説明

燃焼装置

【課題】燃焼量の変更時は、安定燃焼を可能とし、燃焼量変更後は、低空気比燃焼を可能とする。
【解決手段】バーナ1と、に燃料供給量を変更可能とした燃料供給手段25と、燃焼空気供給手段6と、送風機26の回転数を可変とするインバータ30と、空気比調整手段28と、空気比を検出するセンサ7とを備え、空気比調整手段28により、センサ7から信号に基づき、フィードバック制御により定常時設定空気比とするように送風機26用のインバータ30を制御する定常時制御と、フィードバック制御を行わず、定常時設定空気比より高い変更空気比とするようにインバータ30を制御する変更時制御とを選択可能とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、水管ボイラ,吸収式冷凍機の再生器などに適用される燃焼装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、NOxの発生の抑制原理として、火炎(燃焼ガス)温度の抑制,高温燃焼ガスの滞留時間の短縮などが知られている。そして、これらの原理を応用した種々の低NOx化技術がある。たとえば、2段燃焼法,濃淡燃焼法,排ガス再循環燃焼法,水添加燃焼法,蒸気噴射燃焼法,水管群による火炎冷却燃焼法などが提案され実用化されている。
【0003】
ところで、水管ボイラなどの比較的容量の小さいNOx発生源についても環境への影響が高まり、一層の低NOx化が求められるようになってきている。この低NOx化においては、NOxの生成を低減するとCOの排出量が増加するので、NOxとCOを同時に削減することが難しい。
【0004】
その原因は、低NOx化と低CO化とが相反する技術的課題であることにある。すなわち、低NOxを推し進めるために燃焼ガス温度を急激に低下させ、900℃以下の低い温度に抑制すると、COが多量に発生すると共に発生したCOが酸化されないまま排出され、CO排出量が増大してしまう。逆に、COの排出量を少なくするために、燃焼ガス温度を高めに抑制すると、NOxの生成量の抑制が不十分となる。
【0005】
この課題を解決するために、出願人は、低NOx化に伴い発生するCO量をできるだけ少なくするように、また発生したCOが酸化するように燃焼ガス温度を抑制する低NOxおよび低CO技術を提案し、製品化している(特許文献1参照)。しかしながら、この特許文献1記載の低NOx化技術は、現実には生成NOx値が25ppm程度にとどまっていた

【0006】
この課題の解決案として、出願人は、NOx発生の抑制を排出CO値低減に優先するように燃焼ガス温度を抑制し生成NOx値を所定値以下とする低NOx化ステップを行い、その後に前記低NOx化ステップからの排出CO値を所定値以下とする低CO化ステップを行う低NOx燃焼方法を提案している(特許文献2参照)。この特許文献2の技術によれば、10ppmを下回る低NOx化が可能となるが、5ppmを下回る低NOx化を実現することは難しい。これは、燃焼の特性により、5ppm以上のNOxの生成が避けられないことによる。
【0007】
そして、特許文献2に記載の低NOx化技術は、図15に示すように、空気比が1.38以上の所謂高空気比燃焼領域Z1に属するものである。一方、空気比1.1以下(以下、「低空気比」という。)の予混合燃焼領域Z2では窒素酸化物の発生量が増えて、低NOx、低COが困難であること,および空気比が1以下となるとバックファイヤーを起こすなど安定燃焼制御が困難なことから、低空気比燃焼の領域Z2は、これまで殆ど研究開発の対象とされていなかった。図15において、ラインF,Eは、それぞれ本発明の燃焼装置による一次側のNOx特性およびCO特性を模式的に示し、ラインU,Jは、この発明の燃焼装置による触媒二次側のNOx特性およびCO特性を模式的に示している。前記特許文献2の低NOx化技術は、基本的には高空気比領域Z1にてバーナを燃焼させることでNOx生成を抑制し、生じたCOを酸化触媒にて除去する技術である。
【0008】
この発明の出願人は、前記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、特許文献2に記載の一酸化炭素を低減するための酸化触媒を備えたボイラにおいて、これまで殆ど研究が行
われていなかった限りなく1に近い低空気比でのバーナの燃焼領域(図15の領域Z2)において、窒素酸化物および一酸化炭素の排出量を実質的に零とするポイントを見出した。そして、窒素酸化物および一酸化炭素の排出量を実質的に零とすることができた原因を追及した結果、酸化触媒一次側の酸素,窒素酸化物および一酸化炭素の濃度比を基準所定濃度比とすることで、酸化触媒を用いて窒素酸化物および一酸化炭素の排出量を限りなく零に近く低減できるとともに、前記濃度比を前記基準所定濃度比の近傍で調整することにより、有害物質(窒素酸化物および一酸化炭素)の排出量を実質的に零または許容値まで低減可能であるいう新たな知見を得た。この知見に基づき、これまで殆ど研究が行われていなかった限りなく1に近い低空気比の燃焼領域において、窒素酸化物の排出量を限りなく零に近く低減でき、一酸化炭素排出量を許容範囲に低減できるとともに、低空気比による省エネルギーを実現できる業界初の燃焼装置の発明を創出し、これを先に出願した(特願2005−300343)。
【0009】
【特許文献1】特許第3221582号公報(対応米国特許:米国特許第5353748号明細書)
【特許文献2】特開2004−125378号公報(対応米国特許:米国特許第6792895号明細書)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
この発明は、先の出願の発明において、空気比制御をインバータ制御により行う燃焼装置に好適に実施可能であって、発明が解決しようとする課題は、燃焼量の変更時は、安定燃焼を可能とし、燃焼量変更後は、低空気比燃焼を可能とする燃焼装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明は、前記課題を解決するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、バーナと、このバーナの燃焼量を変更するように燃料供給量を変更可能とした燃料供給手段と、前記バーナへ燃焼空気を供給する送風機を含む燃焼空気供給手段と、前記バーナの空気比を調整する空気比調整手段と、前記送風機の回転数を可変とするインバータと、前記バーナの空気比を検出するセンサとを備え、前記空気比調整手段は、前記センサから信号に基づき、フィードバック制御により前記定常時設定空気比(以下、単に定常時空気比というが、NOx低減時空気比と称することができる。)とするように前記インバータを制御する定常時制御(NOx低減時制御と称することができる。)と、前記定常時空気比より高い変更時設定空気比(以下、単に変更時空気比というが、定格時空気比と称することができる。)とするように前記インバータを制御する変更時制御(定格時制御と称することができる。)とを選択可能としたことを特徴としている。
【0012】
請求項1に記載の発明によれば、燃焼が不安定となる燃焼量の変更前後は、前記変更時制御を行うことにより、安定した燃焼を行うことができ、燃焼量の変更後は、前記定常時制御を行うことにより低空気比の燃焼を行うことができる。
【0013】
請求項2に記載の発明は、炭化水素含有の燃料を燃焼させて、酸素,窒素酸化物および一酸化炭素を含むガスを生成させるバーナと、このバーナの燃焼量を変更可能とした燃料供給手段と、前記バーナへ燃焼空気を供給する送風機を含む燃焼空気供給手段と、前記送風機の回転数を可変とするインバータと、前記ガスに含まれる一酸化炭素を酸素により酸化し窒素酸化物を一酸化炭素により還元する酸化触媒と、前記バーナの空気比を調整する空気比調整手段と、前記バーナの空気比を検出するセンサとを備え、前記バーナは、前記空気比を定常時空気比としたとき、前記酸化触媒一次側のガス中の酸素,窒素酸化物および一酸化炭素の濃度比が所定濃度比となる特性を有し、前記酸化触媒は、前記濃度比を前
記所定濃度比としたとき前記酸化触媒二次側の窒素酸化物濃度を実質的に零または所定値以下とし、一酸化炭素濃度を実質的に零または所定値以下とするとする特性を有し、前記空気比調整手段は、前記センサから信号に基づき、フィードバック制御により前記定常時空気比とするように前記インバータを制御することで前記濃度比を所定濃度比とする定常時制御と、前記定常時空気比より高い変更時空気比とするように前記インバータを制御する変更時制御とを選択可能としたことを特徴としている。
【0014】
ここで、窒素酸化物濃度が実質的に零とは、好ましくは、5ppm,さらに好ましくは、3ppm,さらに好ましくは、零である。一酸化炭素濃度が実質的に零とは、30ppm,さらに好ましくは、10ppmである。また、以下の説明で、酸素濃度が実質的に零とは、100ppm以下とするが、好ましくは、計測限界値以下とする。さらに、窒素酸化物濃度,一酸化炭素濃度が所定値以下とは、各国、各地域で定める排出基準濃度以下を意味するが、限りなく実質的に零に近い値に設定することが好ましいのはいうまでもない。このように排出基準値という意味において、「所定値」以下を「許容値」と称することができる。
【0015】
請求項2に記載の発明によれば、燃焼が不安定となる燃焼量の変更時は、前記変更時制御を行うことにより、安定した燃焼を行うことができ、一酸化炭素の多量の発生による一酸化炭素および窒素酸化物漏れを防止することができる。また、燃焼量の変更後は、前記定常時制御を行うことにより定常時空気比の燃焼により前記濃度比を前記所定濃度比として、安定して排出窒素酸化物濃度を実質的に零とし、排出一酸化炭素濃度を実質的に零または所定値以下とすることができる。
【0016】
請求項3に記載の発明は、請求項2において、前記変更時制御が燃焼量変更に対応する燃焼空気量の変更時に行われ、前記定常時制御が燃焼空気変更後に行われることを特徴としている。
【0017】
請求項3に記載の発明によれば、燃焼量の変更時は、安定した燃焼を行うことができ、一酸化炭素の多量の発生による一酸化炭素および窒素酸化物漏れを防止することができる。また、燃焼量の変更後は、定常時空気比の燃焼により前記濃度比を前記所定濃度比として、安定して排出窒素酸化物濃度を実質的に零とし、排出一酸化炭素濃度を実質的に零または所定値以下とすることができる。
【0018】
請求項4に記載の発明は、請求項2において、前記変更時制御が着火後の最初の低燃焼の所定時間経過まで行われ、前記定常時制御が前記所定時間後に行われることことを特徴としている。
【0019】
請求項4に記載の発明よれば、請求項2に記載の発明による効果に加えて、着火後の最初の低燃焼時の所定時間経過まで、安定した燃焼動作を実現できる。
【0020】
請求項5に記載の発明は、請求項2において、変更時制御が着火後の最初の低燃焼の所定時間経過までという第一条件と前記酸化触媒の温度を設定値以下という第二条件とのAND条件で行われ、前記定常時制御が前記AND条件成立後に行われることを特徴としている。
【0021】
請求項5に記載の発明よれば、請求項2に記載の発明による効果に加えて、着火後の最初の低燃焼時の所定時間経過までの間、安定した燃焼動作を実現できるとともに、朝一番の燃焼装置の燃焼開始時における多量の一酸化炭素の排出を防止できるという効果を奏する。
【0022】
請求項6に記載の発明は、請求項2において、前記空気比調整手段は、最初の変更時空
気比から定常時空気比への変更かどうかを判定し、最初と判定されるとき、フィードバック制御により前記インバータを制御して変更時空気比から定常時空気比への変更を行い、変更が終了すると定常時空気比に対応する周波数を記憶するとともに、最初と判定されないとき、フィードバック制御を行うことなく、前記記憶周波数またはこの周波数に所定の係数を乗じた周波数にて前記インバータを制御して定常時空気比への変更を行うことを特徴としている。
【0023】
請求項6に記載の発明よれば、請求項2に記載の発明による効果に加えて、急速に前記インバータの周波数を下げることによるアンダーシュートによる不具合を解消できるとともに、NOx排出量を低減できるという効果を奏する。
【0024】
請求項7に記載の発明は、請求項2または請求項3において、前記燃焼空気供給手段に前記燃焼量の変更に合わせて開閉するダンパを備え、前記ダンパの開閉後に前記定常時制御が行われることを特徴としている。
【0025】
請求項7に記載の発明によれば、請求項2または請求項3に記載の発明による効果に加えて、前記ダンパの開閉による燃焼空気による燃焼の不安定挙動を回避できるという効果を奏する。
【発明の効果】
【0026】
この発明によれば、燃焼量の変更時は、安定燃焼を可能とし、燃焼量変更後は、低空気比燃焼を可能とする燃焼装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
つぎに、この発明の実施の形態について説明する。この発明の実施の形態を説明する前に、この出願において使用する用語について説明する。「ガス」とは、バーナから酸化触媒(酸化・還元触媒と称することができる。以下。単に「触媒」と称することができる。)を通過し終わるまでのガスをいい、触媒を通過した後のガスを「排ガス」という。したがって、ガスは、燃焼反応中(燃焼過程)のガスと燃焼反応が完結したガスとを含み、燃焼ガスと称することができる。ここにおいて、前記触媒がガスの流れに沿って多段に設けられている場合、「ガス」は、最終段の触媒を通過し終わるまでのガスをいい、「排ガス」は、最終段の触媒を通過した後のガスをいう。
【0028】
「触媒の一次側」とは、触媒に対しバーナが設けられている側であって、特に断らない限り、ガスがこの触媒を通過する直前をいい、「触媒の二次側」とは、触媒の一次側の反対側をいう。
【0029】
また、「炭化水素を含まない」とは、燃焼反応の過程で全く炭化水素が生成されないことを意味するのではなく、燃焼反応の過程では、若干の炭化水素が生成されるが、燃焼反応が終了する段階,すなわち前記触媒に流入するガス中に窒素酸化物を還元する炭化水素が実質的に含まれていない(測定限界以下である)ことを意味している。前記「炭化水素を含まない」は、「炭化水素を除去する」と言い換えることができる。
【0030】
さらに、空気比mは、m=21/(21−[O2])と定義する。ただし、 [O2]は、触媒二次側の排ガス中の酸素濃度を表すが、空気比を求める際に用いる[O2]は、酸素過剰領域では過剰酸素濃度を表し、燃料過剰領域では一酸化炭素などの未燃ガスを空気比m=1で燃焼させるのに必要な不足酸素濃度を負の値として表す。
【0031】
つぎに、この発明の実施の形態について説明する。この発明は、小型貫流ボイラなどの水管ボイラ,給湯器,吸収式冷凍機の再生器などの燃焼装置(熱機器または燃焼機器と称
しても良い。)に適用される。
【0032】
(実施の形態1)
この発明の実施の形態1は、バーナと、このバーナの燃焼量を変更するように燃料供給量を変更可能とした燃料供給手段と、前記バーナへ燃焼空気を供給する送風機を含む燃焼空気供給手段と、前記バーナの空気比を調整する空気比調整手段と、前記送風機の回転数を可変とするインバータと、前記バーナの空気比を検出するセンサとを備え、前記空気比調整手段は、前記センサから信号に基づき、フィードバック制御により前記定常時空気比とするように前記インバータを制御する定常時制御と、前記定常時空気比より高い変更時空気比とするように前記インバータを制御する変更時制御とを選択可能としたことを特徴とする燃焼装置である。前記定常時制御は、低NOx制御と称することができる。
【0033】
この実施の形態1においては、好ましくは、前記変更時制御が燃焼量変更に対応する燃焼空気量の変更時に行われ、前記定常時制御が燃焼空気量の変更後に行われる。変更後の前記定常時制御への移行は、好ましくは、変更が終了して所定時間後とする。こうした構成とすることで、前記バーナの燃焼量を変更,たとえば高燃焼から低燃焼へ、また低燃焼から高燃焼への変更時において、前記空気比調整手段は、前記変更時制御を行い、空気比が高い前記変更時空気比にて前記バーナを燃焼させ、燃焼量変更時の不安定燃焼による一酸化炭素の発生を防止することができる。また、燃焼量の変更が終了すると、好ましくは、所定時間経過後に前記空気比調整手段は、前記定常時制御を行い、空気比が低い前記定常時空気比にて前記バーナを燃焼させ、前記定常時空気比をフィードバック制御により一定に保持する。これにより、空気比の変動による一酸化炭素の発生が防止される。前記定常時空気比は、好ましくは、1.1〜1.0とし、さらに好ましくは、1.0とする。この実施の形態1および以下の実施の形態2〜6における前記変更時御は、好ましくは、フィードバック制御を行うが、フィードバック制御を行わないように構成することもできる。フィードバック制御をかけると、加減速に時間がかかるが、フィードバック制御をかけないことにより加減速の時間を短くでき、空気比を定常時空気比とするまでに排出されるNOxの量を低減できる。
【0034】
また、この実施の形態1において、好ましくは、前記設定空気比を変更時空気比から定常時空気比へ変更する時、前記空気比調整手段は、最初の変更時空気比から定常時空気比への変更かどうかを判定し、最初と判定されるとき、フィードバック制御により前記インバータを制御して変更時空気比から定常時空気比への変更を行い、変更が終了すると定常時空気比に対応する周波数を記憶するとともに、最初と判定されないとき、フィードバック制御を行うことなく、前記記憶周波数またはこの周波数に所定の係数を乗じた周波数にて前記インバータを制御して定常時空気比への変更を行うように構成する。
【0035】
すなわち、特に低燃焼時において前記変更時空気比に対応する周波数(通常周波数)から前記定常時空気比に対応する周波数(低NOx周波数)へ落とす(移行する)時には、急速に減速するとアンダーシュートを生じ、低燃焼時の定常時空気比を下回り、燃焼が不安定となったり、一酸化炭素の排出量が増大する虞もある。これに対しては、つぎの制御が効果的である。すなわち、燃焼装置の電源投入後の初めて低燃焼時に通常周波数から低NOx周波数へ移行するとき、フィードバック制御により前記インバータの周波数を徐々に変更し、定常時空気比による燃焼に入ると、その定常時空気比に対応する周波数を記憶する。そして、2回目に前記設定空気比を変動時空気比から定常時空気比へ変更する時には、フィードバック制御をかけることなく、前記インバータの周波数を前記記憶した周波数まで一気に下げる。このとき、前記センサの応答遅れを考慮して、しばらくはフィードバック制御を行わず、所定時間経過後にフィードバック制御を行うように構成する。こうした、制御を行うことにより、1回目を除き、2回目以降は短時間で定常時制御に移行することができ、アンダーシュートによる不具合を解消できるとともに、NOx排出量を低
減できる。前記の制御において、アンダーシュートを防止するために、記憶した周波数に制御するのではなく、先ず、記憶した周波数に1.0を越える係数(たとえば、1.01〜1.10)を乗じた周波数に制御し、ついでフィードバック制御により記憶した周波数に制御するように構成することができる。なお、高燃焼時において通常周波数から低NOx周波数へ移行する時も低燃焼時と同様に最初の移行時の定常時空気比に対応する周波数を記憶して、2回目の移行時からは記憶した周波数に基づき、インバータを制御するように構成することができる。
【0036】
また、この実施の形態1においては、好ましくは、前記変更時制御が着火後の最初の低燃焼時の所定時間経過まで行われ、前記定常時制御が前記所定時間後に行われるように構成する。ここにおいて前記変更量制御の開始は、問題ではなく、少なくとも最初の低燃焼の所定時間を含めばよい。この制御において、着火直後の排ガス濃度は、定常燃焼時のように全体にわたって均一ではなく、濃度むらが存在する。また前記センサ自身がもつ応答遅れも考えられるので、前記定常時制御は、前記所定時間経過後に行う。
【0037】
さらに、この実施の形態1においては、変更時制御が着火後の最初の低燃焼時の所定時間経過という第一条件と前記酸化触媒の温度を設定値以下という第二条件とのAND条件で行われ、前記定常時制御が前記AND条件成立後に行われるように構成する。この制御において、前記第二条件を加えたのは、つぎの不具合を解消することを目的としている。朝一番に燃焼装置の燃焼を開始したときは、前記第一条件が満たされても前記第二条件を満たさないことがあり、この状態で前記定常時制御を行うと、前記触媒温度が上昇していないので、一酸化炭素が多量に排出されるという不具合を生ずる。
【0038】
前記実施の形態1は、典型的には、つぎの実施の形態2の燃焼装置に適用される。この実施の形態2は、炭化水素含有の燃料を燃焼させて、酸素,窒素酸化物および一酸化炭素を含むガスを生成させるバーナと、このバーナの燃焼量を変更可能とした燃料供給手段と、前記バーナへ燃焼空気を供給する送風機およびこの送風機の回転数を可変とするインバータを含む燃焼空気供給手段と、前記ガスに含まれる一酸化炭素を酸素により酸化し窒素酸化物を一酸化炭素により還元する酸化触媒と、前記バーナの空気比を調整する空気比調整手段と、前記バーナの空気比を検出するセンサとを備え、前記バーナは、前記空気比を定常時空気比としたとき、前記酸化触媒一次側のガス中の酸素,窒素酸化物および一酸化炭素の濃度比が所定濃度比となる特性を有し、前記酸化触媒は、前記濃度比を前記所定濃度比としたとき前記酸化触媒二次側の窒素酸化物濃度を実質的に零または所定値以下とし、一酸化炭素濃度を実質的に零または所定値以下とするとする特性を有し、前記空気比調整手段は、前記センサから信号に基づき、フィードバック制御により前記定常時空気比とするように前記インバータを制御することで前記濃度比を所定濃度比とする定常時制御と、前記定常時空気比より高い変更時空気比とするように前記インバータを制御する変更時制御とを選択可能としたことを特徴とする燃焼装置である。前記燃料供給手段は、好ましくは前記バーナの燃焼量を段階的に変更するように構成する。この実施の形態2は、つぎの三つの実施の形態3〜5を含む。
【0039】
(実施の形態3)
前記実施の形態3は、炭化水素含有の燃料を燃焼させて、酸素,窒素酸化物および一酸化炭素を含むガスを生成させるバーナと、このバーナの燃焼量を段階的に変更するように燃料供給量を変更可能とした燃料供給手段と、前記バーナへ燃焼空気を供給する送風機およびこの送風機の回転数を可変とするインバータを含む燃焼空気供給手段と、前記ガスに含まれる一酸化炭素を酸素により酸化し窒素酸化物を一酸化炭素により還元する酸化触媒と、前記バーナの空気比を調整する空気比調整手段と、前記バーナの空気比を検出するセンサとを備え、前記バーナは、前記空気比を定常時空気比としたとき、前記酸化触媒一次側のガス中の酸素,窒素酸化物および一酸化炭素の濃度比Kが基準所定濃度比K0となる
特性を有し、前記酸化触媒は、前記濃度比Kを前記基準所定濃度比K0としたとき前記酸化触媒二次側の窒素酸化物濃度および一酸化炭素濃度を実質的に零とする特性を有し、前記空気比調整手段は、前記センサから信号に基づき、フィードバック制御により前記定常時空気比とするように前記インバータを制御することで前記濃度比Kを前記基準所定濃度比K0とする定常時制御と、前記定常時空気比より高い変更時空気比とするように前記インバータを制御する変更時制御とを選択可能としたことを特徴とする燃焼装置である。
【0040】
(実施の形態4)
また、前記実施の形態4は、炭化水素含有の燃料を燃焼させて、酸素,窒素酸化物および一酸化炭素を含むガスを生成させるバーナと、このバーナの燃焼量を段階的に変更するように燃料供給量を変更可能とした燃料供給手段と、前記バーナへ燃焼空気を供給する送風機およびこの送風機の回転数を可変とするインバータを含む燃焼空気供給手段と、前記ガスに含まれる一酸化炭素を酸素により酸化し窒素酸化物を一酸化炭素により還元する酸化触媒と、前記バーナの空気比を調整する空気比調整手段と、前記バーナの空気比を検出するセンサとを備え、前記バーナは、前記空気比を前記実施の形態3の定常時空気比より低い値の定常時空気比としたとき、前記酸化触媒一次側のガス中の酸素,窒素酸化物および一酸化炭素の濃度比Kが第一所定濃度比K1となる特性を有し、前記酸化触媒は、前記濃度比Kを前記第一所定濃度比K1としたとき前記酸化触媒二次側の窒素酸化物濃度を実質的に零とし、一酸化炭素濃度を所定値以下とするとする特性を有し、前記空気比調整手段は、前記センサから信号に基づき、フィードバック制御により前記定常時空気比とするように前記インバータを制御することで前記濃度比Kを前記第一定濃度比K1とする定常時制御と、前記定常時空気比より高い変更時空気比とするように前記インバータを制御する変更時制御とを選択可能としたことを特徴とする燃焼装置である。
【0041】
(実施の形態5)
また、前記実施の形態5は、炭化水素含有の燃料を燃焼させて、酸素,窒素酸化物および一酸化炭素を含むガスを生成させるバーナと、前記バーナの燃焼量を変更するように燃料供給量を変更可能とした燃料調整弁を有する燃料供給手段と、前記送風機の回転数を可変とするインバータと、前記バーナへ燃焼空気を供給する送風機およびこの送風機の回転数を可変とするインバータを含む燃焼空気供給手段と、前記ガスに含まれる一酸化炭素を酸素により酸化し窒素酸化物を一酸化炭素により還元する酸化触媒と、前記バーナの空気比を調整する空気比調整手段と、前記バーナの空気比を検出するセンサとを備え、前記バーナは、前記空気比を前記実施の形態3の定常時空気比より高い値の定常時空気比としたとき、前記酸化触媒一次側のガス中の酸素,窒素酸化物および一酸化炭素の濃度比Kが第二所定濃度比K2となる特性を有し、前記酸化触媒は、前記濃度比Kを前記第二所定濃度比K2としたとき前記酸化触媒二次側の窒素酸化物濃度を所定値以下とし、一酸化炭素濃度を実質的に零とする特性を有し、前記空気比調整手段は、前記センサからの信号に基づき、フィードバック制御により前記定常時空気比とするように前記インバータを制御することで前記濃度比Kを前記第二定濃度比K2とすることを特徴とする燃焼装置である。
【0042】
すなわち、前記基準所定濃度比K0,前記第一所定濃度比K1,前記第二所定濃度比K2は、前記定常時空気比をそれぞれ基準設定空気比,第一設定空気比,第二設定空気比に制御することにより、次の調整がなされる。
調整0:前記濃度比Kを前記酸化触媒二次側の窒素酸化物濃度および一酸化炭素濃度を実質的に零とする基準所定濃度比K0に調整する。
調整1:前記濃度比Kを、前記基準所定濃度比K0より低く、前記酸化触媒二次側の窒素酸化物濃度を実質的に零とするとともに一酸化炭素濃度を所定値以下とする第一所定濃度比K1に調整する。
調整2:前記濃度比Kを、前記酸化触媒二次側の一酸化炭素濃度を実質的に零とするとともに窒素酸化物濃度を所定値以下とする第二所定濃度比K2に調整する。
【0043】
そして、前記触媒は、前記調整0を行うと、それぞれ前記触媒二次側の窒素酸化物濃度および一酸化炭素濃度を実質的に零とし、前記調整1を行うと前記触媒二次側の窒素酸化物濃度を実質的に零とするとともに一酸化炭素濃度を所定値以下とし、前記調整2を行うと前記酸化触媒二次側の一酸化炭素濃度を実質的に零とするとともに窒素酸化物濃度を所定値以下とする特性を有している。
【0044】
これらの実施の形態3〜5において、濃度比Kとは、一酸化炭素濃度、窒素酸化物濃度および酸素濃度の相互の関係を意味する。前記調整0における基準所定濃度比K0は、次式(1)の判定式にて判定され、好ましくは、次式(2)を満たし、前記第一所定濃度比K1を前記基準所定濃度比K0より小さくし、前記第二所定濃度比K2を前記基準所定濃度比K0より大きくするように設定される。
([NOx]+2[O2])/[CO]=K …(1)
1.0≦K=K0≦2.0 …(2)
(式(1)において、[CO]、[NOx]および[O2]はそれぞれ一酸化炭素濃度、窒素酸化物濃度および酸素濃度を示し、[O2]>0の条件を満たす。)
【0045】
すなわち、前記基準所定濃度比K0は、前記酸化触媒二次側の酸素濃度,窒素酸化物濃度および一酸化炭素濃度をそれぞれ実質的に零とする前記酸化触媒の一次側の酸素,窒素酸化物および一酸化炭素の濃度比である。前記式(1)は、前記基準所定濃度比K0を判定するための判定式であり、式(2)は、前記酸化触媒二次側の酸素濃度,窒素酸化物濃度および一酸化炭素濃度をそれぞれ実質的に零とする条件を示している。理論的には、K0=1.0の条件で、各濃度を零とすることができる。しかしながら、実験結果によると、前記式(2)の範囲で各濃度を実質的に零とすることが確認されているが、前記K0の上限2.0は、前記触媒の特性によっては、2.0より大きい値をとることが考えられる。
【0046】
前記基準所定濃度比K0の値を下回るように,すなわち式(1)のKがK0よりも小さい前記第一所定濃度比K1となるように前記酸化触媒の一次側の濃度比Kを調整する(前記調整1)と、前記酸化触媒二次側の酸素濃度および窒素酸化物濃度が実質的に零となるとともに一酸化炭素濃度が所定値以下となる。この一酸化炭素濃度の所定値は、好ましくは、排出基準値(この値は、国により異なるので、国ごとに変更することが可能である。)以下に設定する。この所定値を決めると、実験的に前記第一所定濃度比K1を定めることができる。前記濃度比Kの値がK0よりも小さい前記第一所定濃度比K1となるような濃度比Kの調整は、具体的には、前記酸化触媒一次側の一酸化炭素濃度に対する酸素濃度の割合を、前記基準所定濃度比K0を満たす一酸化炭素濃度に対する酸素濃度の割合よりも少なくすることで実現可能である。
【0047】
また、前記濃度比KがK0よりも大きい前記第二所定濃度比K2となるように前記酸化触媒の一次側の濃度比Kを調整する(前記調整2)と、前記酸化触媒二次側の一酸化炭素濃度が実質的に零となるとともに窒素酸化物濃度が所定値以下となる。この場合、前記酸化触媒の二次側の酸素濃度は、所定濃度となる。この窒素酸化物濃度の所定値は、一酸化炭素濃度の前記所定値とは異なる値であり、好ましくは、各国で定められる排出基準値以下とする。この所定値を決めると、実験的に前記第二濃度比K2を定めることができる。前記第二所定濃度比K2とするための濃度比Kの調整は、具体的には、前記酸化触媒一次側の一酸化炭素濃度に対する酸素濃度の割合を、前記基準所定濃度比K0を満たす一酸化炭素濃度に対する酸素濃度の割合よりも多くすることで実現可能である。
【0048】
以上の実施の形態2〜5においては、まず、前記バーナで燃焼する。この燃焼により、酸素と、窒素酸化物および一酸化炭素とを含み、炭化水素を含まないガスが生成される。
そして、前記触媒の一次側の前記ガスにおける酸素,窒素酸化物および一酸化炭素の濃度比Kは、前記空気比調整手段による定常時空気比に制御することにより、前記バーナの特性に基づいて、それぞれ前記基準所定濃度比K0,前記第一所定濃度比K1,前記第二所定濃度比K2に調整される。そして、前記触媒にて、前記ガスが前記触媒と接触して前記ガス中の酸素により一酸化炭素が酸化され、一酸化炭素により窒素酸化物が還元される。前記調整0または前記調整1が行われた場合の酸素の役割は、一酸化炭素濃度の調整,すなわち窒素酸化物を還元してその濃度を実質的に零とするのに必要な量以上に存在する一酸化炭素量を消費して低減するものである。この前記調整0,前記調整1後のガスと前記触媒との接触により、前記ガス中の窒素酸化物の排出量が実質的に零に低減され、一酸化炭素の排出量が実質的に零または所定値以下に低減される。また、前記調整2後のガスと前記触媒との接触により、前記ガス中の一酸化炭素の排出量が実質的に零とされ、窒素酸化物濃度が所定値以下に低減される。また、前記定常時制御は、フィードバック制御であるので、前記各所定濃度比K0,K1,K2の値の変動が抑制され、窒素酸化物排出量および一酸化炭素排出量の低減効果を安定して発揮することができる。特に、前記調整0において、窒素酸化物排出量を実質的に零とするには、前記定常時制御が重要である。
【0049】
前記調整0の基準所定濃度比K0および前記調整1の第一所定濃度比K1は、次式(3)で包含して表現される。すなわち、式(3)を満たすと、前記触媒二次側の窒素酸化物濃度を実質的に零とし、一酸化炭素濃度を実質的に零とするか、低減する。一酸化炭素濃度の低減を前記所定値以下とするには、式(3)の左辺の値がK0よりも小さい値となるように前記酸化触媒一次側の前記濃度比Kを調整し、前記第一所定濃度比K1とする。
([NOx]+2[O2])/[CO]=K≦2.0 …(3)
(式(3)において、[CO]、[NOx]および[O2]はそれぞれCO濃度、NOx濃度およびO2濃度を示し、[O2]>0の条件を満たす。)
【0050】
([NOx]+2[O2])/[CO]の値(濃度比の値)は、好ましくは、1.5以下とする。また、窒素酸化物濃度([NOx])は、一酸化窒素濃度([NO])と二酸化窒素濃度([NO2])との合計濃度である。また、前記式(3)を満たす一酸化炭素濃度、窒素酸化物濃度および酸素濃度の濃度比を所定濃度比という。
【0051】
前記所定濃度比の値が1の場合は、理論上は、前記触媒から排出される酸素濃度,窒素酸化物濃度および一酸化炭素濃度を零とすることができる。しかしながら、実験上は、僅かに一酸化炭素が排出されることが分かっている。前記式(1)における([NOx]+2[O2])/[CO]=1は、実験結果を考慮して、前記第一反応および第二反応から理論的に導き出したものである。
【0052】
ここで、([NOx]+2[O2])/[CO]=1を如何にして導き出したかを説明する。この式は、前記基準所定濃度比K0を典型的に満足する式であるので、基準所定濃度充足式と称する。
前記触媒内では、前記第一反応(I)が主反応として起こることが知られている。
CO +1/2O2 → CO2 …(I)
また、Pt等の貴金属触媒を用いた前記触媒内では、酸素が存在しない雰囲気で前前記第二反応(II)によるCOによるNO還元反応が進行する。
CO +NO → CO2 +1/2N2 …(II)
そこで、前記第一反応(I)、前記第二反応(II)の反応に寄与する物質の濃度に着目し、前記基準濃度充足式を導きだした。
すなわち、CO濃度,NO濃度,O2濃度をそれぞれ[CO]ppm,[NO]ppm,[O2]ppmとすると、前記式(I)よりCOにより除去できる酸素濃度は、次式(III)で表される。
2[O2]= [CO]a …(III)
また、前記式(II)の反応を起こすためには、COがNOの等量必要であり、次式(IV)の関係がいえる。
[CO]b =[NO] …(IV)
前記式(I)、(II)の反応を前記触媒内で連続して起こす場合、前記式(III)と前記式(IV)を足し合わせることで得られる次式(V)の濃度関係が必要となる。
[CO]a +[CO]b=2[O2]+ [NO] …(V)
[CO]a +[CO]bは、同一成分であるため、前記触媒二次側のガス中のCO濃度として[CO]で表すことができる。
よって、前記基準所定濃度比充足式,
すなわち[CO]=2[O2]+[NO]の関係を導くことができる。
【0053】
前記所定濃度比の値が1よりも小さい場合は、一酸化炭素の濃度が前記窒素酸化物の還元に必要な濃度以上に存在するので、排出酸素濃度が零で、前記触媒通過後のガス中に一酸化炭素が残留する。このため前記式(3)における濃度比の下限値を設けていない。前記触媒通過後に、一酸化炭素が含まれる場合は、この残留一酸化炭素を酸化する酸化手段を更に設けることが好ましい。この酸化手段は、前記触媒と別個の触媒を設け、この触媒の上流側へ酸素を投入して一酸化炭素を酸化するように構成することができる。
【0054】
また、前記濃度比の値の1.0を越え、2.0までは、実験的に得られた値であるが、つぎの理由によると考えられる。前記触媒中で生じている反応は、完全に解明されておらず、前記第一反応および前記第二反応の主反応以外に、副反応が生じていることが考えられる。この副反応の一つとして、蒸気と一酸化炭素との反応により水素が生じ、この水素により窒素酸化物および酸素が還元される反応が考えられる。
【0055】
(実施の形態6)
前記実施の形態2は、つぎの実施の形態6にて表現できる。この実施の形態6は、炭化水素含有の燃料を燃焼させ、酸素,窒素酸化物および一酸化炭素を含むガスを生成させるバーナと、前記ガスに含まれる一酸化炭素を酸素により酸化し窒素酸化物を一酸化炭素により還元する酸化触媒と、前記バーナの空気比を検出するためのセンサと、このセンサの検出信号に基づき設定空気比に前記バーナを制御する空気比調整手段とを備え、前記バーナは、前記空気比調整手段により前記空気比を定常時空気比に調整したとき、前記酸化触媒二次側の窒素酸化物濃度を実質的に零または所定値以下とし、一酸化炭素濃度を実質的に零または所定値以下とする前記酸化触媒一次側における酸素,窒素酸化物および一酸化炭素の所定濃度比を得ることができるように構成され、前記空気比調整手段は、前記センサから信号に基づき、フィードバック制御により前記定常時空気比とするように前記インバータを制御することで前記濃度比を所定濃度比とする定常時制御と、前記定常時空気比より高い変更時空気比とするように前記インバータを制御する変更時制御とを選択可能としたことを特徴とする燃焼装置である。
【0056】
以上の実施の形態2〜6において、前記定常時空気比は、好ましくは、1.0の設定空気比に制御するが、前記触媒での反応の結果、1.0の設定空気比を満たし得る前記触媒の一次側の酸素濃度が所定濃度となるように空気比を制御するように構成することもできる。
【0057】
ここで、前記実施の形態2〜6における有害物質(窒素酸化物および一酸化炭素)の低減作用についてさらに詳しく説明する。この低減作用は、つぎのようにして行われると考えられる。HC(炭化水素)を含まないガスにおいて、前記触媒では、主反応として、一酸化炭素を酸化させる第一反応と窒素酸化物を一酸化炭素により還元させる第二反応とが生じている。そして、前記触媒における反応(触媒反応)おいて、酸素存在下では、前記第一反応が前記第二反応よりも優位であり、前記第一反応に基づき一酸化炭素は、酸素に
より消費されて、濃度調整された後、前記第二反応により窒素酸化物を還元する。この説明は、簡略化したものである。実際は、前記第一反応は、前記第二反応と競合反応であるが、一酸化炭素と酸素との反応が酸素存在下において前記第二反応と比較し見かけ上速く起こるため、第一段階で前記第一反応が行われ、第二段階で前記第二反応が行われると考えられる。
【0058】
要するに、前記触媒において、酸素の存在下では、CO+1/2O2→CO2なる前記第一反応により、酸素が消費され、残りのCOを用いて、2CO+2NO→N2+2CO2なる前記第二反応により、窒素酸化物を還元して、排出窒素酸化物濃度を低減する。
【0059】
ここで、前記の反応式の説明において、NOxを用いることなく、NOを用いているのは、高温場での生成窒素酸化物の組成は、主成分がNOであり、NO2が数%に過ぎないので、近似的に説明することができるからである。NO2は、存在してもNOと同様にCOにより還元されると考えられる。
【0060】
つぎに、前記調整0,前記調整1および前記調整2を行う濃度比調整手段について説明する。前記濃度比調整手段は、前記触媒一次側の酸素,窒素酸化物および一酸化炭素の前記濃度比Kの調整を前記バーナの濃度比特性のみを利用して構成することができるが、好ましくは、前記バーナおよび前記吸熱手段の濃度比特性に基づき、前記バーナの空気比調整手段を用いて前記所定濃度比に制御することにより、前記触媒二次側の窒素酸化物濃度を実質的に零から所定値以下に、一酸化炭素濃度を実質的に零から所定値以下に調整するものである。そして、この濃度比調整は、つぎの第一,第二濃度比調整手段を用いて行うことができる。いずれの調整手段も好ましくは、前記空気比調整手段による濃度比の調整を行うものである。
【0061】
前記第一濃度比調整手段は、前記濃度比Kの調整を前記バーナの特性を利用するとともに、前記バーナおよび前記酸化触媒の間に配置され前記ガスから吸熱する吸熱手段との特性を利用して、すなわち前記バーナおよび前記吸熱手段の濃度比特性を利用して行うものである。この濃度比特性とは、前記バーナの空気比を変化させて燃焼させることにより生成される前記吸熱手段の全部または一部を通過後の一酸化炭素量および窒素酸化物量が変化する特性である。また、この濃度比特性は、基本的には前記バーナによる濃度比特性により決まり、前記吸熱手段は、典型的には、前記バーナの濃度比特性を一部変化させるか、その濃度比特性を保持する機能を有する。前記吸熱手段を後記の第一の態様とする場合は、一酸化炭素濃度の増加をもたらすとともに、窒素酸化物濃度を抑制する。前記吸熱手段を後記の第二の態様とする場合は、典型的には、前記バーナによる濃度比特性を殆ど変更することなく、保持するものである。
【0062】
前記第二濃度比調整手段は、前記濃度比Kの調整が、前記バーナと、前記バーナおよび前記酸化触媒の間に配置され前記ガスから吸熱する吸熱手段との濃度比特性を利用するとともに、前記バーナおよび前記酸化触媒の間に配置され前記補助調整手段を用いて行うものである。
【0063】
前記補助調整手段は、前記バーナと前記酸化触媒との間にあって、一酸化炭素を注入したり、酸素を吸着除去することにより、酸素濃度に対する一酸化炭素濃度の割合を増加させることにより前記調整を補助的に行う機能を有するものである。この補助調整手段としては、CO発生器や、排ガスの酸素またはCOの量を調整可能な補助的バーナとすることができる。
【0064】
この第二濃度比調整手段を用いて前記濃度比の調整を行う場合には、前記濃度比調整を前記バーナおよび前記吸熱手段の濃度比特性に加えて前記補助調整手段を利用して行うの
で、特定の構造のバーナに限定されることなく、前記バーナおよび前記吸熱手段の適用範囲を拡げることができる。
【0065】
つぎに、この発明の実施の形態の構成要素についてさらに説明する。前記バーナは、好ましくは、ガス燃料を予混合燃焼させる全一次空気式の予混合バーナとする。前記触媒にて、前記第一反応および前記第二反応を効果的に生じさせるには、酸素,窒素酸化物および一酸化炭素に関する前記(2)(3)式で示すような濃度比が重要である。前記バーナを予混合バーナとすることにより、低空気比領域で前記所定濃度比を比較的容易に得ることができる。しかしながら、前記触媒一次側のガス中における酸素,窒素酸化物および一酸化炭素が均一に混合され、それぞれの濃度を前記所定濃度比とする制御が可能であれば、予混合バーナ以外のバーナとすることができる。
【0066】
また、前記式(3)を満たすという条件下で前記触媒の一次側の酸素濃度O2を0%<O2≦1.00%とすると、空気比はほぼ1となり、排出濃度が零に近い低NOxと低COに加えて省エネルギーが実現され、低公害で、省エネルギーの燃焼装置を提供することができる。
【0067】
前記吸熱手段は、好ましくは、ボイラなどの缶体を構成する水管群とする。この吸熱手段の形態としては、前記バーナの直近に燃焼空間を殆ど有さず、燃焼空間内に水管群を配置した第一の態様(前記特許文献1,2に相当)と、前記バーナと水管群との間に燃焼空間を有する第二の態様とを含む。前記吸熱手段は、前記バーナにて生成されるガスから吸熱してその熱を利用するとともに、前記ガスの温度を前記酸化触媒の活性化温度近くに制御し、かつ熱的な劣化を防止する温度以下に抑制する,すなわちガス温度を前記第一反応および前記第二反応を効果的に生じさせ、かつ温度による劣化を抑制し、耐久性を考慮した温度に制御する機能を持たせることができる。また、前記吸熱手段に前記ガスの温度が約900℃以上に上昇するのを抑制して一酸化炭素の酸化を抑制し、前記バーナからのガスの濃度比が変化しないための手段として機能させることができる。
【0068】
前記触媒は、前記ガス中にHCが含まれない状態で効率良く前記窒素酸化物を還元する機能を有する触媒で、前記水管群の後流または前記水管群の途中に設けられ、通気性を有する基材に触媒活性物質を担持した構成とし、構造は特定のものに限定されない。前記基材としては、ステンレスなどの金属,セラミックが用いられ、排ガスとの接触面積を広くするような表面処理が施される。触媒活性物質としては、一般的に白金が用いられるが、実施に応じて、白金に代表される貴金属(Ag,Au,Rh,Ru,Pt,Pd)または金属酸化物を用いることができる。前記触媒を前記水管群の途中に設ける場合は、複数の水管間の隙間に設けるか、前記水管を基材として、その表面に触媒活性物質を担持した構成とすることができる。
【0069】
この触媒は、つぎのような特性を有している。すなわち、図5の模式図に示すように、前記触媒一次側の前記濃度比の特性ラインL(二次側[NOx]=0,二次側[CO]=0ライン)を有している。このラインL上に前記触媒一次側の前記濃度比Kが位置すると、前記触媒の二次側の窒素酸化物濃度および一酸化炭素濃度が実質的に零となる。このラインLは、理論的には前記式(3)の前記所定濃度比Kが1.0(前記式(2)ではK0=1.0)に対応し、図5では、この前記所定濃度比Kが1.0の場合の式(3)を図示している。しかしながら、前述のように、実験的に前記所定濃度比Kが1.0を越える2.0までの範囲で、前記触媒の二次側の窒素酸化物濃度および一酸化炭素濃度を実質的に零とすることができることが確認されているので、前記ラインLは、図5のラインに限定されない。
【0070】
そして、前記バーナおよび前記吸熱手段の前記一次特性のラインMと、前記ラインLと
の交点における酸素,窒素酸化物および一酸化炭素の濃度比Kを仮に特異基準所定濃度比(以下、特異基準濃度比という。)と称する。前記触媒の一次側の前記濃度比Kを前記特異基準濃度比K0Xに調整する(前記調整0)と、前記触媒の二次側の窒素酸化物濃度および一酸化炭素濃度を実質的に零とする。そして、前記特異基準濃度比K0Xに対応する基準酸素濃度SKよりも一次側酸素濃度を高くする(前記調整2),すなわち前記空気比調整手段により一次側酸素濃度を高くすると前記触媒二次側において一次側酸素濃度と基準酸素濃度の差に応じた濃度の酸素が検出されるとともに、前記触媒の二次側の窒素酸化物濃度が一次側の窒素酸化物濃度よりも低減し、かつ二次側の一酸化炭素濃度が実質的に零となる。また、前記特異基準濃度比K0Xよりも一次側酸素濃度を低くする(前記調整1)と前記触媒の二次側において一次側酸素濃度と基準酸素濃度の差に応じた濃度の一酸化炭素が検出されるとともに、前記触媒の二次側の窒素酸化物濃度が実質的に零となり、かつ二次側の一酸化炭素濃度が低減する。
【0071】
こうした前記触媒の特性と前記予混合バーナおよび前記水管群の前記一次特性とを利用すると、前記触媒の二次側の酸素濃度および/または一酸化炭素濃度を零に制御する,すなわち空気比を1.0に制御することで、簡易に排出NOx濃度および排出CO濃度を実質的に零に制御することができる。すなわち、前記触媒の二次側の酸素濃度および/または一酸化炭素濃度の制御により、空気比1.0で燃焼することによる超省エネルギーと、排出NOx濃度および排出CO濃度が実質的に零の超低公害化とを同時に実現することが
できる。
【0072】
また、前記触媒の二次側の酸素濃度および/または一酸化炭素濃度を零の近傍にてその量を制御することにより、排出NOx濃度が実質的に零とすることができないまでも零に近い低い値に低減することができる。
【0073】
前記センサとしては、酸素過剰領域では過剰酸素濃度を表し、燃料過剰領域では一酸化炭素等の未燃ガスを空気比m=1で燃焼させるのに必要な不足酸素濃度を負の値として表す酸素濃度計を好適に用いることができる。また、前記センサとしては、酸素濃度センサと一酸化炭素濃度センサとを組み合わせ、近似的に空気比を求めることもできる。
【0074】
以上のようなセンサの取付位置は、好ましくは、前記触媒の二次側とするが、これに限定されるものではなく、前記触媒の一次側や、前記触媒の下流側に排熱回収器を設けた場合は、この下流側とすることができる。
【0075】
前記空気比調整手段は、前記バーナへ燃焼空気を送風する送風機と、この送風機を駆動するモータと、このモータの回転数を制御するインバータと、このインバータを制御する制御手段とを含む。この発明においては、前記インバータを制御することで前記バーナの燃料量に対する燃焼空気量の割合を変えることで、前記バーナの空気比を調整する。
【0076】
前記制御手段は、予め記憶した空気比制御プログラムに基づき、前記バーナの空気比を制御する。この空気比制御プログラムは、前記実施の形態1〜6においては、前記センサからの信号に基づき、フィードバック制御により前記定常時空気比とするように前記インバータを制御することで前記濃度比を所定濃度比とする定常時制御と、前記定常時空気比より高い変更時空気比とするように前記インバータを制御する変更時制御とを選択可能とするものである。そして、前記変更時制御が燃焼量変更に対応する燃焼空気量の変更時および変更前に行われ、前記定常時制御が燃焼空気変更後に行われる。この実施の形態1〜6における前記変更時時御は、好ましくは、フィードバック制御を行うが、フィードバック制御を行わないように構成することもできる。
【0077】
前記実施の形態1〜6における前記定常時空気比は、好ましくは、省エネルギーの観点
から1.1〜1.0とし、さらに好ましくは、1.0とする。また、前記変更時空気比は、好ましくは、1.27(排ガスO2:4.5%)以上とするが、これに限定されるものではない。
【0078】
また、前記空気比調整手段によるフィードバック制御は、好ましくは、周知のPID制御とするが、これに限定されるものではない。また、前記モータへ周波数出力の供給は、つぎのふたつの態様をとることができる。第一の態様は、前記センサからの酸素濃度信号を直接前記インバータへ入力して、前記インバータ内で操作量を演算して、周波数出力に変換し、前記モータへ供給するものである。第二の態様は、前記センサからの酸素濃度信号を前記制御器へ入力して、前記制御器内で操作量を演算して、周波数指令信号に変換し、前記インバータへ周波数指令信号を出力し、前記インバータから前記モータへ周波数出力を供給するものである。
【実施例1】
【0079】
ついで、この発明の燃焼装置を蒸気ボイラに適用した実施例を図面に従い説明する。図1は、本実施例1の蒸気ボイラの縦断面の説明図であり、図2は、図1のII−II線に沿う断面図であり、図3は、図2の酸化触媒を排ガスの流れ方向から見た要部構成を示す図であり、図4は、本実施例1の空気比−NOx・CO特性を説明する図であり、図5は、本実施例1のバーナおよび吸熱手段特性および触媒の特性を説明する模式図であり、図6は、本実施例1のセンサの出力特性を説明する図であり、図7は、本実施例1の空気比制御を説明するタイムチャート図であり、図8は、本実施例1のNOxおよびCO低減特性を説明する図であり、図9は、この発明によるNOx・CO一次特性および二次特性を説明する図である。
【0080】
まず、本実施例1の蒸気ボイラについて説明する。この蒸気ボイラは、バーナ1と、このバーナ1から生成されるガスの吸熱を行う吸熱手段としての伝熱管(水管)群2を含む缶体3と、前記伝熱管群2通過後の酸素,窒素酸化物および一酸化炭素をそれぞれ所定濃度比で含むガスが接触して通過し、一酸化炭素を酸化させるとともに窒素酸化物を還元させる酸化触媒(以下、単に「触媒」と称する。)4と、前記バーナ1へガス燃料を供給する燃料供給手段5と、前記バーナ1へ燃焼空気を供給するとともに燃焼空気および燃料を予混合する燃焼空気供給手段6と、前記触媒4の下流において酸素濃度を検出するセンサ(第一センサ)7と、このセンサ7などの信号を入力して前記燃料供給手段5および前記燃焼空気供給手段6などを制御するボイラ制御器としての制御器8とを主要部として備えている。
【0081】
前記バーナ1は、平面状の燃焼面(予混合気の噴出面)を有する完全予混合式バーナである。このバーナ1は、特許文献1に記載のバーナと同様の構成である。
【0082】
前記缶体3は、上部管寄せ9および下部管寄せ10を備え、この両管寄せ間に前記水管群2を構成する複数の内側水管11,11,…配置している。そして、図2に示すように、前記缶体3の長手方向の両側部に外側水管12,12,…連結部材13,13,…で連結して構成した一対の水管壁14,14を設け、この両水管壁14,14と前記上部管寄せ9および前記下管寄せ10との間に前記バーナ1からのガスがほぼ直線的に流通する第一ガス通路15を形成している。前記第一ガス通路15の一端には前記バーナ1が設けられ、他端の排ガス出口16には排ガスが流通する第二ガス通路(煙道)17が接続されている。この実施例1においては、前記バーナ1および前記缶体3は、公知のものを用いている。
【0083】
前記第二ガス通路17は水平部18と垂直部19とを含み、前記水平部18には、前記触媒4が装着されている。前記垂直部19には、前記触媒4の下流側に位置するように排
熱回収器としての給水予熱器20が装着され、前記触媒4および前記給水予熱器20の間に前記センサ7が配置されている。
【0084】
前記バーナ1,前水管群2を含む前記バーナ1から前記触媒4に至る構成要素(特にバーナ1と水管群2がその主要部)は、前記触媒4の一次側のガスにおける前記濃度比Kを前記所定濃度比K0,K1に調整する機能をなすものである。すなわち、後述する空気比調整手段28により設定空気比に調整したとき、図4に示す空気比−NOx・CO特性が得られるように構成されている。この空気比―NOx・CO特性は、前記空気比調整手段28を制御して、空気比を変化して燃焼させた時に得られる前記触媒4の一次側の空気比―NOx・CO特性(以下、一次特性という。)である。そして、前記触媒4は、前記一次特性を有する前記ガスを前記触媒4に接触させることにより得られる前記触媒4の二次側空気比―NOx・CO特性(以下、二次特性という。)を有している。前記一次特性は、前記バーナ1から前記触媒4に至る構成要素による特性であり、前記二次特性は、前記触媒4による濃度比特性である。前記一次特性は、前記設定空気比を1.0に調整したとき、前記触媒4の二次側のNOx濃度および一酸化炭素濃度を実質的に零とする。このとき、前記触媒4の一次側のガスにおける基準所定濃度比K0は、特異基準所定濃度比(以下、特異基準濃度比という。)K0Xとなる(図5参照)。
【0085】
図4は、図15の低空気比領域Z2を引き延ばした模式図である。この図4において、第一ライン(特性線)Eは、前記触媒4一次側のCO濃度を示し、第二ラインFは、同じく一次側のNOx濃度を示している。また、第三ラインJは、前記触媒4二次側のCO濃度を示し、空気比1.0以上でCO濃度が実質的に零となり、空気比が1.0より小さくなるに従い、濃度が急激に増加する特性を有している。また、第四ラインUは、前記触媒4二次側のNOx濃度を示し、空気比1.0以下の所定の領域でNOx濃度が実質的に零となり、空気比が1.0を越えるに従い、実質的に零から濃度が増加し、やがて前記触媒4の一次側の濃度と等しくなる特性を有している。この前記触媒4の二次側NOx濃度が、一次側の濃度と等しくなる空気比以下の領域をNOx・CO低減領域と称する。このNOx・CO低減領域の下限は、前記触媒4の二次側のCO濃度が300ppm(日本のCO排出基準)となる空気比とすることができる。この空気比−NOx・CO特性は、これまで研究されてこなかった低空気比領域の新規な特性である。
【0086】
前記触媒4は、前記水管群2を通過後の炭化水素を含まない前記ガスに含まれる一酸化炭素を酸化する(第一反応)とともに窒素酸化物を還元する(第二反応)機能を有し、本実施例1では、触媒活性物質を白金とした触媒を用いている。前記「発明を実施するための最良の実施の形態」の欄で説明したように、実験結果に基づいて理論的に考察すると、前記式(3)の濃度比式を満たす前記ガスと前記触媒4の触媒活性物質との接触により、主に一酸化炭素を酸化させる第一反応と窒素酸化物を一酸化炭素により還元させる第二反応とが生じると考えられる。前記第一反応は、酸素濃度により反応が進行するか、しないかが決定され、この触媒4においては、前記第一反応が前記第二反応に対して優位であると考えられる。
【0087】
前記触媒4をより具体的に説明すると、この触媒は、図3に示すような構造のもので、たとえば,つぎのようにして形成される。前記基材としての共にステンレス製の平板21および波板22のそれぞれの表面に多数の微小凹凸を形成し、その表面に触媒活性材料(図示省略)を担持する。ついで、所定幅の前記平板21および波板22を重ね合わせたうえで、螺旋状に巻回してロール状に形成する。このロール状のものを側板23にて包囲し固定して形成している。前記触媒活性材料としては、白金を用いている。なお、図3においては、前記平板21および前記波板22の一部のみを示している。
【0088】
この触媒4は、低温域で酸化活性を有し、前記第二ガス通路17の途中の前記水平部1
8であって、排ガス温度が約100〜350℃程度の位置に配置されている。そして、この触媒4は、性能が劣化した場合に交換可能なように、前記第二ガス通路17に対して着脱自在に装着されている。
【0089】
前記燃料供給手段5は、ガス燃料供給管24と、このガス燃料供給管24に設けた燃料流量を調整する燃料調整弁25とを含んで構成されている。前記燃料調整弁25は、燃料供給量を高燃焼用流量と低燃焼用流量とに流量を段階的に制御する機能を有する。この燃料調整弁25は、単一の弁で構成しても、また互いに並列接続される複数の弁にて構成することができる。この実施例1では、後者の低燃弁と高燃弁(いずれも図示省略)とを並列接続したものとしている。
【0090】
前記燃焼空気供給手段6は、送風機26と、この送風機26から前記バーナ1へ燃焼空気を供給する給気通路27と、この給気通路27を流れる燃焼空気量を調整することで前記バーナ1の空気比を調整する空気比調整手段28を含んで構成されている。前記給気通路27内へは、前記ガス燃料供給管24が燃料ガスを噴出するように接続されている。
【0091】
前記空気比調整手段28は、前記バーナ1へ燃焼空気を送風する前記送風機26と、この送風機26を駆動するモータ29と、このモータ29の回転数を制御するインバータ30と、このインバータ30を制御する前記制御器8とを含んで構成されている。また、この空気比調整手段28は、燃焼空気量を補助的に制御するためのダンパ31を備えている。
【0092】
前記制御器8は、予め記憶した空気比制御プログラムに基づき、前記バーナ1の空気比を制御する。この空気比制御プログラムは、図7に示すような制御を行う。すなわち、前記センサ7から信号に基づき、フィードバック制御により前記定常時空気比とするように前記インバータ30を制御することで前記濃度比Kを基準所定濃度比K0とする定常時制御と、前記フィードバック制御を行わず、前記定常時空気比より高い変更時空気比とするように前記インバータを制御する変更時制御とを選択可能とするものである。本実施例1の前記定常時空気比は、1.0とし、前記変更時空気比は、好ましくは、1.27(排ガスO2:4.5%)としている。
【0093】
この実施例1における変更時制御から定常時制御への切り換えは、燃焼開始時と、燃焼量の変更時に行われるように構成している。燃焼開始時は、前記変更時制御が着火動作であるメイントライから最初の低燃焼時の所定時間T1経過までを含んで行われ、前記定常時制御が前記所定時間T1後に行われるように構成する。勿論、前記メイントライの前の着火トライにおいても空気比のフィードバック制御は行わず、前記変更時制御を行う。また、着火トライの前の着火準備ステージにおいては、燃焼が行われていないので、空気比のフィードバック制御は、不要である。前記所定時間は、最初の低燃焼開始からの時間とすることができる。
【0094】
また、燃焼量変更時は、前記変更時制御が燃焼量変更に対応する燃焼空気量の変更時に行われ、前記定常時制御が燃焼空気量の変更後に行われる。変更後の前記定常時制御への移行は、変更が終了して所定時間後としている。
【0095】
また、定常時制御は、前記触媒4の一次側の前記ガスの濃度比Kが次式(3)を満たす制御である。
([NOx]+2[O2])/[CO]≦2.0 …(3)
(式(3)において、[CO]、[NOx]および[O2]はそれぞれ一酸化炭素濃度、窒素酸化物濃度および酸素濃度を示し、[O2]>0の条件を満たす。)
この定常時制御を図4および図7に基づき以下に説明する。
【0096】
図4の空気比―NOx・CO特性は、前記バーナ1および前記水管群2を含む構成要素の前記一次特性と前記二次特性とに基づいて表現したものであるが、図5は、これを前記触媒4一次側の酸素濃度に対する前記構成要素の前記一次特性と前記触媒4の特性とに基づいて表現したものである。
【0097】
前記触媒4の特性は、図5に示すように、前記触媒4一次側の前記基準所定濃度比K0に関する第五ラインL(二次側[NOx]=0,二次側[CO]=0ライン)にてその特徴を表している。この第五ラインLは、そのライン上に前記触媒4一次側の前記濃度比Kが位置する(載る)と、前記触媒4の二次側の窒素酸化物濃度および一酸化炭素濃度を実質的に零とする,すなわち前記基準所定濃度比K0を満たすラインである。この第五ラインLは、前記式(3)の前記所定濃度比が1の場合に対応している。すなわち、この第五ラインLは、次式(3A)を表したラインである。
[NOx]+2[O2]=[CO] …(3A)
【0098】
ここで、[NOx]は、図8に示すように[CO]の1/30〜1/50程度であるので、図5においては、酸素濃度に対するNOx濃度特性を省略するとともに、式(3A)における[NOx]を無視している。この第五ラインLにおいて、一次側酸素濃度をX1とした場合、一次側一酸化炭素濃度Y1は、Y1=2X1+[NOx]となる。なお、前記所定濃度比の値が1.0を越える2.0までの範囲で、前記触媒4の二次側の窒素酸化物濃度および一酸化炭素濃度を実質的に零とする前記基準所定濃度比K0とすることができることが確認されているので、前記第五ラインLは、図示のラインLに限定されず、前記式(3)を満たすラインとすることができる。
【0099】
そして、前記バーナ1および前記水管群2の前記一次特性曲線を表す第六ラインMと、前記第五ラインLとの交点における酸素,窒素酸化物および一酸化炭素の基準所定濃度比K0が前記特異基準濃度比K0Xである。前記触媒4は、その一次側の前記濃度比Kを前記特異基準濃度比K0Xとした場合、前記触媒4の二次側の窒素酸化物濃度および一酸化炭素濃度を実質的に零とする特性を有している。この前記基準濃度比K0Xとする調整が、前記調整0に相当する。
【0100】
そして、前記触媒4は、前記特異基準濃度比K0Xに対応する基準酸素濃度SKよりも一次側酸素濃度を高くすると前記触媒4二次側において一次側酸素濃度と基準酸素濃度の差に応じた濃度の酸素が検出されるとともに、前記触媒4の二次側の一酸化炭素濃度を実質的に零とし、前記触媒4の二次側の窒素酸化物濃度を還元反応により一次側の窒素酸化物濃度よりも低減する特性を有している。この前記触媒4二次側において酸素が検出されるとともに、一次側の窒素酸化物濃度よりも低減する特性の領域を二次側NOx漏れ領域R1と称する。この二次側NOx漏れ領域R1では、前記バーナ1の空気比は、1.0を
越える。
【0101】
また、前記基準酸素濃度SKよりも一次側酸素濃度を低くすると前記触媒4の二次側において一次側酸素濃度と基準酸素濃度SKの差に応じた濃度の一酸化炭素が検出されるとともに、所定の範囲で前記触媒4の二次側の窒素酸化物濃度を実質的に零とする特性を有している。この前記触媒4二次側において一酸化炭素が検出されるとともに、窒素酸化物濃度を実質的に零とする特性の領域を二次側CO漏れ領域R2と称する。この二次側CO漏れ領域R2は、前記調整1を実現する領域であり、前記バーナ1の空気比が1.0未満である。前記バーナ1の空気比は、1.0未満に設定される場合でも、前記触媒4の一次側で、炭化水素を含まず、酸素を含む範囲で設定される。
【0102】
こうした図5に示す触媒4の特性は、図4に示す空気比―NOx・CO特性に符合する
ものである。この図4,5から明らかなように、前記触媒4の二次側の酸素濃度および/または一酸化炭素濃度を検出し、この酸素濃度および/または一酸化炭素濃度が零となるように前記空気比調整手段28を制御すると、前記触媒4の一次側における前記濃度比Kが前記特異基準濃度比K0Xに制御され、前記触媒4の二次側の窒素酸化物濃度および一酸化炭素濃度を実質的に零に制御できる。こうして、前記定常時制御が実現される。
【0103】
前記センサ7として、排出酸素濃度の分解能が50ppmで応答時間2sec以下の応答答性の良好なジルコニア式空燃比センサを用いている。このセンサ7の出力特性は、図6に示すように、出力Eが正側で酸素濃度に関係する出力となり、負側で一酸化炭素濃度等に関係する出力となる。すなわち、測定される酸素濃度(酸素過剰領域)および一酸化炭素濃度等(燃料過剰領域)から空気比mを算出し、この空気比mに対応した電流または電圧の出力を得ている。図6において、Q1は、酸素濃度検出帯を示し、Q2は、一酸化炭素濃度検出帯を示している。
【0104】
そして、前記空気比制御プログラムは、前記定常時制御においては、前記センサ7の出力信号に基づき、前記バーナ1の空気比mが前記定常時空気比(基準設定空気比)m0になるように、前記インバータ30をフィードバック制御するものである。また、前記変更時制御においては、前記空気比mが前記変更時空気比となるように制御するように構成されている。
【0105】
つぎに、以上の構成の前記蒸気ボイラの動作を説明する。まず、蒸気ボイラの概略的動作について、前記送風機26から供給される燃焼空気(外気)は、前記ガス燃料供給管24から供給される燃料ガスと前記給気通路27内において予混合される。この予混合気は前記バーナ1から前記缶体3内の前記第一ガス通路15へ向けて噴出される。予混合気は、着火手段(図示しない)により着火され、燃焼する。この燃焼は、低空気比にて行われる。
【0106】
この燃焼に伴い生ずるガスは、上流側の水管群2と交叉して冷却された後、下流側の水管群2と熱交換して吸熱されて約100〜350℃のガスとなる。このガスは、炭化水素を含まず、酸素,窒素酸化物および一酸化炭素を含み、前記触媒4にて、処理され、窒素酸化物濃度および一酸化炭素濃度がほぼ零とされた後、排ガスとして前記第二ガス通路17から大気中へ排出される。
【0107】
つぎに、前記空気比調整手段28による空気比制御を図7に基づき説明する。図7は、後記「メイントライ」制御段階(以下、ステージという。)より後のステージを図示している。本実施例1のボイラは、高燃焼と低燃焼とを切り替えて運転する。そのために、前記ダンパ29は、高燃焼風量位置と低燃焼風量位置のいずれかを選択して開度の大きいH、開度の小さいLとに切り換えられる。
【0108】
まず、「プレパージ」ステージでは、前記モータ29がON,前記インバータ30からの出力周波数が前記変更時空気比対応の周波数とされ、フィードバック制御がOFFされ、前記ダンパがHとされ、周知のプレパージが行われる。
【0109】
ついで、「プレイグニッション」ステージでは、前記ダンパ31をLとして、点火トランス(図示省略)が駆動される。その後、パイロット弁(図示省略)をONし、前記パイロット弁に点火する。着火が完了すると、点火トランスの作動を停止し、「パイロットオンリ」ステージへ移行する。その後、前記バーナ1の燃焼要求があると、前記低燃弁を開き、「メイントライ」(前記バーナ1の着火動作)ステージを行う。
【0110】
図7を参照して、前記「メイントライ」開始からこの「メイントライ}終了後の「低燃
焼」ステージの所定時間T1(T1は前記触媒4の温度が約150℃以上となるまでの間とすることができる)は、前記変更時制御が行われる。このように「メイントライ」と最初の低燃焼時の初期との間は、前記バーナ1の燃焼が不安定となりがちであるので、前記バーナ1の空気比を変更時空気比とするとともに、フィードバック制御を行わないので、安定した着火動作と安定した低燃焼の立上りを実現することができる。前記所定時間T1のカウント開始を「低燃焼」ステージの開始とすることができる。
【0111】
前記T1が経過すると、前記制御器8は、前記定常時制御へ切り換える。この定常時制御は、前記センサ7からの信号を受けてのフィードバック制御により行われる。すなわち、前記制御器8は、前記定常時空気比m0を保持するように前記インバータ30へ信号を出力する。その出力信号は、前記センサ7の信号が図6のように変化するので、この信号を受けて、前記制御器8は、空気比mが、m0に集束するように、フィードバック制御により、前記インバータ30へ信号を出力する。このフィードバック制御による前記定常時制御により、外気温の変動などによる空気比の変動を最小限に抑えることができる。その結果、一酸化炭素の発生により、前記触媒4の処理能力を超えることが抑制され、一酸化炭素や窒素酸化物がボイラ外へ漏れることが抑制され、安定した有害物質低減効果が保証される。特に、この実施例1では、空気比1を1.0に設定しているので、僅かの空気比の変動でも多量の一酸化炭素の生成を生ずる虞があるので、この定常時制御は、効果が大きい。
【0112】
つぎに、高燃焼の要求を受けると、「高燃焼」ステージの制御を行う。前記制御器8は、まず、前記フィードバック制御をOFFとして、前記インバータ30の出力周波数が前記定常時空気比m0から変更時制御の空気比へ変更するように指令を発する。その結果、前記インバータ30からは、前記トリップが生じないように、図7に示すように徐々に上昇する周波数が出力される。変更時空気比に対応する周波数となり、前記「高燃焼」ステージ開始から所定時間T2が経過すると、まず、前記高燃弁を開き、所定時間遅れ,すなわち「高燃焼」ステージ開始から所定時間T3が経過すると、前記ダンパ29をHとする。そして、「高燃焼」ステージ開始から所定時間T4、前記変動時制御による高燃保持を行った後に、前記定常時制御へ切り換える。
【0113】
再び、低燃焼の要求を受けると、前記制御器8は、「低燃焼」ステージの制御を行う。前記フィードバック制御をOFFとして、前記インバータ30の出力周波数が前記定常時空気比m0から変更時制御の空気比へ変更するように指令を発する。その結果、前記インバータ30からは、図7に示すように徐々に上昇する周波数が出力される。変更時空気比に対応する周波数となり、前記「低燃焼」ステージ開始から所定時間T6が経過すると、まず、前記ダンパ29をHとし、所定時間遅れ,すなわち「低燃焼」ステージ開始から所定時間T5が経過するとで、前記高燃弁を閉じる。そして、「低燃焼」ステージ開始から所定時間T7、前記変動時制御による低燃保持を行った後に、前記フィードバック制御をONとする前記定常時制御へ切り換える。
【0114】
以上のインバータ30による空気比の制御において、一般的にはインバータ制御は、ダンパと比較して応答性が悪いと考えられている。その理由は、スリップが生ずるような操作量が大きい場合、出力周波数の増減勾配を小さくするためである。しかしながら、本願発明のように、空気比1.0近傍で操作量が少ない制御においては、増減勾配を小さくする必要がないので、ダンパと比較して応答性に差はない。
【0115】
ここで、前記定常時制御による有害物質低減効果について説明する。
(実験例1)
単位時間当たり蒸発量を800kgの缶体3(出願人が製造の型式:SQ−800と称される缶体)で、燃焼量45.2m3N/hの予混合バーナ1で燃焼させ、触媒活性物質として
Ptを2.0g/Lの割合で担持した体積10L、内径360mmの触媒とした場合の実験結果について説明する。前記基準設定空気比m0を1とした場合、前記触媒1の一次側(前記触媒4通過前)の一酸化炭素濃度,窒素酸化物濃度,酸素濃度がそれぞれ10分間の平均値で2295ppm,94ppm,1655ppmに調整され、前記触媒1の二次側(前記触媒1通過後)のそれぞれの濃度が10分間の平均値で13ppm,0.3ppm,100ppm未満となった。ここで、前記触媒1の二次側の酸素濃度100ppmは、酸素濃度の測定限界である。また、前記触媒4の前後でのガスの温度は、それぞれ、302℃,327℃であった。本実験例1および以下の実験例2,3においては、前記触媒4を前記給水予熱器20のやや上流に配置し、その前後に測定装置を配置し、前記触媒4の通過後の各濃度およびガスの温度は、株式会社堀場製作所製PG−250を用い、通過前の各濃度は、株式会社堀場製作所製COPA−2000を用いて計測した。勿論、前記触媒4を図1に示す位置に配置しても測定濃度値は殆ど変わらないと考えられる。
(実験例2)
【0116】
実験例1と同じバーナ1および缶体3を用い、燃焼量を実験例1と同じとし、触媒活性物質としてPdを2.0g/Lの割合で担持した体積10L、内径360mmの触媒とした場合の一酸化炭素濃度,窒素酸化物濃度,酸素濃度の各濃度比Kにおける値を図10に示す。ここで、触媒通過後の酸素濃度を実験例1と同様の酸素濃度センサを用いて測定したので、実際は100ppm以下の値であっても100ppmで示した。前記触媒4の前後でのガスの温度は、それぞれ、約323℃〜325℃,約344℃〜346℃であった。
【0117】
以上のように、この実施例1の空気比制御によれば、燃焼量変更時は、前記変更時制御により不安定な燃焼による不具合を回避できるとともに、定常燃焼時は、前記定常時制御により、前記バーナ1の空気比を1.0に近い低空気比とし、かつ前記触媒4の一次側のガスの濃度比変化幅が少なく制御され、前記式(3)を安定的に満たすことができる。その結果、前記触媒4の二次側の窒素酸化物濃度をほぼ零にするとともに、一酸化炭素濃度をほぼ零低減することができる。なお、設定空気比m0を1.0未満とすると、二次側の窒素酸化物濃度をほぼ零にするとともに、一酸化炭素濃度を実用範囲の所定値以下に低減することができる。
【0118】
また、この実施例1の燃焼開始時の制御(変更時制御から定常時制御への移行制御)によりつぎの効果を奏する。前記定常時制御による低NOx燃焼は、前記触媒4二次側の酸素濃度を前記センサ7によって監視し、燃焼用空気量を前記センサ7の検出値が実質的に零となるようにフィードバック制御を行うものである。この制御は、前記センサ7の出力およびフィードバックパラメータ(PIDのパラメータ)によって支配される。前記フィードバックパラメータは、あらかじめ決められた固定値を用いるため、前記センサ7出力の独占支配となる。前記バーナ1の着火直後の排ガス中の酸素濃度は、定常的な燃焼時のように全体にわたって均一ではなく、濃度むらが存在する。またセンサ自身がもつ応答遅れも考えられる。この不安定な酸素濃度状態の時にフィードバック制御をかけた場合、条件によっては過剰な燃焼用空気量の減量を行い、酸素濃度零の目標値を大きく下回りアンダーシュートを起し、一酸化炭素の発生、失火、爆発等の不具合が発生する可能性がある。この実施例1の燃焼開始時制御により、これらの不具合を解消できる。
【0119】
また、前記実施例1によれば、前記空気比調整手段28により、空気比を1.0に制御することで、前記触媒4の一次側の酸素,窒素酸化物および一酸化炭素の濃度比を前記特異基準濃度比K0Xに制御(前記調整0)することができ、排出NOx濃度および排出CO濃度を実質的に零に低減できる。したがって、水/蒸気添加による低NOx化技術や、脱硝剤の投入による低NOx化技術と比較して、空気比調整手段と触媒を用いた簡易な構成にて低NOxおよび低COを実現できる。
【0120】
また、空気比を実質的に1.0としているので、省エネ運転を行える。ちなみに、通常のボイラにおける酸素濃度4%(空気比約1.235)の運転と、酸素濃度0%(空気比約1.0)の運転とを比較すると、ボイラ効率約1〜2%アップを達成することができる。地球温暖化対策が叫ばれている昨今において、このボイラ効率アップ達成は、産業的価値が多大である。
【0121】
さらに、前記触媒4の二次側に前記センサ7を設けて、空気比を制御しているので、前記触媒4の一次側にセンサを設けて制御するものと比較して制御を安定化することができる。また、酸素濃度100ppm以下の分解能で空気比を制御しているので、CO量が多く、かつ空気比−CO特性においてCO増加率の高い領域での空気比制御を応答性よく、安定的に行うことができる。
【実施例2】
【0122】
この発明の他の実施例2を図9に従い説明する。この実施例2は、酸素濃度を検出するセンサ7を前記触媒4の二次側でなく、一次側に設けたものである。このセンサ7は酸素濃度のみを検出するセンサとしているだけで、その他は、前記実施例1と同様であるので、説明を省略する。
【0123】
この実施例2では、基準設定空気比m0を1(前記触媒4の二次側の酸素濃度を零)とするように、前記センサ7により、前記触媒4の一次側の酸素濃度を検出して間接的に空気比を制御するものである。種々の実験結果に基づき、前記触媒4の一次側の酸素濃度O2を0%<O2≦1.00%の値に制御すると、前記式(3)を満たして、前記触媒4の二次側の酸素濃度をほぼ零にする,すなわち空気比をほぼ1.0にすることが可能であることが分かっている。
【実施例3】
【0124】
この実施例3は、前記設定空気比を、図10に示すように、前記二次特性におけるNOx濃度が実質的に零を越え、前記一次特性におけるNOx濃度より低くなる値に設定した例である。この値は、前記設定空気比が、実質的に1.0を越える前記二次特性の二次側NOx漏れ領域R1の空気比である。この実施例3における濃度比Kの調整は、前記調整2である。
【0125】
この実施例3における制御範囲の中心(目標空気比)、たとえば空気比1.005(O2濃度:約1000ppm)とした場合である。これを図7にて説明すると、前記触媒4一次側の酸素濃度が前記基準酸素濃度SKよりも高い前記二次側NOx漏れ領域(前記調整2を実現する領域)R1にて空気比制御を行うことになる。
【実施例4】
【0126】
つぎに、この発明の実施例4を図11に基づき説明する。この実施例4は、前記定常時制御と前記変更時制御とを選択する第一制御パターンと前記変更時制御のみの第二制御パターンを手動のスイッチ32により選択可能とした点でのみ、前記実施例1と異なるので、共通部分はその説明を省略する。この実施例3においては、前記スイッチ32を第一制御パターンとすることで、前記実施例1と同じ動作をさせることができ、前記第二制御パターンとすることで前記触媒4を備えない従来のボイラの制御に適用できる。また、この実施例3のスイッチ32を前記触媒4による有害物質低減作用が不調のとき、前記第一制御パターンから前記第二制御パターンへ自動的に切り換えるスイッチとすることも可能である。
【実施例5】
【0127】
つぎに、この発明の実施例5を図12に基づき説明する。この実施例5は、前記実施例
1の構成に加えて、前記空気比調整手段28は、最初の変更時空気比から定常時空気比への変更かどうかを判定し、最初と判定されるとき、フィードバック制御により前記インバータを制御して変更時空気比から定常時空気比への変更を行い、変更が終了すると定常時空気比に対応する周波数を記憶するとともに、最初と判定されないとき、フィードバック制御を行うことなく、前記記憶周波数またはこの周波数に所定の係数を乗じた周波数にて前記インバータを制御して定常時空気比への変更を行うことを特徴とする。これは、前記設定空気比を変更時空気比から定常時空気比へ変更する時、特に低燃焼時において前記変更時空気比に対応する周波数(通常周波数)から前記定常時空気比に対応する低NOx周波数へ落とす時には、急速に減速するとアンダーシュートを生じ、低燃焼時の定常時空気比を下回り、燃焼が不安定となったり、一酸化炭素の排出量が増大する虞もある。これを防止することを目的とする。
【0128】
この実施例5の前記空気比調整手段28による制御は、図12に示されるような制御手順にて実行される。低燃焼時において、変更時空気比から定常時空気比へ制御する場合につき説明する。図7において、前記のように「メイントライ」から最初の低燃焼ステージの初期T1は、変更時空気比にて燃焼が行われていて、所定時間T1が経過すると、変更時空気比から定常時空気比の制御が行われる。このとき、処理ステップS1(以下、処理ステップSNは、単にSNという。)において、最初の変更時空気比から定常時空気比への変更かどうかが判定される。今の場合、YESであるので、S2へ移行して、PID制御をONとして、前記インバータ30を空気比が定常時空気比となるように制御信号を出力する。すなわち、フィードバック制御により前記インバータ30の周波数を徐々に変更し、定常時空気比となるように制御する。そして、S3において、定常時空気比となったことを前記センサ7により検出すると、この定常時空気比に対応する周波数を前回周波数として記憶するとともに、PID制御をONとして、定常時空気比を保持するように前記インバータを30を制御する定常時制御を行う。
【0129】
図7を参照して、高燃焼ステージから低燃焼ステージへの移行時、2回目の変更時空気比から定常時空気比への変更が行われる。この時には、S1にてNOが判定され、処理はS5へ移行して、PID制御をOFF,すなわちフィードバック制御をかけることなく、前記インバータ30の周波数を記憶した前回周波数まで一気に下げる。このとき、好ましくは、前記センサ7の応答遅れを考慮して、しばらくはフィードバック制御を行わず、所定時間経過後にフィードバック制御を行うように構成する。こうした、制御を行うことにより、1回目を除き、2回目以降は短時間で定常時制御に移行することができる。その結果、アンダーシュートによる不具合を解消できるとともに、NOx排出量を低減できる。なお、詳しい説明を省略するが、高燃焼時において通常周波数から低NOx周波数へ移行する時も低燃焼時と同様に最初の移行時の定常時空気比に対応する周波数を前回周波数として記憶して、2回目の移行時からは記憶した前回周波数に基づき、前記インバータ30を制御するように構成することができる。
【実施例6】
【0130】
さらに、この発明の実施例6を図13および図14に基づき説明する。前記実施例1が変更時制御を着火後の最初の低燃焼時の所定時間経過までという条件において行うのに対して、この実施例6は、変更時制御を着火後の最初の低燃焼時の所定時間T1経過までという第一条件と前記酸化触媒の温度を設定値以上という第二条件とのAND条件で行う点を特徴としている。この実施例6において、前記実施例1とハード的に異なるのは、図13に示すように前記触媒4の温度を検出するセンサ(第二センサ)33を設けている点と、ソフト的に異なるのは、前記制御器8が図14に示す制御手順を含んでいる点であり、その他は前記実施例1と同様であるので、その説明を省略する。
【0131】
以下に、この実施例6の動作を図14に基づき説明する。図14を参照して、燃焼開始
から前記設定時間T1が経過するまでは、S21,S22の処理が行われるが、これは前記実施例1と同様に行われる。この実施例6では、S22にてYESが判定されると、S23へ移行して、前記第二センサ33による検出値が設定値t0以上かどうかを判定し、NOが判定されるとS21へ戻り、PID制御をOFFとしたフィードバック制御を行わない変更時制御が行われ、YESが判定されるとS24へ移行して、PID制御をONとしてフィードバック制御を行う定常時制御が行われる。
【0132】
この実施例6によれば、つぎの二つの不具合を解消できる。第一の不具合は、前記バーナ1を十分燃焼させた後、燃焼待機し、その後すぐに着火要求があったとき(このとき、前記触媒4の温度は設定値以上という第二条件を満たし、前記所定時間T1の経過という第一条件を満たしていない。)、フィードバック制御をかけることになる。この時は、排ガスが十分安定していないので、前記センサ7が検出した酸素濃度を基に前記インバータ30の周波数を急激に落とし始め、目標値から大きくアンダーシュートし、一酸化炭素の多量排出、失火などの不具合の発生が発生する。また、朝一の前記ボイラ立ち上げ時は、前記第一条件を満たしても前記第二条件を満たしていないことがり、そうすると、定常時制御に入ったとき、前記触媒4温度が低いため一酸化炭素が酸化されず大量排出される。この実施例6によれば、この二つの不具合を解消することができる。
【0133】
この発明は、前記実施例1〜6に限定されるものではない。たとえば、図4および図10に示す空気比−NOx・CO特性は、燃焼装置の前記バーナ1および前記缶体3の構造に応じて曲線および濃度値が異なるので、異なった特性を用いることができる。また、前記実施例1,2では、設定空気比を1.0以上としているが、燃焼性を損なわず、炭化水素を生成しない範囲で、空気比1.0より低い値とすることができる。
【0134】
また、前記実施例2において、前記センサ7をO2濃度センサとしているが、CO濃度センサとすることができる。また、前記インバータ30を単一の制御器(ボイラ制御用の制御器)8にて制御しているが、この制御器8と別に前記インバータ30用の別の制御器(図示省略)を設け、この制御器8と前記センサ7,前記制御器8を接続して、空気比制御を行うように構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0135】
【図1】本実施例1の蒸気ボイラの縦断面の説明図である。
【図2】図1のII−II線に沿う断面図である。
【図3】図2の酸化触媒を排ガスの流れ方向から見た要部構成を示す図である。
【図4】本実施例1の空気比−NOx・CO特性を示す図である。
【図5】本実施例1のバーナおよび吸熱手段の特性および触媒の特性を説明する模式図である。
【図6】本実施例1のセンサの出力特性を説明する図である。
【図7】本実施例1の空気比制御による燃焼制御を説明する図である。
【図8】本実施例1のNOxおよびCO低減特性を説明する図である。
【図9】本実施例2の蒸気ボイラの縦断面の説明図である。
【図10】本実施例3のNOxおよびCO低減特性を説明する図である。
【図11】本実施例4の蒸気ボイラの縦断面の説明図である。
【図12】本実施例5の要部制御手順を説明するフローチャート図である。
【図13】本実施例6の蒸気ボイラの縦断面の説明図である。
【図14】本実施例6の要部制御手順を説明するフローチャート図である。
【図15】この発明によるNOx・CO一次特性および二次特性を説明する図である。
【0136】
1 バーナ
4 触媒
7 第一センサ
8 制御器
25 燃料調整弁
28 空気比調整手段
29 モータ
30 インバータ
33 第二センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バーナと、
このバーナの燃焼量を変更するように燃料供給量を変更可能とした燃料供給手段と、
前記バーナへ燃焼空気を供給する送風機を含む燃焼空気供給手段と、
前記送風機の回転数を可変とするインバータと、
前記バーナの空気比を調整する空気比調整手段と、
前記バーナの空気比を検出するセンサとを備え、
前記空気比調整手段は、前記センサから信号に基づき、フィードバック制御により定常時設定空気比とするように前記インバータを制御する定常時制御と、前記定常時設定空気比より高い変更時設定空気比とするように前記インバータを制御する変更時制御とを選択可能としたことを特徴とする燃焼装置。
【請求項2】
炭化水素含有の燃料を燃焼させて、酸素,窒素酸化物および一酸化炭素を含むガスを生成させるバーナと、
このバーナの燃焼量を変更可能とした燃料供給手段と、
前記バーナへ燃焼空気を供給する送風機を含む燃焼空気供給手段と、
前記送風機の回転数を可変とするインバータと、
前記ガスに含まれる一酸化炭素を酸素により酸化し窒素酸化物を一酸化炭素により還元する酸化触媒と、
前記バーナの空気比を調整する空気比調整手段と、
前記バーナの空気比を検出するセンサとを備え、
前記バーナは、前記空気比を定常時設定空気比としたとき、前記酸化触媒一次側のガス中の酸素,窒素酸化物および一酸化炭素の濃度比が所定濃度比となる特性を有し、
前記酸化触媒は、前記濃度比を前記所定濃度比としたとき前記酸化触媒二次側の窒素酸化物濃度を実質的に零または所定値以下とし、一酸化炭素濃度を実質的に零または所定値以下とするとする特性を有し、
前記空気比調整手段は、前記センサから信号に基づき、フィードバック制御により前記定常時設定空気比とするように前記インバータを制御することで前記濃度比を所定濃度比とする定常時制御と、前記定常時設定空気比より高い変更時設定空気比とするように前記インバータを制御する変更時制御とを選択可能としたことを特徴とする燃焼装置。
【請求項3】
前記変更時制御が燃焼量変更に対応する燃焼空気量変更時に行われ、前記定常時制御が燃焼空気量変更後に行われることを特徴とする請求項2に記載の燃焼装置。
【請求項4】
前記変更時制御が着火後の最初の低燃焼の所定時間経過まで行われ、前記定常時制御が前記所定時間後に行われることを特徴とする請求項2に記載の燃焼装置。
【請求項5】
変更時制御が着火後の最初の低燃焼の所定時間経過までという第一条件と前記酸化触媒の温度を設定値以下という第二条件とのAND条件で行われ、前記定常時制御が前記AND条件成立後に行われることを特徴とする請求項2に記載の燃焼装置。
【請求項6】
前記空気比調整手段は、最初の変更時設定空気比から定常時設定空気比への変更かどうかを判定し、最初と判定されるとき、フィードバック制御により前記インバータを制御して変更時設定空気比から定常時設定空気比への変更を行い、変更が終了すると定常時設定空気比に対応する周波数を記憶するとともに、最初と判定されないとき、フィードバック制御を行うことなく、前記記憶周波数またはこの周波数に所定の係数を乗じた周波数にて前記インバータを制御して定常時設定空気比への変更を行うことを特徴とする請求項2に記載の燃焼装置。
【請求項7】
前記燃焼空気供給手段に前記燃焼量の変更に合わせて開閉するダンパを備え、前記ダンパの開閉後に前記定常時制御が行われることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の燃焼装置。

【図4】
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【図7】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−2570(P2009−2570A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−163412(P2007−163412)
【出願日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【出願人】(000175272)三浦工業株式会社 (1,055)
【出願人】(504143522)株式会社三浦プロテック (488)
【Fターム(参考)】