説明

燃焼式水質測定装置

【課題】ガス流路内に詰まりが生じ始めているか否かや、流路のどの部分に詰まりが生じているのかを容易に発見することができる燃焼式水質測定装置を提供する。
【解決手段】燃焼式水質測定装置の除湿部4は、気液分離器41と、除湿器42と、水封器43とを備え、気液分離器41のオーバーフロー管41cと除湿器42のドレン排出管42bは、いずれも水封器43に接続され、排出口は水封されている。燃焼管31から測定部5に至るまでのガス流路内は、キャリヤガス供給部2により一定の圧力が加えられたガスが流れるため、大気圧よりも高い圧力を有し、オーバーフロー管41cとドレン排出管42bの排出口の水位は、水封器43内に収納されている液体の液面よりも低い位置にある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料水を燃焼させて得られるガスを測定し、試料水中に含まれる成分を測定する燃焼式水質測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、排水や環境水等の水質の指標を示す物質の含有量を測定する装置として、試料水を燃焼させて得られるガスを測定する燃焼式水質測定装置が知られている。このような燃焼式水質測定装置としては、例えば、排水や湖沼等の環境水についての全窒素量を測定する全窒素測定装置や、排水、環境水又は洗浄水や冷却水等の各種プラント水等、種々の試料水中の有機物量を表す指標である全有機体炭素(TOC)や全酸素要求量(TOD)を測定する全有機体炭素測定装置や全酸素要求量測定装置等が使用されている。
【0003】
具体的には、全窒素測定装置では、試料水中の窒素を酸化させて一酸化窒素とし、この一酸化窒素をオゾンガスと反応させて化学発光ガス測定部で測定することにより、試料水中の全窒素量を測定する。また、全有機体炭素測定装置では、試料水中の炭素を酸化させて二酸化炭素とし、この二酸化炭素を赤外線式ガス検出器で測定することにより、試料水中の全有機体炭素量を測定する。また、全酸素要求量測定装置では、試料水を燃焼させたときに消費される酸素量を酸素ガス検出器で測定することにより、試料水の全酸素要求量を測定する。
【0004】
試料水を燃焼させるための燃焼部としては、試料水が導入される燃焼管とこれを加熱する加熱炉とを組み合わせたものが用いられている。試料水中の被測定成分を完全に燃焼(酸化)させるために、燃焼管には通常、燃焼を助けるための触媒が充填されている。また、燃焼管は、加熱炉により600℃〜900℃程度に加熱される。燃焼管内で燃焼しガス化した試料は、キャリヤガスによって除湿器に導入されて除湿された後、測定部に導入され測定される(例えば、特許文献1又は特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−249140号公報
【特許文献2】特開2007−263814号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような燃焼式水質測定装置では、燃焼時の灰や煤がガス化した試料とともにキャリヤガスによって運ばれ、また、ガス中の無機塩が結晶化して、ガス流路に詰まりを生じさせることがある。その結果、測定ができなくなり、欠測となってしまうという問題があった。また、この場合、燃焼管出口から測定部までのどの部分に詰まりが生じているのかは、分解して点検してみなければわからず、メンテナンスに手間と時間がかかるという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を達成するために、本発明は、以下の構成を採用した。
[1]加熱炉にて加熱される燃焼管と、前記燃焼管内に一定の圧力でキャリヤガスを供給するキャリヤガス供給部と、を備え、前記燃焼管内へと滴下された試料水を燃焼させて得られるガス中に含まれる成分を測定する燃焼式水質測定装置において、容器内に収納された液体に前記燃焼管から流出したガスを通過させることにより気液分離を行う気液分離器と、前記気液分離器から流出したガスの除湿をする除湿器と、前記気液分離器のオーバーフロー管と前記除湿器のドレン排出管のいずれもが接続され、これらの排出口を水封する水封器と、を備えることを特徴とする燃焼式水質測定装置。
[2]前記オーバーフロー管及び前記ドレン排出管は、透明又は半透明の素材により構成され、前記水封器は、少なくとも側面部が透明又は半透明の素材により構成されていることを特徴とする[1]に記載の燃焼式水質測定装置。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、水封された気液分離器のオーバーフロー管と除湿器のドレン排出管のそれぞれの排出口の水位を点検することにより、ガス流路内に詰まりが生じ始めているか否かが容易にわかるため、測定ができなくなる前(例えば、試薬の補充や定期点検等の際等)にあらかじめ対処することができる。また、流路のどの部分に詰まりが生じているのかが容易にわかるため、メンテナンスの工数を短縮することができる。
さらに、本発明によれば、気液分離器のオーバーフロー管と除湿器のドレン排出管のそれぞれの排出口を水封する機構を1つにまとめることができるため、部品点数の削減及びコストダウンを図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施形態に係る全有機体炭素測定装置の概略構成図である。
【図2】水封器内の液体の水位と、オーバーフロー管及びドレン排出管の排出口の水位の関係を説明する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。
図1に示すように、本実施形態の全有機体炭素測定装置は、試料水の前処理や滴下を行う試料水導入部1と、一定の圧力及び一定の流量でキャリヤガスを供給するキャリヤガス供給部2と、試料水を燃焼させる燃焼部3と、ガス化した試料を除湿する除湿部4と、ガス化した試料を測定する測定部5とを備えている。
【0011】
試料水導入部1は、試料水を装置内に導入する試料水入口を有し、試料水の希釈及び試料水中の無機体炭素(IC)の除去を行う希釈・IC除去槽(図示せず)や、希釈等の前処理が終わった試料水を、後述する燃焼管31内へと滴下する滴下部(図示せず)を備えている。
【0012】
キャリヤガス供給部2は、キャリヤガスの供給源である精製空気ボンベ21と、キャリヤガスの供給圧力を制御する調圧弁22と、キャリヤガスの流量を制御するフローコントローラ23と、キャリヤガスを燃焼管31内へ導入するキャリヤガス導入管24とを備えている。このキャリヤガスは、燃焼に必要な酸素ガスを燃焼管31内に供給すると共に、燃焼後のガス(試料ガス)を測定部5に導入するためのものである。
【0013】
したがって、キャリヤガス供給源は、精製空気ボンベ21に限定されるものではなく、二酸化炭素、ダスト、オイルミスト、水滴、燃焼により二酸化炭素を発生する物質等を含まないものであればよい。例えば、計装エアを精製(燃焼させて不純物を除去した後にソーダライム管で二酸化炭素を除去する等)して供給することや、窒素ボンベと酸素ボンベとを組み合わせてこれらのガスを混合して供給することもできる。
また、燃焼管31から測定部5に至るガス流路は、外部空気とは遮断され、試料ガスに外部空気が混入しないようになっている。
【0014】
燃焼部3は、試料水が滴下される燃焼管31と、これを加熱する加熱炉32とを備えている。また、試料水中の被測定成分を完全に燃焼(酸化)させるために、燃焼管内には燃焼を助けるための触媒が充填されている(図示せず)。
燃焼管31は、加熱炉32により600℃〜900℃程度に加熱される。これにより、滴下された試料水は気化し、試料水中に含まれる成分は燃焼(酸化)してガス化し、燃焼管31から流出する。
【0015】
除湿部4は、気液分離器41と、除湿器42と、水封器43とを備えている。
気液分離器41は、燃焼管31から流出した試料ガスを導入するガス導入管41aと、気液分離後のガスが流出するガス流出管41bと、気液分離により増加した水分を排出するオーバーフロー管41cとを備えている。オーバーフロー管41cは、内部が目視できるように透明素材(例えば、透明樹脂製のチューブ)により構成されている。また、気液分離器41の内部には、液体(純水又は希塩酸溶液)が収納されていて、試料ガスがこの液体中を通過することによって気液分離が行われる。このため、ガス導入管41aの開口部は、液体の液面よりも下方に配置されている。換言すると、ガス導入管41aは、オーバーフロー管41cよりも下方に配置されている。
【0016】
燃焼部3と除湿部4の間に配置されたバッファタンク60は、燃焼部3から流出した試料ガスを一時的に滞留させて温度を下げるためのものであるとともに、気液分離器41内の液体が燃焼部3へ引き込まれることを防止するためのものである。
【0017】
除湿器42には、ガス流出管41bが接続され、気液分離器41から流出した試料ガスが除湿器42に導入されるようになっている。除湿器42は、除湿した試料ガスを測定部5へ移送する移送管42aと、除湿により試料ガスから分離した水分を排出するドレン排出管42bとを備えている。ドレン排出管42bは、内部が目視できるように透明素材(例えば、透明樹脂製のチューブ)により構成されている。
【0018】
水封器43の内部には液体(純水又は希塩酸溶液)が収納されている。この液体は、ガス流路に外部空気が入り込むのを防ぐために、オーバーフロー管41c及びドレン排出管42bの排出口を水封するものである。また、水封器43は、少なくとも側面部が透明素材(例えば、透明PVCやアクリル樹脂等)により構成されていて、内部が目視できるようになっている。さらに、水封器43は、大気開放口43aと、オーバーフロー管41c及びドレン排出管42bからの流入により増加した水分を排出する排水管43bとを備えている。
【0019】
測定部5は、試料ガス中のハロゲン物質を除去するためのハロゲンスクラバー(図示せず)と、試料ガス中の二酸化炭素量を測定する赤外線式ガス検出器(図示せず)とを備えている。また、赤外線式ガス検出器は、大気開放されたガス排出口を備え、測定後の試料ガスを抵抗なく排出することができるようになっている。
【0020】
次に、本実施形態の全有機体炭素測定装置の動作について説明する。
本実施形態の全有機体炭素測定装置は、所定のタイミングで試料水の希釈及び試料水中の無機体炭素(IC)の除去を行い、これら前処理の終了した試料水を燃焼管31内へと一定量滴下する。試料水は、例えば、1回30〜40μLの滴下量にて、5〜6秒間隔で、合計2.8mLが燃焼管31内に滴下される。滴下量は、試料水中の有機物の量や測定部5の感度、加熱炉32の能力等により、適宜決定することができる。
【0021】
滴下された試料水は、600℃〜900℃程度に加熱された燃焼管31内で気化され、試料水中に含まれる成分は燃焼(酸化)されガス化される。燃焼管31内には、キャリヤガス供給部2から一定の圧力及び一定の流量でキャリヤガスが供給されている。このため、燃焼後のガス(試料ガス)は、燃焼管31から流出する。
【0022】
燃焼管31から流出した試料ガスは、バッファタンク60を介してガス導入管41aから気液分離器41内の液体中に導入される。試料ガスは液体により冷却され、ガス中の水蒸気は凝縮し、水分が液体中にトラップされる。また、IC除去の際に加えられた塩酸がトラップされる。
トラップされた水分により気液分離器41内の液体量が増加すると、オーバーフロー管41cから排出される。
【0023】
気液分離された試料ガスは、ガス流出管41bを介して除湿器42に導入される。除湿器42内で、試料ガスはさらに冷却されて水分が除去される。除湿器42内で除去された水分はドレン排出管42bから排出される。
除湿された試料ガスは、移送管42aを介してハロゲンスクラバーに導入され、ハロゲン物質が除去される。その後、試料ガスは、赤外線式ガス検出器に導入されて二酸化炭素量が測定される。赤外線式ガス検出器で測定された試料ガスは、大気開放されたガス排出口から排出される。
【0024】
オーバーフロー管41cとドレン排出管42bは、いずれも水封器43に接続され、排出口は水封されている。すなわち、これら排出口からガス流路内に外部空気が入り込むのを防ぐために、排出口(開口部)は水封器43に収納された液面下に位置している。
燃焼管31から測定部5に至るまでのガス流路内は、キャリヤガス供給部2により一定の圧力が加えられたガスが流れるため、大気圧よりも高い圧力を有している。このため、オーバーフロー管41cとドレン排出管42bの排出口の水位は、水封器43内に収納されている液体の液面よりも低い位置にある。
【0025】
図2は、水封器43内の液体の水位と、オーバーフロー管41cとドレン排出管42bの排出口の水位の関係を説明するものである。
図2(a)は、通常の状態における水位の関係を表す図である。すなわち、試料ガスは一定圧力のキャリヤガスにより運ばれ、検出器から排気されるため、ガス流路に詰まりがない場合には、オーバーフロー管41cの入口にかかる圧力(気液分離器41内の圧力)と、ドレン排出管42bの入口にかかる圧力(除湿器42内の圧力)とはほぼ等しい。したがって、水封器内のこれらの排出口の水位h、h’は、ほぼ同一に保たれることとなる。
【0026】
図2(b)は、ガス流出管41b又は/及び除湿器42の内部に詰まりが生じ始めた場合の水位の関係を表す図である。
気液分離器41から除湿器42に至るガス流路であるガス流出管41b又は/及び除湿器42に詰まりが生じ始めると、気液分離器41内の圧力が高まる。このため、オーバーフロー管41c内の水位h1は、通常水位hよりも下がる。一方、ドレン排出管42b内の水位h1’は通常水位h’より上がる。
【0027】
図2(c)は、移送管42a又は/及び測定部5の内部(例えば、ハロゲンスクラバー)に詰まりが生じ始めた場合の水位の関係を表す図である。
除湿器42よりも下流の流路に詰まりが生じ始めると、流路全体の圧力が高まり、気液分離器41内の圧力も、除湿器42内の圧力も高くなる。このため、オーバーフロー管41c内の水位h2も、ドレン排出管42b内の水位h2’も通常水位h、h’より下がる。
【0028】
以上のように、本実施形態の全有機体炭素測定装置によれば、目視によりガス流路の詰まりの発生を発見することができる。このため、測定ができなくなる前(例えば、試薬の補充や定期点検の際等)にあらかじめ対処することができる。また、流路のどの部分に詰まりが生じているのかが容易にわかるため、メンテナンスの工数を短縮することができる。さらに、水封器43を1つにすることができるため、部品点数の削減及びコストダウンを図ることができる。
【符号の説明】
【0029】
1…試料水導入部、2…キャリヤガス供給部、3…燃焼部、4…除湿部、5…測定部、31…燃焼管、32…加熱炉、41…気液分離器、41a…ガス導入管、41b…ガス流出管、41c…オーバーフロー管、42…除湿器、42a…移送管、42b…ドレン排出管、43…水封器、43a…大気開放口、43b…排水管



【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱炉にて加熱される燃焼管と、前記燃焼管内に一定の圧力でキャリヤガスを供給するキャリヤガス供給部と、を備え、前記燃焼管内へと滴下された試料水を燃焼させて得られるガス中に含まれる成分を測定する燃焼式水質測定装置において、
容器内に収納された液体に前記燃焼管から流出したガスを通過させることにより気液分離を行う気液分離器と、
前記気液分離器から流出したガスの除湿をする除湿器と、
前記気液分離器のオーバーフロー管と前記除湿器のドレン排出管のいずれもが接続され、これらの排出口を水封する水封器と、を備えることを特徴とする燃焼式水質測定装置。

【請求項2】
前記オーバーフロー管及び前記ドレン排出管は、透明又は半透明の素材により構成され、
前記水封器は、少なくとも側面部が透明又は半透明の素材により構成されていることを特徴とする請求項1に記載の燃焼式水質測定装置。



【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2010−210447(P2010−210447A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−57236(P2009−57236)
【出願日】平成21年3月11日(2009.3.11)
【出願人】(000219451)東亜ディーケーケー株式会社 (204)
【Fターム(参考)】