説明

燃料電池

【課題】燃料電池の運転状態に応じて、燃料電池からの水の持ち去り量を制御する。
【解決手段】燃料電池10であって、積層された発電ユニット110と、積層された単電池の一方の端部に配置されたエンドプレート230と、積層された単電池の他方の端部に配置された押圧プレート220と、エンドプレートと押圧プレートとの間の締結荷重を変化させる制御部400とを有し、発電ユニット110は、膜電極接合体120と、膜電極接合体の両面に配置されたガス拡散層132、133と、ガス拡散層の膜電極接合体との反対側に配置された多孔体ガス流路142、143と、多孔体ガス流路のガス拡散層との反対側に配置されたセパレータプレート152、153と、を有し、制御部は、燃料電池の発電状態に応じて、エンドプレートと押圧プレートとの間の締結荷重を変化させることにより、多孔体ガス流路のガスが流れる方向の開口率を変化させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、燃料電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
燃料電池内の反応ガスの流路として、エキスパンドメタルを用いる燃料電池が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−300323号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
燃料電池が高温の場合、生成水が蒸発し易いため膜電極接合体から生成水が持ち去られ易く、膜電極接合体が乾燥して燃料電池の効率を下げるおそれがある。一方、低温の場合には、生成水が蒸発し難いため生成水が持ち去られ難くフラッディング等により反応ガスの供給がされ難くなり、燃料電池の効率を下げるおそれがある。したがって、燃料電池が高温の場合には、生成水を持ち去られ難くし、逆に、燃料電池が低温の場合には、生成水を持ち去られ易くすることが好ましいが、反応ガスの流路として、エキスパンドメタルを用いる場合、このような制御が難しかった。
【0005】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、燃料電池の運転状態に応じて、燃料電池からの水の持ち去り量を制御し、燃料電池の効率を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]
燃料電池であって、積層された単電池と、前記積層された単電池の一方の端部に配置されたエンドプレートと、前記積層された単電池の他方の端部に配置された押圧プレートと、前記エンドプレートと前記押圧プレートとの間の締結荷重を変化させる制御部とを有し、前記単電池は、膜電極接合体と、前記膜電極接合体の両面に配置されたガス拡散層と、前記ガス拡散層の前記膜電極接合体との反対側に配置された多孔体ガス流路と、前記多孔体ガス流路の前記ガス拡散層との反対側に配置されたセパレータプレートと、を有し、前記制御部は、前記燃料電池の発電状態に応じて、前記エンドプレートと前記押圧プレートとの間の締結荷重を変化させることにより、前記多孔体ガス流路のガスが流れる方向の開口率を変化させる、燃料電池。
この適用例によれば、燃料電池の運転状態に応じて、燃料電池からの水の持ち去り量を制御し、燃料電池の効率を高めることが可能となる。
【0008】
なお、本発明は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、燃料電池の他、燃料電池用ガス流路、燃料電池の制御方法等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】第1の実施例に掛かる燃料電池の構成を示す説明図である。
【図2】発電ユニット110の構成を模式的に示す説明図である。
【図3】多孔体ガス流路の構成を模式的に示す説明図である。
【図4】多孔体ガス流路中のガス流路を模式的に示す説明図である。
【図5】燃料電池の制御フローチャートを示す説明図である。
【図6】第2の実施例にかかる燃料電池の構成を示す説明図である。
【図7】第2の実施例における多孔体ガス流路中のガス流路を模式的に示す説明図である。
【図8】第3の実施例の燃料電池における単電池を示す説明図である。
【図9】第3の実施例における多孔体ガス流路中のガス流路を模式的に示す説明図である。
【図10】多孔体ガス流路1422を移動させる方法の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[第1の実施例]
図1は、第1の実施例に掛かる燃料電池の構成を示す説明図である。燃料電池10は、直列電池100と、集電板200、201と、絶縁板210、211と、押圧プレート220と、エンドプレート230、231と、テンションロッド240と、ナット250と、イモネジ260と、サーボモーター270と、制御部400と、を備える。また、燃料電池10には、水素ガス供給管301、水素ガス排気管302、空気供給管311、空気排気管312、冷却水供給管321、冷却水排出管322と、が接続されている。
【0011】
直列電池100は、複数の発電ユニット110(「単電池110」あるいは「単セル110」とも呼ぶ。)を備えている。各発電ユニット110は、それぞれが1個の単電池である。発電ユニット110は、積層されて直列に接続されており、直列電池100として高電圧を発生させる。集電板200、201は、直列電池100の両側にそれぞれ配置されており、直列電池100が発生した電圧、電流を外部に取り出すために用いられる。絶縁板210、211は、それぞれ集電板200、201のさらに外側に配置されており、集電板200、201と、他の部材、例えばエンドプレート230、231やテンションロッド240と、の間に電流が流れないように、絶縁する。エンドプレート230と押圧プレート220は、それぞれ絶縁板210、211のさらに外側に配置されている。押圧プレート220のさらに外側には、イモネジ260が配置されている。エンドプレート231は、雌ネジが切られている穴231aを有している。イモネジ260は、その穴231aを貫通している。エンドプレート231は、テンションロッド240とナット250により、エンドプレート230から所定の間隔となるように配置されている。エンドプレート231には、サーボモーター270が支持部材280により取り付けられている。サーボモーター270の回転軸275は、イモネジ260の端部に嵌めこまれている。サーボモーター270が回転すると、イモネジ260が回転し、イモネジ260は、エンドプレート231に対して移動する。イモネジ260は移動すると、押圧プレート220を移動させる。そして、押圧プレート220と、エンドプレート230との間の間隔により、燃料電池10の締結荷重(「締結力」とも呼ぶ。)は決まる。
【0012】
冷却水排出管322には、温度センサー325が設けられている。制御部400は、燃料電池の動作状態(温度センサー325からの温度情報、集電板200、201からの電圧情報)に基づいて、サーボモーター270を回転させ、さらにイモネジ260を回転させて、押圧プレート220を移動させて、締結荷重を調整し、燃料電池の動作状態を調整する。
【0013】
図2は、発電ユニット110の構成を模式的に示す説明図である。発電ユニット110は、膜電極接合体120と、ガス拡散層131、132と、多孔体ガス流路142、143と、セパレータプレート152、153と、シールガスケット160と、を備える。膜電極接合体120は、電解質膜121と、触媒層122、123を備える。
【0014】
本実施例では、電解質膜121として、例えば、パーフルオロカーボンスルホン酸ポリマなどのフッ素系樹脂や炭化水素系樹脂からなるプロトン伝導性のイオン交換膜を用いている。触媒層122、123は、電解質膜121の各面にそれぞれ形成されている。本実施例では、触媒層122、123として、例えば、白金触媒、あるいは白金と他の金属とからなる白金合金触媒を例えばカーボン粒子上に担持した触媒層を用いている。
【0015】
ガス拡散層131、132は、それぞれ触媒層122、123の外面に配置されている。本実施例では、ガス拡散層131、132として、カーボン不織布を用いたカーボンクロスやカーボンペーパーを用いている。
【0016】
多孔体ガス流路142、143は、それぞれガス拡散層131、132の外面に配置されている。本実施例では、多孔体ガス流路142、143の形状については、後述する。
【0017】
セパレータプレート152、153は、それぞれ多孔体ガス流路142、143の外面に配置されている。セパレータプレート152と、隣の発電ユニット110のセパレータプレート153との間には、冷却水流路155が形成されている。
【0018】
シールガスケット160は、膜電極接合体120、ガス拡散層132、133、多孔体ガス流路142、143の外縁を囲うように形成されている。シールガスケット160は、たとえば射出成形により、膜電極接合体120と一体に成形される。その後、膜電極接合体120の両面に、ガス拡散層132、133、多孔体ガス流路142、143が順次配置される。
【0019】
図3は、多孔体ガス流路の構成を模式的に示す説明図である。図3(A)は、多孔体ガス流路142形成前の平面図である。図3(B)は、多孔体ガス流路142形成前の側面図である。多孔体ガス流路142は、金属製の平板に矩形の一辺を残した切り込み142bを入れ、矩形の折曲部142aを元の板の平面から持ち上げるように折り曲げることにより形成される。折曲部142aの形成は、例えば、パンチングプレスにより切り込み142を入れると同時に行うことが出来る。
【0020】
図3(C)は、折曲部142aを形成した後の多孔体ガス流路の平面図である。図3(D)は、図3(C)のD−D切断線における断面を示す説明図である。折曲部142aが形成されたときの、折曲部142aがあった部分(折曲部が抜けた部分)に開口部142cが形成されている。また、折曲部142aの先端側に開口部142dが形成される。本実施例では、ガス拡散層132側に開口部142cが位置し、セパレータプレート152側に開口部142dが位置するように配置している。これは、折曲部142aの先端により、ガス拡散層132を破損させないためである。開口部142cは、ガス拡散層132と接触し、この開口部142cを通して、ガス拡散層132中の生成水が持ち去られる。そして、2つの隣接する折曲部142aの間が生成水の持ち出しの流路として機能する。
【0021】
図4は、多孔体ガス流路中のガス流路を模式的に示す説明図である。図4の上図は、燃料電池10の締結荷重F1が通常の場合を示し、図4の下図は、燃料電池10の締結荷重F2が通常の締結荷重F1よりも大きい場合を示している。生成水は、ガス拡散層132から、開口部142aを通過し、2枚の折曲部142aの間を通過する。多孔体ガス流路142は、折曲部142aに弾性を有しており、締結荷重が大きくなると、多孔体ガス流路142が押し潰されるため、折曲部142aにおける多孔体ガス流路142が少し薄くなる。そうすると、2つの隣接する折曲部142aの間が狭くなるため、生成水が移動しにくくなる。すなわち、ガス拡散層132からの生成水の持ち去り量を少なくすることができる。また、多孔体ガス流路142が押し潰されると、折曲部142aの付け根が開口部142cに少し埋まるため、開口部142cが面積BからB’と小さくなる。生成水は、開口部142cを通して持ち去られるため、開口部142cの面積が小さくなると、生成水の持ち去り量を少なくすることができる。したがって、燃料電池10が高温となり、生成水の持ち去り量を少なくしたい場合には、燃料電池10の締結荷重を通常よりも大きくすればよい。
【0022】
図5は、燃料電池の制御フローチャートを示す説明図である。ステップS100では、制御部400は、燃料電池10の発生する電圧を取得し、単位時間当たりの電圧の変化量(ΔV/Δt)を算出する。単位時間当たりの電圧の変化量の値が、あらかじめ定められた値Vaを超えた場合(あるいは、あらかじめ定められた値Va以上の場合)、制御部400は、処理をステップS110に移行し、そうでない場合、制御部400は処理をステップS105に移行する。なお、判断の基準を「値Vaを超えた場合」とするか、あるいは、「値Va以上」とするかは、値Vaとの関係で決まるので、どちらでもよい。
【0023】
ステップS105では、制御部400は、燃料電池10に対して、通常運転を行うように制御する。例えば、燃料電池10の締結荷重を通常の状態に戻し、空気の圧力を通常の圧力とする。ステップS105の処理が終了すると、制御部400は、処理をステップS100に移行する。締結荷重を通常の状態に戻ると、折曲部142aは、弾性により、元の状態に戻る。
【0024】
ステップS110では、制御部400は、冷却排水の温度を取得する。冷却排水の温度があらかじめ定められた温度Tbを越えている場合(あるいは、あらかじめ定められた温度Tb以上の場合)、制御部400は、処理をステップS120に移行する。そうでない場合、制御部400は、処理をステップS115に移行する。なお、判断の基準を「温度Tbを超えた場合」とするか、あるいは、「温度Tb以上」とするかは、温度Tbとの関係で決まるので、どちらでもよい。
【0025】
ステップS115では、制御部400は、燃料電池10に供給する空気の圧力をあらかじめ定められた値だけ上げる。その後、制御部400は、処理をステップS100に移行する。
【0026】
ステップS120では、制御部400は、サーボモーター270を回転させて、燃料電池10の締結荷重を上げる。燃料電池10の締結荷重が上がると、2枚の折曲部142aの間隔が狭く、すなわち、ガスの流れる方向の開口率が小さくなるため、燃料電池10からの生成水の持ち去りを少なくすることが可能となる。なお、ステップS120において、制御部400が制御するサーボモーター270の回転は、一定の大きさ以下あり、その後、制御部は、処理をステップS100に移行して同様の処理を実行する。
【0027】
以上、本実施例によれば、燃料電池10の単位時間当たりの電圧の変化、あるいは温度に基づいて、燃料電池10の締結荷重を変化させ、燃料電池からの生成水の持ち去り量を制御することができる。このような制御により、例えば、WOT出力時(フルスロットル時には、燃料電池10の締結荷重を通常状態として排水性を上げ(生成水の持ち去り量を上げて)、燃料電池10が高温になった場合には、燃料電池10の締結荷重を上げて排水性を下げる(生成水の持ち去り量を少なくする)ことができる。その結果、WOT時のような高負荷時のドライと、高温時のような低負荷時のウエットと、を両立することが可能となる。
【0028】
なお、図5に示した制御フローチャートは一例であり、燃料電池10の締結荷重を、単位時間当たりの電圧の変化、あるいは温度以外のパラメーターを用いて制御してもよい。例えば、単位時間当たりの電圧の変化の代わりに、燃料電池10のインピーダンスを用いてもよい。
【0029】
[第2の実施例]
図6は、第2の実施例にかかる燃料電池の構成を示す説明図である。第1の実施例は、イモネジ260と、サーボモーター270と、を備えていたが、第2の実施例は、それらの代わりに、バネ290を備えている。バネ290は、エンドプレート231と押圧プレート220の間に配置され、燃料電池10に締結荷重を加える。また、発電ユニット110中の多孔体ガス流路142、143(図2参照)が、形状記憶合金で形成されている点も異なる。
【0030】
図7は、第2の実施例における多孔体ガス流路中のガス流路を模式的に示す説明図である。第1の実施例では、制御部400が、燃料電池10の運転状態(単位時間当たりの電圧の変化、燃料電池の温度)に基づいて、サーボモーター270を回転させて、燃料電池10の締結荷重を変化させていた。これに対し、第2の実施例では、温度で形が変形する形状記憶合金で形成された多孔体ガス流路142を備えており、多孔体ガス流路142は、燃料電池10の温度が上がると折曲部142aの折れ曲がり量が小さくなり、2つの隣接する折曲部142aの間が狭くなる。その結果、生成水の持ち去り量を少なくすることができる。逆に燃料電池10の温度が下がると折れ曲がり量が大きくなり、2つの隣接する折曲部142aの間が広くなる。その結果、生成水の持ち去り量をもとの状態に戻すことが可能となる。なお、燃料電池の温度が高くなると、開口部142cの面積が小さくなるのは、第1の実施例と同様である。すなわち、第2の実施例では、高温において多孔体ガス流路142の厚さが薄くなるように変形する多孔体ガス流路142を用いることにより、高温における生成水の持ち去りが少なくなるようにしている。
【0031】
以上、第2の実施例によれば、燃料電池10が高温になったときに、生成水の持ち去りを少なくし、燃料電池10が通常の運転温度になったときには生成水の持ち去り量を多くし、元の状態に戻すことができる。
【0032】
[第3の実施例]
図8は、第3の実施例の燃料電池における単電池を示す説明図である。第3の実施例の発電ユニット110は、多孔体ガス流路142が2つの多孔体ガス流路1421、1422により構成されている点が第1の実施例と異なる。多孔体ガス流路143も同様に2つの多孔体ガス流路1431、1432により構成されている。
【0033】
図9は、第3の実施例における多孔体ガス流路中のガス流路を模式的に示す説明図である。第3の本実施例では、2つの多孔体ガス流路1421、1422を重ねて用いている。なお、2つの多孔体ガス流路1421、1422は、第1の実施例の多孔体流路142と同様の部材を用いて構成されている。ここで、多孔体ガス流路1421の折曲部1421aが多孔体ガス流路1421の開口部1422を塞がないように、2つの多孔体ガス流路1421、1422が重ねられている。すなわち、多孔体ガス流路1421の開口部1421dと多孔体ガス流路1422の開口部1422cとが重なるように配置されている。このときの重なり面積を面積Cとする。
【0034】
通常の締結荷重F1の状態では、多孔体ガス流路1421の開口部1421dと、多孔体ガス流路1422の開口部1422cとがほぼ一致しているため、ガス拡散層132中の生成水は、開口部1421c、開口部1421d、開口部1422cと流れやすい。すなわち、生成水の持ち去り量を多くすることができる。
【0035】
一方、通常の締結荷重F1よりも大きな締結荷重F2の状態では、多孔体ガス流路1421、1422が薄くなると共に、多孔体ガス流路1421に対して、多孔体ガス流路1422が多孔体ガス流路1421に沿った方向に相対的に移動する。その結果、開口1421dと開口1422cの重なり面積が面積Cから面積C’と小さくなる。なお、図9では、比較を容易にするために、面積C、C’の範囲の左側の位置を合わせている。第3の実施例によれば、多孔体ガス流路1421、1422が狭くなって生成水の持ち去りが起こりにくくなることに加え、開口部1421dから開口部1421cへの生成水の移動を起こりにくくすることができる。したがって、第3の実施例では、第1の実施例よりもガス拡散層132からの生成水の持ち去りを、より起こり難くすることが可能となる。なお、第3の実施例の制御については、第1の実施例と同様であるので、説明を省略する。
【0036】
図10は、多孔体ガス流路1422を移動させる方法の一例を示す説明図である。多孔体流路1421、1422は、発電ユニット110の積層方向から見て、いずれも長方形をしている。多孔体多孔体ガス流路1422は、反応ガスが流れる方向の長さについて、多孔体ガス流路1421よりも少し短く形成されている。したがって、多孔体ガス流路1421の上に多孔体ガス流路1422を配置したとき、反応ガスが流れる方向の一方の辺の位置を合わせたとき、その対辺の位置に隙間が空く。本実施例では、この隙間にゴムなどで形成された幅がDの弾性体170を設けている。
【0037】
締結荷重が大きくなると、折曲部142aがつぶされるので、多孔体ガス流路1421、1422は薄くなり、弾性体170に荷重が掛かって薄くなる。このとき、弾性体170は、多孔体ガス流路1422の方向に変形し、幅がD’と大きくなり、多孔体ガス流路1422を側面方向から押して、移動させる。その結果、多孔体ガス流路1422は、多孔体ガス流路1421に対して移動する。なお、締結荷重が通常の状態に戻ると、折曲部142aの弾性により多孔体ガス流路1421、1422の厚さが通常の状態に戻り、弾性体170の変形も元の状態に戻るので、多孔体ガス流路1422は、多孔体ガス流路1421に対して通常の位置に戻る。
【0038】
以上、第3の実施例によっても、燃料電池10の運転状態に応じて、燃料電池10からの生成水の持ち去り量を適切に制御し、燃料電池10の効率を向上させることができる。
【0039】
[変形例]
第3の実施例では、締結荷重を増加させることで、一方の多孔体ガス流路1421を他方の多孔体ガス流路1422に対してずらしているが、多孔体ガス流路1421、1422の少なくとも一方を温度により変化する形状記憶合金を用いて形成してもよい。すなわち弾性体170の代わりに形状記憶合金で形成された挿入物を配置し、燃料電池10の温度が上がった場合に、開口1421dと開口1422cの重なりの長さが短くなるように挿入物を変形させて、多孔体ガス流路1422を移動させてもよい。この場合、多孔体ガス流路1422の反対側に、形状記憶合金で形成された第2の挿入物を配置し、温度が低くなったときに多孔体ガス流路1422を元の位置の戻すようにしてもよい。なお、弾性体170や形状記憶合金の挿入物は、多孔体ガス流路1421を移動させるように配置しても良い。
【0040】
以上、いくつかの実施例に基づいて本発明の実施の形態について説明してきたが、上記した発明の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれることはもちろんである。
【符号の説明】
【0041】
10…燃料電池
100…直列電池
110…発電ユニット(単電池、単セル)
120…膜電極接合体
121…電解質膜
122…触媒層
131…ガス拡散層
132…ガス拡散層
142…多孔体ガス流路
142a…折曲部
142b…切り込み
142c…開口部
1421c…開口部
1421d…開口部
1422c…開口部
143…多孔体ガス流路
145…金属板
152…セパレータプレート
153…セパレータプレート
155…冷却水流路
160…シールガスケット
170…弾性体
200…集電板
210…絶縁板
220…押圧プレート
230…エンドプレート
231…エンドプレート
231a…穴
240…テンションロッド
250…ナット
260…イモネジ
270…サーボモーター
275…回転軸
280…支持部材
290…バネ
301…水素ガス供給管
302…水素ガス排気管
311…空気供給管
312…空気排気管
321…冷却水供給管
322…冷却水排出管
325…温度センサー
400…制御部
1421…多孔体ガス流路
1421b…開口
1422…多孔体ガス流路
1422b…開口
1431…多孔体ガス流路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池であって、
積層された単電池と、
前記積層された単電池の一方の端部に配置されたエンドプレートと、
前記積層された単電池の他方の端部に配置された押圧プレートと、
前記エンドプレートと前記押圧プレートとの間の締結荷重を変化させる制御部とを有し、
前記単電池は、
膜電極接合体と、
前記膜電極接合体の両面に配置されたガス拡散層と、
前記ガス拡散層の前記膜電極接合体との反対側に配置された多孔体ガス流路と、
前記多孔体ガス流路の前記ガス拡散層との反対側に配置されたセパレータプレートと、
を有し、
前記制御部は、前記燃料電池の発電状態に応じて、前記エンドプレートと前記押圧プレートとの間の締結荷重を変化させることにより、前記多孔体ガス流路のガスが流れる方向の開口率を変化させる、燃料電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−114771(P2013−114771A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−257197(P2011−257197)
【出願日】平成23年11月25日(2011.11.25)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】