説明

燃焼排ガス処理装置及び処理方法

【課題】水銀、NOx、ダイオキシン類等の有害物質を含む燃焼排ガスを効率よく、低コストで処理することが可能な燃焼排ガス処理装置等を提供する。
【解決手段】セメントキルン24の排ガス(燃焼排ガス)G1中のダストを集塵する電気集塵機2と、電気集塵機を通過した排ガスG2中のNOx又は/及びダイオキシン類を分解除去する第1触媒装置4と、第1触媒装置を通過した排ガス中に残存するダイオキシン類を分解除去すると共に、金属水銀を酸化する第2触媒装置6と、第2触媒装置を通過した排ガスG3中の水溶性成分及びダストを捕集する湿式集塵機9とを備える燃焼排ガス処理装置1等。電気集塵機は、少なくとも150℃以上の耐熱性を有し、第1触媒装置及び第2触媒装置で使用される触媒をチタン・バナジウム系触媒とすることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セメントキルン排ガス等の燃焼排ガス中の水銀、NOx、ダイオキシン類等の有害物質を除去するための燃焼排ガス処理装置及び処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、廃棄物の再資源化の推進により、セメント製造用の原料として都市ごみ焼却灰、石炭灰、汚泥等の各種廃棄物が多く使用されている。これらの廃棄物は、重金属類を含むことが多いため、セメント製造工程に持ち込まれる重金属類の量が増大することが予想される。その場合、水銀のように揮発性の高い重金属は、セメント製造工程の高温部であるセメント焼成装置で揮発し、水銀蒸気となって排ガスに含まれる。
【0003】
そこで、特許文献1には、セメントキルン排ガス中の水銀を除去するため、セメントキルン排ガスの少なくとも一部を塩素含有塩溶液に接触させることにより、排ガス中の金属水銀を酸化して塩化水銀に変化させ、塩化水銀を、調湿塔内で排ガス中のダスト粒子表面に凝縮・析出させ、調湿塔で回収したダストの一部又は全部を抜き出している。
【0004】
一方、セメントキルン排ガス中には、NOx等の酸性ガスや、ダイオキシン類等の残留性有機汚染物質(POPs)が含まれているため、それらの有害物質を除去する目的で、セメントキルン排ガス用の集塵機を従来の電気集塵機からバグフィルタへ置換したり、触媒装置を導入している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−331967号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載の方法では、排ガス中の水銀蒸気を水銀含有物質としてセメント原料粒子上に析出させ、集塵機で集塵ダストとして捕集しているが、セメント原料廃棄物の水銀含有率が高い場合には、ダストとして十分に集塵できず、セメント焼成装置及び集塵機を通る循環経路内に水銀含有物質が残存したり、大気中に放出される水銀蒸気が増加することが考えられる。
【0007】
また、セメントキルン排ガス中の有害物質を除去するためにバグフィルタを使用すると、ろ布の交換等の維持費が高いため、セメント製造コストの増加に繋がる。さらに、触媒装置の使用は、NOxやダイオキシン類等の除去には有効であるが、水銀等を除去する場合には、吸着法以外の方法では酸化剤コストが高く、実用化が遅れていた。
【0008】
そこで、本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであって、セメントキルン排ガス等の燃焼排ガス中の水銀、NOx、ダイオキシン類等の有害物質を効率よく低コストで除去することのできる燃焼排ガス処理装置等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明は、燃焼排ガス処理装置であって、燃焼排ガス中のダストを集塵する電気集塵機と、該電気集塵機を通過した排ガス中のNOx又は/及びダイオキシン類を分解除去する第1触媒装置と、該第1触媒装置を通過した排ガス中に残存するダイオキシン類を分解除去すると共に、金属水銀を酸化する第2触媒装置と、該第2触媒装置を通過した排ガス中の水溶性成分、ダスト及び水分を捕集する湿式集塵機とを備えることを特徴とする。
【0010】
そして、本発明によれば、電気集塵機を用いることで集塵機の維持費を低く抑えることができる。また、バグフィルタを用いた場合、燃焼排ガスに含まれている塩化水素がバグフィルタのろ過層で吸着されて下流側に行き着かないが、電気集塵機を用いることで、燃焼排ガスに含まれている塩化水素を第2触媒装置に導入することができるため、第1触媒装置で排ガス中のNOx又は/及びダイオキシン類を分解除去するだけでなく、第2触媒装置において触媒存在下で塩化水素を用いることにより、排ガスに含まれる金属水銀を、捕捉・除去が容易な塩化水銀に変換することができ、水銀、NOx、ダイオキシン類等の有害物質を効率よく低コストで除去することができる。
【0011】
上記燃焼排ガス処理装置において、前記電気集塵機は、少なくとも150℃以上の耐熱性を有することができ、これによって、後段の第1及び第2触媒装置で触媒にチタン・バナジウム系触媒を用いた場合にNOxの分解効率を高めることができる。
【0012】
上記燃焼排ガス処理装置において、前記第1触媒装置及び前記第2触媒装置で使用される触媒を、チタン・バナジウム系触媒とすることができる。
【0013】
上記燃焼排ガス処理装置に、前記電気集塵機を通過した排ガスにアンモニアを添加するアンモニア添加装置を設け、アンモニアを脱硝剤として使用することができる。
【0014】
上記燃焼排ガス処理装置に、前記第1触媒装置を通過した排ガスに塩化水素を添加する塩化水素添加装置を設けることができる。これによって、燃焼排ガスに含まれていた塩化水素が脱硝剤のアンモニアと反応して塩化アンモニウムが生成され、第2触媒装置に導入される塩化水素の量が充分でない場合に容易に対応することができる。
【0015】
上記燃焼排ガス処理装置に、前記第2触媒装置を通過した排ガスに酸化剤を添加する酸化剤添加装置を設けることで、第2触媒装置で酸化しきれなかった金属水銀の酸化を補うことができる。
【0016】
上記燃焼排ガス処理装置に、前記湿式集塵機から排出されたスラリーを固液分離する固液分離機と、該固液分離機で分離されたろ液中の水銀を吸着する水銀除去装置とを設け、水銀を回収することができる。
【0017】
上記燃焼排ガス処理装置に、前記湿式集塵機から排出された排ガスを加熱する排ガス加熱手段と、前記第2触媒装置から排出された排ガスを用い、前記排ガス加熱手段から供給された熱媒体を加熱する熱媒体加熱手段と、該熱媒体加熱手段で加熱された熱媒体を前記排ガス加熱手段に戻すルートとを設け、湿式集塵機から排出された排ガスを加熱することで、系外へ排出する場合の白煙を防止することができると共に、前記排ガスの加熱に第2触媒装置から排出された排ガスを用いることで、熱効率を向上させ、低コストで燃焼排ガスを処理することができる。
【0018】
上記燃焼排ガス処理装置において、前記燃焼排ガスをセメントキルン排ガスとすることができ、セメントキルン排ガス中の水銀、NOx、ダイオキシン類等の有害物質を効率よく低コストで除去することが可能となる。
【0019】
また、本発明は、燃焼排ガス処理方法であって、燃焼排ガス中のダストを集塵し、該ダスト集塵後の排ガス中のNOx又は/及びダイオキシン類を触媒を用いて分解除去し、該NOx又は/及びダイオキシン類の分解除去後の排ガス中に残存するダイオキシン類を分解除去すると共に、金属水銀を触媒を用いて酸化し、該金属水銀酸化後の排ガス中の水溶性成分、ダスト及び水分を湿式集塵することを特徴とする。
【0020】
そして、本発明によれば、触媒を用い、燃焼排ガス中のNOx又は/及びダイオキシン類を分解除去するだけでなく、排ガスに含まれる金属水銀を、排ガスに含まれる塩化水素により、捕捉・除去が容易な塩化水銀に変換することができ、水銀、NOx、ダイオキシン類等の有害物質を効率よく低コストで除去することができる。
【0021】
上記燃焼排ガス処理方法において、前記NOx又は/及びダイオキシン類の分解除去及び前記金属水銀の酸化に用いる触媒を、チタン・バナジウム系触媒とすることができる。
【0022】
上記燃焼排ガス処理方法において、前記ダスト集塵後の排ガスにアンモニアを添加し、アンモニアを脱硝剤として使用することができる。
【0023】
上記燃焼排ガス処理方法において、前記排ガス中のNOxの量が所定値以下に低下しないように、前記アンモニアの添加量を制御することができる。アンモニアは、塩化水素と反応して塩化アンモニウムとなり、塩化水素による金属水銀の酸化を妨害する虞がある。そこで、排ガス中のNOxの量に応じてアンモニアの添加量を制御することで、排ガス中に残留する余剰アンモニアの量を最小限に抑え、塩化アンモニウムの発生を最小限に抑えることができる。
【0024】
上記燃焼排ガス処理方法において、前記ダイオキシン類の分解除去に伴って発生した塩化水素を利用し、又は前記NOx又は/及びダイオキシン類の分解除去後の排ガスに塩化水素を添加し、該排ガス中の金属水銀を酸化することができ、排ガス中の塩化水素の量が充分でない場合に塩化水素を添加する。
【0025】
上記燃焼排ガス処理方法において、前記金属水銀酸化後の排ガスに、前記湿式集塵機出口の水銀濃度に応じて酸化剤を添加することで、酸化しきれなかった金属水銀の酸化を補うことができる。
【0026】
上記燃焼排ガス処理方法において、前記湿式集塵により得られるスラリーを固液分離し、該固液分離で分離されたろ液中の水銀を吸着し、水銀を回収することができる。
【0027】
上記燃焼排ガス処理方法において、前記燃焼排ガスをセメントキルン排ガスとすることができ、セメントキルン排ガス中の水銀、NOx、ダイオキシン類等の有害物質を効率よく低コストで除去することが可能となる。
【発明の効果】
【0028】
以上のように、本発明によれば、水銀、NOx、ダイオキシン類等の有害物質を含む燃焼排ガスを効率よく低コストで処理することが可能な燃焼排ガス処理装置等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に係る燃焼排ガス処理装置の一実施の形態を示す全体構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1は、本発明に係る燃焼排ガス処理装置の一実施の形態を示し、この排ガス処理装置1は、セメント焼成装置21からのセメントキルン排ガス(プレヒータ22の排ガスG1)を処理するために設けられ、排ガスG1中のダストを集塵する電気集塵機2と、電気集塵機2を通過した排ガスG2中のNOxやダイオキシン類を分解除去する触媒装置(第1触媒装置)4と、触媒装置4を通過した排ガス中の金属水銀を酸化する触媒装置(第2触媒装置)6と、触媒装置6を通過した排ガスG3中の水溶性成分及びダストを捕集する湿式集塵機9と、排ガスG3から熱回収する熱回収器7と、湿式集塵機9を通過した排ガスG4を加熱する再加熱器12と、湿式集塵機9から排出されたスラリーSを固液分離する固液分離機16と、固液分離機16で分離されたろ液L中の水銀を吸着する水銀除去装置17等で構成される。
【0031】
セメント焼成装置21は、プレヒータ22、仮焼炉23、セメントキルン24、クリンカクーラー25等を備え、原料供給系(不図示)からセメント原料Rがプレヒータ22に投入され、プレヒータ22における予熱、仮焼炉23における仮焼、及びセメントキルン24における焼成を経てセメントクリンカClが製造される。このセメントクリンカClは、クリンカクーラー25において冷却された後、仕上げ工程において粉砕される。
【0032】
電気集塵機2は、プレヒータ22からの排ガスG1中のダストを集塵するために備えられる。この電気集塵機2は、後段の触媒装置4で触媒にチタン・バナジウム系触媒を用いた場合、排ガスG1が高温である方がNOxの分解効率を高めることができて好ましいため、少なくとも150℃以上の耐熱性を有することが望ましく、例えば、特開2010−115618号公報に記載されたような古河産機システムズ株式会社製フィルタ式電気集塵装置等を使用することができる。
【0033】
アンモニア添加装置3は、電気集塵機2を通過した排ガスG2にアンモニア(NH3)を添加するために備えられ、このアンモニアは、後段の触媒装置4において、脱硝剤として機能する。
【0034】
触媒装置4は、電気集塵機2を通過した排ガスG2中のNOxやダイオキシン類を分解除去するために備えられる。触媒には、チタン・バナジウム系触媒を用いることができる。
【0035】
塩化水素添加装置5は、触媒装置4を通過した排ガスに塩化水素(HCl)を添加するために備えられ、排ガスに含まれる塩化水素の量が充分でない場合に対応することができる。
【0036】
触媒装置6は、触媒装置4を通過した排ガス中に残存するダイオキシン類を分解除去すると共に、排ガス中の金属水銀を酸化するために備えられる。触媒には、触媒装置4と同様に、チタン・バナジウム系触媒を用いることができる。
【0037】
熱回収器(熱媒体加熱手段)7は、触媒装置6から排出された排ガスG3と再加熱器12からのガスG6との熱交換を行うものであり、排ガスG3から回収した熱を再加熱器12で利用する。
【0038】
酸化剤添加装置8は、触媒装置6から排出された排ガスG3に酸化剤Oを添加するために備えられ、酸化剤Oによって触媒装置6で酸化しきれなかった金属水銀の酸化を行う。
【0039】
湿式集塵機9は、排ガスG3中の水溶性成分及びダストを捕集するために備えられ、塩化水銀、ダスト、硫酸ミストに加え、残留した塩化水素等を回収することができる。この湿式集塵機9には、例えば、ミキシングスクラバー(株式会社ミューカンパニーリミテッド製ミュースクラバー等)を用いることができる。
【0040】
湿式集塵機9の下方には、循環液槽10が配置され、湿式集塵機9と循環液槽10の間にポンプ11が設けられ、湿式集塵機9で発生したスラリーSを循環液槽10及びポンプ11を介して循環させることができる。
【0041】
再加熱器(排ガス加熱手段)12は、湿式集塵機9から排出された排ガスG4を熱回収器7で昇温されたガスG7で加熱するために備えられる。
【0042】
固液分離機16は、湿式集塵機9から排出されたスラリーSを固液分離するものであって、マイクロフィルター等を使用することができる。
【0043】
水銀除去装置17は、固液分離機16で分離されたろ液L中の水銀を吸着するために備えられる。排水処理設備18は、ろ液Lから水銀を吸着した後の回収水Wを処理するために備えられる。処理された回収水Wは、河川等へ放流したり、湿式集塵機9等で再利用することができる。
【0044】
次に、上記構成を有する燃焼排ガス処理装置1の動作について、図1を参照しながら説明する。
【0045】
プレヒータ22において脱硫されたセメントキルン24からの排ガスG1は、電気集塵機2にもたらされ、排ガスG1中のダストが集塵される。排ガスG1を電気集塵機2に通過させる際のガス温度は、後段の触媒装置4における排ガスG2の脱硝及びダイオキシン類の分解を170℃〜500℃で行うことが好ましいため、触媒装置4の触媒の分解性能と耐久性を考慮し、180℃以上、好ましくは、230℃〜270℃程度とする。
【0046】
電気集塵機2を通過した排ガスG2には、アンモニア添加装置3よりアンモニアが添加され、アンモニア添加後の排ガスG2は、触媒装置4に供給され、排ガスG2中のNOxやダイオキシン類が、触媒存在下でアンモニア等と反応して分解される。上述のように、触媒装置4内の温度は、排ガスG2の脱硝及びダイオキシン類の分解に適する温度に制御する。ここで、アンモニアは、排ガスG2中の塩化水素と反応して塩化アンモニウムとなり、塩化水素による金属水銀の酸化を妨害する虞があるが、排ガスG2中のNOxの量が所定値以下に低下しないように、排ガスG2中のNOxの量に応じてアンモニアの添加量を制御することで、排ガスG2中に残留する余剰アンモニアの量を最小限に抑え、塩化アンモニウムの発生を最小限に抑えることができる。
【0047】
触媒装置4を通過した排ガスG2は、触媒装置6に導入され、残存するダイオキシン類を分解除去されると共に、排ガスG2中の塩化水素により金属水銀が酸化されて塩化水銀に変化する。触媒装置6では、触媒装置4におけるダイオキシン類の分解除去に伴って発生した塩化水素を上記水銀の酸化に利用することができる。尚、排ガスG2中の塩化水素の量が金属水銀を酸化するのに充分ではない場合には、排ガスG2を触媒装置6に導入する前に、塩化水素添加装置5から塩化水素を添加する。
【0048】
触媒装置6の後段には、熱回収器7が配置されているため、触媒装置4、6内の温度を高く制御することができ、触媒装置4、6の運転温度をできるだけ上昇させることにより、触媒装置4、6の効率が上昇し、触媒の使用量を低減することができる。
【0049】
触媒装置6を通過した排ガスG3は、温度が80℃程度に下がった状態で湿式集塵機9に導入される。ここでは、排ガスG3中の水溶性成分及びダストが捕集され、上記金属水銀から変化した塩化水銀、硫酸ミスト、ダストの他、余剰の塩化水素等が除去される。また、排ガスG3を湿式集塵機9に導入する際に、酸化剤添加装置8から酸化剤Oを添加することもできる。これにより、触媒装置6で酸化されなかった金属水銀を酸化することができる。酸化剤Oとして、オゾン、過酸化水素、次亜塩素酸ソーダ等を用いることができる。
【0050】
湿式集塵機9で発生したスラリーSは、循環液槽10及びポンプ11を介して循環し、排ガスG3と液体との接触が充分に行われるため、排ガスG3中の上記水溶性成分やダストを効率よく回収することができる。また、湿式集塵機9において、水を循環させると共に、その一部を抜いて固液分離機16に供給するが、この循環水は、水溶性成分の再揮散が問題とならない程度に排水する。
【0051】
次に、湿式集塵機9で水溶性成分、ダスト等が除去された排ガスG4を再加熱器12で110℃程度まで加熱する。再加熱器12の熱源には、触媒装置6の排ガスG3を用いる。触媒装置6から排出された排ガスG3を、熱回収器7において再加熱器12から導入されたガスG6と熱交換し、ガスG7に回収した熱を再加熱器12で利用する。
【0052】
再加熱器12で加熱された排ガスG5は、ファン13及び煙突14を経て大気に放出される。ここで、ファン13の出口の排ガスG5の温度は、110℃程度に制御されているため、煙突14から排出される排ガスG5が、ガス中に含まれている水分によって白煙となるのを防止することができるだけでなく、再加熱器12での排ガスG4の昇温に要するエネルギー消費を低減することができる。
【0053】
一方、循環液槽10から排出されたスラリーSは、固液分離機16によってケークCとろ液Lとに固液分離され、分離されたろ液L中の水銀は、クロロ錯イオン(HgCl42-)として水に溶解し、これを水銀除去装置17で吸着した後、系外で処理する。水銀が除去された後の回収水Wは、排水処理設備18で処理され、湿式集塵機9で再利用する他、セメントキルン24の排ガスG1の冷却等に利用することができる。
【0054】
尚、上記実施の形態においては、触媒装置4、6の2台の触媒装置を用いたが、触媒装置を1台だけ設け、電気集塵機2を通過した排ガスG2中のNOx又は/及びダイオキシン類を触媒を用いて分解除去し、触媒中のNOxの量が零に近づいた場所から塩化水素を添加し、水銀を触媒を用いて酸化するように構成することもできる。
【0055】
尚、上記実施の形態においては、本発明に係る燃焼排ガス処理装置をセメントキルン排ガスを処理するために用いた場合について説明したが、本発明に係る燃焼排ガス処理装置は、セメントキルン排ガスの処理以外にも、発電所等の排ガス等の他の燃焼装置等から排出される燃焼排ガスに適用することも可能である。
【符号の説明】
【0056】
1 燃焼排ガス処理装置
2 電気集塵機
3 アンモニア添加装置
4 (第1)触媒装置
5 塩化水素添加装置
6 (第2)触媒装置
7 熱回収器
8 酸化剤添加装置
9 湿式集塵機
10 循環液槽
11 ポンプ
12 再加熱器
13 ファン
14 煙突
16 固液分離機
17 水銀除去装置
18 排水処理設備
21 セメント焼成装置
22 プレヒータ
23 仮焼炉
24 セメントキルン
25 クリンカクーラー
C ケーク
Cl セメントクリンカ
G1〜G5 排ガス
G6、G7 ガス
L ろ液
O 酸化剤
R セメント原料
S スラリー
W 回収水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼排ガス中のダストを集塵する電気集塵機と、
該電気集塵機を通過した排ガス中のNOx又は/及びダイオキシン類を分解除去する第1触媒装置と、
該第1触媒装置を通過した排ガス中に残存するダイオキシン類を分解除去すると共に、金属水銀を酸化する第2触媒装置と、
該第2触媒装置を通過した排ガス中の水溶性成分、ダスト及び水分を捕集する湿式集塵機とを備えることを特徴とする燃焼排ガス処理装置。
【請求項2】
前記電気集塵機は、少なくとも150℃以上の耐熱性を有することを特徴とする請求項1に記載の燃焼排ガス処理装置。
【請求項3】
前記第1触媒装置及び前記第2触媒装置で使用される触媒は、チタン・バナジウム系触媒であることを特徴とする請求項1又は2に記載の燃焼排ガス処理装置。
【請求項4】
前記電気集塵機を通過した排ガスにアンモニアを添加するアンモニア添加装置を備えることを特徴とする請求項1、2又は3に記載の燃焼排ガス処理装置。
【請求項5】
前記第1触媒装置を通過した排ガスに塩化水素を添加する塩化水素添加装置を備えることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の燃焼排ガス処理装置。
【請求項6】
前記第2触媒装置を通過した排ガスに酸化剤を添加する酸化剤添加装置を備えることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の燃焼排ガス処理装置。
【請求項7】
前記湿式集塵機から排出されたスラリーを固液分離する固液分離機と、
該固液分離機で分離されたろ液中の水銀を吸着する水銀除去装置とを備えることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の燃焼排ガス処理装置。
【請求項8】
前記湿式集塵機から排出された排ガスを加熱する排ガス加熱手段と、
前記第2触媒装置から排出された排ガスを用い、前記排ガス加熱手段から供給された熱媒体を加熱する熱媒体加熱手段と、
該熱媒体加熱手段で加熱された熱媒体を前記排ガス加熱手段に戻すルートとを備えることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の燃焼排ガス処理装置。
【請求項9】
前記燃焼排ガスは、セメントキルン排ガスであることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の燃焼排ガス処理装置。
【請求項10】
燃焼排ガス中のダストを集塵し、
該ダスト集塵後の排ガス中のNOx又は/及びダイオキシン類を触媒を用いて分解除去し、
該NOx又は/及びダイオキシン類の分解除去後の排ガス中に残存するダイオキシン類を分解除去すると共に、金属水銀を触媒を用いて酸化し、
該金属水銀酸化後の排ガス中の水溶性成分、ダスト及び水分を湿式集塵することを特徴とする燃焼排ガス処理方法。
【請求項11】
前記NOx又は/及びダイオキシン類の分解除去及び前記金属水銀の酸化に用いる触媒は、チタン・バナジウム系触媒であることを特徴とする請求項10に記載の燃焼排ガス処理方法。
【請求項12】
前記ダスト集塵後の排ガスにアンモニアを添加し、該排ガス中のNOxを分解除去することを特徴とする請求項10又は11に記載の燃焼排ガス処理方法。
【請求項13】
前記排ガス中のNOxの量が所定値以下に低下しないように、前記アンモニアの添加量を制御することを特徴とする請求項12に記載の燃焼排ガス処理方法。
【請求項14】
前記ダイオキシン類の分解除去に伴って発生した塩化水素を利用し、又は前記NOx又は/及びダイオキシン類の分解除去後の排ガスに塩化水素を添加し、該排ガス中の金属水銀を酸化することを特徴とする請求項10乃至13のいずれかに記載の燃焼排ガス処理方法。
【請求項15】
前記金属水銀酸化後の排ガスに、前記湿式集塵機出口の水銀濃度に応じて酸化剤を添加することを特徴とする請求項10乃至14のいずれかに記載の燃焼排ガス処理装置。
【請求項16】
前記湿式集塵により得られるスラリーを固液分離し、
該固液分離で分離されたろ液中の水銀を吸着することを特徴とする請求項10乃至15のいずれかに記載の燃焼排ガス処理方法。
【請求項17】
前記燃焼排ガスは、セメントキルン排ガスであることを特徴とする請求項10乃至16のいずれかに記載の燃焼排ガス処理方法。

【図1】
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【公開番号】特開2013−86087(P2013−86087A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−232502(P2011−232502)
【出願日】平成23年10月24日(2011.10.24)
【出願人】(000000240)太平洋セメント株式会社 (1,449)
【Fターム(参考)】