
28...ガス拡散層
30...セパレータ
30a...低親水性部位
31...カソード側プレート
32...アノード側プレート
33...中間プレート
60...導水部材
60a...低親水性部位
60b...高親水性部位
62...先端部
64...フランジ部
60'...導水部材
100...燃料電池
110...スタック
200...モジュール
300...エンドプレート
310...テンションプレート
320...ボルト
330...インシュレータ
340...ターミナル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解質膜上に電極が形成された膜電極接合体と、導電性多孔質部材によって形成されるとともに、前記膜電極接合体上に積層して配置され、電気化学反応に供される反応ガスを前記電極に供給するための反応ガス流路を構成するガス流路形成部と、前記ガス流路形成部上に積層して配置されたセパレータと、を備える燃料電池であって、
前記セパレータは、
前記ガス流路形成部に当接する表面に開口を有し、前記ガス流路形成部に前記開口を介して前記反応ガスを供給するためのガス供給流路部と、前記ガス流路形成部から前記開口を介して前記反応ガスを排出するためのガス排出流路部と、の少なくとも一方として機能する複数のガス給排流路部を備えており、
前記複数のガス給排流路部のうち、少なくとも一部のガス給排流路部には、多孔質部材によって形成された導水部材が内挿されており、
前記導水部材は、比較的高い親水性を有する高親水性部位と、比較的低い親水性を有する低親水性部位とが、それぞれ、前記ガス給排流路部の流路に沿って、前記導水部材の全体にわたって連続するように形成されている、
燃料電池。
【請求項2】
電解質膜上に電極が形成された膜電極接合体と、導電性多孔質部材によって形成されるとともに、前記膜電極接合体上に積層して配置され、電気化学反応に供される反応ガスを前記電極に供給するための反応ガス流路を構成するガス流路形成部と、前記ガス流路形成部上に積層して配置されたセパレータと、を備える燃料電池であって、
前記セパレータは、
前記ガス流路形成部に当接する表面に開口を有し、前記ガス流路形成部に前記開口を介して前記反応ガスを供給するためのガス供給流路部と、前記ガス流路形成部から前記開口を介して前記反応ガスを排出するためのガス排出流路部と、の少なくとも一方として機能する複数のガス給排流路部を備えており、
前記複数のガス給排流路部のうち、少なくとも一部のガス給排流路部には、多孔質部材によって形成された導水部材が内挿されており、
前記導水部材が内挿されている前記ガス給排流路部において、前記導水部材が内挿されている内挿部位に対応する内壁面の少なくとも一部であって、前記ガス給排流路部の流路に沿った方向に連続する内壁面には、比較的高い親水性を有する高親水性部位としての前記導水部材よりも低い親水性を有する低親水性部位が形成されている、
燃料電池。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載の燃料電池であって、
前記膜電極接合体と前記ガス流路形成部と前記セパレータの積層方向に垂直な方向が鉛直方向であり、
前記導水部材は、前記ガス流路形成部に構成される前記鉛直方向に沿った前記反応ガス流路の下端側に、前記開口を有する前記ガス給排流路部に内挿されている、
燃料電池。
【請求項4】
請求項1または請求項2記載の燃料電池であって、
前記導水部材が内挿されている前記ガス給排流路部は、前記ガス排出流路部である、
燃料電池。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の燃料電池であって、
前記導水部材が内挿される前記ガス給排流路部は、カソード電極として機能する前記電極に対応する前記ガス流路形成部上に配置されたセパレータに備えられている、
燃料電池。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の燃料電池であって、
前記低親水性部位は、前記高親水性部位に比べて、固体表面における水滴の接触角が大きくなるように撥水化処理がなされている、
燃料電池。
【請求項7】
請求項6記載の燃料電池であって、
前記低親水性部位の前記接触角は90度以上である、
燃料電池。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の燃料電池であって、
前記高親水性部位は、前記低親水性部位に比べて固体表面における水滴の接触角が小さくなるように親水化処理がなされている、
燃料電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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