説明

燃料電池

【課題】燃料の取扱性を改善し、且つ、安全性を確保しながら、燃料電池の発電量を制御できる燃料電池及びその制御方法を提供する。
【解決手段】燃料電池10は、燃料カートリッジ100と、発電部20と、装着部材30とを備える。燃料カートリッジ100は、シュードプラスチック性を有するゲル化燃料101を収容する燃料容器102と、燃料容器102の開口部に配置され、ゲル化燃料101から気化した気化燃料を通過させる多孔質膜103とを有する。発電部20は、固体電解質膜21と、固体電解質膜21を相互間に挟持する燃料極22及び酸化剤極23とを有する。装着部材30は、多孔質膜103と燃料極22とを対向させて、燃料カートリッジ100を燃料電池10に対して離脱可能に装着する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池に関し、更に詳しくは、ゲル化燃料を用いた固体高分子型燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
固体高分子型燃料電池(以下、燃料電池)は、燃料が供給される燃料極と、酸化剤が供給される酸化剤極と、燃料極と酸化剤極との間に挟まれた固体高分子電解質膜とから成る構造体を備える。この構造体は、電極−電解質膜接合体(MEA;Membrane and Electrode Assembly)と称される。固体高分子電解質膜としては、例えば、パーフルオロスルフォン酸膜等のイオン交換膜が用いられる。燃料極には水素が供給され、また、酸化剤極には酸素又は空気が供給される。燃料電池では、燃料極及び酸化剤極で電気化学反応(電極反応)が起こり、発電が行われる。
【0003】
燃料電池では、上記電極反応を起こすために燃料極及び酸化剤極が、通常、イオン交換膜の両面に形成された触媒層と、ガス拡散層(供給層)とから形成される。触媒層は、触媒物質が担持された炭素微粒子と固体高分子電解質との混合体からなる。ガス拡散層は、多孔質性炭素材料からなり、燃料及び酸化剤の供給と拡散とを担う。さらに、燃料極及び酸化剤極には、炭素又は金属の導電性薄板からなる集電体が配置される。
【0004】
ところで、近年、燃料としてメタノール等の有機液体燃料を直接利用するダイレクトメタノール型の燃料電池(DMFC;Direct Methanol Fuel Cell)の研究開発が活発に行われている。
【0005】
DMFCでは、燃料としてメタノールが燃料極に供給され、酸化剤として酸素が酸化剤極に供給される。その結果として、燃料極及び酸化剤極では次式で示される電極反応が起こり、発電が行われる。
【0006】
【化1】

【0007】
上記電極反応では、燃料極に供給された燃料が、ガス拡散層中の細孔を通過して触媒層に達し、触媒物質により燃料が分解されて、電子と水素イオンが生成される。電子は、電極中の触媒担体とガス拡散層とを通って外部回路へ導き出され、外部回路より酸化剤極に流れ込む。
【0008】
一方、水素イオンは、電極中の電解質及び両電極間の固体高分子電解質膜を通って酸化剤極に達する。酸化剤極に達した水素イオンは、酸化剤極に供給された酸素と、外部回路より流れ込む電子と反応して水を生成する。その結果、外部回路では燃料極から酸化剤極へ向かって電子が流れ、電力が取り出される。
【0009】
燃料としてメタノールを用いる場合には、液体状で取り扱いが簡便であるという利点がある。しかし、メタノールは、人体に対する悪影響が大きいことが知られている。一例として、メタノールを大量に吸入し、或いは、眼に入った場合には、視神経に障害を起こすことがあり、失明する可能性もある。さらに、メタノールは、酸化反応中間体として、人体に悪影響を与える可能性がある蟻酸やホルムアルデヒドを生成することが知られている。
【0010】
これに対して、特許文献1には、メタノール等の燃料の気化を抑制する技術が記載されている。この技術では、燃料が気化するような温度条件下であっても、燃料をゲル化して安定させている。
【0011】
特許文献2には、燃料をゲル化して貯蔵し、再液化剤の作用によりゲル化燃料を流動化して取り出す技術が記載されている。この技術では、燃料電池の未使用時には、メタノールをゲル化等の固体化した燃料として保存しているので、流出等による事故の危険性を回避できる。また、燃料電池の使用開始時には、再液化剤により流動化した燃料を使用するので、発電効率を妨げることがない。さらに、燃料電池の使用時に、固体状燃料のまま燃料を気化供給すれば、安全性を更に高めることができる。
【0012】
また、特許文献2には、ゲル化燃料を燃料カートリッジに収容することで、ゲル化燃料中の燃料の揮発による拡散を抑え、取り扱いや安全性を高めることが記載されている。
【0013】
特許文献3には、メタノールにポリアクリル酸を混合したゲル状燃料混合物を燃料として用いること、また、このゲル状燃料混合物を燃料室に収容することが記載されている。さらに、この燃料室を、燃料電池と分割できる交換カートリッジとすることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2007−80543号公報
【特許文献2】特開2007−242367号公報
【特許文献3】特開2006−236969号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
ところで、燃料電池には、出力(発電量)に見合った燃料の供給が求められる。しかし、ゲル化燃料は、燃料の気化が抑制された状態にある。このため、上記特許文献に記載の燃料電池では、低温環境下で十分な出力が得られない場合がある。
【0016】
また、ゲル化燃料の気化量は、温度が一定であれば、気化表面積等に比例する。しかし、気化表面積は、時間の経過に伴い縮小するので、気化量が低下する。このため、燃料が気化供給される燃料電池では、一定の出力を維持することや、出力に応じた燃料の気化供給を行うことが困難である。
【0017】
さらに、特許文献1,2に記載の技術では、燃料カートリッジを用いた上で、気化燃料の供給量を制御して、燃料電池の発電量を制御する点については考慮されていない。
【0018】
本発明は、燃料の取扱性を改善し、且つ、安全性を確保しながら、燃料電池の発電量を制御できる燃料電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記目的を達成するために、本発明は、シュードプラスチック性を有するゲル化燃料を収容する燃料容器と、該燃料容器の開口部に配置され、前記ゲル化燃料から気化した気化燃料を通過させる多孔質膜とを有する燃料カートリッジと、
固体電解質膜と、前記固体電解質膜を相互間に挟持する燃料極及び酸化剤極とを有する発電部と、
前記多孔質膜と前記燃料極とを対向させて、前記燃料カートリッジを燃料電池に対して離脱可能に装着する装着部材と、を備えることを特徴とする燃料電池を提供する。
【発明の効果】
【0020】
本発明の燃料電池では、燃料カートリッジを燃料電池から離脱可能とすることで、燃料の取扱性を改善し、且つ、安全性を確保しながら、燃料電池の発電量を制御できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る燃料電池に燃料カートリッジを装着する際の状態を示す斜視図。
【図2】図1に示す燃料カートリッジの構成を示す断面図。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る燃料電池の構成を示す断面図。
【図4】図3に示す燃料電池の発電部の構成を示す断面図。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る燃料電池の構成を示す断面図。
【図6】本発明の第3の実施形態に係る燃料電池の構成を示す断面図。
【図7】本発明の第4の実施形態に係る燃料電池の構成を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の燃料電池は、最小基本構成として、燃料カートリッジと、発電部と、装着部材とを備える。燃料カートリッジは、シュードプラスチック性を有するゲル化燃料を収容する燃料容器と、燃料容器の開口部に配置され、ゲル化燃料から気化した気化燃料を通過させる多孔質膜とを有する。発電部は、固体電解質膜と、固体電解質膜を相互間に挟持する燃料極及び酸化剤極とを有する。装着部材は、多孔質膜と燃料極とを対向させて、燃料カートリッジを燃料電池に対して離脱可能に装着する。
【0023】
上記燃料電池では、シュードプラスチック性を有するゲル化燃料が、燃料電池に対して離脱可能に装着された燃料カートリッジの燃料容器に収容されている。ゲル化燃料から気化した気化燃料は、燃料カートリッジの多孔質膜を通過して、発電部の燃料極に供給される。シュードプラスチック性を有するゲル化燃料は、静置状態又は低攪拌状態では高い粘性を有し、また、攪拌速度の増加に伴い粘度が低下し、さらに、再度静置状態に戻すと、再び高粘度状態を回復するという性質を有する。このため、静置状態又は低攪拌状態である通常使用時では、ゲル化燃料の気化量が抑制されるので、安全性を確保できる。
【0024】
また、使用時に、燃料電池の発電量に見合った気化燃料の供給が得られていない場合には、燃料容器の振動又はゲル化燃料の攪拌によって、ゲル化燃料の粘度を低下させる。これにより、ゲル化燃料が液化して気化量が高まり、燃料極への気化燃料の供給量を一時的に増加させることができる。従って、燃料電池の発電量を制御して、燃料電池の発電量を確保できる。
【0025】
さらに、燃料カートリッジは、燃料電池から離脱可能であるから、ゲル化燃料の交換が容易となり、燃料の取扱性が向上する。
【0026】
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る燃料電池に燃料カートリッジを装着する際の状態を示す斜視図である。図2は、燃料カートリッジの構成を示す断面図である。燃料電池10は、固体高分子型燃料電池であって、例えば、発電ユニットとして機能するMEA(発電部)20と、燃料カートリッジ100を離脱可能に装着する装着部30とを備える。なお、これらの各部材は、筐体11内に配置されている。
【0027】
燃料カートリッジ100は、図2に示すように、ゲル化燃料101を収容する燃料収容部(燃料容器)102と、多孔質膜103とを備える。多孔質膜103は、燃料容器102の開口部102aに配置され、ゲル化燃料101から気化した気化燃料を通過させる。
【0028】
図3は、本発明の第1の実施形態に係る燃料電池の構成を示す断面図である。ここでは、燃料カートリッジ100が、装着部30により燃料電池10に対して装着された状態を示している。MEA20は、固体電解質膜21と、固体電解質膜21を挟持する燃料極22及び酸化剤極23とから成る。
【0029】
装着部30は、図示のように、燃料カートリッジ100の多孔質膜103と、MEA20の燃料極22とを対向させた状態で、燃料カートリッジ100を燃料電池10に装着している。つまり、ゲル化燃料101は、多孔質膜103を介して燃料極22に対向した状態で、燃料容器102の内部に収容されている。このため、ゲル状のゲル化燃料101から気化した気化燃料は、多孔質膜103を通過して燃料極22に供給される。
【0030】
ゲル化燃料101は、シュードプラスチック性(熱可逆性)を有する。即ち、ゲル化燃料101は、静置状態又は低攪拌状態で高い粘性を有し、また、攪拌速度の増加に伴い粘度が低下し、さらに、再度静置状態に戻すと、再び高粘度状態を回復するという性質を有する。
【0031】
ゲル化燃料101は、メタノール、エタノール、ジエチルエーテル等の有機液体燃料に、水とゲル化剤とを添加して生成される。ゲル化剤としては、例えば、シュードプラスチック性のキサンタンガムが用いられる。ゲル化燃料101の含水量は、10重量%以上90重量%以下が好ましい。また、ゲル化燃料101に含有されるゲル化剤は、0.5重量%以上10重量%以下が好ましい。さらに、ゲル化燃料101の粘度は、グァーガム、タラガム、ローカストビーンガム等のガラクトマンナン類と反応させることで調整できる。
【0032】
図4は、燃料電池の発電部の断面を示す図である。MEA20に含まれる固体電解質膜21は、水素イオンの導電性が高い膜であることが好ましく、これにより、燃料極22と酸化剤極23との間で水素イオンを移動させる膜として機能する。また、固体電解質膜21は、化学的に安定しており機械的な強度が高いことが好ましい。
【0033】
固体電解質膜21を形成する材質としては、スルホン基、リン酸基、ホスホン基、及びホスフィン基等の強酸基、カルボキシル基等の弱酸基、及び極性基を有する有機高分子等が例示される。
【0034】
燃料極22は、燃料極側ガス拡散層22aと、燃料極側ガス拡散層22aに触媒が付着した燃料極側触媒層22bとを有する。ゲル化燃料101の気化により生じた気化燃料は、上記多孔質膜103を通過して、燃料極側ガス拡散層22aを介して燃料極22内に供給され、燃料電池10の発電に用いられる。
【0035】
酸化剤極23は、酸化剤極側ガス拡散層23aと、酸化剤極側ガス拡散層23aに触媒が付着した酸化剤極側触媒層23bとを有する。燃料極側ガス拡散層22a及び酸化剤極側ガス拡散層23aとしては、金属不織布等の多孔質金属やカーボンペーパー等を用いることができる。特に、多孔質金属を用いることで、基材に応じて良好な集電性を得ることができる。また、ガス拡散層22a,23aの気孔率は、例えば、40%〜80%程度とする。
【0036】
燃料極側触媒層22b及び酸化剤極側触媒層23bに用いられる触媒としては、例えば、白金、ロジウム、パラジウム、ルテニウム、レニウム、金、銀、ニッケル、及びコバルト等が例示される。また、これら触媒を単独又は二種類以上組み合わせて用いることもできる。さらに、触媒層22b,23bでは、同一の触媒を用いてもよく、異なる触媒を用いてもよい。
【0037】
燃料極側触媒層22b及び酸化剤極側触媒層23bで、触媒を導電粒子に担持させる場合には、導電粒子としては炭素粒子が好ましい。炭素粒子としては、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンナノチューブ、及びカーボンナノホーン等が例示される。
【0038】
ここで、燃料電池10での発電の原理について説明する。燃料電池10では、燃料極22に、ゲル化燃料101から気化した気化燃料が供給され、また、酸化剤極23に酸素又は空気が供給されることで、燃料極22及び酸化剤極23で電極反応が起こり、発電が行われる。
【0039】
具体的には、まず、ゲル化燃料101が、ゲル状態で燃料カートリッジ100の燃料容器102に収容される。そして、燃料カートリッジ100が、装着部30により燃料電池10に装着され、多孔質膜103が燃料極22に対向する。そのため、通常使用時には、燃料容器102に収容されたゲル化燃料101の気化により生じた気化燃料が、多孔質膜103を通過して燃料極22に供給される。
【0040】
次に、燃料極22に供給された気化燃料は、燃料極側ガス拡散層22a中の細孔を通過して燃料極側触媒層22bに達し、触媒により分解されて、電子と水素イオンが生成される。電子は、燃料極22中の触媒担体と燃料極側ガス拡散層22aとを通って外部回路へ導き出され、外部回路より酸化剤極23に流れ込む。一方、水素イオンは、燃料極22中の電解質及び両電極間の固体電解質膜21を通って酸化剤極23に達する。酸化剤極23に達した水素イオンは、酸化剤極23に供給された酸素と、外部回路より流れ込む電子と反応して水を生成する。
【0041】
その結果、外部回路では、燃料極22から酸化剤極23へ向かって電子が流れ、電力が取り出される。このようにして、燃料電池10が発電する。
【0042】
以下、燃料電池10の発電出力について説明する。燃料電池10では、上記したように、ゲル化燃料101の気化により生じた気化燃料が、多孔質膜103を通過し、燃料極側ガス拡散層22aを介して燃料極22に供給されることで、電極反応が起こる。つまり、燃料電池10では、静置状態にある通常使用時には、ゲル化燃料101の気化量に応じた発電が可能となる。ゲル化燃料101の気化量は、例えば、ゲル化燃料101の気化表面積と動作環境温度とに依存する。
【0043】
ところが、燃料電池10の発電がゲル化燃料101の気化量に依存することから、気化量以上の燃料が必要となる発電、即ち、通常発電時以上の電力が必要とされる発電を行う際には、燃料不足となり必要な発電量を確保できない状態となる。これは、ゲル化燃料101が、気化と共に体積が縮小し、気化表面積が減少して、気化量が低下することに起因している。
【0044】
上記のような状態を回避するために、本実施形態の燃料電池10では、燃料としてシュードプラスチック性を有するゲル化燃料101を用いている。このため、ゲル化燃料101を攪拌することで、ゲル状態の粘度を下げて流動化し、気化表面積を増大することが可能である。その結果として、ゲル化燃料101の気化量が増えて、燃料極22に供給される気化燃料の供給量が増加し、燃料電池10の発電量を高めることが可能である。
【0045】
ゲル化燃料101の攪拌は、一例として、燃料電池10を手動で振って行うようにしてもよい。この場合には、ゲル化燃料101の高攪拌状態を得るために、ゲル化燃料101の燃料容器102に対する充填率が、60%以下であることが好ましい。
【0046】
また、ゲル化燃料101の攪拌は、通常発電時以上の電力が必要とされる発電を行う場合に限らず、通常発電時であっても、ゲル化燃料101の気化量が経時変化により減少している場合や、動作環境温度が低く気化量が十分でない場合等に行ってもよい。このような場合であっても、燃料電池10では、ゲル化燃料101を攪拌することで、一時的に気化量を増加させて、発電量を制御でき、必要な発電量を確保できる。
【0047】
本実施形態では、液体燃料であるメタノールに、ゲル化剤であるキサンタンガムを添加することで、メタノールがゲル化したシュードプラスチック性を有するゲル化燃料を得ることができる。また、燃料としてゲル化燃料を用いることで、静置状態又は低攪拌状態である通常使用時では、ゲル化燃料の気化量が抑制されるので、安全性を確保できる。
【0048】
また、本実施形態では、ゲル化燃料の含水量が10〜90重量%であり、また、キサンタンガムの含有量が0.5〜10重量%である構成を採用したので、攪拌によって容易に液化するゲル化燃料が得られる。
【0049】
また、本実施形態では、燃料電池に対して離脱可能に装着された燃料カートリッジにゲル化燃料を収容したので、燃料の交換等を容易に行うことができる。
【0050】
(第2の実施形態)
図5は、本発明の第2の実施形態に係る燃料電池の構成を示す断面図である。燃料電池10Aは、ゲル化燃料101と共に攪拌子104を燃料容器102に収容した燃料カートリッジ100Aを装着した点で、上記燃料電池10と異なる。攪拌子104は、ゲル化燃料よりも比重が大きく、かつ、メタノール等の液体燃料に対する耐性を有していることが好ましい。なお、攪拌子104を、ゲル化燃料101を攪拌するための攪拌機とする。
【0051】
本実施形態の燃料電池10Aでは、燃料カートリッジ100Aを装着しているので、ゲル化燃料101の攪拌を手動で行う場合に、攪拌子104によってゲル化燃料101の高攪拌状態を容易に得ることができ、ゲル化燃料101の気化量を高めることができる。
【0052】
(第3の実施形態)
図6は、本発明の第3の実施形態に係る燃料電池の構成を示す断面図である。燃料電池10Bは、燃料容器102に攪拌子104を収容した燃料カートリッジ100Bを装着し、また、燃料容器102の外部に攪拌子駆動機構105を配置し、さらに、制御部106を備えた点で、上記燃料電池10と異なる。なお、攪拌子104と攪拌子駆動機構105とを含めて、ゲル化燃料101を攪拌するための攪拌機とする。
【0053】
攪拌子104としては、液体燃料に対する耐性を有する樹脂コーティングを施した磁石等が例示される。また、攪拌子駆動機構105としては、モータ等が使用可能であって、例えば、筐体11の底部に配置してもよい。制御部106は、攪拌子駆動機構105に接続されており、攪拌機を制御する。つまり、燃料電池10Bでは、ゲル化燃料101の攪拌が制御され、高攪拌状態が能動的に得られる。
【0054】
従って、燃料電池10Bでは、燃料容器102から燃料極22に供給される気化燃料の供給量が制御され、発電量が制御される。
【0055】
本実施形態では、ゲル化燃料を攪拌する攪拌機と、攪拌機の攪拌を制御する制御部とを備える構成を採用したので、ゲル化燃料を高攪拌状態にすることができ、ゲル化燃料の気化量を増加させることが容易である。
【0056】
(第4の実施形態)
図7は、本発明の第4実施形態に係る燃料電池の構成を示す断面図である。燃料電池10Cは、燃料カートリッジ100Cを装着し、また、燃料容器102の外部に振動子107を配置し、さらに制御部108を備えた点で、上記燃料電池10と異なる。
【0057】
振動子107は、燃料容器102を含む燃料カートリッジ100C及び燃料電池10Cを振動させるための容器振動部材である。振動子107は、振動モータ等であって、例えば、筐体11の底部に配置してもよい。制御部108は、振動子107に接続されており、振動子107を制御する。つまり、燃料電池10Cでは、例えば、燃料カートリッジ100C及び燃料電池10Cが振動することで、燃料容器102が振動し、ゲル化燃料101の攪拌が制御され、高攪拌状態が能動的に得られる。
【0058】
従って、燃料電池10Cでは、燃料容器102から燃料極22に供給される気化燃料の供給量が制御され、発電量が制御される。
【0059】
本実施形態では、燃料容器を振動させる容器振動部材と、容器振動部材の振動を制御する制御部とを備える構成を採用したので、振動部材の構造を簡素化できる。なお、制御部は、燃料電池とは別体にして、例えば制御盤等に設置してもよい。
【実施例】
【0060】
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明する。
本実施例は、本発明の第1の実施形態に基づいており、図3に示した燃料電池10を以下の手順で作製した上で、出力の評価を行った。まず、厚さ0.3mmのSUS316L系の多孔質金属シートを用いて、燃料極側ガス拡散層22a及び酸化剤極側ガス拡散層23aを作製した。
【0061】
続いて、この多孔質金属シート上に、以下のような工程で燃料極側触媒層22b及び酸化剤極側触媒層23bを形成した。まず、固体高分子電解質としてアルドリッチ・ケミカル社製の5wt%ナフィオンアルコール溶液を選択し、固体高分子電解質量が0.1〜0.4mg/cmとなるようにn−酢酸ブチルと混合攪拌して、固体高分子電解質のコロイド状分散液を調製した。
【0062】
また、燃料極側触媒層22b及び酸化剤極側触媒層23bの触媒には、炭素微粒子(デンカブラック;電気化学社製)に粒子径3〜5nmの白金触媒を重量比で50%担持させた触媒担持炭素微粒子を使用した。
【0063】
次いで、触媒担持炭素微粒子を、上記固体高分子電解質のコロイド状分散液に添加し、超音波分散器を用いてペースト状にした。このとき、固体高分子電解質と触媒の重量比が1:1になるように混合した。このペーストを、燃料極側ガス拡散層22a及び酸化剤極側ガス拡散層23aである上記多孔質金属シート上に、スクリーン印刷法で2mg/cm塗布した後、加熱乾燥することで、燃料極側触媒層22b及び酸化剤極側触媒層23bを含む、燃料極22及び酸化剤極23を作製した。
【0064】
この燃料極22及び酸化剤極23を、固体電解質膜21として用意したデュポン社製のナフィオン112の両面に、温度130℃、圧力10kg/cmでホットプレスして、触媒電極−固体電解質膜接合体であるMEA20を作製した。
【0065】
燃料カートリッジ100は、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂製の燃料容器102と、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製の多孔質膜103とを溶着し、燃料容器102にシュードプラスチック性のゲル化燃料101を注入することで作製した。なお、ゲル化燃料101は、50%の水を含有するメタノールに、キサンタンガムを総量の1%添加して作製した。
【0066】
続いて、燃料カートリッジ100の多孔質膜103と、MEA20の燃料極22とが対向するように、燃料カートリッジ100を燃料電池10に装着した。
【0067】
次に、作製した燃料電池10を用いて実験を行い、出力の評価を行った。具体的には、電流密度100mA/cm、電圧0.4Vとして、電圧一定で定常発電を3時間継続し、電流密度の低下を確認した。
【0068】
その後、燃料電池10を手動で10秒間振り、出力を確認した。その結果、電流密度100mA/cm、電圧0.4Vが確認された。従って、燃料電池10では、シュードプラスチック性を有するゲル化燃料101を攪拌することで、燃料極22に供給される気化燃料の供給量が増加して、出力が制御されることが明らかになった。
【0069】
以上、本発明をその好適な実施形態に基づいて説明したが、本発明の燃料電池は、上記実施形態の構成にのみ限定されるものではなく、上記実施形態の構成から種々の修正及び変更を施したものも、本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0070】
10,10A〜C:燃料電池
11:筐体
20:MEA(発電部)
21:固体電解質膜
22:燃料極
22a:燃料極側ガス拡散層
22b:燃料極側触媒層
23:酸化剤極
23a:酸化剤極側ガス拡散層
23b:酸化剤極側触媒層
30:装着部
100,100A〜C:燃料カートリッジ
101:ゲル化燃料
102:燃料収容部(燃料容器)
102a:開口部
103:多孔質膜
104:攪拌子
105:攪拌子駆動機構
106,108:制御部
107:振動子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シュードプラスチック性を有するゲル化燃料を収容する燃料容器と、該燃料容器の開口部に配置され、前記ゲル化燃料から気化した気化燃料を通過させる多孔質膜とを有する燃料カートリッジと、
固体電解質膜と、前記固体電解質膜を相互間に挟持する燃料極及び酸化剤極とを有する発電部と、
前記多孔質膜と前記燃料極とを対向させて、前記燃料カートリッジを燃料電池に対して離脱可能に装着する装着部材と、を備えることを特徴とする燃料電池。
【請求項2】
前記燃料カートリッジ及び燃料電池を一体的に振動させる容器振動部材を更に備える、請求項1に記載の燃料電池。
【請求項3】
前記ゲル化燃料を攪拌する攪拌機を更に備える、請求項1に記載の燃料電池。
【請求項4】
前記容器振動部材又は前記攪拌機を制御して、燃料電池の発電量を制御する制御部を更に備える、請求項2又は3に記載の燃料電池。
【請求項5】
前記容器振動部材又は前記攪拌機を制御して、前記燃料容器から前記燃料極に供給される前記気化燃料の供給量を制御する制御部を更に備える、請求項2又は3に記載の燃料電池。
【請求項6】
前記ゲル化燃料が、有機液体燃料及びキサンタンガムを含む、請求項1〜5の何れか一に記載の燃料電池。
【請求項7】
前記有機液体燃料が、メタノールである、請求項6に記載の燃料電池。
【請求項8】
前記ゲル化燃料の含水量が、10〜90重量%である、請求項1〜7の何れか一に記載の燃料電池。
【請求項9】
前記キサンタンガムの含有量が、0.5〜10重量%である、請求項6〜8の何れか一に記載の燃料電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−198939(P2010−198939A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−43426(P2009−43426)
【出願日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】