説明

燃料電池

【課題】発電停止後の再始動において、電力が安定するまでにかかる時間を短縮することができる燃料電池を提供すること。
【解決手段】アノードと、カソードと、前記アノードとカソードとによって挟持された電解質膜とを有する膜電極接合体と、前記膜電極接合体の前記アノード側に配置され、前記アノードに燃料を供給するための燃料供給機構とを有する燃料電池であって、水または燃料成分を希釈した水溶液からなる導入液を前記燃料電池の外部から前記アノードおよびカソードの中から選ばれる少なくとも一方へ直接導入することが可能な導液部を有するもの。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ノートパソコンや携帯電話等の各種携帯用電子機器を長時間充電なしで使用可能とするために、これら携帯用電子機器の電源に燃料電池を用いる試みがなされている。燃料電池は燃料と空気とを供給するだけで発電することができ、燃料を補給すれば連続して長時間発電することが可能であるという特徴を有している。このため、燃料電池を小型化できれば、携帯用電子機器の電源として極めて有利なシステムといえる。
【0003】
特に、直接メタノール型燃料電池(Direct Methanol Fuel Cell:DMFC)は、燃料としてエネルギー密度の高いメタノールを用い、メタノールから電極触媒上で直接電流を取り出すことができ、改質器も不要なことから小型化が可能であり、また燃料の取り扱いも水素ガスに比べて容易なことから、携帯用電子機器の電源として有望視されている。
【0004】
燃料電池は、例えばアノード触媒層とアノードガス拡散層とを有するアノード(燃料極)と、カソード触媒層とカソードガス拡散層とを有するカソード(空気極/酸化剤極)と、これらアノードとカソードとによって挟持されるプロトン(水素イオン)伝導性の電解質膜とから構成される膜電極接合体(Membrane Electrode Assembly:MEA)を有している。ここで、アノード触媒層やカソード触媒層は、例えば電解質膜と同種あるいは異種のイオン交換樹脂で被覆された触媒担持カーボン微粒子が構成材料として使用されている。
【0005】
このような燃料電池については、発電停止後に電解質膜や触媒層中のイオン交換樹脂が乾燥することから再始動後の発電効率が低下することがある。このような発電効率の低下に対しては、例えば水分を多量に含む低濃度の燃料を使用したり、また高濃度の燃料を使用する場合には、系を開放しないものとすることで水分の蒸散を防ぎ、燃料ポンプ、送気ポンプ、燃料濃度センサー等の補助機構を使い、燃料を低濃度処理して供給したりすることが検討されている。
【0006】
しかし、低濃度の燃料を使用する場合、例えば燃料カートリッジが大型化することから携帯性が損なわれるおそれがある。また、高濃度の燃料を使用する場合、例えば燃料電池本体が補助機構のために大型化することにより携帯性が損なわれるおそれがあり、また補助機構の稼働にエネルギーを必要とするため十分な特性を得られないおそれがある。
【0007】
このため、カソード側に保護カバーが設けられた燃料電池において、このカソード側の保護カバーに開口し、かつ電解質膜の周囲の間隙に連通する吸水口を設けることが検討されている。このような吸水口を設けることで、この吸水口からカソードガス拡散層やカソード触媒層を通して電解質膜を加湿することができ、再始動後についてもそれまでと同様の発電効率を得ることができるようになっている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2006−269130号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、カソード側の保護カバーに開口する吸水口から水分を注入して電解質膜を加湿する場合、カソードガス拡散層やカソード触媒層を通しての加湿となることから迅速な加湿を行うことができず、再始動後に電力が安定するまでにかかる時間を必ずしも十分に短縮することができない。また、水分は燃料の改質反応にも必要とされ、この燃料の改質反応はアノード触媒層で行われるが、カソード側の保護カバーに開口した吸水口から水を注入する場合、このアノード触媒層を迅速かつ十分に加湿することができず、再始動後に電力が安定するまでにかかる時間を必ずしも十分に短縮することができない。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、発電停止後の再始動において電力が安定するまでにかかる時間を短縮することができる燃料電池を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の燃料電池は、アノードと、カソードと、前記アノードとカソードとによって挟持された電解質膜とを有する膜電極接合体と、前記膜電極接合体の前記アノード側に配置され、前記アノードに燃料を供給するための燃料供給機構とを有する燃料電池であって、水または燃料成分を希釈した水溶液からなる導入液を前記燃料電池の外部から前記アノードおよびカソードの中から選ばれる少なくとも一方へ直接導入することが可能な導液部を有することを特徴としている。
【0011】
本発明の燃料電池においては、前記アノードおよびカソードを気密に保持するために少なくとも前記アノードおよびカソードの周囲にシール部材が設けられていることが好ましく、前記シール部材に前記導液部が設けられていることが好ましい。前記導液部は前記導入液を流すための流路を内部に有する管状体であることが好ましく、一端が前記シール部材の外側に配置され、他端が前記シール部材の内側に配置されていることが好ましい。また、前記管状体は弾性材料からなるものであることが好ましく、前記導入液の導入時以外は前記流路が閉状態となっており、前記導入液の導入時に前記流路が開状態となるものであることが好ましい。
【0012】
本発明の燃料電池は、前記燃料供給機構から前記アノードへの前記燃料の供給が前記燃料の気化により行われるものであることが好ましい。また、本発明の燃料電池は、前記燃料としてメタノール濃度50モル%以上のメタノール水溶液または純メタノールを用いるものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、水または燃料成分を希釈した水溶液からなり、燃料の改質反応等に利用される導入液を燃料電池の外部から燃料電池の内部にあるアノードおよびカソードの中から選ばれる少なくとも一方へ直接導入することが可能な導液部を設けることで、発電停止後の再始動の際にこの導液部から導入液を導入することができ、再始動時の電力が安定するまでにかかる時間を短縮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の燃料電池は、アノードと、カソードと、アノードとカソードとによって挟持された電解質膜とを有する膜電極接合体と、膜電極接合体のアノード側に配置され、アノードに燃料を供給するための燃料供給機構とを有するものであって、水または燃料成分を希釈した水溶液からなる導入液を燃料電池の外部からアノードおよびカソードの中から選ばれる少なくとも一方へ直接導入することが可能な導液部を有することを特徴としている。
【0015】
本発明の燃料電池によれば、このような導液部を設けることで、発電停止後の再始動時に少なくとも水を含む導入液を燃料電池の外部から燃料電池の内部にあるアノードおよびカソードの中から選ばれる少なくとも一方へ直接導入することができ、再始動時の電力が安定するまでにかかる時間(以下、単に始動時間と呼ぶ)を短縮させることができる。
【0016】
すなわち、アノード、具体的にはアノード触媒層における燃料の内部改質反応には一般に水分が必要とされるが、発電停止後の再始動時にはアノード触媒層が乾燥していることがあり、燃料の内部改質反応が必ずしも効率的に行われないことがある。また、電解質膜は十分な水分が存在することにより初めて高いプロトン伝導性を示すが、発電停止後の再始動時には電解質膜が乾燥していることがあり、アノードにおける内部改質反応によって生じたプロトン(H)が必ずしも効率的にカソードに導かれないことがある。特に、燃料を気化させてアノード、具体的にはアノード触媒層に供給するもの、さらには燃料として高濃度の燃料を使用するものの場合、燃料からの水分の供給が少なくなることから、これらの問題が顕著となる。
【0017】
本発明の燃料電池では導液部を設けることで、再始動の際に少なくとも水を含む導入液をアノードおよびカソードの中から選ばれる少なくとも一方へ直接導入することができ、これにより燃料の内部改質反応を促進し、また電解質膜等におけるプロトン伝導性を向上させることができ、電力が安定するまでにかかる時間(始動時間)を短縮させることができる。以下、本発明の燃料電池について図面を参照して具体的に説明する。
【0018】
図1は、本発明の燃料電池の一例を示す断面図である。図1に示す燃料電池1は、膜電極接合体2と、この膜電極接合体2のアノード23側に配置された燃料供給機構3と、膜電極接合体2におけるアノード23とカソード26との周囲に設けられたシール部材4、5とを有し、これらシール部材4、5のうち例えばアノード23側であるシール部材4に導液部6を設けたものである。
【0019】
燃料電池セル2は、アノード触媒層21とアノードガス拡散層22とを有するアノード(燃料極)23と、カソード触媒層24とカソードガス拡散層25とを有するカソード(空気極/酸化剤極)26と、アノード触媒層21とカソード触媒層24とで挟持されたプロトン(水素イオン)伝導性の電解質膜27とから構成される膜電極接合体(Membrane Electrode Assembly:MEA)を有している。
【0020】
アノード触媒層21やカソード触媒層24に含有される触媒としては、例えばPt、Ru、Rh、Ir、Os、Pd等の白金族元素の単体、白金族元素を含有する合金等が挙げられる。アノード触媒層21にはメタノールや一酸化炭素等に対して強い耐性を有するPt−RuやPt−Mo等を用いることが好ましい。カソード触媒層24にはPtやPt−Ni等を用いることが好ましい。ただし、触媒はこれらに限定されるものではなく、触媒活性を有する各種の物質を使用することができる。触媒は炭素材料のような導電性担持体を使用した担持触媒、あるいは無担持触媒のいずれであってもよい。
【0021】
電解質膜27を構成するプロトン伝導性材料としては、例えばスルホン酸基を有するパーフルオロスルホン酸重合体のようなフッ素系樹脂(ナフィオン(商品名、デュポン社製)やフレミオン(商品名、旭硝子社製)等)、スルホン酸基を有する炭化水素系樹脂等の有機系材料、あるいはタングステン酸やリンタングステン酸等の無機系材料が挙げられる。ただし、プロトン伝導性の電解質膜27はこれらに限られるものではない。
【0022】
アノード触媒層21に積層されるアノードガス拡散層22は、アノード触媒層21に燃料を均一に供給する役割を果たすと同時に、アノード触媒層21の集電体も兼ねている。また、カソード触媒層24に積層されるカソードガス拡散層25は、カソード触媒層24に酸化剤を均一に供給する役割を果たすと同時に、カソード触媒層24の集電体も兼ねている。アノードガス拡散層22およびカソードガス拡散層25は、例えば多孔質基材によって構成されている。
【0023】
アノードガス拡散層22やカソードガス拡散層25には、必要に応じて導電層が積層される。これら導電層としては、例えば金、ニッケルのような導電性金属材料からなるメッシュ、多孔質膜、薄膜もしくは箔体、またはステンレス鋼(SUS)などの導電性金属材料に金などの良導電性金属を被覆した複合材などをそれぞれ使用することができる。
【0024】
電解質膜27と燃料供給機構3(ここでは燃料収容部31)との間であってアノード23の側面部の周囲にはシール部材4が設けられており、またカバープレート7と電解質膜27との間であってカソード26の側面部の周囲にはシール部材5が設けられている。これらシール部材4、5は、例えばゴム製のOリングによって構成されており、燃料電池セル2からの燃料漏れや酸化剤漏れを防止している。導液部6は、例えばこれらシール部材4、5のうちシール部材4に設けられている。なお、導液部6については後述する。
【0025】
カバープレート7は酸化剤である空気を取入れるための開口7aを有している。カバープレート7とカソード26との間には、必要に応じて保湿層が配置される。保湿層はカソード触媒層24で生成された水の一部が含浸されて、水の蒸散を抑制すると共に、カソード触媒層24への空気の均一拡散を促進するものである。
【0026】
燃料供給機構3は、例えば燃料(液体燃料)が収容される燃料収容部31を有している。燃料収容部31は燃料電池セル2のアノード23側に配置され、アノード23側に開口部が設けられた略箱状のものであり、その開口部には必要により液体燃料の気化成分のみを透過させ、液体成分は透過させにくい気液分離膜32が配置されている。
【0027】
燃料収容部31には、燃料電池セル2に対応した燃料が収容される。燃料としては、メタノール燃料が好適に用いられ、特にメタノール濃度が50モル%以上のメタノール水溶液または純メタノールが好適に用いられる。このような高濃度メタノール燃料はエネルギー密度が高いことから、低濃度メタノール燃料に比較して少ない量で長時間の発電が可能となり、燃料収容部31の小型化、結果として燃料電池1の小型化が可能となる。
【0028】
なお、水はメタノールに比べて蒸気圧が低く、水の気化速度はメタノールの気化速度に比べて遅いことから、水とメタノールとを気化により燃料電池セル2に供給しようとした場合、メタノールの供給量に対する水の供給量が相対的に不足する。特に、高濃度メタノール燃料を用いた場合にこのような問題が顕著となる。しかし、本発明の燃料電池1では、導液部6を設けることで、アノード23またはカソード26に迅速かつ十分に水を導入することができるため、上記した問題を解決することができ、特に始動時間を従来に比べて短縮することができる。
【0029】
燃料としては、上記したメタノール水溶液や純メタノール等のメタノール燃料が好適に用いられるが、必ずしもこのようなものに限られるものではなく、例えばエタノール水溶液や純エタノール等のエタノール燃料、プロパノール水溶液や純プロパノール等のプロパノール燃料、グリコール水溶液や純グリコール等のグリコール燃料、ジメチルエーテル、ギ酸、その他の燃料であってもよい。燃料は、燃料電池セル2に応じたものを適宜選択して使用することができる。
【0030】
気液分離膜32は、燃料に対して不活性で溶解しない材料からなるシート状のものであり、具体的には、シリコーンゴム薄膜、低密度ポリエチレン(LDPE)薄膜、ポリ塩化ビニル(PVC)薄膜、ポリエチレンテレフタレート(PET)薄膜、フッ素樹脂(例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)など)微多孔膜などが用いられる。
【0031】
次に、本発明の主要部である導液部6について説明する。
導液部6は、例えば導入液を流すための流路6aを内部に有する管状体とされている。このような導液部6は、例えばシール部材4を貫通するように挿入、固定されており、一端が燃料電池1の外側、例えばシール部材4の外側に配置され、他端が燃料電池1の内側、例えばシール部材4の内側に配置されている。
【0032】
導液部6の両端部のうちシール部材4の内側に配置される端部は、アノード23に導入液を直接導入することができる位置に配置されていればよく、例えばアノード23に接触するように配置されていてもよいし、アノード23から離れて配置されていてもよく、少なくともシール部材4の内側に配置されていればアノード23に導入液を直接導入することができる。
【0033】
なお、アノード23に導入液を直接導入することができるとは、他の部材を透過させて導入するものを除くことを意味し、例えば導入液をカソード26側から電解質膜27等を透過させてアノード23へと導入するような場合を除くことを意味する。従って、例えば導液部6からシール部材4の内部に吐出された導入液が、シール部材4の内面や、気液分離膜32または電解質膜27のアノード23側の表面を伝ってアノード23に導入されるものについては、アノード23に導入液を直接導入するものとすることができる。
【0034】
このような管状の導液部6は、例えばゴム等の弾性材料からなるものであることが好ましい。そして、弾性材料からなる導液部6は、通常時(導入液を導入しないとき)は内部の流路6aが閉じた状態となっており、導入時(導入液を導入するとき)に弾性変形によって内部の流路6aが開くものであることが好ましい。なお、図1に示す燃料電池1では、説明のため内部の流路6aが開いた状態で示している。
【0035】
図2は、導入液を導入する方法を概略的に示したものである。また、図3、4は導液部6を拡大して示したものであり、図3は通常時の導液部6の状態を示し、図4は導入時の導液部6の状態を示している。
【0036】
図2に示すように、導入液の導入は、例えばスポイト状のシリンジ10を用いて行うことができる。シリンジ10は、例えば導入液が収容される容器本体10aと、この容器本体10aに一端が接続され、他端が導液部6に挿入される針状部10bとから構成されている。そして、再始動前または再始動時に、シリンジ10の針状部10bを導液部6の流路6aに挿入し、その後に容器本体10aをその外部から押し潰すように圧縮することで、針状部10bから導入液を吐出させ、シール部材4の内側にあるアノード23、具体的にはアノード23の側面部へ導入液を導入することができる。
【0037】
この際、導液部6を弾性材料からなるものとすることで、通常時には図3に示すように流路6aが閉じた状態とすることができ、導入時には図4に示すようにシリンジ10の挿入による弾性変形により流路6aが開いた状態とすることができる。また、導液部6を弾性材料からなるものとすることで、導入終了後にはシリンジ10を引き抜くことで収縮させ、再び図3に示すように流路6aが閉じた状態とすることができる。このため、一旦シール部材4の内側に導入した導入液が外側へと漏出することを抑制することができ、また通常時においても燃料や酸化剤がシール部材4の外側へと漏出することを抑制することできる。
【0038】
導入液としては、少なくとも水を含むものである必要があり、好ましくは燃料電池1の特性を阻害する陽イオン等の不純物を含有しないものである。このようなものとしては水単独の他、燃料成分を水で希釈した水溶液を用いることができる。燃料成分としては、燃料電池1における発電反応に用いられる燃料と同様なものを用いることができ、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、グリコール、ジメチルエーテル、ギ酸等を用いることができる。なお、導入液に含有させる燃料成分としては、通常は主たる発電反応に用いられる燃料と同一種類のものとすることが好ましいが、必ずしもこのようなものに制限されるものではない。
【0039】
導入液は、好ましくは燃料成分の含有量が90モル%以下の水溶液または水、より好ましくは燃料成分の含有量が50モル%以下の水溶液または水、さらに好ましくは燃料成分の含有量が10モル%以上40モル%以下の水溶液である。燃料成分の含有量が90モル%を超える場合、相対的に水の含有量が減少することから、燃料の内部改質反応等に必要な水が不足し、十分に始動時間を短縮することができないおそれがある。一方、燃料成分の含有量が50モル%以下または燃料成分を全く含まない場合、相対的に水の含有量が増加し、燃料の内部改質反応等に必要な水を確保することができ、始動時間を効果的に短縮することができる。特に、燃料成分の含有量を10モル%以上40モル%以下とすることで、より効果的に始動時間を短縮することができる。
【0040】
導入液の導入量は必ずしも限定されるものではなく、また燃料成分の含有量によっても異なるが、例えばアノード23、特にアノード触媒層21の単位面積1cmあたり0.1μL以上50μL以下となるように導入することが好ましい。単位面積あたりの導入量が0.1μL未満であると、燃料の内部改質反応等に必要な水が不足し、十分に始動時間を短縮することができないおそれがある。一方、単位面積あたりの導入量は50μL程度あれば燃料の内部改質反応等に必要な水を十分に確保することができ、それを超えて導入してもそれ以上の効果は望めない。
【0041】
以上、アノード23側のシール部材4に導液部6を設けた例を示したが、導液部6が設けられる部分はこのような部分に限られるものではなく、例えばカソード26側のシール部材5に導液部6を設けてもよく、またアノード23側のシール部材4とカソード26側のシール部材5とのそれぞれに導液部6を設けてもよい。
【0042】
図5は、カソード26側のシール部材5に導液部6を設けた燃料電池1を示したものである。導液部6は、アノード23側のシール部材4に設けられる導液部6と同様、例えば導入液を流すための流路6aを内部に有する管状体とされている。
【0043】
導液部6は、シール部材5を貫通するように挿入、固定され、一端が燃料電池1の外側、例えばシール部材5の外側に配置され、他端が燃料電池1の内側、例えばシール部材5の内側に配置されている。導液部6の両端部のうちシール部材5の内側に配置される端部は、カソード26に導入液を直接導入することができる位置に配置されていればよく、例えばカソード26に接触するように配置されていてもよいし、カソード26から離れて配置されていてもよく、少なくともシール部材4の内側に配置されていればカソード26に導入液を直接導入することができる。
【0044】
なお、カソード26に導入液を直接導入することができるとは、他の部材を透過させて導入するものを除くことを意味し、例えばカバープレート7の開口7aや、図示しないが必要に応じてカバープレート7とカソード26との間に配置される保湿層や表面層を透過させてカソード26に導入するものを除くことを意味する。
【0045】
カソード26側のシール部材5に導液部6を設けた場合、シリンジ10から導入液を吐出することで燃料電池1の内側、ここではシール部材5の内側にあるカソード26へと導入液を導入することができる。そして、このカソード26に導入された導入液における水の少なくとも一部が電解質膜27を透過してアノード23に導入される。また、シール部材5の内側に導入されたもののカソード26に導入されなかった導入液における水の少なくとも一部についても電解質膜27を透過してアノード23に導入される。このようにしてアノード23に水を導入することで、燃料の内部改質反応を効率的に進行させ、始動時間を短縮させることができる。
【0046】
このようなカソード26側のシール部材5に設けられる導液部6についても、アノード23側のシール部材4に設けられる導液部6と同様の構造、材質からなるものとすることができる。また、導入液の導入方法や組成についても、アノード23側のシール部材4に設ける導液部6の場合と同様のものとすることができる。
【0047】
なお、導入液の導入量については、アノード23側の場合に比べて若干少なくすることが好ましく、例えばカソード26、特にカソード触媒層24の単位面積1cmあたり0.1μL以上40μL以下となるように導入することが好ましい。カソード触媒層24では、燃料の内部改質反応によって得られるプロトン(H)および電子(e)と、酸化剤としての空気とから水を生成する反応が進行するが、多量に導入液を導入すると酸化剤としての空気の取り入れ量が低下し、反応の進行を妨げるおそれがある。このため、上記したようにアノード23側の場合に比べて若干少なめの導入量とすることが好ましい。
【0048】
以上、アノード23側のシール部材4に導液部6を設ける場合、およびカソード26側のシール部材5に導液部6を設ける場合について説明したが、アノード23側またはカソード26側のいずれか一方のみに導液部6を設ける場合、アノード23側のシール部材4に導液部6を設けることが好ましい。
【0049】
すなわち、水を必要とする燃料の内部改質反応はアノード触媒層21で行われることから、アノード23側のシール部材4に導液部6を設けて導入液を導入することで、アノード触媒層21に迅速かつ効率的に導入液を導入することができ、始動時間を効果的に短縮することができる。また、アノード23側のシール部材4に導液部6を設けることで、カソード26側のシール部材5に導液部6を設ける場合のように、酸化剤としての空気の取り入れ量が低下するおそれもない。
【0050】
さらに、上記説明ではアノード23側またはカソード26側のいずれかに導液部6を1つのみ設けた場合について説明したが、アノード23側またはカソード26側の各側に設けられる導液部6の個数については特に限定されるものではなく、複数の導液部6を設けることもできる。
【0051】
また、このような導液部6は、燃料を気化させて燃料電池セル2に供給するもの全般について有効であり、必ずしも図1、5等に示されるような燃料電池セル2と燃料収容部31とが一体化されたいわゆる純パッシブ型と呼ばれるものに限られず、燃料電池セル2と燃料収容部31とが分離されたいわゆるセミパッシプ型と呼ばれるものであっても構わない。以下、セミパッシプ型のものについて説明する。
【0052】
図6は、セミパッシブ型の燃料電池1を示したものである。図6に示す燃料電池1は、図1に示す燃料電池1とは燃料供給機構3のみが異なるものである。燃料供給機構3は、膜電極接合体2のアノード23側に燃料分配部33が配置され、この燃料分配部33に流路34を通して燃料収容部31に収容された燃料を送液するようにしている。そして、流路34の途中にポンプ35を配置することで、燃料の送液の補助および制御を行っている。ここで、燃料収容部31、燃料分配部33、流路34およびポンプ35からなる部分が燃料供給機構3となっている。
【0053】
この燃料電池1についても、例えば図1に示される燃料電池1と同様、導液部6は、例えば導入液を流すための流路6aを内部に有する管状体からなるものとされている。また、導液部6は、例えばシール部材4を貫通するように挿入、固定されており、一端が燃料電池1の外側、例えばシール部材4の外側に配置され、他端が燃料電池1の内側、例えばシール部材4の内側に配置されている。
【0054】
導液部6の両端部のうちシール部材4の内側に配置される端部は、アノード23に導入液を直接導入することができる位置に配置されていればよく、例えばアノード23に接触するように配置されていてもよいし、アノード23から離れて配置されていてもよく、少なくともシール部材4の内側に配置されていればアノード23に導入液を直接導入することができる。
【0055】
燃料分配部33は、例えば図7に示すように板状のものであり、流路34から送液される燃料が流入する少なくとも1個の燃料注入口33aと、燃料やその気化成分を排出するための複数個の燃料排出口33bとを有している。燃料分配部33の内部には燃料注入口33aから導かれた燃料の通路となる空隙部33cが設けられている。複数の燃料排出口33bは燃料通路として機能する空隙部33cにそれぞれ直接接続されている。
【0056】
燃料注入口33aから導入された燃料は空隙部33cに入り、この燃料通路としての空隙部33cを介して複数の燃料排出口33bに導かれる。複数の燃料排出口33bには、例えば燃料の気化成分のみを透過し、液体成分は透過させない気液分離体(図示せず)を配置してもよい。これによって、燃料電池セル2のアノード23には燃料の気化成分が供給される。なお、気液分離体は燃料分配部33とアノード23との間に気液分離膜等として設置してもよい。燃料の気化成分は複数の燃料排出口33bからアノード23の複数個所に向けて排出される。
【0057】
燃料分配部33に設けられる燃料排出口33bの個数は必ずしも限定されるものではなく、少なくとも1個設けられていればよいが、燃料電池セル2の面内における燃料供給量を均一化するために例えば1cm当たり0.1個以上10個以下程度設けられていることが好ましい。燃料排出口33bの個数が1cm当たり0.1個未満であると、燃料電池セル2に対する燃料供給量を十分に均一化することができず、また燃料排出口33bの個数を1cm当たり10個を超えて設けてもそれ以上の効果を得ることができない。
【0058】
ポンプ35は燃料を循環させる循環ポンプではなく、あくまでも燃料収容部31から燃料分配部33に燃料を送液する燃料供給ポンプである。このようなポンプ35で必要時に燃料を送液することで、燃料供給量の制御性を高めることができる。また、このようなポンプ35を利用することで、各燃料排出口33bから均一に燃料を排出させ、安定した出力を得ることができる。
【0059】
燃料分配部33から燃料電池セル2に供給された燃料は発電反応に使用され、その後に循環して燃料収容部31に戻されることはない。このように、図6に示される燃料電池1については燃料を循環させないことから従来のアクティブ型とは異なり、装置の小型化等を損なうものではない。また、図6に示される燃料電池1については燃料の供給にポンプ35を使用しており、図1、5に示す純パッシブ型とも異なるため、セミパッシブ型と呼称される。
【0060】
ポンプ35の種類は特に限定されるものではないが、少量の液体燃料を制御性よく送液することができ、さらに小型軽量化が可能という観点から、ロータリーベーンポンプ、電気浸透流ポンプ、ダイアフラムポンプ、しごきポンプ等を使用することが好ましい。ロータリーベーンポンプはモータで羽を回転させて送液するものである。電気浸透流ポンプは電気浸透流現象を起こすシリカ等の焼結多孔体を用いたものである。ダイアフラムポンプは電磁石や圧電セラミックスによりダイアフラムを駆動して送液するものである。しごきポンプは柔軟性を有する燃料流路の一部を圧迫し、燃料をしごき送るものである。これらのうち、駆動電力や大きさ等の観点から、電気浸透流ポンプや圧電セラミックスを有するダイアフラムポンプを使用することがより好ましい。
【0061】
ポンプ35の送液能力は燃料電池1の主たる対象物が小型電子機器であることから、例えば10μL/分以上1mL/分以下の範囲とすることが好ましい。送液能力が1mL/分を超えると一度に送液される液体燃料の量が多くなりすぎて、全運転期間に占めるポンプ35の停止時間が長くなる。このため、燃料電池セル2への燃料の供給量の変動が大きくなり、その結果として出力の変動が大きくなる。これを防止するためのリザーバをポンプ35と燃料分配部33との間に設けてもよいが、そのような構成を適用しても燃料供給量の変動を十分に抑制することはできず、さらに装置サイズの大型化等を招いてしまう。
【0062】
一方、ポンプ35の送液能力が10μL/分未満であると、装置立ち上げ時のように燃料の消費量が増える際に供給能力不足を招くおそれがある。これによって、燃料電池1の起動特性等が低下する。このような点から、10μL/分以上1mL/分以下の範囲の送液能力を有するポンプ35を使用することが好ましい。ポンプ35の送液能力は10μL/分以上200μL/分以下の範囲とすることがより好ましい。このような送液量を安定して実現する上でも、ポンプ35には電気浸透流ポンプやダイアフラムポンプを適用することが好ましい。
【0063】
なお、このセミパッシブ型の燃料電池1では、燃料収容部31から燃料電池セル2への燃料供給が行われる構成であればポンプ35に代えて燃料遮断バルブを配置する構成とすることも可能である。この場合には、燃料遮断バルブは、流路34による液体燃料の供給を制御するために設けられるものである。
【0064】
次に、燃料電池1の発電反応について、図1に示されるアノード23側のシール部材4に導液部6を設けた燃料電池1を参照して説明する。まず、燃料収容部31に収容された燃料の気化成分が気液分離膜32を透過して燃料電池セル2のアノード23に供給される。燃料電池セル2内において、燃料はアノードガス拡散層22を拡散してアノード触媒層21に供給される。
【0065】
燃料としてメタノールを用いた場合、アノード触媒層21では下記(1)式に示すメタノールの内部改質反応が生じる。そして、生成した電子(e)は集電体を経由して外部に導かれ、いわゆる電気として携帯用電子機器等を動作させた後、カソード26に導かれる。また、生成したプロトン(H)は電解質膜27を経てカソード26に導かれる。カソード26には酸化剤として空気が供給されており、カソード26に到達した電子(e)とプロトン(H)はカソード触媒層24で空気中の酸素と下記(2)式にしたがって反応し、この反応に伴って水が生成する。
CHOH+HO → CO+6H+6e …(1)
6e+6H+(3/2)O → 3HO …(2)
【0066】
従来、このような内部改質反応のうち特に発電停止後の再始動時におけるものついては、アノード触媒層21が乾燥していることから十分に進行しない場合がある。しかし、例えばアノード23側のシール部材4に導液部6を設け、再始動前または再始動時にこの導液部6を通して導入液を導入することで、アノード触媒層21に水分を迅速かつ十分に供給することができ、内部改質反応を促進させることができる。また、このようにすることで電解質膜27にも水分を迅速かつ十分に供給することができ、電解質膜27のプロトン伝導性を高くできる。結果として、発電停止後の再始動時における始動時間を短縮させることができる。
【0067】
なお、図5に示されるようにカソード26側のシール部材5に導液部6を設けた燃料電池1についても、電解質膜27を透過させて間接的にアノード23に水分を導入し、内部改質反応を促進することができ、図1に示されるアノード23側に導液部6を設けたものと同様、発電停止後の再始動時における始動時間を短縮させることができる。但し、カソード26側に導液部6を設けた場合、電解質膜27を透過させて間接的にアノード23に水分を導入することから、アノード触媒層21における内部改質反応を促進する効果は若干低くなる。このため、カソード26側に導液部6を設けるよりも、アノード23側に導液部6を設けて、導入液を導入する方が好ましい。
【0068】
以上、本発明の燃料電池1について説明したが、本発明は上記実施の形態そのものに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、上記実施の形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施の形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【0069】
例えば、膜電極接合体2への燃料の供給は、液体燃料を全て蒸気として供給する他、一部については液体状態のまま供給してもよく、本発明はこのように一部が液体状態のまま供給されるものについても適用することができる。また、導液部6についても、必ずしも弾性材料からなる管状体に限られず、導入液を有効に導入することができ、また導入した導入液が漏出せず、燃料や酸化剤も漏出させない構造のものであれば特に制限されるものではない。さらに、導入液を導入するために用いられるシリンジ10についても、必ずしも図2に示されるようなスポイト状のものに限られず、例えば注射器状等のものであってもよい。これらの構成としても、上記した説明と同様の作用効果を得ることができる。
【実施例】
【0070】
以下、本発明について実施例を参照して説明する。
【0071】
(実施例1)
燃料電池として、図1に示されるようなアノード23側のシール部材4に弾性材料からなる管状の導液部6を設けた燃料電池1を用意した。なお、アノード23およびカソード26の大きさは12cmとした。また、電解質膜27はナフィオン112(デュポン社製)とし、アノード23はアノードガス拡散層22としてのカーボンペーパー上に白金ルテニウム合金微粒子を担持したカーボン粒子とDE2020(デュポン社製)とからなるアノード触媒層21を形成したものとし、カソード26はカソードガス拡散層25としてのカーボンペーパー上に白金担持カーボン粒子とDE2020(デュポン社製)とからなるカソード触媒層24を形成したものとした。
【0072】
そして、図2に示されるようなシリンジ10を用い、導液部6の流路6aにこのシリンジ10の針状部10bを挿入し、アノード23に導入液としてのメタノール濃度が50モル%のメタノール水溶液を200μL直接導入した。導入液の導入直後、燃料収容部31に燃料としての純メタノールを導入し、発電反応を開始させた。この純メタノールの導入から電力が安定するまでの時間を始動時間として測定した。
【0073】
(実施例2)
導入液としてメタノール濃度が30モル%のメタノール水溶液を使用した以外は実施例1と同様にして始動時間を測定した。
【0074】
(実施例3)
導入液として純水を使用した以外は実施例1と同様にして始動時間を測定した。
【0075】
(実施例4)
燃料電池として図5に示されるようなカソード26側のシール部材5に弾性材料からなる管状の導液部6を設けた燃料電池1を使用し、その導液部6の流路6aに図2に示されるようなシリンジ10の針状部10bを挿入し、カソード26に導入液としてのメタノール濃度が50モル%のメタノール水溶液を200μL直接導入した。その後は、実施例1と同様にして始動時間を測定した。なお、燃料電池1は、導液部6の位置が異なる以外は実施例1で使用した燃料電池1と同様の構成とした。
【0076】
(実施例5)
導入液としてメタノール濃度が30モル%のメタノール水溶液を使用した以外は実施例4と同様にして始動時間を測定した。
【0077】
(実施例6)
導入液として純水を使用した以外は実施例4と同様にして始動時間を測定した。
【0078】
(比較例1)
燃料電池として導液部を有しないものを使用し、導入液を導入せずに、単に燃料収容部に燃料としての純メタノールを導入して始動時間を測定した。なお、燃料電池は、導液部を設けなかったこと以外は実施例1で使用した燃料電池1と同様の構成とした。
【0079】
表1に、実施例および比較例についての測定された始動時間を示す。
【0080】
【表1】

【0081】
表1から明らかなように、導液部を設けず、導入液を導入しなかった比較例1の燃料電池ついては始動時間が30分と長くなることが認められた。これに対して、導液部を設け、導入液を導入した実施例1〜6に燃料電池については、いずれも始動時間が20分以内となり、始動時間を短縮できることが認められた。また、導入液の組成が同じであれば、アノード23側に導液部を設けて導入液を直接導入するようにしたものの方が、カソード26側に導液部を設けて導入液を直接導入するようにしたものに比べ、始動時間を短縮できることが認められた。さらに、いずれの側に導液部を設けた場合についても、導入液としてメタノール濃度が30モル%のメタノール水溶液を導入したものの方が、導入液としてメタノール濃度が50モル%のメタノール水溶液または純水を導入したものに比べ、始動時間を短縮できることが認められた。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明の燃料電池の一例を示す断面図。
【図2】導入液の導入方法を示す図。
【図3】導液部の通常時(閉状態)の様子を示す拡大断面図。
【図4】導液部の導入時(開状態)の様子を示す拡大断面図。
【図5】本発明の燃料電池の他の例を示す断面図。
【図6】本発明の燃料電池のさらに他の例を示す断面図。
【図7】図7に示される燃料分配部の一例を示す外観図。
【符号の説明】
【0083】
1…燃料電池、2…燃料電池セル、3…燃料供給機構、4…シール部材(アノード側)、5…シール部材(カソード側)、6…導液部、6a…流路、7…カバープレート、7a…開口、10…シリンジ、10a…容器本体、10b…針状部、21…アノード触媒層、22…アノードガス拡散層、23…アノード、24…カソード触媒層、25…カソードガス拡散層、26…カソード、27…電解質膜、31…燃料収容部、32…気液分離膜、33…燃料分配部、33a…燃料注入口、33b…燃料排出口、33c…空隙部、34…流路、35…ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アノードと、カソードと、前記アノードとカソードとによって挟持された電解質膜とを有する膜電極接合体と、前記膜電極接合体の前記アノード側に配置され、前記アノードに燃料を供給するための燃料供給機構とを有する燃料電池であって、
水または燃料成分を希釈した水溶液からなる導入液を前記燃料電池の外部から前記アノードおよびカソードの中から選ばれる少なくとも一方へ直接導入することが可能な導液部を有することを特徴とする燃料電池。
【請求項2】
前記アノードおよびカソードを気密に保持するために少なくとも前記アノードおよびカソードの周囲にシール部材が設けられたものであって、前記シール部材に前記導液部が設けられていることを特徴とする請求項1記載の燃料電池。
【請求項3】
前記導液部は前記導入液を流すための流路を内部に有する管状体であって、一端が前記シール部材の外側に配置され、他端が前記シール部材の内側に配置されていることを特徴とする請求項2記載の燃料電池。
【請求項4】
前記管状体は弾性材料からなるものであって、前記導入液の導入時以外は前記流路が閉状態となっており、前記導入液の導入時に前記流路が開状態となることを特徴とする請求項3記載の燃料電池。
【請求項5】
前記燃料供給機構から前記アノードへの前記燃料の供給が、前記燃料の気化により行われることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の燃料電池。
【請求項6】
前記燃料が、メタノール濃度50モル%以上のメタノール水溶液または純メタノールであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載の燃料電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−117184(P2009−117184A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−289182(P2007−289182)
【出願日】平成19年11月7日(2007.11.7)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(000221339)東芝電子エンジニアリング株式会社 (238)
【Fターム(参考)】