説明

燃料電池

【課題】燃料電池を構成する発電ユニットのずれを起こりにくくして、燃料ガスや冷却水の漏れを抑制することを目的とする。
【解決手段】燃料電池10であって、積層された複数の発電ユニット100と、前記複数の発電ユニットを締結する締結手段(105〜130)と、前記燃料電池に対して衝撃が加わった時に前記複数の発電ユニット100に対する締結荷重を加重する締結荷重付加手段140とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池に衝撃が加わると、セルがずれて燃料ガス、冷却水が漏れる恐れがある。これに対し、従来から、燃料電池の周域に補強板を有し、セルをずれ難くした燃料電池が知られている(特許文献1)。
【0003】
【特許文献1】特開平5−82153号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来技術では、補強板の表面積が大きいため、燃料電池の重さが重くなり、燃料電池を小さくできないという問題があった。
【0005】
本発明は上記課題の少なくとも1つを解決し、燃料電池を構成する発電ユニットのずれを起こりにくくして、燃料ガスや冷却水の漏れを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題の少なくとも一部を解決するために、本発明は以下の態様をとる。
【0007】
本発明の第1の態様は、燃料電池であって、積層された複数の発電ユニットと、前記複数の発電ユニットを第1の締結荷重で締結する第1の締結手段と、通常時には前記複数の発電ユニットに対し締結荷重を加えず、前記燃料電池に対して衝撃が加わった時に前記複数の発電ユニットに対して、第2の締結荷重を加重する第2の締結手段とを備える。この態様によれば、燃料電池に衝撃が加わったときに、第1の締結荷重に加えて第2の締結荷重が加重されるので、燃料電池を構成する発電ユニットのずれを起こりにくくして、燃料ガスや冷却水の漏れを抑制することが可能となる。
【0008】
本発明の第1の態様において、前記第2の締結手段は、弾性体と、前記弾性体を通常時に圧縮状態で係止する係止手段と、前記燃料電池に対して衝撃が加わった時に前記係止を解除することにより、前記第2の締結手段に対し前記複数の発電ユニットに対する第2の締結荷重を加重させる制御部とを有していてもよい。この態様によれば、衝撃を受けたときに第2の締結荷重を加重することが可能となる。
【0009】
本発明の第1の態様において、前記第2の締結手段は、エアバック装置と、前記燃料電池に対して衝撃が加わった時にエアバック装置を動作させる制御部とを有していてもよい。この態様によれば、弾性体を用いるよりも簡単な構成にすることが可能となる。
【0010】
本発明の第1の態様において、前記エアバック装置は、気密性を有していてもよい。この態様によれば、エアバック装置は萎まないので、第2の締結荷重による荷重を維持することが可能となる。
【0011】
なお、本発明は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、燃料電池の他、燃料電池を搭載した移動体、燃料電池の安全装置、燃料電池の安全保護方法等、様々な形態で実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
第1の実施例:
図1は、本発明の第1の実施例を模式的に示す説明図である。燃料電池10は、発電ユニット100と、エンドプレート105、110と第1の荷重プレート115とテンションロッド120を備える。発電ユニット100は、複数あり、積層して積層体102を形成している。積層体の積層方向両端には、エンドプレート105及び第1の荷重プレート115が配置されている。第1の荷重プレート115の外側には、エンドプレート110が配置されている。エンドプレート110は、テンションロッド120、及びナット125により、エンドプレート105と締結されている。エンドプレート110と第1の荷重プレート115の間には、第1のバネ130が設けられている。ここで、第1のバネ130の自由長は、エンドプレート110と第1の荷重プレート115の間隔よりも長く設定されている。そのため、エンドプレート105と第1の荷重プレート115の間には、第1のバネ130の弾性力により第1の締結荷重F1が加わっている。
【0013】
エンドプレート110と第1の荷重プレート115の間には、第2の荷重プレート135が配置され、第2の荷重プレート135とエンドプレート110との間には、第2のバネ140が配置されている。ここで、第2のバネ140の自由長は、エンドプレート110と第1の荷重プレート115の間隔よりも長く設定されている。しかし、燃料電池の通常運転状態では、第2のバネ140は、縮められ、第2の荷重プレート135は、第1の荷重プレートに接触しないように、ストッパ145により係止されている。したがって、通常運転時には、第1のバネ130の弾性力による第1の締結荷重F1のみが掛かり、第2のバネ140による第2の締結荷重は掛かっていない。ストッパ145の開閉は、コントローラ150からの信号によりによりアクチュエータ155を動作させることにより行われる。コントローラ150には、加速度センサ160が接続されている。なお、コントローラ150としては、CPUなどのプロセッサを有するものを用いてもよく、あるいは、スイッチ類などのハードウエア回路で構成されたものを用いてもよい。
【0014】
燃料電池10に対し衝撃が加わり、所定の値以上の加速度が発生すると、加速度センサ160がこれを検知し、コントローラ150に伝える。そして、コントローラ150は、ストッパ145を開放させる。そうすると、第2のバネ140が伸長し、第2の荷重プレート135が第1の荷重プレート115に当たる。
【0015】
図2は、ストッパ145が開放した状態を模式的に示す説明図である。ストッパ145が開放して、第2のバネ140が伸長すると、第2の荷重プレート135から第1の荷重プレート115を介して発電ユニット100に第2の締結荷重F2の力が加わる。この状態では、エンドプレート105と第1の荷重プレート115の間には、第1のバネ130の弾性力による第1の締結荷重F1に加えて、第2のバネ140による第2の締結荷重F2が加わっている。そのため、発電ユニット100は、通常運転時よりも強固に締結される。その結果、燃料電池10に対し衝撃が加わっても、発電ユニット100がずれ難くなり、燃料ガスや冷却水の漏れを抑制することが可能となる。
【0016】
以上のように、第1の実施例によれば、通常運転時には、発電ユニット100には、第1のバネ130の弾性力による第1の締結荷重F1のみが掛かり、燃料電池10に対し衝撃が加わった時には、第2の締結荷重F2が加重される。その結果、燃料電池10に対し衝撃が加わっても、発電ユニット100がずれ難くなり、燃料ガスや冷却水の漏れを抑制することが可能となる。また、締結荷重を上げすぎると、発電ユニット内に設けられている拡散層、電解質膜(図示せず)に対するダメージが発生する恐れがあるが、本実施例では、通常運転時には、第1の締結荷重F1のみが掛かっているため、拡散層、電解質膜に対するダメージが発生しない。また、第2のバネ140は、第1のバネ130が設置されているスペースの中に組み込むことが可能なため、スペースを有効活用することが可能となる。
【0017】
第2の実施例:
図3は、本発明の第2の実施例を模式的に示す説明図である。第2の実施例では、第1の実施例の第2のバネ140の代わりに、エアバック装置170を備えている点が異なる。第2の実施例では、コントローラ150は、加速度センサ160を介して燃料電池10に対し衝撃が加わったことを検知すると、エアバック装置170を作動させる。
【0018】
図4は、エアバック装置170が作動した状態を示す説明図である。エアバック装置170が作動すると、エアバック172が膨張し、第1の荷重プレート115に第2の締結荷重を加重する。したがって、燃料電池10に対し衝撃が加わっても、第1の実施例と同様に、発電ユニット100がずれ難くなり、燃料ガスや冷却水の漏れを抑制することが可能となる。
【0019】
第2の実施例では、第1の実施例と異なり、第2のバネ140及びストッパを用いないため、構造や設置が簡単である。なお、エアバック172の素材は、気密性を有していることが好ましい。こうすれば、エアバック装置170が作動した後、エアバック172の膨張を維持することが可能となる
【0020】
なお、第1、第2の実施例において、コントローラ150が第2の締結荷重を加えるときの加速度の値は、使用の態様により、様々な値を取ることが可能である。
【0021】
変形例:
上記第1、第2の実施例に係る燃料電池は、例えば、移動体用として用いることができるほか、固定用としても用いることが可能である。例えば、地震が発生したときであっても、燃料電池からの燃料ガスや冷却水の漏れを抑制することが可能となる。なお、移動体用として用いる場合には、加速度センサ160の代わりに、衝突センサなどを用いてもよい。
【0022】
上述した第1の実施例では、通常時(図1)において、第2の荷重プレート135と第1の荷重プレート115とがお互いに接触しない状態に保たれていたが、これらの荷重プレート135、115の間のバネなどの弾性体を設けてもよい。
【0023】
第1、第2の実施例の構成に加えて、発電ユニット100の積層方向側面に第2のエアバック装置を備える構成を加えてもよい。発電ユニット100のずれをさらに抑制することが可能となる。但し、第2のエアバック装置は、積層体102を挟むように、2つ単位で設ける事が好ましい。積層体102を挟んだ双方から第2のエアバックによる荷重が加わるため、発電ユニット100をずれ難くすることが可能となる。
【0024】
以上、いくつかの実施例に基づいて本発明の実施の形態について説明してきたが、上記した発明の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれることはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第1の実施例を模式的に示す説明図である。
【図2】ストッパ145が開放した状態を模式的に示す説明図である。
【図3】本発明の第2の実施例を模式的に示す説明図である。
【図4】エアバック装置170が作動した状態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0026】
10…燃料電池
100…発電ユニット
102…積層体
105、110…エンドプレート
115…第1の荷重プレート
120…テンションロッド
125…ナット
130…第1のバネ
135…第2の荷重プレート
140…第2のバネ
145…ストッパ
150…コントローラ
160…加速度センサ
170…エアバック装置
172…エアバック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池であって、
積層された複数の発電ユニットと、
前記複数の発電ユニットを締結する締結手段と、
前記燃料電池に対して衝撃が加わった時に前記複数の発電ユニットに対する締結荷重を加重する締結荷重付加手段と、
を備える燃料電池。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料電池において、
前記締結荷重付加手段は、
弾性体と、
前記弾性体を通常時に圧縮状態で係止する係止手段と、
前記燃料電池に対して衝撃が加わった時に前記係止を解除することにより、前記複数の発電ユニットに対する締結荷重を加重させる制御部とを有する、
燃料電池。
【請求項3】
請求項1に記載の燃料電池において、
前記締結荷重付加手段は、
エアバック装置と、
前記燃料電池に対して衝撃が加わった時にエアバック装置を動作させる制御部とを有する、
燃料電池。
【請求項4】
請求項3に記載の燃料電池において、
前記エアバック装置は、気密性を有している、燃料電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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