説明

燃焼機関微粒子フィルタ再生のための方法及びシステム

内燃機関(1)の排気ラインシステム(3)中の微粒子フィルタ(4)を再生するための方法が、
a)内燃機関が始動される都度、内燃機関及び/又は排気ラインシステムの状態を表示するパラメータが測定されるステップと、
b)測定されたパラメータにより、内燃機関及び/又は排気ラインシステムが冷えていることが明らかになったときに、内燃機関が最後に停止される前に測定された、蓄積された煤の質量を表示するパラメータが固定されるステップと、
c)固定された質量パラメータと、時刻tにおいて測定された質量を表示するパラメータとの間の差が、連続的に定められるステップと、
d)この差が収束によって消滅したときに、この差が上記固定された質量パラメータに追加され、そして修正された値が、進行中の再生プロセスで用いられるステップとを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の、詳しくはディーゼル機関の排気ライン中に位置する微粒子フィルタを再生するための方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
現今、微粒子フィルタ内に蓄積された煤(すす)の質量は、排気ライン中の微粒子フィルタの入口と出口との間の圧力差から計算されるか又は、微粒子の生成に関するエンジンパラメータに関連する微粒子排出モデルによって推定される。
【0003】
微粒子フィルタ全域にかけて測定される圧力低下、又は機関(エンジン)の運転中に排出される微粒子の量は、微粒子フィルタ内に取り込まれている煤の質量に直接に関係付けられる。この質量が予め定められたレベルに到達すると、微粒子フィルタの再生が開始される。微粒子フィルタ内に蓄積される煤の量のレベルで、それを超えると再生が必要となるような量のレベルは、排気ライン中の圧力低下の増大によって生じるエンジン性能の劣化によって定義される。過大頻度の再生は、エンジン潤滑油中のディーゼル油(燃料)の顕著な希釈を生じさせ、これは或るしきい値を超えるとエンジンの完全性にとって危険となる。そして間隔の開きすぎる再生は、微粒子フィルタの詰まりに至る可能性があり、これ自体エンジンの故障を生じさせ得る。
【0004】
微粒子フィルタ再生プロセスは例えば、FR2836956、及びFR2864146に記述されている。
【0005】
微粒子フィルタ全域にかけて測定される圧力差からは、全てのエンジン動作状態において蓄積された煤の質量の正確な推定ができない。したがって、エンジンの排気でのNO排出が十分に高いと、微粒子フィルタ内に蓄積された煤の部分的な又は不均一な酸化が生じ、これが微粒子フィルタ全域にかけての圧力低下を減少させることになる。この差圧の減少は、酸化された微粒子の量に比例せず、結果として差圧データから推定された煤の質量と微粒子フィルタ内に実際に存在する煤の質量との間に差が生じる。
【0006】
更に、微粒子フィルタ内に捕捉された煤の一部は微粒子フィルタの再生中に燃焼しない。
【0007】
微粒子フィルタ内に蓄積されたこれらの廃棄物は、微粒子フィルタ全域にかけての残留差圧の増大を生じ、これにより再生開始のために設定されるしきい値に到達する前に蓄積可能な微粒子の量を減少させる。実際に、微粒子フィルタ内に存在する廃棄物の質量の決定は現今概略的であり、微粒子フィルタ全域における残留差圧についての不確実性を生じ、これにより、差圧測定による微粒子フィルタ内の煤の質量の推定についての不確実性が生じる。この測定の不確実性は、微粒子フィルタ内に蓄積された廃棄物の質量の増加と同時に、時間がたつにつれて増大する。
【0008】
その上、冷却状態時又は長期停止時の始動の際には、水の凝縮が煤を再組織化し多数の導管を開放するため、微粒子フィルタ全域にかけての差圧が急落する。
【0009】
そして、微粒子フィルタ内に蓄積された微粒子の量の推定誤差は、頻繁すぎる再生又は間隔の開きすぎる再生の原因となり、全ての場合において、エンジンの故障を生じやすい。
【0010】
本発明の目的は、微粒子フィルタを再生するための既知の方法及びシステムの欠点を除くことにある。
【0011】
したがって本発明は、内燃機関の排気ライン中に位置する微粒子フィルタを再生するための方法であって、そこでは、上記微粒子フィルタ内に蓄積された煤の質量を表示するパラメータが測定され、この表示するパラメータが予め定められたしきい値を超えるときに上記微粒子フィルタの再生が開始され、そしてこの表示するパラメータが或るしきい値よりも低下するときに上記微粒子フィルタの再生が停止されるような、内燃機関の排気ライン中に位置する微粒子フィルタを再生するための方法に関する。
【0012】
本発明によれば、この再生方法は、
a)上記内燃機関が始動される都度、上記内燃機関及び/又は上記排気ラインの状態を表示するパラメータが測定されるステップと、
b)上記測定されたパラメータにより、上記内燃機関及び/又は上記排気ラインが冷えていることが明らかとなったときに、上記内燃機関が最後に停止される前に測定された、蓄積された煤の質量を表示する上記パラメータが固定されるステップと、
c)上記固定された質量パラメータと、時刻tにおいて測定された質量を表示するパラメータとの間の差が連続的に定められるステップと、
d)上記差が収束によって消滅したときに、上記差が上記固定された質量パラメータに追加され、そして上記修正された値が、進行中の再生プロセスのために用いられるステップとを、特徴とする。
【0013】
本発明による方法はこのように、凝縮によって劣化する煤の質量の低温検出を避けるという役を果たす。
【0014】
本発明の推奨代替実施例によれば、
上記内燃機関の、次回の始動の間、
− 上記測定されたパラメータにより、上記内燃機関及び/又は上記排気ラインが冷えていることが明らかとなったときに、上記ステップd)により修正された表示質量パラメータが固定され、
− 上記固定された修正質量パラメータと、時刻tにおいて測定された質量を表示するパラメータとの間の差が連続的に定められ、
− 上記差が収束によって消滅したとき、上記差が該固定された修正質量パラメータに追加され、そして上記修正された値が、進行中の再生プロセスに用いられる。
【0015】
本発明の有利な一実施形態によれば、微粒子フィルタ内に蓄積された煤の質量を表示するパラメータは、微粒子フィルタの入口と出口との間の圧力差である。
【0016】
また望ましくは、内燃機関及び/又は排気ラインの状態を表示するパラメータは温度である。
【0017】
フィルタの各完全再生の後にプロセスが再初期化されるので有利である。
【0018】
本発明の別の態様によれば、内燃機関の排気ライン中に位置する微粒子フィルタを再生するためのシステムであって、微粒子フィルタの再生を管理するためのユニットと、微粒子フィルタ内に蓄積された煤の質量を表示するパラメータを測定するための少なくとも1つのセンサと、この表示するパラメータが予め定められたしきい値を超えるときに微粒子フィルタの再生を開始するための、そしてこの表示するパラメータが或るしきい値よりも低下するときに微粒子フィルタの再生を停止するための手段とを備え、このシステムが、
a)上記内燃機関が始動される都度、上記内燃機関及び/又は上記排気ラインの状態を表示するパラメータを測定するための少なくとも1つのセンサと、
b)このセンサにより、上記内燃機関及び/又は上記排気ラインが冷えていることが検知されるときに、上記内燃機関が最後に停止される前に測定された、煤の質量を表示するこのパラメータを固定するための手段と、
c)この固定された質量パラメータと、時刻tにおいて測定された質量を表示するパラメータとの間の差を連続的に定めるための手段と、
d)安定値への収束によってこの差が消滅したときに、この差をこの固定された質量パラメータに追加するための手段と
を備えることを特徴とする。
【0019】
以下の記述を通して、本発明の他の特徴及び利点が更に明らかとなる。
【0020】
添付図面に、本発明の例を示すが、これらは本発明を制約するものではない。
【実施例】
【0021】
図1は、ターボ過給器2を備えたディーゼルエンジン1を示し、その排気ライン3には微粒子フィルタ4が設けられている。種々のセンサ5、6、7、8、9、10、11が、パラメータ(温度、圧力)を測定するために、そしてこれらのパラメータを微粒子フィルタ4の再生を管理するためのユニット12に送るために、いくつもの個所に配置されている。
【0022】
それ自体既知の仕方で、微粒子フィルタ4を再生するためのシステムが、微粒子フィルタ4内に蓄積された煤の質量を表示するパラメータを測定するための、少なくとも1つのセンサと、この表示するパラメータが予め定められたしきい値を超えるときに、微粒子フィルタ4の再生を開始するための、そしてこの表示するパラメータが或るしきい値よりも低下するときに、微粒子フィルタ4の再生を停止するための手段とを備える。
【0023】
微粒子フィルタ4内に蓄積された煤の質量を表示するパラメータは例えば、センサ9、10、11によって測定された、微粒子フィルタ4の入口と出口との間の圧力差である。
【0024】
本発明の方法によれば、内燃機関が始動される都度、この内燃機関及び/又は排気ラインの状態又は状況を表示するパラメータを測定するために、1つ以上のセンサが用いられる。この状態は、この内燃機関及び/又は排気ラインの温度である。温度等の測定パラメータにより、内燃機関及び/又は排気ラインが冷えていることが明らかになり、微粒子フィルタ4内での凝縮の存在が暗示されるときに、管理ユニット12が、該内燃機関が最後に停止される直前に測定された、蓄積された煤の質量を表示するパラメータを固定する。すなわち管理ユニットはエンジンの始動後、微粒子フィルタ4内に蓄積された煤の質量を考慮に入れない。その理由は、この質量が凝縮によってゆがめられているからである。
【0025】
それから管理ユニット12が、固定された質量パラメータと、時刻tにおいて測定された質量を表示するパラメータとの間の差を連続的に定める。
【0026】
この差が収束によって消滅したときに、すなわち内燃機関及び/又は排気ラインの測定された温度が安定したときに、管理ユニット12がこの差を、上記固定された質量パラメータに追加する。
【0027】
それから管理ユニット12が上記の修正された質量値を、進行中の再生プロセスに用いる。
【0028】
上記のステップを図2に示す。
【0029】
次に続く内燃機関始動の間、
− 質量を表示する測定パラメータにより、内燃機関及び/又は排気ラインが冷えていることが明らかとなったときに、管理ユニットが上記の修正された質量パラメータを固定し(すなわち上記の差だけ増値される)、
− それから管理ユニットが、前のように、この固定された修正質量パラメータと、時刻tにおいて測定された質量を表示するパラメータとの間の差を定め、
− この差が再び収束によって消滅したときに、管理ユニット12がこの差を、この固定された修正質量パラメータに追加又は増値させ、
− そしてこの修正された質量値が、管理ユニット12によって進行中の再生プロセスに用いられる。
【0030】
図3に上記の方法を示す。
【0031】
図3は第1の段階Aにおいて、走行距離(マイレージ)Kにおけるエンジンの長期停止までの煤の質量の変化を示す。
【0032】
エンジンを再始動するときに、煤の質量は差ΔMだけ増値され、これが再構築された質量Mを得るという役を果たす。
【0033】
その後、走行距離K、K、等においてエンジンが停止された後に、煤の質量は再び、ΔM+ΔM、それからΔM+ΔM+ΔM、(以下同様)の値だけ増値される。
【0034】
図4は、管理ユニットへの初期の煤質量の充填時間の後の、微粒子フィルタ4の入口と出口との間で測定された差圧によって定められた煤質量、再生開始時の測定された煤質量と固定された煤質量との差、及び再生の間に更新された煤質量の差についての時間に伴う変化を示す。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】ターボ過給器を備え、排気ラインに微粒子フィルタが設けられているディーゼルエンジンの全体図である。
【図2】本発明による方法を示す流れ図である。
【図3】微粒子フィルタ内に蓄積される煤の質量の変化を、走行距離の関数として示す線図である。
【図4】煤の、種々の計算された質量の変化を、時間の関数として示す線図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関(1)の排気ライン(3)中に位置する微粒子フィルタ(4)を再生するための方法であって、該方法において、
該微粒子フィルタ(4)内に蓄積された煤の質量を表示するパラメータが測定され、
該表示するパラメータが予め定められたしきい値を超えるときに、該微粒子フィルタ(4)の再生が開始され、そして
該表示するパラメータが或るしきい値よりも低下するときに、該微粒子フィルタの再生が停止され、該方法が、
a)該内燃機関が始動される都度、該内燃機関及び/又は該排気ラインの状態を表示するパラメータが測定されるステップと、
b)該測定されたパラメータにより、該内燃機関及び/又は該排気ラインが冷えていることが明らかとなった場合に、該内燃機関が最後に停止される前に測定された、蓄積された煤の質量を表示する該パラメータが固定されるステップと、
c)該固定された質量パラメータと、時刻tにおいて測定された質量を表示するパラメータとの間の差が連続的に定められるステップと、
d)該差が収束によって消滅したときに、該差が該固定された質量パラメータに追加され、そして該修正された値が、進行中の再生プロセスのために用いられるステップと
を特徴とする、内燃機関(1)の排気ライン(3)中に位置する微粒子フィルタ(4)を再生するための方法。
【請求項2】
次に続く該内燃機関始動の間、
− 該測定されたパラメータにより、該内燃機関及び/又は該排気ラインが冷えていることが明らかとなった場合に、該ステップd)により修正された表示質量パラメータが固定されるステップと、
− 該固定された修正質量パラメータと、時刻tにおいて測定された質量を表示するパラメータとの間の差が連続的に定められるステップと、
− 該差が収束によって消滅したときに、該差が該固定された修正質量パラメータに追加され、そして該修正された値が、進行中の再生プロセスのために用いられるステップと、
を特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
該微粒子フィルタ(4)内に蓄積された煤の質量を表示するパラメータが、該微粒子フィルタ(4)の入口と出口との間の圧力差であることを特徴とする、請求項1又は2のいずれか1項に記載の方法。
【請求項4】
該内燃機関及び/又は該排気ラインの状態を表示するパラメータが温度であることを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
該微粒子フィルタ(4)の各完全再生の後に該プロセスが再初期化されることを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
内燃機関の排気ライン中に位置する微粒子フィルタ(4)を再生するためのシステムであって、該システムが、
該微粒子フィルタ(4)の再生を管理するためのユニット(12)と、
該微粒子フィルタ(4)内に蓄積された煤の質量を表示するパラメータを測定するための少なくとも1つのセンサと、
該表示するパラメータが予め定められたしきい値を超えるときに、該微粒子フィルタ(4)の再生を開始するための、そして該表示するパラメータが或るしきい値よりも低下するときに、該微粒子フィルタの再生を停止するための手段とを備え、該システムが、
a)該内燃機関が始動される都度、該内燃機関及び/又は該排気ラインの状態を表示するパラメータを測定するための少なくとも1つのセンサと、
b)該センサにより、該内燃機関及び/又は該排気ラインが冷えていることが検知されると、該内燃機関が最後に停止される前に測定された煤の質量を表示する該パラメータを固定するための手段と、
c)該固定された質量パラメータと、時刻tにおいて測定された質量を表示するパラメータとの間の差を連続的に定めるための手段と、
d)安定値への収束によって該差が消滅したときに、該差を該固定された質量パラメータに追加するための手段とを備えることを特徴とする、内燃機関の排気ライン中に位置する微粒子フィルタ(4)を再生するためのシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2009−520152(P2009−520152A)
【公表日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−546535(P2008−546535)
【出願日】平成18年11月29日(2006.11.29)
【国際出願番号】PCT/FR2006/051245
【国際公開番号】WO2007/071862
【国際公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【出願人】(503041797)ルノー・エス・アー・エス (286)
【Fターム(参考)】