説明

燃料電池

【課題】燃料電池の締め付け時に、電極触媒層の外周端部に過剰な荷重が付与されることがなく、固体高分子電解質膜の損傷を確実に阻止することを可能にする。
【解決手段】保護フイルム付き電解質膜・電極構造体12は、固体高分子電解質膜18を挟持するカソード電極20及びアノード電極22を備えるMEA12aと、前記固体高分子電解質膜18の外周端縁部に接合される保護フイルム24a、24bとを備える。保護フイルム付き電解質膜・電極構造体12は、発電部46とエッジ部周辺48とを有する。カソード側セパレータ14は、MEA12aに接する外周縁部に外周端部20aeを含むエッジ部周辺48を収容する凹部14cを設ける。アノード側セパレータ16は、MEA12aに接する外周縁部に外周端部22aeを含むエッジ部周辺48を収容する凹部16cを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、それぞれ電極触媒層とガス拡散層とを有する第1電極及び第2電極が、固体高分子電解質膜の両側に設けられる電解質膜・電極構造体と、前記電解質膜・電極構造体の両面に配置されるセパレータとを備える燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、固体高分子型燃料電池は、高分子イオン交換膜からなる固体高分子電解質膜を採用している。この燃料電池は、固体高分子電解質膜の両側に、それぞれ触媒層(電極触媒層)とガス拡散層(多孔質カーボン)とからなるアノード電極及びカソード電極を配設した電解質膜・電極構造体(MEA)を、セパレータ(バイポーラ板)によって挟持している。この燃料電池は、所定の数だけ積層することにより、例えば、車載用燃料電池スタックとして使用されている。
【0003】
この種の電解質膜・電極構造体では、一方の触媒層の外周端部位置と他方の触媒層の外周端部位置とが、固体高分子電解質膜の膜厚さ方向に対して互いにずれている場合がある。
【0004】
例えば、特許文献1に開示されている電解質膜−電極接合体は、図11に示すように、高分子電解質膜1と、前記高分子電解質膜1の一方の面に形成されるカソード触媒層2と、前記高分子電解質膜1の他方の面に形成されるアノード触媒層3と、有効アノード触媒層の面積が有効カソード触媒層の面積よりも大きくなるように、前記カソード触媒層2の端部の少なくとも一部に形成される第1のガスケット層4とを有している。
【0005】
そして、高分子電解質膜1の少なくとも電解質膜−電極接合体の厚み方向に対し、カソード触媒層2の端部と重複する部位には、前記高分子電解質膜1よりも強度の高い補強層5が配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−338938号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の特許文献1では、電解質膜−電極接合体がセパレータ間に挟持されることにより、燃料電池が構成されるとともに、複数の前記燃料電池が積層されて燃料電池スタックとして使用されている。燃料電池スタックには、所望の発電性能及びシール性能を確保するために、積層方向に所定の締め付け荷重が付与されている。
【0008】
その際、カソード触媒層2の外周端部(エッジ部)は、補強層5に押し付けられるとともに、アノード触媒層3の外周端部(エッジ部)は、前記補強層5及び高分子電解質膜1に押し付けられている。このため、補強層5及び高分子電解質膜1は、各エッジ部近傍で面圧が高まって薄肉化してしまい、耐久性が低下するという問題がある。
【0009】
本発明は、この種の問題を解決するものであり、燃料電池の締め付け時に、電極触媒層の外周端部に過剰な荷重が付与されることがなく、固体高分子電解質膜の損傷を確実に阻止することが可能な燃料電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、それぞれ電極触媒層とガス拡散層とを有する第1電極及び第2電極が、固体高分子電解質膜の両側に設けられる電解質膜・電極構造体と、前記電解質膜・電極構造体の両面に配置されるセパレータとを備える燃料電池に関するものである。
【0011】
そして、電解質膜・電極構造体は、第1電極及び第2電極間に固体高分子電解質膜を挟んだ発電部と、前記第1電極及び前記第2電極のそれぞれの電極触媒層外周端部間に前記固体高分子電解質膜を挟んだエッジ部とを有し、セパレータには、前記電解質膜・電極構造体に接する面に、前記エッジ部を収容する凹部が形成されている。
【0012】
また、この燃料電池では、第1電極を構成する電極触媒層の外周端部は、第2電極を構成する電極触媒層の外周端部よりも電極面方向外方に突出する寸法に設定されることが好ましい。
【0013】
さらに、この燃料電池では、ガス拡散層の外周には、保護フイルムが設けられることが好ましい。
【0014】
さらにまた、この燃料電池では、固体高分子電解質膜とガス拡散層との間には、保護フイルムが設けられることが好ましい。
【0015】
また、この燃料電池では、前記燃料電池が積層された際、エッジ部よりも電極面方向外方で電解質膜・電極構造体とセパレータとの間には、隙間が形成されることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、セパレータには、電解質膜・電極構造体のエッジ部に対応して凹部が形成されている。このため、燃料電池が締め付けされた際、エッジ部における締め代は、発電部における締め代よりも小さな寸法に設定されている。従って、発電部では、発電性能を確保するために必要な面圧を確保する一方、エッジ部では、電極触媒層外周端部に過剰な締め付け力がかかることを抑制することができる。これにより、所望の発電性能を有するとともに、エッジ部での固体高分子電解質膜の破損を良好に抑制することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る燃料電池の要部分解斜視説明図である。
【図2】前記燃料電池の、図1中、II−II線断面説明図である。
【図3】前記燃料電池を構成する保護フイルム付き電解質膜・電極構造体のアノード電極側の正面説明図である。
【図4】前記燃料電池の締め付け前の要部断面説明図である。
【図5】セル厚さと発電部面圧及びエッジ部面圧との関係説明図である。
【図6】本発明の第2の実施形態に係る燃料電池の要部分解斜視説明図である。
【図7】前記燃料電池の要部断面説明図である。
【図8】前記燃料電池の締め付け前の要部断面説明図である。
【図9】本発明の第3の実施形態に係る燃料電池の要部断面説明図である。
【図10】本発明の第4の実施形態に係る燃料電池の要部断面説明図である。
【図11】特許文献1に開示された膜電極組立体の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1及び図2に示すように、本発明の第1の実施形態に係る燃料電池10は、保護フイルム付き電解質膜・電極構造体12と、前記保護フイルム付き電解質膜・電極構造体12を挟持するカソード側セパレータ14及びアノード側セパレータ16とを備える。
【0019】
カソード側セパレータ14及びアノード側セパレータ16は、例えば、カーボンセパレータで構成される。なお、カソード側セパレータ14及びアノード側セパレータ16は、カーボンセパレータに代えて、例えば、金属薄板により構成してもよい。
【0020】
図2に示すように、保護フイルム付き電解質膜・電極構造体12は、MEA12aを備えるとともに、前記MEA12aは、例えば、パーフルオロスルホン酸の薄膜に水が含浸された固体高分子電解質膜18と、前記固体高分子電解質膜18を挟持するカソード電極(第2電極)20及びアノード電極(第1電極)22とを有する。固体高分子電解質膜18は、フッ素系電解質の他、HC(炭化水素)系電解質が使用される。
【0021】
カソード電極20は、固体高分子電解質膜18の一方の面18aに配置されるとともに、アノード電極22は、前記固体高分子電解質膜18の他方の面18bに配置される。固体高分子電解質膜18の外周端部は、カソード電極20及びアノード電極22の外周端部よりも外方に延在する。
【0022】
カソード電極20は、固体高分子電解質膜18の面18aに接合される電極触媒層20aと、前記電極触媒層20aに積層されるガス拡散層20bとを設ける。アノード電極22は、固体高分子電解質膜18の面18bに接合される電極触媒層22aと、前記電極触媒層22aに積層されるガス拡散層22bとを設ける。
【0023】
アノード電極22を構成する電極触媒層22aの外周端部22aeは、カソード電極20を構成する電極触媒層20aの外周端部20aeよりも電極面方向外方に突出する寸法に設定される。なお、上記の構成とは逆に、カソード電極20の外周端部20aeを、アノード電極22の外周端部22aeよりも電極面方向外方に突出するように構成してもよい。
【0024】
電極触媒層20a、22aは、カーボンブラックに白金粒子を担持した触媒粒子を形成し、イオン導伝性バインダーとして高分子電解質を使用し、この高分子電解質の溶液中に前記触媒粒子を均一に混合して作製された触媒ペーストを、固体高分子電解質膜18の両面に印刷、塗布又は転写することによって構成される。ガス拡散層20b、22bは、カーボンペーパ等からなるとともに、電極触媒層20a、22aの外周端部20ae、22aeよりも外方で終端する。
【0025】
図1〜図3に示すように、保護フイルム付き電解質膜・電極構造体12は、固体高分子電解質膜18の面18a、18bの外周端縁部に接着剤で接合されるとともに、カソード電極20及びアノード電極22の先端部に接合される樹脂製枠部材からなる保護フイルム24a、24bを備える。保護フイルム24a、24bは、例えば、PPS(ポリフェニレンサルファイド)やPPA(ポリフタルアミド)等で構成される他、弾性を有する高分子材料を用いてもよい。
【0026】
図2に示すように、カソード側セパレータ14は、MEA12aに接する外周縁部に外周端部20ae(エッジ部)を含むエッジ部周辺(後述する)を収容する凹部14cを設ける。アノード側セパレータ16は、MEA12aに接する外周縁部に外周端部22ae(エッジ部)を含むエッジ部周辺(後述する)を収容する凹部16cを設ける。
【0027】
燃料電池10が積層された状態(締め付けられた状態)で、保護フイルム24a、24bとカソード側セパレータ14の面14a及びアノード側セパレータ16の面16bとの間には、それぞれ隙間Sが形成される。カソード側セパレータ14とアノード側セパレータ16とで保護フイルム24a、24bを直接挟持することにより、面圧が必要以上に高くなることを阻止するためである。
【0028】
図1に示すように、燃料電池10の矢印A方向(図1中、水平方向)の一端縁部には、積層方向である矢印B方向に互いに連通して、酸化剤ガス、例えば、酸素含有ガスを供給するための酸化剤ガス入口連通孔30a、冷却媒体を供給するための冷却媒体入口連通孔32a、及び燃料ガス、例えば、水素含有ガスを排出するための燃料ガス出口連通孔34bが、矢印C方向(鉛直方向)に配列して設けられる。
【0029】
燃料電池10の矢印A方向の他端縁部には、矢印B方向に互いに連通して、燃料ガスを供給するための燃料ガス入口連通孔34a、冷却媒体を排出するための冷却媒体出口連通孔32b、及び酸化剤ガスを排出するための酸化剤ガス出口連通孔30bが、矢印C方向に配列して設けられる。
【0030】
カソード側セパレータ14の保護フイルム付き電解質膜・電極構造体12に向かう面14aには、酸化剤ガス入口連通孔30aと酸化剤ガス出口連通孔30bとに連通する酸化剤ガス流路36が設けられる。
【0031】
アノード側セパレータ16の保護フイルム付き電解質膜・電極構造体12に向かう面16aには、燃料ガス入口連通孔34aと燃料ガス出口連通孔34bとに連通する燃料ガス流路38が形成される。カソード側セパレータ14の面14bとアノード側セパレータ16の面16bとの間には、冷却媒体入口連通孔32aと冷却媒体出口連通孔32bとに連通する冷却媒体流路40が形成される。
【0032】
カソード側セパレータ14の面14a、14bには、このカソード側セパレータ14の外周端部を周回して、第1シール部材42が設けられるとともに、アノード側セパレータ16の面16a、16bには、このアノード側セパレータ16の外周端部を周回して、第2シール部材44が設けられる。
【0033】
第1及び第2シール部材42、44には、例えば、EPDM、NBR、フッ素ゴム、シリコーンゴム、フロロシリコーンゴム、ブチルゴム、天然ゴム、スチレンゴム、クロロプレーン又はアクリルゴム等のシール材、クッション材、あるいはパッキン材が用いられる。
【0034】
図2に示すように、保護フイルム付き電解質膜・電極構造体12は、カソード電極20及びアノード電極22間に固体高分子電解質膜18を挟んだ発電部46と、電極触媒層20a、22aの外周端部20ae、22aeを含む領域を覆うエッジ部周辺48とを有する。エッジ部周辺48は、カソード側セパレータ14の凹部14c及びアノード側セパレータ16の凹部16cが設けられる範囲Lに対応する。
【0035】
燃料電池10では、この燃料電池10が積層された際、エッジ部周辺48における締め代は、発電部46における締め代よりも小さな寸法に設定される。具体的には、図4に示すように、燃料電池10の組立前において、保護フイルム付き電解質膜・電極構造体12の発電部46の厚さTam、カソード側セパレータ14の前記発電部46の厚さTac、アノード側セパレータ16の前記発電部46の厚さTaa、前記保護フイルム付き電解質膜・電極構造体12のエッジ部周辺48の厚さTbm、前記カソード側セパレータ14の前記エッジ部周辺48の厚さTbc及びアノード側セパレータ16の前記エッジ部周辺48の厚さTbaは、Tam+Tac+Taa>Tbm+Tbc+Tbaの関係に設定される。
【0036】
より好ましくは、Tam×0.8+Tac+Taa>Tbm+Tbc+Tbaの関係に設定される。さらに好ましくは、Tam×0.6+Tac+Taa>Tbm+Tbc+Tbaの関係に設定される。なお、燃料電池10が締め付けられた状態では、発電部46を含む前記燃料電池10の厚さ(セル厚さ)は、面圧で圧縮されることによりエッジ部周辺48を含む前記燃料電池10の厚さ(セル厚さ)と同一の寸法になる。
【0037】
エッジ部周辺48では、短尺側であるカソード電極20の外周端部20aeから凹部14c、16cの内周側端部までの距離L1と、長尺側であるアノード電極22の外周端部22aeから前記凹部14c、16cの外周側端部までの距離L2とが設定される。距離L1、L2は、好ましくは、0.1mm以上に設定され、さらに好ましくは、0.4mm以上に設定され、さらにまた好ましくは、2mm以上に設定される。
【0038】
このように構成される燃料電池10の動作について、以下に説明する。
【0039】
先ず、図1に示すように、酸化剤ガス入口連通孔30aに酸素含有ガス等の酸化剤ガスが供給されるとともに、燃料ガス入口連通孔34aに水素含有ガス等の燃料ガスが供給される。さらに、冷却媒体入口連通孔32aに純水やエチレングリコール、オイル等の冷却媒体が供給される。
【0040】
このため、酸化剤ガスは、酸化剤ガス入口連通孔30aからカソード側セパレータ14の酸化剤ガス流路36に導入され、矢印A方向に移動してMEA12aのカソード電極20に供給される。一方、燃料ガスは、燃料ガス入口連通孔34aからアノード側セパレータ16の燃料ガス流路38に導入される。燃料ガスは、燃料ガス流路38に沿って矢印A方向に移動し、MEA12aのアノード電極22に供給される。
【0041】
従って、各MEA12aでは、カソード電極20に供給される酸化剤ガスと、アノード電極22に供給される燃料ガスとが、電極触媒層内で電気化学反応により消費されて発電が行われる。
【0042】
次いで、カソード電極20に供給されて消費された酸化剤ガスは、酸化剤ガス出口連通孔30bに沿って矢印B方向に排出される。同様に、アノード電極22に供給されて消費された燃料ガスは、燃料ガス出口連通孔34bに沿って矢印B方向に排出される。
【0043】
また、冷却媒体入口連通孔32aに供給された冷却媒体は、カソード側セパレータ14とアノード側セパレータ16との間の冷却媒体流路40に導入された後、矢印A方向に流通する。この冷却媒体は、MEA12aを冷却した後、冷却媒体出口連通孔32bから排出される。
【0044】
この場合、第1の実施形態では、図2に示すように、カソード側セパレータ14には、カソード電極20の外周端部20aeを含むエッジ部周辺48を収容する凹部14cが設けられている。同様に、アノード側セパレータ16には、アノード電極22の外周端部22aeを含むエッジ部周辺48を収容する凹部16cが設けられている。
【0045】
その際、図4に示すように、燃料電池10の締め付け前には、Tam+Tac+Taa>Tbm+Tbc+Tbaの関係に設定されている。より好ましくは、Tam×0.8+Tac+Taa>Tbm+Tbc+Tba、さらに好ましくは、Tam×0.6+Tac+Taa>Tbm+Tbc+Tbaの関係に設定されている。
【0046】
このため、燃料電池10の締め付け後の固体高分子電解質膜18の面圧を、発電部面圧>エッジ部面圧に設定することができる。すなわち、図5に示すように、燃料電池10の厚さ(セル厚さ)と面圧との関係から、所望の発電部面圧及びエッジ部面圧に対応する締め付け後のセル厚さが算出される。
【0047】
従って、燃料電池10が締め付けされた際、エッジ部周辺48における締め代は、発電部46における締め代よりも小さな寸法に設定されている。これにより、発電部46では、発電性能を確保するために必要な面圧を確保する一方、エッジ部周辺48では、電極触媒層20a、22aの外周端部20ae、22aeに過剰な締め付け力がかかることを抑制することができる。
【0048】
このため、所望の発電性能を有するとともに、エッジ部である外周端部20ae、22aeによる固体高分子電解質膜18の破損を良好に抑制することが可能になるという効果が得られる。特に、図4に示すように、距離L1、L2は、好ましくは、0.1mm以上に設定され、さらに好ましくは、0.4mm以上に設定され、さらにまた好ましくは、2mm以上に設定されている。従って、固体高分子電解質膜18の損傷が可及的に抑制される。
【0049】
図6は、本発明の第2の実施形態に係る燃料電池60の要部分解斜視説明図である。なお、第1の実施形態に係る燃料電池10と同一の構成要素には、同一の参照符号を付して、その詳細な説明は省略する。また、以下に説明する第3以降の実施形態においても同様に、その詳細な説明は省略する。
【0050】
燃料電池60は、保護フイルム付き電解質膜・電極構造体62と、前記保護フイルム付き電解質膜・電極構造体62を挟持するカソード側セパレータ64及びアノード側セパレータ66とを備える。
【0051】
図7に示すように、保護フイルム付き電解質膜・電極構造体62は、MEA62aを備えるとともに、前記MEA62aは、固体高分子電解質膜18をカソード電極(第2電極)68とアノード電極(第1電極)70とにより挟持する。
【0052】
カソード電極68は、電極触媒層68aとガス拡散層68bとを設ける一方、アノード電極70は、電極触媒層70aとガス拡散層70bとを設ける。電極触媒層68a、70aは、固体高分子電解質膜18よりも小さな外形寸法に設定されるとともに、ガス拡散層68b、70bは、前記固体高分子電解質膜18と同一の外形寸法に設定される。
【0053】
アノード電極70を構成する電極触媒層70aの外周端部70aeは、カソード電極68を構成する電極触媒層68aの外周端部68aeよりも電極面方向外方に突出する寸法に設定される。なお、上記の構成とは逆に、カソード電極68の外周端部68aeを、アノード電極70の外周端部70aeよりも電極面方向外方に突出するように構成してもよい。
【0054】
保護フイルム付き電解質膜・電極構造体62は、固体高分子電解質膜18の両方の面18a、18bとガス拡散層68b、70bとの間に接合されるとともに、それぞれの内周縁部側が、電極触媒層68a、70aと前記ガス拡散層68b、70bとの間に接合される樹脂製枠部材からなる保護フイルム72a、72bを備える。
【0055】
カソード側セパレータ64は、MEA62aに接する外周縁部に外周端部68ae(エッジ部)を含むエッジ部周辺48を収容する凹部64cを設ける。アノード側セパレータ66は、MEA62aに接する外周縁部に外周端部70ae(エッジ部)を含むエッジ部周辺48を収容する凹部66cを設ける。
【0056】
図8に示すように、燃料電池60の組立前において、保護フイルム付き電解質膜・電極構造体62の発電部46の厚さTam、カソード側セパレータ64の前記発電部46の厚さTac、アノード側セパレータ66の前記発電部46の厚さTaa、前記保護フイルム付き電解質膜・電極構造体62のエッジ部周辺48の厚さTbm、前記カソード側セパレータ64の前記エッジ部周辺48の厚さTbc及びアノード側セパレータ66の前記エッジ部周辺48の厚さTbaは、Tam+Tac+Taa>Tbm+Tbc+Tbaの関係に設定される。
【0057】
より好ましくは、Tam×0.8+Tac+Taa>Tbm+Tbc+Tbaの関係に設定される。さらに好ましくは、Tam×0.6+Tac+Taa>Tbm+Tbc+Tbaの関係に設定される。なお、燃料電池60が締め付けられた状態では、発電部46を含む前記燃料電池60の厚さ(セル厚さ)は、エッジ部周辺48を含む前記燃料電池60の厚さ(セル厚さ)と同一の寸法になる。
【0058】
エッジ部周辺48では、短尺側であるカソード電極68の外周端部68aeから凹部64c、66cの内周側端部までの距離L3と、長尺側であるアノード電極70の外周端部70aeから前記凹部64c、66cの外周側端部までの距離L4とが設定される。距離L3、L4は、好ましくは、0.1mm以上に設定され、さらに好ましくは、0.4mm以上に設定され、さらにまた好ましくは、2mm以上に設定される。
【0059】
このように構成される第2の実施形態では、図7に示すように、カソード側セパレータ64には、エッジ部周辺48を収容する凹部64cが設けられるとともに、アノード側セパレータ66には、前記エッジ部周辺48を収容する凹部66cが設けられている。このため、燃料電池60は、所望の発電性能を有するとともに、エッジ部である外周端部68ae、70aeによる固体高分子電解質膜18の破損を良好に抑制することが可能になる等、上記の第1の実施形態と同様の効果が得られる。
【0060】
図9は、本発明の第3の実施形態に係る燃料電池80の要部断面説明図である。
【0061】
燃料電池80は、保護フイルム付き電解質膜・電極構造体12と、前記保護フイルム付き電解質膜・電極構造体12を挟持するカソード側セパレータ82及びアノード側セパレータ84とを備える。
【0062】
カソード側セパレータ82は、MEA12aに接する外周縁部に外周端部20aeを含むエッジ部周辺48を収容する凹部82cを設ける。アノード側セパレータ84は、MEA12aに接する外周縁部に外周端部22aeを含むエッジ部周辺48を収容する凹部84cを設ける。燃料電池80の締め付け状態では、凹部82cの内壁面とガス拡散層20bとの間に隙間S1が形成される一方、凹部84cの内壁面とガス拡散層22bとの間に隙間S2が形成される。
【0063】
このように構成される第3の実施形態では、所望の発電性能を有するとともに、エッジ部である外周端部20ae、22aeによる固体高分子電解質膜18の破損を良好に抑制することが可能になる等、上記の第1及び第2の実施形態と同様の効果が得られる。
【0064】
図10は、本発明の第4の実施形態に係る燃料電池90の要部断面説明図である。
【0065】
燃料電池90は、保護フイルム付き電解質膜・電極構造体62と、前記保護フイルム付き電解質膜・電極構造体62を挟持するカソード側セパレータ92及びアノード側セパレータ94とを備える。
【0066】
カソード側セパレータ92は、MEA62aに接する外周縁部に外周端部68aeを含むエッジ部周辺48を収容する凹部92cを設ける。アノード側セパレータ94は、MEA62aに接する外周縁部に外周端部70aeを含むエッジ部周辺48を収容する凹部94cを設ける。燃料電池90の締め付け状態では、凹部92cの内壁面とガス拡散層68bとの間に隙間S3が形成される一方、凹部94cの内壁面とガス拡散層70bとの間に隙間S4が形成される。
【0067】
このように構成される第4の実施形態では、所望の発電性能を有するとともに、エッジ部である外周端部68ae、70aeによる固体高分子電解質膜18の破損を良好に抑制することが可能になる等、上記の第1〜第3の実施形態と同様の効果が得られる。
【符号の説明】
【0068】
10、60、80、90…燃料電池
12、62…保護フイルム付き電解質膜・電極構造体
12a、62a…MEA
14、16、64、66、82、84、92、94…セパレータ
14c、16c、64c、66c、82c、84c、92c、94c…凹部
18…固体高分子電解質膜 20、68…カソード電極
20a、22a、68a、70a…電極触媒層
20ae、22ae、68ae、70ae…外周端部
20b、22b、68b、70b…ガス拡散層
22、70…アノード電極
24a、24b、72a、72b…保護フイルム
30a…酸化剤ガス入口連通孔 30b…酸化剤ガス出口連通孔
32a…冷却媒体入口連通孔 32b…冷却媒体出口連通孔
34a…燃料ガス入口連通孔 34b…燃料ガス出口連通孔
36…酸化剤ガス流路 38…燃料ガス流路
40…冷却媒体流路 46…発電部
48…エッジ部周辺

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ電極触媒層とガス拡散層とを有する第1電極及び第2電極が、固体高分子電解質膜の両側に設けられる電解質膜・電極構造体と、
前記電解質膜・電極構造体の両面に配置されるセパレータと、
を備える燃料電池であって、
前記電解質膜・電極構造体は、前記第1電極及び前記第2電極間に前記固体高分子電解質膜を挟んだ発電部と、
前記第1電極及び前記第2電極のそれぞれの電極触媒層外周端部間に前記固体高分子電解質膜を挟んだエッジ部と、
を有し、
前記セパレータには、前記電解質膜・電極構造体に接する面に、前記エッジ部を収容する凹部が形成されることを特徴とする燃料電池。
【請求項2】
請求項1記載の燃料電池において、前記第1電極を構成する電極触媒層の外周端部は、前記第2電極を構成する電極触媒層の外周端部よりも電極面方向外方に突出する寸法に設定されることを特徴とする燃料電池。
【請求項3】
請求項1又は2記載の燃料電池において、前記ガス拡散層の外周には、保護フイルムが設けられることを特徴とする燃料電池。
【請求項4】
請求項1又は2記載の燃料電池において、前記固体高分子電解質膜と前記ガス拡散層との間には、保護フイルムが設けられることを特徴とする燃料電池。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の燃料電池において、前記燃料電池が積層された際、前記エッジ部よりも電極面方向外方で前記電解質膜・電極構造体と前記セパレータとの間には、隙間が形成されることを特徴とする燃料電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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