説明

燃焼性ガスの検知方法および検知装置

【課題】被検査ガスが空気が未知の割合で混入されたものであっても、被検査ガスにおける燃焼性ガスの検出、および当該被検査ガスを構成する燃焼性ガスの燃焼熱量の検知を容易に行うことのできる燃焼性ガスの検知方法、および燃焼性ガスの検知装置を提供すること。
【解決手段】燃焼性ガスの検知方法は、空気と共に採取される、パラフィン系炭化水素ガスよりなる燃焼性ガス(以下、「パラフィン系ガス」という。)を含有する可能性のある被検査ガスの屈折率および密度を測定し、得られた屈折率の値n1の空気の屈折率の値n0との差△n(n1−n0)と、得られた密度の値d1の空気の密度の値d0との差△d(d1−d0)とから算出される比(△d/△n)に基づいて、予め取得された、パラフィン系ガスの屈折率に対する密度の比と、当該燃焼性ガスの燃焼熱量との相関関係から、被検査ガスを構成する燃焼性ガスの熱量を求めることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃焼性ガスの検知方法および検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から地下工事現場などにおいて、地中に埋設されている都市ガスの供給配管などからのガス漏れを地表において検出することが爆発事故の発生を防ぎ、現場の安全性を図る上で必要とされているが、メタンガスは地中において自然発生することがあるため、地表において検出される燃焼性ガスがガス漏れによるものか、あるいは自然発生したものであるのかを確認することも必要である。
【0003】
而して、メタンを主成分として含有する都市ガスの供給配管からのガス漏れを地表において検出するための装置として、メタンガスを主成分とする都市ガスにはエタンガス、プロパンガスおよびブタンガスが副成分として含有されていることを利用した構成のもの、具体的には、エタンガス、プロパンガスおよびブタンガス(以下、これらをまとめて「分離検出対象ガス」ともいう。)を分離検出する機能を有する検出手段を備え、この検出手段によって分離検出対象ガスが検出されない場合において、地表に存在する燃焼性ガスが都市ガスの供給配管からのガス漏れに起因するものでなくて自然発生したものであると判断する構成のものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
しかしながら、このような構成の装置は、被検査ガスを分離解析する必要があることから、被検査ガスを構成する燃焼性ガスの種類(組成)あるいは燃焼熱量などの詳細な情報を得ようとする場合には、分離解析の結果に基づいて燃焼性ガスの種類を判別し、また燃焼性ガスの燃焼熱量を算出しなくてはならないことから、分離検出対象ガスの検出と燃焼性ガスの種類の判別などとを同時に行うことができず、そのため、広域にわたる調査を短時間で行うことは困難である。
【0005】
また、メタンガスを選択的に検知可能なセンサと、燃焼性ガスを検知可能なセンサとを備え、これらの2つのセンサの出力値の差から得られる被検査ガス中におけるメタンガスの存在濃度に基づいて被検査ガスを構成する燃焼性ガスの種類の判別を行う構成の装置が提案されているが(特許文献2参照。)、このような装置においては、被検査ガスを構成する燃焼性ガスが、メタンガス、液化石油ガス、またはその他の燃焼性ガスであるかを識別することしかできず、そのため、特に被検査ガスを構成する燃焼性ガスがメタンガスおよび液化石油ガス以外のその他の燃焼性ガスであると識別された場合には、その燃焼性ガスについて、例えば種類(組成)あるいは燃焼熱量などの詳細な情報を得ることは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−53404号公報
【特許文献2】特開2001−141681号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は以上のような事情に基づいて、本発明者らが、都市ガスの供給配管からのガス漏れを地表において検出するための手法について研究を重ね、パラフィン系炭化水素ガスよりなる燃焼性ガスにおいては、屈折率に対する密度の比と、燃焼熱量との間に相関関係があることを見出した結果なされたものである。
本発明の目的は、被検査ガスが空気が未知の割合で混入されたものであっても、被検査ガスにおける燃焼性ガスの検出、および当該被検査ガスを構成する燃焼性ガスの燃焼熱量の検知を容易に行うことのできる燃焼性ガスの検知方法、および燃焼性ガスの検知装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の燃焼性ガスの検知方法は、空気と共に採取される、パラフィン系炭化水素ガスよりなる燃焼性ガスを含有する可能性のある被検査ガスの屈折率および密度を測定し、得られた屈折率の値n1から求められる当該屈折率の値n1の空気の屈折率の値n0との差△n(n1−n0)と、得られた密度の値d1から求められる当該密度の値d1の空気の密度の値d0との差△d(d1−d0)とから算出される、これらの比(△d/△n)に基づいて、
予め取得された、パラフィン系炭化水素ガスよりなる燃焼性ガスの屈折率に対する密度の比と、当該燃焼性ガスの燃焼熱量との相関関係から、被検査ガスを構成する燃焼性ガスの熱量を求めることを特徴とする。
【0009】
本発明の燃焼性ガスの検知方法においては、前記被検査ガスの密度の値d1を被検査ガスの音速を測定することによって求めることが好ましい。
【0010】
本発明の燃焼性ガスの検知装置は、空気と共に採取される、パラフィン系炭化水素ガスよりなる燃焼性ガスを含有する可能性のある被検査ガスの屈折率を測定するための屈折率測定機構、被検査ガスの密度を測定するための密度測定機構、および燃焼性ガス検知機構を備えており、
前記燃焼性ガス検知機構が、予め取得された、パラフィン系炭化水素ガスよりなる燃焼性ガスの屈折率に対する密度の比と、当該燃焼性ガスの燃焼熱量との相関関係に基づいて、前記屈折率測定機構において得られた被検査ガスの屈折率の値n1の空気の屈折率の値n0との差△n(n1−n0)と前記密度測定機構において得られた被検査ガスの密度の値d1の空気の密度の値d0との差△d(d1−d0)との比(△d/△n)を、当該相関関係に照合することにより、被検査ガスを構成する燃焼性ガスの熱量を求める機能を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の燃焼性ガスの検知方法においては、パラフィン系炭化水素ガスよりなる燃焼性ガスと空気とを含有するガスにおいて、当該ガスの屈折率の値と空気の屈折率との差に対する、当該ガスの密度の値と空気の密度との差の比が、空気の含有の如何およびその含有割合によらず、含有されている燃焼性ガスの種類(組成)、具体的には燃焼性ガスの燃焼熱量に応じて一定の範囲となるものであり、しかも、その比が、当該燃焼性ガスの燃焼熱量と相関関係を有するものであることを利用することにより、測定によって得られた被検査ガスの屈折率の値n1の空気の屈折率の値n0との差△n(n1−n0)および密度の値d1の空気の密度の値d0との差△d(d1−d0)の比(△d/△n)に基づいて、被検査ガスを構成する燃焼性ガスの燃焼熱量を求めることができる。
従って、本発明の燃焼性ガスの検知方法によれば、被検査ガスが未知の割合で空気が混入されたものであっても、被検査ガスの屈折率および密度を測定し、得られた屈折率の値n1の空気の屈折率の値n0との差△n(n1−n0)、および得られた密度の値d1の空気の密度の値d0との差△d(d1−d0)を求め、それらの比の値(比(△d/△n))から、パラフィン系炭化水素ガスよりなる燃焼性ガスにおける屈折率に対する密度の比と燃焼熱量と相関関係を利用することによって容易に燃焼熱量を得ることができ、また、その燃焼熱量の値あるいは比(△d/△n)の値に基づいて被検査ガスにおける燃焼性ガスの検出が行われるため、被検査ガスにおける燃焼性ガスの検出および当該被検査ガスを構成する燃焼性ガスの燃焼熱量の検知を容易に行うことができる。
【0012】
本発明の燃焼性ガスの検知装置によれば、被検査ガスの屈折率および密度を測定するための屈折率測定機構および密度測定機構と共に設けられている燃焼性ガス検知機構が、パラフィン系炭化水素ガスよりなる燃焼性ガスにおける屈折率に対する密度の比と燃焼熱量と相関関係を利用することにより、前記の本発明の燃焼性ガスの検知方法に基づいて被検査ガスを構成する燃焼性ガスの燃焼熱量を検知するものであることから、被検査ガスが空気が未知の割合で混入されたものであっても、検査ガスにおける燃焼性ガスの検出および当該被検査ガスを構成する燃焼性ガスの燃焼熱量の検知を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の燃焼性ガスの検知装置を構成する密度測定機構として用いられる装置の構成の一例を示す説明図である。
【図2】実験例1において得られた、パラフィン系炭化水素系ガスよりなる燃焼性ガスを含有するガスの屈折率の値の空気の屈折率の値との差と、当該燃焼性ガスの含有割合との関係を示すグラフである。
【図3】実験例1において得られた、パラフィン系炭化水素系ガスよりなる燃焼性ガスを含有するガスの密度の値の空気の密度の値との差と、当該燃焼性ガスの含有割合との関係を示すグラフである。
【図4】実験例1において得られた、パラフィン系炭化水素ガスよりなる燃焼性ガスを含有するガスの含有割合と、当該ガスの屈折率の値と空気の屈折率の値との差に対する、当該ガスの密度の値と空気の密度の値との差の比の値との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の燃焼性ガスの検知方法は、空気と共に採取される、パラフィン系炭化水素ガスよりなる燃焼性ガスを含有する可能性のあるガスを被検査ガスとするものであり、被検査ガスの屈折率および密度を測定し、測定された被検査ガスの屈折率の値n1と、被検査ガスの密度の値d1とに基づいて、当該被検査ガスを構成する燃焼性ガスの燃焼熱量を検知することを特徴とするものである。
【0015】
本発明の燃焼性ガスの検知方法において、被検査ガスの屈折率の値n1および密度の値d1に基づいて当該被検査ガスを構成する燃焼性ガスの燃焼熱量を検知する手法は、先ず、測定された被検査ガスの屈折率の値n1および密度の値d1とから、それぞれ被検査ガスの屈折率の値n1の空気の屈折率の値n0との差△n(n1−n0)(以下、「屈折率差△n」ともいう。)および被検査ガスの密度の値d1の空気の密度の値d0との差△d(d1−d0)(以下、「密度差△d」ともいう。)を求め、これらの比、具体的には屈折率差△nに対する密度差△dの比(△d/△n)(以下、「特性値C1」ともいう。)を求め、次いで、得られた被検査ガスの特性値C1に基づいて、予め取得された、パラフィン系炭化水素ガスよりなる燃焼性ガスの屈折率に対する密度の比と、当該燃焼性ガスの燃焼熱量との相関関係(以下、「比(密度/屈折率)−熱量相関関係」ともいう。)から、具体的には、比(密度/屈折率)−熱量相関関係に対して被検査ガスの特性値C1を照合することにより、被検査ガスを構成する燃焼性ガスの燃焼熱量を求める手法(以下、「特定の燃焼熱量検知手法」ともいう。)である。
【0016】
ここに、パラフィン系炭化水素ガスよりなる燃焼性ガスにおける「比(密度/屈折率)−熱量相関関係」は、屈折率に対する密度の比が大きくなるに従って燃焼熱量が小さくなる対応関係である。
また、この「比(密度/屈折率)−熱量相関関係」は、燃焼熱量の異なる複数種類のパラフィン系炭化水素ガス(燃焼性ガス)の各々について、燃焼熱量の値と、測定によって得られる屈折率の値および密度の値から算出されるこれらの比の値(具体的には、屈折率の値nに対する密度の値dの比(d/n)の値)とを得、これらの値の関係を、例えばグラフ化することなどによって取得することができる。
また、燃焼熱量の異なる複数種類のパラフィン系炭化水素ガス(燃焼性ガス)に未知または既知の割合で空気の混入されたガスの各々について、当該ガスを構成するパラフィン系炭化水素ガス(燃焼性ガス)の燃焼熱量の値と、測定によって得られる空気の混入された燃焼性ガスの屈折率の値と空気の屈折率の値との差および測定によって得られる空気の混入された燃焼性ガスの密度の値と空気の密度の値との差から算出されるこれらの比の値(具体的には、空気の混入された燃焼性ガスの屈折率の値と空気の屈折率の値の差に対する空気の混入された燃焼性ガスの密度の値と空気の密度の値との差の比の値)とを得、これらの値の関係を、例えばグラフ化することなどによっても取得することができる。
【0017】
このような本発明の燃焼性ガスの検知方法を実施するためには、例えば被検査ガスの屈折率を測定するための屈折率測定機構と、被検査ガスの密度を測定するための密度測定機構と、屈折率測定機構において得られた屈折率の値n1および密度測定機構において得られた密度の値d1に基づいて、特定の燃焼熱量検知手法によって被検査ガスを構成する燃焼性ガスの燃焼熱量を求める機能を有する燃焼性ガス検知機構とを備えてなる構成の本発明の燃焼性ガス検知装置を用いることができる。
【0018】
被検査ガスの屈折率を測定し、当該被検査ガスの屈折率の値n1を得るための屈折率測定機構としては、従来公知の屈折率センサを備えたガス屈折率計を用いることができる。
【0019】
被検査ガスの密度の測定を測定し、当該被検査ガスの密度の値d1を得るための密度測定機構としては、信頼性の高い測定値を得ることができるため、被検査ガス中における音波の伝播速度、すなわち被検査ガスの音速を測定し、得られた音速の値に基づいて、下記の数式(1)にて当該被検査ガスの密度を算出することによって求める構成を有する、音速センサを備えたガス密度計を用いることができる。
ここに、下記数式(1)において、γは比熱比、Rは気体定数、Tは被検査ガスの温度、cは被検査ガスの音速を示す。
【0020】
数式(1):
密度=γRT/c2
【0021】
音速センサを備えたガス密度計の具体例としては、例えば公知の超音波式ガス密度計が挙げられる。
ここに、超音波式ガス密度計としては、例えば図1に示されるような圧電素子12を備え、超音波の共鳴周波数を利用して比重を求める構成のものが挙げられる。
図1の超音波式ガス密度計は、一端が開口しており、その開口によってガス排出口11Bが形成されていると共に、他端側にガス導入口11Aを有する、被検査ガスを流通させるための測定管10と、当該測定管10の他端に設けられた圧電素子12とを備え、測定管10内に被検査ガスが流通された状態において、圧電素子12から超音波を発信して当該測定管10内に超音波を伝播させることによって超音波の共鳴周波数を測定し、その共鳴周波数から求められる音速に基づいて被検査ガスの密度を得る構成のものである。
図1において、矢印は被検査ガスの流動方向を示す。
【0022】
燃焼性ガス検知機構としては、先ず、屈折率測定機構において得られた被検査ガスの屈折率の値n1と、密度測定機構において得られた密度の値d1とから被検査ガスの特性値C1を求め、次いで、その被検査ガスの特性値C1を、予め取得された比(密度/屈折率)−熱量相関関係に照合することにより、被検査ガスを構成する燃焼性ガスの熱量を求める構成の装置を用いることができる。
【0023】
燃焼性ガス検知機構の具体例としては、例えばパーソナルコンピュータ、演算機能付レコーダなどが挙げられる。
【0024】
このような構成を有する本発明の燃焼性ガスの検知装置においては、屈折率測定機構および密度測定機構の各々に、ガス採取手段によって採取された、例えば空気と共に燃焼性ガスを含有する可能性のあるガスが被検査ガスとして供給されることにより、屈折率測定機構においては被検査ガスの屈折率の値n1が得られ、密度測定機構においては被検査ガスの密度d1が得られる。そして、燃焼性ガス検知機構において、屈折率測定機構によって得られた屈折率の値n1および密度測定機構によって得られた被検査ガスの密度の値d1から特性値C1が算出され、得られた特性値C1の値に基づいて、比(密度/屈折率)−熱量相関関係から、被検査ガスを構成する燃焼性ガスの燃焼熱量が求められる。また、得られた燃焼性ガスの燃焼熱量の値あるいは特性値C1に基づいて、被検査ガスにおける燃焼性ガスの検出が行われる。このようにして求められた燃焼熱量および燃焼性ガスの検出結果は、例えば表示手段によって表示される。
【0025】
以上のような構成の燃焼性ガスの検知装置によって実施される本発明の燃焼性ガスの検知方法においては、被検査ガスはパラフィン系炭化水素ガスよりなる燃焼性ガスに対して未知の割合の空気が混入されてなるガスであり、被検査ガス中における空気の含有割合は如何なる割合であってもよい。
また、本発明の燃焼性ガスの検知方法は、基本的にパラフィン系炭化水素ガスに未知の割合の空気が混入されてなるガスを被検査ガスとするものであるが、パラフィン系炭化水素ガスに対して既知の割合で空気が混入されてなるガスの燃焼熱量を検知することもできる。
更に、本発明の燃焼性ガスの検知方法によれば、空気の含有割合が0%、すなわちパラフィン系炭化水素ガスのみよりなるガスの燃焼熱量を検知することもできる。
【0026】
以上のような本発明の燃焼性ガスの検知方法においては、パラフィン系炭化水素ガスよりなる燃焼性ガスと空気とを含有するガスにおいて、当該ガスの屈折率の値と空気の屈折率との差に対する、当該ガスの密度の値と空気の密度との差の比が、空気の含有の如何およびその含有割合によらず、含有されている燃焼性ガスの種類(組成)、具体的には燃焼性ガスの燃焼熱量に応じて一定の範囲となるものであり、しかも、その屈折率に係る差に対する密度に係る差の比が、当該燃焼性ガスの燃焼熱量と相対関係、具体的には屈折率に係る差に対する密度に係る差の比が大きくなるに従って燃焼熱量が小さくなる特定の対応関係を有するものであることを利用することにより、測定によって得られた被検査ガスの屈折率の値n1の空気の屈折率の値n0との差△n(n1−n0)および密度の値d1の空気の密度の値d0との差△d(d1−d0)の比(△d/△n)(特性値C1)に基づいて、被検査ガスを構成する燃焼性ガスの燃焼熱量を求めることができる。
このように、本発明の燃焼性ガスの検知方法によれば、被検査ガスが未知の割合で空気が混入されたものであっても、被検査ガスの屈折率および密度を測定し、得られた屈折率の値n1の空気の屈折率の値n0との差△n(n1−n0)、および得られた密度の値d1の空気の密度の値d0との差△(d1−d0)を求め、それらの比の値(比(△d/△n))から、パラフィン系炭化水素ガスよりなる燃焼性ガスにおける屈折率に対する密度の比と燃焼熱量と相関関係(比(密度/屈折率)−熱量相関関係)を利用することによって容易に燃焼熱量を得ることができ、また、その燃焼熱量に基づいて被検査ガスにおける燃焼性ガスの検出が行われるため、検査ガスにおける燃焼性ガスの検出および当該被検査ガスを構成する燃焼性ガスの燃焼熱量の検知を容易に行うことができる。
【0027】
また、本発明の燃焼性ガスの検知方法においては、被検査ガスを構成する燃焼性ガスの燃焼熱量を検知するために用いる特性値C1が、燃焼性ガスの種類(組成)に応じて一定の範囲となるものであることから、この特性値C1、あるいは得られた燃焼熱量の値に基づいて、被検査ガスを構成する燃焼性ガスの種類(組成)を一定の信頼度で予測することができる。
【0028】
従って、本発明の燃焼性ガスの検知方法は、被検査ガスにおける燃焼性ガスの検出および当該被検査ガスを構成する燃焼性ガスの燃焼熱量を検知するための手法の他、例えば採ガス井(天然ガスを採掘するための井戸)から採掘される天然ガスの燃焼熱量およびその種類(組成)を簡易測定するための手法として用いることもできる。
【0029】
また更に、本発明の燃焼性ガスの検知方法は、都市ガスの供給配管からのガス漏れを地表において検出するための手法として好適に用いることができる。
すなわち、本発明の燃焼性ガスの検知方法によれば、都市ガスが如何なる種類(組成)のものであっても、地中におけるメタンガスの自然発生の有無にかかわらず、都市ガスの供給配管からのガス漏れを確実に検知することができる。
具体的に、本発明の燃焼性ガスの検知方法によって都市ガスの供給配管からのガス漏れを検出する場合においては、地表において未知の割合の空気と共に採取された、都市ガスおよび/またはメタンガスよりなる燃焼性ガスを含有している可能性のあるガスが被検査ガスとされるが、被検査ガスを構成する燃焼性ガスの燃焼熱量の値がメタンガスの燃焼熱量である39.94MJであることが検知された場合においては、被検査ガスを構成する燃焼性ガスがメタンガスのみであって、都市ガスの供給配管からのガス漏れが発生しておらず、一方、被検査ガスを構成する燃焼性ガスの燃焼熱量の値がタンガスの燃焼熱量である39.94MJ以外の値であることが検知された場合においては、被検査ガスを構成する燃焼性ガスが都市ガスのみである、あるいは都市ガスとメタンガスとの混合ガスであって、都市ガスの供給配管からのガス漏れが発生していることが確認される。
また、被検査ガスを構成する燃焼性ガスの燃焼熱量の値がメタンガスの燃焼熱量である39.94MJ以外の値であることが検知された場合においては、検知された燃焼熱量の値に基づいて、被検査ガスを構成する燃焼性ガスが都市ガスのみであるのか、あるいは都市ガスとメタンガスとの混合ガスであるかを確認することができ、すなわち都市ガスの供給配管からのガス漏れが発生している箇所の地中におけるメタンガスの発生の有無をも容易に確認することができる。
【0030】
以上、本発明の燃焼性ガスの検知方法について具体的に説明したが、本発明は以上の例に限定されるものではなく、種々の変更を加えることができる。
例えば燃焼性ガスの検知方法は、屈折率測定機構と密度測定機構と燃焼性ガス検知機構とを合わせて備えてなる装置によって実施されることに限定されず、被検査ガスの屈折率の値n1および密度の値d1から当該被検査ガスの特性値C1を算出し、その特性値C1に基づいて被検査ガスを構成する燃焼性ガスの燃焼熱量を検知するのであれば、被検査ガスの屈折率の値n1および密度の値d1を得るための装置が一体化されておらずに個別であってもよく、また被検査ガスの特性値C1を算出する手法が演算機などによる自動計算であっても、あるいは手法による計算であってもよく、さらに 特性値C1に基づいて燃焼熱量の値を求める手法も、演算機などによる自動計算であっても、あるいは手法による計算であってもよい。
【0031】
以下、本発明の実験例について説明する。
【0032】
〔実験例1〕
燃焼性ガスとして、燃焼熱量が39.94〔MJ/Nm3 〕のメタンガス、メタンガスとエタンガスとの混合ガスであって、体積比(メタンガス:エタンガス)が92:8であり、燃焼熱量が42.4〔MJ/Nm3 〕であるガス(以下、「燃焼性混合ガス(1)」ともいう。)、メタンガスとエタンガスとの混合ガスであって、体積比(メタンガス:エタンガス)が83.5:16.5であり、燃焼熱量が45.0〔MJ/Nm3 〕であるガス(以下、「燃焼性混合ガス(2)」ともいう。)、メタンガスとプロパンガスとの混合ガスであって、体積比(メタンガス:プロパン)が91.8:8.2であり、燃焼熱量が44.9〔MJ/Nm3 〕であるガス(以下、「燃焼性混合ガス(3)」ともいう。)および燃焼熱量が45.0の〔MJ/Nm3 〕の圧縮天然ガス(CNG)を用意した。
これらの5種類の燃焼性ガス、および当該5種類の燃焼性ガスと空気との混合ガスであって、燃焼性ガスの含有割合(体積比)が20%、40%、60%および80%であるガスを試料ガスとし、それらの試料ガスの各々について、屈折率センサを備えたガス屈折率計および音速センサを備えたガス密度計を用いて屈折率および密度を測定し、得られた屈折率の値および密度の値から、それぞれ試料ガスの屈折率の値の空気の屈折率の値との差(以下、「屈折率差」ともいう。)および試料ガスの密度の値の空気の密度の値との差(以下、「密度差」ともいう。)を算出した。
そして、得られた屈折率差および密度差の値に基づいて、5種類の燃焼性ガスの各々について、燃焼性ガスを含有するガスにおける当該燃焼性ガスの含有割合と屈折率差との関係、および燃焼性ガスの含有割合と密度差との関係を確認した。結果を図2および図3に示す。
また、各試料ガスにおいて屈折率差に対する密度差の比(密度/屈折率)を算出した。結果を図4に示す。
ここに、図2において、屈折率差は、メタンガスの屈折率差を基準(100%)とした相対値である。また、図3において、密度差は、メタンガスの密度差を基準(100%)とした相対値である。図4において、縦軸は、屈折率差に対する密度差の比の値を示し、横軸は、燃焼性ガスの含有割合であって、当該燃焼性ガスの含有割合をガス屈折率計に係る屈折率センサの出力値(メタンガスの屈折率差を基準とした相対値)に基づいて示している。
また、図2〜図4においては、各々、メタンガスに係る値を菱形プロット(◆)で示し、燃焼性混合ガス(1)に係る値を四角プロット(□)で示し、燃焼性混合ガス(2)に係る値を円プロット(○)で示し、燃焼性混合ガス(3)に係る値を三角プロット(△)で示し、圧縮天然ガスに係る値をバツプロット(×)で示した。
【0033】
図2の結果からは、パラフィン系炭化水素ガスよりなる燃焼性ガスと空気との混合ガスにおいては、燃焼性ガスの含有割合に応じて屈折率差が比例的に変化、具体的には、燃焼性ガスの含有割合が大きくなるに従って屈折率差が比例的に大きくなり、また、燃焼性ガスの燃焼熱量が大きくなるほど屈折率差が大きくなる、すなわち燃焼性ガスの含有割合が同一である場合には、混合ガスを構成する燃焼性ガスの燃焼性熱量が大きいものほど屈折率差が大きくなることが確認された。
また、図3の結果からは、パラフィン系炭化水素ガスよりなる燃焼性ガスと空気との混合ガスにおいては、燃焼性ガスの含有割合に応じて密度差が比例的に変化、具体的には、燃焼性ガスの含有割合が大きくなるに従って密度差が比例的に大きくなり、また、燃焼性ガスの燃焼熱量が大きくなるほど密度差が小さくなる、すなわち燃焼性ガスの含有割合が同一である場合には、混合ガスを構成する燃焼性ガスの燃焼性熱量が大きいものほど密度差が小さくなることが確認された。
また、図4の結果からは、屈折率差に対する密度差の比は、空気の含有割合によらず、燃焼熱量が一定であれば、燃焼性ガスの組成が異なる場合であっても、一定の範囲の値となり、また燃焼熱量が大きくなるに従って小さくなることが確認された。
【符号の説明】
【0034】
10 測定管
11A ガス導入口
11B ガス排出口
12 圧電素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気と共に採取される、パラフィン系炭化水素ガスよりなる燃焼性ガスを含有する可能性のある被検査ガスの屈折率および密度を測定し、得られた屈折率の値n1から求められる当該屈折率の値n1の空気の屈折率の値n0との差△n(n1−n0)と、得られた密度の値d1から求められる当該密度の値d1の空気の密度の値d0との差△d(d1−d0)とから算出される、これらの比(△d/△n)に基づいて、
予め取得された、パラフィン系炭化水素ガスよりなる燃焼性ガスの屈折率に対する密度の比と、当該燃焼性ガスの燃焼熱量との相関関係から、被検査ガスを構成する燃焼性ガスの熱量を求めることを特徴とする燃焼性ガスの検知方法。
【請求項2】
前記被検査ガスの密度の値d1を被検査ガスの音速を測定することによって求めることを特徴とする請求項1に記載の燃焼性ガスの検知方法。
【請求項3】
空気と共に採取される、パラフィン系炭化水素ガスよりなる燃焼性ガスを含有する可能性のある被検査ガスの屈折率を測定するための屈折率測定機構、被検査ガスの密度を測定するための密度測定機構、および燃焼性ガス検知機構を備えており、
前記燃焼性ガス検知機構が、予め取得された、パラフィン系炭化水素ガスよりなる燃焼性ガスの屈折率に対する密度の比と、当該燃焼性ガスの燃焼熱量との相関関係に基づいて、前記屈折率測定機構において得られた被検査ガスの屈折率の値n1の空気の屈折率の値n0との差△n(n1−n0)と前記密度測定機構において得られた被検査ガスの密度の値d1の空気の密度の値d0との差△d(d1−d0)との比(△d/△n)を、当該相関関係に照合することにより、被検査ガスを構成する燃焼性ガスの熱量を求める機能を有することを特徴とする燃焼性ガスの検知装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−57532(P2013−57532A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−194713(P2011−194713)
【出願日】平成23年9月7日(2011.9.7)
【出願人】(000250421)理研計器株式会社 (216)
【Fターム(参考)】