説明

燃焼装置

【課題】COセンサが正常であるか否かの診断処理を適切かつ正確に行なうことが可能な燃焼装置を提供する。
【解決手段】排ガスのCO濃度を検出するためのCOセンサSaと、このCOセンサSaにヒートクリーニングを実行させるとともに、このヒートクリーニングの期間中に、COセンサからの出力信号を受け、かつヒートクリーニングの開始時から所定の第1の時間が経過した時点において、COセンサSaが正常であるか否かを判断する制御手段2と、を備えている、燃焼装置Aであって、制御手段2は、第1の時間が経過した時点において、COセンサSaが正常ではないと判断したときには、ヒートクリーニングの時間を延長し、COセンサSaが正常であるか否かの判断を継続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、COセンサを備えたガス給湯装置などの燃焼装置に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、屋内に設置されるガス給湯装置においては、排ガス経路などにCOセンサが設けられ、燃料の不完全燃焼などの燃焼不良を検出できるようにされているのが通例である(たとえば、特許文献1〜3を参照)。COセンサは、その表面に汚染物質が付着すると、そのセンサ出力に誤差が生じ、そのまま使用し続けると、排ガス中のCO濃度が高いにも拘わらず、その値が正常であると判断される虞がある。また、これとは反対に、排ガス中のCO濃度が正常であるにも拘わらず、異常であると判断される虞もある。そこで、このような虞を解消する手段として、COセンサをヒートクリーニング(COセンサに電流を流して発熱させることによりCOセンサの汚れを除去)する手段が採用されている。
【0003】
一方、COセンサについては、高い信頼性が求められるために、故障や断線があるか否かの診断処理を適当な頻度で行なわれることが望まれる。従来、COセンサを診断するための手法としては、前記したヒートクリーニングがなされるときに、COセンサから出力される信号を観察し、この信号に基づいて異常の有無を判断する手法がある。COセンサが正常である場合、ヒートクリーニング時においては、所定値以上のセンサ出力がなされる。このセンサ出力が所定の正常な範囲にあれば、COセンサは正常であると判断することが可能であり、そうでない場合には異常があるものと判断することができる。このような手法によれば、ヒートクリーニング処理時に、COセンサの診断処理が同時に行なわれるため、合理的である。
【0004】
しかしながら、前記従来技術においては、次のように改善すべき余地があった。
【0005】
すなわち、ヒートクリーニング時間を余り長くとると、COセンサの使用寿命が短くなる不利があり、またCOセンサをヒートクリーニングしている期間中は、バーナを燃焼駆動させることができない。このため、ヒートクリーニング時間を余り長くとることは望ましくない。これとは反対に、ヒートクリーニング時間を余りに短くすると、COセンサの汚れを確実に除去することが困難となり、またヒートクリーニング中に実行されるCOセンサの診断処理を慎重に行なうこともできなくなる。そこで、これらの妥協点として、ヒートクリーニング処理時間は、たとえば25秒程度の一定時間に規定されており、通常のCOセンサであれば、このような時間内において正常であるか否かを診断することが可能である。
ところが、COセンサがコールド状態(長時間の無通電状態)にある場合において、通電を開始すると、そのセンサ出力の立ち上がりが遅い。このため、COセンサが本来的には正常であるにも拘わらず、ヒートクリーニングの期間内に適正なセンサ出力が得られず、COセンサが異常であると誤判断される場合があった。このような不具合は、COセンサが高温高湿状態にある場合や、COセンサに多くの不純物が付着しているような場合により顕著なものとなっていた。COセンサを備えた燃焼装置では、COセンサが異常であると判断されたままでは運転することができない。したがって、前記した誤判断を生じたのでは、燃焼装置を適切に運転させる上で大きな支障となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3706247号公報
【特許文献2】特許第3478916号公報
【特許文献3】特許第3711024号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記したような事情のもとで考え出されたものであって、COセンサが正常であるか否かの診断処理を適切かつ正確に行なうことが可能な燃焼装置を提供することを、その課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を講じている。
【0009】
本発明により提供される燃焼装置は、排ガスのCO濃度を検出するためのCOセンサと、このCOセンサにヒートクリーニングを実行させるとともに、このヒートクリーニングの期間中に、前記COセンサからの出力信号を受け、かつ前記ヒートクリーニングの開始時から所定の第1の時間が経過した時点において、前記COセンサが正常であるか否かを判断する制御手段と、を備えている、燃焼装置であって、前記制御手段は、前記第1の時間が経過した時点において、前記COセンサが正常ではないと判断したときには、前記ヒートクリーニングの時間を延長し、前記COセンサが正常であるか否かの判断を継続するように構成されていることを特徴としている。
【0010】
このような構成によれば、ヒートクリーニングを開始してから所定の第1の時間が経過した時点において、COセンサが正常ではないと判断されていた場合には、ヒートクリーニングの時間が延長されて、COセンサが正常であるか否かの判断が継続される。このため、たとえばCOセンサが正常であるにも拘わらず、コールド状態から通電が開始されたことに起因してセンサ出力信号の立ち上がりが遅い場合であっても、センサ出力信号を前記延長時間帯において適切に立ち上がらせて、COセンサが正常であると判断することが可能となる。したがって、COセンサが正常であるにも拘わらず、異常であると誤判断されることが適切に防止される。また、COセンサ出力信号の立ち上がりが比較的早いものの場合には、このCOセンサが正常である旨を、第1の時間で判断することが可能であり、判断の迅速性が大きく損なわれるといった不具合もない。
【0011】
本発明において、好ましくは、前記制御手段は、前記ヒートクリーニングの時間を延長した場合において、この延長後に所定の第2の時間が経過した時点で、前記COセンサは正常ではないと判断している場合には、この時点で前記COセンサは正常ではない旨の判断を確定し、前記ヒートクリーニングを終了するように構成されている。
【0012】
このような構成によれば、次のような効果が得られる。すなわち、ヒートクリーニングの時間を延長してから所定の第2の時間が経過したにも拘わらず、COセンサが正常であると判断できない場合には、COセンサが実際に正常でない可能性が高い。前記構成によれば、このような場合に、COセンサが正常でない旨の結論を的確に出すことができる。また、ヒートクリーニングの延長時間が第2の時間に達すると、ヒートクリーニングは終了するため、ヒートクリーニングが無用に長時間にわたって継続されることを防止することもできる。
【0013】
本発明において、好ましくは、前記制御手段は、前記ヒートクリーニングの時間を延長した場合において、この延長時から前記第2の時間が経過する前に、前記COセンサが正常であると判断し、かつその旨を確定させた場合には、この時点において前記ヒートクリーニングを終了するように構成されている。
【0014】
このような構成によれば、COセンサが正常であると判断したことに伴わせて、ヒート
クリーニングを比較的早期に終了させることが可能である。
【0015】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行なう発明の実施の形態の説明から、より明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る燃焼装置の一例を示す概略説明図である。
【図2】図1に示す制御部の動作処理手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照して具体的に説明する。
【0018】
図1に示す燃焼装置Aは、ガス給湯装置として構成されており、その基本的な構成自体は、従来既知のものと同様である。すなわち、この燃焼装置Aは、燃料ガスを燃焼させるバーナ10、このバーナ10に燃焼用空気を供給するファン11、バーナ10によって発生された燃焼ガスから熱回収を行なって湯水を加熱する熱交換器12、COセンサSa、および制御部2を具備している。
【0019】
COセンサSaは、熱交換器12による熱回収を終えた燃焼ガス(排ガス)のCO濃度を検出するためのものであり、燃焼ガスの排気経路中に設けられている。このCOセンサSaとしては、従来既知のものを用いることが可能であり、たとえば白金線コイルを酸化アルミなどの触媒によりコーティングして乾燥・焼成した構成である。測定対象の排ガス中にCOが存在すると、このCOとの反応熱によって白金線コイルの抵抗値が上昇する原理に基づき、CO濃度を検出可能である。このCOセンサSaの表面に汚染物質が付着すると、センサ出力値に誤差を生じる。COセンサSaのヒートクリーニングは、COセンサSaに電流を流して発熱させることにより、前記汚染物質を除去する処理であり、制御部2の制御により実行される。このヒートクリーニング中に、COセンサSaが正常であるか否かの診断がなされる。
【0020】
制御部2は、マイクロコンピュータなどを用いて構成されており、燃焼装置Aの各部の動作制御を実行する。また、本発明でいう制御手段の一例に相当する。制御部2は、基本的には所定時間が経過するなど、ヒートクリーニングを実行するための一定の要件が充足された時期に、COセンサSaのヒートクリーニングを実行させる。加えて、このヒートクリーニング中には、COセンサSaから出力されるセンサ信号に基づき、COセンサSaが正常であるか否かの診断を行なう。この診断に際しての具体的な動作処理手順については後述するが、その基本となる手法は次のとおりである。
なお、以下において、NG判定とは、COセンサSaは正常でない旨の暫定的(未確定)な判定である。OK判定は、COセンサSaは正常である旨の暫定的な判定である。
1.COセンサSaのヒートクリーニング開始時においては、NG判定とする。
2.COセンサSaから所定の基準値以上のセンサ出力があり、かつこの状態が一定時間
以上連続した場合には、OK判定とする。
3.OK判定後に、センサ出力が基準値未満の状態が発生し、かつこの状態が一定時間以
上連続した場合には、NG判定に戻す。
4.ヒートクリーニングを所定の第1の時間(たとえば25秒)実施した時点で、OK判
定であれば、COセンサSaが正常である旨を確定させる。
5.ヒートクリーニングを所定の第1の時間実施した時点において、NG判定であれば、
ヒートクリーニング時間を延長する。
6.前記したヒートクリーニング時間の延長後においては、OK判定となった時点で、C
OセンサSaが正常である旨を確定させ、ヒートクリーニングを終了する。
7.前記したヒートクリーニング時間の延長時間が所定の第2の時間(たとえば25秒)
を経過した時点においても、OK判定が得られない場合には、COセンサSaは正常で
はない旨の判断を確定させて、ヒートクリーニングを終了する。
【0021】
次に、前記した燃焼装置Aの作用、ならびに制御部2の動作処理手順の一例について、図2のフローチャートを参照しつつ説明する。
【0022】
まず、COセンサSaが正常であるか否かの診断を行なうには、ヒートクリーニングを開始させる(S1)。既述したように、このヒートクリーニングは、COセンサSaに電流を流して発熱させることにより行なう。その際、COセンサSaが正常であれば、所定の基準値以上のセンサ出力がなされる。ヒートクリーニングを開始した場合には、制御部2は、初期設定として、COセンサSaをNG判定とし(S2)、その後にこのNG判定が維持された状態において、センサ出力が基準値を超える状態が一定時間(たとえば5秒)以上連続すると、この時点でCOセンサSaをOK判定とする(S3:YES,S4:YES,S5)。ヒートクリーニングが開始されてから第1の時間(たとえば25秒)が経過した時点において、前記したOK判定の状態にあれば、制御部2は、COセンサSaは正常であるとの判断を確定させて、ヒートクリーニングを終了させる(S6:YES,S7:YES,S8,S9)。
このような一連の処理によれば、COセンサSaが正常な状態にあり、かつセンサ出力の立ち上がりが比較的早いものである場合、このCOセンサSaが正常である旨の判断を早期に確定させることができる。したがって、ヒートクリーニングの時間も不必要に長くならないようにすることが可能である。
【0023】
一方、前記した一連の動作中では、ステップS3においてCOセンサSaがNG判定にない状態(S3:NOの状態であり、ステップS5,S6:NOを経ることより、この状態となる)がある。このような場合において、センサ出力が所定の基準値未満であり、かつこの状態が一定時間連続すると、NG判定となる(S10:YES,S11)。このことから理解されるよう、本実施形態の診断処理では、OK判定が一旦なされた場合であっても、その後にこの判定がNG判定に覆る場合がある。このようにしてNG判定がなされた時点で第1の時間が経過した場合には(S11,S6:YES)、ステップS7においてNG判定であるために、この場合にはヒートクリーニング時間が延長される(S12)。図2には明示されていないが、ヒートクリーニング時間の延長に伴い、COセンサSaの診断処理も継続される。
【0024】
前記したヒートクリーニング時間の延長時において、センサ出力が所定の基準値を超える状態が一定時間連続すると(S13:YES)、制御部2は、その時点においてCOセンサSaは正常である旨の判断を確定させ、かつヒートクリーニングを終了させる(S8,S9)。COセンサSaが正常であり、コールド状態から通電が開始されたことに起因してセンサ出力信号の立ち上がりが遅くなる場合には、ヒートクリーニング時間の延長時間帯を利用して、前記したように正常である旨の判断がなされることとなる。したがって、COセンサSaが本来的には正常であるにも拘わらず、異常であると誤判断される虞を少なくすることが可能である。また、ヒートクリーニング時間は、第2の時間まで最大延長されるが、前記した処理によれば、第2の時間の経過を待たずに、COセンサSaの診断処理、およびヒートクリーニングを比較的早期に終えることができる利点も得られる。
【0025】
前記とは異なり、ステップS13において、センサ出力が基準値を超えるようなことのないまま、第2の時間が経過した場合には(S13:NO,S14:YES)、その時点において、COセンサSaは異常であると判断され、この判断が確定される(S15)。このようにして確定された判断は、本来のヒートクリーニングの時間である第1の時間に加え、さらに第2の時間を加えた時間範囲内において判断されたものであるため、その信頼性は高いものとすることが可能である。その一方、ヒートクリーニングの延長時間に一
定の限界を設けているために、ヒートクリーニング時間が不当に長くなるといった不具合も防止することが可能である。COセンサSaが異常であると判断された場合には、たとえば制御部2に接続されたリモコン(図示略)の表示部やアラームなどを利用してその旨の報知動作がなされ、また燃焼装置Aの運転禁止を図るための処理が実行される(S16)。これらの処理に伴い、ヒートクリーニング処理も終了する。
【0026】
前記したように、この燃焼装置Aにおいては、ヒートクリーニング時間を必要に応じて延長していることにより、コールド状態から通電がなされたCOセンサSaであっても、これが正常であるか否かを的確に診断することができる。また、ヒートクリーニング時間の延長時間には一定の制限を設けてヒートクリーニング時間がむやみに長くなることを防止し、さらには一定要件下にあっては、延長最大時間である第2の時間の経過を待つことなく、比較的早期にCOセンサSaの診断を終了させることもできる。このように、この燃焼装置Aによれば、COセンサSaが正常であるか否かの診断処理を適切かつ正確に行なうことが可能である。
【0027】
本発明は、上述した実施形態の内容に限定されない。本発明に係る燃焼装置の各部の具体的な構成は、本発明の意図する範囲内において種々に設計変更自在である。
【0028】
COセンサは、CO濃度検出に利用できるものであればよく、その具体的な構成は問わない。バーナとしては、ガスバーナに代えて、たとえばオイルバーナとすることもできる。本発明に係る燃焼装置は、必ずしも給湯装置として構成されていなくてもよく、たとえば暖房用などの燃焼装置として構成することも可能である。
【符号の説明】
【0029】
A 燃焼装置
Sa COセンサ
2 制御部(制御手段)
10 バーナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排ガスのCO濃度を検出するためのCOセンサと、
このCOセンサにヒートクリーニングを実行させるとともに、このヒートクリーニングの期間中に、前記COセンサからの出力信号を受け、かつ前記ヒートクリーニングの開始時から所定の第1の時間が経過した時点において、前記COセンサが正常であるか否かを判断する制御手段と、
を備えている、燃焼装置であって、
前記制御手段は、前記第1の時間が経過した時点において、前記COセンサが正常ではないと判断したときには、前記ヒートクリーニングの時間を延長し、前記COセンサが正常であるか否かの判断を継続するように構成されていることを特徴とする、燃焼装置。
【請求項2】
請求項1に記載の燃焼装置であって、
前記制御手段は、前記ヒートクリーニングの時間を延長した場合において、この延長後に所定の第2の時間が経過した時点で、前記COセンサは正常ではないと判断している場合には、この時点で前記COセンサは正常ではない旨の判断を確定し、前記ヒートクリーニングを終了するように構成されている、燃焼装置。
【請求項3】
請求項2に記載の燃焼装置であって、
前記制御手段は、前記ヒートクリーニングの時間を延長した場合において、この延長時から前記第2の時間が経過する前に、前記COセンサが正常であると判断し、かつその旨を確定させた場合には、この時点において前記ヒートクリーニングを終了するように構成されている、燃焼装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate