説明

燃料電池

【課題】セル積層方向と直交する方向の加速度が作用した場合にスタックがばらけるのを抑止する。
【解決手段】燃料電池1は、セル積層体2を拘束する部材であって、セル積層体2が積層方向と直交する方向の慣性力を受けた際の当該セル積層体2の撓みを想定した形状であり、当該セル積層体2と当該拘束部材3の接触による反力をセル4に分散する拘束部材3を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池に関する。さらに詳述すると、本発明は、セル積層体を拘束する部材の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池においては、燃料電池セルが積層されてなるスタックを利用して発電が行われている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−293736号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の燃料電池に対し、外部衝撃等によってセル積層方向と直交する方向の加速度が作用すると、セル積層体の端部近傍でモジュールに滑りが生じてスタックがばらけるおそれがある。
【0005】
本発明は、セル積層方向と直交する方向の加速度が作用した場合にスタックがばらけるのを抑止することができる燃料電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる課題を解決するべく、本発明者は種々の検討を行った。一般に、スタックが慣性力を受けるとセル積層体と外部拘束部材とが接触する場合がある。この場合、セル積層体の中央部に大きな反力(荷重)が発生する。発生反力に対して、セル座屈強度が小さい場合、セルが座屈変形を起こし、短絡やガス、冷却水のリークが発生するおそれがある(図7参照)。このような事象に着目した本発明者は、課題の解決に結び付く知見を得るに至った。
【0007】
本発明にかかる燃料電池はこのような知見に基づくもので、セル積層体を拘束する部材であって、セル積層体が積層方向と直交する方向の慣性力を受けた際の当該セル積層体の撓みを想定した形状であり、当該セル積層体と当該拘束部材の接触による反力をセルに分散する拘束部材を備えるというものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、セル積層方向と直交する方向の加速度が作用した場合にスタックがばらけるのを抑止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施形態を示す、(A)慣性力を受けた際のセル積層体とその撓みを想定した形状の拘束部材の一例を表す図、(B)セル積層方向の各位置における積層体反力とセル座屈強度との関係を表すグラフである。
【図2】拘束部材の形状(外部拘束形状)の決定手法の一例を示す、(A)セル圧縮剛性の算出原理を表すグラフ、(B)セルせん断剛性の算出原理を示すグラフ、(C)積層体位置とスタックたわみ量との関係を表すグラフ、(D)スタックたわみ量の算出式である。
【図3】両側部に外部拘束シートを貼り付けた拘束部材の一例を示す図である。
【図4】硬度に傾斜を付けた拘束部材の一例を示す図である。
【図5】適宜穴を開けて反力を調整するようにした拘束部材の一例を示す図である。
【図6】両端部にヤング率の高い部材(例えば金属プレート)を挿入した拘束部材の一例を示す図である。
【図7】従来技術を参考として示す、(A)慣性力を受けた際のセル積層体と拘束部材の一例を表す図、(B)セル積層方向の各位置における積層体反力とセル座屈強度との関係を表すグラフ、(C)セル積層体の中央部付近を拡大して表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の構成を図面に示す実施の形態の一例に基づいて詳細に説明する。以下では、一例として、燃料電池車に搭載されることが予定された燃料電池に本発明を適用した場合を例示して説明するが、適用範囲がこのような例に限られることはない。
【0011】
本実施形態の燃料電池1は、セル積層体2を拘束するための拘束部材3を備える。
【0012】
拘束部材3は、セル積層体2が積層方向と直交する方向の慣性力を受けた際の当該セル積層体2の撓みを想定した形状とされている(図1(A)参照)。これによれば、セル積層体2の反力を全セル4に分散させ、反力が各セル4の座屈強度を上回らないようにすることができる(図1(B)参照)。この結果、外部衝撃等によってセル積層方向と直交する方向の加速度が作用したとしても、セル積層体2の端部近傍でモジュールに滑りが生じてスタックがばらけるのを抑止することができる。
【0013】
拘束部材3の形状(外部拘束形状)の決定手法を示す(図2参照)。まず、セル圧縮変位量と荷重とから、セル圧縮剛性(E)を算出する(図2(A)参照)。また、せん断変位量と荷重とから、セルせん断剛性(S)を算出する(図2(B)参照)。これらから、積層体位置(x)とスタックたわみ量との関係を求める(図2(C)参照)。スタックたわみ量は、図2(D)に示す式によって求めることができる。
【0014】
このように、本実施形態では、例えば車両衝突時等におけるセル積層体2のずれ防止のための外部拘束構造において、スタックの撓みを想定した外部拘束形状とし、セル積層体2と拘束部材3の接触による反力をセル4に分散するようにしている。これによれば、セル4と外部拘束部材3が接触した際に各セル4から均等に反力が得られ、セル4へのダメージを抑制することができる。
【0015】
なお、上述の実施形態は本発明の好適な実施の一例ではあるがこれに限定されるものではなく本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。例えば、想定した撓みに合わせ、弧を描いた形状の拘束部材3とすることができる。あるいは、想定した撓みに合わせ、中央部ほど軟らかく、端部に向かうにつれて硬くなる形状・構造の拘束部材3とすることもできる。さらには、中央部ほど弾性率が低い・
中央部ほど肉薄である・中央部ほど圧縮剛性が低いといった形状・構造の拘束部材3としてもよい。これにより、セル積層体2の中央部(撓みによって最も拘束部材3に接触しやすい)に反力が集中しないため、セル4の破損が起こりにくくなる。以下、各種具体例を示す。
【0016】
例えば、拘束部材3の両側部に、外部拘束シート31を貼り付けるようにしてもよい(図3参照)。
【0017】
また、拘束部材3の硬度に傾斜を付けるようにしてもよい(図4参照)。これによれば、拘束部材3の弾性率に分布を設けることができる。
【0018】
あるいは、拘束部材3に適宜穴32を開けて反力を調整するようにしてもよい(図5参照)。これによれば、拘束部材3の圧縮特性を部位ごとに調整することができる。
【0019】
さらには、例えば拘束部材3の両端部にヤング率の高い部材(例えば金属プレート)33を挿入してもよい(図6参照)。これによれば、端部の圧縮剛性を上げることができる。
【0020】
上述の各手段等により、拘束部材3のうち反力を最も受ける中央部を軟らかくし、端部に向かうほど硬くなるようにすることができる。これにより、セル4へ与えうるダメージを減らし、セル積層体2から均一に反力を得ることが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明は、燃料電池車等の燃料電池に適用して好適である。
【符号の説明】
【0022】
1…燃料電池、2…セル積層体、3…拘束部材、4…セル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セル積層体を拘束する部材であって、前記セル積層体が積層方向と直交する方向の慣性力を受けた際の当該セル積層体の撓みを想定した形状であり、当該セル積層体と当該拘束部材の接触による反力をセルに分散する拘束部材
を備える、燃料電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−186077(P2012−186077A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−49303(P2011−49303)
【出願日】平成23年3月7日(2011.3.7)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】