説明

燃焼器ドームアセンブリ

【目的】 コアエンジンに衝突する鳥やその他の物体の作用に対して信頼性の高い保護を与えることのできる燃焼器ドームアセンブリを提供する。
【構成】 ガスタービンエンジンの燃焼器ドーム10の前方に装着されているエンジン用の耐衝撃性カウル構造52は、入ってくる破片を捕捉する凹状皿状中心部54と、中心部54と境を接しており、前方に突出している一対のエルボ56及び58と、エルボ56及び58から外方及び後方へ延在している装着レッグ60及び62とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、一般的にガスタービンエンジン燃焼器に関し、特に、鳥の衝突に対して耐衝撃性の燃焼器ドームに関する。
【0002】
【従来の技術】ガスタービンエンジン、例えば航空機エンジンに用いられている燃焼器は通常、板金(シート)燃焼ライナと、板金燃焼ドームアセンブリとを含んでいる。燃焼ライナは同心の環状外側及び内側燃焼ライナを含んでおり、環状外側及び内側燃焼ライナは、内部に環状(アンニュラ)燃焼ドームを画定するように、それらライナの上流端で環状ドームによって接合されている。ドームは、円周方向に隔設されており燃料/空気混合物を燃焼器に供給する複数の気化器(キャブレタ)を含んでいる。燃焼器に供給された燃料/空気混合物は、通常の手段で点火されて燃焼ガスを発生する。燃焼器には、その上流の圧縮機からの圧縮空気流が供給され、従って、ドームは高速圧縮空気流による圧力荷重を受ける。更に、燃焼器の構造は、エンジンの動作中、振動が激しく、部品の熱膨張を受けるため、種々の部品間に相対移動が生じる。
【0003】周知のように、飛行場によっては、地上運転中又は離陸時に、エンジンがその前方に強力な吸引作用を発揮し、場合によっては、鳥やその他の物体を吸込むことがある。現行の燃焼器ドームでは、エンジンコアに鳥の衝突を受けた場合、燃料ノズルがスワラからはずれることが時々あった。燃料ノズルに対してスワラが動くのは、一次スワラを支持している二次スワラの大きなベルマウス(ラッパ口)が、衝突を受けたときにモーメントアームとして作用するせいである。このようなモーメントアームは、スワラの中心の周りにモーメントを発生し、スワラを回転させる。すると、眼鏡型のドームプレートが変形し、燃料ノズルがはずれることになる。
【0004】
【発明の目的】従って、本発明の主要な目的は、コアエンジンに衝突する鳥やその他の物体の作用に対して信頼性の高い保護を与えることのできるガスタービンエンジン用の新規で改良された耐衝撃性燃焼器構造を提供することにある。本発明の他の目的は、コアエンジンに衝突する鳥やその他の物体の衝撃に対して燃焼器ドーム構造に信頼性の高い保護を与えることができ、しかも構造の簡単な航空機ガスタービンエンジン用の新規で改良されたカウル構造を提供することにある。
【0005】本発明の他の目的は、ガスタービンエンジンの燃焼器ドームの前方に配置されている耐衝撃性カウル構造であって、鳥の衝突時に衝撃エネルギで変形すると共に衝撃エネルギを吸収することのできる形状及び形状寸法を有しており、従って、燃焼器ドームを保護することのできる耐衝撃性カウル構造を提供することにある。
【0006】本発明の更に他の目的は、ガスタービンエンジンの燃焼器ドームの前方に配置されている耐衝撃性カウル構造であって、衝突する鳥の残骸や他の物体の破片をすべて捕捉でき、変形により破片を減速し、カウルに設けられている小さな空気孔を通して破片をろ過し、通過する破片をドームに付着させてドーム内で消尽させる(焼き尽くす)ことのできる形状及び形状寸法を有している耐衝撃性カウル構造を提供することにある。
【0007】
【発明の概要】従って、本発明の1つの観点によれば、ガスタービンエンジンの燃焼器ドームの前方に配置されている耐衝撃性カウル構造は、鳥の衝突時に衝撃エネルギで変形すると共に衝突エネルギを吸収することのできる形状及び形状寸法を有しており、これにより、燃焼器ドームを保護することができると共に、航空機の継続運転を保証することができる。
【0008】本発明の他の観点によれば、ガスタービンエンジンの燃焼器ドームの前方に配置されている耐衝撃性カウル構造は、コアエンジンに衝突する鳥やその他の物体から生じる破片をほぼすべて捕捉でき、変形により破片を減速し、カウルに形成されている小さな空気孔を通して破片をろ過し、通過する破片をドームに付着させてドーム内で消尽させることのできる形状及び形状寸法を有している。
【0009】本発明を更に明瞭にするために、以下に本発明の好適な実施例を図面を参照しながら説明する。
【0010】
【実施例】図1に航空機エンジンの現在の技術水準の環状(アンニュラ)型の燃焼器10を示す。燃焼器10は外壁12及び14を含んでおり、外側ライナ16と、内側ライナ18と、ドームプレート28と、外側カウル34と、内側カウル36とが、外壁12及び14内で環状燃焼室13を画定している。カウル34及び36はドームプレート28、並びにライナ16及び18に、例えばボルト30及び32によって固定して連結されている。外側ライナ16及び内側ライナ18の各々は複数の冷却孔50を含んでおり、空気は複数の冷却孔50を通して燃焼室13に供給され、一方、外壁12及び14と、それらにそれぞれ隣接しているライナ16及び18との間に形成されている外側通路15及び内側通路17を通して、冷却空気が、タービンブレードを含んでいるタービン内の種々の冷却通路に供給される。燃料は燃料ノズル弁20、そして燃料ノズルステム22を通して、燃料ノズル24に供給される。燃料ノズル24は燃料カップアセンブリ26に着脱自在に挿入されている。圧縮空気が矢印11で示すように圧縮機(図示せず)から流入し、圧力下で燃焼室13に向かって流れる。燃料カップアセンブリ26は通常、一次スワラ46と、一次スワラフランジ47と、ディスク形状の装着フランジ40を有しているベンチュリ38とを含んでいる。保持リング49が、スワラフランジ47を装着フランジ40と滑り接触関係に保持するために、フランジ40に溶接されている。燃料カップアセンブリ26は更に、二次スワラ48と、スリーブ42と、スプラッシュプレート44とを含んでいる。上述した燃焼器10及び燃料カップアセンブリ26の種々の要素の機能及び相互作用は、当業界で周知であり、多数の刊行物の主題となっている。
【0011】経験上、エンジンに入った鳥は360°の円にわたって展開された圧縮機から出て来ない。その代わりに、鳥の残骸(破片)は圧縮機内を比較的まっすぐな直線に沿って移動し、燃料カップ2つ分か、3つ分の幅の区域で燃焼器にぶつかる。この鳥の残骸は内側カウル36にぶつかり、内側カウル36を変形させると共に、一次スワラ46に接触させるおそれがある。或いは又、鳥の残骸は内側カウル36と外側カウル34との間を通過し、保持リング49と一次スワラフランジ47とによって形成されている大径の「ベルマウス」(ラッパ状)表面にぶつかるおそれがある。大径のベルマウスへの荷重は、ドームプレート28に大きな曲げモーメントを生じる。ドームプレート28に伝えられた力とモーメントとは、ドームプレート28を座屈させる。このようにドームプレート28が歪む結果、燃料カップアセンブリ26が回転し、燃料ノズル24が一次スワラ46に設けられている穴25からはずれる可能性がある。ベルマウスの回転とドームプレート28の座屈とは、半径方向軸線の周りだけでなく、種々の軸線の周りに起こる。
【0012】本発明によるエネルギ吸収型のカウル52を、図2に装着状態で、又、図3に斜視図としてそれぞれ示す。尚、図3はカウル52の切除した一部を示すが、カウル52は複数のセグメントにも、(好ましくは)連続な単一リング形状にも製造できる。本発明の好ましくは一部品の凹状カウル52は、燃料カップアセンブリ26とほぼ心合わせされている中心皿状又は凹状部54を含んでおり、中心凹状部54は圧縮機を通過した鳥やその他の異物の破片を捕捉すると共に、そこに保持し、そして衝撃下で変形することにより破片を減速する。このことは、本発明のカウル52の有利且つ重要な特徴である。後述するように、破片を捕捉し、その消尽を促進することにより、そのような破片が通路15及び17にそれて流れるのを防止できるからである。その上、カウル52は孔50及びタービンの残りの冷却通路が詰まるのを防止する。これに対して、従来の凸状又はブラント(のっぺらぼうの)ノーズのカウルは、入って来た破片が通路15及び17にそれて流れるのを助ける。カウル52の凹状部54は内側エルボ60及び外側エルボ62と境を接しており、内側エルボ60及び外側エルボ62はそれぞれ内側レッグ部56及び外側レッグ部58に滑らかに移行している。内側レッグ部56及び外側レッグ部58は、図2から明らかなように、下流方向に半径方向外向きに広がっている。図3に示すように、内側レッグ部56及び外側レッグ部58のエッジ部には、装着する目的でボルト30及び32を挿通できるように、複数のボルト孔68があけられている。窓状の切り込み64は燃料ノズル24を装着するための開口である。小さな孔66は補助燃焼空気を取り込むと共に、衝撃時に破片に対するスクリーン又はフィルタの役目を果たす。燃焼器10にぶつかる鳥の残骸は通常、ゼリー状の軟度を有している。従って、鳥の破片のかたまりは、カウル52に当たると、カウル52を変形させ、それ自身のエネルギを失い、小さな冷却孔66を抜け出て、それからドーム28に付着し、燃焼される。
【0013】凹状のカウル構造52は、入って来る破片を捕捉し、保持し、そして消尽することができるだけでなく、衝撃下で変形してエネルギを吸収することもできる。これにより、燃焼器ライナ16及び18に隣接して支持されている下流の要素、例えば高圧タービンノズルへの損傷を防止する。切り込み64は、一次スワラ46の前方直径(図2にR2で示す)より大きな寸法(図2にR1で示す)とすることが好ましく、そうすれば、カウル52が変形する際に、カウル52は一次スワラ46に接触しない。カウル52は、一次スワラ46に接触するのではなく、一次スワラ46の前方部の周りで変形する。従って、荷重はスワラ46及び48にも、ドームプレート28にも伝えられない。
【0014】本発明の好適な実施例と考えられるものを説明したが、以上の教示から本発明の他の変形例も当業者には明らかであり、従って、特許請求の範囲にはこのような変形例も包含されるものである。具体的には、本発明のカウル52は、ドーム開口の円周方向列を2列以上有している環状燃焼器(即ち、二重及び三重環状燃焼器)に適用するように変更することができる。この場合、カウル52の凹状部54は、ドーム開口の円周方向列を半径方向に横切って延在しており、一方、窓状の切り込み64及び冷却孔66は図3に示す通りである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を適用可能である現在の技術水準のガスタービンエンジンの燃焼器の領域を示す概略部分断面図である。
【図2】燃焼器ドームの前方に装着されている本発明による新規で改良されたカウル構造を示す概略部分断面図である。
【図3】本発明による新規で改良されたカウル構造の一部を示す斜視図である。
【符号の説明】
10 燃焼器
26 燃料カップアセンブリ
28 ドームプレート
38 ベンチュリ
42 スリーブ
44 スプラッシュプレート
46 一次スワラ
48 二次スワラ
50 冷却孔
52 カウル
54 中心凹状部
56 内側レッグ
58 外側レッグ
60 内側エルボ
62 外側エルボ

【特許請求の範囲】
【請求項1】 円周方向に隔設されている少なくとも一列の開口を有している環状ドームプレートと、該ドームプレートの開口の各々に取り付けられており、ベンチュリと、スリーブと、スプラッシュプレートと、一次スワラと、二次スワラとを含んでいる燃料カップアセンブリと、前記ドームプレートの半径方向の内端及び外端に連結されており、当該燃焼器ドームアセンブリに衝突する破片を捕捉する中心部を含んでいるカウルとを備えた燃焼器ドームアセンブリ。
【請求項2】 前記カウルの中心部は、凹状であり、前記燃料カップアセンブリの上流に中心を置かれていると共に前記燃料カップアセンブリとほぼ心合わせされている請求項1に記載の燃焼器ドームアセンブリ。
【請求項3】 前記カウルの中心部は、燃料供給手段が前記燃料カップアセンブリまで通り抜けられるように窓状の切り込み部を含んでいる請求項1に記載の燃焼器ドームアセンブリ。
【請求項4】 前記カウルは、前記中心部と境を接しており上流に突出している一対のエルボ部を含んでいる請求項2に記載の燃焼器ドームアセンブリ。
【請求項5】 前記カウルのエルボ部は、下流方向に半径方向外向きに広がっているレッグ部に移行している請求項4に記載の燃焼器ドームアセンブリ。
【請求項6】 前記カウルの中心部は、当該燃焼器ドームアセンブリに補助燃焼空気を供給すると共に当該燃焼器ドームアセンブリへの破片をろ過する複数の通路を含んでいる請求項3に記載の燃焼器ドームアセンブリ。
【請求項7】 前記窓状の切り込み部は、前記一次スワラの前方半径より大きい半径方向広さを有している請求項3に記載の燃焼器ドームアセンブリ。
【請求項8】 前記カウルは、該カウルに衝突する破片又はその他の物体に起因する衝突エネルギを吸収すべく、前記中心部と、前記エルボ部と、前記レッグ部とにより画定されている形状寸法を有している請求項5に記載の燃焼器ドームアセンブリ。
【請求項9】 前記カウルは、破片又はその他の物体の衝撃荷重を受けた際に該衝撃荷重が前記ドームプレートに伝えられないように、前記一次スワラに接触しない該カウルの変形を可能にすべく、前記中心部と、前記エルボ部と、前記レッグ部とにより画定されている形状寸法を有している請求項5に記載の燃焼器ドームアセンブリ。
【請求項10】 前記環状ドームプレートは、円周方向に隔設されている内側列及び外側列の開口を有している請求項1に記載の燃焼器ドームアセンブリ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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