説明

燃料電池

【課題】外部マニホールド方式の燃料電池における外部マニホールドと燃料電池積層体との熱膨張差によるシール性能低下を抑制する。
【解決手段】実施形態によれば、単セル電池を積層し外部マニホールドを備えた燃料電池において、マニホールド30、31、32、33が、セパレータの線膨張係数より低い線膨張係数をもつマニホールド材から構成され、マニホールド材は絶縁性の樹脂材料を含有する。または、エンドプレートが、セパレータの線膨張係数より低い線膨張係数をもつエンドプレート材から構成され、エンドプレート材は絶縁性の樹脂材料を含有する。マニホールド材またはエンドプレート材は、たとえば、熱硬化性または熱可塑性の絶縁性樹脂内に、当該絶縁性樹脂よりも線膨脹係数の低い無機材料のフィラーを含有するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明の実施形態は、複数の単セル電池を積層した積層体とその外側に配置された外部マニホールドとを備えた燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
電解質としてプロトン伝導性を有する固体高分子電解質膜を用いた燃料電池では、電解質膜を燃料極と酸化剤極で挟持した膜電極複合体(MEA)の両面に、ガス流通路を設けた電気伝導性のセパレータを配置して単セル電池(単位電池)を構成し、単セル電池を複数積層して積層体(燃料電池スタック)としている。さらにこの積層体の両端をエンドプレートで保持し、両エンドプレートを貫通した孔に複数のスタッドを通し、スプリングを介して積層体を締め付けている(特許文献1、2)。
【0003】
燃料電池スタックの各単セル電池には、反応に必要な燃料(水素)と、酸化剤(空気)と、冷却に必要な冷却水を均等に供給する必要がある。反応ガス・冷却水を分配・回収するマニホールドには内部マニホールド方式と外部マニホールド方式がある。
【0004】
外部マニホールド方式では、セパレータに設けたガス流通路をセパレータ端部まで延長して積層体側面に開口させ、別体の外部マニホールドを側面に設けて流通させている。外部マニホールド方式ではセパレータにマニホールドを含まないため、膜電極複合体の有効面積と同等の大きさとなり、セパレータをコンパクトにでき、コストダウンに有利である。また外部マニホールドには絶縁性の安価なプラスチックを用いることが可能で、コストアップは最小限に抑えられる。マニホールドの容積もセパレータの大きさの制約を受けずに設定可能であり、積層体を構成する各単セル電池のガス・冷却水流通路により均一にガスや冷却水を分配することが可能である。
【0005】
ここで、エンドプレートを絶縁性の樹脂材料で構成することで、外部マニホールド内を流通する水蒸気を含んだガスおよび冷却水によりエンドプレートが腐食することを防止する方法が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【0006】
また、外部マニホールドと積層体のシール性を改善する方法として積層体の側面を平滑化処理する方法が提案されている(例えば、特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−40807号公報
【特許文献2】特開2008−218087号公報
【特許文献3】特開2007−179992号公報
【特許文献4】特開2008−10279号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
外部マニホールド方式に用いられる絶縁性の樹脂は一般的に線膨張係数が大きく、単セル電池を構成しているセパレータに用いられるカーボン樹脂や金属に対しても線膨張係数が大きい。このため、固体高分子形燃料電池スタックの一般的な動作温度である80℃では単セル電池の外寸よりも外部マニホールドの内寸が大きくなる。これにより、外部マニホールドと燃料電池スタックの側面との間に隙間を生じてシール性能が低下し、反応ガスがリークしやすくなるという課題がある。
【0009】
特許文献1では、外部マニホールドを線膨張係数が正負二種類のワイヤーで締結して緩みを防止する方法が開示されている。しかしながらマニホールドと単セル電池の材料特性に起因する熱膨張差を解消する方法は開示されていない。
【0010】
また、エンドプレートを絶縁性の樹脂材料で構成する場合に絶縁性の樹脂は一般的に、単位セルを構成しているセパレータに用いられるカーボン樹脂や金属に比較して線膨張係数が大きい。このため、固体高分子形燃料電池スタックの一般的な動作温度である80℃では単位セルの外周寸法よりもエンドプレートの外周寸法が大きくなり、外部マニホールドと積層体のシール部に隙間を生じてシール性能が低下し、反応ガスがリークしやすくなるという課題がある。
【0011】
本発明が解決しようとする課題は、外部マニホールド方式の燃料電池における外部マニホールドもしくはエンドプレートと燃料電池積層体との熱膨張差によるシール性能低下を抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明に係る燃料電池の一つの態様は、複数の単セル電池を所定の積層方向に積層した積層体と、前記複数の単セル電池それぞれに燃料ガスを配給する燃料入口マニホールドと、前記複数の単セル電池それぞれに酸化剤ガスを配給する酸化剤入口マニホールドと、前記複数の単セル電池それぞれから燃料ガスを排出する燃料出口マニホールドと、前記複数の単セル電池それぞれから酸化剤ガスを排出する酸化剤出口マニホールドとを有し、前記燃料入口マニホールド、酸化剤入口マニホールド、燃料出口マニホールドおよび酸化剤出口マニホールドがそれぞれ前記積層体の側面に接して前記積層方向に延びるように配置された燃料電池において、前記単セル電池のそれぞれは、膜・電極複合体と、前記膜・電極複合体をはさんでその膜・電極複合体の両面に接して燃料ガス流通路および酸化剤ガス流通路を形成するセパレータと、を前記積層方向に重ね合わせて構成され、前記燃料ガス流通路は前記燃料入口マニホールドに接続され、前記燃料ガス流通路は前記燃料出口マニホールドに接続され、前記酸化剤ガス流通路は前記酸化剤入口マニホールドに接続され、前記酸化剤ガス流通路は前記酸化剤出口マニホールドに接続され、前記燃料入口マニホールド、燃料出口マニホールド、酸化剤入口マニホールドおよび酸化剤出口マニホールドの少なくとも一つが、前記セパレータの線膨張係数より低い線膨張係数をもつマニホールド材から構成され、前記マニホールド材は絶縁性の樹脂材料を含有すること、を特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る燃料電池の他の一つの態様は、複数の単セル電池を所定の積層方向に積層した積層体と、前記積層体の前記積層方向の両端に配置されて絶縁性の樹脂材料で構成された2枚のエンドプレートと、前記2枚のエンドプレートに取り付けられてこれらのエンドプレートを互いに近づける方向に締め付ける締付スタッドと、前記複数の単セル電池それぞれに燃料ガスを配給する燃料入口マニホールドと、前記複数の単セル電池それぞれに酸化剤ガスを配給する酸化剤入口マニホールドと、前記複数の単セル電池それぞれから燃料ガスを排出する燃料出口マニホールドと、前記複数の単セル電池それぞれから酸化剤ガスを排出する酸化剤出口マニホールドとを有し、前記燃料入口マニホールド、酸化剤入口マニホールド、燃料出口マニホールドおよび酸化剤出口マニホールドがそれぞれ前記積層体の側面に接して前記積層方向に延びるように配置された燃料電池において、前記単セル電池のそれぞれは、膜・電極複合体と、前記膜・電極複合体をはさんでその膜・電極複合体の両面に接して燃料ガス流通路および酸化剤ガス流通路を形成するセパレータと、を前記積層方向に重ね合わせて構成され、前記燃料ガス流通路は前記燃料入口マニホールドに接続され、前記燃料ガス流通路は前記燃料出口マニホールドに接続され、前記酸化剤ガス流通路は前記酸化剤入口マニホールドに接続され、前記酸化剤ガス流通路は前記酸化剤出口マニホールドに接続され、前記エンドプレートが、前記セパレータの線膨張係数より低い線膨張係数をもつエンドプレート材から構成され、前記エンドプレート材は絶縁性の樹脂材料を含有すること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、外部マニホールド方式の燃料電池における外部マニホールドもしくはエンドプレートと燃料電池積層体との熱膨張差によるシール性能低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る燃料電池の第1の実施形態を示す斜視図である。
【図2】図1の燃料電池の積層体を示す斜視図である。
【図3】図1の燃料電池の横断面図である。
【図4】本発明に係る燃料電池の第1の実施形態におけるマニホールド材のシリカ含有率と樹脂の線膨張係数の関係を示すグラフである。
【図5】本発明に係る燃料電池の第2の実施形態の横断面図である。
【図6】図5の燃料電池における燃料入口マニホールドを示す展開斜視図である。
【図7】図6の燃料入口マニホールドの横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る燃料電池の実施形態について、図面を参照して説明する。ここで、互いに同一または類似の部分には共通の符号を付して、重複説明は省略する。
【0017】
[第1の実施形態]
図1は本発明に係る燃料電池の第1の実施形態を示す斜視図である。図2は図1の燃料電池の積層体を示す斜視図であり、図3は図1の燃料電池の横断面図である。
【0018】
図2を用いて第1の実施形態の固体高分子型燃料電池スタックの積層体の構成を説明する。単セル電池10は、膜・電極複合体(MEA)11と、膜・電極複合体11をはさむ酸化剤セパレータ12および燃料・冷却水セパレータ13で構成されている。酸化剤セパレータ12の表面には酸化剤ガス流通路14が設けられており、その端部はセパレータ側面に開口している。燃料・冷却水セパレータ13の膜・電極複合体11と接する側の表面には燃料ガス流通路15が設けられ、もう一方の表面には冷却水流通路16が設けられている。燃料ガス流通路15および冷却水流通路16の端部はセパレータ側面に開口している。単セル電池10は複数積層されて積層体を構成する。
【0019】
積層体の両側には、絶縁性のエンドプレート17が配置されている。エンドプレート17は、たとえばエポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、フェノール樹脂などの耐熱性樹脂材料からなり、電池反応部分に対応する内側に凹状の窪み19が設けられている。エンドプレート17のコーナーには突起20が設けられ、突起20中心に設けられた孔を通る締付スタッド21により締め付けられる。
【0020】
エンドプレート17の窪み19内には導電性内部プレート(集電板)60が配置されている。導電性内部プレート60は、ステンレス鋼などの導電性材料からなる平板である。窪み19の中央には開口部22が設けられ、積層体の発電電流を外部に取り出す。エンドプレート17の側面には、マニホールド固定用のネジ孔23が複数個設けられている。
【0021】
次に、図1を用いて第1の実施形態の固体高分子型燃料電池の構成を説明する。積層体の側面には、外部マニホールドとして、酸化剤入口・冷却水出口マニホールド30、酸化剤出口・冷却水入口マニホールド31、燃料入口マニホールド32、燃料出口マニホールド33が配置されている。マニホールド30、31、32、33のエンドプレート17に対向する部分に段差34が設けられ、段差34には長孔があり、長孔を介してボルト35によりマニホールド30、31、32、33がエンドプレート17に固定されている。
【0022】
次に、おもに図3を用いて第1の実施形態の固体高分子型燃料電池スタックの構成を説明する。図2に示すように、酸化剤セパレータ12の表面には酸化剤ガス流通路14が設けられており、その端部はセパレータ側面に開口している。燃料・冷却水セパレータ13の一方の表面には燃料ガス流通路15が、もう一方の表面には冷却水流通路16が設けられており、それらの端部はセパレータ側面に開口している。
【0023】
酸化剤入口・冷却水出口マニホールド30は、その内部で、酸化剤入口マニホールド30aと冷却水出口マニホールド30bに区画されている。同様に、酸化剤出口・冷却水入口マニホールド31は、酸化剤出口マニホールド31aと冷却水入口マニホールド31bに区画されている。
【0024】
酸化剤ガス流通路14は酸化剤入口マニホールド30aおよび酸化剤出口マニホールド31aと連通している。燃料ガス流通路15は燃料入口マニホールド32および燃料出口マニホールド33と連通している。冷却水流通路16は冷却水入口マニホールド31bおよび冷却水出口マニホールド30bと連通している。
【0025】
また、酸化剤入口マニホールド30aは酸化剤入口50と連通し、酸化剤出口マニホールド31aは酸化剤出口51と連通し、燃料入口マニホールド32は燃料入口52と連通し、燃料出口マニホールド33は燃料出口53と連通し、冷却水入口マニホールド31bは冷却水入口54と連通し、冷却水出口マニホールド30bは冷却水出口55と連通している。これにより、反応に必要な燃料・酸化剤ガスを膜電極複合体に供給・排出し、所定の流量の冷却水を供給し、反応に伴う発熱の冷却を行うように構成されている。
【0026】
各マニホールド30、31、32、33には、ガス不透過性と電気絶縁性が必要であり、好ましくは、熱可塑性樹脂もしくは熱硬化性樹脂を金型により、圧縮成形もしくはインジェクション成形して製造する。熱可塑性樹脂としてはPPS(ポリフェニレンサルファイド)、熱硬化性樹脂としてはエポキシ樹脂やフェノール樹脂などがある。マニホールドは積層体側を開口部とした箱状の形状であり、マニホールドの側面および内面に積層体側からマニホールド底面に向かって抜きテーパーが設けられ、金型の離型性を確保しているのが好ましい。マニホールドの開口部と積層体の間には絶縁性のシール材36が挿入されている。
【0027】
固体高分子形燃料電池スタックの運転温度は80℃前後である。一方、スタックの製造・組立は室温で行われる。このため、実際の運転では、スタックの部材の熱膨張の違いにより、寸法変化を生じる可能性がある。単セル電池を構成するセパレータは黒鉛カーボンをバインダー樹脂と混合したコンパウンドを金型でモールド成形する製法が一般的である。バインダー樹脂としては、たとえば、PPSなどの熱可塑性樹脂または、エポキシ樹脂やフェノール樹脂などの熱硬化性樹脂が好適である。
【0028】
通常のセパレータの線膨張係数は1.3〜1.5×10−5[/K]である。一方、外部マニホールドに用いられる樹脂は一般的に線膨張係数が大きく、2〜3×10−5[/K]である。したがって、従来の一般的構成であると、室温で組み立てられたスタックが運転温度の状態になったときにマニホールドの内寸がセパレータの外寸よりも大きくなって隙間を生じてしまい、シール材で吸収しきれずにリークする恐れがある。
【0029】
そこで本実施の形態では、外部マニホールドに、セパレータよりも線膨張係数が小さい樹脂を用いる。具体的には、熱可塑性樹脂や熱硬化樹脂に、線膨張係数の小さな無機材料のフィラー、たとえばシリカやカーボンファイバーを混合して使用する。この結果、セパレータの線膨張係数よりも小さくすることが可能となる。この材料の構成で室温で組み立て、運転温度にもっていくとマニホールドの内寸がセパレータの外寸よりも小さくなり、シール材36により圧力がかかる状態となり、リークを生じる恐れが無くなる。
【0030】
図4は、線膨張係数が2.5×10−5[/K]である熱硬化樹脂に線膨張係数が2.0×10−6[/K]であるシリカ(ガラスビーズ)を混合した場合の、シリカの含有率と混合して得られた樹脂の線膨張係数の関係を示すグラフである。図4からわかるように、シリカの含有率を多くするほど線膨張係数は低下し、シリカ43.5%以上で1.5×10−6[/K]以下となる。一方シリカを増やすと成形時の流動性が落ちるとともに金型の摩耗が激しくなり、87%以上は成形できない。したがって線膨張係数は0.5〜1.5×10−5[/K]が好適である。
【0031】
上記第1の実施形態では、セパレータの例として、黒鉛カーボンをバインダー樹脂と混合したコンパウンドを金型でモールド成形するものについて説明した。セパレータの他の材料の例として、金属薄板コイルをプレス成形した金属セパレータを用いてもよい。金属としてはたとえばステンレス鋼を用いることができ、その場合の線膨張係数は1.5〜2.0×10−5[/K]である。カーボン樹脂モールド品よりも線膨張係数はやや大きく、組み合わせる外部マニホールドの樹脂もシリカ20%以上で線膨張係数2.0×10−5[/K]以下となり、線膨張係数は0.5〜2.0×10−5[/K]が好適である。
【0032】
ここで、この第1の実施形態におけるエンドプレート17とセパレータとの間のシールについて説明する。
【0033】
前述のように、固体高分子形燃料電池スタックの運転温度は80℃前後であるのに対してスタックの製造・組立は室温で行われる。このため、実際の運転時と製造・組立て時とでは、部材の熱膨張の違いにより、セパレータの平面方向の長さとエンドプレート17のセパレータと平行な方向の長さの寸法差には違いが生じる。
【0034】
単位セルを構成するセパレータは黒鉛カーボンをバインダー樹脂と混合したコンパウンドを金型でモールド成形する製法が一般的であり、熱膨張の度合いを示す線膨張係数は1.3〜1.5×10−5[/℃]程度である。一方、エンドプレート17をフェノール樹脂で構成した場合の線膨張係数は2.5〜6×10−5[/℃]程度となる。したがって、室温で組み立てられたスタックが運転温度の状態になると、エンドプレート17の寸法がセパレータの寸法よりも大きくなってしまい、微小な凹凸を有する積層体側面と外部マニホールドの間のシール部のシール面圧が低下しシール部からガスまたは冷却水がリークする恐れがある。
【0035】
そこで本実施の形態では、エンドプレート17にセパレータよりも線膨張係数が小さい樹脂を用いる。具体的には、熱可塑性樹脂や熱硬化樹脂に、線膨張係数の小さな材料、たとえばシリカやカーボンファイバーを混合して使用するのが好ましい。この結果、セパレータの線膨張係数よりも小さくすることが可能となる。この材料の構成で、室温で組立て、運転温度にもっていくとエンドプレートの寸法がセパレータの寸法よりも小さくなり、微小な凹凸を有する積層体側面と外部マニホールドの間のシール部により圧力がかかる状態となり、リークを生じる恐れが無くなる。
【0036】
エンドプレート17の好ましい具体的な材料の例およびその線膨張係数については、前述のマニホールドと同様である。
【0037】
マニホールドとエンドプレート17の接触部分には、弾性を有するシール材(図示せず)が挿入されている。ここで、積層体は個別に成形されたセパレータを多数積層して構成されているため積層体の側面には微小な凹凸があり、マニホールドと積層体の間のシール材に負荷されるシール圧が低下した場合にシール部からのリークが発生しやすい。一方、エンドプレート17の側面は平坦に成形されているため適切な弾性を有するシール材を使用した場合にマニホールドとエンドプレートの間のシール材に負荷されるシール圧が低下してもマニホールドと積層体の間のシール材に負荷されるシール圧が低下した場合と比較してリークが発生しにくい。
【0038】
[第2の実施形態]
図5は本発明に係る燃料電池の第2の実施形態の横断面図である。図6は図5の燃料電池における燃料入口マニホールドを示す展開斜視図である。図7は図6の燃料入口マニホールドの横断面図である。
【0039】
この実施形態では、各マニホールド30、31、32、33の材料として、樹脂材41と金属製プレート40との複合材を用いる。すなわち、樹脂材41としては、第1の実施形態とほぼ同様の、PPSなどの熱可塑性樹脂または、エポキシ樹脂やフェノール樹脂などの熱硬化性樹脂を用いる。各マニホールド30、31、32、33がシール材36と接触する部分に金属製プレート40を配置する。マニホールドの製造方法としては、金属製プレート40は樹脂材41の開口部に貼り合わせるか、金属製プレート40をマニホールド成形金型に配置して、金属製プレート40上にマニホールドを直接成形する方法がある。
【0040】
その他の部分は第1の実施形態と同様である。
【0041】
金属製プレート40の線膨脹係数は一般に樹脂材41の線膨脹係数よりも小さく、樹脂材41と金属製プレート40との複合材としての線膨脹係数を、セパレータの線膨脹係数よりも小さくする。第1の実施形態と同様に、外部マニホールドの線膨張係数がセパレータの線膨張係数よりも小さいので、運転時の温度上昇に伴う熱膨脹差によるガスや冷却水の漏れを抑制することができる。
【0042】
さらに、この実施形態によれば、金属製プレートの使用によりマニホールドの剛性が上がり、マニホールドの樹脂部分の肉厚が薄くできる利点を有する。
【0043】
[他の実施形態]
第1の実施形態で、外部マニホールドおよびエンドプレートの両方の線膨脹係数がセパレータの線膨脹係数よりも小さいものとした。しかし、外部マニホールドおよびエンドプレートのうちの一方のみの線膨脹係数がセパレータの線膨脹係数よりも小さい場合であっても、部分的に効果は得られるものであるので、それでもよい。
【0044】
第2の実施形態の変形例として、樹脂材41の部分に第1の実施形態と同様の熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂などにシリカやカーボンファイバーなどを混入したものを用いてもよい。
【0045】
また、冷却水流通路や冷却水用のマニホールドは設けなくてもよい場合もある。
【0046】
以上説明した実施形態は例示であって、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行なうことができる。これら実施形態やその変形は、発明の要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0047】
10 単セル電池
11 膜・電極複合体(MEA)
12 酸化剤セパレータ
13 燃料・冷却水セパレータ
14 酸化剤ガス流通路
15 燃料ガス流通路
16 冷却水流通路
17 エンドプレート
19 窪み
20 突起
21 締付スタッド
22 開口部
23 ネジ孔
30 酸化剤入口・冷却水出口マニホールド
30a 酸化剤入口マニホールド
30b 冷却水出口マニホールド
31 酸化剤出口・冷却水入口マニホールド
31a 酸化剤出口マニホールド
31b 冷却水入口マニホールド
32 燃料入口マニホールド
33 燃料出口マニホールド
34 段差
35 ボルト
36 シール材
40 金属製プレート
41 樹脂材
50 酸化剤入口
51 酸化剤出口
52 燃料入口
53 燃料出口
54 冷却水入口
55 冷却水出口
60 電導性内部プレート(集電板)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の単セル電池を所定の積層方向に積層した積層体と、前記複数の単セル電池それぞれに燃料ガスを配給する燃料入口マニホールドと、前記複数の単セル電池それぞれに酸化剤ガスを配給する酸化剤入口マニホールドと、前記複数の単セル電池それぞれから燃料ガスを排出する燃料出口マニホールドと、前記複数の単セル電池それぞれから酸化剤ガスを排出する酸化剤出口マニホールドとを有し、
前記燃料入口マニホールド、酸化剤入口マニホールド、燃料出口マニホールドおよび酸化剤出口マニホールドがそれぞれ前記積層体の側面に接して前記積層方向に延びるように配置された燃料電池において、
前記単セル電池のそれぞれは、膜・電極複合体と、前記膜・電極複合体をはさんでその膜・電極複合体の両面に接して燃料ガス流通路および酸化剤ガス流通路を形成するセパレータと、を前記積層方向に重ね合わせて構成され、
前記燃料ガス流通路は前記燃料入口マニホールドに接続され、前記燃料ガス流通路は前記燃料出口マニホールドに接続され、前記酸化剤ガス流通路は前記酸化剤入口マニホールドに接続され、前記酸化剤ガス流通路は前記酸化剤出口マニホールドに接続され、
前記燃料入口マニホールド、燃料出口マニホールド、酸化剤入口マニホールドおよび酸化剤出口マニホールドの少なくとも一つが、前記セパレータの線膨張係数より低い線膨張係数をもつマニホールド材から構成され、前記マニホールド材は絶縁性の樹脂材料を含有すること、
を特徴とする燃料電池。
【請求項2】
前記マニホールド材は、熱硬化性または熱可塑性の絶縁性樹脂内に、当該絶縁性樹脂よりも線膨脹係数の低い無機材料のフィラーを含有するものであること、を特徴とする請求項1に記載の燃料電池。
【請求項3】
前記マニホールド材は、金属製プレートと樹脂材とを一体化して形成したものであって、
前記セパレータと前記金属製プレートとが絶縁性シール材を介して接合されていること、を特徴とする請求項1に記載の燃料電池。
【請求項4】
前記セパレータは黒鉛およびバインダー樹脂の成形品で構成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の燃料電池。
【請求項5】
前記セパレータは金属製の板をプレス成型したものであることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の燃料電池。
【請求項6】
複数の単セル電池を所定の積層方向に積層した積層体と、前記積層体の前記積層方向の両端に配置されて絶縁性の樹脂材料で構成された2枚のエンドプレートと、前記2枚のエンドプレートに取り付けられてこれらのエンドプレートを互いに近づける方向に締め付ける締付スタッドと、前記複数の単セル電池それぞれに燃料ガスを配給する燃料入口マニホールドと、前記複数の単セル電池それぞれに酸化剤ガスを配給する酸化剤入口マニホールドと、前記複数の単セル電池それぞれから燃料ガスを排出する燃料出口マニホールドと、前記複数の単セル電池それぞれから酸化剤ガスを排出する酸化剤出口マニホールドとを有し、
前記燃料入口マニホールド、酸化剤入口マニホールド、燃料出口マニホールドおよび酸化剤出口マニホールドがそれぞれ前記積層体の側面に接して前記積層方向に延びるように配置された燃料電池において、
前記単セル電池のそれぞれは、膜・電極複合体と、前記膜・電極複合体をはさんでその膜・電極複合体の両面に接して燃料ガス流通路および酸化剤ガス流通路を形成するセパレータと、を前記積層方向に重ね合わせて構成され、
前記燃料ガス流通路は前記燃料入口マニホールドに接続され、前記燃料ガス流通路は前記燃料出口マニホールドに接続され、前記酸化剤ガス流通路は前記酸化剤入口マニホールドに接続され、前記酸化剤ガス流通路は前記酸化剤出口マニホールドに接続され、
前記エンドプレートが、前記セパレータの線膨張係数より低い線膨張係数をもつエンドプレート材から構成され、前記エンドプレート材は絶縁性の樹脂材料を含有すること、
を特徴とする燃料電池。
【請求項7】
前記エンドプレート材は、熱硬化性または熱可塑性の絶縁性樹脂内に、当該絶縁性樹脂よりも線膨脹係数の低い無機材料のフィラーを含有するものであること、を特徴とする請求項6に記載の燃料電池。
【請求項8】
前記エンドプレート材は、金属製プレートと樹脂材とを一体化して形成したものであって、
前記セパレータと前記金属製プレートとが絶縁性シール材を介して接合されていること、を特徴とする請求項6に記載の燃料電池。
【請求項9】
前記セパレータは黒鉛およびバインダー樹脂の成形品で構成されていることを特徴とする請求項6ないし請求項8のいずれか一項に記載の燃料電池。
【請求項10】
前記セパレータは金属製の板をプレス成型したものであることを特徴とする請求項6ないし請求項8のいずれか一項に記載の燃料電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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