説明

燃焼装置とその制御方法

【課題】ボイラーへの給気量の制御に利用される出口酸素濃度センサーの測定不良を容易に検出でき、ボイラーの燃焼効率の悪化を回避できるようにする。
【解決手段】出口酸素濃度と下流酸素濃度と給気量との3者の時間的変化および定常状態における相関関係を、給気量を操業調整範囲の上下限値の間で繰り返し連続的に変化させた場合および給気量を一定にした場合において予め測定し求めておき、その後、ボイラー操業中に、随時測定した出口酸素濃度、下流酸素濃度及び給気量のうち少なくとも二者が所定の範囲から外れるまでは、出口酸素濃度に基いて給気量を制御し、出口酸素濃度、下流酸素濃度及び給気量のうち少なくとも二者が所定の範囲から外れた場合は、出口酸素濃度センサーの異常を警報するとともに、下流酸素濃度に基いて給気量を制御するように切り替える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料を燃焼させるボイラーを備えた燃焼装置と、ボイラーに供給する給気量を調整して燃焼を制御する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
かかる燃焼装置には、ボイラー内の燃焼を制御するために、ボイラーへの給気量を調整するためのダンパー等の給気量調整機構が設けられている(特許文献1参照)。また、ボイラー等の燃焼炉から排出された排ガス中の出口酸素濃度を測定し、その出口酸素濃度に基いて燃焼炉への給気量を調整する方法が一般に知られている(特許文献2、3、4参照)。
【0003】
【特許文献2】特開2006−258320号公報
【特許文献3】特開平10−339420号公報
【特許文献4】特開平4−344019号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで燃焼装置では、ボイラーから排気経路を経て排気された排ガスを、脱硝装置、脱硫装置、集塵機などの各種処理装置で処理した後、排気経路の最後にある煙突から大気中に排出させている。また、煙突入口には、排ガスが適切に処理されていることを確認するために、酸素濃度センサーが配置されている。しかしながら従来は、煙突入口に設けられている酸素濃度センサーは専ら排ガス処理の確認のためのみに利用されていた。また、煙突は排気経路の最後に設けられているためボイラーからは相当に離れており、更にボイラーと煙突の間には脱硝装置、脱硫装置、集塵機などの各種処理装置が介在していることもあり、煙突の位置で測定した酸素濃度を、ボイラーへの給気量の制御に利用することは、従来行われてこなかった。その理由は、途中で介在する前記各種装置により、時間差をおいて排出された排ガスが互いに混じり合い、煙突入口における酸素濃度は、もはやボイラー出口における酸素濃度変動に鋭敏に連動したものとはなっていないと予想され、ボイラーへの給気量の制御に利用することは全く適さないと、技術常識上考えられたことがその原因と考えられる。
【0005】
本発明の目的は、煙突入口に設けられている酸素濃度センサーを活用し、ボイラーへの給気量の制御に利用されるボイラー出口酸素濃度センサーの故障による測定不良を容易に検出でき、かつ、ボイラー出口酸素濃度センサーの故障から修繕までの間であっても、ボイラーの運転を続行でき、その間のボイラーの燃焼効率の悪化を回避できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、ボイラーと煙突の間に脱硝装置、脱硫装置、集塵機などの各種処理装置が介在している実プラントの燃焼装置において、ボイラーに供給する給気量と、ボイラーの出口での排ガス中の酸素濃度(出口酸素濃度)と、排ガスを大気中に排出させる煙突での排ガス中の酸素濃度(下流酸素濃度)について実操業中に同時に連続測定および比較検討を行った。その結果、これら三者の間には一定の相関関係があり、出口酸素濃度と下流酸素濃度は、所定の時間間隔を持って同じ傾向を鋭敏に示すことを見出した。このため、下流酸素濃度による給気量制御は、前記時間間隔があることで、通常の出口酸素濃度による給気量制御よりも原理的に時間的応答性が劣るものの、出口酸素濃度センサー不具合時には、十分適用可能であり、燃焼効率の悪化を抑制することができることを見出した。本発明はかかる「コロンブスの卵」的新規な発見に基いて創出されたものであって、当業者が想到する上で、前記のように技術常識上、適用性が疑われ、着目されることもないという、技術的常識上の「阻害要因」を乗り越えて発明に到ったものである。
【0007】
即ち、本発明によれば、燃料を燃焼させるボイラーに供給する空気量を制御する燃焼装置の制御方法であって、ボイラーに供給する給気量を給気量センサーで測定し、ボイラーから排気された排ガス中の酸素濃度をボイラーの出口で、出口酸素濃度センサーで同時に測定すると共に、ボイラーの出口よりも下流の位置においてボイラーから排気された排ガス中の酸素濃度を下流酸素濃度センサーで、同時に測定し、出口酸素濃度センサーで測定される出口酸素濃度と、下流酸素濃度センサーで測定される下流酸素濃度と、給気量センサーで測定される給気量との3者の時間的変化および、定常状態における相関関係を、給気量を操業調整範囲の上下限値の間で繰り返し連続的に変化させた場合および、給気量を一定にした場合において、予め測定し求めておき、その後、ボイラー操業中に、随時測定した出口酸素濃度、下流酸素濃度及び給気量のうち少なくとも二者が該相関関係の基準から、出口酸素濃度センサー下流酸素濃度センサー及び給気量センサーのそれぞれの各測定誤差の10倍の範囲から外れるまでは、出口酸素濃度に基いて給気量を制御し、出口酸素濃度、下流酸素濃度及び給気量のうち少なくとも二者が前記各測定誤差の10倍の範囲から外れた場合は、出口酸素濃度センサーの異常を警報するとともに、下流酸素濃度に基いて給気量を制御するように切り替えることを特徴とする、燃焼装置の制御方法が提供される。
【0008】
この制御方法において、排ガスを大気中に排出させる煙突入口において下流酸素濃度を測定しても良い。また、測定した下流酸素濃度のみが前記相関関係の範囲から外れた場合は、測定された出口酸素濃度に基いて給気量を制御しながら、下流酸素濃度を測定する下流酸素濃度センサーの異常を警報することができる。また、給気量のみが前記相関関係の範囲から外れた場合は、出口酸素濃度に基いて給気量を制御しながら、給気量を測定する給気量センサーの異常を警報することができる。また、下流酸素濃度と給気量の両方が前記相関関係の範囲から外れた場合は、下流酸素濃度に基いて給気量を制御しながら、出口酸素濃度を測定する出口酸素濃度センサーの異常を警報することができる。
【0009】
また、本発明によれば、燃料を燃焼させるボイラーと、ボイラーに空気を供給する給気経路と、ボイラーから排ガスを排気させる排気経路を備えた燃焼装置であって、前記給気経路に、ボイラーに供給する給気量を調整する給気量調整機構と、給気量を測定する給気量センサーが設けられ、前記排気経路に、排ガス中の酸素濃度をボイラーの出口で測定する出口酸素濃度センサーと、ボイラーの出口よりも下流の煙突入口において排ガス中の酸素濃度を同時測定する下流酸素濃度センサーが設けられ、出口酸素濃度センサーで測定される出口酸素濃度と、前記下流酸素濃度センサーで測定される下流酸素濃度と、給気量センサーで測定される給気量との三者の時間的変化および、定常状態における前記相関関係に基いて、給気量調整機構を制御して給気量を調整する制御部を有し、上記制御方法により燃焼制御を行う、燃焼装置が提供される。
【0010】
この燃焼装置において、前記下流酸素濃度センサーは、排ガスを大気中に排出させる煙突入口において下流酸素濃度を測定しても良い。また、前記制御部は、下流酸素濃度と出口酸素濃度と給気量との前記相関関係を予め記憶しておき、下流酸素濃度と給気量の両方が前記相関関係の範囲から外れるまでは、出口酸素濃度に基いて給気量を制御し、下流酸素濃度と給気量の両方が前記相関関係の範囲から外れた場合は、下流酸素濃度に基いて給気量を制御するように切り替えるようにしても良い。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ボイラーの出口で測定される出口酸素濃度と、ボイラーの出口よりも下流の位置において測定される下流酸素濃度と、ボイラーに供給する給気量との相関関係に基いて、出口酸素濃度センサーの測定不良を容易に検出できるようになる。これにより、出口酸素濃度センサーの点検等を適切なタイミングで実施できるようになる。また、出口酸素濃度センサーに測定不良が生じた場合は、下流酸素濃度に基いて給気量を制御するように運転を切り替えることにより、ボイラーの燃焼効率の悪化や運転不具合の発生を回避できる。その結果、運転コストの増加を防止することが可能となる。加えて、本発明によれば、給気量センサーや下流酸素濃度センサーの測定不良も容易に検出できるようになり、給気量センサーや下流酸素濃度センサーの点検等も適切なタイミングで実施できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態にかかる燃焼装置の模式的な説明図である。
【図2】本発明の実施の形態にかかる制御方法を説明するためのフローシートである。
【図3】実施例の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照にして説明する。図1は、本発明の実施の形態にかかる燃焼装置1の模式的な説明図である。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0014】
燃焼装置1には、ボイラー10が設けられており、このボイラー10において燃料を燃焼させることにより水蒸気が発生され、水蒸気の動力によって電力等のエネルギーを発生させる。ボイラー10には、ボイラー10に対して空気を供給する給気経路11と、ボイラー10から排出される排ガスを排気させる排気経路12が接続されている。給気経路11には、サイレンサー15、給気量調整機構としての可動ベーン16、押込通風機17、熱交換器18、第1の給気量センサー19が順に設けられている。
【0015】
可動ベーン16の開度は、アクチュエータ25によって調整される。第1の給気量センサー19は、オリフィス26と差圧計27の組み合わせで構成される。
【0016】
また、熱交換器18とボイラー10の間には、給気経路11から分岐した燃料供給経路30が接続されている。この燃料供給経路30には、第2の給気量センサー31と燃料供給機構32が順に設けられている。第2の給気量センサー31は、オリフィス35と差圧計36の組み合わせで構成される。燃料供給機構32は、燃料供給経路30を流れる空気に対して石炭、ガス等の燃料を供給する。
【0017】
排気経路12には、脱硝機構40、熱交換器18、電気集塵機41、誘引通風機42、脱硫機構43、煙突44が順に設けられている。熱交換器18は、給気経路11と排気経路12の両方に跨って配置されており、給気経路11を介してボイラー10に供給される空気と、排気経路12を介してボイラー10から排出される排ガスを熱交換させている。この熱交換により、ボイラー10への給気温度が上昇し、ボイラー10内における燃焼効率が向上させられ、また、排気経路12から大気中に排出される排ガス温度が下げられる。なお、熱交換器18には、例えば再生回転式空気予熱器などが利用される。
【0018】
ボイラー10と脱硝機構40の間には、給気経路12を介して排気される排ガス中の酸素濃度をボイラー10の出口で測定する出口酸素濃度センサー50が配置されている。また、煙突44には、煙突44から大気に排気される排ガス中の煤塵の濃度を換算するために酸素濃度を測定するための下流酸素濃度センサー51が設けられている。これら出口酸素濃度センサー50には、例えばジルコニア式酸素濃度計、下流酸素濃度センサー51には、例えば磁気風式酸素濃度計が用いられる。
【0019】
燃焼装置1には、ボイラー10への給気量と燃料の供給量を制御する制御部55が設けられている。この制御部55には、出口酸素濃度センサー50で測定されたボイラー10出口での排ガス中の酸素濃度C1(出口酸素濃度C1)、第1の給気量センサー19および第2の給気量センサー31で測定されたボイラー10に供給される全ての給気量Qが入力されている。制御部55は、ボイラー10に対して需要に応じた量の燃料を供給させるように燃料供給機構32を制御すると共に、これら出口酸素濃度C1、下流酸素濃度C2、給気量Qに基いて、可動ベーン16のアクチュエータ25を制御し、可動ベーン16の開度を調整する機能を有している。
【0020】
以上の構成を有する燃焼装置1において、押込通風機17の稼動により、サイレンサー15および可動ベーン16を介して外部の空気が給気経路11に引き込まれ、熱交換器18において排ガスと熱交換されて高温となった空気が、給気経路11を介してボイラー10に供給される。また、給気経路11からボイラー10に供給される空気の一部は、途中で燃料供給経路30に通され、この燃料供給経路30に通された空気に燃料供給機構32にて所定量の燃料が供給させられる。こうして、ボイラー10に対して、給気経路11から空気と燃料が一緒に供給される。そして、ボイラー10において燃料を燃焼させることにより水蒸気が発生され、水蒸気の動力によって電力等のエネルギーが発生させられる。
【0021】
そして、ボイラー10から排出される燃焼後の排ガスが、排気経路12において脱硝機構40、熱交換器18、電気集塵機41、誘引通風機42、脱硫機構43の順に通過して処理され、煙突44から大気中に放出される。
【0022】
なお、ボイラー10に対して供給される燃料の量は、燃焼装置1に対する電力等のエネルギー需要によって決定される。例えば、330MWクラスボイラーでの燃焼装置1に対して100%の出力が要求された場合は、ボイラー10に対する燃料の供給量は例えば104ton/hとなり、例えば、燃焼装置1に対して75%の出力が要求された場合は、ボイラー10に対する燃料の供給量は例えば80ton/hとなる。こうして決定された量の燃料が、制御部55の制御によって、燃料供給機構32から燃料供給経路30を流れる空気に供給されて、給気経路11から空気と一緒にボイラー10に所定量の燃料が供給される。
【0023】
また、燃焼装置1の稼働中、第1の給気量センサー19および第2の給気量センサー31で測定された、ボイラー10に供給される全ての給気量Qが制御部55に入力されると共に、出口酸素濃度センサー50で測定された出口酸素濃度C1、下流酸素濃度センサー51で測定された下流酸素濃度C2が制御部55に入力される。そして、制御部55は、これら出口酸素濃度C1、給気量Qに基いて、可動ベーン16のアクチュエータ25を制御し、可動ベーン16の開度を調整する。
【0024】
即ち、上記のようにボイラー10に対する燃料の供給量が決定されると、それに対応して、出口酸素濃度C1、給気量Q、及び下流酸素濃度C2の相関関係が定められる。この相関関係は、ボイラー10に対する燃料の供給量に対応した目標値として予め制御部55に記憶されており、ボイラー10に対する燃料の供給量が例えば104ton/h(燃焼装置1に対する出力が要求が100%)の場合であれば、出口酸素濃度C1の目標値は例えば3.5vol%、給気量Qの目標値は例えば727kmN/hとなり、下流酸素濃度C2の値は例えば5.6vol%、ボイラー10に対する燃料の供給量は例えば80ton/h(燃焼装置1に対する出力が要求が75%)の場合であれば、出口酸素濃度C1の目標値は例えば5.3vol%、給気量Qの目標値は例えば620kmN/h、下流酸素濃度C2の値は例えば7.5vol%である。
【0025】
そして制御部55は、先ず、出口酸素濃度C1に基いて可動ベーン16のアクチュエータ25を制御し、可動ベーン16の開度を調整する。この可動ベーン16の開度調整により、外部から給気経路11に引き込まれる空気の量が調整されて、ボイラー10への給気量が燃料の供給量に従うように制御される(図2の工程S1)。
【0026】
そして、このようにボイラー10への給気量を出口酸素濃度C1に基いて制御しながら、制御部55は、第1の給気量センサー19および第2の給気量センサー31で測定されたボイラー10への給気量Q、出口酸素濃度センサー50で測定された出口酸素濃度C1、下流酸素濃度センサー51で測定された下流酸素濃度C2の移動平均の値が、予め定められている相関関係の範囲内にあるかどうかを判定する(図2の工程S2)。ここで、測定値をそのまま使用すると、燃料性状等の操業変動による測定値の振れの影響を受けることから、測定値の移動平均を取ることにより、その影響を排除しより正確な判定ができる。例えば、図2において、各測定値の範囲は、給気量Qであれば700kmN/hから757kmN/h、出口酸素濃度C1は3.2%から3.9%、下流酸素濃度C2は5.3%から6.0%である。然しながら、図2の状態で移動平均を例えば10分とすれば、各測定値の範囲は、給気量Qであれば725kmN/hから731kmN/h、出口酸素濃度C1は3.4%から3.6%、下流酸素濃度C2は5.5%から5.8%である。よって、測定値が相関範囲にあるかどうかは、移動平均の範囲とその間の測定値の範囲内に設定すればよい。また、前述の方法でも測定値が相関範囲を超えることがあり得るが、相関範囲を超える時間が一定範囲以上経過した後に相関範囲を超えたと判断することにより解決できる。
【0027】
ここで、第1の給気量センサー19、第2の給気量センサー31、出口酸素濃度センサー50、下流酸素濃度センサー51のいずれにも異常が生じていない場合は、第1の給気量センサー19および第2の給気量センサー31で測定されたボイラー10への給気量Q、出口酸素濃度センサー50で測定された出口酸素濃度C1、下流酸素濃度センサー51で測定された下流酸素濃度C2は、いずれも前述の目標値から所定の誤差範囲内に留まることになる。この場合は、給気量Q、出口酸素濃度C1、下流酸素濃度C2が、予め定められている相関関係の範囲内にあるので、制御部55は、ボイラー10への給気量を出口酸素濃度C1に基いて制御し続ける(図2の工程S2のY)。
【0028】
一方、このようにボイラー10への給気量を出口酸素濃度C1に基いて制御している時に、給気量Qまたは下流酸素濃度C2が、前述の目標値から大きく外れ、所定の誤差範囲内から外れた場合は、給気量Qまたは下流酸素濃度C2が、予め定められている相関関係の範囲外になったと判断される(図2の工程S2のN)。
【0029】
かかる場合は、制御部55は、給気量Qと下流酸素濃度C2の両方が予め定められている相関関係の範囲外になったかどうかを判定する(図2の工程S3)。
【0030】
そして、給気量Qと下流酸素濃度C2のどちらか一方のみが予め定められている相関関係の範囲外になったが、他方はまだ予め定められている相関関係の範囲内である場合は、制御部55は、ボイラー10への給気量を出口酸素濃度C1に基いて制御し続ける(図2の工程S3のN)。
【0031】
なお、このようにボイラー10への給気量を出口酸素濃度C1に基いて制御している時に、給気量Qと下流酸素濃度C2のどちらか一方のみが予め定められている相関関係の範囲外になった場合は、ボイラー10への給気量を出口酸素濃度C1に基いて制御し続けながら、当該誤差範囲外となった測定値を示した第1の給気量センサー19および第2の給気量センサー31または下流酸素濃度センサー51を点検しても良い(図2の工程S4)。
【0032】
一方、判定の結果、給気量Qと下流酸素濃度C2の両方が予め定められている相関関係の誤差範囲外になっていた場合(図2の工程S3のY)は、出口酸素濃度センサー50の測定自体に異常が発生し、その結果、誤って測定された出口酸素濃度C1に基いてボイラー10への給気量が制御されて、下流酸素濃度C2および給気量Qが相関関係の誤差範囲外になってしまったものと考えられる。かかる場合、誤って測定された出口酸素濃度C1に基いてボイラー10への給気量を制御し続けると、ボイラー10の燃焼効率の悪化を招いてしまう。一方、本発明者が得た新規な知見によれば、給気量Qと、出口酸素濃度C1と、下流酸素濃度C2の間には一定の相関関係があり、特に出口酸素濃度C1と下流酸素濃度C2は、所定の時間間隔を持って同じ傾向を示すことが分かっている。
【0033】
そこで、このように給気量Qと下流酸素濃度C2の両方が予め定められている相関関係の誤差範囲外になった場合は、制御部55は、下流酸素濃度C2に基いて可動ベーン16のアクチュエータ25を制御し、可動ベーン16の開度を調整する。こうして、ボイラー10への給気量が下流酸素濃度C2に基いて制御される状態に切り替わる(図2の工程S5)
【0034】
なお、このようにボイラー10への給気量を下流酸素濃度C2に基いて制御している間に、出口酸素濃度C1を測定している出口酸素濃度センサー50を点検する(図2の工程S6)。そして、出口酸素濃度センサー50の点検が終了するまでは、ボイラー10への給気量を下流酸素濃度C2に基いて制御し続ける(図2の工程S6のN)。一方、出口酸素濃度センサー50の点検が終了した場合は、再び、ボイラー10への給気量を出口酸素濃度C1に基いて制御する状態に戻る(図2の工程S6のY)。
【0035】
しかして、この燃焼装置1によれば、出口酸素濃度C1、下流酸素濃度C2および給気量Qとの相関関係に基いて、出口酸素濃度センサー50の測定不良を容易に検出できるようになる。これにより、出口酸素濃度センサー50の点検等を適切なタイミングで実施できるようになる。また、出口酸素濃度センサーC1に測定不良が生じた場合は、下流酸素濃度C2に基いて給気量Qを制御するように運転を切り替えることにより、ボイラー10の燃焼効率の悪化や運転不具合の発生を回避できる。その結果、運転コストの増加を防止することが可能となる。加えて、第1の給気量センサー19および第2の給気量センサー31や下流酸素濃度センサー51の測定不良も容易に検出できるようになり、それら第1の給気量センサー19および第2の給気量センサー31や下流酸素濃度センサー51の点検等も適切なタイミングで実施できるようになる。
【0036】
以上、本発明の好ましい実施の形態の一例を説明したが、本発明は図示の形態に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に相到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0037】
例えば、出口酸素濃度C1、下流酸素濃度C2および給気量Qの相関関係として、ボイラー10に対する燃料の供給量が例えば107ton/h(燃焼装置1に対する出力が要求が100%)の場合に、出口酸素濃度C1の目標値を例えば3.5vol%、下流酸素濃度C2の目標値を例えば5.6vol%、給気量Qの目標値を例えば727kmN/hとし、ボイラー10に対する燃料の供給量が例えば80ton/h(燃焼装置1に対する出力が要求が75%)の場合に、出口酸素濃度C1の目標値を例えば5.3vol%とし、下流酸素濃度C2の目標値を例えば7.5vol%とし、給気量Qの目標値を例えば620kmN/hとする例を示したが、ここに示した相関関係は一例であり、燃焼装置1の各機器の構造、性能、大きさ等の種々の要因によって相関関係は変わるものである。出口酸素濃度C1、下流酸素濃度C2および給気量Qの相関関係は各燃焼装置について任意に定められる。
【0038】
また、下流酸素濃度センサー51を煙突44に配置した例を示したが、下流酸素濃度センサー51は、ボイラー10の出口よりも下流の位置において排ガス中の酸素濃度を測定できれば良く、煙突44よりも上流側(但し、出口酸素濃度センサー50よりは下流側)に配置してもよい。
【実施例】
【0039】
実際の燃焼装置において、ボイラー供給される給気量Qと、ボイラー出口での排ガス中の酸素濃度(出口酸素濃度C1)と、煙突における排ガス中の酸素濃度(下流酸素濃度C2)を測定し、それらを比較した。その結果、図2に示すように、各測定値には、出口酸素濃度C1と下流酸素濃度C2はピーク間でΔ1といった時間差はあるものの、一定の相関関係が保たれていた。出口酸素濃度C1は給気量Qに比較しピークが大きいものの、移動平均を取ると、一定の相関関係が保たれていることがわかる。
【0040】
なお、出口酸素濃度C1と下流酸素濃度C2の間には、排気経路、脱硝機構、熱交換器、電気集塵機、誘引通風機、脱硫機構等において外気の混入があるため、出口酸素濃度C1よりも下流酸素濃度C2の方が酸素濃度が高くなる。また、出口酸素濃度C1と下流酸素濃度C2の間は、ダクト距離が200m程度と長く,約2分程度の時間差が生じた。このように、給気量Qと出口酸素濃度C1と下流酸素濃度C2の三者間の相関関係は、ダクト距離等による時間差を考慮することにより比較することができる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、例えば発電所等の燃焼装置に利用できる。
【符号の説明】
【0042】
1 燃焼装置
10 ボイラー
11 給気経路
12 排気経路
15 サイレンサー
16 可動ベーン
17 押込通風機
18 熱交換器
19 第1の給気量センサー
25 アクチュエータ
26 オリフィス
27 差圧計
30 燃料供給経路
31 第2の給気量センサー
32 燃料供給機構
35 オリフィス
36 差圧計
40 脱硝機構
41 電気集塵機
42 誘引通風機
43 脱硫機構
44 煙突
50 出口酸素濃度センサー
51 下流酸素濃度センサー
55 制御部
56 煤塵測定部
57 運転監視装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料を燃焼させるボイラーに供給する空気量を制御する燃焼装置の制御方法であって、ボイラーに供給する給気量を給気量センサーで測定し、
ボイラーから排気された排ガス中の酸素濃度をボイラーの出口で、出口酸素濃度センサーで同時に測定すると共に、ボイラーの出口よりも下流の位置においてボイラーから排気された排ガス中の酸素濃度を下流酸素濃度センサーで、同時に測定し、
出口酸素濃度センサーで測定される出口酸素濃度と、下流酸素濃度センサーで測定される下流酸素濃度と、給気量センサーで測定される給気量との3者の時間的変化および、定常状態における相関関係を、給気量を操業調整範囲の上下限値の間で繰り返し連続的に変化させた場合および、給気量を一定にした場合において、予め測定し求めておき、
その後、ボイラー操業中に、随時測定した出口酸素濃度、下流酸素濃度及び給気量のうち少なくとも二者が該相関関係の基準から、出口酸素濃度センサー下流酸素濃度センサー及び給気量センサーのそれぞれの各測定誤差の10倍の範囲から外れるまでは、出口酸素濃度に基いて給気量を制御し、
出口酸素濃度、下流酸素濃度及び給気量のうち少なくとも二者が前記各測定誤差の10倍の範囲から外れた場合は、出口酸素濃度センサーの異常を警報するとともに、下流酸素濃度に基いて給気量を制御するように切り替えることを特徴とする、燃焼装置の制御方法。
【請求項2】
排ガスを大気中に排出させる煙突入口において下流酸素濃度を測定することを特徴とする、請求項1に記載の燃焼装置の制御方法。
【請求項3】
測定した下流酸素濃度のみが前記相関関係の範囲から外れた場合は、測定された出口酸素濃度に基いて給気量を制御しながら、下流酸素濃度を測定する下流酸素濃度センサーの異常を警報することを特徴とする、請求項1または2に記載の燃焼装置の制御方法。
【請求項4】
給気量のみが前記相関関係の範囲から外れた場合は、出口酸素濃度に基いて給気量を制御しながら、給気量を測定する給気量センサーの異常を警報することを特徴とする、請求項1または2に記載の燃焼装置の制御方法。
【請求項5】
下流酸素濃度と給気量の両方が前記相関関係の範囲から外れた場合は、下流酸素濃度に基いて給気量を制御しながら、出口酸素濃度を測定する出口酸素濃度センサーの異常を警報することを特徴とする、請求項1または2に記載の燃焼装置の制御方法。
【請求項6】
燃料を燃焼させるボイラーと、ボイラーに空気を供給する給気経路と、ボイラーから排ガスを排気させる排気経路を備えた燃焼装置であって、
前記給気経路に、ボイラーに供給する給気量を調整する給気量調整機構と、給気量を測定する給気量センサーが設けられ、
前記排気経路に、排ガス中の酸素濃度をボイラーの出口で測定する出口酸素濃度センサーと、ボイラーの出口よりも下流の煙突入口において排ガス中の酸素濃度を同時測定する下流酸素濃度センサーが設けられ、
出口酸素濃度センサーで測定される出口酸素濃度と、前記下流酸素濃度センサーで測定される下流酸素濃度と、給気量センサーで測定される給気量との三者の時間的変化および、定常状態における前記相関関係に基いて、給気量調整機構を制御して給気量を調整する制御部を有し、
請求項1〜5のうちいずれか1項に記載の制御方法により燃焼制御を行う、燃焼装置。
【請求項7】
前記下流酸素濃度センサーは、排ガスを大気中に排出させる煙突入口において下流酸素濃度を測定することを特徴とする、請求項6に記載の燃焼装置。
【請求項8】
前記制御部は、下流酸素濃度と出口酸素濃度と給気量との前記相関関係を予め記憶しておき、
下流酸素濃度と給気量の両方が前記相関関係の範囲から外れるまでは、出口酸素濃度に基いて給気量を制御し、
下流酸素濃度と給気量の両方が前記相関関係の範囲から外れた場合は、下流酸素濃度に基いて給気量を制御するように切り替えることを特徴とする、請求項6または7に記載の燃焼装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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