説明

燃焼用空気改質塗料

【課題】燃焼装置での燃焼効率を高めて燃費を向上させるとともに排ガス中に含まれる有害物質を低減させることが可能な燃焼用空気改質塗料を提供する。
【解決手段】硬化性樹脂に対して、少なくともシクロデキストリングルコシルトランスフェラーゼ、キトサナーゼ、プルナラーゼ、アミラーゼの混合物である酵素を分散させたことを特徴とする燃焼用空気改質塗料を提供する。これにより、燃焼用空気が接触する通気管に燃焼用空気改質塗料が塗布されると、前記酵素が前記通気管に均一に分散されるとともに、前記酵素が前記通気管に固定化されることとなる。そのため、酵素により通気管を通過する空気を改質することが可能となり、燃焼用空気が燃焼される燃焼装置の燃焼効率を高め、燃費を向上させることが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃焼用空気改質塗料に関し、詳しくは、燃焼装置での燃焼効率を高めて燃費を向上させるとともに排ガス中に含まれる有害物質を低減させることが可能な燃焼用空気改質塗料に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、様々な産業分野で使用される内燃機関の一種であるガソリンエンジンは、霧状になったガソリンと空気とをエンジンの燃焼室に同時に吹き込み、これらをプラグのスパークにより爆発的に燃焼反応させてピストンをシリンダの元部側に押し込み、その力でクランク軸を回転させて出力を得る構造となっている。前記燃焼室へ供給される空気は、外気と連通する吸気ダクト、エアークリーナ機構の吹込み口、エアークリーナチャンバー等から案内される。
【0003】
近年、大気の汚染防止、燃費の向上等を意図して、上述した吸気ダクト等に取り付けて当該吸気ダクト等を通過する空気を改質する技術が提案されている。
【0004】
例えば、特開2001−227417号公報(特許文献1)には、耐熱性を有する基体に、燃焼装置内に供給されて燃焼反応を起す燃焼用流体物を構成する、電荷を帯びた原子または分子の凝集体であるクラスターイオンを分散・微細化させるためのセラミックス及び酸化チタンを付着させた燃焼促進装置が開示されている。
【0005】
当該セラミック及び酸化チタンにより、燃焼用流体物のクラスターイオンを中和してこれを分散・微細化させ、その結果、燃焼装置の燃焼効率が高まり、排ガス中の窒素酸化物(NOx),硫黄酸化物(SOx),未燃炭化水素(HC)などの有害物質の含有量が低減され、燃焼装置が長寿命化するとしている。
【0006】
又、特許第3428000号(特許文献2)には、水溶性塗料とトルマリン及びゼオライトとを混合し、このトルマリン及びゼオライトを含有した浄化シートを、車輌のエアークリーナ機構の吸込み口、又はエアークリーナチャンバーに取付け、この浄化シートのトルマリン及びゼオライトと、前記エアークリーナ機構を通過する空気との接触の拡充を図り、前記トルマリン及びゼオライトの特性を発揮可能とした車輌のエアークリーナ内空気の浄化装置であって、前記浄化シートを、トルマリン及びゼオライトを含有した面ファスナーでなるシート本体と、このシート本体の裏面に設けた貼着部とで構成した車輌のエアークリーナ内空気の浄化装置が開示されている。
【0007】
当該浄化装置により、トルマリン微粒子の発生するマイナスイオン機能、電気分解機能等と、ゼオライトの陽イオン交換機能、触媒機能、吸着機能等との特徴を介して、車輌のエアークリーナ内空気中の塵埃除去、消臭、又は殺菌等が図れ、又は空気の清浄化等が図れるとしている。又、浄化シート本体を面ファスナーで形成したことで、空気とトルマリン及びゼオライトとの接触面積・時間の拡充を介して、前記の特徴を最大限に発揮できる構造を提供できる実益があるとしている。
【0008】
又、特開2000−19296号公報(特許文献3)には、活性化させる物質と、この物質に照射する放射線を発生させる放射線発生手段(例えば、モナズ石等)との間に、導電性の金属層を介在させることを特徴とする物質活性化装置が開示されている。
【0009】
当該物質活性化装置により、放射線発生手段が放射する放射線が活性化させる物質をイオン化させると同時に、イオン化の際に生じた電荷が導電性の金属部分に帯電して電界および磁界を生じさせ、かつこのようにして生じた電界および磁界とイオン化された物質とが相互に作用する。そのため、様々な物質を効率よく活性化させて、それぞれ優れた効果を奏することができるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2001−227417号公報
【特許文献2】特許第3428000号
【特許文献3】特開2000−19296号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1乃至特許文献3に記載の技術では、全て無機粒子、鉱石等の比較的重量のある石を採用するため、吸気ダクト等に取り付けた場合、車輌全体が重くなるという問題がある。
【0012】
又、特許文献1乃至特許文献3に記載の技術では、前記石を吸気ダクト等に取り付ける構成であるため、吸気ダクト等の容量に対応させるために比較的体積の小さい形状を採用せざるを得ない。そのため、その形状を有する石と燃焼用空気とが接触する面積は、必然的に小さくなり、十分な燃費効果が得られないという問題がある。
【0013】
又、特許文献1に記載の技術では、排ガス中の一酸化炭素(CO)の含有量が0.08%から0.05%まで、未燃炭化水素(HC)の含有量が114ppmから88ppmまで低減しているが、その低減率はそれほど顕著ではない。尚、一酸化炭素(CO)の含有量の低減率は37.5%、未燃炭化水素(HC)の含有量の低減率は22.8%である。更に、特許文献1に記載の技術では、燃費を示す燃料消費率が9.2km/Lから9.4km/Lまでに増加しているが、その向上率は2.2%であり、それほど顕著ではない。尚、特許文献2乃至特許文献3に記載の技術では、排ガス中の含有量と、燃料消費率との開示がない。
【0014】
そこで、本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、本発明者が鋭意研究を行った結果、画期的なアイデアに基づき、燃焼装置での燃焼効率を高めて燃費を向上させるとともに排ガス中に含まれる有害物質を低減させることが可能な燃焼用空気改質塗料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明者は、硬化性樹脂に対して、少なくともシクロデキストリングルコシルトランスフェラーゼ、キトサナーゼ、プルナラーゼ、アミラーゼの混合物である酵素を分散させた塗料を、燃焼用空気を改質するための塗料として採用した。これにより、燃焼装置の燃費を向上させるとともに、燃焼後の排気ガス中の有害物質の含有量を低減させることが可能な燃焼用空気改質塗料を提供できることを見出した。
【0016】
即ち、本発明は、硬化性樹脂に対して、少なくともシクロデキストリングルコシルトランスフェラーゼ、キトサナーゼ、プルナラーゼ、アミラーゼの混合物である酵素を分散させた燃焼用空気改質塗料である。
【0017】
又、前記硬化性樹脂が、主成分を末端イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーとする湿気硬化性樹脂を採用することができる。
【0018】
又、前記燃料改質用塗料に、前記硬化性樹脂に対して可溶であるとともに非官能性モノマーであるメタクリル酸ベンジルを含有させることができる。
【0019】
又、燃焼用空気改質塗料の使用方法は、燃焼用空気を燃焼装置に供給する通気管に、硬化性樹脂に対して、少なくともシクロデキストリングルコシルトランスフェラーゼ、キトサナーゼ、プルナラーゼ、アミラーゼの混合物である酵素を分散させた燃焼用空気改質塗料を塗布する使用方法を採用することが出来る。
【0020】
<作用>
本発明によれば、燃焼用空気改質塗料が通気管に塗布されると、燃焼用空気改質塗料の硬化性樹脂が硬化して、シクロデキストリングルコシルトランスフェラーゼ、キトサナーゼ、プルナラーゼ、アミラーゼの混合物である酵素が通気管に固定化(担持)される。固定化された酵素が、当該通気管を通過する空気と接触すると、当該酵素のそれぞれの成分が協働的に空気中の酸素等と作用する。当該作用後の空気が燃焼装置に供給されて、燃焼装置で当該空気と霧状の燃料とが混合され、プラグのスパークにより混合気体が燃焼されると、混合気体中の酸素と燃料とが効率よく燃焼されるため、燃焼効率を高めるとともに、排気ガス中の一酸化炭素(CO)、未燃炭化水素(HC)等の有害物質の含有量を低減させることが可能となる。すなわち、前記酵素により、燃焼用空気を改質することが可能となる。又、燃焼効率が良いため、燃焼装置の長寿命化を図ることが可能となる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の燃焼用空気改質塗料によれば、硬化性樹脂に対して、少なくともシクロデキストリングルコシルトランスフェラーゼ、キトサナーゼ、プルナラーゼ、アミラーゼの混合物である酵素を分散させるよう構成している。
【0022】
これにより、ユーザが、燃焼用空気が接触する通気管に燃焼用空気改質塗料を塗布すると、前記酵素が当該通気管に均一に分散されることになる。又、前記硬化性樹脂が硬化すると、前記酵素が前記通気管に固定化されることとなる。そのため、固定化された酵素が通気管を通過する空気を効率よく改質することが可能となる。改質された空気が霧状の燃料とともに燃焼装置で混合され、スパークにより燃焼されると、効率よく燃焼反応を起こすこととなるから、当該燃焼装置の燃焼効率を高め、燃費を向上させることが可能となる。又、燃焼効率を高めることは、不完全燃焼の発生を防止することにもなるから、燃焼後の排気ガス中の有害物質も排出することがなく、環境を汚染することもない。又、燃焼用空気改質塗料は通気管に塗布されるものであるから、当該通気管を通過する空気の接触面積を十分確保することが可能となり、確実に改質された空気を燃焼装置に供給させることが可能となる。その結果、確実な燃費の向上と、十分な有害物質の含有量の低減とを図ることが可能となる。
【0023】
又、前記硬化性樹脂が、主成分を末端イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーとする湿気硬化性樹脂を採用することができる。
【0024】
これにより、ユーザが硬化性樹脂を通気管に塗布すると、空気に触れた当該硬化性樹脂は常温において早期に硬化されることとなるから、前記酵素を通気管に容易に固定化することが可能となる。そのため、塗布後、即時に燃焼装置を利用しても当該酵素の作用を得ることが可能となるとともに、ユーザに対する燃焼用空気改質塗料の取扱性を向上させることが可能となる。更に、末端イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーは、他の硬化性樹脂と比較すると、硬化後の機械的強度と塗布対象物(通気管等)に対する接着強度とが優れるため、通気管が振動するような走行装置、例えば、自動車等に前記燃焼用空気改質塗料を採用したとしても、当該振動により酵素が容易に剥がれ落ちることを防止することが可能となる。
【0025】
又、前記燃料改質用塗料に、前記硬化性樹脂に対して可溶であるとともに非官能性モノマーであるメタクリル酸ベンジルを含有させることができる。
【0026】
これにより、メタクリル酸ベンジルは燃料改質用塗料を可塑化する作用があるから、ユーザは燃焼用空気改質塗料を通気管に均一に塗布することが可能となり、当該通気管を通過する空気に前記酵素を効率よく作用させることが可能となるとともに、ユーザに対する燃焼用空気改質塗料の取扱性を向上させることが可能となる。又、メタクリル酸ベンジルは硬化性樹脂の硬化速度を聊か遅延させる作用があるから、例えば、小瓶に入れた燃焼用空気改質塗料の品質を保持しながら、その瓶に侵入してきた空気の湿気による燃焼用空気改質塗料の硬化を防止し、当該燃焼用空気改質塗料を長期保存させることが可能となる。
【0027】
又、燃焼用空気改質塗料の使用方法として、燃焼用空気を燃焼装置に供給する通気管に、硬化性樹脂に対して、少なくともシクロデキストリングルコシルトランスフェラーゼ、キトサナーゼ、プルナラーゼ、アミラーゼの混合物である酵素を分散させた燃焼用空気改質塗料を塗布する使用方法を採用しても、上述した作用効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施形態に係る燃焼用空気改質塗料の使用方法を示す概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0030】
本発明の燃焼用空気改質塗料は、硬化性樹脂に対して、少なくともシクロデキストリングルコシルトランスフェラーゼ、キトサナーゼ、プルナラーゼ、アミラーゼの混合物である酵素を分散させることにより得られる。
【0031】
前記硬化性樹脂に分散される酵素には、少なくともシクロデキストリングルコシルトランスフェラーゼ、キトサナーゼ、プルナラーゼ、アミラーゼの混合物を使用する必要がある。
【0032】
前記混合物のうち、シクロデキストリングルコシルトランスフェラーゼは、シクロデキストリンを生成させるために用いられる酵素である。又、キトサナーゼは、キトサンを分解するために用いられる酵素である。又、プルナラーゼは、多糖のプルランを加水分解し、デキストリンを生成させるために用いられる酵素である。又、アミラーゼは、デンプン中のアミロースやアミロペクチンを、グルコース、マルトース、オリゴ糖に分解するために用いられる酵素である。アミラーゼは、デンプン中のグリコシド結合を加水分解するものであればよく、例えば、α−アミラーゼ、β―アミラーゼ、グルコアミラーゼが該当する。
【0033】
上述した酵素は、植物、微生物等から精製・抽出された精製酵素であっても、粗酵素であっても構わない。又、これらの酵素を生成する微生物を酵素源として用いても構わない。
【0034】
シクロデキストリングルコシルトランスフェラーゼ、キトサナーゼ、プルナラーゼ、アミラーゼの混合物である酵素が燃焼用空気に接触すると、当該酵素のそれぞれの成分が協働的に空気中の酸素等に作用する。当該作用は、空気中の酸素を燃料と結合し易い状態に変換するものと考えられる。そのため、当該作用後の空気が燃焼装置に供給されて、燃焼装置で当該空気と霧状の燃料とが混合され、プラグのスパークにより混合気体が燃焼されると、混合気体中の酸素と燃料とが効率よく燃焼されることになる。
【0035】
尚、シクロデキストリングルコシルトランスフェラーゼ、キトサナーゼ、プルナラーゼ、アミラーゼの混合割合は、本発明の目的を阻害しない限り、特に限定されないが、例えば、重量を基準とした場合、それぞれの成分の重量が等量となるよう混合される。又、物質量を基準とした場合、それぞれの成分の物質量が等量となるよう混合される。
【0036】
又、シクロデキストリングルコシルトランスフェラーゼ、キトサナーゼ、プルナラーゼ、アミラーゼの混合物である酵素は、例えば、玄米、白米、うるち米、もち米等の稲の胚、胚乳、胚珠、葉、稲藁等から抽出された粗酵素であっても構わない。尚、酵素分析は、市販の酵素分析方法、例えば、キャピラリー電気泳動法、質量分析法、クロマトグラフィー法、遺伝子、DNA等を用いた分析方法等により実行される。
【0037】
前記混合物には、本発明の目的を阻害しない限り、例えば、加水分解酵素、糖転移酵素、異性化酵素等の公知の酵素を更に添加しても構わない。前記加水分解酵素としては、例えば、デキストラナーゼ、ヘミセルラーゼ、β−ガラクトマンナナーゼ(β−ガラクトシダーゼ)、ペクチンエステラーゼ、プルラナーゼ、アルギン酸リアーゼ、キシラナーゼ、ペクチナーゼ、セルラーゼ等が挙げられる。又、前記糖転移酵素としては、例えば、シクロマルトデキストリングルカノトランスフェラーゼ、デキストリンデキストラナーゼ、デキストラナーゼ、β−フラクトフラノシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ等が挙げられる。又、前記異性化酵素としては、ラセマーゼ、グルコーマイソメラーゼ等が挙げられる。
【0038】
前記硬化性樹脂は、前記酵素を分散させることが可能な硬化性樹脂であれば、どのような樹脂でも構わない。ここで、硬化性樹脂に対して酵素が分散された状態であることは、例えば、当該酵素と硬化性樹脂とを混合した際に、その混合物である燃焼用空気改質塗料が光学的に透明であること、酵素が硬化性樹脂と相溶した状態であること、酵素が硬化性樹脂に微分散した状態であること等に対応する。言い換えると、前記硬化性樹脂は、酵素に対して親和性があることを意味する。
【0039】
前記硬化性樹脂としては、例えば、ポリウレタン系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、α−オレフィン系樹脂、エーテル系セルロース樹脂、エチレン−酢酸ビニル系樹脂、エポキシ系樹脂、塩化ビニル系樹脂、クロロプレン系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、シアノアクリレート系樹脂、シリコーン系樹脂、水性高分子−イソシアネート系樹脂、スチレン−ブタジエンゴム系樹脂、ニトリルゴム系樹脂、ニトロセルロース系樹脂、フェノール系樹脂、変性シリコーン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリビニルピロリドン系樹脂、ポリビニルブチラール系樹脂、ポリベンズイミダソール系樹脂、ポリメタクリレート系樹脂、メラミン系樹脂、ユリア系樹脂、レゾルシノール系樹脂等が挙げられる。前記硬化性樹脂には、上述の他に、公知の塗料用樹脂、接着剤用樹脂を採用しても構わない。尚、前記硬化性樹脂は、一液系硬化性樹脂であっても、二液系硬化性樹脂であっても構わない。
【0040】
又、前記硬化性樹脂には、酸素原子から派生する極性分子を有する親水性樹脂、又は酸素原子以外の原子から派生する極性樹脂であることが好ましい。前記硬化性樹脂が疎水性樹脂又は非極性樹脂の場合、前記酵素が硬化性樹脂に分散しない場合がある。
【0041】
又、前記硬化性樹脂には、通気管に塗布した後に硬化した場合、硬化後の硬化性樹脂が所定の機械的強度と、当該通気管に対して所定の接着強度を有することが好ましい。
【0042】
又、前記硬化性樹脂は、添加する硬化触媒に応じて熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂、湿度硬化性樹脂等に分類されるものの、いずれの硬化性樹脂であっても構わない。好ましくは、ユーザに対する取扱性の良さと、塗布後における硬化速度の速さとの観点から、前記硬化性樹脂は、湿度硬化性樹脂であることが好ましい。
【0043】
前記燃焼用空気改質塗料における各成分の配合割合は、本発明の目的を阻害しない限り、特に限定されないが、前記酵素0.05〜30重量%、前記硬化性樹脂99.95〜70重量%が好ましく、より好ましくは前記酵素0.2〜15重量%、前記硬化性樹脂99.8〜85重量%、更に前記酵素1〜10重量%、前記硬化性樹脂99〜90重量%が好ましい。前記酵素が0.05重量%未満の場合には、当該酵素による空気の改質効果が得られない場合があり、当該酵素が30重量%を越える場合には、当該酵素と前記硬化性樹脂とが適切に可溶されず、塗料として取り扱いが困難となる場合がある。
【0044】
又、酵素と硬化性樹脂とを混合する場合は、市販の混練機、攪拌機等を用いて混合すればよい。尚、硬化性樹脂が湿度硬化性樹脂であれば、例えば、真空状態、又は不活性ガス中で、酵素と硬化性樹脂とを混合すればよい。
【0045】
又、前記硬化性樹脂が、主成分を末端イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーとする湿度硬化性樹脂であることが好ましい。主成分を末端イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーとすると、当該硬化性樹脂は湿度硬化性樹脂であって、一液系硬化性樹脂であるから、ユーザは燃焼用空気改質塗料をエアーフィルター等の通気管に均一に塗布することが可能となるとともに、塗布後に迅速に酵素を固定化させることが可能となる。そのため、ユーザに対する燃焼用空気改質塗料の取扱性を向上させることが可能となる。又、末端イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーは、上述した酵素に対して優れた親和性を示し、燃焼用空気改質塗料に採用すると、当該酵素を均一に通気管に分散させ、固定化させることが可能となる。更に、末端イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーは、他の硬化性樹脂と比較すると、硬化後の機械的強度と塗布対象物(通気管等)に対する接着強度とが優れるため、通気管が振動するような走行装置、例えば、自動車等に前記燃焼用空気改質塗料を採用したとしても、当該振動により酵素が容易に剥がれ落ちることを防止することが可能となる。
【0046】
又、前記硬化性樹脂の硬化触媒は、本発明の目的を阻害しない限り、特に限定されないが、例えば、湿度硬化性樹脂の硬化触媒として、ジブチル錫ジアセチルアセトネート、ジブチル錫ジラウレート、オクチル酸錫、ジブチル錫ジマレエート等の有機錫化合物、2,2’−ジモルホリノジエチルエーテル、ジ(2,6−ジメチルモルホリノエチル)エーテル、2−エチルヘキサン酸ビスマス、オクチル酸ビスマス、ネオデカン酸ビスマス等のカルボン酸ビスマス、安息香酸、フタル酸、2−エチルヘキサン酸、オクチル酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸等のカルボン酸等が挙げられる。当該硬化触媒の配合量は、前記硬化性樹脂全量に対して0.005〜0.5%の範囲で選定されてよい。
【0047】
又、前記燃焼用空気改質塗料には、本発明の目的を阻害しない限り、各種添加剤を配合することができる。前記添加剤としては、例えば、老化防止剤、無機充填剤、有機充填剤、難燃化剤、酸化防止剤、帯電防止剤、滑剤等が挙げられる。
【0048】
老化防止剤としては、例えば、メタクリル酸メチル,メタクリル酸エチル,メタクリル酸ブチル,メタクリル酸イソブチル,メタクリル酸t−ブチル,メタクリル酸2−エチルヘキシル,メタクリル酸オクチル,メタクリル酸イソデシル,メタクリル酸ラウリル,メタクリル酸ラウリルートデシル,メタクリル酸トリデシル,メタクリル酸セチル−ステアリル,メタクリル酸ステアリル,メタクリル酸シクロヘキシル,メタクリル酸ベンジル,メタクリル酸2−ヒドロキシエチル,メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル,メタクリル酸ジメチルアミノエチル,メタクリル酸ジエチルアミノエチル,メタクリル酸t−ブチルアミノエチル,メタクリル酸グリシジル,メタクリル酸テトラヒドロフルフリル等のメタクリル酸エステル、ジイソノニルフタレート、ジオクチルフタレート(DOP)、ジブチルフタレート、ジラウリルフタレート、ブチルベンジルフタレート、ジオクチルアジペート、ジイソデシルアジペート、トリオクチルホスフェート、トリス(クロロエチル)ホスフェート、トリス(ジクロロプロピル)ホスフェート、アジピン酸プロピレングリコールポリエステル、アジピン酸ブチレングリコールポリエステル、エポキシステアリン酸アルキル、アルキルベンゼン、エポキシ化大豆油等を挙げることができる。
【0049】
前記老化防止剤として、前記燃料改質用塗料に、前記硬化性樹脂に対して可溶であるとともに非官能性モノマーであるメタクリル酸ベンジルを含有させることが好ましい。ここで、メタクリル酸ベンジルが硬化性樹脂に対して可溶であるとは、メタクリル酸ベンジルと硬化性樹脂とを混合した際に、その混合物が光学的に透明であることを意味する。光学的に透明であることとは、例えば、メタクリル酸ベンジルが硬化性樹脂と相溶した状態であることに対応する。また、メタクリル酸ベンジルが硬化性樹脂に対して非官能性モノマーであるとは、メタクリル酸ベンジルが硬化性樹脂と反応しないことに対応する。前記反応は、例えば、メタクリル酸ベンジルの極性部位が硬化性樹脂の極性部位と結合することを意味する。
【0050】
このメタクリル酸ベンジルは、燃料改質用塗料に対して適度な沸点を有するとともに、当該燃料改質用塗料を可塑化させ、当該燃料改質用塗料に流動性を付与する。そのため、ユーザは燃焼用空気改質塗料をエアーフィルター等の通気管に均一に塗布することが可能となり、ユーザに対する燃焼用空気改質塗料の取扱性を向上させることが可能となる。更に、前記硬化性樹脂が湿度硬化性樹脂であっても、メタクリル酸ベンジルが空気中に含まれる水分(水蒸気)と末端イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーとの反応を阻害して、当該反応を聊か遅延させる。そのため、メタクリル酸ベンジルを含有させると、例えば、小瓶に入れた燃焼用空気改質塗料の品質を保持しながら、その瓶に侵入してきた空気の湿気による燃焼用空気改質塗料の硬化を防止し、当該燃焼用空気改質塗料を長期保存させることが可能となる。
【0051】
前記老化防止剤であるメタクリル酸ベンジルの配合量は、本発明の目的を阻害しない限り、特に限定されないが、前記燃焼用空気改質塗料全重量に対して5〜50重量%が好ましく、より好ましくは10〜40重量%、更に20〜35重量%が好ましい。メタクリル酸ベンジルの配合量が5重量%未満の場合には、上述したメタクリル酸ベンジルの作用が発揮されない場合があり、メタクリル酸ベンジルの配合量が50重量%を超える場合には、前記酵素による空気への作用が得られない場合や前記硬化性樹脂が適切に硬化しない場合がある。
【0052】
無機充填剤としては、例えば、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、珪砂、タルク、クレー、マイカ、シリカ、ゼオライト、グラファイト等が挙げられる。
【0053】
有機充填剤としては、例えば、アラミド繊維、芳香族ポリエステル繊維、液晶ポリマー繊維、ポリイミド繊維、高分子微粒子、木材チップ、澱粉、穀物粉、骨粉等が挙げられる。
【0054】
難燃化剤としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、塩基性炭酸マグネシウム、ハイドロタルク石群(例えば、ハイドロタルク石、スチヒタイト、パイロオーライト等)、二水和石こう、アルミン酸化カルシウム等の金属水酸化物や含水無機結晶化合物が挙げられる。
【0055】
酸化防止剤としては、例えば、フェノール系またはアミン系の酸化防止剤等が挙げられる。帯電防止剤としては、例えば、アニオン系、カチオン系または非イオン系界面活性剤等が挙げられる。滑剤としては、例えば、炭化水素系、脂肪酸系、脂肪酸アミド系、エステル系、アルコール系または金属石鹸系滑剤等が挙げられる。
【0056】
老化防止剤を除く添加剤の配合量は、本発明の目的を阻害しない限り、特に限定されないが、前記燃焼用空気改質塗料全重量に対して、50重量%以下であり、好ましくは30重量%以下であり、更に好ましくは20重量%以下である。
【0057】
上述した燃焼用空気改質塗料は、霧状の燃料とともに混合され、プラグのスパーク等の火花により燃焼される燃焼用空気を燃焼装置に供給する通気管に塗布される。
【0058】
燃料は、燃焼用空気と燃焼反応を起こすことが可能なものであれば、どのようなものでも構わないが、例えば、ガソリン(レギュラーガソリン),ハイオクガソリン、軽油,灯油,重油,プロパン,ジェット燃料等が挙げられる。
【0059】
燃焼用空気は、本発明の目的を阻害しない限り、特に限定されないが、例えば、窒素を約70%、酸素を約28%含有する外気(空気)に対応する。本発明に係る酵素が酸素と作用することを考えると、酸素が所定量含有されていれば、どのような燃焼用空気であっても構わない。
【0060】
燃焼装置は、燃焼用空気と霧状の燃料とが混合された混合気体に火花を与え、当該混合気体を燃焼させることが可能な燃焼装置であれば、本発明の目的を阻害しない限り、特に限定されないが、例えば、ボイラ,ストーブ等の各種の燃焼機器、ガソリンエンジン,ディーゼルエンジン,プロパンガスエンジン,ジェットエンジン等の各種の内燃機関、火力発電機等が挙げられる。又、前記内燃機関が搭載された走行装置としては、軽自動車、自動車(乗用車),小型トラック,大型トラック、バス,オートバイ等が挙げられる。その他にも、リフト車,クレーン車,ショベル車等の各種の特装車、船舶、航空機等が挙げられる。
【0061】
燃焼装置が採用される分野は、工業はもちろん、農業、医療、運輸、航空、宇宙産業等が挙げられる。
【0062】
通気管は、燃焼用空気が接触・通過する管であり、当該燃焼用空気を燃焼装置に供給する管であれば、本発明の目的を阻害しない限り、特に限定されないが、例えば、燃焼装置に外気等を供給する吸気ダクト、エアーダクト、エアークリーナ、エアークリーナ機構の吹込み口、エアークリーナチャンバー、ホース、蛇腹式ゴムホース、配管、通気孔等が挙げられる。燃焼用空気が通過・接触する通気管であれば、前記吸気ダクト等に取り付けられたエアーフィルター内部、エアーフィルタエレメント等であっても構わない。通気管がエアーフィルター、エアーフィルタエレメント等の多孔性を有する中空体であれば、例えば、燃焼用空気改質塗料を当該中空体に浸してから燃焼用空気改質塗料を硬化させ、前記酵素を中空体に固定化させればよい。
【0063】
通気管に塗布される燃焼用空気改質塗料の塗布面積は、当該通気管の形状、容積や燃焼装置の燃焼能力に応じて異なるから、本発明の目的を阻害しない限り、特に限定されない。
【0064】
例えば、自動車であれば、当該自動車に取り付けられるエアークリーナの容積が約0.5〜5Lの範囲内であるから、例えば、燃焼用空気改質塗料が塗布される塗布領域は、全容積に対して5分の1から3分の2までの範囲内で燃焼用空気改質塗料が塗布されることが好ましく、更に全容積に対して5分の2から3分の1までの範囲内で塗布されることが好ましい。前記塗布領域を塗布面積に換算すると、例えば、エアークリーナの内周面に塗布される塗布面積は360〜1800cm2が好ましく、更に600〜1600cm2が好ましい。又、大型トラックであれば、当該大型トラックに取り付けられるエアークリーナの容積が約1〜20Lの範囲内であるから、例えば、エアークリーナの内周面に塗布される塗布面積は600〜4500cm2が好ましく、更に1000〜2500cm2が好ましい。又、オートバイであれば、当該オートバイに取り付けられるエアークリーナの容積が約10〜300ccの範囲内であるから、エアークリーナの内周面に塗布される塗布面積は25〜300cm2が好ましく、更に50〜250cm2が好ましい。尚、上述した塗布対象であるエアークリーナを吸気ダクト等に変更しても構わない。
【0065】
通気管に塗布される燃焼用空気改質塗料の塗布量は、当該通気管の形状、容積や燃焼装置の燃焼能力に応じて異なるから、本発明の目的を阻害しない限り、特に限定されない。
【0066】
例えば、自動車であれば、当該自動車のエアークリーナの内周面に塗布される塗布面積は360〜1800cm2の範囲内であり、一回の塗布厚みが約1mmであるから、それに対応する燃焼用空気改質塗料の塗布量は、8〜20gの範囲内となる。多重に燃焼用空気改質塗料を塗布する場合は、燃焼用空気改質塗料の塗布量は、10〜16gの範囲内となる。又、大型トラックであれば、当該大型トラックのエアークリーナの内周面に塗布される塗布面積は600〜4500cm2の範囲内であるから、一回の塗布厚みが約1mmであるとすると、燃焼用空気改質塗料の塗布量は、10〜40gの範囲内となる。多重塗りの場合は、燃焼用空気改質塗料の塗布量は、20〜30gの範囲内となる。
【0067】
次に、前記燃焼用空気改質塗料の使用方法を説明する。尚、ここでは燃焼装置の一例として内燃機関の一種であるガソリンエンジンを取り上げる。このエンジンの燃料は、レギュラーガソリンとする。
【0068】
図1には、燃焼用空気改質塗料の使用方法を示す概略平面図である。
【0069】
図1Aに示すように、燃焼用空気改質塗料を使用する際は、ユーザが自動車100の前部にあるボンネット101を開放すると、当該ボンネット101下方に収納されたエンジン102と、当該エンジン102に連通されたエアークリーナ103(エアークリーナボックスともいう)と、当該エアークリーナ103に連通された吸気ダクト104とが露出される。エンジン102とエアークリーナ103との間と、エアークリーナ103と吸気ダクト104との間には、それぞれホース105a、105bにより接続されている。尚、前記エアークリーナ103の容量は4L(内部の表面積は約1500cm2)とする。
【0070】
そこで、ユーザは、図1Bに示すように、エアークリーナの上蓋103aを取り外すと、エアークリーナ103内部に設置された、エアーフィルター機能を有するエアークリーナエレメント106が露出される。ユーザは、前記エアークリーナエレメント106をエアークリーナの底皿103bから取り外す。
【0071】
次に、ユーザは、前記上蓋103aの内部(内周部)と、前記底皿103bの内部(内周部)とを雑巾等で拭いて当該内部に付着した汚染物を除去する。
【0072】
前記上蓋103aと底皿103bとの拭き清掃が完了すると、ユーザは、燃焼用空気改質塗料が13g入れられたガラス製の瓶107の蓋108を当該瓶107から取り外し、所定の刷毛109を燃焼用空気改質塗料に馴染ませる。ユーザは、当該刷毛109を用いて、燃焼用空気改質塗料を上蓋103aの内部と底皿103bの内部とに均一に塗布する。尚、塗布の際は、ユーザは、燃焼用空気改質塗料を上蓋103aの内部の全領域と底皿103bの内部の全領域とに満遍なく塗布する。当該塗布の際は、瓶107内の燃焼用空気改質塗料を全て使い切ることが好ましい。
【0073】
塗布が完了してから所定の乾燥時間(例えば、5〜20分程度)、燃焼用空気改質塗料を乾燥させる。燃焼用空気改質塗料が乾燥した後に、ユーザはエアークリーナエレメント106をエアークリーナの底皿103bに取り付けて、当該エアークリーナの底皿103bにエアークリーナの上蓋103aを取り付ける。次に、ボンネット101を閉めた後に、ユーザがエンジン102を駆動させると、吸気ダクト104からエアークリーナ103を介してエンジン102へ空気が供給されることとなるが、当該空気は燃焼用空気改質塗料内の酵素により改質されるから、エンジン102内で酸素と霧状の燃料とが混合され、プラグのスパークにより混合気体が効率的に燃焼反応を起こす。従って、エンジン102の燃焼効率は高まることになる。
【0074】
尚、上記では、ユーザが、燃焼用空気改質塗料をエアークリーナ103内部に塗布するように構成したが、燃焼用空気改質塗料を吸気ダクト104の内部やホース105aの内部、105bの内部に塗布するよう構成しても構わない。
【実施例】
【0075】
以下に本発明の実施例について説明するが、本発明はその適用が本実施例に限定されるものでない。
【0076】
(実施例1)
真空状態を保持した市販の混練機に、市販の湿度硬化性樹脂である末端イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーを混入し、更に、市販のシクロデキストリングルコシルトランスフェラーゼ、キトサナーゼ、プルナラーゼ、アミラーゼを少量ずつ(重量を基準としてそれぞれ等量程度)添加して、所定時間、混練を実施して、燃焼用空気改質塗料を得た。これらの酵素の添加量は、当該酵素の混合物が5重量%、末端イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーが95重量%となるよう調整した。
【0077】
又、上述の方法では、酵素を末端イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーに均一に分散させるために、当該酵素を全て含む混合物を予め調整しておいて、その混合物を末端イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーに添加しても構わない。更に、酵素と末端イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーとに対して相溶性を示す溶媒を、本発明の目的を阻害しない程度に使用しても構わない。更に、混合条件に応じて、混練機に熱を加えても、冷却しても構わない。
【0078】
(実施例2)
真空状態を保持した実施例2と異なる混練機に、実施例1で得られた燃焼用空気改質塗料とメタクリル酸ベンジルとを添加して、所定時間、混練を実施して、燃焼用空気改質塗料を希釈した。これらの添加量は、実施例1で得られた燃焼用空気改質塗料が70重量%、メタクリル酸ベンジルが30重量%となるよう調整した。
【0079】
<燃焼用空気改質塗料に関する特性改質試験>
石川県の自動車整備工場に、実施例1に係る燃焼用空気改質塗料を用いた自動車の特性改質試験を依頼した。その際の試験結果を記載する。行った試験は、実施例1に係る燃焼用空気改質塗料をエアークリーナ内部に塗布する前及び塗布した後における10・15モードの自動車排出ガス試験である。
【0080】
試験用の自動車は、車名・型式:スズキ アルト、総排気量:660ccの軽自動車を使用した。又、当該軽自動車の燃料はレギュラーガソリンを使用した。又、当該軽自動車のエアークリーナの表面積は、約800cm2程度である。又、実施例1に係る燃焼用空気改質塗料の塗布量は、約13gである。
【0081】
排ガスの計測器には、ディーゼルスモークメータ(株式会社イヤサカ製 GSM−10H)、燃費の計測器には、シャーシダイナモメータ(株式会社堀場製作所製)を使用した。
【0082】
表1には、10・15モードの自動車排出ガス試験の結果を示す。
【0083】
【表1】

【0084】
表1から明らかなように、実施例1に係る燃焼用空気改質塗料を塗布することによって、排ガス中の一酸化炭素(CO)の含有量が0.06%から0.01%までに低減され、未燃炭化水素(HC)の含有量が157ppmから75ppmまでに低減されている。よって、実施例1に係る燃焼用空気改質塗料により、排ガス中の有害物質が著しく低減していることが理解される。尚、一酸化炭素(CO)の含有量の低減率は83.3%、未燃炭化水素(HC)の含有量の低減率は52.2%である。
【0085】
更に、燃費を示す燃料消費率が13.64km/Lから18.23km/Lまでに増加して、燃費が著しく向上していることも理解される。燃料消費率の向上率は33.6%である。
【0086】
<燃焼用空気改質塗料に関する走行試験>
次に、私的な走行試験結果を記載する。行った走行試験は、実施例1に係る燃焼用空気改質塗料を自家用自動車のエアークリーナ内部に塗布する前及び塗布した後における排出ガス試験と、燃費算出試験である。
【0087】
走行試験用の自動車は、車名・型式:日産 セドリック 1992年Y32型、総排気量:3000ccの自家用自動車を使用した。又、当該自動車の燃料はハイオクガソリンを使用した。又、当該自家用自動車のエアークリーナの表面積は、約1500cm2程度である。又、実施例1に係る燃焼用空気改質塗料の塗布量は、約13gである。
【0088】
走行試験方法は、以下の通りである。燃焼用空気改質塗料を塗布する前に、大阪府吹田市の吹田ICの近辺にある所定のガソリンスタンドで上述した自家用自動車にハイオクガソリンの給油を依頼し、当該ハイオクガソリンの給油量(L)と、当該自家用自動車の走行距離(km)とを記録した。次に、当該自家用自動車で、吹田ICから岡山県真庭市の久世ICまでの間の高速道路(片道約360km)を平均速度90km/hで往復走行した。そして、吹田ICの近辺の前記ガソリンスタンドでハイオクガソリンの給油を再度依頼し、往復走行後のハイオクガソリンの給油量(L)と、自家用自動車の走行距離(km)とを記録した。
【0089】
前記ガソリンスタンド近辺にある自動車整備会社から市販の燃焼排ガス分析計を借りて、前記自家用自動車の排ガス中に含まれる一酸化炭素(CO)、未燃炭化水素(HC)の測定試験を行った。
【0090】
次に、往復走行後のハイオクガソリンの給油量から往復走行前のハイオクガソリンの給油量を減算して、往復走行に消費したハイオクガソリン量(消費ハイオク量)(L)を算出した。又、往復走行後の走行距離から往復走行前の走行距離を減算して、往復走行した距離である往復走行距離(km)を算出した。そして、当該往復走行距離(km)から消費ハイオク量(L)を除算して燃料消費率(km/L)を算出した。
【0091】
次に、前記自家用自動車のエアークリーナ内部に実施例1に係る燃焼用空気改質塗料を塗布した後に、上述した走行試験を、燃焼用空気改質塗料を塗布する前と同様に実施した。尚、燃焼用空気改質塗料を塗布する前の走行試験と、塗布した後の走行試験との試験日は異なる。
【0092】
表2には、前記走行試験の結果を示す。
【0093】
【表2】

【0094】
表2から明らかなように、実施例1に係る燃焼用空気改質塗料を塗布することによって、排ガス中の一酸化炭素(CO)の含有量が0.37%から0.00%までに低減され、未燃炭化水素(HC)の含有量が128ppmから0ppmまでに低減されている。よって、実施例1に係る燃焼用空気改質塗料により、排ガス中の有害物質が著しく低減していることが理解される。尚、一酸化炭素(CO)の含有量の低減率は100.0%、未燃炭化水素(HC)の含有量の低減率は100.0%である。
【0095】
更に、燃費を示す燃料消費率が8.28km/Lから9.61km/Lまでに増加して、燃費が著しく向上していることも理解される。燃料消費率の向上率は16.2%である。
【0096】
<燃焼用空気改質塗料に関する長期間走行試験>
次に、奈良県の運輸会社の保有する大型トラックに実施例1に係る燃焼用空気改質塗料を用いた場合の長期間走行試験結果を記載する。行った長期間走行試験は、実施例1に係る燃焼用空気改質塗料を大型トラックのエアークリーナ内部に塗布する前及び塗布した後における燃費算出試験である。
【0097】
長期間走行試験用の大型トラックは、車名・型式:いすゞ GIGA 10.0トン、総排気量:14000ccの大型トラックを使用した。又、当該大型トラックの燃料は軽油を使用した。又、当該大型トラックのエアークリーナの表面積は、約2500cm2程度である。又、実施例1に係る燃焼用空気改質塗料の塗布量は、約28gである。
【0098】
長期間走行試験方法は、以下の通りである。燃焼用空気改質塗料を塗布する前に、定期便に使用される大型トラックに軽油の給油を依頼し、当該軽油の給油量(L)と、当該大型トラックの走行距離(km)とを記録した。前記大型トラックの長期間走行経路は、奈良を出発地点として熊本へ向かって走行した後に、熊本から名古屋へ行き、到着地点である奈良に帰還する経路である。
【0099】
長期間走行試験の期間は、平成19年6月1日から平成19年6月30日までの1月間である。前記大型トラックは定期便であるため、長期間走行経路での大型トラックの積載量は、ほぼ同等である。前記長期間走行試験の期間中で、所定のガソリンスタンド等で大型トラックに給油を依頼した場合は、その都度、軽油の給油量(L)と走行距離(km)とを記録した。
【0100】
長期間走行試験の期間が経過後に、当該期間中に大型トラックが消費した消費軽油量(L)を上述した記録データに基づいて算出した。又、前記期間中に大型トラックが走行した距離である長期間走行距離(km)も上述した記録データに基づいて算出した。そして、当該長期間走行距離(km)から消費軽油量(L)を除算して燃料消費率(km/L)を算出した。
【0101】
次に、前記大型トラックのエアークリーナ内部に燃焼用空気改質塗料を塗布した後に、上述した長期間走行試験を、燃焼用空気改質塗料を塗布する前と同様に実施した。尚、燃焼用空気改質塗料を塗布する前の長期間走行試験と、塗布した後の長期間走行試験との試験期間は異なり、塗布後の長期間走行試験の期間は、平成19年7月1日から平成19年7月31日までの1月間である。
【0102】
表3には、前記長期間走行試験の結果を示す。
【0103】
【表3】

【0104】
表3から明らかなように、実施例1に係る燃焼用空気改質塗料を塗布することによって、燃費を示す燃料消費率が2.21km/Lから2.49km/Lまでに増加して、燃費が著しく向上していることが理解される。尚、燃料消費率の向上率は12.7%である。
【0105】
<燃焼用空気改質塗料に関する運転試験>
次に、水温調節機に利用されるディーゼル発電機に実施例1に係る燃焼用空気改質塗料を用いた場合の運転試験結果を記載する。行った運転試験は、実施例1に係る燃焼用空気改質塗料を当該ディーゼル発電機のエンジンの吸気管に塗布する前及び塗布した後における燃費算出試験である。
【0106】
運転試験用のディーゼル発電機は、ヤンマー株式会社のディーゼル発電機を使用した。又、当該ディーゼル発電機の燃料は灯油を使用した。又、当該ディーゼル発電機の吸気管の内部に燃焼用空気改質塗料を塗布した。当該シロッコファンは、外気の空気を燃焼装置に供給する役割を果たす。その塗布面積は、約3000cm2程度である。又、実施例1に係る燃焼用空気改質塗料の塗布量は、約28gである。
【0107】
運転試験方法は、以下の通りである。燃焼用空気改質塗料を塗布する前に、前記ディーゼル発電機の現時点の燃料(L)と、アワーメータに表示される駆動時間(h)とを記録した。次に、当該ディーゼル発電機を8時間継続して駆動させた。8時間経過後に、当該ディーゼル発電機の燃料(L)と、駆動時間(h)とを記録した。記録した燃料(L)と駆動時間(h)とに基づいて、単位燃料当たりにディーゼル発電機が駆動可能な時間を示す燃料消費率(h/L)を算出した。前記燃料消費率(h/L)は、前記駆動時間(h)を燃料(L)で除算すればよい。尚、上述した特性改質試験、走行試験等における単位燃料当たりに自動車等が走行可能な距離を示す燃料消費率(km/L)と、駆動時間を利用して算出された燃料消費率(h/L)とは相互に単位が異なる。
【0108】
次に、前記ディーゼル発電機の吸気管の内部に実施例1に係る燃焼用空気改質塗料を塗布した後に、上述した運転試験を、燃焼用空気改質塗料を塗布する前と同様に実施した。尚、燃焼用空気改質塗料を塗布する前の運転試験と、塗布した後の運転試験との試験日は異なる。
【0109】
表4には、前記長期間走行試験の結果を示す。
【0110】
【表4】

【0111】
表4から明らかなように、実施例1に係る燃焼用空気改質塗料を塗布することによって、燃費を示す燃料消費率が0.24h/Lから0.40h/Lまでに増加して、燃費が著しく向上していることが理解される。燃料消費率の向上率は66.7%である。
【0112】
尚、上述した特性改質試験、走行試験等の燃料消費率の向上率(33.6%、16.2%、12.7%)と比較すると、運転試験の燃費消費率の向上率(66.7%)が著しいことが理解される。
【0113】
これは、走行試験で用いる自動車の走行は、運転手による運転の仕方、荷物の積載量、走行速度、道路交通状況(交通渋滞の有無等)等に影響を受けやすい。一方、運転試験で用いるディーゼル発電機の運転は、当該運転条件がほぼ一定であり、当該運転に影響を及ぼす因子が格段に少ないため、上述した燃焼用空気改質塗料の効果が顕著に表れたと推測している。
【0114】
<燃焼用空気改質塗料に関する長期保管試験>
次に、燃焼用空気改質塗料を所定の環境で保管した場合の長期保管試験結果を記載する。行った長期保管試験は、老化防止剤を添加していない実施例1の燃焼用空気改質塗料と、老化防止剤としてメタクリル酸ベンジルを添加した実施例2の燃焼用空気改質塗料とにおける硬化試験である。
【0115】
実施例1の燃焼用空気改質塗料と実施例2の燃焼用空気改質塗料とをそれぞれ30mLのラボランスクリュー管瓶に13gずつ入れ、それぞれのラボランスクリュー管瓶に蓋をし、当該ラボランスクリュー管瓶を、温度20度、湿度65%RHに設定された恒温恒湿槽内に約1年間保管した。
【0116】
約1年経過した後、恒温恒湿槽からラボランスクリュー管瓶を取り出して、目視観察と、上述した燃焼用空気改質塗料に関する走行試験とを実施した。
【0117】
老化防止剤を添加していない実施例1の燃焼用空気改質塗料は、ラボランスクリュー管瓶内で燃焼用空気改質塗料全てが硬化した状態であり、塗布出来ない状態であった。当該硬化の原因は、ラボランスクリュー管瓶と蓋との間から空気が侵入し、ラボランスクリュー管瓶内部で燃焼用空気改質塗料が硬化反応を起こしたためと推測している。
【0118】
一方、メタクリル酸ベンジルを添加した実施例2の燃焼用空気改質塗料は、ラボランスクリュー管瓶内で硬化することなく、燃焼用空気改質塗料が所定の流動性を保持したままであった。実施例2の燃焼用空気改質塗料を自動車のエアークリーナ内部に塗布し、上述した燃焼用空気改質塗料に関する走行試験を実施したところ、実施例2の燃焼用空気改質塗料を塗布した際の排ガス中の一酸化炭素(CO)の含有量と未燃炭化水素(HC)の含有量とが、実施例1の燃焼用空気改質塗料を塗布した際の排ガス中の一酸化炭素(CO)の含有量と未燃炭化水素(HC)の含有量とほぼ同等であった。又、実施例2の燃焼用空気改質塗料を塗布した際の燃料消費率が、実施例1の燃焼用空気改質塗料を塗布した際の燃料消費率とほぼ同等であった。従って、実施例2の燃焼用空気改質塗料の品質は、長期保管した後であっても同等であることが確認された。
【0119】
尚、実施例1では、市販の酵素を用いて燃焼用空気改質塗料を作成したが、他の方法により作成しても構わない。例えば、シクロデキストリングルコシルトランスフェラーゼ、キトサナーゼ、プルナラーゼ、アミラーゼの混合物の酵素は、稲から抽出された粗酵素が当該酵素の混合物の成分として存在している場合がある。そのため、市販の酵素に代えて、稲から抽出された酵素(シクロデキストリングルコシルトランスフェラーゼ、キトサナーゼ、プルナラーゼ、アミラーゼの混合物)を少量、市販の湿度硬化性樹脂である末端イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーに添加して所定時間、市販の混練機で混練を実施して、燃焼用空気改質塗料を得ても構わない。前記酵素の添加量は、当該酵素の混合物が5重量%、末端イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーが95重量%となるよう調整することができる。
【産業上の利用可能性】
【0120】
以上のように、本発明に係る燃焼用空気改質塗料は、内燃機関が搭載された軽自動車、自動車、大型トラック等の走行装置はもちろん、水温調整用ディーゼル発電機等の内燃機関、燃焼装置が搭載された農業用装置、工業用装置、医療用装置等においても有用であり、燃焼装置での燃焼効率を高めて燃費を向上させるとともに排ガス中に含まれる有害物質を低減させることが可能な燃焼用空気改質塗料として有効である。
【符号の説明】
【0121】
100 自動車
101 ボンネット
102 エンジン
103 エアークリーナ
103a 上蓋
103b 底皿
104 吸気ダクト
105a、105b ホース
106 エアークリーナエレメント
107 瓶
108 蓋
109 刷毛

【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化性樹脂に対して、少なくともシクロデキストリングルコシルトランスフェラーゼ、キトサナーゼ、プルナラーゼ、アミラーゼの混合物である酵素を分散させたことを特徴とする燃焼用空気改質塗料。
【請求項2】
前記硬化性樹脂が、主成分を末端イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーとする湿気硬化性樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の燃焼用空気改質塗料。
【請求項3】
前記燃料改質用塗料に、前記硬化性樹脂に対して可溶であるとともに非官能性モノマーであるメタクリル酸ベンジルを含有させたことを特徴とする請求項2に記載の燃焼用空気改質塗料。
【請求項4】
燃焼用空気を燃焼装置に供給する通気管に、硬化性樹脂に対して、シクロデキストリングルコシルトランスフェラーゼ、キトサナーゼ、プルナラーゼ、アミラーゼの混合物である酵素を分散させた燃焼用空気改質塗料を塗布することを特徴とする燃焼用空気改質塗料の使用方法。

【図1】
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【公開番号】特開2010−215837(P2010−215837A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−65968(P2009−65968)
【出願日】平成21年3月18日(2009.3.18)
【出願人】(509078218)
【Fターム(参考)】